「前照灯装置」とは、輸送機械などに搭載されて、操縦者の視認性及び外部からの被視認性を向上させるために使われる照明装置である。車両用の前照灯装置は、ヘッドランプ又はヘッドライトとも呼ばれる。
また、投射レンズは、投影レンズと同じ意味で用いている。ここで、「投射」とは、光線を投げかけること。なお、「投影」とは、像を映しだすことである。ここでは、投射レンズ8が、光源像又は配光パターンを照射面9上に映しだしている。
近年において、二酸化炭素(CO2)の排出と燃料の消費とを抑えるといった環境への負荷を軽減する観点から、例えば、車両の省エネルギー化が望まれている。これに伴い、車両用の前照灯装置においても小型化、軽量化及び省電力化が求められている。そこで、車両用の前照灯装置の光源として、半導体光源の採用が望まれている。半導体光源は、従来のハロゲンバルブ(ランプ光源)に比べて発光効率の高い。
「半導体光源」とは、例えば、発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))又はレーザーダイオード(LD(Laser Diode))などである。
従来のランプ光源(管球光源)は、半導体光源に比べて指向性の低い光源である。ランプ光源としては、白熱電球、ハロゲンランプ又は蛍光ランプ等が挙げられる。このため、ランプ光源はリフレクタ(例えば、反射鏡など)を用いて、放射した光に指向性を持たせている。一方、半導体光源は、少なくとも一つの発光面を備えており、光は発光面側に放射される。
このように、半導体光源はランプ光源と発光特性が異なる。このため、半導体光源は、リフレクタ(例えば、反射鏡など)を用いた従来の光学系ではなく、半導体光源に適した光学系を用いることが望ましい。
例えば、リフレクタは、点光源のランプに適している。このため、LEDなどの光源にリフレクタを用いた場合には、光源が一点ではなく多数になり、無駄な光が多くなる。そして、リフレクタで正しく反射される光が少なくなり、無駄な光がグレア光となる。これは、配光パターンの領域内での光量が減少する原因となる。
なお、上述の半導体光源は、固体光源の一種である。固体光源としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)又は平面上に塗布された蛍光体に励起光を照射して、発光させる光源等が挙げられる。これらの固体光源にも、半導体光源と同様の光学系を用いることが望ましい。
このように、管球光源は含まず、指向性を持つ光源を「固体光源」とよぶ。
「指向性」とは、光などが空間中に出力されるとき、その強度が方向によって異なる性質である。ここで「指向性を有する」とは、上述のように、発光面の表面側に光が進行して、発光面の裏面側には光が進行しないことをいう。つまり、光源から出射される光の発散角は180度以下となる。
特許文献1の車両用前照灯は、上述のように、回転楕円面系のリフレクタの第1の焦点に半導体光源を配置している。そして、半導体光源から出射された光は、第2の焦点に集光される。シェード(遮光板)は、光の一部を遮光する。遮光されなかった光は、投影レンズによって前方に出射される。
また、以下の実施の形態で示す光源は、指向性を持つ光源(固体光源)として説明している。上述のように、主な例としては、発光ダイオード又はレーザーダイオード等の半導体光源である。また、光源は、有機エレクトロルミネッセンス光源又は平面上に塗布された蛍光体に励起光を照射して発光させる光源等も含む。
実施の形態で固体光源を例として採用しているのは、管球光源を用いた場合には、省エネルギー化の要望又は装置の小型化の要望に応え難いからである。しかし、省エネルギー化の要望よりも光利用効率を向上させるという要望を重視する場合には、光源は管球光源であってもよい。つまり、省エネルギー化の要望又は装置の小型化の要望が無い場合には、光源は管球光源であってもよい。
本発明は、車両用の前照灯装置のロービーム及びハイビームなどに適用される。また、本発明は、自動二輪車用の前照灯装置のロービーム及びハイビームなどに適用される。また、本発明は、三輪又は四輪等のその他の車両用の前照灯装置についても適用される。
しかし、以下の説明では、自動四輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンを形成する場合を例として説明する。自動四輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンは、立ち上がりラインの形状を有するカットオフラインである。つまり、歩行者側(自車側)と対向車側とでカットオフラインの高さが異なる。
カットオフラインは、前照灯の光を壁又はスクリーンに照射した場合にできる光の明暗の区切り線のことで、配光パターンの上側の区切り線のことである。つまり、「カットオフライン」は、配光パターンの輪郭部にできる明部と暗部との境界線の部分である。「カットオフライン」は、配光パターンの上側の光の明部と暗部との境界線のことである。つまり、カットオフラインの上側(配光パターンの外側)が暗く、カットオフラインの下側(配光パターンの内側)が明るい。
「カットオフライン」は、明瞭であることを要求される。ここで「明瞭」とは、カットオフラインに大きな色収差又はぼやけ等が生じてはならないことを意味している。このような明瞭なカットオフラインを実現するためには、カットオフラインに大きな色収差又はぼやけ等が生じてはならない。「カットオフラインにぼやけが生じる」とは、カットオフラインが不鮮明になることである。
そして、道路交通規則では、対向車を眩惑させないために、配光パターンの上側の光の境界線(カットオフライン)は明瞭であることが要求される。つまり、カットオフラインの上側(配光パターンの外側)が暗く、カットオフラインの下側(配光パターンの内側)が明るい明瞭なカットオフラインが要求される。
カットオフラインは、すれ違い用の前照灯装置の照射方向を調節する際に用いられる用語である。すれ違い用の前照灯装置は、ロービームとも呼ばれる。
また、「ロービーム」とは、下向きのビームで、対向車とのすれ違いの際などに使用される。通常、ロービームでは、前方40m程度を照らす。また、「上下方向」とは、地面(路面)に対して垂直の方向である。
なお、上記の壁またはスクリーン上の配光パターンを照度分布として説明している。このため、最も明るい領域を「高照度領域」と呼んでいる。一方、配光パターンを光度分布と捉えると、配光パターンの最も明るい領域は「高光度領域」となる。例えば、後述の共役面PC上の配光パターンの高光度領域は、照射面9上の配光パターンの高照度領域に対応している。
また、上述のように、他の道路交通規則の例として、歩行者の識別及び標識の識別のために、前照灯装置は、歩道側の照射を立ち上げる「立ち上がりライン」を有さなければならない。これは、対向車を幻惑させずに、ドライバーが歩道側の人または標識等を視認するためである。ここで、「立ち上がりライン」とは、ロービームの対向車側が水平であり、歩道側は対向車側に対して斜めに立ち上がった配光パターンの形状を示している。
上記の壁またはスクリーンを以下の実施の形態では照射面9として説明している。照射面9は、車両の前方の所定の位置に設定される仮想の面である。照射面9は、X−Y平面に平行な面である。つまり、照射面9は、前照灯装置が光を照射する方向(+Z軸方向)に対して垂直な面である。
車両の前方の所定の位置は、前照灯装置の光度又は照度を計測する位置である。車両の前方の所定の位置は、道路交通規則等で規定されている。例えば、欧州では、UNECE(United Nations Economic Commission for Europe)が定める自動車用の前照灯装置の光度の計測位置は、光源から25mの位置である。日本では、日本工業標準調査会(JIS)が定める光度の計測位置は、光源から10mの位置である。
シェードのカットオフラインは、立ち上がりラインの形状を有している。立ち上がりラインは、対向車側と歩行者側とでカットオフラインの高さを変えるものである。歩行者側は、対向車側との対比で考えると、自分の車両側(自車側)と言える。対向車側のカットオフラインは、前照灯の光による幻惑を防止するために、歩行者側(自車側)のカットオフラインに比べて高さが低い。つまり、配光パターンを見ると、歩行者側のシェード(自車側)に比べて、対向車側のシェードは、多くの光を遮光する。つまり、立ち上がりラインのように、カットオフラインの位置によって、高さが異なる複雑なカットオフラインを形成する場合には、遮光される光量が増えるため、光利用効率が低下する。
また、投影レンズの焦点は、シェード上に位置している。そして、投影レンズは、シェードの位置に形成された配光パターンの像を、反転して前方に投影する。つまり、配光パターンの像は、左右方向と上下方向とにおいて、反転される。幅の広い配光パターンを得るために、投影レンズは光線を大きく屈折させる。つまり、投影レンズは、大きな正のパワーを有する。
このため、投影レンズの出射面の周辺部では、光軸に対する面の傾斜が大きくなる。そして、投影レンズに入射する光線の一部は、周辺部の出射面で全反射する。全反射された光線は、前方に出射されない。つまり、配光パターンの幅を広げるほど、投影レンズから出射されない光が増える。このため、光利用効率は低下する。
以下に示す実施の形態では、異なる高さのカットオフラインを形成するために、光軸が高さ方向に異なる複数の面を備える光学面を用いている。この光学面を用いることによって、光利用効率の低下を抑えている。また、光源として、固体光源を採用した例を示している。
「配光」とは、光源の空間に対する光度分布をいう。つまり、光源から出る光の空間的分布である。また、「光度」とは、発光体の放つ光の強さの程度を示すもので、ある方向の微小な立体角内を通る光束を、その微小立体角で割ったものである。つまり、「光度」とは、光源からどのくらい強い光が出ているかを表す物理量である。また、「照度」とは、平面状の物体に照射された光の明るさを表す物理量のことである。単位面積あたりに照射された光束に等しい。
また、「配光パターン」とは、光源から放射される光の方向に起因する光束の形状及び光の強度分布(光度分布)を示している。「配光パターン」を以下に示す照射面9上での照度パターンの意味としても使用する。つまり、照射面9上での光の照射される形状及び照度分布を示している。また、「配光分布」とは、光源から放射される光の方向に対する光の強度分布(光度分布)である。「配光分布」を以下に示す照射面9上での照度分布の意味としても使用する。
このため、以下の実施の形態において、例えば、共役面PC上に形成される像(配光パターン)に関しても光度分布として説明している。
また、四輪の車両は、例えば、通常の四輪の自動車等である。また、三輪の車両は、例えば、ジャイロと呼ばれる自動三輪車である。「ジャイロと呼ばれる自動三輪車」とは、前輪が一輪で、後輪が一軸二輪の三輪でできたスクーターである。日本では原動機付自転車に該当する。車体の中央付近に回転軸を持ち、前輪及び運転席を含む車体のほとんどを左右方向に傾けることができる。この機構によって、自動二輪車と同様に旋回の際に内側へ重心を移動することができる。
以下、車両用の前照灯装置を例として、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態の例を説明する。なお、以下の実施の形態の説明においては、説明を容易にするためにXYZ座標を用いて説明する。
車両の左右方向をX軸方向とする。車両前方に対して左側を+X軸方向とし、車両前方に対して右側を−X軸方向とする。ここで、「前方」とは、車両の進行方向をいう。つまり、「前方」とは、前照灯装置が光を照射する方向である。
車両の上下方向をY軸方向とする。上側を+Y軸方向とし、下側を−Y軸方向とする。「上側」とは空の方向であり、「下側」とは地面(路面等)の方向である。高さ方向は、Y軸方向である。
車両の進行方向をZ軸方向とする。進行方向を+Z軸方向とし、反対の方向を−Z軸方向とする。+Z軸方向を「前方」とよび、−Z軸方向を「後方」とよぶ。つまり、+Z軸方向は前照灯装置が光を照射する方向である。
上述のように、以下の実施の形態では、Z−X平面は、路面に平行な面とした。これは、通常考える場合には、路面は「水平面」であるからである。このため、Z−X平面は、「水平面」として考えている。「水平面」とは、重力の方向に直角な平面である。
しかし、路面は、車両の走行方向に対しては傾くことがある。つまり、登り坂又は下り坂などである。これらの場合には、「水平面」は、路面に平行な面として考える。つまり、「水平面」は、重力の方向に対して垂直な平面ではない。
一方、一般的な路面が車両の走行方向に対して左右方向に傾いていることは稀である。「左右方向」とは、走路の幅方向である。これらの場合には、「水平面」は、重力方向に対して直角な面として考える。例えば、路面が左右方向に傾き、車両が路面の左右方向に対して垂直であったとしても、車両が「水平面」に対して左右方向に傾いた状態と同等として考える。
なお、以下の説明を簡単にするために、「水平面」は、重力方向に垂直な平面として説明する。つまり、Z−X平面は、重力方向に垂直な平面として説明する。
実施の形態1.
図1(A)及び図1(B)は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の構成を示す構成図である。図1(A)は、車両の前方に対して右側(−X軸方向)から見た図である。図1(B)は、上側(+Y軸方向)から見た図である。
図2は、投射レンズ8の斜視図である。図3は、光源1の形状を示す模式図である。図3では、光源1を発光面11側(+Z軸側)から見ている。
図4(A)及び図4(B)は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100a,100bの構成を示す構成図である。図4(A)および図4(B)は、上側(+Y軸方向)から見た図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、光源1、及び投射レンズ8を備える。
<光源1>
光源1は、発光面11を備える。光源1は、発光面11から光を出射する。光源1は、例えば、発光面11から車両の前方を照明するための光を出射する。車両の前方を照明するための光を投射光ともよぶ。
光源1は、投射光学素子8の−Z軸方向側に位置している。
図1では、光源1は、+Z軸方向に光を出射している。「出射」とは、ある方向に向けて光を発することである。
光源1の発光面11の端部111は、直線部を含む形状をしている。端部111は、発光面11の−Y軸方向側に位置している。また直線部は、例えば、X軸方向に平行である。
本実施の形態1では、例えば、図3に示すように発光面が矩形の形状の場合を示す。図3の例では、発光面11の端部111は、−Y軸方向に位置している。端部111は、発光面11の−Y軸方向側の縁である。また、端部111は、発光面11の−Y軸方向側の辺である。また、端部111は、例えば、X軸に平行である。
光源1は、その種類を特に限定していない。しかし、上述の説明の通り以下の説明では、光源1がLED(発光ダイオード)であるとして説明する。以下において、発光ダイオードをLEDとよぶ。
光源1の発光面11の中心から、発光面11に垂直に伸びる軸を光源1の光軸Csとする。図3では、例えば、光源1の光軸Csは、Z軸に平行である。
<投射レンズ8>
投射レンズ8は、正のパワーを有するレンズである。投射レンズ8は、光源1の発光面11の像を変形する。そして、投射レンズ8は、変形された発光面11の像を車両の前方の照射面9に投影する。変形された発光面11の像は、配光パターンである。
投射レンズ8は、光源1の発光面11の像に変更を加える。像の変更には、形状の変更が含まれている。また、像の変更には、明るさの分布の変更が含まれることができる。変更を加えられた像は、配光パターンである。投射レンズ8は、配光パターンを拡大して投射する。
投射レンズ8は、「投射光学素子」の一例である。実施の形態では、一例として、この投射光学素子を投射レンズ8として説明する。
投射レンズ8は、1枚のレンズで構成されてもよい。また、投射レンズ8は、複数のレンズを用いて構成されてもよい。ただし、レンズの枚数が増加すると、光利用効率は低下する。このため、投射レンズ8は、1枚又は2枚で構成されることが望ましい。
投射レンズ8は、透明樹脂等で製作されている。また、投射レンズ8の材質は、透明樹脂に限らず、透光性を有する屈折材であれば構わない。「透光性」とは、光を透過する性質である。
また、投射レンズ8は、少なくとも2つ以上の光軸を有する。つまり、投射レンズ8は、複数の光軸を有する。例えば、図1に示す投射レンズ8の出射面82は、第1光軸領域821、第2光軸領域822および光軸変化領域823を備えている。
第1光軸領域821、光軸変化領域823および第2光軸領域822は、左右方向(X軸方向)に並べて配置されている。第1光軸領域821は、出射面82の+X軸側に配置されている。光軸変化領域823は、第1光軸領域821の−X軸側に配置されている。第2光軸領域822は、光軸変化領域823の−X軸側に配置されている。光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822との間に配置されている。
第1光軸領域821の光軸は、光軸Cp1である。第2光軸領域822の光軸は、光軸Cp2である。
光軸Cp1と光軸Cp2とは、光源1の光軸Csと一致していない。例えば、光軸Cp1と光軸Cp2とは、光源1の光軸Csよりも下側(−Y軸方向)に位置する。また、光軸Cp2は、光軸Cp1よりも下側(−Y軸方向)に位置する。実施の形態1では、例えば、光軸Cs、光軸Cp1および光軸Cp2は、互いに平行である。
光軸変化領域823の光軸の高さ方向の位置は、光軸Cp1と光軸Cp2の間で変化する。高さ方向は、Y軸方向である。図1の場合には、光軸変化領域823の領域内において、+X軸側の光軸の位置は、−X軸側の光軸の位置よりも高い。
投射レンズ8は、例えば、X軸方向とY軸方向で異なるパワーを有する。投射レンズ8は、例えば、トロイダルレンズである。図1では説明を簡単のために、投射レンズ8は、X軸方向にパワーを有さない。投射レンズ8は、例えば、シリンドリカルレンズである。
トロイダルレンズ面は、樽の表面またはドーナツの表面のように、直交する2つの軸方向の曲率が異なる面のことである。また、トロイダルレンズ面を持つレンズをトロイダルレンズという。
シリンドリカルレンズ面は、一つの方向(第1の方向)に曲率を有し、その方向(第1の方向)に垂直な方向(第2の方向)に曲率を有さない面のことである。また、シリンドリカルレンズ面を持つレンズをシリンドリカルレンズという。シリンドリカルレンズに光を入射させると、一方向だけの集光または発散が行われる。凸形状のシリンドリカルレンズに平行光を入射させると線状に集光する。この集光された線を、焦線という。
投射レンズ8の焦点のY軸方向の位置について説明する。第1光軸領域821、第2光軸領域822および光軸変化領域823の各々の焦点のY軸方向の位置について説明する。
第1光軸領域821の焦点のY軸方向の位置は、例えば、発光面11の端部111のY軸方向の位置に一致している。つまり、第1光軸領域821の焦点のY軸方向の位置は、例えば、Y軸方向において、発光面11の端部111と同じ位置である。
図1では、第1光軸領域821の焦点は、発光面11上に位置している。第1光軸領域821の焦点は、発光面11の端部111上に位置している。つまり、第1光軸領域821の焦点は、光軸Cp1と発光面11の端部111の交点にある。したがって、第1光軸領域821を介して、発光面11を含むX−Y平面に平行な面は、Y軸方向において、照射面9と光学的に共役の位置となる。発光面11は、共役面PC上に位置している。つまり、共役面PCは、発光面11を含んでいる。
つまり、第1光軸領域821の領域においては、Y軸方向において、発光面11は、照射面9と光学的に共役の位置となる。なお、第1光軸領域821の領域においては、X軸方向において、発光面11は、必ずしも照射面9と光学的に共役の位置とはならない。
なお、第1光軸領域821がシリンドリカルレンズ面である場合には、上述のように、第1光軸領域821の焦点は、直線状の焦線になる。図3に示すように、発光面11が矩形の場合には、第1光軸領域821の焦線は端部111に一致する。
第2光軸領域822の焦点のY軸方向の位置は、例えば、Y軸方向において、発光面11の範囲内に位置している。
図1では、第2光軸領域822の焦点は、発光面11の下側に位置している。つまり、第2光軸領域822の焦点は、光軸Cp2と発光面11を含む平面との交点にある。したがって、第2光軸領域822を介して、発光面11を含むX−Y平面に平行な面は、照射面9と光学的に共役の位置となる。
つまり、第2光軸領域822の領域においては、Y軸方向において、発光面11は、照射面9と光学的に共役の位置となる。なお、第2光軸領域822の領域においては、X軸方向において、発光面11は、必ずしも照射面9と光学的に共役の位置とはならない。
なお、第2光軸領域822がシリンドリカルレンズ面である場合には、上述のように、第2光軸領域822の焦点は、直線状の焦線になる。
光軸変化領域823の焦点のY軸方向の位置は、例えば、Y軸方向において、光軸Cp1と光軸Cp2の間にある。
実施の形態1では、光軸変化領域823の焦点は、発光面11を含む面上に位置している。したがって、光軸変化領域823を介して、発光面11を含むX−Y平面に平行な面は、Y軸方向において、照射面9と光学的に共役の位置となる。
つまり、光軸変化領域823の領域においては、Y軸方向において、発光面11は、照射面9と光学的に共役の位置となる。なお、光軸変化領域823の領域においては、X軸方向において、発光面11は、必ずしも照射面9と光学的に共役の位置とはならない。
「光学的に共役」とは、1つの点から発した光が他の1つの点に結像する関係のことをいう。従って、投射レンズ8の場合には、Y軸方向において、発光面11の発光パターンは、照射面9に反転して投影される。なお、X軸方向において、発光面11の発光パターンは、必ずしも照射面9に投影されない。
このように配置することで、立ち上がりラインを有するカットオフラインを照射面9上に形成することができる。カットオフラインは、光源1の端部111を利用して形成される。照射面9上のカットオフラインは、光源1の端部111の像を変形して形成される。
図3に示すように、X−Y平面上で見ると、光源1の発光面11において、端部111は発光面11の境界線である。つまり、端部111よりも上側(+Y軸側)は発光領域である。また、端部111よりも下側(−Y軸側)は非発光領域である。
投射レンズ8は、端部111を境界にして発光領域と非発光領域とに分けられた関係を、照射面9上に反転して投影する。この反転された投影よって、照射面9上にカットオフラインが形成される。投射レンズ8は、このカットオフラインに立ち上がりラインを形成している。
<光線の挙動>
図1に示すように、光源1から出射された光は、投射レンズ8の入射面81に到達する。入射面81に到達した光は、入射面81から投射レンズ8に入射する。投射レンズ8に入射した光は、第1光軸領域821、第2光軸領域822または光軸変化領域823のいずれかから出射される。第1光軸領域821、第2光軸領域822および光軸変化領域823は、出射面82の領域である。
投射レンズ8の出射面82は、例えば、Y軸方向にのみ曲率を有する凸面形状の屈折面である。つまり、投射レンズ8は、シリンドリカルレンズである。
ここで、投射レンズ8のY軸方向の曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。投射レンズ8のX軸方向の曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。
「配光の幅」とは、照射面9上に投影された配光パターンのX軸方向の長さである。「配光の高さ」とは、照射面9上に投影された配光パターンのY軸方向の長さである。
なお、上述では、投射レンズ8の出射面82はY軸方向にのみ曲率を持つシリンドリカルレンズとして説明した。しかし、「配光の幅」を調整する場合には、出射面82のX軸のパワーを調整することで実現することができる。つまり、X軸方向とY軸方向とで異なる曲率を有する。
X軸方向とY軸方向とで異なる曲率を有するレンズ面としては、例えば、トロイダルレンズ面が挙げられる。
<Z−X平面上の光線の挙動>
まず、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過する光について説明する。
例えば、図1(B)に示すように、Z−X平面で見ると、第1光軸領域821及び第2光軸領域822は、平面形状をしている。つまり、第1光軸領域821及び第2光軸領域822は、水平方向(X軸方向)にパワーを有していない。
ここで、例えば、「Z−X平面で見る」とは、Y軸方向から見るという意味である。つまり、Z−X平面に投影して見るということである。
図1(B)の場合には、Z−X平面で見ると、光軸Cp1の位置と光軸Cp2の位置とは、光軸Csの位置と同じである。
図1(B)では、第1光軸領域821を透過する代表光線として光線R11,R12を示す。光線R11,R12は、実線で描かれている。
Z−X平面上において、第1光軸領域821から出射される際の光軸Cp1に対する光線R11,R12の角度a3は、投射レンズ8の入射面81に入射する際の光軸Cp1に対する光線R11,R12の角度a1と同じである。
図1(B)では、Z−X平面上において、入射面81に入射する際の光線R11の入射角は、光線R12の入射角と同じである。また、Z−X平面上において、第1光軸領域821から出射される際の光線R11の出射角は、光線R12の出射角と同じである。また、Z−X平面上において、入射面81に入射する際の光線R11,R12の入射角は、第1光軸領域821から出射される際の光線R11,R12の出射角と同じである。
また、第1光軸領域821を透過した光線R11,R12は、照射面9上で光軸Cp1よりも+X軸方向の位置に到達する。つまり、第1光軸領域821を透過する光は、+X軸方向の「配光の幅」に寄与する。
一方、図1(B)では、第2光軸領域822を透過する代表光線として光線R21,R22を示す。光線R21,R22は、破線で描かれている。
Z−X平面上において、第2光軸領域822から出射される際の光軸Cp2に対する光線R21,R22の角度a4は、投射レンズ8の入射面81に入射する際の光軸Cp2に対する光線R21,R22の角度a2と同じである。
図1(B)では、Z−X平面上において、入射面81に入射する際の光線R21の入射角は、光線R22の入射角と同じである。また、Z−X平面上において、第2光軸領域822から出射される際の光線R21の出射角は、光線R22の出射角と同じである。また、Z−X平面上において、入射面81に入射する際の光線R21,R22の入射角は、第2光軸領域822から出射される際の光線R21,R22の出射角と同じである。
また、第2光軸領域822を透過した光線R21,R22は、照射面9上で光軸Cp2よりも−X軸方向の位置に到達する。つまり、第2光軸領域822を透過する光は−X軸方向の「配光の幅」に寄与する。
つまり、図1(B)の場合には、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過する光が形成する配光パターン幅は、投射レンズ8に入射する際の光線の入射角で決まる。
次に、図4(A)および図4(B)を用いて説明する。図4(A)および図4(B)は、両方とも、上側(+Y軸方向)から見た図である。
例えば、図4(A)に示すように、Z−X平面上において、第1光軸領域821及び第2光軸領域822を凸面形状とすることができる。第1光軸領域821の光軸は、光軸Cp1である。第2光軸領域822の光軸は、光軸Cp2である。つまり、第1光軸領域821及び第2光軸領域822は、それぞれ正のパワーを有する。
この場合には、第1光軸領域821または第2光軸領域822から出射された光は、集光されて照射面9に照射される。つまり、Z−X平面において、投射レンズ8aに入射する際の光軸Cp1,Cp2に対する光線の角度a1,a2に比べて、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過した際の光軸Cp1,Cp2に対する光線の角度a5,a6は小さくなる。したがって、第1光軸領域821及び第2光軸領域822がパワーを有さない場合に比べて、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過した光が照射面9に形成する配光の幅は狭くなる。
また、例えば、図4(B)に示すように、Z−X平面上において、第1光軸領域821及び第2光軸領域822を凹面形状とすることができる。第1光軸領域821の光軸は、光軸Cp1である。第2光軸領域822の光軸は、光軸Cp2である。つまり、第1光軸領域821及び第2光軸領域822は、それぞれ負のパワーを有する。
この場合には、第1光軸領域821または第2光軸領域822から出射された光は、発散されて照射面9に照射される。つまり、Z−X平面上において、投射レンズ8bに入射する際の光軸Cp1,Cp2に対する光線の角度a1,a2に比べて、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過する際の光軸Cp1,Cp2に対する光線の角度a7,a8は大きくなる。したがって、第1光軸領域821及び第2光軸領域822がパワーを有さない場合に比べて、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過した光が照射面9に生成する配光の幅は広くなる。
第1光軸領域821を透過した光が形成する配光パターンの幅は、第1光軸領域821の曲率によって変化する。また、第2光軸領域822を透過した光が形成する配光パターンの幅は、第2光軸領域822の曲率によって変化する。
図4で説明したように、実施の形態1では、Z−X平面上のX軸方向において、光軸Cp1と光軸Cp2とを、光軸Csに一致させている。しかし、これに限るものではない。それぞれの光軸Cs,Cp1,Cp2を、X軸方向にずらしても良い。つまり、光軸Cs,Cp1,Cp2のX軸方向の位置は、そえぞれ異なっていてもよい。
次に、光軸変化領域823を通る光について説明する。
例えば、図1(B)に示すように、Z−X平面上で平面的に見ると、光軸変化領域823は、光軸変化領域823の面頂点の位置において直線形状をしている。つまり、光軸変化領域823は、面頂点の位置において、水平方向にパワーを有していない。
しかし、図1(A)および図2に示すように、Y軸方向の同じ位置において、第1光軸領域821のZ軸方向の位置は、第2光軸領域822のZ軸方向の位置と異なる位置となっている。
光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822とを繋ぐ領域である。このため、X軸方向において、光軸変化領域823は、第1光軸領域821と接続する部分に向けて傾斜している。また、X軸方向において、光軸変化領域823は、第2光軸領域822と接続する部分に向けて傾斜している。
図1(B)では、光軸変化領域823を透過する代表光線として光線R31,R32,R33を示す。光線R31,R32,R33は、二点鎖線で描かれている。
光線R31は、光軸変化領域823のY軸方向の面頂点の位置を透過する光線を示している。この面頂点の位置では、光軸変化領域823に、X軸方向の傾斜はない。
このため、Z−X平面上において、光軸変化領域823から出射される際の光軸Cp3に対する光線R31の角度は、投射レンズ8の入射面81に入射する際の光軸Cp3に対する光線R31の角度と同じである。
図1(B)では、光線R31は、入射面82に入射する際の入射角と同じ出射角で、光軸変化領域823から出射される。
なお、光線R31,R32,R33に関しては、光線R11,R12,R21,R22のように、角度a1,a2,a3,a4,a5,a6を図面上で示していない。しかし、光線R31と角度との関係は、光線R11,R12,R21,R22の場合と同様である。
光線R32は、光軸変化領域823の+Y軸方向の端部を透過する光線を示している。この+Y軸方向の端部では、第1光軸領域821が第2光軸領域822よりも+Z軸方向に突出している。光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822とをつなぐように、傾斜した面で形成されている。
したがって、光線R32は、Z−X平面上において、投射レンズ8の入射面81に入射する際の光軸Cp3に対する角度に対して、光軸変化領域823から出射される際の光軸Cp3に対する角度は、+X軸方向に大きくなっている。
光線R33は、光軸変化領域823の−Y軸方向の端部を透過する光線を示している。この−Y軸方向の端部では、第2光軸領域822が第1光軸領域821よりも+Z軸方向に突出している。光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822とをつなぐように、傾斜した面で形成されている。
したがって、光線R33は、Z−X平面上において、投射レンズ8の入射面81に入射する際の光軸Cp3に対する角度に対して、光軸変化領域823から出射される際の光軸Cp3に対する角度は、−X軸方向に大きくなっている。
<Z−Y平面上の光線の挙動>
図1(A)に示すように、投射レンズ8の出射面82は正のパワーを有している。また、投射レンズ8の出射面82の焦点のZ軸方向の位置は、発光面11のZ軸方向の位置に一致している。つまり、投射レンズ8の出射面82の焦点は、発光面11を含む面上に位置している。
図1では、投射レンズ8の出射面82の焦点は、発光面11上に位置している。つまり、Y軸方向において、発光面11は、照射面9と光学的に共役の位置となる。
まず、第1光軸領域821、及び第2光軸領域822を透過する光について説明する。
Z−Y平面上において、投射レンズ8の入射面81から入射して、第1光軸領域821または第2光軸領域822から出射された光は、発光面11の像を照射面9上に結像する。
発光面11の端部111は、X軸に平行な直線形状を含んでいる。図3では、発光面11の端部111は、X軸に平行な直線形状である。このため、発光面11の端部111から出射された光のうち、第1光軸領域821または第2光軸領域822を透過した光によって、配光パターンのX軸に平行な直線形状は、照射面9上に投影される。
図1(A)の例では、Y軸方向において、第1光軸領域821の光軸Cp1は、発光面11の端部111と同じ高さにある。例えば、第1光軸領域821の光軸Cp1は、発光面11の端部111を通っている。第1光軸領域821の光軸Cp1は、発光面11の端部111と交差している。
光線R11,R12は、端部111から出射されて、第1光軸領域821を透過する。図1では、光線R11,R12は、実線で描かれている。
光線R11,R12は、照射面9上において、光軸Cp1上に到達する。従がって、図1(A)に示すように、光線R11,R12は、照射面9上で端部111と同じ高さの位置に到達する。
一方、Y軸方向において、第2光軸領域822の光軸Cp2は、第1光軸領域821の光軸Cp1よりも低い位置にある。例えば、第2光軸領域822の光軸Cp2は、発光面11の端部111よりも低い位置を通っている。実施の形態1では、「低い位置」とは、−Y軸方向である。
光線R21,R22は、端部111から出射されて、第2光軸領域822を透過する。図1では、光線R21,R22は、破線で描かれている。このため、第2光軸領域822において、光線R21,R22は、光線R11,R12よりも下方向(−Y軸方向)に屈折される。
光線R21,R22は、照射面9上において、光軸Cp2上に到達する。従がって、図1(A)に示すように、光線R21,R22は、照射面9上で端部111よりも低い位置に到達する。照射面9上において、光軸Cp2は光軸Cp1よりも−Y軸方向に位置している。
つまり、第2光軸領域822を透過した光によって形成される照射面9上の像は、第1光軸領域821を透過した光によって形成される照射面9上の像よりも低い位置に投影される。
つまり、投射レンズ8の第1光軸領域821と第2光軸領域822との各々は、照射面9上に、高さの異なる配光パターンを投影する。
<光軸変化領域823を透過する光線の挙動>
次に、光軸変化領域823を透過する光について説明する。
図5は、光軸変化領域823を透過する光線の挙動を説明した図である。図5(A)は、Y−Z平面上の光線の挙動を説明した図である。図5(B)は、Z−X平面上の光線の挙動を説明した図である。
図5(B)は、Z−X平面における光線R311,R312の挙動を示している。図5(B)において、光線R311,R312は、X−Z平面上で見て、光源11のX軸方向の同じ位置から発せられている。そして、光線R311,R312は、光軸変化領域823を透過する。
R311は、光軸変化領域823の第1光軸領域821に近い位置を透過している。また、R312は、光軸変化領域823の第2光軸領域822に近い位置を透過している。光軸変化領域823において、光線R311は、光線R312よりも+X軸方向を透過している。
つまり、Z−X平面上において、光軸Csに対する光線R311の傾きは、光軸Csに対する光線R312の傾きと異なる。
なお、光線R311,R312に関しても、光線R31,R32,R33と同様に、図面上で角度の記載を省いている。しかし、光線RR311,R312と角度との関係は、光線R11,R12,R21,R22の場合と同様である。
図5(A)は、Y−Z平面における光線R311とR312の挙動を示している。図5(A)において、光線R311、R312は、発光面11の端部111から出射されている。つまり、光線R311と光線R312とは、発光面11の端部111の同一の位置から出射されている。
図5(A)に示すように、Y−Z平面上において、光線R311と光線R322とは、投射レンズ8に同じ角度で入射する。しかし、光軸変化領域823を透過する際には、光線R312は、光線R311よりも−Y軸方向に大きく屈折されて出射される。これは、光軸変化領域823において、光線R312は、光線R312よりも第2光軸領域822側を透過するためである。
光線R312は、光線R311よりも−X軸側を透過する。そして、光線R312は、光線R311よりも−Y軸方向に屈折される。つまり、光軸変化領域823では、−X軸側を透過する光線は、+X軸側を透過する光線よりも、−Y軸方向に屈折される。
つまり、光軸変化領域823では、光軸の高さが光軸Cp1と光軸Cp2の間で変化する。従がって、光軸変化領域823では、照射面9上での配光パターンのY軸方向の位置は、光軸変化領域823を透過するX軸方向の位置に対応して変化する。光軸変化領域823を透過する光線が照射面9上に形成する像の高さは、−X軸側よりも+X軸方向の方が高い。
つまり、光軸変化領域823を透過する光によって、発光面11の端部111の像は、照射面9上では、傾斜した直線形状となる。照射面9上では、Y軸方向において、この直線形状の+X軸側の位置は、−X軸側の位置よりも高い。
<配光パターン>
自動四輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンについて説明する。
図6は、照射面9上に投影された自動四輪車用の前照灯装置10のロービームの配光パターン95の例である。前述のように、自動四輪車用(自動車用)の前照灯装置10のロービームの配光パターン95は、立ち上がりライン93の形状を含むカットオフライン94を有している。
図6の例では、配光パターン95の上端の形状は、水平ライン91,92と立ち上がりライン93とを含んでいる。水平ライン91,92は、高さの異なる2つの水平なラインである。立ち上がりライン93は、斜めに傾斜したラインである。
つまり、図6の配光パターン95のカットオフライン94は、水平ライン91,92および立ち上がりライン93を含んでいる。左側(+X軸方向側)の水平ライン91は、右側(−X軸方向)の水平ライン92よりも高い位置にある。このため、立ち上がりライン93の+X軸側の端部は、立ち上がりライン93の−X軸側の端部よりも高い位置にある。
図6の例では、水平ライン91側が歩行者側(自車側)であり、水平ライン92側が対向車側である。なお、車両が左側の車線を走行する場合について説明している。車両が右側の車線を走行する場合には、図6に示す配光パターン95の左右方向は逆になる。
実施の形態1に係る前照灯モジュー100は、投射レンズ8によって、光源1の発光面11の発光面11の形状を変形した配光パターン95を形成している。そして、前照灯モジュー100は、配光パターン95を照射面9上に投影している。つまり、前照灯モジュー100は、1つのモジュールで、前照灯装置10のロービームの配光パターン95を実現している。また、前照灯モジュー100は、光源1と投射レンズ8とで前照灯装置10のロービームの配光パターン95を実現している。
図7、図8及び図9は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の照射面9上での照度分布をコンター表示で示した図である。
「コンター表示」とは、等高線図で表示することである。「等高線図」とは、同じ値の点を線で結んで表した図である。
図7は、図1に示す投射レンズ8を用いた場合の照度分布を示した図である。つまり、Y軸方向において、投射レンズ8の出射面82の第1光軸領域821の面頂点の位置は、発光面11の端部111上に有る。そして、投射レンズ8の出射面82は、X軸方向に曲率を持たない。つまり、出射面82は、シリンドリカルレンズである。
図8は、図4(A)に示す投射レンズ8aを用いた場合の照度分布である。つまり、Y軸方向において、投射レンズ8aの出射面82の第1光軸領域821の面頂点の位置は、発光面11の端部111上に有る。そして、投射レンズ8aの出射面82は、X軸方向に正のパワーを有する。
図9は、図4(B)に示す投射レンズ8bを用いた場合の照度分布である。つまり、Y軸方向において、投射レンズ8bの出射面82の第1光軸領域821の面頂点の位置は、発光面11の端部111上に有る。そして、投射レンズ8bの出射面82は、X軸方向に負のパワーを有する。
これらの照度分布は、車両から25m前方(+Z軸方向)の照射面9に投影された照度分布である。また、これら照度分布は、シミュレーションによって求められたものである。
図7から分かるように、配光パターン95のカットオフライン94は、水平ライン91,92と立ち上がりライン93とを含んでいる。水平ライン91,92は、高さの異なる2つの水平なラインである。立ち上がりライン93は、斜めに傾斜したラインである。
図8から分かるように、配光パターン95aのカットオフライン94は、水平ライン91,92と立ち上がりライン93とを含んでいる。水平ライン91,92は、高さの異なる2つの水平なラインである。立ち上がりライン93は、斜めに傾斜したラインである。また、図8に示す配光パターン95aの配光の幅は、図7に示す配光パターン95の配光の幅よりも狭い。
図9から分かるように、配光パターン95bのカットオフライン94は、水平ライン91,92と立ち上がりライン93とを含んでいる。水平ライン91,92は、高さの異なる2つの水平なラインである。立ち上がりライン93は、斜めに傾斜したラインである。また、図9に示す配光パターン95bの配光の幅は、図7に示す配光パターン95の配光の幅よりも広い。
つまり、実施の形態1に係る前照灯モジュール100,100a,100bは、自動4輪車に求められる配光パターンを形成することができる。また、投射レンズ8のX軸方向の曲率を変更することで、配光パターンの幅を変更することができる。
つまり、前照灯モジュール100,100a,100bは、配光パターン95,95a,95bを形成するために、遮光板を必要としない。また、前照灯モジュール100,100a,100bは、配光パターン95,95a,95bを形成するために、複雑な光学系の構成を必要としない。つまり、前照灯モジュール100,100a,100bは、小型で簡易な構成で、光利用効率を向上した前照灯装置を実現することができる。
<比較例>
以下において、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の効果を検証するための比較例について説明する。本比較例は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100に遮光板5を構成要素に加えたものである。
図10は、比較例に係る前照灯モジュール101を示す構成図である。
前照灯モジュール100では、投射レンズ8の焦点は、発光面11を含む面上に位置している。また、投射レンズ8において、X軸方向のパワーは、Y軸方向のパワーと異なっている。また、投射レンズ8は、第1光軸領域821、第2光軸領域822および光軸変化領域823を備えている。
一方、前照灯モジュール101では、投射レンズ8cの焦点は遮光板5を含む面上に位置している。つまり、Z軸方向において、投射レンズ8cの焦点位置は、遮光板5の位置に一致している。また、投射レンズ8cは、第1光軸領域821、第2光軸領域822および第3光軸領域824を備えていない。そして、投射レンズ8cは、X軸方向のパワーとY軸方向のパワーとが同じである。
つまり、遮光板5は、照射面9と光学的に共役の位置にある。照射面9は、前照灯モジュー101に対して無限遠の位置に配置されていると考える。このため、共役点は、投射レンズ8cの前側の焦点となる。
遮光板5は、投射レンズ8cの前側の焦点位置に配置されている。つまり、共役面PCは、投射レンズ8cの光軸Cpに垂直な面である。そして、共役面PCは、投射レンズ8cの前側の焦点位置にある。
前側の焦点は、光が入射する側の焦点である。実施の形態1では、光は−Z軸方向側から投射レンズ8,8a,8b,8cに入射している。つまり、前側の焦点は、投射レンズ8,8a,8b,8cの−Z軸側の焦点である。
図11は、比較例に係る前照灯モジュール101の遮光板5の形状の例を示した図である。遮光板5は、辺51,52,53を備えている。遮光板5は、辺51,52,53によって、カットオフラインの形状54に光を遮光する。
辺51,52,53は、遮光板5の+Y軸側の辺である。辺51は、遮光板5の−X軸側に位置している。辺52は、遮光板5の+X軸側に位置している。辺53は、辺51と辺52との間に位置している。
辺51は、辺52よりも低い位置にある。つまり、辺51は、辺52よりも−Y軸方向に位置している。そして、辺53は、辺51の+X軸側の端部と辺52の−X軸側の端部とを繋いでいる。そのため、辺53は、X軸に対して、時計まわりに傾斜している。
遮光板5は、照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、遮光板5(共役面PC)の位置での配光パターンは、照射面9上での配光パターンと相似形になる。
なお、遮光板5の位置での配光パターンは、上下方向および左右方向が反転して、照射面9上に投影される。このため、図6に示す水平ライン91は、辺51に対応している。水平ライン92は、辺52に対応している。立ち上がりライン93は、辺53に対応している。配光パターンは、カットオフラインの形状54よりも+Y軸側を透過する光によって形成されている。
図12は、比較例に係る前照灯モジュール101の照射面9上での照度分布をコンター表示で示した図である。シミュレーションの条件は、図7、図8および図9の場合と同様である。
図12では、遮光板5の+Y軸側に形成された配光パターン95cが、照射面9上に投影されている。遮光板5の辺51は、照射面9上の配光パターン95cの水平ライン91に対応している。遮光板5の辺52は、照射面9上の配光パターン95cの水平ライン92に対応している。遮光板5の辺53は、照射面9上の配光パターン95cの立ち上がりライン93に対応している。
図12に示された配光パターン95cの水平方向(X軸方向)の広がりは小さい。これは、図3に示すように、光源1の発光面11が正方形であることに起因する。
投射レンズ8cは、共役面PC上の配光パターンを投影する。共役面PC上の配光パターンは、光源1の光を、遮光板5で遮光して形成される。つまり、投射レンズ8cは、共役面PC上の配光パターンと相似な配光パターンを照射面9上に投影する。
したがって、光源1の発光面11のアスペクト比が照射面9上の配光パターンに反映される。アスペクト比は、矩形形状の長辺と短辺の比である。ここでは、発光面11のX軸方向の辺の長さとY軸方向の辺の長さとの比である。
図13は、光源1の形状を示す模式図である。図13では、光源1を発光面11側(+Z軸側)から見ている。
例えば、比較例の光源1に図13に示すLEDを採用した場合についてシミュレーションを行う。図13に示す発光面11のアスペクト比は、例えば、1対3(1:3)である。Y軸方向の辺の長さが1で、X軸方向の辺の長さが3である。
図14は、図13に示す光源1を採用した場合のシミュレーション結果を、コンター表示で示した図である。図14は、比較例に係る前照灯モジュール101の照射面9上での照度分布をコンター表示で示した図である。
図12に示す配光パターン95cの幅に比べて、図14に示す配光パターン95dの幅は広がっている。しかし、図7、図8または図9に示す配光パターン95,95a,95bの様に、幅の広い配光パターンは実現されていない。つまり、比較例では、配光パターンの幅を変更するためには、光源1の発光面11のアスペクト比を変更する必要がある。
光源1の発光面11のアスペクト比を変更して、光源1を大きくすれば、光学系が大きくなる。また、遮光板5によって光を遮光して配光パターンを形成するため、光利用効率は低下する。
また、実施の形態1に係る前照灯モジュール100では、例えば、図1(B)に示すように、Z−X平面上で見ると、投射レンズ8に入射した光の入射する際の角度a1,a2と出射する際の角度a3,a4とは同じである。入射する際の角度a1,a2は、光軸Cp1,Cp2に対する入射する際の光線の角度である。出射する際の角度a3,a4は、光軸Cp1,Cp2に対する出射する際の光線の角度である。なお、図1では、光軸Cp1,Cp2は、光軸Cpと一致している。
つまり、配光パターン95の幅は、投射レンズ8に入射する際の光線の角度a1,a2によって決まる。従がって、容易に配光パターン95の幅を広げることができる。
また、入射する際の角度a1,a2と出射する際の角度a3,a4が変わらない。このため、出射面82において全反射が生じるという問題は生じない。出射面82において全反射が生じると光が前方に出射されない。つまり、光利用効率が低下する。
一方、比較例では図10(B)に示すように、Z−X平面上で見ると、投射レンズ8cに入射した光の進行方向は、屈折によって変更される。つまり、出射する際の光軸Cpに対する角度は、入射する際の光軸Cpに対する角度に対して変化している。
ここで、遮光板5と照射面9とは光学的に共役である。遮光板5上(共役面PC上)に形成された配光パターンは反転されて照射面9に投影される。
従がって、図10(B)の遮光板5上の点Pを通る光は照射面9上の点Qに結像される。点Pは、発光面11の+X軸方向の端部から出射されて、共役面PCに垂直に到達した光線の共役面PC上の到達点である。点Pを通る光線R41,R42は、投射レンズ8で屈折されて照射面9上の点Qに結像する。
しかし、光線R43は、投射レンズ8の出射面で全反射されて前方(+Z軸方向)へ出射されない。つまり、光線R43は点Qに到達しない。したがって、光線R43は損失光となる。つまり、光利用効率は低下する。光線R43は、点Pを通る光線である。そして、光線R43は、光線R41,R42よりも投射レンズ8cに入射する際の角度が大きい光線である。
実施の形態1に係る前照灯モジュール100では、投射レンズ8に入射する角度a1,a2の大きな光線は、投射レンズ8内で全反射されることなく前方(+Z軸方向)へ出射される。このため、射レンズ8に入射する角度a1,a2の大きな光線は、配光パターン95の形成に寄与する。
一方、比較例1では、投射レンズ8内で全反射されるために、投射レンズ8の前方(+Z軸方向)に出射されない光が生じる。そして、光利用効率の低下を招く。これは、X軸方向において、遮光板5と照射面9とが光学的に共役の関係にあることに起因する。
したがって、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、比較例の様な従来の方式に比べて、簡易な構成で、光利用効率の低下を抑えた前照灯装置を実現することができる。
また、車両の中には、複数の前照灯モジュールを備える車両がある。そして、各モジュールの配光パターンが足し合わされて、1つの配光パターンが形成される。この様な場合でも、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、容易に適用できる。
投射レンズ8の出射面82の第1光軸領域821と第2光軸領域822とを変更することで、前照灯モジュール100,100a,100bは、高さの異なるカットオフライン(水平ライン91,92)を形成することができる。また、光軸変化領域823を備えることで、前照灯モジュール100,100a,100bは、立ち上がりライン93を形成することができる。
また、投射レンズ8のX軸方向の曲面形状とY軸方向の曲面形状とを変更することで、前照灯モジュール100,100a,100bは、配光パターン95の幅と高さとを変化させることができる。そして、前照灯モジュール100,100a,100bは、配光パターン95の配光分布を変化させることができる。
また、前照灯モジュール100,100a,100bは、遮光板5を必要としない。したがって、部品点数が削減できる。そして、組立性が改善される。また、製造コストが低減される。
また、配光パターン95の形状を変更する機能と、配光分布を変更する機能とは、前照灯モジュール100,100a,100bの全体で発揮できれば良い。前照灯モジュール100は、光学部品として、投射レンズ8備えている。つまり、これらの機能を、前照灯モジュール100を構成する投射レンズ8の入射面81と出射面82とのいずれかの光学面に分散することも可能である。これらの機能を、投射レンズ8の1つの面または全ての面に持たせることができる。
<変形例1>
前照灯モジュール100では、光軸変化領域823が1つの場合について説明した。しかし、光軸変化領域823を複数設けることができる。
図15(A)及び図15(B)は、実施の形態1の変形例1に係る前照灯モジュール110の構成を示す構成図である。
例えば、図15では、投射レンズ8dは、第1光軸領域821、第2光軸領域822、第3光軸領域824、光軸変化領域823、及び光軸変化領域825を備える。そして、図1と同様に、発光面11は、共役面PC上に位置している。つまり、共役面PCは、発光面11を含んでいる。
第1光軸領域821は、出射面82の+X軸側に形成されている。光軸変化領域823は、第1光軸領域821の−X軸側に形成されている。第2光軸領域822は、光軸変化領域823の−X軸側に形成されている。光軸変化領域825は、第2光軸領域822の−X軸側に形成されている。第3光軸領域824は、光軸変化領域825の−X軸側に形成されている。
X軸方向において、光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822との間に形成されている。光軸変化領域823は、第1光軸領域821と第2光軸領域822とを繋ぐ領域である。X軸方向において、光軸変化領域825は、第2光軸領域822と第3光軸領域824との間に形成されている。光軸変化領域825は、第2光軸領域822と第3光軸領域824とを繋ぐ領域である。
第1光軸領域821の光軸は、光軸Cp1である。第2光軸領域822の光軸は、光軸Cp2である。第3光軸領域824の光軸は、光軸Cp3である。
図15の例では、光軸Cp1,Cp2,Cp3の高さHCp1,HCp2,HCp3は、式1の関係にある。なお、高さHCp1,HCp2,HCp3の大きい方が、+Y軸側に位置していることを示している。
HCp1>HCp2 ・・・・(1a)
HCp3>HCp2 ・・・・(1b)
HCp1>HCp3 ・・・・(1c)
図16は、照射面9上に投影された図15に示す前照灯モジュール110の配光パターンの例である。
図16から分かるように、配光パターン95eのカットオフライン94は、水平ライン91,92,96および立ち上がりライン93,97を含んでいる。
水平ライン91,92、96は,各々高さの異なる3つの水平なラインである。
立ち上がりライン93は、左上がりに斜めに傾斜したラインである。つまり、立ち上がりライン93の左側(+X軸側)の端部の高さは、立ち上がりライン93の右側(−X軸側)の端部の高さよりも高い。ここで、「高さが高い」とは、+Y軸側にあるという意味である。
立ち上がりライン97は、右上がりに斜めに傾斜したラインである。つまり、立ち上がりライン97の左側(+X軸側)の端部の高さは、立ち上がりライン97の右側(−X軸側)の端部の高さよりも低い。
また、図9に示す水平ラインの高さの関係は、式2の関係にある。
水平ライン91の高さ>水平ライン92の高さ ・・・・(2a)
水平ライン96の高さ>水平ライン92の高さ ・・・・(2b)
水平ライン91の高さ>水平ライン96の高さ ・・・・(2c)
カットオフライン94は、高い位置にある程、遠方の視認性を向上することができる。つまり、図16の配光パターン95eでは、例えば、図7の配光パターン95に比べて、道路の右側(−X軸側)の遠方の視認性を高めることができる。したがって、ドライバーは、道路の右側の路肩の歩行者または障害物を検知しやすくなる。そして、配光パターン95eは、夜間走行の安全性に寄与することができる。
つまり、実施の形態1に係る変形例1の前照灯モジュール110は、複数の光軸変化領域823,825を備えている。この様にすることで、配光パターン96eのカットオフライン94に高さの異なる複数の水平ライン91,92,96を含めることができる。
つまり、前照灯モジュール110は、光を照射する位置に応じて、遠方の視認性を高めることができる。また、前照灯モジュール110は、光を照射する位置に応じて、幻惑を抑えることができる。
なお、光軸変化領域823,825と光軸領域821,822,824との境界面は、滑らかな面の方が望ましい。なぜなら、境界面に急激な段差があると、加工が難しく、また、不要な光が発生する原因になり得るからである。
<変形例2>
前照灯モジュール100の構成では、光源1と投射レンズ8を備える場合について説明した。しかし、前照灯モジュールは、集光素子2および遮光板50のいずれかを備え、または両方を備えることができる。
図17(A)及び図17(B)は、実施の形態1の変形例2に係る前照灯モジュール120の構成を示す構成図である。また、図18(A)及び図18(B)は、実施の形態1の変形例2に係る前照灯モジュール130の構成を示す構成図である。
例えば、図17に示す前照灯モジュール120は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100に加えて、集光光学素子2と遮光板50とを備える。
集光光学素子2は、光源1から出射された光を集光光に変換する。集光光は、集光された光である。集光光学素子2は、光源1から出射された光を集光する。
集光光学素子2は、光源1の+Z軸側(前方)に位置している。また、集光光学素子2は、遮光板50の−Z軸側(後方)に位置している。
集光光学素子2は、光源1から発せられた光を入射する。
集光光学素子2は、前方(+Z軸方向)に入射した光を集光する。集光光学素子2は、集光機能を有する光学素子である。つまり、集光光学素子2は、正のパワーを有する光学素子である。変形例2では、例えば、集光光学素子2は、遮光板50の位置に光源1から出射された光を集光する。つまり、集光光学素子2は、遮光板50を含む面上に光源1から出射された光を集光する。集光光学素子2は、遮光板50を含む面上に集光点を有する。
図17では、集光光学素子2は、正のパワーを有する凸レンズとして示している。
また、実施の形態1で示す集光光学素子2は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
図17では、集光光学素子2は、1つの光学素子で構成されているが、複数の光学素子を用いることもできる。しかし、複数の光学素子を用いる場合には、各光学素子の位置決め精度を確保するなど、製造性を低下させることになる。
光源1及び集光光学素子2は、遮光板50の後方(−Z軸方向側)に配置されている。光源1は、遮光板50の後方(−Z軸方向側)に配置されている。集光光学素子2は、遮光板50の後方(−Z軸方向側)に配置されている。
集光光学素子2は、例えば、透明樹脂、硝子又はシリコーン材で製作されている。集光光学素子2の材料は、光を通す性質を有すれば材質は問わず、透明な樹脂等でも構わない。つまり、光学素子2の材料は、光を通す機能を有すればよい。
しかし、光利用効率の観点から、集光光学素子2の材料は、光を通す機能の高い材料が適している。つまり、集光光学素子2の材料は、透明であることが望ましい。また、集光光学素子2が、光源1の直後に配置されることから、集光光学素子2の材料は、耐熱性に優れた材料が好ましい。
また、例えば、図18に示すように、集光光学素子2に、光の屈折及び光の反射を利用した光学素子を利用することもできる。
集光光学素子2は、例えば、入射面211,212、反射面22、出射面231,232を備える。
入射面211は、集光光学素子2の中心部分に形成された入射面である。つまり、集光光学素子2の光軸Cfは、入射面211上に交点を有している。
入射面211は、正のパワーを有する凸面形状である。入射面211の凸面形状は、−Z軸方向に凸の形状をしている。レンズのパワーは、「屈折力」ともよばれる。入射面211は、例えば、集光光学素子2の光軸Cfを回転軸とする回転対称の形状をしている。
入射面212は、例えば、楕円の長軸又は短軸を回転軸として回転させた回転体の表面形状の一部をしている。楕円の長軸又は短軸を回転軸として回転させた回転体を「回転楕円体」という。この回転楕円体の回転軸は、集光光学素子2の光軸Cfと一致している。入射面212は、回転楕円体の回転軸方向の両端を切断した表面形状をしている。つまり、入射面212は、筒形状をしている。
入射面212の筒形状の一端(+z軸方向側の端)は、入射面211の外周に接続されている。入射面212の筒形状は、入射面211に対して−Z軸方向側に形成されている。つまり、入射面212の筒形状は、入射面211に対して光源1側に形成されている。
反射面22は、X−Y平面上の断面形状が、例えば、集光光学素子2の光軸Cfを中心とした円形状をした筒形状をしている。反射面22の筒形状は、−Z軸方向側の端のX−Y平面上の円形状の直径が、+Z軸方向側の端のX−Y平面上の円形状の直径よりも小さい。つまり、反射面22は、−Z軸方向から+Z軸方向に向けて直径が大きくなっている。例えば、反射面22は、円錐台の側面の形状をしている。しかし、集光光学素子2の光軸を含む面上での反射面22の形状は曲線形状であっても構わない。「光軸を含む面」とは、面上に光軸の線を描けることである。
反射面22の筒形状の一端(−Z軸方向側の端)は、入射面212の筒形状の他端(−Z軸方向側の端)に接続している。つまり、反射面22は、入射面212の外周側に位置している。
出射面231は、入射面211の+Z軸方向側に位置している。つまり、集光光学素子の光軸Cfは、出射面231上に交点を有している。
出射面231は、正のパワーを有する凸面形状である。出射面231の凸面形状は、+Z軸方向に凸の形状をしている。出射面213は、例えば、集光光学素子2の光軸Cfを回転軸とする回転対称の形状をしている。
出射面232は、出射面231の外周側に位置している。出射面232は、例えば、X−Y平面に平行な平面形状をしている。出射面232の内周及び外周は、円形状をしている。
出射面232の内周は、出射面231の外周に接続している。出射面232の外周は、反射面22の筒形状の他端(+Z軸方向側の端)に接続している。
また、集光光学素子2は光源1の光を集光できれば良く楕円鏡等のミラーを集光光学素子2として利用しても良い。
投射レンズ8は、例えば、実施の形態1に係る前照灯モジュール100と同様の形状をしている。つまり、投射レンズ8の出射面82は、第1光軸領域821、第2光軸領域822および光軸変化領域823を備えている。
遮光板50は、光源1から出射された光の一部を遮光する。そして、遮光板50は、配光パターン95のカットオフライン94を形成する。配光パターン95は、遮光板50の+Y軸側を透過する光によって形成される。
遮光板50は、光源1から出射された光の一部を遮光する機能を有する。このため、遮光板50は、例えば、前照灯モジュール120の筐体の一部に形成された遮光面であってもよい。遮光板50は、遮光面の一例である。
変形例2に係る前照灯モジュール120,130では、投射レンズ8の焦点は遮光板50を含む面上に位置している。つまり、Z軸方向において、投射レンズ8のY軸方向の焦点は、遮光板50の位置に位置している。投射レンズ8の焦点は、例えば、第1光軸領域821の焦点と第2光軸領域822の焦点とである。なお、上述のように、投射レンズ8のX軸方向の焦点は、必ずしも遮光板50の位置に位置していない。
つまり、遮光板50は、Y軸方向について照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、共役点は、投射レンズ8の前側の焦点となる。
図19は、変形例2に係る前照灯モジュール130の遮光板50の形状の例を示した図である。遮光板50は、辺51を備えている。辺51は、図11に示すカットオフラインの形状54に対応している。遮光板50は、辺51によって、光を水平な形状で遮光する。
辺51は、遮光板50の+Y軸側の辺である。光は、辺51の+Y軸側と透過する。
遮光板50は、Y軸方向において、照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、遮光板50(共役面PC)の位置でのY軸方向の配光パターンは、照射面9上での配光パターンと相似形になる。
遮光板50の辺51は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の光源1の端部111と同じ機能を有する。つまり、変形例2では、投射レンズ8によって、遮光板50の辺51を通る光の形状を変形している。
遮光板50の位置での配光パターンのカットオフラインの形状は、辺51の形状である。つまり、遮光板50の位置での配光パターンのカットオフラインの形状は、直線形状である。
投射レンズ8は、この直線形状のカットオフラインの形状を変形する。そして、投射レンズ8は、変形されたカットオフラインの配光パターンを照射面9に投影する。これによって、前照灯モジュール120,130は、カットオフライン94の形状を生成することができる。
この様に、前照灯モジュール120,130は、集光光学素子2によって、光源1から出射された光を集光している。前照灯モジュール120,130は、遮光板50によって光を遮光する。変形例2では、遮光板50は、直線形状に光を遮光している。変形例2では、遮光板50は、水平に光を遮光している。これによって、光源1の形状が矩形以外の形状であっても、投射レンズ8を用いて、前照灯モジュール120,130は、カットオフラインの形状を形成することができる。
また、比較例1では、図11に示す遮光板5のように段違い形状で遮光する必要があった。しかし、変形例2では、水平に遮光しているため、比較例1よりも遮光する光量が少ない。従って、光利用効率は向上する。
また、集光光学素子2を用いることで、光源1から出射された光を、より多く取り込むことができる。集光光学素子2は、配光パターン95の明るさを向上できる。これによって、小型で光利用効率を向上した前照灯モジュールを実現することができる。なお、配光パターン95の明るさが十分であれば、集光光学素子2を省くことができる。
<変形例3>
変形例3は、投射レンズ8が導光投射光学素子3に変形したものである。また、変形例3は集光光学素子2を有することもできる。
図20(A)及び図20(B)は、実施の形態1の変形例3に係る前照灯モジュール140の構成を示す構成図である。
図20に示すように、実施の形態1の変形例3に係る前照灯モジュール140は、光源1および導光投射光学素子3を備える。また、前照灯モジュール140は、集光光学素子2を備えることができる。
また、導光投射光学素子3は、少なくとも2つ以上の光軸を有する。つまり導光投射光学素子3は、複数の光軸を有する。
例えば、図20では、導光投射光学素子3の出射面33は、第1光軸領域331、第2光軸領域332、及び光軸変化領域333を備える。
光源1及び集光光学素子2について説明を容易にするために、新たな座標系としてX1Y1Z1座標を用いる。X1Y1Z1座標は、XYZ座標を+X軸方向から見て、X軸を回転軸として時計回りに角度aだけ回転した座標である。
なお、変形例3では、集光光学素子2の光軸Cf2は、Z1軸に平行である。また、集光光学素子2の光軸Cf2は、光源1の光軸Csと一致している。
<導光投射光学素子3>
導光投射光学素子3は、集光光学素子2の+Z1軸方向に位置している。導光投射光学素子3は、集光光学素子2の+Z軸側に位置している。そして、導光投射光学素子3は、集光光学素子2の−Y軸側に位置している。
導光投射光学素子3は、集光光学素子2から出射された光を入射する。導光投射光学素子3は、前方(+Z軸方向)に光を出射する。
なお、導光投射光学素子3は、反射面32によって光を導光する機能を有する。また、導光投射光学素子3は、出射面33によって光を投射する機能を有する。このため、光学素子3を説明する際には、理解を容易にするために、導光投射光学素子3として説明する。
導光投射光学素子3は、反射面32及び出射面33を備える。導光投射光学素子3は、入射面31を備えることができる。導光投射光学素子3は、入射面34を備えることができる。
導光投射光学素子3は、例えば、透明樹脂、硝子又はシリコーン材等で製作されている。
また、変形例3で示す導光投射光学素子3は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
入射面31は、導光投射光学素子3の−Z軸方向側の端部に設けられている。入射面31は、導光投射光学素子3の+Y軸方向側の部分に設けられている。
図20(A)、図20(B)では、導光投射光学素子3の入射面31は曲面形状をしている。入射面31の曲面形状は、例えば、水平方向(X軸方向)及び垂直方向(Y軸方向)がともに正のパワーを有する凸面形状である。
なお、入射面31は、平面形状であってもよい。また、入射面31は、水平方向(X軸方向)または垂直方向(Y軸方向)の一方にパワーを有してもよい。つまり、入射面31は、シリンドリカルレンズ面であってもよい。また、入射面31は、水平方向(X軸方向)に負のパワーを有してもよい。
曲面形状をした入射面31に入射した光は、その発散角が変化する。入射面31は、光の発散角を変化させることで、配光パターンを成形することができる。つまり、入射面31は、配光パターンの形状を成形する機能を有する。つまり、入射面31は、配光パターン形状成形部として機能する。
また、例えば、入射面31に集光機能を持たせることで、集光光学素子2を省くことも考えられる。つまり、入射面31は、集光部として機能する。
入射面31は、配光パターン形状成形部の一例として考えられる。また、入射面31は、集光部の一例として考えられる。
反射面32は、入射面31の−Y軸方向側の端部に設けられている。つまり、反射面32は、入射面31の−Y軸方向側に配置されている。そして、反射面32は、入射面31の+Z軸方向側に配置されている。変形例3では、反射面32の−Z軸方向側の端部は、入射面31の−Y軸方向側の端部に接続している。
反射面32は、反射面32に到達した光を反射する。つまり、反射面32は、光を反射する機能を有する。つまり、反射面32は、光反射部として機能する。反射面32は、光反射部の一例として考えられる。
反射面32は、+Y軸方向に面した面である。つまり、反射面32の表面は、+Y軸方向に面した面である。反射面32の表面は、光を反射する面である。反射面32の裏面は、−Y軸方向に面した面である。
反射面32は、Z−X平面に対して、X軸に平行な軸を中心として、+X軸方向から見て時計回りに回転した面である。図20では、反射面32は、Z−X平面に対して、角度bだけ回転した面となっている。
図20では、反射面32は平面で示されている。しかし、反射面32は、平面である必要はない。反射面32は、曲面形状でも構わない。
反射面32は、例えば、全反射面である。しかし、反射面32は、ミラー蒸着をすることでミラー面としても良い。しかし、反射面32は、ミラー蒸着をせずに全反射面として機能させることが望ましい。なぜなら、全反射面はミラー面よりも反射率が高く、光利用効率の向上に寄与するからである。
稜線部321は反射面32の−Y軸方向側の辺である。稜線部321は反射面32の+Z軸方向側の辺である。そして、稜線部321は、Y軸方向において照射面9と光学的に共役の位置にある。
稜線部321は、変形例2の図19に示す遮光板50の辺51に相当する。しかし、変形例3では、光を遮光せずに、反射面32で反射しているため、遮光板50よりも光利用効率を高くすることができる。
「稜線」とは、一般的には、面と面との境界線のことである。しかし、ここでは、「稜線」は面の端部を含む。変形例3では、稜線部321は、反射面32と入射面34とを接続する部分である。つまり、反射面32と入射面34との接続する部分が稜線部321である。
しかし、例えば、導光投射光学素子3の内部が空洞となっていて、入射面34が開口部となっている場合には、稜線部321は反射面32の端部となる。つまり、稜線部321は、面と面との境界線を含む。また、稜線部321は、面の端部を含む。なお、上述のように実施の形態1では、導光投射光学素子3は、内部が屈折材で満たされている。
また、「稜線」は直線に限らず曲線等も含まれる。変形例3では、稜線部321は、直線形状である。変形例3では、稜線部321は、X軸に平行な直線形状をしている。
また、変形例3では、稜線部321は入射面34の+Y軸方向側の辺である。稜線部321も入射面34上にあるため、Y軸方向において照射面9と光学的に共役の位置にある。
変形例3に係る前照灯モジュール140では、導光投射光学素子3の出射面33の焦点は稜線部321を含む面上に位置している。つまり、Z軸方向において、導光投射レンズ3の出射面33のY軸方向の焦点は、稜線部321の位置に位置している。出射面33の焦点は、例えば、第1光軸領域331の焦点と第2光軸領域332の焦点とである。
つまり、稜線部321は、Y軸方向について照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、共役点は、出射面33の前側の焦点となる。
稜線部321は、Y軸方向において、照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、稜線部321(共役面PC)の位置でのY軸方向の配光パターンは、照射面9上での配光パターンと相似形になる。
稜線部321は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の光源1の端部111と同じ機能を有する。つまり、変形例3では、導光投射光学素子3の出射面33によって、稜線部321を通る光の形状を変形している。稜線部321の位置での配光パターンのカットオフラインの形状は、直線形状である。導光投射光学素子3は、この直線形状のカットオフラインの形状を変形する。そして、導光投射光学素子3は、変形されたカットオフラインの配光パターンを照射面9に投影する。これによって、前照灯モジュール140は、カットオフライン94の形状を生成することができる。
変形例3では、稜線部321は、導光投射光学素子3の出射面33の光軸Cp1と直角に交差している。光軸Cp2は、共役面PCに対して垂直である。共役面PCは、稜線部321を含む面である。
光軸Cp1は、出射面33の第4光軸領域331の光軸である。光軸Cp2は、出射面33の第5光軸領域332の光軸である。
出射面33は、導光投射光学素子3の+Z軸方向側の端部に設けられている。出射面33は、正のパワーを有する曲面形状をしている。出射面33は、+Z軸方向に突出した凸面形状をしている。
出射面33の形状は実施の形態1に係る前照灯モジュール100の投射レンズ8の出射面82と同じ機能を有する。
つまり図20の例では、第4光軸領域331、第5光軸領域332、及び光軸変化領域333は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の投射レンズ8の第1光軸領域821、第2光軸領域822、及び光軸変化領域823にそれぞれ相当する。
<光線の挙動>
図20に示すように、集光光学素子2によって集光された光は、入射面31から導光投射光学素子3内に入射される。
入射面31は、屈折面である。入射面31は、光を屈折する。入射面31に入射された光は、入射面31で屈折される。入射面31は、−Z軸方向に突出した凸面形状である。
ここで、入射面31のX軸方向の曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。また、入射面31のY軸方向の曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。
≪Z−X平面上の光線の挙動≫
Z−X平面で見ると、入射面31は、凸面形状である。つまり、入射面31は、水平方向(X軸方向)について正のパワーを有している。ここで、「Z−X平面で見る」とは、Y軸方向から見るという意味である。つまり、Z−X平面に投影して見るということである。このため、入射面31に入射された光は、導光投射光学素子3の入射面31で更に集光されて伝播する。ここで「伝播」とは、導光投射光学素子3の中を光が進行するという意味である。
Z−X平面で見ると、導光部品3内を伝播する光は、図20(B)に示すように、集光光学素子2及び導光投射光学素子3の入射面31によって、導光部品3の内部にある集光位置PHに集光される。図20(B)において、集光位置PHは、破線で示されている。また、図20(B)において、稜線部321の位置が共役面PCの位置である。図20(B)では、集光位置PHを共役面PCと一致させている。
Z−X平面上において、集光位置PHを共役面PCよりも−Z軸側に配置することもできる。また、集光位置PHを共役面PCよりも+Z軸側に配置することもできる。また、集光位置PHを持たないようにすることもできる。これらによって、共役面PC上のX軸方向の光束の幅を制御することができる。そして、前照灯モジュール140が出射する配光パターンの幅を変化させることができる。
共役面PC上での光の発散角の広がりは、照射面9における「配光の幅」に相当する。つまり、入射面31の曲面形状の曲率を変化させることでも、共役面PC上での光の発散角の広がりを制御することができる。これにより、前照灯モジュール140が出射する配光パターンの幅を変化させることができる。
≪Z−Y平面上の光線の挙動≫
一方、入射面31から入射した光をY−Z平面で見れば、入射面31で屈折された光は導光投射光学素子3内を伝播して、反射面32に導かれる。
導光投射光学素子3に入射して反射面32に到達する光は、導光投射光学素子3に入射して、反射面32に直接到達している。「直接到達する」とは、他の面等で反射されることなく、到達するという意味である。
導光投射光学素子3に入射して反射面32に到達する光は、他の面等で反射されることなく、反射面32に到達する。つまり、反射面32に到達する光は、導光投射光学素子3内で最初の反射をする。
また、反射面32で反射された光は、直接、出射面33から出射されている。つまり、反射面32で反射された光は、他の面等で反射されることなく、出射面33に到達する。Z−Y平面上において、つまり、反射面32で最初の反射をした光は、この一度の反射で出射面33に到達する。
図20では、集光光学素子2の出射面231,232の内、集光光学素子2の光軸Cp2よりも+Y1軸方向側から出射された光は、反射面32に導かれている。また、集光光学素子2の出射面231,232の内、集光光学素子2の光軸Cp2よりも−Y1軸方向側から出射された光は、反射面32で反射されることなく出射面33から出射される。
つまり、導光投射光学素子3に入射した光のうち、一部の光が反射面32に到達する。反射面32に到達した光は、反射面32で反射されて、出射面33から出射される。
なお、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定によって、集光光学素子2から出射された全ての光を反射面32で反射させることができる。また、反射面32の傾斜角度bの設定によって、集光光学素子2から出射された全ての光を反射面32で反射させることができる。
また、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定によって、導光投射光学素子3の光軸Cp方向(Z軸方向)の長さを短くすることができる。そして、光学系の奥行き(Z軸方向の長さ)を短くできる。ここで「光学系」とは、変形例3では、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を構成要素に持つ光学系である。
また、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定によって、集光光学素子2から出射された光を、反射面32に導くことが容易になる。このため、効率的に共役面PC上で稜線部321の内側(+Y軸方向側)の領域に光を集めやすくなる。
つまり、集光光学素子2から出射された光を、反射面32の共役面PC側に集めることで、稜線部321の+Y軸方向の領域から出射する光の出射量を多くすることができる。この場合には、集光光学素子2から出射される中心光線と反射面32と交点は、反射面32の共役面PC側に位置している。
従って、照射面9に投影される配光パターンのカットオフライン94の下側の領域を明るくすることが容易になる。また、導光投射光学素子3の光軸Cp方向(Z軸方向)の長さが短くなることで、導光投射光学素子3の光の内部吸収が少なくなり光利用効率が向上する。「内部吸収」とは、導光部品(変形例3では導光投射光学素子3)を光が透過する際の、表面反射の損失を除く、材料内部での光損失のことである。内部吸収は導光部品の長さが長いほど増加する。
一般的な導光素子では、光は導光素子の側面で反射を繰り返して導光素子の内部を進行する。これにより、光の強度分布は均一化される。変形例3では、導光投射光学素子3に入射した光は、反射面32で1回反射されて、出射面33から出射されている。この点で、本願の導光投射光学素子3の使用方法は、従来の導光素子の使用方法と相違する。
カットオフライン94の下側(−Y軸方向側)の領域が最大照度となるような配光パターンを生成するには、図20(A)に示すように、Y−Z平面上で見て、導光投射光学素子3の入射面31から入射した光の一部を反射面32によって反射させることが有効である。
なぜなら、入射面31から入射した光のうち、反射面32で反射せずに稜線部321の+Y軸方向側に到達した光と、反射面32上で反射された光とが、共役面PC上で重畳されるからである。
つまり、照射面9上の高照度領域に対応する共役面PC上の領域で、反射面32で反射せずに共役面PCに到達した光と、反射面32上で反射されて共役面PCに到達した光とを重畳する。このような構成により、稜線部321の上側(+Y軸方向側)の領域の光度を、共役面PC上の光度の中で最も高くすることができる。
反射面32で反射せずに共役面PCに到達した光と、反射面32で反射されて共役面PCに到達した光とを、共役面PC上で重畳することで、光度の高い領域を形成している。共役面PC上での光度の高い領域の位置の変更は、反射面32上での光の反射位置を変更することで可能である。
反射面32上での光の反射位置を共役面PCに近づけることで、共役面PC上の稜線部321の近くを光度の高い領域とすることができる。つまり、照射面9上でのカットオフライン94の下側を照度の高い領域とすることができる。
また、この重畳された光の量は、水平方向の配光の幅を調整する場合と同様に、入射面31の垂直方向(Y軸方向)の曲率を任意に変化させることで調整することができる。「重畳された光の量」とは、反射面32で反射せずに稜線部321の+Y軸方向側に到達した光(共役面PC上)と、反射面32上で反射された光との重畳された光の量である。
上述では、高照度領域は、カットオフライン94の下側(−Y軸方向側)の領域と説明している。これは、照射面9上の配光パターンの高照度領域の位置である。
Y軸方向において、共役面PC上に形成された配光パターンの像は、導光投射光学素子3によって車両の前方の照射面9に拡大して投影される。
出射面33のY軸方向の焦点は、稜線部321を含むX−Y平面に平行な面上に位置している。第4光軸領域331の焦点は、光軸Cp1上にある。第5光軸領域332の焦点は、光軸Cp2上にある。
つまり、出射面33の第4光軸領域331のY軸方向の焦点は、稜線部321を含むX−Y平面に平行な面と光軸Cp1との交点にある。また、出射面33の第5光軸領域332のY軸方向の焦点は、稜線部321を含むX−Y平面に平行な面と光軸Cp2との交点にある。
従来の前照灯では、遮光板と投射レンズとを用いるために、部品間の位置ばらつきによるカットオフラインの変形又は配光のばらつき等の変化が発生した。しかし、導光投射光学素子3は、1つの部品の形状精度で、出射面33の焦点位置を光軸Cp1、及び光軸Cp2方向で稜線部321の位置に一致させることができる。
これによって、前照灯モジュール100は、カットオフラインの変形又は配光のばらつき等の変化を抑えることができる。なぜならば、一般に2つの部品間の位置精度よりも1つの部品の形状精度の方が容易に向上できるからである。
また、反射面32を、光の進行方向(+Z軸方向)に向けて、導光投射光学素子3内の光路が広がるように傾斜させることで、出射面33の口径を小さくすることができる。
反射面32は、出射面33の光軸Cpの方向において、出射面33側を向くように傾斜させることで、出射面33の口径を小さくすることができる。
反射面32は、出射面33の光軸の方向において、出射面33側を向くような曲面で形成されている。
反射面32の傾斜によって、出射面33の口径を小さくすることができる。そして、前照灯モジュール140を小型化できる。特に、前照灯モジュール140の高さ方向(Y軸方向)の薄型化に貢献する。
前照灯モジュール140は、導光投射光学素子3の入射面31の曲面形状を調整することで、配光パターンの幅及び高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、前照灯モジュール140は、集光光学素子2と導光投射光学素子3との光学的な位置関係又は導光投射光学素子3の入射面31の形状を調整することで、配光パターンの幅及び高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、反射面32を用いることで、配光分布の変化も容易にできる。例えば、反射面32の傾斜角度bを変化させることで、高照度領域の位置を変化させることができる。
このため、複数の前照灯モジュール間で、特に、集光光学素子2の形状等を変更する必要がない。つまり、集光光学素子2を共通部品とできる。このため、部品の種類を削減でき、組立性を改善して、製造コストを低減することができる。
また、この様な配光パターンの幅及び高さを任意に調整する機能と、配光分布を任意に調整する機能とは、前照灯モジュール140の全体で発揮できれば良い。前照灯モジュール140の光学部品は、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を備える。つまり、これらの機能を、前照灯モジュール140を構成する集光光学素子2又は導光投射光学素子3のいずれかの光学面に分散することも可能である。
例えば、導光投射光学素子3の反射面32を曲面形状にしてパワーを持たせ、配光を形成することも可能である。
しかし、反射面32については、必ずしも全ての光が反射面32に到達する必要は無い。このため、反射面32に形状を持たせた場合には、配光パターンの成形に寄与できる光の量は限られる。つまり、反射面32で反射することで、配光パターンに反射面32の形状の作用を与えられる光の量は限られる。したがって、全ての光に対して光学的に作用を与えて、容易に配光パターンを変化させるためには、入射面31にパワーを持たせて配光を形成させることが好ましい。
前照灯モジュール140は、光源1、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を備える。光源1は、光を出射する。集光光学素子2は、光源1から出射された光を集光する。導光投射光学素子3は、集光光学素子2から出射された光を入射面31から入射して、入射されたこの光を反射面32で反射して出射面33から出射する。入射面31は、入射した光の発散角を変化させる曲面で形成される。
前照灯モジュール140は、光源1及び光学素子3を備える。光源1は、光を発する。光学素子3は、光源1から発せられた光を反射する反射面32及び反射面32で反射された反射光を出射する出射面33を含む。出射面33は、正の屈折力を有する。出射面33の光軸Cp方向において、反射面32の出射面33側の端部321は、出射面33の焦点位置に位置する点Tを含む。
変形例3では、光学素子3は、一例として、導光投射光学素子3として示されている。また、端部321は、一例として、稜線部321として示されている。
反射面32の反射光の進行方向の端部321は、出射面33の光軸Cpの方向において、出射面33の焦点位置に位置する点Tを含む。
実施の形態2.
図21は、前照灯モジュール100,110,120,130、140を実装した前照灯装置10の構成を示した構成図である。上述の実施の形態では、前照灯モジュール100,110,120,130、140の実施の形態を説明した。図21では、一例として、前照灯モジュール100を搭載した例を示している。
例えば、図21に示された3つの前照灯モジュール100の全部又は一部を、前照灯モジュール110,120,130、140に置きかえることができる。
前照灯装置10は、筐体97を備える。また、前照灯装置10は、アウターレンズ96を備えることができる。
筐体97は、前照灯モジュール100を保持している。
筐体97は、例えば、車体の内部に配置されている。
筐体97の内部には、前照灯モジュール100が収められている。図21では、例として、3個の前照灯モジュール100が収められている。なお、前照灯モジュール100の個数は、3個に限定されない。前照灯モジュール100の個数は、1個または2個でも良く、4個以上でも良い。
前照灯モジュール100は、例えば、筐体97の内部に、X軸方向に並べて配置されている。なお、前照灯モジュール100の並べ方は、X軸方向に並べる方法に限らない。デザイン又は機能等を考慮して、前照灯モジュール100をY軸方向又はZ軸方向にずらして配置しても良い。
また、図21では、筐体97の内部に前照灯モジュール100を収めている。しかし、筐体97は、箱形状である必要はない。筐体97は、フレーム等で構成されており、そのフレームに前照灯モジュール100が固定される構成を採用しても良い。なぜなら、四輪の自動車等の場合には、筐体97は車体の内部に配置されているからである。このフレーム等は、車体を構成する部品であってもよい。この場合には、筐体97は車体を構成する一部となる。つまり、筐体97は筐体部となる。
自動二輪車の場合には、筐体97は、ハンドルの近くに配置されている。四輪の自動車の場合には、筐体97は、車体の内部に配置されている。
アウターレンズ96は、前照灯モジュール100から出射された光を透過する。そして、アウターレンズ96を透過した光は、車両の前方に出射される。アウターレンズ96は透明な材料で作製されている。
アウターレンズ96は、車体の表面部分に配置されて、車体の外部に表れている。
アウターレンズ96は、筐体97の+Z軸方向に配置されている。
前照灯モジュール100から出射された光は、アウターレンズ96を透過して、車両の前方(+Z軸方向)に出射される。図17では、アウターレンズ96から出射された光は、隣り合う前照灯モジュール100から出射された光と重なり合って、1つの配光パターンを形成している。
アウターレンズ96は、前照灯モジュール100を風雨又は塵埃等から守るために設けられている。しかし、投射レンズ8が前照灯モジュール100の内部の部品を風雨又は塵埃等から守る構造の場合には、特にアウターレンズ96を設ける必要はない。
以上で説明したように、複数の前照灯モジュール100を備える場合には、前照灯装置10は、前照灯モジュール100の集合体である。また、1個の前照灯モジュール100を備える場合には、前照灯装置10は、前照灯モジュール100と等しくなる。つまり、前照灯モジュール100が前照灯装置10である。または、前照灯装置10は、1個の前照灯モジュール100にアウターレンズ96または筐体97などを取り付けた構成となる。
なお、上述の各実施の形態においては、「平行」または「垂直」などの部品間の位置関係又は部品の形状を示す用語を用いている場合がある。これらは、製造上の公差や組立て上のばらつきなどを考慮した範囲を含む。このため、請求の範囲に部品間の位置関係または部品の形状を示す記載した場合には、これらの記載は、製造上の公差又は組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含む。
また、以上のように本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限るものではない。