本発明は、自転車用変速機、特に、自転車に装着される内装変速機に関する。
モータの駆動によってシフト機構が動作する内装変速機が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。このような内装変速機としては、たとえばシマノ社製SG−505があり、人力駆動力によってシフト機構の変速動作をアシストするシフトアシスト機構が搭載されている。
シフトアシスト機構を有する変速機において、シフトアシスト機構から入力される人力駆動力を効率的にシフト機構に伝達することが望まれている。
本発明に係る自転車用変速機は、軸と、入力体と、動力伝達機構と、シフト機構と、シフトアシスト機構と、を含む。入力体は、軸に回転可能に支持され、人力による回転力が入力される。出力体は、軸に回転可能に支持される。動力伝達機構は、入力体の回転力を複数の動力伝達経路のいずれかを介して出力体に伝達し、入力体の回転速度に対する出力体の回転速度を変更可能である。シフト機構は、シフト入力部材、シフト制御部材、第1のセイバースプリング、および第2のセイバースプリングを含む。シフト入力部材は、軸のまわりの複数の回転位置に位置決め可能である。シフト制御部材は、シフト入力部材の動きに応じて回転し、複数の動力伝達経路のいずれかを選択する。シフト機構において、シフト入力部材が軸まわりの第1方向に回転するとき、第1のセイバースプリングを介してシフト制御部材に第1方向の回転力が与えられる。シフト機構において、シフト入力部材が第1方向とは反対の第2方向に回転するとき、第2のセイバースプリングを介してシフト制御部材に第2方向の回転力が与えられる。シフトアシスト機構は、シフト入力部材が第1方向に回転するとき、第2のセイバースプリングとシフト制御部材との間のシフト力伝達経路に、入力体の前記第1方向への回転力を伝達可能である。
シフトアシスト機構からの回転力は、第1のセイバースプリングおよび第2のセイバースプリングを介さずにシフト制御部材に与えられる。シフトアシスト機構とシフト入力部とは、第2のスプリングを介して接続されているので、シフトアシスト機構からの回転力がシフト入力部に分散されてしまうことを抑制することができる。従って、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達できる。またシフト入力部材が第1の方向に回転するとき、第1のセイバースプリングを介してシフト制御部材に回転力が与えられ、シフト入力部材が第2の方向に回転するとき、第2のセイバースプリングを介してシフト制御部材に回転力が与えられるので、変速機に与えられる駆動トルクが大きいために、シフト制御部材が回転しない場合であっても、シフト入力部材からシフト制御部までの伝達経路に過剰な負荷が与えられてしまうことを抑制することができる。
シフト機構は、シフト入力部材を回転可能な電動アクチュエータを含んでもよい。この構成によれば、シフト動作を電気的に制御できる。シフト入力部に電動アクチュエータが接続されている場合でも、シフトアシスト機構からの回転力がシフト入力部に与えられることが抑制されるので、シフトアシスト機構が動作することによって電動アクチュエータに与えられる負荷を低減することができる。
電動アクチュエータは、モータであってもよい。シこの構成によれば、モータの回転力によってシフト機構を動作させることができる。
シフト機構は、モータの回転を減速してシフト入力部材に伝達する減速機をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、モータの小型化を図れる。
モータは、軸に着脱可能に構成されてもよい。この構成によれば、モータのメンテナンスが容易である。
シフト機構は、アクチュエータを制御して、シフト入力部材を複数の回転位置のいずれかに位置決めする制御部をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、電気的にシフト入力部材を位置決めできる。
シフト機構は、モータを収容するハウジングをさらに含んでいてもよい。制御部は、ハウジングに設けられてもよい。この構成によれば、モータおよび制御部を塵および水などから保護しやすい。
シフト機構は、中間部材と、第1のスプリング連結部材と、第2のスプリング連結部材と、をさらに含んでいてもよい。中間部材は、シフト入力部材とシフト制御部材の間に配置され、シフト入力部材が第1方向の上流側から接触可能に構成される。第1のスプリング連結部材は、中間部材が第1方向の上流側から接触可能に構成される。第2のスプリング連結部材は、シフト入力部材に第1方向の上流側から接触可能に構成される。第1のセイバースプリングは、第1のスプリング連結部材およびシフト制御部材にそれぞれ連結され、第1のスプリング連結部材を第2方向、シフト制御部材を第1方向にそれぞれバイアスする。第2のセイバースプリングは、第1のスプリング連結部材および第2のスプリング連結部材に連結され、第1のスプリング連結部材を第2方向、第2のスプリング連結部材を第1方向にそれぞれバイアスする。
シフト入力部材が第1方向に回転するとき、シフト入力部材が中間部材を第1方向に押し、中間部材が第1のスプリング連結部材を第1方向に押してもよい。この構成によれば、シフト入力部材が第1方向に回転すると、シフト入力部材が中間部材を第1方向に押して第1方向に回転させる。中間部材が第1方向に回転すると、中間部材が第1のスプリング連結部材を押し、第1のスプリング連結部材が第1方向に回転し、第1のセイバースプリングがシフト制御部材を第1方向に回転させる。
シフト機構は、アシスト力入力部材と、回動部材と、をさらに含んでいてもよい。アシスト力入力部材は、中間部材が第1方向の下流側から接触可能であり、シフトアシスト機構からの回転力を入力可能である。回動部材は、軸のまわりに回動可能に設けられ、アシスト力入力部材が第1方向の下流側から接触可能であり、かつシフト制御部材に第1方向の下流側から接触可能である。
シフト入力部材が第2方向に回転するとき、シフト入力部材が第2のスプリング連結部材を第2方向に押し、第1のスプリング連結部材が中間部材を第2方向に押し、中間部材がアシスト力入力部材を第2方向に押し、回動部材がシフト制御部材を第2方向に押すように、シフト機構は構成されてもよい。
シフトアシスト機構は、筒状部材と、少なくとも一つの爪部材と、少なくとも一つの付勢部材と、爪制御部材と、を含んでいてもよい。筒状部材は、入力体と連動可能であり、内周面に周方向に間隔を隔てて配置されるラチェット歯を含んでいる。少なくとも一つの爪部材は、ラチェット歯に係合可能な第1位置と、ラチェット歯から離反する第2位置とに移動可能に、アシスト力入力部材に設けられる。少なくとも一つの付勢部材は、アシスト力入力部材に設けられ、爪部材を係合位置に向けて付勢する。爪制御部材は、中間部材によって第1方向への移動が規制され、中間部材が第1方向に回転すると、爪部材が第2位置から第1位置に移動することによって第1方向に回転し、かつ爪部材が第1位置に配置されて中間部材が停止した状態で、アシスト力入力部材が第1方向に回転すると、爪部材を第1位置から第2位置に移動させる。
この構成によれば、シフト入力部材が第1方向に回転すると、中間部材も第1方向に回転し、爪制御部材の中間部材による規制位置も第1方向に移動するので、爪付勢部材が爪部材を介して爪制御部材を第1方向に回転させることができ、爪部材が第2位置から第1位置に移動する。爪部材が筒状部材のラチェット歯に係合することによって、入力体の第1方向の回転を、アシスト力入力部材に入力することができる。シフト入力部材の第1方向への回転を停止すると、中間部材の第1方向への回転が停止して、中間部材の規制位置の移動も停止する。この状態でアシスト力入力部材が第1方向に回転すると、爪部材が爪制御部材に接触して、爪部材が第1位置から第2位置に移動する。シフト制御部材を第1方向に回転させる変速の時に、爪部材が自動的に第2位置から第1位置に移動し、変速しないときには、爪部材を第2位置に保持しておくことができる。
爪制御部材は、第1方向に回転するとき第1方向の上流側からシフト入力部材に接触しないように、シフト入力部材から間隔をあけて配置されていてもよい。この構成によれば、人力駆動力によってアシスト力入力部材が第1方向に回転したときに、爪制御部材を介して、シフト入力部材に人力駆動力が直接与えられてしまうことがない。
爪部材は、軸に平行な軸線まわりに揺動可能にアシスト力入力部材に設けられてもよい。この構成によれば、アシスト力入力部材の回転する軸線と爪部材が搖動する軸線とが平行に配置されるので、爪部材がスムーズに揺動する。
シフトアシスト機構からの回転力がアシスト力入力部材に入力されると、アシスト力入力部材が回動部材を第1方向に押し、回動部材がシフト制御部材を第1方向に押してもよい。この構成によれば、人力駆動力によってアシスト力入力部材に与えられる回転力を、シフト制御部材にそのまま伝達することができる。
シフトアシスト機構は、入力体と筒状部材の間に設けられ、筒状部材に伝達されるトルクを制限するトルク制限機構をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、アシスト力入力部に入力される人力駆動力を制限することができるので、シフト機構に過度の負荷が与えられることを抑制することができる。
動力伝達機構は、シフト入力部材が第1方向に回転することによって、入力体の回転速度に対する出力体の回転速度が小さくなるように動力伝達経路を変更してもよい。この構成によれば、入力体に人力駆動力が与えられている状態で変速することが多いシフトダウン変速において、シフト機構の変速をシフトアシスト機構によってアシストすることができる。
軸は、ハブ軸であり、出力部は、ハブシェルであってもよい。この構成によれば、自転車用内装変速ハブにおいて、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達できる。
本発明によれば、シフトアシスト機構を含む自転車用変速機において、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達でき、変速性能を向上させることができる。
本発明の一実施形態による内装変速機の半截断面図。
シフト機構およびシフトアシスト機構の分解斜視図。
シフト機構の一部およびシフトアシスト機構の拡大分解斜視図。
シフト機構の一部の拡大分解斜視図。
シフト機構およびシフトアシスト機構の動作を説明するための模式図。
クラッチリングがクラッチオン状態の場合の図1の仮想線で囲った領域Dの断面拡大図。
クラッチリングがクラッチオフ状態の場合の図6に相当する図。
爪制御部材が爪部材を第2位置に押圧した状態を示す側面図。
爪付勢部材が爪部材を第1位置に向けて付勢した状態を示す側面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見た動作不能状態にあるシフトアシスト機構の断面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見た動作状態にあるシフトアシスト機構の断面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見たシフトアシスト機構の断面図。
シフト機構のシフトダウン動作を説明する模式図。
シフト機構のシフトアップ動作を説明する模式図。
シフトアシスト機構によってアシストが行われるときのシフトダウン動作を説明する模式図。
図1において、本発明の一実施形態による自転車用変速機である内装変速機14は、軸36、入力体70、出力体74、動力伝達機構82、シフト機構84、およびシフトアシスト機構90、を含む。本実施形態では、内装変速機14は、自転車の後輪に設けられる内装変速ハブを含む。したがって、軸36は、ハブ軸であり、入力体70は駆動体であり、出力体74はハブシェルである。内装変速機14は、モータ93によって変速する。
なお、以降の説明において、“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および下”、ならびにこれらと同義の用語は、自転車を水平な平面に設置し、自転車の使用者がハンドルバーに向かってサドル(いずれも図示せず)に座った状態からみた“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および“下”を意味する。
<軸>
軸36は、図2に示すように、軸線Xを有する。軸36の軸線Xの延びる方向の中央部には、動力伝達機構82の複数の動力伝達経路を切り換えるための構造が設けられる。軸36の軸線Xの延びる方向を、軸方向と記載する。軸方向の一方を、第1軸方向X1と記載し、軸方向の他方を、第2軸方向X2と記載する。具体的には、軸36は、軸方向に延びる図示しない制御スリーブ溝と、制御スリーブ溝から周方向に延びる第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472を中間部に含む。第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472は、軸方向に間隔を隔てて配置される。軸36は、軸方向において中央部の第1端部の外周面に軸方向に延びる第1回り止め溝380および第2回り止め溝388を含む。軸36の軸方向の両端部には、外周部にそれぞれ雄ネジが形成されている。
<入力体>
入力体70は、筒状の部材であり、軸36に回転可能に支持される。入力体70には、人力による回転力が入力される。入力体70には、リアスプロケット54が着脱可能に設けられる。リアスプロケット54は、入力体70の外周部に設けられるスプラインに係合して、入力体70と一体的に回転可能に、入力体70に連結される。リアスプロケット54は、たとえばスナップリングまたはロックナットによって、入力体70に着脱可能に固定される。入力体70は、玉軸受98を介して軸36に回転可能に支持されている。入力体70の内周部は、玉軸受98の軸受キャップを構成する。玉軸受98の軸受コーン102は、シフト機構84に含まれる伝達部材104と、モータ取付部材108と、座金112と、ロックナット114と、によって定位置に保持される。軸受コーン102は、軸36の第1回り止め溝380に係合する。伝達部材104は、モータ93によって複数段階(例えば、3段階から12段階、本実施形態では8段階)に位置決めされる。入力体70は、玉軸受128によって出力体74の軸方向の第1端部を回転可能に支持する。入力体70の玉軸受128よりも軸方向の第2端部寄りには、入力体70の進行方向の回転のみ動力伝達機構82に伝達する第1ワンウェイクラッチ586が設けられる。第1ワンウェイクラッチ586は、爪式のクラッチでもよく、ローラ式のクラッチでもよい。
<出力体>
出力体74は、筒状の部材によって構成される。出力体74は、軸方向の第2端部が軸36に、回転可能に支持される。出力体74は、玉軸受136を介して軸36に支持される。出力体74の軸方向の第2端部は、前述したように入力体70に、玉軸受128によって回転可能に支持される。出力体74は、外周部の軸方向の両端部に設けられる一対のスポークフランジ78を含む。出力体74には、玉軸受128を覆うカバー部材741が取り付けられている。カバー部材741と入力体70との間には、シール部材が設けられている。
<動力伝達機構>
図1に示すように、動力伝達機構82は、入力体70と出力体74との間に配置される。動力伝達機構82は、入力体70の回転力を複数の動力伝達経路のいずれかを介して出力体74に伝達し、入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度を変更可能である。本実施形態では、動力伝達機構82は、後述するシフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、ギア比が段階的に小さくなるように動力伝達経路を変更する。ギア比が段階的に小さくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトダウンという。ギア比が段階的に大きくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトアップという。第1方向D1は、入力体70が前転する方向である。動力伝達機構82は、シフト入力部材732が第1方向D1と反対の第2方向D2に回転することによって、入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度が大きくなるように動力伝達経路を変更する。入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度が大きくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトアップという。
動力伝達機構82は、本実施形態では8個の動力伝達経路のいずれか一つを選択する。動力伝達機構82は、複数の遊星歯車機構を含む。動力伝達機構82は、第1太陽ギア160と、第2太陽ギア164と、第3太陽ギア168と、第4太陽ギア172と、第2ワンウェイクラッチ207と、第3ワンウェイクラッチ226と、第4ワンウェイクラッチ332と、クラッチリング623と、を含む。第2ワンウェイクラッチ207、第3ワンウェイクラッチ226および第4ワンウェイクラッチ332は、それぞれ爪式のクラッチである。
第1太陽ギア160は、軸36の第2回り止め溝388に回転不能に係合する。第2太陽ギア164は、第1太陽ギア160に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第2ワンウェイクラッチ207は、第2太陽ギア164と軸36の間に設けられる。第2ワンウェイクラッチ207は、第2スプリング272によってオン状態に付勢される。第2ワンウェイクラッチ207は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第2太陽ギア164が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第2太陽ギア164が回転可能な状態である。第2太陽ギア164の内周面には、第2ワンウェイクラッチ207の爪が係合可能な係合部が形成されている。第2ワンウェイクラッチ207の爪は、第2ワンウェイクラッチ207がオン状態のとき、第2太陽ギア164の係合部に接触し、第2ワンウェイクラッチ207がオフ状態のとき、第2太陽ギア164の係合部から離反する。 第3太陽ギア168は、第2太陽ギア164に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第3ワンウェイクラッチ226は、第3太陽ギア168と軸36の間に設けられる。第3ワンウェイクラッチ226は、第3スプリング300によってオン状態に付勢される。第3ワンウェイクラッチ226は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第3太陽ギア168が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第3太陽ギア168が回転可能な状態である。第3太陽ギア168の内周面には、第3ワンウェイクラッチ226がオン状態のとき、第3ワンウェイクラッチ226の爪が係合可能な係合部が形成されている。第3ワンウェイクラッチ226の爪は、第3ワンウェイクラッチ226がオン状態のとき、第3太陽ギア168の係合部に接触し、第3ワンウェイクラッチ226がオフ状態のとき、第3太陽ギア168の係合部から離反する。
第4太陽ギア172は、第3太陽ギア168に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第4ワンウェイクラッチ332は、第4太陽ギア172と軸36の間に設けられる。第4ワンウェイクラッチ332は、第4スプリング302によってオン状態に付勢される。第4ワンウェイクラッチ332は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第4太陽ギア172が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第4太陽ギア172が回転可能な状態である。第4太陽ギア172の内周面には、第4ワンウェイクラッチ332がオン状態のとき、第4ワンウェイクラッチ332の爪が係合可能な係合部が形成されている。第4ワンウェイクラッチ332の爪は、第4ワンウェイクラッチ332がオン状態のとき、第4太陽ギア172の係合部に接触し、第4ワンウェイクラッチ332がオフ状態のとき、第4太陽ギア172の係合部から離反する。
図1に示すように、動力伝達機構82は、遊星ギアキャリア550、第1リングギア551、および第2リングギア553をさらに含む。遊星ギアキャリア550、第1リングギア551、および第2リングギア553は、いずれも軸36の軸線X回りに回転可能に設置される。
遊星ギアキャリア550は、軸36に回転可能に設けられる。遊星ギアキャリア550は、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608を回転可能に支持する。第1遊星ギア579および第2遊星ギア608は、それぞれ少なくとも1つ設けられる。第1遊星ギア579および第2遊星ギア608が複数設けられる場合、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608は、軸線Xの周方向に等しい間隔をあけて配置される。遊星ギアキャリア550は、軸36に直接支持されてもよく、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608を介して軸36に支持されてもよい。遊星ギアキャリア550と、出力体74との間には、第5ワンウェイクラッチ908が設けられている。第5ワンウェイクラッチ908は、自転車の進行方向の回転を、遊星ギアキャリア550から出力体74に伝達する。
遊星ギアキャリア550の軸方向の第1端部には、少なくとも1つの第1スプライン621が内周部に配置され、クラッチリング623に形成される少なくとも1つの第2スプライン622と係合可能に構成されている。
クラッチリング623は、円環状の部材によって構成される。クラッチリング623は、後述するシフトキー部材700に対して回転可能、かつシフトキー部材700とともに軸方向に移動可能に、シフトキー部材700に支持される。クラッチリング623の内周部は、クラッチリング623の外周面と、軸方向の第1側面とに接触する。クラッチリング623は、入力体70と遊星ギアキャリア550との間で回転を伝達および遮断する。クラッチリング623は、図6に示す遊星ギアキャリア550に係合するクラッチオン位置と、遊星ギアキャリア550から離反した、図7に示すクラッチオフ位置とに移動可能である。クラッチリング623は、クラッチスプリング747によってクラッチオン位置に向けて付勢される。クラッチリング623は、シフト機構84のシフトキー部材700によってクラッチスプリング747の付勢力に抗して押圧され、クラッチオフ位置に向けて移動可能である。
それぞれの第1遊星ギア579は、第1太陽ギア160と係合する小径ギア部580と、第1リングギア551と係合する大径ギア部584とを含む。同様に、それぞれの第2遊星ギア608は、第4太陽ギア172と噛み合う大径ギア部612と、第3太陽ギア168と噛み合う中径ギア部616と、第2太陽ギア164および第2リングギア553と噛み合う小径ギア部620とを含む。
第1リングギア551は、内周ギア部585を含む。第1リングギア551には、第1ワンウェイクラッチ586を介して、入力体70の第1方向D1の回転が伝達される。第2リングギア553の進行方向の回転は、第6ワンウェイクラッチ628を介して、出力体74に伝達可能である。遊星ギアキャリア550の第1方向D1の回転速度が、第2リングギア553の第1方向D1の回転速度よりも遅いときには、第2リングギア553の回転が、出力体74に伝達される。第6ワンウェイクラッチ628は、ローラクラッチを含んでいてもよく、爪式のクラッチを含んでいてもよい。
<シフト機構およびシフトアシスト機構>
図1および図2において、シフト機構84は、軸36の外周部に設けられる。シフト機構84は、モータ93を含む駆動ユニット91(図1参照)と、シフト入力部材732と、アシスト力入力部材728と、第1のセイバースプリング708と、第1のスプリング連結部材712と、中間部材720と、を含む。また、シフト機構84は、第2のセイバースプリング716と、第2のスプリング連結部材724と、回動部材704と、シフトキー部材700と、クラッチカム176と、シフト制御部材288と、をさらに含む。シフト機構84は、モータ取付部材108と、伝達部材104とをさらに含む。シフト機構84では、シフト入力部材732が軸36まわりの第1方向D1に回転するとき、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288に第1方向D1の回転力が与えられる。また、シフト入力部材732が第1方向D1とは反対の第2方向D2に回転するとき、第2のセイバースプリング716を介してシフト制御部材288に第2方向D2の回転力が与えられる。
シフトアシスト機構90は、シフト入力部材732が第1方向D1に回転するとき、第2のセイバースプリング716とシフト制御部材288との間のシフト力伝達経路に、入力体70の第1方向D1への回転力を伝達可能である。シフトアシスト機構90は、図2に示す、少なくとも一つの爪部材820、少なくとも一つの爪付勢部材828、および爪制御部材736と、を含む。シフトアシスト機構90は、図6および図7に示す、トルク制限機構950および筒状部材960をさらに含む。
<シフト機構>
図1に示すように、シフト機構84において、駆動ユニット91は、モータ取付部材108に着脱可能に取り付けられる。駆動ユニット91は、図1に示すように、モータ取付部材108によって軸方向に位置決めされ、モータ取付部材108とナット115によって挟まれて軸36に回転不能に取り付けられる。モータ取付部材108は、軸36の第1回り止め溝380に係合する。駆動ユニット91は、ハウジング92およびモータ93を含む。駆動ユニット91は、減速機95をさらに含むのが好ましい。駆動ユニット91は、制御部97をさらに含むのが好ましい。モータ93は電動アクチュエータの一例である。ハウジング92は、モータ93、減速機95、および制御部97を収容する。減速機95は、モータ93の回転を減速してシフト入力部材732に伝達する。制御部97は、モータ93を制御してシフト入力部材732を複数の回転位置のいずれかに位置決めする。制御部97は、図示しない電気配線によって、自転車に設けられる変速操作部に電気的に接続される。駆動ユニット91は、第1方向D1、および第1方向D1とは反対の第2方向D2に、シフト入力部材732を回転可能である。第1方向D1は、車輪が前転する方向である。
シフト機構84は、さらに伝達部材104を含む。伝達部材104は、シフト入力部材732と一体で軸線Xまわりに回転する。伝達部材104は、減速機95の出力軸99に係合し、出力軸99とともに軸36に対して回転可能である。図3に示すように、伝達部材104は、環状の部材であり、内周部にシフト入力部材732に回転不能に接続される連結部880を含む。連結部880は、たとえば複数の凹部によって構成され、伝達部材104の周方向に、等しい間隔を隔てて配置される2つの凹部によって構成される。また、伝達部材104は、外周部に減速機95の出力軸99に回動不能に接続される第2連結部882を含む。第2連結部882は、たとえば複数の凹部によって構成され、第2連結部882の周方向に、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの凹部によって構成される。第2連結部882は、連結部880の径方向内側に配置されるのが好ましい。
シフト入力部材732は、筒状の部材によって構成される。シフト入力部材732は、軸36と同軸に設けられ、外周面に回動自在に支持される。シフト入力部材732は、軸36のまわりの複数の回転位置に位置決め可能である。シフト入力部材732は、伝達部材104に向かって軸方向に沿って延びる第1連結部868と、中間部材720に向かって軸方向に沿って延びる第2連結部860と、を含む。第1連結部868は、少なくとも1つの突起を含む。第1連結部868は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第2連結部860は、1または複数の突起を含む。第2連結部860は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1連結部868は、軸受コーン102の内周を通過して伝達部材104の連結部880に係合する。これによって、シフト入力部材732は、出力軸99に連動して第1方向D1および第2方向D2に回動する。シフト入力部材732は、軸受コーン102によって回動範囲が規制される。図5に示すように、シフト入力部材732の第2連結部860は、後述する爪制御部材736およびアシスト力入力部材728の内周を通過して中間部材720および第2のスプリング連結部材724に接触可能になっている。シフト入力部材732が第1方向D1に回転するとき、シフト入力部材732が中間部材720を第1方向D1に押し、中間部材720が第1のスプリング連結部材712を第1方向D1に押す。
アシスト力入力部材728は、環状の部材によって構成される。アシスト力入力部材728は、中間部材720が第1方向D1の下流側から接触可能であり、シフトアシスト機構90からの回転力を入力可能である。アシスト力入力部材728は、シフト入力部材732に回動可能に支持される。アシスト力入力部材728は、略円形の開口816が形成されている。アシスト力入力部材728の開口816に、シフト入力部材732が挿通する。アシスト力入力部材728は、開口816側に設けられる第1係合部817を含む。第1係合部817は、たとえば開口816に突出する少なくとも1つの突起を含む。第1係合部817は、たとえば軸線Xまわりにたとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1係合部817には、中間部材720の後述する第1連結部808が接触可能である。第1連結部808は、アシスト力入力部材728に第2方向D2上流側から接触可能である。第1連結部808は、爪制御部材736に第2方向D2上流側から接触している。第1連結部808は、第2方向D2上流側から爪制御部材736に接触することによって、爪制御部材736の位置を規制する。アシスト力入力部材728は、回動部材704に連結可能な連結部837を含む。連結部837は、アシスト力入力部材728の外周部に設けられる。連結部837は、少なくとも1つの凹部を含む。連結部837は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される凹部を含む。連結部837は、第2方向D2の上流側および下流側の両方から回動部材704に接触可能である。連結部837の凹部の軸線Xまわりの周方向の幅は、回動部材704の後述する連結部690の軸線Xまわりの周方向の幅よりもわずかに大きい。
アシスト力入力部材728には、シフトアシスト機構90を構成する少なくとも一つの爪部材820、および爪部材820を付勢する少なくとも一つの爪付勢部材828が装着される。本実施形態では、軸線Xまわりの周方向に間隔を隔てて配置される複数(たとえば2つ)の爪部材820および複数(たとえば2つ)の爪付勢部材828がアシスト力入力部材728に装着される。2つの爪部材820は、軸線Xまわりにたとえば等しい間隔を隔てて配置される。爪部材820は、アシスト力入力部材728に装着された爪支持ピン829によって、軸36に平行な軸線まわりに揺動可能に支持される。爪部材820は、筒状部材960に周方向に間隔を隔てて配置されるラチェット歯976に先端部822が係合可能な図11に示す第1位置と、ラチェット歯976から先端部822が離反する図10に示す第2位置とに移動可能に構成されている。爪付勢部材828は爪部材820を第1位置に向けて付勢する。爪部材820が第1位置に配置されると、爪部材820の基端部824がアシスト力入力部材728に設けられる位置決め突起839に接触して、爪部材820による爪部材820の移動が停止する。爪部材820は、爪制御部材736によって第1位置と第2位置とを移動するように制御される。
爪付勢部材828は、たとえば捩じりコイルバネである。爪付勢部材828の一方の端部832は、アシスト力入力部材728に設けられるスプリング連結部836に引っ掛けられる。爪付勢部材828の他方の端部840は、爪部材820の先端部822を、アシスト力入力部材の径方向内側から径方向外側に向けて押圧する。
中間部材720は、筒状の部材によって構成される。中間部材720は、シフト入力部材732とシフト制御部材288の間に配置される。中間部材720には、シフト入力部材732が第1方向D1の上流側から接触可能である。中間部材720は、軸36に回転可能に支持される。中間部材720は、第1連結部808と、第2連結部809と、第3連結部800と、を含む。第1連結部808、第2連結部809、および第3連結部800は、それぞれ、少なくとも1つの突起を含む。第1連結部808、第2連結部809、および第3連結部800は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1連結部808は、アシスト力入力部材728の開口816を挿通し、爪制御部材736に向かって軸方向に沿って延びる。第1連結部808は、アシスト力入力部材728および爪制御部材736に、第2方向D2の上流側から接触可能である。第2連結部809には、シフト入力部材732が第1方向D1の上流側から接触可能である。シフト入力部材732が第1方向D1に回転すると、シフト入力部材732が中間部材720に接触し、中間部材720はシフト入力部材732に連動して第1方向D1に回転する。
第2のスプリング連結部材724は、図6および図7に示すように、回動部材704と軸36との間に配置される。第2のスプリング連結部材724は、環状の部材によって構成され。第2のスプリング連結部材724には、軸36が挿通する。第2のスプリング連結部材724は、第1方向D1および第2方向D2に回転可能である。図4に示すように、第2のスプリング連結部材724は、第2スプリング連結部794と、第2ガイド部798を含む。第2スプリング連結部794は、第2のセイバースプリング716の第1端部772に連結される。第2スプリング連結部794は、第2のスプリング連結部材724の外周部を第2のセイバースプリング716側に折れ曲がっている。
第2のスプリング連結部材724には、シフト入力部材732の第2連結部860、中間部材720の第1連結部808、および軸36が貫通可能の第2開口812が形成されている。第2のスプリング連結部材724は、第2係合部792をさらに含む。第2係合部792は、少なくとも1つの突起を含む。第2係合部792は、第2のスプリング連結部材724から第2開口812に突出する。第2係合部792は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔を隔てて設けられる2つの突起を含む。第2のスプリング連結部材724は、第2のセイバースプリング716をガイドする第2ガイド部798を含む。第2ガイド部798は、第2のスプリング連結部材724から第2軸方向X2に向かって突出する少なくとも1つの突起を含む。第2ガイド部798は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔をあけて配置される2つの突起を含む。第2ガイド部798は、第2のセイバースプリング716の軸線Xに関しての外周側に設けられている。図5に示すように、変速動作を行っていないときは、軸線Xまわりの周方向において、第2のスプリング連結部材724の第2係合部792と、中間部材720の第2連結部809とによって、シフト入力部材732の第2連結部860が挟まれ、互いに接触している。
第2のセイバースプリング716は、第1端部772および第1端部772とは反対側の第2端部780を含む。第2のセイバースプリング716は、たとえば捩じりコイルバネを含む。第2のセイバースプリング716は、第2のスプリング連結部材724の第2軸方向X2に隣接して配置される。第1端部772および第2端部780は、軸線Xに関してそれぞれ径方向外側に折れ曲がっている。第1端部772が第2スプリング連結部794に連結される。第2端部780は、第1のスプリング連結部材712に連結される。第2のセイバースプリング716は、自由状態よりも伸張された状態で第1のスプリング連結部材712および第2スプリング連結部794に連結される。図5に示すように、第2のセイバースプリング716は、第2のスプリング連結部材724を第1方向D1にバイアスし、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2にバイアスする。シフト入力部材732が第2方向D2に回転すると、シフト入力部材732が第2のスプリング連結部材724に接触して、第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に押す。第2のスプリング連結部材724が第2方向D2に回転すると、第2のスプリング連結部材724が第2のセイバースプリング716を介して、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2に引っ張り、第1のスプリング連結部材712が第2方向D2に押されて回転する。
第1のスプリング連結部材712は、図6および図7に示すように、回動部材704と軸36との間に配置される。第1のスプリング連結部材712は、環状の部材によって構成され。第1のスプリング連結部材712には、軸36が挿通する。第1のスプリング連結部材712は、第1方向D1および第2方向D2に回転可能である。図4に示すように、第1のスプリング連結部材712は、連結部765と、第1スプリング連結部804と、第3スプリング連結部768と、第1ガイド部767と、第3ガイド部769と、を含む。
第1スプリング連結部804は、第1のセイバースプリング708の第1端部764を連結される。第1スプリング連結部804は、第2のセイバースプリング716の第2軸方向X2に隣接して配置される。第1スプリング連結部804は、第1のスプリング連結部材712の内周部を第1のセイバースプリング708側に折り曲げて形成される。第3スプリング連結部768は、第2のセイバースプリング716の第2端部756に連結される。第3スプリング連結部768は、第1のスプリング連結部材712の外周部を第2のセイバースプリング716側に折り曲げて形成される。第1スプリング連結部804と第3スプリング連結部768とは、軸線Xまわりで近接する位置に設けられる。第3ガイド部769は、第2のセイバースプリング716の内周部をガイドする。第3ガイド部769は、第1スプリング連結部804から第1軸方向X1に向かって突出する少なくとも1つの突起を含む。第3ガイド部769は、第1のスプリング連結部材712の内周部を第1のセイバースプリング708側に折り曲げて形成される。連結部765は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔をあけて配置される2つの凹部を含む。連結部765は、第3ガイド部769の内周部に形成される。連結部765には、中間部材720(図3参照)の第3連結部800が連結可能である。連結部765は、第3ガイド部769のそれぞれの突起に形成されている。連結部765の凹部の軸線Xまわりの周方向の幅は、中間部材720の第3連結部800の軸線Xまわりの周方向の幅よりもわずかに大きい。図5に示すように、第1のスプリング連結部材712は、第1のセイバースプリング708および第2のセイバースプリング716によって第2方向D2にバイアスされ、第1のセイバースプリング708および第2のセイバースプリング716によるセーバー機能が働いていないときには、連結部765が、第2方向D2の上流側から第3連結部800に接触している。第1ガイド部767は、第1のセイバースプリング708の内周部をガイドする。
第1のセイバースプリング708は、第1のスプリング連結部材712およびシフト制御部材288にそれぞれ連結され、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2、シフト制御部材288を第1方向D1にそれぞれバイアスする。第1のセイバースプリング708は、第1端部764および第1端部764とは反対側の第2端部756を含む。第1のセイバースプリング708は、たとえば捩じりコイルバネを含む。第1端部764および第2端部756は、軸線Xに関して、それぞれ径方向内側に折れ曲がっている。第1端部764は、第1のスプリング連結部材712に連結される。第2端部756は、シフト制御部材288に連結される。第1のセイバースプリング708は、自由状態よりも伸張された状態で、第1のスプリング連結部材712およびシフト制御部材288に装着される。図5に示すように、第1のセイバースプリング708は、第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に付勢し、シフト制御部材288を第1方向D1に付勢する。
回動部材704は、シフト入力部材732の回転に伴って、シフトキー部材700を軸線Xまわりに回転させる。回動部材704は、シフト入力部材732の回転に伴って、シフト制御部材288を回転させる。回動部材704は、シフトアシスト機構90から入力される回転力をシフト制御部材288に伝達する。回動部材704は、軸線Xまわりに回動可能に設けられる。図4に示すように、回動部材704は、環状の側壁部680と、側壁部680の外周部から第1方向に延びる略筒状の外周部682とを含む。側壁部680は、軸36が挿通する貫通孔684を有し、軸36に回転可能に支持される。側壁部680は、さらに貫通孔684の径方向外側に形成される連結孔686を含む。連結孔686には、シフト制御部材288が挿入され、シフト制御部材288と回動部材704とが連結可能になっている。連結孔686は、軸線Xに関して円弧状に延びている。外周部682は、ガイド溝688と、連結部690とを含む。ガイド溝688は、シフトキー部材700を軸36の軸線X方向に案内する。連結部690は、アシスト力入力部材728の連結部837に連結可能に構成される。連結部690は、第1軸方向X1に延びる少なくとも1つの突起を含む。連結部690は、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。シフトアシスト機構90から回転力がアシスト力入力部材728に与えられてないシフトダウン動作のときには、シフト入力部材732の第1方向D1への回転力が、中間部材720、第1のスプリング連結部材712および第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288に与えられ、シフト制御部材288は第1方向D1に回転可能である。このとき回動部材704は、シフト制御部材288に押されて第1方向D1に回転し、アシスト力入力部材728を第1方向D1に押して回転させる。シフトアップ動作のときには、シフト入力部材732が第2方向D2に回転して、シフト入力部材732が第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に押し、第1のスプリング連結部材712が中間部材720を第2方向D2に押し、中間部材720がアシスト力入力部材728を第2方向D2に押し、アシスト力入力部材728が回動部材704を第2方向D2に押し、回動部材704がシフト制御部材288を第2方向D2に押して、シフト制御部材288を回転させる。
図5に示すように、回動部材704の連結部690には、アシスト力入力部材728の連結部837が第1方向D1の下流側から接触可能である。また、回動部材704は、シフト制御部材288に第1方向D1の下流側から接触可能である。回動部材704は、回動部材704のうち連結孔686に挿入される部分に接触可能である。シフトアップのときには、シフト入力部材732の第2方向D2への回転力が、第2のスプリング連結部材724、第2のセイバースプリング716、第1のスプリング連結部材712、中間部材720、アシスト力入力部材728を介して、シフト制御部材288に与えられ、シフト制御部材288が第2方向D2に回転可能である。
クラッチカム176は、側壁部178と、カム部179とを含む。側壁部178は、環状に形成され、軸36が貫通する貫通孔が形成される。側壁部178の貫通孔には、シフト制御部材288の一部が挿通する。カム部179は、側壁部178の外周部に設けられ、第1軸方向X1に延びる。クラッチカム176は、第1太陽ギア160の第2軸方向X2に隣接して配置される。カム部179は、回動部材704の外周側に延びて、回動部材704の一部と軸線Xに関して径方向に重複して配置される。クラッチカム176は、軸36の第2回り止め溝388に、軸線Xに関して回転不能に係合する。クラッチカム176は、第1太陽ギア160の一部として形成することができ、あるいは、図6および図7に示すように、第1太陽ギア160とは別部材として形成することもできる。図4に示すように、クラッチカム176のカム部179は、第1カム面180、第2カム面182、および第3カム面184を含む。カム部179は、複数の第1カム面180、複数の第2カム面182、および複数の第3カム面184を含んでいてもよい。ここではカム部179は、それぞれ2組の第1カム面180、2組の第2カム面182、および2組の第3カム面184を含んでいる。各第1カム面180は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。各第2カム面182は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。各第3カム面184は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。第1カム面180および第3カム面184は、軸線Xに直交する面によって構成される。第1カム面180は、第3カム面184よりも第1太陽ギア160側に配置される。第2カム面182は、第1カム面180と第3カム面184とを接続する傾斜面によって構成される。
図4に示すように、シフトキー部材700は、クラッチカム176の外径よりも少し大きい内径を含む環状の部材によって構成される。シフトキー部材700は、カムフォロア740を含む。カムフォロア740は、シフトキー部材700の径方向内側に突出する少なくとも突起を含む。カムフォロア740は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔をあけて配置される2つの突起を含む。カムフォロア740は、クラッチカム176のカム部179に第1軸方向X1から接触する。カムフォロア740は、カム部179よりも軸線Xに関して径方向の内側まで延び、回動部材704のガイド溝688に挿入される。回動部材704は、シフトキー部材700を、軸方向に案内可能に構成される。シフトキー部材700が、カム部179のガイド溝688に沿って軸方向に案内されることによって、シフトキー部材700が軸方向に移動する。シフトキー部材700は、シフト入力部材732の動きに応じて回転する。シフトキー部材700は、クラッチリング623とともに、クラッチスプリング747によって、第2軸方向X2に付勢され、カムフォロア740がカム部179に接触している。クラッチカム176は、回動部材704が回転し、シフトキー部材700が回転すると、シフトキー部材700およびクラッチリング623を、図6に示すクラッチオン位置および図7に示すクラッチオフ位置間で軸方向に移動させるよう構成される。カムフォロア740が第1カム面180に接触しているとき、クラッチリング623はクラッチオン位置に配置され、カムフォロア740が第3カム面184に接触しているとき、クラッチリング623はクラッチオフ位置に配置される。クラッチリング623によって、動力伝達機構82の動力伝達経路が選択され、具体的には、入力体70の回転力を、動力伝達機構82の遊星ギアキャリア550と第1リングギア551とのいずれかに伝達するのかを選択する。
シフト制御部材288は、シフト入力部材732の動きに応じて回転し、複数の動力伝達経路のいずれかを選択する。シフト制御部材288は、軸36まわりに回動可能に装着される。シフト制御部材288は、軸36まわりの可動範囲は、シフト入力部材732の軸36まわりの可動範囲と等しい。シフト制御部材288は、軸方向に延びるベース部材408と、ベース部材408から軸32の周方向に延び、軸方向に間隔を隔てて配置される少なくとも1つの制御アームを含む。制御アームは、第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344を含む。ベース部材408は、軸36に形成される制御スリーブ溝に対してスライドする内側面410と、内側面410に対向する外側面412と、を含む。ベース部材408は、第1のセイバースプリング708の第2端部756が連結されるスプリング連結部414を含む。スプリング連結部414は、第1端部280の側面に形成される溝を含む。ベース部材408の第1端部280は、連結孔686を挿通し、スプリング連結部414は、回動部材704の外周部682の内側に配置される。
第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344は、軸36に形成される第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472にそれぞれ配置される。第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344は、軸36の周方向にスライド可能である。第1制御アーム284は、第2ワンウェイクラッチ207の爪を制御することによって、第2太陽ギア164を第1状態と第2状態のいずれかにする。第1状態は、第1方向D1および第2方向D2のいずれかに回転不能な状態である。本実施の形態では、第1状態は、第2方向D2に回転不能であり、第1方向D1には回転可能な状態である。第1状態は、第1方向D1および第2方向D2のいずれにも回転不能な状態であってもよい。第2制御アーム314は、第3ワンウェイクラッチ226の爪を制御することによって、第3太陽ギア168を第1状態と第2状態のいずれかの状態にする。第3制御アーム344は、第4ワンウェイクラッチ332の爪を制御することによって、第4太陽ギア172を第1状態と第2状態のいずれかの状態にする。本実施形態では、シフト制御部材288は、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168および第4太陽ギア172のうち少なくともいずれか一つを選択的に第1状態にし、他を第2状態とすることによって、複数の動力伝達経路を選択することができる。
<シフトアシスト機構>
トルク制限機構950は、シフト機構84およびシフトアシスト機構90に過度な負荷が与えられないように、入力体70からシフト制御部材288へ伝達される回転力(トルク)を制限する。これによって、ワンウェイクラッチの爪が太陽ギアから外れず、シフト制御部材288が回転できないときに、シフトアシスト機構90からシフト制御部材288に過剰な負荷が与えられてしまうことを回避することができる。
図6、図7および図10に示すように、トルク制限機構950は、筒状部材960と、係合ユニット964と、を含む。筒状部材960は、軸線Xに関して、アシスト力入力部材728の径方向外側で、かつ入力体70の径方向内側に配置される。筒状部材960は、爪部材820に対向する。入力体70の内周部952には、少なくとも1つの凹部956が形成されている。入力体70の内周部962には、複数の凹部956が周方向に並んで形成されている。筒状部材960は、内周部に複数のラチェット歯976を含む。筒状部材960の外周部には、軸方向に延びる連結スプライン984が形成されている。連結スプライン984は、1または複数のスプラインを含む。
係合ユニット964は、筒状部材960の外周部に設けられる。係合ユニット964は、サポート部992と、係合部材1002と、付勢部材1004とを含む。サポート部992は、筒状部材960に、筒状部材960に対して軸線Xまわりに回転不能に取り付けられる。サポート部992は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状プレートを含む。係合部材1002は、少なくとも1つの爪を含み、本実施の形態では4つの爪を含む。付勢部材1004は、コイルスプリングまたは板バネなどのスプリングを含む。付勢部材1004は、係合部材1002の係合先端部1008を軸線Xに関して径方向外側に付勢する。図10に示すように、サポート部992は、連結スプライン1012と、第1ピン支持部1020と、第2ピン支持部1024と、を含む。連結スプライン1012は、サポート部992の内周部に形成され、軸線X方向に延びる1または複数のスプラインを含む。連結スプライン1012は、筒状部材960の外周部に形成される1または複数の連結スプライン984に連結スプライン984と連結する。筒状部材960とサポート部992とは一体形成されていてもよい。第1ピン支持部1020は、サポート部992の環状プレートのそれぞれに形成され、第1ピン1022を保持するための孔を有する。第2ピン支持部1024は、サポート部992の環状プレートのそれぞれに形成され、第2ピン1026を保持するための孔を有する。第1ピン1022および第2ピン1026は、サポート部992の環状プレートを連結する。係合部材1002は、サポート部992の環状プレートの間で第1ピン1022に回転可能に支持される。付勢部材1004は、第2ピン1026に巻きつくとともに、サポート部992または筒状部材960に接触する第1端部(図示せず)と、係合部材1002に接触する第2端部1030とを含む。係合部材1002の係合先端部1008は、第1ピン1022よりも第1方向D1の上流側に配置されている。係合部材1002の係合先端部1008は、入力体70の内周面に勢部材1004によって押されて接触している。係合部材1002の係合先端部1008は、入力体70の凹部956に嵌まっている。変速していないときは、入力体70と、筒状部材960との相対回転が係合部材1002によって阻止され、入力体70と、筒状部材960と、一緒に回転可能である。筒状部材960が回転していないときに、入力体70に第1方向D1に所定の回転力が与えられると、係合部材1002が入力体70の凹部956から外れて、入力体70が筒状部材960に対して第1方向D1に相対回転する。
爪制御部材736は、環状の部材によって構成される。爪制御部材736は、基部736Aと、基部736Aの外周部から軸方向に延びる爪制御突起850を含む。爪制御部材736は、アシスト力入力部材728の第1軸方向X1に隣接して配置される。爪制御突起850は、爪部材820に対応する位置に設けられる。爪制御突起850は、1または複数の突起を含み、ここでは2つの突起を含む。爪制御突起850は、変速していないとき、爪部材820を第2位置に押圧する。爪制御部材736は、中間部材720によって第1方向D1への移動が規制される。爪制御部材736は、中間部材720が第1方向D1に回転すると、爪部材820が第2位置から第1位置に移動することによって第1方向D1に回転する。爪制御部材736は、爪部材820が第1位置に配置されて中間部材720が停止した状態で、アシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、爪部材820を第1位置から第2位置に移動させる。爪部材820が第1位置に移動すると、爪部材820は、筒状部材960(図10参照)のラチェット歯976と係合する。
爪制御部材736には、開口854が形成されている。基部736Aは、環状に形成されており、開口854は、基部736Aに形成されている。爪制御部材736の開口854には、シフト入力部材732が挿通している。爪制御部材736は、シフト入力部材732に回動可能に支持される。爪制御部材736は、爪制御部材736の回動範囲を規制する第2係合部856を含む。第2係合部856は、基部736Aの内周部から径方向内側に向けて突出する。第2係合部856には、中間部材720の第1連結部808が接触する。第1連結部808は、爪制御部材736に第2方向D2上流側から接触している。爪制御部材736は、第1方向D1に回転するとき第1方向D1の上流側からシフト入力部材732に接触しないように、シフト入力部材732から間隔をあけて配置されている。
図8および図9に示すように、爪制御突起850は、爪部材820に接触する第1接触部852を含む。第1接触部852は、爪制御突起850の第2方向D2の下流側の端部に形成される。第1接触部852は、爪制御突起850の軸線Xに関して径方向内側の部分に形成され、軸線Xに垂直な断面において外方に凸となるように湾曲している。
爪部材820は、第1接触部852に接触する第2接触部826を有する。爪部材820の外周部のうち、先端部822と基端部824との間で、軸線Xに関して径方向の外側の部分には、段差部が形成されている。段差部では、先端部822側が基端部824側よりも軸線Xに関して径方向外側に配置される。第2接触部826は、段差部に形成される。第2接触部826は、段差部の軸線Xに関して径方向外側の部分によって形成され、軸線Xに垂直な断面において外方に凸となるように湾曲している。
シフト入力部材732が第1方向D1に回転すると、中間部材720も第1方向D1に回転する。中間部材720が第1方向D1に回転すると、中間部材720に回転位置が規制されている爪制御部材736が、アシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転可能になる。爪制御部材736が、アシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転可能になると、爪付勢部材828によって付勢されている爪部材820が爪制御突起850に接触した状態で、爪制御突起850を第1方向D1に移動させるとともに、第1位置に揺動して、筒状部材960のラチェット歯976に噛み合う。この状態で、入力体70が第1方向D1に回転すると、アシスト力入力部材728に入力体70から回転力が伝達され、回動部材704を介してシフト制御部材288を回転させることができる。
シフト入力部材732の第1方向D1への回転が停止すると、中間部材720の第1方向D1への回転も停止する。中間部材720の第1方向D1への回転も停止すると、中間部材720によって爪制御部材736の回転位置が規制され、爪制御部材736がアシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転不能になる。この状態でアシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、爪制御突起850が、爪部材820を第2位置に向けて押圧する。この結果、爪付勢部材828の付勢力に抗して爪部材820が第2位置に移動する。アシスト力入力部材728が爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転するのは、アシスト力入力部材728は、入力体70からの第1方向D1の回転力が与えられたとき、または、中間部材720、第1のスプリング連結部材712、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288を第1方向に回転させ、シフト入力部材732が回動部材704を介してシフト制御部材288によって第1方向D1に押されたときである。
<内装変速機の変速動作>
次に、内装変速機14の変速動作について説明する。表1に、各速度段における様々な部品の連結を示し、表2に、各速度段における動力伝達経路を示す。ギア比は、一例である。
<シフト機構およびシフトアシスト機構の動作>
前述のように、シフトアシスト機構90は、入力体70の回転力を利用して、シフト機構84による動力伝達機構82における動力伝達経路の切り替えを支援している。図13から図15の模式図を参照して、シフト機構84およびシフトアシスト機構90の動作を説明する。シフトアシスト機構90によるシフトアシストは、入力体70が回転している場合にのみに行われる。シフトアップ動作では、シフトアシスト機構90によるシフトアシストは行なわれない。
<シフトアシストが無いときのシフトダウン動作>
入力体70が回転しておらず、駆動ユニット91のみの駆動力で変速するときのシフトダウン動作について説明する。表3に示すギア比が段階的に小さくなるシフトダウン変速の場合、図13に示すように、駆動ユニット91の出力軸99は、伝達部材104を第1方向D1に所定角度回転させる。これによって、伝達部材104に接続されるシフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転する。シフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転するとき、シフト入力部材732の第2連結部860が中間部材720の第2連結部809を第1方向D1に押圧し、中間部材720が第1方向D1に所定角度回転する。中間部材720が第1方向D1に所定角度回転するとき、中間部材720の第3連結部800が、第1のスプリング連結部材712の連結部765を第1方向D1に押圧し、第1のスプリング連結部材712が第1方向D1に所定角度回転する。第1のスプリング連結部材712を所定角度回転するとき、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288が第1方向D1に引っ張られる。シフト制御部材288は、第1方向D1への回転可能であれば、第1方向に所定角度回転し、かつ回動部材704を第1方向D1に押して、回動部材704を第1方向D1に所定角度回転させる。シフト制御部材288を第1方向D1に回転させることによって、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168、および第4太陽ギア172が択一的に第1状態になるか、または、第2太陽ギア164から第4太陽ギア172の全てが第2状態になる。第5速度段と第4速度段の間では、回動部材704の第1方向D1への回転に応じて、シフトキー部材700がクラッチリング623をクラッチオン位置からクラッチオフ位置に軸方向に移動させる。シフト入力部材732が第1方向D1に回転したときに、シフト制御部材288が第1方向D1に同じ量だけ回転すると、回動部材704と爪制御部材736との相対回転位置が変わらないので、爪部材820は第2位置に保持されたままになり、シフトアシスト機構90は動作しない。
<シフトアップ動作>
表3に示すギア比が段階的に大きくなるシフトアップ変速の場合、図14に示すように、駆動ユニット91の出力軸99は伝達部材104を第2方向D2に所定角度回転させる。これによって、伝達部材104に係合するシフト入力部材732が第2方向D2に所定角度回転する。シフト入力部材732が第2方向D2に所定角度回転すると、シフト入力部材732の第2連結部860が第2のスプリング連結部材724の第2係合部792を第2方向D2に押圧し、第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に所定角度回転させる。第2のスプリング連結部材724が第2方向D2に所定角度回転すると、第2のセイバースプリング716を介して、第1のスプリング連結部材712が第2方向D2に所定角度回転する。第1のスプリング連結部材712が、第2方向D2に所定角度回転すると、第1のスプリング連結部材712の連結部765が中間部材720の第3連結部800を第2方向D2に押圧し、中間部材720が第2方向D2に所定角度回転する。中間部材720が、第2方向D2に所定角度回転すると、中間部材720の第1連結部808が、アシスト力入力部材728の第1係合部817および爪制御部材736の第2係合部856を第2方向D2に押圧し、アシスト力入力部材728および爪制御部材736を第2方向D2に所定角度回転させる。アシスト力入力部材728が第2方向D2に所定角度回転すると、アシスト力入力部材728の連結部837が、回動部材704の連結部690を第2方向D2に押圧し、回動部材704を第2方向D2に所定角度回転させる。この結果、シフト制御部材288が所定角度第2方向D2に回転する。これによって、シフト制御部材288が、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168、および第4太陽ギア172が択一的にオン、または、第2太陽ギア164から第4太陽ギア172の全てがオフする。また、第5速度段と第4速度段の間で、シフトキー部材700によって、クラッチリング623がクラッチオフ位置からクラッチオン位置に軸方向に移動する。
<シフトアシストが有るときのシフトダウン動作>
入力体70が回転しており、駆動ユニット91のみの駆動力で変速できないときのシフトダウン動作について説明する。シフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転したときに、シフト制御部材288が第1方向D1に同じ量だけ回転しない場合、中間部材720はシフト入力部材732と共に第1方向D1に所定角度回転するので、中間部材720が爪制御部材736に接触する位置も第1方向D1に移動し、爪制御部材736は、爪部材820に押されて回動部材704に対して第1方向D1に相対回転する。入力体70に与えられる回転力が大きい場合、第1〜第3ワンウェイククラッチに含まれる爪のいずれかが、対応する第2〜第3の太陽ギアに引っかかってしまい、駆動ユニット91のみの駆動力のみでは、シフト制御部材288が第1方向D1に回転しない場合がある。このような場合に、回動部材704に対して爪制御部材736が第1方向D1に相対回転する。アシスト力入力部材728に対して爪制御部材736が第1方向D1に相対回転すると、爪部材820が第1位置に移動して筒状部材960のラチェット歯976に係合する。入力体70が回転しているときには、トルク制限機構950を介して入力体70の第1方向D1の回転が爪部材820を介して、アシスト力入力部材728に伝達される。アシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、回動部材704を介してシフト制御部材288が第1方向D1に押されて回転する。シフト入力部材732の第1方向D1に所定角度回転して停止すると、中間部材720の第1方向D1への回転も停止し、中間部材720によって爪制御部材736の第1方向D1への移動が規制される。爪制御部材736の第1方向D1への移動が規制されている状態で、アシスト力入力部材728が回動部材704を介してシフト制御部材288を第1方向D1に所定角度回転させることによってシフトダウン動作が完了する。アシスト力入力部材728が第1方向D1に所定角度回転するとき、アシスト力入力部材728は、爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転する。アシスト力入力部材728が爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転すると、爪部材820は、爪制御部材736に押されて第1位置から第2位置に戻る。トルク制限機構950によって、入力体70からシフト制御部材288へ伝達される回転力が制限される場合を除いて上記のように動作する。爪制御部材736は、第1方向D1に回転するとき第1方向D1の上流側からシフト入力部材732に接触しないので、爪制御部材736からシフト入力部材732には回転力が伝達されない。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
(a)上記実施形態では、内装変速機14の動力伝達機構82として8個の動力伝達経路を含むものを開示したが、動力伝達経路は複数(たとえば、2個から12個)であればどのような数でもよい。
(b)上記実施形態では、電気配線で接続された変速操作部の操作に応じて、制御部97を制御するが、無線によって制御部を変速操作部に接続してもよい。たとえば、制御部を小電力無線通信規格によって変速操作部と接続してもよい。また自転車の車速を検出する車速センサ、クランク回転速度を検出するケイデンスセンサおよびクランクに与えられる人力駆動力を検出するセンサなどの検出結果に基づいて、制御部97は電動アクチュエータを制御して自動で変速してもよい。
(c)上記実施形態では、自転車用変速機として内装変速ハブを開示したが本発明はこれに限定されない。クランク軸の回転を変速してフロントスプロケットに伝達する変速機にも本発明を適用できる。
(d)上記実施形態において、相互に接触可能な突起が形成されている部材および突起が形成されている部材について、突起が形成されている部材に突起に代えて凹部を形成し、突起が形成されている部材に凹部に代えて突起を形成して、突部と凹部とを接触可能に構成してもよい。
(e)上記実施形態では、シフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、シフトダウンするように動力伝達経路を変更しているが、シフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、シフトアップするように動力伝達経路を変更する構成としてもよい。
(f)上記実施形態では、モータ93によってシフト入力部材732を回転させたが、変速操作部とシフト機構とを、シフトアップケーブルおよびシフトダウンケーブルの2本のケーブルによって連結してもよい。たとえば、シフトダウンケーブルによって、シフト入力部材を第1方向D1に回転させ、シフトアップケーブルによって、シフト入力部材を第2方向D2に回転させてもよい。
(g)上記実施形態において、トルク制限機構950を多板クラッチ機構によって構成してもよい。
(h)上記実施形態において、伝達部材104を省略して、駆動ユニット91の回転力がシフト入力部材732に直接与えられる構成としてもよい。
14:内装変速機,36:軸,70:入力体:出力体,82:動力伝達機構,84:シフト機構,90:シフトアシスト機構,93:モータ,950:トルク制限機構,288:シフト制御部材,708:第1のセイバースプリング,712:第1のスプリング連結部材,716:第2のセイバースプリング,720:中間部材,724:第2のスプリング連結部材,728:アシスト力入力部材,732:シフト入力部材,736:爪制御部材,820:爪部材,828:爪付勢部材
本発明は、自転車用変速機、特に、自転車に装着される内装変速機に関する。
モータの駆動によってシフト機構が動作する内装変速機が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。このような内装変速機としては、たとえばシマノ社製SG−505があり、人力駆動力によってシフト機構の変速動作をアシストするシフトアシスト機構が搭載されている。
シフトアシスト機構を有する変速機において、シフトアシスト機構から入力される人力駆動力を効率的にシフト機構に伝達することが望まれている。
本発明に係る自転車用変速機は、軸と、入力体と、出力体と、動力伝達機構と、シフト機構と、シフトアシスト機構と、を含む。入力体は、軸に回転可能に支持され、人力による回転力が入力される。出力体は、軸に回転可能に支持される。動力伝達機構は、入力体の回転力を複数の動力伝達経路のいずれかを介して出力体に伝達し、入力体の回転速度に対する出力体の回転速度を変更可能である。シフト機構は、シフト入力部材、シフト制御部材、第1のセイバースプリング、および第2のセイバースプリングを含む。シフト入力部材は、軸のまわりの複数の回転位置に位置決め可能である。シフト制御部材は、シフト入力部材の動きに応じて回転し、複数の動力伝達経路のいずれかを選択する。シフト機構において、シフト入力部材が軸まわりの第1方向に回転するとき、第1のセイバースプリングを介してシフト制御部材に第1方向の回転力が与えられる。シフト機構において、シフト入力部材が第1方向とは反対の第2方向に回転するとき、第2のセイバースプリングを介してシフト制御部材に第2方向の回転力が与えられる。シフトアシスト機構は、シフト入力部材が第1方向に回転するとき、第2のセイバースプリングとシフト制御部材との間のシフト力伝達経路に、入力体の前記第1方向への回転力を伝達可能である。
シフトアシスト機構からの回転力は、第1のセイバースプリングおよび第2のセイバースプリングを介さずにシフト制御部材に与えられる。シフトアシスト機構とシフト入力部材とは、第2のセイバースプリングを介して接続されているので、シフトアシスト機構からの回転力がシフト入力部に分散されてしまうことを抑制することができる。従って、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達できる。またシフト入力部材が第1の方向に回転するとき、第1のセイバースプリングを介してシフト制御部材に回転力が与えられ、シフト入力部材が第2の方向に回転するとき、第2のセイバースプリングを介してシフト制御部材に回転力が与えられるので、変速機に与えられる駆動トルクが大きいために、シフト制御部材が回転しない場合であっても、シフト入力部材からシフト制御部材までの伝達経路に過剰な負荷が与えられてしまうことを抑制することができる。
シフト機構は、シフト入力部材を回転可能な電動アクチュエータを含んでもよい。この構成によれば、シフト動作を電気的に制御できる。シフト入力部材に電動アクチュエータが接続されている場合でも、シフトアシスト機構からの回転力がシフト入力部材に与えられることが抑制されるので、シフトアシスト機構が動作することによって電動アクチュエータに与えられる負荷を低減することができる。
電動アクチュエータは、モータであってもよい。この構成によれば、モータの回転力によってシフト機構を動作させることができる。
シフト機構は、モータの回転を減速してシフト入力部材に伝達する減速機をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、モータの小型化を図れる。
モータは、軸に着脱可能に構成されてもよい。この構成によれば、モータのメンテナンスが容易である。
シフト機構は、電動アクチュエータを制御して、シフト入力部材を複数の回転位置のいずれかに位置決めする制御部をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、電気的にシフト入力部材を位置決めできる。
シフト機構は、モータを収容するハウジングをさらに含んでいてもよい。制御部は、ハウジングに設けられてもよい。この構成によれば、モータおよび制御部を塵および水などから保護しやすい。
シフト機構は、中間部材と、第1のスプリング連結部材と、第2のスプリング連結部材と、をさらに含んでいてもよい。中間部材は、シフト入力部材とシフト制御部材の間に配置され、シフト入力部材が第1方向の上流側から接触可能に構成される。第1のスプリング連結部材は、中間部材が第1方向の上流側から接触可能に構成される。第2のスプリング連結部材は、シフト入力部材に第1方向の上流側から接触可能に構成される。第1のセイバースプリングは、第1のスプリング連結部材およびシフト制御部材にそれぞれ連結され、第1のスプリング連結部材を第2方向、シフト制御部材を第1方向にそれぞれバイアスする。第2のセイバースプリングは、第1のスプリング連結部材および第2のスプリング連結部材に連結され、第1のスプリング連結部材を第2方向、第2のスプリング連結部材を第1方向にそれぞれバイアスする。
シフト入力部材が第1方向に回転するとき、シフト入力部材が中間部材を第1方向に押し、中間部材が第1のスプリング連結部材を第1方向に押してもよい。この構成によれば、シフト入力部材が第1方向に回転すると、シフト入力部材が中間部材を第1方向に押して第1方向に回転させる。中間部材が第1方向に回転すると、中間部材が第1のスプリング連結部材を押し、第1のスプリング連結部材が第1方向に回転し、第1のセイバースプリングがシフト制御部材を第1方向に回転させる。
シフト機構は、アシスト力入力部材と、回動部材と、をさらに含んでいてもよい。アシスト力入力部材は、中間部材が第1方向の下流側から接触可能であり、シフトアシスト機構からの回転力を入力可能である。回動部材は、軸のまわりに回動可能に設けられ、アシスト力入力部材が第1方向の下流側から接触可能であり、かつシフト制御部材に第1方向の下流側から接触可能である。
シフト入力部材が第2方向に回転するとき、シフト入力部材が第2のスプリング連結部材を第2方向に押し、第1のスプリング連結部材が中間部材を第2方向に押し、中間部材がアシスト力入力部材を第2方向に押し、回動部材がシフト制御部材を第2方向に押すように、シフト機構は構成されてもよい。
シフトアシスト機構は、筒状部材と、少なくとも一つの爪部材と、少なくとも一つの付勢部材と、爪制御部材と、を含んでいてもよい。筒状部材は、入力体と連動可能であり、内周面に周方向に間隔を隔てて配置されるラチェット歯を含んでいる。少なくとも一つの爪部材は、ラチェット歯に係合可能な第1位置と、ラチェット歯から離反する第2位置とに移動可能に、アシスト力入力部材に設けられる。少なくとも一つの付勢部材は、アシスト力入力部材に設けられ、爪部材を係合位置に向けて付勢する。爪制御部材は、中間部材によって第1方向への移動が規制され、中間部材が第1方向に回転すると、爪部材が第2位置から第1位置に移動することによって第1方向に回転し、かつ爪部材が第1位置に配置されて中間部材が停止した状態で、アシスト力入力部材が第1方向に回転すると、爪部材を第1位置から第2位置に移動させる。
この構成によれば、シフト入力部材が第1方向に回転すると、中間部材も第1方向に回転し、爪制御部材の中間部材による規制位置も第1方向に移動するので、爪付勢部材が爪部材を介して爪制御部材を第1方向に回転させることができ、爪部材が第2位置から第1位置に移動する。爪部材が筒状部材のラチェット歯に係合することによって、入力体の第1方向の回転を、アシスト力入力部材に入力することができる。シフト入力部材の第1方向への回転を停止すると、中間部材の第1方向への回転が停止して、中間部材の規制位置の移動も停止する。この状態でアシスト力入力部材が第1方向に回転すると、爪部材が爪制御部材に接触して、爪部材が第1位置から第2位置に移動する。シフト制御部材を第1方向に回転させる変速の時に、爪部材が自動的に第2位置から第1位置に移動し、変速しないときには、爪部材を第2位置に保持しておくことができる。
爪制御部材は、第1方向に回転するとき第1方向の上流側からシフト入力部材に接触しないように、シフト入力部材から間隔をあけて配置されていてもよい。この構成によれば、人力駆動力によってアシスト力入力部材が第1方向に回転したときに、爪制御部材を介して、シフト入力部材に人力駆動力が直接与えられてしまうことがない。
爪部材は、軸に平行な軸線まわりに揺動可能にアシスト力入力部材に設けられてもよい。この構成によれば、アシスト力入力部材の回転する軸線と爪部材が搖動する軸線とが平行に配置されるので、爪部材がスムーズに揺動する。
シフトアシスト機構からの回転力がアシスト力入力部材に入力されると、アシスト力入力部材が回動部材を第1方向に押し、回動部材がシフト制御部材を第1方向に押してもよい。この構成によれば、人力駆動力によってアシスト力入力部材に与えられる回転力を、シフト制御部材にそのまま伝達することができる。
シフトアシスト機構は、入力体と筒状部材の間に設けられ、筒状部材に伝達されるトルクを制限するトルク制限機構をさらに含んでいてもよい。この構成によれば、アシスト力入力部材に入力される人力駆動力を制限することができるので、シフト機構に過度の負荷が与えられることを抑制することができる。
動力伝達機構は、シフト入力部材が第1方向に回転することによって、入力体の回転速度に対する出力体の回転速度が小さくなるように動力伝達経路を変更してもよい。この構成によれば、入力体に人力駆動力が与えられている状態で変速することが多いシフトダウン変速において、シフト機構の変速をシフトアシスト機構によってアシストすることができる。
軸は、ハブ軸であり、出力部は、ハブシェルであってもよい。この構成によれば、自転車用内装変速ハブにおいて、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達できる。
本発明によれば、シフトアシスト機構を含む自転車用変速機において、人力駆動力をシフト機構に効率よく伝達でき、変速性能を向上させることができる。
本発明の一実施形態による内装変速機の半截断面図。
シフト機構およびシフトアシスト機構の分解斜視図。
シフト機構の一部およびシフトアシスト機構の拡大分解斜視図。
シフト機構の一部の拡大分解斜視図。
シフト機構およびシフトアシスト機構の動作を説明するための模式図。
クラッチリングがクラッチオン状態の場合の図1の仮想線で囲った領域Dの断面拡大図。
クラッチリングがクラッチオフ状態の場合の図6に相当する図。
爪制御部材が爪部材を第2位置に押圧した状態を示す側面図。
爪付勢部材が爪部材を第1位置に向けて付勢した状態を示す側面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見た動作不能状態にあるシフトアシスト機構の断面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見た動作状態にあるシフトアシスト機構の断面図。
図6の切断線VIII−VIIIから見たシフトアシスト機構の断面図。
シフト機構のシフトダウン動作を説明する模式図。
シフト機構のシフトアップ動作を説明する模式図。
シフトアシスト機構によってアシストが行われるときのシフトダウン動作を説明する模式図。
図1において、本発明の一実施形態による自転車用変速機である内装変速機14は、軸36、入力体70、出力体74、動力伝達機構82、シフト機構84、およびシフトアシスト機構90、を含む。本実施形態では、内装変速機14は、自転車の後輪に設けられる内装変速ハブを含む。したがって、軸36は、ハブ軸であり、入力体70は駆動体であり、出力体74はハブシェルである。内装変速機14は、モータ93によって変速する。
なお、以降の説明において、“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および下”、ならびにこれらと同義の用語は、自転車を水平な平面に設置し、自転車の使用者がハンドルバーに向かってサドル(いずれも図示せず)に座った状態からみた“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および“下”を意味する。
<軸>
軸36は、図2に示すように、軸線Xを有する。軸36の軸線Xの延びる方向の中央部には、動力伝達機構82の複数の動力伝達経路を切り換えるための構造が設けられる。軸36の軸線Xの延びる方向を、軸方向と記載する。軸方向の一方を、第1軸方向X1と記載し、軸方向の他方を、第2軸方向X2と記載する。具体的には、軸36は、軸方向に延びる図示しない制御スリーブ溝と、制御スリーブ溝から周方向に延びる第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472を中間部に含む。第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472は、軸方向に間隔を隔てて配置される。軸36は、軸方向において中央部の第1端部の外周面に軸方向に延びる第1回り止め溝380および第2回り止め溝388を含む。軸36の軸方向の両端部には、外周部にそれぞれ雄ネジが形成されている。
<入力体>
入力体70は、筒状の部材であり、軸36に回転可能に支持される。入力体70には、人力による回転力が入力される。入力体70には、リアスプロケット54が着脱可能に設けられる。リアスプロケット54は、入力体70の外周部に設けられるスプラインに係合して、入力体70と一体的に回転可能に、入力体70に連結される。リアスプロケット54は、たとえばスナップリングまたはロックナットによって、入力体70に着脱可能に固定される。入力体70は、玉軸受98を介して軸36に回転可能に支持されている。入力体70の内周部は、玉軸受98の軸受キャップを構成する。玉軸受98の軸受コーン102は、シフト機構84に含まれる伝達部材104と、モータ取付部材108と、座金112と、ロックナット114と、によって定位置に保持される。軸受コーン102は、軸36の第1回り止め溝380に係合する。伝達部材104は、モータ93によって複数段階(例えば、3段階から12段階、本実施形態では8段階)に位置決めされる。入力体70は、玉軸受128によって出力体74の軸方向の第1端部を回転可能に支持する。入力体70の玉軸受128よりも軸方向の第2端部寄りには、入力体70の進行方向の回転のみ動力伝達機構82に伝達する第1ワンウェイクラッチ586が設けられる。第1ワンウェイクラッチ586は、爪式のクラッチでもよく、ローラ式のクラッチでもよい。
<出力体>
出力体74は、筒状の部材によって構成される。出力体74は、軸方向の第2端部が軸36に、回転可能に支持される。出力体74は、玉軸受136を介して軸36に支持される。出力体74の軸方向の第1端部は、前述したように入力体70に、玉軸受128によって回転可能に支持される。出力体74は、外周部の軸方向の両端部に設けられる一対のスポークフランジ78を含む。出力体74には、玉軸受128を覆うカバー部材741が取り付けられている。カバー部材741と入力体70との間には、シール部材が設けられている。
<動力伝達機構>
図1に示すように、動力伝達機構82は、入力体70と出力体74との間に配置される。動力伝達機構82は、入力体70の回転力を複数の動力伝達経路のいずれかを介して出力体74に伝達し、入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度を変更可能である。本実施形態では、動力伝達機構82は、後述するシフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、ギア比が段階的に小さくなるように動力伝達経路を変更する。ギア比が段階的に小さくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトダウンという。ギア比が段階的に大きくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトアップという。第1方向D1は、入力体70が前転する方向である。動力伝達機構82は、シフト入力部材732が第1方向D1と反対の第2方向D2に回転することによって、入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度が大きくなるように動力伝達経路を変更する。入力体70の回転速度に対する出力体74の回転速度が大きくなるように動力伝達経路を変更する場合、シフトアップという。
動力伝達機構82は、本実施形態では8個の動力伝達経路のいずれか一つを選択する。動力伝達機構82は、複数の遊星歯車機構を含む。動力伝達機構82は、第1太陽ギア160と、第2太陽ギア164と、第3太陽ギア168と、第4太陽ギア172と、第2ワンウェイクラッチ207と、第3ワンウェイクラッチ226と、第4ワンウェイクラッチ332と、クラッチリング623と、を含む。第2ワンウェイクラッチ207、第3ワンウェイクラッチ226および第4ワンウェイクラッチ332は、それぞれ爪式のクラッチである。
第1太陽ギア160は、軸36の第2回り止め溝388に回転不能に係合する。第2太陽ギア164は、第1太陽ギア160に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第2ワンウェイクラッチ207は、第2太陽ギア164と軸36の間に設けられる。第2ワンウェイクラッチ207は、第2スプリング272によってオン状態に付勢される。第2ワンウェイクラッチ207は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第2太陽ギア164が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第2太陽ギア164が回転可能な状態である。第2太陽ギア164の内周面には、第2ワンウェイクラッチ207の爪が係合可能な係合部が形成されている。第2ワンウェイクラッチ207の爪は、第2ワンウェイクラッチ207がオン状態のとき、第2太陽ギア164の係合部に接触し、第2ワンウェイクラッチ207がオフ状態のとき、第2太陽ギア164の係合部から離反する。 第3太陽ギア168は、第2太陽ギア164に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第3ワンウェイクラッチ226は、第3太陽ギア168と軸36の間に設けられる。第3ワンウェイクラッチ226は、第3スプリング300によってオン状態に付勢される。第3ワンウェイクラッチ226は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第3太陽ギア168が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第3太陽ギア168が回転可能な状態である。第3太陽ギア168の内周面には、第3ワンウェイクラッチ226がオン状態のとき、第3ワンウェイクラッチ226の爪が係合可能な係合部が形成されている。第3ワンウェイクラッチ226の爪は、第3ワンウェイクラッチ226がオン状態のとき、第3太陽ギア168の係合部に接触し、第3ワンウェイクラッチ226がオフ状態のとき、第3太陽ギア168の係合部から離反する。
第4太陽ギア172は、第3太陽ギア168に隣接して配置され、軸36に回転可能に支持される。第4ワンウェイクラッチ332は、第4太陽ギア172と軸36の間に設けられる。第4ワンウェイクラッチ332は、第4スプリング302によってオン状態に付勢される。第4ワンウェイクラッチ332は、シフト機構84によってオン状態とオフ状態とに制御される。オン状態は、軸36に対して第4太陽ギア172が第2方向に回転不能な状態であり、オフ状態は、軸36に対して第4太陽ギア172が回転可能な状態である。第4太陽ギア172の内周面には、第4ワンウェイクラッチ332がオン状態のとき、第4ワンウェイクラッチ332の爪が係合可能な係合部が形成されている。第4ワンウェイクラッチ332の爪は、第4ワンウェイクラッチ332がオン状態のとき、第4太陽ギア172の係合部に接触し、第4ワンウェイクラッチ332がオフ状態のとき、第4太陽ギア172の係合部から離反する。
図1に示すように、動力伝達機構82は、遊星ギアキャリア550、第1リングギア551、および第2リングギア553をさらに含む。遊星ギアキャリア550、第1リングギア551、および第2リングギア553は、いずれも軸36の軸線X回りに回転可能に設置される。
遊星ギアキャリア550は、軸36に回転可能に設けられる。遊星ギアキャリア550は、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608を回転可能に支持する。第1遊星ギア579および第2遊星ギア608は、それぞれ少なくとも1つ設けられる。第1遊星ギア579および第2遊星ギア608が複数設けられる場合、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608は、軸線Xの周方向に等しい間隔をあけて配置される。遊星ギアキャリア550は、軸36に直接支持されてもよく、第1遊星ギア579および第2遊星ギア608を介して軸36に支持されてもよい。遊星ギアキャリア550と、出力体74との間には、第5ワンウェイクラッチ908が設けられている。第5ワンウェイクラッチ908は、自転車の進行方向の回転を、遊星ギアキャリア550から出力体74に伝達する。
遊星ギアキャリア550の軸方向の第1端部には、少なくとも1つの第1スプライン621が内周部に配置され、クラッチリング623に形成される少なくとも1つの第2スプライン622と係合可能に構成されている。
クラッチリング623は、円環状の部材によって構成される。クラッチリング623は、後述するシフトキー部材700に対して回転可能、かつシフトキー部材700とともに軸方向に移動可能に、シフトキー部材700に支持される。クラッチリング623の内周部は、シフトキー部材700の外周面と、軸方向の第1側面とに接触する。クラッチリング623は、入力体70と遊星ギアキャリア550との間で回転を伝達および遮断する。クラッチリング623は、図6に示す遊星ギアキャリア550に係合するクラッチオン位置と、遊星ギアキャリア550から離反した、図7に示すクラッチオフ位置とに移動可能である。クラッチリング623は、クラッチスプリング747によってクラッチオン位置に向けて付勢される。クラッチリング623は、シフト機構84のシフトキー部材700によってクラッチスプリング747の付勢力に抗して押圧され、クラッチオフ位置に向けて移動可能である。
それぞれの第1遊星ギア579は、第1太陽ギア160と係合する小径ギア部580と、第1リングギア551と係合する大径ギア部584とを含む。同様に、それぞれの第2遊星ギア608は、第4太陽ギア172と噛み合う大径ギア部612と、第3太陽ギア168と噛み合う中径ギア部616と、第2太陽ギア164および第2リングギア553と噛み合う小径ギア部620とを含む。
第1リングギア551は、内周ギア部585を含む。第1リングギア551には、第1ワンウェイクラッチ586を介して、入力体70の第1方向D1の回転が伝達される。第2リングギア553の進行方向の回転は、第6ワンウェイクラッチ628を介して、出力体74に伝達可能である。遊星ギアキャリア550の第1方向D1の回転速度が、第2リングギア553の第1方向D1の回転速度よりも遅いときには、第2リングギア553の回転が、出力体74に伝達される。第6ワンウェイクラッチ628は、ローラクラッチを含んでいてもよく、爪式のクラッチを含んでいてもよい。
<シフト機構およびシフトアシスト機構>
図1および図2において、シフト機構84は、軸36の外周部に設けられる。シフト機構84は、モータ93を含む駆動ユニット91(図1参照)と、シフト入力部材732と、アシスト力入力部材728と、第1のセイバースプリング708と、第1のスプリング連結部材712と、中間部材720と、を含む。また、シフト機構84は、第2のセイバースプリング716と、第2のスプリング連結部材724と、回動部材704と、シフトキー部材700と、クラッチカム176と、シフト制御部材288と、をさらに含む。シフト機構84は、モータ取付部材108と、伝達部材104とをさらに含む。シフト機構84では、シフト入力部材732が軸36まわりの第1方向D1に回転するとき、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288に第1方向D1の回転力が与えられる。また、シフト入力部材732が第1方向D1とは反対の第2方向D2に回転するとき、第2のセイバースプリング716を介してシフト制御部材288に第2方向D2の回転力が与えられる。
シフトアシスト機構90は、シフト入力部材732が第1方向D1に回転するとき、第2のセイバースプリング716とシフト制御部材288との間のシフト力伝達経路に、入力体70の第1方向D1への回転力を伝達可能である。シフトアシスト機構90は、図2に示す、少なくとも一つの爪部材820、少なくとも一つの爪付勢部材828、および爪制御部材736と、を含む。シフトアシスト機構90は、図6および図7に示す、トルク制限機構950および筒状部材960をさらに含む。
<シフト機構>
図1に示すように、シフト機構84において、駆動ユニット91は、モータ取付部材108に着脱可能に取り付けられる。駆動ユニット91は、図1に示すように、モータ取付部材108によって軸方向に位置決めされ、モータ取付部材108とナット115によって挟まれて軸36に回転不能に取り付けられる。モータ取付部材108は、軸36の第1回り止め溝380に係合する。駆動ユニット91は、ハウジング92およびモータ93を含む。駆動ユニット91は、減速機95をさらに含むのが好ましい。駆動ユニット91は、制御部97をさらに含むのが好ましい。モータ93は電動アクチュエータの一例である。ハウジング92は、モータ93、減速機95、および制御部97を収容する。減速機95は、モータ93の回転を減速してシフト入力部材732に伝達する。制御部97は、モータ93を制御してシフト入力部材732を複数の回転位置のいずれかに位置決めする。制御部97は、図示しない電気配線によって、自転車に設けられる変速操作部に電気的に接続される。駆動ユニット91は、第1方向D1、および第1方向D1とは反対の第2方向D2に、シフト入力部材732を回転可能である。第1方向D1は、車輪が前転する方向である。
シフト機構84は、さらに伝達部材104を含む。伝達部材104は、シフト入力部材732と一体で軸線Xまわりに回転する。伝達部材104は、減速機95の出力軸99に係合し、出力軸99とともに軸36に対して回転可能である。図3に示すように、伝達部材104は、環状の部材であり、内周部にシフト入力部材732に回転不能に接続される連結部880を含む。連結部880は、たとえば複数の凹部によって構成され、伝達部材104の周方向に、等しい間隔を隔てて配置される2つの凹部によって構成される。また、伝達部材104は、外周部に減速機95の出力軸99に回動不能に接続される第2連結部882を含む。第2連結部882は、たとえば複数の凹部によって構成され、伝達部材104の周方向に、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの凹部によって構成される。第2連結部882は、連結部880の径方向外側に配置されるのが好ましい。
シフト入力部材732は、筒状の部材によって構成される。シフト入力部材732は、軸36と同軸に設けられ、外周面に回動自在に支持される。シフト入力部材732は、軸36のまわりの複数の回転位置に位置決め可能である。シフト入力部材732は、伝達部材104に向かって軸方向に沿って延びる第1連結部868と、中間部材720に向かって軸方向に沿って延びる第2連結部860と、を含む。第1連結部868は、少なくとも1つの突起を含む。第1連結部868は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第2連結部860は、1または複数の突起を含む。第2連結部860は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1連結部868は、軸受コーン102の内周を通過して伝達部材104の連結部880に係合する。これによって、シフト入力部材732は、出力軸99に連動して第1方向D1および第2方向D2に回動する。シフト入力部材732は、軸受コーン102によって回動範囲が規制される。図5に示すように、シフト入力部材732の第2連結部860は、後述する爪制御部材736およびアシスト力入力部材728の内周を通過して中間部材720および第2のスプリング連結部材724に接触可能になっている。シフト入力部材732が第1方向D1に回転するとき、シフト入力部材732が中間部材720を第1方向D1に押し、中間部材720が第1のスプリング連結部材712を第1方向D1に押す。
アシスト力入力部材728は、環状の部材によって構成される。アシスト力入力部材728は、中間部材720が第1方向D1の下流側から接触可能であり、シフトアシスト機構90からの回転力を入力可能である。アシスト力入力部材728は、シフト入力部材732に回動可能に支持される。アシスト力入力部材728は、略円形の開口816が形成されている。アシスト力入力部材728の開口816に、シフト入力部材732が挿通する。アシスト力入力部材728は、開口816側に設けられる第1係合部817を含む。第1係合部817は、たとえば開口816に突出する少なくとも1つの突起を含む。第1係合部817は、たとえば軸線Xまわりにたとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1係合部817には、中間部材720の後述する第1連結部808が接触可能である。第1連結部808は、アシスト力入力部材728に第2方向D2上流側から接触可能である。第1連結部808は、爪制御部材736に第2方向D2上流側から接触している。第1連結部808は、第2方向D2上流側から爪制御部材736に接触することによって、爪制御部材736の位置を規制する。アシスト力入力部材728は、回動部材704に連結可能な連結部837を含む。連結部837は、アシスト力入力部材728の外周部に設けられる。連結部837は、少なくとも1つの凹部を含む。連結部837は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される凹部を含む。連結部837は、第2方向D2の上流側および下流側の両方から回動部材704に接触可能である。連結部837の凹部の軸線Xまわりの周方向の幅は、回動部材704の後述する連結部690の軸線Xまわりの周方向の幅よりもわずかに大きい。
アシスト力入力部材728には、シフトアシスト機構90を構成する少なくとも一つの爪部材820、および爪部材820を付勢する少なくとも一つの爪付勢部材828が装着される。本実施形態では、軸線Xまわりの周方向に間隔を隔てて配置される複数(たとえば2つ)の爪部材820および複数(たとえば2つ)の爪付勢部材828がアシスト力入力部材728に装着される。2つの爪部材820は、軸線Xまわりにたとえば等しい間隔を隔てて配置される。爪部材820は、アシスト力入力部材728に装着された爪支持ピン829によって、軸36に平行な軸線まわりに揺動可能に支持される。爪部材820は、筒状部材960に周方向に間隔を隔てて配置されるラチェット歯976に先端部822が係合可能な図11に示す第1位置と、ラチェット歯976から先端部822が離反する図10に示す第2位置とに移動可能に構成されている。爪付勢部材828は爪部材820を第1位置に向けて付勢する。爪部材820が第1位置に配置されると、爪部材820の基端部824がアシスト力入力部材728に設けられる位置決め突起839に接触して、爪付勢部材828による爪部材820の移動が停止する。爪部材820は、爪制御部材736によって第1位置と第2位置とを移動するように制御される。
爪付勢部材828は、たとえば捩じりコイルバネである。爪付勢部材828の一方の端部832は、アシスト力入力部材728に設けられるスプリング連結部836に引っ掛けられる。爪付勢部材828の他方の端部840は、爪部材820の先端部822を、アシスト力入力部材の径方向内側から径方向外側に向けて押圧する。
中間部材720は、筒状の部材によって構成される。中間部材720は、シフト入力部材732とシフト制御部材288の間に配置される。中間部材720には、シフト入力部材732が第1方向D1の上流側から接触可能である。中間部材720は、軸36に回転可能に支持される。中間部材720は、第1連結部808と、第2連結部809と、第3連結部800と、を含む。第1連結部808、第2連結部809、および第3連結部800は、それぞれ、少なくとも1つの突起を含む。第1連結部808、第2連結部809、および第3連結部800は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。第1連結部808は、アシスト力入力部材728の開口816を挿通し、爪制御部材736に向かって軸方向に沿って延びる。第1連結部808は、アシスト力入力部材728および爪制御部材736に、第2方向D2の上流側から接触可能である。第2連結部809には、シフト入力部材732が第1方向D1の上流側から接触可能である。シフト入力部材732が第1方向D1に回転すると、シフト入力部材732が中間部材720に接触し、中間部材720はシフト入力部材732に連動して第1方向D1に回転する。
第2のスプリング連結部材724は、図6および図7に示すように、回動部材704と軸36との間に配置される。第2のスプリング連結部材724は、環状の部材によって構成され。第2のスプリング連結部材724には、軸36が挿通する。第2のスプリング連結部材724は、第1方向D1および第2方向D2に回転可能である。図4に示すように、第2のスプリング連結部材724は、第2スプリング連結部794と、第2ガイド部798を含む。第2スプリング連結部794は、第2のセイバースプリング716の第1端部772に連結される。第2スプリング連結部794は、第2のスプリング連結部材724の外周部を第2のセイバースプリング716側に折れ曲がっている。
第2のスプリング連結部材724には、シフト入力部材732の第2連結部860、中間部材720の第1連結部808、および軸36が貫通可能の第2開口812が形成されている。第2のスプリング連結部材724は、第2係合部792をさらに含む。第2係合部792は、少なくとも1つの突起を含む。第2係合部792は、第2のスプリング連結部材724から第2開口812に突出する。第2係合部792は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔を隔てて設けられる2つの突起を含む。第2のスプリング連結部材724は、第2のセイバースプリング716をガイドする第2ガイド部798を含む。第2ガイド部798は、第2のスプリング連結部材724から第2軸方向X2に向かって突出する少なくとも1つの突起を含む。第2ガイド部798は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔をあけて配置される2つの突起を含む。第2ガイド部798は、第2のセイバースプリング716の軸線Xに関しての外周側に設けられている。図5に示すように、変速動作を行っていないときは、軸線Xまわりの周方向において、第2のスプリング連結部材724の第2係合部792と、中間部材720の第2連結部809とによって、シフト入力部材732の第2連結部860が挟まれ、互いに接触している。
第2のセイバースプリング716は、第1端部772および第1端部772とは反対側の第2端部780を含む。第2のセイバースプリング716は、たとえば捩じりコイルバネを含む。第2のセイバースプリング716は、第2のスプリング連結部材724の第2軸方向X2に隣接して配置される。第1端部772および第2端部780は、軸線Xに関してそれぞれ径方向外側に折れ曲がっている。第1端部772が第2スプリング連結部794に連結される。第2端部780は、第1のスプリング連結部材712に連結される。第2のセイバースプリング716は、自由状態よりも伸張された状態で第1のスプリング連結部材712および第2スプリング連結部794に連結される。図5に示すように、第2のセイバースプリング716は、第2のスプリング連結部材724を第1方向D1にバイアスし、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2にバイアスする。シフト入力部材732が第2方向D2に回転すると、シフト入力部材732が第2のスプリング連結部材724に接触して、第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に押す。第2のスプリング連結部材724が第2方向D2に回転すると、第2のスプリング連結部材724が第2のセイバースプリング716を介して、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2に引っ張り、第1のスプリング連結部材712が第2方向D2に押されて回転する。
第1のスプリング連結部材712は、図6および図7に示すように、回動部材704と軸36との間に配置される。第1のスプリング連結部材712は、環状の部材によって構成され。第1のスプリング連結部材712には、軸36が挿通する。第1のスプリング連結部材712は、第1方向D1および第2方向D2に回転可能である。図4に示すように、第1のスプリング連結部材712は、連結部765と、第1スプリング連結部804と、第3スプリング連結部768と、第1ガイド部767と、第3ガイド部769と、を含む。
第1スプリング連結部804は、第1のセイバースプリング708の第1端部764を連結される。第1スプリング連結部804は、第2のセイバースプリング716の第2軸方向X2に隣接して配置される。第1スプリング連結部804は、第1のスプリング連結部材712の内周部を第1のセイバースプリング708側に折り曲げて形成される。第3スプリング連結部768は、第2のセイバースプリング716の第2端部780に連結される。第3スプリング連結部768は、第1のスプリング連結部材712の外周部を第2のセイバースプリング716側に折り曲げて形成される。第1スプリング連結部804と第3スプリング連結部768とは、軸線Xまわりで近接する位置に設けられる。第3ガイド部769は、第2のセイバースプリング716の内周部をガイドする。第3ガイド部769は、第1のスプリング連結部材712から第1軸方向X1に向かって突出する少なくとも1つの突起を含む。第3ガイド部769は、第1のスプリング連結部材712の内周部を第2のセイバースプリング716側に折り曲げて形成される。連結部765は、たとえば軸線Xまわりに等しい間隔をあけて配置される2つの凹部を含む。連結部765は、第3ガイド部769の内周部に形成される。連結部765には、中間部材720(図3参照)の第3連結部800が連結可能である。連結部765の各凹部は、第3ガイド部769のそれぞれの突起に形成されている。連結部765の凹部の軸線Xまわりの周方向の幅は、中間部材720の第3連結部800の軸線Xまわりの周方向の幅よりもわずかに大きい。図5に示すように、第1のスプリング連結部材712は、第1のセイバースプリング708および第2のセイバースプリング716によって第2方向D2にバイアスされ、第1のセイバースプリング708および第2のセイバースプリング716によるセーバー機能が働いていないときには、連結部765が、第2方向D2の上流側から第3連結部800に接触している。第1ガイド部767は、第1のセイバースプリング708の内周部をガイドする。
第1のセイバースプリング708は、第1のスプリング連結部材712およびシフト制御部材288にそれぞれ連結され、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2、シフト制御部材288を第1方向D1にそれぞれバイアスする。第1のセイバースプリング708は、第1端部764および第1端部764とは反対側の第2端部756を含む。第1のセイバースプリング708は、たとえば捩じりコイルバネを含む。第1端部764および第2端部756は、軸線Xに関して、それぞれ径方向内側に折れ曲がっている。第1端部764は、第1のスプリング連結部材712に連結される。第2端部756は、シフト制御部材288に連結される。第1のセイバースプリング708は、自由状態よりも伸張された状態で、第1のスプリング連結部材712およびシフト制御部材288に装着される。図5に示すように、第1のセイバースプリング708は、第1のスプリング連結部材712を第2方向D2に付勢し、シフト制御部材288を第1方向D1に付勢する。
回動部材704は、シフト入力部材732の回転に伴って、シフトキー部材700を軸線Xまわりに回転させる。回動部材704は、シフト入力部材732の回転に伴って、シフト制御部材288を回転させる。回動部材704は、シフトアシスト機構90から入力される回転力をシフト制御部材288に伝達する。回動部材704は、軸線Xまわりに回動可能に設けられる。図4に示すように、回動部材704は、環状の側壁部680と、側壁部680の外周部から第1軸方向X1に延びる略筒状の外周部682とを含む。側壁部680は、軸36が挿通する貫通孔684を有し、軸36に回転可能に支持される。側壁部680は、さらに貫通孔684の径方向外側に形成される連結孔686を含む。連結孔686には、シフト制御部材288が挿入され、シフト制御部材288と回動部材704とが連結可能になっている。連結孔686は、軸線Xに関して円弧状に延びている。外周部682は、ガイド溝688と、連結部690とを含む。ガイド溝688は、シフトキー部材700を軸36の軸線X方向に案内する。連結部690は、アシスト力入力部材728の連結部837に連結可能に構成される。連結部690は、第1軸方向X1に延びる少なくとも1つの突起を含む。連結部690は、たとえば等しい間隔を隔てて配置される2つの突起を含む。シフトアシスト機構90から回転力がアシスト力入力部材728に与えられてないシフトダウン動作のときには、シフト入力部材732の第1方向D1への回転力が、中間部材720、第1のスプリング連結部材712および第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288に与えられ、シフト制御部材288は第1方向D1に回転可能である。このとき回動部材704は、シフト制御部材288に押されて第1方向D1に回転し、アシスト力入力部材728を第1方向D1に押して回転させる。シフトアップ動作のときには、シフト入力部材732が第2方向D2に回転して、シフト入力部材732が第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に押し、第1のスプリング連結部材712が中間部材720を第2方向D2に押し、中間部材720がアシスト力入力部材728を第2方向D2に押し、アシスト力入力部材728が回動部材704を第2方向D2に押し、回動部材704がシフト制御部材288を第2方向D2に押して、シフト制御部材288を回転させる。
図5に示すように、回動部材704の連結部690には、アシスト力入力部材728の連結部837が第1方向D1の下流側から接触可能である。また、回動部材704は、シフト制御部材288に第1方向D1の下流側から接触可能である。回動部材704は、シフト制御部材288のうち連結孔686に挿入される部分に接触可能である。シフトアップのときには、シフト入力部材732の第2方向D2への回転力が、第2のスプリング連結部材724、第2のセイバースプリング716、第1のスプリング連結部材712、中間部材720、アシスト力入力部材728を介して、シフト制御部材288に与えられ、シフト制御部材288が第2方向D2に回転可能である。
クラッチカム176は、側壁部178と、カム部179とを含む。側壁部178は、環状に形成され、軸36が貫通する貫通孔が形成される。側壁部178の貫通孔には、シフト制御部材288の一部が挿通する。カム部179は、側壁部178の外周部に設けられ、第1軸方向X1に延びる。クラッチカム176は、第1太陽ギア160の第1軸方向X1に隣接して配置される。カム部179は、回動部材704の外周側に延びて、回動部材704の一部と軸線Xに関して径方向に重複して配置される。クラッチカム176は、軸36の第2回り止め溝388に、軸線Xに関して回転不能に係合する。クラッチカム176は、第1太陽ギア160の一部として形成することができ、あるいは、図6および図7に示すように、第1太陽ギア160とは別部材として形成することもできる。図4に示すように、クラッチカム176のカム部179は、第1カム面180、第2カム面182、および第3カム面184を含む。カム部179は、複数の第1カム面180、複数の第2カム面182、および複数の第3カム面184を含んでいてもよい。ここではカム部179は、それぞれ2組の第1カム面180、2組の第2カム面182、および2組の第3カム面184を含んでいる。各第1カム面180は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。各第2カム面182は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。各第3カム面184は、軸線Xに関して回転対称となるように配置される。第1カム面180および第3カム面184は、軸線Xに直交する面によって構成される。第1カム面180は、第3カム面184よりも第1太陽ギア160側に配置される。第2カム面182は、第1カム面180と第3カム面184とを接続する傾斜面によって構成される。
図4に示すように、シフトキー部材700は、クラッチカム176の外径よりも少し大きい内径を含む環状の部材によって構成される。シフトキー部材700は、カムフォロア740を含む。カムフォロア740は、シフトキー部材700の径方向内側に突出する少なくとも突起を含む。カムフォロア740は、軸線Xまわりに、たとえば等しい間隔をあけて配置される2つの突起を含む。カムフォロア740は、クラッチカム176のカム部179に第1軸方向X1から接触する。カムフォロア740は、カム部179よりも軸線Xに関して径方向の内側まで延び、回動部材704のガイド溝688に挿入される。回動部材704は、シフトキー部材700を、軸方向に案内可能に構成される。シフトキー部材700が、回動部材704のガイド溝688に沿って軸方向に案内されることによって、シフトキー部材700が軸方向に移動する。シフトキー部材700は、シフト入力部材732の動きに応じて回転する。シフトキー部材700は、クラッチリング623とともに、クラッチスプリング747によって、第2軸方向X2に付勢され、カムフォロア740がカム部179に接触している。クラッチカム176は、回動部材704が回転し、シフトキー部材700が回転すると、シフトキー部材700およびクラッチリング623を、図6に示すクラッチオン位置および図7に示すクラッチオフ位置間で軸方向に移動させるよう構成される。カムフォロア740が第1カム面180に接触しているとき、クラッチリング623はクラッチオン位置に配置され、カムフォロア740が第3カム面184に接触しているとき、クラッチリング623はクラッチオフ位置に配置される。クラッチリング623によって、動力伝達機構82の動力伝達経路が選択され、具体的には、入力体70の回転力を、動力伝達機構82の遊星ギアキャリア550と第1リングギア551とのいずれかに伝達するのかを選択する。
シフト制御部材288は、シフト入力部材732の動きに応じて回転し、複数の動力伝達経路のいずれかを選択する。シフト制御部材288は、軸36まわりに回動可能に装着される。シフト制御部材288は、軸36まわりの可動範囲は、シフト入力部材732の軸36まわりの可動範囲と等しい。シフト制御部材288は、軸方向に延びるベース部材408と、ベース部材408から軸36の周方向に延び、軸方向に間隔を隔てて配置される少なくとも1つの制御アームを含む。制御アームは、第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344を含む。ベース部材408は、軸36に形成される制御スリーブ溝に対してスライドする内側面410と、内側面410に対向する外側面412と、を含む。ベース部材408は、第1のセイバースプリング708の第2端部756が連結されるスプリング連結部414を含む。スプリング連結部414は、第1端部280の側面に形成される溝を含む。ベース部材408の第1端部280は、連結孔686を挿通し、スプリング連結部414は、回動部材704の外周部682の内側に配置される。
第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344は、軸36に形成される第1制御アーム溝464、第2制御アーム溝468、および第3制御スリーブ溝472にそれぞれ配置される。第1制御アーム284、第2制御アーム314、および第3制御アーム344は、軸36の周方向にスライド可能である。第1制御アーム284は、第2ワンウェイクラッチ207の爪を制御することによって、第2太陽ギア164を第1状態と第2状態のいずれかにする。第1状態は、第1方向D1および第2方向D2のいずれかに回転不能な状態である。本実施の形態では、第1状態は、第2方向D2に回転不能であり、第1方向D1には回転可能な状態である。第1状態は、第1方向D1および第2方向D2のいずれにも回転不能な状態であってもよい。第2制御アーム314は、第3ワンウェイクラッチ226の爪を制御することによって、第3太陽ギア168を第1状態と第2状態のいずれかの状態にする。第3制御アーム344は、第4ワンウェイクラッチ332の爪を制御することによって、第4太陽ギア172を第1状態と第2状態のいずれかの状態にする。本実施形態では、シフト制御部材288は、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168および第4太陽ギア172のうち少なくともいずれか一つを選択的に第1状態にし、他を第2状態とすることによって、複数の動力伝達経路を選択することができる。
<シフトアシスト機構>
トルク制限機構950は、シフト機構84およびシフトアシスト機構90に過度な負荷が与えられないように、入力体70からシフト制御部材288へ伝達される回転力(トルク)を制限する。これによって、ワンウェイクラッチの爪が太陽ギアから外れず、シフト制御部材288が回転できないときに、シフトアシスト機構90からシフト制御部材288に過剰な負荷が与えられてしまうことを回避することができる。
図6、図7および図10に示すように、トルク制限機構950は、筒状部材960と、係合ユニット964と、を含む。筒状部材960は、軸線Xに関して、アシスト力入力部材728の径方向外側で、かつ入力体70の径方向内側に配置される。筒状部材960は、爪部材820に対向する。入力体70の内周部952には、少なくとも1つの凹部956が形成されている。入力体70の内周部952には、複数の凹部956が周方向に並んで形成されている。筒状部材960は、内周部に複数のラチェット歯976を含む。筒状部材960の外周部には、軸方向に延びる連結スプライン984が形成されている。連結スプライン984は、1または複数のスプラインを含む。
係合ユニット964は、筒状部材960の外周部に設けられる。係合ユニット964は、サポート部992と、係合部材1002と、付勢部材1004とを含む。サポート部992は、筒状部材960に、筒状部材960に対して軸線Xまわりに回転不能に取り付けられる。サポート部992は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状プレートを含む。係合部材1002は、少なくとも1つの爪を含み、本実施の形態では4つの爪を含む。付勢部材1004は、コイルスプリングまたは板バネなどのスプリングを含む。付勢部材1004は、係合部材1002の係合先端部1008を軸線Xに関して径方向外側に付勢する。図10に示すように、サポート部992は、連結スプライン1012と、第1ピン支持部1020と、第2ピン支持部1024と、を含む。連結スプライン1012は、サポート部992の内周部に形成され、軸線X方向に延びる1または複数のスプラインを含む。連結スプライン1012は、筒状部材960の外周部に形成される1または複数の連結スプライン984に連結スプライン984と連結する。筒状部材960とサポート部992とは一体形成されていてもよい。第1ピン支持部1020は、サポート部992の環状プレートのそれぞれに形成され、第1ピン1022を保持するための孔を有する。第2ピン支持部1024は、サポート部992の環状プレートのそれぞれに形成され、第2ピン1026を保持するための孔を有する。第1ピン1022および第2ピン1026は、サポート部992の環状プレートを連結する。係合部材1002は、サポート部992の環状プレートの間で第1ピン1022に回転可能に支持される。付勢部材1004は、第2ピン1026に巻きつくとともに、サポート部992または筒状部材960に接触する第1端部(図示せず)と、係合部材1002に接触する第2端部1030とを含む。係合部材1002の係合先端部1008は、第1ピン1022よりも第1方向D1の上流側に配置されている。係合部材1002の係合先端部1008は、入力体70の内周面に勢部材1004によって押されて接触している。係合部材1002の係合先端部1008は、入力体70の凹部956に嵌まっている。変速していないときは、入力体70と、筒状部材960との相対回転が係合部材1002によって阻止され、入力体70と、筒状部材960と、一緒に回転可能である。筒状部材960が回転していないときに、入力体70に第1方向D1に所定の回転力が与えられると、係合部材1002が入力体70の凹部956から外れて、入力体70が筒状部材960に対して第1方向D1に相対回転する。
爪制御部材736は、環状の部材によって構成される。爪制御部材736は、基部736Aと、基部736Aの外周部から軸方向に延びる爪制御突起850を含む。爪制御部材736は、アシスト力入力部材728の第1軸方向X1に隣接して配置される。爪制御突起850は、爪部材820に対応する位置に設けられる。爪制御突起850は、1または複数の突起を含み、ここでは2つの突起を含む。爪制御突起850は、変速していないとき、爪部材820を第2位置に押圧する。爪制御部材736は、中間部材720によって第1方向D1への移動が規制される。爪制御部材736は、中間部材720が第1方向D1に回転すると、爪部材820が第2位置から第1位置に移動することによって第1方向D1に回転する。爪制御部材736は、爪部材820が第1位置に配置されて中間部材720が停止した状態で、アシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、爪部材820を第1位置から第2位置に移動させる。爪部材820が第1位置に移動すると、爪部材820は、筒状部材960(図11参照)のラチェット歯976と係合する。
爪制御部材736には、開口854が形成されている。基部736Aは、環状に形成されており、開口854は、基部736Aに形成されている。爪制御部材736の開口854には、シフト入力部材732が挿通している。爪制御部材736は、シフト入力部材732に回動可能に支持される。爪制御部材736は、爪制御部材736の回動範囲を規制する第2係合部856を含む。第2係合部856は、基部736Aの内周部から径方向内側に向けて突出する。第2係合部856には、中間部材720の第1連結部808が接触する。第1連結部808は、爪制御部材736に第2方向D2上流側から接触している。爪制御部材736は、第1方向D1に回転するとき第1方向D1の上流側からシフト入力部材732に接触しないように、シフト入力部材732から間隔をあけて配置されている。
図8および図9に示すように、爪制御突起850は、爪部材820に接触する第1接触部852を含む。第1接触部852は、爪制御突起850の第2方向D2の下流側の端部に形成される。第1接触部852は、爪制御突起850の軸線Xに関して径方向内側の部分に形成され、軸線Xに垂直な断面において外方に凸となるように湾曲している。
爪部材820は、第1接触部852に接触する第2接触部826を有する。爪部材820の外周部のうち、先端部822と基端部824との間で、軸線Xに関して径方向の外側の部分には、段差部が形成されている。段差部では、先端部822側が基端部824側よりも軸線Xに関して径方向外側に配置される。第2接触部826は、段差部に形成される。第2接触部826は、段差部の軸線Xに関して径方向外側の部分によって形成され、軸線Xに垂直な断面において外方に凸となるように湾曲している。
シフト入力部材732が第1方向D1に回転すると、中間部材720も第1方向D1に回転する。中間部材720が第1方向D1に回転すると、中間部材720に回転位置が規制されている爪制御部材736が、アシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転可能になる。爪制御部材736が、アシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転可能になると、爪付勢部材828によって付勢されている爪部材820が爪制御突起850に接触した状態で、爪制御突起850を第1方向D1に移動させるとともに、第1位置に揺動して、筒状部材960のラチェット歯976に噛み合う。この状態で、入力体70が第1方向D1に回転すると、アシスト力入力部材728に入力体70から回転力が伝達され、回動部材704を介してシフト制御部材288を回転させることができる。
シフト入力部材732の第1方向D1への回転が停止すると、中間部材720の第1方向D1への回転も停止する。中間部材720の第1方向D1への回転も停止すると、中間部材720によって爪制御部材736の回転位置が規制され、爪制御部材736がアシスト力入力部材728に対して第1方向D1に相対回転不能になる。この状態でアシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、爪制御突起850が、爪部材820を第2位置に向けて押圧する。この結果、爪付勢部材828の付勢力に抗して爪部材820が第2位置に移動する。アシスト力入力部材728が爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転するのは、アシスト力入力部材728は、入力体70からの第1方向D1の回転力が与えられたとき、または、中間部材720、第1のスプリング連結部材712、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288を第1方向に回転させ、シフト入力部材732が回動部材704を介してシフト制御部材288によって第1方向D1に押されたときである。
<内装変速機の変速動作>
次に、内装変速機14の変速動作について説明する。表1に、各速度段における様々な部品の連結を示し、表2に、各速度段における動力伝達経路を示す。ギア比は、一例である。
<シフト機構およびシフトアシスト機構の動作>
前述のように、シフトアシスト機構90は、入力体70の回転力を利用して、シフト機構84による動力伝達機構82における動力伝達経路の切り替えを支援している。図13から図15の模式図を参照して、シフト機構84およびシフトアシスト機構90の動作を説明する。シフトアシスト機構90によるシフトアシストは、入力体70が回転している場合にのみに行われる。シフトアップ動作では、シフトアシスト機構90によるシフトアシストは行なわれない。
<シフトアシストが無いときのシフトダウン動作>
入力体70が回転しておらず、駆動ユニット91のみの駆動力で変速するときのシフトダウン動作について説明する。表1に示すギア比が段階的に小さくなるシフトダウン変速の場合、図13に示すように、駆動ユニット91の出力軸99は、伝達部材104を第1方向D1に所定角度回転させる。これによって、伝達部材104に接続されるシフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転する。シフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転するとき、シフト入力部材732の第2連結部860が中間部材720の第2連結部809を第1方向D1に押圧し、中間部材720が第1方向D1に所定角度回転する。中間部材720が第1方向D1に所定角度回転するとき、中間部材720の第3連結部800が、第1のスプリング連結部材712の連結部765を第1方向D1に押圧し、第1のスプリング連結部材712が第1方向D1に所定角度回転する。第1のスプリング連結部材712を所定角度回転するとき、第1のセイバースプリング708を介してシフト制御部材288が第1方向D1に引っ張られる。シフト制御部材288は、第1方向D1への回転可能であれば、第1方向に所定角度回転し、かつ回動部材704を第1方向D1に押して、回動部材704を第1方向D1に所定角度回転させる。シフト制御部材288を第1方向D1に回転させることによって、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168、および第4太陽ギア172が択一的に第1状態になるか、または、第2太陽ギア164から第4太陽ギア172の全てが第2状態になる。第5速度段と第4速度段の間では、回動部材704の第1方向D1への回転に応じて、シフトキー部材700がクラッチリング623をクラッチオン位置からクラッチオフ位置に軸方向に移動させる。シフト入力部材732が第1方向D1に回転したときに、シフト制御部材288が第1方向D1に同じ量だけ回転すると、回動部材704と爪制御部材736との相対回転位置が変わらないので、爪部材820は第2位置に保持されたままになり、シフトアシスト機構90は動作しない。
<シフトアップ動作>
表1に示すギア比が段階的に大きくなるシフトアップ変速の場合、図14に示すように、駆動ユニット91の出力軸99は伝達部材104を第2方向D2に所定角度回転させる。これによって、伝達部材104に係合するシフト入力部材732が第2方向D2に所定角度回転する。シフト入力部材732が第2方向D2に所定角度回転すると、シフト入力部材732の第2連結部860が第2のスプリング連結部材724の第2係合部792を第2方向D2に押圧し、第2のスプリング連結部材724を第2方向D2に所定角度回転させる。第2のスプリング連結部材724が第2方向D2に所定角度回転すると、第2のセイバースプリング716を介して、第1のスプリング連結部材712が第2方向D2に所定角度回転する。第1のスプリング連結部材712が、第2方向D2に所定角度回転すると、第1のスプリング連結部材712の連結部765が中間部材720の第3連結部800を第2方向D2に押圧し、中間部材720が第2方向D2に所定角度回転する。中間部材720が、第2方向D2に所定角度回転すると、中間部材720の第1連結部808が、アシスト力入力部材728の第1係合部817および爪制御部材736の第2係合部856を第2方向D2に押圧し、アシスト力入力部材728および爪制御部材736を第2方向D2に所定角度回転させる。アシスト力入力部材728が第2方向D2に所定角度回転すると、アシスト力入力部材728の連結部837が、回動部材704の連結部690を第2方向D2に押圧し、回動部材704を第2方向D2に所定角度回転させる。この結果、シフト制御部材288が所定角度第2方向D2に回転する。これによって、第2太陽ギア164、第3太陽ギア168、および第4太陽ギア172が択一的に第1状態になるか、または、第2太陽ギア164から第4太陽ギア172の全てが第2状態になる。また、第5速度段と第4速度段の間で、シフトキー部材700によって、クラッチリング623がクラッチオフ位置からクラッチオン位置に軸方向に移動する。
<シフトアシストが有るときのシフトダウン動作>
入力体70が回転しており、駆動ユニット91のみの駆動力で変速できないときのシフトダウン動作について説明する。シフト入力部材732が第1方向D1に所定角度回転したときに、シフト制御部材288が第1方向D1に同じ量だけ回転しない場合、中間部材720はシフト入力部材732と共に第1方向D1に所定角度回転するので、中間部材720が爪制御部材736に接触する位置も第1方向D1に移動し、爪制御部材736は、爪部材820に押されて回動部材704に対して第1方向D1に相対回転する。入力体70に与えられる回転力が大きい場合、第2〜第4ワンウェイククラッチに含まれる爪のいずれかが、対応する第2〜第4の太陽ギアに引っかかってしまい、駆動ユニット91のみの駆動力のみでは、シフト制御部材288が第1方向D1に回転しない場合がある。このような場合に、回動部材704に対して爪制御部材736が第1方向D1に相対回転する。アシスト力入力部材728に対して爪制御部材736が第1方向D1に相対回転すると、爪部材820が第1位置に移動して筒状部材960のラチェット歯976に係合する。入力体70が回転しているときには、トルク制限機構950を介して入力体70の第1方向D1の回転が爪部材820を介して、アシスト力入力部材728に伝達される。アシスト力入力部材728が第1方向D1に回転すると、回動部材704を介してシフト制御部材288が第1方向D1に押されて回転する。シフト入力部材732の第1方向D1に所定角度回転して停止すると、中間部材720の第1方向D1への回転も停止し、中間部材720によって爪制御部材736の第1方向D1への移動が規制される。爪制御部材736の第1方向D1への移動が規制されている状態で、アシスト力入力部材728が回動部材704を介してシフト制御部材288を第1方向D1に所定角度回転させることによってシフトダウン動作が完了する。アシスト力入力部材728が第1方向D1に所定角度回転するとき、アシスト力入力部材728は、爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転する。アシスト力入力部材728が爪制御部材736に対して第1方向D1に相対回転すると、爪部材820は、爪制御部材736に押されて第1位置から第2位置に戻る。トルク制限機構950によって、入力体70からシフト制御部材288へ伝達される回転力が制限される場合を除いて上記のように動作する。爪制御部材736は、第1方向D1に回転するとき第1方向D1の上流側からシフト入力部材732に接触しないので、爪制御部材736からシフト入力部材732には回転力が伝達されない。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
(a)上記実施形態では、内装変速機14の動力伝達機構82として8個の動力伝達経路を含むものを開示したが、動力伝達経路は複数(たとえば、2個から12個)であればどのような数でもよい。
(b)上記実施形態では、電気配線で接続された変速操作部の操作に応じて、制御部97を制御するが、無線によって制御部を変速操作部に接続してもよい。たとえば、制御部を小電力無線通信規格によって変速操作部と接続してもよい。また自転車の車速を検出する車速センサ、クランク回転速度を検出するケイデンスセンサおよびクランクに与えられる人力駆動力を検出するセンサなどの検出結果に基づいて、制御部97は電動アクチュエータを制御して自動で変速してもよい。
(c)上記実施形態では、自転車用変速機として内装変速ハブを開示したが本発明はこれに限定されない。クランク軸の回転を変速してフロントスプロケットに伝達する変速機にも本発明を適用できる。
(d)上記実施形態において、相互に接触可能な突起が形成されている部材および凹部が形成されている部材について、突起が形成されている部材に突起に代えて凹部を形成し、凹部が形成されている部材に凹部に代えて突起を形成して、突起と凹部とを接触可能に構成してもよい。
(e)上記実施形態では、シフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、シフトダウンするように動力伝達経路を変更しているが、シフト入力部材732が第1方向D1に回転することによって、シフトアップするように動力伝達経路を変更する構成としてもよい。
(f)上記実施形態では、モータ93によってシフト入力部材732を回転させたが、変速操作部とシフト機構とを、シフトアップケーブルおよびシフトダウンケーブルの2本のケーブルによって連結してもよい。たとえば、シフトダウンケーブルによって、シフト入力部材を第1方向D1に回転させ、シフトアップケーブルによって、シフト入力部材を第2方向D2に回転させてもよい。
(g)上記実施形態において、トルク制限機構950を多板クラッチ機構によって構成してもよい。
(h)上記実施形態において、伝達部材104を省略して、駆動ユニット91の回転力がシフト入力部材732に直接与えられる構成としてもよい。
14:内装変速機,36:軸,70:入力体,74:出力体,82:動力伝達機構,84:シフト機構,90:シフトアシスト機構,93:モータ,950:トルク制限機構,288:シフト制御部材,708:第1のセイバースプリング,712:第1のスプリング連結部材,716:第2のセイバースプリング,720:中間部材,724:第2のスプリング連結部材,728:アシスト力入力部材,732:シフト入力部材,736:爪制御部材,820:爪部材,828:爪付勢部材