以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
なお、以下の説明では、便宜上、エンジン(不図示)に近い方(図1では左方)をフロントと称し、エンジンから遠い方(図1では右方)をリヤと称している。以下の説明におけるフロントおよびリヤは、車載状態における前後とは必ずしも一致しない。
また、以下では、回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。
[ダンパの概略構成および機能]
図1は、ダンパ100の断面図であって、図3,6におけるI−I断面図である。ダンパ100は、第一ダンパ200と、第二ダンパ300と、を備えている。第一ダンパ200および第二ダンパ300は、いずれも回転中心Ax回りに回転可能であり、軸方向に並んでいる。第一ダンパ200は第二ダンパ300よりもエンジン(不図示)から遠くに位置されている。言い換えると、第二ダンパ300は、エンジンと第一ダンパ200との間に位置されている。
第一ダンパ200および第二ダンパ300は、互いに並列なトルク伝達経路を構成している。まず、本実施形態では、結合具101によって、第一ダンパ200の第一ドライブプレート210と第二ダンパ300の第二ドライブプレート310とが結合され、回転中心Ax回りを一体に回転する。第一ドライブプレート210および第二ドライブプレート310は、第一回転要素(入力回転要素)の一例である。なお、結合具101は、錘233よりも径方向内方に位置されている。
また、第一ダンパ200の第一ドリブンプレート220と、第二ダンパ300の第二ドリブンプレート320とが互いに周方向に一体化されるとともに、第二ダンパ300がシャフト(不図示)と周方向に一体化され、これにより、第一ドリブンプレート220と第二ドリブンプレート320とが、シャフトとともに回転中心Ax回りを一体に回転する。第一ドリブンプレート220および第二ドリブンプレート320は、第二回転要素(出力回転要素)の一例である。
第一ダンパ200にあっては、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220との間には、周方向に弾性的に伸縮可能な第一コイルスプリング240と第二コイルスプリング250とが直列に介在し、第一コイルスプリング240と第二コイルスプリング250との間に、錘233を有した中間プレート230が介在している。第一コイルスプリング240は、第一弾性部材の一例であり、第二コイルスプリング250は、第二弾性部材の一例であり、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250は、第一弾性要素の一例である。中間プレート230および錘233は、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220との間に介在する第一弾性要素の、周方向の途中に設けられた、中間質量要素である。
他方、第二ダンパ300にあっては、第二ドライブプレート310と第二ドリブンプレート320との間には、第一ダンパ200のような中間プレートや錘は設けられず、周方向に弾性的に伸縮可能なコイルスプリング340が介在している。コイルスプリング340は、第二弾性要素の一例である。
このように、ダンパ100は、第一ダンパ200として構成された中間質量要素を含んだ第一トルク伝達経路と、第二ダンパ300として構成された中間質量要素を含まない第二トルク伝達経路と、を並列に備え、これら伝達経路の周方向の共振現象を利用することにより、トルク変動を抑制する。第一ダンパ200は、第一経路構成部の一例であり、第二ダンパ300は、第二経路構成部の一例である。
図2は、ダンパ100の回転速度とトルク変動との相関関係を示すグラフである。回転速度N1は、第一ダンパ200の共振点であり、回転速度N2は、ダンパ100の反共振点である。反共振点では、第一ダンパ200における回転振動の位相と、第二ダンパ300における回転振動の位相とが逆位相となるため、トルク変動が抑制される。したがって、エンジンの回転速度の使用範囲が、回転速度N2近傍およびそれよりも高い回転速度となるよう、ダンパ100を構成することにより、ダンパ100は、図2中の破線で示されるような特性を有することができ、より広い回転速度の範囲においてトルク変動を抑制することができる。
[第1ダンパ]
図3は、第一ダンパ200の正面図であり、図4は、図3のIV−IV断面図であり、図5は、第一ダンパ200に含まれる中間プレート230の正面図である。
図1,3に示されるように、第一ダンパ200は、第一ドライブプレート210、第一ドリブンプレート220、中間プレート230、第一コイルスプリング240、第二コイルスプリング250、およびシート260を有している。
第一ドライブプレート210は、フロントプレート211と、リヤプレート212と、を有している。フロントプレート211とリヤプレート212とは、結合具213によって一体に結合されている。結合具213は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよい。
フロントプレート211は、エンジンとリヤプレート212との間に位置されている。言い換えると、リヤプレート212は、フロントプレート211に対してエンジンの反対側に位置されている。フロントプレート211およびリヤプレート212の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。図3に示されるように、フロントプレート211は、周縁部211aと、中央部211bと、二つのアーム部211cと、を有している。周縁部211aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部211bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部211aよりも小さいリング状である。アーム部211cは、径方向に沿って周縁部211aと中央部211bとの間で架け渡されている。図1に示されるように、中央部211bは、周縁部211aおよびアーム部211cに対してエンジンに近付くように凹んでいる。
また、図1に示されるように、リヤプレート212は、フロントプレート211と同様に、周縁部212aと、中央部212bと、二つのアーム部212cと、を有している。周縁部212a、中央部212b、および二つのアーム部212cは、それぞれ、フロントプレート211の周縁部211a、中央部211b、および二つのアーム部211cと軸方向に重なっている。周縁部212aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部212bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部212aよりも小さいリング状である。アーム部212cは、径方向に沿って周縁部212aと中央部212bとの間で架け渡されている。ただし、中央部212bは、周縁部212aおよびアーム部212cに対してエンジンから遠ざかるように凹んでいる。
図1に示されるように、フロントプレート211のアーム部211cとリヤプレート212のアーム部212cとによって、第一ドライブプレート210のドライブアーム214が構成されている。図3に示されるように、第一ドライブプレート210は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つのドライブアーム214を有している。すなわち、二つのドライブアーム214は、周方向に略180°間隔で配置されている。
図3中に破線で示されるように、第一ドリブンプレート220は、第一ハブ221と、二つのドリブンアーム222と、を有している。図1に示されるように、第一ハブ221の形状は、回転中心Axに沿った円筒状である。第一ハブ221は、その筒内に挿入された第二ダンパ300の第二ハブ321とスプライン結合等によって周方向に一体化される。また、第一ハブ221は、フロントプレート211の中央部211bおよびリヤプレート212の中央部212bに設けられた開口部を貫通している。ドリブンアーム222は、第一ハブ221の外周面から径方向外方に突出している。ドリブンアーム222の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。ドリブンアーム222は、センタープレートとも称されうる。第一ドリブンプレート220は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つのドリブンアーム222を有している。すなわち、二つのドリブンアーム222は、周方向に略180°間隔で配置されている。
図1,4に示されるように、中間プレート230は、フロントプレート231と、リヤプレート232と、錘233と、を有している。フロントプレート231、リヤプレート232、および錘233は、結合具234によって一体に結合されている。結合具234は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよい。
フロントプレート231は、エンジンとリヤプレート232との間に位置されている。言い換えると、リヤプレート232は、フロントプレート231に対してエンジンの反対側に位置されている。フロントプレート231およびリヤプレート232の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。図5に示されるように、フロントプレート231は、周縁部231aと、中央部231bと、二つのアーム部231cと、を有している。周縁部231aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部231bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部231aよりも小さいリング状である。アーム部231cは、径方向に沿って周縁部231aと中央部231bとの間で架け渡されている。図4に示されるように、中央部231bは、周縁部231aおよびアーム部231cに対してエンジンに近付く方向に凹んでいる。
図4,5に示されるように、リヤプレート232は、フロントプレート231と同様に、周縁部232aと、中央部232bと、二つのアーム部232cと、を有している。周縁部232a、中央部232b、および二つのアーム部232cは、それぞれ、フロントプレート231の周縁部231a、中央部231b、および二つのアーム部231cと軸方向に重なっている。周縁部232aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部232bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部232aよりも小さいリング状である。アーム部232cは、フロントプレート231のアーム部231cと軸方向に重なり、径方向に沿って周縁部232aと中央部232bとの間で架け渡されている。ただし、中央部232bは、周縁部232aおよびアーム部232cに対してエンジンから遠ざかる方向に凹んでいる。
図4,5に示されるように、フロントプレート231のアーム部231cとリヤプレート232のアーム部232cとによって、中間プレート230の中間アーム235が構成されている。中間プレート230は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つの中間アーム235を有している。すなわち、二つの中間アーム235は、周方向に略180°間隔で配置されている。
図1,4に示されるように、周縁部231aおよび周縁部232aならびにアーム部231cおよびアーム部232cは、それぞれ略密着した状態で、結合具234によって一体に結合されている。中央部231bと中央部232bとの間には軸方向に隙間が形成されており、当該隙間に、第一ドリブンプレート220のドリブンアーム222が収容されている。また、図1に示されるように、周縁部231aおよび周縁部232aを結合する結合具234は、錘233の結合に共用されている。図5に示されるように、錘233は円環状である。
図1に示されるように、第一ドライブプレート210および中間プレート230は、第一ドリブンプレート220の第一ハブ221の外周に設けられたブッシュ201(カラー)を介して、回転中心Ax回りに回動可能に、第一ハブ221に支持されている。ブッシュ201は、摩擦係数の低い合成樹脂材料である。ブッシュ201は、第一ドライブプレート210の中央部211b,212bおよび中間プレート230の中央部231b,232b、すなわちそれぞれの開口部の周縁部を摺動可能に支持することにより、第一ドライブプレート210および中間プレート230を、回転中心Axにセンタリングする機能を有している。ブッシュ201は、ベアリングの一例である。
図1,3に示されるように、第一ダンパ200は、第一ドライブプレート210と中間プレート230との相対回転に応じて摺動する摩擦抵抗要素202aと、第一ドライブプレート210と中間プレート230との相対回転に応じて摺動する摩擦抵抗要素202bと、を有している。これら摩擦抵抗要素202a,202bにより、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220との相対回転により、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220との間で摩擦抵抗トルクが生じるよう、構成されている。なお、皿ばね203は、摩擦抵抗要素202a,202bを、第一ドライブプレート210、第一ドリブンプレート220、および中間プレート230のうちのいずれかに、軸方向に弾性的に押し付けることによって、摩擦抵抗トルクを生じさせている。
また、図3に示されるセット状態(初期状態)において、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220との相対的な角度差(捩れ角)は0である。図3では、第一ドライブプレート210のドライブアーム214は、回転中心Axから右上の径方向および回転中心Axから左下の径方向に延びている。また、第一ドリブンプレート220のドリブンアーム222も、回転中心Axから右上の径方向および回転中心Axから左下の径方向に延びている。すなわち、第一ダンパ200の、図3における回転中心Axから右上方向に延びる位置、および回転中心Axから左下方向に延びる位置において、第一ドライブプレート210のドライブアーム214と、第一ドリブンプレート220のドリブンアーム222とが軸方向に重なっている。
また、図3に示されるセット状態において、中間プレート230の中間アーム235は、回転中心Axから左上の径方向および回転中心Axから右下の径方向に延びている。すなわち、中間アーム235は、ドライブアーム214およびドリブンアーム222とは、軸方向に重ならず、周方向に角度をあけて配置されている。
図3に示されるように、第一ダンパ200は、二つの第一コイルスプリング240と、二つの第二コイルスプリング250と、を有している。図3において第一ドライブプレート210が第一ドリブンプレート220に対して時計回り方向に相対回転する正方向のトルクが作用した状態にあっては、二つの第一コイルスプリング240は、ドライブアーム214と中間アーム235との間に介在して周方向に弾性的に圧縮され、ドライブアーム214および中間アーム235に周方向に弾性力(圧縮反力)を与える。また、この状態にあっては、二つの第二コイルスプリング250は、中間アーム235とドリブンアーム222との間に介在して周方向に沿って弾性的に圧縮され、中間アーム235およびドリブンアーム222に周方向に弾性力(圧縮反力)を与える。
他方、図3において第一ドライブプレート210が第一ドリブンプレート220に対して反時計回り方向に相対回転する逆方向のトルクが作用した状態にあっては、二つの第一コイルスプリング240は、中間アーム235とドリブンアーム222との間に介在して周方向に弾性的に圧縮され、中間アーム235およびドリブンアーム222に周方向に弾性力(圧縮反力)を与える。また、この状態にあっては、二つの第二コイルスプリング250は、ドライブアーム214と中間アーム235との間に介在して周方向に弾性的に圧縮され、ドライブアーム214および中間アーム235に周方向に弾性力(圧縮反力)を与える。
また、第一コイルスプリング240とドライブアーム214(第一ドライブプレート210)およびドリブンアーム222(第一ドリブンプレート220)との間(図3には不図示)、第一コイルスプリング240と中間アーム235(中間プレート230)との間、第二コイルスプリング250とドライブアーム214およびドリブンアーム222との間(図3には不図示)、第二コイルスプリング250と中間アーム235(中間プレート230)との間には、それぞれ、シート260が介在している。シート260は、介在部品の一例である。
[第2ダンパ]
図6は、第二ダンパ300の正面図である。図1,6に示されるように、第二ダンパ300は、第二ドライブプレート310、第二ドリブンプレート320、コントロールプレート330、コイルスプリング340、およびシート360を有している。
第二ドライブプレート310は、フロントプレート311と、リヤプレート312と、を有している。フロントプレート311とリヤプレート312とは、結合具313によって一体に結合されている。結合具313は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよい。
フロントプレート311は、エンジンとリヤプレート312との間に位置されている。言い換えると、リヤプレート312は、フロントプレート311に対してエンジンの反対側に位置されている。フロントプレート311およびリヤプレート312の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。図6に示されるように、フロントプレート311は、周縁部311aと、中央部311bと、四つのアーム部311cと、を有している。周縁部311aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部311bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部311aよりも小さいリング状である。アーム部311cは、径方向に沿って周縁部311aと中央部311bとの間で架け渡されている。中央部311bは、周縁部311aおよびアーム部311cに対してエンジンに近付くように凹んでいる。
図1に示されるように、リヤプレート312は、フロントプレート311と同様に、周縁部312aと、中央部312bと、四つのアーム部312cと、を有している。周縁部312a、中央部312b、および四つのアーム部312cは、それぞれ、フロントプレート311の周縁部311a、中央部311b、および四つのアーム部311cと軸方向に重なっている。周縁部312aの形状は、回転中心Axを中心とするリング状である。中央部312bの形状は、回転中心Axを中心として周縁部312aよりも小さいリング状である。アーム部312cは、径方向に沿って周縁部312aと中央部312bとの間で架け渡されている。ただし、中央部312bは、周縁部312aおよびアーム部312cに対してエンジンから遠ざかる方向に凹んでいる。
図1に示されるように、フロントプレート311のアーム部311cとリヤプレート312のアーム部312cとによって、第二ドライブプレート310のドライブアーム314が構成されている。図6に示されるように、第二ドライブプレート310は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた四つのドライブアーム314を有している。すなわち、四つのドライブアーム314は、周方向に略90°間隔で配置されている。
図1に示されるように、第二ドリブンプレート320は、第二ハブ321と、四つのドリブンアーム322(ただし、図1には二つのドリブンアーム322のみ図示)と、を有している。第二ハブ321の形状は、回転中心Axに沿った円筒状である。第二ハブ321は、その筒内に挿入されたシャフト(不図示)とスプライン結合等によって周方向に一体化される。また、第二ハブ321は、フロントプレート311の中央部311bおよびリヤプレート312の中央部312bに設けられた開口部を貫通している。ドリブンアーム322は、第二ハブ321の外周面から径方向外方に突出している。ドリブンアーム322の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。ドリブンアーム322は、センタープレートとも称されうる。第二ドリブンプレート320は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた四つのドリブンアーム322を有している。すなわち、四つのドリブンアーム322は、周方向に略90°間隔で配置されている。四つのドリブンアーム322は、それぞれ、ドライブアーム314と軸方向に重なっている。
図1に示されるように、コントロールプレート330は、フロントプレート331と、リヤプレート332と、を有している。フロントプレート331およびリヤプレート332は、結合具333によって一体に結合されている。結合具333は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよい。フロントプレート331は、エンジンとリヤプレート332との間に位置されている。言い換えると、リヤプレート332は、フロントプレート331に対してエンジンの反対側に位置されている。フロントプレート331およびリヤプレート332の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。
図1に示されるように、第二ドライブプレート310およびコントロールプレート330は、第二ドリブンプレート320の第二ハブ321の外周に設けられた摺動部材301a,301bを介して、回転中心Ax回りに回動可能に支持されている。摺動部材301a,301bは、合成樹脂材料で構成される。摺動部材301aは、第二ドライブプレート310の中央部311b,312bおよびコントロールプレート330の中央部、すなわちそれぞれの開口部の周縁部を摺動可能に支持することにより、第二ドライブプレート310およびコントロールプレート330を、回転中心Axにセンタリングする機能を有している。また、摺動部材301bは、第二ドリブンプレート320のドリブンアーム322とコントロールプレート330とを摺動可能に支持することにより、コントロールプレート330を、回転中心Axにセンタリングする機能を有している。
摺動部材301aは、第二ドライブプレート310とコントロールプレート330との間に介在し、第二ドライブプレート310とコントロールプレート330との相対回転および第二ドリブンプレート320とコントロールプレート330との相対回転に応じて摺動する摩擦抵抗要素としても機能している。なお、皿ばね303は、摺動部材301を、第二ドライブプレート310、第二ドリブンプレート320、およびコントロールプレート330のうちのいずれかに、軸方向に弾性的に押し付けることによって、摩擦抵抗トルクを生じさせている。このような摺動部材301aによって、例えば、エンジン始動時に発生する比較的大きな振動や騒音などを抑制することができる。また、摺動部材301bは、ドリブンアーム322とコントロールプレート330との間に介在し、ドリブンアーム322とコントロールプレート330との相対回転に応じて摺動する摩擦抵抗要素としても機能している。このような摺動部材301bによって、例えば、エンジン始動後の通常走行時に発生する比較的小さな振動や騒音などを抑制することができる。
また、図6に示されるセット状態(初期状態)において、第二ドライブプレート310と第二ドリブンプレート320との相対的な角度差(捩れ角)は0である。図6では、第二ドライブプレート310のドライブアーム314は、回転中心Axから右上、左上、左下、および右下の径方向に延びている。また、第二ドリブンプレート320のドリブンアーム322も、回転中心Axから右上、左上、左下、および右下の径方向に延びている。すなわち、第二ダンパ300の、図6における回転中心Axから右上方向に延びる位置、左上方向に延びる位置、左下方向に延びる位置、および右下方向に延びる位置において、第二ドライブプレート310のドライブアーム314と、第二ドリブンプレート320のドリブンアーム322とが軸方向に重なっている。
図6に示されるように、第二ダンパ300は、四つのコイルスプリング340を有している。四つのコイルスプリング340は、それぞれドライブアーム314とドリブンアーム322との間に介在し、周方向に沿って弾性的に伸縮し、ドライブアーム314およびドリブンアーム322に周方向に弾性力を与える。
また、コイルスプリング340とドライブアーム314(第二ドライブプレート310)およびドリブンアーム322(第二ドリブンプレート320)との間には、それぞれ、シート360が介在している。シート360は、介在部品の一例である。
[リミッタ]
図1に示されるように、リミッタ400は、入力要素であるフライホイール10と、ダンパ100の第一回転要素である第一ドライブプレート210および第二ドライブプレート310のうちフライホイール10(エンジン)に近い第二ドライブプレート310との間に設けられている。リミッタ400は、リミッタドライブプレート410と、リミッタドリブンプレート420と、摩擦抵抗要素430と、推力印加機構440と、を有している。
リミッタドリブンプレート420は、第二ドライブプレート310のフロントプレート311とリヤプレート312とを結合する結合具313によって、フロントプレート311およびリヤプレート312と一体に結合され、第二ドライブプレート310から径方向外方に突出している。リミッタドリブンプレート420の形状は、円環状かつ板状である。リミッタドリブンプレート420の軸方向両側には、それぞれ、円環状の摩擦抵抗要素430が固定されている。円環状のプレッシャプレート441とリミッタドライブプレート410の円環状のリヤプレート412とが、二つの摩擦抵抗要素430およびリミッタドリブンプレート420を軸方向に挟持している。
リミッタドライブプレート410を構成するフロントプレート411およびリヤプレート412は、摩擦抵抗要素430およびプレッシャプレート441よりも径方向外方で不図示のリベットによって結合されている。また、リミッタドライブプレート410およびフライホイール10は、結合具413によって結合されている。なお、結合具413は、例えばボルト等であるが、ボルト以外の結合具であってもよい。また、図1に示されるように、結合具413は、錘233よりも径方向外方に位置されている。結合具413は、第二結合具の一例である。
板バネ442は、プレッシャプレート441とフロントプレート411との間に介在し、プレッシャプレート441をリヤプレート412に向けて軸方向に弾性的に押し付けている。プレッシャプレート441および板バネ442は、推力印加機構440を構成し、リミッタドリブンプレート420および摩擦抵抗要素430を、リミッタドライブプレート410のリヤプレート412に向けてエンジンから離れる方向に押し付けている。なお、推力印加機構440は、リミッタドリブンプレート420および摩擦抵抗要素430を、リミッタドライブプレート410のフロントプレート411に向けてエンジンに近付く方向に押し付けてもよい。
[コイルスプリングの圧縮反力による捩りトルク]
図2から、ダンパ100のトルク変動は、ダンパ100の回転速度がダンパ100の反共振点の回転速度N2に近い場合に、抑制できることがわかる。したがって、エンジンの回転速度が高くなるほど反共振点の回転速度N2が高くなるダンパ100が得られれば、当該ダンパ100によって、エンジンの回転速度のより広い範囲において、トルク変動をより効果的に抑制できるようになる。
ここで、例えば、ハイブリッド車両用のエンジン等にあっては、エンジンは、出力トルクが大きくなるほど回転速度が高くなるよう、構成あるいは制御される場合がある。そのような場合にあっては、ダンパ100を、エンジンの出力トルクが大きくなるほど、すなわちダンパ100における伝達トルクが大きくなるほど、つまり第一回転要素と第二回転要素との捩れ角(以下、単に捩れ角と記す)が大きくなるほど、反共振点の回転速度N2が高くなるように構成することができれば、エンジンの回転速度が高くなるほどダンパ100の反共振点の回転速度N2が高くなる。
また、この種のダンパでは、一般的に、捩りトルク(弾性トルク)の、捩れ角の単位角度あたりの変化率(以下、単に捩りトルクの単位角度あたりの変化率、または捩りトルクの変化率と記す)が大きいほど、反共振点の回転速度N2が高くなる。
そこで、本実施形態では、詳細には後述するが、第一ダンパ200では、第一回転要素である第一ドライブプレート210と第二回転要素である第一ドリブンプレート220との捩れ角が大きいほど、捩りトルクの変化率が大きくなるよう構成されている。よって、本実施形態によれば、エンジンが、出力トルクが大きくなるほど回転速度が高くなるよう、構成あるいは制御される場合において、エンジンの出力トルクが大きいほど、すなわち、ダンパ100の捩れ角が大きいほど、ダンパ100の捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなり、これにより、反共振点の回転速度N2が高くなる。したがって、本実施形態によれば、ダンパ100によって、エンジンの回転速度のより広い範囲において、トルク変動を抑制することができる。
[捩れ角の増大に伴って捩りトルクの単位角度あたりの変化率が増大する実施形態(1)]
図7,8は、実施形態(1)の第一ダンパ200の一部の軸方向からの正面図であって、図7は、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220とが捩れていない、すなわち捩れ角が0のセット状態における正面図、図8は、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220とが捩れた状態における正面図である。図7,8には、中間アーム235とドリブンアーム222との間に介在する第一コイルスプリング240が示されている。第一コイルスプリング240と中間アーム235との間にはシート263(260)が介在し、第一コイルスプリング240とドリブンアーム222との間にはシート262(260)が介在している。
図7のセット状態にあっては、シート263の中間アーム235と接触する端部のうち、径方向内方に位置された内側端部260iは、中間アーム235と接触しているのに対し、径方向外方に位置された外側端部260oは、中間アーム235とは接触せず、中間アーム235との間には隙間g1が設けられている。また、図7のセット状態にあっては、シート263と同様に、シート262のドリブンアーム222と接触する端部のうち、径方向内方に位置された内側端部260iは、ドリブンアーム222と接触しているのに対し、径方向外方に位置された外側端部260oは、ドリブンアーム222とは接触せず、ドリブンアーム222との間には隙間g1が設けられている。また、図示されないが、第二コイルスプリング250を支持するシート260についても、セット状態にあっては、シート260のドライブアーム214または中間アーム235と接触する端部のうち、径方向内方に位置された内側端部260iは、ドライブアーム214または中間アーム235と接触しているのに対し、径方向外方に位置された外側端部260oは、ドライブアーム214または中間アーム235とは接触せず、ドライブアーム214または中間アーム235との間に隙間g1が設けられている。
第一ダンパ200は、セット状態から捩れるにつれて、隙間g1が小さくなって無くなるよう構成されている。すなわち、図8の捩れ状態にあっては、シート263の内側端部260iおよび外側端部260oはともに中間アーム235と接触し、かつシート262の内側端部260iおよび外側端部260oはともにドリブンアーム222と接触している。また、図示されないが、第二コイルスプリング250を支持するシート260についても、セット状態から捩れるにつれて隙間g1は小さくなって無くなり、内側端部260iおよび外側端部260oともにドライブアーム214または中間アーム235と接触する。
図7の状態における隙間g1がある状態にあっては、第一コイルスプリング240は、主に径方向内側の部分が収縮する。他方、図8の状態における隙間g1が無い状態にあっては、第一コイルスプリング240の全体が収縮する。したがって、捩りトルクの単位角度あたりの変化率は、図7の状態よりも図8の状態の方が大きい。ここで、図7,8に示される角度差α0,α1は、第一コイルスプリング240の圧縮反力のシート260からドリブンアーム222への作用点Pp0,Pp1における、第一コイルスプリング240の圧縮反力の作用方向Dsと接線方向Dtとの角度差である。接線方向Dtは、第一ダンパ200の径方向および軸方向と直交する方向である。このような構成にあっては、角度差α0,α1が大きいほど、第一コイルスプリング240の圧縮反力の接線方向Dtへの分力が小さくなり、ひいては、当該圧縮反力に基づく捩りトルクが小さくなる。ここで、図7,8から明らかとなるように、実施形態(1)では、図7のセット状態における角度差α0は、図8の捩れ状態における角度差α1よりも大きい。よって、このような構成によれば、図8の状態、すなわち図7の状態よりも捩れ角が大きい状態における捩りトルクおよび当該捩りトルクの単位角度あたりの変化率は、図7の状態、すなわち図8の状態よりも捩れ角が小さい状態における捩りトルクおよび当該変化率よりも大きい。また、セット状態からの捩れ角が大きくなるにつれて、第一コイルスプリング240の圧縮反力の作用点Pp0,Pp1が、径方向外方へ移動するため、この点でも、セット状態から捩れ角が大きいほど、捩りトルクおよび当該捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなる。また、図示しないが、第二コイルスプリング250を支持するシート260についても、セット状態から捩れることにより径方向外方の隙間g1が小さくなって無くなるため、同様の効果が得られる。また、セット状態からの捩れ方向が図7,8とは逆である場合にも、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250が圧縮されるため、同様の効果が得られる。また、隙間g1は、セット状態において少なくとも一つのシート260に設けられればよく、全てのシート260に設けられる必要はない。
このように、実施形態(1)では、第一ダンパ200は、捩れ角が大きいほど、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250(第一弾性要素)の伸縮による捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなるよう、構成されている。実施形態(1)によれば、エンジンが、出力トルクが大きくなるほど回転速度が高くなるよう、構成あるいは制御される場合において、エンジンの出力トルクが大きくなるほど、すなわち、ダンパ100の第一回転要素と第二回転要素との捩れ角が大きくなるほど、ダンパ100の捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなり、これにより、反共振点の回転速度N2が高くなる。したがって、実施形態(1)によれば、ダンパ100によって、エンジンの回転速度のより広い範囲において、トルク変動を抑制することができる。
また、実施形態(1)では、シート260(介在部品)と、ドライブアーム214(第一ドライブプレート210、第一回転要素)、ドリブンアーム222(第一ドリブンプレート220、第二回転要素)、および中間アーム235(中間プレート230、第三回転要素)の三つの回転要素のうちシート260が接触する回転要素とが、捩れの無いセット状態(初期状態)では径方向外方に隙間g1をあけた状態で接触し、セット状態からの捩れ角の増大に伴って隙間g1が小さくなるよう構成されている。実施形態(1)によれば、捩れ角が大きいほど捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなる構成を有した第一ダンパ200が、比較的簡素な構成として得られる。なお、第一弾性要素は、例えばエラストマや、板バネ等、コイルスプリング以外の弾性要素であってもよい。
[捩れ角の増大に伴って捩りトルクの単位角度あたりの変化率が増大する実施形態(2)]
図9は、実施形態(2)の第一ダンパ200の一部のセット状態における軸方向からの正面図である。図9には、中間アーム235とドリブンアーム222との間に介在する第二コイルスプリング250B(250)が示されている。図9に示されるように、第二コイルスプリング250Bのピッチは不揃いであり、第二コイルスプリング250Bは、セット状態において小さいピッチp1の区間と、大きいピッチp2(>p1)の区間とを含んでいる。このような構成によれば、捩れ角が増大すると、セット状態において小さいピッチp1であった区間が周方向(第二コイルスプリング250Bの伸縮方向)に密着し、これにより第二コイルスプリング250Bの巻数が少なくなるため、第二コイルスプリング250Bのバネ定数が増大する。なお、第一コイルスプリング240を第二コイルスプリング250Bと同様の構成とすることによっても、同様の効果が得られる。
このように、実施形態(2)では、巻線のピッチが不揃いの第二コイルスプリング250Bを含み、捩れ角の増大に伴って第二コイルスプリング250Bが部分的に密着する。実施形態(2)によれば、捩れ角が大きいほど捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなる構成を有した第一ダンパ200が、比較的簡素な構成として得られる。なお、第一ダンパ200に設けられる全ての第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250のピッチが上述したような不等ピッチである必要は無く、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250のうち少なくとも一つのピッチが不等ピッチであればよい。
[捩れ角の増大に伴って捩りトルクの単位角度あたりの変化率が増大する実施形態(3)]
図10は、実施形態(3)の第一ダンパ200の一部のセット状態における軸方向からの正面図である。図10に示されるように、第二コイルスプリング250C(250)は、互いに並列な複数のコイルスプリング250i,250oを含んでいる。コイルスプリング250iは、コイルスプリング250oの巻回部内に収容されている。コイルスプリング250iの伸縮方向の両端には、シート260sが固定されている。なお、コイルスプリング250i,250oは、多重コイルを構成しているが、コイルスプリング250i,250oは、互いに並列であればよく、多重構成には限定されない。また、コイルスプリング250iにはシート260sが設けられなくてもよい。また、第二コイルスプリング250Cは、三重以上のコイルスプリングを有してもよい。
ここで、実施形態(3)では、セット状態において、複数のコイルスプリング250i,250oのうちの一つであるコイルスプリング250i(シート260s)とシート260との間に、隙間g2が設けられるよう、構成されている。このような構成にあっては、コイルスプリング250oは、セット状態からの捩れ開始とともに弾性的に圧縮し始めるが、コイルスプリング250iは、セット状態から捩れて隙間g2が無くなった後、弾性的な圧縮が開始される。すなわち、コイルスプリング250oおよびコイルスプリング250iは、捩れ角が増大する場合において弾性的な圧縮が開始される捩れ角が互いに異なっている。なお、第一コイルスプリング240を第二コイルスプリング250Cと同様の構成とすることによっても、同様の効果が得られる。
このように、実施形態(3)では、第二コイルスプリング250C(第一弾性要素)が、捩れ角が増大する場合において弾性的な圧縮が開始される捩れ角が異なる並列な複数のコイルスプリング250i,250oを有している。実施形態(3)によれば、捩れ角が大きいほど捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなる構成を有した第一ダンパ200が、比較的簡素な構成として得られる。なお、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250の全てが、上述した第二コイルスプリング250Cのような構成を有する必要は無く、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250のうち少なくとも一つが第二コイルスプリング250Cのような構成を有すればよい。また、第一弾性要素は、例えばエラストマ等、コイルスプリング以外の弾性要素であってもよい。
[第一弾性要素と第二弾性要素とで圧縮反力が生じる捩れ角の範囲が異なる実施形態(4)]
図11,12は、実施形態(4)の第一ダンパ200の一部の軸方向からの正面図であって、図11は、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220とが捩れていない、すなわち捩れ角が0のセット状態における正面図、図12は、第一ドライブプレート210と第一ドリブンプレート220とが捩れた状態における正面図である。
図11に示されるように、セット状態では、第一コイルスプリング240のシート262とドライブアーム214との間、および第二コイルスプリング250のシート261とドライブアーム214との間には角度差θ2相当の周方向の隙間が設けられている。シート261,262とドリブンアーム222との間、およびシート263と中間アーム235との間にはこのような周方向の隙間は設けられず、シート261,262とドリブンアーム222とは周方向に接触するとともに、シート263と中間アーム235とは周方向に接触している。また、図示されないが、第二ダンパ300においては、シート360とドライブアーム314との間、シート360とドリブンアーム322との間にも、このような周方向の隙間は設けられず、シート360とドライブアーム314とは周方向に接触するとともに、シート360とドリブンアーム322とは周方向に接触している。
すなわち、実施形態(4)にあっては、第一ダンパ200では、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250が弾性的に圧縮された状態となる捩れ角の第一範囲(θ2以上)と、コイルスプリング340が弾性的に圧縮された状態となる捩れ角の第二範囲(0以上)と、が互いに異なっている。
図13は、ダンパ100の回転速度とトルク変動との相関関係を示すグラフである。図13における実線のグラフは、第一ダンパ200の第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250の弾性的な圧縮が開始された後の特性を示している。図11に示されるような角度差θ2の隙間がある状態にあっては、第一コイルスプリング240、第二コイルスプリング250、および中間プレート230は、第一ドライブプレート210からは離間するものの、第一ドリブンプレート220には支持されている。この状態は、第一ドリブンプレート220に、第一コイルスプリング240、第二コイルスプリング250、および中間プレート230を含むダイナミックダンパが設けられている状態に相当する。この場合の回転速度とトルク変動との相関関係は、図13において破線で示されるようになり、反共振点の回転速度N21は、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250の弾性的な圧縮が開始された後の反共振点の回転速度N2よりも低い状態となる。図13の破線は、捩れ角が小さい状態であり、図13の実線は捩れ角が大きい状態である。すなわち、実施形態(4)の構成によっても、捩れ角が大きくなるほど反共振点の回転速度N2が高くなる。よって、実施形態(4)によれば、エンジンが、出力トルクが大きくなるほど回転速度が高くなるよう、構成あるいは制御される場合において、捩れ角が大きくなるほど、反共振点の回転速度N2(N21)が高くなる。したがって、実施形態(4)によれば、ダンパ100によって、エンジンの回転速度のより広い範囲において、トルク変動をより効果的に抑制できるようになる。
図14は、実施形態(4)におけるダンパ100の捩れ状態の捩りトルクの単位角度あたりの変化率を示すグラフである。なお、図14には、第二回転要素に対して第一回転要素が一方向に捩れた場合の特性が示されているが、逆方向に捩れた場合にも同様の特性、ただし、方向あるいは符号が逆の特性を示す。図14に示されるように、第一ダンパ200は、捩れ角θ2(第一回転要素と第二回転要素との角度差、≠0)から第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250の弾性的な圧縮が開始される(第一範囲)。さらに、実施形態(1)〜(3)の少なくともいずれかの構成を備えることにより、第一ダンパ200において、捩れ角がθ3以上である場合の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K12が、捩れ角がθ3より小さい場合の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K11よりも大きいよう、構成することができる。
また、第二ダンパ300は、第一回転要素と第二回転要素とが捩れる場合、セット状態からコイルスプリング340の弾性的な圧縮が開始される。そして、第二ダンパ300においても、実施形態(1)〜(3)と同様の構成を備えることにより、第二ダンパ300において、捩れ角がθ1以上である場合の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K22が、捩れ角がθ1より小さい場合の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K21よりも大きいよう、構成することができる。
さらに、ダンパ100では、捩れ角θ2,θ3を、捩れ角θ1よりも大きくしている。よって、図14に示されるように、ダンパ100(アセンブリ)にあっては、捩れ角が0以上θ1未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K21よりも、捩れ角がθ1以上θ2未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K22が大きく、捩れ角がθ1以上θ2未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K22よりも、捩れ角がθ2以上θ3未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K11+K22が大きく、捩れ角がθ2以上θ3未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K11+K22よりも、捩れ角がθ3以上θ4未満の捩りトルクの単位角度あたりの変化率K12+K22が大きくなる。実施形態(4)によれば、捩れ角が大きいほど捩りトルクの単位角度あたりの変化率が大きくなるダンパ100(アセンブリ)を得ることができる。なお、捩れ角θ4は、捩れ角の上限である。
また、実施形態(4)では、ダンパ100は、捩れ角(の大きさ、絶対値)が0以上θ2未満において、コイルスプリング340(第二弾性要素)が弾性的に圧縮され、かつ第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250(第一弾性要素)が弾性的に圧縮されない状態(第一状態)を有し、かつ、捩れ角がθ2以上において、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250(第一弾性要素)ならびにコイルスプリング340(第二弾性要素)が弾性的に圧縮される状態(第二状態)を有する。これにより、例えば、捩れ角が例えば0に近い状態など、捩れ角が比較的小さい状態(第一状態)において、捩りトルクの単位角度あたりの変化率をより低く設定することができる。よって、実施形態(4)によれば、周方向に振動が生じた場合に、周方向に隙間(ガタ)がある二つの部材間で作用するトルクをより小さくすることができる。したがって、ダンパ100の共振点をより低い回転速度へ移動させることができる。これにより、回転速度のより広い範囲においてトルク振動を抑制し、音や振動をより低減することができる。なお、ダンパ100は、第一状態において、第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250が弾性的に圧縮され、かつコイルスプリング340が弾性的に圧縮されない構成であっても、同様の効果が得られる。
また、実施形態(4)では、ダンパ100は、捩れ角(の大きさ、絶対値)が0以上θ2未満であって、コイルスプリング340(第二弾性要素)が弾性的に圧縮され、かつ第一コイルスプリング240および第二コイルスプリング250(第一弾性要素)が弾性的に圧縮されない状態(第一状態)において、第一コイルスプリング240、第二コイルスプリング250、および中間プレート230を含むダイナミックダンパを有するような特性を示す。この場合、捩れ角がθ2未満である状態における反共振点の回転速度N21を、捩れ角がθ2以上である状態における反共振点の回転速度N2よりも低くすることができる。よって、実施形態(4)によれば、ダンパ100によって、エンジンの回転速度のより広い範囲において、トルク変動をより効果的に抑制できるようになる。
また、実施形態(4)では、図示しないが、第一弾性要素における捩りトルクの単位角度あたりの変化率を、第二弾性要素における捩りトルクの単位角度あたりの変化率よりも小さくしてもよい。この場合、より軽い錘233(中間質量要素)により、反共振点の回転速度N2,N21においてトルク変動を抑制する効果を得ることができ、ひいては、ダンパ100の小型化や軽量化に資する。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、高さ、数、配置、位置等)は、適宜に変更して実施することができる。