以下、実施形態に係る駆動装置について図面を参照して説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る駆動装置の適用例について説明する。本実施形態に係る駆動装置は、蓋を有する種々のものに適用され、蓋を自動開閉させる。例えば、駆動装置は、トイレやごみ箱、洗濯機などに備えられ、トイレの便座や便蓋、ゴミ箱の蓋、洗濯機の蓋などを自動開閉させる。以下、図1を用いて、駆動装置のトイレへの適用例を説明する。図1は、第1の実施形態に係る駆動装置100を備える便器の便座及び便蓋を示す側面図である。図1に示すように、便器2は、基部6の上面側の一端部に設けたケーシング3に2つの駆動装置100を備える。2つの駆動装置100は、それぞれ便座4か便蓋5のいずれかを自動で開閉させる。
例えば、一の駆動装置100は、ケーシング3に取り付けられる便座4の回動軸の両端部のうちの一端部側に設けられ、後述する駆動源(例えば、モータ)の駆動により便座4を自動で開閉させる。また、例えば、他の駆動装置100は、ケーシング3に取り付けられる便蓋5の回動軸の両端部のうちの一端部側に設けられ、駆動源の駆動により便蓋5を自動で開閉させる。なお、図1に示す例では、2つの駆動装置100が向きを揃えて設けられる場合を示すが、2つの駆動装置100は、それぞれ反対側の端部に設けられてもよい。なお、駆動装置100による便座4及び便蓋5の自動開閉の詳細については、後述する。
次に、駆動装置100の外形について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る駆動装置100の外形を示す斜視図である。図2に示すように、駆動装置100は、筐体10から軸部20の出力軸21が突出されて形成される。筐体10は、図示しない駆動源(例えば、モータ)、ギア群、軸部20などの各構成を内部空間に収納する。ここで、筐体10は、軸部20の軸方向の厚みが薄くなるように形成される。そして、駆動装置100は、トイレやごみ箱、洗濯機などの蓋に設けられた出力軸21を取り付ける機構に出力軸21が取り付けられることにより、図示しない駆動源からのトルクを蓋に伝達して、蓋を回動させる(開閉させる)。例えば、図1に示す便器2に備えられる場合、2つの駆動装置100は、軸部20の軸方向が便座4及び便蓋5の回動軸の軸方向と一致するようにケーシング3内にそれぞれ備えられる。そして、一の駆動装置100における出力軸21が便座4の回動軸の一端部に設けられた取り付け機構に取り付けられる。また、他の駆動装置100における出力軸21が便蓋の回動軸の一端部に設けられた取り付け機構に取り付けられる。すなわち、便座4及び便蓋5の回動軸の軸方向に対応する厚みが薄くなるように形成された駆動装置100が便器2に取り付けられる。そして、2つの駆動装置100は、駆動源からのトルクを便座4及び便蓋5の回動軸に伝達することで、便座4及び便蓋5を自動開閉する。
次に、駆動装置100の構成について、図3A〜図5を用いて説明する。図3Aは、第1の実施形態に係る駆動装置100を示す上面図である。なお、図3Aにおいては、出力軸21が突出した面を上面として、筐体10の上面を除いた場合の図を示す。図3Bは、第1の実施形態に係る駆動装置100を示す下面図である。なお、図3Bにおいては、出力軸21が突出した面とは反対の面を下面として、筐体10の下面を除いた場合の図を示す。図4及び図5は、第1の実施形態に係る駆動装置100を示す斜視図である。なお、図4においては、筐体10を除き、下面側から駆動装置100を見た場合の斜視図を示す。また、図5においては、筐体10を除き、上面側から駆動装置100を見た場合の斜視図を示す。
駆動装置100は、軸部20と、モータ31と、軸変換部40と、第1ギア部50と、第2ギア部60と、アシストギア部70と、センサーギア部80と、制動部90とを有する。例えば、駆動装置100は、軸部20の出力軸21を筐体10の外側に突出させ、軸部20、モータ31、軸変換部40、第1ギア部50、第2ギア部60、アシストギア部70、センサーギア部80及び制動部90を筐体10内に収納する。なお、軸変換部40と、第1ギア部50と、第2ギア部60と、アシストギア部70とをあわせてギア群とも記載する。
図3Aに示すように、モータ31は、駆動装置100が取り付けられる蓋を回動させる駆動源・動力源として機能する。なお、モータ31には、図示しないリード線を介して図示しないコントローラから駆動信号が供給される。また、駆動信号の供給により、モータ31の出力回転軸32が回転する。なお、モータ31は、DCモータ、DCブラシレスモータ、ステッピングモータなど、特に制限されない。
モータ31の出力回転軸32の先端部にはウォーム33が装着されている。すなわち、ウォーム33は、駆動源であるモータ31の回転軸を中心に回転する。例えば、ウォーム33は、ウォームギアにおけるウォームである。ウォーム33は、円筒状に形成されたねじ状の歯車である。例えば、ウォーム33には、3条のウォームが用いられる。また、例えば、ウォーム33は、金属や樹脂等により形成されてもよい。なお、ウォーム33には、強度等の所定の条件を満たせばどのような材料が用いられてもよい。
図3A〜図4に示すように、軸変換部40は、ウォームホイール41とギア42とを有する。ウォームホイール41とギア42とは、軸棒を中心に軸を揃えて回転する。軸変換部40のウォームホイール41は、ウォーム33と噛合する。すなわち、軸変換部40のウォームホイール41は、ウォーム33に対するウォームホイールとして機能する。
例えば、図3A中において、モータ31の出力回転軸32は、左右方向に延びる。一方、軸変換部40の軸棒は、モータ31の出力回転軸32に直交する。例えば、モータ31の出力回転軸32の軸方向は、軸変換部40の回転軸の軸方向に直交する。このように、軸変換部40により、モータ31の駆動力を伝達する回転軸がモータ31の出力回転軸32から軸変換部40の回転軸に変換される。
図3A及び図3Bに示すように、第1ギア部50は、軸変換部40を介してモータ31から伝達されたトルクを第2ギア部60に伝達するための部材である。第1ギア部50は、金属や樹脂等から形成され、第1大径ギア51と、第1大径ギア51に同軸に固定された第1小径ギア52とを有する。第1大径ギア51は、軸変換部40のギア42と噛合する。第1小径ギア52は、第1大径ギア51よりも小径に形成され、第1大径ギア51と軸を揃えて回転し、第2ギア部60へモータ31から伝達されたトルクを伝達する。なお、第1ギア部50の第1大径ギア51と第1小径ギア52は一体に形成されていてもよい。
図3A〜図5に示すように、第2ギア部60は、第1ギア部50を介してモータ31から伝達されたトルクを軸部20及びアシストギア部70に伝達するための部材である。第2ギア部60は、金属や樹脂等から形成され、第2大径ギア61と、第2大径ギア61に同軸に固定された第2小径ギア62とを有する。第2大径ギア61は、第1ギア部50の第1小径ギア52と噛合する。第2小径ギア62は、第2大径ギア61よりも小径に形成され、第2大径ギア61と軸を揃えて回転し、軸部20及びアシストギア部70へモータ31から伝達されたトルクを伝達する。なお、第2ギア部60の第2大径ギア61と第2小径ギア62は一体に形成されていてもよい。
図3A〜図5に示すように、軸部20は、モータ31から伝達されたトルクを蓋(例えば、トイレの便座及び便蓋や、ごみ箱及び洗濯機の蓋など)に伝達するための部材である。例えば、軸部20は、駆動源であるモータ31によって回転し、蓋を所定の方向に回動させる。軸部20は、出力軸21と、出力ギア22と、第1ばね部材23(第1の弾性体)とを有する。軸部20は、円柱状に形成され、軸方向の一端部に出力軸21が形成され、軸方向の他端部に出力ギア22が形成される。出力軸21は、先端部分を一部切り欠いた形状に形成される。また、蓋に設けられた出力軸21の先端部分を取り付ける機構により、出力軸21が蓋に取り付けられることにより、モータ31からのトルクが蓋に伝達され、蓋が回動する。出力ギア22は、軸部20の周方向に設けられ、第2ギア部60の第2小径ギア62と噛合する。これにより、第2ギア部60から軸部20へトルクが伝達される。
ここで、軸部20は、軸方向に沿った内部空間を有し、第1ばね部材23が配置される。第1ばね部材23は、コイル状に形成され、軸部20の内部空間に配置される。例えば、第1ばね部材23は、いわゆるアシストばねであり、トーションばね(ねじりばね)が用いられる。なお、第1ばね部材23は、筐体10及び軸部20にそれぞれ係合することにより、軸部20を回転方向の1方向に付勢するが、この詳細については後述する。
図3A〜図5に示すように、アシストギア部70は、軸棒の一端部の周方向にアシストギア71が形成される。アシストギア71は、第2ギア部60の第2小径ギア62と噛合する。すなわち、アシストギア部70は、モータ31から伝達されたトルクにより、軸棒を回転軸として回転する。ここで、アシストギア部70は、アシストギア71側に軸方向に沿った内部空間を有し、第2ばね部材72(第2の弾性体)が配置される。第2ばね部材72は、コイル状に形成され、アシストギア部70の内部空間に配置される。例えば、第2ばね部材72は、いわゆるアシストばねであり、トーションばねが用いられる。なお、第2ばね部材72は、筐体10及びアシストギア部70にそれぞれ係合することにより、アシストギア部70を回転方向の1方向に付勢するが、この詳細については後述する。また、図5に示すように、アシストギア部70は、突起部73が配設され、アシストギア部70の回転に伴って制動部90に作用するが、この詳細については、後述する。
図3B及び図4に示すように、センサーギア部80は、軸棒の一端部の周方向に第1センサーギア81(第1のギア)と、第2センサーギア82(第2のギア)とが重ねて形成され、第1センサーギア81及び第2センサーギア82の回転に応じて、出力ギア22の回転角度を検知する回転抵抗器(ポテンショメータ)83が配設される。第1センサーギア81及び第2センサーギア82は、軸部20の出力ギア22とそれぞれ噛合し、モータ31から伝達されたトルクにより、軸棒を回転軸として回転する。回転抵抗器83は、第1センサーギア81及び第2センサーギア82の回転角度に応じた抵抗値を図示しないコントローラに出力することで、出力ギア22の回転角度を図示しないコントローラに送信する。出力ギア22の回転角度を受信したコントローラは、モータ31に駆動信号を供給することで、モータ31を制御する。例えば、コントローラは、蓋を開状態又は閉状態とするように、モータ31の出力を制御する。ここで、第1センサーギア81及び第2センサーギア82は、図示しないばね部材によって互いに反対方向に回転付勢されるが、この詳細については、後述する。
図3A〜図5に示すように、制動部90は、制動レバー91と、第3ばね部材92(付勢部材)とを備える。制動レバー91は、軸棒の一端部にアシストギア部70の突起部73から作用を受けるレバーが形成され、アシストギア部70の回転に伴う突起部73の押力をレバーで受けることにより、軸棒を回転軸として回転する。第3ばね部材92は、コイル状に形成され、内部に制動レバー91の軸棒が挿通する位置に配置される。例えば、第3ばね部材92は、いわゆるアシストばねであり、トーションばねが用いられる。なお、第3ばね部材92は、筐体10及び制動レバー91にそれぞれ係合することにより、制動レバー91を回転方向の1方向に付勢するが、この詳細については後述する。
以上、駆動装置100の構成について説明した。次に、駆動装置100の動作を説明する。駆動装置100においては、例えば、蓋を開く場合、図示しないコントローラが、駆動信号を供給し、モータ31を一方向に回転させる。モータ31の回転により、出力回転軸32に装着されているウォーム33が回転し、ウォーム33に噛合しているウォームホイール41が回転する。また、ウォームホイール41の回転に伴い、ギア42が回転し、ギア42に噛合している第1大径ギア51が回転する。
第1大径ギア51の回転に伴って、第1小径ギア52が回転し、第1小径ギア52に噛合する第2大径ギア61が回転する。また、第2大径ギア61の回転に伴って、第2小径ギア62が回転し、第2小径ギア62に噛合する出力ギア22が回転する。そして、出力ギア22が回転することにより、出力軸21が回転して蓋が開く。一方、蓋を閉じる場合には、コントローラは、モータ31を逆回転に回転させる。この場合、上述した回転とは逆回転の回転力が出力軸21に伝達され、蓋を閉じる。
ここで、駆動装置100は、軸部20における第1ばね部材23に加えて、アシストギア部70における第2ばね部材72を有することにより、付勢力を保ちつつ、薄型に形成することを可能にする。すなわち、駆動装置100は、軸部20を回転方向に付勢する第1ばね部材23と、ギア群に含まれるギアのうち軸部20とは異なる回転軸で回転するアシストギア71を付勢することで、軸部20の回転方向への回転を助勢する第2ばね部材72とを有することで、蓋を開く場合の出力軸21の回転に対する付勢力を保ちつつ、装置の薄型化を可能にする。
例えば、駆動装置100においては、第1ばね部材23が、蓋が開く方向に対応する出力軸21の回転に対して付勢する。さらに、第2ばね部材72が、蓋が開く方向に対応するアシストギア71の回転に対して付勢する。すなわち、出力ギア22の前段のギアである第2小径ギア62に噛合するアシストギア71は、蓋が開く方向の回転が出力ギア22と同じ方向となる。従って、第2ばね部材72は、アシストギア71において出力ギア22の蓋が開く方向の回転と同一方向への回転を付勢する。このように、第2ばね部材72がアシストギア71を付勢することにより、アシストギア71と噛合する第2小径ギア62の蓋を開く方向への回転が助勢され、さらに、出力ギア22の蓋が開く方向への回転が助勢されることとなる。
蓋を自動で開閉するために用いられる駆動装置においては、蓋が閉じた状態から開く場合に大きな負荷トルクがかかる。従って、出力軸の蓋が開く方向に対応する回転に対して付勢するばね等を配置することで、負荷トルクを低減することが考えられる。しかしながら、より大きな付勢力を得るために、より大きなばねを出力軸に配置したり、複数のばねを出力軸に配置したりした場合には、駆動装置が大型化(装置の厚みが増加)することとなる。
しかしながら、駆動装置100のように、軸部20とは異なる回転軸を有し、出力ギア22に付勢力を伝達することができるアシストギア71に対して回転付勢させることで、複数のばねを配置した際の付勢力を保ちつつ、駆動装置100の薄型化(厚みの増加の抑止)を可能にする。ここで、第2ばね部材72による付勢は、蓋が開く方向へのアシストだけではなく、蓋が閉まる方向へのアシストも行う。蓋が閉まる場合、出力軸21は、開く方向の回転とは逆方向に回転する。すなわち、蓋が閉まる場合、出力軸21は第1ばね部材23による付勢方向とは逆方向に回転し、かかる回転力が、出力ギア22及び第2小径ギア62を介してアシストギア71に伝達されることとなる。ここで、アシストギア71に伝達される回転の回転方向は、蓋が開く方向とは逆方向となり、第2ばね部材72の付勢方向とは逆方向となる。従って、第2ばね部材72は、蓋が閉まる方向の回転とは逆方向に付勢することで、蓋が閉じる際の制動効果を発揮することとなる。
なお、アシストギア部70は、第2ばね部材72の付勢力を効率よく出力ギア22に伝達するために、軸部20の前段の第2小径ギア62に噛合するように配置されているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、アシストギア部70をギア群の任意の位置に配置する場合であってもよい。また、アシストギア部70は、モータ31の出力を軸部20に伝達するギアではなく、第2ばね部材72の付勢によって第2小径ギア62の回転を助勢することで、軸部20の回転を助勢するために新たに追加したギアである。第2ばね部材72は、新たに追加したギアに配置されるだけではなく、モータ31の出力を軸部20に伝達するギアに配置される場合であってもよい。例えば、第2ギア部60や、第1ギア部50に、第2ばね部材72が配置される場合であってもよい。
ここで、第2ばね部材72は、配置される位置に応じて付勢する方向が変化する。例えば、第2ギア部60に配置される場合、第2ばね部材72は、出力軸21の蓋が開く方向に対応する回転とは逆方向の回転に対して付勢する。一方、第1ギア部50に配置される場合、第2ばね部材72は、出力軸21の蓋が開く方向に対応する回転に対して付勢する。すなわち、第2ばね部材72は、軸部20に形成された出力ギア22までに経由するギアの数に応じて付勢する回転方向が変化する。
また、駆動装置100は、制動部90を有することにより、蓋の閉方向への回動において、任意の位置から制動をかけることを可能にする。すなわち、駆動装置100は、ギア群の回転において、第1の角度から第2の角度までの回転を制動する制動部90を有することで、蓋の閉方向への回動において、任意の位置から制動をかけることができる。
例えば、駆動装置100においては、アシストギア71に突起部73が設けられ、突起部73は、アシストギア71の回転に伴って回転する。すなわち、突起部73は、蓋の開閉時にアシストギア71の回転に伴って回転する。制動部90は、第1の角度から第2の角度に対して付勢する第3ばね部材92と、ギア群のいずれかに形成された突起(例えば、アシストギア71に形成された突起部73)と当接する制動レバー91を備え、蓋が閉まる方向に対応する回転方向に回転する突起部73に対して逆方向の付勢を行うことで、蓋の閉方向への回動に制動をかける。さらに、制動部90においては、突起部73に対して逆方向に付勢を開始する回転角度が調整されることにより、任意の位置からの制動を可能にする。
図6A及び図6Bは、第1の実施形態に係る制動部90による制動を説明するための図である。なお、図6Aにおいては、蓋が開いている状態での制動レバー91と突起部73との位置関係を示す。また、図6Bにおいては、蓋が閉じた状態での制動レバー91と突起部73との位置関係を示す。すなわち、図6A及び図6Bにおいては、蓋が閉まる方向に回動した場合、アシストギア71が紙面上左方向に回転することを示す。
例えば、蓋が開いた状態の場合、制動レバー91は、図6Aに示すように、第3ばね部材92の付勢力により、レバーが上がった状態で保持される。そして、蓋が閉じると共に、突起部73が紙面上左方向に回転すると、制動レバー91は、所定の位置で突起部73に当接することとなる。例えば、突起部73は、図6Bにおける右上部の点線の円で示す位置から左方向に回転し、図6Bにおける左上部の点線の円で示す位置で制動レバー91に当接する。さらに、突起部73は、蓋が閉状態となるまで、蓋の閉方向への回動に伴って回転する。すなわち、制動レバー91は、突起部73の左方向への回転によって押圧され、図6Bに示す位置まで押し下げられる。
ここで、制動レバー91は、上述したように第3ばね部材92の付勢力によって、レバーを押し上げる方向に付勢されている。すなわち、制動レバー91の第3ばね部材92は、突起部73が制動レバー91に当接したのち蓋が閉状態となるまでの間、蓋が閉まる方向とは逆方向に突起部73を付勢する。これにより、駆動装置100は、蓋の閉方向への回動において、任意の位置から制動をかけることを可能にする。また、第3ばね部材92を用いることで、最も負荷がかかる蓋が閉まる直前に最も制動力をかけることができる。すなわち、蓋が閉まる直前に、第3ばね部材92が最も締まるように作用されることで、最も負荷がかかる蓋が閉まる直前に最も制動力をかける。したがって、駆動装置100は、蓋の角度に応じて適切な制動力をかけることができる。
ここで、第3ばね部材92による付勢は、蓋が閉じる方向への制動だけではなく、蓋が開く方向へのアシストも行う。蓋が開く場合、出力軸21は、閉じる方向の回転とは逆方向に回転する。すなわち、蓋が開く場合、突起部73は第3ばね部材92による付勢方向と順方向に回転することとなる。従って、第3ばね部材92は、蓋が開く方向の回転と順方向に突起部73を付勢することで、蓋が開く際のアシスト効果を発揮することとなる。
また、アシストギア71は、出力ギア22とのギア比が1:1となるように形成される。すなわち、出力ギア22の回転角度(蓋の角度)とアシストギア71の回転角度とが一致するように、アシストギア71を形成することで、突起部73を取り付ける位置によって、制動をかける位置を容易に調整することができる。例えば、蓋が閉じた状態を「0°」とし、「40°」の角度から制動をかける場合、蓋が閉じた状態における突起部73の位置から「40°」逆回転させた位置で制動レバー91と突起部73が当接するように、制動レバー91の位置と突起部73の位置が調整される。
なお、上記した例では、制動部90が制動レバー91を有し、第3ばね部材92によって付勢された制動レバー91が突起部73に押圧される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、制動部90が、制動レバー91を備えない場合であってもよい。かかる場合には、突起部73が、第3ばね部材92に対して当接され、付勢される方向とは逆方向に押圧する。
また、上記した例では、突起部73がアシストギア部70に取り付けられる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、その他のギアに取り付けられる場合であってもよい。かかる場合には、出力ギア22とのギア比に基づいて、突起部73が取り付けられるギアが決定される。例えば、突起部73は、取り付けるギアと出力ギア22とのギア比が、2:1となるギアに取り付けられる。すなわち、突起部73は、蓋の開閉に伴う回転が1回転未満となるギアに対して取り付けられる。
また、駆動装置100は、センサーギア部80を有することにより、出力軸21(出力ギア22)の正確な回転角度を検出することを可能にする。すなわち、駆動装置100は、軸部20に形成された出力ギア22に噛合した第1センサーギア81及び第2センサーギア82と、第1センサーギア81及び第2センサーギア82の回転に基づいて、軸部20に形成された出力ギア22の回転角度を検出する回転抵抗器83とを備え、第1センサーギア81及び第2センサーギア82が、弾性部材によってそれぞれ逆方向に回転付勢されることで、出力軸21の正確な回転角度を検出することを可能にする。
図7は、第1の実施形態に係るセンサーギア部80を説明するための図である。なお、図7においては、第1センサーギア81及び第2センサーギア82と、出力ギア22との噛合の一部を示す図である。例えば、第1センサーギア81と第2センサーギア82は、図7に示すように、重ねて配置される。ここで、第1センサーギア81と第2センサーギア82との間に図示しないばね部材が配置されることにより、第1センサーギア81と第2センサーギア82とがそれぞれ逆方向に回転付勢される。例えば、トーションばねの一端部が第1センサーギア81に係合し、他端部が第2センサーギア82に係合することにより、第1センサーギア81を回転方向の1方向に付勢し、第2センサーギア82を第1センサーギア81の回転方向とは逆方向に付勢する。
これにより、駆動装置100は、センサーギア部80と出力ギア22との間のバックラッシュを低減し、出力軸21の正確な回転角度を検出することを可能にする。例えば、蓋を開閉する駆動装置においては、出力ギア、或いは、前段のギアと同期するセンサーギアを設置して、回転抵抗器の抵抗変化を検出して、出力軸を検知して制御を行っている。しかしながら、出力ギアとセンサーギアとの間のバックラッシュのために、正確な回転位置が検出できず、特に蓋が閉状態となる直前や、開状態となる直前の制御においてハンチングを起こす場合がある。しかしながら、駆動装置100のように、出力ギア22と2つのセンサーギア(第1センサーギア81及び第2センサーギア82)とを同時にかみ合わせる配置とし、図示しないばね部材を用いて、第1センサーギア81及び第2センサーギア82を逆回転方向に付勢させることにより、回転誤差が無くなる。その結果、駆動装置100は、開閉制御中の不感帯がなくなるため、閉直前、開直前の制御を安定して行うことができる。
上述したように、第1の実施形態に係る駆動装置100は、第1ばね部材23が、蓋が開く方向に対応する出力軸21の回転に対して付勢する。さらに、第2ばね部材72が、蓋が開く方向に対応するアシストギア71の回転に対して付勢する。従って、複数のばねを配置した際の付勢力を保ちつつ、駆動装置100の薄型化(厚みの増加の抑止)を可能にする。図8Aは、第1の実施形態に係る駆動装置100におけるシミュレーションの結果を示す図である。図8Aにおいては、縦軸に各条件における相対的な負荷トルク(%)を示し、横軸に開閉角度(deg)を示すグラフを示す。また、図8Aにおいては、上段のグラフが第1ばね部材23及び第2ばね部材72をともに配置しない場合の負荷トルクを示し、中段のグラフがどちらか一方を配置した場合の負荷トルクを示し、下段のグラフが両方を配置した場合の負荷トルクを示す。
図8Aに示すように、駆動装置100においては、第1ばね部材23及び第2ばね部材72を配置することで、開閉時の最大トルクを低減することができる。また、駆動装置100においては、アシストギア部70を、出力ギア22の前段のギアである第2小径ギア62に噛合させるように配置することで、出力ギア22と第2小径ギア62との間のバックラッシュを低減することができ、開閉動作の安定性を向上させることができる。また、駆動装置100においては、開閉時の最大トルクを低減させることができ、よりトルクの小さいモータを利用することができる。また、駆動装置100においては、ギアが伝達するトルクが小さくなることから、ギアの強度を小さくすることができる。その結果、例えば、金属製の部品を樹脂に変えて形成することができ、製造コストの低減や、製造の手間を低減することができる。また、駆動装置100においては、最大トルクを低減させることで、減速比を小さくすることができるため、モータ31及び各ギアを小型化することができる。
また、第1の実施形態に係る駆動装置100は、ギア群の回転において、第1の角度から第2の角度までの回転に対して付勢する第3ばね部材92を有することで、蓋の閉方向への回動において、任意の位置から制動をかけることができ、実際の開閉動作に応じて、より適切な動作感覚での制御を実現することができる。また、駆動装置100においては、最大トルクを低減することができ、モータ31や各ギアを小型化することができる。
図8Bは、第1の実施形態に係る駆動装置100におけるシミュレーションの結果を示す図である。図8Bにおいては、縦軸に各条件における相対的な負荷トルク(%)を示し、横軸に開閉角度(deg)を示すグラフを示す。また、図8Bにおいては、上段のグラフが第3ばね部材92を配置しない場合の負荷トルクを示し、下段のグラフが第3ばね部材92を配置した場合の負荷トルクを示す。図8Bに示すように、駆動装置100においては、第3ばね部材92を配置することで、開閉時の最大トルクを低減することができる。
このような駆動装置100を、例えば、図1に示す便器2に適用した場合、便座4及び便蓋5の開閉時における最大トルクを低減させることができる。すなわち、第1ばね部材23が、便座4が開く方向に対応する出力軸21の回転に対して付勢し、第2ばね部材72が、便座4が開く方向に対応するアシストギア71の回転に対して付勢することで、便座4の底面411が基部6の当接面に当接している閉状態(図8A及び図8Bにおける開閉角度「0°」の状態)から便座4が開いた状態である開状態(図8A及び図8Bにおける開閉角度「120°」の状態)となるように便座4を回動させる場合の回動開始時のトルク(便座4を持ち上げ始めのトルク)を低減することができる。また、駆動装置100においては、第1ばね部材23及び第2ばね部材72による開方向への付勢力によって、開状態から閉状態への便座4の回動(閉方向への回動)にかかる負荷トルクも低減することができる。なお、駆動装置100が取り付けられた便蓋5においても、上記と同様に負荷トルクを低減することができる。
また、上記した駆動装置100は、制動部90が、ギア群の回転における第1の角度から第2の角度までの回転に対して制動することで、便蓋5の閉方向への回動に対して適切な制動をかけることができる。例えば、駆動装置100は、便座4が開状態から閉状態へ回動する際に、便座4の角度が「40°」となった時点から制動をかけ、便座4が閉状態となるまで滑らかに回動させることができる。ここで、図8Bに示すように、ある角度から制動をかけるようにすることで、閉状態となるまでに徐々に上昇する負荷トルクを急峻に低下させることができる。これにより、駆動装置100は、閉状態でかかる最大トルクをより低減させることができる。また、制動部90において、第3ばね部材92が用いられることにより、最大トルクがかかる閉状態における制動力を最大とすることができる。すなわち、第3ばね部材92は、便座4が閉まる方向に回動するほど付勢する方向とは逆方向に力がかかるため、便座4が閉まる方向に回動するほどより強い付勢力を発揮することとなる。また、駆動装置100においては、制動部90による制動力によって、閉状態から開状態への便座4の回動(開方向への回動)にかかる負荷トルクを低減することもできる。なお、駆動装置100が取り付けられた便蓋5においても、上記と同様に負荷トルクを低減することができる。
以上、第1の実施形態に係る駆動装置100について説明した。なお、上述した実施形態はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、モータ31の出力を軸変換部40、第1ギア部50及び第2ギア部60を介して軸部20に伝達する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、たとえば、間にクラッチ部が配置される場合であってもよい。
かかる場合には、例えば、第1ギア部50の代わりに、軸部20側からの外力により所定の閾値以上のトルクが加えられた場合に、トルクの駆動源側への伝達を抑制するクラッチ部が配置される場合であってもよい。
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。