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JP2019038735A - 酸化物焼結体、酸化物焼結体の製造方法、スパッタリング用ターゲット、及び非晶質の酸化物半導体薄膜 - Google Patents

酸化物焼結体、酸化物焼結体の製造方法、スパッタリング用ターゲット、及び非晶質の酸化物半導体薄膜 Download PDF

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JP2019038735A JP2017200331A JP2017200331A JP2019038735A JP 2019038735 A JP2019038735 A JP 2019038735A JP 2017200331 A JP2017200331 A JP 2017200331A JP 2017200331 A JP2017200331 A JP 2017200331A JP 2019038735 A JP2019038735 A JP 2019038735A
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文彦 松村
Fumihiko Matsumura
文彦 松村
中山 徳行
Noriyuki Nakayama
徳行 中山
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Abstract

【課題】安定して低いキャリア濃度と高いキャリア移動度を示す非晶質の酸化物半導体薄膜を形成することが可能な酸化物焼結体を提供する。【解決手段】構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体であって、ビックスバイト型構造のIn2O3相と蛍石型構造のIn4Sn3O12相とを含み、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつIn、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、主にインジウム、ケイ素、及びスズを含有する酸化物焼結体、酸化物焼結体の製造方法、スパッタリング用ターゲット、及び非晶質の酸化物半導体薄膜に関する。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)の1種である。TFTは、基本構成としてゲート端子、ソース端子、及びドレイン端子を備えた3端子素子であり、基板上に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールが移動するチャネル層として用い、ゲート端子に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクティブ素子である。TFTは、現在、最も多く実用化されている電子デバイスであり、その代表的な用途として液晶駆動用素子がある。
TFTとして、現在、最も広く使われているのは多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜をチャネル層材料としたMetal−Insulator−Semiconductor−FET(MIS−FET)である。シリコンを用いたMIS−FETは、可視光に対して不透明であるため、透明回路を構成することができない。このため、MIS−FETを液晶ディスプレイの液晶駆動用スイッチング素子として応用した場合、該デバイスは、ディスプレイ画素の開口比が小さくなる。
また、最近では、液晶の高精細化が求められるのに伴い、液晶駆動用スイッチング素子にも高速駆動が求められるようになってきている。高速駆動を実現するためには、キャリアである電子又はホールの移動度が少なくともアモルファスシリコンのそれより高い半導体薄膜をチャネル層に用いる必要が出てきている。
このような状況に対して、特許文献1では、気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn、及びOの元素から構成される透明アモルファス酸化物薄膜であって、該酸化物の組成は、結晶化したときの組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)であり、不純物イオンを添加せずに、キャリア移動度(キャリア電子移動度ともいう)が1cm/(V・s)超、かつキャリア濃度(キャリア電子濃度ともいう)が1016/cm以下である半絶縁性であることを特徴とする透明半絶縁性アモルファス酸化物薄膜、及びこの透明半絶縁性アモルファス酸化物薄膜をチャネル層としたことを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。
また、特許文献2には、特許文献1に記載のアモルファス酸化物薄膜を形成することを目的としたスパッタリングターゲット、すなわち、少なくともIn、Zn、Gaを含む焼結体ターゲットであって、その組成にIn、Zn、Gaを含み、相対密度が75%以上、かつ抵抗値ρが50Ωcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲットが提案されている。
また、特許文献3では、高いキャリア移動度を実現する材料として、ガリウムが酸化インジウムに固溶していて、原子数比Ga/(Ga+In)が0.001〜0.12であり、全金属原子に対するインジウムとガリウムとの含有率が80原子%以上であり、Inのビックスバイト構造を有する酸化物薄膜を用いることを特徴とする薄膜トランジスタが提案されており、その原料として、ガリウムが酸化インジウムに固溶していて、原子比Ga/(Ga+In)が0.001〜0.12であり、全金属原子に対するインジウムとガリウムの含有率が80原子%以上であり、Inのビックスバイト構造を有することを特徴とする酸化物焼結体が提案されている。
また、特許文献4には、ビックスバイト構造を有し、酸化インジウム、酸化ガリウム及び正三価及び/又は正四価の金属を含有する酸化物焼結体であって、正三価及び/又は正四価の金属含有量が100〜10000ppmであって、インジウム(In)とガリウム(Ga)の組成量が原子%で0.005<In/(In+Ga)<0.15の式を満たす組成範囲にある焼結体が記載され、TFT評価では、60cm/V・s程度の高い移動度を示す実施例が開示されている。
また、特許文献5には、酸化インジウムを主成分とし、シリコンがドープされ、さらにスズ又はタングステンがドーピングされることにより製造された、透過率の大きい透明導電性薄膜が提案されている。
特開2010−219538号公報 特開2007−073312号公報 国際公開第2010/032422号 国際公開第2011/152048号 特開2004−087451号公報
しかしながら、特許文献1では、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法のいずれかの気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn、及びOの元素から構成される透明アモルファス酸化物薄膜(a−IGZO膜)は、そのキャリア電子移動度が概ね1〜10cm/(V・秒)の範囲にとどまり、ディスプレイのさらなる高精細化に対してキャリア移動度が不足するおそれがある。
また、特許文献2に記載されたターゲットがホモロガス相の結晶構造を示す多結晶酸化物焼結体であるため、このターゲットにより得られるアモルファス酸化物薄膜は、特許文献1と同様に、キャリア移動度が概ね10cm/V・s程度にとどまってしまう。
また、特許文献3に記載された結晶質の酸化物半導体薄膜をTFTに適用した場合、結晶粒界に起因するTFT特性のばらつきが課題であり、特に、第8世代以上の大型ガラス基板上に、均一にTFTを形成することは極めて困難である。すなわち、TFT特性のばらつきを抑制するため、酸化物半導体薄膜を非晶質の状態にする要請がある。
また、特許文献4に記載された焼結体によって得られる酸化物半導体薄膜には、微結晶等が生成し易い点が課題であり、特に、大型ガラス基板上に歩留まり良くTFTを形成することが困難になる。一般に酸化物半導体の薄膜トランジスタの製造工程では、一旦、非晶質膜を形成し、その後のアニール処理によって非晶質あるいは結晶質の酸化物半導体薄膜を得る。この非晶質膜形成工程の後、所望のチャネル層の形状にパターニング加工するため、蓚酸や塩酸等を含む水溶液等の弱酸によるウェットエッチングを実施する。ところが、特許文献4において実質的にビッグスバイト構造のみからなる酸化物焼結体を用いた場合には、形成される非晶質膜の結晶化温度が低くなってしまい、成膜後の段階ですでに微結晶が生成されるため、エッチング工程で残渣が発生し、あるいは部分的に結晶化してエッチングできないといった問題が生じる。すなわち、フォトリソグラフィ技術等を利用して、ウェットエッチング法により、所望のTFTチャネル層のパターンを形成することが困難となるか、あるいはTFT形成ができたとしても安定動作しない等の問題が起こってしまう。
また、特許文献5に記載された透明導電性薄膜では、結晶化温度が180℃以上と比較的低温で結晶化してしまう。成膜後の段階ですでに微結晶が生成してエッチング工程で残渣が発生し、あるいは部分的に結晶化してエッチングできないといった問題が生じる。上記特許文献4と同様に、所望のTFTチャネル層のパターンを形成することが困難になるか、あるいはTFT形成ができたとしても安定動作しない等の問題が起こってしまう。
さらに、非晶質の酸化物半導体薄膜がTFTに使用される際、TFTのon/offを高めるため、低いキャリア濃度を示すことが求められているが、特許文献1〜5には、このような酸化物半導体薄膜を形成することが可能な酸化物焼結体が記載されていない。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて考案されたものであり、TFT特性のばらつきを抑制し、良好なウェットエッチング性を有し、かつ低いキャリア濃度で高いキャリア移動度を示す非晶質の酸化物半導体薄膜を形成することが可能な、新規かつ改良された酸化物焼結体、酸化物焼結体の製造方法、スパッタリング用ターゲット、及び非晶質の酸化物半導体薄膜を提供することを目的とする。
すわなち、上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る酸化物焼結体は、構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体であって、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすことを特徴とする。
また、本発明の一態様では、トルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含むことが好ましい。
また、本発明の一態様では、前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.1≦Si/(In+Si)<0.2の関係式を満たすことが好ましい。
本発明の他の態様では、上述した酸化物焼結体の製造方法であって、前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすように、酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズ粉末を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合粉末を成形する成形工程と、前記成形工程で得られた成形体を焼成する焼成工程とを有することを特徴とする。
本発明の他の態様に係るスパッタリング用ターゲットは、上述した酸化物焼結体からなることを特徴とする。
本発明の他の態様では、構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体から構成される非晶質の酸化物半導体薄膜であって、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たし、キャリア濃度が9.8×1018cm−3以下であり、かつキャリア移動度が5.8cm/V・s以上であることを特徴とする。
また、本発明の他の態様では、キャリア濃度が9.0×1017cm−3以下であり、かつキャリア移動度が10cm/V・s以上であることが好ましい。
本発明によれば、良好なウェットエッチング性を有し、かつ低いキャリア濃度で高いキャリア移動度を示す非晶質の酸化物半導体薄膜を安定して形成することができる。
本発明の一実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法の概略を示すフロー図である。 X線回折測定により得られた実施例7及び比較例3、4の酸化物焼結体のX線回折パターンを示す特性図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
[1.酸化物焼結体]
まず、本発明の一実施形態に係る酸化物焼結体の組成について説明する。この酸化物焼結体は、構成元素として、インジウム(In)、ケイ素(Si)、及びスズ(Sn)を含有し、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3であり、かつIn、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすことを特徴とする。
In及びSiの合計に対するSiの含有量は、原子数比で、0.05≦Si/(In+Si)≦0.3の関係式を満たし、好ましくは0.1≦Si/(In+Si)<0.2の関係式を満たし、より好ましくは0.12≦Si/(In+Si)≦0.15の関係式を満たす。これは、ケイ素が酸素との結合力が強く、後述する本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜の酸素欠損量を低減させる効果があるので、キャリア濃度は低く抑えられ、キャリア移動度の高いものが得られるからである。Si/(In+Si)が0.05未満の場合、非晶質の酸化物半導体薄膜の酸素欠損量を低減させることができないため、これらの効果が十分得られない。一方、Si/(In+Si)が0.3を超えると、スパッタリングターゲットのバルク抵抗値が高くなり、スパッタリング時にアーク放電(アーキング)のような異常放電により、均質な膜を得ることができなくなる。
本実施形態に係る酸化物焼結体は、上記の通り規定される組成範囲のInとSiに加え、Snを含有する。In、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量は、原子数比で、0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たし、好ましくは0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.17の関係式を満たす。Snは、後述する本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜の結晶化温度を高める効果を有する。この効果によって、本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜をTFTに適用した場合には、TFTのon/offを高めることが可能になる。Sn/(In+Si+Sn)が0.1未満の場合は、キャリア濃度の抑制効果が無く、高キャリア濃度となり、TFTのon/off駆動しない可能性がある。また、熱処理後の薄膜の結晶構造としては、微結晶の部分を含むため、エッチングを行った際に残渣発生の可能性がある。一方、Sn/(In+Si+Sn)が0.2を超えると、キャリア濃度が抑制されるが、スパッタリングターゲットのバルク抵抗値が高くなり、スパッタリング時に異常放電(アーキング)のような異常放電により、均質な膜を得ることができなくなる。
次いで、本実施形態に係る酸化物焼結体の焼結体組織について説明する。本実施形態では、酸化物焼結体を原料とするスパッタリング用ターゲットを用いて得られる非晶質の酸化物半導体薄膜の結晶化温度を高めるため、酸化物焼結体の焼結体組織が重要である。
本実施形態に係る酸化物焼結体は、ビックスバイト型構造のIn相と、In相以外の中間化合物として蛍石型構造のInSn12相とによって構成される。本実施形態では、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含むことで、得られる酸化物半導体薄膜が高い結晶化温度となる。特に、蛍石型構造のInSn12相を含む酸化物焼結体により得られる酸化物薄膜は高い結晶化温度、すなわち300℃以上の結晶化温度を示し、安定な非晶質となる。このような非晶質の酸化物薄膜は、TFT製造においてウェットエッチングによるパターニング加工においてエッチング残渣が残らないので、良好なエッチング性を示す。
また、本実施形態では、トルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含んでもよい。これにより、非晶質の酸化物半導体薄膜の結晶化温度をさらに高めることができるため、高温処理時にエッチング残渣をより確実に抑制でき、大量生産において歩留まりがないものとなる。ただし、トルトバイタイト型構造のIn(Si)相を多量に含むと、このIn(Si)相が導電性に乏しく、スパッタリングの際に異常放電の原因となるおそれがある。
[2.酸化物焼結体の製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法の概略を示すフロー図である。本実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法は、図1に示すように、混合工程S1と成形工程S2と焼結工程S3とを有する。
まず、混合工程S1は、In、Si、及びSnを含む原料粉末を混合する工程である。
本実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法では、これらの原料粉末が混合された後、成形され、成形体を常圧焼結法によって焼結される。そのため、この酸化物焼結体の組織の生成相は、本実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法の各工程S1〜S3における製造条件、例えば原料粉末の粒径、混合条件及び焼結条件に強く依存する。
原料粉末としては、酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズを用いることが好ましいが、一酸化ケイ素粉末や金属ケイ素粉末を用いてもよい。例えば、原料粉末を樹脂製ポットに入れ、バインダー(例えば、PVA)等とともに湿式ボールミル等で混合する。焼結体の各結晶粒を5μm以下に制御するためには、上記ボールミル混合を18時間以上行うことが好ましい。この際、ボールミルに使用される混合用ボールとしては、硬質ZrOボールを用いればよい。
本実施形態で得られる酸化物焼結体の焼結体組織は、ビックスバイト型構造のIn相と、In相以外の中間化合物として蛍石型構造のInSn12相とから構成され、場合によってはトルトバイタイト型構造のIn(Si)相を含むが、各結晶粒の平均粒径が5μm以下になるよう制御されることが好ましい。このため、原料粉末である酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズの平均粒径をそれぞれ3.0μm以下とすることが好ましく、それぞれ1.0μm以下とすることがより好ましい。なお、平均粒径とは、レーザー回折法で得られる体積基準の粒度分布を示すものである。
酸化インジウム粉末は、ITO(スズ添加インジウム酸化物)の原料であり、焼結性に優れた微細な酸化インジウム粉末の開発がITOの改良とともに進められてきた。酸化インジウム粉末は、ITO用原料として大量に継続して使用されているため、最近では平均粒径1.0μm以下の原料粉末を入手することが可能である。また、二酸化ケイ素粉末は、セラミックスやガラスの原料として広くに使用されておりであるため、平均粒径1.0μm以下の原料粉末を入手することが可能である。さらに、酸化スズ粉末は、ITO(スズ添加インジウム酸化物)の原料であり、焼結性に優れた微細な酸化スズ粉末の開発は、ITOの改良とともに進められてきた。酸化スズ粉末も、酸化インジウム同様にITO用原料として大量に継続して使用されているため、最近では平均粒径1.0μm以下の原料粉末を入手することが可能である。
次いで、成形工程S2は、上記混合工程S1において得られた混合粉末を成形する工程である。すなわち、原料粉末の混合後は、スラリーを取り出し、スプレードライヤー等により造粒を行う。その後、得られた造粒物を、冷間静水圧プレスで9.8MPa(0.1ton/cm)〜294MPa(3ton/cm)程度の圧力をかけて成形し、成形体とする。
次いで、焼結工程S3は、上記成形工程S2で得られた成形体を焼結する工程である。焼結手段として、常圧焼結法の適用が好ましい。常圧焼結法は、簡便かつ工業的に有利な方法であって、低コストの観点からも好ましい手段である。
焼結工程S3では、酸素が存在する雰囲気とすることが好ましく、雰囲気中の酸素体積分率が20%を超えることがより好ましい。特に、酸素体積分率が20%を超えることで、酸化物焼結体がより一層高密度化する。雰囲気中の過剰な酸素によって、焼結初期には成形体表面の焼結が先に進行する。続いて成形体内部の還元状態での焼結が進行し、最終的に高密度の酸化物焼結体が得られる。
酸素が存在しない雰囲気では、成形体表面の焼結が先行しないため、結果として焼結体の高密度化が進まない。酸素が存在しなければ、特に900〜1000℃程度において酸化インジウムが分解して金属インジウムが生成するようになるため、目的とする酸化物焼結体を得ることは困難である。
常圧焼結の温度範囲は、1200〜1550℃が好ましく、より好ましくは1350〜1450℃である。焼結温度が1200℃未満の場合には焼結反応が十分進行せず、焼結体の密度が高くならないだけでなく、蛍石型構造のInSn12相が生成しない。一方、焼結温度が1550℃を超えても、高密度化が進みにくくなる一方で、焼結炉の部材と酸化物焼結体が反応してしまい、目的とする酸化物焼結体が得られなくなる。特に、上述した酸化物焼結体では、In及びSiの合計に対するSiの含有量は原子数比でSi/(In+Si)が0.05以上であるため、焼結温度を1450℃以下とすることがより好ましい。1500℃前後の温度域では、In相の生成が著しくなる場合があるためである。In相は少量であれば支障はないが、多量の場合には成膜速度の低下やアーキング等を招くおそれがあり、好ましくない。なお、焼結時間は、10〜30時間であることが好ましく、より好ましくは15〜25時間である。
焼結温度までの昇温速度は、焼結体の割れを防ぎ、脱バインダーを進行させるためには、昇温速度を0.2〜5℃/分の範囲とすることが好ましい。この範囲であれば、必要に応じて、異なる昇温速度を組み合わせて、焼結温度まで昇温してもよい。昇温過程において、脱バインダーや焼結を進行させる目的で、特定温度で一定時間保持してもよい。焼結後、冷却する際は酸素導入を止め、1000℃までを0.2〜5℃/分、特に0.2℃/分〜1℃/分の降温速度で降温することが好ましい。
[3.スパッタリング用ターゲット]
本実施形態に係るスパッタリング用ターゲットは、上述した酸化物焼結体からなるものである。このスパッタリング用ターゲットは、酸化物焼結体を所定の大きさに加工することで得られる。ターゲットとして用いる場合には、さらに表面を研磨加工し、バッキングプレートに接着して得ることができる。ターゲット形状は、平板形が好ましいが、円筒形でもよい。円筒形ターゲットを用いる場合には、ターゲット回転によるパーティクル発生を抑制することが好ましい。また、上記酸化物焼結体を、例えば円柱形状に加工してタブレットとし、蒸着法やイオンプレーティング法による成膜に使用することができる。
スパッタリング用ターゲットとして用いる場合には、上述した酸化物焼結体の密度は6.3g/cm以上であることが好ましく、6.7g/cm以上がより好ましい。密度が6.3g/cm未満である場合、量産使用時のノジュール発生の原因となる。また、イオンプレーティング用タブレットとして用いる場合には、6.3g/cm未満であることが好ましく、3.4〜5.5g/cmがより好ましい。
[4.非晶質の酸化物半導体薄膜]
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜は、上述した酸化物焼結体から構成されるものであり、所定のキャリア濃度およびキャリア移動度を有する。
上記スパッタリング用ターゲットに備わる酸化物焼結体の組織は、ビックスバイト型構造のIn相と、In相以外の中間化合物としては蛍石型構造のInSn12相とから構成され、場合によってはトルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含んでもよい。
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜を得るためには、非晶質の酸化物半導体薄膜の結晶化温度が高いことが重要であるが、これには酸化物焼結体の組織が関係する。すなわち、上述した本実施形態に係る酸化物焼結体のように、蛍石型構造のInSn12相を含む場合には、これにより得られる酸化物半導体薄膜は高い結晶化温度、すなわち300℃以上、好ましくは350℃以上の結晶化温度を示し、安定な非晶質となる。また、トルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含む場合には、より高い結晶化温度を示し、さらに安定な非晶質となる。このように、酸化物半導体薄膜が安定な非晶質であるため、TFT特性のばらつきを抑制することができる。
これに対して、ビックスバイト型構造のIn相のみによって構成される酸化物焼結体、またはビックスバイト型構造のIn相とトルトバイタイト型構造のIn(Si)相により構成される酸化物焼結体から得られる酸化物薄膜は、その結晶化温度が低く、膜が結晶化したり、一部微結晶が生成したりし、非晶質ではなくなる。このような膜だと、ウェットエッチングによるパターニング加工でエッチング残渣が残ることがある。
したがって、本実施形態では、ビックスバイト型構造のIn相と、蛍石型構造のInSn12相とから構成され、あるいはトルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含むことで、高い結晶化温度を示すため、安定な非晶質なものとなる。このような酸化物薄膜は、ウェットエッチングによるパターニング加工でエッチング残渣が残らない。なお、エッチングには、ウェットエッチングの他に、プラズマを用いるドライエッチングがあるが、ドライエッチングでは、一般的に真空装置を利用するため、ウェットエッチングと比べコスト高となる。そのため、本実施形態のような酸化物半導体薄膜は、ウェットエッチングにも適用することができるため、TFT基板の製造において安価でパターニング加工できる。
上記非晶質の酸化物半導体薄膜のIn、Si、及びSnの組成は、上述した本実施形態に係る酸化物焼結体の組成とほぼ同じである。すなわち、In及びSiを酸化物として含有し、かつSnを含有する非晶質の酸化物焼半導体薄膜である。In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、In、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たす。
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜は、上記のような組成及び組織が制御された酸化物焼結体をスパッタリングターゲット等に用いて成膜し、上記の適当な条件で熱処理することで、キャリア濃度が9.8×1018cm−3以下に低下し、キャリア移動度5.8cm/V・s以上を示す。中でも、キャリア濃度が9.0×1017cm−3以下であり、キャリア移動度が10cm/V・s以上であるのがより好ましい。
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜は、ウェットエッチングあるいはドライエッチングによって、TFT等の用途で必要な微細加工を施される。ウェットエッチングによる微細加工を施すことができる。エッチング液(エッチャント)としては、弱酸であれば概ね使用できるが、シュウ酸あるいは塩酸を主成分とする弱酸が好ましく、例えば関東化学製ITO−06N等の市販品が使用できる。なお、TFTの構成によっては、ドライエッチングを選択してもよい。
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜の膜厚は限定されるものではないが、10〜500nm、好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは30〜100nmである。膜厚が10nm未満であると十分な半導体特性が得られず、結果として高いキャリア移動度が実現しない。一方、膜厚が500nmを超えると生産性の問題が生じてしまうので好ましくない。
[5.非晶質の酸化物半導体薄膜の成膜方法]
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜の成膜方法は、主に、上記スパッタリング用ターゲットを用いて、スパッタリング法で基板上に非晶質の酸化物半導体薄膜を形成し、次いで所定の熱処理条件にて熱処理を施す。
本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜の成膜方法では、一般的なスパッタリング法が用いられるが、特に、直流(DC)スパッタリング法であれば、成膜時の熱影響が少なく、高速成膜が可能であるため工業的に有利である。上記非晶質の酸化物半導体薄膜の成膜方法では、例えば、2×10−4Pa以下まで真空排気後、アルゴンと酸素からなる混合ガスを導入し、チャンバー内のガス圧を0.1〜1Pa、特に0.2〜0.8Paの圧力とし、ターゲットの面積に対する直流電力、すなわち直流電力密度が1〜7W/cm程度の範囲となるよう直流電力を印加して直流プラズマを発生させ、プリスパッタリングを実施することができる。このプリスパッタリングを5〜30分間行った後、必要により基板位置を修正した上で、スパッタリングすることが好ましい。
上記成膜方法におけるスパッタリング成膜では、成膜速度を向上させるために、投入する直流電力を高めることが行われる。
基板は、ガラス基板が代表的であり、無アルカリガラスが好ましいが、樹脂板や樹脂フィルムのうち上記プロセス条件に耐えうるものであれば使用してもよい。
熱処理条件は、酸化性雰囲気において、結晶化温度未満の温度である。酸化性雰囲気としては、酸素、オゾン、水蒸気、あるいは窒素酸化物等を含む雰囲気が好ましい。熱処理温度は、300〜600℃であり、300〜500℃が好ましい。熱処理時間は、熱処理温度に保持される時間が1〜120分間であり、5〜60分間が好ましい。
[6.まとめ]
以上より、本実施形態に係る酸化物焼結体は、構成元素として、In、Si、及びSnを含有するものであって、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつIn、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たしている。
また、本実施形態に係る酸化物焼結体の製造方法は、構成元素として、In、Si、及びSnが添加される酸化物焼結体の製造方法であって、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、In、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすように、酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズ粉末を混合する混合工程と、混合工程で得られた混合粉末を成形する成形工程と、成形工程で得られた成形体を焼成する焼成工程とを有している。
このような酸化物焼結体は、TFT特性のばらつきを抑制し、良好なウェットエッチング性を有し、かつ低いキャリア濃度で高いキャリア移動度を示す非晶質の酸化物半導体薄膜を安定して形成することができる。そのため、スパッタリングの際に、ターゲットの材料として非常に有用である。
さらに、本実施形態に係る非晶質の酸化物半導体薄膜は、構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体から構成されるものであり、酸化物焼結体はビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつIn、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たし、キャリア濃度が9.8×1018cm−3以下であり、かつキャリア移動度が5.8cm/V・s以上である。
このような非晶質の酸化物半導体薄膜は、上述したように、低いキャリア濃度と高いキャリア移動度を示す。そして、非晶質の酸化物半導体薄膜は、特にウェットエッチングによるパターニング加工しても、エッチング残渣なく膜質に影響を与えないといった良好なエッチング性を有する。そのため、この非晶質の酸化物半導体薄膜は、TFT製造現場において歩留まりなくTFT基板を製造できるため、工業的意義が極めて高い。
以下に、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
<酸化物焼結体の評価方法>
酸化物焼結体の組成分析はICP発光分光法にて行い、生成相の同定は、X線回折装置(フィリップス製)を用いて粉末法により行った。
<酸化物半導体薄膜の評価方法>
酸化物半導体薄膜の膜厚は表面粗さ計(テンコール社製)で測定し、キャリア濃度及びキャリア移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ製)によって求めた。膜の生成相はX線回折測定によって同定した。また、シュウ酸系エッチング液であるITO−06N(関東化学製)を30℃加熱し、酸化物半導体薄膜を1分間浸漬させエッチングを行った。エッチング残渣を確認するため、顕微鏡にて観察を行った。
[酸化物焼結体およびターゲットの作製]
酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズ粉末を平均粒径1.0μm以下となるよう、それぞれ調整して原料粉末とした。実施例1〜28及び比較例1〜7では、下記表1,2に示すSi/(In+Si)及びSn/(In+Si+Sn)の原子数比となるようにこれらの原料粉末を調合し、水とともに樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミルで混合した。この際、湿式ボールミルの条件として、硬質ZrOボールを用い、混合時間を18時間とした。これらを混合した後、生成されたスラリーを取り出し、スプレードライヤーで造粒した。得られた造粒物を、冷間静水圧プレスで294MPa(3ton/cm)の圧力をかけて成形し、成形体を作製した。
次に、得られた成形体を焼結した。炉内容積0.1m当たり5リットル/分の割合で焼結炉内の大気に酸素を導入する雰囲気の下、1350〜1450℃の焼結温度で20時間焼結した。この際、1℃/分で昇温した。そして、焼結後の冷却の際は酸素導入を止め、1000℃までを1℃/分で降温した。
次に、得られた酸化物焼結体を、直径152mm、厚み5mmの大きさに加工し、スパッタリング面をカップ砥石で最大高さRzが3.0μm以下となるように研磨した。加工した酸化物焼結体を、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングして、スパッタリング用ターゲットとした。
[酸化物焼結体の評価]
実施例1〜28及び比較例1〜7では、得られた酸化物焼結体の端材を用いて、組成分析を行ったところ、金属元素は原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることを確認した。
また、粉砕して得られた酸化物焼結体の粉末に対するCuKα線を用いたX線回折により酸化物焼結体の相を同定した結果の一例を図2に示す。比較例1〜7では、酸化物焼結体が、ビックスバイト型構造のIn相単相、あるいはビックスバイト型構造のIn相とトルトバイタイト型構造のIn(Si)相から構成されているのに対し、実施例1〜28では、酸化物焼結体が、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相の2相、あるいはビックスバイト型構造のIn相、蛍石型構造のInSn12相、及びトルトバイタイト型構造のIn(Si)相の3相から構成されていることを確認した。
[酸化物半導体薄膜の作製]
実施例1〜28及び比較例1〜7で得られたスパッタリング用ターゲット及び無アルカリのガラス基板(コーニングEagleXG)を用いて、表1、2に示す条件で直流スパッタリングによる成膜を行った。アーキング抑制機能のない直流電源を装備した直流マグネトロンスパッタリング装置(アネルバ製)のカソードに、上記スパッタリングターゲットを取り付けた。このとき、ターゲット−基板(ホルダー)間距離を60mmに固定した。2×10−4Pa以下まで真空排気後、アルゴンと酸素の混合ガスを各ターゲットのケイ素とスズとの量に応じて適当な酸素の比率になるように導入し、ガス圧を0.6Paに調整した。直流電力300W(1.64W/cm)を印加して直流プラズマを発生させた。10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を配置して、膜厚50nmの酸化物半導体薄膜を形成した。
実施例1〜28及び比較例1〜7では、成膜された酸化物半導体薄膜に、表1に記載の通り、酸素中、300〜600℃において熱処理を施した。なお、実施例1〜28の製造条件と評価結果を表1に示す。また、比較例1〜7の製造条件と評価結果を表2に示す。
Figure 2019038735
Figure 2019038735
[酸化物半導体薄膜の評価結果]
実施例1〜28の酸化物半導体薄膜は、原材料である酸化物焼結体がビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、In及びSiの合計に対するSiの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつIn、Si、及びSnの合計に対するSnの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすことで、キャリア濃度が9.8×1018cm−3以下、かつキャリア移動度が5.8cm/V・s以上と良好な特性を示し、膜質も非晶質であるためエッチング試験でエッチング残渣が発生しないことを確認した。
中でも、原子数比としてSi/(In+Si)を0.12〜0.15とし、Sn/(In+Si+Sn)を0.1〜0.17とし、酸素濃度を2%(体積分率)として300℃〜400℃で熱処理した実施例4〜6及び実施例13〜21は、酸素欠損の抑制が可能となり、キャリア移動度が10cm/V・s以上であり、キャリア濃度が9.0×1017cm−3以下であった。そのため、得られた非晶質の酸化物半導体薄膜は、優れた特性をそれぞれ示していることを確認した。特に、原子数比としてSi/(In+Si)を0.15、Sn/(In+Si+Sn)を0.12とした実施例18、19で得られた非晶質の酸化物半導体薄膜は、熱処理温度を320℃〜350℃に調整したことで、キャリア移動度が15cm/V・s以上、キャリア濃度が7.0×1016cm−3以下と、優れた特性を示していることも確認した。
それに対して、比較例1、3、4では、Snをドープしていないためにキャリア濃度の抑制ができず、当該薄膜を液晶駆動用スイッチング素子にした際には、OFF電流がとれず、スイッチング動作が困難となる。また、熱処理により微結晶が生成し、エッチング残渣が発生した。
また、比較例2で得られた酸化物半導体薄膜は、結晶化し、ビックスバイト型構造のIn相及びIn(Si)が生成したため、非晶質を維持できず、微結晶が生成し、エッチング残渣が発生した。
また、比較例5では、Siの含有量について原子数比としてSi/(In+Si)が0.3以上であり、スパッタ成膜時ターゲットに電圧を投入した際に、抵抗値が高くアーキングが発生し、不安定な放電となり、評価用の酸化物半導体薄膜が得られなかった。
また、比較例6、7では、Snを少量添加したことにより、キャリア濃度が抑制され、低いキャリア濃度でありながら高いキャリア移動度の酸化物半導体薄膜となった。しかしながら、得られた酸化物半導体薄膜は、熱処理により微結晶が生成したため、エッチング残渣が発生した。
さらに、実施例7では、図2に示すように、回折角2θ=30°,35°付近において、蛍石型構造のInSn12相由来の回折ピークが同定された。一方、比較例3、4では、実施例7と異なり、回折角2θ=30°,35°付近において、蛍石型構造のInSn12相由来の回折ピークが同定されなかった。すなわち、実施例7及び比較例3、4を比較した結果、実施例7で得られた酸化物半導体薄膜は、原料である酸化物焼結体内に蛍石型構造のInSn12相を含むことで、結晶化温度が上昇し、非晶質の状態になっていることが理由として考えられる。
S1 混合工程、S2 成形工程、S3 焼結工程

Claims (7)

  1. 構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体であって、
    ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、
    前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすことを特徴とする酸化物焼結体。
  2. トルトバイタイト型構造のIn(Si)相をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. 前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.1≦Si/(In+Si)<0.2の関係式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物焼結体の製造方法であって、
    前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たすように、酸化インジウム粉末、二酸化ケイ素粉末、及び酸化スズ粉末を混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られた混合粉末を成形する成形工程と、
    前記成形工程で得られた成形体を焼成する焼成工程とを有することを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに1項記載の酸化物焼結体からなることを特徴とするスパッタリング用ターゲット。
  6. 構成元素として、In、Si、及びSnを含有する酸化物焼結体から構成される非晶質の酸化物半導体薄膜であって、
    前記酸化物焼結体は、ビックスバイト型構造のIn相と蛍石型構造のInSn12相とを含み、
    前記In及び前記Siの合計に対する該Siの含有量が原子数比で0.05≦Si/(In+Si)≦0.3、かつ前記In、前記Si、及び前記Snの合計に対する該Snの含有量が原子数比で0.1≦Sn/(In+Si+Sn)≦0.2の関係式を満たし、
    キャリア濃度が9.8×1018cm−3以下であり、かつキャリア移動度が5.8cm/V・s以上であることを特徴とする非晶質の酸化物半導体薄膜。
  7. キャリア濃度が9.0×1017cm−3以下であり、
    キャリア移動度が10cm/V・s以上であることを特徴とする請求項6に記載の非晶質の酸化物半導体薄膜。
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