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JP2019077930A - 硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料、その製造方法およびその材料を用いた耐食耐摩耗部品 - Google Patents

硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料、その製造方法およびその材料を用いた耐食耐摩耗部品 Download PDF

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JP2019077930A
JP2019077930A JP2017207430A JP2017207430A JP2019077930A JP 2019077930 A JP2019077930 A JP 2019077930A JP 2017207430 A JP2017207430 A JP 2017207430A JP 2017207430 A JP2017207430 A JP 2017207430A JP 2019077930 A JP2019077930 A JP 2019077930A
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宏季 田中
Hiroki Tanaka
宏季 田中
正貴 大坪
Masaki Otsubo
正貴 大坪
寛人 下村
Hiroto Shimomura
寛人 下村
泰幸 金野
Yasuyuki Konno
泰幸 金野
隆幸 高杉
Takayuki Takasugi
隆幸 高杉
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Abstract

【課題】ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型および耐食耐摩耗工具等に使用するのに適した耐食性、耐摩耗性材料とその製造方法を提供する。【解決手段】Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質粉末(第一相)と、75at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)を含み前記硬質粉末の結合材料となる材料(第二相)とを混合して混合粉末または合金粉末を作製し、この混合粉末または合金粉末に圧力を付与した状態で加熱し焼結することにより、前記第一相を35vol%〜80vol%、前記第二相を20vol%〜65vol%含有する硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料、その製造方法およびその材料を用いた耐食耐摩耗部品に関する。
ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型および耐食耐摩耗工具等の材料として、高硬度で耐食性、耐摩耗性に優れるWC−Ni系の超硬材料が使用されている。
しかし、海水を含む使用環境や、酸性水溶液中での耐食性は十分とは言えず、その適用範囲はごく狭い範囲に限定されている。
ここで、耐食性に優れる材料として、Ni(Si, Ti) 系金属間化合物が開発されており(特許文献1、2および非特許文献1〜4)、Ni(Si, Ti)合金の塩酸、硫酸、硝酸等に対する耐腐食性がステンレスやNiとの比較で示されているが、Ni(Si, Ti)単体では、超硬材料が適用される耐食耐摩耗部材の代用としては硬さが低く、耐摩耗性が十分では無かった。
また、耐食性、耐摩耗性の問題点を解決すべく特許文献3では、Ni(Si, Ti)とTi系硬質材料(炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物および硼化物)とを組み合わせた材料が提案されている。TiCが10〜90vol%、好ましくは10〜60vol%含まれた、高温特性に優れる材料として、Ti系硬質材料とNi(Si, Ti)相比が広範に記載されている。
しかし、TiC等の硬質材料と比較するとNi(Si, Ti)相は腐食されやすく、また、室温近辺での使用においては、Ni(Si, Ti)相比が多いと、材料そのものの硬度が不足し、摩耗による消耗が激しく、耐食性・耐摩耗性の点で十分な材料では無かった。
公開平3−274242 特開平5−320794 特開2014−169471
Sanat Wagle et al., Corrosion Science 53 (2011), 2514-2517 Gadang Priyotomo et al., Applied Surface Science 257 (2011), 8268-8274 Sanat Wagle et al., Corrosion Science 55 (2012), 140-144 Gadang Priyotomo et al., Corrosion Science 60 (2012), 10-17
前記のように、ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型および耐食耐摩耗工具等の材料として、高硬度で耐食性、耐摩耗性に優れるWC−Ni系の超硬材料が利用されている。
このWC−Ni系超硬材料は、WC−Co系超硬材料よりも耐食性が優れるものの、海水を含んだ環境、例えば河川の河口近くとなる汽水域での耐食性や、酸性溶液を含んだ被加工物の加工において、腐食摩耗が課題であった。
そこで本発明は、ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型および耐食耐摩耗工具等に使用するのに適した耐食性、耐摩耗性材料とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1にかかる硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料は、第一相が、Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質相であり、第二相が、75at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)とを含んでなり、この第二相は、主に結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなり、硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料の中に、第一相が35vol%〜80vol%、第二相が20vol%〜65vol%含有されていることを特徴とする。
本発明の態様2は、態様1に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料において、前記第二相が、更にボロン(B)を含み、Ni(Si, Ti)金属間化合物相の質量に対して10mass ppm〜1000mass ppmを含有することを特徴とする。
本発明の態様3は、態様1に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料を製造する方法であって、Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質粉末と、75at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)を含み前記硬質粉末の結合材料となる材料とを混合して、混合粉末または合金粉末を作製する混合工程と、前記混合工程で作製した混合粉末または合金粉末に圧力を付与した状態で、加熱し焼結する焼結工程とを含むことを特徴とする。
本発明の態様4は、態様3に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料を製造する方法において、前記混合工程で、更にボロン(B)を、前記結合材料となる材料の質量に対して10mass ppm〜1000mass ppmを添加することを特徴とする。
本発明の態様5にかかる摺動部品は、態様1または態様2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする。
本発明の態様6にかかる金型は、態様1または態様2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする。
本発明の態様7にかかる工具は、態様1または態様2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする。
従来のWC−Ni系超硬材料よりも耐食耐摩耗性に優れる材料ならびに、これを使用した摺動部品、金型、工具あるいはその他の部材を提供することができる。
本発明のWC-Ni3(Si,Ti)系材料中の金属間化合物Ni3(Si, Ti)の体積百分率と硬度との関係を示す図である。 本発明のWC-Ni3(Si,Ti)系材料中のNi3(Si,Ti)の体積百分率とIF法(Indentation Fracture法)による破壊靭性値との関係を示す図である。 腐食試験で得られた各材料の腐食速度(g/m/day)の結果を示す図である。 本発明の(Ti,Mo)(C,N)-Ni3(Si,Ti)材料中のNi3(Si,Ti)の体積百分率と硬さとの関係を示す図である。 本発明の(Ti,Mo)(C,N)−Ni3(Si,Ti)材料中のNi3(Si,Ti)の体積百分率とIF法による破壊靭性値との関係を示す図である。 腐食試験で得られた各材料の腐食速度(g/m/day)の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
先ず、本明細書で用いるいくつかの用語や測定方法等について説明する。
「Ti、Moの固溶体および/もしくはW」とは、「Ti、Mo、Wの固溶体」、「Ti、Moの固溶体」または「W」を表す。
「硬質相」については、本発明の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料の複合材料としてのHV硬さが、相手材にもよるが耐摩耗性が要求されるシールリング等の摺動製品では少なくとも800kgf/mm2以上となるような硬さの硬質相であればよい。
「第二相が主に結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなる」とは、75at%〜85at%のニッケル(Ni)と、8at%〜13at%のシリコン(Si)と、3at%〜13at%のチタン(Ti)とを含んでなる第二相のうち、その大半(少なくとも体積比で50%以上、好ましくは体積比で80%以上)は、結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなるものの、これ以外のNi16TiSi等の化合物が一部形成される場合があるため、このような記載とした。
第二相あるいはNi(Si,Ti)金属間化合物の体積百分率については、視野が100μm×100μm以上の断面組織観察(光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察、EPMA)において、画像解析等により平均面積百分率=体積百分率の関係式より求める。
Ni(Si,Ti)金属間化合物は、L1型の結晶構造を有する限り、原子比でNiの量と、SiおよびTiの合計量との比率が3:1である化学量論組成にある場合だけでなく、化学量論組成から外れた組成を有していてもよい。
「Ni基(ニッケル基)」とは、含有されるそれぞれの元素の中でNiの量が最も多いことを意味し、好ましくは原子比(at%)で50%以上のNiを含み、より好ましくは原子比(at%)で60%以上のNiを含む。
以下、本発明の実施形態を詳述する。
本発明にかかる複合焼結材料の製造方法では、加圧下で焼結を行う焼結法を用いることを特徴の一つとしており、焼結の前に所定の組成を有する焼結用粉末を作製する。
この焼結用粉末には、硬質相である第一相を形成する材料と、金属間化合物を主相とする第二相を形成する材料とが含まれている。
第二相を形成する材料について、例えば、Ni粉末、Si粉末、Ti粉末、必要に応じてB粉末などの元素粉末を原料粉末としてもよいし、これらを予め所定の組成を有する溶湯(溶融合金)をアトマイズする等により得た合金粉末であってもよい。さらには、元素粉末と合金粉末とを混合した混合粉末であってもよい。
また、第一相となる硬質相については、例えば、市販の10μm未満である、WC粉末、あるいは(Ti,Mo)(C、N)粉末等を原料粉末として使用すればよい。
混合粉末を得る際の原料粉末の混合は、乳鉢と乳棒等当該技術分野で用いられる任意の方法を用いてよいが、好ましくはボールミル、アトライター、ビーズミルといった粉砕効果が高く、かつ均一な粉末分散・混合ができる方法を用いて混合する。
なお、混合溶媒としてはアルコールを用いて湿式混合することができる。
焼結用粉末の組成は、後述する焼結後またはその後必要に応じて適宜実施する熱処理後の第一相と第二相を組み合わせた組成と実質的に同じである。
すなわち、ここで焼結用粉末の組成を規定することは、焼結体の主相の組成を規定することである。
したがって、焼結用粉末(主相)の組成は、Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質相を第一相として35vol%〜80vol%含み、75at%〜85at%のニッケル(Ni)と、8at%〜13at%のシリコン(Si)と、3at%〜13at%のチタン(Ti)と、または更にボロン(B)を前記結合材料として形成されるNi(Si, Ti)金属間化合物相の質量に対して10mass ppm〜1000mass ppmを含んでなる第二相を20vol%〜65vol%含む。
残部は、不可避不純物からなる。
なお、ボロン(B)粉末については、硬さ、強度、靱性、耐酸化性、耐食性を向上させるため、特に多結晶体における粒界割れ抑制に効果があるので必要に応じ添加するが、Ni(Si, Ti)金属間化合物相の質量に対して10mass ppm未満では、硬さ、強度、靱性、耐酸化性、耐食性、粒界割れ抑制の向上は図れない、1000mass ppmより多くなると靱性や焼結性が低下するので、Ni(Si, Ti)金属間化合物相の質量に対して10mass ppm以上1000mass ppm以下が適当である。
焼結は、例えば、焼結用粉末をダイに入れてパンチにて圧力を付与して成形体(圧粉体)を得た後、所定の焼結温度に加熱する、一般的な粉末冶金による焼結法により行ってもよい。
本発明にかかる製造方法では、粉末冶金による焼結法を用いることで、容易に最終製品の形状またはこれに近い形状(ニアネットシェイプ)を有する焼結体を得ることができる。すなわち高い寸法精度で焼結体を製造できる。
焼結用粉末に圧力を付与しながら焼結すること(加圧焼結)が好ましい。得られる焼結体のかさ密度を高くすることができ、溶製材の密度(真密度)により近づけることができるからである。
なお、「焼結用粉末に圧力を付与する」とは、成形体を得た後に焼結を行う場合、成形体に圧力を付与することにより、成形体中の焼結用粉末に圧力が付与されることを含む。
このような、焼結用粉末に圧力を付与しながら焼結する方法(加圧焼結法)の好ましい例としてホットプレスを挙げることができる。
また、ホットプレス以外の例として真空焼結後に熱間静水圧成形(HIP処理)またはガス圧焼結を行う方法などがある。
ホットプレス法による加圧焼結は、以下のように行ってよい。
例えば黒鉛よりなるダイに設けた上下方向に延在する貫通穴に下方から下パンチを挿入し、貫通穴の内部でかつ下パンチの上部に上述の焼結用粉末または焼結用粉末を含む粉末を配置する。
その後貫通穴の上方から上パンチを挿入し、焼結用粉末に所定の圧力が付与されるように上パンチと下パンチに応力を付与する。
そして、焼結用粉末に所定の圧力が付与された状態で、例えばダイを加熱する等により焼結用粉末を加熱し焼結する。
また、ダイの貫通穴内部でかつ下パンチの上部に焼結用粉末または焼結用粉末を含む粉末を配置することに代えて、焼結用粉末または焼結用粉末を含む粉末を用いて作製した成形体を配置してもよい。
ホットプレス法を用いる際の焼結温度、昇温速度、焼結時間、焼結用粉末(または成形体)を加圧する応力、焼結雰囲気などの焼結条件は、用いる焼結用粉末の組成、得ようとする焼結体の特性に応じて適宜調整すればよい。
以下に好適な条件を例示する。
焼結温度は、好ましくは750℃〜1150℃である。750℃未満であれば、焼結が不十分で緻密な焼結体が得られない場合があり、1150℃より高いと粒成長を起こし硬度が低く、耐摩耗性が不十分となる場合があるからである。この温度範囲であればL1結晶構造のNi(Si, Ti)相を得ることができる。より好ましくは、焼結温度は950℃〜1150℃である。より確実にNi(Si, Ti)金属間化合物を形成し、より緻密な焼結体が得られ、高温でより高い硬さを得ることができるからである。
この焼結温度まで昇温する際の昇温速度は、10℃/分以下が好ましい。昇温速度が速すぎた場合、温度分布が不均一となり、焼結体の特性に内外差が生じる場合があるからである。
また、上述の好ましい焼結温度で保持する時間は、60分〜360分が好ましい。保持時間が60分より短いと緻密化が不十分となる場合があり、長すぎると結晶粒が粗大化して硬度等の特性が低下(または劣化)する場合があるからである。
焼結用粉末(または成形体)に付与する応力は、10MPa〜60MPaが好ましい。応力が10MPaより低いと緻密化が不十分となる場合があり、高過ぎるとカーボン型が破損する場合があるからである。
また、焼結は、真空中またはAr(アルゴン)、N(窒素)およびHe(ヘリウム)のような不活性ガスの減圧雰囲気中であることが好ましい。酸素を含む雰囲気中では粉末が酸化し、緻密化が阻害される場合があるからである。
このようにして作製した硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料(焼結体)は、焼結条件によっては、焼結体の第二相の一部にNi(Si, Ti)以外の金属間化合物が形成されるあるいは、Ni(Si, Ti)の形成が不十分となる場合がある。このような部分の少なくとも一部からNi(Si, Ti)を形成するように熱処理を行ってよい。
焼結温度より高く、液相が出ない1100℃以下、好ましくは1050℃以下の温度で加熱する熱処理を行うことが好ましい。
このような熱処理を行ったとしても、熱処理温度は、溶製材(鋳造材)を作製する際の溶融温度よりも低い温度が選択されることから、より低い温度でNi(Si, Ti)金属間化合物を形成でき、本発明の効果が得られる。
以下に好適な熱処理条件を例示する。
好ましい熱処理温度は、900℃〜1050℃である。900℃未満では、Ni(Si, Ti)の形成が不十分でNi(Si, Ti)以外の金属間化合物が形成される。1050℃より高いとNi(Si, Ti)の形成は確実となるが、液相が出てしまい粒成長を起こし、硬度が低下し、耐摩耗性に問題がでる。
この熱処理温度で、0.5時間〜72時間保持することが好ましい。0.5時間未満では、Ni(Si, Ti)の形成が不十分でNi(Si, Ti)以外の金属間化合物が形成される。72時間を超えるとNi(Si, Ti)の形成は確実となるが、粒成長を起こし、硬度が低下し、耐摩耗性に問題がでてくる。
また、熱処理は、真空中、またはAr等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。酸素を含む雰囲気中では焼結体が酸化されるからである。
以上により、Ni(Si, Ti)金属間化合物を含む第二相を有する焼結体を得ることができる。
[実施例1]
市販の平均粒径2.5μmのNi粉末、粒径75μm〜150μmのSi粉末、粒径45μm以下のTi粉末、粒径38μm以下のB粉末、平均粒径1.5μmのWC粉末を表1に示す組成となるよう、各々所定割合で配合し、ボールミル混合機にて有機溶媒中で72時間混合し、得られた混合粉末を100kgf/cmにてプレス成形した。これを1150℃にて、真空中で30MPaの加圧力にてホットプレス焼結を実施した。その後、1050℃にて真空中で48時間保持することにより実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4および比較例1の試料を作製した。なお、B粉末については、B以外の元素の合計質量(100mass%)に対する比率(outmass%と定義する)で示した。
次に、得られた実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4の試料についてX線回折(CuKα)を行った。X線回折の結果より、硬質相WC、L1型のニッケル基金属間化合物Ni(Si,Ti)の結晶ピークのみが確認された。この結果とSEM、光学顕微鏡観察により実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4の試料について本発明の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料が形成されていることが確認できた。
また、表2に表1に示した材料内におけるNi(Si,Ti)中の原子比組成を示す。Ni(Si,Ti)はある組成幅を持っており、その範囲内では金属間化合物を形成しているため、表2の原子比に固定されるものではないことをここに付記しておく。
図1に得られた本発明のWC−Ni(Si,Ti)材料の実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4に占めるNi(Si,Ti)の体積百分率と硬度との関係を示す。実施例1−1、実施例1−2のデータについては、硬度が略同じであったので、重ねて表示した。図1中二重丸(◎)は、比較例1のWC−20vol%Ni組成(WC粒径:1.5μm)のデータであり、本発明の実施例1−1のWC−20vol%Ni(Si,Ti)、実施例1−2のWC−20vol%Ni(Si,Ti)−0.005 outmass%Bは、これと結合材料が同体積の組成の比較例1のWC−20vol%Niよりも高硬度となることが図1より確認できる。シールリングのような耐摩耗用途としては、相手材にもよるが、少なくともHV硬さが800(kgf/mm2)以上必要とされることから、図1のグラフにおいて外挿法によりNi(Si,Ti)含有量は65vol%以下が適当であることがわかった。
図2に得られた本発明のWC−Ni(Si,Ti)材料の実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4に占めるNi(Si,Ti)の体積百分率とIF法(Indentation Fracture法)による破壊靭性値(Fracture toughness)との関係を示す。実施例1−1、実施例1−2のデータについては、硬度が略同じであったので、重ねて表示した。図2中二重丸(◎)は、比較例1のWC−20vol%Ni組成(WC粒径:1.5μm)のデータである。耐摩耗部材の用途としては、破壊靭性値は8MPa・m1/2以上が必要であるため、図2のグラフにおいて外挿入法によりNi(Si,Ti)はおよそ20vol%以上必要であることがわかる。
次に、本発明のWC−Ni(Si,Ti)材料の実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4および比較例1のWC−20vol%Ni材料について、以下の方法により腐食試験を行った。
腐食試験方法として、JIS G 0578:2000 ステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験方法を適用した。試験容器は、ガラス製のビーカを使用し、試験溶液はJIS K 8180に規定する塩酸と蒸留水によって調整した、N/20塩酸溶液900mlにJIS K 8142 に規定する塩化鉄(III)六水和物を溶解して、塩酸酸性6%塩化第二鉄溶液に調整した。
試験溶液の量は試験片の表面積1cm当たり20ml以上となるよう準備し、試験前後において、試験片質量を1mgの桁まで測定した。試験温度は標準として、35±1℃とした。連続24時間浸漬試験を行ったのち、試験後、試験片を洗浄し乾燥後、質量をはかり減量を求め、表面積で割り腐食速度とした。
図3に、上述の腐食試験で得られた各材料の腐食速度(g/m/day)の結果を示す。本発明のWC-Ni(Si,Ti)合金の実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4の順(但し、実施例1−1と実施例1−2とは略同順)にいずれも、比較例1のWC−20vol%Niに比べて腐食速度が遅く耐食性に優れることが確認された。
以上の結果より、本発明のWC−Ni(Si,Ti)材料は、耐食耐摩耗性に優れる摺動部品、金型、工具の用途に関してNi(Si,Ti)の含有量が20vol%以上65vol%以下が好適であることがわかった。すなわち、炭化タングステン(WC)を含む硬質相からなる第一相と、78at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)を含有する第二相とを含み、この第二相は主に結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなり、第一相は35vol%〜80vol%、第二相は20vol%〜65vol%からなる硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料は、ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型または耐食耐摩耗工具に好適な材料であることが確認できた。
[実施例2]
市販の平均粒径2.5μmのNi粉末、粒径75μm〜150μm以下のSi粉末、粒径45μm以下のTi粉末、粒径38μm以下のB粉末、平均粒径0.8μmのTi:Mo=0.8:0.2、C:N=0.6:0.4〜0.5:0.5であるTi、Moの固溶体の炭窒化物である(Ti,Mo)(C,N)粉末を表3に示す組成となるよう、各々所定割合で配合し、ボールミル混合機にて有機溶媒中で72時間混合し、得られた混合粉末を100kgf/cmにてプレス成形した。これを1150℃にて、真空または減圧下における窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で30MPaの加圧力にてホットプレス焼結を実施した。その後、1050℃にて、真空下において48時間保持することにより実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4および比較例1の試料を作製した。なお、B粉末については、B以外の元素の合計質量(100mass%)に対する比率(outmass%と定義する)で示した。
次に、得られた実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4の試料についてX線回折(CuKα)を行った。X線回折の結果より、硬質相(Ti,Mo)(C,N)とL1型のニッケル基金属間化合物Ni(Si,Ti)の結晶ピークのみが確認された。これとSEM、光学顕微鏡観察により実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4の試料は本発明の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料が形成されていることが確認できた。
図4に得られた本発明の(Ti,Mo)(C,N)−Ni(Si,Ti)材料の実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4に占めるNi(Si,Ti)の体積百分率と硬度との関係を示す。実施例2−1、実施例2−2のデータについては、硬度が略同じであったので、重ねて表示した。図4中二重丸(◎)は、比較例1のWC−20vol%Ni組成(WC粒径:1.5μm)のデータであり、本発明の実施例2−1の(Ti,Mo)(C,N)−20vol%Ni(Si,Ti)、実施例2−2の(Ti,Mo)(C,N)−20vol%Ni(Si,Ti)−0.005 outmass%Bは、これと結合材料が同体積の組成の比較例1のWC−20vol%Niよりも高硬度となることが図4より確認できる。シールリングのような耐摩耗用途としてはHV硬さが800(kgf/mm2)以上必要とされることから、図4のグラフに外挿することにより金属間化合物Ni(Si,Ti)の含有量はおよそ65vol%以下が適当であることがわかった。
図5に得られた本発明の(Ti,Mo)(C,N)−Ni(Si,Ti)材料の実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4に占めるNi(Si,Ti)の体積百分率とIF法(Indentation Fracture法)による破壊靭性値(Fracture toughness)との関係を示す。実施例2−1、実施例2−2のデータについては、破壊靭性値が略同じであったので、重ねて表示した。図5中二重丸(◎)は、比較例1のWC−20vol%Ni組成(WC粒径:1.5μm)のデータである。耐摩耗部材の用途としては、破壊靭性値は8MPa・m1/2以上が必要であるため、図5のグラフにおいて外挿法によりNi(Si,Ti)はおよそ20vol%以上必要であることがわかる。
次に、本発明の(Ti,Mo)(C,N)−Ni(Si,Ti)材料の実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4および比較例1のWC−20vol%Ni材料について海水を含む使用環境や、酸性水溶液中での耐食性について比較するため、実施例1と同一の方法により腐食試験を行った。
図6に、前記腐食試験で得られた各材料の腐食速度(g/m/day)の結果を示す。本発明の(Ti,Mo)(C,N)-Ni(Si,Ti)合金の実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3、実施例2−4の順(但し、実施例2−1と実施例2−2とは略同順)にいずれも、比較例1のWC−20vol%Niに比べて腐食速度が遅く耐食性に優れることが確認された。
以上の結果より、本発明の(Ti,Mo)(C,N)−Ni(Si,Ti)材料は、耐食耐摩耗性に優れる摺動部品、金型、工具の用途に関して、Ni(Si,Ti)の含有量が20vol%以上65vol%以下が好適であることがわかった。すなわち(Ti,Mo)(C,N)を含む硬質相(第一相)と、78at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)を含有する第二相とを含み、この第二相は主に結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなり、第一相は35vol%〜80vol%、第二相は20vol%〜65vol%からなる硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料は、耐食耐摩耗部品に好適な材料であることが確認できた。
同様に、W(C,N1−x)(0≦x≦1)−Ni(Si,Ti)、(Ti,Mo1−x)C(0≦x≦1)−Ni(Si,Ti)、(Ti,Mo1−x)N(0≦x≦1)−Ni(Si,Ti)、(Ti,MoY,WZ)(Cα,N1−α)(0≦α≦1、x+y+z=1、x,y,z≠0)−Ni(Si,Ti)材料等その他の本発明の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料についても同様の結果となり、耐食耐摩耗部品に好適な材料であることが確認できた。
本発明の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料は、耐食性かつ耐摩耗性を有し、ポンプ軸用の円筒状スリーブ等の耐食耐摩耗摺動部品、耐食耐摩耗金型および耐食耐摩耗工具等様々な耐食性かつ耐摩耗性を必要とする用途に使用できる。

Claims (7)

  1. Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質相である第一相と、
    75at%〜85at%のニッケル(Ni)と、8at%〜13at%のシリコン(Si)と、3at%〜13at%のチタン(Ti)とを含んでなる第二相とからなり、当該第二相は主に結晶構造がL1型であるNi(Si, Ti)金属間化合物からなり、
    前記第一相が35vol%〜80vol%、前記第二相が20vol%〜65vol%含有されていることを特徴とする硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料。
  2. 前記第二相が、更にボロン(B)を、Ni(Si, Ti)金属間化合物相の質量に対して10mass ppm〜1000mass ppm含有することを特徴とする請求項1に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料。
  3. Ti、Moの固溶体および/もしくはWの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質粉末と、75at%〜85at%のニッケル(Ni)、8at%〜13at%のシリコン(Si)、3at%〜13at%のチタン(Ti)を含み前記硬質粉末の結合材料となる材料とを混合して、混合粉末または合金粉末を作製する混合工程と、
    前記混合工程で作製した混合粉末または合金粉末に圧力を付与した状態で、加熱し焼結する焼結工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料の製造方法。
  4. 前記混合工程では、更にボロン(B)を、前記結合材料となる材料の質量に対して10mass ppm〜1000mass ppmを添加することを特徴とする請求項3に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料の製造方法。
  5. 請求項1または請求項2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする摺動部品。
  6. 請求項1または請求項2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする金型。
  7. 請求項1または請求項2に記載の硬質相分散ニッケル基金属間化合物複合焼結材料から構成されていることを特徴とする工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN116005058A (zh) * 2022-12-09 2023-04-25 浙江恒成硬质合金有限公司 一种钛合金切削用硬质合金刀具及其制备方法

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