以下、本発明の各実施形態に係る血圧推定装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置の外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置が被測定部位に装着された状態を示す断面図である。図2においては、左手首の長手方向に対して垂直な断面を図示している。本実施形態においては、被測定部位は、左手首である。なお、被測定部位は、右手首であってもよい。
図1および図2に示すように、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置1は、表示部10と、ベルト部20と、心電波形を検出するための、第1接触電極61および第2接触電極62と、脈波センサとを備える。
表示部10は、血圧推定装置1の血圧推定結果を表示する。ベルト部20は、表示部10に接続され、被測定部位である左手首90を取り巻く。脈波センサは、被測定部位を通る動脈の脈波を検出する脈波検出部40Eを有する。
血圧推定装置1は、大別して、被測定部位である左手首90を取り巻くベルト部20と、ベルト部20に接続された表示部10とから構成されている。
図1に示すように、表示部10は、ベルト部20から外側に突出した四角錐台状の外形を有する。表示部10は、被測定者の活動の妨げとならないように、小型かつ薄型であることが好ましい。
表示部10には、表示器50、報知部58および操作部52が設けられている。表示器50および報知部58は、表示部10の天面部10aに配置されている。操作部52は、表示部10の側面部10fに配置されている。
表示部10は、ベルト部20の一方の端部20eと一体成形により一体に設けられている。なお、ベルト部20と表示部10とが別々に形成され、たとえばヒンジなどの係合部材によって、表示部10とベルト部20とが互いに接続される構成であってもよい。図1に示すように、表示部10の底面10bと、ベルト部20の端部20fとは、バックル15によって互いに接続されている。
バックル15は、外周側に配置された板状部材25と、内周側に配置された板状部材26とを含む。板状部材25の一方の端部25eは、幅方向Yに沿って延びる連結棒27を介して表示部10に対して回動自在に取り付けられている。板状部材25の他方の端部25fは、幅方向Yに沿って延びる連結棒28を介して、板状部材26の他方の端部26fに対して回動自在に取り付けられている。板状部材26の一方の端部26eは、固定部29によってベルト部20の端部20fの近傍に固定されている。
ベルト部20の周方向に関して、固定部29の取り付け位置は、被測定者の左手首90の周囲長に合わせて予め調節されている。血圧推定装置1は、全体として略環状の形状を有する。表示部10の底面10bとベルト部20の端部20fとの間は、バックル15によって図1中の矢印B方向に開閉可能に構成されている。
ベルト部20は、ベルト本体23と、ベルト本体23の内周側に設けられた膨縮可能な流体袋21とを含む。ベルト部20の幅方向Yの寸法は、たとえば、約30mmである。ベルト本体23は、左手首90を周方向に沿って取り巻く細長い帯状の部材である。ベルト本体23は、外周部20bを有する。ベルト本体23は、厚さ方向に関して可撓性を有し、周方向に関して非伸縮性を有するプラスチック材料から構成されている。
流体袋21は、ベルト本体23の内周部23aに沿って取り付けられており、左手首90に接するベルト部20の内周部20aを構成する外表部を有する。流体袋21は、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを重ねた状態で、その周縁部を溶着することにより流体を収容可能な袋状に形成されている。流体とは、液体および気体の両方を含み、たとえば、流体として、水または空気などを用いることができる。血圧推定装置1には、流体袋21内の圧力を検出する圧力センサが設けられている。
ベルト部20の一方の端部20eと他方の端部20fとの間におけるベルト部20の内周部20aに、第1接触電極61および脈波センサの脈波検出部40Eが設けられている。本実施形態においては、ベルト部20の内周部20aを構成する流体袋21の外表部に、第1接触電極61および脈波センサの脈波検出部40Eが設けられている。
脈波センサの脈波検出部40Eは、ベルト部20の幅方向Yにおいて互いに間隔をあけて並ぶ4個の電極で構成されている。具体的には、幅方向Yの一方側から順に、電流電極41、検出電極42、検出電極43および電流電極44が1列に並んで配置されている。ベルト部20の幅方向Yにおける検出電極42と検出電極43との間隔は、たとえば、2mmである。電流電極41、検出電極42、検出電極43および電流電極44の各々は、矩形状の外形を有し、薄く柔軟に形成されている。
血圧推定装置1が左手首90に装着された状態において、脈波検出部40Eは、左手首90の橈骨動脈91に対応して配置される。なお、橈骨動脈91は、左手首90内において、手の平側の面である左手首90の掌側面90aの近傍を通っている。本実施形態においては、脈波検出部40Eは、左手首90を通る橈骨動脈91のインピーダンスの変化に基づいて脈波を検出する。
なお、脈波検出部による脈波の検出方法は、動脈のインピーダンスの変化から脈波を検出する方法に限られない。たとえば、脈波センサは、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて光を照射する発光素子と、その光の反射光または透過光を受光する受光素子とを備えて、動脈の容積の変化を脈波として検出してもよい。
または、脈波センサは、被測定部位に当接された圧電センサを備えて、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈の圧力による歪みを電気抵抗の変化として検出してもよい。さらに、脈波センサは、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて電波を送る送信素子と、その電波の反射波を受信する受信素子とを備えて、動脈の脈波による動脈とセンサとの間の距離の変化を送信波と反射波との間の位相のずれとして検出してもよい。
第1接触電極61は、ベルト部20の周方向において、脈波センサの脈波検出部40Eに隣接して配置されている。第1接触電極61は、矩形状の外形を有し、薄く柔軟に形成されている。
ベルト部20の一方の端部20eと他方の端部20fとの間におけるベルト部20の外周部20bに、第2接触電極62が設けられている。本実施形態においては、第2接触電極62は、ベルト部20の外周部20bを構成するベルト本体23の外表部に設けられている。第2接触電極62は、被測定部位を取り巻いた状態のベルト部20の外周部20bにおいて、表示部10とはベルト部20の周方向の反対側に位置している。第2接触電極62は、矩形状の外形を有し、薄く柔軟に形成されている。
脈波検出部40Eおよび第2接触電極62の各々の少なくとも一部は、ベルト部20を間に挟んで互いに対向している。本実施形態においては、脈波検出部40Eの全体が、ベルト部20を間に挟んで第2接触電極62と対向している。第1接触電極61の一部が、ベルト部20を間に挟んで第2接触電極62と対向している。なお、第1接触電極61の全体が、ベルト部20を間に挟んで第2接触電極62と対向していてもよい。
被測定者は、血圧推定装置1を左手首90に装着する際、バックル15を開いてベルト部20の環径を大きくした状態で、図1中の矢印Aで示す方向からベルト部20に左手を通す。次に、図2に示すように、被測定者は、左手首90の周りのベルト部20の角度位置を調節して、左手首90を通る橈骨動脈91に対向するように脈波センサの脈波検出部40Eを位置させる。
これにより、脈波センサの脈波検出部40Eは、左手首90の掌側面90aのうち橈骨動脈91に対応する部分90a1に当接する状態となる。この状態で、被測定者は、バックル15を閉じて固定する。このようにして、被測定者は血圧推定装置1を左手首90に装着する。血圧推定装置1が左手首90に装着された状態において、表示部10は、手の甲側の面である左手首90の背側面90bに対応して配置される。
図3は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置が被測定部位に装着された状態における、脈波センサの脈波検出部、第1接触電極および第2接触電極の配置を示す図である。図3に示すように、血圧推定装置1が左手首90に装着された状態において、脈波センサの脈波検出部40Eは、橈骨動脈91に沿って位置している。
ここで、血圧推定装置1の各構成について詳細に説明する。図4は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、表示部10には、CPU(Central Processing Unit)100と、表示器50と、メモリ51と、操作部52と、電池53と、通信部59とが設けられている。また、表示部10には、圧力センサ31と、ポンプ32と、開閉弁33とが設けられている。さらに、表示部10には、圧力センサ31の出力を周波数に変換する発振回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320とが設けられている。
脈波センサ40は、脈波検出部40Eと、通電および電圧検出回路49とを含む。電流電極41、検出電極42、検出電極43および電流電極44の各々は、通電および電圧検出回路49と接続されている。通電および電圧検出回路49は、信号用の配線72を通じて、CPU100と接続されている。
心電波形を検出するためのECG測定部60は、第1接触電極61と、第2接触電極62と電圧検出回路69とを含む。第1接触電極61および第2接触電極62の各々は、電圧検出回路69と接続されている。電圧検出回路69は、信号用の配線73を通じて、CPU100と接続されている。
表示器50は、たとえば、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成されており、CPU100からの制御信号に従って、血圧推定結果などの血圧推定に関する情報、および、その他の情報を表示する。なお、表示器50は、有機ELディスプレイに限られず、たとえば、LCD(Liquid Cristal Display)など、他のタイプのディスプレイで構成されていてもよい。
操作部52は、たとえば、プッシュ式スイッチで構成され、被測定者による血圧推定開始または停止の指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。なお、操作部52は、プッシュ式スイッチに限られず、たとえば、感圧式または静電容量式のタッチパネル式スイッチなどであってもよい。また、表示部10にマイクロフォンが設けられており、被測定者の音声による血圧推定開始または停止の指示が、マイクロフォンを通じてCPU100に入力されてもよい。
メモリ51は、血圧推定装置1を制御するためのプログラム、血圧推定装置1を制御するために用いられるデータ、血圧推定装置1の各種機能を設定するための設定データ、および、血圧値の推定結果のデータなどを非一時的に記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧推定装置1を制御するためのプログラムに従って、血圧推定装置1の各種機能を制御する。たとえば、オシロメトリック法による血圧測定を実行する場合は、CPU100は、操作部52からの血圧測定開始の指示に応じて、圧力センサ31からの信号に基づいて、ポンプ32を駆動させ、開閉弁33を閉状態にする。CPU100は、圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出する。
CPU100は、脈波伝播時間に基づく血圧推定を実行する場合、操作部52からの血圧推定開始の指示に応じて、流体袋21内の空気を排出させるために開閉弁33を開状態にする。
通信部59は、CPU100によって制御され、ネットワーク900を通じて所定の情報を外部の装置に送信する、または、ネットワーク900を通じて外部の装置から受信した情報をCPU100に伝送する。ネットワーク900で行なわれる通信は、無線および有線のいずれでもよい。たとえば、ネットワーク900は、インターネットであるが、これに限定されず、LAN(Local Area Network)のような他の種類のネットワークであってもよいし、USBケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。通信部59は、マイクロUSBコネクタを含んでいてもよい。
報知部58は、後述するように脈波検出部40Eによる脈波の検出精度が基準値を満たしているかどうかの判定結果を報知する。報知部58は、LED(light emitting diode)ライトまたはスピーカなどで構成されている。
ポンプ32および開閉弁33は、エア配管39を通じて、流体袋21に接続されている。ポンプ32は、たとえば、圧電ポンプである。ポンプ32は、流体袋21内を加圧するために、エア配管39を通して流体袋21内に空気を供給する。
圧力センサ31は、エア配管38を通じて、流体袋21に接続されている。圧力センサ31は、エア配管38を通じて、流体袋21内の圧力を検出する。圧力センサ31は、たとえば、ピエゾ抵抗式圧力センサである。圧力センサ31は、たとえば、大気圧を0点として検出した圧力を時系列の信号として出力する。
開閉弁33は、ポンプ32に搭載され、ポンプ32の駆動に連動して開閉する構成になっている。具体的には、開閉弁33は、ポンプ32が駆動されている間は閉じている。この間に、流体袋21内に空気が封入される。開閉弁33は、ポンプ32が停止している間は開いている。この間に、流体袋21内の空気がエア配管39を通じて大気中に排出される。開閉弁33は、逆止弁の機能を有しており、排出された空気が逆流することはない。
ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。
発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号を、CPU100に出力する。圧力センサ31の出力は、流体袋21内の圧力を制御するため、および、オシロメトリック法によって血圧値を算出するために用いられる。オシロメトリック法による血圧値としては、収縮期血圧(SBP:Systolic Blood Pressure)と、拡張期血圧(DBP:Diastolic Blood Pressure)とが含まれる。
電池53は、表示部10に搭載された各種要素に電力を供給する。電池53は、配線71を通じて、脈波センサ40の通電および電圧検出回路49にも電力を供給する。配線71は、信号用の配線72とともに、ベルト部20のベルト本体23と流体袋21との間に挟まれた状態で、ベルト部20の周方向に沿って表示部10と脈波センサ40との間に延在して設けられている。電池53は、CPU100とも接続されている。
以下、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置1を用いて血圧を推定する際の血圧推定装置1の動作について説明する。
図5は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置が被測定部位に装着されて脈波伝播時間を測定している状態を示す断面図である。図6は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置が検出した、ECGパルスと橈骨動脈の脈波との脈波伝搬時間を示す図である。図5においては、左手首の長手方向に沿った断面を図示している。なお、説明の便宜上、第1接触電極61の位置を変えて図示している。図6においては、縦軸に電圧(V)、横軸に時間を示している。
まず、ECGパルスおよび橈骨動脈91の脈波を検出する際には、図5に示すように、流体袋21は、内部の空気が排出されて非加圧状態になっている。
ECGパルスを検出するために、被測定者は、第2接触電極62を右手の指で押圧する。その結果、図5に示すように、第2接触電極62に押圧力P1が負荷され、脈波検出部40Eが被測定部位に押圧される。すなわち、脈波検出部40Eは、第2接触電極62がベルト部20の外周側から押圧された際に、被測定部位に押圧される位置に設けられている。なお、第2接触電極62に押圧力P1が負荷されることにより、第1接触電極61も被測定部位に押圧される。すなわち、第1接触電極61は、第2接触電極62がベルト部20の外周側から押圧された際に、被測定部位に押圧される位置に設けられている。
電圧検出回路69は、第1接触電極61と第2接触電極62との間の電圧信号v1を検出する。電圧信号v1は、配線73を通じてCPU100に出力される。CPU100は、入力された電圧信号v1に対して信号処理を施して、図6に示すECGパルスを生成する。
ECGパルスの検出と略同時に、橈骨動脈の脈波を検出するために、通電および電圧検出回路49は、電流電極41と電流電極44との間に、電圧を印加して、たとえば、周波数が50kHz、電流値が1mAである電流iを流す。この状態で、通電および電圧検出回路49は、検出電極42と検出電極43との間の電圧信号v2を検出する。電圧信号v2は、左手首90の掌側面90aのうち、脈波検出部40Eが対向する部分における、橈骨動脈91の血流の脈波による電気インピーダンスの変化を表す。
電圧信号v2は、配線72を通じてCPU100に出力される。CPU100は、入力された電圧信号v2に対して信号処理を施して、図6に示す橈骨動脈の脈波を生成する。さらに、CPU100は、ECGパルスのピークと、橈骨動脈の脈波の立ち上がり時点との間の、時間差Δtを算出する。この時間差Δtが、脈波伝播時間となる。なお、脈波伝播時間として、ECGパルスのピークと、橈骨動脈の脈波のピークとの間の、時間差Δtを算出してもよい。
図7は、本発明の実施形態1に係る血圧推定装置が被測定部位に装着されてオシロメトリック法によって血圧を測定している状態を示す断面図である。図7においては、左手首の長手方向に沿った断面を図示している。
血圧推定装置1のCPU100は、操作部52から血圧測定開始の指示が入力されると、ポンプ駆動回路320を通じてポンプ32を停止させ、開閉弁33を開いて、流体袋21内の空気を排出させる。なお、圧力センサ31の現時点での出力値が、大気圧に相当する値として設定される。
続いて、CPU100は、開閉弁33を閉じさせ、ポンプ駆動回路320を通じてポンプ32を駆動させて、流体袋21内に空気を供給する。これにより、流体袋21を膨張させるとともに流体袋21内を徐々に加圧する。図7に示すように、流体袋21は、左手首90の周方向に延在しており、ポンプ32により加圧されることにより、左手首90の周方向を一様に圧力Pcで圧迫する。
加圧過程において、CPU100は、血圧値を算出するために、圧力センサ31によって、流体袋21内の圧力Pcをモニタし、左手首90の橈骨動脈91で発生する動脈容積の変動成分を、脈波信号として取得する。
CPU100は、取得された脈波信号に基づいて、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを適用して、収縮期血圧および拡張期血圧の各々の血圧値の算出を試みる。CPU100は、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合には、流体袋21内の圧力Pcが、たとえば300mmHg程度の上限圧力に達していない限り、さらに流体袋21内の圧力Pcを上昇させて血圧値の算出を再度試みる。
CPU100は、血圧値を算出できた場合、ポンプ駆動回路320を通じてポンプ32を停止させ、開閉弁33を開いて、流体袋21内の空気を排出させる。CPU100は、血圧値の測定結果を表示器50に表示するとともに、メモリ51に記録する。なお、血圧値の算出は、加圧過程に限られず、減圧過程において行なわれてもよい。
ベルト部20の内周部20aを構成する流体袋21の外表部と左手首90との間には、脈波検出部40Eおよび第1接触電極61しか存在していないので、流体袋21による圧迫が他の部材により阻害されることがなく、血管を充分に閉じることができる。したがって、オシロメトリック法による血圧測定を精度良く行うことができる。
CPU100は、オシロメトリック法によって測定された血圧値と脈波伝播時間Δtとのキャリブレーションを行なうことにより、血圧値と脈波伝播時間Δtとを互いに対応づける。その結果、脈波伝播時間Δtに基づいて血圧値を推定することが可能となる。
本実施形態に係る血圧推定装置1においては、ECGパルスを検出する際に、第2接触電極62がベルト部20の外周側から被測定者によって押圧されることにより、脈波検出部40Eが被測定部位に押圧されて密着する構成となっている。この状態で橈骨動脈91の脈波が検出されることにより、橈骨動脈91の脈波の検出精度が上がり、脈波伝播時間(PTT)の測定精度を高めることができる。ひいては、血圧推定装置1の精度を高めることができる。第2接触電極62が、被測定部位を取り巻いた状態のベルト部20の外周部20bにおいて、表示部10とはベルト部20の周方向の反対側に位置していることにより、表示部10を被測定者の左手首90の甲側に位置させた状態で橈骨動脈91の脈波を効果的に検出することができる。
本実施形態に係る血圧推定装置1においては、報知部58は、脈波検出部40Eによる脈波の検出精度が基準値を満たしているかどうかの判定結果を報知する。具体的には、CPU100は、検出された橈骨動脈91の脈波のSN比(signal-noise ratio)が基準値を満たしているかどうかを判定する。
CPU100は、SN比が基準値未満の場合は、報知部58に信号を送信し、たとえば、報知部58であるLEDライトを赤色に発光させる。CPU100は、SN比が基準値以上の場合は、報知部58に信号を送信し、たとえば、報知部58であるLEDライトを青色に発光させる。これにより、被測定者に第2接触電極62の押圧が十分であるかどうかを知らせることができる。
本実施形態に係る血圧推定装置1においては、ECGパルスのピークと、橈骨動脈の脈波のピークとの間の、時間差Δtを脈波伝播時間(PTT)として血圧値を推定することにより、たとえば、バルサルバ負荷時、または、寒冷負荷時における血圧推定精度を高く維持することができる。
本実施形態に係る血圧推定装置1においては、オシロメトリック法による血圧測定を行なうために、流体袋21、圧力センサ31、発振回路310、ポンプ32、ポンプ駆動回路320および開閉弁33を備えているが、必ずしもこれらを備えていなくてもよい。血圧推定装置1がこれらを備えていない場合は、他の装置によってオシロメトリック法による血圧測定が行なわれ、その血圧測定値と脈波伝播時間Δtとのキャリブレーションを行なうことにより、血圧値と脈波伝播時間Δtとを互いに対応づける。このようにした場合にも、脈波伝播時間Δtに基づいて血圧値を推定することが可能となる。なお、この場合は、第1接触電極61および脈波センサの脈波検出部40Eは、ベルト本体23の内周部23aに設けられる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置について図を参照して説明する。なお、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置は、ベルト本体と流体袋との間に配置された固形部材を備える点のみ実施形態1に係る血圧推定装置1と異なるため、実施形態1に係る血圧推定装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
図8は、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置の外観を示す斜視図である。図9は、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置が被測定部位に装着された状態を示す断面図である。本実施形態においては、被測定部位は、左手首である。図9においては、左手首の長手方向に対して垂直な断面を図示している。なお、被測定部位は、右手首であってもよい。
図8および図9に示すように、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置2は、表示部10と、ベルト部20と、心電波形を検出するための、第1接触電極61および第2接触電極62と、脈波センサとを備える。
ベルト部20は、ベルト本体23と、ベルト本体23の内周側に設けられた膨縮可能な流体袋21とを含む。ベルト部20は、ベルト本体23と流体袋21との間に配置された固形部材22をさらに含む。
固形部材22は、ベルト本体23を間に挟んで第2接触電極62の少なくとも一部と対向し、かつ、流体袋21を間に挟んで脈波検出部40Eの少なくとも一部と対向している。固形部材22は、被測定部位の形状に沿うように湾曲している。
本実施形態においては、脈波検出部40Eの全体が、流体袋21を間に挟んで固形部材22と対向している。第1接触電極61の全体が、流体袋21を間に挟んで固形部材22と対向している。第2接触電極62の全体が、ベルト本体23を間に挟んで固形部材22と対向している。
固形部材22は、ベルト本体23の内周部23a、および、ベルト本体23の内周部23aと対向する流体袋21の外表部21aの、各々と接合されている。固形部材22は、たとえば、厚さが1mm以上2mm以下の板状のポリプロピレンなどの樹脂で構成されている。
図10は、本発明の実施形態2に係る血圧推定装置が被測定部位に装着されて脈波伝播時間を測定している状態を示す断面図である。図10においては、左手首の長手方向に沿った断面を図示している。なお、説明の便宜上、第1接触電極61の位置を変えて図示している。
図10に示すように、ECGパルスおよび橈骨動脈91の脈波を検出する際には、被測定者は、第2接触電極62を右手の指で押圧する。その結果、第2接触電極62に押圧力P1が負荷され、固形部材22を介して脈波検出部40Eが被測定部位に押圧される。固形部材22を介して脈波検出部40Eを被測定部位に押圧することにより、電流電極41、検出電極42、検出電極43および電流電極44の各々を均一な押圧力で被測定部位に押圧することができ、橈骨動脈91の脈波の検出精度が上がり、脈波伝播時間(PTT)の測定精度を高めることができる。ひいては、血圧推定装置2の精度を高めることができる。
また、固形部材22が、被測定部位の形状に沿うように湾曲していることによって、電流電極41、検出電極42、検出電極43および電流電極44の各々をより均一な押圧力で被測定部位に押圧することができる。
さらに、第1接触電極61の全体が、流体袋21を間に挟んで固形部材22と対向していることにより、第1接触電極61の全体を被測定部位に密着させることができる。その結果、ECGパルスの検出精度が上がり、脈波伝播時間(PTT)の測定精度を高めることができる。これによっても、血圧推定装置2の精度を高めることができる。
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。