JP2016540335A - １つ又は複数の向上した透かしを有するセキュリティシート又はセキュリティ文書 - Google Patents

Abstract

本発明は、１つ又は複数の向上した透かしを有するセキュリティシート又は文書全般に関する。一例示実施形態では、本発明のセキュリティシート又は文書は、１つ又は複数の透かしを含む紙層、及び１つ又は複数の透かしの上側又はオモテ部分を少なくとも部分的に覆うマイクロ光学セキュリティデバイス（例えばパッチ又はスレッド）から構成される単層紙である。上に重なっているパッチ又はスレッドは、１つ又は複数の透かしの耐久性を高め、１つ又は複数の透かし、更にはその中にある繊維密度減少領域をより大きくすることが可能となり、更には繊維密度減少領域をより薄くすることも可能となる。好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、１つ又は複数の透かしデザインと調和又は連結している１つ又は複数の合成イメージを投影する。より好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、特に透過で測定される場合に、向上したＩＲ輝度の形態の機械検出／読み取り可能な特徴を提供する。容易に理解されるように、本発明のセキュリティシート又は文書は、大きく改善された偽造防止性を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、２０１１年２月２３日出願の米国特許出願第１２／９９７，３９０号の一部継続出願であり、２０１３年１２月３日出願の米国特許仮出願第６１／９１１，１４１号、２０１３年１２月４日出願の米国特許仮出願第６１／９１１，８３１号、２０１３年１２月４日出願の米国特許仮出願第６１／９１１，８８５号、及び２０１４年１月６日出願の米国特許仮出願第６１／９２４，０００号の利益及び優先権を主張するものであり、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。

本発明は概して、１つ又は複数の向上した透かしを有するセキュリティシート又はセキュリティ文書に関する。

セキュリティ紙は、銀行紙幣（ｂａｎｋｎｏｔｅｓ）、パスポート、及び切手等のセキュリティ文書を製造するために用いられる。従来から、広く様々なセキュリティ的特徴が、このようなセキュリティ紙中に組み込まれるか、又はその表面に付与されている。このようなセキュリティ的特徴の公知の例としては、透かし、埋設セキュリティスレッド、窓明きセキュリティスレッド、及び蛍光顔料等が挙げられる。

透かしは、暗い背景上で透過光又は反射光によって観察したときに、明／暗の様々な陰影として現れる紙中の認識可能なイメージ又はパターンであり、何百年にもわたって、セキュリティ文書の偽造の防止をもたらしてきた。実際、透かし及びその魅力的なデザイン（ｅｎｇａｇｉｎｇ ｄｅｓｉｇｎｓ）は、銀行紙幣等のセキュリティ文書の認証のために一般市民が利用可能である最も容易に認識されるセキュリティ的特徴である。

しかし、透かしを入れたセキュリティ文書の安全性又は偽造防止性を改善することが継続して求められている。

本発明は、向上され、従ってより高い偽造防止性を有する透かしを、紙及び紙様材料中に提供することによって、この必要性に対処するものである。具体的には、本発明は、１つ又は複数の向上した透かしを有するセキュリティシート又はセキュリティ文書を提供するものであって、上記シート又は文書は、
１つ又は複数の透かしを含む繊維性シート材料であって、各透かしは、上記繊維性シート材料の周囲領域と比べて繊維密度が減少した１つ又は複数の第一の領域と、上記シート材料の周囲領域と比べて繊維密度が類似した又は増加した１つ又は複数の第二の領域と、を有し、各透かしは、上側又はオモテ部分と下側又はウラ部分とを有する、繊維性シート材料；並びに
上記１つ又は複数の透かしを、視覚的に向上すること、機械検出／読み取り可能とすること、又はその両方によって、上記１つ又は複数の透かしを向上する手段、
を含み、
上記手段は：
ａ）上記１つ又は複数の透かしの上記オモテ部分又は上記ウラ部分を少なくとも部分的に覆い、且つバンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、又はパッチの形態である１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素；
ｂ）上記１つ又は複数の透かしの上記１つ又は複数の第一の領域及び上記１つ又は複数の第二の領域の一方若しくは両方の上又は中に含まれ、
ｉ．認識可能又は識別可能である識別マーク（ｉｎｄｉｃｉａ）；並びに
ｉｉ．着色性及び／又は機械検出若しくは機械読み取り可能である１つ又は複数の物質であって、限定されないが、紫外線（ＵＶ）若しくは赤外線（ＩＲ）反応性、発光性（すなわち、蛍光性若しくはりん光性）、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、又は磁性のセキュリティ繊維、タガント（ｔａｇｇａｎｔｓ）、ドット（ｐｌａｎｃｈｅｔｔｅｓ）、染料、顔料を含む１つ又は複数の物質
の群より選択される１つ又は複数のフィルム様でも箔様でもないセキュリティ要素；
ｃ）上記１つ又は複数の透かしの上記１つ又は複数の第一の領域及び所望に応じて上記１つ又は複数の第二の領域の中に含まれ、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ（最終）屈折率を有する１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料；
ｄ）上記１つ又は複数の透かしの上記オモテ部分又は上記ウラ部分のいずれかを覆う所望に応じて窓付きであってよい第二の紙層；並びに／又は
ｅ）上記１つ又は複数の透かしの各々を取り囲む１つ又は複数の透明又は半透明領域、
の群より選択される。

第一の例示実施形態では、本発明のセキュリティシート又はセキュリティ文書は単層紙又は多層紙であって、単層紙又は多層紙は、
１つ又は複数の透かしを含む第一の紙層であって、紙層の各表面が、（１つ又は複数の）透かしの上側若しくはオモテ部分、又はその下側若しくはウラ部分のいずれかを表示する、第一の紙層；
１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又は下側若しくはウラ部分を少なくとも部分的に覆う１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素；並びに
所望に応じて、
第一の紙層と比べて低い坪量を有し、所望に応じて１つ又は複数の貫通窓を有してよい第二の紙層であって、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又は下側若しくはウラ部分のいずれかを覆う第二の紙層
を含む。

フィルム様又は箔様セキュリティ要素は、好ましくは、（１つ又は複数の）透かし及び周囲の紙とは異なる色を有し、それによって、下又は上に重なっている（１つ又は複数の）透かしの見え方が向上し、更には下又は上に重なっている（１つ又は複数の）透かしと周囲の紙との間のコントラストも向上される。

このような一実施形態では、（１つ又は複数の）フィルム様又は箔様セキュリティ要素は、例えば米国特許第７３３３２６８号に記載されるＭＯＴＩＯＮ（商標）マイクロ光学セキュリティデバイス等の、１つ又は複数の合成イメージを投影するマイクロ光学セキュリティデバイスである。このようなデバイスは、透明又は微着色背景上に有色イメージを表示するものであり、従って、下に重なっている印刷情報と組み合わせての使用に非常に適している。これらのセキュリティデバイスは、多階調の外観を有する（１つ又は複数の）透かしを提供すると思われることが分かっている。当業者であれば容易に理解されるように、多階調の透かしは、偽造を更により困難とするものである。

好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、透かしの全体又は一部（例えば半分）を覆うように表面に貼られた（ｓｕｒｆａｃｅ−ａｐｐｌｉｅｄ）パッチの形態であり、透かしは、透かしの第一及び／若しくは第二の領域内に１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含有し、１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料は、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ（最終）屈折率を有する。このような一実施形態では、（１つ又は複数の）領域は、認識可能又は識別可能である識別マーク（ｉｎｄｉｃｉａ）の形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数のいわゆる第二レベルセキュリティ的特徴（例えば、ＵＶ若しくはＩＲ反応性、発光性、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、又は磁性のセキュリティ繊維、タガント、ドット（ｐｌａｎｃｅｔｔｅｓ）、染料、顔料）の群より選択される１つ又は複数の特徴も含有する。

当業者であれば容易に理解されるように、マイクロ光学セキュリティデバイスは、表面に貼られた縦長セキュリティバンド、ストリップ、ストライプ、若しくはスレッド、又は第二の紙層の窓領域に存在する部分的に埋め込まれた縦長セキュリティバンド、ストリップ、ストライプ、若しくはスレッド（すなわち、窓付きスレッド）の形態であってもよい。

ＭＯＴＩＯＮ（商標）デバイス等のマイクロ光学デバイスは、（１つ又は複数の）透かしと見当合わしたときに、それによって投影される合成イメージが（１つ又は複数の）透かしデザインと組み合わされるように設計されてよい。例えば、上述した実施形態では、各パッチによって発生される（１つ又は複数の）合成イメージは、（１つ又は複数の）透かしデザインと調和又は連結していてよい。（１つ又は複数の）合成イメージは、（１つ又は複数の）透かしデザインを完成させてもよく、又は（１つ又は複数の）デザイン中に位置してもよい。以下でより詳細に説明されるように、これは、片面又は両面の特徴であってよい。

このような別の実施形態では、例えば米国特許第７３３３２６８号にも記載されている（１つ又は複数の）マイクロ光学セキュリティデバイスは、有色イメージ（白黒を含むいずれの色でもよい）を異なる色の半透明又は実質的に不透明である背景上に表示する。この実施形態では、（１つ又は複数の）マイクロ光学セキュリティデバイスは、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又は１つ又は複数の透かしの下側若しくはウラ部分のいずれかを少なくとも部分的に覆い、視覚的に隠している。（１つ又は複数の）透かしは、紙層の被覆側（ｃｏｖｅｒｄ ｓｉｄｅ）からは、反射光において視覚的に識別可能ではないが、反射光においては紙層の非被覆側（ｕｎｃｏｖｅｒｅｄ ｓｉｄｅ）からは、及び透過光においては紙層の両側から視覚的に明らかである。

ＭＯＴＩＯＮ（商標）セキュリティデバイス等の部分的若しくは完全に上又は下に重なっているフィルム様又は箔様セキュリティ要素を用いた本発明の例示実施形態における固有の有益性は、各透かしの耐久性が高められることである。当業者には公知であるように、銀行紙幣及びその他のセキュリティ文書（ｓｅｃｕｒｅ ｄｏｃｕｍｅｎｔｓ）の主要な要件の１つは、文書及びそのセキュリティ特徴が、流通の影響に耐える必要があることである。このような文書／特徴は、耐久性を有する必要があり（すなわち、折り畳みによる損傷、引裂き、及び汚れに対する耐性）、並びに水分及び化学物質の吸収に対する耐性を有する必要がある。フィルム、箔、バンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、若しくはパッチを付与して（１つ又は複数の）透かしの全て又は一部を覆うことは、流通及び取扱いの過程での損傷から（１つ又は複数の）透かしを物理的に保護するように作用し、従って、その耐久性が高められる。

これらの透かしに高い耐久性が与えられることにより、これらの透かしをより大きくすることができること、及び繊維密度減少領域（すなわち、第一の領域）が各透かし中に占める総面積を増加させることができること、及びこれらの領域を更により薄くすることができることが明らかとなった。具体的には、これらの繊維密度減少領域は、１０〜１５ミクロンという低い厚さで、総厚さ約１０〜約６０ミクロンの範囲内で作製することができることが見出された。これらの繊維密度減少領域がこのような各透かし内を占める総面積は、透かしの総面積の約５〜約７５パーセント（％）、好ましくは約２０〜約６０％の範囲内である。更に、およそ１００００平方ミリメートル（ｍｍ^２）の銀行紙幣内でのこのような各透かしが占める総面積は、約５〜約２５％の範囲内とすることができ、これは、従来の透かしと比較して、約５％のサイズ増加を表している。

また、本発明者らは驚くべきことに、ＭＯＴＩＯＮ（商標）デバイス等のマイクロ光学デバイスが、特に透過で測定されたときに、向上したＩＲ輝度の形態の機械検出／読み取り可能な特徴も提供することができるということも見出した。「向上したＩＲ輝度」という用語は、本明細書で用いられる場合、背景紙のＩＲ透過率レベルよりも少なくとも５％高い（好ましくは、１０％超えて高い）ＩＲ透過率レベルを意味することを意図している。ＩＲ透過率レベルは、８３０ナノメートル（ｎｍ）以上の感度を有する光学センサーを用い、８００ｎｍ超の波長のＩＲ光源を、サンプルを通して投影することによって測定してよい。ＩＲ輝度を、信頼性のある機械読み取り可能な特徴とするためには、マイクロ光学デバイスは、１つ又は複数のＩＲ透過性要素（例えばＩＲ透過性インク）を用いて作られ、ＩＲ吸収要素（例えばＩＲ吸収インク）を含有しないことが好ましい。また、（１つ又は複数の）紙層の正面側及び反対側のデバイスに近い領域に、ＩＲ吸収要素が存在しないことも好ましい。このような一実施形態では、マイクロ光学デバイスは、ＩＲ吸収要素を含有しないセキュリティスレッド（例えば、ＭＯＴＩＯＮ（商標）セキュリティスレッド）である。この実施形態では、マイクロ光学セキュリティスレッドは、マイクロプリント用のＩＲ透過性インク（例えば、非ＩＲ吸収顔料及び／又は染料を含むインク）を用いて作られ、セキュリティスレッドの長さの少なくとも３分の２（２／３）以内の（１つ又は複数の）紙層の正面側及び反対側の領域には、ＩＲ吸収要素が含有されない。

少なくとも部分的に上又は下に重なっているマイクロ光学デバイスに加えて、１つ又は複数の追加のセキュリティ的特徴が、１つ又は複数の透かしの第一及び／若しくは第二の領域上又は領域内に含まれてよい。このような一実施形態では、（１つ又は複数の）透かしは、第一及び／又は第二の領域内に１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含有しない。この追加のセキュリティ的特徴は、上述したように、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴の群から選択される。

第二の例示実施形態では、本発明のセキュリティ紙は、
低い坪量を有し（例えば、１平方メートルあたり約１０〜約５０グラム（ｇｓｍ））、１つ又は複数の透かしを含み、各表面が、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又はその下側若しくはウラ部分のいずれかを表示する第一の紙層；及び
低い坪量を有し（例えば、約１０〜約５０ｇｓｍ）、所望に応じて１つ又は複数の貫通窓を有してよく、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分を表示する第一の紙層の表面、又は１つ又は複数の透かしの下側若しくはウラ部分を表示する表面のいずれかを覆う第二の紙層
を含む多層紙である。

このような一実施形態では、第二の紙層は、窓付けされ、第二の紙層の１つ又は複数の貫通窓は、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又は下側若しくはウラ部分のいずれかと見当合わせされている。この第二の例示実施形態の方法により、２つの紙層、及び所望に応じて上又は下に重なっている１つ又は複数の貫通窓を用いることから、１つ又は複数の透かしと背景との間のより強いコントラストを得ることができる。上又は下に重なっている１つ又は複数の貫通窓は、電気版のものと類似する方法で働き、紙のない領域又は紙がより薄い領域を占めることで、各紙／透かし領域に背景よりも明るい領域（ｂｒｉｇｈｔｅｒ−ｔｈａｎ−ｂａｃｋｇｒｏｕｎｄ ｒｅｇｉｏｎｓ）をもたらす。

第三の例示実施形態では、１つ又は複数の着色性物質の形態である１つ又は複数のセキュリティ要素が、１つ又は複数の透かしの第一及び／又は第二の領域内に含有される。１つ又は複数の着色性物質は、染料及び顔料の両方を含む（例えば、超微細粒子サイズ顔料）。この実施形態では、セキュリティシート又は文書は、１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素を含まない。得られる透かしは、透かしを取り囲む材料のバルク領域とは異なる色調又は階調（すなわち、配色（ｃｏｌｏｒ ｓｃｈｅｍｅ）又は様々な色合い）を有する。本発明の透かしは、既存の透かしの認知性及び模倣防止性を高めるように働く。

第四の例示実施形態では、１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料が、１つ又は複数の透かしの（１つ又は複数の）第一の領域、及び所望に応じて（１つ又は複数の）第二の領域内に含有される。上記のように、この例示実施形態におけるセキュリティシート又は文書は、１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素を含まない。この実施形態における第一及び／又は第二の領域は、上述のように、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴の群から選択される１つ又は複数のセキュリティ的特徴も含有してよい。

第五の例示実施形態では、本発明のセキュリティシート又はセキュリティ文書は、
１つ又は複数の透かしを含む紙層；及び
１つ又は複数の透かしの各々を取り囲み、それによって（１つ又は複数の）透かしに枠付けをし、従ってその視覚的な認知性を高める紙層中の１つ又は複数の透明又は半透明領域
を含む単層紙である。

本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な記述及び添付の図面から当業者には明らかとなる。

特に断りのない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体が参照により援用される。矛盾が生ずる場合、定義を含む本明細書が優先する。加えて、物質、方法／プロセス、及び例は、単に説明のためのものであり、限定することを意図するものではない。

本開示は、以下の図面を参照することでより良く理解されるであろう。図面中の構成成分は、必ずしも正しい縮尺ではなく、むしろ本開示の原理を明確に説明することに重点を置いている。例示実施形態が図面と関連付けて開示されるが、本開示を、本明細書で開示される１つ又は複数の実施形態に限定することを意図するものではなく、全ての別の選択肢、変更、及び均等物を含むことを意図している。

開示される本発明の特定の特徴を、添付の図面を参照して説明する。

図１は、例示セキュリティ紙の上又は中にあるＭＯＴＩＯＮ（商標）セキュリティパッチが上に重なっている透かし（数字の３０と盾）を、昼光（可視スペクトル反射光）及びＩＲ透過光で、セキュリティ紙のオモテ又は正面側から見たイメージであり、明確にするために透かし及びパッチを拡大スケールで示している。 図２ａは、セキュリティパッチが上に重なっている図１の透かしを、ここでも昼光（可視スペクトル反射光）及びＩＲ透過光で、セキュリティ紙のオモテ側から見た別のイメージであり、イメージは、図１ほどではないが拡大されている。一方、図２ｂ〜図２ｄは、セキュリティパッチが上に重なっている同じ透かしの、セキュリティ紙ウラ側からＩＲ透過光で（図２ｂ）、セキュリティ紙オモテ側からＩＲ反射光で（図２ｃ）、及びセキュリティ紙ウラ側からＩＲ反射光で（図２ｄ）で示される拡大イメージである。 図３ａは、セキュリティパッチが上に重なっている図１の透かしを、昼光（可視スペクトル反射光）で、セキュリティ紙のオモテ側から見た別のイメージであり、イメージは、図１ほどではないが拡大されている。一方、図３ｂ〜図３ｄは、セキュリティパッチが上に重なっている同じ透かしの、セキュリティ紙ウラ側から可視スペクトル反射光で（図３ｂ）、セキュリティ紙オモテ側から可視スペクトル透過光で（図３ｃ）、及びセキュリティ紙ウラ側から可視スペクトル透過光で（図３ｄ）で示される拡大イメージである。 図４は、改良長網又はツインワイヤ抄紙機の概略図であり、これによって、透かしは、抄紙されるペーパーウェブの縦方向に沿ってダンディロールシリンダーを介して組み込まれ、縦長セキュリティスレッドの形態のセキュリティ要素が、透かしの入ったペーパーウェブの表面に貼られ、その後、機械の湿式プレスセクションに送られる。機械は、ペーパーウェブに透かし及び縦長セキュリティスレッドを縦方向に見当合わせするための手段を用いる。本発明のシート材料を作製するためのこの方法は、繊維分布を動かすことがなく、その結果、セキュリティスレッドの変形、歪み、並びにしわに抵抗する基材の密度及び硬さが増加したより高い繊維分布が得られる。 図５は、別の改良長網又はツインワイヤ抄紙機の概略図であり、これによって、縦長セキュリティスレッドは、（１つ又は複数の）透かしが繊維ウェブ中に組み込まれるのと同時又はその直前に繊維ウェブの表面に供給され、その後、機械の湿式プレスセクションに送られる。機械は、繊維ウェブに縦長セキュリティスレッド及び（１つ又は複数の）透かしを縦方向に見当合わせするための手段を用いる。本発明の繊維シート材料を作製するためのこの方法は、スレッドの周囲に繊維が流れる結果をもたらし、その結果、表面に適用されたスレッド下に密度及び硬さが減少したより低い密度の繊維分布が得られる。 図６は、ピックアップフェルト（ｐｉｃｋ−ｕｐ ｆｅｌｔ）で相互連結された２つの円網抄紙機から成る抄紙機の概略図である。ここで、縦長セキュリティスレッドは、一方の円網抄紙機によって形成された透かし入りペーパーウェブと接触し、その後、他方の円網抄紙機によって形成された第二のペーパーウェブと接合される。この機械も、第一のペーパーウェブに縦長セキュリティスレッド及び（１つ又は複数の）透かしを縦方向に見当合わせするための手段を用いる。 図７は、先行技術の透かし、及び著しく明るい又は強い見え方を有する本発明の向上した透かしの例示実施形態の拡大イメージを並べて比較したものである。 図８は、ＵＶ励起可能第二レベルセキュリティ的特徴を用いる本発明の透かしの例示実施形態について、透過光及びＵＶ光の両方での拡大イメージを並べて比較したものである。 図９ａ〜図９ｂは、本発明の紙セキュリティ文書の例示実施形態を製造するための方法を示す概略図である。 図１０は、抄紙機上の湿潤状態の繊維マット又はシートの拡大イメージ（反射光中、暗背景で観察）であり、シートの選択領域の紙料が除去された結果、それらの選択領域の繊維密度が低下されている。この選択領域は、円形状であり、２つの異なるサイズで示され、サイズが大きい方の領域は、繊維密度がより大きい円形領域をさらに含有する。 図１１ａ〜図１１ｂは、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ屈折率を有する１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料による処理後の、図１０に示される丸で囲んだ選択領域の拡大イメージである（透過光で観察）。第一の拡大イメージ（図１１ａ）は、周囲を取り囲む繊維マット又はシートに類似の色を有する選択領域内の円形領域を示し、第二の拡大イメージ（図１１ｂ）は、本発明のセキュリティ要素のこの例示実施形態の下で観察された印刷物が、明確に判読可能であることを示している。

本発明により、セキュリティシート又はセキュリティ文書の上又は中に形成される透かしが向上され、セキュリティシート又はセキュリティ文書の偽造防止性が高められる。

本発明のシート又は文書は、上述のように：１つ又は複数の透かしを含む繊維性シート材料；及び１つ又は複数の透かしを、視覚的に向上すること、機械検出／読み取り可能とすること、又はその両方によって、１つ又は複数の透かしを向上する手段を含む。

本発明での使用に適する繊維性シート材料は、紙又は紙様シート材料である。単層又は多層シート材料であるこのようなシート材料は、合成若しくは天然繊維、又は両者の混合物を含む様々な種類の繊維から作られてよい。例えば、このようなシート材料は、マニラ麻、コットン、リネン、木材パルプ、及びこれらのブレンド等の繊維から作られてよい。当業者には公知であるように、コットン、及びコットン／リネン又はコットン／合成繊維ブレンドは、銀行紙幣の場合に好ましく、木材パルプは、銀行紙幣以外のセキュリティ文書に一般的に用いられる。

透かしは、公知の方法及び技術を用いて繊維性シート材料中に形成されてよい。例えば、透かしを入れたシート材料は、円網抄紙機で（エンボス加工抄網を使用、又は一般的にはイメージ若しくは文字の形態である薄い金属片を抄網に適用することによる）、又は長網抄紙機（ダンディロールを使用）で製造されてよい。

（１つ又は複数の）透かしを向上する様々な手段が用いられる本発明のセキュリティシート又は文書の例示実施形態、及びそれぞれの製造方法についてここで考察する。

第一の例示実施形態では、本発明のセキュリティシート又はセキュリティ文書は、
（ａ）１つ又は複数の透かしを含む第一の紙層であって、紙層の各表面が、（１つ又は複数の）透かしの上側若しくはオモテ部分、又はその下側若しくはウラ部分のいずれかを表示する、第一の紙層、
（ｂ）１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又は下側若しくはウラ部分を少なくとも部分的に覆い、（１つ又は複数の）透かしとは異なる色を有する１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素、並びに
所望に応じて、（ｃ）第一の紙層と比べて坪量が低く（例えば約１０〜約５０ｇｓｍ）、所望に応じて１つ又は複数の貫通窓を有してよく、（１つ又は複数の）透かしの上側若しくはオモテ部分、又は下側若しくはウラ部分のいずれかを覆う第二の紙層
を含む単層紙又は多層紙である。

本発明の実施で用いられる（１つ又は複数の）フィルム様又は箔様セキュリティ要素は、そのフィルム様又は箔様構造によってのみ限定され、考慮される構造は、約１５〜約１００ミクロン（好ましくは、約１５〜約５０ミクロン）の範囲内の総厚さを有する。フィルム様又は箔様構造は、バンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、又はパッチが挙げられるがこれらに限定されず、いかなる形状を取ってもよい。これらは、直接又はデバイスの補助によって人間による認知が可能である情報を表示若しくは投影してよく、並びに／又は機械によって検出可能／読み取り可能である情報を含んでよい。構造は、複数の領域に分割されていてよく、これらの領域の一部又は全てにおいて表示される、又は投影される、又は含有される情報は、同じであっても、又は異なっていてもよい。

適切なフィルム様又は箔様セキュリティ要素は、以下のうちの１つ又は複数を用いてよい：脱金属化（ｄｅｍｅｔａｌｉｚｅｄ）若しくは選択的金属化、磁性、磁性及び金属製の組み合わせ、若しくはエンボス加工（例えば空押しエンボス加工（ｂｌｉｎｄ ｅｍｂｏｓｓｅｄ））の領域又は層、色シフトから構成される色変化コーティング、真珠光沢、液晶、フォトクロミック及び／若しくはサーモクロミック材料、蛍光及び／若しくは磁性材料のコーティング、ホログラフィック及び／若しくはディフラクティブセキュリティ的特徴、並びにマイクロ光学セキュリティ的特徴。

好ましい実施形態では、（１つ又は複数の）セキュリティ要素は、マイクロ光学構造である。上述のように、このような構造は、１つ又は複数の合成的に拡大された光学イメージを投影し、一般的には：（ａ）光透過性ポリマー物質；（ｂ）ポリマー物質の上又は中に位置する配置されたマイクロサイズの像群（ａｒｒａｎｇｅｍｅｎｔ ｏｆ ｍｉｃｒｏ−ｓｉｚｅｄ ｉｃｏｎｓ）；及び（ｃ）配置されたマイクロレンズ群（ａｒｒａｎｇｅｍｅｎｔ ｏｆ ｍｉｃｒｏｌｅｎｓｅｓ）を含む。上記像群及びマイクロレンズ群は、像群をマイクロレンズ群を通して観察したときに、１つ又は複数の合成拡大光学イメージが投影されるように構成される。このような投影されたイメージは、いくつかの異なる光学的効果を示すことができる。このような構造は、Ｓｔｅｅｎｂｌｉｋ ｅｔ ａｌ．による米国特許第７，３３３，２６８号、Ｓｔｅｅｎｂｌｉｋ ｅｔ ａｌ．による米国特許第７，４６８，８４２号、Ｓｔｅｅｎｂｌｉｋ ｅｔ ａｌ．による米国特許第７，７３８，１７５号、Ｃｏｍｍａｎｄｅｒ ｅｔ ａｌ．による国際特許公開第２００５／１０６６０１（Ａ２）号、及びＫａｕｌｅ ｅｔ ａｌ．による国際特許公開第２００７／０７６９５２（Ａ２）号に記載されている。このような一実施形態では、Ｓｔｅｅｎｂｌｉｋ ｅｔ ａｌ．による米国特許第７，３３３，２６８号に記載のようなマイクロ光学構造が用いられ（例えば、ＭＯＴＩＯＮ（商標）マイクロ光学セキュリティデバイス）、その構造は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない群より選択される１つ又は複数の基本的に無色のポリマーを用いて作製されるポリマー基材から形成される。

より好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、透かしの全体又は一部（例えば半分）を覆うように表面に貼られたパッチの形態であり、透かしは、透かしの第一及び／若しくは第二の領域内に１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含有し、１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料は、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ（最終）屈折率を有する。透かしの第一及び／又は第二の領域は、上述のように、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数のいわゆる第二レベルセキュリティ的特徴の群より選択される１つ又は複数の特徴も含有してよい。

別のより好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスは、表面に貼られた縦長ストリップ若しくはスレッド、又は第二の紙層の窓領域に存在する部分的に埋め込まれた縦長セキュリティストリップ若しくはスレッド（すなわち、窓付きスレッド）の形態である。本実施形態におけるストリップ又はスレッドは、（１つ又は複数の）透かしの全て又は一部を覆う。

より好ましい実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイス（例えば、ＭＯＴＩＯＮ（商標）デバイス）は、透かしと見当合わしたときに、それによって投影される合成イメージが透かしデザインと組み合わされるように設計される。例えば、上記で述べた実施形態では、各パッチ又はスレッドによって発生される（１つ又は複数の）合成イメージは、透かしデザインと調和又は連結していてよい。また、（１つ又は複数の）合成イメージは、（１つ又は複数の）透かしデザインを完成させてもよく、又は（１つ又は複数の）デザイン中に位置してもよい。これは、片面又は両面の特徴であってよい。言い換えると、観察者に伝達されることを意図する完全な情報は、透かし又は（１つ又は複数の）合成イメージの単独は提供されるのではなく、両方が同時に観察されることが必要である。このような一例では、可視スペクトル透過光を用いて最適（垂直）観察角度で観察したときに、ＭＯＴＩＯＮ（商標）パッチは、盾の形態の透かしデザインの上に重なる（見当が合う）紋章（ｃｏａｔ ｏｆ ａｒｍｓ）の形態の合成イメージを投影する。観察角度が軸線をはずれて動くと、合成イメージ及び透かしデザインは互いに見当が合わなくなり、透かしデザイン（盾及び数字の３０）はパッチ内に見え、合成イメージは、紋章から、例えば数字の列へと移行又は転換することになる。

ＭＯＴＩＯＮ（商標）マイクロ光学セキュリティデバイス等の部分的若しくは完全に上又は下に重なっているフィルム様又は箔様セキュリティ要素を用いた本発明の例示実施形態における固有の有益性は、各透かしの耐久性が高められることである。フィルム、箔、バンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、若しくはパッチを貼って（１つ又は複数の）透かしの全て又は一部を覆うことは、流通及び取扱いの過程での損傷から（１つ又は複数の）透かしを物理的に保護するように作用し、従って、その耐久性が高められる。

これらの透かしに高められた耐久性が与えられることにより、これらの透かしをより大きくすることができること、及び繊維密度減少領域（すなわち、第一の領域）が各透かし中に占める総面積を増加させることができること、及びこれらの領域を更により薄くすることができることが明らかとなった。具体的には、これらの繊維密度減少領域は、１０〜１５ミクロンという低い厚さで、総厚さ約１０〜約６０ミクロンの範囲内で作製することができることが見出された。これらの繊維密度減少領域がこのような各透かし内で占める総面積は、透かしの総面積の約５〜約７５パーセント（％）、好ましくは約２０〜約６０％の範囲内である。更に、およそ１００００ｍｍ^２の銀行紙幣内でのこのような各透かしが占める総面積は、約５〜約２５％の範囲内とすることができ、これは、従来の透かしと比較して、約５％のサイズ増加を表している。

また、本発明者らは驚くべきことに、ＭＯＴＩＯＮ（商標）デバイス等のマイクロ光学デバイスを、特に透過で測定したときに、向上したＩＲ輝度の形態の機械検出／読み取り可能な特徴も提供することができるということも見出した。ＩＲ輝度を、信頼性のある機械読み取り可能な特徴とするためには、マイクロ光学デバイスは、１つ又は複数のＩＲ透過性要素（例えばＩＲ透過性インク）を用いて作られ、ＩＲ吸収要素（例えばＩＲ吸収インク）を含有しないことが好ましい。また、（１つ又は複数の）紙層の正面側及び反対側のデバイスに近い領域に、ＩＲ吸収要素が存在しないことも好ましい。

ここで図１を参照すると、本発明のセキュリティシート又は文書のこのような一実施形態が示され、符号１０が付けられている。マイクロ光学デバイスは、ＩＲ吸収要素を含有しないＭＯＴＩＯＮ（商標）セキュリティパッチ１２である。パッチ１２は、盾の形態の透かし１４の上に配置され、通常のベース繊維密度よりも密に堆積した繊維によって形成される暗領域（すなわち、第二の領域）１６が、外側の周辺領域を占め、通常のベース繊維密度よりも粗に堆積した繊維によって形成される明領域（すなわち、第一の領域）１８が、盾のデザインの内側領域を占め、数字の３０が占める領域は、より明るい又はより粗である領域によって形成されている。図１は、昼光及びＩＲ透過光におけるＭＯＴＩＯＮ（商標）セキュリティパッチ１２が上に重なっている透かし１４を示しており、明確とするために透かし及びパッチを拡大スケールで示している。

図１を見ることで容易に明らかとなるように、数字の３０は、上に重なっているパッチによって非常に明るい。ここで、ＩＲ輝度は、ＩＲシグナルの強度と相関しており、上述したように、８３０ｎｍ以上の感度を有する光学センサーを用い、８００ｎｍ超の波長のＩＲ光源をサンプルを通して投影することによって、透過で測定される。ＩＲ輝度は、セキュリティパッチ１２のマイクロプリントに用いられるインクのＩＲ特性によって制御することができる。ポリマー物質の上又は中に位置するマイクロサイズの像群の形態のマイクロプリントは、印刷法（例えば、インクジェット、レーザージェット、レタープレス、フレキソ、グラビア、凹版、及び染料昇華印刷法）を用いることで、又は微細構造の手法を用いることによって作製される。後者の場合、像群は、基材中の空隙若しくは凹部として（例えば総深さが約０．５〜約８ミクロンの寸法の凹部等）、又は基材に対して盛り上がった構造（例えば総高さが約０．５から約８ミクロンの寸法の盛り上がった構造（有色又は無色）等）として作られる。ＩＲ透過性材料（例えば、非ＩＲ吸収顔料及び／又は染料を含むインク）は、例えば、印刷、凹部若しくは盛り上がった構造を取り囲む領域のコーティング又は部分的若しくは完全な充填、又は盛り上がった（有色若しくは無色）構造の形成による像群の形成に用いられる。パッチの外側端部からおよそ５ミリメートルの距離以内にある（１つ又は複数の）紙層の正面側及び反対側の領域は、ＩＲ吸収要素を含有しないことが好ましい。

図１の実施形態の見え方に関して、並びに図２ａ〜図２ｄ及び図３ａ〜図３ｄに示されるように：
（ａ）ＩＲ透過又はＩＲ透過光では、文書の正面又はオモテから、透かし（盾及び数字の３０）及びかすかに上層のパッチが見える（図２ａ参照）；
（ｂ）ＩＲ透過では、文書のウラから、逆向きの透かし（盾及び数字の３０）及びそれよりも暗い上層のパッチが見える（図２ｂ参照）；
（ｃ）ＩＲ反射光では、文書のオモテから、透かし（輪郭のみ）及びかすかに上層のパッチが見える（図２ｃ参照）；
（ｄ）ＩＲ反射光では、文書のウラから、透かしも上層のパッチも見えない（図２ｄ参照）；
（ｅ）可視スペクトル反射光では、文書のオモテから、１つ又は複数の合成イメージが見えるが、透かしは見えない（又は、透かしのかすかな輪郭のみ）（図３ａ参照）；
（ｆ）可視スペクトル反射光では、文書のウラから、暗部として透かしが見える（図３ｂ参照）；
（ｇ）可視スペクトル透過光では、文書のオモテから、透かしと１つ又は複数の合成イメージとの組み合わされたイメージが見える（図３ｃ参照）；並びに
（ｈ）可視スペクトル透過光では、文書のウラから、逆向きの透かし（盾及び数字の３０）が、色の付いた上層のパッチと共に見えるが、（１つ又は複数の）投影された合成イメージは見えない（図３ｄ参照）。

上述のように、少なくとも部分的に上又は下に重なっているマイクロ光学デバイスに加えて、１つ又は複数の追加のセキュリティ的特徴が、１つ又は複数の透かしの第一及び／又は第二の領域の上又は中に含有されてよい。このような一実施形態では、（１つ又は複数の）透かしは、第一及び／又は第二の領域中に１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含有しない。追加のセキュリティ的特徴は、上述したように、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴の群から選択される。

ここで、フィルム様又は箔様セキュリティ要素を有する繊維性シート材料が、シート材料中に含有又は形成された１つ又は複数の透かしに対して縦方向（ＭＤ：ｍａｃｈｉｎｅ ｄｉｒｅｃｔｉｏｎ）に見当合わせされる第一の例示実施形態を作製するための方法又は技術について述べる。

フィルム様又は箔様セキュリティ要素は、公知の方法及び技術を用いて、第二の紙層中に埋め込まれるか（例えば、セキュリティストリップ又はスレッドの形態の場合）、又は透かしを入れた紙層若しくは第二の紙層の表面に貼られてよい（例えば、スレッド又はパッチの形態の場合）。例えば、（１つ又は複数の）セキュリティ要素（１つ又は複数の接着剤層を有する）は、透かしを入れた又は第二の紙層の表面へ、機械的、化学的、熱的、及び光誘導性分離技術を含む技術を用いて、転写フィルムとして転写されてよい。キャリア基材から所望される構成成分を分離するという概念は、ホログラム箔転写の技術分野で公知であり、この場合、剥離コーティング（すなわち、剥離ライナー）を有するフィルムに、コーティング（例えば光学的）及び接着剤が備えられ、それによって、コーティング及び接着剤は、熱及び圧力の適用によって最終基材へ転写することができる。この手法は、断面が非常に薄いフィルムを必要とする用途において、特に有用である。

フィルム様又は箔様セキュリティ要素を繊維性シート材料の表面の上若しくは中に固定又は接着するために、活性化可能接着剤が用いられてよい。適切な接着剤としては、これらに限定されないが、温度が１００℃〜１６０℃に達する抄紙機の二次乾燥機セクションで活性化する水、熱、及び／又は圧力活性化接着剤が挙げられる。このようなコーティングは、溶剤系ポリマー溶液又は水溶液又は分散体の形態で適用されてよい。適切な分散体は、アクリル樹脂分散体、エポキシ樹脂分散体、天然ラテックス分散体、ポリウレタン樹脂分散体、ポリ酢酸ビニル樹脂分散体、ポリビニルアルコール樹脂分散体、ウレアホルムアルデヒド樹脂分散体、酢酸ビニル樹脂分散体、エチレン酢酸ビニル樹脂分散体、エチレンビニルアルコール樹脂分散体、ポリエステル樹脂分散体、及びこれらの混合物の群より選択される。

セキュリティパッチをシート材料上に含有又は形成された透かしに対して縦方向に見当合わせすることは、紙シートに（１つ又は複数の）透かしを作製するために用いられる装置上で、（１つ又は複数の）透かしの相対的位置の目印を付ける（ｉｎｄｅｘｉｎｇ）ことによって達成されてよい。（１つ又は複数の）透かしの位置は、続いて、紙面に（１つ又は複数の）セキュリティパッチを貼るために用いられる装置へと連続的な方法で送られる。（１つ又は複数の）パッチを運ぶのに用いられるキャリアフィルム上に予め適用されたマーク又は目印を用いて、キャリアフィルムの、従って（１つ又は複数の）パッチのスピードが制御され、それによって、（１つ又は複数の）透かしと（１つ又は複数の）パッチとの見当合わせが確保される。

シート材料の上に含有又は中に形成された透かしに対するセキュリティスレッドの縦方向の見当合わせについて、図４〜図６と関連してここで記載する。

図４に、本発明の繊維性シート材料の単層実施形態を作製するための長網抄紙プロセス（Ｆｏｕｒｄｒｉｎｉｅｒ ｐｒｏｃｅｓｓ）が示される。このプロセスでは、接着剤がコーティングされたセキュリティスレッド２０（接着剤をコーティングしたウラ側ではなくセキュリティスレッドの正面側が最上層となるように配向）が、可変速度繰り出し装置（ｖａｒｉａｂｌｅ ｓｐｅｅｄ ａｄｖａｎｃｉｎｇ ｄｅｖｉｃｅ）２４（例えば、サーボドライブ付き電気サーボ機構）を有するチューブ２２に沿ってガイドされ、部分的に固化された繰り出される繊維性ウェブ２６（例えば、約１〜約１０重量％の紙料及び約９９〜約９０重量％の水を含有する繊維性スラリー）の表面に、ウェブ２６にダンディロールシリンダー３０によって透かしが入れられた後、抄紙機のウェットエンド２８で押し付けられる。ここで、セキュリティスレッド２０は、ウェブ２６表面上の（１つ又は複数の）透かしの上に部分的又は完全に配置されてよい（すなわち、層状セキュリティ的特徴）。当業者であれば容易に理解されるように、ダンディロールシリンダー３０は、その表面に盛り上がった領域及び／又は凹み領域を備えていてよく、それらは、スレッド２０が占めることになるウェブ２６の表面上の領域に完全に又は部分的に重なっていてよい。

本発明の方法のこの実施形態は、表面に貼られたセキュリティスレッド周囲の繊維分布を乱すようには作用せず、その結果、セキュリティスレッドの変形、歪み、並びにしわに抵抗する基材の密度及び硬さが増加したより高い濃度の繊維分布が得られることに留意されたい。

ウェブ２６から水が継続的に除去されるに従って、繊維はスレッド２０の周囲で形を成し、それをウェブ２６の正面又は上側面上の正しい位置に保持する。ウェットエンド２８から排出後、繊維性ウェブ２６は、抄紙機のプレス、主及び二次ドライヤー、並びにカレンダーセクションを通される。抄紙機の二次ドライヤーセクションの中で、ウェブ２６は、セキュリティスレッドの接着剤コーティングを活性化して、繊維性シート材料中のスレッドを強固に接着させるのに充分な温度及び／又は圧力に暴露され、セキュリティスレッドは、シート材料の正面又は上側面に連続的に露出し、形成された（１つ又は複数の）透かしを部分的又は完全に覆い、一方シート材料のウラ又は下側面からは見えないように隠されている。

形成された（１つ又は複数の）透かしに対するセキュリティスレッド２０の縦方向の見当合わせは、本技術分野で一般的に用いられる従来の技術を用いて達成される。例えば、図４で最も良く示されるように、抄紙機のための自動見当合わせ制御システム（ａｕｔｏｍａｔｉｃ ｒｅｇｉｓｔｒａｔｉｏｎ ｃｏｎｔｒｏｌ ｓｙｓｔｅｍ）が用いられ、これは、可変速度セキュリティスレッド繰り出し装置２４、ダンディロールシリンダー３０及びセキュリティスレッド２０上の見当合わせマークを追跡するための光学センサー３２ａ、３２ｂ、並びに抄紙機上で形成されている紙の速度を追跡するためのエンコーダーホイール３４を含む。

形成されているウェブ２６が抄紙機のウェットエンド２８を通って移動するに従って、ダンディロールシリンダー３０及びセキュリティスレッド２０上に配置された見当合わせマークは、光学センサー３２ａ、３２ｂによって継続的に追跡され、それによって、形成されているウェブ２６の端部に対する、チューブ２２及び繰り出し装置２４によって供給されているセキュリティスレッド２０の位置並びに（１つ又は複数の）透かしの位置が、継続的に特定／モニタリングされる一方、形成されている紙の速度は、エンコーダーホイール３４によって追跡される。位置及び速度の特定からシグナルが発生され、繰り出し装置２４の速度及び位置は、セキュリティスレッド２０及び（１つ又は複数の）透かしがウェブ２６の縦方向に沿って見当合わせされるように、それらのシグナルに基づいて調節される。

図５に示される本発明の方法の別の実施形態では、接着剤がコーティングされたセキュリティスレッド２０（ここでも、接着剤コーティングではなくセキュリティスレッドが最上層となるように配向）は、可変速度繰り出し装置２４を通り、光学センサー３２を過ぎるようにガイドされ、続いて、部分的に固化された形成されている繊維性ウェブ２６の表面に、ダンディロール３０によって抄紙機のウェットエンド２８で押し付けられ、ダンディロール３０は、同時に、又は続いて、ウェブ２６に透かしを入れる。本発明の方法のこの実施形態により、セキュリティスレッドの周囲を繊維が流れ、その結果、スレッド下に基材密度及び硬さが減少したより低い密度の繊維分布が得られることに留意されたい。

上述の内容と同様に、形成されているウェブ２６が抄紙機のウェットエンド２８を通って移動するに従って、ダンディロールシリンダー３０及びセキュリティスレッド２０上に配置された見当合わせマークは、光学センサー３２ａ、３２ｂによって継続的に追跡され、それによって、形成されているウェブ２６の端部に対する、（１つ又は複数の）透かしの位置及びウェブ２６の表面に貼られているセキュリティスレッド２０の位置が、継続的に特定／モニタリングされる一方、形成されている紙の速度は、エンコーダーホイール３４によって追跡される。位置及び速度を特定することによりシグナルが発生され、繰り出し装置２４の速度及び位置は、セキュリティスレッド２０及び（１つ又は複数の）透かしがウェブ２６の縦方向に沿って見当合わせされるように、それらのシグナルに基づいて調節される。

本発明の繊維性シート材料の二層実施形態を作製するための円網抄紙プロセスを図６に示す。ピックアップフェルト３８で相互連結された２つの円網抄紙機３６ａ、３６ｂを用いるこのプロセスでは、２つのペーパーウェブ４０、４２が同時に形成され、ローラー４４の領域で一緒に絞られ、続いて抄紙機のプレス、ドライヤー、及びカレンダーセクションへ一緒に供給される。得られた繊維性シート材料は、長網抄紙プロセスを用いて作製されるシート材料について上記で述べたものと同じ物理的特性を有する。当業者であれば容易に理解されるように、図６は、ウェットバット式の円網抄紙機を示すが、ドライバット式の円網抄紙機が本発明の繊維性シート材料の作製に用いられてもよい。

図６に示される円網抄紙機によって形成される二層ペーパーウェブ４６は、接着剤がコーティングされた凹み状セキュリティスレッド２０、及びその表面に形成された１つ又は複数の透かしを有し、セキュリティスレッド２０及び（１つ又は複数の）透かしは、この表面から完全に視認可能である。（１つ又は複数の）透かしが、円網４８によってペーパーウェブ４０に形成され、次に、セキュリティスレッド２０が、可変速度繰り出し装置２４を通り、光学センサー３２ｂを過ぎ、続いてローラー５０と円網抄紙機３６ａから排出されるペーパーウェブの表面との間へスレッドを誘導することによってペーパーウェブ中に一体化される。ここで、セキュリティスレッド２０は、ペーパーウェブの表面上の（１つ又は複数の）透かしの上に、部分的に又は完全に配置されてよい。表面に貼られたセキュリティスレッド２０及び（１つ又は複数の）透かしを有するペーパーウェブ４０は、次に、ローラー４４と円網抄紙機３６ｂから排出される第二のペーパーウェブ４２の表面との間に誘導され、そこで、これら２つのペーパーウェブが一緒に絞られる。第二のペーパーウェブ４２は、均質であり、スレッド２０の存在によって引き起こされた可能性のある第一のペーパーウェブ４０のウラ又は下側面における抄紙中のいずれの不規則部分をも隠す働きをする。

上記で示唆したように、円網４８は、その表面上に盛り上がった領域及び／又は凹み領域を備えており、それらは、製造の過程でスレッド２０によって接触される領域に完全に又は部分的に重なっていてよい。

これまでの実施形態の場合のように、セキュリティスレッド２０、（１つ又は複数の）透かし、及びペーパーウェブ４０の間での縦方向の見当合わせは、可変速度セキュリティスレッド繰り出し装置２４、円網４８及びセキュリティスレッド２０上の見当合わせマークを追跡するための光学センサー３２ａ、３２ｂ、並びに円網抄紙機３６ａ上で形成されている紙の速度を追跡するためのエンコーダーホイール３４によって達成される。

上記で述べた抄紙機のいずれにおいても、カレンダーセクションから排出されると、本発明の繊維性シート材料は、巻き取られ、保存されるか、又は更なる処理のために別の機械（例えば、印刷機）へ直接導入されてよい。

第二の例示実施形態では、本発明のセキュリティ紙は、
低い坪量を有し（例えば約１０〜約５０ｇｓｍ）、１つ又は複数の透かしを含み、各表面が、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分、又はその下側若しくはウラ部分のいずれかを表示する第一の紙層；及び
低い坪量を有し（例えば約１０〜約５０ｇｓｍ）、所望に応じて１つ又は複数の貫通窓を有してよく、１つ又は複数の透かしの上側若しくはオモテ部分を表示する第一の紙層の表面、又は１つ又は複数の透かしの下側若しくはウラ部分を表示する表面のいずれかを覆う第二の紙層
を含む多層紙である。

このような一実施形態では、第二の紙層は窓付けされ、第二の紙層の１つ又は複数の貫通窓は、１つ又は複数の透かしと見当合わせされている。この第二の例示実施形態により、２つの紙層、及び所望に応じて上に重なっている１つ又は複数の貫通窓を用いることから、１つ又は複数の透かしと背景との間のより強いコントラストが可能となる。

第三の例示実施形態では、１つ又は複数の着色性物質の形態である１つ又は複数のセキュリティ要素が、１つ又は複数の透かしの第一及び／又は第二の領域内に含有される。１つ又は複数の着色性物質は、染料及び顔料の両方を含む（例えば、超微細粒子サイズ顔料）。上述したように、本実施形態では、セキュリティシート又は文書は、１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素を含まない。得られる透かしは、透かしを取り囲む材料のバルク領域とは異なる色調又は階調（すなわち、配色又は様々な色合い）を有し、その認知性及び模倣防止性を高めるように働く。

従来では、透かしは、透かしを上又は中に保持する紙基材と同じ色である。このような透かしは、紙の不透明度を変化させる紙の厚さの局所的な変動によって形成され、暗い背景上に透過光又は反射光によって透かしが視認可能となる。

同じ色の紙基材に対する先行技術の又は標準的な透かしを、図７に示す。ここでは、透かし中の明及び暗領域間の僅かなコントラストが分かるだけであり、透かしの検出をより困難としている。比較として、やはり図７に示されるように、本発明の向上した透かしは、１つ又は複数の視認可能（有色）顔料（すなわち、青色）の形態の１つ又は複数の着色性物質を含み、透かし中の明及び暗領域間のコントラストが、大きく高められている。従って、本発明の透かしには、より容易に一般の注意が向けられ、このセキュリティ的特徴の有効性が高められる。

本発明の別の例示実施形態を図８に示す。ここでは、本発明の透かしは、１つ又は複数の着色性物質に加えて、ＵＶ励起可能物質の形態の第二レベルセキュリティ的特徴を含む。本発明の透かしは、透過光において明及び暗領域の間の著しいコントラストを示すだけでなく、ＵＶ放射線による励起が可能である物質も含有していることから、再現が困難であるＵＶ応答の階調性も示し、それによって、この透かしの実施形態は、更により偽造防止性が高められる。

ここで、図９を参照すると、セキュリティシート又は文書が紙のセキュリティ文書である例示実施形態では、セキュリティ文書を製造するための本発明の方法は、抄紙機５４上で透かしを入れた紙５２の連続ロールを作製することを含み（図９ａ）、透かし又は透かし領域５６は、紙の長さ方向に沿って繰り返され（図９ｂ）、各々は、透かし領域５６に明及び暗領域が提供されるように、低坪量領域（すなわち、第一の領域）及び高坪量領域（すなわち、第二の領域）を有している。この方法は、
着色性物質を含む有色溶液５８を、紙の連続ロールの一方の側の複数の透かし領域５６に適用し、同時に、紙の反対側に真空を適用して、適用された有色溶液を紙の内部へ引き込むこと
を含み、ここで、透かし領域５６の高坪量領域は、着色性物質の保持量が多く、一方低坪量領域は、着色性物質の保持量が少なく、それによって、紙の長さ方向に沿って繰り返される複数の透かし領域を取り囲む紙のバルク領域とは異なる色調又は階調が透かし領域に提供される。

既に述べたように、透かしは、例えば、円網抄紙機又は長網抄紙機（ダンディロールを用いる）上にて、公知の技術によって形成される。合成若しくは天然繊維、又は両者の混合物を含む様々な種類の繊維が、紙の作製に用いられてよい。

本発明の透かしに階調性を付与するために用いられる「有色溶液」は、染料及び顔料の両方を含む（例えば、超微細粒子サイズ顔料）上記で述べた１つ又は複数の着色性物質を含む。

抄紙機５４上で透かしを形成した後、有色溶液５８は、紙がまだ濡れている間に、抄網上、いずれの湿式プレスも行われる前に、紙の透かし領域５６に局所的に適用される。有色溶液は、紙の透かし領域に対して整列したノズル６０による少量の断続的シャワーを用いて、透かしを入れた紙５２の連続ロールに適用されてよい。有色溶液は、１つ又は複数の真空ボックス６２を用いて、ペーパーウェブ中に引き込まれる。図９ｂには２つの真空ボックスが示されているが、本発明の方法の実施では、１つ又は複数の真空ボックスが用いられてよい。

「シースルー（ｓｅｅ−ｔｈｒｏｕｇｈ）」透かしの実施形態と称される第四の例示実施形態では、１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料が、１つ又は複数の透かしの（１つ又は複数の）第一の領域、及び所望に応じて（１つ又は複数の）第二の領域内に含有される。上記のように、本例示実施形態におけるセキュリティシート又は文書は、１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素を含まない。本実施形態における第一及び／又は第二の領域は、上述のように、認識可能若しくは識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ若しくは複数の物質、及び機械検出可能若しくは機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴の群から選択される１つ又は複数のセキュリティ的特徴も含有してよい。

本発明のシースルー透かしの実施形態は、第一レベル認証のための容易に認識される一般用のセキュリティ的特徴（ｐｕｂｌｉｃ ｓｅｃｕｒｉｔｙ ｆｅａｔｕｒｅ）を提供する。紙を介する的特徴（ｐａｐｅｒ−ｂｏｒｎｅ ｆｅａｔｕｒｅ）であってよい本発明の（１つ又は複数の）透かしは、その透過特性によって認証を可能とする。このような半透明又は透明領域をセキュリティ文書（例えば、銀行紙幣）に含めることは、スキャニング、イメージ分析、及びそれに続くデジタル複製技術を用いて複製することができない。

例示実施形態では、本発明の（１つ又は複数の）シースルー透かしは、湿潤状態でのシート形成の過程で、抄紙プロセスの一部として得られる。例えば、ペーパーウェブは、長網抄紙機上にて、連続的な方法で作製される。紙料は、ヘッドボックスから連続的な動いている抄網上へ載せられる。次に、紙料からの水が抄網を通して排出され、湿潤脱水繊維マットが残される。

本発明の（１つ又は複数の）シースルー透かしは、まず、繊維マットの選択領域から紙料を除去し、その結果として繊維密度を低下させることによって形成される（図１０参照）。これは、ダンディロール（又は円網バット）技術等の従来の技術を用いて行われてよい。繊維密度の低い選択領域（すなわち、第一の領域）は、透明ではないが、（１つ又は複数の）透かしの他の領域（すなわち、第二の領域）及び繊維マットの他の領域（すなわち、ベースシート）と比較して不透明度が低下されている。次に、（１つ又は複数の）透かしの第一及び所望に応じて第二の領域は、セルロースと非常に合致する最終屈折率について選択される１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料（例えば、ＵＶ硬化性、ｅビーム硬化性、若しくは熱硬化性のポリマー又は樹脂性材料）で処理される。

第一及び第二の領域の１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料による処理は、抄紙機上で、巻直し（ｒｅｗｉｎｄｉｎｇ）又は再巻取り（ｒｅｓｐｏｏｌｉｎｇ）等のオフラインのウェブプロセスで、シート切断の前の特定目的のオフラインのウェブプロセスで、又は個々のシートで行われてよい。

（１つ又は複数の）透かしの第一及び所望に応じて第二の領域で紙に染み込ませる１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料（繊維間の隙間にある空気と置き換わる）は、所望に応じて、これらの領域全体にわたるパターンとして適用されてよく、更に放射線、熱／触媒、又は酸化的手段を介して硬化されてもよい。

図１１ａ〜図１１ｂで最も良く示されるように、得られた半透明又は透明の（１つ又は複数の）シースルー透かしを通しての可視光の透過がここで可能である。その結果、（１つ又は複数の）シースルー透かし下で観察される印刷物は、明確に判読可能である。

適切なモジュラスの（１つ又は複数の）ポリマー又は樹脂性材料を選択することによって、例えば、印刷の前又は凹版印刷プロセスの過程で、半透明又は透明領域内に適用されるエンボス加工を行うことが可能とされてもよい。

本発明の（１つ又は複数の）シースルー透かしはまた、上述のように、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴の群から選択される１つ又は複数の特徴も、その周辺領域内に含んでよい。

例えば繊維又はドット（ｐｌａｎｃｈｅｔｔｅｓ）の形態のこれらの特徴は、抄紙用完成紙料（ｐａｐｅｒｍａｋｉｎｇ ｆｕｒｎｉｓｈ）にランダムに添加することによって付与されるか、又はシースルーセキュリティ要素の位置に選択的にインラインで配置されてもよい。加えて、又は別の選択肢として、そのような含有は、紙の特定の幅方向領域中に集中されてもよい。

第五の例示実施形態では、本発明のセキュリティシート又は文書は：
１つ又は複数の透かしを含む紙層；及び
１つ又は複数の透かしの各々を取り囲み、それによって（１つ又は複数の）透かしに枠付けをし、従ってその視覚的な認知性を高める紙層中の１つ又は複数の透明又は半透明領域
を含む単層紙である。

このような枠様領域は、各透かしを取り囲む領域を、ＵＶ硬化性、ｅビーム硬化性、若しくは熱硬化性のポリマー又は樹脂性材料等の１つ又は複数の透明化ポリマー又は樹脂性材料で処理することによって、透かしを入れた紙層中に形成されてよい。

これらの枠様領域の（１つ又は複数の）透明化材料による処理は、抄紙機上で、巻直し又は再巻取り等のオフラインのウェブプロセスで、シート切断の前の特定目的のオフラインのウェブプロセスで、又は個々のシートで行われてよい。

（１つ又は複数の）透明化材料は、適用された領域で紙に染み込み、繊維間の隙間の空気と置き換わる。（１つ又は複数の）この材料は、硬化性であっても、又は非硬化性であってもよい。透かしを入れた紙層の処理領域は、可視光の透過が可能となり、それによって、（１つ又は複数の）透かしの枠付けが成され、従ってその視覚的な認知性が向上する。

本発明の様々な実施形態について上記で述べてきたが、これらは、単に例として提示されるものであって、限定するものではないことは理解されるべきである。従って、本発明の広さ及び範囲は、これらの例示実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。

Claims (15)

1. １つ又は複数の向上した透かし又は透かしデザインを有するセキュリティシート又はセキュリティ文書であって、
   前記セキュリティシート又はセキュリティ文書は：
   １つ又は複数の透かし又は透かしデザインを含む繊維性シート材料であって、各透かしデザインは、前記繊維性シート材料の周囲領域と比べて繊維密度が減少した１つ又は複数の第一の領域と、前記シート材料の周囲領域と比べて繊維密度が類似した又は増加した１つ又は複数の第二の領域と、を有し、各透かしデザインは、上側又はオモテ部分と下側又はウラ部分とを有する、繊維性シート材料；並びに
   前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを視覚的に向上すること、機械検出若しくは読み取り可能とすること、又はその両方によって、前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段、
   を含み、
   前記手段は：
   ａ）前記１つ又は複数の透かしデザインの前記オモテ部分又は前記ウラ部分を少なくとも部分的に覆い、バンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、又はパッチの形態である１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素；
   ｂ）前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域の一方若しくは両方の上又は中に含まれ、
   ｉ．認識可能又は識別可能である識別マーク、並びに
   ｉｉ．着色性及び／又は機械検出可能若しくは機械読み取り可能である１つ又は複数の物質であって、紫外線若しくは赤外線反応性、発光性、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、及び磁性のセキュリティ繊維、タガント、ドット（ｐｌａｎｃｈｅｔｔｅ）、染料、及び顔料の形態である１つ又は複数の物質
   から成る群より選択される１つ又は複数のフィルム様でも箔様でもないセキュリティ要素；
   ｃ）前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方の中に含まれ、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ屈折率を有する１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料；
   ｄ）前記１つ又は複数の透かしデザインの前記オモテ部分又は前記ウラ部分のいずれかを覆う所望に応じて窓付きであってよい第二の紙層；並びに／又は
   ｅ）前記１つ又は複数の透かしデザインの各々を取り囲む１つ又は複数の透明又は半透明領域、
   から成る群より選択される、前記セキュリティシート又はセキュリティ文書。
2. 前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段が、前記１つ又は複数の透かしデザインの前記オモテ部分又は前記ウラ部分を少なくとも部分的に覆う１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素を含み、
   前記１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素が、バンド、ストリップ、ストライプ、スレッド、又はパッチの形態である、請求項１に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
3. 前記１つ又は複数の透かしデザインの繊維密度が減少した前記１つ又は複数の第一の領域が、１０〜１５ミクロンという低い厚さを有し、各透かしデザイン内でのその総面積が、該透かしデザインの総面積の約５〜約７５％の範囲内であり、
   約１００００ｍｍ^２の銀行紙幣内でのそれぞれの透かしデザインの総面積が、約５〜約２５％の範囲内である、請求項２に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
4. 前記１つ又は複数のフィルム様又は箔様セキュリティ要素が、配置されたマイクロレンズ群と配置されたマイクロサイズの像群の配列とを、前記配置された像群を前記配置されたマイクロレンズ群を通して観察したときに、１つ又は複数の合成拡大光学イメージが投影されるように構成された状態で含む１つ又は複数のマイクロ光学フィルム材料であり、
   前記１つ又は複数のマイクロ光学フィルム材料の各々は、有色イメージを透明若しくは微着色背景上に表示するか、又は、有色イメージを異なる色の半透明若しくは実質的に不透明の背景上に表示する、請求項２に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
5. 前記１つ又は複数の合成拡大光学イメージが、前記１つ又は複数の透かしデザインと調和又は連結している、請求項４に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
6. 前記１つ又は複数のマイクロ光学フィルム材料が、赤外透過性材料のみを用いて作製され、前記セキュリティシート又はセキュリティ文書が、特に透過で測定された場合に、向上したＩＲ輝度を示す、請求項４に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
7. 前記１つ又は複数のマイクロ光学フィルム材料が、前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインの全て又は一部を覆うパッチ又はスレッドの形態であり、
   前記１つ又は複数の透かしデザインは、前記透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び第二の領域のいずれか又は両方の中に、１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含有し、
   前記１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料は、セルロースと実質的に類似する屈折率又は組み合わせ屈折率を有する、請求項４に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
8. 前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方が、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び紫外線若しくは赤外線反応性、発光性、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、又は磁性のセキュリティ繊維、タガント、ドット、染料、顔料の形態の機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴から成る群より選択される１つ又は複数の特徴も含有する、請求項７に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
9. １平方メートルあたり約１０〜約５０ｇという低い坪量を有し、１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを含む第一の紙層であって、前記第一の紙層の各表面が、前記１つ又は複数の透かしデザインの上側若しくはオモテ部分、又はその下側若しくはウラ部分のいずれかを見せている第一の紙層；及び
   １平方メートルあたり約１０〜約５０ｇという低い坪量を有し、所望に応じて１つ又は複数の貫通窓を有してよい第二の紙層の形態である前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段であって、前記第二の紙層が、前記１つ又は複数の透かしデザインの前記上側若しくはオモテ部分を見せる前記第一の紙層の表面又は前記１つ又は複数の透かしデザインの前記下側若しくはウラ部分を見せる表面のいずれかを覆う、前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段、
   を含む多層紙である、請求項１に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
10. 前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段が、前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方の中に含有される１つ又は複数の着色性物質を含み、
    前記１つ又は複数の透かしデザインが、暗い背景上、透過光で観察したとき又は反射光で観察したときに、前記１つ又は複数の透かしデザインを取り囲む前記材料のバルク領域とは異なる色調又は階調を有する、請求項１に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
11. 前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方が、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、及び紫外線若しくは赤外線反応性、発光性、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、又は磁性のセキュリティ繊維、タガント、ドット、染料、顔料の形態の機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴から成る群より選択される１つ又は複数の特徴も含有する、請求項１０に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
12. 前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段が、前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方の中に含有される１つ又は複数のポリマー又は樹脂性材料を含む、請求項１に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
13. 前記１つ又は複数の透かしデザインの前記１つ又は複数の第一の領域及び前記１つ又は複数の第二の領域のいずれか又は両方が、認識可能又は識別可能である識別マークの形態の繊維密度増加領域、着色性である１つ又は複数の物質、及び紫外線若しくは赤外線反応性、発光性、サーモクロミック、フォトクロミック、エレクトロクロミック、金属製、又は磁性のセキュリティ繊維、タガント、ドット、染料、顔料の形態の機械検出可能又は機械読み取り可能である１つ又は複数の第二レベルセキュリティ的特徴から成る群より選択される１つ又は複数の特徴も含有する、請求項１２に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
14. 前記１つ又は複数の透かし又は透かしデザインを向上する手段が、前記１つ又は複数の透かしの各々を取り囲む１つ又は複数の透明又は半透明領域を含む、請求項１に記載のセキュリティシート又はセキュリティ文書。
15. 配置されたマイクロレンズ群及び配置されたマイクロサイズの像群を含むマイクロ光学フィルム材料であって、
    前記配置されたマイクロレンズ群及び前記配置されたマイクロサイズの像群が、前記配置された像群を前記配置されたマイクロレンズ群を通して観察したときに、１つ又は複数の合成拡大光学イメージが投影されるように構成され、
    前記マイクロ光学フィルム材料が、赤外線透過性材料のみを用いて作製され、特に透過で測定されるときに、向上したＩＲ輝度を示す、前記マイクロ光学フィルム材料。