JP2018068724A - バルーンカテーテル - Google Patents
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Abstract
【課題】薬剤を病変の血管壁に対して均等に移行させることができるバルーンカテーテルを提供することにある。
【解決手段】シャフト2と、前記シャフト2の外側に設けられた拡張可能なバルーン10とを有するバルーンカテーテル1であって、前記バルーン10の外側面の少なくとも一部には、薬剤層12が設けられており、前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12の、少なくとも一部は、保護カバー20で覆われた被覆部を有しており、前記保護カバー20は、前記被覆部において、前記バルーン10の拡張時に前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12から剥離し、前記薬剤層の少なくとも一部を外側に露出するよう設けられており、前記被覆部は、前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12と、前記保護カバー20が接触する接触部と接触しない非接触部を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【選択図】図1
【解決手段】シャフト2と、前記シャフト2の外側に設けられた拡張可能なバルーン10とを有するバルーンカテーテル1であって、前記バルーン10の外側面の少なくとも一部には、薬剤層12が設けられており、前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12の、少なくとも一部は、保護カバー20で覆われた被覆部を有しており、前記保護カバー20は、前記被覆部において、前記バルーン10の拡張時に前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12から剥離し、前記薬剤層の少なくとも一部を外側に露出するよう設けられており、前記被覆部は、前記バルーン10の外側面および/または前記薬剤層12と、前記保護カバー20が接触する接触部と接触しない非接触部を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【選択図】図1
Description
本発明は、薬剤層と、バルーンの外側面および/または薬剤層の少なくとも一部を覆う保護カバーを備えたバルーンカテーテルに関するものである。
体内で血液が循環するための流路である血管に狭窄が生じ、血液の循環が滞ることにより、様々な疾患が発生することが知られている。特に心臓に血液を供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心症、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらすおそれがある。このような血管の狭窄部を治療する方法の一つとして、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる血管形成術(PTA、PTCA等)がある。血管形成術は、バイパス手術のような開胸術を必要としない低侵襲療法であることから広く行われている。
ところで、血管形成術の場合、拡張した狭窄部に再狭窄が生じることがあり、そのような再狭窄が発生する頻度(再狭窄率)を低減する治療法として、薬剤層を表面に有する薬剤溶出ステントを用いた治療が行われている。最近では体内にステントなどの異物を残すことがなく、ステントが挿入できない小血管も治療対象とできる薬剤溶出バルーンカテーテルを用いた治療も行われている。薬剤溶出バルーンカテーテルを用いれば、病変部でバルーンを拡張することにより薬剤を内腔壁へ移行させることができ、再狭窄の発生抑制が期待できる。薬剤溶出バルーンカテーテルのバルーン外側面には薬剤が保持されているが、病変部までバルーンを送達(以降、デリバリーと称する場合もある。)するまでの間に薬剤が洗い流されることを抑制する為に薬剤を保護するカバーを設けたカテーテルが提案されている(例えば、特許文献1、2)。薬剤を覆う保護カバーの利点は病変部以外に薬剤が移行されることによる副作用を抑制することや、病変部へより十分な量の薬剤を移行させることによる再狭窄の発生抑制効果を得ることなどが挙げられる。
しかしながら、従来の保護カバーを備えた薬剤保持バルーンカテーテルは、バルーン拡張時において、保護カバーがバルーン外側面に設けられた薬剤層から剥離し、薬剤層が血液などの体液に露出する過程で、バルーンから薬剤層が血液へ溶出する、あるいは、脱落する等により、薬剤層が一部分に偏ってしまう等の結果、病変血管壁に対して均等に薬剤を移行できず、再狭窄抑制作用を十分に発揮できないという課題があった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬剤を病変の血管壁に対して均等に移行させることができるバルーンカテーテルを提供することにある。
本発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記[1]〜[11]のバルーンカテーテルを提供する。
[1]シャフトと、前記シャフトの外側に設けられた拡張可能なバルーンとを有するバルーンカテーテルであって、
前記バルーンの外側面の少なくとも一部には、薬剤層が設けられており、
前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の、少なくとも一部は、保護カバーで覆われた被覆部を有しており、
前記保護カバーは、 前記被覆部において、前記バルーンの拡張時に前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層から剥離し、前記薬剤層の少なくとも一部を外側に露出するよう設けられており、
前記被覆部分は、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層と、前記保護カバーが接触する接触部と接触しない非接触部を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
[2]前記接触部の面積は、前記被覆部の面積の80%以下であることを特徴とする[1]に記載のバルーンカテーテル。
[3]前記バルーンの断面において、前記接触部の周方向長さが前記保護カバーの周方向長さの80%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のバルーンカテーテル。
[4]前記薬剤層は、前記保護カバーとの間に中間層を有していることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[5]前記バルーンまたは前記薬剤層の少なくとも一方の外側面に、半径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[6]前記突出部により形成される線が、バルーン拡張時に保護カバーが薬剤層から剥離する方向のベクトルと、実質的に平行となるように前記突出部が形成されていることを特徴とする[5]に記載のバルーンカテーテル。
[7]前記バルーンの拡張時に、少なくとも一部が破断する前記保護カバーを有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[8]
前記保護カバーの一部には周囲よりも強度が弱い脆弱部を有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[9]前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態で、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の少なくとも一部を覆うように配置されていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[10]
前記保護カバーは、プリーツが形成されていることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[11]
前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態の時に、折り畳まれていることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
前記バルーンの外側面の少なくとも一部には、薬剤層が設けられており、
前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の、少なくとも一部は、保護カバーで覆われた被覆部を有しており、
前記保護カバーは、 前記被覆部において、前記バルーンの拡張時に前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層から剥離し、前記薬剤層の少なくとも一部を外側に露出するよう設けられており、
前記被覆部分は、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層と、前記保護カバーが接触する接触部と接触しない非接触部を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
[2]前記接触部の面積は、前記被覆部の面積の80%以下であることを特徴とする[1]に記載のバルーンカテーテル。
[3]前記バルーンの断面において、前記接触部の周方向長さが前記保護カバーの周方向長さの80%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のバルーンカテーテル。
[4]前記薬剤層は、前記保護カバーとの間に中間層を有していることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[5]前記バルーンまたは前記薬剤層の少なくとも一方の外側面に、半径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[6]前記突出部により形成される線が、バルーン拡張時に保護カバーが薬剤層から剥離する方向のベクトルと、実質的に平行となるように前記突出部が形成されていることを特徴とする[5]に記載のバルーンカテーテル。
[7]前記バルーンの拡張時に、少なくとも一部が破断する前記保護カバーを有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[8]
前記保護カバーの一部には周囲よりも強度が弱い脆弱部を有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[9]前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態で、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の少なくとも一部を覆うように配置されていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[10]
前記保護カバーは、プリーツが形成されていることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[11]
前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態の時に、折り畳まれていることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
本発明のバルーンカテーテルは、薬剤層と、バルーンの外側面および/または薬剤層を覆う保護カバーを有しているため、病変部へバルーンを送達中においては、薬剤の血液などの体液への溶出や脱落を抑制し、バルーン拡張時においては、保護カバーと薬剤層との接触部の面積が従来のバルーンカテーテルよりも小さいため、保護カバーが薬剤層からスムーズに剥離し薬剤の血液などの体液への脱落を抑制できる。
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
本発明のバルーンカテーテルは、バルーンの外側面の少なくとも一部に設けられた薬剤層と、バルーンの外側面または/および薬剤層の少なくとも一部が、保護カバーで覆われた被覆部を有し、被覆部において、バルーンの外側面および/または薬剤層と、保護カバーが接触している接触部と接触していない非接触部を有している。
本発明のバルーンカテーテルによれば、病変部へバルーンを送達中において、保護カバーは、薬剤層の血液などの体液への溶出や脱落などにより薬剤層が失われてしまうことを防ぎ、バルーン拡張時においては、保護カバーと薬剤層が接触している接触部の面積が従来のバルーンカテーテルよりも小さいため、バルーン拡張時に薬剤層にダメージを与えることなく、かつ確実に薬剤層を病変血管壁に対して露出させることができ、また、カバー剥離時に薬剤がバルーン外側面から脱落することを抑制できる。それにより、従来の保護カバーを有する薬剤保持バルーンカテーテルよりも高い再狭窄抑制効果を期待できる。
(バルーンカテーテル)
図1および図2を参照して、薬剤層と保護カバーを有する本発明のバルーンカテーテルの全体構成について説明する。図1は、保護カバー20を有するバルーンカテーテルの平面図を示し、図2は、図1に示したバルーンカテーテルの(a)A−A断面図、(b)B−B断面図と(c)C−C断面図を示している。
図1は、シャフトの遠位側から近位側に至る途中までワイヤを挿通するラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルの構成例を示している。
本発明のバルーンカテーテル1は、シャフト2と、シャフト2の外側に設けられたバルーン10とを有し、更に、バルーン10の外側面には薬剤を含有する薬剤層12を有し、バルーンの外側面および/または薬剤層12の少なくとも一部を覆うように、保護カバー20が設けられたバルーンカテーテル1である。
図1および図2を参照して、薬剤層と保護カバーを有する本発明のバルーンカテーテルの全体構成について説明する。図1は、保護カバー20を有するバルーンカテーテルの平面図を示し、図2は、図1に示したバルーンカテーテルの(a)A−A断面図、(b)B−B断面図と(c)C−C断面図を示している。
図1は、シャフトの遠位側から近位側に至る途中までワイヤを挿通するラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルの構成例を示している。
本発明のバルーンカテーテル1は、シャフト2と、シャフト2の外側に設けられたバルーン10とを有し、更に、バルーン10の外側面には薬剤を含有する薬剤層12を有し、バルーンの外側面および/または薬剤層12の少なくとも一部を覆うように、保護カバー20が設けられたバルーンカテーテル1である。
本発明のバルーンカテーテル1は近位側と遠位側を有し、シャフト2の遠位側にバルーン10が設けられ、シャフト2の近位側にはハブ5が設けられる。本発明において、バルーンカテーテルの近位側とは、バルーンカテーテル(特にシャフト)の延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、バルーンの近位側から遠位側への方向を軸方向と称し、軸方向に交差する断面における外周方向を周方向と称する。
本発明のバルーンカテーテル1は、ハブ5からシャフト2を通じてバルーン10の内部に圧力流体が供給されるように構成され、インデフレーターを用いてバルーン10の拡張および収縮を制御できる。
本発明のバルーンカテーテル1は、ハブ5からシャフト2を通じてバルーン10の内部に圧力流体が供給されるように構成され、インデフレーターを用いてバルーン10の拡張および収縮を制御できる。
シャフト2は、通常内部に、圧力流体をバルーン10に流入させる為の加圧ルーメンと、病変部までバルーン10の配達をガイドするガイドワイヤーを挿入する為のガイドワイヤールーメンが設けられる。
シャフト2の遠位側では、内管3は、外管4の遠位端から延出してバルーン10を軸方向に貫通し、バルーン10の遠位側が内管3と接合され、バルーン10の近位側が外管4の遠位側と接合されるように構成される。例えば、シャフト2は遠位側では内管3と外管4から構成され、近位側では外管4から構成される。内管3は、ガイドワイヤールーメンを画定し、外管4は、加圧ルーメンを画定する。この場合、ガイドワイヤールーメンはシャフト2の遠位側から近位側に至る途中までを設け、連通したガイドワイヤーポート7を有する。加圧ルーメンはシャフト2の遠位側から近位側にわたっては設けられ、ハブ5は加圧ルーメンと連通した加圧ルーメンポート6を有するように構成される。
シャフト2の遠位側では、内管3は、外管4の遠位端から延出してバルーン10を軸方向に貫通し、バルーン10の遠位側が内管3と接合され、バルーン10の近位側が外管4の遠位側と接合されるように構成される。例えば、シャフト2は遠位側では内管3と外管4から構成され、近位側では外管4から構成される。内管3は、ガイドワイヤールーメンを画定し、外管4は、加圧ルーメンを画定する。この場合、ガイドワイヤールーメンはシャフト2の遠位側から近位側に至る途中までを設け、連通したガイドワイヤーポート7を有する。加圧ルーメンはシャフト2の遠位側から近位側にわたっては設けられ、ハブ5は加圧ルーメンと連通した加圧ルーメンポート6を有するように構成される。
バルーン10、シャフト2(内管3、外管4)、ハブ5の接合は、接着剤や熱溶着など従来公知の接合手段を用いて行うことができる。また、シャフト2のバルーン10が位置する部分には、バルーン10の位置を放射線透視下で確認することを可能にするため、放射線不透過マーカーを配置してもよい。
シャフト2(内管3、外管4)は、例えば、樹脂を成形することにより製造することが好ましい。例えば、樹脂を金型から押出すことでチューブ状に成形する押出成形法によってシャフトの原形である樹脂チューブを製造し、複数の樹脂チューブを接着剤や熱溶着などの接合手段によってシャフトを製造することができる。また、ディップ成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形方法によりバルーンカテーテルのシャフトを製造することが好ましい。
シャフト2を構成する樹脂としては、 ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。
本発明のバルーンカテーテルは、シャフトの遠位側から近位側にわたってワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型でもよく、その場合は、シャフトの遠位側から近位側にわたってガイドワイヤールーメン及び加圧ルーメンを設け、ハブにガイドワイヤールーメンに連通するガイドワイヤーポートを設けることもできる。ガイドワイヤーポートは、ガイドワイヤーを挿通する以外に、薬剤等の注入口や、生体体腔内の流体等の吸引口として機能させることができる。
また、図1および図2は、シャフトの内部に血液等の体液が通過しない(流れない)バルーンカテーテルを示しているが、本発明のバルーンカテーテルは、バルーンを長い時間拡張することによってバルーンに保持された薬剤を血管内壁などへ移行しやすくするために、バルーンを通過し、該バルーンの近位側と遠位側を血液などが移動できる灌流用ルーメンを有する灌流型バルーンカテーテルであってもよい。
(バルーン)
図3は、図1に示したバルーンカテーテルに備えられたバルーンの平面図を示している。なお、バルーンカテーテルに備えられるバルーンは、図3に示したバルーンに限定されない。
図3は、図1に示したバルーンカテーテルに備えられたバルーンの平面図を示している。なお、バルーンカテーテルに備えられるバルーンは、図3に示したバルーンに限定されない。
バルーン10は、近位側と遠位側にそれぞれ開口を有する袋状に形成される。バルーン10は、図3に示すように、円筒形状の直管部14と、その近位側に接続する近位側テーパー部15と、遠位側に接続する遠位側テーパー部16とを有することが好ましく、近位側テーパー部15と遠位側テーパー部16は直管部14から離れるに従って縮径するように形成される。近位側テーパー部15の近位側には円筒形状の近位側スリーブ17が接続し、遠位側テーパー部16の遠位側には円筒形状の遠位側スリーブ18が接続しており、図1に示したカテーテルでは、近位側スリーブ17がシャフト2の外管4に接合され、遠位側スリーブ18がシャフト2の内管3に接合されている。直管部14の外径や軸方向の長さ、テーパー部15,16のテーパー角度や軸方向の長さは、バルーン10の所望の機能に応じて適宜設定すればよい。また、テーパー部15,16のテーパー角度を軸方向に対して90°に設定して、バルーン10を略円筒形状に形成することもできる。なお、バルーン10は圧力流体が供給されることにより近位側テーパー部15から直管部14を経て遠位側テーパー部16が膨らむように構成されており、本発明においては当該膨張可能な部分をバルーンと見なす。
バルーンは、樹脂を成形することにより製造することが好ましい。例えば、押出成形によって押し出された樹脂チューブを金型に配置し、ブロー成形することによりベースバルーンを製造することが好ましい。ベースバルーンは、金型の形状によって任意の形状に形成することが好ましい。また、ディップ成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形方法によりバルーンを製造することが好ましい。
バルーンを構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂は、バルーンの薄膜化や柔軟性の点からエラストマー樹脂を用いることが好ましい。例えばポリアミド系樹脂の中でバルーンに好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が好適に用いられる。
また、バルーンの薄膜化や柔軟性の点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好ましく用いられる。なかでも、降伏強度が高く、バルーンの寸法安定性が良好な点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
バルーンの寸法は、治療部位の大きさ等に応じて適宜設定すれことができる。
バルーンの拡張状態においては、例えば、治療部位が血管の場合は、軸方向の長さを5mm以上、300mm以下、外径を0.5mm以上、20mm以下とすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向長さを10mm以上、100mm以下、外径を3mm以上、30mm以下とすることが好ましい。
バルーンが収縮状態においては、例えば、軸方向の長さを5mm以上、300mm以下、外径を0.1mm以上、10mm以下とすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向長さを10mm以上、100mm以下、外径を0.5mm以上、20mm以下とすることが好ましい。
バルーンの拡張状態においては、例えば、治療部位が血管の場合は、軸方向の長さを5mm以上、300mm以下、外径を0.5mm以上、20mm以下とすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向長さを10mm以上、100mm以下、外径を3mm以上、30mm以下とすることが好ましい。
バルーンが収縮状態においては、例えば、軸方向の長さを5mm以上、300mm以下、外径を0.1mm以上、10mm以下とすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向長さを10mm以上、100mm以下、外径を0.5mm以上、20mm以下とすることが好ましい。
(薬剤層)
バルーンには、バルーン外側面の少なくとも一部に薬剤層が保持されている。尚、本発明におけるバルーンの外側面は、スリーブ部も含めたバルーン遠位側端部から近位側端部の部分にわたる、バルーンの半径方向外側の表面を示す。
バルーンには、バルーン外側面の少なくとも一部に薬剤層が保持されている。尚、本発明におけるバルーンの外側面は、スリーブ部も含めたバルーン遠位側端部から近位側端部の部分にわたる、バルーンの半径方向外側の表面を示す。
バルーンに保持される薬剤層は、少なくとも1種の薬剤を含有している。薬剤層12は、層状に保持されていてもよく、またマイクロカプセル等の形態で保持されていてもよい。本発明に好適に用いられる薬剤は、薬理活性物質であれば特に限定されず、例えば、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、小分子、細胞等の医薬として許容される薬剤が挙げられる。
特に、バルーンカテーテルを血管形成術における治療後の血管の再狭窄を抑制する目的で使用する場合は、薬剤として抗増殖剤や抗悪性腫瘍剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗再狭窄剤、血管拡張剤などが好ましく、具体的には、パクリタキセル、シロリムス、ラパマイシン、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス等の薬剤を用いることができる。これらの薬剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
薬剤層には、薬理活性物質とともに、薬剤の分散性、溶解性、血管壁への移行性、保存安定性を向上させるための助剤が含まれていてもよい。助剤としては、安定化剤、結合剤、崩壊剤、防湿剤、防腐剤、溶解助剤などが用いられ、具体的には、乳糖、白糖、麦芽糖、デキストリン、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、スクラロース、ゲラニオール、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、エチレンジアミン、ヨウ化カリウム、ポピドン、尿素、ポリソルベート、ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、レチノール、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類、ポリエチレングリコール、グリセリン、コレステロール、ペプシン、リン脂質、レシチン、水素添加リン脂質、ミスチリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、脂肪酸類、グリチルリチン酸、ホウ酸、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、クロスカルメロース、酸化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グルコサミン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸などの中から少なくとも1つを含むことが好ましい。
尚、本発明のバルーンカテーテルは、バルーンの外側面、または、薬剤層の少なくとも一部が保護カバーで覆われた被覆部を有し、被覆部は、バルーンの外側面および/または薬剤層と保護カバーが接触している接触部と接触してない非接触部を有している。本発明のバルーンカテーテルは、非接触部を有しているため、バルーン拡張時の保護カバーの剥離による薬剤層の血液等の体液への脱落を抑制できる。
尚、本発明における被覆部は、バルーンあるいはシャフトと、保護カバーが溶着や接着等により固定されている部分は含まない。
尚、本発明における被覆部は、バルーンあるいはシャフトと、保護カバーが溶着や接着等により固定されている部分は含まない。
本発明の薬剤層は、保護カバーの間に中間層を有していてもよい。それにより、保護カバーが剥離する際に生じる薬剤層と保護カバーとの接触をより防ぐことができ、血液への薬剤の溶出や脱落が抑えられて、血管壁へ移行する薬剤の量を増やすことができる傾向がある。
中間層は、保護カバーが剥離した直後に薬剤層が急激に血液と触れることにより発生する血液への溶出や脱落(以下、初期バーストと称する。)を防止する観点から、水溶性高分子を含有していることが好ましい。中間層に用いられる水溶性高分子としては、特に限定されないが潤滑性に優れている点で例えば、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酸化セルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ペクチン、アラビアガム、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ゼラチン、親水ワセリン、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、グリコサミノグリカン、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、ポリ乳酸、ポリジオキサン、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコールなどのうち少なくとも1つが含まれることが好ましい。
また、中間層は、薬剤層の薬剤をより多く血管壁や血管組織内まで移行させる観点から、脂溶性物質や界面活性剤を含むことが好ましく、脂質、脂肪酸、リン脂質、胆汁酸、脂肪酸、コレステロール、スフィンゴリン脂質、グリチルリチン酸などのうち少なくとも1つが含まれることが好ましい。
中間層を配置する場合は、バルーン外側面または薬剤層の外側面に半径方向外側突出する突出部を設けることがより好ましい。それにより、バルーン拡張時の保護カバーの剥離による、中間層を含む薬剤層の損傷を抑制でき、病変部に効率的に薬剤を移行させ、より高い再狭窄抑制効果が得られる傾向がある。
薬剤層の形成方法は、例えば、固体や液体状態の薬剤をバルーンの外側面に塗布する方法を好ましく用いることができる。層形成の容易さの点で液体中に溶解または粒子状、コロイド状に分散させた状態の薬剤溶液をバルーン外側面上に塗布することが好ましい。薬剤を塗布する際のバルーンは保護カバーを配置する前で、拡張状態であることが好ましい。また、塗布する際の薬剤は、ゲル状やゾル状など粘性材料中に分散させた状態であってもよい。
塗布方法としては、一般的な塗布方法を用いることができる。例えば、刷毛塗り、ロールコーター塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、コンマコート、ナイフコートなどの塗布方法が挙げられる。特にコーティングの容易さの点で、浸漬塗布、スプレー塗布で塗布する方法が好ましくい。塗布は1回だけ行ってもよく2回以上行ってもよい。
薬剤の塗布に使用できる溶媒の種類は、薬剤が溶解あるいは分散できる溶媒であれば特に限定されないが、入手性、生体適合性、安全性、薬剤の溶解性、薬剤の分散性、塗布後の揮発性、バルーン外側面上に対するや薬剤の定着性が高いなどといった特徴を持っていることが好ましく、具体的には、エタノール、メタノール、アセトン、ケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、アニリン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ニトロメタン、アセトニトリル、ピリジン、N,N-ジメチルアセトアミド、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、クロロホルム、ベンジルアルコール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、酢酸、ギ酸、ペンタン、シクロペンタン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、ベンゼン、エチルエーテル、塩化メチレン、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水の少なくとも1つを含むことが好ましく、特に水、エタノール、アセトンがより好ましい。
また、薬剤層とバルーン外側面、薬剤層または中間層を含む薬剤層と保護カバー内腔面との密着性を制御するために、バルーン表面または保護カバー内腔面には表面処理が施されてもよく、表面処理としては、プラズマ処理、レーザー処理、イオン処理、オゾン処理、放電処理、プライマー処理等を好ましく用いる事ができる。
尚、本発明における保護カバー内腔面とは、バルーンの外側面および/または薬剤層の表面と対向する保護カバー表面を指す。
(保護カバー)
保護カバー20は、バルーン外側面および/または薬剤層12の少なくとも一部を被覆し、バルーン拡張時に薬剤層から剥離することができれば、形状や材質は特に限定されない。
保護カバー20は、バルーン外側面および/または薬剤層12の少なくとも一部を被覆し、バルーン拡張時に薬剤層から剥離することができれば、形状や材質は特に限定されない。
保護カバー20の形状としては、バルーンの外側面や薬剤層の少なくとも一部を覆うことができれば特に限定されず、遠位側から近位側に連続した1つの部品で形成されていてもよいし、切断された2つ以上の部品で形成されていてもよい。例えば、バルーンと同じく袋状の形状やカバーの遠位端と近位端の間で切断された形状であってもよいが、保護カバーの周方向長さはバルーンより長い周方向長さであることが好ましい。
保護カバー20は、図4に示すようなフィルムを丸めて筒状にした円柱体21やチューブ状に成形された円柱体に成形し、さらに、得られた円柱体を、図5や図8、あるいは図9に示すような両端もしくは片端の径を縮小した袋状もしくは半袋状の形状に成形すること等の方法により得ることができる。
また、保護カバー20は、バルーンが拡張前、すなわち、収縮状態または折り畳み状態で、薬剤層12の少なくとも一部またはバルーン10を覆うように配置されていることが好ましい。それにより、病変部へのバルーンのデリバリー時の薬剤の血液等の体液への溶出や脱落などを抑制できる傾向がある。
また、保護カバー20はプリーツ(ヒダ)が形成されていることが好ましく、更に保護カバー20は、バルーンが拡張前、すなわち、バルーンが収縮状態または折り畳み状態で折り畳まれていることが好ましい。それにより、細い血管内へのバルーンを送達できる傾向がある。
保護カバーを構成する樹脂としては、バルーンと同様に、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。
特に、ポリアミド系樹脂の中でバルーンに好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が好適に用いられる。また、保護カバーの薄膜化や柔軟性の点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好ましく用いられる。なかでも、降伏強度が高く、バルーンの寸法安定性が良好な点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
保護カバー20は、放射線透視下で確認することを可能にするため、放射線不透過物質を配置してもよいし、放射線不透過物質を保護カバーに練り込んでもよい。
放射線不透過物質は、放射線の透過を抑制することができる物質であって、金属がより好ましく、具体的にプラチナ、金、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ラジウム、鉄、チタン、コバルト、クロム、アルミ、ガリウムなどの中から少なくとも1つ含まれることが好ましく、非金属ではヨウ素やフッ素を含む化合物などの中から少なくとも1つ含まれることが好ましい。これらはシャフト2のバルーン10の位置に配置される放射線不透過マーカーの原材料としても利用できる。
保護カバー20は、バルーンカテーテルより脱落しない様に、1つあるいは1つ以上の全ての保護カバーの部材は、シャフト2に直接、あるいは、バルーンの近位部スリーブまたは遠位部スリーブ18、近位側または遠位側のテーパー部16の少なくともいずれかの部位でシャフト2に固定されていることが好ましい。固定方法は、熱溶着が望ましく、接着剤を用いて接着されていてもよい。
保護カバー20は、治療部におけるバルーンの拡張に伴い、薬剤層またはバルーン外側面の少なくとも一部を血液などの体液に露出させるように剥離することが好ましい。具体的な方法としては、バルーンの拡張時に、薬剤層の一部が血液などの体液に露出できれば特に限定されないが、例えば、バルーン拡張時に、保護カバーの少なくとも一部が開口する方法や少なくとも一部が破断する方法等を用いることができ、より薬剤層を血液などの体液に露出できる点で、バルーン拡張時に、保護カバーの少なくとも一部が破断することがより好ましい。
保護カバー20は、少なくとも一部に、周囲よりも強度の弱い脆弱部23を有していることが好ましい。脆弱部を有する保護カバーは、バルーンの内側に圧力流体を流入させることによりバルーンを拡張させて、拡張によりバルーンの径方向に生じる応力によって保護カバーの脆弱部23で破断し、薬剤層から剥離し、薬剤層の少なくとも一部を血液などの体液に露出させることができることができる。
脆弱部の形成方法としては、バルーン拡張時に破断できる部分が形成されていれば特に限定されないが、例えば、保護カバーを軸方向あるいは周方向に切断する、ミシン目などの不連続線を形成する方法、周囲より厚みが薄い部分を形成する方法、あるいは、周囲よりも強度の弱い樹脂で形成する方法や、樹脂を熱的あるいは化学的処理により樹脂の一部を劣化させる方法等が挙げられ、特に、形成させやすい点で、ミシン目などの不連続線を形成する方法が好ましく用いることができる。
図5は、バルーンカテーテルの軸方向に脆弱部23を有する保護カバー22の例を示しており、図8は、バルーンカテーテルの周方向に脆弱部23を有する保護カバー22の例を示している。
図5は、バルーンカテーテルの軸方向に脆弱部23を有する保護カバー22の形態の一例を示しており、例えば図4に示す、フィルム状の樹脂を巻いた円柱体21や、チューブ状に成形された円柱体を成形することで製造することができる。脆弱部23は折り目線、ミシン線などのような形態で設けてもよく、接着剤による接着や熱溶着などによって接着することで設けることもでき、また、必ずしも固定されてなくてもよい。
図6は、バルーンカテーテルの軸方向に脆弱部23を有する保護カバー22の実施形態の他の一例を示しており、バルーンカテーテルの薬剤層またはバルーンを覆うように装着され、例えば保護カバーのスリーブ24とバルーンカテーテルのスリーブ17、18で固定される。このときバルーンは拡張状態であってもよく、収縮状態であってもよい。このときバルーンが収縮状態にあってはバルーンが折畳まれてプリーツと呼ばれるヒダを形成されていても良いし、さらにプリーツを折畳んでラッピングされた状態で、保護カバーを配置して設けてもよい。バルーンが拡張状態にあってはバルーンや薬剤層の外側の形状に沿うように保護カバーを配置して設け、バルーンや薬剤層とともに保護カバーもプリーツやラッピングされて折畳まれたとしてもよい。
図7(a)は、軸方向に脆弱部23を有する保護カバー22(20)を装着したバルーンが拡張した時のバルーンの平面図、図7(b)はバルーンが拡張した時の遠位側の側面図を示す。バルーン拡張時、保護カバー22(20)は、軸方向に設けられた脆弱部23を起点に破断し、図7に示す剥離方向28に押し退けられるように、薬剤層またはバルーン外側面から剥離、移動してバルーンの外側面上の一部に収束する。この時、保護カバーが収束している範囲以外の部分で、バルーン外側面上に配置された薬剤層が血液などの体液に露出する。
図8及び9は、バルーンカテーテルの周方向に脆弱部23を有する保護カバー22を示しており、例えば図4に示す、フィルム状の樹脂を巻いた円柱体21や、チューブ状に成形された円柱体を2個用いてそれぞれを成形し、図8に示すような近位側保護カバー22aまたは遠位側保護カバー22bとを別々に成形する方法と、円柱体21を1個用いて成形して、周方向に切断し、図8に示すように近位側保護カバー22aまたは遠位側保護カバー22bとを得る方法などで得ることができる。このように得た近位側保護カバー22aおよび遠位側保護カバー22bに脆弱部23を形成するように接合して周方向に脆弱部を有する保護カバー22を製造することができる。
脆弱部23は折り目線、ミシン線などのような形態で設けることもできるし、接着剤による接着や熱溶着などによって接着することで設けてもよいし、必ずしも固定されてなくてもよい。
バルーンカテーテルの周方向に脆弱部23を有する保護カバー22a、22b
図10に示すようにバルーンカテーテルの薬剤層またはバルーンを覆うように装着され、例えば保護カバーのスリーブ24とバルーンカテーテルのスリーブ17、18で固定される。このときバルーンは拡張状態であってもよく、収縮状態であってもよい。このときバルーンが収縮状態の時は、バルーンはプリーツやラッピングされ折畳まれた状態で保護カバーを配置して設けてもよいし、バルーンが拡張状態の時は、バルーンや薬剤層の外側の形状に合わせて保護カバーを配置して設け、バルーンや薬剤層とともに保護カバーもプリーツやラッピングされて折畳まれていてもよい。
図10に示すようにバルーンカテーテルの薬剤層またはバルーンを覆うように装着され、例えば保護カバーのスリーブ24とバルーンカテーテルのスリーブ17、18で固定される。このときバルーンは拡張状態であってもよく、収縮状態であってもよい。このときバルーンが収縮状態の時は、バルーンはプリーツやラッピングされ折畳まれた状態で保護カバーを配置して設けてもよいし、バルーンが拡張状態の時は、バルーンや薬剤層の外側の形状に合わせて保護カバーを配置して設け、バルーンや薬剤層とともに保護カバーもプリーツやラッピングされて折畳まれていてもよい。
図11は、バルーンカテーテルの周方向に脆弱部23を有する保護カバー22a、22bを装着したバルーンが拡張した時の平面図を示している。バルーン拡張時に保護カバーは、軸方向に設けられた脆弱部23を起点に破断し、図11に示す剥離方向28に押し退けられるように薬剤層またはバルーン外側面から剥離、移動してバルーンのスリーブの少なくとも一部に収束する。このとき保護カバーが収束している範囲以外の部分でバルーン外側面上に配置された薬剤層が血液などの体液に露出する。
バルーンカテーテルの周方向に脆弱部を有する保護カバー22a、22bを装着したバルーンは、バルーンカテーテルの軸方向に脆弱部23を有する保護カバー22を装着したバルーンに比較して、バルーン直管部14のより広い範囲が露出する為、より効率的に薬剤層から血管壁に薬剤を移行させることができる。一方でバルーンカテーテルの軸方向に脆弱部を有する保護カバー22を装着したバルーンは、バルーンカテーテルの周方向に脆弱部を有する保護カバー22a、22bを装着したバルーンに比較して、バルーン拡張後も保護カバー20が2つに分断されることなく、バルーンの少なくとも2箇所以上で固定されており保護カバー20が脱落しにくい。
このようにして得られた保護カバーを有するバルーンカテーテルは、治療部位のまでバルーンをデリバリーする時には、保護カバーで薬剤層が保護され、薬剤が血液などの体液中に脱落や溶失することなく治療部までバルーンを届けることができる。治療部位にてバルーンを拡張させると、例えば、図7に示すように保護カバーが剥離して薬剤層やバルーン外側面の少なくとも一部が外側に露出した後、血管壁に薬剤層が触れることによって薬剤層から薬剤が血管壁や血管組織内に移行させることができる。よって、バルーン外側面上の薬剤層の薬剤を失うことなく治療部位へ届けることでより高い治療効果を得ることができる。
また、保護カバーは、バルーンカテーテルを治療部位までデリバリーするときだけではなく、例えば術者や助手が薬剤保持バルーンを手術で用いる為に準備する工程でも薬剤がバルーン外側面上から脱落して失われることを防ぐことができる。
(被覆部)
本発明のバルーンカテーテルは、バルーン外表面または薬剤層の少なくとも一部が保護カバーで覆われた被覆部を有しており、被覆部において、薬剤層と保護カバーが接触する接触部と薬剤層と保護カバーが接触していない非接触部を有し、薬剤層と保護カバーの接触部の面積が小さいことを特徴としている。
本発明のバルーンカテーテルは、バルーン外表面または薬剤層の少なくとも一部が保護カバーで覆われた被覆部を有しており、被覆部において、薬剤層と保護カバーが接触する接触部と薬剤層と保護カバーが接触していない非接触部を有し、薬剤層と保護カバーの接触部の面積が小さいことを特徴としている。
従来の保護カバーを設けたバルーンカテーテルでは薬剤層と保護カバーの設置面のほぼ全てで接しており、非接触部を有していないが、本発明のバルーンカテーテルは、バルーンが拡張するに伴って保護カバーが剥離するときに、被覆部において、非接触部を有しているため薬剤層と保護カバーが接触する接触部で生じる摩擦を抑制できるため、薬剤層を損傷させること無く、薬剤を血管壁に移行させることができる。
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護カバーと薬剤層との接触部の面積は、被覆部の面積に対して、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
また、保護カバーで少なくとも一部を覆われているバルーンを任意の箇所で切断したときにできる断面において、接触部の周方向長さが、保護カバー周方向長さの80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
また、保護カバーで少なくとも一部を覆われているバルーンを任意の箇所で切断したときにできる断面において、接触部の周方向長さが、保護カバー周方向長さの80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
(突出部)
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護カバーで被覆されたバルーン外側面および/または薬剤層の被覆部で、薬剤層と保護カバーの接触部の面積が小さくする方法としては、接触部の面積を面積が小さくできれば特に限定されないが、例えば、バルーン外側面上または薬剤層の外側面上にバルーン半径方向外側に突出する突出部を成形させることにより、保護カバーと薬剤層が接触部の面積を小さくすることができ、保護カバーと薬剤層の間に生じる摩擦を低減することができる。尚、本発明の突出部は、被覆部以外の場所に形成されていても良い。
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護カバーで被覆されたバルーン外側面および/または薬剤層の被覆部で、薬剤層と保護カバーの接触部の面積が小さくする方法としては、接触部の面積を面積が小さくできれば特に限定されないが、例えば、バルーン外側面上または薬剤層の外側面上にバルーン半径方向外側に突出する突出部を成形させることにより、保護カバーと薬剤層が接触部の面積を小さくすることができ、保護カバーと薬剤層の間に生じる摩擦を低減することができる。尚、本発明の突出部は、被覆部以外の場所に形成されていても良い。
具体的には、図12に示すようにバルーンの外側面に突出部を設ける、あるいは、図13に示すように薬剤層の外側面に突出部を設けることで実現することができる。
図12(a)は、図1に示したバルーンカテーテル1のC−C断面図であってバルーンの外側面に突出部を形成させた一例を示し、図12(b)は、その一部を拡大した図を示している。
図13(a)は、図1に示したバルーンカテーテル1のC−C断面図であって薬剤層の外側面に突出部を形成させた一例を示しており、図13(b)はその一部を拡大した図を示している。尚、図12や図13等で示した突出部の形状は一例であり、バルーン外側面や薬剤層の外側面にバルーン半径方向外側に突出している部分があれば特に限定されない。
図12(b)の26、図13(b)の27で示したような、バルーン外側面もしくは薬剤層外側面の底面から突出部25の頂点の距離を突出部の高さ26としたとき、突出部の高さの下限値は、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、更には、0.1mm以上が特に好ましく、その上限値は、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1mm以下が特に好ましい。
図12(a)は、図1に示したバルーンカテーテル1のC−C断面図であってバルーンの外側面に突出部を形成させた一例を示し、図12(b)は、その一部を拡大した図を示している。
図13(a)は、図1に示したバルーンカテーテル1のC−C断面図であって薬剤層の外側面に突出部を形成させた一例を示しており、図13(b)はその一部を拡大した図を示している。尚、図12や図13等で示した突出部の形状は一例であり、バルーン外側面や薬剤層の外側面にバルーン半径方向外側に突出している部分があれば特に限定されない。
図12(b)の26、図13(b)の27で示したような、バルーン外側面もしくは薬剤層外側面の底面から突出部25の頂点の距離を突出部の高さ26としたとき、突出部の高さの下限値は、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、更には、0.1mm以上が特に好ましく、その上限値は、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1mm以下が特に好ましい。
バルーン外側面に突出部を有するバルーンカテーテルを製造する場合は、例えば、樹脂チューブをバルーン形状に樹脂成形する工程で、バルーン外表側上に突出部を形成することのできる金型を用いることで製造することができる。
図14に示すようにバルーンを成形した後に、構造物をバルーン外側面上に配置させることによってバルーン外側面上に突出部を形成させてもよい。
薬剤層の外側面上に突出部を有するバルーンカテーテルを製造する場合、例えば、バルーン外側面上に薬剤等を塗布した後に、できた薬剤層の表面の一部を除去する方法や、突出部を形成させる専用の金型を被せて成形する方法、バルーン外側面上に濃淡を持たせて薬剤を塗布する方法など製造することができる。
薬剤層の外側面上に突出部を有するバルーンカテーテルを製造する場合、例えば、バルーン外側面上に薬剤等を塗布した後に、できた薬剤層の表面の一部を除去する方法や、突出部を形成させる専用の金型を被せて成形する方法、バルーン外側面上に濃淡を持たせて薬剤を塗布する方法など製造することができる。
突出部25は、バルーン外側面上もしくは薬剤層外側面上に、図19のようにランダムに配置してもよいし、図15〜17のように線状に連続して配置してもよいし、図20のように不連続に破線状に配置してもよい。
尚、本発明においてランダム、線状、破線状に関わらず、突出部の配置にある一定のパターンを持たせとき、突出部が形成するパターンを「突出部パターン」と称する。突出部パターンを有することにより薬剤層と保護カバーの摩擦を低減することができる。
突出部パターンは、図15に示すようにバルーンカテーテルの周方向に配置してもよいし、図16のように軸方向に配置してもよく、もしくは図17のようにらせん状に配置してもよい。その他にもランダム模様に配置してもよいし、網状にしてもよいし、様々な突出部パターンを複数組み合わせてもよい。
突出部パターンは、図15に示すようにバルーンカテーテルの周方向に配置してもよいし、図16のように軸方向に配置してもよく、もしくは図17のようにらせん状に配置してもよい。その他にもランダム模様に配置してもよいし、網状にしてもよいし、様々な突出部パターンを複数組み合わせてもよい。
突出部あるいは突出部パターンは図15〜17のような連続的な線状や、図19のような不連続な破線状、図20のようにランダムではあるが近似直線29を有する突出部パターンをバルーン外側面あるいは薬剤層に形成することが好ましい。以下、本発明では、前記突出部または突出部パターンの連続的な線や破線、あるいは近似直線を突出部により形成される線と称する。
突出部は、突出部により形成される線29が、バルーンの拡張により保護カバーが破断して薬剤層を露出するように保護カバーが剥離する方向のベクトル28と、実質的に平行となるように形成することがより好ましい。それにより、保護カバーと突出部との間に生じる摩擦力が低減し、よりスムーズに保護カバーの剥離ができる傾向がある。ここで実質的に平行とは、突出部により形成される線と保護カバーが剥離する方向28のベクトルがなす角が45度以内の範囲で、スムーズに保護カバーが剥離する方向を指す。
例えば、保護カバーの剥離方向28が図6、7に示すように周方向の場合は図15のように突出部を突出部により形成される線が周方向となるように配置したほうが好ましく、逆に保護カバーの剥離方向28が図10、11に示すようにバルーンの軸方向の場合は図16に示すように突出部を突出部により形成される線29が軸方向となるように配置することが好ましい。このとき突出部により形成される線29と保護カバーの剥離方向のベクトル28のなす角は、より安定して剥離できる点で、45度以内の範囲内において、その下限値は、0度以上が好ましく、5度以上がより好ましく、また10度以上が特に好ましい。また、突出部により形成される線29と保護カバーの剥離方向のベクトルのなす角の上限値は、45度未満が好ましく、35度以下がより好ましく、25度以下が特に好ましい。
図17に示すようにらせん状に突出部パターンを配置する場合にも、突出部により形成される線(突出部による曲線25の近似直線)29と保護カバーの剥離方向28なす角が、45度以内の範囲において、前記範囲内とすることが好ましい。
さらに保護カバーの剥離の安定性を高める為に、保護カバーの内腔側表面にも、バルーン外側面上もしくは薬剤層外側面上と同様の突出部や、突出部パターンを設けてもよい。
尚、保護カバーの突出部または突出部パターンにおいて、上記バルーン外側面あるいは薬剤層に形成された突出部または突出部パターンと同様に、突出部や突出部パターンの連続的な線や破線、あるいは近似直線を突出部により形成される線と称する。尚、本発明における近似直線とは、突起部パターンが点状であれば、各突起部の最小2乗法により求められる回帰直線を指し、突起部が曲線である場合は、周方向に等間隔の36点(周方向に10°毎)について最小2乗法により求められる回帰直線を指す。
尚、保護カバーの突出部または突出部パターンにおいて、上記バルーン外側面あるいは薬剤層に形成された突出部または突出部パターンと同様に、突出部や突出部パターンの連続的な線や破線、あるいは近似直線を突出部により形成される線と称する。尚、本発明における近似直線とは、突起部パターンが点状であれば、各突起部の最小2乗法により求められる回帰直線を指し、突起部が曲線である場合は、周方向に等間隔の36点(周方向に10°毎)について最小2乗法により求められる回帰直線を指す。
保護カバーの内腔側表面に配置する突出部は、保護カバーの突出部により形成される線と、バルーン外側面上もしくは薬剤層外側面上の突出部により形成される線が実質的に垂直に交差するように形成することが好ましい。実質的に垂直とは、バルーン外側面上あるいは薬剤層表面の突出部により形成される線と保護カバーの突出部パターンで形成される線のなす角が45度以上の範囲で、スムーズ保護カバーが剥離する方向を指す。
バルーン外側面上もしくは薬剤層外側面上の突出部で形成される線と保護カバー内腔側表面に配置する突出部で形成される線が交差する角度は、その下限が45度を超えることが好ましく、55度以上がより好ましく、65度以上が特に好ましい。また、その上限は、90度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
図15〜17に示すような連続的な線状の突出部を形成する場合は、例えば、繊維や金属線等の細長い構造体を、バルーン外側面上または薬剤層外側面上に巻きつけて形成することができる。
尚、バルーン外側面上に突出部を形成する場合は、突出部の高さ26が薬剤層の厚みよりも大きくなるよう形成することが好ましい。バルーン外側面上に形成した突出部の高さ26が薬剤層の厚みよりも大きいため薬剤層と保護カバーが直接接触することをより防ぐ効果が得られやすく、保護カバーが剥離する際に薬剤層への損傷や薬剤の流失を抑制できる傾向がある。
さらに、薬剤層の厚みよりも太い構造体を用いる等で病変血管壁に食い込むスコアリング効果を付与することにより、より多くの薬剤を病変血管壁のより奥まで移行させることができ、十分な再狭窄抑制効果を発揮することができる傾向がある。このときの具体的な細長い構造体の厚みあるいは高さの下限値は、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、1mm以下が特に好ましく、その上限値は、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。
前記構造体は保護カバーとの摩擦低減の観点、あるいは、十分なスコアリング効果を発揮されやすい点から主に樹脂や金属等の材料から形成されることが好ましい。構造体が主に樹脂から形成される場合は、繊維材料で形成されることがより好ましく、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。繊維材料は、特に限定されないが、摩擦低減、あるいは、スコアリングの効果を得られやすい点で、高硬度で伸びにくい(弾性率が高い)材料であることが好ましい。そのような繊維材料として、例えば、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。
構造体が主に金属から形成される場合は、ワイヤ状やケーブル状などの形状であることがより好ましい。金属素材としては、特に限定されないが、鉄、ニッケル、チタン、コバルト、クロム、白金、銅、亜鉛、マグネシウムの中から少なくとも1つ以上を含むものであることが好ましい。
前記構造体に繊維材料やワイヤ、ケーブルなどの細長い材料を用いる場合、例えば図21のようにバルーン外側面に編組状に編み込んで配置することができる。それにより、バルーンにセミコンプライアント性、あるいは、ノンコンプライアント性の特性を、更に付与させることができる。本発明において、セミコンプライアント性、あるいは、ノンコンプライアント性とは、通常のバルーンの拡張圧に比例して径方向への伸びや軸方向の伸びが生じるが、これを抑制できる性能を指し、ノンコンプライアント型バルーンはセミコンプライアント型バルーンよりもバルーン拡張時の軸方向または径方向の伸びがより抑制されているバルーンを指す。
このようにバルーンをセミコンプライアント型やノンコンプライアント型とすることで、強度が増してバルーンを拡張させるときの拡張圧の上限を高く設定できる。よって、病変血管部に対して高い圧力で拡張でき、石灰化病変などの硬化病変に対しても治療することができ、高い再狭窄抑制効果が得られる。さらに、治療中などに不足の事態が発生してバルーンに過度な拡張圧が加わった場合においても、バルーンが軸方向や外周方向の過度に伸びてしまうがこと無く、保護カバーがバルーンから脱落して血管中で塞栓となってしまうことを防ぐことができる。
なお、セミコンプライアント型やノンコンプライアント型のバルーンとすることは、ここで示した方法に限ったものではなく、例えばバルーンの膜厚を厚くすることや、バルーンを製造する際に強度が高い材料や伸性や弾性が低い材料などの適切なものを選定することで実現することができる。
本発明のバルーンカテーテルのバルーンを、セミコンプライアント型やノンコンプライアント型として、石灰化病変などの硬化病変に対してより高い拡張性能を持たせる観点から、軸方向の長さの変化率について、1.02MPa(10atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL10、外径をD10とし、2.03MPa(20atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL20、外径をD20としたとき、軸方向の長さの変化率(L20―L10)/L10は7.5%以下となることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。外径の変化率(D20―D10)/D10は12.5%以下となることが好ましく、10%以下がより好ましく、7.5%以下がさらに好ましい。
さらにバルーンに加圧する圧力が高拡張圧の範囲では具体的に、2.03MPa(20atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL20、外径をD20とし、3.05MPa(30atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL30、外径をD30としたとき、軸方向の長さの変化率(L30―L20)/L20は5%以下となることが好ましく、3%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。外径の変化率(D30―D20)/D20は10%以下となることが好ましく、7.5%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
また、バルーンに加圧する圧力が低拡張圧の範囲では具体的に、0.51MPa(5atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL5、外径をD5とし、1.01MPa(10atm)加圧時の直管部の軸方向の長さをL10、外径をD10としたとき、軸方向の長さの変化率(L10―L5)/L5は10%以下となることが好ましく、7.5%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。外径の変化率(D20―D10)/D10は15%以下となることが好ましく、12.5%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
一方で、本発明のバルーンカテーテルにおいて、バルーンを拡張したときにより確実に保護カバーを剥離させること、または過度にバルーンが拡張することによる保護カバーの脱落を防ぐといった観点においては、拡張時のバルーンの軸方向もしくは径方向への伸びの変化率を制御することが好ましい。具体的には、軸方向の長さの変化率については保護カバーが脆弱部で十分に破裂しない程度に加圧した時の直管部の軸方向の長さをLS、外径をDSとし、保護カバーが脆弱部で破裂する直前もしくは直後まで加圧した時の直管部の軸方向の長さをLL、外径をDLとした時、図5〜7に示す脆弱部を軸方向に配置した保護カバーを装着した薬剤保持バルーンカテーテルの場合は、軸方向の長さの変化率(LL―LS)/LSが外径の変化率(DL―DS)/DSよりも小さいことが好ましく、図8〜11に示す脆弱部を周方向に配置した保護カバーを装着した薬剤保持バルーンカテーテルの場合は、軸方向の長さの変化率(LL―LS)/LSが外径の変化率(DL―DS)/DSよりも大きいことが好ましい。
1:バルーンカテーテル
2:シャフト
3:内管
4:外管
5:ハブ
6:加圧ルーメンポート
7:ガイドワイヤーポート
10:バルーン
11:バルーン外側面
12:薬剤層
14:直管部
15:近位側テーパー部
16:遠位側テーパー部
17:近位側スリーブ
18:遠位側スリーブ
20:保護カバー
21:円柱体
22:軸方向に脆弱部を有する保護カバー
22a、22b:周方向に脆弱部23を有する保護カバー
23:脆弱部
24:保護カバースリーブ
25:突出部
26:バルーン外側面の突出部の高さ
27:薬剤層の突出部の高さ
28:保護カバーの剥離方向
29:突出部により形成される線
2:シャフト
3:内管
4:外管
5:ハブ
6:加圧ルーメンポート
7:ガイドワイヤーポート
10:バルーン
11:バルーン外側面
12:薬剤層
14:直管部
15:近位側テーパー部
16:遠位側テーパー部
17:近位側スリーブ
18:遠位側スリーブ
20:保護カバー
21:円柱体
22:軸方向に脆弱部を有する保護カバー
22a、22b:周方向に脆弱部23を有する保護カバー
23:脆弱部
24:保護カバースリーブ
25:突出部
26:バルーン外側面の突出部の高さ
27:薬剤層の突出部の高さ
28:保護カバーの剥離方向
29:突出部により形成される線
Claims (11)
- シャフトと、前記シャフトの外側に設けられた拡張可能なバルーンとを有するバルーンカテーテルであって、
前記バルーンの外側面の少なくとも一部には、薬剤層が設けられており、
前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の、少なくとも一部は、保護カバーで覆われた被覆部を有しており、
前記保護カバーは、 前記被覆部において、前記バルーンの拡張時に前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層から剥離し、前記薬剤層の少なくとも一部を外側に露出するよう設けられており、
前記被覆部分は、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層と、前記保護カバーが接触する接触部と接触しない非接触部を有することを特徴とするバルーンカテーテル。 - 前記接触部の面積は、前記被覆部の面積の80%以下であることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
- 前記バルーンの断面において、前記接触部の周方向長さが前記保護カバーの周方向長さの80%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
- 前記薬剤層は、前記保護カバーとの間に中間層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記バルーンまたは前記薬剤層の少なくとも一方の外側面に、半径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記突出部により形成される線が、バルーン拡張時に保護カバーが薬剤層から剥離する方向のベクトルと、実質的に平行となるように前記突出部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のバルーンカテーテル。
- 前記バルーンの拡張時に、少なくとも一部が破断する前記保護カバーを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記保護カバーの一部には周囲よりも強度が弱い脆弱部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態で、前記バルーンの外側面および/または前記薬剤層の少なくとも一部を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記保護カバーは、プリーツが形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
- 前記保護カバーは、前記バルーンが収縮状態、または、折り畳み状態の時に、折り畳まれていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
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