JP2018137349A - 磁心およびコイル部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い初期の実効透磁率と小さい磁心損失が得られ、更には直流重畳特性に優れる磁心およびそれを用いるコイル部品を提供する。【解決手段】Fe基軟磁性合金の粒子が前記合金を構成する元素の酸化物層を介して結合した磁心であって、直流電流が重畳した交流電流で励磁され、占積率が85%超で、周波数100kHzにおける実効透磁率μeの初期値が34以上であり、実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatが5.6kA/m以上で、且つ、前記直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatが400mT以上である直流重畳特性に優れた磁心。【選択図】 図1
Description
本発明は、Fe基軟磁性合金の粒子を主体とした組織を有する磁心、およびそれを用いたコイル部品に関する。
従来、家電機器、産業機器、車両など多種多様な用途において、インダクタ、トランス、チョーク、モータ等のコイル部品が用いられている。一般的なコイル部品は、磁心(磁性コア)と、その磁心の周囲に巻回されたコイルで構成される場合が多い。かかる磁心には、磁気特性、形状自由度、価格に優れるフェライトが広く用いられている。
近年、電子機器等の電源装置の小型化が進んだ結果、小型・低背で、かつ大電流に対しても使用可能なコイル部品の要求が強くなり、フェライトと比較して飽和磁束密度が高い金属系磁性粉末を使用した磁心の採用が進んでいる。
金属系磁性粉末としては、例えばFe−Si系、Fe−Ni系、Fe−Si−Cr系、Fe−Si−Al系などのFe基軟磁性合金の粉末が用いられている。かかるFe基軟磁性合金の粉末の成形体から得られる磁心は、飽和磁束密度が高い反面、合金粉末であるため電気抵抗率が低く、予め水ガラスや熱硬化性樹脂等を用いて磁性合金粉末を絶縁被覆する場合が多い。
金属系磁性粉末としては、例えばFe−Si系、Fe−Ni系、Fe−Si−Cr系、Fe−Si−Al系などのFe基軟磁性合金の粉末が用いられている。かかるFe基軟磁性合金の粉末の成形体から得られる磁心は、飽和磁束密度が高い反面、合金粉末であるため電気抵抗率が低く、予め水ガラスや熱硬化性樹脂等を用いて磁性合金粉末を絶縁被覆する場合が多い。
一方で、特許文献1にはFeとともにAlやCrを含有するFe基軟磁性合金の粉末を成形した後、酸素を含む雰囲気で熱処理して、前記合金の粒子の表面に、該粒子の酸化により得られる酸化層を形成し、当該酸化層を介して軟磁性合金の粒子を結合するとともに、磁心に絶縁性を付与する技術も提案されている。
ところでコイル部品に用いる磁心は、磁心損失が小さくて、透磁率が大きく、かつ重畳特性に優れる、即ち、直流電流が重畳した交流電流で励磁された磁心のインダクタンスが、高い電流値まで初期値を維持し、その低下が抑えられることが求められる。
Fe基軟磁性合金の粒子を用いた磁心では、成形体密度を高めて粒子間の空隙を少なくすることで磁心の占積率を高めて、後述する初期の実効透磁率を高くし、且つ磁心損失を小さくすることが出来る。しかし、一方では直流重畳特性が劣化し、コイル部品として使用可能な最大電流値が低下する問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、高い初期の実効透磁率と小さい磁心損失が得られると共に、更には直流重畳特性に優れる磁心およびそれを用いたコイル部品を提供することを目的とする。
第1の発明は、Fe基軟磁性合金の粒子が前記合金を構成する元素の酸化物層を介して結合した磁心であって、直流電流が重畳した交流電流で励磁され、占積率が85%超で、周波数100kHzにおける実効透磁率μeの初期値が34以上であり、実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatが5.6kA/m以上で、且つ、前記直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatが400mT以上である直流重畳特性に優れた磁心。
本発明においては、前記Fe基軟磁性合金は、Feを主成分とし、Feよりも酸化しやすい元素M(Mは少なくともSi,Cr,Alの少なくとも1種)を含むのが好ましい。
本発明においては、前記Fe基軟磁性合金が、組成式:aFebAlcCrdSiで表され、質量%で、a+b+c+d=100、75≦a<100、0≦b<13.8、0≦c≦7、0≦d≦5であるのが好ましい。
第2の発明は、第1の発明の磁心と、前記磁心に巻かれたコイルを備えたコイル部品である。
本発明によれば、高い初期の実効透磁率と小さい磁心損失が得られると共に、更に直流重畳特性に優れる磁心およびそれを用いたコイル部品を提供することが出来る。
以下、本発明の一実施形態に係る磁心およびそれを用いたコイル部品について具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る磁心は、Fe基軟磁性合金の粒子が前記合金を構成する元素の酸化物層を介して結合した磁心である。即ち、Fe基軟磁性合金の粒子が粒界を介して繋がった組織を有し、隣り合うFe基軟磁性合金の粒子の間を繋ぐ粒界には前記合金由来の酸化物層が形成されている。
本発明においてFeと共にFe基軟磁性合金を構成する元素は、要求される磁気特性や酸化物層の形成能に応じて適宜選択可能だが、Feよりも酸化しやすい元素M(MはSi,Cr,Alの少なくとも1種)を含む、FeSi合金、FeSiCr合金、FeSiAl合金、FeAlCr合金、FeAlCrSi合金のいずれかが好ましい。非鉄金属であるSi、Al及びCrは、FeよりもOとの親和力が大きい。そのためFe基軟磁性合金の粒子を、酸素を含む雰囲気中や水蒸気を含む雰囲気中で高温酸化させると、その表面にOに対して親和力の大きいこれらの非鉄金属の酸化物が形成される。酸化物層は熱処理によりFe基軟磁性合金の粒子と酸素とを反応させ成長させたものであり、Fe基軟磁性合金の粒子の自然酸化を超える酸化反応により形成される。前記酸化物層はヘマタイト(Fe2O3)、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe3O4)を含んでいても良い。
高温酸化前のFe基軟磁性合金の粒子を所定の形状に成形し、所定の雰囲気にてその成形体を所定の温度で焼鈍すると、Oに対して親和力の大きいこれらの非鉄金属及びFeの酸化物が形成されてFe基軟磁性合金の粒子の表面を覆い、さらに粒子間の空隙を充填し、形成された酸化物層は粒界を構成し合金粒子を結合する。
また、表面に予め酸化物層を形成したFe基軟磁性合金の粒子を所定の形状に成形し、前記酸化物層が焼結する温度で、還元雰囲気中で熱処理しても良い。この場合も酸化物層は粒界を構成し合金粒子を結合する。
前記元素Mの内、Alは他の非鉄金属と比較してOとの親和力が大きく、高温酸化によって化学的に安定なAl2O3や他の非鉄金属との複合酸化物等を合金粒子の表面に形成する。Alを含む酸化物は耐食性や安定性に優れるため、Fe基軟磁性合金の粒子の表面にAlの酸化物の層が形成されることにより、粒子間の絶縁を高めて磁心の渦電流損失を低減できる。また結晶磁気異方性を低減させ磁心損失を改善する。
Crは、Alに次いでOとの親和力が大きく、Alと同様に酸素と結合して、化学的に安定なCr2O3や他の非鉄金属との複合酸化物等を生成する。Crを含む酸化物もまた耐食性や安定性に優れるため、粒子間の絶縁を高めて磁心の渦電流損失を低減できる。
Siは化学的に安定なSiO2や他の非鉄金属との複合酸化物等を合金粒子の表面に形成する。SiO2によっても粒子間の絶縁を高めて磁心の渦電流損失を低減できる。また、透磁率を高める効果もある。またSiを多く含むと粒子が硬質となる。
元素Mの酸化物形成能や磁気特性への影響を考慮してFe基軟磁性合金は、組成式:aFebAlcCrdSiで表され、Si,Cr,Alの少なくとも1種を含み、質量%で、a+b+c+d=100、75≦a<100、0≦b<13.8、0≦c≦10、0≦d≦5とするのが好ましい。より好ましくは前記組成式において、a+b+c+d=100、4≦b<13.8、3≦c≦7、0≦d≦1である。AlとともにCrを含む場合、CrはAlの酸化を助けるようにも機能し、熱処理においてFe基軟磁性合金の粒子が、Alが濃化した酸化物層を介して結合されるように構成するのに役立つ。
不可避的不純物等として、例えばMn≦1質量%、C≦0.05質量%、Ni≦0.5質量%、N≦0.1質量%、P≦0.02質量%、S≦0.02質量%で含んでいても良い。また、合金中に含まれるOは少なければ少ないほど良くO≦0.5質量%であるのが好ましい。何れの組成量も主成分100質量%とした場合の外数の値である。
前記酸化物層は磁心の断面を走査型電子顕微鏡(SEM/EDX:Scanning Electron Microscope/energy dispersive X−ray spectroscopy)を用いて観察し、各構成元素の分布を調べることで容易に確認することが出来る。2粒子間の粒界として形成される酸化物層は透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)を用いて観察すると、例えば10nm〜200nmの厚みで確認できる。
合金粒子の平均粒径(ここでは、累積粒度分布におけるメジアン径d50を用いる)は特に限定されるものではないが、平均粒径を小さくすることで磁心の強度、高周波特性が改善されるので、例えば、高周波特性が要求される用途では、20μm以下の平均粒径を有する粒子を好適に用いることができる。メジアン径d50は、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。一方、平均粒径が小さい場合は比表面積が大きく酸化し易くなるため、メジアン径d50はより好ましくは3μm以上である。また、篩等を用いて粒子から粗い粒子を除くことがより好ましい。この場合、少なくとも32μmアンダーの(すなわち、目開き32μmの篩を通過した)合金粒子を用いることが好ましい。
Fe基軟磁性合金の粒子の形態は、特に限定されるものではないが、流動性等の観点からアトマイズ粉に代表される粒状粉を原料粉末として用いることが好ましい。ガスアトマイズ、水アトマイズ等のアトマイズ法は、展性や延性が高く、粉砕しにくい合金の粉末作製に好適である。また、アトマイズ法は略球状の軟磁性合金粉を得る上でも好適である
Fe基軟磁性合金の粒子の形態は、特に限定されるものではないが、流動性等の観点からアトマイズ粉に代表される粒状粉を原料粉末として用いることが好ましい。ガスアトマイズ、水アトマイズ等のアトマイズ法は、展性や延性が高く、粉砕しにくい合金の粉末作製に好適である。また、アトマイズ法は略球状の軟磁性合金粉を得る上でも好適である
以下磁心の製造方法について加圧成形を採用した製法を一例に説明する。
Fe基軟磁性合金の粒子を成形する際に、粒同士を結着させて成形後のハンドリングに耐える強度を成形体に付与するためにバインダーを添加することが好ましい。バインダーの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等の各種有機バインダーを用いることができる。有機バインダーは成形後の熱処理により、熱分解する。熱処理後においても固化、残存し、あるいはSi酸化物として合金のM元素の酸化物とともに粉末同士を結着する、シリコーン樹脂などの無機系バインダーを併用してもよい。
Fe基軟磁性合金の粒子を成形する際に、粒同士を結着させて成形後のハンドリングに耐える強度を成形体に付与するためにバインダーを添加することが好ましい。バインダーの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等の各種有機バインダーを用いることができる。有機バインダーは成形後の熱処理により、熱分解する。熱処理後においても固化、残存し、あるいはSi酸化物として合金のM元素の酸化物とともに粉末同士を結着する、シリコーン樹脂などの無機系バインダーを併用してもよい。
バインダーの添加量は、合金の粒子間に十分に行きわたり、十分な成形体強度を確保できる量にすればよい。一方、これが多すぎると密度や強度が低下するようになる。かかる観点から、バインダーの添加量は、例えば、平均粒径(d50)10μmの合金粒子100質量部に対して、0.8〜3.0質量部にすることが好ましい。
合金の粒子とバインダーとの混合方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている混合方法、混合機を用いることができる。バインダーが混合された状態では、その結着作用により、混合粉は広い粒度分布をもった凝集粉となっている。かかる混合粉を、例えば振動篩等を用いて篩に通すことによって、成形に適した所望の二次粒子径の造粒粉を得ることができる。また、加圧成形時の粉末と金型との摩擦を低減させるために、ステアリン酸、ステアリン酸塩等の潤滑材を添加することが好ましい。潤滑材の添加量は、合金の粒子100質量部に対して0.1〜2.0質量部とすることが好ましい。潤滑剤は、金型に塗布することも可能である。潤滑材とバインダーの添加量の総量は3.5質量部以下であるのが好ましい。
次に、得られた混合粉を加圧成形して成形体を得る。上記手順で得られた混合粉は、好適には上述のように造粒されて、加圧成形工程に供される。造粒された混合粉は、成形金型を用いて、トロイダル形状、直方体形状、円柱形状、鼓形状、押しピン形状等の様々な形状に加圧成形される。加圧成形は、室温成形でもよいし、バインダーが消失しない程度に加熱して行う温間成形でもよい。加圧成形時の成形圧は0.8GPa以上が好ましい。加圧成形時の成形圧が高くなるほど金型の破損が生じやすくなるため1.8GPa以下に成形圧を抑えるのが好ましい。なお、成形方法は上記の加圧成形に限定されるものではなく、ドクターブレード法等の公知のシート成形方法によって得られたシート状の成形体を積み重ねて加熱し圧着するなどしても良く、混合粉の調製方法もまた成形方法に応じて公知の方法を採用することが出来る。
次に、前記成形工程を経て得られた成形体を熱処理する熱処理工程について説明する。合金の粒子間に合金由来の酸化物層を形成するため、成形体に対して熱処理(高温酸化)が施される。かかる熱処理によって、さらに、成形等で導入された応力歪を緩和することも出来る。この酸化物層は、熱処理により合金の粒子と酸素(O)とを反応させ成長させたものであり、合金の自然酸化を超える酸化反応により形成される。かかる熱処理は、大気中、酸素と不活性ガスの混合気体中など、酸素が存在する雰囲気中で行うことができる。また、水蒸気と不活性ガスの混合気体中など、水蒸気が存在する雰囲気中で熱処理を行うこともできる。これらのうち大気中の熱処理が簡便であり好ましい。
本工程の熱処理は上記酸化物層等が形成される温度で行えばよい。合金組成にも拠るが850℃を超える温度では合金の粒子同士が焼結を始め、磁心損失も増加するようになる。また、熱処理で形成される酸化物層は熱処理温度にも影響されるので、具体的な熱処理温度は、650〜850℃の範囲が好ましい。上記温度範囲での保持時間は、磁心の大きさ、処理量、特性ばらつきの許容範囲などによって適宜設定され、例えば0.5〜3時間に設定される。
熱処理を経た磁心における占積率は、85%超であることが好ましい。これにより、設備的、コスト的な負荷を抑えながらも、占積率を高めて磁気特性を向上することが出来る。
合金組成、製造条件、あるいは合金の粒径を選択し、Fe基軟磁性合金の粒子が酸化物層を介して結合し、占積率が85%超であり、周波数100kHzにおける実効透磁率μeの初期値(直流磁界0.4A/m)が34以上で、実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatが5.6kA/m以上で、前記直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatが400mT以上の磁心とする。このような磁心にコイルを設けたコイル部品は直流重畳特性に優れたものとなる。
実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatついて図2を用いて説明する。図2においてμe80は直流電流が重畳した交流電流で励磁された磁心の実効透磁率μeがその初期値に対して80%となる点の値であり、直流磁界Hsatはその点における直流磁界の値を表す。重畳特性を評価する上で重畳する直流磁界に対する実効透磁率μeの低下が重要である。一般的に実効透磁率μeがその初期値に対して70〜80%となる直流磁界Hsatをコイル部品として利用可能と判断する閾値として評価することがあり、本発明では実効透磁率μeがその初期値に対して80%に低下する直流磁界を閾値とした。ここで実効透磁率μeの初期値とは、直流磁界が直流磁界Hsatに較べて十分小さい直流磁界における値であり、直流磁界の増加に対して実効透磁率μeの変化が実質的に生じていない直流磁界における値であれば良い。本発明では直流磁界が0.4 A/mである場合を実効透磁率μeの初期値とした。磁心が同一形状である場合、μe80となる直流磁界Hsatが大きければコイル部品に流せる最大電流も大きいので好ましい。更に実効透磁率μeの初期値が大きいほど巻線も減じられ、磁心の形状も小型化できるので好ましい。
次に、直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatについて図3を基に説明する。
磁心の初磁化状態から飽和磁化までの初磁化曲線のメジャーループにおいて、直流磁界Hsatに対応する磁束密度をBsatとする。
磁心の初磁化状態から飽和磁化までの初磁化曲線のメジャーループにおいて、直流磁界Hsatに対応する磁束密度をBsatとする。
磁心は、上述のようにバインダー等を混合した軟磁性合金粉末だけを加圧成形した磁心単体の形態で製造し、それに巻線を行なってコイル部品としてもよいし、内部にコイルが配置された形態で製造してコイル部品としてもよい。後者の構成は、特に限定されるものではなく、例えば軟磁性合金粉末とコイルとを一体で加圧成形する手法や、あるいはシート積層法や印刷法といった積層プロセスを用いたコイル封入構造の磁心の形態で製造することができる。磁心とコイルとを有するコイル部品は、例えばチョーク、インダクタ、リアクトル、トランス等として用いられる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。また説明においては、Fe基軟磁性合金としてFeAlCr系合金を用いる。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(1)原料粉末の準備
アトマイズ法によりAl 5質量%、Cr 4質量%、残部が実質的にFeの原料粉末を作製した。
アトマイズ法によりAl 5質量%、Cr 4質量%、残部が実質的にFeの原料粉末を作製した。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)によって、原料粉末の平均粒径(メジアン径d50)を得た。得られた各原料粉末の飽和磁化Msと保磁力Hc、飽和磁束密度BsをVSM磁気特性測定装置(東英工業製VSM−5−20)によって得た。その結果、飽和磁化Msは180emu/g、保磁力Hcは1200A/mであった。
(2)磁心の作製
以下のようにして、磁心を作製した。まず前記原料粉末と、更にそれを篩にて分級し平均粒径d50が異なる2種の原料粉末を準備した。原料粉末それぞれに対して、PVA(株式会社クラレ製ポバールPVA−205;固形分10%)をバインダーとし、溶媒としてイオン交換水を投入し、攪拌混合して泥漿(スラリー)とした。スラリー濃度は80質量%である。前記原料粉末100重量部に対してバインダーの添加量を異ならせて0.75〜1.66重量部とし、た。それを120℃で10時間乾燥し、乾燥後の混合粉を篩に通して平均粒径とバインダー量の異なる造粒粉を得た。この造粒粉に、原料粉末100重量部に対して0.4重量部の割合でステアリン酸亜鉛を添加、混合した。
以下のようにして、磁心を作製した。まず前記原料粉末と、更にそれを篩にて分級し平均粒径d50が異なる2種の原料粉末を準備した。原料粉末それぞれに対して、PVA(株式会社クラレ製ポバールPVA−205;固形分10%)をバインダーとし、溶媒としてイオン交換水を投入し、攪拌混合して泥漿(スラリー)とした。スラリー濃度は80質量%である。前記原料粉末100重量部に対してバインダーの添加量を異ならせて0.75〜1.66重量部とし、た。それを120℃で10時間乾燥し、乾燥後の混合粉を篩に通して平均粒径とバインダー量の異なる造粒粉を得た。この造粒粉に、原料粉末100重量部に対して0.4重量部の割合でステアリン酸亜鉛を添加、混合した。
得られた造粒粉を用いてプレス機を使用して、室温にて加圧成形し、トロイダル(円環)形状と円板形状の成形体を得た。成形時の圧力は490MPa(5ton/cm2)〜1453MPa(14.8ton/cm2)とした。この成形体を熱処理炉に投入し、大気中740℃の熱処理温度で2分保持して熱処理を施し、試料No.1〜9の磁心を得た。磁心の外形寸法は、外径φ13.4mm、内径φ7.7mm、高さ2.0mmと外径φ13.5mm、高さ2.0mmであった。
(3)評価方法および結果
以上の工程により作製した磁心について以下のA〜Gの評価を行った。評価結果を表1に示す。表1において、比較例の試料には試料No.に*を付与して区別している。また、図4に本発明の磁心を含む直流磁界Hsatと磁束密度Bsatとの関係を示すグラフを示す。
以上の工程により作製した磁心について以下のA〜Gの評価を行った。評価結果を表1に示す。表1において、比較例の試料には試料No.に*を付与して区別している。また、図4に本発明の磁心を含む直流磁界Hsatと磁束密度Bsatとの関係を示すグラフを示す。
A.占積率Pf(相対密度)
円環状の磁心に対し、その寸法と質量から体積重量法により密度(kg/m3)を算出し、密度dsとした。密度dsをFe基軟磁性合金の真密度で除して磁心の占積率(相対密度)[%]を算出した。
円環状の磁心に対し、その寸法と質量から体積重量法により密度(kg/m3)を算出し、密度dsとした。密度dsをFe基軟磁性合金の真密度で除して磁心の占積率(相対密度)[%]を算出した。
B.比抵抗ρv
円板状の磁心を被測定物とし、その対向する二平面に導電性接着剤を塗り、乾燥し固化した後、被測定物を電極の間にセットする。電気抵抗測定装置(株式会社エーディーシー製5451)を用いて、100Vの直流電圧を印加し、抵抗値R(Ω)を測定する。被測定物の平面の面積A(m2)と厚みt(m)とを測定し、次式により比抵抗ρv(Ωm)を算出した。
比抵抗ρv(Ωm)=R×(A/t)
円板状の磁心を被測定物とし、その対向する二平面に導電性接着剤を塗り、乾燥し固化した後、被測定物を電極の間にセットする。電気抵抗測定装置(株式会社エーディーシー製5451)を用いて、100Vの直流電圧を印加し、抵抗値R(Ω)を測定する。被測定物の平面の面積A(m2)と厚みt(m)とを測定し、次式により比抵抗ρv(Ωm)を算出した。
比抵抗ρv(Ωm)=R×(A/t)
C.磁心損失Pcv
環状体の磁心を被測定物とし、一次側巻線と二次側巻線とをそれぞれ15ターン巻回し、岩通計測株式会社製B−HアナライザSY−8218により、最大磁束密度30mT、周波数300kHzの条件で磁心損失Pcv(kW/m3)を室温で測定した。
環状体の磁心を被測定物とし、一次側巻線と二次側巻線とをそれぞれ15ターン巻回し、岩通計測株式会社製B−HアナライザSY−8218により、最大磁束密度30mT、周波数300kHzの条件で磁心損失Pcv(kW/m3)を室温で測定した。
D.実効透磁率μe
環状体の磁心を被測定物とし、導線を30ターン巻回し、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社性4284A)により、室温にて周波数100kHzで測定したインダクタンスから次式により求めた。直流磁界を0.4A/mとした条件で得られた値を実効透磁率μeの初期値とした。
初透磁率μe=(le×L)/(μ0×Ae×N2)
(le:磁路長、L:試料のインダクタンス(H)、μ0:真空の透磁率=4π×10−7(H/m)、Ae:磁心の断面積、N:コイルの巻数)
環状体の磁心を被測定物とし、導線を30ターン巻回し、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社性4284A)により、室温にて周波数100kHzで測定したインダクタンスから次式により求めた。直流磁界を0.4A/mとした条件で得られた値を実効透磁率μeの初期値とした。
初透磁率μe=(le×L)/(μ0×Ae×N2)
(le:磁路長、L:試料のインダクタンス(H)、μ0:真空の透磁率=4π×10−7(H/m)、Ae:磁心の断面積、N:コイルの巻数)
E.直流重畳特性
環状体の磁心を被測定物とし、導線を30ターン巻回してコイル部品とし、直流印加装置(42841A:ヒューレットパッカード社製)で20kA/mまで、1kA/mステップで直流磁界を印加した状態にて、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社社製4284A)によりインダクタンスLを周波数100kHzで室温にて測定した。得られたインダクタンスから得られた直流磁界での実効透磁率μeから直流重畳特性を得た。
環状体の磁心を被測定物とし、導線を30ターン巻回してコイル部品とし、直流印加装置(42841A:ヒューレットパッカード社製)で20kA/mまで、1kA/mステップで直流磁界を印加した状態にて、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社社製4284A)によりインダクタンスLを周波数100kHzで室温にて測定した。得られたインダクタンスから得られた直流磁界での実効透磁率μeから直流重畳特性を得た。
前述の図2は表1中の試料No.*2の直流重畳特性を示していて、各試料についても同様に直流重畳特性を得た。各試料の実効透磁率μeの初期値からμe80を算出し、前記直流重畳特性から実効透磁率μeが初期値から80%に低下する直流磁界Hsatを求めた。具体的には、μe80となる前後の測定ステップにおける直流磁界とμeとの関係から一次近似により算出することが出来る。
F. 初磁化曲線
消磁状態の環状体の磁心を被測定物とし、一次巻線を30ターン、二次巻線を10ターン巻回し、メトロン技研株式会社製直流磁化特性試験装置(SK110)により、印加磁界10kA/mの条件で初磁化曲線を室温で測定した。巻数はトロイドダルコアの透磁率及び寸法に応じて適宜増減することができる。
消磁状態の環状体の磁心を被測定物とし、一次巻線を30ターン、二次巻線を10ターン巻回し、メトロン技研株式会社製直流磁化特性試験装置(SK110)により、印加磁界10kA/mの条件で初磁化曲線を室温で測定した。巻数はトロイドダルコアの透磁率及び寸法に応じて適宜増減することができる。
前述の図3は表1中の試料No.*2の初磁化曲線を示していて、各試料についても同様に初磁化曲線を得た。各試料の前記直流磁界Hsatに対応する磁束密度Bsatを初磁化曲線から得た。具体的には、直流磁界Hsatの前後の測定ステップにおける直流磁界と磁束密度との関係から一次近似により算出することが出来る。
G(組織観察、組成分布)
トロイダル形状の磁心を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM/EDX)により観察した。
トロイダル形状の磁心を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM/EDX)により観察した。
得られた試料の磁心について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察による評価の結果、何れの試料でも合金粒子間は粒界により結合していた。また組成マッピング(SEM/EDX)による評価では粒子内部の合金相よりもAlの比率が高い酸化物が粒界に形成されていることが確認された。また、この磁心の比抵抗ρvは何れも1×105Ωm以上の高い値が得られた。
また、実施例である試料No.5〜7,9では、周波数100kHzにおける実効透磁率μeの初期値(直流磁界0.4A/m)が34以上で、実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatが5.6kA/m以上で、前記直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatが400mT以上であった。表1に示すように、試料No.6,7,9では合金粒子の平均粒径が小さくて、成形時のバインダー量が多いほうが磁心損失Pcvは小さく、図4に示すように、実効透磁率μe80での直流磁界Hsat、及び直流磁界Hsatに対する磁束密度Bsatを大きく出来た。但し、試料No.8ではバインダー量(PVA量)が多く、かつ合金の平均粒径が小さいため、設定された成形圧力では磁心の占積率85%を超えず、実効透磁率μeの初期値も34以上とならなかった。また平均粒径が同じ原料粉末で、バインダー量を同じとして得られた試料では、占積率が高くなるに従い直流磁界Hsatは低下するものの、初期の実効透磁率μeを高く出来て磁束密度Bsatを大きく出来た。また、実施例(試料No.5,7,9)の磁心では、図1に示すように比較例(試料No.2)に対して実効透磁率μeの初期値、直流磁界Hsatが大きく、また比較例(試料No.3)に対して直流磁界Hsatが大きく優れた直流重畳特性が得られ、本発明により得られた磁心はコイル部品として優れた直流重畳特性を得る上で有利であることが分かった。
Claims (4)
- Fe基軟磁性合金の粒子が前記合金を構成する元素の酸化物層を介して結合した磁心であって、
直流電流が重畳した交流電流で励磁され、
占積率が85%超で、周波数100kHzにおける実効透磁率μeの初期値が34以上であり、
実効透磁率μeが前記初期値に対して80%となる直流磁界Hsatが5.6kA/m以上で、
且つ、前記直流磁界Hsatにおける初磁化曲線上の磁束密度Bsatが400mT以上である直流重畳特性に優れた磁心。 - 請求項1に記載の磁心であって、
前記Fe基軟磁性合金は、Feを主成分とし、Feよりも酸化しやすい元素M(MはSi,Cr,Alの少なくとも1種)を含む磁心。 - 請求項2に記載の磁心であって、
前記Fe基軟磁性合金が、組成式:aFebAlcCrdSiで表され、質量%で、a+b+c+d=100、75≦a<100、0≦b<13.8、0≦c≦7、0≦d≦5である磁心。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁心と、前記磁心に巻かれたコイルを備えたコイル部品。
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JP2017031113A JP2018137349A (ja) | 2017-02-22 | 2017-02-22 | 磁心およびコイル部品 |
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JP7536818B2 (ja) | 2022-03-18 | 2024-08-20 | 株式会社タムラ製作所 | 圧粉磁心用粉末、圧粉磁心用粉末の製造方法、圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法 |
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2017
- 2017-02-22 JP JP2017031113A patent/JP2018137349A/ja active Pending
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