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JP2019157223A - 光電極を用いた過酸化水素の製造方法 - Google Patents

光電極を用いた過酸化水素の製造方法 Download PDF

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JP2019157223A JP2018047105A JP2018047105A JP2019157223A JP 2019157223 A JP2019157223 A JP 2019157223A JP 2018047105 A JP2018047105 A JP 2018047105A JP 2018047105 A JP2018047105 A JP 2018047105A JP 2019157223 A JP2019157223 A JP 2019157223A
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Yoshiya Konishi
由也 小西
壮一 高杉
Soichi Takasugi
壮一 高杉
佐山 和弘
Kazuhiro Sayama
和弘 佐山
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Abstract

【課題】比較的高い電流効率でアノード側とカソード側の両側において過酸化水素の製造が可能であり、光エネルギーを利用して全く外部電圧を印加することなく、又は外部電圧を印加したとしても低い電圧で過酸化水素を比較的高効率に製造することができる過酸化水素の製造方法を提供する。【解決手段】酸化処理した導電性炭素材料を電極材料とするカソード電極及び光電極であるアノード電極を用い、炭酸塩を含む電解液に浸漬されたアノード電極に光を照射することで、太陽光の光エネルギーを利用してアノード側とカソード側の両側において過酸化水素を製造する。この過酸化水素の製造方法により全く外部電圧の印加することなく又は低い電圧の印加による低コストでの過酸化水素の製造が可能となる。【選択図】 図1

Description

本発明は、光電極を用いた過酸化水素の製造方法に関するものである。
消毒・殺菌・漂白などに用いられる過酸化水素は工業的には2-アルキルアントラキノンの水素化と空気酸化を利用したアントラキノン法により製造されている。しかしこの方法ではアントラキノン誘導体や有機溶媒などの有機物を用いるため環境負荷が大きく、また分離操作等も必要となって工程が煩雑となるためにより有用な他の製造方法が求められている(非特許文献1参照)。
アントラキノン法以外の過酸化水素の製造方法については、例えば電極反応によってカソード電極において酸素を還元することで過酸化水素を電気化学的に製造する方法などが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
電極反応により酸素を還元するために使用するカソード電極としては様々な提案がなされているが、炭素材料を酸化処理して得られる導電性炭素酸化物が当該カソード電極の材料として優れることが見出されている。そのような導電性炭素酸化物は活性炭やカーボンブラックなどの電気伝導性を有する様々な炭素材料を硫酸酸化や硝酸酸化などの酸化処理することで得ることができる。導電性炭素酸化物を用いたカソード電極は、従来から電流効率が低い酸性電解液の条件下においても高効率で過酸化水素を製造でき、さらにアルカリ性電解液の条件下における効率も向上することが報告されている(特許文献3参照)。
一方、電極反応によってアノード電極において水を酸化することで過酸化水素を電気化学的に製造できることも報告されており、例えば固体酸化物を表面に有するアノード電極を+1.8V(RHE)よりも正の電位とし、さらに炭酸塩を含む電解液を用いることにより過炭酸アニオン中間体を経由して過酸化水素を製造する方法が提案されている。この場合には、カソード電極側の電解液に酸素が溶解した炭酸塩の水溶液を用い、カソード電極の電位を+0.68V(RHE)よりも負の電位とすれば同時にカソード電極側においても酸素の還元により過酸化水素を生成させることが原理的には可能となる(特許文献4参照)。
また光電極及び炭酸塩を含む電解液を用いることにより光エネルギーを利用してアノード電極において水を酸化し、印加する電圧を低く抑えながら低コストで過酸化水素を製造する方法も提案されている。(非特許文献2及び特許文献5参照)。
特開2005−146344号公報 特開2007−162033号公報 特開2010−144203号公報 特開2017−39981号公報 特開2017−171554号公報
化学便覧応用化学編第7版 632頁 K. Fuku et al. Chem. Commun., 2016, 52, 5406
本発明者は、上述のような従来技術について検討し、光電気化学的に過酸化水素を製造する研究を進める過程で、次のような知見や認識を得た。
前記した技術などにおいては、電極反応によって過酸化水素を製造するための駆動力としては、
(1)電極反応を生じさせる外部電圧の印加、
(2)燃料電池システム、
(3)光電極による光エネルギーの吸収
などが考えられる。またこれらを組み合わせて用いることも可能である。これらにおいて過酸化水素の製造コストを低く抑えるには以下が重要になる。
(1)の外部電圧を印加する場合、できるだけ印加する電圧を小さくして過酸化水素の製造コストを低くすることが望ましい。(2)の燃料電池システムなどの場合、対極における化学反応と組み合わせることにより反応が駆動されて過酸化水素が生成する。カソード電極において酸素を還元することで過酸化水素を生成するときには、アノード電極においては、例えば水素を酸化することで発生する電子をカソード電極に供給して反応が進行する。このような場合には過酸化水素の製造コストが逆に増大しないように対極において生じる反応も含めて反応系全体が十分に低コストでなければならない。(3)の光電極による光エネルギーの吸収の場合、太陽光を効率的に利用できれば上記したように(1)の外部電圧の印加と組み合わせて印加する電圧を小さくすることで過酸化水素の製造コストの低下が可能になる。
光電極をアノード電極として用いて水の酸化により過酸化水素を製造する場合、同時に対極のカソード電極においても効率的に酸素の還元により過酸化水素を製造することができれば全体としての過酸化水素の製造効率の向上が期待できる。しかしながらアノード電極とカソード電極の好ましい組み合わせや採用する反応系は各電極の特性やシステムの構成等に大きく依存するため最適な選択と構成が見出されていない。
本発明は、上述のような従来技術や、本発明者の上述のような知見や認識を背景としてなされたものであり、比較的高い電流効率でアノード側とカソード側の両側において過酸化水素の製造が可能であり、光エネルギーを利用して全く外部電圧を印加することなく、又は外部電圧を印加したとしても低い電圧で過酸化水素を比較的高効率に製造することができる過酸化水素の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために様々な条件で実験を進めて検討した結果、過酸化水素の製造に適した光電極と対極の組み合わせ及びそれに適した反応系を見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願は、以下の発明を提供するものである。
(1)酸化処理した導電性炭素材料を電極材料とするカソード電極を準備する工程と、
光電極としてのアノード電極を準備する工程と、
電解槽内において前記カソード電極を電解液に浸漬し、前記アノード電極は炭酸塩と水を含む電解液に浸漬し、前記カソード電極と電気的に接続された前記アノード電極に光を照射して、前記カソード電極側及び前記アノード電極側において過酸化水素を生成する工程とを備える過酸化水素の製造方法。
(2)(1)において、前記カソード電極を準備する工程は、前記導電性炭素材料を60℃〜90℃の硝酸に浸漬することにより行われる過酸化水素の製造方法。
(3)(1)又は(2)において、前記電解槽は、イオン交換膜を介して設置されたカソード室、及びアノード室を備え、前記過酸化水素を生成する工程で、前記カソード室は酸素含有ガスによるバブリングを行い、前記アノード室は炭酸ガスによるバブリングを行う、過酸化水素の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記カソード電極及び前記アノード電極は電圧源を介さずに直接又は抵抗を介して導電接続される、過酸化水素の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記カソード電極及び前記アノード電極の間に1.1V以下の電圧を印加する過酸化水素の製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかにおいて、太陽光のエネルギーのみにより過酸化水素の製造が可能である過酸化水素の製造方法。
(7)(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記アノード電極がビスマス−バナジウム複合酸化物と酸化タングステンを組み合わせたものを備える過酸化水素の製造方法。
(8)(1)〜(7)のいずれかにおいて、それぞれ両極の電流効率が40%以上である過酸化水素の製造方法。
本発明の過酸化水素の製造方法では比較的高い電流効率でアノード側とカソード側の両側において過酸化水素の製造が可能であり、光エネルギーを利用して全く外部電圧を印加することなく、または外部電圧を印加したとしても低い電圧で過酸化水素を比較的高効率に製造することができる。全く外部電圧を印加しない場合には水や酸素を原料にして太陽光のエネルギーのみによる過酸化水素の生産が可能になる。
本発明を実施するための形態に係わる過酸化水素の製造装置を模式的に示した図である。 本発明を実施するための形態に係わる光電気化学反応を模式的に示した図である。 カソード電極での酸素還元による過酸化水素の生成に関して硝酸処理した導電性炭素材料を用いることによる電流密度及び電流効率の向上を示す図である。
本発明の過酸化水素の製造方法は、図1の装置例に示されるように、導電性炭素材料を酸化処理したものを電極材料とするカソード電極16、光電極としてのアノード電極14、及び、炭酸塩を含んだアノード電解液18などを組み合わせ用いることで実施することができる。
本発明は、上記のように組み合わせたことにより、図2に示すように、全く外部電圧を印加することなく光エネルギーのみにより過酸化水素を製造することができるし、また、カソード電極16とアノード電極14間に外部電圧を印加する場合も、その電圧を低い値とすることができる。
外部電圧を印加することなく過酸化水素を製造するに際しては、通常40%以上の電流効率、より望ましくは50%以上、80%以上、さらには90%以上の電流効率を達成することが可能となる。全く外部電圧を印加せずに光エネルギーのみで稼働できれば太陽光のエネルギーのみによる過酸化水素の生産を実現することができる。
外部から電圧を印加して電極反応を行う場合には印加する電圧が低いほど低コストとなるので好ましいが、光電極を用いて光エネルギーによる起電力を利用して外部から印加する電圧を好ましくは1.1V以下に設定し、低コストで過酸化水素を両極において高効率で製造することができ、過酸化水素を製造するに際して通常40%以上の電流効率、より望ましくは50%以上、80%以上、さらには90%以上の電流効率を達成することが可能となる。
図2に示した酸化還元電位の差からすると、アノード電極側において水を酸化し、カソード電極側において酸素を還元することで過酸化水素をアノード側とカソード側の両側において生成させる場合において、光電極への光照射を用いずに外部電圧の印加だけで反応を進めるためには理論的には最低でも1.12V以上の電圧を印加しなければならず、実際には過電圧を考慮するとさらに高い電圧の外部からの印加が必要となる(特許文献4参照)。
本発明の場合には光電極への光照射による起電力を用いることで印加する外部電圧をこの理論限界よりも低くすることができ、印加電圧が1.1V以下であっても反応を進行させることが可能となる。このように必要な外部電圧が低くなることにより、別途に太陽電池等を用いて太陽光のエネルギーを外部電圧の印加に利用することなどにより、太陽光のエネルギーのみで効率的に稼働させて過酸化水素を製造することが容易になる。
本発明において用いるカソード電極は、その電極材料が酸化処理した導電性炭素材料である。
酸化処理される導電性炭素材料は、とくに限定されず、様々なものを採用することができるが、その中でもケッチェンブラックやカーボンブラックは好ましい。ケッチェンブラックは導電性がよいため電流値も大きく、さらに硝酸処理によって導電性とカソード電極における過酸化水素生成の電流効率がともに優れて向上するためとくに好ましい。またカーボンブラックはカソード電極における過酸化水素生成の電流効率がよく、さらに硝酸処理により導電性も優れて向上して電流値が大きくなるため好ましい。
導電性炭素材料の酸化処理としては、空気酸化、電極酸化なども採用できるが、濃硝酸や濃硫酸などの酸化性の酸に一定時間浸漬し、その後洗浄・乾燥する酸化性酸処理が好ましい。
酸化処理する時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは12時間以上、さらにより好ましくは24時間以上である。
酸化処理によりカソード電極における過酸化水素生成の電流効率が向上する効果が得られる。また、本発明は酸化処理した導電性炭素材料を電極材料とするカソード電極及び光電極を用いるアノード電極、さらに電解液などの反応系の好ましい組み合わせにより実施するものであり、導電性炭素材料や処理条件の選択などによっては、対極であるアノード電極での過酸化水素生成の向上にも寄与する場合もある。
酸化性酸処理としては、硝酸処理がとくに好ましい。硝酸処理はカソード電極における電流効率の向上に対する効果に加えて導電性の向上に極めて優れた効果があり、それにより電流値が大きくなって短時間に過酸化水素の生成を進めることができるようになる。このように硝酸処理にはカソード電極の性能向上にとくに好ましい理由がある。また硝酸処理における温度は好ましくは60℃から90℃、より好ましくは70℃から80℃である。硝酸処理以外の酸化処理については検討した条件では硝酸処理ほどの導電性の向上は得られてはいないが、それは条件が最適化されていないか、又は硝酸処理にのみ特有の導電性の向上に対する選択的な効果があるためである。
酸化処理した導電性炭素材料は、電極材料としてカソード電極の表面に存在するようにカソード電極に組み込まれればよく、その組み込み方法は限定されないが、例えば、酸化処理した導電性炭素材料をスラリー化し、カーボンペーパーなどに塗布して乾燥させることでカソード電極とすることができる。
本発明においてアノード電極として用いる光電極は、光を吸収して水を酸化する電極として作用すればよく、とくに限定されないが、例えばFTOやITO等の導電性膜を表面に有する基板などの各種の導電性基板上に酸化タングステン薄膜及びビスマス−バナジウム複合酸化物薄膜を順に積層するなどして構成することができる。またさらにその表面を酸化アルミニウムなどの他の物質で修飾することもできる。太陽光を本製造方法の駆動力に用いるためにはそのような太陽光によって効率的に作用する光電極が好ましい。
本発明においてカソード電極とアノード電極が設置される電解槽12は、一室でも良いし、イオン交換膜の隔膜22により仕切られたカソード室20とアノード室18の二室の構成とすることもできる。イオン交換膜としては、カチオン交換膜が好ましく、生成物である過酸化水素に対して耐久性のあるものが好ましく、そのようなフッ素系樹脂のカチオン交換膜が好ましい。
本発明においてアノード電極が設置されるアノード室又は一室構成の電解槽には、炭酸塩を含む電解液が収容される。該炭酸塩は、電解質の溶媒である水に対し十分な溶解度を有するものであればアルカリ金属やアルカリ土類金属などの多様な炭酸塩を用いることができる。例えば炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが有用であるが、その中でも炭酸水素カリウムが好ましい。
一方、カソード電極が設置されるカソード室においても同様の炭酸塩を含む電解液を好ましく用いることができるが、カソード室において用いる電解液としては様々なものを採用することができ、特定の電解液には限定されない。
カソード電極16とアノード電極14は外部電圧を印加することなく電気的に接続して作用させるが、さらにカソード電極16とアノード電極14の間に外部電圧を印加して作動させることもできる。
光電極は、アノード室又は一室構成の電解槽の電解液に浸漬された状態で光照射を受けることが可能なように設置される構造とする。
本発明の過酸化水素の製造方法では、図1,2に示すように、カソード電極側で過酸化水素に還元される酸素が必要であり、また、アノード電極側で水を酸化させる過炭酸アニオン中間体を生成するために二酸化炭素が必要である。そのような反応に利用される酸素や二酸化炭素は、大気などの雰囲気中の酸素や二酸化炭素が電解液中に溶解する程度の濃度でも良いが、カソード室側とアノード室側を隔膜で仕切った二室で実施する場合には、カソード室側を酸素含有ガスで、アノード室側を炭酸ガスでバブリングすることが好ましい。また本発明を一室構成で実施する場合には電解液全体を炭酸ガスと酸素含有ガスの両方でバブリングすることが好ましい。カソード室側を酸素含有ガスでバブリングするのは原料の供給のためであり、酸素を20%程度含む空気によるバブリングによっても効果が得られる。またアノード室側を炭酸ガスでバブリングすることで反応の進行によりアノード電解液のアルカリ性が高まってアノード電極が溶解するのを防止する効果とアノード電極での過酸化水素生成を促進する効果が得られる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
カソード電極に関しては以下の手順で作製した。ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 EC600JD)100mgを濃硝酸(濃度70%)3.8gと混合し、24時間にわたり40℃または80℃に保った。さらにそれをろ過し、ろ過残留物を水で洗浄してから60℃で一晩乾燥させ、処理温度が40℃と80℃の2種類の硝酸処理ケッチェンブラックを得た。
前記のようにして得られた2種類の硝酸処理ケッチェンブラックと未処理のケッチェンブラックとを準備し、各ケッチェンブラック及び濃度20重量%のナフィオン分散液をそれぞれ10重量%及び1重量%となるようにエタノールに加えたものを撥水処理したカーボンペーパーに滴下して60℃で10分間にわたり乾燥させて、40℃処理、80℃処理、及び、未処理の3種類のカソード電極を作製した。
これら3種類の各カソード電極について、電解液に2.0Mの炭酸水素カリウム水溶液を用い、0.5Vの電圧を印加して酸素の還元による過酸化水素の生成に関して電流密度と電流効率を調べたところ、図3に示すように硝酸処理したケッチェンブラックを用いたものは未処理のケッチェンブラックを用いたものよりも電流密度と過酸化水素生成の電流効率はともに向上した。またそれらは硝酸処理の温度が40℃よりも80℃の場合の方がより向上した。硝酸処理の温度によりカソード電極としての性能に違いが生じているが、その傾向はアノード電極と接続して作動させても反映される。したがって、本発明において導電性炭素材料を硝酸処理する際の好ましい温度は、60℃から90℃、より好ましい温度は70℃から80℃であると結論された。そこで、以降では、より優れた性能を示している80℃で硝酸処理したケッチェンブラックにより作製したものをカソード電極として用いることとした。
アノード電極に関しては以下の手順で作製した。導電性ガラス(FTOガラス)上に六塩化タングステン(WCl6)1.0gとN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)5mlを混合した溶液をスピンコートして500℃で30分間にわたり焼成する工程を2回繰り返すことで酸化タングステン薄膜を製膜した。さらにその上に、高純度化学製の0.5MのBiO1.5溶液400μl、同じく高純度化学製の0.4MのViO2.5溶液500μl、エチルセルロース酢酸ブチル2ml、酢酸ブチル2.1mlを混合した溶液をスピンコートして550℃で30分間にわたり焼成することでビスマス−バナジウム複合酸化物薄膜を積層して光電極を作製し、それをアノード電極として用いることとした。
前記の手順で作製したアノード電極(9cm3)及びカソード電極(9cm3)を、ナフィオン膜(カチオン交換膜)で仕切られたアノード室とカソード室にそれぞれ設置されるように構成し、アノード室は、光電極が光照射を受けることができる構造とし、電解液として2.0Mの炭酸水素カリウム水溶液を収容して炭酸ガスによるバブリングを行った。一方、カソード室は、同じく電解液として2.0Mの炭酸水素カリウム水溶液を収容し、酸素によるバブリングを行った。
アノード電極とカソード電極を外部電圧の印加なしで導電接続し、太陽光を模したソーラーシミュレータ(AM1.5 100mW/cm2)によりアノード電極に光照射を行って、アノード側とカソード側の両側で過酸化水素の製造を行った。外部電圧を全く印加しない状態においても光照射によって1.1mAの光電流が生じ、1.5Cに到達した時点においてアノード電極側で117.3μM、カソード電極側で216.5μMの過酸化水素が生成した。電流効率はアノード電極側で49.8%、カソード電極側で91.4%であった。この時の過酸化水素の両極を合わせた生成速度は0.48μmol/分であった。
[比較例1]
カソード電極に酸化処理していないケッチェンブラックを用いる以外は実施例1と全く同じようにして、光照射による過酸化水素の製造を行った。外部電圧を全く印加していない状態では光照射により生じる光電流は0.6mAとなり、1.5Cに到達した時点においてアノード電極側で117.7μM、カソード電極側で109.0μMの過酸化水素が生成した。電流効率はアノード電極側で50.0%、カソード電極側で69.4%であった。この時の過酸化水素の両極を合わせた生成速度は0.18μmol/分であった。
<実施例1と比較例1の比較>
外部電圧を印加しない状態で実施例1では比較例1と比較して1.8倍の電流が生じ、両極を合わせた過酸化水素の生成速度も2.7倍に増加した。導電性炭素材料として酸化処理をしていないケッチェンブラックを用いるとカソード電極側での過酸化水素の生成及び電流効率がそれぞれ109.0μMと69.4%であったのが酸化処理によりそれぞれ216.5μMと91.4%となって著しい改善が見られた。ケッチェンブラックの場合には酸化処理による電流の増加に加えてカソード電極側での生成と電流効率に対する効果が大きい。
[実施例2]
ケッチェンブラックに替えてカーボンブラック(キャボットコーポレーション VULCAN XC72)を用いた以外は実施例1と全く同じようにして、光照射による過酸化水素の製造を行った。外部電圧を全く印加しない状態で光照射によって0.8mAの光電流が生じ、1.5Cに到達した時点においてアノード電極側で120.5μM、カソード電極側で208.0μMの過酸化水素が生成した。電流効率はアノード電極側で51.2%、カソード電極側で88.4%であった。この時の過酸化水素の両側を合わせた生成速度は0.35μmol/分であった。
[比較例2]
カソード電極に酸化処理していないカーボンブラックを用いる以外は実施例2と全く同じようにして、光照射による過酸化水素の製造を行った。外部電圧を全く印加していない状態では光照射により生じる光電流は0.1mAとなり、1.5Cに到達した時点においてアノード電極側で89.6μM、カソード電極側で234.5μMの過酸化水素が生成した。電流効率はアノード電極側で38.0%、カソード電極側で99.6%であった。この時の過酸化水素の両側を合わせた生成速度は0.04μmol/分であった。
<実施例2と比較例2の比較>
外部電圧を印加しない状態で実施例2では比較例2と比較して8倍の電流が生じ、アノード側とカソード側の両側を合わせた過酸化水素の生成速度も8.8倍に増加した。導電性炭素材料として酸化処理をしていないカーボンブラックを用いるとアノード電極側での過酸化水素の生成及び電流効率がそれぞれ89.6μMと38.0%であったのが酸化処理によりそれぞれ120.5μMと51.2%となった。カーボンブラックの場合には酸化処理によって著しく電流が増加して反応の進行に要する時間が短くなったことに起因してアノード電極側での過酸化水素の生成と電流効率が改善された。導電性炭素材料を酸化処理することにより単にその導電性炭素材料を使用したカソード電極ではなく対極であるアノード電極側で大きな改善が見られていることは本発明の過酸化水素の製造方法が全体として好ましい電極や反応系の組み合わせの構成によってはじめて実現するものであることを示している。
[比較例3]
カソード電極に白金を用いる以外は実施例1と全く同じようにして、光照射による過酸化水素の製造を行った。外部から電圧を全く印加していない状態で光照射により生じる光電流は1.6mAとなって電流値は大きいが、1.5Cに到達した時点においてアノード電極側で100.0μMの過酸化水素が電流効率42.5%で生成したものの、カソード電極側では過酸化水素の生成及び電流効率がそれぞれ1.5μMと0.8%となっており、ほとんど過酸化水素は生成しなかった。この時の過酸化水素の両側を合わせた生成速度は0.21μmol/分であった。
比較例3では外部電圧を印加しない状態で生じた1.6mAの電流は主にカソード電極で酸素の還元による水の生成反応で生じたものであり、アノード側とカソード側の両側で効率的に過酸化水素を生成することは達成できていない。電流値が大きくなったために見かけの両側を合わせた過酸化水素の生成速度も0.21μmol/分となっているが、これはほぼアノード電極側における過酸化水素の生成だけの寄与によるものである。以前からアノード電極に光電極を用いる場合にカソード電極として白金を用いた報告がなされているがアノード側とカソード側の両側で効率的に過酸化水素を生成するにはカソード電極として白金を使用するのは適切ではない。また白金電極は、導電性炭素材料と比べて、極めて高価である点でも不利である。
Figure 2019157223
本発明の過酸化水素の製造方法は、光電極を用いて太陽光のエネルギーを利用することで安価に過酸化水素を製造することができるし、また、工業的に用いられているアントラキノン法と比較すると有機物を使用しないため環境負荷も大幅に低減できる。したがって、本発明は、過酸化水素を必要とする様々な分野において幅広く利用され得る。
10 過酸化水素の製造装置
12 電解槽
14 アノード電極
16 カソード電極
18 アノード電解液
20 カソード電解液
22 隔膜
24 アノード室
26 カソード室

Claims (8)

  1. 酸化処理した導電性炭素材料を電極材料とするカソード電極を準備する工程と、
    光電極としてのアノード電極を準備する工程と、
    電解槽内において前記カソード電極を電解液に浸漬し、前記アノード電極は炭酸塩と水を含む電解液に浸漬し、前記カソード電極と電気的に接続された前記アノード電極に光を照射して、前記カソード電極側及び前記アノード電極側において過酸化水素を生成する工程とを備える過酸化水素の製造方法。
  2. 請求項1において、前記カソード電極を準備する工程は、前記導電性炭素材料を60℃〜90℃の硝酸に浸漬することにより行われる過酸化水素の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、前記電解槽は、イオン交換膜を介して設置されたカソード室、及びアノード室を備え、前記過酸化水素を生成する工程で、前記カソード室は酸素含有ガスによるバブリングを行い、前記アノード室は炭酸ガスによるバブリングを行う、過酸化水素の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記カソード電極及び前記アノード電極は電圧源を介さずに直接又は抵抗を介して導電接続される、過酸化水素の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記カソード電極及び前記アノード電極の間に1.1V以下の電圧を印加する過酸化水素の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかにおいて、太陽光のエネルギーのみにより過酸化水素の製造が可能である過酸化水素の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記アノード電極がビスマス−バナジウム複合酸化物と酸化タングステンを組み合わせたものを備える過酸化水素の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかにおいて、それぞれ両極の電流効率が40%以上である過酸化水素の製造方法。


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