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JP2017039983A - 継目無鋼管及びその製造方法 - Google Patents

継目無鋼管及びその製造方法 Download PDF

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JP2017039983A JP2015163106A JP2015163106A JP2017039983A JP 2017039983 A JP2017039983 A JP 2017039983A JP 2015163106 A JP2015163106 A JP 2015163106A JP 2015163106 A JP2015163106 A JP 2015163106A JP 2017039983 A JP2017039983 A JP 2017039983A
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健史 三木
Takeshi Miki
健史 三木
友彰 浜口
Tomoaki HAMAGUCHI
友彰 浜口
岡田 浩一
Koichi Okada
浩一 岡田
崇 中島
Takashi Nakajima
崇 中島
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Abstract

【課題】強度及び靭性に優れた継目無鋼管を提供する。【解決手段】本実施形態の継目無鋼管は、質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.01%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は9.0以上であり、旧オーステナイト結晶粒は整粒である。【選択図】図2

Description

本発明は、鋼管及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、継目無鋼管及びその製造方法に関する。
火力発電等に利用されるボイラは高温高圧の蒸気流を発生する。そのため、水壁管や管よせ等のボイラを構成する鋼管(以下、ボイラ用鋼管と称する)として使用される継目無鋼管は優れた強度を要求される。
ボイラ用鋼管に使用される鋼は使用温度域により異なる。具体的には、低温域では炭素鋼、中低温域では低Crフェライト鋼に代表される低合金鋼、中高温域では高Crフェライト鋼が使用される。
低合金鋼は、高Crフェライト鋼よりもクリープ強度は劣るものの、安価である。さらに高Crフェライト鋼よりも優れた熱伝導性及び溶接性を有する。
しかしながら、高い強度を必要とするボイラ部分に使用する継目無鋼管を低合金鋼で製造する場合、強度を得るためにボイラ用鋼管の肉厚を厚くしなければならない。肉厚を厚くすれば熱伝導性が低下し、かつ、製造コストも上がる。ボイラの熱効率を向上させ、かつ、製造コストを抑えるためには、低合金鋼からなる継目無鋼管の強度の向上が必要である。
ボイラ用の低合金鋼はたとえば、米国特許第5573605号明細書(特許文献1)に開示されている。特許文献1のボイラ用耐熱鋼は、重量%で、C:0.050〜0.095%、Si:0.15〜0.45%、Mn:0.30〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.020%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.90〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、B:0.0015〜0.0070%、及び、N:0.01%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、980〜1040℃で30〜60分焼ならしを実施し、かつ、730〜760℃で1時間以上焼戻しを実施する。これにより、クリープ強度を高め、かつ、溶接後の硬化を抑制できる、と特許文献1には記載されている。
米国特許第5573605号明細書
ところで、ボイラは高い熱応力を受ける。そのため、ボイラに用いられる継目無鋼管は高い強度を有することが求められるが、優れた靭性も兼ね備えていればさらに好ましい。特許文献1に記載の低合金鋼は優れた鋼管ではあるものの、靭性については検討されていない。
本発明の目的は、強度及び靭性に優れた継目無鋼管及びその製造方法を提供することである。
本実施形態による継目無鋼管は、質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.01%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は9.0以上であり、旧オーステナイト結晶粒は整粒である。
本実施形態による継目無鋼管の製造方法は、質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.01%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する素管を製造する工程と、素管に対して、300℃〜A1変態点以下の熱処理温度で熱処理を実施する工程と、熱処理後の素管に対して焼ならしを実施する工程とを備える。
本実施形態による継目無鋼管は、強度及び靭性に優れる。本実施形態による製造方法は、強度及び靭性に優れた継目無鋼管を製造できる。
図1は、従前の製造方法により製造された低合金継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図2は、本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図3は、本実施形態の製造方法中の熱処理工程でのヒートパターンの模式図である。 図4は、図3と異なる他の本実施形態のヒートパターンの模式図である。 図5は、図3及び図4と異なる他の本実施形態のヒートパターンの模式図である。 図6は、従前の低合金鋼の製造方法中の熱処理工程でのヒートパターンの模式図である。 図7(a)及び(b)は、実施例の試験番号1の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図8(a)及び(b)は、実施例の試験番号2の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図9(a)及び(b)は、実施例の試験番号3の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図10(a)及び(b)は、実施例の試験番号4の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図11(a)及び(b)は、実施例の試験番号5の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図12(a)及び(b)は、実施例の試験番号6の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図13(a)及び(b)は、実施例の試験番号7の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図14(a)及び(b)は、実施例の試験番号8の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図15(a)及び(b)は、実施例の試験番号9の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。 図16(a)及び(b)は、実施例の試験番号10の継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。
本発明者らは初めに、特許文献1に代表される従前のボイラ用低合金鋼を製造し、ミクロ組織を調査した。具体的には、表1に示す化学組成の溶鋼を製造した。
溶鋼を用いて連続鋳造して丸ビレットを製造した。丸ビレットをマンネスマン法により穿孔圧延して素管を製造した。素管に対して次のヒートパターンの熱処理(従前の熱処理、後述の図6参照)を実施した。具体的には、素管に対して焼ならしを実施した。焼ならしでの熱処理温度を1000℃とし、保持時間を10分とした。焼ならし後の素管に対して焼戻しを実施した。焼戻しでの熱処理温度を750℃とし、保持時間を60分とした。以上の工程により、直径が50.8mm、肉厚が8.0mmの継目無鋼管を製造した。
製造された継目無鋼管の肉厚中央位置(表面から径方向に肉厚/2の位置)からサンプルを採取した。サンプルの表面のうち、継目無鋼管の軸方向に垂直な表面を観察面とした。観察面を機械研磨した後、観察面をナイタールでエッチングした。エッチング後、100倍及び500倍の光学顕微鏡でミクロ組織観察を実施した。
図1は、上記方法で製造された継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。ミクロ組織は主としてベイナイトからなり、残部は残留オーステナイトであった。後述の測定方法により、この継目無鋼管の旧オーステナイト粒の結晶粒度番号を測定した結果、5.5であった。さらに、図1を参照して、ミクロ組織中の旧オーステナイト粒は、粗粒と細粒とが混在する混粒であった。
混粒の場合、降伏強度及び靭性等の機械特性が低下する。低合金鋼のミクロ組織が細粒であり、かつ、整粒であれば、従前のボイラ用低合金鋼よりも優れた強度及び靭性が得られると考えられる。
本発明者らは、焼ならし前にA1変態温度以下での熱処理(以下、特定熱処理という)を実施すれば、従前の低合金鋼よりも整粒のミクロ組織が得られると考えた。そこで、一例として次の熱処理条件で継目無鋼管を製造した。
具体的には、表1に示す化学組成の素管を準備した。素管に対して、次のヒートパターン(後述の図5のヒートパターン)の熱処理を実施した。具体的には、初めに、素管に対して1000℃で10分保持する焼ならしを実施した。次に、A1変態温度以下の750℃の熱処理温度で60分保持する特定熱処理を実施した。特定熱処理後、再び1000℃で10分保持する焼ならしを実施した。焼ならし後の素管に対して、750℃で60分保持する焼戻しを実施した。以上の工程により、直径が50.8mm、肉厚が8.0mmの継目無鋼管を製造した。
図2は、上記製造方法(焼ならし前に特定熱処理を実施する製造方法)で得られた継目無鋼管のミクロ組織写真画像である。図1及び図2を比較して、特定熱処理を含む製造方法で製造された継目無鋼管では(図2)、従前(図1)と比較して、旧オーステナイト粒が比較的均一となり、整粒となった。さらに、旧オーステナイト結晶粒度番号は9.5であり、従前の低合金鋼よりも細粒となった。
そこで、図1及び図2のミクロ組織を有する継目無鋼管の機械特性を調査した。具体的には、次の引張試験及びシャルピー衝撃試験を実施して、引張特性及び靭性を評価した。
引張試験は次の方法で実施した。継目無鋼管から、引張試験片を作製した。引張試験片を用いて、常温(25℃)、大気中で引張試験を実施して、降伏強度YS(MPa)、引張強度TS(MPa)、全伸びEL(%)、絞りRA(%)を求めた。
シャルピー衝撃試験は、次の方法で実施した。継目無鋼管からASTM370に準拠したサブサイズ試験片(10mm×5mm×55mm、2mmVノッチ)を作製した。作製された試験片を用いて、ASTM370に準拠したシャルピー衝撃試験を実施し、−40℃での吸収エネルギ(J)及び脆性破面率(%)を求めた。
引張試験及びシャルピー衝撃試験で得られた結果を表2に示す。
表2を参照して、細粒及び整粒である図2の継目無鋼管では、混粒である図1の継目無鋼管よりも、降伏強度YS、引張強度TS、全伸びEL及び絞りRAがいずれも高く、引張特性に優れた。さらに、図2の継目無鋼管では、図1の継目無鋼管よりも、−40℃での吸収エネルギ及び脆性破面率が高く、靭性に優れた。
以上のとおり、主としてベイナイトからなる低合金鋼の継目無鋼管において、旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号が9.0以上であり、かつ、整粒であれば、優れた強度及び靭性が得られる。そして、このようなミクロ組織の継目無鋼管は、素管に対して上述の特定熱処理を実施した後焼ならしを実施することにより得られる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態の継目無鋼管は、質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.01%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は9.0以上であり、旧オーステナイト結晶粒は整粒である。
好ましくは、上述の継目無鋼管の肉厚は20mm以下である。この場合、より微細かつ細粒の組織が得られやすい。
本実施形態による継目無鋼管の製造方法は、質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.01%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する素管を製造する工程と、素管に対して、300℃〜A1変態点以下の熱処理温度で熱処理を実施する工程と、熱処理後の素管に対して焼ならしを実施する工程とを備える。
この場合、上述の強度及び靭性に優れた上述の継目無鋼管を製造することができる。
好ましくは、焼ならしを実施する工程では、熱処理後の素管を熱処理温度から昇温してA3変態温度以上として、焼ならしを実施する。
この場合、特定熱処理において、素管を冷却することなく、特定熱処理の熱処理温度から、焼ならしの熱処理温度に昇温する。これにより、継目無鋼管の旧オーステナイト結晶粒がさらに微細になる。
好ましくは、上述の素管の肉厚は20mm以下である。この場合、継目無鋼管において、より微細かつ細粒の組織が得られやすい。
以下、本実施形態の継目無鋼管及びその製造方法について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態の継目無鋼管の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.06〜0.10%
炭素(C)は、Ti及びV等と結合して炭窒化物を形成し、強度を高める。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、溶接施工性が低下する。したがって、C含有量は0.06〜0.10%である。
Si:0.20〜0.30%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、靭性が低下する。Si含有量が高すぎればさらに、高温強度も低下する。したがって、Si含有量は0.20〜0.30%である。
Mn:0.46〜0.70%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、高温強度が低下する。したがって、Mn含有量は0.46〜0.70%である。
P:0.020%以下
燐(P)は、鋼に不可避に含有される不純物である。Pは、溶接時に高温割れを引き起こす。Pはさらに、鋼の延性及び靭性を低下する。したがって、P含有量は0.020%以下である。なお、P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.010%以下
硫黄(S)は、鋼に不可避に含有される不純物である。Sは鋼の延性及び靭性を低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。なお、S含有量はなるべく低い方が好ましい。
N:0.01%以下
窒素(N)は鋼に不可避に含有される不純物である。Nは焼入れ性を低下して、ベイナイトの生成を阻害する。したがって、N含有量は0.01%以下である。なお、N含有量はなるべく低い方が好ましい。
Al:0.02%以下
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Al含有量が高すぎれば、鋼中に非金属介在物が多数生成する。非金属介在物は鋼の高温強度を低下する。したがって、Al含有量は0.02%以下である。Al含有量の好ましい下限は0.003%である。上記Al含有量はいわゆる全Al(T.Al)の含有量を意味する。
Cr:2.20〜2.60%
クロム(Cr)は鋼の耐酸化性及び耐食性を高める。Crはさらに、鋼の焼入れ性を高めて鋼の強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、溶接施工性が低下する。したがって、Cr含有量は2.20〜2.60%である。Cr含有量の好ましい下限は2.40%である。
Mo:0.91〜1.10%
モリブデン(Mo)は鋼を固溶強化する。Moはさらに、炭窒化物を形成して鋼を析出強化する。Mo含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、粗大な析出物を形成して鋼の靭性を低下する。したがって、Mo含有量は0.91〜1.10%である。Mo含有量の好ましい上限は1.00%である。
V:0.20〜0.30%
バナジウム(V)はMoと同様に、炭窒化物を形成して鋼を析出強化する。V含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、V含有量が高すぎれば、鋼の靭性が低下する。したがって、V含有量は0.20〜0.30%である。
Ti:0.05〜0.10%
チタン(Ti)はMo及びVと同様に、炭窒化物を形成して鋼を析出強化する。Tiはさらに、Nと結合することで、BNの形成を抑制する。これにより、後述のとおりBが鋼に固溶して焼入れ性が高まる。Ti含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、鋼の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0.05〜0.10%である。Ti含有量の好ましい上限は0.08%である。
B:0.0015〜0.0070%
ボロン(B)は鋼に固溶して鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。B含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、B含有量が高すぎれば、鋼の靭性が低下する。したがって、B含有量は0.0015〜0.0070%である。B含有量の好ましい下限は0.0030%である。また、B含有量の好ましい上限は0.0060%である。
本実施の形態による継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、継目無鋼管を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の継目無鋼管に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[ミクロ組織]
本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織は、主としてベイナイトを含有し、残部は残留オーステナイト、又は、フェライト及び残留オーステナイトからなる。ここで、「主として」とは、ミクロ組織中のベイナイトの体積率が90%以上であることを意味する。残留オーステナイトの体積率は、0.5%未満である。
ミクロ組織は次の方法で特定する。継目無鋼管の肉厚中央位置(表面から肉厚/2の位置)においてサンプルを採取する。サンプルの表面うち、継目無鋼管の軸方向と垂直な表面を観察面とする。観察面を機械研磨した後、ナイタールでエッチングする。光学顕微鏡を用いて、100倍及び500倍で観察し、相を特定する。
[旧オーステナイト結晶粒について]
継目無鋼管のミクロ組織において、旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は9.0以上であり、かつ、整粒である。
旧オーステナイト結晶粒度番号の測定及び整粒の判断は、次の方法に基づく。上記継目無鋼管の肉厚中央位置から、顕微鏡観察用の試験片を採取する。採取された試験片を用いて、JIS G0551(2013)に規定される結晶粒度の顕微鏡試験方法を実施し、オーステナイト結晶粒度番号を評価する。具体的には、試験片の表面を、ナイタールを用いて腐食し、表面の旧オーステナイトの結晶粒界を現出させる。腐食された表面上の10視野において、各視野の結晶粒度番号を求める。各視野の面積は、1.53mm2である。JIS G0551(2013)の7.2に規定された結晶粒度標準図との比較により、各視野における結晶粒度番号を評価する。10視野で評価した粒度番号の平均を、旧オーステナイト結晶粒度番号と定義する。
本明細書において、整粒とは、上記10視野の各視野において、最大頻度を有する粒度番号の粒から3以上異なった粒の総面積率が20%未満である状態、又は、視野間において、3以上異なる結晶粒度番号の視野が存在しない状態を意味する。
整粒の判定は次の方法で行う。各視野において、最大頻度を持つ粒度番号の結晶粒を特定する。特定された粒度番号から3以上異なる粒度番号の結晶粒の総面積率ARを特定する。各視野において総面積率ARが20%未満である、又は、視野間において3以上の異なる結晶粒度番号の視野が存在しない場合、その継目無鋼管のミクロ組織内の旧オーステナイト粒が整粒であると判断する。一方、総面積率ARが20%以上となる視野が1つでも存在する場合、又は、視野間において3以上の異なる結晶粒度番号の視野が存在する場合、その継目無鋼管のミクロ組織内の旧オーステナイト粒は混粒であると判断する。
結晶粒度番号が9.0未満であれば、強度及び靭性が低下する。さらに、結晶粒度番号が9.0以上であっても、混粒であれば、強度及び靭性が低下する。本実施形態の継目無鋼管では、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号が9.0以上であり、かつ、整粒である。そのため、優れた強度及び靭性が得られる。
[その他]
本実施形態の継目無鋼管の好ましい肉厚は、20mm以下である。継目無鋼管のサイズは、継目無鋼管が適用される用途に基づいて決定される。しかしながら、肉厚が20mm以下であれば、より微細かつ細粒の組織が得られやすい。さらに好ましい肉厚は10mm以下である。
[製造方法]
本実施形態の継目無鋼管の製造方法の一例は次のとおりである。本実施形態の継目無鋼管の製造方法は、素管を製造する工程(素管製造工程)と、製造された素管に対して特定熱処理を実施する工程(特定熱処理工程)と、特定熱処理工程後に焼ならしを実施する工程(焼ならし工程)とを備える。以下、各工程について説明する。
[素管製造工程]
初めに、素材に対して熱間加工を実施して素管を製造する。たとえば、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼から素材を製造する。素材は鋼塊又は鋼片である。鋼片はたとえば、スラブ、ブルーム、ビレット等である。たとえば、連続鋳造法により溶鋼を鋼片にする。又は、造塊法により溶鋼を鋼塊にする。スラブ、ブルーム又は鋼塊を熱間加工してビレットを製造してもよい。
準備された素材に対して熱間加工を実施し、素管を製造する。熱間加工では初めに、素材を加熱する。加熱後、素材に対して熱間加工を実施して素管を製造する。熱間加工はたとえば、マンネスマン法による穿孔圧延である。上述のとおり、継目無鋼管の好ましい肉厚は20mm以下であるため、製造される素管の好ましい肉厚も20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
[特定熱処理工程及び焼ならし工程]
製造された素管に対して、熱処理(特定熱処理及び焼ならし)を実施する。本実施形態では、焼ならしを実施する前に、300℃〜A1変態温度の熱処理温度で熱処理を実施する。本明細書では、300℃〜A1変態温度の熱処理温度で実施する熱処理を、「特定熱処理」と定義する。焼ならし前に特定熱処理を実施することにより、継目無鋼管の旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0以上となり、かつ、整粒となる。
特定熱処理では、上述のとおり、熱処理温度を300℃〜A1変態温度にする。熱処理温度がA1変態温度を超えれば、二相域温度での熱処理となる。この場合、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0以上となっても、混粒になりやすくなる。一方、熱処理温度が300℃未満であれば、結晶粒度番号が9.0未満となる。特定熱処理での熱処理温度が300℃〜A1変態温度であれば、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0以上となり、かつ、整粒となる。特定熱処理において、上記熱処理温度での保持時間は特に限定されないが、好ましい保持時間は10分以上である。保持時間の上限は特に限定されないが、保持時間を長くすると、粒成長が発生するため、たとえば、60分である。
特定熱処理後、周知の焼ならしを実施する。焼ならしでは、特定熱処理後の素管をA3変態温度以上で均熱し、その後、空冷する。
以上の工程で製造された継目無し鋼管のミクロ組織は、主としてベイナイトからなり、残留オーステナイトの体積率は0.5%未満になる。ミクロ組織ではさらに、旧オーステナイト結晶粒度番号が9.0以上となり、かつ、旧オーステナイト粒が整粒になる。
[焼戻し工程]
本実施形態ではさらに、焼ならし工程後に、焼戻し工程を実施してもよい。焼戻しは周知の条件で実施すればよい。焼戻し温度はたとえば、500℃〜A1変態温度である。焼戻しにより、鋼中に微細な炭窒化物をさらに生成でき、鋼の強度をさらに高めることができる。
[熱処理のヒートパターンについて]
上記条件を満たせば、特定熱処理工程及び焼ならし工程のヒートパターンは特に限定されない。図3〜図5は、本実施形態の製造方法における、熱処理工程(特定熱処理工程、焼ならし工程及び焼戻し工程)のヒートパターンを示す模式図である。図3では、素管に対して特定熱処理SHを実施し、その後、常温まで空冷する。その後、素管を常温から加熱して、周知の焼ならしSNを実施する。焼ならしSN後の素管に対して(必要に応じて)周知の焼戻しSTを実施する。
図3に代えて、図4のヒートパターンを実施してもよい。図4では、素管に対して特定熱処理SHを実施する。そして、特定熱処理SH後の素管を冷却せずに、特定熱処理SHでの熱処理温度からさらに昇温してA3変態温度以上に加熱し、焼ならしSNを実施する。焼ならしSN後の素管に対して(必要に応じて)周知の焼戻しSTを実施する。
さらに、図5のヒートパターンを実施してもよい。図5では、焼ならしSN、焼戻しSTを交互に2回以上実施する。この場合、最終の焼ならしSN前の焼戻しSTが、特定熱処理SHの役割を果たす。要するに、最終の焼ならしの前に特定熱処理を実施すれば、ヒートパターンは特に限定されない。
好ましくは、図4に示すヒートパターンで特定熱処理及び焼ならしを実施する。この場合、焼きならし前の特定熱処理時に炭化物や窒化物が析出し、これらが後続の焼きならし処理における昇温時にオーステナイト変態の核となってオーステナイト結晶粒が微細化する。そのため、旧オーステナイト粒が整粒になるだけでなく、結晶粒度番号が10以上となる。その結果、強度及び靭性がさらに優れる。
表1に示す化学組成の素管を製造した。具体的には、表1に示す化学組成の溶鋼を製造した。溶鋼を用いて連続鋳造法により丸ビレットを製造した。丸ビレットを用いて、マンネスマン法により複数の素管を製造した。各素管の直径は50.8mmであり、肉厚は8.0mmであった。
製造された複数の素管に対して、表3に示すヒートパターンで熱処理を実施して、継目無鋼管を製造した。
表3中の「ヒートパターン」欄には、対応する試験番号で適用した熱処理のヒートパターンが記載されている。たとえば、試験番号1では、図4に示すヒートパターンが実施されたことを意味する。「特定熱処理」欄には、特定熱処理での熱処理温度(℃)及び保持時間(分)が記載されている。同様に、「焼ならし」欄及び「焼戻し」欄においても、熱処理温度(℃)及び保持時間(分)が記載されている。
なお、図4のヒートパターンを実施した試験番号1〜6では、焼戻しを実施しなかった。また、試験番号10では、図5に示すヒートパターンを実施した。1回目及び2回目の焼ならしの熱処理温度はいずれも1000℃であり、保持時間はいずれも60分であった。さらに、1回目の焼戻しは特定熱処理に相当した。特定熱処理の熱処理温度は750℃であり、保持時間は60分であった。最終の焼戻しの熱処理温度も750℃であり、保持時間は60分であった。
熱処理後の継目無鋼管に対して、次の測定を実施した。
[結晶粒度番号及び整粒/混粒判定]
上述の方法に基づいて、各試験番号の肉厚中央位置からサンプルを採取し、サンプルを用いて、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号を求めた。さらに、上記方法に基づいて、整粒又は混粒の判定を行った。求めた結晶粒度番号及び整粒/混粒判定結果を表3に示す。
[試験結果]
表3に試験結果を示す。さらに、図7〜図16に、試験番号1〜10の継目無鋼管のミクロ組織写真画像を示す。各図の(a)は100倍の写真画像であり、(b)は500倍の写真画像である。
表3及び図7〜図16を参照して、試験番号1〜5、9及び10ではいずれも、化学組成が適切であり、製造方法も適切であった。そのため、継目無鋼管の組織中の旧オーステナイト結晶粒度番号はいずれも9.0以上であり、旧オーステナイト粒はいずれも整粒であった。
特に、図4のヒートパターンの熱処理が適用された試験番号1〜5は、その他のヒートパターンの熱処理が適用された試験番号9及び10と比較して、結晶粒度番号が大きくなり、細粒となった。
一方、試験番号6では、特定熱処理での熱処理温度が高すぎ、A1点を超えた。そのため、結晶粒度番号は9.0以上であったものの、混粒であった。
試験番号7及び8は、従前の熱処理方法(焼ならし及び焼戻し)を実施した。その結果、ミクロ組織において、結晶粒度番号は9.0未満であり、さらに、混粒であった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
本実施形態による継目無鋼管は、強度及び靭性が必要な用途に利用可能であり、特に水壁管や管よせ等のボイラ用部品に用いられるボイラ用継目無鋼管として利用可能である。
N 焼ならし
H 特定熱処理
T 焼戻し

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.06〜0.10%、
    Si:0.20〜0.30%、
    Mn:0.46〜0.70%、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.01%以下、
    Al:0.02%以下、
    Cr:2.20〜2.60%、
    Mo:0.91〜1.10%、
    V:0.20〜0.30%、
    Ti:0.05〜0.10%、及び、
    B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    旧オーステナイト結晶粒の結晶粒度番号は9.0以上であり、前記旧オーステナイト結晶粒は整粒である、継目無鋼管。
  2. 請求項1に記載の継目無鋼管であって、
    前記継目無鋼管の肉厚は20mm以下である、継目無鋼管。
  3. 質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.20〜0.30%、Mn:0.46〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.02%以下、Cr:2.20〜2.60%、Mo:0.91〜1.10%、V:0.20〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、及び、B:0.0015〜0.0070%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する素管を製造する工程と、
    前記素管に対して、300℃〜A1変態点以下の熱処理温度で熱処理を実施する工程と、
    熱処理後の前記素管に対して焼ならしを実施する工程とを備える、継目無鋼管の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法であって、
    前記焼ならしを実施する工程では、熱処理後の前記素管を前記熱処理温度から昇温してA3変態温度以上として、前記焼ならしを実施する、製造方法。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の製造方法であって、
    前記素管の肉厚は20mm以下である、製造方法。
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