以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
本実施の形態に係る緩衝器Dは、図1に示すように、作動油などの流体を満たしたシリンダ10と、シリンダ10内に移動自在に挿入されるロッド12と、ロッド12の一端に連結され、シリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2に区画する弁座部材としてのピストン11とを備えて構成されている。そして、本例では、図1に示すように、緩衝器Dのピストン部に減衰力調整バルブVが実現されている。
また、図示はしないが、シリンダ10の図1中下方には、フリーピストンが摺動自在に挿入されており、このフリーピストンによってシリンダ10内であって図1中圧側室R2の下方に気体が充てんされる気室が形成されている。よって、この緩衝器Dが伸縮してシリンダ10内にロッド12が出入りし、伸側室R1と圧側室R2の合計容積が変化すると、フリーピストンがシリンダ10内で上下動して気室を拡大あるいは縮小させて、ロッド12がシリンダ10内に出入りするロッド体積を補償する。なお、本例の緩衝器Dは、単筒型の緩衝器として構成されているが、気室に代えて、シリンダ10を収容する外筒を設け、当該外筒とシリンダ10との間をリザーバとし、当該リザーバによってシリンダ10内に出入りするロッド体積を補償する複筒型の緩衝器として構成されてもよい。
本例の減衰力調整バルブVは、伸側室R1と圧側室R2を連通する主通路としての伸側主通路MPeと圧側主通路MPcを有する弁座部材としてのピストン11と、ピストン11に離着座して伸側主通路MPeと圧側主通路MPcをそれぞれ開閉する主弁としての伸側主弁Veと圧側主弁Vcと、伸側主弁Veの反伸側主通路側である背面に設けた伸側背圧室Ceと、圧側主弁Vcの反圧側主通路側である背面に設けた圧側背圧室Ccと、伸側主弁Veの伸側主通路側である正面と伸側背圧室Ceとを直接に連通する伸側圧力導入路Ieと、圧側主弁Vcの圧側主通路側である正面と圧側背圧室Ccとを直接に連通する圧側圧力導入路Icと、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を調整可能な圧力調整部1と、伸側圧力導入路Ieと圧力調整部1との間に設けられ伸側圧力導入路Ieから圧力調整部1への流体の流れのみを許容する伸側パイロット逆止弁Cieと、圧側圧力導入路Icと圧力調整部1との間に設けられ圧側圧力導入路Icから圧力調整部1への流体の流れのみを許容する圧側パイロット逆止弁Cicとを備えて構成されている。
また、本例の圧力調整部1は、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccとに連通する調整通路Pcと、調整通路Pcの途中に設けられ伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を制御する電磁圧力制御弁EVとを備えて構成される。
さらに、本例の減衰力調整バルブVは、調整通路Pcの下流を伸側室R1に連通するとともに調整通路Pcから伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側圧力排出通路Ecと、調整通路Pcの下流を圧側室R2に連通するとともに調整通路Pcから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側圧力排出通路Eeを備える。
そして、緩衝器Dが伸縮すると、伸側主通路MPeを通過する流体の流れに対しては伸側主弁Veで、圧側主通路MPcを通過する流体の流れに対しては圧側主弁Vcでそれぞれ抵抗を与えて緩衝器Dが減衰力を発揮するようになっている。
以下、本例の緩衝器Dの各部について詳細に説明する。ロッド12は、図1に示すように、ピストン11を保持する保持部材28と、一端が保持部材28に連結されて保持部材28とともに電磁圧力制御弁EVを収容する中空な収容部Lを形成するハウジング29と、一端がハウジング29に連結されるとともに他端がシリンダ10の上端から外方へ突出するロッド本体30とで形成されている。
保持部材28は、軸方向に延びる保持軸28aと、保持軸28aの図1中上端外周に設けたフランジ28bと、フランジ28bの図1中上端外周に設けた筒状のソケット28cとを備える。そして、保持部材28は、保持軸28aの先端から開口してソケット28c内に通じる縦孔28dと、保持軸28aの外周に軸方向に沿うように切り欠かれた縦溝28eと、保持軸28aのフランジ側外周端に設けられるとともに縦溝28eと通じる環状溝28fと、フランジ28bに設けられ環状溝28fとソケット28c内を連通させるポート28gを有する。さらに、フランジ28bの上端には、縦孔28dに通じる溝28hが形成されている。また、保持軸28aの図1中下端外周には、螺子部28iが設けられている。
ハウジング29は、有底筒状の収容筒部29aと、収容筒部29aよりも外径が小径であって当該収容筒部29aの頂部から図1中上方へ延びる筒状の連結部29bと、収容筒部29aの側方から開口して内部へ通じる透孔29cとを備えて構成される。そして、収容筒部29aの下端内周にソケット28cの外周を螺着すると、ハウジング29と保持部材28が一体化されるとともに、これらハウジング29と保持部材28とで収容筒部29a内に電磁圧力制御弁EVが収容される収容部Lが形成される。
また、保持部材28における縦孔28dは、先端側が大径になっており、この大径部分に環状の逆止弁弁座部材43が装着されている。そして、逆止弁弁座部材43が装着されると、逆止弁弁座部材43の内側と縦孔28dが連通する。
また、逆止弁弁座部材43の圧側室側端である図1中下端には、逆止弁体46が離着座可能に当接する環状弁座43aが形成されている。さらに、逆止弁弁座部材43よりも圧側室側であって保持軸28aの下端内周には、環状のばね受45が装着されている。そして、ばね受45と逆止弁体46との間には、逆止弁体46を逆止弁弁座部材43に向けて附勢するばね部材47が介装されている。
これらの逆止弁弁座部材43、逆止弁体46、ばね受45、ばね部材47により、保持軸28aの縦孔28d内には、圧側室R2から収容部Lへ向かる流体の流れを阻止するとともに収容部Lから圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁Ceeが構成されている。したがって、本例では、縦孔28dと逆止弁Ceeとで、収容部Lと圧側室R2を連通させる伸側圧力排出通路Eeが構成されている。
ロッド本体30は、筒状であって、図1中下端の内周が拡径されていてハウジング29の連結部29bの挿入を許容し、この連結部29bの螺着を可能とする螺子部(符示せず)を備えている。このように、ロッド本体30、ハウジング29および保持部材28を一体化すると、ロッド12が形成される。
なお、ロッド本体30内およびハウジング29における連結部29b内には、電磁圧力制御弁EVを駆動するソレノイドSolへ電力供給するハーネスHが挿通されており、ハーネスHの上端について図示はしないがロッド本体30の上端から外方へ伸びており、電源に接続される。
保持部材28の保持軸28aの外周には、図1,図2に示すように、ピストン11とともに、ピストン11の図1中上方に圧側弁組立体MVcが組み付けられ、ピストン11の図1下方に伸側弁組立体MVeが組み付けられており、これらがナットNによって保持軸28aに装着されている。ここで、保持軸28aの外周に軸方向に沿うように切り欠かれた縦溝28eと、保持軸28aの外周に組み付けられた圧側弁組立体MVc、ピストン11、伸側弁組立体MVeとで、環状溝28fとポート28gを介して収容部L内に連通する連通路44が構成される。なお、連通路44は、保持軸28aに収容部Lに連通する孔を設けて構成してもよい。ただし、本例のように、外周に縦溝28eを設けた保持軸28aの外周に圧側弁組立体MVc、ピストン11、伸側弁組立体MVeを組み付けて連通路44を構成した方が、前述のように孔を設けて連通路44を構成するよりも保持軸28aの強度上有利である。また、本例のように連通路44を構成した方が、連通路44を容易に構成できる。
ピストン11には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側主通路MPeと圧側主通路MPcとがそれぞれ周方向に複数設けられている。また、ピストン11の図中上端には、圧側主通路MPcに連通される環状窓11aと、環状窓11aの外周側に設けられて圧側主通路MPcを囲む環状の圧側弁座11bが設けられている。他方、ピストン11の図中下端には、伸側主通路MPeに連通される環状窓11cと、環状窓11cの外周側に設けられて伸側主通路MPeを囲む環状の伸側弁座11dが設けられている。
圧側弁組立体MVcは、圧側弁座11bに離着座して圧側主通路MPcを開閉する圧側主弁Vcと、圧側主弁Vcに当接する圧側スプールScと、環状であって外周に圧側スプールScが摺動自在に装着される圧側チャンバ部材13を備え、圧側主弁Vcと圧側スプールScと圧側チャンバ部材13とで圧側背圧室Ccを形成している。
具体的には、本例の圧側チャンバ部材13は、図2に示すように、保持軸28aの外周に嵌合される筒状のスペーサ14と、スペーサ14と保持部材28のフランジ28bとの間に挟持されるとともに保持軸28aに対して径方向に延びる環状底部15aと環状底部15aの外周端からピストン11側へ向けて延びる摺接筒15bを有するガイド部材15とを備えて構成されている。また、スペーサ14のガイド部材側端には切欠き14aが設けられており、スペーサ14とガイド部材15を組み付けると、図2に示すように、圧側背圧室Ccと連通路44を連通する通路が構成される。なお、圧側チャンバ部材13は、一部材で構成されてもよいが、本例のように、スペーサ14とガイド部材15の二部材に分けて構成した方が、複雑な圧側チャンバ部材13の形状を形成しやすい。
また、圧側スプールScは、摺接筒15bの外周に摺動自在に装着されており、図中下端が圧側主弁Vcの背面に当接している。
また、本例の圧側主弁Vcは、ピストン11に離着座するとともに圧側主通路MPcを開閉する環状の弁部16と、弁部16の内周端から反ピストン側へ向けて延びるとともにスペーサ14の外周に対して軸方向に摺動自在に装着される摺動筒部17を有する。これにより、本例の圧側主弁Vcは、全体がピストン11に対して軸方向に移動可能となっているため、軸方向にスライドして圧側主通路MPcを開閉する。
このように、本例では、圧側チャンバ部材13と圧側スプールScと圧側主弁Vcとに囲まれた部屋で圧側背圧室Ccが形成される。
したがって、本例では、圧側主弁Vcの背面側に設けられた圧側背圧室Ccの圧力によって圧側主弁Vcが附勢されるため、圧側主弁Vcの開弁圧は、圧側主弁Vcの背面側に設けられた圧側背圧室Ccの圧力によって決定される。
さらに、圧側主弁Vcの弁部16には、圧側主通路MPcと圧側背圧室Ccを連通する圧側圧力導入路Icが形成されており、本例の圧側圧力導入路Icは、通過する流体の流れに抵抗を与えるオリフィス通路とされている。また、本例の弁部16の背面側には、圧側圧力導入路Icが開口する環状溝22が形成されている。
また、弁部16の背面側に積層された環状板18と、摺動筒部17の図2中外周上端側に設けられた環状溝(符示せず)に装着された環状のばね受部材19と、ばね受部材19と環状板18との間に介装されたばね部材20とで圧側パイロット逆止弁Cicが構成されている。このように、本例では、圧側主弁Vcの背面に圧側圧力導入路Icから圧側背圧室Cc内への流体の流れのみを許容する圧側パイロット逆止弁Cicが設けられている。
なお、圧側パイロット逆止弁Cicの構成は本例の構成には限定されないが、本例のように圧側主弁Vcの背面に設けると、圧側主弁Vcと圧側パイロット逆止弁Cicを一体にできるため、構成がコンパクトになる。
また、図2に示すように、保持部材28のフランジ28bとガイド部材15との間には、圧側スプールScを圧側主弁Vcに向けて附勢する環状の板ばね21が設けられている。詳細には、環状の板ばね21は、フランジ28bの保持軸側端とガイド部材15の環状底部15aの内周端とで内周が挟持されるとともに、外周側が圧側スプールScの反圧側主弁側端に当接している。
そのため、圧側主弁Vcがピストン11から離座して、圧側スプールScがピストン11から離間する図2中上方へ押し上げられた状態となってから、圧側主弁Vcがピストン11に着座する状態になるときは、板ばね21のばね力で圧側スプールScも圧側主弁Vcに追従して速やかに元の位置に戻る。
なお、本例の保持部材28のフランジ28bの下端は、圧側弁組立体MVcから遠ざかるようにテーパしており、板ばね21の撓みを許容するようになっている。
また、本例では、圧側スプールScを附勢する附勢部材として板ばね21を採用しているため、附勢部材としてコイルばねを利用する場合に比べて圧側弁組立体MVcの軸方向長さを短くできる。
他方、伸側弁組立体MVeは、伸側弁座11dに離着座して伸側主通路MPeを開閉する伸側主弁Veと、伸側主弁Veに当接する伸側スプールSeと、環状であって外周に伸側スプールSeが摺動自在に装着される伸側チャンバ部材31を備え、伸側主弁Veと伸側スプールSeと伸側チャンバ部材31とで伸側背圧室Ceを形成している。
具体的には、本例の伸側チャンバ部材31は、図2に示すように、保持軸28aの外周に嵌合される筒状のスペーサ32と、スペーサ32とナットNとの間に挟持されるとともに保持軸28aに対して径方向に延びる環状底部33aと環状底部33aの外周端からピストン11側へ向けて延びる摺接筒33bを有するガイド部材33とを備えて構成されている。また、スペーサ32のガイド部材側端には切欠き32aが設けられており、スペーサ32とガイド部材33を組み付けると、図2に示すように、圧側背圧室Ccと連通路44を連通する通路が構成される。なお、伸側チャンバ部材31は、一部材で構成されてもよいが、本例のように、スペーサ32とガイド部材33の二部材に分けて構成した方が、複雑な圧側チャンバ部材31の形状を形成しやすい。
また、伸側スプールSeは、摺接筒33bの外周に摺動自在に装着されており、図中上端が伸側主弁Veの背面に当接している。
また、本例の伸側主弁Veは、ピストン11に離着座するとともに伸側主通路MPeを開閉する弁部35と、弁部35の内周端から反ピストン側へ向けて延びるとともにスペーサ32の外周に対して軸方向に摺動自在に装着される摺動筒部36を有する。これにより、本例の伸側主弁Veは、全体がピストン11に対して軸方向に移動可能となっているため、軸方向にスライドして伸側主通路MPeを開閉する。
このように、本例では、伸側チャンバ部材31と伸側スプールSeと伸側主弁Veとに囲まれた部屋で伸側背圧室Ceが形成される。
したがって、本例では、伸側主弁Veの背面側に設けられた伸側背圧室Ceの圧力によって伸側主弁Veが附勢されるため、伸側主弁Veの開弁圧は、伸側主弁Veの背面側に設けられた伸側背圧室Ceの圧力によって決定される。
さらに、伸側主弁Veの弁部35には、伸側主通路MPeと伸側背圧室Ceを連通する伸側圧力導入路Ieが形成されており、本例の伸側圧力導入路Ieは、通過する流体の流れに抵抗を与えるオリフィス通路とされている。また、本例の弁部35の背面側には、伸側圧力導入路Ieが開口する環状溝23が形成されている。
また、弁部35の背面側に積層された環状板37と、摺動筒部36の図2中外周下端側に設けられた環状溝(符示せず)に装着された環状のばね受部材38と、ばね受部材38と環状板37との間に介装されたばね部材39とで伸側パイロット逆止弁Cieが構成されている。このように、本例では、伸側主弁Veの背面に伸側圧力導入路Ieから伸側背圧室Ce内への流体の流れのみを許容する伸側パイロット逆止弁Cieが設けられている。
なお、伸側パイロット逆止弁Cieの構成は本例の構成には限定されないが、本例のように伸側主弁Veの背面に設けると、伸側主弁Veと伸側パイロット逆止弁Cieを一体にできるため、構成がコンパクトになる。
また、図2に示すように、ナットNとガイド部材33との間には、伸側スプールSeを伸側主弁Veに向けて附勢する環状の板ばね34が設けられている。詳細には、環状の板ばね34は、ナットNとガイド部材33の環状底部33aの内周端とで内周が挟持されるとともに、外周側が伸側スプールSeの反伸側主弁側端に当接している。
そのため、伸側主弁Veがピストン11から離座して、伸側スプールSeがピストン11から離間する図1中下方へ押し下げられた状態となってから、伸側主弁Veがピストン11に着座する状態になるときは、板ばね34のばね力で伸側スプールSeも伸側主弁Veに追従して速やかに元の位置に戻る。
また、本例のピストン11の伸側室側に設けられた環状窓11aの開口面積は、ピストン11の圧側室側に設けられた環状窓11cの開口面積よりも大きくなるように形成されている。ここで、各環状窓11a,11cの開口面積はそれぞれ伸側主弁Veと圧側主弁Vcの正面側に作用する圧力の受圧面積になる。そのため、緩衝器Dの伸縮速度が同じである場合、緩衝器Dの収縮作動時に圧側主弁Vcの正面に作用する荷重が、伸長作動時に伸側主弁Veの正面に作用する荷重よりも小さくなる。よって、本例では、伸側背圧室Ceの圧力と圧側背圧室Ccの圧力が等圧である場合には、伸側主弁Veの方が圧側主弁Vcよりも開弁圧が高くなる。
また、本例では、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの下流側に、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を調整可能な圧力調整部1が設けられており、電磁圧力制御弁EVによって伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力が制御されている。したがって、電磁圧力制御弁EVによって伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を制御する際に、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力が等圧であっても、伸側主弁Veの開弁圧を圧側主弁Vcの開弁圧よりも高くできる。よって、緩衝器Dの伸長作動時における減衰力を大きくしたい場合であっても、電磁圧力制御弁EVで制御すべき最大圧力を低くできる。
なお、各背圧室Ce,Ccの圧力が等圧である場合に緩衝器Dの伸長作動時における減衰力を大きくするには、伸側主弁Veの背面側に作用する圧力の受圧面積を圧側主弁Vcの背面側に作用する圧力の受圧面積よりも小さくするようにしてもよい。
ただし、このようにするには、伸側背圧室Ceを形成する伸側チャンバ部材31のガイド部材33及び伸側スプールSeを、圧側背圧室Ccを形成する圧側チャンバ部材13のガイド部材15と圧側スプールScよりも小径に形成する必要がある。
対して、本例のように、ピストン11に設けた各環状窓11a,11cの開口面積に差をつけて、各背圧室Ce,Ccの圧力が等圧であっても、伸側減衰力を大きくする場合には、各背圧室Ce,Ccを形成する各チャンバ部材31,13及び各スプールSe,Scについて同じものを利用できる。したがって、本例では、減衰力調整バルブVの部品の種類を削減できる。
続いて、本例の圧力調整部1について詳細に説明する。本例の圧力調整部1は、前述したように、伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccとに連通する調整通路Pcと、調整通路Pcの途中に設けられ伸側背圧室Ceと圧側背圧室Ccの圧力を制御する電磁圧力制御弁EVとを備えて構成される。
図3に示すように、電磁圧力制御弁EVは、収容部Lに収容されるとともに、弁収容筒50aと制御弁弁座50cを有する制御弁弁座部材50と、制御弁弁座50cに離着座する電磁弁弁体51と、電磁弁弁体51に推力を与えこれを軸方向に駆動するソレノイドSolとを備えて構成される。
具体的には、制御弁弁座部材50は、保持部材28のフランジ28bの図3中上端に積層される環状のバルブハウジング52の内周に弁収容筒50aが挿入されて径方向へ位置決められつつ、収容部L内に収容される。また、制御弁弁座部材50は、電磁弁弁体51が摺動自在に挿入される有底筒状の弁収容筒50aと、弁収容筒50aの図中上端外周に連なるフランジ50bと、フランジ50bの図中上端から軸方向へ向けて突出する環状の制御弁弁座50cと、フランジ50bの制御弁弁座50cよりも内周側から開口して内外を連通する透孔50dと、フランジ50bの外周から図中上向きに立ち上がる大径筒部50eと、大径筒部50eに設けられ内外を連通するポート50fとを備えて構成されている。
また、図3に示すように、弁収容筒50aの外周には、環状のリーフバルブ60が装着されている。そして、弁収容筒50aをバルブハウジング52に挿入して制御弁弁座部材50をバルブハウジング52に組み付けると、リーフバルブ60の内周が制御弁弁座部材50のフランジ50bとバルブハウジング52の図中上端に設けられた環状支持部52bとで挟持されて固定される。また、リーフバルブ60は、制御弁弁座部材50の大径筒部50eの下端に着座して、外周側でポート50fを閉塞している。また、バルブハウジング52の環状支持部52bの外周側は制御弁弁座部材50から遠ざかるようにテーパしているため、リーフバルブ60の撓みが許容されるようになっている。
これにより、本例のリーフバルブ60は、ポート50fを通じてリーフバルブ60に作用する圧力が開弁圧に達すると撓んで開弁するようになっており、リーフバルブ60と制御弁弁座部材50とで、ポート50fを通過する流体に所定の抵抗を与えるフェール弁FVが構成されている。したがって、本例のフェール弁FVは、電磁圧力制御弁EVと直列に配置されている。
また、バルブハウジング52は、保持部材28に設けられたポート28gと制御弁弁座部材50に設けられた透孔50dとを連通するポート52aを有している。
また、図3に示すように、収容部L内には、外周がソケット28c内に嵌合されるとともに内周が制御弁弁座部材50の大径筒部50eに嵌合される環状の圧側排出通路形成部材40が設けられている。圧側排出通路形成部材40は、外周がソケット28c内に嵌合され内周が制御弁弁座部材50の大径筒部50eに嵌合される環状の嵌合部40aと、嵌合部40aの内周側から図3中上向きに立ち上がり先端が内周方向に突出して大径筒部50eに積層されるフランジ部40bとを備えて構成されている。そして、フランジ部40bは、内周側図中上端に、先端が内周側に突出する環状のシート部40cを有する。
圧側排出通路形成部材40の図1,3中上方には、本例のソレノイドSolが、収容されており、ソレノイドSolの磁路の一部を形成する環状の固定鉄心55の下端内周部と圧側排出通路形成部材40のフランジ部40bが当接している。
また、フランジ部40bの上端には、フランジ部40bの径方向に沿って延びるとともに大径筒部50eの内部に連通する横溝40dが設けられている。また、フランジ部40bの大径筒部50eに積層している部分よりも外周側には、横溝40dに連通するとともにフランジ部40bを軸方向に貫通する縦孔40eが設けられている。
これにより、連通路44、環状溝28f、ポート28g、ポート52a、透孔50d、横溝40d、縦孔40eが連通して、調整通路Pcを構成するようになっている。
また、嵌合部40aには、収容部Lと外部とを連通する貫通孔41が設けられている。さらに、嵌合部40aの図2中上端には、環状板42が装着されており、この環状板42と、環状板42とソレノイドSolの固定鉄心55の下端外周部との間に介装されたばね部材48によって、貫通孔41を開閉する逆止弁Cecが構成されている。
そして、ハウジング29に保持部材28が一体化されると、ハウジング29に設けられた透孔29cが嵌合部40aの上端に対向して、貫通孔41とともに収容部Lを伸側室R1に連通させる圧側圧力排出通路Ecを構成するようになっている。加えて、逆止弁Cecは、収容部L内から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容するようになっている。よって、圧側圧力排出通路Ecは、貫通孔41、透孔29cによって形成され、途中に収容部L内から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁Cecを備えてなる。
戻って、電磁弁弁体51は、弁収容筒50a内に摺動自在に挿入される小径部51aと、小径部51aよりも大径であって小径部51aの図中上方側である反弁座部材側に設けられる大径部51bと、大径部51bの反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部51cを備えて構成される。
そして、電磁弁弁体51が制御弁弁座部材50に対して軸方向へ移動すると、大径部51bの図3中下端が、制御弁弁座50cに離着座するようになっている。
また、電磁弁弁体51が制御弁弁座50cに着座した状態では、透孔50dと横溝40dの連通が阻止される。そして、電磁圧力制御弁EVは、電磁圧力制御弁EVの上流の圧力が電磁圧力制御弁EVの開弁圧を上回ると開弁し、開弁圧を下回ると閉弁するため、電磁圧力制御弁EVの上流の圧力は開弁圧に制御される。
反対に、制御弁弁体51が制御弁弁座50cから最大限後退した状態では、図3に示すように、ばね受部51cの外周端が圧側排出通路形成部材40のシート部40cに着座して、横溝40dの電磁弁弁体側の開口が閉塞される。この場合には、電磁圧力制御弁EVの上流の圧力がフェール弁FVの開弁圧を上回るとフェール弁FVが開弁し、透孔50dからポート50fを介して収容部Lへ液体が流れる。そのため、電磁圧力制御弁EVの上流の圧力は、フェール弁FVの開弁圧に制御される。
また、制御弁弁座部材50のフランジ50bとばね受部51cとの間には、電磁弁弁体51を制御弁弁座部材50から離間する方向へ附勢するばねEVsが介装されている。そして、本例のソレノイドSolは、通電されると当該ばねEVsの附勢力に対向する推力を発揮する。したがって、電磁弁弁体51は、ばねEVsによって常に制御弁弁座部材50から離間する方向へ附勢されており、ソレノイドSolからのばねEVsに対抗する推力が作用しないと、制御弁弁座部材50から最も離間する位置に位置決められる。なお、本例では、ばねEVsを利用して、電磁弁弁体51を制御弁弁座部材50から離間させる方向へ附勢するようにしているが、ばねEVs以外にも附勢力を発揮できる弾性体を使用できる。
そして、ソレノイドSolの推力を調節すると、電磁弁弁体51が制御弁弁座部材50へ押し付けられる附勢力が調節されて、電磁弁弁体51の大径部51bが制御弁弁座50cから離座する開弁圧が制御される。
したがって、電磁圧力制御弁EVの上流の圧力の作用とばねEVsによる電磁弁弁体51を押し上げる力がソレノイドSolによる電磁弁弁体51を押し下げる力を上回ると電磁圧力制御弁EVが開弁して、電磁圧力制御弁EVの上流側の圧力をソレノイドSolの推力に応じて制御できる。
そして、電磁圧力制御弁EVの上流は、調整通路Pcを介して伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccに通じているので、この電磁圧力制御弁EVによって伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力を同時に制御できる。
また、電磁圧力制御弁EVの下流は、横溝40dと縦孔40eと収容部Lを介して伸側圧力排出通路Eeおよび圧側圧力排出通路Ecに通じている。そのため、電磁圧力制御弁EVを通過した流体は、緩衝器Dの伸長作動時には伸側圧力排出通路Eeを通って低圧側の圧側室R2へ、緩衝器Dの収縮作動時には圧側圧力排出通路Ecを通って低圧側の伸側室R1へ排出される。
また、前述したように、本例のフェール弁FVは、電磁圧力制御弁EVと直列に配置されている。ここで、本例の電磁圧力制御弁EVは、ソレノイドSolへ通電できないフェール時には、ばねEVsによって電磁弁弁体51が制御弁弁座部材50から最大限後退した状態になるが、前述したように電磁圧力制御弁EVと直列にフェール弁FVが配置されている。そのため、フェール時にはフェール弁FVが流体の流れに抵抗を与える。よって、フェール時には、伸側背圧室Ce及び圧側背圧室Ccの圧力は、フェール弁FVの開弁圧に制御される。
したがって、本例の減衰力調整バルブVでは、フェール時においては、伸側背圧室Ceおよび圧側背圧室Ccの圧力はフェール弁FVにより制御される。
さらに、制御弁弁座部材50の大径筒部50eの図1中上方にはハウジング29内に収容されるソレノイドSolが配置されている。そのため、ハウジング29に保持部材28を螺着して一体化する際には、図1に示すように、バルブハウジング52、制御弁弁座部材50、圧側排出通路形成部材40およびソレノイドSolがハウジング29と保持部材28に挟持されて固定される。
続いて、緩衝器Dの作動について説明する。緩衝器Dが伸長してピストン11が図1中上方に移動すると、流体は伸側主弁Veを押し上げて伸側主通路MPeを通過して、圧縮される伸側室R1から拡大される圧側室R2へ移動する。すると、緩衝器Dは、伸側主弁Veの開弁圧に基づく伸側減衰力を発揮する。
また、伸側主弁Veには伸側背圧室Ceに直接連通する伸側圧力導入路Ieが設けられているため、緩衝器Dの伸長時には、伸側室R1内の流体が伸側パイロット逆止弁Cieを押し開いて伸側圧力導入路Ieを通って伸側背圧室Ceに直接流入する。なお、本例の伸側圧力導入路Ieは、オリフィス通路とされているため、伸側室R1の圧力と伸側背圧室Ceの圧力との間に差圧が生じる。そのため、本例の伸側主弁Veは、この差圧が伸側主弁Veの開弁圧を上回ると、開弁する。
さらに、伸側背圧室Ceは、切欠き32aを介して調整通路Pcに連通されているため、伸側圧力導入路Ieを介して伸側背圧室Ce内に流入した流体は、調整通路Pcを通過して逆止弁Ceeを押し開いて伸側圧力排出通路Eeを介して低圧側の圧側室R2へ排出される。
この際、調整通路Pcには、前記したように電磁圧力制御弁EVが設けられているため、ソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、伸側主弁Veを附勢する伸側背圧室Ce内の圧力を調整できる。したがって、本例の緩衝器Dでは、電磁圧力制御弁EVによって伸側主弁Veの開弁圧を制御でき、緩衝器Dの伸長作動を行う際の伸側減衰力を制御できる。
ここで、本例の圧側圧力導入路Icと圧側背圧室Ccの間には、圧側パイロット逆止弁Cicが設けられているため、圧側圧力導入路Icを通って圧側室R2に圧力が逃げてしまわないようになっている。
なお、前記切欠き32aは通過する流体の流れに極力抵抗を与えない大きさに形成されており、圧力の伝播の妨げにならないようになっている。
逆に、緩衝器Dが収縮してピストン11が図1中下方へ移動すると、流体は圧側主弁Vcを押し上げて圧側主通路MPcを通過して、圧縮される圧側室R2から拡大される伸側室R1へ移動する。すると、緩衝器Dは、圧側主弁Vcの開弁圧に基づく圧側減衰力を発揮する。
また、圧側主弁Vcには圧側背圧室Ccに直接連通する圧側圧力導入路Icが設けられているため、緩衝器Dの収縮時には、圧側室R2内の流体が圧側パイロット逆止弁Cicを押し開いて圧側圧力導入路Icを通って圧側背圧室Ccに直接流入する。なお、本例の圧側圧力導入路Icは、オリフィス通路とされているため、圧側室R2の圧力と圧側背圧室Ccの圧力との間に差圧が生じる。そのため、本例の圧側主弁Vcは、この差圧が圧側主弁Vcの開弁圧を上回ると、開弁する。
さらに、圧側背圧室Ccは、切欠き14aを介して調整通路Pcに連通されているため、圧側圧力導入路Icを介して圧側背圧室Cc内に流入した流体は、調整通路Pcを通過して逆止弁Cecを押し開いて圧側圧力排出通路Ecを介して低圧側の伸側室R1へ排出される。
この際、調整通路Pcには、前記したように電磁圧力制御弁EVが設けられているため、ソレノイドSolに通電して、調整通路Pcの上流側の圧力を制御してやれば、圧側主弁Vcを附勢する圧側背圧室Cc内の圧力を調整できる。したがって、本例の緩衝器Dでは、電磁圧力制御弁EVによって圧側主弁Vcの開弁圧を制御でき、緩衝器Dの収縮作動を行う際の圧側減衰力を制御できる。
よって、本例の緩衝器Dにおいては、一つの圧力調整部1で、緩衝器Dの伸側減衰力と圧側減衰力を制御できるようになっている。
ここで、本例の伸側圧力導入路Ieと伸側背圧室Ceの間には、伸側パイロット逆止弁Cieが設けられているため、伸側圧力導入路Ieを通って伸側室R1に圧力が逃げてしまわないようになっている。
なお、前記切欠き14aは通過する流体の流れに極力抵抗を与えない大きさに形成されており、圧力の伝播の妨げにならないようになっている。
本例の緩衝器Dは、各主弁Ve,Vcの各主通路MPe,MPc側と各背圧室Ce,Ccとを直接に連通する各圧力導入路Ie,Icを備える。これにより、本例では、背圧室Ce,Ccに伸側室R1または圧側室R2の圧力が直接導入されるため、伸側室R1または圧側室R2から伸側背圧室Ceまたは圧側背圧室Ccまでの容積が従来の緩衝器よりも小さくなり、圧力の伝播に遅れが生じない。したがって、圧力調整部1が各背圧室Ce,Ccの圧力を制御する際に、各背圧室Ce,Ccの圧力が制御圧になるまでの時間が短くなって、緩衝器Dの減衰力の応答性が向上する。
また、伸側室R1または圧側室R2から伸側背圧室Ceまたは圧側背圧室Ccまでの容積が非常に小さくなるため、各圧力導入路Ie,Icから各背圧室Ce,Ccへ流入する流量が少なくて済む。したがって、圧力導入路Ie,Icの径を小さくできるため、各主通路MPe,MPcを流れる流体の流量も少なくならず、圧力導入路Ie,Icによってダンピングも効かせられるので、主弁Ve,Vcの振動を抑制できる。
よって、本例の緩衝器Dでは、減衰力の応答性の向上と、主弁Ve,Vcの振動の抑制を両立できる。
なお、本例のパイロット逆止弁Cie,Cicは、圧力導入路Ie,Icと背圧室Ce,Ccの間に設けられているが、これらのパイロット逆止弁Cie,Cicは、圧力導入路Ie,Icと圧力調整部1の間に設けられていれば足りる。そのため、背圧室Ce,Ccと連通路44の間にパイロット逆止弁Cie,Cicが設けられてもよい。
また、本例の各圧力導入路Ie,Icが、各主弁Ve,Vcに設けられるオリフィス通路であって、各主弁Ve,Vcの背面にそれぞれ当該オリフィス通路を開閉するパイロット逆止弁Cie,Cicを設けている。本例のように、各主弁Ve,Vcにそれぞれ圧力導入路Ie,Icを設けるようにすると、各主弁Ve,Vcの正面から各背圧室Ce,Ccへ圧力を直接導入できる圧力導入路Ie,Icを容易に設けられる。
ただし、圧力導入路Ie,Icは、主弁Ve,Vc以外に設けられてもよく、例えば、チャンバ部材31,13に設けてもよい。
また、本例では、各主弁Ve,Vcに各圧力導入路Ie,Icの背圧室側端が開口する環状溝23,22がそれぞれ形成されている。この構成によると、圧力導入路Ie,Icを介して各背圧室Ce,ccに圧力が導入される際には、環状溝23,22の面積が各パイロット逆止弁Cie,Cicを押圧する受圧面積となる。したがって、圧力導入路Ie,Icの径を受圧面積とするよりも受圧面積を大きく確保できるため、パイロット逆止弁Cie,Cicを押圧する力が強くなり、背圧室Ce,Ccにスムーズに圧力が導入される。よって、背圧室Ce,Ccに圧力が制御圧になるまでの時間がより短くなるので、緩衝器Dの減衰力の応答性がさらに向上する。
なお、本例では、主弁Ve,Vcに環状溝23,22を設けているが、主弁Ve,Vc以外に設けられてもよい。
例えば、図4に示すように、各パイロット逆止弁Cic,Cieにおける環状板18,37と、各主弁Vc,Veにおける弁部16,35との間に、各圧力導入路Ic,Ieに臨む開口窓24a,25aを有する環状の間座24,25を設けるようにしてもよい。
また、主弁Ve,Vcは、圧力割れを防止するために、緩衝器Dが勢いよく伸縮しても圧力割れを起こさない程度に剛性を高くする必要がある。ところが、主弁Ve,Vcとして撓んで開くリーフバルブのような弁体を利用する場合には、剛性を高くすると流体が主弁Ve,Vcを通過する際に生じる抵抗が高くなるため、ソフト減衰力が高くなってしまう。
これに対して、本例の主弁Ve,Vcのように、主弁Ve,Vc全体が、弁座部材としてのピストン11に対して軸方向に移動して、各主通路MPe,Mpcを開閉するバルブを利用すると、主弁Ve,Vcの剛性を高くしても流体が主弁Ve,Vcを通過する際に生じる抵抗が変わらない。したがって、本例の主弁Ve,Vcでは、撓んで開くリーフバルブのような弁体を利用する場合に比べてソフト減衰力を低くでき、緩衝器Dにおける減衰力の可変幅が大きくなる。
ただし、主弁Ve,Vcは、本例の構成には限定されず、主弁Ve,Vcをリーフバルブとして、当該リーフバルブに圧力導入路Ie,Icを設けるようにしてもよい。
また、本例の各背圧室Ce,Ccは、環状の各チャンバ部材31,13と、各チャンバ部材31,13の外周に摺動自在に装着されるとともに各主弁Ve,Vcの背面に当接する環状の各スプールSe,Scと、主弁Ve,Vcとに囲まれて形成されている。
このようにすると、主弁Ve,Vcの背面に当接するスプールSe,Scをチャンバ部材31,13の内周に摺動自在に装着する場合に比べて、チャンバ部材31,13の摺接筒15bの内径と外径の差分だけ主弁Ve,Vcにおける背圧室側の受圧面積を大きく確保できる。したがって、本例では、スプールSe,Scをチャンバ部材31,13の内周に摺動自在に装着する場合に比べて、緩衝器Dにおけるハード減衰力を高くできるため、減衰力の可変幅が大きくなる。
さらに、スプールSe,Scが摺接する摺接面の加工は特に精度が求められるが、本例では、スプールSe,Scの摺接面がチャンバ部材31,13の外周になるため、摺接面がチャンバ部材31,13の内周に設けられる場合に比べて、摺接面の加工が容易になる。
また、図示しないが、本例の減衰力調整バルブVにおいては、各パイロット逆止弁Cie,Cicと並列に配置され、極微流量の流体の通過のみを許容するバイパス路を設けてもよい。この構成によると、緩衝器Dが、伸長行程から収縮行程あるいは収縮行程から伸長行程に切り替わる際に、圧力が導入される背圧室と反対側の背圧室の圧力がバイパス路を介して漏れる。したがって、緩衝器Dが勢いよく伸縮して、一方側の背圧室の圧力が瞬間的に圧力調整部1の設定圧よりも高くなってしまったとしても、他方側の背圧室から圧力を逃がせるため、素早く背圧室の圧力を圧力調整部1の設定圧にできる。
なお、前記バイパス路を設けた場合であっても、緩衝器Dの伸長行程時には、伸側室R1の圧力が伸側背圧室Ceの圧力よりも高圧になるため、伸側背圧室Ceの圧力がバイパス路を介して伸側室R1へ漏れる恐れはない。緩衝器Dの収縮行程でも同様に、圧側室R2の圧力が圧側背圧室Ccの圧力よりも高圧になるため、圧側背圧室Ccの圧力がバイパス路を介して圧側室R2へ漏れる恐れはない。
また、本例の緩衝器Dでは、減衰力調整バルブVをピストン部に実現しているが、例えば、シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともに前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、前記シリンダを収容するとともに前記シリンダとの間にリザーバを形成する外筒と、前記伸側室と前記リザーバを連通する排出通路を備え、流体が前記圧側室、前記伸側室、前記リザーバを順に一方向で循環するユニフロー型の緩衝器における前記排出通路の途中に本例の減衰力調整バルブを設けてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。