JP2017109438A - ガスバリア性フィルム及びこれを用いた有機el発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチック基材上に成膜形成された原子層堆積膜への外的な機械的ストレスを抑制・低減し、ガスバリア性の低下と、ガスバリア性フィルム上に形成する有機EL素子の水分による劣化とが抑制されたガスバリア性フィルム及びこれを用いた有機EL発光素子を提供する。
【解決手段】プラスチック基材の少なくとも一方の面に、原子層堆積膜、オーバーコート層を順次積層してなるガスバリア性フィルムであって、原子層堆積膜が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが2nm以上500nm以下であり、オーバーコート層が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが200nm以上3000nm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】プラスチック基材の少なくとも一方の面に、原子層堆積膜、オーバーコート層を順次積層してなるガスバリア性フィルムであって、原子層堆積膜が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが2nm以上500nm以下であり、オーバーコート層が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが200nm以上3000nm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、基材の外面に原子層堆積膜及びオーバーコート層が形成されたガスバリア性フィルムに関する。
近年、有機半導体技術を利用した有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機太陽電池、電子ペーパーなどの次世代デバイスの開発が進められ、一部では実用化されている。これらのデバイスの基本構成となる素子は、精密な構造を有しかつ外部から影響の受けやすい材料で形成されるため、例えば微量あるいは極微量の水分や酸素の影響で構造や材料の劣化が生じ、デバイスの機能が低下することがある。これに対応するため、例えば、有機ELディスプレイの素子の劣化に対しては、素子を空気から遮断する封止効果に優れ、防湿性が高く、光透過性を有するガラス基材により挟持する構造が採用されている。
しかし、ガラスの取扱い難さ、その厚さや重量、急速に市場拡大しているモバイル機器への展開に対する要求から、プラスチックフィルムを基材として用いることが検討されている。該プラスチックフィルム基材には、外部からの水分(水蒸気)や酸素などによる構造や材料の劣化を防ぐためにガスバリア性が必要であり、その条件として、水蒸気透過率が10−6g/(m2・day)台であり、かつ基材フィルムを含めた厚さが数十μmの透明ガスバリア性フィルムが検討されてきている。
このような透明ガスバリア性フィルムとしては、従来、主として包装材料分野において、開発・実用されてきており、食品や医薬品の包装に用いられているガスバリア性フィルムは、1〜10−2g/(m2・day)台、あるいは更に高い水蒸気バリア性能を有していた。
この高い水蒸気バリア性を達成するために、プラスチックフィルム基材上に緻密な無機材料の薄膜からなるガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムや、無機材料の脆弱性を補うために有機材料と無機材料とを積層形成した複合ガスバリア層を持つガスバリア性フィルムなどが開発されてきた。無機材料の形成方法として、例えば物質を原子または分子レベルで動く気相状態で基材フィルム表面に輸送し薄膜を形成する物理気相成長(PVD;Physical Vapor Deposition、以下、「PVD」という)法と、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition、以下、「CVD」という)法と、がある。
PVD法には、例えば、真空蒸着法やスパッタ法等がある。スパッタ法は、膜質及び厚さの均一性に優れた高品質な薄膜の成膜が容易に行えるため、液晶ディスプレイ等の表示デバイスの電極配線膜、光ディスクの光反射膜等に広く適用されている。
CVD法は、チャンバー内に原料ガスを導入し、基材上において、主に熱エネルギーにより、1種類或いは2種類以上のガスを分解または反応させることで、固体薄膜を成長させる方法である。この際に、成膜時の反応の促進や、反応温度の低下のために、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用する場合があり、プラズマ反応を用いるCVD法を、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、また、触媒反応を利用するCVD法を、Cat−CVD法という。
CVD法では蒸着やスパッタと比較して、成膜欠陥を少なくすることができるため、例えば、半導体デバイスの製造工程(例えば、ゲート絶縁膜の成膜工程)等に適用されている。
さらに高いガスバリア性を達成する成膜方法として、原子層堆積法(ALD;Atomic Layer Deposition)法、以下、「ALD法」という)が注目されている。ALD法は、表面に吸着した物質を化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法である。上記ALD法は、CVD法の範疇に分類されている。
いわゆるCVD法(一般的なCVD法)は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基材上で反応させて薄膜を成長させるものである。それに対してALD法は、前駆体、またはプリカーサともいわれる活性に富んだガスと、反応性ガスとを交互に用いることで、基材表面における吸着と、これに続く化学反応とによって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長(一般的に二次元成長と呼ばれる)させていく特殊な成膜方法である。
特許文献1には、ALD法によってプラスチック基板またはガラス基板上にガスバリア層を形成する技術が開示されている。これにより、成膜欠陥を減らすことができると共に、数十nmの膜厚において桁違いにガス透過を低減させることが可能な光透過性のガスバリア性フィルムを実現することができる。
特許文献2には、プラスチック基材上に、ALD法を用いて形成した少なくとも一層の無機バリア層及び少なくとも一層の有機層が交互に積層された構造を有するガスバリアフィルムが開示され、特許文献3には、エレクトロニクス用途のバリアフィルムとして、水分に対して脆弱な素子を一定期間その性能が劣化しないようにするために、プラスチックフィルムからなる基材の両面にそれぞれ原子層堆積法によって形成される無機材料からなる第1のバリア層と第2のバリア層とを形成し、10−4g/(m2・day)以下の水蒸気透過率を示すバリアフィルムを得ることが開示されている。
ALD法の具体的な成膜方法は、以下のような手法で行われる。
1)始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果(基材上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、該ガスの吸着が生じない現象のことをいう。)を利用し、基材上に前駆体が一層のみ吸着した時点で未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。
2)次いで、チャンバー内に反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ形成した後に該反応性ガスを排気する(第2のステップ)。
ALD法では、上記第1及び第2のステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行うことで、基材上に薄膜を成長させる。
したがって、ALD法では、二次元的に薄膜が成長する。また、ALD法は、従来の真空蒸着法やスパッタ法、一般的なCVD法と比較しても、成膜欠陥が少ないことが特徴である。
また、ALD法は、他の成膜法と比較して斜影効果(粒子が基材の表面に対して斜めに入射して成膜バラツキが生じる現象)が無いなどの特徴があり、ガスが入り込める隙間があれば成膜が可能である。そのため、ALD法は、幅に対する深さの比が大きい高アスペクト比を有する基材上のラインやホールへの被膜のほか、三次元構造物への被膜用途でMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)関連等にも応用が期待できる。
また、ALD法には、反応性ガスを導入し基材に吸着している前駆体と反応させる工程において、反応を活性化させるためにプラズマを用いる方法がある。この方法は、プラズマ活性化ALD(PEALD:Plasma Enhanced ALD)、または、単に、プラズマALDと呼ばれる。
上記のALD法により、薄膜を形成する対象としての基材には、例えば、ウェハやフォトマスク等のように小さな板状の基材、ガラス板等のように大面積でフレキシブル性がない基材、或いはフィルム状の基材のように大面積で、かつフレキシブル性を有する基材等を挙げることができる。
これらの基材にALD法により薄膜を形成する量産設備は、取り扱いの容易さ、成膜品質等に応じて様々な基材に対応しており、例えば、1枚のウェハの成膜装置内への供給、ALD法による成膜、その後、次のウェハと入れ替えて再び成膜、を順次に行う枚葉式成膜装置、複数のウェハをまとめて成膜装置内にセットした後、全てのウェハに同一の成膜を行うバッチ式成膜装置等がある。
また、ガラス基材に成膜を行う場合、成膜室を含む複数の処理室の間でガラス基材を逐次搬送しながら、同時に成膜を行うインライン式成膜装置が用いられる。
また、フレシキブル基材に成膜を行う場合、ロールからフレシキブル基材を巻き出し、フレシキブル基材を搬送しながら成膜を行い、別のロールにフレシキブル基材を巻き取る、いわゆる巻取り式(Roll to Roll:ロール・ツー・ロール)によるウェブコーティング成膜装置がある。
このALD法により形成される原子層堆積膜は、厚さが数nm〜数十nmの薄膜で水蒸気透過率が10−6g/(m2・day)台のハイバリアを実現できるが、上記の膜厚ではその表面に傷がつきやすく、その傷が基材に到達する場合もあり、簡単にガスバリア性が損なわれることがある。
具体的には原子層堆積膜の膜厚方向への圧力や面方向へのせん断力等の外的な機械的ストレスを与えると、膜に欠陥が生じ、その欠陥がガスを透過するパスとなり、ガスバリア性が悪化してしまう。
また、上記のウェブコーティング成膜装置の巻取り方式によるプラスチック基材面への成膜の場合、原子層堆積膜を有する積層体の搬送中に該原子層堆積膜がローラーやプラスチック基材と接触することで、あるいは成膜後の積層体を巻き取る際に原子層堆積膜がプラスチック基材と接触することで、機械的ストレスによりガスバリア性が悪化する恐れがある。さらには、巻き取った状態つまりロールでの輸送や保管時、あるいはガスバリアフィルムを加工する際などに上記のような機械的ストレスによる問題が生じる可能性がある。
成膜された原子層堆積膜に機械的ストレスがかからない成膜ライン・成膜装置を実現することは困難であり、成膜ラインにおいて積層体を巻き取り、ロール状にして輸送、保管することができないことは製造上の大きな問題である。
また、ガスバリアフィルム上に有機ELや有機薄膜太陽電池などの次世代デバイスを形成する場合、その工程内で原子層堆積膜に機械的ストレスがかかる可能性もあり、ガスバリア性の低下のリスクは製品の品質悪化にも繋がる。
この外的な機械的ストレス対策として、硬化型樹脂層からなるオーバーコート層を積層体の原子層堆積膜面に形成し、原子層堆積膜を保護することが考えられる。しかし樹脂層からなるオーバーコート層はそれ自身の含水率や吸水率、水蒸気透過率が高く、オーバーコート層上に形成する有機EL素子などがその水分により劣化するという懸念がある。
そこで本発明は、プラスチック基材上に成膜形成された原子層堆積膜への外的な機械的ストレスを抑制・低減し、ガスバリア性の低下と、ガスバリア性フィルム上に形成する有機EL素子の水分による劣化とが抑制されたガスバリア性フィルム及びこれを用いた有機EL発光素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、プラスチック基材の少なくとも一方の面に、原子層堆積膜、オーバーコート層を順次積層してなるガスバリア性フィルムにおいて、原子層堆積膜が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが2nm以上500nm以下であり、オーバーコート層が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが200nm以上3000nm以下であることを特徴とする。
また、ガスバリア性フィルムは、波長400nm〜800nmの範囲における分光透過率が85%以上であることが好ましい。
また、オーバーコート層が酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの混合物のいずれかからなるものであってもよい。
また、原子層堆積膜はアルミニウム、チタニウム、珪素、亜鉛、錫、タンタルのいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
また、プラスチック基材と原子層堆積膜との波長400nm〜800nmの範囲における屈折率差、及び、原子層堆積膜とオーバーコート層との波長400nm〜800nmの範囲における屈折率差が、いずれも0〜0.5の範囲であることが好ましい。
また、本発明は、上記のガスバリア性フィルムと、ガスバリア性フィルムのオーバーコート層上に形成された、互いに対向する一対の電極層と、一対の電極層間に形成された有機発光材料からなる有機発光層とを備える、有機EL発光素子である。
また、本発明は、上記のガスバリア性フィルムからなる第1のガスバリア性フィルムと、第1のガスバリア性フィルムのオーバーコート層上に形成された、互いに対向する一対の電極層と、一対の電極層間に形成された有機発光材料からなる有機発光層と、上記のガスバリア性フィルムからなり、第1のガスバリア性フィルムとの間に一対の電極層及び有機発光層を挟み込んで封止する第2のガスバリア性フィルムとを備える、有機EL発光素子である。
本発明によれば、プラスチック基材上に形成された原子層堆積膜上に無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物からなるオーバーコート層を形成することで、原子層堆積膜に加えられる外的な機械的ストレスの抑制・低減を可能とし、ガスバリア性の低下を防ぐことができる。さらに吸水率や含水率、水蒸気透過率の低いオーバーコート層を形成することで、さらにその上に形成する有機EL素子がオーバーコートから放出される水分で劣化するのを防ぐことができる。
図1は、本発明に基づく実施形態にかかるガスバリア性フィルムの構成を示す断面図である。図1に示すように、本発明のガスバリア性フィルム4は、プラスチック基材1と、プラスチック基材1の一方の面に成膜形成された原子層堆積膜2と、原子層堆積膜2上に積層配置されたオーバーコート層3とを備える。
プラスチック基材1は、透明なプラスチックフィルムからなる。本実施形態において使用可能な透明なプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレレン(PS)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン−6、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、アラミド、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、その他ポリ乳酸などの生分解性プラスチックなどである。これらプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のいずれでもよいが、ウェブ状態で用いることができ、機械的強度や寸法定性などが優れたものが好ましい。
特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、包装材向けには、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが好ましく、また、より高い耐熱性や寸法安定性が求められる液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)向けには、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエーテルスルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などが好ましい。
また、プラスチック基材1には、帯電防止剤、紫外線吸収剤(紫外線防止剤)、可塑剤、滑剤などの添加剤も用途に応じて含有させることができる。さらに、原子層堆積膜2との成膜面の密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などの表面処理あるいはアンダーコートなどを予め施すことができる。
なお、本実施形態におけるプラスチック基材1の厚さは、特に制限されるものではないが、ガスバリア性フィルムの製造や加工適性などを考慮すると、25μm以上200μmの範囲にあることが好ましい。
また、プラスチック基材1は、巻取り(Roll to Roll:ロール・ツー・ロール)方式の原子層堆積膜成膜装置で原子層堆積膜を成膜する場合、連続して巻き出し可能なロール状態で用意される。
原子層堆積膜2は、原子層堆積(ALD)法によりプラスチック基材1上に成膜されるものであり、堆積される材料(目的の堆積材料)は、用途、目的に応じて適宜選択される。原子層堆積膜2を構成する材料は、酸化アルミニウム(AlOX)、酸化チタニウム(TiOX)、酸化珪素(SiOX)、酸化亜鉛(ZnOX)、酸化錫(SnOX)、酸化タンタル(TaOX)などの無機酸化物、その他Al、Ti、Si、Zn、Sn、Taなどの窒化物である無機窒化物、無機酸窒化物、あるいはこれらの元素を混合させた混合酸化物、混合窒化物、混合酸窒化物などから選択する。
原子層堆積膜2の膜厚は、2nm以上500nm以下が好ましい。とくに有機ELディスプレイ分野、有機EL照明分野、有機太陽電池分野などの高いガスバリア性が求められる場合は、原子層堆積膜2の膜厚は、10nm以上であることが好ましい。
本実施形態における、ALD法によって原子層を堆積する工程は、前駆体をプラスチック基材1表面に吸着させる工程、余剰の前駆体をパージする工程、前駆体を反応性ガスに暴露させることによって前駆体と反応性ガスとを反応させる工程、及び余剰の反応性ガスをパージする工程からなる原子層堆積工程を1サイクルとする。これを複数回繰り返すことにより、プラスチック基材1の表面に所望の膜厚の原子層堆積膜2を形成することができる。
ここで原子層堆積膜2として目的の堆積材料を酸化アルミニウム(AlOX)とする場合、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA;Tri−Methyl Aluminum)が前駆体材料として使用される。なお、使用される前駆体材料は、目的の堆積材料にあわせて適宜選択される。例えば、酸化チタニウム(TiOX)には、四塩化チタン(TiCl4)、酸化珪素(SiOX)には、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)やビスジェチルアミノシラン(BDEAS)等を用いることができる。
また、反応性ガスは、目的の堆積材料にあわせて適宜選択される。例えば、目的の堆積材料が酸化アルミニウムの場合は、水、オゾン、酸素が使用される。
また、パージガスとして導入される不活性ガスには、窒素、ヘリウム、アルゴン等から適宜選択されたガスが用いられる。
次に、オーバーコート層3について説明する。オーバーコート層3は含水率や吸水率、水蒸気透過率が低く、透明性、機械的特性、耐久性に優れた無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物あるいはこれらの混合物の膜からなる。具体的には酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウムあるいはこれらの混合が挙げられる。挙げたような無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物は、それ自身も高いガスバリア性を持ち、耐摩耗性などの機械的強度にも優れている。この特徴から原子層堆積膜2を外的な機械的ストレスから保護する効果が得られ、かつオーバーコート層3から放出される水分により、オーバーコート層3上に形成された有機EL素子などが劣化するのを防ぐ効果が得られる。柔軟性が求められる場合は、オーバーコート層中に炭素成分を含んでも構わない。また上記の形成材料のうち何れか2つあるいは3つが積層されていてもよい。
後に有機EL素子を形成する工程で、熱ストレスや機械的ストレスによりオーバーコート層3の剥離が起きないよう、原子層堆積膜2とオーバーコート層3の層間密着強度は1N/10mm以上であることが好ましい。密着強度を向上させるために原子層堆積膜2にコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施してからオーバーコート層3を形成してもよい。
オーバーコート層3の形成方法には周知の方式を用いることができるが、期待する含水率、吸水率、水蒸気透過率や透明性、機械的特性、耐久性を得るためには化学気相成長法もしくは物理気相成長法により形成することが好ましい。化学気相成長法としてはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられ、物理気相成長法としてはスパッタ法や真空蒸着法などが挙げられる。真空中でオーバーコート層3を形成する方式を用いれば、原子層堆積膜2の成膜とオーバーコート形成とをインラインで行うことも可能となる。
巻取り方式により原子層堆積膜2を成膜した後に、インラインでオーバーコート層3を形成する場合には、ALD法の加工速度と合わせた方式を適宜選択する必要がある。
ガスバリア性フィルム4の波長400nm〜800nmの範囲における分光透過率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。この範囲であれば有機EL素子の前面基板(光取り出し側)として用いる場合にも有機EL素子の輝度を損ねることがない。また、ガスバリア性フィルム4の分光透過率は、プラスチック基材1と、原子層堆積膜2と、オーバーコート層3との屈折率差によって決まるため、隣り合う層の上記波長における屈折率差が0〜0.5の範囲にあることが好ましい。屈折率差が小さいほど、隣り合う層の界面での反射が小さく抑えられ、ガスバリア性フィルムとしての高透過率が担保できる。隣り合う層の屈折率差が小さくなるよう、プラスチック基材1と原子層堆積膜2とオーバーコート層3との最適な組み合わせを選択する必要がある。
また、原子層堆積膜2に対する外的な機械的ストレスから十分に保護し、ガスバリア性の低下を防ぐには、オーバーコート層3の膜厚は200nm以上必要である。しかし、オーバーコート層3の内部応力によりクラックが発生するのを防ぐため、膜厚は3000nm以下であることが好ましく、透明性や加工適性などを考慮すると1000nm以下がより好ましい。
図2は、本発明に基づく実施形態にかかるガスバリア性フィルムを用いた有機EL発光素子の構成を示す断面図である。図2に示すように、本発明の有機EL発光素子12は、上述したガスバリア性フィルム4上のオーバーコート層3上に、透明電極5、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層8、電子注入層9、陰極10及び封止層11を積層したものである。
本発明のガスバリア性フィルムを用いて有機EL発光素子を作製する場合、透明電極5、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層8、電子注入層9、陰極10などは周知の材料、方式を用いて形成することができる。封止層11については、本発明のガスバリア性フィルムを用いても良いし、透明性が求められない場合にはプラスチックフィルムと金属薄膜フィルムを貼り合せた積層体を用いても構わない。尚、図示していないが、有機EL発光素子に複数の画素が設けられる場合は、各画素を区画するための隔壁が設けられる。
本発明におけるガスバリア性フィルムについて、以下に具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
プラスチック基材1として、厚さ50μm、屈折率1.6のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPETフィルム上に屈折率1.6、膜厚25nmのAlOXからなる原子層堆積膜2を成膜した。このとき、前駆体にトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)を用い、プロセスガスとしてO2とN2を用い、パージガスとしてO2とN2を用い、反応性ガス兼プラズマ放電ガスとしてO2を用い、真空気室に供給した。
プラスチック基材1として、厚さ50μm、屈折率1.6のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPETフィルム上に屈折率1.6、膜厚25nmのAlOXからなる原子層堆積膜2を成膜した。このとき、前駆体にトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)を用い、プロセスガスとしてO2とN2を用い、パージガスとしてO2とN2を用い、反応性ガス兼プラズマ放電ガスとしてO2を用い、真空気室に供給した。
プラズマ励起用電源は、13.56MHzの電源を用い、ICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)モードでプラズマ放電(250W)を実施し、原子層堆積膜2を有する積層体を作製した。
次に、作製した積層体上に、プラズマCVD法を用い、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)/酸素=10/100sccmの混合ガスを電極間に導入し、電力を0.5kW印加しプラズマ化して、SiOX(X=1.8)で表される厚さ300nm、屈折率1.5のオーバーコート層3を積層し、実施例1に係るガスバリアフィルムを得た。た。このようにして作製したガスバリア性フィルムの波長400〜800nmの範囲における分光透過率は89%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した原子層堆積膜2を有する積層体上に、アクリルポリオール(140KOHmg/g)とヘキサメチレンジイソシアネートとを1当量になるように混合した液をスピンコートにて塗布し、膜厚300nmのオーバーコート層3を積層し、比較例1に係るガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様にして作製した原子層堆積膜2を有する積層体上に、アクリルポリオール(140KOHmg/g)とヘキサメチレンジイソシアネートとを1当量になるように混合した液をスピンコートにて塗布し、膜厚300nmのオーバーコート層3を積層し、比較例1に係るガスバリア性フィルムを得た。
(比較例2)
実施例1と同様にして作製した原子層堆積膜2を有する積層体上に、プラズマCVD法を用い、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)/酸素=10/100sccmの混合ガスを電極間に導入し、電力を0.5kW印加しプラズマ化して、SiOX(X=1.8)で表される厚さ50nmのオーバーコート層3を積層し、比較例2に係るガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様にして作製した原子層堆積膜2を有する積層体上に、プラズマCVD法を用い、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)/酸素=10/100sccmの混合ガスを電極間に導入し、電力を0.5kW印加しプラズマ化して、SiOX(X=1.8)で表される厚さ50nmのオーバーコート層3を積層し、比較例2に係るガスバリア性フィルムを得た。
(比較例3)
実施例1と同様にして原子層堆積膜2を有する積層体を作製し、オーバーコート層は設けずに、比較例3に係るガスバリア性フィルムを得た。
実施例1と同様にして原子層堆積膜2を有する積層体を作製し、オーバーコート層は設けずに、比較例3に係るガスバリア性フィルムを得た。
<評価方法>
実施例1及び比較例1、比較例2、比較例3の各ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率を、MOCON社製AQUATRAN(製品名)を用いて測定した。
実施例1及び比較例1、比較例2、比較例3の各ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率を、MOCON社製AQUATRAN(製品名)を用いて測定した。
ガスバリア性フィルムの分光透過率は、分光光度計U−4000(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
原子層堆積膜及びオーバーコート層の屈折率は、分光エリプソメーターVUV−VASE(ジーエーウーラムジャパン社製)を用いて測定した。
各ガスバリア性フィルムを用いて、40mm角の有機EL発光素子を作製した。作製した素子を、4Vの電圧を印加し発光させ、輝度及び発光しない欠陥の有無を経時で観察した。欠陥の観察は、素子作製直後、作製7日後、及び作製20日後に行い、5mm2における直径50μm以上の欠陥数をカウントした。
表1に、実施例1及び比較例1〜3のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率の評価結果を示す。
表2に、実施例1及び比較例1〜3のガスバリア性フィルムを用いた有機EL発光素子における輝度及び直径50μm以上の欠陥数(5mm2観察範囲)の評価結果を示す。ただし、表中の「−」は、欠陥が広がり全面が暗くなった状態を示す。
実施例1に係るガスバリア性フィルムでは、無機酸化物からなる原子層堆積膜上に、無機酸化物からなるオーバーコート層を300nmの膜厚で形成したことによって、プラスチック基材上に成膜形成された原子層堆積膜への外的な機械的ストレスを抑制・低減でき、ガスバリア性に優れ、有機EL発光素子の経時劣化が抑制されることが確認された。
本発明は、ガスバリア性フィルムに適用可能であり、具体的には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機太陽電池、半導体ウェハ等の電子部品や、医薬品や食料等の包装用フィルム、精密部品の包装用フィルム等に適用できる。
1 プラスチック基材
2 原子層堆積膜
3 オーバーコート層
4 ガスバリア性フィルム
5 電極層
6 正孔注入層
7 正孔輸送層
8 発光層
9 電子注入層
10 陰極
11 封止層
12 有機EL発光素子
2 原子層堆積膜
3 オーバーコート層
4 ガスバリア性フィルム
5 電極層
6 正孔注入層
7 正孔輸送層
8 発光層
9 電子注入層
10 陰極
11 封止層
12 有機EL発光素子
Claims (7)
- プラスチック基材の少なくとも一方の面に、原子層堆積膜、オーバーコート層を順次積層してなるガスバリア性フィルムにおいて、
前記原子層堆積膜が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが2nm以上500nm以下であり、
前記オーバーコート層が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、これらの混合物のいずれかからなり、且つ、その厚みが200nm以上3000nm以下であることを特徴とする、ガスバリア性フィルム。 - 波長400nm〜800nmの範囲における分光透過率が85%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記オーバーコート層が酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの混合物のいずれかからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記原子層堆積膜はアルミニウム、チタニウム、珪素、亜鉛、錫、タンタルのいずれか1つまたは2つ以上を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記プラスチック基材と前記原子層堆積膜との波長400nm〜800nmの範囲における屈折率差、及び、前記原子層堆積膜と前記オーバーコート層との波長400nm〜800nmの範囲における屈折率差が、いずれも0〜0.5の範囲であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項1から5のいずれかに記載のガスバリア性フィルムと、
前記ガスバリア性フィルムの前記オーバーコート層上に形成された、互いに対向する一対の電極層と、
前記一対の電極層間に形成された有機発光材料からなる有機発光層とを備える、有機EL発光素子。 - 請求項1から5のいずれかに記載のガスバリア性フィルムからなる第1のガスバリア性フィルムと、
前記第1のガスバリア性フィルムの前記オーバーコート層上に形成された、互いに対向する一対の電極層と、
前記一対の電極層間に形成された有機発光材料からなる有機発光層と、
請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムからなり、前記第1のガスバリア性フィルムとの間に前記一対の電極層及び前記有機発光層を挟み込んで封止する第2のガスバリア性フィルムとを備える、有機EL発光素子。
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- 2015-12-18 JP JP2015247434A patent/JP2017109438A/ja active Pending
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