以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池システム100の構成の一例を示す構成図である。
図1には、車両に備えられた燃料電池システム100に加えて、車両キー101とインバータ110と駆動モータ120とアクセルペダルセンサ201とが示されている。
車両キー101は、車両の運転者により停止状態(OFF)から運転状態(ON)に操作される起動スイッチである。車両キー101がON状態に切り替えられると、燃料電池システム100が起動され、車両キー101がOFF状態に切り替えられると、燃料電池システム100が停止される。
アクセルペダルセンサ201は、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれたときのアクセルペダルの踏込み量を検出する。アクセルペダルの踏込み量が大きくなるほど、駆動モータ120から燃料電池システム100に対して要求される要求電力は大きくなる。
燃料電池システム100は、燃料電池の発電に必要となる燃料を含むアノードガス、及び酸化剤を含むカソードガスをそれぞれ燃料電池スタック1に供給し、電気負荷に応じて燃料電池を発電させる電源システムを構成する。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、スタック冷却装置4と、バッテリ5と、DC/DCコンバータ6と、逆流防止ダイオード7と、インピーダンス測定装置8と、電圧センサ9とを含む。さらに、燃料電池システム100は、燃料電池システム100の作動状態を制御するコントローラ200を含む。
燃料電池スタック1は、複数の燃料電池が積層された積層電池である。燃料電池スタック1は、例えば数百V(ボルト)の直流の電圧を生じる。燃料電池スタック1は、インバータ110を介して駆動モータ120に接続される電源であり、駆動モータ120に電力を供給する。燃料電池スタック1は、必要に応じてDC/DCコンバータ6を介してバッテリ5に電力を供給する。
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給すると共に、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを大気に排出するガス供給装置である。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、コンプレッサ22と、流量センサ23と、圧力センサ24と、カソードガス排出通路25と、カソード調圧弁26とを含む。
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するための通路である。カソードガス供給通路21の一端は開口しており、他端は燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
コンプレッサ22は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するためのアクチュエータである。コンプレッサ22は、カソードガス供給通路21の開口端から酸素を含有する空気を取り込み、その空気をカソードガスとして燃料電池スタック1に供給する。コンプレッサ22の回転速度はコントローラ200によって制御される。コンプレッサ22の回転速度を変化させることにより、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量は増加又は減少する。
流量センサ23は、コンプレッサ22と燃料電池スタック1との間のカソードガス供給通路21に設けられる。流量センサ23は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を検出する。以下では、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量のことを単に「カソードガス流量」という。流量センサ23は、カソードガス流量を検出した信号をコントローラ200に出力する。
圧力センサ24は、コンプレッサ22と燃料電池スタック1との間のカソードガス供給通路21に設けられる。圧力センサ24は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を検出する。以下では、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力のことを単に「カソードガス圧力」という。圧力センサ24は、カソードガス圧力を検出した信号をコントローラ200に出力する。
カソードガス排出通路25は、燃料電池スタック1から排出されたカソードオフガスを大気に排出するための通路である。カソードガス排出通路25の一端は燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端は開口している。
カソード調圧弁26は、燃料電池スタック1内のカソードガス圧力を調整する。カソード調圧弁26は、コンプレッサ22と同様にカソードガス流量を制御する。カソード調圧弁26は、カソードガス排出通路25に設けられる。カソード調圧弁26としては、例えば弁の開度を段階的に変更可能な電磁弁が用いられる。カソード調圧弁26はコントローラ200によって開閉制御される。この開閉制御によってカソードガス圧力が所望の圧力に調節される。
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給すると共に、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスをカソードガス排出通路25に排出するガス供給装置である。アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、アノード調圧弁33と、アノードガス排出通路34と、パージ弁35とを含む。
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給される燃料である水素を高圧状態に保って貯蔵する。
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31に貯蔵された燃料をアノードガスとして燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路32の一端は、高圧タンク31に接続され、他端は燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
アノード調圧弁33は、燃料電池スタック1内の圧力を調整する。アノード調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。アノード調圧弁33の開度を変化させることにより、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力が上昇又は降下する。アノード調圧弁33としては、例えば弁の開度を段階的に変更可能な電磁弁が用いられる。アノード調圧弁33は、コントローラ200によって開閉制御される。
アノードガス排出通路34は、燃料電池スタック1から排出されたアノードオフガスをカソードガス排出通路25に排出するための通路である。アノードガス排出通路34の一端は燃料電池スタック1のアノードガス出口孔に接続され、他端はカソード調圧弁26よりも下流のカソードガス排出通路25に合流する。これにより、アノードオフガスは、カソードガス排出通路25を流れるカソードオフガスによって希釈される。
パージ弁35は、アノードガス排出通路34に設けられる。パージ弁35は、アノードオフガスに含まれる不純物を外部に排出する。不純物とは、燃料電池のカソード極から電解質膜を介してアノード極に透過してきた空気中の窒素ガスや、発電に伴う生成水などのことである。パージ弁35の開度は、コンプレッサ22の回転速度と共に、コントローラ200によって希釈後におけるカソードオフガス中の水素濃度が規定値以下となるように制御される。
スタック冷却装置4は、燃料電池スタック1を冷却する装置である。スタック冷却装置4は、冷却水循環通路41と、冷却水ポンプ42と、ラジエータ43と、入口水温センサ44と、出口水温センサ45とを含む。
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック1に冷却水を循環させる通路である。冷却水循環通路41の一端は、燃料電池スタック1の冷却水入口孔に接続され、他端は燃料電池スタック1の冷却水出口孔に接続される。
冷却水ポンプ42は、冷却水循環通路41に設けられる。冷却水ポンプ42は、ラジエータ43を介して燃料電池スタック1に冷却水を供給する。冷却水ポンプ42の回転速度はコントローラ200によって制御される。
ラジエータ43は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエータ43は、燃料電池スタック1により温められた冷却水をファンによって冷却する。
入口水温センサ44及び出口水温センサ45は、冷却水の温度を検出する。入口水温センサ46及び出口水温センサ47によって検出された冷却水の温度は、例えば、燃料電池スタック1の温度として用いられる。
入口水温センサ44は、燃料電池スタック1の冷却水入口孔の近傍に位置する冷却水循環通路41に設けられる。入口水温センサ44は、燃料電池スタック1の冷却水入口孔に流入する冷却水の温度を検出する。以下では、燃料電池スタック1の冷却水入口孔に流入する冷却水の温度のことを「スタック入口水温」という。入口水温センサ46は、スタック入口水温を検出した信号をコントローラ200に出力する。
出口水温センサ45は、燃料電池スタック1の冷却水出口孔の近傍に位置する冷却水循環通路41に設けられる。出口水温センサ45は、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度を検出する。以下では、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度のことを「スタック出口水温」という。出口水温センサ47は、スタック出口水温を検出した信号をコントローラ200に出力する。
バッテリ5は、DC/DCコンバータ6を介して燃料電池スタック1の補機又は駆動モータ120に電力を供給可能な電源である。燃料電池スタック1の補機としては、例えば、コンプレッサ22や、冷却水ポンプ42などが挙げられる。バッテリ5は、例えば、リチウムイオンバッテリにより実現される。
DC/DCコンバータ6は、バッテリ5の電力を用いて燃料電池スタック1とインバータ110との間の電圧を制御することにより、燃料電池スタック1から電力を取り出す電力制御器である。DC/DCコンバータ6は、2つの電源端子を有し、一方の電源端子にバッテリ5が接続され、他方の電源端子に燃料電池スタック1及びインバータ110が接続される。
インバータ110は、DC/DCコンバータ6により燃料電池スタック1又はバッテリ5から供給される直流電力を交流電力に変換して駆動モータ120に供給する。
駆動モータ120は、車両を駆動する動力源であり、インバータ110からの交流電力を受けて駆動する電動機である。すなわち、インバータ110及び駆動モータ120は、燃料電池システム100に対して接続される負荷である。
逆流防止ダイオード7は、駆動モータ120からの回生電流やバッテリ5からの放電電流が燃料電池スタック1に流れるのを防止するためのダイオードである。逆流防止ダイオード7は、燃料電池スタック1とDC/DCコンバータ6との間に接続される。逆流防止ダイオード7は、燃料電池スタック1から駆動モータ120やバッテリ5に向かって電流を流し、燃料電池スタック1に向かって流れる電流を遮断する。
インピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1の湿潤状態を検出するために、燃料電池スタック1が有するインピーダンスを計測する計測回路である。例えば、インピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1の正極端子1Aに交流電流を供給し、燃料電池スタック1の正極端子1Aと負極端子1Bとの間に生じる電圧の交流成分を検出する。インピーダンス測定装置8は、検出した電圧の交流成分と交流電流の指令値又は検出値とに基づいて、燃料電池スタック1のインピーダンスを算出する。このように計測された燃料電池スタック1のインピーダンスを以下では「スタック交流抵抗」という。
スタック交流抵抗は、燃料電池の電解質膜の湿潤状態と相関のある値であり、電解質膜の水分が増えるほどスタック交流抵抗は小さくなり、電解質膜の水分が少なくなるほどスタック交流抵抗は大きくなる。
スタック交流抵抗の測定に用いられる交流電流の周波数は、燃料電池スタック1において主に電解質膜の電気抵抗成分に応答しやすい周波数に設定される。例えば、交流電流の周波数は1kHz(キロヘルツ)よりも大きな値に設定される。このような周波数の交流電流を用いて測定されたスタック交流抵抗は、HFR(High Frequency Resistance;高周波数抵抗)と称される。なお、燃料電池スタック1に供給する交流電流の周波数は、電解質膜の湿潤状態を推定可能な値であればよく、1kHzよりも低い値であってもよい。
本実施形態のインピーダンス測定装置8の構成例については次図で後述する。インピーダンス測定装置8は、算出したスタック交流抵抗をコントローラ200に出力する。
電圧センサ9は、燃料電池スタック1の正極端子1Aと負極端子1Bとの間に接続される。電圧センサ9は、燃料電池スタック1における正極端子1Aと負極端子1Bとの間の電圧を検出する。燃料電池スタック1の電圧のことを以下では「スタック電圧」という。電圧センサ9は、スタック電圧を検出した信号をコントローラ200に出力する。
コントローラ200は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピューターで構成される。
コントローラ200は、インピーダンス測定装置8、電圧センサ9、流量センサ23、圧力センサ24、入口水温センサ44、出口水温センサ45、車両キー101、及びアクセルペダルセンサ201の各出力信号を受信する。コントローラ200は、受信した信号に応じて燃料電池システム100の作動状態を制御する。
コントローラ200は、アクセルペダルセンサ201から出力されるアクセルペダルの踏込み量に基づいて、駆動モータ120の要求電力を算出する。コントローラ200は、算出した要求電力に基づいて、駆動モータ120により燃料電池スタック1から取り出される電流の目標値であるスタック目標電流を演算する。
コントローラ200は、演算したスタック目標電流に基づいて、燃料電池スタック1に供給されるべきカソードガス目標流量及び目標圧力と、燃料電池スタック1に供給されるべきアノードガス目標圧力とを算出する。コントローラ200は、カソードガス目標流量及び目標圧力に基づいてコンプレッサ22及びカソード調圧弁26の各動作を制御すると共に、アノードガス目標圧力に基づいてアノード調圧弁33及びパージ弁35の各開度を制御する。
このように、コントローラ200は、スタック目標電流に基づいて燃料電池スタック1の発電状態を制御する。このような燃料電池システム100の制御状態を以下では「通常制御」という。
一方、燃料電池システム100の運転状態が、いわゆるアイドルストップ状態に遷移したときには、通常制御とは異なる制御を実行することが好ましい。ここにいう燃料電池システム100のアイドルストップ状態としては、例えば、車両キー101がON状態で車両が停止しているアイドル状態や、車両の減速中に駆動モータ120が回転駆動されて発電している回生状態、車両の走行中に燃料電池システム100から駆動モータ120への電力供給を停止しているコースティング状態などが挙げられる。
すなわち、燃料電池システム100のアイドルストップ状態とは、車両キー101がONに設定されている状態であって、燃料電池システム100から負荷である駆動モータ120への電力供給が停止されているシステム状態のことをいう。なお、このような状態では、燃料電池スタック1から燃料電池システム100の補機及びバッテリ5に電力を供給してもよく、補機及びバッテリ5への電力供給を停止してもよい。
アイドルストップ状態では、燃料電池システム100の消費電力を低減しつつ駆動モータ120を次に駆動する際に必要となる要求電力を早期に駆動モータ120に供給できるよう、燃料電池スタック1の状態を維持することが重要となる。
そのため、コントローラ200は、燃料電池システム100がアイドルストップ状態になったときには、カソードガス給排装置2の作動状態を停止状態に切り替えると共に、スタック電圧が下がり過ぎないように必要に応じて燃料電池スタック1を発電させる。このような燃料電池システム100の制御状態を以下では「アイドルストップ(IS)制御」という。
図2は、本実施形態におけるインピーダンス測定装置8の構成の一例を示す回路図である。
インピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1の正極端子(カソード極側端子)1A及び負極端子(アノード極側端子)1Bの他に、中途端子1Cに接続されている。なお、中途端子1Cに接続された部分はアースされている。
インピーダンス測定装置8は、中途端子1Cに対する正極端子1Aの正極側交流電位差V1を測定する正極側電圧測定センサ81と、中途端子1Cに対する負極端子1Bの負極側交流電位差V2を測定する負極側電圧測定センサ82と、を含む。
さらに、インピーダンス測定装置8は、正極端子1Aと中途端子1Cからなる回路に交流電流I1を印加する正極側交流電源部83と、負極端子1Bと中途端子1Cからなる回路に交流電流I2を印加する負極側交流電源部84とを含む。そして、インピーダンス測定装置8は、これら交流電流I1及び交流電流I2の振幅や位相を調整するコントローラ85と、正極側交流電位差V1、V2及び交流電流I1、I2に基づいて、燃料電池スタック1の内部インピーダンスZを演算するインピーダンス演算部86とを含む。
コントローラ85は、正極側交流電位差V1と負極側交流電位差V2が等しくなるように、交流電流I1と交流電流I2の振幅及び位相を調節する。
インピーダンス演算部86は、図示しないAD変換器やマイコンチップ等のハードウェア、及びインピーダンスを算出するプログラム等のソフトウェア構成を含む。インピーダンス演算部86は、正極側交流電位差V1を交流電流I1で除して、中途端子1Cから正極端子1Aまでの内部インピーダンスZ1を算出し、負極側交流電位差V2を交流電流I2で除して、中途端子1Cから負極端子1Bまでの内部インピーダンスZ2を算出する。さらに、インピーダンス演算部86は、内部インピーダンスZ1と内部インピーダンスZ2の和をとることで、燃料電池スタック1の全インピーダンスZを算出する。そして、インピーダンス演算部86は、算出した全インピーダンスZをスタック交流抵抗としてコントローラ200に送信する。
本実施形態によれば、インピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1に接続されて、該燃料電池スタック1に交流電流I1,I2を出力する交流電源部83,84と、燃料電池スタック1の正極側1Aの電位から中途部分1Cの電位を引いて求めた電位差である正極側交流電位差V1と、燃料電池スタック1の負極側1Bの電位から中途部分1Cの電位を引いて求めた電位差である負極側交流電位差V2と、に基づいて交流電流I1,I2を調整する交流調整部としてのコントローラ85と、調整された交流電流I1,I2並びに正極側交流電位差V1及び負極側交流電位差V2に基づいて燃料電池スタック1のインピーダンスZを演算するインピーダンス演算部86と、を有する。
コントローラ85は、燃料電池スタック1の正極側の正極側交流電位差V1が負極側の負極側交流電位差V2と実質的に一致するように、正極側交流電源部83により印加される交流電流I1及び負極側交流電源部84により印加される交流電流I2の振幅及び位相を調節する。これにより、正極側交流電位差V1の振幅と負極側交流電位差V2の振幅とが等しくなるので、正極端子1Aと負極端子1Bが実質的に等電位となる(以下ではこれを等電位制御と記載する)。したがって、インピーダンス計測のための交流電流I1、I2が駆動モータ120に流れることが防止されるので、燃料電池スタック1による発電に影響を与えることが防止される。
また、燃料電池スタック1が発電状態であっても、発電により生じた電圧に計測用交流電位が重畳されることになるので、正極側交流電位差V1及び負極側交流電位差V2の値自体は変動するが、正極側交流電位差V1及び負極側交流電位差V2の位相や振幅自体が変わるわけではないので、燃料電池スタック1が発電状態ではない場合と同様に高精度なインピーダンス計測を実行することができる。
さらに、インピーダンスZの測定のための回路構成等も種々の変更が可能である。例えば、燃料電池スタック1に所定の電流源から交流電流を供給するようにして、出力される交流電圧を測定し、当該交流電流と出力交流電圧に基づきインピーダンスを計算するようにしても良い。
なお、DC/DCコンバータ6を制御して燃料電池スタック1に交流電流I1を供給することも可能であるが、DC/DCコンバータ6と燃料電池スタック1との間には逆流防止ダイオード7が配置されている。このため、DC/DCコンバータ6から燃料電池スタック1に供給される交流電流の一部は逆流防止ダイオード7により遮断されることから、スタック交流抵抗の計測精度が低下してしまう。
これに対して、本実施形態によれば、DC/DCコンバータ6とは別に、逆流防止ダイオード7と燃料電池スタック1との間にインピーダンス測定装置8が燃料電池システム100に配置されている。このため、コントローラ200は、DC/DCコンバータ6を用いてスタック交流抵抗を計測する構成に比べて、インピーダンス測定装置8からより正確なスタック交流抵抗を取得することが可能になる。したがって、本実施形態では、コントローラ200は、燃料電池スタック1の湿潤状態を正確に把握することが可能になる。
図3は、本実施形態におけるコントローラ200の機能構成の一例を示すブロック図である。
コントローラ200は、通常制御部210と、IS制御部220と、停止制御部230と、制御切替部240と、ガス供給指令部250とを含む。
通常制御部210は、駆動モータ120の要求電力に基づいて、燃料電池スタック1の発電状態を制御する。例えば、通常制御部210は、燃料電池スタック1の発電に最低限必要な発電状態を維持しつつ、必要に応じて電解質膜の湿潤状態を発電に適した状態に操作する。
本実施形態では、通常制御部210は、スタック目標電流に基づいて、カソードガス目標流量、カソードガス目標圧力、及びアノードガス目標圧力を演算する。
具体的には、通常制御部210は、スタック目標電流を取得すると、そのスタック目標電流に基づいてアノードガス目標圧力を算出する。これと共に、通常制御部210は、算出したアノードガス目標圧力とスタック目標電流とに基づいて、燃料電池スタック1の内部圧力が原因で部品が損傷しないようにカソードガス目標圧力を算出する。通常制御部210は、算出したカソードガス目標圧力とスタック目標電流とに基づいて、カソードガス目標流量を演算する。例えば、スタック目標電流とカソードガス目標流量との関係を示す流量テーブルがカソードガス目標圧力ごとに通常制御部210に記憶される。そして通常制御部210は、カソードガス目標圧力を算出すると、そのカソードガス目標圧力により特定される流量テーブルを参照し、取得したスタック目標電流に関係付けられたカソードガス目標流量を算出する。
また、通常制御部210は、インピーダンス測定装置8からスタック交流抵抗を取得し、そのスタック交流抵抗に基づいて、電解質膜の湿潤状態を維持するためのカソードガス流量、カソードガス圧力、及びアノードガス圧力の各湿潤要求値を算出する。例えば、通常制御部210は、カソードガス目標流量、カソードガス目標圧力、及びアノードガス目標圧力の各パラメータの目標値がそれぞれに対応する湿潤要求値よりも小さいか否かを判断する。そして通常制御部210は、目標値が湿潤要求値よりも小さい場合には、そのパラメータに湿潤要求値を設定し、目標値が湿潤要求値よりも大きい場合には、目標値を変更することなくパラメータを出力する。
このように、通常制御部210は、スタック目標電流に基づいて算出される目標値が、スタック交流抵抗に基づいて算出される湿潤要求値よりも小さい場合には、その湿潤要求値を目標値として設定する。これにより、燃料電池スタック1に必要な発電量を確保しつつ、燃料電池スタック1の湿潤状態を操作することができる。
IS制御部220は、燃料電池システム100のアイドルストップ制御を実行する。具体的には、IS制御部220は、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態に遷移した場合には、カソードガス給排装置2及びアノードガス給排装置3の各作動状態を制御する。
本実施形態では、IS制御部220は、燃料電池システム100からの水素の排出を抑制するためにパージ弁35を閉じると共に、燃料電池スタック1の発電に必要となる圧力値を確保するためにアノード調圧弁33の開度を制御する。さらにIS制御部220は、燃料電池システム100の消費電力を低減するために、電圧センサ9により検出されたスタック電圧に応じて、カソードガス給排装置2におけるコンプレッサ22の回転速度を減速又は停止する。
例えば、IS制御部220は、燃料電池スタック1の発電性能を確保するために定められた下限値に対して、スタック電圧が低下した場合には、コンプレッサ22及びカソード調圧弁26のうち一方を制御して燃料電池スタック1にカソードガスを供給する。すなわち、IS制御部220は、カソードガス給排装置2の作動状態を停止状態から供給状態に切り替える。これにより、燃料電池スタック1が発電するのでスタック圧力が上昇する。その後、IS制御部220は、電量電池の高電位劣化を回避するために定められた上限値に対して、スタック電圧が高くなった場合には、カソードガスの供給を停止する。これにより、スタック電圧は徐々に低下する。
このようにアイドルストップ状態では、スタック電圧を確保するために間欠的に燃料電池スタック1を発電させる。このため、燃料電池スタック1を発電させるたびに水が生成されるので、燃料電池スタック1内の水量が徐々に増加する場合がある。このような場合には、アイドルストップ状態の継続時間が長くなるほど、燃料電池スタック1内の水量は増加する。その結果、燃料電池システム100がアイドルストップ状態から復帰したときには、電解質膜が湿り過ぎて電解質膜の湿潤状態を目標とする状態に操作するのに要する時間が長くなってしまう。あるいは、アイドルストップ状態から復帰した直後に車両の加速要求により燃料電池スタック1の発電量が増大してフラッディングを引き起こすことが懸念される。
本実施形態では、この対策としてコントローラ200に制御切替部240が備えられている。
制御切替部240は、インピーダンス測定装置8からスタック交流抵抗を取得し、そのスタック交流抵抗に基づいて、燃料電池システム100の制御状態を、IS制御部220によるIS制御から燃料電池スタック1の状態を復帰させる他の制御に切り替える。
本実施形態では、制御切替部240は、IS制御を実行できる状態か否かを判定するためのIS判定情報を取得する。IS判定情報としては、車両キー101の操作状態や、アクセルペダルセンサ201からの踏込み量などが用いられる。
制御切替部240は、車両キー101がON状態であり、かつ、アクセルペダルの踏込み量がゼロになった場合に、燃料電池システム100の制御状態を通常制御部210による通常制御からIS制御部220によるIS制御に切り替える。具体的には、制御切替部240は、ガス供給指令部250に入力する各パラメータの目標値を、通常制御部210によって算出される各パラメータの目標値から、IS制御部220によって算出される各パラメータの目標値に切り替える。
このように、制御切替部240は、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態に遷移した場合に、燃料電池システム100の制御状態をIS制御に切り替える。なお、IS判定情報としては、車両キー101の操作状態や、アクセルペダルの踏込み量に限られず、ブレーキペダルの踏込み量や、スタック目標電流、車両の速度などを用いてアイドルストップ状態の判定を行ってもよい。例えば、制御切替部240は、車両キー101がON状態であり、かつ、燃料電池システム100から取り出される電流の検出値がゼロになった場合に、アイドルストップ状態に遷移したと判断するものであってもよい。
制御切替部240は、燃料電池システム100がアイドルストップ状態に遷移した後、IS判定情報に基づいてアイドルストップ状態から復帰したか否かを判定する。例えば、アクセルペダルの踏込み量がゼロよりも大きくなった場合や、ブレーキペダルの踏込み量がゼロになった場合には、制御切替部240は、燃料電池システム100の制御状態をIS制御から通常制御に切り替える。
また、制御切替部240は、燃料電池システム100がアイドルストップ状態に遷移した場合には、予め定められたIS湿潤下限値に対して、インピーダンス測定装置8からのスタック交流抵抗が小さいか否かを監視する。IS湿潤下限値は、燃料電池スタック1の電解質膜が湿り過ぎないように燃料電池システム100をIS制御から復帰させるために定められた復帰判定閾値である。
スタック交流抵抗がIS許容下限値よりも小さくなった場合には、制御切替部240は、燃料電池システム100の制御状態をIS制御から通常制御に切り替えるために、通常制御部210からの各パラメータの目標値をガス供給指令部250に出力する。すなわち、制御切替部240は、スタック交流抵抗が所定の閾値を超えた場合には、燃料電池スタック1の状態をアイドルストップ状態から復帰させる。
また、アイドルストップ状態において、燃料電池スタック1に間欠的に供給されるカソードガスの流量や、燃料電池スタック1の温度などによっては、燃料電池スタック1が発電するたびに電解質膜の水分が減少することもある。このような場合には、燃料電池スタック1の発電性能が低下してしまう。この対策として、制御切替部240は、予め定められたIS許容上限値に対して、スタック交流抵抗が大きいか否かを確認する。IS湿潤上限値は、燃料電池スタック1の電解質膜が乾き過ぎないように燃料電池システム100をIS制御から復帰させるために定められた復帰判定閾値である。
スタック交流抵抗がIS湿潤上限値よりも大きくなった場合にも、制御切替部240は、IS制御から通常制御に切り替えるために、通常制御部210からの各パラメータの目標値をガス供給指令部250に出力する。
また、制御切替部240は、車両キー101の操作状態がONからOFFに切り替えられた場合には、燃料電池システム100を停止させる停止制御が実行されるように、停止制御部230から出力される各パラメータの目標値をガス供給指令部250に出力する。
停止制御部230は、車両キー101がOFF状態に切り替えられると、スタック交流抵抗に基づいて、燃料電池スタック1の湿潤状態をシステム停止時の目標状態に操作する。さらに、停止制御部230は、燃料電池スタック1に滞留した不純物を排出して新たなアノードガスに置き換えるために、パージ弁35を開けると共にアノード調圧弁33の開度を制御して燃料電池スタック1にアノードガスを供給する。その後、停止制御部230は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を所定の値まで減圧し、燃料電池スタック1の電圧を所定の値まで低下させた後に、燃料電池スタック1の接続を駆動モータ120などの負荷から遮断する。
ガス供給指令部250は、制御切替部240から出力されるカソードガス目標流量及びカソードガス目標圧力に基づいて、コンプレッサ22のトルク指令値及びカソード調圧弁26の開度指令値を演算する。そしてガス供給指令部250は、演算したトルク指令値及び開度指令値をカソードガス給排装置2に送信する。
一方、ガス供給指令部250は、制御切替部240から出力されるアノードガス目標圧力に基づいて、アノード調圧弁33の開度指令値を演算し、演算した開度指令値をアノードガス給排装置3に送信する。
このように、本実施形態の制御切替部240は、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態に遷移した後にスタック交流抵抗を監視し、スタック交流抵抗が所定のIS湿潤範囲を超えた場合にアイドルストップ状態から復帰させる。なお、スタック交流抵抗がIS湿潤範囲内にあっても、例えば、アクセルペダルが踏み込まれた場合には、燃料電池システム100から駆動モータ120へ電力が供給されるので、燃料電池システム100の制御状態はIS制御から通常制御に切り替えられる。
図4は、本実施形態における制御切替部240によりIS制御から通常制御に切り替えられたときの燃料電池スタック1の発電状態を示すタイムチャートである。
図4(a)は、燃料電池スタック1の湿潤状態と相関のあるスタック交流抵抗の変化を示す図である。図4(b)は、燃料電池スタック1の電圧であるスタック電圧の変化を示す図である。図4(c)は、燃料電池スタック1から出力される電流であるスタック電流の変化を示す図である。図4(d)は、カソードガス給排装置2から燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を示す図である。図4(a)から図4(d)までの各図面の横軸は、互いに共通する時間軸である。
時刻t0からt1までの期間において、車両が走行中であるため、燃料電池システム100に対して通常制御が実行される。この期間では燃料電池スタック1の負荷が低くなり、その後に燃料電池スタック1の負荷が高くなっている。
通常運転においては、図4(d)に示すように、燃料電池スタック1の発電に必要となるカソードガス流量が減少し、その後にカソードガス流量が増加している。これにより、図4(a)から図4(c)までの各図面に示すように、スタック電流が減少するほど、燃料電池スタック1の特性からスタック電圧が低下すると共に、発電に伴う生成水が減少するためスタック交流抵抗が大きくなる。同様に、カソードガス流量が増加するほど、スタック電流が増加すると共に、スタック電圧が低下してスタック交流抵抗が小さくなる。また、スタック交流抵抗は目標抵抗RTを中心に増減するように操作される。
時刻t1において、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態に遷移する。例えば、アクセルペダルセンサ201によって検出されたアクセルペダルの踏込み量がゼロになった時に、制御切替部240により通常制御からIS制御に切り替えられる。このため、燃料電池システム100の動作がIS制御部220によって制御される。
IS制御において、図4(b)に示すように、スタック電圧が上限値VHよりも低く、かつ、下限値VLよりも大きいため、コンプレッサ22の作動状態が停止状態に切り替えられる。このため、図4(d)に示すように、カソードガス流量がゼロになり、これに伴って図4(c)に示すように、スタック電流がゼロになる。
本実施形態では、図4(a)に示すように、時刻t1以降に、スタック交流抵抗がIS湿潤範囲(RL−RH)内に収まっているか否かが監視される。IS湿潤範囲は、IS制御から復帰するか否かを判定するための復帰判定閾値RL及びRHによって特定される。
そして、図4(d)に示すように、カソードガスの供給は停止されているため、図4(b)に示すように、スタック電圧は時刻t1から時間が経過するにつれて徐々に低下する。これに対し、図4(a)に示すように、スタック交流抵抗は一定に維持される。これは、カソードガスの供給が停止しているため燃料電池スタック1から水蒸気が排出されず、また、燃料電池スタック1で発電が行われないため水が発生していないからである。
時刻t2において、図4(b)に示すように、スタック電圧が下限値VLまで低下するため、図4(d)に示すように、IS制御部220によりコンプレッサ22又はカソード調圧弁26が作動して燃料電池スタック1にカソードガスが供給される。
これにより、燃料電池スタック1が発電するため、図4(b)に示すようにスタック電圧が上昇すると共に、燃料電池スタック1の発電に伴い水が生成されて電解質膜の水分が増加するため、図4(a)に示すようにスタック交流抵抗が小さくなる。なお、燃料電池スタック1の発電電力は、DC/DCコンバータ6を介してコンプレッサ22やバッテリ5に充電される。
そして、図4(b)に示すように、スタック圧力が上限値VHまで上昇すると、IS制御部220により再びカソードガスの供給が停止される。その後、図4(c)に示すように、スタック電圧が徐々に低下する。
時刻t3において、スタック電圧が下限値VLまで低下すると、燃料電池スタック1にカソードガスが供給される。これにより、燃料電池スタック1が発電するため、図4(b)に示すように、スタック電圧が上昇し、スタック電圧が上限値VHまで達すると、カソードガスの供給が停止される。さらに、燃料電池スタック1の発電により水が生成されて電解質膜の水分が増加するため、図4(a)に示すようにスタック交流抵抗がさらに低下する。
時刻t4において、スタック交流抵抗がIS湿潤下限値RLに到達したため、これに伴って制御切替部240によりIS制御から通常制御に切り替えられる。
通常制御において、図4(a)に示すようにスタック交流抵抗が目標抵抗RTに対して大幅に小さいため、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量が湿潤要求値となるようにコンプレッサ22及びカソード調圧弁26の作動状態が制御される。すなわち、コントローラ200は、コンプレッサ22の作動状態を停止状態から供給状態に切り替える。
そのため、図4(d)に示すようにカソードガス流量が大幅に増加され、これに伴いカソードガスによって燃料電池スタック1から持ち出される水蒸気の排出量が増加し、図4(a)に示すように、電解質膜の水分が減少してスタック交流抵抗が大きくなる。
この例では、図4(c)に示すようにスタック電流が上昇しているので、燃料電池スタック1で生成される水量は増加するが、生成水の増量分よりもカソードガスの増量による水蒸気の排出量が上回っているため、スタック交流抵抗が大きくなっている。
図4(a)及び図4(d)に示すように、スタック交流抵抗が目標抵抗RTに到達して燃料電池スタック1の湿潤状態が復帰する。そして、通常どおり、スタック交流抵抗が目標抵抗RTに収束するようにカソードガス流量が調整される。このように、燃料電池スタック1のIS制御から通常制御への切替え後に、燃料電池スタック1の湿潤状態を復帰させる復帰制御が実行される。
以上のように、燃料電池システム100は、IS制御中においてスタック交流抵抗を計測し、計測したスタック交流抵抗がIS湿潤範囲を超えた場合に、アイドルストップ状態であっても、燃料電池システム100の制御をIS制御から強制的に復帰させる。
これにより、IS制御中に電解質膜が湿り過ぎてIS制御からの復帰後に燃料電池スタック1の湿潤状態を目標状態に操作するのに要する時間が長くなるという事態を回避することができる。同様に、IS制御中にフラッディングを引き起こしたり、IS制御から復帰した直後の加速要求によってフラッディングを引き起こしたりすることを回避することができる。
なお、図4ではIS制御において燃料電池スタック1を間欠的に発電させるたびに電解質膜の水分が増加する例について説明したが、燃料電池スタック1を間欠的に発電させるたびに電解質膜の水分が減少することも考えられる。
例えば、燃料電池スタック1の温度が高くなるほど、カソードガスの供給時に排出される水蒸気の排出量が増加するため、燃料電池スタック1の温度状態によってはIS制御中に電解質膜が乾燥する場合がある。また、IS制御において、パージ弁36を閉じずにコンプレッサ22を減速して排出ガス中の水素濃度が規定値以下に維持されるようにカソードガスを供給し続けてもよく、その場合にはカソードガスによって電解質膜が乾燥することも想定される。
このような場合であっても、燃料電池システム100は、IS制御中においてスタック交流抵抗を計測しているので、スタック交流抵抗がIS湿潤上限値RHよりも大きくなった場合に、燃料電池システム100の制御状態をIS制御から復帰させることができる。これにより、IS制御中に燃料電池スタック1の電解質膜が乾き過ぎて燃料電池スタック1の発電性能が低下するのを回避することができる。同様に、IS制御からの復帰後に燃料電池スタック1の湿潤状態を目標状態に操作するための操作時間が長くなるのを抑制することができる。
図5は、本実施形態における燃料電池システム100の制御方法についての処理手順例を示すフローチャートである。この制御方法は、所定の周期、例えば数ms(ミリセカンド)で繰り返し行われる。
ステップS1においてコントローラ200は、乗員により車両キー101がONに操作されたか否かを判断する。そして、車両キー101がOFFからONに操作されるまでステップS1の処理を繰り返す。コントローラ200は、車両キー101がON状態になった場合には、燃料電池システム100を起動する。
ステップS2においてコントローラ200は、インピーダンス測定装置8から燃料電池スタック1に交流電流を供給する。本実施形態では、コントローラ200が、インピーダンス測定装置8を起動し、図2に示した正極側交流電源部83及び負極側交流電源部84から、それぞれ燃料電池スタック1の正極端子1A及び負極端子1Bに交流電流I1及びI2を供給する。
ステップS3においてインピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1に生じる電圧の交流成分である交流電圧を検出する。そしてインピーダンス測定装置8は、検出した交流電圧と、燃料電池スタック1に供給した交流電流とに基づいて、スタック交流抵抗を演算する。すなわち、インピーダンス測定装置8は、燃料電池スタック1に生じる電圧の交流成分に基づいて、燃料電池スタック1の交流抵抗であるスタック交流抵抗を計測する。
本実施形態では、インピーダンス演算部86が、正極側電圧測定センサ81によって検出された正極側交流電位差V1を交流電流I1で除算して内部インピーダンスZ1を算出し、負極側電圧測定センサ82によって検出された負極側交流電位差V2を交流電流I2で除算して内部インピーダンスZ2を算出する。インピーダンス演算部86は、算出した内部インピーダンスZ1及び内部インピーダンスZ2の和をとることで、全インピーダンスZをスタック交流抵抗として算出する。
ステップS4において通常制御部210は、スタック目標電流に基づいて燃料電池システム100の発電状態を制御する。スタック目標電流は、燃料電池システム100に接続された負荷である駆動モータ120の要求電力に基づいて算出される。
本実施形態では、通常制御部210は、スタック目標電流に基づいて、コンプレッサ22、カソード調圧弁26、アノード調圧弁33及びパージ弁35の各動作を制御する。すなわち、通常制御部210は、燃料電池システム100の負荷に基づいて通常制御を実行する。なお、ステップS4は、発電制御ステップに対応する。
ステップS5において制御切替部240は、IS判定情報に基づいて、アイドルストップ状態でIS制御が実行可能であるか否かを判断する。ここにいうアイドルストップ状態とは、燃料電池スタック1から駆動モータ120への電力供給が停止されているシステム状態のことをいう。なお、アイドルストップ状態では、燃料電池スタック1から補機へ電力が供給されていてもよく、燃料電池スタック1から補機への電力供給が停止されていてもよい。
例えば、制御切替部240は、アクセルペダルセンサ201からアクセルペダルの踏込み量をIS判定情報として取得し、そのアクセルペダルの踏込み量がゼロ又は所定値以下である場合には、アイドルストップ状態においてIS制御を実行可能であると判断する。一方、アクセルペダルの踏込み量がゼロ又は所定値よりも大きい場合には、制御切替部240は、IS制御を実行できないと判断する。
ステップS9において制御切替部240は、IS制御を実行できないと判断した場合には、車両キー101がOFF状態になっているか否かを判断する。そして、車両キー101がON状態になっている場合には、燃料電池システム100の制御方法における一連の処理手順が終了し、次の制御周期で通常制御が実行されることになる。
ステップS10において制御切替部240は、車両キー101がOFF状態になっている場合には、燃料電池システムの制御状態を停止制御に切り替える。これにより、停止制御部230は、燃料電池システム100を停止させる停止制御を実行する。そして、燃料電池システム100の制御方法における一連の処理手順が終了する。
ステップS5でIS制御を実行可能であると判断された場合には、ステップS6の処理に進む。
ステップS6において制御切替部240は、燃料電池システム100の制御状態を通常制御からIS制御に切り替える。これにより、IS制御部220は、燃料電池システム100に対してIS制御を実行して、コンプレッサ22の動作状態を制御する。
例えば、IS制御部220は、コンプレッサ22の回転速度を、通常制御部210によって算出される回転速度に比べて下げると共にパージ弁35を閉じる。これにより、燃料電池システム100からの水素の排出を抑制しつつ燃料電池システム100の消費電力を低減することができる。本実施形態におけるIS制御の処理内容については次図を参照して後述する。なお、ステップS6は、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態になったときに、燃料電池にカソードガス及びアノードガスを供給するガス供給装置の作動状態を制御する出力停止制御ステップに対応する。
ステップS7において制御切替部240は、IS制御中においてインピーダンス測定装置8からスタック交流抵抗を取得し、IS制御から復帰すべきか否かを判定するために定められた復帰判定閾値に対して、スタック交流抵抗が超えたか否かを判断する。
本実施形態では、復帰判定閾値として、図4(a)に示したIS湿潤上限値RH及びIS湿潤下限値RLがIS制御部220に設定される。なお、IS制御の内容によってはIS湿潤上限値RH及びIS湿潤下限値RLのうち一方の閾値のみを設定するようにしてもよい。例えば、IS制御部220がアイドルストップ状態において燃料電池スタック1へのカソードガス流量を通常制御での流量よりも減量して供給を継続するような構成では、燃料電池スタック1の電解質膜の水分が減り続けるので、復帰判定閾値としてIS湿潤上限値RHのみを設定すればよい。
制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS湿潤上限値RH以下であり、かつ、IS湿潤下限値RL以上である場合には、ステップS6の処理に戻ってIS制御を実行する。すなわち、制御切替部240は、燃料電池スタック1の交流抵抗が復帰判定閾値を超えていない場合には、IS制御を継続して実行する。
ステップS8において制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS湿潤上限値RHよりも大きくなった場合、又はスタック交流抵抗がIS湿潤下限値RLよりも小さくなった場合に、燃料電池システム100の制御状態をIS制御から通常制御に切り替える。すなわち、制御切替部240は、スタック交流抵抗が復帰判定閾値を超えた場合に燃料電池システム100の制御状態をIS制御から復帰させる。
これにより、通常制御部210は、駆動モータ120の要求電力に基づいて燃料電池スタック1の発電状態を制御する。例えば、通常制御部210は、燃料電池スタック1の発電電力が駆動モータ120の要求電力となるように燃料電池スタック1の発電状態を維持しつつ、燃料電池スタック1の湿潤状態を目標状態に操作する湿潤制御を実行する。
なお、ステップS8は、燃料電池のインピーダンスに基づいて燃料電池システム100の制御状態をIS制御から復帰させる切替ステップに対応する。ステップS8の処理が終了すると、燃料電池システム100の制御方法におけるステップS1からS10までの一連の処理手順が終了する。
このようにステップS8ではスタック交流抵抗を用いて燃料電池システム100の運転状態をアイドルストップ状態から強制的に復帰させることにより、IS制御中に燃料電池スタック1の電解質膜が湿り過ぎたり、乾き過ぎたりするのを回避することかできる。さらに、IS制御からの復帰後において燃料電池スタック1の状態をIS制御に遷移する前の状態に戻すのに必要となる復帰時間が長くなり過ぎるのを抑制するこができる。
図6は、ステップS6で実行されるIS制御についての処理手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS5でIS制御を実行可能であると判断された場合にステップS6の処理が実行される。
ステップS61においてIS制御部220は、コンプレッサ22の作動状態を停止状態に切り替える。本実施形態ではIS制御部220は、コンプレッサ22の回転速度をゼロに設定する。このように、カソードガス給排装置2の作動状態を停止状態に切り替えることにより、アイドルストップ状態においてコンプレッサ22の消費電力を低減することができる。
ステップS62においてIS制御部220は、アイドルストップ状態において燃料電池システム100から水素の排出を止めるためにパージ弁35を閉じる。このとき、IS制御部220は、アノードガス目標圧力を、燃料電池スタック1の発電に必要となる圧力値に設定する。これにより、アノード調圧弁33は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力が適切に調整される。
ステップS63においてIS制御部220は、スタック電圧が所定の下限値VLよりも低いか否かを判断する。下限値VLは、IS制御から復帰した直後における燃料電池スタック1の応答性が確保されるように予め定められた閾値である。スタック電圧が下限値VL以上である場合には、アイドルストップ制御から復帰し、図5に示したステップS7の処理に進む。
ステップS64においてIS制御部220は、ステック電圧が下限値VLよりも低くなった場合には、カソードガス目標流量を、燃料電池スタック1の電圧を確保するために定められた電圧確保要求流量に設定する。すなわち、IS制御部220は、カソードガス給排装置2の動作状態を供給状態に切り替える。
これにより、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量が電圧確保要求流量となるようにコンプレッサ22が制御される。なお、車両の走行風などによってアノードガス流量が電圧確保要求流量を確保できる状況では、カソード調圧弁26のみを制御してもよい。燃料電池スタック1にカソードガスが供給されると、燃料電池スタック1は発電するのでスタック圧力は上昇する。
ステップS65においてIS制御部220は、スタック電圧が上限値VHに達したか否かを判断する。上限値VHは、燃料電池の高電位劣化を抑制するために定められた閾値である。スタック電圧が上限値VHよりも低い場合には、ステップS64に戻り、スタック電圧が上限値VHに達するまで繰り返し行われる。
ステップS66においてIS制御部220は、スタック電圧が上限値VHに達した場合には、コンプレッサ22の動作状態を停止状態に切り替える。そして、アイドルストップ制御から復帰し、図5に示したステップS7の処理に進む。
このようにIS制御では、コンプレッサ22の消費電力及びアノードガスの消費量を抑制しつつスタック電圧が下がり過ぎないように、燃料電池スタック1を間欠的に発電させる。
本発明の第1実施形態によれば、燃料電池システム100は、燃料電池スタック1にアノードガス(燃料ガス)及びカソードガス(酸化剤ガス)を供給するアノードガス給排装置3及びカソードガス給排装置2を構成するガス供給装置を備える。さらに燃料電池システム100は、燃料電池スタック1から電力を取り出すDC/DCコンバータ6と、燃料電池スタック1に交流電流を供給し、燃料電池スタック1に生じる電圧の交流成分に基づいて、燃料電池スタック1が有するインピーダンスを計測するインピーダンス測定装置8とを備える。
この燃料電池システム100を制御するコントローラ200は、駆動モータ120の要求電力に基づいて燃料電池スタック1の発電状態を制御する通常制御を実行する。燃料電池システム100から駆動モータ120への電力供給が停止されたアイドルストップ(IS)状態になったときには、コントローラ200は、ガス供給装置の作動状態を切り替えるIS制御を実行し、インピーダンス測定装置8から出力される交流抵抗に基づいてIS状態から復帰させる。
このように、燃料電池スタック1の交流抵抗を計測し、その交流抵抗に基づいて燃料電池システム100の運転状態をIS状態から強制的に復帰させることにより、燃料電池スタック1の湿潤状態が湿り過ぎたり、乾き過ぎたりするのを抑制することができる。すなわち、燃料電池スタック1のフラッディングによる発電性能の低下や、電解質膜の乾燥による発電性能の低下を抑制することができる。さらに、復帰後において燃料電池スタック1の湿潤状態を元の状態に戻すのに必要となる操作量を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100は、アイドルストップ状態において燃料電池スタック1の交流抵抗が所定の復帰判定閾値を超えた場合に、燃料電池システム100の制御状態をIS制御から通常制御へ切り替える。
このように、交流抵抗の復帰判定閾値を設定することにより、燃料電池スタック1の湿潤状態を操作するための湿潤制御に要する時間を短くすることが可能となる。また、IS制御からの復帰直後に車両を加速するためにアクセルペダルが踏み込まれた場合であっても、復帰直後の発電によってフラッディングを引き起こすことを回避することができる。
復帰判定閾値は、燃料電池スタック1の発電性能を維持できる範囲内において湿潤状態が維持されるように設定される。本実施形態では、復帰判定閾値は、図4に示したIS湿潤上限値RHやIS湿潤下限値RLである。そして、コントローラ200は、IS状態において、燃料電池スタック1の交流抵抗がIS湿潤上限値RHよりも大きくなった場合には、燃料電池の電解質膜の水分を増やす制御を実行し、交流抵抗がIS湿潤下限値RLよりも小さくなった場合には、電解質膜の水分を減らす制御を実行する。これにより、燃料電池スタック1の湿潤状態を早期に元の状態に戻すことができる。
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100は、DC/DCコンバータ6を介してインバータ110及び駆動モータ120に接続されるバッテリ5と、DC/DCコンバータ6と燃料電池スタック1との間に配置され、燃料電池スタック1から駆動モータ120に向けて電流を流す逆流防止ダイオード7とを備えている。また、インピーダンス測定装置8は、図2に示したように、逆流防止ダイオード7と燃料電池スタック1との間に接続された電源回路83及び84を含む。
そして、コントローラ200は、燃料電池システム100から駆動モータ120に供給される電力が停止されるときには、電源回路83及び84から燃料電池スタック1に交流電流を供給し、燃料電池スタック1のインピーダンスであるスタック交流抵抗を計測する。
これにより、DC/DCコンバータ6から燃料電池スタック1に交流電流を供給する構成に比べて、逆流防止ダイオード7によって交流電流の一部が遮断されることがないので、スタック交流抵抗を精度よく計測することができる。したがって、IS制御中において燃料電池スタック1の湿潤状態を的確に把握することが可能になるので、湿潤状態の変化が大きくなり過ぎないように、的確にIS制御から復帰させることが可能になる。
なお、IS制御から通常制御に復帰することなく停止制御が実行されることも想定される。このような場合には、燃料電池スタック1内の水蒸気が多くなるほど、パージ弁35から排出される液水が増加するので、この液水によってパージ弁35から窒素を排出しにくくなり、燃料電池スタック1から不純物を排出するのに要する時間が長くなってしまう。
図7は、IS制御から停止制御が行われたときの燃料電池スタック1の窒素積算量の変化を示すタイムチャートである。
図7(a)は、燃料電池スタック1におけるアノード極側の窒素積算量を示す図である。図7(b)は、スタック交流抵抗を示す図である。図7(a)及び図7(b)の各図面の横軸は互いに共通の時間軸である。図7(a)及び図7(b)では、燃料電池スタック1が湿っているときの停止制御が実線により示され、燃料電池スタック1が乾燥しているときの停止制御が破線により示されている。なお、便宜的に実線と破線とが重ならないようにずらしている。
時刻t21において、車両キー101がON状態からOFF状態に切り替えられ、これに伴い燃料電池システム100の停止制御が実行される。停止制御において、コントローラ200は、図7(b)に示すように、スタック交流抵抗が目標抵抗RTになるようにコンプレッサ22から燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を大きくする。これと共にコントローラ200は、図7(a)に示すように、パージ弁35を開いて燃料電池スタック1から不純物を排出するIS復帰制御を実行する。これにより、IS制御中に増加した電解質膜の含水量を減少が減少すると共に、IS制御中に燃料電池スタック1に蓄積した不純物が新たなアノードガスに置き換えられる。
図7(a)に示すように、燃料電池スタック1が湿った状態では、燃料電池スタック1が乾いた状態に比べて、パージ弁35から排出される液水が多くなるため、パージ弁35から窒素ガスが排出されにくくなる。
時刻t22において、燃料電池スタック1内の液水が減少し、これに伴ってパージ弁35から窒素ガスが排出されやすくなり、図7(a)に示すように、燃料電池スタック1の窒素積算量が、燃料電池スタック1が乾いた状態のときと同様に速やかに減少する。そして、燃料電池スタック1の窒素積算量が所定の閾値よりも小さくなった時点で停止制御中のパージ処理が完了する。
このように、スタック交流抵抗がIS湿潤下限値RLに達していない状態であっても、IS制御から停止制御に遷移した場合には、パージ弁35から排出される液水が多くなり、燃料電池スタック1から窒素ガスを排出するのに要する時間が長くなってしまう。
(第2実施形態)
この対策として、本発明の第2実施形態の、コントローラ200は、燃料電池スタック1の窒素積算量に応じてIS湿潤下限値RLを変更する。
図8は、本発明の第2実施形態におけるコントローラ200に備えられる窒素積算量推定部260の機能構成の一例を示すブロック図である。
窒素積算量推定部260は、燃料電池スタック1のアノード極に蓄積される窒素ガスの窒素積算量を推定する。窒素積算量推定部260は、窒素流入量演算部261と、膜透過度演算部262と、窒素補正量演算部263と、アノード窒素積算量演算部264とを含む。
窒素流入量演算部261は、スタック目標電流に基づいて、燃料電池スタック1の発電に伴って燃料電池スタック1のアノード極に流入する単位時間あたりの窒素流入量を演算する。例えば、窒素流入量演算部261は、発電に伴い発生する不純物の割合に基づいて予め定められた定数をスタック目標電流に乗算することにより、単位時間あたりの窒素流入量を算出する。
膜透過度演算部262は、燃料電池スタック1の温度に基づいて、燃料電池スタック1における電解質膜の透過度を演算する。例えば、電解質膜の温度と透過度との関係を示す透過度テーブルが膜透過度演算部262に予め記録され、膜透過度演算部262は、燃料電池スタック1の温度を取得すると、透過度テーブルを参照し、取得した温度に関係付けられた透過度を算出する。燃料電池スタック1の温度としては、例えば、入口水温センサ44によって検出されるスタック入口水温と、出口水温センサ45によって検出されるスタック出口水温とを平均した値が用いられる。
窒素補正量演算部263は、膜透過度演算部262によって算出された電解質膜の透過度と、圧力センサ24によって検出されるカソードガス圧力とに基づいて、燃料電池スタック1のカソード極からアノード極に流入する窒素ガスの補正量を演算する。例えば、窒素補正量演算部263は、電解質膜の透過度にカソードガス圧力を乗算することにより、補正量を算出する。なお、電解質膜の透過度は電解質膜の湿潤状態に応じて変化する。そのため、窒素補正量演算部263は、スタック交流抵抗に応じて補正量を補正するものであってもよい。
アノード窒素積算量演算部264は、窒素流入量演算部251からの窒素流入量と、窒素補正量演算部263からの補正量とを加算し、加算した値を積算することにより、燃料電池スタック1の窒素積算量を演算する。アノード窒素積算量演算部254は、演算した窒素積算量を制御切替部240に出力する。
制御切替部240は、燃料電池スタック1の窒素積算量を取得すると、その窒素積算量に応じてIS湿潤下限値RLを変更する。本実施形態では、制御切替部240は、窒素積算量が大きくなるほど、IS湿潤下限値RLを段階的に大きくする。
なお、本実施形態では燃料電池スタック1の窒素積算量を算出したが、燃料電池スタック1に窒素濃度を検出するセンサを設け、そのセンサの検出値を用いてIS湿潤下限値RLを変更するようにしてもよい。
図9は、燃料電池スタック1の窒素積算量に応じてIS湿潤下限値RLを大きくした場合においてIS復帰制御に遷移したときの燃料電池スタック1の状態変化を示すタイムチャートである。
図9(a)及び図9(b)には、変更後のIS湿潤下限値RL_cに達した場合においてIS復帰制御を実行したときの燃料電池スタック1の状態が実線により示されている。また、図7(a)及び図7(b)の実線で示した燃料電池スタック1の状態が破線により示されている。
時刻t31において、図9(b)に示すように、スタック交流抵抗が変更後のIS湿潤下限値RL_cに達すると共に、車両キー101がON状態からOFF状態に切り替えられ、IS復帰制御が実行される。
本実施形態では、燃料電池スタック1の窒素積算量が大きくなるほど、IS湿潤下限値RLが大きくなる。これにより、図9(a)に示すように、IS制御からIS復帰制御に遷移した場合に、燃料電池スタック1内の窒素ガスをアノードガスに置き換えるのに要する時間を短縮できる。
例えば、燃料電池スタック1の窒素積算量に応じてIS湿潤下限値RLを大きくすることにより、停止制御を開始してから完了するまでの停止時間を、IS湿潤下限値RLを固定したときの停止時間に比べて1/2以下の時間まで短縮することができる。
図10は、本実施形態における燃料電池システム100の制御方法についての処理手順例を示すフローチャートである。
本実施形態では、図5に示した各処理に加えて、ステップS11及びS12の処理が新たに実行される。また図5に示したステップS7の処理に代えてステップS7aの処理が実行される。ここでは、ステップS7a、S11、及びS12の各処理についてのみ説明し、他の処理については、図5に示した処理と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。
ステップS11において窒素積算量推定部260は、図8で述べたように、スタック目標電流に基づいて、燃料電池スタック1の窒素積算量を推定する。そして、制御切替部240は、窒素積算量推定部260から窒素積算量を取得する。
ステップS12において制御切替部240は、推定された窒素積算量に応じてIS湿潤下限値RLを変更する。例えば、制御切替部240は、燃料電池スタック1の窒素積算量が所定の値よりも大きくなった場合には、IS湿潤下限値RLを大きくする。
ステップS7aにおいて制御切替部240は、スタック交流抵抗が変更後のIS湿潤範囲内にあるか否かを判断する。そして、スタック交流抵抗が、変更後のIS湿潤下限値RL_c以上であり、かつ、IS湿潤上限値RH以下である場合には、ステップS6の処理に戻り、スタック交流抵抗が変更後のIS湿潤下限値RL_cよりも小さい場合、又は、スタック交流抵抗がIS湿潤上限値RHよりも大きい場合には、ステップS8の処理に進む。
本発明の第2実施形態によれば、コントローラ200は、ステップS11において燃料電池スタック1の窒素積算量を取得し、ステップS12においてその窒素積算量に応じて復帰判定閾値であるIS湿潤下限値RLを変更する。コントローラ200の制御切替部240は、燃料電池スタック1の窒素積算量が大きいときには、燃料電池スタック1の窒素積算量が小さいときに比べて、IS湿潤下限値RLを大きくする。
これにより、IS制御から停止制御に遷移した場合において、IS制御中に燃料電池スタック1に蓄積された窒素ガスをアノードガスに置き換えるのに要する時間を短縮することができる。さらに、燃料電池スタック1の湿潤状態を停止時の目標状態に操作するのに要する時間についても短縮することができる。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態における制御方法についての処理手順例を示すフローチャートである。
本実施形態では、図10に示した各処理に加えて、ステップS13の処理が新たに実行される。ここでは、ステップS13の処理についてのみ説明し、他の処理については図11に示した各処理と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。
ステップS5でIS制御が実行可能であると判断された場合には、ステップS13の処理に進む。
ステップS13において制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲にあるか否かを判断する。IS移行許可範囲は、IS制御への移行を許可するか否かを判定するための特定の閾値であり、通常制御からIS制御に遷移した直後にスタック交流抵抗がIS湿潤範囲を超えないように予め設定される。なお、IS移行許可範囲は、IS湿潤範囲と同じ範囲でもよいが、IS湿潤範囲と異なる範囲であってもよい。
制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲内にある場合には、燃料電池システム100の制御状態を通常制御からIS制御に切り替える。一方、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲外にある場合には、制御切替部240は、IS制御に切り替えずに、ステップS9の処理に進む。すなわち、制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲を超えている場合には、IS制御への切替えを禁止(停止)する。
このように、通常制御からIS制御に切り替える前にスタック交流抵抗を確認することにより、IS制御を開始して直ぐにIS制御から復帰するような事態を回避することができる。また、IS移行許可範囲を設定することにより、IS制御への切替え後にスタック交流抵抗をIS湿潤範囲に維持することが容易になる。
なお、図11ではステップS5の処理後にステップS13の処理を実行したが、ステップS5の処理前であってステップS4の処理後にステップS13の処理を実行するようにしてもよい。また、ステップS11及びS12の各処理を省略してもよい。
図12は、本実施形態における通常制御からIS制御への切替え手法を示すタイムチャートである。
図12(a)から図12(d)までの各図面の横軸は、互いに共通の時間軸であり、各図面の縦軸は、図4(a)から図4(d)までの各図面の縦軸と同じである。
図12(a)に示すように、IS制御に移行する時刻t1よりも前において、IS移行許可範囲の下限値RL_in及び上限値RH_inが設定されている。この例では、時刻t1から時刻t4までのIS制御中にスタック交流抵抗が小さくなるため、IS移行許可範囲はIS湿潤範囲よりも若干高く設定されている。制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲内に収まっていることを確認する。
このようにIS移行許可範囲を設定することにより、IS制御に遷移する直前で既にスタック交流抵抗がIS湿潤下限値RLよりも小さいときにはIS制御への切替えを禁止することが可能になる。これにより、通常制御からIS制御に切り替えてから直ぐにIS制御から通常制御に復帰させるような無駄な切替え処理を削減することができる。
本発明の第3実施形態によれば、制御切替部240は、燃料電池システム100の運転状態がアイドルストップ状態になる前において、スタック交流抵抗がIS移行許可範囲を超えている場合には、IS制御への切替えを禁止する。これにより、IS制御への無駄な切替えを抑制することができると共に、IS制御中にスタック交流抵抗をIS湿潤範囲内に維持しやすくなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、IS制御部220は、アイドルストップ状態において燃料電池スタック1へのカソードガスの供給を継続するものであってもよい。この場合には、制御切替部240は、スタック交流抵抗がIS湿潤上限値RHよりも大きくなったときにアイドルストップ状態から復帰させる。このような場合であっても、アイドルストップ状態から燃料電池スタック1の湿潤状態を目標状態に復帰させるのに要する時間を短くすることができる。なお、この場合にはアノード調圧弁33は閉じられてもよく開かれてもよい。
なお、上記各実施形態は、適宜組み合わせ可能である。