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JP2017520620A - 放射線および化学損傷に対する保護のためのセコイソラリシレジノールジグルコシド(sdg)および関連化合物の使用 - Google Patents

放射線および化学損傷に対する保護のためのセコイソラリシレジノールジグルコシド(sdg)および関連化合物の使用 Download PDF

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JP2017520620A JP2017515874A JP2017515874A JP2017520620A JP 2017520620 A JP2017520620 A JP 2017520620A JP 2017515874 A JP2017515874 A JP 2017515874A JP 2017515874 A JP2017515874 A JP 2017515874A JP 2017520620 A JP2017520620 A JP 2017520620A
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Abstract

本発明は、(S,S)−SDG、(R、R)−SDG、(S、R)−SDG、(R、S)−SDG、SDG、SECO、EL、ED、これらの類似体、これらの立体異性体およびその他の関連分子を使用する治療および予防方法を使う、放射線防護および化学防御のための組成物および方法を提供する。それを必要としている対象中で生体分子、細胞、または組織を放射線損傷から保護する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。【選択図】図12

Description

政府の権利
本発明は、その一部が、米国国立衛生研究所(NIH)により授与された認可番号R01(CA133470)、1P30ES013508−02、RC1AI081251および5−P30−CA−016520−34S2の下に政府支援を得てなされたものである。政府は本発明に対し一定の権利を有する。
発明の分野
セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの立体異性体、これらの代謝物、およびこれらの類似体を使う、発癌性物質誘発性肺癌および中皮腫からまたは次亜塩素酸イオンからなどの、放射線防護および放射線緩和ならびに化学防御のための組成物および方法が提供される。
電離放射線は、生命体中で広範囲の有害作用を生じる。人は、職業災害として、診断および治療上のX線検査手順中に、電子機器使用時に、原子力事故のバックグラウンドから、航空・宇宙旅行中に、ならびに太陽光への長期の曝露(例えば、日光浴する人または屋外作業者)から、放射線に曝される。天然放射線への暴露は、多くの形態で発生する。空気、水、および土壌などの天然資源は、天然の放射線放出物質(放射性核種)と接触する際に汚染されることがあり、ラドンはこのようなよくある天然放射線源の1つである。加えて、現在の地球規模の発展によって、多くの人々を致死量の放射線に曝す可能性がある危険な手段としてのテロリズムが定着してしまった。したがって、放射線に曝される前に、または曝されている間に投与可能な薬剤(すなわち、放射線防護剤)、および、放射線被曝後の治療薬としての薬剤(すなわち、放射線緩和剤)を見つけることは、非常に重要である。
さらに、肺癌は、米国での癌死亡率の主要な原因である。新規の標的治療薬、改善された腫瘍進行度診断技術および外科的手法、ならびに、局所的に進展した肺癌のための併用化学放射線療法の利用の増加にもかかわらず、全体の死亡率の低下は最小限にとどまっている(Tan & Spivack(2009)Lung Cancer 65:129−137)。癌の化学防御は、悪性病変の発生の前に、発癌のプロセスを防ぐ、抑制する、または逆転させるように設計された特異的な天然のまたは合成の薬剤を用いる食餌療法および薬理学的介入の使用と定義されている(Hong & Sporn,(1997),Science 278:1073−1077)。 肺癌化学防御に対する1つの戦略は、解毒第2相酵素の発現上昇を介する、タバコの、環境の発癌性物質およびその他の発癌性物質の代謝および体内動態を調節する薬剤の使用に的を絞っている。多くの合成のおよび天然の化合物が第2相酵素の発現を誘発すると知られている。Nrf2/ARE調節第2相酵素の誘導が発癌性物質に対する感受性を下げるために極めて効果的な戦略であることを裏付ける、多くの報告がなされている。我々は、亜麻仁(FS)およびその主要リグナンであるSDG(両方とも、天然物質の濃縮および合成により得られる)が、化学的発癌性物質誘発性肺癌のマウスモデルにおいて効果的な肺癌化学防御剤であることを示すデータを保持している。
肺癌の約85%は喫煙が原因である。タバコの煙中の主要な肺発癌性物質は、ベンゾ[a]ピレン(BaP)に代表される多環式芳香族炭化水素である。よりよい治療薬が開発されるまで、死亡を減らすために最も有望なことは、健診、禁煙、または化学防御による予防であろう。化学防御剤は、暴露されているが比較的健康な多数の対象に長期間投与する必要がある。化学防御剤は、安全、非毒性、美味で、理想的には、手頃な価格である必要がある。多くの化学防御剤が肺癌の分野で研究されてきたが、これらの基準を満たすものはない。最も有望な手法の1つは、第2相抗酸化剤および解毒酵素の発現上昇である。都合の悪いことに、現在まで患者で試験されたオルチプラズまたはスルホラファンなどの第2相酵素活性化剤は、受け入れ難いほど有毒であることがわかった(Pendyala et al.(2001).Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 10:269−272)。したがって、タバコの煙中の肺発癌性物質により誘発される酸化ストレスおよびDNA損傷の予防に効果的な、安全で、非毒性の化学防御剤がどうしても必要とされている。
別のよく知られた環境発癌物質はアスベストであり、これは、断熱用に商業的に使用される一群の天然の水和繊維状ケイ酸塩繊維を指す。動物モデルおよび患者の両方において、アスベスト繊維の吸入が、悪性の中皮腫(MM)および肺癌などの腫瘍疾患(Carbone & Yang(2012).Clin Cancer Res 18:598−604;Neri et al.(2012).Anticancer Res 32:1005−1013)、ならびに肺線維症に繋がり得ることが明確に立証されている。MMは、胸膜および腹膜の中皮細胞から生じる極めて侵襲性の強い癌で、約1年の生存期間中央値である(Sterman et al.(2005).Clin Cancer Res 11,7444−7453;Sterman et al.(1999).Chest 116,504−520;Benard et al.(1999).J Nucl Med 40,1241−1245)。非常に初期の疾患での手術以外に、現在の療法では治癒しない(Sterman & Albelda(2005).Respirology 10,266−283)。現在、MMにより米国で年間約3,000人が死亡し、西ヨーロッパでさらに年間5,000人が死亡している。
アスベストの使用は多くの欧米諸国で制限されているが、世界中の多くの国で未だに使用されており、2008年に2百万トンを超える量が採掘されたと推定されている(Survey,B.G.(2010).World Mineral Production 2004−08.Nottingham,UK,British Geological Survey)。したがって、ほとんど予防策が採用されないでアスベストの使用が増加している第三世界(特にインド)において、MMの症例が劇的に増加する可能性がある。しかし、先進国においても、重大な曝露が未だ存在する。これらには、既存のアスベスト(すなわち、鉛管、配管、絶縁体、絶縁体除去、など)ならびにスーパーファンド(放置された有害産業廃棄物の撤去のための基金)アスベスト有害廃棄物処理場などに作業者を暴露する多くの種類の職業が含まれる。環境曝露および家庭内曝露も存在する。例えば、鉱業またはアスベスト工場が閉鎖された地域でのMMのリスクの増加がある。
アスベストと癌との間の関連における重要な問題は、吸入されたアスベスト繊維が肺中に極めて長期間残存し、それにより、患者が曝露から離れたとしても、連続的な損傷を生じることである。この長期の潜伏期(30〜50年にもなることも多い)のために、過去に暴露された個人は、一生を通してMMおよび他の癌のリスクが高いままである。
癌の化学防御は、発癌の開始期または新生細胞の癌への進行のいずれかを防止、停止、または逆転させることを目的とする。この定義は単純に聞こえるが、効果的な化学防御剤を見つけることは非常に困難であった。第1に、発癌性物質が癌を誘発する機序は通常、複数の機序を含み、効力の達成を困難にし、複数の活性を有する薬剤を必要とする。第2に、この薬剤は、健康であるが危険な状態にある個人の大きな集団中の少数の腫瘍を防ぐために使用されるので、極めて非毒性で、耐容性良好で、かつ手頃な価格である必要がある。
したがって、発癌性物質または化学兵器剤、塩素および次亜塩素酸イオンならびにそのほかの有害な毒物などの他の有害な化学薬品への暴露の前に、または暴露中に投与可能な薬剤(すなわち、化学防御剤)を見つけることも極めて重要である。
Tan & Spivack(2009)Lung Cancer 65:129−137 Hong & Sporn,(1997),Science 278:1073−1077 Pendyala et al.(2001).Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 10:269−272 Carbone & Yang(2012).Clin Cancer Res 18:598−604 Neri et al.(2012).Anticancer Res 32:1005−1013 Sterman et al.(2005).Clin Cancer Res 11,7444−7453 Sterman et al.(1999).Chest 116,504−520 Benard et al.(1999).J Nucl Med 40,1241−1245 Sterman & Albelda(2005).Respirology 10,266−283 Survey,B.G.(2010).World Mineral Production 2004−08.Nottingham,UK,British Geological Survey
一態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、有害な放射線曝露への曝露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、放射線に暴露されたことのあるまたは暴露されるであろう対象中で放射線損傷を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分はセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、偶発的放射線曝露から生じる放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、老化の原因となる放射線損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、天然および合成両方由来の化学発癌性物質および毒物への暴露から生じる放射線損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、癌処置のための放射線療法から生じる放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を上記対象に投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、放射線損傷は偶発的放射線曝露から生じる。いくつかの実施形態では、放射線損傷は、癌(例えば、肺癌)処置のための放射線療法から生じる。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織に対する放射線誘発性損傷を予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、またはその代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織に対する放射線誘発性損傷を予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、細胞の放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を上記細胞と接触させることを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、天然および合成の両方由来化学発癌性物質および毒物への有害な暴露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子を、天然および合成両方由来の化学発癌性物質および毒物に対する偶発的曝露から生じる発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、肺癌または中皮腫の原因となる天然および合成両方由来の化学発癌性物質および毒物による放射線損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記生体分子、細胞、または組織を有効量の生理活性成分と接触させることを含む。上記生体分子、細胞、または組織との接触は、天然および合成の両方由来化学発癌性物質および毒物への有害な暴露の前の、その間の、およびその後の接触を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことのあるまたは暴露されるであろう対象中で発癌性物質誘発性癌に起因する発癌性物質誘発性損傷、悪性転換または癌発生を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、1種または複数種の発癌性物質に暴露された対象を発癌性物質誘発性癌から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、天然および合成の両方由来化学発癌性物質および毒物への有害な暴露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、次亜塩素酸イオンに暴露されたことのある、または暴露されるであろう対象中で次亜塩素酸イオン誘発性損傷を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法に関し、この方法は、次亜塩素酸イオンに暴露された、または暴露が想定される上記生体分子、細胞、または組織を有効量の生理活性成分と接触させることを含む。上記生体分子、細胞、または組織との接触は、天然および合成の両方由来化学発癌性物質および毒物への有害な暴露の前の、その間の、およびその後の接触を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、前述の方法の1つで使用するための組成物に関する。
別段に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載例および図面から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好適実施形態を示してはいるものの、実例として与えられているにすぎず、この詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内での様々な変更および修正が当業者には明らかであることは理解されたい。また、実施形態が本発明の異なる態様の下で記載されている場合であっても、適切な場合にはいつでも、本発明のいずれの実施形態も1種または複数種の本発明のその他の実施形態と組み合わせることができることも意図されている。
A−B。プラスミド(pBR322)DNA弛緩に対するγ線量増加の効果。スーパーコイル(SC)はコンパクト型を表す。オープンコイル(OC)型は、弛緩型または損傷型のプラスミドを表す。(A)−スーパーコイル(SC)型は、下側の明瞭なバンド(3,000bpの位置の)であり、オープンコイル(OC)型は上側の明瞭なバンドである。レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理プラスミドDNA、レーン4および5−10Gyに暴露したプラスミドDNA、レーン6および7−25Gyに暴露したプラスミドDNA、レーン8および9−50Gyに暴露したプラスミドDNA。(B)−SCおよびOC型が、全プラスミドDNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表されている。p<0.05を有意と見なした。*および**は、それぞれ、無処理SCおよびOC型に比べた場合に有意差があることを示す。 A−I。γ線誘発性プラスミド(pBR322)DNA弛緩に対する合成SDG(S、S)、SDG(R、R)および市販SDGの濃度増加の効果。全試料を25Gyのγ線量に暴露した。SDG濃度は25、50、100および250μMであった。図(A)、(D)、および(G)−25、50、100および250μMのSDG(S、S)、SDG(R、R)およびSDG(市販)の存在下で25Gyに暴露後のプラスミドDNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理プラスミドDNA、レーン4および5−25μM、レーン6および7−50μM、レーン8および9−100μM、ならびにレーン10および11−250μM SDG。図(B)、(E)および(H)−SCおよびOC型が、全プラスミドDNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、それぞれ、無処理SCおよびOC型に比べた場合に有意差があることを示す。**および##は、SDG処理なしで25Gyに暴露した試料に比べた場合に有意差があることを示す。図(C)、(F)および(I)では、プラスミドDNA弛緩のSDG依存的抑制が示されている。EC50値は曲線の下に示す二次方程式から決定した。 A−B。仔ウシ胸腺のDNA断片化に対するγ線量増加の効果。γ線へのDNA暴露により、小分子量断片が生成される。小分子量断片はより高い分子量のDNAより速く動く。高分子量DNA(>6,000bp)と比較した低分子量DNA断片(<6,000bp)の密度の測定は、放射線誘発性損傷の程度を反映する。(A)レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理仔ウシ胸腺DNA、レーン4および5−25Gyに暴露したDNA、レーン6および7−50Gyに暴露したDNA。(B)−高および低分子量DNA型が、全DNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、それぞれ、無処理に比べた場合に有意差があることを示す。 A−F。γ線誘発性仔ウシ胸腺DNA断片化に対する合成SDG(S、S)、SDG(R、R)および市販SDGの濃度増加の効果。全試料を50グレイのγ線量に暴露した。SDG濃度は25、50、100および250μMであった。図(A)、(C)、および(E)−25、50、100および250μMのSDG(S、S)、SDG(R、R)およびSDG(市販)の存在下で50Gyに暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−25μM、レーン6および7−50μM、レーン8および9−100μM、ならびにレーン10および11−250μM SDG。図(B)、(D)および(F)−高および低分子量DNA型が、全DNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は無処理DNAに比べた場合に有意差があることを示す。#は、SDG処理なしで、50Gyに暴露した試料に比べた場合に有意差があることを示す。 A−F。γ線誘発性仔ウシ胸腺DNA断片化に対する、非常に低濃度の合成SDG(S、S)、SDG(R、R)および市販SDGの効果。全試料を50Gyのγ線量に暴露した。SDG濃度は0.5、1.0、5.0および10μMであった。図(A)、(C)、および(E)−0.5、1.0、5.0および10μMのSDG(S、S)、SDG(R、R)およびSDG(市販)の存在下で50Gyに暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.5μM、レーン6および7−1.0μM、レーン8および9−5.0μM、ならびにレーン10および11−10μM SDG。図(B)、(D)および(F)−高および低分子量DNA型が、全DNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は無処理DNAに比べた場合に有意差があることを示す。#は、SDG処理なしで、50Gyに暴露した試料に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。γ線誘発性仔ウシ胸腺DNA断片化に対するSDG、SECO、EDおよびELの効果。全試料を50Gyのγ線量に暴露した。SDG、SECO、EDおよびELを10μMの濃度で使用した。(A)10μM SDG、SECO、EDおよびELの存在下で50Gyに暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4、5および6−IR 50Gy、レーン7および8−SDG、レーン9および10−SECO、レーン11および12−ED、ならびにレーン13および14−EL。(B)高および低分子量DNA型が、全DNAのパーセントとして表されている。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は無処理DNAに比べた場合に有意差があることを示す。#は、50Gy単独に暴露した試料に比べた場合に有意差があることを示す。 A−C。マウス一次肺細胞の放射線量応答に対するSDG処置の効果。(A)上皮細胞;(B)内皮細胞および(C)WT繊維芽細胞。γ線照射(0、2、4、6、8Gy)の前に、細胞を異なる濃度のSDGで6時間処理し、インキュベートした。12〜14日目に全ての可視コロニーを計数し、生存率を対照値に対し正規化した。データを平均±標準誤差として表した。照射細胞対50μM SDG前処理照射細胞について、**はp≦0.001、*はp≦0.01、#はp≦0.05。 A−B。アルカリコメットアッセイを使いる、肺細胞中での放射線誘発性DNA一本鎖切断(SSB)の評価。(A)2Gy照射した一次肺細胞(上皮、内皮およびWT繊維芽細胞)でのDNA損傷の動力学的評価;それぞれの処理に対し、少なくとも100〜150細胞を計数した。DNA損傷をそれぞれの細胞に対し「テイルモーメント」(テイル中のDNAの量とテイル長の積)を計算することにより評価した。非照射対照対それらのそれぞれの照射細胞について、*はp≦0.001;(B)照射した一次肺細胞に対するSDG(50μM)処理(照射前0、2、4、6時間での処理)の効果。データを平均±標準誤差として表した。照射細胞対SDG前処理照射細胞について、*はp≦0.001、#はp≦0.01。挿入図:一次肺上皮細胞の代表的蛍光顕微鏡写真。細胞をSDG(50μM)で前処理し、γ線(2Gy)に暴露し、アガロース中に埋め込み、溶解し、電気泳動を行い(0.66V/cm、25分)、SYBRグリーンで染色し、蛍光顕微鏡下で可視化した後、コメットテイル形成を調べた。(A)対照細胞、(B)SDG(50μM)、(C)IR(2Gy)に30分の暴露後、(D)SDG(50μM、6時間)で前処理し、照射した細胞。 A−C。照射したマウス一次肺細胞、すなわち、上皮細胞、内皮細胞およびWT繊維芽細胞中でのγ−H2AXフォーカス誘導の蛍光評価。細胞をSDG(50μM)で6時間処理し、γ線照射(2Gy)した。所望の時間間隔で細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄して、γ−H2AX抗体で検出し、細胞核をDAPIを使って対比染色した。細胞を蛍光顕微鏡下で可視化した。全細胞(青)、γ−H2AX陽性細胞(緑)を視野毎に計数し、γ−H2AX陽性細胞のパーセンテージを計算した。それぞれの処理毎に少なくとも500細胞を計数し、実験を2回行った。データを平均±標準誤差として表した。照射細胞対SDG前処理照射細胞について、*はp≦0.05、**はp≦0.005。 マウス肺上皮細胞でのγ−H2AXフォーカス(緑)の免疫蛍光法可視化の代表的パネル。細胞をSDGで6時間前処理後、γ線照射(2Gy)し、さらに30分インキュベートした。細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、γ−H2AX抗体で検出した。DNAをDAPIで対比染色した(青)。画像は蛍光顕微鏡を用いて取得した。 A−C。照射したマウス一次肺細胞におけるγ−H2AXフォーカス誘導のフローサイトメトリー(FACS)確認。一次肺細胞、すなわち、上皮細胞(A)、内皮細胞(B)およびWT繊維芽細胞(C)をSDG(50μM)で6時間処理し、γ線照射(2Gy)した。所望の時間間隔で細胞をFACS分析用に処理した。Summit softwareを使ってデータを定量化し、平均±標準誤差として表した。照射細胞対SDG前処理照射細胞について、*はp≦0.05、**はp≦0.01。 A−C。一次肺細胞における放射線誘発性アポトーシス死の評価。照射一次肺細胞、すなわち、上皮細胞(A)、内皮細胞(B)およびWT繊維芽細胞(C)に対するSDG(50mM)前処理(6時間)の効果の定量評価。細胞を固定し、DAPIで染色して蛍光顕微鏡下での形態学的分析のために可視化した。それぞれの処理毎に、5つの異なる視野から少なくとも500細胞を計数し、アポトーシス細胞のパーセンテージを計算した。実験を2回行った。データを平均±標準誤差として表した。照射細胞対SDG前処理照射細胞について、*はp≦0.05、**はp≦0.005。 A−E肺上皮細胞におけるアポトーシスの制御因子に与えるSDG処理の効果の評価。マウス一次肺細胞(上皮細胞)をSDG(50μM)で6時間処理した後、2Gyに暴露した。インキュベーション後、6、24、および48時間目に細胞を採取した。所望の時間間隔で全RNAを上皮細胞から単離し、定量的リアルタイムRT−PCR分析によりBaxおよびBcl−2遺伝子発現を評価した(AおよびB)。分析を3回行い、遺伝子発現を18SリボソームRNAに対し正規化した。BaxおよびBcl−2タンパク質レベルをウェスタンブロット分析により評価した。代表的画像(C)およびβ−アクチンに対し正規化したデンシトメトリー分析(DおよびE)。データを平均±標準誤差で表した。SDG処理細胞またはSDG+IR処理細胞に比較したIR暴露細胞について、*はp≦0.05、**はp≦0.01。 A−C。活性カスパーゼ3および切断PARPのレベルの放射線誘発性の上昇に対するSDGの効果。マウス一次肺細胞(上皮細胞)をSDG(50μM)で6時間処理した後、2Gyに暴露した。照射後、6、24、および48時間目に細胞を採取した。切断カスパーゼ3および切断PARPタンパク質レベルをウェスタンブロット分析により評価した。(A)代表的画像および(BおよびC)β−アクチンに対し正規化したデンシトメトリー分析。分析は2回繰り返して行い、データを平均±標準誤差で表した。SDG処理細胞に比較したIR暴露細胞について、*はp≦0.05、**はp≦0.01。 A−B。SDGは次亜塩素酸イオンを除去する。図15Aは、APFおよびHPF蛍光のClO依存的な増大を示す。図15Bは、SDGによるClOの除去作用を示す。図15Cは、合成SDGジアステレオマーSDG(S,S)およびSDG(R,R)の除去効果を示す。全ての試料を2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 SDGは次亜塩素酸イオンを除去する。図15Aは、APFおよびHPF蛍光のClO依存的な増大を示す。図15Bは、SDGによるClOの除去作用を示す。図15Cは、合成SDGジアステレオマーSDG(S,S)およびSDG(R,R)の除去効果を示す。全ての試料を2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。SDGはγ線誘発による次亜塩素酸塩生成を排除する。図16AおよびBは、γ線誘発によるAPFおよびHPF蛍光増加を示す。図16CおよびDは、増加する放射線量での、APFまたはHPFを含む燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中の次亜塩素酸塩の生成に対するSDGの効果を示す(図15の凡例を参照)。図16E、FおよびGは、タウリンのγ線誘発性塩素化を示す。図16Eは、タウリンの次亜塩素酸塩依存的な塩素化を示す。図16Fは、全ての実験条件に対するタウリンクロラミンの吸光度を示す。図16Gは、図16Fと同様の各種条件下での次亜塩素酸塩濃度を示す。図16A〜Eに対しては、全ての試料を2回繰り返して実験し、図16FおよびGに対しては、全ての試料を4回繰り返して実験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 C−D。SDGはγ線誘発による次亜塩素酸塩生成を排除する。図16AおよびBは、γ線誘発によるAPFおよびHPF蛍光増加を示す。図16CおよびDは、増加する放射線量での、APFまたはHPFを含む燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中の次亜塩素酸塩の生成に対するSDGの効果を示す(図15の凡例を参照)。図16E、FおよびGは、タウリンのγ線誘発性塩素化を示す。図16Eは、タウリンの次亜塩素酸塩依存的な塩素化を示す。図16Fは、全ての実験条件に対するタウリンクロラミンの吸光度を示す。図16Gは、図16Fと同様の各種条件下での次亜塩素酸塩濃度を示す。図16A〜Eに対しては、全ての試料を2回繰り返して実験し、図16FおよびGに対しては、全ての試料を4回繰り返して実験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。SDGはγ線誘発による次亜塩素酸塩生成を排除する。図16AおよびBは、γ線誘発によるAPFおよびHPF蛍光増加を示す。図16CおよびDは、増加する放射線量での、APFまたはHPFを含む燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中の次亜塩素酸塩の生成に対するSDGの効果を示す(図15の凡例を参照)。図16E、FおよびGは、タウリンのγ線誘発性塩素化を示す。図16Eは、タウリンの次亜塩素酸塩依存的な塩素化を示す。図16Fは、全ての実験条件に対するタウリンクロラミンの吸光度を示す。図16Gは、図16Fと同様の各種条件下での次亜塩素酸塩濃度を示す。図16A〜Eに対しては、全ての試料を2回繰り返して実験し、図16FおよびGに対しては、全ての試料を4回繰り返して実験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 F−G。SDGはγ線誘発による次亜塩素酸塩生成を排除する。図16AおよびBは、γ線誘発によるAPFおよびHPF蛍光増加を示す。図16CおよびDは、増加する放射線量での、APFまたはHPFを含む燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中の次亜塩素酸塩の生成に対するSDGの効果を示す(図15の凡例を参照)。図16E、FおよびGは、タウリンのγ線誘発性塩素化を示す。図16Eは、タウリンの次亜塩素酸塩依存的な塩素化を示す。図16Fは、全ての実験条件に対するタウリンクロラミンの吸光度を示す。図16Gは、図16Fと同様の各種条件下での次亜塩素酸塩濃度を示す。図16A〜Eに対しては、全ての試料を2回繰り返して実験し、図16FおよびGに対しては、全ての試料を4回繰り返して実験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。次亜塩素酸塩誘発性の仔ウシ胸腺DNA損傷。図17AおよびCは、HOClへの暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。図17BおよびDは、高および低分子量DNA断片を全DNAのパーセントとして示す。図17EおよびFは、プラスミドDNAへの次亜塩素酸塩誘導性損傷に対するSDGの効果を示す。図17Eは、HOClへ暴露後のプラスミドDNAの代表的アガロースゲルを示す。図17Fは、全プラスミドDNAのパーセントとして表されるSCおよびOC型を示す。図17Aでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.1mM、レーン6および7−0.2mM、レーン8および9−0.4mM、レーン10および11−0.5mM、ならびにレーン12および13−0.6mM ClOである。図17Cでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.5mM HOCl、レーン6および7−0.5mM HOCl+SDG(市販)1μM、レーン8および9−0.5mM HOCl+SDG(S、S)1μM、レーン10および11−0.5mM HOCl+SDG(R、R)1μM、レーン12および13−0.5mM HOCl+ケルセチン1μM、ならびにレーン14および15−0.5mM HOCl+シリビニン1μMである。図17Eでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−4.5mM HOCl、レーン6および7−4.5mM HOCl+SDG 25μMである。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 C−D。次亜塩素酸塩誘発性の仔ウシ胸腺DNA損傷。図17AおよびCは、HOClへの暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。図17BおよびDは、高および低分子量DNA断片を全DNAのパーセントとして示す。図17EおよびFは、プラスミドDNAへの次亜塩素酸塩誘導性損傷に対するSDGの効果を示す。図17Eは、HOClへ暴露後のプラスミドDNAの代表的アガロースゲルを示す。図17Fは、全プラスミドDNAのパーセントとして表されるSCおよびOC型を示す。図17Aでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.1mM、レーン6および7−0.2mM、レーン8および9−0.4mM、レーン10および11−0.5mM、ならびにレーン12および13−0.6mM ClOである。図17Cでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.5mM HOCl、レーン6および7−0.5mM HOCl+SDG(市販)1μM、レーン8および9−0.5mM HOCl+SDG(S、S)1μM、レーン10および11−0.5mM HOCl+SDG(R、R)1μM、レーン12および13−0.5mM HOCl+ケルセチン1μM、ならびにレーン14および15−0.5mM HOCl+シリビニン1μMである。図17Eでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−4.5mM HOCl、レーン6および7−4.5mM HOCl+SDG 25μMである。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 E−F。次亜塩素酸塩誘発性の仔ウシ胸腺DNA損傷。図17AおよびCは、HOClへの暴露後の仔ウシ胸腺DNAの代表的アガロースゲルスキャンを示す。図17BおよびDは、高および低分子量DNA断片を全DNAのパーセントとして示す。図17EおよびFは、プラスミドDNAへの次亜塩素酸塩誘導性損傷に対するSDGの効果を示す。図17Eは、HOClへ暴露後のプラスミドDNAの代表的アガロースゲルを示す。図17Fは、全プラスミドDNAのパーセントとして表されるSCおよびOC型を示す。図17Aでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.1mM、レーン6および7−0.2mM、レーン8および9−0.4mM、レーン10および11−0.5mM、ならびにレーン12および13−0.6mM ClOである。図17Cでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−0.5mM HOCl、レーン6および7−0.5mM HOCl+SDG(市販)1μM、レーン8および9−0.5mM HOCl+SDG(S、S)1μM、レーン10および11−0.5mM HOCl+SDG(R、R)1μM、レーン12および13−0.5mM HOCl+ケルセチン1μM、ならびにレーン14および15−0.5mM HOCl+シリビニン1μMである。図17Eでは、レーン1−1kb DNA標準ラダー、レーン2および3−無処理DNA、レーン4および5−4.5mM HOCl、レーン6および7−4.5mM HOCl+SDG 25μMである。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、無処理対照に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。2−アミノプリン(2−AP)の次亜塩素酸塩誘発性の修飾に対するSDG(処理前および処理後)の効果。図18Aは、全条件に対する代表的スペクトルを示す。図18Bは、図18Aと同様の異なる条件下での374nmにおける蛍光を示す。図18Cは、SDGによる%保護を示す。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、それぞれ、無処理2−AP対照および処理に比べた場合に有意差があることを示す。 2−アミノプリン(2−AP)の次亜塩素酸塩誘発性の修飾に対するSDG(処理前および処理後)の効果。図18Aは、全条件に対する代表的スペクトルを示す。図18Bは、図18Aと同様の異なる条件下での374nmにおける蛍光を示す。図18Cは、SDGによる%保護を示す。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、それぞれ、無処理2−AP対照および処理に比べた場合に有意差があることを示す。 A−B。SDGは2−アミノプリン(2−AP)のγ線誘発性修飾を防ぐ。図19Aは、全条件に対する代表的スペクトルを示す。図19Bは、374nmでの蛍光を示す。全ての試料を各条件で2回試験した。データは、平均±標準偏差として表した。p<0.05を有意と見なした。*および#は、それぞれ、無処理2−AP対照および処理に比べた場合に有意差があることを示す。 ヌクレオベース塩素化からのDNA保護におけるSDGの作用に関して提案される機序。 亜麻仁およびそのリグナンによる化学防御の機序。SDGは、多段階の発癌プロセスを抑制することにより、タバコおよびその他の環境発癌物質に起因する肺腫瘍形成を軽減する。我々は、リグナンSDGが、Nrf2調節第2相解毒経路の調節、およびおそらくその他の機序を介して、両方の動物モデルにおいて、化学防御活性を有することを示す証拠を提供する。我々は、SDGの保護作用が、直接的ROS除去作用および/または間接的抗酸化/抗炎症特性、ならびに発癌性物質毒性およびDNA損傷の低減により媒介されることを裏付けるデータをさらに提供する。 SDGは、細胞中のベンゾアルファピレンにより誘発されるDNA酸化損傷を減らす。SDG(10μM)を、25μMのタバコおよび環境由来の発癌物質ベンゾアルファピレン(BaP)に暴露したヒト上皮細胞(A549)に加え、質量分析を使って、8−オキソ−7,8−ジヒドログアニン(8−オキソ−dGuo)の存在により示される、DNAに対する酸化損傷を検出した。SDGは、発癌性物質曝露後の3および6時間でDNA損傷を低減化した。 細胞中の発癌性物質ベンゾアルファピレン誘発性ROSを示す。レドックス感受性蛍光染料により検出されるように、BaPへのマウス上皮細胞の暴露により、有害な活性酸素種(ROS)が誘導される。発癌性物質への暴露後、早くも2時間で、蛍光強度の明確な増加により細胞中でのROSの生成が示される。 SDGは発癌性物質曝露によるROS生成を防ぐ。マウス上皮細胞を10または20μMのBaPおよび増加する濃度のSDG(0、0.1、0.5、1、5μM SDG)に暴露し、2時間後(図23から妥当と判断された時間)にROSを検出した。SDGは有害なROSを無視できるレベルまで除去した。 SDGはBaPに暴露されたヒト上皮細胞中で遺伝毒性ストレスを防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、p53タンパク質のレベルの増加により示される遺伝毒性ストレスを誘発する。これは、5、10、25および50μMの濃度でのSDGの存在により、用量依存的に軽減される。 SDGは、BaPに暴露されたヒト上皮細胞中で酸化的DNA損傷を防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、二重鎖DNA切断のマーカーであるγ−H2AXのレベルの増加で示される、酸化的DNA損傷を誘発する。これは、5、10、25、50および100μMの濃度でのSDGの存在により、用量依存的に軽減される。 SDGは、BaPに暴露されたヒト上皮細胞中でDNA付加物形成を防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、DNA付加物の形成を誘発する。DNA付加物は発癌性物質に共有結合されたDNAの断片であり、悪性病変の発生に直接関連する。DNA付加物レベルは、単独または組み合わせて加えられるSDGまたはその代謝物EDおよびELの存在により低減される。 化学的発癌性物質誘発性の肺腫瘍のマウスモデル。マウス(A/J系統)に、タバコおよび環境由来の発癌物質BaPの4回の腹腔内注射(週1回)を1mg/Kg用量で行う。マウスの亜麻仁またはリグナン食餌を曝露時に開始する。曝露後の種々の時間にマウスを評価し、腫瘍量、マウスの体重、全体の健康プロファイルを決定する。 亜麻仁はマウス中の腫瘍量を低減させる:発癌性物質に暴露されたマウス肺の全体の病理学的プロファイル。BaP曝露および食用亜麻仁投与の数ヶ月後のマウス肺の代表的臨床的画像。 亜麻仁はマウス中の腫瘍量を低減させる:発癌性物質に暴露されたマウス肺の病理組織学的プロファイル。BaP曝露および食用亜麻仁投与の数ヶ月後のマウス肺の代表的H&E染色肺切片。対照食餌(上段パネル)または亜麻仁(下段パネル)を摂取したマウスの矢印で示される結節は、亜麻仁摂取マウス中でより小さいように見える。それぞれのパネルは、異なる動物を表す。 A−B。亜麻仁はマウス中の腫瘍量を低減させる:腫瘍量の定量的評価。全体の腫瘍面積(A)および結節サイズ(B)について、画像解析ソフトウエアを使って組織学的マウス肺切片を形態学的に評価した。亜麻仁食餌を摂取したマウス中の腫瘍により占められる肺の面積において有意な減少があった(p<0.03)。同様に、より小さい腫瘍結節サイズの傾向があった。 A−B。亜麻仁はマウス中の腫瘍量を低減させる:腫瘍量の定量的評価。肺当たりの腫瘍結節の全数(A)および肺に浸潤している腫瘍%(B)について、画像解析ソフトウエアを使って組織学的マウス肺切片を形態学的に評価した。肺当たりのより少ない腫瘍結節(A)および亜麻仁補充によるより少ない腫瘍浸潤(B)の傾向が認められた。 亜麻仁補充は、BaPにより誘発される肺癌による消耗作用を防止する。動物重量をBaP曝露後200日にわたり長期的に測定した。亜麻仁食餌を摂取し、BaPに暴露されたマウスは、対照食餌を摂取してBaPに暴露されたマウスより高い重量を示した。 実施例5用の実験スキーム。 哺乳類リグナン代謝物は、亜麻仁(FS)および亜麻仁リグナン成分(FLC)補充食餌の毎日摂取4日後の血液中で検出できる。特に、液体クロマトグラフィー、タンデム型質量分析(LC/MS/MS)を使って、エンテロジオール(ED)およびエンテロラクトン(EL)が検出できる。食餌は、2種の食餌中で検出可能なリグナン代謝物レベルを反映して、同等のリグナンレベルを送達するように設計された。 アスベスト曝露の前に投与された亜麻仁(FS)および亜麻仁リグナン成分(FLC)は、マクロファージ(MF)、好中球(PMN)およびリンパ球(Ly)の数により明らかなように、腹腔内青石綿アスベスト注射により誘発された腹部炎症を低減した。特に、FSおよびFLCは、腹部中でマクロファージの流入を優位に低減した。*はp<0.05。 A−D。マウスはFSおよびFLC食餌を開始し、24時間後にアスベストに暴露した。図34の実験スキームに従って、曝露の3日後に、血漿中(B、D)および腹部中(A、C)のサイトカインレベル(TNFαおよびIL−1β)をELISAを使って決定した。両食餌は、アスベスト曝露により誘発された腹部および体循環中の炎症促進性サイトカインの分泌を妨げる傾向を示した。 A−B。炎症細胞はまた、食餌(A)で低下する傾向を示したが、400および800mgの青石綿アスベストにより誘発されたTNFα(B)およびIL−1β(C)サイトカインレベルは、アスベスト曝露後1日目の食餌中に添加されたFLCにより有意に低減された(*p<0.05)。*pは、アスベストに暴露された対照食餌摂取マウスに比べての有意性を示す。 炎症細胞はまた、食餌(A)で低下する傾向を示したが、400および800mgの青石綿アスベストにより誘発されたTNFα(B)およびIL−1β(C)サイトカインレベルは、アスベスト曝露後1日目の食餌中に添加されたFLCにより有意に低減された(*p<0.05)。*pは、アスベストに暴露された対照食餌摂取マウスに比べての有意性を示す。 マウスにおける種々濃度のSDGの経口胃管投与後のSDGおよび代謝物の血漿中濃度。 マウスにおける種々用量のSDGの経口胃管投与後の肺中の抗酸化酵素遺伝子発現レベル。 マウスにおける100mg/kgのSDGの経口胃管投与後の血漿中(A)および肺組織中(B)のSDGレベルならびに対応するAOE遺伝子発現のレベル(C)の動力学を示す。 実施例7用の実験スキーム。 実施例7用の実験スキーム。 実施例7用の臨床試験設計。 マウスの鼻上皮において、10%FSの給餌により、HO−1およびNQO−1が増加することを示すウェスタンブロット。 40gFS食餌後のヒト頬側上皮細胞でのHO−1遺伝子発現の動力学(*0日目からp<0.05)。 FS摂取の一人の患者中の尿中IsoPレベルの動力学。 FS摂取の健常人中および肺移植患者中の尿中8−オキソ−dGuoレベルの動力学。 SDGまたは亜麻仁食餌はアスベスト誘発性ROS/炎症を減らすと仮定される。 炎症性サイトカイン分泌およびニトロソ化/酸化ストレスを検出するための、細胞のアスベスト曝露の実験計画(模式図)。 SDGは、インビトロでヒト中皮細胞によるアスベスト誘発性ROS分泌を低減する。 培養未処理マクロファージ中のアスベスト誘発性酸化ストレス(ROS放出)の評価:アスベスト曝露後直ちにアスベスト誘発性ROSが生成され、観察期間中持続した。 A−B。アスベストへの暴露の数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、酸化ストレスを低減する。 A−B。アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、ニトロソ化ストレスを低減する。 A−B。アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、炎症性のサイトカイン(IL−1β)分泌を低減する。 A−B。アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、炎症性のサイトカイン分泌(TNF−α)を低減する。 2つのマウスモデルを使うアスベスト誘発性中皮腫におけるSDGの試験:アスベスト曝露後に中皮腫を遺伝的に発症しやすい少なくとも2つのマウスモデルを使って、我々は、マウスにおける単回投与のアスベストに対する亜麻仁およびSDGの急性効果を評価する。また、亜麻仁およびSDGがアスベスト誘発性急速進行型MMの遺伝的モデルにおける腫瘍の発生を抑制するかどうかを試験する。 アスベストに暴露されたMEXTAGマウスに与えられたSDGに富む(35%SDG)FLC食餌は、炎症を低減した。 NF2マウスのアスベスト暴露および亜麻仁/SDGリグナン配合物評価の実験計画。 A−B。アスベスト曝露後のNF2マウスにおける腹部炎症の動力学:炎症細胞の流入は、アスベスト曝露後3日までにピークに達し、9日までに次第に少なくなった。したがって、全てのその後の実験で、3日を炎症評価時点として選択した。 A−B。亜麻仁およびそのSDGに富むリグナン成分は、アスベスト誘発性炎症を低減した(より若齢のマウス):全白血球(A)は、食餌中のFSまたはFLC添加と共に減少したが、有意ではなかった。しかし、細胞間の差異、特にマクロファージレベルを見ると、レベルは、亜麻仁およびSDGリグナン食餌の両方により有意に低減された(B)。 A−C。亜麻仁およびそのSDGに富むリグナン成分は、アスベスト誘発性炎症を低減した(より老齢のマウス):腹部アスベストに暴露された老齢マウス(A)は、ただの300,000細胞/mLに比べて、3,000,000WBC/mLの腹部洗浄液を示す(10倍多い)ように、アスベストに対し、より感受性が高い。結果は、炎症細胞の好中球(B)およびマクロファージ(C)が、若齢マウス中よりも老齢マウス中で両方とも有意に多かったことを示した。 A−B。SDGに富む亜麻仁リグナン抽出物(食餌配合物で投与された)は、老齢マウス中でアスベスト炎症を低減する:雄NF2(129SV)(+/−)マウスに400μgのアスベストを0日目に注射した(腹腔内)。マウスは試験食餌(0%FSまたは10%FLC)をアスベスト曝露の前の週(−7日目)に開始し、アスベスト曝露後3日目に屠殺した。5mL 1xPBSで腹部洗浄(AL)を行った(1mLの腹部洗浄液を遠心分離し、上清を凍結した)。血漿を集めて、−80℃で凍結した。洗浄液中の細胞を評価し、SDGに富む食餌により、全WBCおよび好中球、マクロファージおよび好酸球が全て有意に減少したことを示した。 A−C。SDGに富む亜麻仁リグナン抽出物(食餌配合物で投与された)は、老齢マウス中でアスベスト炎症サイトカイン分泌およびニトロソ化ストレスを低減する:雄NF2(129SV)(+/−)マウスに400μgのアスベストを0日目に注射した(腹腔内)。マウスは試験食餌(0%FSまたは10%FLC)をアスベスト曝露の前の週(7日目)に開始し、アスベスト曝露後3日目に屠殺した。5mL 1xPBSで腹部洗浄(AL)を行った(1mLの腹部洗浄液を遠心分離し、上清を凍結した)。血漿を集めて、−80℃で凍結した。サイトカインのIL1βおよびTNFα、ならびに亜硝酸塩のレベルは、SDGに富む食餌により有意に低減した。
次の詳細な説明では、本発明の完全な理解を可能とするために、多くの具体的詳細が記述される。しかしながら、本発明はこれらの具体的詳細がなくても実施が可能であることは、当業者には理解されよう。その他の場合で、周知の方法、操作、および要素については、本発明を不明瞭にすることを避けるために、詳細には記述していない。
本明細書で提供されるのは、亜麻仁、その生理活性成分、またはその代謝物を用いる、放射線防護および化学防御のための治療的および予防的な方法である。代表的実施形態では、生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの異性体(立体異性体を含む)、またはこれらの組み合わせが含まれる。
本出願の発明者らは、亜麻仁、その生理活性成分、および/またはその分解物または代謝物が、生体分子、細胞、および組織を放射線損傷、次亜塩素酸イオン誘発性損傷、発癌性物質誘発性損傷および悪性病変から保護するのに効果的であることを発見した。したがって、発明者らは、亜麻仁、その生理活性成分、またはその代謝物が、生体分子、細胞、および組織を、放射線損傷、次亜塩素酸イオン誘発性損傷、発癌性物質による損傷および癌発生から保護するために使用され得ることを発見した。
本明細書で提供される方法による放射線防護または放射線緩和を必要としている対象は、潜在的に有害な量の放射線に暴露されるであろう、暴露されている、または暴露されたことのある対象である。このような曝露は、放射線への単回の曝露、周期的曝露、散発性曝露または継続した曝露であってよいことは理解されよう。また、このような放射線曝露には、偶発的曝露、付随的または意図的曝露が含まれることも理解されよう。
本発明の方法による放射線防護または放射線緩和を必要とする可能性のある対象の例としては、治療法の一部として放射線に暴露される患者(例えば、放射線療法を必要とする癌患者)、疾患または状態を診断するために放射線に暴露される対象(例えば、歯のまたは骨のX線を受ける対象、PETスキャン、CTスキャンなどを受ける患者)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法による放射線防護または放射線緩和を必要とする可能性のある対象の例にはまた、彼らの職業またはライフスタイルの選択の結果として放射線に暴露される可能性のある人(例えば、平均放射線レベルよりも高いレベルに暴露される、飛行機のフライトクルーまたはその他の高頻度の航空機利用者、さらには宇宙旅行者;研究室の技術者およびその他の作業者;または電子機器の使用により暴露される人)またはラドンの蓄積に暴露される人(例えば住居または鉱山での蓄積)または太陽光からの天然放射線に暴露される屋外作業者または陽光に曝される人が含まれる。本発明の方法による放射線防護を必要とする可能性があるその他の対象には、漏れまたは放出(例えば、原子炉漏れまたは事故または研究室での放出)、などの放射線に偶発的に暴露される人が含まれる。戦争またはテロリズムの結果として、核弾頭の爆発の結果としての放射線に暴露される人も意図されている。追加の対象には、放射性の物質をまき散らす従来の爆発物の、テロリストによる爆破に曝される人が含まれる。
本明細書で提供される方法による化学防御を必要としている対象は、潜在的に有害な量の発癌性物質またはその他の毒物に暴露されるであろう、現在暴露されている、または暴露されたことのある対象である。このような曝露は、一つのまたはいくつかの合成または天然の発癌性物質またはその他の毒物、例えば、化学兵器剤の組み合わせに対する単回の曝露、周期的曝露、散発性曝露または継続する曝露であってよいことは理解されよう。また、このような曝露には、偶発的曝露、付随的または意図的曝露が含まれることも理解されよう。また、このような曝露は、直接的曝露または間接的暴露であり得ることは理解されよう。例えば、次亜塩素酸イオンへの間接的暴露は、電離放射線への直接的暴露の結果であり得る。
本発明の方法による化学防御を必要とする可能性のある対象の例としては、彼らの職業またはライフスタイル選択の結果として発癌性物質またはその他の毒物に暴露される人(例えば、石油産業の作業者、自動車排出粒子に暴露される料金所係員、研究室技術者およびその他の作業者)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法による化学防御を必要とする可能性があるその他の対象には、飲料水または空気中の発癌性物質(例えば、アスベスト、多環芳香族炭化水素)の漏れまたは放出など、発癌性物質に偶発的に暴露される人が含まれる。嗜癖の結果として発癌性物質に暴露される人(喫煙者)も意図されている。追加の対象には、化学兵器剤などの発癌性物質およびその他の癌促進物質をまき散らすテロリストの行為に曝される人が含まれる。
一態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、有害な放射線曝露への暴露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、放射線に暴露されたことのあるまたは暴露されるであろう対象中で放射線損傷を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、偶発的放射線曝露から生じる放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、老化の原因となる放射線損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、天然および合成両方の、化学兵器剤を含む化学発癌性物質および毒物への暴露から生じる放射線損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、癌処置のための放射線療法から生じる放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を上記対象に投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、放射線損傷は偶発的放射線曝露から生じる。いくつかの実施形態では、放射線損傷は、癌(例えば、肺癌)処置のための放射線療法から生じる。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織に対する放射線誘発性損傷を予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、またはその代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織に対する放射線誘発性損傷を予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、細胞中の放射線損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記細胞を有効量の少なくとも1つの生理活性成分と接触させることを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物への、有害な暴露への暴露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子を、天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物に対する偶発的曝露から生じる発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、肺癌または中皮腫の原因となる天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物による損傷から保護する方法に関する。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、発癌性物質による損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記生体分子、細胞、または組織を有効量の生理活性成分と接触させることを含む。上記生体分子、細胞、または組織との接触は、天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物への、損害を与える暴露の前の、その間の、およびその後の接触を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことのあるまたは暴露されるであろう対象中で発癌性物質誘発性癌に起因する発癌性物質誘発性損傷、悪性転換または癌発生を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、1種または複数種の発癌性物質に暴露された対象を発癌性物質誘発性癌から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その代謝物を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、それを必要としている対象中で生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の亜麻仁、その生理活性成分、その分解物または代謝物を投与することを含む。上記対象に対する投与は、天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物への、有害な暴露への暴露の前の、その間の、およびその後の投与を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、次亜塩素酸イオンに暴露されたことのあるまたは暴露されるであろう対象中で次亜塩素酸イオン誘発性損傷を処置または予防する方法に関し、この方法は、上記対象に有効量の少なくとも1つの生理活性成分を投与することを含み、上記生理活性成分は、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む。
別の態様では、本発明は、生体分子(核酸のような遺伝物質、タンパク質または脂質など)、細胞、または組織を、次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法に関し、この方法は、次亜塩素酸イオンに暴露されたまたは暴露が想定される上記生体分子、細胞、または組織を有効量の生理活性成分と接触させることを含む。上記生体分子、細胞、または組織との接触は、天然および合成両方の化学発癌性物質および毒物への、有害な暴露への暴露の前の、その間の、およびその後の接触を包含する。暴露前、その間およびその後の時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月さらには数年であってよい。生理活性成分には、セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせが包含される。
別の態様では、本発明は、前述の方法の1つで使用するための組成物に関する。
亜麻仁、その生理活性成分、およびその代謝物は、当技術分野において既知であり、米国特許出願公開第2010/0239696号、同第2011/0300247号、および同第2014/0308379号、ならびに国際公開第2014/200964号に記載されている。これらの公開特許のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
亜麻仁中で見出される主要リグナンは、2,3−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシベンジル)ブタン−1,4−ジオール(セコイソラリシレジノールまたはSECO)であり、これは植物中でその天然の状態でコンジュゲートのセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)として貯蔵される。SDGは、ヒトの腸中でエンテロジオール(ED)、およびエンテロラクトン(EL)へと代謝される。エンテロジオールおよびエンテロラクトンの合成類似体が知られている(例えば、Eklund et al.,Org.Lett.,2003,5:491を参照されたい)。
「分解物」は、SDGなどの分子の、より小さい分子への分解の生成物である。
「代謝物」は、代謝または代謝プロセスにより生成される物質である。例えば、SDGの代謝物は、ELまたはEDである。
当業者なら、代謝物が、天然代謝物の化学的に合成された等価物であってもよいことを理解するであろう。
「類似体」は、その構造が別の化合物の構造に関連する化合物である。類似体は合成類似体であってもよい。
「成分」または「構成成分」は、混合物または化合物中の要素または構成要素である。
「生成物」は、化学反応から生じる物質である。
「抽出物」は、例えば、亜麻仁由来の、物質の有効成分または濃縮エッセンスを含む調製物である。
「医薬組成物」は、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤を伴う、有効量の有効成分、例えば、(S,S)−SDG、(R、R)−SDG、メソSDG、SDG、SECO、EL、EDおよびこれらの類似体を指す。「治療有効量」は、所定の状態および投与療法に対し治療効果をもたらす量を指す。
本明細書で記載の組成物は、「治療有効量」を含んでよい。「治療有効量」は、必要な服用量で必要な期間にわたり、所望の治療結果を達成するのに効果的な量を指す。治療有効量は、病態、年齢、性別、および個人の体重、ならびに個人において所望の反応を誘発する組成物の能力などの因子に応じて変わり得る。また、治療有効量は、治療上有益な効果が、分子の有毒または有害な作用を上回る量である。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という語句は、化合物、物質、組成物、キャリア、および/または剤形を指し、これらは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに適しており、妥当なベネフィットリスク比に見合っている。
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に安全で、毒性がなく、かつ生物学的にもその他の観点でも不適切ではない、医薬組成物の調製において有用である賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒトへの薬学的使用に許容可能な賦形剤を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、1種または2種以上のこのような賦形剤を含む。
医薬組成物は、経口、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、腟内、腫瘍内、または口腔内などの当業者に既知のいずれかの適切な方法によって対象に投与できる。有効成分を適切なポリマー中に埋め込み、それをその後皮下、腫瘍内、口腔内に挿入する、皮膚に貼付剤として使用する、または膣内に挿入することにより、制御放出も使用できる。医療装置を有効成分でコーティングすることも含まれる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適する形態、すなわち、固形または液状製剤として処方される。適切な固形経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、粒剤、ペレット剤などが含まれる。適切な液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、乳剤、油剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、有効成分は、カプセル中に処方される。この実施形態では、本発明の組成物は、活性化合物および不活性キャリアまたは希釈剤に加えて、その他の賦形剤およびゼラチンカプセルのほかに乾燥剤を含む。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液状製剤の静脈内、動脈内、または筋肉内注射により投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は経口投与用に処方された液状製剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は膣内投与用に処方された液状製剤である。適切な液体製剤には、溶液、懸濁液、分散液、乳剤、油剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は静脈内に投与され、従って、静脈内投与に適する形態に処方される。別の実施形態では、医薬組成物は動脈内に投与され、従って、動脈内投与に適する形態に処方される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は筋肉内に投与され、従って、筋肉内投与に適する形態に処方される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は口腔内に投与され、従って、口腔内投与に適する形態に処方される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は局所的に体表面に投与され、従って、局所投与に適する形態に処方される。適切な局所製剤には、ゲル、軟膏、クリーム剤、ローション、点滴薬、制御放出ポリマーなどが含まれる。局所投与のために、亜麻仁、その生理活性成分、その代謝物が調製され、医薬キャリアを含有してまたは非含有で、生理学的に受容可能な希釈剤中の溶液、懸濁液、またはエマルジョンとして適用される。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、制御放出組成物であり、すなわち、亜麻仁、その生理活性成分、その代謝物が投与後に一定期間にわたり放出される組成物である。制御または持続放出組成物には、親油性貯蔵物(例えば、脂肪酸、ろう、油)中の配合物が含まれる。他の実施形態では、組成物は即効型組成物であり、すなわち、全ての亜麻仁、その生理活性成分、その代謝物が投与後直ちに放出される組成物である。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、1日1回治療量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、2日毎に1回、1週間に2回、1週間に1回、または2週毎に1回投与される。
SDGを抽出し、精製する技術は、当技術分野において既知であり、米国特許第5,705,618号に記載されている。この特許は参照により本明細書に組み込まれる。SDG、その立体異性体および類似体を合成する技術は、Mishra OP,et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2013,(19):5325−5328および国際公開第2014/200964号に記載されている。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される方法で使用するための生理活性成分はまた、当該技術分野において知られているように、哺乳動物の、容易に代謝可能な形態の、エンテロジオール(ED)またはエンテロラクトン(EL)へと直接的に化学合成することもできる。
(S,S)−SDG、(R、R)−SDG、(S,R)−SDG、(R、S)−SDG、メソSDG、SECO、EL、EDまたはこれらの類似体は、0.1ng/kg〜500mg/kgの用量で投与できる。
(S,S)−SDG、(R、R)−SDG、(S,R)−SDG、(R、S)−SDG、メソSDG、SDG、SECO、EL、EDまたはこれらの類似体による処置は、単回投与から数日、数ヶ月、数年、または不定期間にわたる。
本明細書で使用される場合、「処置」は、治療処置または予防または防止処置を指し、その目的は、本明細書に記載のような標的とされる病態または障害を防止するかもしくは和らげること、またはその両方である。したがって、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、例えば、放射線、発癌性物質、毒物または次亜塩素酸イオンへの暴露の前に、対象に投与できる。いくつかの事例では、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、暴露の後に、対象に投与できる。したがって、本明細書に記載の状態を処置することは、対象における状態を予防、阻害、または抑制することを指し得る。
さらに、本明細書で使用される場合、「処置する」および「処置」という用語は、治療的処置、および予防または防止的処置を指し、その目的は、疾患または状態に関連する好ましくない生理的な変化を防止するまたは遅くする(小さくする)ことである。有益な、または望ましい臨床結果としては、検出可能な場合もそうでない場合も含めて、症状の軽減、疾患または状態の程度の減少、疾患または状態の安定化(すなわち、疾患または状態が悪化しない状態)、疾患または状態の進行の遅れまたは緩徐化、疾患または状態の改善または緩和、および疾患または状態の寛解(部分的なまたは全体の)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合の予測生存期間に比べて生存期間を延長することを意味してもよい。処置を必要とする人には、例えば、放射線、発癌性物質、毒物、または次亜塩素酸イオンに既に暴露されたことのある人、ならびに暴露されやすい人または暴露されることが予測される人が含まれる。
いくつかの実施形態では、本明細書で記載の処置および方法および組成物を必要とする対象としては、肺の疾患および障害、例えば喘息、癌、COPD、および中皮腫の患者が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、適する対象には、心血管の障害および状態、皮膚のたるみおよび中枢神経系(CNS)疾患(例えば、アルツハイマー痴呆)などの老化に関連する障害および状態の患者を含めることができる。いくつかの実施形態では、適する対象は、皮膚の障害および状態(例えば、乾癬)の患者、ならびに美容的な皮膚状態(例えば、しわ、および染み)の患者を含んでよい。いくつかの実施形態では、適する対象は、胃腸の障害および状態、例えば、IBDおよびクローン病の患者を含んでよい。いくつかの実施形態では、適する対象は、心血管の障害および状態の患者を含んでよい。いくつかの実施形態では、適する対象は、黒色腫の患者を含んでよい。いくつかの実施形態では、適する対象は、黄斑変性症などの眼疾患の患者を含んでよい。いくつかの実施形態は、適する対象は、癌、例えば、乳癌、前立腺癌および子宮癌の患者を含んでよい。いくつかの実施形態では、適する対象は、認知機能障害およびその他の認知障害の患者を含んでよい。
「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、伴侶動物(例えば、犬、猫、鳥など)、家畜(例えば、牛、羊、豚、馬、家禽など)および実験動物(例えば、ラット、ネズミ、モルモット、鳥など)を含む。ヒトに加えて、対象は、イヌ、ネコ、ブタ、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、水牛、ダチョウ、モルモット、ラット、マウス、トリ(例えば、インコ)およびその他の野生の、家畜化されたまたは商業的に有用な動物(例えば、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥、魚)を含んでよい。「対象」という用語は、すべての点で正常である個体を排除しない。「対象」という用語は、ある状態またはその後遺症に対する治療を必要とするヒトまたはそれらに罹患し易いヒトを含むがこれらに限定されない。
「約(about)」「約(approximately)」という用語は、当業者により定められた特定の値に対する許容可能な誤差範囲内にあることを意味する。この許容可能な誤差範囲は、その値が測定または決定される方法、すなわち、測定システムの制約に依存する部分もあろう。
本発明の好ましい実施形態をより完全に説明するために、以下の実施例を示す。しかし、これらの実施例は、いかなる観点からも、本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
実施例
実施例1
合成(S,S)および(R,R)−セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)は裸のプラスミドDNAおよびゲノムDNAをγ線損傷から保護する。
原子核壊変の結果として、3種類の放射線、すなわち、正電荷を有するアルファ(α)線、負電荷を有するベータ(β)線および電荷を保持しないガンマ(γ)線が生成される。
γ線の場合、電磁波は非常に小さい波長(<0.005nm)を有し、したがって、分子および原子を電離することができる高エネルギーを有する。生物学的系中または溶液中では、電離放射線は水の放射線分解によりヒドロキシルラジカル(・OH)を生成する。これらのヒドロキシルラジカル(・OH)は、脂質、タンパク質およびゲノムDNAなどの細胞成分に対する電離放射線誘発性損傷の主要な発生源である。γ線により生成されるヒドロキシルラジカル(・OH)は、DNA中で単鎖および二重鎖切断を生ずる。(・OH)ラジカルは、デオキシリボースおよびプリンならびにピリミジン基剤からH原子を除去することにより、または塩基の二重結合に付加することにより、DNAを損傷する。これらの反応はDNA鎖の切断を生ずる。
抗酸化特性およびフリーラジカル除去特性を有する化合物は、放射線防護剤として機能でき、放射線誘発性DNA損傷を防ぐことができる。前臨床のおよび臨床試験を実施可能にする大量のセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)を製造するための高コスト、ばらつきおよび難しさに関連して、天然資源からSDGを単離するための抽出、精製および濃縮方法が複雑であるという理由から、SDGを化学的に合成した。天然化合物であるバニリンおよびグルコースを使用して、SDGの2種の鏡像異性体(これらの構造は以下に示す):SDG(S、S)およびSDG(R、R)の合成に成功した(Mishra et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2013,(19):5325)。
Christofidou−Solomidouら、およびその他の研究者による多くの研究で、SDGは強力な抗酸化剤であり、かつ強力なフリーラジカル除去剤であることが示されている。重要なのは、最近の研究で、合成SDG鏡像異性体が強力な抗酸化およびフリーラジカル除去特性を有することが示されたことである(Mishra et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2013,(19):5325−5328)。本実施例では、市販SDGと比較して、合成したSDG鏡像異性体(S,S)−SDGおよび(R,R)−SDGの放射線防護特性を調査し、評価した。プラスミドDNA弛緩アッセイを使って、プラスミドのγ線照射への暴露後にスーパーコイルからオープンコイルへのプラスミドDNA(pBR322)の変換を防止するSDGの能力を測定することにより、ならびにDNAのγ線照射への暴露後にゲノムDNA断片化の抑制を評価することにより、3種の化合物の放射線防護特性を評価した。SDGは、腸内細菌により代謝されて、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)およびエンテロラクトン(EL)を生成する。したがって、ゲノムDNAのγ線照射誘発性断片化に対するこれらのSDG代謝物の効果も評価した。
材料と方法
化学薬品
プラスミドDNA(pBR322)、臭化エチジウム、超高純度10X TAE緩衝液および1kb DNAラダーをInvitrogen(Life Technologies,Carlsbad,CA)から購入した。アガロース(超高純度)および仔ウシ胸腺DNAをSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)(市販)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)およびエンテロラクトン(EL)をChromadex(Irvine,CA)から購入した。
セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)の合成
合成SDG(R、R)およびSDG(S、S)立体異性体を、Mishra et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2013,(19):5325−5328に記載のように合成した。
プラスミドDNAおよび仔ウシ胸腺DNAのγ線への暴露
様々な濃度のSDG(R、R)、SDG(S、S)およびSDG(市販)を含有してまたは非含有でプラスミドDNA(pBR322)または仔ウシ胸腺DNA試料を、Mark1セシウム(Cs−137)照射器(J.L.Shepherd,San Fernando,CA)を使って、pH7.4の燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中で、1.7Gy/分の線量率のγ線に暴露した。
放射線誘発性プラスミドDNA弛緩の測定
放射線誘発性の鎖切断およびスーパーコイル(SC)からオープンコイル(OC)への変換に対する試験化合物の効果を、プラスミドDNA(pBR322)(Life Technologies,Carlsbad,CA)を使って測定した。PBS(pH7.4)中のプラスミドDNA(500ng)を種々の濃度(25〜250μM)のSDG(R、R)、SDG(S、S)およびSDG(市販)と混合し、PBS中で25Gyで照射した。放射線曝露後30分に、試料をローディングダイと混合し、TAE緩衝液(pH8.3)中の100Vでのアガロース(1%)ゲル電気泳動に供した。ゲルを臭化エチジウム(0.5μg/mL)で40分間染色し、20分間洗浄後、UVトランスイルミネーター(Bio−Rad,Hercules,CA)で可視化した。取り込んだゲル画像をスキャンし、オープンコイル(OC)およびスーパーコイル(SC)プラスミドDNAバンドの密度をGel−doc画像解析器プログラムにより決定した。SCおよびOCプラスミドDNAの濃度を全体密度(OC+SC)の%として表した。
放射線誘発性DNA断片化の測定
DNA中の放射線誘発性の鎖切断に対する試験化合物の効果を、仔ウシ胸腺DNA(Sigma,St.Louis,MO)を使って測定した。PBS(pH7.4)中のDNA(500ng)を種々の濃度(25〜250μM)のSDG(R、R)、SDG(S、S)およびSDG(市販)と混合し、50Gyで30分間照射した。第2シリーズの実験を、0.5〜10μMの範囲で濃度を変えて行った。試料をローディングダイと混合し、TAE緩衝液(pH8.3)中の100Vでのアガロース(1%)ゲル電気泳動に供した。ゲルを臭化エチジウム(0.5μg/mL)で40分間染色し、20分間洗浄後、UVトランスイルミネーター(Bio−Rad,Hercules,CA)で可視化した。取り込んだゲル画像をスキャンし、仔ウシ胸腺DNA断片の密度を、Gel−Pro画像解析器プログラム(Media Cybernetics,Silver Spring,MD)により決定した。仔ウシ胸腺DNAの低分子量の(<6,000bp)および高分子量の(>6,000bp)断片の密度を全体密度(低分子量+高分子量)の%として表した。
データ解析
得られたデータは、平均値±標準偏差として表される。データを、Statview Programを使って、ボンフェローニの補正を用いる事後比較による一元配置分散分析(ANOVA)に供した。p値≦0.05を有意と見なした。
結果
プラスミドDNA(pBR322)を使って、合成SDG(R、R)、SDG(S、S)、およびSDG(市販)の放射線防護潜在力を決定した。この調査に使用した放射線防護アッセイは、γ線に暴露後のプラスミドDNAは、非暴露プラスミドDNAより遅く移動するという原理に基づいている。これは単純に、スーパーコイルプラスミドDNAが、アガロースゲル中で、コンパクトサイズであるためにより速く移動するという事実による。比較すると、プラスミドDNA中の放射線誘発による切れ目がスーパーコイルを解きほどき、相対的により大きいサイズのプラスミドを生じ、これはゲル中でより遅い速度で移動する。したがって、スーパーコイルプラスミドDNAと比較して、オープンコイルプラスミドDNAの密度を決定することにより、放射線誘発性損傷の程度が示される。
放射線は線量依存的なSCからOCへのDNAプラスミド変換を生じさせる
有意なDNA損傷を生ずるが、それでも放射線緩和剤を試験するための治療濃度域を可能にする放射線量を選択するために、プラスミドDNAを、10、25および50Gyガンマ線に暴露した。図11Aに示す結果は、OC型プラスミドDNAの放射線量依存的な増加ならびにSC型の放射線量依存的な低下があることを示す。SCおよびOCの分布(図1B)は、SC%が、0、10、25および50Gyで、68.73±2.54%からそれぞれ、50.91±2.31、38.37±3.73および35.66±4.24%(p<0.05)に低下したことを示す。同時に、OC%は、0、10、25および50Gyで、31.26±2.50%からそれぞれ、49.08±2.31%、61.62±3.73%および67.33±4.24%(p<0.05)に増加したことを示す。これらの最初の実験に基づいて、25Gyの放射線量(この線量で、かなりの明確に確認できる損傷が達成された)をその後の実験のために選択して、異なるSDGの放射線防護特性を測定した。
プラスミドDNA弛緩アッセイを用いる合成SDGの放射線防護活性
プラスミドDNAを選択した線量の25Gyのγ線に暴露し(図1参照)、DNA損傷(SCからOCの形成)%抑制を種々の濃度(25〜250μM)でのそれぞれのSDG剤(合成および市販)に対して決定した。
25、50、100および250μMのSDG(S、S)の存在下で25Gyに暴露後のプラスミドDNAの代表的ゲルブロットを図2Aに示し、半定量的濃度分析を図2Bに示し、対照と比較した%抑制を図2Cに示す。興味深いことに、増加する濃度のSDG(S、S)(25、50、100および250μM)の存在下で有意(p<0.05)にかつ用量依存的に、SC型の比率が増加しOC型の濃度が減少した。%抑制プロット(図2C)を使って、EC50値(すなわち、25Gyでのプラスミド弛緩の50%を防止するために必要な有効濃度(EC))をそれぞれの薬剤に対し決定でき、この値はSDG(S、S)の場合、141.77μMである。プラスミドDNA弛緩を防止するためのこの値は、DPPHフリーラジカルを除去するためのEC50値と同等である。これらの結果は、合成SDG(S、S)鏡像異性体の放射線防護特性を実証する。類似の結果を、SDG(R、R)鏡像異性体(図2D〜F)およびSDG(市販)(図2G〜I)について示し、それぞれ、EC50は、127.96μMおよび98.38μMである。プラスミドDNA弛緩を防止するためのこれらの値は、DPPHフリーラジカルを除去するためのそれぞれのEC50値と同等である。これらの結果は、合成SDGおよび市販の天然SDG両方の放射線防護特性を実証する。
放射線は、高分子量から低分子量断片にわたる線量依存的なDNA断片化を生じさせる
放射線は、図3A中のDNAゲルに示すように、DNA断片化の増加を誘発する。サイズに基づいて、仔ウシ胸腺DNA断片を2つの群:高分子量(>6,000bp)サイズおよび低分子量(<6,000bp)サイズに分割した。高分子量および低分子量断片の分布(図3B)は、高分子量DNAの%が88.16±0.50%から、25および50Gyで67.82±7.89および34.94±4.45%(p<0.05)にそれぞれ減少したことを示す。同時に、低分子量断片の比率は11.83±0.50から、25および50Gyで32.17±7.89%および65.05±4.45%(p<0.05)にそれぞれ増加した。結果(図3B)は、高分子量DNA断片の有意な減少および低分子量DNA断片の有意な増加を示し、50GyでのDNAに対する損傷を示す。これらの最初の実験に基づいて、50Gyの放射線量(この線量で、明確な確認可能な仔ウシ胸腺DNA断片化が観察された)を、異なるSDGの放射線防護特性を決定する以降の実験のために選択した。
仔ウシ胸腺DNA断片化アッセイを用いる合成SDGの放射線防護活性
上述のように、仔ウシ胸腺DNAの放射線誘発性断片化を使って、合成SDG(R、R)、SDG(S、S)およびSDG(市販)の放射線防護潜在力を決定した。
高SDG濃度(25〜250μM):図4Aは、25、50、100および250μMのSDG(S、S)の存在下で50Gyに暴露後の、仔ウシ胸腺DNAの代表的DNAゲルを示す。増加する濃度のSDG(S、S)(25、50、100および250μM)の存在下で、放射線曝露後に高分子量DNA型の比率が有意に(p<0.05)増加したが、低分子量断片は減少した。種々の濃度のSDG(S、S)の存在下での高分子量および低分子量DNA型の分布を図4Bに示す。これらの結果は、仔ウシ胸腺ゲノムDNAを用いる我々の合成SDG(S、S)鏡像異性体の放射線防護特性を示す。同様に、図4C〜Dおよび4E〜Fに提示される結果は、合成SDG(R、R)およびSDG(市販)の放射線防護特性をそれぞれ示す。これらの結果は、仔ウシ胸腺ゲノムDNAを用いる合成SDG(R、R)および(S,S)鏡像異性体の放射線防護特性を示す。
DNA保護におけるSDGの下限値をさらに決定するために、0.5〜10μMの範囲で、より低い濃度の全3種のSDGを試験する一連のDNA断片化実験を行った。
低SDG濃度(0.5〜10μM):低濃度のSDG(S、S)、SDG(R、R)およびSDG(市販)で行った実験の結果を、抗酸化およびフリーラジカル除去活性に関するそれらのEC50値と比較して図5に示す。より高いSDG濃度と同様に、仔ウシ胸腺DNA断片化アッセイを使ってこのセクションで示されるこれらの結果は、低濃度であっても、合成SDG(S、S)、およびSDG(R、R)鏡像異性体が強力な放射線防護特性を有することを実証する。
仔ウシ胸腺DNA断片化アッセイを用いるSDG代謝物の放射線防護活性
上述の仔ウシ胸腺DNAの放射線誘発性断片化を用いてSDG代謝物のSECO、EDおよびELの放射線防護潜在力を決定し、SDGと比較した。10μMの濃度のそれぞれの試験薬剤を、有効量の中央値として上で示された前の知見に基づいて、選択した。結果を図6に示す。データは、SDGおよびその代謝物のSECO、ED、ELが、それらの放射線防護特性の点で同等効力であることを示す。
考察
本実施例の結果は、合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体が強力な放射線防護特性を有することを示す。プラスミドDNA(pBR322)を使って決定したこれらの鏡像異性体の放射線防護潜在力は、それらの濃度の増加と共に増加した。これらの合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体は、プラスミドDNAに対する放射線誘発性損傷を、濃度依存的に防いだ。SDGの合成異性体の放射線防護潜在力は、市販SDGと同等であった。合成鏡像異性体SDG(S、S)およびSDG(R、R)はまた、仔ウシ胸腺ゲノムDNAの放射線誘発性DNA断片化も防いだ。試験した最低濃度で、SDG(S、S)およびSDG(R、R)は、仔ウシ胸腺DNAの低分子量断片の放射線誘発性生成を完全に防ぎ、合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体の強力な放射線防護特性を示した。低濃度のSDG(S、S)、SDG(R、R)およびSDG(市販)を使った結果は、仔ウシ胸腺DNAをγ線損傷から保護するために必要な濃度は、それらの抗酸化およびフリーラジカル除去活性に関するEC50値に比べてずっと低いことを示した。重要なことに、哺乳類リグナンSDG代謝物のSECO、EDおよびELは、等しく強力なDNA保護特性を示した。
フラボノイドは強力な抗酸化活性を有する。特に、このようなポリフェノールはフリーラジカル除去活性を有し、ビタミンEやCよりインビトロで効果的な抗酸化剤であることが知られている。抗酸化特性を有する食用および薬用の植物も、酸化ストレスに関連する多くのヒト疾患を防ぐことが知られており、有用な放射線防護剤である。ビタミンおよびミネラルなどの抗酸化剤は、放射線曝露から何年も経過した後で、チェルノブイリ作業者における染色体異常誘発因子のレベルを抑えた。我々は、放射線誘発性損傷における、リグナンポリフェノールに富む穀物である全粒粉食用亜麻仁、ならびにSDGに富む亜麻仁リグナン配合物の役割を、胸部放射線性損傷のマウスモデルを使って調査してきた。我々は、放射線曝露の前および後の両方で投与した場合に、亜麻仁がマウスの放射線誘発性炎症および酸化ストレスを緩和したことを示した。我々はまた、リグナンビフェノールSDGに富む亜麻仁のリグナン成分のみを含む食餌を与えられた照射マウスも、血流力学的測定値および生存期間の有意な改善を示し、同時に、肺炎症および組織酸化損傷の改善も示したことを実証した。これらの調査は、インビボでの放射線誘発性組織損傷に対し、リグナンSDGの作用を通して亜麻仁が保護的であることを示した。
スーパーオキシドアニオン(O )、ヒドロキシルラジカル(・OH)、および過酸化水素などの活性酸素種(ROS)の生成の増加は、種々の実験的および病理学的状態下で組織損傷に繋がる。活性酸素種は、細胞膜脂質、タンパク質およびゲノムDNAの酸化修飾により細胞損傷をもたらす。多くの調査は、抽出された、精製された、または合成の亜麻仁が、インビトロならびにインビボで強力な抗酸化剤であることを示した。したがって、SDGは抗酸化剤として、放射線療法を受けている患者中の放射線誘発性組織損傷を含む種々の実験的および疾患状態下で治療的潜在力を有する。
ポリフェノールは一般に植物中でグリコシドとして存在し、抗酸化特性を有する。フラボノイドは、抗酸化剤として、活性酸素種の生成に関与する酵素の活性を妨げ、フリーラジカルを消去し、遷移金属をキレート化しフェントン反応においてそれらをレドックス不活性にする。セコイソラリシレジノール(SDG)は亜麻仁中の主要リグナンであり、インビトロならびにインビボで強力な抗酸化剤であることが示されている。亜麻仁リグナンセコイソラリシレジノール(SDG)の治療潜在力を調査するために、バニリンを前駆物質分子として用いる化学反応によりSDGを合成し、合成SDG(R、R)およびSDG(S、S)の抗酸化特性を、それらの還元力、金属キレート化潜在力、ならびにヒドロキシル、パーオキシおよびDPPHラジカルに対するフリーラジカル除去活性を評価することにより明確にした。本実施例では、我々は、合成SDG(R、R)、SDG(S、S)鏡像異性体および市販のSDG(対照として)の放射線防護特性を、プラスミドDNA(pBR322)および仔ウシ胸腺DNAに対するγ線照射誘発性損傷を防ぐそれらの潜在力を評価することにより調査した。プラスミドDNAに対する放射線誘発性損傷は、オープンコイル型のプラスミドDNAの増加およびスーパーコイル型のプラスミドDNAの減少により評価した。ゲノムDNAに対する放射線誘発性損傷は、DNA断片化のレベルを決定することにより評価した。この実施例中で、我々は、無細胞系で放射線誘発性DNA損傷に対する合成SDG(R、R)、SDG(S、S)および市販SDGの効力を調査した。
SDG分子の抗酸化特性は前に示した。我々は、天然の市販SDGが、γ線に暴露された細胞において強力なフリーラジカル除去特性を有することを示した。これらの合成SDG(R、R)およびSDG(S、S)鏡像異性体の抗酸化特性およびフリーラジカル除去特性を調査し、強力な還元力、高い金属イオンキレート化する潜在力、ならびにヒドロキシル、パーオキシおよびDPPHラジカルに対し高いフリーラジカル除去活性を有することを示した。合成SDG(R、R)およびSDG(S、S)のこれらの特性は、これらの分子が、細胞のレドックス状態を調節する、金属イオン濃度を下げる、および酸素フリーラジカルを除去するための強力な潜在力を示すことを明らかにする。合成SDG鏡像異性体のこれらの特性は、フリーラジカル反応の開始、増殖ならびに終止の3つの全てのステップで作用し、かつこれらを妨げることにより機能するそれらの能力を示唆し、これらの根源的な機序がインビボでのSDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体の放射線防護特性に関与する可能性を示唆している。
SDGによるゲノムDNAの最大放射線防護は、それらのフリーラジカル除去および抗酸化効果に対するEC50値よりかなり小さい約5.0μMの濃度で既に達成されているという、1つの観察結果があった。したがって、抗酸化剤およびフリーラジカル除去剤としてのSDGは、DNA放射線防護剤および放射線緩和剤としても機能し得る。
まとめると、本実施例で、合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体が強力な放射線防護特性を有することが実証された。これらの鏡像異性体の放射線防護潜在力は、プラスミドDNA(pBR322)および仔ウシ胸腺DNAを使って決定された。合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)鏡像異性体は、プラスミドDNAに対する放射線誘発性損傷を、濃度依存的に防いだ。合成鏡像異性体SDG(S、S)およびSDG(R、R)はまた、仔ウシ胸腺ゲノムDNAの放射線誘発性断片化も防いだ。5μMの濃度で、SDG(S、S)およびSDG(R、R)は仔ウシ胸腺DNAの低分子量断片の放射線誘発性生成を完全に防ぎ、これらの鏡像異性体が有する強力な放射線防護特性を示している。
実施例2
肺細胞中のリグナンセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)の放射線防護特性
細胞に対する放射線傷害は、活性酸素種(ROS)の生成により開始される。細胞機構に対しROSにより加えられる損傷の範囲には、脂質過酸化、DNAタンパク質架橋、塩基修飾、付加物形成ならびに単鎖および二重鎖切断(DNA SSBおよびDSB)が含まれる。これらの修飾は放射線誘発性アポトーシスおよび細胞死に結びつけられてきた。細胞DNA損傷は放射線誘発性細胞死における既知の決定要因であるので、フリーラジカル反応を妨げることにより、または放射線誘発性アポトーシスを調節することにより放射線損傷に対しDNAを保護できる薬剤を特定し活用するために、大きな努力が払われてきた。
放射線誘発性遺伝子毒性の阻止は、暴露時に系中の抗酸化剤の存在により達成できる。抗酸化剤は、フリーラジカル連鎖反応を妨害するROS除去剤であり得るので、抗酸化剤の補充により放射線誘発性酸化ストレスから細胞DNAを保護することが可能である。多くの合成および天然の抗酸化化合物が放射線防護効力に関し調査されてきた。しかし、それらの大部分は、それらの有効濃度で固有の毒性および副作用を示すか、または短い保存可能期間および低バイオアベイラビリティを有する。したがって、効果的で非毒性の放射線防護剤に関する研究は、食用抗酸化剤および栄養補助食品への調査に至った。
我々は、過酸素症、胃酸吸入傷害、および虚血/再潅流傷害などの肺酸化損傷の前臨床マウスモデルでの食用亜麻仁(FS)補充の保護効果を評価した。我々は、FSの保護効果は、肺組織中で抗酸化酵素発現を高めるその能力に一部は起因するであろうと結論付けた。重要なのは、曝露前ならびに暴露後の両方に投与した場合、食用FSが胸部放射線の有害作用を緩和したことである。これらの調査では、亜麻仁は放射線誘発性肺組酸化織損傷を低減させ、肺炎症を低減させ、さらに肺線維症を防いだ。
以前の報告は、多様な亜麻仁の作用は、抗酸化、抗炎症および抗発がん性効果を有することが示された亜麻仁のリグナンに起因する可能性があることを示唆した。セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)は主なFSリグナンであり(乾燥重量の約1%)、おそらくこれがFS穀物の有益な健康効果に寄与しているのであろう。SDGは、腸中で腸内細菌により、哺乳類リグナン、すなわち、エンテロジオール(ED)およびエンテロラクトン(EL)へと代謝される。SDGは、アテローム性動脈硬化症および糖尿病などの多くの疾患の前臨床モデルの処置で有益であることが示された。また、SDGは動物モデルで心臓保護作用を発揮すると報告されている。FSリグナンは、Adolpheら(Br J Nutr 2010,103:929)のSDGの健康効果に関する最近の概説でまとめられているように、多様な癌タイプに対し防御的であり、また、動物において黒色腫転移を減らすことが報告されている。
さらに、SDGの抗酸化およびフリーラジカル除去特性は十分に実証されており、このことは、化合物のフリーラジカル除去能力がその放射線防護効力と直接関連し得るため、最も重要である。肺内皮細胞に関する我々の調査では、細胞がγ線照射に暴露された場合SDGはフリーラジカル除去特性を示し、一方で、SDGに富む全亜麻仁リグナン成分(FLC)は、マウス中で放射線防護および放射線緩和を媒介した。しかし、SDGの放射線防護特性のキャラクタリゼーションは、確立されていない。
この調査は、FSリグナンSDGの放射線防護能力を明確にし、その作用に関与する可能な機序を調べるために行った。この調査の第1の目的は、マウス一次肺細胞中、特に、上皮、内皮細胞および繊維芽細胞中で放射線誘発性クローン原性細胞死に対するSDGの役割を評価することである。細胞の放射線誘発性増殖死は細胞DNA損傷に直接関連しているので、我々は、SDGが放射線誘発性DNA鎖切断から細胞を保護できるかどうかを、アルカリコメットアッセイ(SSB)およびγ−H2AXフォーカスの形成(DSB)を使って評価した。さらに、我々は、IR誘発性細胞死からのマウス一次肺細胞の予防におけるSDG前処理の効果を調査した。多くの調査は、IR誘発性細胞死におけるアポトーシス促進性タンパク質Bax(Bcl−2結合Xタンパク質)の役割を実証している。我々はまた、BaxおよびそのアンタゴニストBcl−2(B細胞白血病/リンパ腫2)のmRNA発現に対するSDGの直接的効果を分析し、SDG保護の機序がこれらの重要なアポトーシス制御因子の比率のシフトに関連するかどうかを決定した。我々の調査結果は、FS中の強力な生理活性成分であるリグナンSDGが、肺細胞における放射線防護を媒介することを明らかにし、したがって、FSの放射線防護効果への新規洞察を提供する。
材料と方法
試薬
セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)は市販品である(ChromaDex,Inc.,CA)。コメットアッセイキットはTrevigen,Inc.,(Gaithersburg,MD)から購入した。P−ヒストンH2AX(ウサギmAb)はCell Signaling Technology,Inc.,(Danvers,MA))から購入した。燐酸塩緩衝食塩水(PBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(L−グルタミン、グルコース1g/l含有、重炭酸ナトリウム不含)、ヘペス緩衝液、ウシ血清アルブミン(BSA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)、ウシ胎仔血清(FBS)、コラゲナーゼ、トリトンX100およびディスパーゼは、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USAから購入した。
細胞株
繊維芽細胞および内皮細胞はC57/bl6マウスから単離した。繊維芽細胞単離のために、マウスの肺を採取し、細かく切り刻み、ディスパーゼ(2mg/ml)と共に45分間インキュベートした。数片をプレートに蒔き、前に記載の通りに、繊維芽細胞を培養し、継代3と10との間で使用した。前に記載の通りに、肺微小血管内皮細胞(PMVEC)をマウス肺から単離した。簡単に説明すると、新たに採取したマウス肺をコラゲナーゼで処理し、続けて、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)に対するmAbでコートした磁気ビーズへの付着により、細胞の単離を行った。上皮細胞(C10)は、正常なBALB/cマウス肺外植片から最初に誘導され、非腫瘍形成性であり、接触阻害され、初期継代で2型肺胞細胞の特徴を有する。
クローン原性生存
指数関数的増殖細胞を単一細胞として播種し、一晩インキュベートした。細胞を種々の用量のリグナンSDG(10〜50μM)と6時間処理後、照射した(2、4、6および8Gy)。リグナン投与量は、10%の亜麻仁が摂取される場合に、血液循環中の到達生理的レベル以内であるように動物調査に基づいて選択した。細胞を、Mark1セシウム(Cs−137)照射器(J.L.Shepherd,San Fernando,CA)を用いて、1.7Gy/分の線量率で照射した。照射の10〜15日後にコロニーを染色して計数し、生存率を計算した。
コメット分析
指数関数的増殖細胞を培養し、異なる時間間隔でSDG(50μM)で処理後、照射した(2Gy)。製造業者(Trevigen,Gaithersburg,MD)の説明書に従い、細胞をコメットアッセイ用に処理した。簡単に説明すると、細胞(PBS中の1x10細胞/mL)をLMAgarose(登録商標)と混合(1:10、v/v)し、直ちにCometSlide(商標)上にピペッティングした。その後、細胞を溶解し(4℃、30分)、巻き戻しのために暗所で保持した(室温)。水平型電気泳動ユニット中にて18ボルト(200アンペア)で25分間、電気泳動を行った。スライドをDWで2回洗浄し、70%エタノールで固定し、45℃で乾燥した。DNAをSYBRグリーン(Trevigen)で染色した。少なくとも群当たり150細胞をスコア化した。細胞の目視分析およびコメットテイル長さを、コメット画像解析ソフトウエア(Comet Assey IV、Perceptive Instruments Ltd,Haverhill,UK)を使って測定した。モノクロームCCD FireWireカメラを使って、Olympus IX51蛍光顕微鏡で画像を取り込んだ。
γ−H2AXの免疫染色およびフローサイトメトリー
γ−H2AXの免疫染色のために、細胞をカバーガラス上に播種し(5,000細胞/カバーガラス)、50μMのSDGで前処理し(6時間)、照射した(2Gy)。所望の時間間隔で、細胞を固定し(4%パラホルムアルデヒド)、洗浄してPBST(PBS+0.1%の5%ヤギ血清含有トリトンX−100、1%BSA)でブロッキングした。細胞をγ−H2AX一次抗体と共に(1:200)4℃で一晩インキュベートし、続けて、PBSTで洗浄し(3x5分)、二次抗体(Alexa fluor(登録商標)、Invitrogen,CA,USA)と共に室温で1時間インキュベートした。細胞核をDAPIで対比染色して蛍光顕微鏡下で可視化した。
FACS分析のために、細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄した。次に、細胞を45分間固定し(Fix/Perm緩衝液、eBioscience)、その後、透過洗浄バッファー(BioLegend,USA)を使って洗浄した。細胞を、Alexa fluor(登録商標)488(1:100v/v、Cell Signaling Technology,US)にコンジュゲートされたウサギモノクローナルホスホヒストンγ−H2AX(Ser139)抗体200μl中に再懸濁し、4℃で30分インキュベートした。細胞を洗浄緩衝液で再度洗浄し、分析した。CyAn ADP(Advanced Digital Processing)フローサイトメーター(Dako,Denmark)Coulter,Fullerton,CA)を使ってγ−H2AXを測定し、陽性細胞をSummit Software(Dako,Denmark)を使って定量した。
アポトーシス細胞の形態学的検出
アポトーシス細胞は、核と細胞質の凝縮、膜の泡状突起物形成(blebbing)、細胞収縮、および核DNAの分解により形態学的に特徴付けられ、最初は大きな断片であり、その後はヌクレオソームの断片で、最終的には十分に包み込まれたアポトーシス小体が形成される。アポトーシスを受けている細胞のパーセンテージを、微小核の検出に使用したスライドから顕微鏡的に決定した(細胞遺伝学的損傷)。それぞれの実験毎(実験は2回行った)に、少なくとも500細胞を計数し、アポトーシス細胞パーセントを以下のように求めた:
%細胞死=N/Nx100
式中、Nはアポトーシス小体を伴う細胞の数、Nは分析した細胞の合計数である。
定量的リアルタイムPCR(qPCR)による遺伝子発現分析
Applied Biosystems,Life Technologies(Carlsbad,CA)により提供されたTaqMan(登録商標)Probe−Based Gene Expression Assaysを使ってqPCRを行った。アポトーシス遺伝子のmRNA発現に対するSDG処理の効果を評価するために、Bax(Mm00432051_m1)およびBcl−2(Mm00477631_m1)に対する個別のTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイを行った。
簡単に説明すると、細胞をSDG(50μM、6時間)で前処理し、照射した(2Gy)。全RNAをRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使って単離し、NanoDrop2000(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を使って定量化した。その後、RNAからcDNAへの逆転写を、Applied Biosystems,Life Technologies(Carlsbad,CA)から提供されたHigh Capacity RNA to cDNAキットを使ってVeriti(登録商標)Thermal Cyclerで行った。qPCRを、StepOnePlus(商標)Real−Time PCR System(Applied Biosystems,Life Technologies,Carlsbad,CA)で反応ウエル当たり25ngのcDNAを使って行った。遺伝子発現データを18SリボソームRNAに対し正規化し、ΔΔC法により無処理対照試料に対し較正した。
ウェスタンブロッティングによるアポトーシス検出
イムノブロッティングを用いて観察されるBax(アポトーシスプロモーター)、Bcl−2(アポトーシス阻害剤)、切断カスパーゼ3、および切断ポリ(アデノシンジホスフェートリボース)ポリメラーゼ(PARP)のレベルにより、マウス肺上皮細胞中のアポトーシスを決定した。簡単に説明すると、細胞をプロテアーゼ阻害剤を含むPBS中に溶解した。その後、細胞ライセートの免疫ブロット分析を、10ウエルSDS12%NuPAGEゲル(Invitrogen,Carlsbad California)使って行った。電気泳動を200Vで1時間行った。PolyScreen PV転写膜(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)への転写を25ボルトで1時間行った。膜を5%脱脂粉ミルク含有燐酸塩緩衝食塩水中で一晩ブロッキングした。その後、脱脂粉ミルクを廃棄し、膜を一次抗体と共にインキュベートした。Bax、Bcl−2、切断カスパーゼ3、および切断PARPのタンパク質レベルを、BaxおよびBcl−2に対するウサギ抗マウスモノクローナル抗体、およびウサギ抗マウス切断カスパーゼ3(Asp175)モノクローナル抗体およびウサギポリクローナル抗切断PARP(214/215)切断部位特異的抗体を使って、製造業者(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)推奨の希釈を用いて検出した。膜を5回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた二次抗体中、室温で45分間インキュベートした。Western Lighting Chemiluminescence Reagent Plus(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)を使って膜を発色させ、特異的二次抗体(Sigma,St.Louis,MO)により検出されたβ−アクチン発現レベルを使って添加量を調整した、特異的バンド(Baxに対し20kDa、Bcl−2に対し26kDa、切断カスパーゼ3に対し17/19kDa、および切断PARPに対し89kDa)の濃度測定スキャンにより定量した。
統計
データは平均値+/−標準誤差で表される。クローン原性アッセイの生存曲線をKaleidaGraphソフトウェア(4.0)を使って作製した。群間の統計的差異を一元配置分散分析(ANOVA)を使って決定した。統計的有意差が認められた場合(p<0.05)は、個々の比較をBonferroni/Dunn検定(Statview4.0)を使って行った。
結果
SDG処理は照射された一次肺細胞のコロニー形成能力を高める
クローン原性生存アッセイは、環境的および医薬的発癌性物質、電離放射線などへの暴露後の何らかの遺伝毒性のストレスを細胞が受けた後の細胞の増殖死を決定するために広く使用される。この実施例では、一次肺細胞(それぞれ、上皮細胞、内皮細胞および繊維芽細胞)のクローン形成能の放射線誘発性低下に対するSDG(10〜50μM)の前処理の効果を評価した。結果は、SDG(10〜50μM)単独では、それぞれの無処理対照細胞(100%)に比べて、3つ全ての細胞型のコロニー形成能力に対し何らの有害作用も誘発しなかったことを示す(図1A〜1C)。
照射線処理は、上皮および内皮細胞のコロニー形成能力を線量依存的に有意に(p≦0.01)低下させた。細胞を照射前にSDGで処理した場合には、全ての処理群で生存率が有意に向上した(図7A、7B)。繊維芽細胞中のクローン形成能の放射線誘発性低下に対する最大の保護が、50μMのSDG前処理照射群で観察された(図7C)。したがって、我々は、SDGのこの特定の濃度を我々のその後の調査用に選択した。
SDGは、照射一次肺細胞中でDNA SSBの形成を防ぐ
我々は、最初に、放射線生物学的に妥当な2Gyの照射後の全ての細胞型(内皮、上皮、繊維芽細胞)中でのDNA損傷の動力学を決定する調査を行った。予想通り、放射線曝露は、テイルモーメントの増加から明らかなように、それらのそれぞれの非照射対照細胞に比べて、全ての細胞型で有意なDNA損傷を誘発した。DNA損傷の程度は、照射後30分で最大であった。DNA損傷の程度は、照射後の時間が60分に達すると減少し、その後、照射後2時間までにさらに急に低下した。したがって、我々は、放射線誘発性DNA損傷に関連するさらなる調査のために30分間の時間間隔を選択した(図8A)。
放射線曝露(2Gy)により、非照射対照細胞に比べて、コメットテイル長さの有意な増加を生じた。細胞を、照射前に種々の時間間隔(0時間、2時間、4時間、6時間および24時間)で処理した。SDG(50μM)による細胞の前処理は、全ての時間間隔において、3つ全ての型の肺細胞中で放射線誘発性のコメットテイル長さを有意に抑制した。しかし、放射線誘発性DNAテイルモーメントに対する最大保護は、全ての細胞型で、照射の前の6時間のSDG処理において観察された(図8B)。照射された(SDGの存在および/または非存在下で)肺上皮細胞中の、コメットテイルの形成を示す代表的蛍光顕微鏡写真を図8Bの挿入図に示した。
SDG処置は、マウス一次肺細胞中でγ−H2AXフォーカスの形成を抑止する
SDGがDNA酸化損傷に対して保護できるかどうかという我々の仮説をさらに検証するために、γ−H2AXフォーカスの誘導に対するSDGの作用もまた評価した。
照射後のマウス一次肺細胞中のγ−H2AX形成により実証される、酸化的DNA損傷に対するSDG前処理の効果を、標準的顕微鏡生成画像解析(図9、10)およびフローサイトメトリー(図11)法の両方を使って評価した。蛍光顕微鏡分析の結果は、放射線(2Gy)暴露により3つ全ての細胞型でγ−H2AXフォーカスの形成の有意な増加が生じたことを示す(図9)。フォーカス/細胞の数は、照射後15分までに実質的に増加し、ピークは30分であったが(上皮、内皮および繊維芽細胞に対しそれぞれ、46.7%±0.5、33.6%±3.2および30.0%±1.4のγ−H2AX陽性細胞)、数は、依然として非照射対照細胞より有意に大きいとはいえ、曝露の1時間以内に著しく減少した。全ての値は、それらのそれぞれの非照射対照細胞に比べて有意に大きかった(全ての細胞型でp<0.005)(図9)。
照射上皮細胞、内皮細胞および繊維芽細胞中のγ−H2AX陽性細胞の数が、それぞれ、22.7%±2.17、21.92%±2.88および22.1%±1.9に低下したので、SDG前処理(IR前に6時間)は、γ−H2AXの誘導を有意に低減した(上皮細胞でp<0.005、内皮細胞および繊維芽細胞でp<0.05)。SDGの前処理により3つ全ての型の肺細胞が放射線誘発性DNA鎖切断から保護されたので、γ−H2AXフォーカスの形成から細胞を保護するSDGの能力は、細胞型と無関係であるように思われた。図10は、一次肺上皮細胞中のγ−H2AX陽性細胞の顕微鏡分析の代表的蛍光顕微鏡写真を示す。
放射線曝露後のγ−H2AX陽性細胞の誘導の抑制に対するSDGの保護作用を、フローサイトメトリーを使ってさらに確認した。予想通り、照射後にγ−H2AX陽性細胞の誘導において類似のパターンが観察されたが、γ−H2AX陽性細胞の数は、すべての細胞型でSDG前処理により有意に抑止された(図11)。
SDG処理は一次肺細胞のIR誘発性アポトーシス死を防ぐ
アポトーシスの観点からSDGの細胞保護効果を調査するために、顕微鏡による可視化のために細胞核をDAPIで染色し、計数した。顕微鏡分析は、対照細胞はインタクトクロマチンを有した(アポトーシス細胞、約4〜5%)が、放射線曝露はアポトーシス細胞のパーセンテージを、時間および線量依存的に有意に(p≦0.05)増加させたことを示した。24時間で、アポトーシス細胞のパーセンテージは、上皮および内皮細胞中で、それぞれ、13.9%±1.08および15.1%±1.95であると観察された。図12(AおよびB)で明らかなように、SDG前処理(50μM)は、アポトーシス細胞のパーセンテージのにおけるIR誘発性の増加を有意に(p≦0.05)阻止した(上皮および内皮細胞中で、それぞれ9.9%±1.08および10.71%±1.45アポトーシス細胞)。放射線曝露により24時間および48時間でそれぞれアポトーシス細胞の36.4%および41.8%の著しい増大が生じたことから、繊維芽細胞が最も感受性であることが明らかになった。重要なのは、上皮および内皮細胞で示されるように、SDGによる前処理が、肺繊維芽細胞中でもアポトーシスの程度を有意に低減したことである(図12C)。
SDG処置はマウス一次肺上皮細胞中でアポトーシスの制御因子の発現を変更する
DNA損傷および細胞死を抑制するSDGの放射線防護効果をさらに明らかにするために、我々は、SDGがアポトーシス促進性および抗アポトーシス性の制御因子タンパク質の比率を変化させ得ると仮定した。したがって、我々は、放射線の存在下または非存在下での肺細胞のSDG処理がBaxおよびBcl−2の遺伝子発現を変更するかどうか、およびこれらの変化がタンパク質レベルでの変化に繋がるかどうかを試験した。このために、肺上皮、内皮および繊維芽細胞をSDG(50μM)で処理し、酵素mRNAレベルをIR後の6、24、および48時間でqPCRにより評価した(図13AおよびB)。我々は、2Gyにより、IR後の24時間および48時間でアポトーシス促進性Bax mRNAレベルの約11倍の増加が生じ、これはSDG前処理により有意に(p<0.05)抑制されたことを観察した。あるいは、抗アポトーシス性Bcl−2 mRNAレベルは放射線曝露により変化することはなく、むしろ、SDG前処理細胞において、IR処理後の24時間および48時間で、それぞれ6.6および3.5倍増加した。BaxおよびBcl−2 mRNAレベルにおける変化のウェスタンブロット分析によるタンパク質検証時に、我々は、BaxおよびBcl−2タンパク質両方のレベルがその後増加し、SDG前処理細胞中ではそれらのレベルが減少する傾向にあることを見出した(図13Cは代表的ブロットを示し、13Dと13Eは、バンド密度の定量を示す)。SDGにより観察された放射線防護の裏にある根源的な機序をさらに調査するために、我々は、アポトーシスシグナル伝達カスケードに関連する重要なタンパク質:実行役である切断カスパーゼ3および切断PARPのレベルの変更におけるSDGの効果を評価した。全体として、切断カスパーゼ3および切断PARPのレベルは、IRの6、24、および48時間後に照射細胞中で有意に増加し、SDG前処理細胞中ではそれらのレベルは減少する傾向にあった(図14Aは、代表的ブロットを示し、14Bおよび14Cはバンド密度の定量を示す)。
考察
この実施例中で、我々は、FSリグナンSDGがマウス一次肺細胞を、放射線誘発性DNA酸化損傷およびアポトーシス死に対し保護することを示した。我々は、SDG前処理が、クローン原性生存により測定されるようにIR誘発性細胞傷害性を改善するのみでなく、肺細胞中でDNA鎖切断(DSBおよびSSB)および細胞死の誘導も減らすことを認めた。重要なのは、アポトーシスの調節に関連する遺伝子の発現もSDG処置により変えられたことである。これらの知見は、SDGが放射線シナリオにおいて、および放射線療法の治療指数の改善において、非毒性放射線防護剤として有用であり得ることを示唆する。
IR誘発性細胞死は細胞の放射線感受性の古典的マーカーであり、これは、クローン原性生存の喪失により特徴付けられる。同様に、我々はまた、3つ全てのマウス肺細胞中でクローン形成能の放射線量依存的な低下にも注目した。このクローン形成能の低下は、SDG前処理により有意に減弱化された(図7)。細胞DNAは、細胞におけるIR誘発性損傷の主要標的である。曝露中に生成されたROSは、細胞DNA中で一連の変化を引き起こし、これは、変異、塩基傷害、架橋結合、SSBおよびDSBの範囲に及ぶ。DNA中の損傷は、置き換えることはできず、したがって修復する必要があり、未修復のまま残されると、細胞はアポトーシスまたは壊死の誘導を起こすかも知れない。したがって、標的細胞DNAの保護は、遺伝毒性の侵襲に対する第1選択の防御を与える。ROS生成は、曝露の数秒以内に起こり、照射後数分間持続する。したがって、即時DNA損傷などの初期放射線反応は、放射線曝露後の数分以内に起こる。同様に、照射された細胞の時間依存性動力学的調査で、我々はまた、コメットテイル長さからも明らかなように、DNA鎖切断の程度は30分以内にその最大レベルに達し、その後下がることを認めた(図8A)。
コメットアッセイは、細胞レベルでのDNA損傷/修復の検出に対し感受性の高い技術であり、DNA鎖切断の研究に広く使用されてきた。ポリフェノールは、ROS媒介性の酸化的DNA損傷を低減することにより、放射線の有害な作用から正常組織または細胞を保護する能力を有する。この調査では、標準的アルカリコメットアッセイを用いることにより、我々はまた、マウス一次肺細胞中のIR誘発性SSBに対するSDGの役割も評価した。我々の結果は、クリシンやエピカテキンなどの他のフェノール成分に関する同様の放射線誘発性DNA SSBからの保護効果を示す、他の報告と一致する。
SSBは細胞により容易に修復されるが、DSBは細胞が修復するにはより困難であり、突然変異を生ずる可能性がより高く、したがって、DSBはたいていの場合、致死細胞イベントを意味する。H2AX分子は、照射により導入されたそれぞれのDNA二重鎖切断に関してメガベース長のクロマチンドメインに沿ってリン酸化(γ−H2AX)され、γ−H2AXの喪失または脱リン酸化はDNA修復と時間的に相関する。我々は、ここで、3つ全ての型の試験した細胞で、SDGがIR誘発性DSBから細胞DNAを保護したことを報告する。我々の結果は、リスベラトロールおよび緑茶カテキンなどのポリフェノールがIR誘発性DNA鎖切断から細胞を保護することを同様に示すいくつかの他の調査と一致する。しかし、放射線の比存在下では、SDGは、これらのいずれの細胞においても、何ら毒作用を示さなかった。DNA酸化損傷は多くの癌への前駆物質であると考えられるので、抗酸化剤として作用するSDGによるこのような損傷の減少を癌のリスクの減少に繋げることができる。
細胞および組織でのIR誘発性アポトーシスは、一部は細胞中のDNA損傷の誘発によるものであることが知られている。いくつかの機序(O6−メチルグアニン、塩基Nアルキル化、嵩高いDNA付加物、DNA架橋)がDNA損傷依存アポトーシスに関与しているが、DNA二重鎖切断がアポトーシス細胞死の誘発において主要な役割を果たす。この調査では、SDGによる細胞の前処理が、肺細胞中の放射線誘発性アポトーシスに対し保護し、コメットテイル長さおよびγ−H2AXフォーカス形成を抑制した。したがって、放射線誘発性アポトーシス細胞死に対するSDGの保護効果は、細胞の酸化ストレスを減らすその能力、イオン恒常性の修復およびDNA損傷を防ぐその能力に起因するのであろう。これらの知見は、我々のマウスの虚血再灌流および放射線誘発性組織損傷の調査における食用全粒粉亜麻仁の抗アポトーシス特性と一致し、SDGを、組織中の保護的な抗アポトーシス効果を媒介する亜麻仁中の有望な生理活性成分として示唆している。
IRは細胞環境中の抗酸化酵素のレベルを低下させるので、抗酸化剤による細胞の前処理は、ROSをさらに妨害し、それにより、ROSと生体分子との相互作用のリスクを減らす。前の実施例では、我々は、亜麻仁リグナン複合体を含む食餌での動物の予備給餌が、マウス肺中の保護的第2相抗酸化酵素のレベルを高めたことを以前に報告した。これらの作用に対する仮定上の機序は、抗酸化剤応答配列(ARE)媒介性の転写誘導の活性化を含む。さらに、Nrf2はまた、酸化ストレス媒介性細胞傷害性に対する保護に関与する種々の抗酸化酵素のデノボ合成を開始させる。いくつかの他の報告はまた、クルクミンおよびEGCGなどのポリフェノールが、第2相抗酸化酵素を誘導するそれらの能力により示唆される、酸化ストレスに対する保護作用を発揮することを示唆している。
SDGが、DNAに対するその抗酸化特性および保護効果によりマウス一次肺細胞中の細胞死を減らすということは、結果から明らかである。我々の調査結果は、ザクロ中で見つけられた一種のポリフェノールであるエラグ酸がHO−1およびNrf−2遺伝子の発現上昇を介してUVA誘発性酸化ストレスおよびアポトーシスからヒトケラチノサイトを保護することを報告したHseuらの結果(Food Chem Toxicol 2012,50:1245)を裏付ける。我々の調査は、IR誘発性酸化損傷およびアポトーシス細胞死の抑制におけるSDGの放射線防護作用は、抗酸化防御系の直接誘導による可能性があるという新しい証拠を提供する。
まとめると、これらの結果は、亜麻仁中の亜麻仁リグナンSDGが、動物調査で観察された全粒粉の保護的効果に寄与すると思われる強力な放射線防護特性を有することを示す。
実施例3
セコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)は次亜塩素酸イオンを除去する:放射線からのゲノムDNAのSDGによる保護の新規機序
強力な酸化剤である次亜塩素酸(HOCl)は、生理学的に存在する塩化物イオンと過酸化水素(H)との間の反応を触媒する活性化ミエロペルオキシダーゼによって好中球により生成される。活性化好中球はHおよびスーパーオキシドアニオンOを生成する。生理的pHで、HOClおよび次亜塩素酸イオン(ClO)の両方の混合物が存在する。HOClは酸化的損傷により微生物を死滅させる。しかし、過剰な産生は組織への損傷を引き起こすことが知られている。次亜塩素酸塩はアデニンヌクレオチドを修飾し、クロラミンの形成が起こり、これが好中球媒介毒性の主要な機序であると思われる。
HOClおよびその共役塩基ClOは、アミノ酸、ペプチド、および脂質を酸化し、細胞DNAおよびRNA中の塩基を塩素化することが示されている。HOCl/ClOの反応により、グアニンおよびチミンの環内−NH基ならびにグアニン、アデニンおよびシトシン誘導体のNH基の位置でプリンおよびピリミジンヌクレオチドの両方が修飾され、(RNHCl)およびRR’NClなどのクロラミンが形成される。一次修飾塩基は、SKM−1細胞のDNAおよびRNA中の5−クロロシトシン、8−クロロアデニンおよび8−クロログアニンであることがわかった。
γ線は原子および分子を電離できることが知られている。生物学的系または溶液中では、電離放射線はヒドロキシルラジカル(・OH)を生成し、これが、脂質、タンパク質およびDNAを含む細胞成分に対する電離放射線誘発性損傷の発生源であると考えられている。しかし、これらの極めて不安定なラジカルは、生理液中に極めて高濃度で存在するClイオンにより除去され得る。これにより反応性塩素含有中間体が生成され、この中で相対的に安定なClOが放射線由来毒物である。塩化物含有溶液では、ClOおよびその他の酸化的性質の活性な塩素誘導体が放射線分解の生成物として形成される。それらは、生物の生理的な機能の抑制に寄与し得る。したがって、我々は、放射線誘発性のDNAまたはタンパク質損傷は、一部は、放射線生成ClOにより媒介されるということを提案する。
化学的に合成したSDGの2つのジアステレオマーは、それらの抗酸化特性、フリーラジカル除去特性およびDNA保護特性において同等効力であることが最近示された。本調査は、非常に新規で特異的な蛍光プローブを使って、生理食塩水中でγ線誘発性ClO生成からのDNAの放射線防護に関してSDGを評価する。次亜塩素酸塩特異的3’−(p−アミノフェニル)フルオレセイン(AFP)およびヒドロキシルラジカル感受性3’−(p−ヒドロキシフェニル)フルオレセイン(HPF)は、上記活性酸素種(ROS)の測定に関し、より大きな特異性および再現性を提供する。
材料と方法
化学薬品
ROS標識プローブAPFおよびHPF、プラスミドDNA(pBR322)、1kb plus DNAラダーをInvitrogen(Life Technologies,Carlsbad,CA)から購入した。
次亜塩素酸塩の測定
PBS中のROSプローブAFPおよびHPFの蛍光を、次亜塩素酸塩の存在下またはγ線曝露後に490nm/515nmで励起/発光にて測定した。データは、相対蛍光単位(RFU)として表す。
タウリンクロラミンの測定による次亜塩素酸塩のγ線誘発性生成
タウリンの塩素化をTMBアッセイを使って測定した。データはタウリンクロラミン(吸光度)ならびにClO濃度(μM)として表される。
仔ウシ胸腺およびプラスミドDNAへの次亜塩素酸塩誘発性損傷
仔ウシ胸腺またはプラスミドDNAを次亜塩素酸塩と共に37℃で2時間インキュベートした。DNA試料をアガロース(1%)ゲル電気泳動に供し、分析した。
2−アミノプリン(2−AP)の次亜塩素酸塩誘発性塩素化の測定
PBS中の2−APを次亜塩素酸塩に暴露し、260〜390nmで、374nmに最大発光を有する蛍光スペクトルを記録した。2−APの%変化を計算した。
データの統計分析
得られたデータは、平均値±標準偏差として表される。データを、Statview Programを用いるボンフェローニの補正を使い、事後比較による一元配置分散分析(ANOVA)に供した。p値≦0.05を有意と見なした。
結果
この調査で、我々は、生理溶液中での放射線曝露からのDNA保護の可能な機序として、放射線誘発性ClOを除去するSDGの能力を調べた。
SDGは次亜塩素酸イオンを除去する
選択したフルオロプローブの特異性を、次亜塩素酸ナトリウムを使って評価した。図15Aは、ClO濃度(1〜4μM)の増加に伴うAPFの蛍光強度の線形増加を示す。重要なことに、HPF蛍光強度の増加はごくわずかに過ぎず、APFの蛍光は主としてClO依存性であることを示している。ClO用量を、その後の実験のために、この範囲内となるように選択した。次に、SDG(市販)により、ClOを除去するSDGの能力を評価した。実際に、SDGはClOを用量依存的に低減させた(図15B)。最後に、我々は、合成SDGジアステレオマーSDG(S,S)およびSDG(R,R)のClO除去効果を評価した。0.5μMで、SDG(R、R)およびSDG(S、S)、ならびにSDG(市販)は、ClO除去剤として確立されているシリビニンに類似の、同等の効力でClOを除去した(図15C)。
SDGはγ線誘発性次亜塩素酸塩を除去する
APFの蛍光強度の増加により明らかなように、放射線はClOを線量依存的に生成する。特に、50Gyのγ線誘発性APFおよびHPF(図16A)は、SDGにより用量依存的に減少した(図16AおよびB)。APF蛍光の低下の最初の傾斜(1,816.30)は、HPF(695.75)に比べてより大きく、ClOに対するSDGの選択的除去効果を示す(挿入図、図16A)。APFに対するSDGの効果は、HPFに比べて、有意により顕著であった(図16B)。SDGは、APF(図16C)およびHPF(図16D)蛍光の増加により示される、放射線曝露(25および50Gy)由来のClO生成を低減させた(p<0.05)。APF/HPF比率はSDGにより低下し、ClOの選択的除去を示す。
タウリンの塩素化としての次亜塩素酸塩の放射線量依存的増加
放射線誘発性ClOが生物学的分子中のNH基を塩素化することを確定するために、我々は、タウリンの放射線誘発性塩素化について評価した。結果(図16E)は、生理食塩水中では、50、100、および200Gyでγ線がタウリンクロラミン形成を有意に高め、γ線がClO生成を誘発し、これは塩化物濃度に依存したことを示す(図16F)。この結果は、放射線が生理的溶液中で、生体分子に損害を与えることが可能なClOを誘導するという強力な証拠を提供する。
SDGは仔ウシ胸腺およびプラスミドDNAへの次亜塩素酸塩誘発性損傷を保護する
我々は、ClOがゲノム(図17A〜D)およびプラスミド(図17E〜F)DNAに対し損傷を誘発するかどうかを明確にした。実際に、ClOはDNA断片化を用量依存的に誘発し(図17A、B)、低分子量断片が増加した。0.5mM次亜塩素酸塩1.0μMに暴露されたゲノムDNAに対する損傷は、すべてのSDG(市販または合成)により、既知の抗酸化剤のケルセチンおよびClO除去剤のシリビニンと同等のレベルまで低減された(図17C、D)。同様に、ClOによるプラスミドDNAに対する損傷も、SDGにより低減された(図17E、F)。特に、我々は、アガロースゲル電気泳動で異なる移動パターンを有する、損傷を受けたオープンコイルDNAと比べて、スーパーコイル(SC)プラスミドDNAの量を評価した。25μMでのSDGの存在により、プラスミドDNAに対するClO誘発性損傷が低減され、DNAはOC型(18.6%±9.4%)に比べて大部分がスーパーコイル型(81.3%±9.4%)で保存された。
2−APの次亜塩素酸塩誘発性塩素化に対するSDGの保護効果
DNAへのClOの損傷がヌクレオベース修飾により起こるのかどうかを明確にするために、我々は、プリンの蛍光性類似体である2−APのClO誘発性塩素化を評価した。次亜塩素酸塩は、放射線曝露により生成されるものと同等の濃度(10μM)で与えた場合(図15A、16A、17C)2−AP蛍光を低減し、これはSDGによる前処理(60秒)により阻止された(18A、B)。最も重要なのは、SDGによる後処理は、ClOへの曝露の+15、+30、+60、+120、+180または+300秒後にSDGが添加された場合、次亜塩素酸塩誘発性2−AP修飾からの有意な回復をもたらしたことである(図18BおよびC)。これらの結果は、プリン塩基の次亜塩素酸塩誘発性修飾に対するSDGのヌクレオベース保護特性を示している。
2−APのγ線誘発性塩素化に対するSDGの保護効果
放射線がヌクレオベース塩素化を誘発するかどうかを明確にするために、我々は、上記と同じ系、すなわち、2−AP蛍光(図19A)を使用した。実際に、γ線への暴露により蛍光強度の線量依存的減少が生じ(ClOの存在下の場合と類似の観察(図18A))、これはSDGにより阻止された(図19A、B)。これらの結果は、γ線がヌクレオベースの塩素化を誘発することを示し、プリン塩基のこのような放射線誘発性修飾に対するSDGの保護特性を立証した。
放射線によるヌクレオベース塩素化を防止または緩和するSDGの作用の提案される機序
N−塩素化ヌクレオベースの回復または阻止の機序に関して、我々は、電子が豊富な芳香環によるN−Cl−分子の二電子還元、または一電子還元によりN−ラジカルが生成し、これが、次に、フェノール性のSDG成分中の−OH基から水素原子を奪い取ることを示唆する。機構1(図20)は、SDG保護の提案される機序を示す。我々のこの調査の結果は、次亜塩素酸イオンを除去することおよび放射線誘発性DNA損傷から保護することによるSDGの放射線防護作用の新しい機序に対する証拠を提供する。
考察
この調査の結果は、次の証拠を提供する:i)既知のリグナン抗酸化剤およびフリーラジカル除去剤であるSDGは、化学的手段ならびに放射線により生理的溶液中で生成した次亜塩素酸イオンを解毒した;ii)SDGは、次亜塩素酸塩誘発性損傷からゲノムDNAならびにプラスミドDNAを保護した;iii)SDG防御(次亜塩素酸塩誘発性DNA損傷からの保護または回復)の機序は、次亜塩素酸塩の除去およびヌクレオベース上のクロラミン(−NCl)からのアミノ(−NH)基の再生を含む;iv)γ線への暴露は、タウリンクロラミン形成の増加をもたらした;v)γ線への暴露は、プリン塩基の塩素化の増加をもたらし、これはSDGにより阻止された;vi)SDGの作用は、曝露前または暴露後に添加される場合、次亜塩素酸塩誘発性損傷からのDNAの保護の点で等しく効果的であり、すなわち、SDGはヌクレオベース塩素化の保護剤および/または緩和剤として機能できる;vii)市販のSDG、シリビニン、およびケルセチン(天然の抗酸化フラボノイド)に比べて、合成SDG(S、S)およびSDG(R、R)ジアステレオマーは、次亜塩素酸イオンの除去および次亜塩素酸塩誘発性DNA損傷の防止において同等に強力であった。これらの結果は、ヌクレオベースの次亜塩素酸塩誘発性修飾に対するSDGの保護および緩和特性を示す。
胸部放射線損傷のマウスモデルを使って、リグナンポリフェノールに富む穀物である全粒粉食用亜麻仁、ならびにSDGに富む亜麻仁リグナン配合物の、組織放射線防護的な役割を確定した。これらの調査は、インビボの放射線誘発性組織損傷に対するリグナンSDGの放射線防護的および放射線を緩和する特性を明確にした。抽出、精製、または合成亜麻仁SDGは、インビトロならびにインビボで強力な抗酸化剤である。SDGの治療潜在力を調査するために、我々は、新規化学反応によりSDGを合成し、合成SDG(R、R)およびSDG(S、S)の抗酸化特性を、それらの還元力、金属キレート化潜在力、および・OH、パーオキシおよびDPPHラジカルに対するフリーラジカル除去活性を評価することにより明確にした。我々はまた、合成SDG(R、R)、SDG(S、S)鏡像異性体の放射線防護特性を、プラスミドDNA(pBR322)および仔ウシ胸腺DNAに対するγ線照射誘発性損傷を防ぐそれらの潜在力を評価することにより実証した。
我々はまた、SDGによるゲノムDNAの最大放射線防護は約5.0μMの濃度で既に達成されており、これはそれらのフリーラジカル除去および抗酸化効果に対するEC50値、通常130〜200μMの範囲、より低い濃度であることを示した。この調査で確認したように放射線誘発性次亜塩素酸塩の除去におけるSDGの最大効力は、0.5〜5μMの範囲に入ることに留意するのは興味深い。このことは、SDGのDNA保護効果は、一部は、有害なClOの除去に起因することを示唆している。2−APの次亜塩素酸塩誘発性修飾に対するSDGの保護効果を示す結果は、SDGが、ヌクレオベースに対する次亜塩素酸塩誘発性損傷を防ぐことによりDNAを保護することを示す。
HOClは、NADPHオキシダーゼおよび基質としての塩化物イオンにより生成される過酸化水素を用いて活性化好中球のミエロペルオキシダーゼにより産生される。HOClは、ヌクレオベースを塩素化および酸化できる。HOClはヌクレオベースを塩素化できるので、これが遺伝子毒性を引き起こす可能性がある。塩素化ヌクレオシドは特定されており、炎症および癌に関連があるとされた。
それによりSDGが放射線誘発性損傷からDNAを保護できる、下記に示すいくつかの可能な機序が存在するであろう。1)ヌクレオベースの塩素化および酸化を生じさせる次亜塩素酸イオンを除去することによる機序;2)塩化物イオンと反応することにより次亜塩素酸塩を生成する・OHフリーラジカルを除去することによる機序。我々は、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中ならびに食塩水単独中(予備実験)の塩化物イオンの存在下で、・OHの産生が劇的に低下することを観察した。身体における生理液中の高濃度の塩化物イオンを考慮すると、次亜塩素酸塩の産生およびDNAを含む細胞成分に対する次亜塩素酸塩誘発性損傷の重要性が、放射線損傷の主なメカニズムであろう。3)ルテオリン、ケンペロールおよびケルセチンなどのいくつかのフラボノイドのように、DNA塩基対と結合することによる機序;4)プリンおよびピリミジン塩基上、特にC5、C6およびC8の位置ならびにデオキシリボースの位置でのプロトンの除去または・OHの付加を阻止することによる機序。これらの機序はフリーラジカル誘発性DNA損傷からの保護に対し提案された。5)最後に、形成されたクロロアミンの還元による、したがって、核酸において内部および外部アミノ基を再生することによる機序。したがって、次亜塩素酸イオンの除去剤としてならびに抗酸化剤でありフリーラジカル除去剤および次亜塩素酸塩誘発性塩素化からのヌクレオベースの保護剤として、SDGはDNA放射線防護剤および放射線緩和剤として機能できる。
次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸塩陰イオン(ClO)、次亜塩素酸(HClO)および遊離塩素(Cl)の混合物として溶液中にpH依存的な量で存在する。生理的pHで、ClOおよびHClOは主要分子である。・OHなどの強力な一電子酸化剤と異なり、次亜塩素酸塩は二電子酸化剤であり、・OHより反応性が低く、選択性が高い。次亜塩素酸塩は、電子が豊富な芳香環およびNH−化合物を塩素化できる。次亜塩素酸塩は、一級および二級アルコールならびにベンジルメチレン基および三級メチン基ならびにフェノールを酸化する。上記反応の第1ステップは塩素化であり、加水分解/HCl除去がそれに続く。SDGは、アミノ基を除く上記の全ての反応部位を含み、このことが、SDG分子を強力な次亜塩素酸塩除去剤にしている。機構1(図20)で、我々は、ヌクレオベースの一電子または二電子還元を用いるSDGによるDNA保護の新規機序を提案した。
まとめると、我々は、SDGが次亜塩素酸塩(ClO) イオンを除去し、放射線誘発性次亜塩素酸塩およびDNA損傷を防ぐことを示した。次亜塩素酸イオンは、塩素化/酸化によりDNA塩基を修飾し、その後DNA損傷を生じることが知られているので、我々の調査結果は、癌処置のための放射線療法または放射線への偶発的曝露に関連する正常組織の損傷の放射線防護剤としてSDGが有用であり得ることを示している。
実施例4
亜麻仁およびそのリグナンはベンゾアルファピレンの作用に対し保護する
亜麻仁、SDGおよびリグナン誘導体は、多段階の発癌プロセスを抑制することにより、タバコおよびその他の環境発癌物質に起因する肺腫瘍形成を軽減する(図21)。この実施例では、動物モデルにおいて、リグナンSDGがNrf2に調節される第2相解毒経路の調節、およびおそらくその他の機序を介して、化学防御活性を有することを示す実験が提供される。SDGの保護作用は、直接的ROS除去作用および/または間接的抗酸化/抗炎症特性、ならびに発癌性物質毒性およびDNA損傷の低減により媒介される。
レドックス感受性蛍光染料により検出されるように(図23)、タバコおよび環境の発癌物質ベンゾアルファピレン(BaP)へのマウス上皮細胞の暴露により、有害な活性酸素種(ROS)が誘導される。発癌性物質への暴露後、早くも2時間後に、蛍光強度の明確な増加により細胞中のROSの生成が示される。
細胞中でSDGが発癌性物質により誘発されたDNA酸化損傷を低減させることを示すために、SDG(10μM)を、25μMのBaPに暴露したヒト上皮細胞(A549)に加え、質量分析を使って、8−オキソ−7,8−ジヒドログアニン(8−オキソ−dGuo)の存在により示される、DNAに対する酸化的損傷を検出した。SDGは、発癌性物質曝露後、3および6時間でDNA損傷を低減化した(図22)。同様に、SDGが発癌性物質曝露由来のROS生成を阻止することを示すために、マウス上皮細胞を、10または20μMのBaPおよび濃度増加のSDG(0、0.1、0.5、1、5μM SDG)に暴露し、2時間後にROSを検出した。SDGは有害なROSを無視できるレベルまで除去した(図24)。
同様に、SDGは、BaPに暴露されたヒト上皮細胞中の遺伝毒性ストレスを防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、p53タンパク質のレベルの増加により示される遺伝毒性ストレスを誘発する(図25)。これは、5、10、25および50μMの濃度のSDGの存在により、用量依存的に軽減される。SDGはまた、BaPに暴露されたヒト上皮細胞中の酸化的DNA損傷を防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、二重鎖DNA切断のマーカーであるγ−H2AXのレベルの増加により示されるDNA酸化損傷を誘発する(図26)。これは、5、10、25、50および100μMの濃度のSDGの存在により、用量依存的に軽減される。さらに、SDGは、BaPに暴露されたヒト上皮細胞中のDNA付加物形成を防ぐ。BaPなどの強力な発癌性物質への細胞の暴露は、DNA付加物の形成を誘発する(図27)。DNA付加物は、発癌性物質に共有結合されるDNAの断片であり、悪性病変の発生に直接関連する。DNA付加物レベルは、単独でまたは組み合わせて加えられるSDGまたはその代謝物EDおよびELの存在により低減される。
亜麻仁およびそのリグナンは、化学的発癌性物質誘発性肺腫瘍のマウスモデルで保護を提供する。マウス(A/J系統)に、タバコおよび環境発癌物質BaPを腹腔内に1mg/Kg用量で4回注射投与(週1回)した(図28)。マウスは亜麻仁またはリグナン食餌を曝露時に開始する。曝露後の種々の時間にマウスを評価し、腫瘍量、マウスの体重、全体の健康プロファイルを特定した。
亜麻仁はマウス中の腫瘍量を低減させる
図29は、BaP曝露および食用亜麻仁投与の数ヶ月後のマウス肺の代表的臨床的画像を示す。図30は、BaP曝露および食用亜麻仁投与の数ヶ月後のマウス肺の代表的H&E染色肺切片を示す。対照食餌(上段パネル)または亜麻仁(下段パネル)を摂取したマウスの矢印で示される結節は、亜麻仁摂取マウスで小さいように見える。それぞれのパネルは、異なる動物を表す。
全体の腫瘍面積および結節サイズについて、画像解析ソフトウエアを使って、組織学的マウス肺切片を形態学的に評価した(図31AおよびB)。亜麻仁食餌を摂取したマウスの腫瘍により占められる肺の面積において有意な減少があった(p<0.03)。同様に、より小さい腫瘍結節サイズの傾向があった。肺当たりの腫瘍結節の全数(図32A)および肺に浸潤している腫瘍%(図32B)についても、組織学的マウス肺切片を同様に形態学的に評価した。亜麻仁補充による、肺当たりのより少ない腫瘍結節(A)およびより少ない腫瘍浸潤(B)の傾向が認められた。
最終的に、亜麻仁補充がBaPにより誘発される肺癌による消耗作用を防止することが示された。動物重量をBaP曝露後200日にわたり長期的に測定した。亜麻仁食餌を摂取し、BaPに暴露されたマウスは、対照食餌を摂取してBaPに暴露されたマウスより高い重量を示した(図33)。
実施例5
亜麻仁およびそのリグナンは、アスベスト誘発性損傷から細胞および組織を保護する
緒言
悪性中皮腫(MM)は、破壊的な、有痛で致死タイプの、治療および処置の現実的な見込みのない癌である。MMの発生は、アスベスト繊維への暴露に直接結びつけられてきた。最近の調査は、アスベスト誘発性癌の発病が、残留性アスベスト繊維により引き起こされる慢性炎症および酸化的組織損傷に起因することを示している。全粒粉亜麻仁(FS)は、既知の抗酸化、抗炎症および癌化学防御特性を有する。この実施例では、食餌中に添加されたリグナンセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)に富むFSおよびそのリグナン成分(FLC)の、急性のアスベスト誘発性炎症および炎症性サイトカイン放出を防ぐ能力をNf2+/mut、Cdkn2a+/mutマウスで試験した。
材料と方法
マウスの食餌およびアスベストへの曝露
リグナンセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)に富むFSおよびそのリグナン成分(FLC)をげっ歯類固形飼料に与えた。マウス(Nf2+/mut、Cdkn2a+/mut)に、単回の400mgの青石綿アスベストのipボーラスの1日後(+1)または1日前(−1)に、10%FSまたは10%FLC補充食餌を与え、3日後に腹部炎症および炎症促進性サイトカイン放出について評価した(図34参照)。NF2マウス株はアスベストへ暴露時に急速進行型のMMを発症するので、この株を選択した。
組織採取および分析
液体クロマトグラフィー、タンデム型質量分析(LC/MS/MS)を使って、哺乳類リグナンエンテロラクトン(EL)およびエンテロジオール(ED)などの亜麻仁リグナン代謝物の全身レベル(すなわち、血漿)を評価して、FSがこのマウス株の腸管内菌叢により効果的に代謝されること、およびレベルがその他のマウスモデルのものと同等であることを確認した。
PBSを使って腹部洗浄を行い、サイトスピン分析を使ってマクロファージ(MF)および好中球(PMN)のレベルを決定した。
考察
液体クロマトグラフィー、タンデム型質量分析(LC/MS/MS)を使って、哺乳類リグナンエンテロラクトン(EL)およびエンテロジオール(ED)などの亜麻仁リグナン代謝物の全身レベル(すなわち、血漿)を評価し、FSがこのマウス株の腸管内菌叢により効果的に代謝されること、およびレベルがその他のマウスモデルのものと同等であることを確認した(図37)。マクロファージ(MF)および好中球(PMN)の腹部洗浄液レベルは、FSおよびFLCの両方が、アスベストにより誘発された急性腹部炎症を低減させたことを示した(図36および38)。さらに、炎症促進性サイトカインTNF−αおよびIL−1βのレベルもまた、食用薬剤により低減された(図37および38)。
結論:これらの調査結果は、亜麻仁およびそのリグナン成分の化学防御特性は、アスベスト誘発性組織および細胞損傷からの保護にまで及ぶ。したがって、亜麻仁は悪性中皮腫の化学防御の際の食用薬剤として使用できる。
実施例6
インビボでのSDG投与の用量および動力学の最適化
この実施例では、水溶性の形態でSDGを経口胃管投与されたマウスでの薬物動態学、バイオアベイラビリティ、および用量反応に関するデータが提供される。
投薬調査:5、25、50および100mg/kg体重のSDG用量をマウスに(各用量n=5)経口投与し、4時間後、分析用に組織を集めた。SDGおよびその生理活性代謝物ED、ELおよびSECOの血漿中濃度を液体クロマトグラフィーおよび質量分析により分析し、ng/mLで表した(図39)。また、SDGおよびその代謝物の細胞内標的であるNrf2調節抗酸化酵素(AOE)の遺伝子発現レベルを、qRT−PCRを使って同じ動物由来の肺組織で測定した(図40)。HO1、NQO1およびGSTの遺伝子発現レベルは、わずか5mgのSDG/Kgでベースラインの2〜3倍に増加し、100mg/kgのSDGで、平均でベースラインの6倍に達した。遺伝子レベルは、肺組織中のタンパク質レベルにおける、低いがそれでも有意な増加により裏付けられる。
薬物動態学的調査:有意なAOE発現を誘発し同時に循環中のSDGの検出が可能な用量である100mg/kgを選択後、薬物動態学的調査を行って、標的組織(すなわち、肺)中のバイオアベイラビリティおよび生物学的効果を決定した。15分、30分、および1、2、4、6、8、12時間に血液試料ならびに組織(肺、脳、肝臓、腎臓、脾臓)を収集した。上記のように血漿および肺中のSDGレベルを決定した(図41)。100mgのSDG/kgの単回用量は十分に吸収され、インタクトSDGは循環中で投与後6時間まで(図41A)検出可能であり、およびフラッシングされた、血液不含肺組織中で4時間検出可能であった(図41B)。SDGの血漿および肺組織中の濃度は、30分でそれぞれ0.8および12.6μMのレベルに達した。注目すべきことに、代表的なAOE遺伝子発現レベル(HO−1、NQO1、GST)の明確な誘発が、ベースラインに対して有意に上昇した(p<0.05)(図41C)。観察された遺伝子発現の増加は、ウェスタンブロッティングで測定したタンパク質レベルの増加と相関した(図は示さず)。重要なことに、同じ用量で毎日2回7日間投与されたSDGは、不耐性も毒性も示さなかった。これらのデータは、この可溶性SDG形態により、有意なバイオアベイラビリティおよび効力を得られることを示す。したがって、ヒトの治療でのSDGの使用が大いに促進され、毒性のリスクはありそうにない。したがって、50〜100mg/Kg(1日当たり1または2mgのSDG)の用量が、標的組織中で予測される保護効果を誘導するのに十分であり、さらなる調査に使用できる。
実施例7
Nrf2欠損マウス中のBaP誘発性肺腫瘍形成における発癌の開始期または促進期に対するSDGの効果
肺傷害モデルからのデータは、食餌中のFSおよびFS由来SDGは、肺中のNrf2およびNrf2活性化遺伝子ならびにタンパク質を発現増加させ得ることを示す。この実施例では、Nrf2ノックアウトマウスを使って、この経路の活性化がSDGの化学防御作用の重要な機序であるという仮説を試験し、SDGが発癌の開始期および促進期の両方において活性を有するかどうかを明確にする。
Nrf2欠損マウスにおけるSDGの効果
これらの実験では、野性型A/Jマウス中でのBaP誘発性肺癌モデルで経口投与した合成SDGの効果を、A/J背景(我々の動物施設で現在維持しているコロニー)に戻し交配したNrf2欠損マウスと比較した。簡単に説明すると、1つの野性型(WT)マウス群および1つのノックアウト(KO)マウス群に対照食餌を摂取させる。1つのWTマウス群および1つのKOマウス群にSDGをそれらの飲料水経由で投与し、図42Aに示すように、毎日50および100mg/kgのSDG消費を達成する(肺癌の発症の抑制における用量反応関係を試験するため)。SDG投薬調査および動力学により、SDGは少なくとも数日間投与されるべきであり(これは、食餌が組織中で定常状態に達するために必要な最小限の時間であると決定されたため)、続けて、毎週4回の1mg/マウスのベンゾ[a]ピレン(BaP)のi.p.注射が必要であると決定された。経口投与(経口胃管で、または飲料水に入れて)される50および100mg/kgのSDGはいずれも、肺中で相酵素発現を誘発できる(図41参照)。4、6および9ヶ月でマウスを屠殺し(図42B参照)、肺組織をa)画像解析による腫瘍量の組織評価および定量、b)Nrf2調節AOE発現および酸化ストレスのウェスタンブロット検出、c)マウス組織および尿中の8−オキソ−7,8−ジヒドロ−2’−デオキシグアノシン(8−オキソdGuo)レベル、およびd)DNA付加物形成のために、採取した。マウスのサブセットをa)管支肺胞洗浄検査、およびb)CD11b/Ly6G、CD11b/F4/80、および抗CD3に対する抗体をそれぞれ用いる好中球、活性化マクロファージおよびT細胞などの炎症細胞のFACS分析、を使って肺炎症について評価する。
統計:統計的有意性を得るために群当たり必要とされるマウスの数は、20マウス/群と示唆された。
分析:上記のように(図29および31)、50および100mg/kgのSDGを与えられるWTマウスでは、腫瘍の数とサイズの減少が予測されるが、100mg/Kg用量での結果はさらに著しい(より少ない腫瘍)。対照(薬剤なし)を与えられるNrf2 KOマウスでは、BaPを解毒する能力の喪失のために、対照食餌摂取WTマウスに比べた場合、より多くの数の腫瘍が予測される。しかし、SDGの主要な効果はNrf2活性化を介して媒介されるので、SDGを受けているNrf2 KOマウスでの腫瘍の減少は予測されない(薬剤を与えられていないKOマウスに比較して)。Nrf2/SDGマウスでの腫瘍量において認められる減少が何であっても、SDGの直接的フリーラジカル除去効果などの、同様に寄与している他の機序に起因するものであり、これらは酸化ストレスのマーカーの測定により検出可能なはずである。
発癌の開始期および/または促進期におけるSDGおよびNrf2活性化の役割
上記データは、BaPの開始期および促進期の両方の期間中のSDG投与に関する明確な機序的データを提供すると期待される。開始期中のみ(図42A、プランB)または促進期中のみ(図42A、プランC)のSDG補充の効力を明確にすることも興味あることである。したがって、このスキーマで概要を述べた実験を、これらの異なる給餌スケジュールを用いて野性型A/Jマウスで行った。
分析:促進期または開始期中にSDGを投与する場合、腫瘍数およびサイズの減少が予測される。上記のように、調査はNrf2 KOマウスで繰り返され、この活性への第2相酵素発現上昇の寄与を明確にする。発癌中にNrf2は2つの役割を有し、その1つは腫瘍形成開始期中に防止的であり、2つめは悪性進行を促進することが、最近報告された。これらの調査結果は、肺癌における悪性の進行を防ぐためのNrf2の使用を示唆し、一方、Nrf2活性化剤は肺癌予防にさらによく適合することを示唆する。SDGは化学防御剤として効果的であることが予測される。SDGの抗発がん性効果におけるNrf2の役割にもかかわらず、例えば、全身性体液(血液)または肺組織におけるmiRNAの調節などの他の機序もまた関与し、またはより重要であることもあり得る。
喫煙者へのSDG補助剤の投与の、酸化ストレスの全身性および肺特異的バイオマーカーに対する効果
遺伝的および生化学的評価項目によるSDGの経口投与の遺伝的および生化学的臨床試験がデザインされる。
選択集団:第1群は、喫煙経験の全くない健常なボランティアからなる。この群は、「非誘導」環境におけるSDG補充により誘発される変化を評価するために、目的の遺伝子および酸化バイオマーカーの真のベースラインレベル(おそらく低い)の評価を可能とする。第2群の被験者は、現行の喫煙者から構成されるであろう。この群は、次の理由で選択される:i)彼らは活発な癌形成開始の高いリスクがあり、化学防御試験における潜在的被験者である、およびii)喫煙が呼吸上皮でそれ自身のゲノム変化、ならびに活性な酸化ストレスを誘発することが以前に示されている。この群は、喫煙者のゲノムおよび酸化ストレスマーカーのプロファイリングを可能にし、既に「活性化された」環境中でどのようなゲノム変化がSDGにより誘発されるのかを決定することを可能にする。この群はまた、この高いリスク集団における上昇した酸化ストレスマーカーのSDGによる減少の測定を可能にする。それぞれの患者がまたプラセボ対照およびSDG補助剤の両方(両方ともゼラチンカプセル剤で投与される)を摂取する、クロスオーバーデザインが選択される(図43参照)。
投与量:SDG含量の大きなばらつきを避けるために市販調製物(BREVAIL(商標))を選択し、バイオアベイラビリティを未処理または粉砕した亜麻仁の異なるバッチで観察した。あるいは、Mishra et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2013,(19):5325に記載のものなどの合成SDGを使用する。薬理的調査で、50mgのSDGを含むこの配合物での毎日投薬により、癌の減少に関連する最高五分位で認められるものに類似のENLレベル(中央値、63nmol/L)を産生したことが示された。
臨床試験:試験は、単一施設、無作為化、二重盲検、2期クロスオーバー試験となろう。1ヶ月の休薬期間が介在する2つの3週間処置期間が存在する(図43)。クロスオーバーデザインの原理は、被験者内の処置の比較が、すべての「被験者効果」を比較から取り除き、試験の効率と検出力を高めるということである。20人の健康なボランティア(10人の喫煙者および10人の生涯非喫煙者)は無作為化されて、順に、50mgのSDG(1カプセルのBREVAIL(商標)または合成SDG)を毎日3週間摂取し、続けて1ヶ月休薬期間の後、プラセボ(同じ提供者(Lignan Research,San Diego,CA)による、SDG不含の同じカプセル)をさらに3週間摂取するか、またはプラセボを3週間、1ヶ月の休薬期間、およびその後に50mgのSDGを3週間摂取する。口腔上皮(口腔スワブ)、呼気凝縮液、尿および血液をベースライン、ならびに2、3、7、9、および10週に取得する。現行の喫煙状態は尿中コチニンアッセイにより確認される。試験は、ペンシルベニア州立大学治験審査委員会で承認され、全参加者は書面でのインフォームドコンセントを提出する。包括的喫煙歴や受動喫煙(ETS)を含むベースラインでの詳細なアンケート調査が実施される。参加者は、副作用の調査、試験薬剤摂取に対する遵守、一時的タバコおよび薬物使用に関するデータ収集ならびに試料収集のために毎週診察される。
統計の根拠/検出力分析:目的とする主要な比較は、尿中8−オキソ−7,8−ジヒドロ−2’−デオキシグアノシン(8−オキソ−dGuo)により測定される尿中酸化ストレスの変化、呼気凝縮液の変化(試験的なもの)、およびSDG処置後の試験被験者の口腔内上皮における遺伝子発現レベルの変化である。20人の患者は、この予備的な試験に対し合理的な検出力を提供すると想定される。この試験の性質のために、多重比較に対し補正を適用しない。試験は、SDG補助剤の効果の評価が得られるようにデザインされる。また、持ち越し効果の試験に対する検出力は限られているが、4週間の休薬期間はこれらの懸念を不要にするはずであるということに留意されたい。
経口SDG摂取後の口腔内スワブ上皮細胞中の遺伝子発現変化の評価
これらの実験では、口腔内粘膜の上皮細胞を気管支上皮組織の代用組織として使用する。このような細胞は、侵襲的気管支鏡検査を必要とする気管支上皮細胞より容易に得られる(すなわち、単に頬の綿棒によるふき取りを用いて)。ヒトでのこの手法の妥当性は、口腔内上皮が遺伝子アレイ調査で気道気管支組織の代用組織として機能し得るという証拠により裏付けられる。
この手法は、マウスで摂食FSを使用することによりさらに検証された。マウスに対照または10%FS食餌を3週間給餌した後、一連の組織を採取し、2つの代表的なNrf−2誘導可能タンパク質(HO−1およびNQO1)の発現を、免疫ブロット法により分析した。これらのマーカーの肺および肝臓における著しい増加が認められた(データは示さず)。重要なことに、両タンパク質の鼻上皮での明確に検出可能な増加が認められ(図44)、したがって、鼻咽頭組織も肺の代用品として使用できることを実証する。また、ヒトでのこの手法を裏付けるいくつかの実施可能データも存在する。全粒粉FS(毎日40g)を2人の健康なボランティアに投与した。口腔内スワブを採取し、RNAをうまく抽出し、cDNAを作製した。Nrf2依存性遺伝子HO−1の相対的発現レベルを測定した。図45に示すように、HO−1のmRNA発現は、1人の被験者で34%、2人目の被験者で63%増加した(p<0.05)。これらのデータは、この手法が実施可能であり、健常なボランティアにおいて、FSおよびSDGがNrf2依存性遺伝子を増幅することを示す。
この試験では、ベースラインで、および繊維対照およびFS食餌の2および4週後に、対照および喫煙被験者の両方で口腔内スワブを採取した。mRNAおよびcDNAが上記のように生成され、RT−PCRに供して、NQO−1、HO−1、およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を含む代表的な抗酸化剤および第2相薬物代謝酵素の相対的発現レベルを評価する。Nrf2誘導可能酵素の「典型的な」代表的物質であることに加えて、選択した酵素は重要な機構的役割を演ずる可能性もある。NQO1は、タバコの煙中に存在する前発癌物質の解毒および活性化の二重の役割を果たす。NQO1の変異遺伝子型は、日本人被験者での肺癌リスクの低下と有意に関連していた。HO−1もまた、遺伝的調査で、シガレットの煙中の酸化剤および芳香族炭化水素に対する細胞保護剤と示唆されている。したがって、HO−1はまた、亜麻仁の効果をモニターするための重要なバイオマーカーでもある。多くの調査で、GST多型、喫煙、および肺癌の間の関係が示された。重要なのは、肺細胞中のベンゾ[a]ピレン由来DNA付加物が、肺特異的GSTによりチトクロムP−450およびアルド・ケト還元酵素の両方が媒介する代謝から生じる反応性中間体の解毒により調節されることである。ベンゾ[a]ピレンは重要な肺発癌性物質でありタバコの煙中に存在するので、GSTは、喫煙者における亜麻仁の効果のバイオマーカーとしてモニターされる。
データ分析:5人の健康な非喫煙ボランティアの口腔内スワブ由来の大きなcDNAプールを作成し、分析用の「ベースライン」コンパレータとして使用する。β−アクチンおよびGAPDHを使って、全試験試料由来のcDNAをこのプールに正規化する。正規化した後、それぞれの試験試料をベースラインコンパレータと比較し、パーセントまたは倍率変化を計算する。一次解析は、喫煙未経験者および現行喫煙者におけるSDG摂取の3週間前および3週間後の遺伝子発現の変化を比較することである(対応のあるt検定を使って)。値はまた、それらのプラセボ対照試料の値と比較される。追加の分析により、休薬値(反復測定ANOVA)、およびベースライン時点ならびにSDGおよびプラセボ摂食後の非喫煙者と喫煙者との間の比較を含む、すべての時点にわたるSDGによる発現の変化が比較される。2対3週のデータおよび3週対休薬データを比較して、反応の動力学が確立される。
同じ患者集団中でのSDGによる酸化ストレス減少の測定
ヒト被験者中の酸化ストレスを測定するのは難しいが、最も確立された手法の1つは、IsoPの尿中レベルを測定することである。このマーカーに対し信頼性が高く再現可能なアッセイが開発されてきた。40gのFSを13週まで摂取した、肺移植を待っている患者からデータを入手した。尿IsoPは徐々に低下することがわかったが、FS摂食により、全身の酸化ストレスの低下徴候が認められた(一部のIsoPサブカテゴリはFS前レベルの26%に低下した)。代表的な患者のデータを図46に示す。シガレット煙中の発癌性物質であるBaPは、活性酸素種媒介DNA鎖切断および8−オキソ−7,8−ジヒドロ−2’−デオキシグアノシン(8−オキソ−dGuo)形成を引き起こす。8−オキソ−dGuoは、LC−MRM/MSを使って、生物検体(尿、肝臓、肺)中で検出可能である。2人のヒトボランティア由来のデータは、毎日40gのFSの3週間の消費が8−オキソ−dGuoの減少の傾向を誘発することを示し、傾向はまた、同じ食餌を摂取した肺移植患者(n=5)でも認められた(図47)。
試験:試験では、対照および喫煙被験者の両方で尿試料が複数の時点で採取される。尿中IsoPおよび8−オキソ−dGuoのレベルが盲検方式で測定される。
肺酸化ストレスを評価するための呼気凝縮液
これらの被験者で気管支鏡検査のような侵襲的試験を行うことが可能でないことを考慮して、非侵襲的試料収集技術である呼気凝縮液(EBC)が、肺酸化ストレスを調査するために使用される。多くの物質が呼気中に認められ、それらは呼気の冷却により(すなわち、凝縮させることにより)得られる液体中で検出可能である。この方法の利点は、肺中の酸化ストレスバイオマーカーのリアルタイム分析および評価のための非侵襲的サンプリング方法として、非侵襲的で簡便であることである。酸化ストレスのバイオマーカーには、H、イソプロスタン(IsoP)、マロンジアルデヒド、4−ヒドロキシ−2−ノネナール、抗酸化剤、グルタチオンおよびニトロソ化ストレスマーカーが含まれる。EBC中のイソプロスタンレベルを、肺酸化ストレスに対するFSの効果を調査する有用な非侵襲的手法として評価する。8−IsoPは、対照被験者および喫煙者から収集したEBC由来の尺度であった。非喫煙者でのレベルは一律に低くて、試験感度(1.2pg/ml±0.6、n=8)に近く、EBCは非喫煙者では有用ではないことを示唆する。レベルは、4人の喫煙者でのみ測定されたが、興味深いことに、これらの被験者の内の2人は、極めて高レベル:16pg/mlおよび6.5pg/mlであった。したがって、高ベースラインレベルを有するこれらの喫煙者では、EBCを肺特異的酸化ストレスを追跡するのに使用する。
データ分析:それぞれの被験者に対してベースライン値が測定され、処置(3週間)の終了時にて認められる変化が、対応のあるt検定を使って評価される。追加の分析により、休薬値(反復測定ANOVA)、およびベースライン時点およびSDG摂食後の非喫煙者と喫煙者との間の比較を含むすべての時点にわたる、SDGによる発現の変化が比較される。我々は、2対3週のデータおよび3週対休薬データを比較して、反応の動力学を確立できる。
亜麻仁リグナン、SDGの化学防御特性
これらの実験では、SDGが生体異物からの毒性を減らし、スルホラファンに類似のBaPなどの発癌性物質を解毒できるという仮説が試験される。第1に、気管支上皮細胞に対するインビトロでのSDGの効果が評価される。MTTアッセイなどの細胞傷害性試験を、下記の全てのSDG用量に対し行う。第2に、BaPマウスモデル中に経口投与されたSDGが評価される。
正常なマウスおよびヒト一次肺上皮細胞でのBaPのSDG媒介性解毒の評価およびNrf2媒介性の第2相酵素発現の誘発
BaP(10または20μM)は、上皮細胞により代謝的に活性化された場合、用量および時間依存的形式でROSを誘導する(図23)。マウスの調査では、不死化C10マウス気管支細胞株(Balb/Cマウス由来)が使用される。理由は、これらの細胞は非腫瘍形成性であり、接触阻害され、調査下にある全てのNrf2調節機構を含むためである。A549細胞(形質転換されているが、高度に分化された肺癌細胞株であり、ヒト1型肺胞上皮細胞のモデルに使われ(図22〜23のデータ参照)、かつ重要なことに、一次気管支上皮細胞である)を使って類似の調査が行われる。
直接的なROS妨害を評価するために、一連の臨床的に意義のある濃度(0.1〜10μM)のSDGが10μMのB[a]Pと同時に加えられ、直接的抗酸化活性を示す、HDCF蛍光の減少について測定される。液体クロマトグラフィー/多重反応モニタリング質量分析(LC/MRM−MS)もまた、GSSG:GSH比を測定するためのものである。BaPはまた、LC−MRM/MSを使って測定できるDNA付加物形成を迅速に誘発できる(図22)。BaPにより引き起こされるBaP誘発性DNA酸化損傷は、8−オキソ−dGuo形成、標準的コメット画像解析を使う個々の細胞のテイルモーメント(データは示さず)、またはγ−H2AXの検出のための免疫ブロットの濃度分析(データは示さず)により測定できる。DNA付加物および酸化的変化を評価するために、一連の濃度のSDGが10μMのB[a]Pと同時に加えられ、これらのパラメータが測定される。さらに、MTT細胞傷害性アッセイを行って、発癌性物質の非存在下および存在下のこれらの細胞に対する直接的SDG効果が評価される(FSおよびFLCのみがインビボで試験され得る)。次に、気管支上皮細胞中の第2相酵素を発現上昇させる精製SDGの能力が試験される。特に、リグナンSDG(0.1〜10μM)処理を伴うインキュベーションの0、1、2、4、24、48、および72時間後のGST−Ya、ならびにNQO−1のメッセージおよびタンパク質の誘導が測定される。これらの酵素は、第2相システムの特徴的な代表的ARE調節酵素として選択される。RT−PCRおよび免疫ブロット分析が実行される。第2相酵素発現上昇の経時変化を特定した後、上皮細胞をSDGで前処理し、最大の第2相誘導の時点でBaPを加える。上記アッセイを使って、酸化ストレス、DNA損傷、および細胞死が評価される。
データ分析、予測される結果および追加の調査:第1セットの調査は、SDGの直接的抗酸化効果を明確にする。第2セットの調査は、SDGそれ自体が消失する、後の時点で行われ(したがって、直接的抗酸化効果は存在しない)、その第2相酵素誘発効果によるSDGの効果を明確にする。酸化ストレスおよび炎症の追加の測定を行って、血漿酸化ストレス測定値(血漿マロンジアルデヒド)および炎症促進性のストレスマーカー(例えば、IL−6、IL−1α、IL1β、TNF−α、C反応性タンパク質)のSDGによる低下を明確にする。
A/Jマウス化学発癌性物質誘発性肺腫瘍形成のマウスモデルにおける、SDGの化学防御特性
上記(図42A、プランA)と同じ試験デザインにより、A/Jマウス肺でのBaP誘発性発癌の進行に対する経口投与SDGの効果が調査される。SDG補充マウスが対照と直接比較される。追跡調査試験が行われ、これには、開始期中のみにSDGを使った試験(図42A、プランB)、および促進期中のみにSDGを使った試験(図22A、プランC)が含まれる。
統計:動物試験は通常、20匹のマウスの3群以上を含み(例えば、対照対50mg/KgのSDG)、ANOVAまたはその他の適切な線形モデルを使って解析される。全ての計算は、両側検定、0.05のアルファレベル、および少なくとも80%の検出力を前提とする。
実施例8
アスベスト誘発性発癌に対するSDGの効果
SDGまたは亜麻仁食餌は、アスベスト誘発性ROS/炎症を減らし、1)ROS、2)低減したサイトカイン、3)低減したHMGB1、4)より少ない腫瘍化フォーカス、および5)より少ない腫瘍、をもたらすと仮定される。根底にある仮説は、低減された炎症および酸化ストレスが、細胞の低減された悪性転換およびより少ない腫瘍量をもたらすであろうということである(図48参照)。
亜麻仁リグナンSDGがアスベスト誘発性炎症ならびに酸化およびニトロソ化ストレスを低減させるであろうという仮説を試験するために、マウス腹膜マクロファージを様々な濃度の青石綿アスベスト繊維(10、20、30、および40ng/cm)に暴露した。アスベスト曝露後の種々の時間(3、4、6、および8時間)で、細胞をSDG(50μM)と共にインキュベートし、24時間後に上清を集め、炎症性のサイトカイン分泌およびニトロソ化/酸化ストレスを検出した(図49)。
SDGは、インビトロでヒト中皮細胞によるアスベスト誘発性ROS分泌を低減させる(図50)。細胞中のアスベスト誘発性ROS検出するための実験プラン:(ヒト中皮の)HM細胞またはマウスマクロファージを20%DMEM中で24時間プレート培養した;HBSS中の20μMのDCFを1時間加えた;H(100μM)、アスベスト(10μg青石綿/cm)および/またはSDG(50μM)を含む1%DMEMで上清を置換した;およびアスベスト曝露の開始後36時間まで蛍光レベルをモニターした。結果は、アスベストおよびHは高レベルのROSを誘導するが、培地中へのSDGの添加がROSレベルをベースラインレベルまで有意に低下させたことを示す(図50)。
培養未処理マクロファージにおけるアスベスト誘発性酸化ストレス(ROS放出)を評価した。細胞をROS感受性染料H2DCFDAで30分間処理した後、ビークル、40μg/cmアスベスト繊維、または4uM次亜塩素酸塩溶液に暴露し、90、150分および27時間にわたり、分光測定により蛍光強度を測定した。アスベスト曝露後直ちにアスベスト誘発性ROSが生成され、観察期間中持続した(図51)。
アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、酸化ストレスを低減する(図52)。雌C57/Bl6マウスに2mLのチオグリコレートを注射し、3日後に腹膜マクロファージを採取した。ウエル当たり2百万細胞を6ウエルプレートに播種し、20μg/cmのアスベストに暴露した。細胞を25または50μMのSDG(合成SDG)で、アスベスト曝露の3、4、6、または8時間後に処理した。細胞をアスベスト曝露24時間後に採取した。凍結上清試料で分析を行った。結果は、脂質過酸化のマーカーであるマロンジアルデヒドが、アスベスト曝露時間と共に増加したことを示す(図52A)。細胞に加えられた25および50μMのSDGにより、MDAのレベルは、有意に減少した(p<0.05)(図52B)。
アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、ニトロソ化ストレスを低減する(図53)。アスベスト曝露後の細胞中のニトロソ化ストレスの低減におけるSDGを評価するために、雌C57/Bl6マウスに2mLのチオグリコレートを注射し、3日後に腹膜マクロファージを採取した。ウエル当たり2百万細胞を6ウエルプレートに播種し、20μg/cmのアスベストに暴露した。細胞を25または50μMのSDG(合成SDG)で、アスベスト曝露の3、4、6、または8時間後に処理した。細胞をアスベスト曝露24時間後に採取した。凍結上清試料で分析を行った。結果は、ニトロソ化ストレスのマーカーである亜硝酸塩が、アスベスト曝露時間と共に増加したことを示す(図53A)。細胞に加えられた25および50μMのSDGにより、MDAのレベルは、有意に減少した(p<0.05)(図53B)。
アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、炎症性のサイトカイン(IL−1β)分泌を低減する(図54)。アスベスト曝露後の細胞中の炎症性のサイトカイン(IL−1β)の分泌の低減におけるSDGを評価するために、雌C57/Bl6マウスに2mLのチオグリコレートを注射し、3日後に腹膜マクロファージを採取した。ウエル当たり2百万細胞を6ウエルプレートに播種し、20μg/cmのアスベストに暴露した。細胞を25または50μMのSDG(合成SDG)で、アスベスト曝露の3、4、6、または8時間後に処理した。細胞をアスベスト曝露24時間後に採取した。新しい上清試料で分析を行った。結果は、炎症促進性サイトカインのマーカーであるIL−1βが、アスベスト曝露時間と共に増加したことを示す(図54A)。細胞に加えられた25および50μMのSDGにより、IL1βのレベルは、有意に減少した(p<0.05)(図54B)。
アスベストへの暴露数時間後にマクロファージに投与されたSDGは、炎症性のサイトカイン(TNF−α)分泌を低減する(図55)。アスベスト曝露後の細胞中の炎症性のサイトカイン(TNF−α)の分泌の低減におけるSDGを評価するために、雌C57/Bl6マウスに2mLのチオグリコレートを注射し、3日後に腹膜マクロファージを採取した。ウエル当たり2百万細胞を6ウエルプレートに播種し、20μg/cmのアスベストに暴露した。細胞を25または50μMのSDG(合成SDG)で、アスベスト曝露の3、4、6、または8時間後に処理した。細胞をアスベスト曝露24時間後に採取した。新しい上清試料で分析を行った。結果は、炎症促進性サイトカインのマーカーであるTNF−αが、アスベスト曝露時間と共に増加したことを示す(図55A)。細胞に加えられた25および50μMのSDGにより、TNF−αのレベルは、有意に減少した(p<0.05)(図55B)。
簡単に説明すると、この実施例のインビトロ実験は、(1)SDGはヒト中皮細胞およびマウス未処理のマクロファージ中のアスベスト誘発性ROSを阻止する;(2)SDGはアスベストに暴露されたマウス腹膜マクロファージによる炎症性サイトカイン分泌を阻止する;および(3)SDGはアスベストに暴露されたマウス腹膜マクロファージ中の酸化ストレス(脂質過酸化)およびニトロソ化ストレス(亜硝酸塩レベル)を阻止する、ということを示す。これらのインビトロ実験は、アスベスト曝露による慢性炎症および最終的な悪性病変を低減することにおけるSDGの有用性を明らかにするインビボ実験を支持する。
したがって、2匹のマウスモデルを使ってSDGがアスベスト誘発性中皮腫で試験され、この場合マウスは、アスベスト曝露後に中皮腫を発症し易い遺伝的素因がある。これらのモデルを使って、マウスへのアスベスト単回投与に対する亜麻仁およびSDGの急性効果を評価する。また、亜麻仁およびSDGがアスベスト誘発性急速進行型MMのこれらのモデルにおける腫瘍の発生を抑制するかどうかを試験する(図56)。
SDGに富む亜麻仁リグナン食餌(FLC)は、MEXTAGマウス中のアスベスト誘発性腹部炎症を低減させる(図57)。簡単に説明すると、6匹の雄MEXTAGマウス(10〜12週齢)に0.5mLの容積の400μgの青石綿アスベストをip注射した。アスベスト注射の前に、半分のマウスにSDGに富むFLC食餌(35%SDG)を2週間与え、残りのマウスには標準食餌を与えた。3日後、マウスを5mLのPBSで洗浄し、洗浄液を上清および細胞計数用に採取した。サイトスピンを行い、3〜5個の別々の視野を計数し、全細胞の差異%を計算した。0%FS摂取マウスに比べて、10%FLC摂取マウスは、26%の腹部洗浄液中WBCの減少があった(p=0.014)(図57)。
アスベストに暴露した7週齢雄NF2(129sv)(+/−)マウスで急性期調査を行い、食餌により投与された亜麻仁およびリグナンSDG配合物の効果を評価した。NF2マウスのアスベスト暴露および亜麻仁/SDGリグナン配合物評価の実験計画を図58に示す。簡単に説明すると、雄NF2(129SV)(+/−)を0日目に腹腔内注射経由で400μgアスベストに暴露した。マウスは試験食餌(0%FS、10%FS、10%FLC;各群n=2マウス)をアスベスト曝露の24時間前(−1日目)に開始し、アスベスト曝露後3日目に屠殺した。5mL 1xPBSを用いて腹部洗浄(AL)を行った。炎症細胞の流入は、アスベスト曝露後3日までにピークになり、9日までに次第に少なくなった。したがって、全てのその後の実験で、炎症を評価する時点として3日を選択した(図59)。
亜麻仁およびそのSDGに富むリグナン成分は、アスベスト誘発性炎症を低減した(より若齢のマウス)(図60)。全白血球(あう60A)は、食餌中のFSまたはFLC添加と共に減少したが、有意ではなかった。しかし、細胞間の差異、特にマクロファージレベルを見ると、レベルは、亜麻仁およびSDGリグナン食餌の両方により有意に低減された(図60B)。
亜麻仁およびそのSDGに富むリグナン成分は、アスベスト誘発性炎症を低減した(老齢マウス)(図61)。腹部アスベストに暴露された老齢マウス(図61A)は、ただの300,000細胞/mLに比べて、3,000,000WBC/mLの腹部洗浄液を示す(10倍多い)ように、アスベストに対し、より感受性が高い。結果は、炎症細胞の好中球(図61B)およびマクロファージ(図61C)が両方とも、若齢マウス中よりも老齢マウス中で有意に多いことを示した。
SDG(食餌配合物で投与される)に富む亜麻仁リグナン抽出物は、老齢マウス中のアスベスト炎症を低減する(図62)。雄NF2(129SV)(+/−)マウスに400μgのアスベストを0日目に注射した(腹腔内)。マウスは試験食餌(0%FSまたは10%FLC)をアスベスト曝露の前の週(−7日目)に開始し、アスベスト曝露後3日目に屠殺した。5mL 1xPBSで腹部洗浄(AL)を行った(1mLの腹部洗浄液を遠心分離し、上清を凍結した)。血漿を集めて、−80℃で凍結した。洗浄液中の細胞を評価し、SDGに富む食餌により、全WBCおよび好中球、マクロファージおよび好酸球が全て有意に減少したことを示した。
SDG(食餌配合物で投与される)に富む亜麻仁リグナン抽出物は、老齢マウス中のアスベスト炎症性サイトカイン分泌およびニトロソ化ストレスを低減する(図63)。雄NF2(129SV)(+/−)マウスに400μgのアスベストを0日目に注射した(腹腔内)。マウスは試験食餌(0%FSまたは10%FLC)をアスベスト曝露の前の週(7日目)に開始し、アスベスト曝露後3日目に屠殺した。5mL 1xPBSで腹部洗浄(AL)を行った(1mLの腹部洗浄液を遠心分離し、上清を凍結した)。血漿を集めて、−80℃で凍結した。SDGに富む食餌により、サイトカインのIL1βおよびTNFα、ならびに亜硝酸塩のレベルが有意に低減した。
簡単に説明すると、NF2マウスを使ったこれらのインビボ実験は、次のことを示している。(1)SDGに富む食餌を摂取したマウスは、腹部洗浄液WBCにより測定して、腹部炎症を有意に低減させた;(2)SDGに富む食餌は、腹部洗浄液中の好中球の数を低減させた;(3)炎症促進性サイトカイン、IL−1βおよびTNFαのレベルは、SDGに富む食餌を摂取したマウスで低減された;および(4)SDGに富む食餌を摂取したマウスは腹部洗浄液亜硝酸塩のより低いレベルを有し、アスベスト繊維への暴露により誘発されたニトロソ化ストレスの低減を示唆する。
これらの実施例中のこれらの調査は、SDGの化学防御活性を実証する。SDGによる口腔内上皮中の第2相酵素の誘導および酸化ストレス低減を評価するために、より大規模のバイオマーカー調査が行われる。発癌性物質に露出された対象、例えば、以前のまたは現行の喫煙者での経口SDGの毎日投与後の酸化ストレスおよび炎症を測定する、追加の測定が行われる。かつこれらの測定には、血漿酸化ストレス測定(血漿マロンジアルデヒド)および炎症促進性のストレスマーカー(例えば、IL−6、IL−1α、IL1β、TNF−α、C反応性タンパク質、F2−イソプロスタン)の測定が含まれる。
本発明の特定の特徴を本明細書で例証し、説明してきたが、当業者であれば、多くの修正、置き換え、変更、および等価物を思いつくであろう。したがって、追加の請求項は、全てのこのような修正および変更が、本発明の真の趣旨の範囲内に入る場合には、これらを包含することを意図していることは理解されよう。

Claims (89)

  1. それを必要としている対象中で生体分子、細胞、または組織を放射線損傷から保護する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  2. 前記対象が放射線に暴露されるであろう対象である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記対象が放射線に暴露されたことがある対象である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記対象が治療手順の一部として放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項1に記載の方法。
  5. 前記対象が放射線療法を受けているまたは受けるであろう癌患者である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記癌患者が肺癌患者である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記対象が診断手順の一部として放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項1に記載の方法。
  8. 前記診断手順が歯のまたは骨のX線検査である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記診断手順がPETまたはCTスキャンである、請求項7に記載の方法。
  10. 前記対象が放射線に偶発的に暴露されたことがある、請求項1に記載の方法。
  11. 前記対象が彼らの職業の一部として放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項1に記載の方法。
  12. 前記職業が研究室技術者である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記対象がラドンに暴露されたことがある、請求項1に記載の方法。
  14. 前記対象がテロリズムの結果として放射線に暴露されたことがある、請求項1に記載の方法。
  15. それを必要としている対象中で生体分子、細胞、または組織を発癌性物質誘発性損傷、悪性転換および癌発生から保護する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  16. 前記対象が1種または複数種の発癌性物質に暴露されるであろう対象である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記対象が1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがある対象である、請求項15に記載の方法。
  18. 前記対象が癌を有する、請求項15に記載の方法。
  19. 前記対象が1種または複数種の発癌性物質に偶発的に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項15に記載の方法。
  20. 前記対象がテロリストの行為の結果として1種または複数種の発癌性物質または化学戦争毒物に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項15に記載の方法。
  21. 前記対象が嗜癖の結果として1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項15に記載の方法。
  22. 前記嗜癖が喫煙である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記対象が彼らの職業の結果として1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項15に記載の方法。
  24. 前記対象の職業が研究室技術者である、請求項23に記載の方法。
  25. それを必要としている対象中で生体分子、細胞、または組織を次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  26. 前記生体分子が核酸である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記生体分子がタンパク質または脂質である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  28. 前記生理活性成分が(S,S)−SDGである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記生理活性成分が(R,R)−SDGである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記生理活性成分が合成SDGである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記生理活性成分がSDG類似体である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記生理活性成分が食用組成物中で投与される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記投与するステップが経口的に投与することを含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  34. 前記生理活性成分が約1ナノモル濃度(nM)〜約1モル(M)の濃度のSDGである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記SDGの濃度が約25μM〜約250μMである、請求項34に記載の方法。
  36. 前記対象がヒト対象である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  37. 放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう対象中で放射線損傷を処置または予防する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  38. 前記対象が治療手順の一部として放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項37に記載の方法。
  39. 前記対象が放射線療法を受けているまたは受けるであろう癌患者である、請求項38に記載の方法。
  40. 前記癌患者が肺癌患者である、請求項39に記載の方法。
  41. 前記対象が診断手順の一部として放射線に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項37に記載の方法。
  42. 前記診断手順が歯のまたは骨のX線検査である、請求項41に記載の方法。
  43. 前記診断手順がPETまたはCTスキャンである、請求項41に記載の方法。
  44. 前記対象が放射線に偶発的に暴露されたことがある、請求項37に記載の方法。
  45. 前記対象が彼らの職業の一部として放射線に暴露されたことがある暴露されるであろう、請求項37に記載の方法。
  46. 前記対象の職業が研究室技術者である、請求項45に記載の方法。
  47. 前記対象がラドンに暴露されたことがある、請求項37に記載の方法。
  48. 前記対象が、テロリズムの結果として放射線に暴露されたことがある、請求項37に記載の方法。
  49. 1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう対象中で発癌性物質誘発性損傷、悪性転換または癌発生を処置または予防する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  50. 前記発癌性物質誘発性損傷、悪性転換または癌発生が癌である、請求項49に記載の方法。
  51. 前記癌が肺癌である、請求項50に記載の方法。
  52. 前記癌が悪性中皮腫である、請求項50に記載の方法。
  53. 前記対象が前記癌を発症していない、請求項50に記載の方法。
  54. 前記対象が1種または複数種の発癌性物質に偶発的に暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう、請求項49に記載の方法。
  55. 前記対象がテロリストの行為の結果として前記1種または複数種の発癌性物質または化学戦争毒物に暴露されたことがあるまたは暴露れるであろう、請求項49に記載の方法。
  56. 前記対象が嗜癖の結果として1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがあるまたは暴露れるであろう、請求項49に記載の方法。
  57. 前記嗜癖が喫煙である、請求項56に記載の方法。
  58. 前記対象が彼らの職業の結果として1種または複数種の発癌性物質に暴露されたことがあるまたは暴露れるであろう、請求項49に記載の方法。
  59. 前記対象の職業が研究室技術者である、請求項58に記載の方法。
  60. 前記1種または複数種の発癌性物質がアスベストである、請求項49に記載の方法。
  61. 前記1種または複数種の発癌性物質がタバコの煙である、請求項49に記載の方法。
  62. 前記対象が喫煙者である、請求項49に記載の方法。
  63. 前記対象が以前の喫煙者である、請求項49に記載の方法。
  64. 前記対象が副流煙に暴露される非喫煙者である、請求項49に記載の方法。
  65. 次亜塩素酸イオンに暴露されたことがあるまたは暴露されるであろう対象中で次亜塩素酸イオン誘発性損傷を処置または予防する方法であって、有効量の少なくとも1つの生理活性成分を前記対象に投与することを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  66. 前記生理活性成分が(S,S)−SDGである、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  67. 前記生理活性成分が(R,R)−SDGである、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  68. 前記生理活性成分が合成SDGである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  69. 前記生理活性成分がSDG類似体である、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  70. 前記生理活性成分が食用組成物中で投与される、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  71. 前記投与するステップが経口的に投与することを含む、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  72. 前記生理活性成分が約1ナノモル濃度(nM)〜約1モル(M)の濃度のSDGである、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  73. 前記SDGの濃度が約25μM〜約250μMである、請求項72に記載の方法。
  74. 前記対象がヒト対象である、請求項37〜65のいずれか1項に記載の方法。
  75. 生体分子、細胞、または組織を放射線損傷から保護する方法であって、前記生体分子、細胞、または組織を有効量の少なくとも1つの生理活性成分と接触させることを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  76. 生体分子、細胞、または組織を発癌性物質誘発性損傷から保護する方法であって、前記生体分子、細胞、または組織を有効量の少なくとも1つの生理活性成分と接触させることを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  77. 生体分子、細胞、または組織を次亜塩素酸イオンによる損傷から保護する方法であって、前記生体分子、細胞、または組織を有効量の少なくとも1つの生理活性成分と接触させることを含み、前記生理活性成分がセコイソラリシレジノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレジノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、これらの類似体、これらの立体異性体、またはこれらの組み合わせを含む方法。
  78. 前記生体分子が核酸である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  79. 前記生体分子がタンパク質または脂質である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  80. 前記生理活性成分が(S,S)−SDGである、請求項73〜75のいずれか1項に記載の方法。
  81. 前記生理活性成分が(R,R)−SDGである、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  82. 前記生理活性成分が合成SDGである、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  83. 前記生理活性成分がSDG類似体である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  84. 前記生理活性成分が約1ナノモル濃度(nM)〜約1モル(M)の濃度のSDGである、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  85. 前記SDGの濃度が約25μM〜約250μMである、請求項84に記載の方法。
  86. 前記細胞または組織が癌細胞または組織である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
  87. 前記癌が肺癌である、請求項86に記載の方法。
  88. 前記癌が悪性中皮腫である、請求項86に記載の方法。
  89. 前記生体分子、細胞、または組織がヒト生体分子、細胞、または組織である、請求項75〜77のいずれか1項に記載の方法。
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