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JP2016193989A - 分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステル - Google Patents

分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステル Download PDF

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JP2016193989A JP2015074263A JP2015074263A JP2016193989A JP 2016193989 A JP2016193989 A JP 2016193989A JP 2015074263 A JP2015074263 A JP 2015074263A JP 2015074263 A JP2015074263 A JP 2015074263A JP 2016193989 A JP2016193989 A JP 2016193989A
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雅行 杉本
Masayuki Sugimoto
雅行 杉本
山田 昌宏
Masahiro Yamada
昌宏 山田
村瀬 裕明
Hiroaki Murase
裕明 村瀬
新 渡辺
Arata Watanabe
新 渡辺
一史 ▲高▼野
一史 ▲高▼野
Kazufumi Kono
真之 廣田
Masayuki Hirota
真之 廣田
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Abstract

【課題】第2級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸を重合成分として含んでいても、ゲル化を有効に抑制しつつ、簡便かつ効率的に、分子量を向上できる分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステルを提供する。【解決手段】ポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを少なくとも重合成分とするヒドロキシル基を有するポリエステル前駆体を調製する工程と、このポリエステル前駆体と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させて鎖伸長する工程とを含んでいる。【選択図】なし

Description

本発明は、第2級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸由来の骨格を含み、かつ分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステルに関する。
近年、自然界の微生物により分解される生分解性プラスチックが注目を集めている。代表的な生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸やポリ(3−ヒドロキシ酪酸)などの第2級ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。ポリ乳酸は、乳酸(例えば、L−乳酸)を原料として化学的重合法により合成可能なため、高機能なポリ乳酸が数多く合成されている。
特開2014−15578号公報(特許文献1)には、溶媒の非存在下、末端カルボキシル基の割合が80モル%を超える乳酸オリゴマーを含むポリ乳酸プレポリマーとポリイソシアネート化合物とを、アミド化触媒の存在下で反応させて、高分子量のポリ乳酸を製造する方法が記載されている。この文献の実施例では、乳酸を重合してポリ乳酸オリゴマーを生成し、生成した乳酸オリゴマーと無水コハク酸との反応により末端ヒドロキシル基をカルボキシル基に変換したポリ乳酸プレポリマーを調製し、さらに、調製したポリ乳酸プレポリマーをヘキサメチレンジイソシアネートと反応させ、アミド結合を介して鎖伸長された高分子量のポリ乳酸を得ている。しかし、乳酸は第2級ヒドロキシル基の反応性が低く、乳酸オリゴマーの生成であっても、高温下で長時間を要する。また、この方法では、ヒドロキシル基を前記末端カルボキシル基に変換する工程も要するため、簡便に高分子量化できず、生産性が低い。さらに、アミド結合により耐熱性を向上できるものの、主に乳酸由来の単位で形成されているため、柔軟性が十分でない。
一方、ポリ乳酸などの第2級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸、ジオール及びジカルボン酸を重合成分に含むポリエステル樹脂も知られている。このような樹脂の製法では、反応性の高いジカルボン酸及びジオールを重合成分に含むため、柔軟性が向上できるとともに、ヒドロキシアルカン酸の単独重合体と比べると、分子量を大きくできる場合がある。
例えば、特開平9−110971号公報(特許文献2)には、触媒としてゲルマニウム化合物の存在下、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、4官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸、多価アルコール、多価カルボン酸又はその誘導体から選択された一種の多官能化合物、並びに2官能脂肪族オキシカルボン酸(例えば、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸など)を重合成分とする分岐構造を有する高分子量のポリエステル樹脂の製造方法が記載されている。この文献には、ゲルマニウム化合物の存在下、2官能脂肪族オキシカルボン酸を適量用いると重合速度の増大がみられ、高分子量のポリエステル樹脂が得られること、多価オキシカルボン酸を併用することにより、分岐構造を導入し、重合速度を増大できることも記載されている。この文献の実施例では、無水コハク酸100モルに対して、1,4−ブタンジオール115モル、酸化ゲルマニウムを1重量%溶解させた水溶液の2−ヒドロキシ−n−酢酸6.2モル、無水ピロメリット酸0.15モルを仕込み、窒素雰囲気下、185℃で0.5時間反応させた後、220℃で0.5時間反応させ、さらに、230℃、0.5mmHgの減圧下で、3時間反応させて、ポリエステル樹脂を得ている。しかし、触媒がゲルマニウム化合物に限定されることに加え、多価カルボン酸の割合が大きくなると、ゲル化が起こり、高分子量化できない場合がある。また、前記実施例の反応では、1,4−ブタンジオールと、無水コハク酸又は無水ピロメリット酸の酸無水物基とが優勢に反応し、反応系中では、反応性の低い第2級ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシ−n−酢酸が残存すると考えられる。そのため、この方法を3−ヒドロキシアルカン酸(例えば、3−ヒドロキシ酪酸)に適用すると、高温(220〜230℃)に加熱することにより、3−ヒドロキシアルカン酸が、分子内脱水反応を誘発して、不飽和モノカルボン酸(例えば、クロトン酸)を生成し、分子量を大きくできない場合がある。
特開2014−15578号公報(特許請求の範囲、実施例、[0012][0014]) 特開平9−110971号公報(特許請求の範囲、実施例、[0009][0010][0032])
従って、本発明の目的は、第2級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸を重合成分として含んでいても、ゲル化を有効に抑制しつつ、簡便かつ効率的に、分子量を大きくできる分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステルを提供することにある。
本発明の他の目的は、3−ヒドロキシアルカン酸(例えば、3−ヒドロキシ酪酸)を重合成分として含んでいても、分子内脱水反応を抑制(又は低減)でき、分子量を大きくできる分岐構造を有するポリエステルの製造方法及びそのポリエステルを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ヒドロキシル基(OH基という場合がある)を有するポリエステル前駆体を調製し、このポリエステル前駆体をポリカルボン酸又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物など)と反応させると、ゲル化を有効に抑制できるとともに、分岐構造を効率よく形成し、鎖伸長して分子量を大きくできること、この方法を利用すると、3−ヒドロキシアルカン酸を重合成分として含んでいても、前記ポリエステル前駆体に導入された第2級ヒドロキシル基と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(特に、酸無水物)とが容易に(又は効率よく)エステル化できるため、分子内脱水反応を抑制(又は低減)できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを少なくとも重合成分とし、かつヒドロキシル基を有するポリエステル前駆体を調製する工程と、このポリエステル前駆体と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させて鎖伸長する工程とを含んでいる。
前記ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルは、下記式(1)
Figure 2016193989
(式中、基Rはアルキル基、基Rは水素原子又はアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
で表される化合物であってもよく、式(1)において、nは1、基RはC1−4アルキル基、基Rは水素原子又はC1−2アルキル基であってもよい。また、前記ポリカルボン酸又はその反応性誘導体は、酸無水物であってもよい。
ポリエステル前駆体調製工程において、ジオールの割合は、ジカルボン酸又はその反応性誘導体100モルに対して、過剰量、例えば、102〜130モル程度であってもよく、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルの割合は、重合成分全体の総モル数に対して、1〜30モル%程度であってもよい。また、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体のカルボキシル基又は反応性誘導体基の割合は、1モルの酸無水物基を2モルのカルボキシル基として、ポリエステル前駆体のヒドロキシル基1モルに対して0.5〜1.5モル程度であってもよい。
本発明では、ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを少なくとも重合成分とし、かつポリエステル前駆体のヒドロキシル基と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体のカルボキシル基とがエステル結合を形成し、鎖伸長した分岐構造を有するポリエステルも包含する。このポリエステルにおいて、前記ヒドロキシアルカン酸は3−ヒドロキシアルカン酸を含んでいてもよい。また、前記ポリエステルの重量平均分子量は、7000以上であってもよい。
なお、本明細書中、ヒドロキシアルカン酸及びそのアルキルエステル(ヒドロキシルアルカン酸アルキル)をヒドロキシアルカン酸類、ジカルボン酸及びその反応性誘導体をジカルボン酸類、ポリカルボン酸及びその反応性誘導体をポリカルボン酸類と総称する場合がある。また、反応性誘導体基とは酸無水物基、アルコキシカルボニル基、及び酸ハライド基を総称する意味である。
本発明では、前記ポリエステル前駆体のヒドロキシル基と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体とが、効率よくエステル化して鎖伸長できるため、簡便かつ効率的に分子量を大きくできる。しかも、ポリエステル前駆体を予め調製するため、ゲル化を有効に抑制できる。また、前記反応性誘導体として酸無水物を利用すると、エステル化を促進でき、有効に鎖伸長できる。特に、3−ヒドロキシアルカン酸を重合成分として含み、第2級ヒドロキシル基を有するポリエステル前駆体であっても、鎖伸長工程において、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(特に酸無水物)と容易にエステル化できるため、分子内脱水反応を低減(又は抑制)しつつ、分子量を大きくできる。
本発明の製造方法は、ヒドロキシル基を有するポリエステル前駆体を調製する工程(ポリエステル前駆体調製工程という場合がある)と、このポリエステル前駆体と、ポリカルボン酸類とを反応させて鎖伸長する工程(鎖伸長工程という場合がある)とを含んでいる。
[ポリエステル前駆体の調製工程]
ポリエステル前駆体は、ジカルボン酸又はその反応性誘導体[例えば、酸無水物、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステルなどのC1−4アルキルエステル、酸ハライド(酸クロライドなど)など]と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを重合成分とするポリエステルであってもよい。
(ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステル)
ヒドロキシアルカン酸類としては、第2級ヒドロキシル基を有していれば、特に限定されず、例えば、下記式(1)で表されるヒドロキシアルカン酸類などが例示できる。
Figure 2016193989
(式中、基Rはアルキル基、基Rは水素原子又はアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
基Rは、nの数により適宜選択でき、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)などが例示できる。基Rは、特に直鎖状C1−4アルキル基(特にメチル基)である場合が多い。
nは、0〜10の整数であり、例えば、0〜8の整数(例えば、0〜6の整数)、好ましくは1〜4の整数(例えば、1〜3の整数)、さらに好ましくは1又は2、特に1であってもよい。なお、nの数とRの炭素数との合計は、例えば、1〜22の整数(例えば、1〜18の整数)、好ましくは2〜13の整数(例えば、2〜11の整数)、さらに好ましくは2〜6の整数、特に2〜4の整数であってもよい。nの数とRの炭素数との合計が大きすぎると、生分解性が低下する虞がある。
基Rは水素原子又はアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基(特にメチル基)であってもよい。
前記式(1)において、Rが水素原子である代表的なヒドロキシアルカン酸類としては、例えば、nが0である2−ヒドロキシアルカン酸[例えば、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシヘキサン酸などの2−ヒドロキシC3−14アルカン酸、好ましくは2−ヒドロキシC3−9アルカン酸、さらに好ましくは2−ヒドロキシC3−5アルカン酸など]、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸[例えば、3−ヒドロキシブタン酸(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシペンタン酸(3−ヒドロキシ吉草酸)、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸などの3−ヒドロキシC4−15アルカン酸、好ましくは3−ヒドロキシC4−10アルカン酸、さらに好ましくは3−ヒドロキシC4−6アルカン酸]、nが2である4−ヒドロキシアルカン酸(例えば、4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸などの4−ヒドロキシC5−16アルカン酸、好ましくは4−ヒドロキシC5−11アルカン酸、さらに好ましくは4−ヒドロキシC5−7アルカン酸)、nが3である5−ヒドロキシアルカン酸(例えば、5−ヒドロキシヘキサン酸、5−ヒドロキシヘプタン酸などの5−ヒドロキシC6−17アルカン酸、好ましくは5−ヒドロキシC6−12アルカン酸、さらに好ましくは5−ヒドロキシC6−8アルカン酸)、nが4である6−ヒドロキシアルカン酸(例えば、6−ヒドロキシヘプタン酸、6−ヒドロキシオクタン酸などの6−ヒドロキシC7−18アルカン酸、好ましくは6−ヒドロキシC7−13アルカン酸、さらに好ましくは6−ヒドロキシC7−9アルカン酸)、nが5である7−ヒドロキシアルカン酸(例えば、7−ヒドロキシオクタン酸、7−ヒドロキシノナン酸などの7−ヒドロキシC8−19アルカン酸、好ましくは7−ヒドロキシC8−14アルカン酸、さらに好ましくは7−ヒドロキシC8−10アルカン酸)、nが6である8−ヒドロキシアルカン酸(例えば、8−ヒドロキシノナン酸、8−ヒドロキシデカン酸などの8−ヒドロキシC9−20アルカン酸、好ましくは8−ヒドロキシC9−15アルカン酸、さらに好ましくは8−ヒドロキシC9−11アルカン酸)、nが7である9−ヒドロキシアルカン酸(例えば、9−ヒドロキシデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸などの9−ヒドロキシC10−21アルカン酸、好ましくは9−ヒドロキシC10−16アルカン酸、さらに好ましくは9−ヒドロキシC10−12アルカン酸)、nが8である10−ヒドロキシアルカン酸(例えば、10−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシドデカン酸などの10−ヒドロキシC11−22アルカン酸、好ましくは10−ヒドロキシC11−17アルカン酸、さらに好ましくは10−ヒドロキシC11−13アルカン酸など)、nが9である11−ヒドロキシアルカン酸(例えば、11−ヒドロキシドデカン酸などの11−ヒドロキシC12−23アルカン酸、好ましくは11−ヒドロキシC12−18アルカン酸、さらに好ましくは10−ヒドロキシC12−14アルカン酸など)、nが10である12−ヒドロキシアルカン酸(例えば、12−ヒドロキシトリデカン酸などの12−ヒドロキシC13−24アルカン酸、好ましくは12−ヒドロキシC13−19アルカン酸、さらに好ましくは12−ヒドロキシC13−15アルカン酸など)などが例示できる。
また、前記式(1)において、Rがアルキル基であるヒドロキシアルカン酸類としては、前記例示のヒドロキシアルカン酸のアルキルエステル(例えば、C1−6アルキルエステル、好ましくはC1−4アルキルエステル、さらに好ましくはメチル基、エチル基、特にメチル基)などが例示できる。これらのヒドロキシアルカン酸類は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシアルカン酸類のうち、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸類(例えば、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸などの3−ヒドロキシC4−10アルカン酸、これらの3−ヒドロキシアルカン酸のC1−2アルキルエステルなど)、nが2である4−ヒドロキシアルカン酸(4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸などの4−ヒドロキシC5−11アルカン酸、これらの4−ヒドロキシアルカン酸のC1−2アルキルエステルなど)などが好ましい。前記ヒドロキシアルカン酸類は、光学異性体(R体又はS体)であってもよく、ラセミ体であってもよい。また、Rがアルキル基であるヒドロキシアルカン酸類(ヒドロキシアルカン酸アルキル)は、市販品を用いてもよく、慣用のエステル化法[例えば、ヒドロキシアルカン酸とRに対応するアルコール(例えば、メタノール、エタノールなどのC1−4アルカノールなど)との反応]により生成してもよい。特に、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸類を好適に使用できる。また、3−ヒドロキシアルカン酸のアルキルエステルは、アルキルエステル化により、カルボニル基のα位の水素の脱離性が低下する場合があるため、不飽和モノカルボン酸(又は不飽和モノカルボン酸アルキル)の生成を有効に抑制できる場合がある。
(ジカルボン酸及びその反応性誘導体)
ジカルボン酸類としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、これらの反応性誘導体[例えば、アルキルエステル(C1−4アルキルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物など]などが例示できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2−16アルカンジカルボン酸など)、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸など)などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカンジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルイソフタル酸など)などのC6−10アレーンジカルボン酸など]、多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(例えば、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸)など]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など]などが挙げられる。これらのジカルボン酸類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど);9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9−(カルボキシ−カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−カルボキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−12アリール)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアルキル−アリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−カルボキシエチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(カルボキシメチル)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(カルボキシメチル)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキル−C6−12アリール)フルオレンなど]などが挙げられる。
これらのジカルボン酸類のうち、生分解性の観点から、脂肪族ジカルボン酸類(コハク酸、アジピン酸などのC2−6アルカンジカルボン酸など)、耐熱性などの観点から、脂環族ジカルボン酸類、芳香族ジカルボン酸類などが挙げられる。特に、酸無水物(例えば、無水コハク酸など)を使用すると、ポリエステル前駆体の分子量を大きくできる場合が多い。
(ジオール)
ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)などが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、イソソルバイドなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン(例えば、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど)、ビスフェノール類(例えば、ビフェノール、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体、フルオレン骨格を有するジオールなどが挙げられる。これらのジオールは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
フルオレン骨格を有するジオールとしては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を有するジオール化合物、例えば、下記式(2)で表されるジオールが挙げられる。
Figure 2016193989
(式中、環Zはアレーン環、Rはアルキレン基、R及びR及は置換基を示し、pは0又は1以上の整数、kは0〜4の整数、mは0又は1以上の整数である。)
前記式(2)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環[例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン)環などの縮合二乃至四環式アレーン環など]、環集合アレーン環[ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環)などのビC6−12アレーン環など]などが含まれる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよい。好ましいアレーン環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などが挙げられる。
前記式(2)において、アルキレン基Rとしては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基などのC2−6アルキレン基などが例示できる。なお、mが2以上の整数である場合、アルキレン基Rの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
オキシアルキレン基(OR)の数mは、例えば、0〜15の整数(例えば、0〜10の整数)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、1〜8)の整数、好ましくは0〜4(例えば、1〜4)の整数、特に0〜3(例えば、1〜3)程度の整数であってもよく、通常、0〜2の整数(例えば、0又は1)であってもよい。
基[HO−(RO)−]は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2〜4−位(特に、3−位又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位に置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係で基[HO−(RO)−]が置換している場合が多い。また、環集合アレーン環Zにおいて、基[HO−(RO)−]の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基[HO−(RO)−]の置換位置は、2−,3−,2’−,3’−,4’−位のいずれであってもよく、通常、2−,3’−,4’−位、好ましくは2−,4’−位(特に、2−位)に置換していてもよい。
前記式(2)において、置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−8シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基);アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アルキル−カルボニル基など);アルキルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルキルオキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など);ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
代表的な置換基Rとしては、C1−6アルキル基(特にメチル基)、C6−10アリール基(特にフェニル基)、C6−8アリール−C1−2アルキル基、C1−4アルコキシ基などが挙げられる。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば、0〜2)の整数、特に0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
置換基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。置換基Rはアルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基などのC1−3アルキル基)などである場合が多い。置換数kは0〜4(例えば、0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
前記式(2)において、mが0である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メチル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレンなどが例示できる。
前記式(2)において、mが1である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−12アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−メチル−3−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレンなど}などが例示できる。
前記式(2)において、mが2以上の化合物としては、前記mが0又は1の化合物に対応し、オキシアルキレン基(特にオキシC2−4アルキレン基)の繰り返し単位mが2〜5の化合物などが挙げられる。
これらのジオールのうち、生分解性の観点から、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルカンジオールなど)、耐熱性の観点から、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられる。
なお、重合成分として、他の成分、例えば、ヒドロキシカルボン酸(例えば、第1級又は第3級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸など)、そのエステル形成性誘導体[例えば、低級アルキルエステル(C1−4アルキルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライドなど)など]、ラクトンなどを用いてもよい。
第1級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシペンタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、9−ヒドロキシナノン酸、10−ヒドロキシデカン酸などのヒドロキシC2−15アルカン酸など)などが例示でき、第3級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−ペンタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸、4−ヒドロキシ−4−メチル−ブタン酸、5−ヒドロキシ−5−メチル−ペンタン酸、6−ヒドロキシ−6−メチル−ヘキサン酸などのC1−6アルキル−ヒドロキシC3−15アルカン酸などが例示できる。
ラクトンとしては、前記第1級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸に対応するラクトン(例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC3−15ラクトンなど)、前記第3級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸に対応するラクトン(例えば、β−ジメチルプロピオラクトン、γ−ジメチルブチロラクトンなどのジC1−12アルキル−C3−15ラクトンなど)などが例示できる。これらの他の成分は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の方法では、末端にジオール又はヒドロキシアルカン酸(特に、ヒドロキシアルカン酸)単位を導入するため、ジオールの割合は、ジカルボン酸類に対して過剰モル、例えば、前記ジカルボン酸類100モルに対して、102〜130モル、好ましくは105〜120モル(例えば、105〜110モル)程度であってもよい。
ヒドロキシアルカン酸類の割合は、ポリエステル前駆体に対するヒドロキシアルカン酸単位の導入割合などに応じて適宜選択でき、重合成分全体の総モル数に対して、例えば、1〜30モル%(例えば、2〜15モル%)、好ましくは3〜10モル%、さらに好ましくは4〜7モル%(例えば、4〜6モル%)程度であってもよい。3−ヒドロキシアルカン酸類を使用した場合、分子内脱水反応が起こる虞があるため、3−ヒドロキシアルカン酸類の割合が大きすぎると、分子量が低下する場合がある。
なお、ポリエステル前駆体のOH基は、ジオール由来の第1級OH基であってもよく、ヒドロキシルアルカン酸由来の第2級OH基であってもよいが、通常、反応性の低いヒドロキシアルカン酸由来の第2級OH基が末端に導入されると推定できるため、第2級OH基である場合が多い。
前記ポリエステル前駆体は、前記重合成分を縮合重合させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジオールとジカルボン酸とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。
なお、ヒドロキシアルカン酸類に対して、前記ジカルボン酸類[ジカルボン酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸など)]を反応させて、予め、3−ヒドロキシアルカン酸由来の骨格を有するジカルボン酸(又はその反応性誘導体)を調製し、このジカルボン酸(又はその反応性誘導体)を重合反応に供してもよい。このようなジカルボン酸(又はその反応性誘導体)の形態であると、第2級OH基がエステル化されているため、3−ヒドロキシアルカン酸類(例えば、3−ヒドロキシ酪酸など)であっても、分子内脱水による不飽和モノカルボン酸(特に、α,β−不飽和カルボン酸)を生成しないため、3−ヒドロキシアルカン酸由来の骨格を効率よくポリエステル前駆体に導入できるとともに、分子量を向上できる。
本発明の方法では、無触媒であってもよく、特定の触媒に限定されず、慣用の触媒を利用してもよい。触媒としては、例えば、金属触媒[例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物など]、塩基触媒(例えば、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)など)、酸触媒[例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など)など]などが挙げられる。金属化合物としては、例えば、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物(酸化ゲルマニウムなど)、金属塩化物(塩化スズなど)、金属アルコキシド(チタンテトラアルコキシド、チタンテトラt−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛t−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドなど)、アルキル金属(トリアルキルアルミニウムなど)などが例示できる。これらの触媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸類1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、常温下又は減圧下で行ってもよく、生成する水などを反応系外に留出しつつ、行ってもよい。
反応温度は、例えば、70〜250℃(例えば、120〜220℃)、好ましくは150〜200℃程度であってもよい。特に、3−ヒドロキシアルカン酸類を用いると、分子内脱水反応が起こり、不飽和モノカルボン酸(又は不飽和モノカルボン酸アルキル)が生じる虞があるため、反応温度は、比較的低温、例えば、50〜190℃、好ましくは100〜185℃、(例えば、130〜180℃)程度であってもよい。反応時間は、特に限定されず、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間程度であってもよい。なお、ヒドロキシアルカン酸のアルキルエステルは、低温であっても、重合できる場合が多い。
なお、反応終了後、ポリエステル前駆体を慣用の方法により分離精製してもよいが、通常、分離精製せずに、鎖伸長工程に供する場合が多い。
(ポリエステル前駆体)
ポリエステル前駆体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、1000〜70000(例えば、2000〜50000)、好ましくは3000〜30000、さらに好ましくは4000〜20000(例えば、5000〜10000)程度であってもよい。また、分子量分布(Mw/Mn,Mnは数平均分子量を示す)は、例えば、1.2〜3.5、好ましくは1.4〜3.0、さらに好ましくは1.6〜2.5(例えば、1.8〜2.2)程度であってもよい。
(鎖伸長工程)
鎖伸長工程では、前記ポリエステル前駆体とポリカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させることにより、ポリエステル前駆体のヒドロキシル基と、ポリカルボン酸類のカルボキシル基(又は反応性誘導体基)とがエステル結合を形成し、効率よく鎖伸長できる。この鎖伸長工程では、ポリエステル前駆体の形態で、ポリカルボン酸類と反応させるため、ゲル化を抑制しつつ、効率よく分岐構造を形成できる。
ポリカルボン酸類は、1分子中に3以上のカルボキシル基(又はその反応性誘導体基)を有していればよく、カルボキシル基(又はその反応性誘導体基)の数は、例えば、3〜8、好ましくは3〜6(例えば、3〜5)、さらに好ましくは3又は4であってもよい。カルボキシル基(又はその反応性誘導体基)の数が大きすぎると、ポリエステルがゲル化する虞がある。
ポリカルボン酸類は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)などが例示できる。置換基は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリカルボン酸としては、脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、1,2,3−プロパントリカルボン酸、プロペン−1,2,3−トリカルボン酸、2−メチルプロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などのC3−10アルカン又はアルケン−トリ乃至ヘキサカルボン酸、好ましくはC3−6アルカン又はアルケン−トリ又はテトラカルボン酸などが例示できる。
脂環族ポリカルボン酸としては、例えば、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸などのC4−10シクロアルカン又はアルケン−トリ乃至ヘキサカルボン酸、C4−8シクロアルカン又はアルケン−トリ又はテトラカルボン酸などが例示できる。
芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸などのC6−12アレーン−トリ乃至ヘキサカルボン酸、好ましくはC6−10アレーン−トリ又はテトラカルボン酸などが例示できる。これらのポリカルボン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリカルボン酸の反応性誘導体としては、前記ポリカルボン酸から形成された酸無水物、アルキルエステル、酸ハライドなどが挙げられる。
酸無水物としては、脂肪族カルボン酸無水物、脂環族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などのC3−10アルカン又はアルケン−トリ乃至ヘキサカルボン酸一乃至三無水物、C3−6アルカン又はアルケン−トリ又はテトラカルボン酸一又は二無水物などが例示できる。
脂環族カルボン酸無水物としては、例えば、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸三無水物などのC4−10シクロアルカン又はアルケン−トリ乃至ヘキサカルボン酸一乃至三無水物、C4−8シクロアルカン−トリ又はテトラカルボン酸一又は二無水物などが例示できる。
芳香族カルボン酸無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸−1,2−無水物(トリメリット酸)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのC6−12アレーン−トリ乃至ヘキサカルボン酸一乃至三無水物、好ましくはC6−10アレーン−トリ又はテトラカルボン酸一又は二無水物などが例示できる。これらの酸無水物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、i−プロピルエステル、ブチルエステル、i−ブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルエステル、特にメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
酸ハライドとしては、酸クロライド、酸ブロマイド、酸ヨージドなどが挙げられる。
これらのポリカルボン酸類のうち、生分解性の観点からは、脂肪族ポリカルボン酸類が好ましい。なお、これらのポリカルボン酸類のうち、ゲル化抑制の観点などから、トリ又はテトラカルボン酸(又はその反応性誘導体)などが好ましい。特に、酸無水物(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)を利用すると、酸無水物基とポリエステル前駆体のヒドロキシル基との反応性が高く、効率よく鎖伸長できる場合が多い。
ポリカルボン酸(又はその反応性誘導体)のカルボキシル基(又は反応性誘導体基)の割合は、ポリエステル前駆体のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.5〜1.5モル、好ましくは、0.7〜1.3モル(例えば、0.8〜1.2モル)、さらに好ましくは0.9〜1.1モル(特に、0.9〜1.0)モル程度であってもよい。なお、酸無水物基は、1モルの酸無水物基を2モルのカルボキシル基として算出できる。
反応は、無触媒下で行ってもよく、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、前記例示の酸触媒、塩基触媒、金属アルコキシドなどが挙げられ、酸触媒を好適に使用できる。
触媒の割合は、ポリカルボン酸類のカルボキシル基(又は反応性誘導体基)に対して、0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜1モル%、さらに好ましくは0.1〜0.5モル%程度であってもよい。
なお、前記酸ハライドを使用する場合、反応により生じるハロゲン化水素をトラップするため、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの無機塩基、アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などの有機塩基などが挙げられる。
塩基の使用量は、特に限定されないが、例えば、前記ヒドロキシアルカン酸類(のヒドロキシル基)1モルに対して、例えば、0.1〜20モル、好ましくは1〜10モル(例えば、1.5〜5モル)程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行ってもよく、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。さらに、反応は溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、前記と同様の溶媒を使用できる。
反応温度は、例えば、100〜250℃、好ましくは150〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃程度であってもよい。反応温度が高すぎると、ポリエステルに対する3−ヒドロキシアルカン酸単位の導入量(又は導入割合)が低下する虞がある。また、反応時間は、特に限定されず、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応に供するポリエステル前駆体の末端に3−ヒドロキシアルカン酸単位が導入されても、エステル化されているため、触媒(例えば、酸触媒)の存在下においても、カルボニル基のα位の水素の脱離性を低下できる場合がある。
また、反応終了後、ポリエステルは、慣用の分離方法、例えば、反応生成物を貧溶媒により再沈殿する方法(例えば、高分子量ポリエステルの溶解性が低く、かつ未反応成分や低分子量ポリエステルの溶解性が高い溶媒により分画する方法など)により分離精製してもよい。貧溶媒としては、例えば、水性溶媒[例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール)など]、炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)などが例示できる。
このように本発明の方法では、前記重合成分を同時に添加するのではなく、ポリエステル前駆体調製工程と、鎖伸長工程とを有するため、前記割合のポリカルボン酸類を添加しても、架橋構造の形成によるゲル化を有効に抑制でき、効率よく鎖伸長できる。そのため、ポリエステルの分子量(平均分子量)を大きくできる。
また、本発明の方法では、3−ヒドロキシアルカン酸を重合成分に含んでいても、分子量を大きくできる。すなわち、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体(特に酸無水物)などを利用すると、ポリエステル前駆体の第2級ヒドロキシル基のエステル化により、効率よく鎖伸長でき、3−ヒドロキシアルカン酸単位の含有量が高いポリエステルを得ることができる。
(ポリエステル)
本発明のポリエステルは、前記ポリエステル前駆体のヒドロキシル基(特に、ヒドロキシアルカン酸由来の第2級OH基)と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体のカルボキシル基(又は反応性誘導体基)とがエステル結合を形成し、鎖伸長した分岐構造を有している。すなわち、ポリエステル前駆体単位とポリカルボン酸単位とを有している。
特に、脂肪族ジカルボン酸類、脂肪族ジオール、及びヒドロキシアルカン酸類を重合成分とするポリエステル前駆体を構成単位に有するポリエステルは、生分解性に優れ、生分解性プラスチックとして有用である。また、前記ポリエステルは、ポリエステル前駆体の形態で鎖伸長して得られるため、分岐構造を有するものの、架橋点が比較的少ないと推定でき、生分解に有利である。
前記ポリエステルのヒドロキシアルカン酸単位の割合は、重合成分全体の総モル数に対して、例えば、1モル%以上(例えば、2〜15モル%)、好ましくは3モル%以上(3〜10モル%)程度であってもよく、例えば、5モル%以上(例えば、7〜25モル%)、好ましくは10モル%以上(例えば、15〜20モル%)程度にすることもできる。ヒドロキシアルカン酸の割合が小さすぎると、生分解性が低下する虞がある。
前記ポリエステルは、化学的重合が困難な3−ヒドロキシアルカン酸(特に3−ヒドロキシ酪酸)由来の骨格を含んでいても、比較的高い分子量を有している。このポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、7000以上(例えば、7000〜100000)、好ましくは8000以上(例えば、8000〜70000)程度であってもよく、例えば、10000以上(例えば、10000〜60000)、好ましくは15000以上(例えば、20000〜50000)程度にすることもできる。また、分子量分布(Mw/Mn,Mnは数平均分子量を示す)は、例えば、1.2〜3.5、好ましくは1.4〜3.0、さらに好ましくは1.6〜2.5(例えば、1.8〜2.2)程度であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(分子量)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(TOSOH社製、「HLC−8320GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で測定した。
実施例1
コハク酸35.4g(0.300mol)、1,4-ブタンジオール28.4g(0.315mol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸3g(0.029mol)、二酸化ゲルマニウム(GeO)0.3gを200mlフラスコに入れ、180℃で1時間反応させた。その後、減圧下1.5時間180℃で反応させた後、減圧を解き、無水トリメリット酸1.7g(0.009mol)を加え、さらに減圧下、180℃から220℃まで加熱して、220℃で3時間反応させてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量Mnは4430、重量平均分子量Mwは8020であった。なお、ポリエステルの構成単位のうち、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合は、ポリエステルの全構成単位に対して、3.6モル%であった[(R)−3−ヒドロキシ酪酸の仕込み量に対して約8割の(R)−3−ヒドロキシ酪酸がポリエステルに導入された]。
比較例1
無水トリメリット酸を加えないこと以外は、実施例1と同様の方法によりポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量Mnは1430、重量平均分子量Mwは6480であった。なお、ポリエステルの構成単位のうち、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合は、ポリエステルの全構成単位に対して、2.3モル%であった[(R)−3−ヒドロキシ酪酸の仕込み量に対して約5割の(R)−3−ヒドロキシ酪酸がポリエステルに導入された]。
実施例1は、比較例1と比べ、ポリエステルの分子量及び3−ヒドロキシ酪酸の導入割合が増加した。すなわち、実施例1よりも、比較例1で得られたポリエステルの分子量が低い理由は、3−ヒドロキシ酪酸の分子内脱水により、不飽和モノカルボン酸が生成したためであると考えられる。また、実施例1よりも、比較例1で得られたポリエステルの3−ヒドロキシ酪酸の導入量が低い理由は、エステル交換や分解などにより、ポリエステル中の3−ヒドロキシ酪酸が脱離したためであると考えられる。
本発明のポリエステルは、塗料、帯電防止剤、インキ、接着剤、粘着剤、電気・電子材料(例えば、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体など)、電気・電子部品又は機器(例えば、光学レンズ、光学フィルム、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池など)、機械部品又は機器(例えば、自動車、航空・宇宙材料、センサなど)などに利用できる。特に、生分解性が高いため、押出成形、射出成形などの成形体により、各種分野の成形部材(例えば、ケージング、ハウジングなどの成形体)、容器(食品、日用品、電気、電子機器及び部品などの容器)、包装材料などに好適に利用してもよい。なお、前記ポリエステル樹脂は、ヒドロキシアルカン酸由来の骨格を含み、生体適合性も有するため、医療分野(例えば、医療機器など)にも利用できる。

Claims (8)

  1. ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを少なくとも重合成分とし、かつヒドロキシル基を有するポリエステル前駆体を調製する工程と、このポリエステル前駆体と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させて鎖伸長する工程とを含む分岐構造を有するポリエステルの製造方法。
  2. ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルが、下記式(1)
    Figure 2016193989
    (式中、基Rはアルキル基、基Rは水素原子又はアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
    で表される化合物であり、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体が、酸無水物である請求項1記載の製造方法。
  3. 式(1)において、nが1、基RがC1−4アルキル基、基Rが水素原子又はC1−2アルキル基である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. ポリエステル前駆体調製工程において、ジオールの割合が、ジカルボン酸又はその反応性誘導体100モルに対して、102〜130モルであり、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルの割合が、重合成分全体の総モル数に対して、1〜30モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. ポリカルボン酸又はその反応性誘導体のカルボキシル基又は反応性誘導体基の割合が、1モルの酸無水物基を2モルのカルボキシル基として、ポリエステル前駆体のヒドロキシル基1モルに対して0.5〜1.5モルである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオールと、ヒドロキシアルカン酸又はそのアルキルエステルとを少なくとも重合成分とし、かつポリエステル前駆体のヒドロキシル基と、ポリカルボン酸又はその反応性誘導体のカルボキシル基とがエステル結合を形成し、鎖伸長した分岐構造を有するポリエステル。
  7. ヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシアルカン酸を含む請求項6に記載のポリエステル。
  8. 重量平均分子量が、7000以上である請求項6又は7に記載のポリエステル。
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