以下、本発明の一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
本実施形態に係る認証システム1は、被認証物2が備える皮膜20が有する人工物メトリクス要素21を読み取る読取装置3と、人工物メトリクス要素21を読み取った結果に基づいて被認証物2の認証の可否を判定する判定装置4と、を備える。この皮膜20は、樹脂組成物の硬化物である。この人工物メトリクス要素21は、皮膜20内の複数の空洞210で構成されている。
本実施形態では、皮膜20内の空洞210を人工物メトリクス要素として利用することで、被認証物2に人工物メトリクス要素を設ける手間を削減できる。被認証物2が、その構成要素として皮膜20を有する場合には、被認証物2に人工物メトリクス要素21を設けるための工程を特に削減できる。
また、人工物メトリクス要素21は、皮膜20内の複数の空洞210で構成されているため、人工物メトリクス要素21を複製することは困難である。従って、本実施形態の人工物メトリクス要素21は、偽造されにくい。空洞210の大きさは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。この場合、人工物メトリクス要素21の複製をより困難にすることができる。尚、空洞210の大きさとは、空洞210の最大径を意味する。
また、人工物メトリクス要素21は、複数の空洞210からなる点模様状のパターンであることが好ましい。この場合、人工物メトリクス要素21の複性をより困難にできる。
尚、人工物メトリクス要素21のパターン(点模様)は、複数の空洞210のみで構成されていてもよく、複数の空洞210とそれ以外の要素とで構成されていてもよい。複数の空洞210以外の要素として、例えば、皮膜20における屈折率あるいは反射率が異なる領域が挙げられる。この領域は、塗膜24から皮膜20を形成する過程において、塗膜24中に分散している有機化合物(B)の結晶構造が変化することによって形成されうる。この場合の人工物メトリクス要素21は、複数の空洞210と、皮膜20の屈折率あるいは反射率が異なる領域と、で構成される。
本実施形態に係る認証システム1を、更に詳しく説明する。尚、認証システム1は、下記の構成に限定されない。
図1に示すように、認証システム1は、例えば、読取装置3と、判定装置4と、データベース5と、を備える。尚、図1に示す認証システム1は、被認証物2を含んでいないが、認証システム1が被認証物2を含んでいてもよい。
被認証物2の例には、プリント配線板、電子機器、紙幣、有価証券、パスポート、証明書、個人認証媒体、ブランド品、クレジットカード、電子マネー用カード等のカード類、タグ等が含まれる。この場合、被認証物2が備える皮膜20は、製品を保護するための保護膜であってもよく、製品情報を表示するラベルであってもよい。被認証物2は、プリント配線板であることも好ましい。この場合の皮膜20は、例えば、ソルダーレジスト層であってもよい。この場合、プリント配線板上が備えるソルダーレジスト層によって、プリント配線板の認証を行うことができる。
皮膜20は、人工物メトリクス要素21を有している。この人工物メトリクス要素21は、皮膜20内の複数の空洞210で構成されている。空洞210は、ランダムに配置されている。このため、人工物メトリクス要素21は、複数の空洞210からなるパターンである。
皮膜20の全体が人工物メトリクス要素21を有してもよく、皮膜20の一部が人工物メトリクス要素21を有していてもよい。本実施形態では、皮膜20は、人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23と、を含むことが好ましい。この場合、被認証物2の一部に存在する人工物メトリクス要素21を利用して認証を行うことができる。また、第二の領域23が人工物メトリクス要素21を有さないことは、第二の領域23に存在する空洞210の数が、第一の領域22よりも少ないことを意味してもよい。また、第一の領域22および第二の領域23の組み合わせによって、被認証物2の偽造防止性能を向上させてもよい。例えば、皮膜20において、第一の領域22または第二の領域23が配置されている位置に基づいて、認証をおこなってもよい。この場合、第一の領域22または第二の領域23の配置位置に基づく認証、および人工物メトリクス要素21を用いた認証からなる二段階認証をおこなうことができる。
図2Aおよび図2Bは、人工物メトリクス要素21を有する皮膜20を、レーザー顕微鏡で撮像した画像である。図2Aに示すように、人工物メトリクス要素21は、空洞210で構成されている。空洞210は、ランダムに配置されている。図2Bにおいて、X−X線の左側は第一の領域22を示し、X−X線の右側は第二の領域23を示す。図2Bに示すように、第一の領域22は人工物メトリクス要素21を有し、第二の領域23は人工物メトリクス要素21を有していない。
読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取るための装置である。読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取り可能であれば特に限定されない。読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を判定装置4に出力する。被膜20が第一の領域22および第二の領域23を有する場合には、読取装置3は、皮膜20における第一の領域22または第二の領域23が配置されている位置を読み取ってもよい。
読取装置3は、例えば、人工物メトリクス要素21を撮像可能な光学的な撮像装置であってもよい。撮像装置で撮像した人工物メトリクス要素21の画像を読み取ることで、人工物メトリクス要素21を構成する複数の空洞210の配置を把握できる。撮像装置の例には、カメラ、スキャナ、電子顕微鏡、およびレーザー顕微鏡が含まれる。読取装置3が撮像装置である場合、人工物メトリクス要素21を読み取った結果は、人工物メトリクス要素21の画像であってもよい。
読取装置3は、例えば、光量測定装置であってもよい。光量測定装置は、人工物メトリクス要素21に、レーザー光等の光を移動させながら照射して、その反射光を受光する。この反射光の光量は、複数の空洞210の配置、形状、大きさなどに影響されて増減する。このため、光量測定装置は、反射光の光量を測定することにより、人工物メトリクス要素21に特有の光量波形を導出できる。このような光量測定装置の具体例として、レーザー顕微鏡、レーザー距離計等が挙げられる。読取装置3が光量測定装置である場合、人工物メトリクス要素21を読み取った結果は、人工物メトリクス要素21の光量波形であってもよい。
図3は、判定装置4の構成(ハードウェア構成)の一例を示すブロック図である。図3に示す判定装置4は、制御装置41、記憶装置42、入力装置43、表示装置44、メディア入出力装置45、通信インターフェース46、および周辺機器インターフェース47を備える。各装置は、バス49で接続されている。判定装置4は、例えば、コンピュータである。
制御装置41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Accsess Memory)を備える。
CPUは、記憶装置42、ROM、記録媒体等に記憶されたプログラムを、RAM上のワークエリアに呼び出して実行できる。CPUは、バス49で接続された各装置を、駆動および制御できる。ROMは、ブートプログラム、BIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持できる。RAMは、プログラム、データ等を一時的に保持できる。制御装置41は、各種の処理を行うためのワークエリアを備え得る。
記憶装置42の例には、HDD(ハードディスクドライブ)、およびSSD(ソリッドステートディスク)が含まれる。記憶装置42は、制御装置41が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等を格納できる。制御装置41により、これらのプログラムは、必要に応じて読み出され、RAMに移され、CPUに読み出され、実行される。
入力装置43の例には、キーボード、マウス、タッチパネル、タブレット端末等のポインティング・デバイス、およびテンキーが含まれる。入力装置43に入力された情報は、制御装置41に送られる。
表示装置44は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)とで構成される。制御装置41から表示装置44に送られた情報は、ディスプレイ装置に表示される。
メディア入出力装置45の例には、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、ブルーレイディスクドライブ、およびMOドライブが含まれる。メディア入出力装置45は、データの入力および出力を行う。
通信インターフェース46は、例えば、通信制御装置、通信ポート等を備える。通信インターフェース46は、ネットワークを介して判定装置4と外部装置との通信を媒介できる。通信インターフェース46は、通信の制御を行うことができる。通信インターフェース46は、例えば、判定装置4と、データベース5、読取装置3等との通信を媒介できる。このため、データベース5および読取装置3は、通信インターフェース46を介して、判定装置4と接続され得る。
周辺機器インターフェース47は、例えば、判定装置4に周辺機器を接続するためのポートである。判定装置4は、周辺機器とのデータの送受信を、周辺機器インターフェース47を介して行う。周辺機器インターフェース47は、USB端子、IEEE1394端子、RS−232C端子等で構成され得る。判定装置4は、複数の周辺機器インターフェース47を有し得る。周辺機器インターフェース47は、有線接続のための端子であってもよく、無線接続のための端子であってもよい。周辺機器インターフェース47が無線接続のための端子である場合、判定装置4と周辺機器とが無線で接続されてよい。
バス49は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介するための経路である。
上記の構成を備える判定装置4では、例えば、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータ(登録用データ)をデータベース5に登録する処理(登録処理)、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータ(照合用データ)と登録用データとを照合して、被認証物2の認証の可否を判定する処理(認証処理)等が行われる。登録処理および認証処理は、記憶装置42等に記憶されているプログラムに従って、制御装置41が実行できる。
以下、判定装置4で行われる登録処理について、詳しく説明する。登録処理では、例えば、下記のステップS101〜ステップS104が行われる。
(ステップS101)
ステップS101では、読取装置3は、登録のために開示された被認証物2における人工物メトリクス要素21を読み取る。これにより、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が得られる。
(ステップS102)
ステップS102では、読取装置3から判定装置4に、通信インターフェース46を介して、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が送られる。これにより、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する。また、読取装置3で作成した人工物メトリクス要素21を読み取った結果をメディア入出力装置45によってメディアに記憶すると共に、メディア入出力装置45によってこのメディアから人工物メトリクス要素21の読み取った結果を取り出して判定装置4に送ってもよい。
(ステップS103)
ステップS103では、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果から、空洞210で構成されるパターンを示す登録用データを作成する。尚、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータが、そのまま登録用データとなってもよい。
(ステップS104)
ステップS104では、判定装置4は、データベース5に、通信インターフェース46を介して、登録用データを送る。これにより、登録用データが、データベース5に登録される。尚、登録用データは、製造番号等の被認証物2の固有の情報と対応付けられてもよい。この固有の情報は、入力装置43で入力されてもよく、表示装置44に表示されてもよい。また、データベース5には、複数の被認証物2の複数の登録用データが登録されてもよい。
以下、判定装置4で行われる認証処理について、詳しく説明する。認証処理では、例えば、下記のステップS201〜ステップS204が行われる。
(ステップS201)
ステップS201では、読取装置3は、認証対象である被認証物2における人工物メトリクス要素21を読み取る。これにより、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が作成される。このため、本実施形態に係る認証方法には、被認証物2が備える皮膜20が有する人工物メトリクス要素21を読み取る読取工程が含まれる。
(ステップS202)
ステップS202では、読取装置3から判定装置4に、通信インターフェース46を介して、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が送られる。これにより、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する読取結果取得工程が含まれていてもよい。
(ステップS203)
ステップS203では、判定装置4は、人工物メトリクス要素21の画像から、空洞210で構成されるパターンを示す照合用データを作成する。尚、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータが、そのまま照合用データとなってもよい。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21を読み取った結果から、照合用データを作成する照合用データ作成工程が含まれてもよい。
(ステップS204)
ステップS204では、判定装置4は、登録用データと照合用データとを照合することにより、データベース5から照合用データと一致する登録用データを検索する。このため、本実施形態の認証方法には、登録用データと照合用データとを照合する照合工程が含まれてもよい。
(ステップS205)
ステップS205では、照合用データと一致する登録用データが発見された場合、判定装置4は、認証OK(認証が「可」)と判定する。また、ステップS205では、照合用データと一致する登録用データが発見されない場合、判定装置4は、認証NG(認証が「否」)と判定する。換言すると、ステップS205では、判定装置4は、被認証物2の認証の可否を判定する。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21の画像に基づいて、被認証物2の認証の可否を判定する判定工程が含まれる。ステップS205では、判定装置4は、更に、製造番号等の被認証物2の固有の情報と、登録用データに対応付けられた被認証物2の固有の情報とを照合してもよい。この場合、誤判定を抑制できる。ステップS205における判定装置4による判定結果は、例えば、表示装置44に表示されてもよい。
尚、認証システム1の構成は、上記の例に限定されない。
例えば、認証処理を判定装置4で行い、登録処理を判定装置4とは別のコンピュータで行ってもよい。
例えば、認証システム1に含まれる各装置が、インターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。例えば、判定装置4と読取装置3、或いは判定装置4とデータベース5が、通信インターフェース46を介さずに、インターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
以下、認証用の皮膜20について更に詳しく説明する。
皮膜20は、上記の通り、樹脂組成物の硬化物であり、内部に複数の空洞210を含み、複数の空洞210が人工物メトリクス要素21を構成している。この樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、融点を有し、30℃において固形の有機化合物(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物(C)とを含む。
皮膜20は、以下の製造方法によって、製造される。
本実施形態の皮膜20の製造方法は、樹脂組成物の塗膜24を形成する塗膜形成工程と、塗膜24を露光する露光工程と、露光した塗膜24を加熱することで皮膜20を形成する加熱工程とを含む。固形の有機化合物(B)を含む樹脂組成物から形成した塗膜24を、露光した後に加熱して硬化させることにより、複数の空洞210が形成される。そして、この複数の空洞210が人工物メトリクス要素21を構成する。その結果、人工物メトリクス要素21を有する皮膜20が得られる。これに対して、塗膜24を加熱した後、塗膜24を露光した場合、塗膜24の加熱によって塗膜24中に分散している有機化合物(B)が融解するため、塗膜24を露光しても、空洞210は形成されにくい。
本実施形態では、樹脂組成物において、有機化合物(B)は、固体粒子の状態で存在していることが好ましく、固体粒子の状態で分散していることがより好ましい。この場合、複数の空洞210を効率良く形成できる。有機化合物(B)の固体粒子の粒子径は、20μm以下であることが好ましい。この場合、樹脂組成物の硬化物中に、空洞210を効果的に形成できる。有機化合物(B)が一次粒子を形成する場合、その平均一次粒子径は、20μm以下であることが好ましい。また、有機化合物(B)が凝集により二次粒子等の凝集物を形成する場合、その凝集物の粒子径は、20μm以下であることが好ましい。また、有機化合物(B)は、塊となった固体や粒子径の大きい粒子が粉砕されて、粒子径が20μm以下になったものであってもよい。有機化合物(B)の粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。なお、有機化合物(B)の固体粒子の粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置で測定できる。
本実施形態では、露光工程において、第一の領域22を露光すると共に、第一の領域22よりも少ない露光量で第二の領域23を露光することが好ましい。この場合、塗膜24の第一の領域22は、第二の領域23よりも多くの光重合反応が起こる。このため、加熱工程において、皮膜20の第一の領域22に対応する部分には、多くの空洞210が発生するが、皮膜20の第二の領域23に対応する部分には、第一の領域22よりも低い割合で空洞210が発生する、あるいは発生しない。第一の領域22に照射される紫外線の量は、好ましくは50mJ/cm2以上であり、より好ましくは100mJ/cm2以上であり、さらに好ましくは200mJ/cm2以上である。第二の領域23に照射される紫外線の量は、好ましくは500mJ/cm2以下であり、より好ましくは300mJ/cm2以下であり、さらに好ましくは100mJ/cm2以下である。
本実施形態では、加熱工程において、塗膜24を、有機化合物(B)の融点よりも30℃低い温度以上で加熱することが好ましい。換言すると、加熱温度Th(℃)は、有機化合物(B)の融点Tm(℃)から30℃引いた温度以上であることが好ましく、加熱温度Th(℃)は、Th≧Tm−30の関係を満たすことが好ましい。加熱温度Th(℃)は、例えば、100〜350℃の範囲内である。加熱時間は、例えば、10分〜5時間の範囲内である。また、有機化合物(B)の融点Tm(℃)は、100〜350℃の範囲内であることが好ましい。
以下、皮膜20を形成するための樹脂組成物、すなわち認証システム用の樹脂組成物に含まれる各成分を、詳しく説明する。
樹脂組成物は、上記の通り、光重合開始剤(A)と、融点を有し、30℃において固形の有機化合物(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物(C)とを含む。樹脂組成物は、更に、一分子中にエチレン性不飽和結合を有さないカルボキシル基含有樹脂(D2)、熱硬化性成分(E)、着色剤(F)、有機溶剤(G)、その他の成分(H)を含んでもよい。
[光重合開始剤(A)]
光重合開始剤(A)は、紫外線または電子線が照射されることで、ラジカル、カチオン、あるいはアニオン等を生成し、重合反応のきっかけになる化合物である。光重合開始剤(A)は、紫外線が照射されることで、ラジカルを生成する化合物であることが好ましい。光重合開始剤(A)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の窒素を含む開始剤;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。光重合開始剤(A)は、より好ましくは、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の窒素を含む開始剤、およびアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
樹脂組成物の固形分量に対する光重合開始剤(A)の割合は、好ましくは0.01質量%〜50質量%の範囲内であり、より好ましくは0.05質量%〜25質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0.1質量%〜15質量%の範囲内である。
[有機化合物(B)]
有機化合物(B)は、融点を有し、30℃において固形の化合物である。このため、有機化合物(B)は、昇華性の化合物ではない。有機化合物(B)は、融点以上の温度において低粘度の液体であることが好ましい。有機化合物(B)の融点は、好ましくは100〜350℃の範囲内であり、より好ましくは、130℃〜300℃の範囲内である。この場合、樹脂組成物に十分な紫外線(UV)、あるいは電子線が照射された後に加熱されると、樹脂組成物の硬化物中で空洞が特に生成しやすく、且つ樹脂組成物の硬化物全体に対する空洞の割合が高くなる傾向がある。これにより、人工物メトリクス要素21を構成する空洞210の数を多くすることができ、微細な人工物メトリクス要素21を形成できる。
有機化合物(B)は、熱硬化成分、光硬化成分、光重合開始剤からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。この場合、硬化物の硬化密度が向上する。
有機化合物(B)が熱硬化成分を含む場合、熱硬化性成分は、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物などの環状エーテル化合物を含むことが好ましく、結晶性エポキシ化合物を含むことがより好ましい。結晶性エポキシ化合物は、エポキシ基を有し且つ結晶性を有するモノマー、プレポリマーおよびポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。このような成分は市販され、容易に入手可能である。例えば結晶性エポキシ化合物は、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312(ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120TE(チオエーテル型結晶性エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の品名GTR−1800(テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品名YX−4000(ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂)、および1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(低融点タイプ)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。有機化合物(B)が熱硬化性成分を含む場合、この熱硬化性成分は、熱硬化性成分(E)に含まれる成分でもある。
有機化合物(B)が光硬化成分を含む場合は、光硬化性成分は、例えば、エチレン性不飽和基含有ポリマーなどを含むことが好ましく、多塩基酸を含むことがより好ましい。多塩基酸は、多価カルボン酸類であることが好ましい。多価カルボン酸類としては、その酸無水物、酸塩化物等が挙げられる。多塩基酸は、多価カルボン酸であることがより好ましい。多塩基酸は、例えばマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、シュウ酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸、イタコン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、およびビフェニルテトラカルボン酸、並びにこれらの多価カルボン酸の酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。有機化合物(B)が光硬化性成分を含む場合、この不飽和光硬化性成分は、不飽和化合物(C)に含まれる成分でもある。
有機化合物(B)が光重合開始剤を含む場合、光重合開始剤は、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤などを含むことが好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤の具体例には、BASF社製の品番IRGACURE 651、IRGACURE 184、IRGACURE 2959、IRGACURE 127、IRGACURE 907、IRGACURE 369E、IRGACURE 379EGが含まれる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例には、BASF社製の品番IRGACURE TPO、IRGACURE 819が含まれる。オキシムエステル系光重合開始剤の具体例には、BASF社製の品番IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02が含まれる。カチオン系光重合開始剤の具体例には、BASF社製の品番IRGACURE 270、IRGACURE 290、及び4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンが含まれる。有機化合物(B)が光重合開始剤を含む場合、この光重合開示剤は、光重合開始剤(A)に含まれる成分でもある。
樹脂組成物の固形分量に対する有機化合物(B)の割合は、好ましくは3質量%〜80質量%の範囲内であり、より好ましくは5質量%〜65質量%の範囲内であり、さらに好ましくは7質量%〜50質量%の範囲内である。この場合、皮膜20に十分な空洞210を形成できる。
[不飽和化合物(C)]
不飽和化合物(C)は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。不飽和化合物(C)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。不飽和化合物(C)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
不飽和化合物(C)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有してもよい。この場合、樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートおよびε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
不飽和化合物(C)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有してもよい。この場合、樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、およびライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、およびHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、およびHFA−6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
不飽和化合物(C)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させた後にエチレン性不飽和基を付加することで得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、およびスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
樹脂組成物の固形分量に対する不飽和化合物(C)の割合は、好ましくは3質量%〜80質量%の範囲内であり、より好ましくは5質量%〜65質量%の範囲内であり、さらに好ましくは7質量%〜50質量%の範囲内である。
不飽和化合物(C)は、カルボキシル基を有する不飽和化合物(以下、カルボキシル基含有樹脂(D1)ともいう)を含有してもよい。樹脂組成物にカルボキシル基含有樹脂(D1)が含まれる場合、樹脂組成物から形成される皮膜20に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与できる。
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つと、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)とが反応し、更に多価カルボン酸およびその無水物からなる群から選択される少なくとも一種である化合物(d3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(d)という)を含有できる。
エポキシ化合物(d1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、およびエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
エポキシ化合物(d1)は、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマーおよびプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、およびβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であり得る。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族または脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、およびN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、更に、一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、皮膜の硬度および油性を容易に調整できる。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
例えば、エチレン性不飽和化合物(p)を、溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法で重合することにより、重合体が得られる。例えば溶液重合法は、エチレン性不飽和化合物(p)と適当な有機溶剤と重合開始剤とを窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法、または共沸重合法である。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、およびトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、および酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、およびジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)は、適宜のポリマーおよびプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。エチレン性不飽和化合物(d2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有できる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、および2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。更にエチレン性不飽和化合物(d2)は、複数のエチレン性不飽和基を備える化合物を含有できる。複数のエチレン性不飽和基を備える化合物は、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
特にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)が、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。アクリル酸およびメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性を向上させることができる。
エポキシ化合物(d1)のエポキシ基1モルに対するカルボキシル基含有樹脂(D1)のカルボキシル基の量は、好ましくは0.4〜1.2モルの範囲内であり、より好ましくは0.5〜1.1モルの範囲内である。
多価カルボン酸またはその無水物からなる化合物(d3)(以下、化合物(d3)ともいう)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
化合物(d3)の主たる使用目的は、第一の樹脂(d)に酸価を与えることにより、樹脂組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することである。化合物(d3)の使用量は、好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が30mgKOH/g以上であるように調整され、より好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が60mgKOH/g以上であるように調整され、また、化合物(d3)の使用量は、好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が160mgKOH/g以下であるように調整され、より好ましくは130mgKOH/g以下であるように調整される。
第一の樹脂(d)の合成において、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応、並びにこの付加反応の生成物(付加反応生成物)と化合物(d3)との付加反応は、公知の方法により行われる。例えばエポキシ化合物(d1)とエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応においては、エポキシ化合物(d1)を含む溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(d2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤および触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を、常法により、好ましくは60〜150℃で、より好ましくは80〜120℃で反応させることにより、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤は、例えばハイドロキノン、またはハイドロキノンモノメチルエーテルである。触媒は、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンである。
付加反応生成物と化合物(d3)との付加反応においては、付加反応生成物を含む溶剤溶液に化合物(d3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤および触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を、常法により、反応させることで、第一の樹脂(d)が得られる。反応条件は、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応の反応条件と同じ条件でよい。熱重合禁止剤および触媒は、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応において使用された熱重合禁止剤および触媒と同じものを使用することができる。
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、を反応させることで得られる樹脂(第二の樹脂(e)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体は、必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマーおよびプレポリマーを含有できる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、および2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有できる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートと、二塩基酸無水物と、の反応で得られる化合物を含有できる。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。
第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であり得る。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物と、を含有できる。
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、およびビニルビフェニルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖または分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;およびN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。これらの化合物を使用することにより、皮膜の硬度および油性を容易に調整することができる。
第二の樹脂(e)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマーまたはプレポリマーである。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸またはメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレートまたはメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。エチレン性不飽和化合物は、好ましくは、汎用され、容易に入手できるグリシジル(メタ)アクリレートである。
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、およびヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部または全部に、エチレン性不飽和基およびイソシアネート基を有する化合物を付加することで得られる樹脂(以下、第三の樹脂(f)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体は、必要に応じて、カルボキシル基およびヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
第三の樹脂(f)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の例は、上述の第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じであってもよい。
第三の樹脂(f)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、およびN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであり得る。
第三の樹脂(f)を得るためのエチレン性不飽和基およびイソシアネート基を有する化合物は、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI一BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BP」)、および1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズBEI」)であり得る。
カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の重量平均分子量は、好ましくは、800〜100000の範囲内である。この場合、樹脂組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以上である。この場合、樹脂組成物に良好な現像性が付与される。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、より好ましくは60mgKOH/g以上である。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、好ましくは160mgKOH/g以下である。この場合、樹脂組成物で形成される皮膜に残留するカルボキシル基の量が低減される。このため、皮膜の良好な電気特性、耐電蝕性、および耐水性等が維持され得る。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、より好ましくは130mgKOH/g以下である。
[カルボキシル基含有樹脂(D2)]
樹脂組成物は、一分子中にエチレン性不飽和結合を有さないカルボキシル基含有樹脂(D2)を含んでいてもよい。
カルボキシル基含有樹脂(D2)は、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマーおよびプレポリマーを含有することができ、例えば、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、および2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタメタクリレートのうちいずかのヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートと、二塩基酸無水物との反応によって得られる化合物を含有してもよい。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数併用されてもよい。
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であってもよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物および芳香環を有さない化合物の両方を含有してもよい。。
芳香環を有する化合物は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO、PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、およびビニルビフェニルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖または分岐の脂肪族、脂環族(但し、環中に不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;およびN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は単独で使用されてもよく、複数併用されてもよい。これらの化合物を使用することにより、皮膜の硬度および油性を容易に調節することができる。
樹脂組成物から形成される皮膜20のアルカリ現像性の観点から、樹脂組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(D1)とカルボキシル基含有樹脂(D2)の合計の割合は、好ましくは5質量%〜85質量%の範囲内であり、より好ましくは10質量%〜75質量%の範囲内であり、さらに好ましくは30質量%〜60質量%の範囲内である。この場合、皮膜20のアルカリ現像性を十分に確保できる。
[熱硬化性成分(E)]
熱硬化性成分(E)は、樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。熱硬化性成分(E)は、好ましくは環状エーテル骨格を有する化合物を含む。環状エーテル骨格を有する化合物は、好ましくはエポキシ化合物およびオキセタン化合物を含有し、より好ましくはエポキシ化合物を含有する。
エポキシ化合物は、好ましくは1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する。エポキシ化合物は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物の種類は特に限定されない。エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、およびYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、およびEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、および前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
樹脂組成物が熱硬化性成分(E)を含有する場合、樹脂組成物の固形分量に対する熱硬化性成分(E)の割合は、好ましくは3質量%〜90質量%の範囲内であり、より好ましくは5質量%〜70質量%の範囲内であり、さらに好ましくは10質量%〜50質量%の範囲内である。
[着色剤(F)]
着色剤(F)は、樹脂組成物および皮膜20を着色できる。着色剤(F)は、例えば、顔料、染料、および色素からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む。着色剤は、顔料と染料のいずれも含み得る。但し、着色剤(F)は有色であるが、樹脂組成物から皮膜を形成する過程において加熱により無色になる物質は、皮膜20を着色させないため、着色剤(F)に含まれない。
着色剤(F)は、例えば赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、黒色着色剤、白色着色剤および前記以外の色の着色剤からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。
特に着色剤(F)は、好ましくは緑色着色剤、あるいは青色着色剤と黄色着色剤の混合物を含む。この場合、皮膜20の外観の色を緑色にできる。
緑色着色剤は、例えば、フタロシアニン系緑色着色剤、アントラキノン系緑色着色剤、ペリレン系緑色着色剤、および金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の着色剤を含有できる。緑色着色剤の具体的には、ピグメントグリーン7およびピグメントグリーン36が含まれる。
青色着色剤は、例えば、フタロシアニン系青色着色剤、およびアントラキノン系青色着色剤からなる群から選択される少なくとも一種の着色剤を含有できる。青色着色剤の具体例にはPigment Blue 15;Pigment Blue 15:1;Pigment Blue 15:2;Pigment Blue 15:3;Pigment Blue 15:4;Pigment Blue 15:6;Pigment Blue 16;Pigment Blue 60が含まれる。黄色着色剤は、例えば、モノアゾ系黄色着色剤、ジスアゾ系黄色着色剤、縮合アゾ系黄色着色剤、ベンズイミダゾロン系黄色着色剤、イソインドリノン系黄色着色剤、およびアントラキノン系黄色着色剤からなる群から選択される少なくとも一種の着色剤を含有できる。黄色着色剤の具体例には、Pigment Yellow 24;Pigment Yellow 108;Pigment Yellow 193;Pigment Yellow 147;Pigment Yellow 150;Pigment Yellow 199;Pigment Yellow 202;Pigment Yellow 110;Pigment Yellow 109;Pigment Yellow 139;Pigment Yellow 179;Pigment Yellow 185;Pigment Yellow 93;Pigment Yellow 94;Pigment Yellow 95;Pigment Yellow 128;Pigment Yellow 155;Pigment Yellow 166;Pigment Yellow 180; Pigment Yellow 120;Pigment Yellow 151;Pigment Yellow 154;Pigment Yellow 156;Pigment Yellow 175;及びPigment Yellow 181、が挙げられる。また、黄色着色剤(E2)のより具体的な例として、Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73,74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 及び183;並びにPigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17,55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 及び198、なども含まれる。
樹脂組成物が着色剤(F)を含有する場合、樹脂組成物中の固形分量に対する着色剤(F)の割合は、好ましくは0.01質量%〜20質量%の範囲内であり、より好ましくは0.05質量%〜10質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲内である。
[有機溶剤(G)]
有機溶剤(G)は、樹脂組成物の液状化またはワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤(G)は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
樹脂組成物に有機溶剤(G)が含まれる場合、樹脂組成物全体に対する有機溶剤(G)の割合は、樹脂組成物の塗膜を乾燥させる際に有機溶剤(G)が速やかに揮散するように、換言すると有機溶剤(G)が乾燥塗膜に残存しないように、調整される。樹脂組成物全体に対する有機溶剤(G)の割合は、好ましくは5〜99.5質量%の範囲内である。この場合、第二レジスト組成物の良好な塗布性が得られる。好ましい有機溶剤(G)の割合は、塗布方法などによって異なる。
[その他の成分(H)]
樹脂組成物が熱硬化性成分(E)を含む場合、樹脂組成物は、硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;およびオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種以上の成分を含有できる。これらの化合物の市販品の例は、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)を含む。また、硬化剤は、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を含有してもよい。
樹脂組成物は、更に安息香酸系またはp−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。
樹脂組成物は、レーザ露光法用増感剤として、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン等のクマリン誘導体、その他カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
樹脂組成物は、充填材を含有してもよい。この場合、皮膜20の硬化収縮を低減できる。充填材は、例えば無機フィラーおよび有機フィラーを含有できる。無機フィラーは、例えば、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、ガラスフィラー、硫酸バリウム、カーボンナノチューブ、水酸化アルミニウム、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、セピオライトおよび水酸化マグネシウム等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。有機フィラーは、例えば、アクリル重合体、ゴム成分、セルロースおよびその他ポリマー粒子等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
樹脂組成物は、適宜の添加剤を含有してもよい。樹脂組成物は、例えば、シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有してもよい。
上記の樹脂組成物の原料が配合されると共に、三本ロール、ボールミル、サンドミル等による公知の混練方法で、混練されることにより、樹脂組成物が調製され得る。樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合、それ以外の成分を混練した後、液状または粘度の低い成分を加えることにより、樹脂組成物が調製され得る。
保存安定性等の観点から、原料の一部を混合することにより第一剤を調製し、原料の残部を混合することにより第二剤を調製してもよい。すなわち、樹脂組成物は、第一剤と第二剤との混合物であってもよい。例えば、樹脂組成物の原料のうち不飽和化合物(C)、熱硬化性成分(E)、有機溶剤(G)等を混合することにより第一剤を調製し、樹脂組成物の原料の残部を混合することにより第二剤を調製してもよい。樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを混合することにより、調製できる。
以下、上記の樹脂組成物から皮膜20を形成する方法の一例を、図4A〜図4Dを参照しながら、説明する。図4A〜図4Dには、皮膜20が、人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23と、を含む場合の、皮膜20を形成する方法が示されている。
(塗膜形成工程)まず、図4Aに示すように、基材200に樹脂組成物を塗布することにより、塗膜24を形成する。塗膜24内には、有機化合物(B)が、固体粒子の状態で、分散している。被認証物2がプリント配線板である場合、基材200は、例えば、絶縁層と導体配線とを備えるコア基材である。樹脂組成物の塗布方法の例には、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、およびスクリーン印刷法が含まれる。
次に、樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を揮発させるため、塗膜24を加熱する(予備乾燥)。これにより、乾燥塗膜が形成される。加熱温度は、有機化合物(B)の融点より低いことが好ましく、有機化合物(B)の融点よりも30℃以上低い温度である。加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内であってもよい。乾燥塗膜は、ドライフィルム法で形成してもよい。ドライフィルム法では、例えば、適宜の支持体上に形成した樹脂組成物の塗膜を乾燥させて形成したフィルムを、被認証物2上に転着させる。ドライフィルム法では、予備乾燥が不要である。
(露光工程)次に、図4Bに示すように、塗膜24にマスク25を直接または間接的にあてがうと共に、塗膜24に紫外線を照射する。換言すると、マスク25を介して塗膜24が露光される。紫外線の光源の例には、ケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうち二種以上の組み合わせが含まれる。
マスク25は、光透過性が高い領域250と、領域250よりも光透過性が低い領域251とを含む。マスク25は、光透過性がない領域252を備えてもよい。マスク25を介して塗膜24に紫外線が照射されると、領域250に対応する塗膜24の領域(第一の領域22)には紫外線が照射され、領域251に対応する塗膜24の領域(第二の領域23)には、第一の領域22よりも少ない紫外線が照射される。領域252に対応する塗膜24の領域(非露光領域)には紫外線が照射されない。第一の領域22および第二の領域23では、不飽和化合物(C)の光重合反応が起こる。塗膜24の第一の領域22は、第二の領域23よりも多くの光重合反応が起こる。尚、塗膜24の各領域に照射する紫外線の量を制御できるならば、マスク25が使用されなくてもよい。例えば、光源から発せられる紫外線を塗膜24の露光すべき部分のみに照射する直接描画法によって塗膜24を露光する場合には、マスク25を使用しなくてもよい。尚、直接描画法の光源は、上記の光源と同じで良い。
塗膜24が非露光領域を含む場合、図4Cに示すように、エッチングで非露光領域を取除く。その結果、被認証物2上に、第一の領域22および第二の領域23が残存する。樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂(D1)およびカルボキシル基含有樹脂(D2)からなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、アルカリ性溶液による現像処理(アルカリ現像)によって、塗膜24の非露光領域を取除くことができる。尚、塗膜24の非露光領域を取除かなくてもよい。
(加熱工程)次に、塗膜24を加熱して、皮膜20を形成する。樹脂組成物が熱硬化性成分(E)を含有する場合には、熱硬化成分(E)の硬化反応が進行する。この皮膜20内には、複数の空洞210が発生する。複数の空洞210は、人工物メトリクス要素21を構成する。この人工物メトリクス要素21は、複数の空洞210からなるパターン(点模様)である。これにより、複数の空洞210で構成された人工物メトリクス要素21を有する皮膜20が得られる。空洞210は、皮膜20の第一の領域22内で多く発生するが、第二の領域23内では空洞210が発生しない、あるいは、第一の領域22よりも低い割合で空洞210が発生する。換言すると、照射された紫外線の量が、第二の領域23および非露光領域よりも多い第一の領域22では、多くの空洞210が発生する。このため、塗膜24に照射される紫外線の量を調整することにより、塗膜24内に発生する空洞210の量を調整できる。
皮膜20の形成後、皮膜20を、更に150℃〜400℃の範囲内、1〜10分間の範囲内の条件で、加熱しても良い。また、皮膜20の形成後、皮膜20に、100〜5000mJ/cm2の範囲内の条件で、紫外線を照射しても良い。この場合、第一の領域22および第二の領域23内において、未反応のまま残存した不飽和化合物(C)の光重合反応が進行する。
上記の方法で形成された皮膜20は、図4Dに示すように、複数の空洞210を有する第一の領域22を有する。複数の空洞210によってパターンが構成される。図4Dにおけるこのパターンが、人工物メトリクス要素21である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(合成例1)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160.1質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72.7質量部、およびジメチルベンジルアミン0.6質量部を、還流冷却器、温度計、空気吹き込み管および攪拌機が取付けられた四つ口フラスコ内で混合した。更に、混合物を、四つ口フラスコ内で110℃で10時間加熱した。
続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加え、この混合物を、四つ口フラスコ内で115℃で3時間加熱した。
これにより、合成例1のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂Aという)の65質量%溶液が得られた。カルボキシル基含有樹脂Aは、カルボキシル基および不飽和基を備えていた。
(合成例2)
メタクリル酸48質量部、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(東亞合成株式会社製のアロニックスM−5300)50質量部、メチルメタクリレート92質量部、スチレン10質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル430質量部、およびアゾビスイソブチロニトリル3.5質量部を、還流冷却器、温度計、窒素置換基用ガラス管、および攪拌機が取り付けられた四つ口フラスコ内で混合した。更に、混合物を、四つ口フラスコ内で、窒素気流のもと、75℃で5時間加熱し、混合物の重合反応を進行させた。これにより、濃度が32質量%である共重合体溶液が得られた。
続いて、この共重合体溶液に、ハイドロキノン0.1質量部、グリシジルメタクリレート64質量部、およびジメチルベンジルアミン0.8質量部を加え、共重合体溶液を、四つ口フラスコ内で80℃で24時間加熱し、共重合体に対する付加反応を進行させた。
これにより、合成例2のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂Bという)の38質量%溶液が得られた。カルボキシル基含有樹脂Bは、カルボキシル基およびエチレン性不飽和基を備えていた。
(合成例3)
メタクリル酸60質量部、N−フェニルマレイミド20質量部、メチルメタクリレート80質量部、t−ブチルメタクリレート20質量部、スチレン20質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル300質量部、およびアゾビスイソブチロニトリル3.5質量部を、還流冷却器、温度計、窒素置換基用ガラス管、および攪拌機が取り付けられた四つ口フラスコ中で混合した。更に、混合物を、四つ口フラスコ内で、窒素気流のもと、75℃で5時間加熱し、混合物の重合反応を進行させた。これにより、合成例3のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂Cという)の40質量%溶液が得られた。カルボキシル基含有樹脂Cは、カルボキシル基を備えるが、不飽和基を備えていなかった。
(実施例1〜10、比較例1〜2)
下記の表1に示された成分を、表1に示された割合で混合することにより、実施例1〜10および比較例1〜2の樹脂組成物を調製した。尚、樹脂組成物中で固体粒子の状態で存在する光重合開始剤A、光重合開始剤B、エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、多塩基酸A、多塩基酸B、青色顔料、黄色顔料、およびメラミンは、ロール混練機によって、樹脂組成物中に粒子径20μm以下の固体粒子のまま分散させた。
表1に示されたカルボキシル基含有樹脂A〜C以外の成分の詳細は、以下の通りである。
・光重合開始剤A:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure 907、融点70〜75℃。
・光重合開始剤B:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure 819、融点127〜133℃。
・光重合開始剤C:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure 1173、融点4℃(液状)。
・エポキシ樹脂A:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ、融点150〜158℃、エポキシ当量99g/eq)。
・エポキシ樹脂B:ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312、融点138〜145℃、エポキシ当量176g/eq)。
・多塩基酸A:4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、新日本理化株式会社製、品名リカシッドTH−W、融点165℃。
・多塩基酸B:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、三菱化学株式会社製、品名BPDA、融点299℃。
・エポキシ樹脂Cの溶液:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC製、品番EPICLON N−695、軟化点90〜100℃、エポキシ当量214g/eqを固形分75%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液(固形分75%換算のエポキシ当量は、285g/eq)。
・エポキシ樹脂D(液状):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製の品番EPICLON 850、エポキシ当量189g/eq)。
・不飽和化合物A:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、品番DPHA)、液状樹脂。
・不飽和化合物B:トリメチロールプロパントリアクリレート、液状樹脂。
・青色顔料:フタロシアニンブルー、融点600℃。
・黄色顔料:1,1’−[(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10−アントラセンジオン)、融点358℃。
・溶剤A:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン、融点345℃。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB31。
・ベントナイト:レオックス社製、品番ベントンSD−2。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製、品番MT−10。
・消泡剤:信越シリコーン株式会社製、品番KS−66、液体。
・レオロジーコントロール剤:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、品番BYK−430、液体。
実施例1〜10および比較例1〜2の樹脂組成物を、黒色基材上に塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜を、80℃で30分間の条件で、予備乾燥(プレキュア)行い、厚み30μmの乾燥塗膜を形成した。
この乾燥塗膜に、エネルギー密度が600mJ/cm2の条件で、紫外線を照射することにより、乾燥塗膜の露光を行った。紫外線の光源は、メタルハライドランプであった。
露光後の乾燥塗膜を、150℃で30分間加熱した後、更に、300℃で5分間加熱した。その結果、乾燥塗膜が硬化し、樹脂組成物の硬化物である皮膜が得られた。
実施例1〜10および比較例1〜2の樹脂組成物から形成された皮膜のパターンを、以下の基準で評価した。
A:空洞で構成された鮮明なパターンが確認できた。
B:パターンが形成されなかった、或いは不鮮明なパターンが形成されていた。
この評価結果を、下記の表1に示す。
表1によると、光重合開始剤、不飽和化合物、および固形の有機化合物を含む実施例1〜10の樹脂組成物から形成された皮膜のパターンは、「A」と評価された。また、実施例1〜10の樹脂組成物から形成された皮膜のパターンは、それぞれ異なっていた。このため、実施例1〜10の樹脂組成物から形成された皮膜は、人工物メトリクスとして利用することができると共に、被認証物の個体認証に利用することができる。
これに対して、固形の有機化合物を含まない比較例1〜2の樹脂組成物から形成された皮膜のパターンは、「B」と評価された。
また、実施例1〜10の樹脂組成物の塗膜に、紫外線を照射することなく、150℃で熱処理を行って形成した皮膜、および300℃で熱処理を行った皮膜は、パターンが形成されなかった。
これらの結果から、融点を有し、30℃において固形の有機化合物(B)が、固体粒子の状態で分散している塗膜に、紫外線を照射した後、熱処理を行うことにより、塗膜中の有機化合物(B)が融解して、複数の空洞が形成される。その結果、複数の空洞で構成された人工物メトリクス要素の鮮明なパターンが、形成されると考えられる。