以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の説明において参照する図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であり、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置2の概略の構成を示す模式図である。有機EL表示装置2は、画像を表示する画素アレイ部4と、画素アレイ部4を駆動する駆動部とを備える。有機EL表示装置2は、基板上にTFTやOLEDなどの積層構造が形成された表示パネルを有する。なお、図1に示した概略図は一例であって、本実施形態はこれに限定されるものではない。
画素アレイ部4には、画素に対応してOLED6および画素回路8がマトリクス状に配置される。画素回路8は複数のTFT10,12やキャパシタ14で構成される。
上記駆動部は、走査線駆動回路20、映像線駆動回路22、駆動電源回路24および制御装置26を含み、画素回路8を駆動しOLED6の発光を制御する。
走査線駆動回路20は、画素の水平方向の並び(画素行)ごとに設けられた走査信号線28に接続されている。走査線駆動回路20は、制御装置26から入力されるタイミング信号に応じて走査信号線28を順番に選択し、選択した走査信号線28に、点灯TFT10をオンする電圧を印加する。
映像線駆動回路22は、画素の垂直方向の並び(画素列)ごとに設けられた映像信号線30に接続されている。映像線駆動回路22は、制御装置26から映像信号を入力され、走査線駆動回路20による走査信号線28の選択に合わせて、選択された画素行の映像信号に応じた電圧を各映像信号線30に出力する。当該電圧は、選択された画素行にて点灯TFT10を介してキャパシタ14に書き込まれる。駆動TFT12は、書き込まれた電圧に応じた電流をOLED6に供給し、これにより、選択された走査信号線28に対応する画素のOLED6が発光する。
駆動電源回路24は、画素列ごとに設けられた駆動電源線32に接続され、駆動電源線32および選択された画素行の駆動TFT12を介してOLED6に電流を供給する。
ここで、OLED6の下部電極は、駆動TFT12に接続される。一方、各OLED6の上部電極は、全画素のOLED6に共通の電極で構成される。下部電極を陽極(アノード)として構成する場合は、高電位が入力され、上部電極は陰極(カソード)となって低電位が入力される。下部電極を陰極(カソード)として構成する場合は、低電位が入力され、上部電極は陽極(アノード)となって高電位が入力される。
図2は、図1に示す有機EL表示装置2の表示パネルの一例を示す模式的な平面図である。表示パネル40の表示領域42に、図1に示した画素アレイ部4が設けられ、上述したように画素アレイ部4にはOLEDが配列される。上述したようにOLED6を構成する上部電極44は、各画素に共通に形成され、表示領域42全体を覆う。
矩形である表示パネル40の一辺には、部品実装領域46が設けられ、表示領域42につながる配線が配置される。部品実装領域46には、駆動部を構成するドライバ集積回路(IC)48が搭載されたり、FPC50が接続されたりする。フレキシブルプリント基板(FPC)50は、制御装置26やその他の回路20,22,24等に接続されたり、その上にICを搭載されたりする。
図3は、図2のIII−III断面の一例を示す図である。表示パネル40は、基板70の上にTFT72などからなる回路層、OLED6およびOLED6を封止する封止層106などが積層された構造を有する。基板70は、例えば、ガラス板、樹脂フィルムで構成される。本実施形態においては、画素アレイ部4はトップエミッション型であり、OLED6で生じた光は、基板70側とは反対側(図3において上向き)に出射される。
表示領域42の回路層には、上述した画素回路8、走査信号線28、映像信号線30、駆動電源線32などが形成される。駆動部の少なくとも一部分は、基板70上に回路層として表示領域42に隣接する領域に形成することができる。上述したように、駆動部を構成するドライバIC48やFPC50を、部品実装領域46にて、回路層の配線116に接続することができる。
図3に示すように、基板70上には、無機絶縁材料で形成された下地層80が配置される。無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiNy)、酸化シリコン(SiOx)およびこれらの複合体が用いられる。
表示領域42においては、下地層80を介して、基板70上には、トップゲート型のTFT72のチャネル部およびソース・ドレイン部となる半導体領域82が形成される。半導体領域82は、例えば、ポリシリコン(p−Si)で形成される。半導体領域82は、例えば、基板70上に半導体層(p−Si膜)を設け、この半導体層をパターニングし、回路層で用いる箇所を選択的に残すことにより形成される。TFT72のチャネル部の上には、ゲート絶縁膜84を介してゲート電極86が配置される。ゲート絶縁膜84は、代表的には、TEOSで形成される。ゲート電極86は、例えば、スパッタリング等で形成した金属膜をパターニングして形成される。ゲート電極86上には、ゲート電極86を覆うように層間絶縁層88が配置される。層間絶縁層88は、例えば、上記無機絶縁材料で形成される。TFT72のソース・ドレイン部となる半導体領域82(p−Si)には、イオン注入により不純物が導入され、さらにそれらに電気的に接続されたソース電極90aおよびドレイン電極90bが形成され、TFT72が構成される。
TFT72上には、層間絶縁膜92が配置される。層間絶縁膜92の表面には、配線94が配置される。配線94は、例えば、スパッタリング等で形成した金属膜をパターニングすることにより形成される。配線94を形成する金属膜と、ゲート電極86、ソース電極90aおよびドレイン電極90bの形成に用いた金属膜とで、例えば、配線116および図1に示した走査信号線28、映像信号線30、駆動電源線32を多層配線構造で形成することができる。この上に、例えば、アクリル系樹脂等の樹脂材料により平坦化膜96が形成され、表示領域42において、平坦化膜96上にOLED6が形成される。
OLED6は、下部電極100、有機材料層102および上部電極104を含む。有機材料層102は、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を積層して形成される。OLED6は、代表的には、下部電極100、有機材料層102および上部電極104を基板70側からこの順に積層して形成される。本実施形態では、下部電極100がOLEDの陽極(アノード)であり、上部電極104が陰極(カソード)である。なお、有機材料層102は、上記以外の他の層を有し得る。他の層としては、例えば、アノードと発光層との間に配置される正孔注入層や電子ブロック層、カソードと発光層との間に配置される電子注入層や正孔ブロック層が挙げられる。
図3に示すTFT72が、nチャネルを有した駆動TFT12であるとすると、下部電極100は、TFT72のソース電極90aに接続される。具体的には、上述した平坦化膜96の形成後、下部電極100をTFT72に接続するためのコンタクトホール110が形成され、例えば、平坦化膜96表面およびコンタクトホール110内に形成した導電体部をパターニングすることにより、TFT72に接続された下部電極100が画素ごとに形成される。
下部電極100の形成後、画素境界にバンク112が形成される。バンク112は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料で形成される。バンク112で囲まれた画素の有効領域には下部電極100が露出する。バンク112の形成後、有機材料層102を構成する各層が下部電極100およびバンク112の上に順に積層される。有機材料層102の上に上部電極104が形成される。上部電極104は、例えば、透明電極材料で形成される。
上部電極104の表面に封止層106として、例えば、SiNy膜がCVD法によって成膜される。また、表示パネル40の表面の機械的な強度を確保するため、表示領域42の表面に保護膜114が積層される。一方、部品実装領域46には、ICやFPCを接続しやすくするため保護膜114を設けない。FPC50の配線やドライバIC40の端子は例えば、配線116に電気的に接続される。
本実施形態では、バンク112上に存在する有機材料層102は、その物性が変質している変質領域122を含む。ここで、有機材料層102の「物性が変質している」とは、変質していない層と変質している層とを比較して、有機材料層102を構成する多元素の元素は一致しているが、その物性が異なることをいう。具体的には、変質領域122の導電性は、下部電極100上に存在する有機材料層102の導電性より低くなっている。変質領域122は、バンク112上に存在する有機材料層102に対して、バンク112の反対側(有機材料層102がバンク112と接する面の反対側の面方向)から選択的にエネルギー線を照射することで形成される。エネルギー線は、有機材料層102の有機分子を変質、劣化させ得るものであり、例えば、紫外線光、赤外線光、電子線、高強度白色光等が用いられる。このように、エネルギー線を照射することにより、バンク112上に存在する有機材料層102が導電性の低い変質領域122を含むことで、隣接する画素間を流れるリーク電流を抑制することができる。なお、有機材料層102を構成する2以上の層が変質して変質領域122を形成してもよいし、有機材料層102を構成する層のうち1の層が変質して変質領域122を形成してもよい。例えば、有機材料層102を構成する層のうち最も低抵抗な層であり、リーク電流が流れやすい正孔輸送層が変質して変質領域122を形成してもよい。このとき、エネルギー線は、正孔輸送層が吸収可能な波長を有することが好ましい。また、変質領域122は、全ての画素間において形成されてもよいし、特定の画素の周囲に選択的に(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の中でもリーク電流による色純度の低下が顕著なG画素の周囲に選択的に)形成されてもよい。
ここで、本実施形態に係る変質領域122の第1の形成方法を、図4A〜図4Cを用いて説明する。図4A〜図4Cは、本実施形態に係る有機EL表示装置2の表示パネル40の概略断面図である。図4A〜図4Cにおいて、図3に示す表示パネル40の積層構造のうち、基板70上の下地層80から平坦化膜96までの積層構造を上部積層構造114として簡略化している。図4Aに示すように、基板70上に、画素毎に対応する下部電極を形成し(下部電極形成工程)、基板70上の隣接する下部電極100間に、下部電極100の端部を保護するように、複数の画素を区画するバンク112を形成し(バンク形成工程)、下部電極100およびバンク112の上に連続して有機材料層102を形成する(有機材料層形成工程)。例えば、トリフェニルアミン構造を有する化合物を含む正孔輸送層102aを下部電極100及びバンク112上に連続的に形成し(複数の画素間で共通に設け)、正孔輸送層102a上に、各画素の色に対応した発光層102bを各画素領域に形成し、発光層102bを覆うように(複数の画素間で共通に)電子輸送層102cを形成し、有機材料層102を形成する。図4Bにおいて、有機材料層102の上に(バンク112の反対側に)マスク126を形成する(マスク形成工程)。マスク126は、平面的に見て、下部電極100全体と重畳し、バンク112上に存在する有機材料層102の少なくとも一部と重畳しないように形成される。そして、マスク126を用いて、バンク112上に存在する有機材料層102に対して、バンク112の反対側から選択的にエネルギー線を照射する(照射工程)。図4Bでは、エネルギー線は紫外線光124である。バンク112上に存在する有機材料層102のうち、紫外線光124が照射された領域(平面的に見てマスク126が形成されていない領域)が変質し、変質領域122を形成する。図4Cに示すように、エネルギー線(ここでは、紫外線光124)を照射した後に、有機材料層102上に上部電極104を形成する(上部電極形成工程)。つまりは、マスク126を用いた紫外線光124の照射により、バンク112上に存在する有機材料層102に変質領域122を形成した後、マスク126を除去し、有機材料層102上に上部電極104を形成する。そして、上部電極104上には、封止層106が形成される。
本実施形態に係る変質領域122の第1の形成方法では、有機材料層102の上に(バンク112の反対側に)マスク126を形成していることで、マスク126の形成領域を比較的自由に定めることができる。これにより、マスク126の形成領域に応じて、エネルギー線の照射領域、つまりは変質領域122の位置や大きさを制御することができ、変質領域122を所望の位置、大きさに形成することが可能となる。
エネルギー線の照射領域は、バンク112上に存在する有機材料層102の少なくとも一部が含まれていればよいが、より好ましくは、平面的に見て、バンク112の中心点と重畳する領域であるとよい。
図4Cでは、有機材料層102を形成した後であって、上部電極104を形成する前にマスク126を用いて紫外線光124を照射することとしたが、例えば、正孔輸送層102aを形成した後にマスク126を用いて紫外線光124を照射してもよい。これにより、リーク電流が流れやすい正孔輸送層102aを選択的に変質させることができる。
また、上部電極104を形成した後または封止層106を形成した後に、マスク126を用いて紫外線光124を照射してもよいが、封止層106を形成した後に紫外線光124を照射すると封止層106が変質してしまうおそれがある。そこで、封止層106を形成した後に紫外線光124を照射する場合は、封止層106は吸収しないが、有機材料層102は吸収可能な波長を有する紫外線光124を照射することが好ましい。これにより、封止層106を変質させることなく、有機材料層102を選択的に変質させることができる。
次に、本実施形態に係る変質領域122の第2の形成方法を、図5A〜図5Cを用いて説明する。図5A〜図5Cは、本実施形態に係る有機EL表示装置2の表示パネル40の概略断面図である。図5A〜図5Cにおいて、図3に示す表示パネル40の積層構造のうち、基板70上の下地層80から平坦化膜96までの積層構造を上部積層構造114として簡略化している。図5Aは、本実施形態に係る変質領域122の第1の形成方法における図4Aと同様であるため、重複する説明はここでは省略する。図5Bにおいて、バンク112上に存在する有機材料層102に対して、バンク112の反対側から選択的にエネルギー線を照射する(照射工程)。図5Bでは、エネルギー線はレーザ光128である。エネルギー線として、指向性の高いレーザ光128を用いることで、マスクを用いることなくバンク112上に存在する有機材料層102に対して、選択的にエネルギー線を照射することができる。バンク112上に存在する有機材料層102のうち、レーザ光128が照射された領域が変質し、変質領域122を形成する。図5Cに示すように、エネルギー線(ここでは、レーザ光128)を照射した後に、有機材料層102上に上部電極104を形成する(上部電極形成工程)。つまりは、レーザ光128の照射により、バンク112上に存在する有機材料層102に変質領域122を形成した後に、有機材料層102上に上部電極104を形成する。そして、上部電極104上には、封止層106が形成される。
本実施形態に係る変質領域122の第2の形成方法では、バンク112の上に存在する有機材料層102に対して、バンク112の反対側からレーザ光を照射することで、レーザ光の照射箇所、つまりは変質領域122の位置や大きさを制御することができ、変質領域122を所望の位置に形成することが可能となる。
図5Bでは、有機材料層102を形成した後であって、上部電極104を形成する前にレーザ光128を照射することとしたが、例えば、正孔輸送層102aを形成した後にレーザ光128を照射してもよい。これにより、リーク電流が流れやすい正孔輸送層102aを選択的に変質させることができる。
また、上部電極104を形成した後にレーザ光128を照射してもよいが、上部電極104を形成した後にレーザ光128を照射すると上部電極104を通過することにより光強度が低下してしまい、有機材料層102が変質しにくくなるおそれがある。そこで、上部電極104を形成した後にレーザ光128を照射する場合は、バンク112上であって有機材料層102の下にレーザ光128を吸収しやすい層(例えば、メタル層)を形成してもよい。これにより、メタル層がレーザ光128を吸収することで生じる熱により有機材料層102を変質しやすくする。また、上部電極104を形成した後にレーザ光128を照射する場合は、バンク112を着色した樹脂で形成してもよい。着色した樹脂は、透明の樹脂よりレーザ光128を吸収しやすいため、着色したバンク112がレーザ光128を吸収することで生じる熱により有機材料層102を変質しやすくする。
また、封止層106を形成した後にレーザ光128を照射してもよいが、封止層106を形成した後にレーザ光128を照射すると封止層106が変質してしまうおそれがある。そこで、封止層106を形成した後にレーザ光128を照射する場合は、封止層106は吸収しないが、有機材料層102は吸収可能な波長を有するレーザ光128を照射することが好ましい。これにより、封止層106を変質させることなく、有機材料層102を選択的に変質させることができる。
また、バンク112上に存在する有機材料層102に対して、選択的にレーザ光128を照射する工程では、有機EL表示装置2の高精細化に伴う照射箇所の増加により工程の時間増加が懸念される。そこで、工程の時間短縮のため、特定の画素の周囲に選択的に(例えば、G画素の周囲に選択的に)レーザ光を照射してもよい。また、一度に照射可能な数を増やしたレーザ光照射装置を用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成、または同一の目的を達成することができる構成により置き換えてもよい。