以下、図面を用いて、実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
(レンズ厚測定装置1の全体構成例)
図1は、本発明の実施形態のレンズ厚測定装置を示す図である。
図1に示すレンズ厚測定装置1は、非接触レンズ中心厚測定機ともいうことができる。レンズ厚測定装置1は、各種の光学要素、例えば凸レンズ(両凸レンズ、平凸レンズ)、凹レンズ(両凹レンズ、平凹レンズ)、メニスカス、非球面レンズ等の肉厚、特に中心厚を、非接触で精密に測定することができる。
レンズ厚測定装置1の基本性能の一例を挙げれば、厚み測定範囲が、1mm〜21mmであり、厚み測定精度は、校正されたブロックゲージ(後述する)に対して、±2μm以下である。また、光学要素の測定範囲の直径φは、最小で数mm〜最大で120mmである。レンズ厚測定装置1の重量は、約30kgであり、寸法は、幅が350mm、奥行が590mm、そして高さが654mmである。しかし、レンズ厚測定装置1の基本性能は、これらの数値に限定されるものではない。
図1に示すレンズ厚測定装置1が測定するレンズ厚とは、レンズの肉厚である。レンズが凸レンズの場合には、凸レンズの中心部の最も厚い肉厚の部分を、「レンズの中心厚」と呼ぶ。レンズが凹レンズの場合には、凹レンズの中心部の最も薄い肉厚の部分を、「レンズの中心厚」と呼ぶ。レンズ厚測定装置1は、レンズの肉厚、好ましくはレンズの中心厚を測定する。
図1に示すように、レンズ厚測定装置1は、本体2と、測定部3と、制御装置4を有する。本体2は、測定部3を保護している筐体であり、本体2は、測定用の台5に置かれている。本体2の底部2Tは、水平度を確保するために、好ましくは四隅位置に高さ調整用のアジャスタ2Sを有している。このアジャスタ2Sを調整することで、本体2は、X−Y面に沿って水平状態に保持できる。
なお、図1において、左右方向をX方向で示し、紙面に垂直方向をY方向で示し、高さ方向をZ方向で示している。X方向、Y方向、そしてZ方向は、互いに直交している。X方向、Y方向、Z方向は、X軸、Y軸、Z軸とも呼ぶ。
(測定部3)
図1に示す測定部3は、操作機構部10と、レンズLの一方の面側に配置されている第1変位計11、第1エンコーダ21、第1Z軸モータ31と、レンズLの他方の面側に配置されている第2変位計12、第2エンコーダ22、第2Z軸モータ32と、ステージ40と、電動XYテーブル50と、を有する。
第1エンコーダ21と第2エンコーダ22は、リニアエンコーダであり、第1エンコーダ21と第2エンコーダ22のスケール分解能は、例えば0.4μmである。第1エンコーダ21は、第1変位計11のZ方向に関する変位位置を測定するための第1位置測定機の例であり、第2エンコーダ22は、第2変位計12のZ方向に関する変位位置を測定するための第2位置測定機の例である。第1Z軸モータ31と第2Z軸モータ32は電動モータである。
(操作機構部10)
図1に示す操作機構部10は、金属製であり、基台10Bと、第1リニアガイド10Cと、第2リニアガイド10Dを有する。基台10Bは、X−Z平面に配置されている板状の部材であり、上下部に上部取付部10Fと、下部取付部10Gを有する。第1リニアガイド10C、10Cは、基台10Bの上半分の領域に固定され、第2リニアガイド10D、10Dは、基台10Bの下半分の領域に固定されている。
第1リニアガイド10C、10Cと、第2リニアガイド10D、10Dは、Z方向に沿って設けられている。第1リニアガイド10C、10Cの下端部と、第2リニアガイド10D、10Dの上端部の空間には、ステージ40と電動XYテーブル50が配置されている。
第1リニアガイド10C、10Cは、第1移動体61の左右端部をZ方向に沿って直線移動のガイドを行う。同様にして、第2リニアガイド10D、10Dは、第2移動体62の左右端部をZ方向に沿って直線移動のガイドを行う。第1移動体61は、第1変位計11を保持している。第2移動体62は、第2変位計12を保持している。第1変位計11は、ステージ40のレンズLに向かって、下向きに光を発生できるように配置されている。第2変位計12は、ステージ40のレンズLに向かって、上向きに光を発生できるように配置されている。
(第1Z軸モータ31と第2Z軸モータ32)
第1Z軸モータ31は、上部取付部10Fに取り付けられている。第2Z軸モータ32は、下部取付部10Gに取り付けられている。第1Z軸モータ31の出力軸は、送りねじ10Mに接続されており、第2Z軸モータ32の出力軸は、送りねじ10Nに接続されている。
第1Z軸モータ31の送りねじ10Mは、第1移動体61のメネジにかみ合っている。これにより、制御部100の指令により、送りねじ10Mが正逆回転することで、第1移動体61は第1リニアガイド10C、10Cによりガイドされながら、Z方向に沿って上下移動して位置決め可能である。
同様にして、第2Z軸モータ32の送りねじ10Nは、第2移動体62のメネジにかみ合っている。これにより、制御部100の指令により、送りねじ10Nが正逆回転することで、第2移動体62は第2リニアガイド10D、10Dによりガイドされながら、Z方向に沿って上下移動して位置決め可能である。
第1エンコーダ21は、第1リニアガイド10Cに取り付けられている。第1エンコーダ21は、第1変位計11自体のZ方向の位置を測定する。これにより、制御部100は、第1エンコーダ21から、第1変位計11自体のZ方向の位置を、第1エンコーダ変位として得ることができる。
同様にして、第2エンコーダ22は、第2リニアガイド10Dに取り付けられている。第2エンコーダ22は、第2変位計12自体のZ方向の位置を測定する。これにより、制御部100は、第2エンコーダ22から、第2変位計12自体のZ方向の位置を、第2エンコーダ変位として得ることができる。
このように、第1Z軸モータ31と第2Z軸モータ32は、第1移動体61と第2移動体62をそれぞれZ方向に沿って所定の上下移動させる役割を有する。これに対して、第1エンコーダ21は、第1変位計11自体のZ方向に関する位置を測定する役割を有する。第2エンコーダ22は、第2変位計12自体のZ方向に関する位置を測定する役割を有する。
このように、測定部3は、Z方向に関して、第1エンコーダ21と第2エンコーダ22と、非接触式の第1変位計11と第2変位計12の両方を用いている。これにより、レンズの種類により測定対象であるレンズの肉厚が大きく変わっても、測定時の追従が可能である。
(第1変位計11と第2変位計12)
図1に示す第1変位計11と第2変位計12としては、非接触式変位計を用いる。このように、非接触式変位計を用いるのは、接触式変位計と比べて、レンズ厚を測定する際に、レンズに接触傷がつくのを防ぐことができ、レンズの面の多数の測定箇所(測定点)の厚みを容易に測定できるからである。
非接触式変位計としての第1変位計11と第2変位計12としては、共焦点型白色ファイバ同軸変位計を用いることができる。共焦点型白色ファイバ同軸変位計の好ましい例は、例えばオムロン株式会社製のファイバ同軸変位センサであるZW7000シリーズ(一例としてZW−S7020)である。この非接触式の共焦点型白色ファイバ同軸変位計は、曲面を有するレンズに光を当てた場合に、その光の反射光を確実に受光できる光ファイバ束を有する。
第1変位計11と第2変位計12の性能の一例を挙げると、ZW−S7010の測定範囲は、予め決めた所定の基準距離としての(ワーキングディスタンス)WDが20mm±1mmであり、傾斜角度追従性が±約15°、静止分解能が0.008μmであり、光のスポット径が70mmである。変位計が発する光と、この光がレンズの面で反射する反射光と、が形成する傾斜角度は、例えば±20度の角度まで追従が可能である。
なお、後程、図5を参照して説明するが、図5に示す所定の基準距離としての(ワーキングディスタンス)WDは、第1変位計11とレンズLの一方の面(上面)との間の距離であり、第2変位計12とレンズLの他方の面(下面)との間の距離である。
(ステージ40と電動XYテーブル50)
次に、ステージ40と、電動XYテーブル50について、図1と図2を参照して説明する。図2は、図1に示すステージ40と電動XYテーブル50の好ましい具体例を示す斜視図である。
図2に示すように、電動XYテーブル50は、ベース51と、第1移動台52と、第2移動台53と、モータ54,55を有する。ベース51は、図1に示す基台10Bに固定されている。第1移動台52はベース51の上に配置され、第2移動台53は第1移動台52の上に配置されている。ステージ40は、第2移動台53の上に着脱可能に配置されている。
制御部100がモータ54を駆動することにより、第1移動台52は、ベース51上において、Y方向に移動して位置決め可能である。また、制御部100がモータ55を駆動することにより、第2移動台53は、第1移動台52上において、X方向に移動して位置決め可能である。
これにより、第2移動台53上のステージ40は、レンズLの所定の測定範囲内において、多数の測定箇所の厚みを測定するために、X方向とY方向について、移動して位置決め可能である。
図2に示すステージ40は、円板型であり、例えば3つのレンズ位置決め具60と、スケール61を有する。3つのレンズ位置決め具60は、角度120度ごとに配置されている。各レンズ位置決め具60は、スライド溝部62を有する。各レンズ位置決め具60は、留めネジ63を有する。各レンズ位置決め具60は、留めネジ63を緩めて、スライド溝部62に沿って半径方向にスライドして位置決めした後に、再度留めネジ63を締めることにより、固定することができる。
各レンズ位置決め具62は、2本のレンズ位置決めピン64を有する。各レンズ位置決め具60は、レンズ位置決めピン64を、測定対象であるレンズLの外縁に当てる。これにより、レンズLは、3方向からステージ40の中心にセンターリングでき、動かないように確実に位置決めすることができる。
(制御装置4)
図1に示すように、操作部4は、制御ボックス70と、コンピュータ71を有する。コンピュータ71は、キーボード72と、モニタ73を有する。作業者は、例えばキーボード72を用いて、制御ボックス70の制御部100に対して、各種の測定条件等を入力できる。モニタ73は、各種の測定に関する情報を表示する。
制御部100は、第1変位計11からの変位測定値Qと、第2変位計12からの変位測定値Qを受信する。制御部100は、第1エンコーダ21からのエンコーダ変位Kと、第2エンコーダ22からのエンコーダ変位Kを受信する。制御部100は、第1Z軸モータ31と、第2Z軸モータ32と、電動XYテーブル50のモータ54,55の動作を制御する。
(測定例)
次に、上述したレンズ厚測定装置1を用いて、測定対象であるレンズLの厚み、例えばレンズLの中心厚を測定する測定例を説明する。
図3は、測定対象であるレンズLの種類が異なる例を示している。図3(A)では、凸レンズ(両凸レンズ)L1が測定対象であり、図3(B)では、凹レンズ(両凹レンズ)L2が測定対象である。凸レンズL1と凹レンズL2のように、レンズLの種類が異なると、レンズの厚みが異なる。このため、第1変位計11と第2変位計12のZ方向に関する位置をレンズLの種類ごとに変えるために、第1変位計11と第2変位計12との間の距離G1、G2を変更する必要がある。
そこで、図1に示すレンズ厚測定装置1では、レンズの種類に合わせて、この距離G1、G2を自由に変更することができる。すなわち、距離G1、G2を変更するのは、図1に示す第1Z軸送りユニット121と第2Z軸送りユニット122である。第1Z軸送りユニット121は、第1Z軸モータ31と送りねじ10Mと第1移動体61からなり、第2Z軸送りユニット122は、第2Z軸モータ32と送りねじ10Nと第2移動体62からなる。
第1Z軸送りユニット121は、第1移動体61と一体になっている第1変位計11のZ方向に関する位置を変更する。第2Z軸送りユニット122は、第2移動体62と一体になっている第2変位計12のZ方向に関する位置を変更する。
図4は、例えば図1の第1変位計11が発生する光R1が、例えば凸レンズL1のレンズ面において、到達する様子と反射する様子を示している。
図4(A)に示すように、第1変位計11が発生する光R1が、凸レンズL1のレンズ面に到達するが、凸レンズL1の最厚位置(頂点位置、中心厚)を探す必要がある。そこで、図1に示すレンズ厚測定装置1では、制御部100が、電動XYテーブル50を駆動することで、ステージ40を、X方向とY方向に、所定のスキャンストローク毎に移動する。
これにより、凸レンズL1の面のマトリックス状の多数の測定位置が、第1変位計11に対して位置決めされる。制御部100は、凸レンズL1の最厚位置(頂点位置、中心厚)を探すことができるようになっている。このことは、図1に示す第2変位計12についても同様である。
また、図4(B)に示すように、例えば凸レンズL1のレンズ面は曲面なので、反射光RF1が光R1に対して別の方向に進むことになる。このように、光R1と反射光RF1の方向が異なっても、上述したように、図1に示す第1変位計11と第2変位計12は、共焦点型白色ファイバ同軸変位計を用いているので、反射光RF1を確実に受光する。
(測定手順例の説明)
次に、図1と図2と、図5から図10を参照しながら、レンズ中心厚の測定手順例を、説明する。
図10は、レンズ中心厚の測定手順例を示すフロー図である。
<装置の校正>
図10のステップS1では、図1に示すレンズ厚測定装置1は、測定の前に、校正用のブロックゲージBGを用いて校正する。
具体的には、図5(A)を参照する。図5(A)は、校正用のブロックゲージBGによるレンズ厚測定装置1の校正作業例を示している。
図5(A)に示すように、厚みの校正作業では、ブロックゲージBGは、図1のステージ40とは異なるブロックゲージ用のステージ(図示せず)の上に置かれる。ブロックゲージBGのZ方向の厚みT=T0は、既知である。ブロックゲージBGは、例えば株式会社ミツトヨ製のものを用いることができる。
設計図面精度が、設計値±数十μmであるのに対して、レンズ厚測定装置1は、この校正済みのブロックゲージBGに対して、例えば±5μm以下の測定精度である。
この際に、第1変位計11は、第1変位計11とブロックゲージBGの上面との間のワーキングディスタンスWDを測定し、第2変位計12は、第2変位計12とブロックゲージBGの下面との間のワークディスタンスWDを測定する。このワークディスタンスWDの値は、第1変位計11と第2変位計12から図1に示す制御部100に送られる。
<レンズのセット>
次に、図10のステップS2に移る。図5(B)は、測定対象(サンプル)である凸レンズL1のセット例を示している。この際には、測定作業者は、図5(A)に示すブロックゲージBGとブロックゲージ用のステージを外す。測定作業者は、図5(B)に示すように、図2のステージ40を電動XYテーブル50の上にセットして、ステージ40に凸レンズL1を載せて、次のようにしてセットする。
測定作業者は、図2に示す各レンズ位置決め具60の留めネジ63を緩めて、スライド溝部62に沿って、半径方向にスライドして位置決めした後に、再度留めネジ63を締める。
各レンズ位置決め具62は、レンズ位置決めピン64を、測定対象である凸レンズL1の外縁に当てる。これにより、凸レンズL1は、ステージ40の中心にセンターリングして、動かないように確実に位置決めすることができる。
ここで、図5(B)に示すエンコーダ変位Kは、図1に示す第1エンコーダ21が第1変位計11のZ方向の変位を測定した際の値であり、第2エンコーダ22が第2変位計12のZ方向の変位を測定した際の値である。変位計測定値Qは、図1に示す第1変位計11と第2変位計12がそれぞれ測定した距離の測定値、すなわちワーキングディスタンスWDに近い値である。
図6は、ワーキングディスタンスWDと、測定レンジRRと、凸レンズL1の中心厚Dの例を表示している。
図6では、凸レンズL1のレンズ厚(中心厚D)は、第1変位計11と第2変位計12の間隔A−(間隔B+間隔C)で表すことができる。第1変位計11と第2変位計12の間隔Aは、図1に示す第1リニアエンコーダ21と第2リニアエンコーダ22により決定する。第1変位計11と第2変位計12は、凸レンズL1の中心厚Dを、測定レンジRRの範囲で測定する。
図8に示すように、測定レンジRRは、例えば、ワークディスタンスWDに対して、±1mmである。変位計測定値Qは、ワーキングディスタンスWDに対して、測定レンズRR(例えば±1mm)の範囲の値である。ワーキングディスタンスWDは、例えば20mmである。
図5(B)に示すように、凸レンズL1の肉厚(中心厚D)は、
凸レンズL1の肉厚(中心厚D)
=ブロックゲージBGの厚みT0(既知)±エンコーダ変位K±変位計測定値Q
で実測することができる。
次に、図10のステップS21では、測定作業者は、図1のキーボード72を用いて、図5(B)に示す凸レンズL1の測定条件、すなわち測定範囲と測定点数(測定箇所数)を入力して、制御部100に通知する。
図10のステップS22では、測定作業者が、制御部100に記憶されている解析ソフトウェアのセットボタンを、ディスプレ73上でクリックする。
図10のステップS23では、図1に示す制御部100は、第1Z軸モータ31と第2Z軸モータ32を駆動する。これにより、図7に示すように、第1変位計11は、凸レンズL1の一方の面(上面)に向かってZ方向に下がり、予め定めたワーキングディスタンスWDの位置で自動的に止まる。同時に、第2変位計12が、凸レンズL1の他方の面(下面)に向かって上がり、予め定めたワーキングディスタンスWDの位置で自動的に止まる。
次に、図10のステップS3では、測定作業者が、制御部100に記憶されている解析ソフトウェアの開始ボタンを、ディスプレ73上でクリックする。
ステップS31では、図1の制御部100は、図2に示すモータ54を駆動して、第1移動台52をY方向に移動して位置決めし、図2に示すモータ55を駆動して、第2移動台53をX方向に移動して位置決めする。
これにより、図8(A)に示すように、凸レンズL1である場合でも、図8(B)に示すように、凹レンズL2である場合でも、図8(C)に例示するように、予め制御部100に設定したスキャニング測定領域SCにおいて、多点の測定位置で厚みの測定値を得ることができる。
凸レンズL1の場合には、図8(C)に例示するように、第1変位計11と第2変位計12は、予め定めたスキャニング測定領域SCにおいて、多点の測定位置で厚みの測定値を得るために、X方向とY方向に沿って、マトリックス状に自動でスキャニング測定を開始する。
これにより、ステップS32では、凸レンズL1の場合には、制御部100は、得られた多点の測定位置で得た厚みの測定値から、最も厚みのある肉厚点(中心厚)TP1を取得して、図9に示すように、中心厚の測定結果をディスプレ73に自動出力して表示する。
同様にして、凹レンズL2の場合には、図8(C)に例示するように、第1変位計11と第2変位計12は、予め定めたスキャニング測定領域SCにおいて、多点の測定位置で厚みの測定値を得るために、X方向とY方向に沿って、マトリックス状に自動でスキャニング測定を開始する。
これにより、ステップS32では、凹レンズL2の場合には、制御部100は、得られた多点の測定位置で得た厚みの測定値から、最も厚みの薄い肉薄点(中心厚)TP2を取得して、中心厚の測定結果をディスプレ73に自動出力して表示する。
図10のステップS33では、測定作業者が、制御部100に記憶されている解析ソフトウェアのリリースボタンを、ディスプレ73上でクリックすることで、測定を終了する。
そして、ステップS4では、測定作業者は、測定対象であるサンプルレンズが例えば凸レンズL1をステージ40から取り外す。
図9は、図1に示すディスプレ73に表示される実測結果の例を示している。
図9に示すのは、凸レンズ(両凸レンズ)L1を実測した時の実測結果を示している。
図9(A)は、図1に示すディスプレ73に表示された実測の際の設定画面200である。図9(B)は、図1に示すディスプレ73に表示された実測の際の実測値を示す実測値表示画面210である。
図9(A)に示すように、設定画面200では、図10のステップS21において、測定作業者が、入力する測定範囲と、多数の測定点数と、測定間隔等の数値を設定することができる。この設定画面200には、図10のステップS3に用いられる測定の開始ボタン205が、配置されている。
図9(B)に示すように、レンズの一方の面(上面)の測定点V1の測定値と、レンズの他方の面(下面)の測定点V2の測定値が表示されている。これらの測定値から、図9(C)に示すように、凸レンズL1の中心厚の数値、例えば6.638mmを表示している。
ここで、比較のために、凸レンズL1の同じ位置の中心厚を接触式測定機で実測したところ、接触式測定機の実測値は、3回測定して6.637mmであった。
また、レンズ厚測定装置1により得られたメニスカスレンズの中心厚の測定値は、4.050mmであり、接触式測定機で実測した測定値も、4.05mmであった。
さらに、レンズ厚測定装置1により得られた両凹レンズの中心厚の測定値は、2.029mmであり、接触式測定機で実測した測定値も、2.03mmであった。
上述のように、レンズ厚測定装置1は、次のような特徴を有する。
Z方向に関して、非接触式の第1変位計11と第2変位計12と、第1エンコーダ21と第2エンコーダ22の両方を用いている。第1変位計11と第2変位計12は、測定対象であるレンズの上下位置に配置されており、レンズの肉厚の分布と中心厚は、第1変位計11と第2変位計12を用いて測定する。第1変位計11と第2変位計12の間隔は、第1エンコーダ21と第2エンコーダ22を用いて測長される。
これにより、測定対象であるレンズの肉厚は、レンズの種類ごとに異なるが、レンズの厚みが大きく変化しても、第1変位計11と第2変位計12は、レンズの肉厚の分布と中心厚を測定する時に追従して肉厚の測定が可能である。すなわち、レンズの厚みが変わっても、第1変位計11と第2変位計12は、レンズの一方の面と他方の面に対して、それぞれワーキングディスタンスWDの位置に自動的に配置される。このため、第1変位計11と第2変位計12の間隔の面倒な調整作業は、不要になる。
測定対象であるレンズにおいて、制御部100からの指令による電動XYテーブル50により指定した測定範囲内で、レンズの全肉厚を測定し、レンズの厚みのバラツキを測定することができる。制御部100は、レンズの指定された測定範囲(測定面積)と測定点数(測定箇所)の数で、レンズの全肉厚を測り、例えばレンズの肉厚の最大値と肉厚の最小値を算出できる。制御部100は、レンズの全肉厚の測定値の最大値と最小値から肉厚値を検出できる。
非接触式変位計としての第1変位計11と第2変位計12としては、共焦点型白色ファイバ同軸変位計を用いている。このため、第1変位計11と第2変位計12は、レンズの面が曲面であっても、レンズの面に当たって反射した光を確実に受光できる。
レンズ厚測定装置1では、面倒なアライメント操作は不要であり、測定範囲(スキャンエリア)と、制御部100に対して測定点数の指定を行えば、後は自動でレンズの中心厚の位置を探して、中心厚の測定値と、中心厚の位置を得ることができる。
レンズ厚測定装置1は、各種の光学要素、例えば凸レンズ(両凸レンズ、平凸レンズ)、凹レンズ(両凹レンズ、平凹レンズ)、メニスカス、非球面レンズ等、レンズの種類を問わず、レンズの所定の領域における肉厚の分布や、レンズの中心厚を、非接触で精密に測定することができる。
以上説明したように、本発明の実施形態のレンズ厚測定装置1は、ステージ40に配置されたレンズLの一方の面側に配置されて、一方の面に光R1を照射して反射した光RF1を受けることで一方の面までの距離を得る第1変位計11と、ステージ40に配置されたレンズLの他方の面側に配置されて、他方の面に光R1を照射して反射した光RF1を受けることで他方の面までの距離を得る第2変位計12と、レンズLの厚みを、第1変位計11で得た一方の面までの距離(ワーキングディスタンスWD)と、第2変位計12で得た他方の面までの距離(ワーキングディスタンスWD)に基づいて、非接触で測定する制御部100と、を備える。第1変位計11と第2変位計12は、レンズLを通る1つの軸方向(例えば、Z方向)に沿って配置されている。
これにより、レンズの厚みを、第1変位計11で得た一方の面までの距離(ワーキングディスタンスWD)と、第2変位計12で得た一方の面までの距離(ワーキングディスタンスWD)に基づいて、非接触で測定できる。このため、各種のレンズLの厚みが変わっても、各種のレンズLの厚みをレンズLの面に傷を付けずに、容易に測定することができる。
レンズ厚測定装置1は、第1変位計11を、軸方向に沿ってレンズの一方の面に対して非接触で測定するのに用いられる所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)まで近づける第1送りユニット(第1Z軸送りユニット121)と、第2変位計12を、軸方向に沿ってレンズLの他方の面に対して非接触で測定するのに用いられる所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)まで近づける第2送りユニット(第2Z軸送りユニット122)を備える。
これにより、第1送りユニットと第2送りユニットは、第1変位計11と第2変位計12を、それぞれ所定の基準距離、例えばワーキングディスタンスWDの位置に位置決めすることができる。第1変位計11と第2変位計12は、レンズLの一方の面と他方の面に対して、所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)を保つようにする。従って、レンズLの種類により、レンズLの厚みが異なるが、レンズLの厚みの違いがあっても、レンズLの厚みの非接触測定ができる。
レンズ厚測定装置1は、第1変位計11の軸方向に関する位置を測定する第1位置測定機(第1エンコーダ21)と、第2変位計の軸方向に関する位置を測定する第2位置測定機(第2エンコーダ22)を備える。
これにより、第1変位計11と第2変位計12の軸方向(例えばZ方向)に関する位置は、第1位置測定機と第2位置測定機により正確に測定して、制御部100に対して通知するので、レンズLの厚みを正確に測定できる。
レンズ厚測定装置1では、第1変位計11を、軸方向(例えばZ方向)に沿ってレンズLの一方の面に対して所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)まで近づける設定をするために、第1変位計11から光を照射して基準となる軸方向(例えばZ方向)についての厚みが既知のブロックゲージBGの一方の面で反射した光を第1変位計11で受け、第2変位計12を、軸方向(例えばZ方向)に沿ってレンズLの他方の面に対して所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)まで近づける設定をするために、第2変位計12から光を照射して基準となるブロックゲージBGの他方の面で反射した光を第2変位計12で受ける。
制御部は、ブロックゲージBGの軸方向(例えばZ方向)に関する厚み(肉厚D)と、第1変位計11とレンズLの一方の面との間の所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)と、第2変位計12とレンズLの他方の面との間の所定の基準距離(ワーキングディスタンスWD)と、第1位置測定機(第1エンコーダ21)により得られる第1変位計11の軸方向に関する変位位置(エンコーダ変位K)と、第2位置測定機(第2エンコーダ22)により得られる第2変位計12の軸方向に関する変位位置(エンコーダ変位K)と、から、レンズLの厚みを得ることができる。
これにより、制御部100は、軸方向(例えばZ方向)についての厚みが既知のブロックゲージBGを利用して校正でき、レンズLの厚み、例えばレンズLの中心厚を、非接触で容易に測定することができる。
レンズ厚測定装置1は、レンズLを配置したステージ40を保持して、ステージ40を軸方向と直交する面(X−Y平面)に沿って移動可能なテーブル50を備え、制御部100は、予め定めた測定範囲(スキャニング測定領域SC)内で、所定の測定点数についてレンズLの厚みを測定するために、テーブル40を軸方向と直交する面において移動する動作の制御を行う。
これにより、制御部100がテーブル40を移動することで、予め定めた測定範囲(スキャニング測定領域SC)内で、所定の測定点数について、レンズLの厚みの多点測定が自動的に行える。このため、レンズLの最厚部や最薄部の位置や、レンズLの厚みのバラツキが、自動的に容易に判明する。
図11および図12は、複数のレンズLに対するレンズ厚測定を好適に行うための実施形態のステージ201を示している。
このステージ201は、例えば、平面形状が長方形とされている。ステージ201の上面には、レンズLの外周面を当接させて位置決めする1対のレンズ位置決めピン202a、202bが植立されており、位置決めされたレンズLの中心部分のレンズ厚を計測するための透孔203がステージ201に形成されている。レンズLの直径が大小異なっても測定できるように透孔203を1対のレンズ位置決めピン202a、202bを結ぶ線分に対して直交する方向に長く形成している。これらの1対のレンズ位置決めピン202a、202bと透孔203との組が、ステージ201にはXY方向に所定数設けられている(図11においては、隣接間隔Cをもって隣接している3組を図示している)。このステージ201には、図示しないXY駆動手段が取り付けられている。また、載置されたレンズLを1対のレンズ位置決めピン202a、202b側に押圧する図示しない押圧手段を設置するとよい。
更に説明すると、図12に示すように、レンズLの半径をAとし、1対のレンズ位置決めピン202a、202bの各半径をBとし、1対のレンズ位置決めピン202a、202bの中心間距離をDとし、図中左側のレンズ位置決めピン202aの中心を原点Oとし、原点OとレンズLの中心Pを結ぶ線分と1対のレンズ位置決めピン202a、202bを結ぶ線分との挟角をφとすると、
φ=cos−1D/{2(A+B)}となるので、
レンズLの中心Pの座標が{D/2,(D/2)tanφ}となる。
このステージ201を用いてレンズLの厚さを測定する場合には、レンズLの半径A、1対のレンズ位置決めピン202a、202bの半径Bおよび中心間距離D、隣接間隔Cの情報を制御部100に操作部4を用いて入力して、中心座標を演算させる。なお、半径B、隣接間隔Cおよび中心間距離Dは予め決定されているので、予め制御部に入力しておき、測定すべきレンズLの半径Aをその都度入力する。その後は、前記実施形態と同様に構成各部を動作させて各組に載置されているレンズLに対するレンズ厚測定が効率良く実行される。
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。
図1に示すレンズ厚測定装置1では、第1変位計11と第2変位計12が移動する方向を、上下方向であるZ方向(Z軸)に設定されている。しかし、これに限らず、第1変位計11と第2変位計12が移動する方向は、X方向あるいはY方向に設定しても良い。この場合には、電動XYテーブル50は、Y−Z平面において、ステージ40を移動する。