以下に、添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置について詳細に説明する。
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る硬貨処理装置11の内部構成を説明するための模式図である。硬貨処理装置11は、硬貨の入金処理及び出金処理を行う硬貨入出金機である。硬貨処理装置11の機体12の上部前側には、硬貨を入出金するための硬貨取引口13と、この硬貨取引口13の下側で硬貨を受け入れて貯留するための受皿部14とが形成されている。硬貨取引口13にはシャッター15が開閉可能に配置されている。受皿部14への硬貨の投入や受皿部14からの硬貨の抜き取りが許容されるタイミングでシャッター15が自動的に開放され、硬貨の投入や抜き取りの操作が完了するとシャッター15は自動的に閉鎖するようになっている。
受皿部14は、機体12外から硬貨取引口13に投入された入金硬貨、機体12内から硬貨取引口13に投出された出金硬貨を受け入れて貯留する。受皿部14の底面の一部は開閉可能に構成されており、底面を開放すると、受皿部14に貯留されていた硬貨が装置内で下方へ放出される。
機体12内には、硬貨を搬送する搬送路17が配設されている。この搬送路17は、機体12の前後方向(X軸方向)に設けられた第1搬送路部18と、この第1搬送路部18の上方の位置で前後方向に設けられた第2搬送路部19と、これら第1搬送路部18及び第2搬送路部19の後端間を接続する第3搬送路部20とを備えている。第2搬送路部19の前端は受皿部14の上部に接続されており、第2搬送路部19の前端に搬送した硬貨を受皿部14に放出できるようになっている。
第1搬送路部18の前側には繰出部21が接続され、第2搬送路部19の前側には一時保留部23が接続されている。また、第1搬送路部18の繰出部21より後側(X軸負方向側)と第2搬送路部19の一時保留部23より後側には、硬貨を金種別に収納する収納部22が接続されている。そして、第2搬送路部19の一時保留部23と収納部22との間には、硬貨の金種、真偽、正損等を識別する識別部24が配設されている。繰出部21、収納部22及び一時保留部23は、搬送路17を搬送される硬貨を分岐して収納すると共に、収納している硬貨を1枚ずつ搬送路17に繰り出せるように構成されている。搬送路17では、所定間隔で複数の搬送突起が設けられた搬送ベルトが、搬送突起によって硬貨を押しながら搬送する。
繰出部21は受皿部14の下方に位置し、受皿部14と繰出部21との間には、受皿部14の底面に設けられた受皿部ゲートを開放して放出された硬貨を繰出部21に導くシュート25が設けられている。また、機体12の前面には返却口26が設けられている。また、繰出部21の底面には開閉可能な繰出部ゲートが設けられており、繰出部21に受けた硬貨の中に異物が混入していた場合には、繰出部ゲートを開いてこの異物を排出して返却口26から返却できるようになっている。受皿部ゲート及び繰出部ゲートには開閉を検知するセンサが設けられており、これらのゲートが閉状態にあることを確認してから受皿部14及び繰出部21を利用する処理が開始される。なお、搬送路17を搬送される硬貨のうち変形した硬貨や穴の開いた硬貨等の異常硬貨は、第2搬送路部19の前端から受皿部14に放出して返却される。
また、機体12内の下部には、収納部22が満杯になって収納しきれなかった硬貨をオーバーフロー硬貨として収納するオーバーフロースタッカ29と、補充硬貨や回収硬貨を収納する硬貨カセット30とが配置されている。オーバーフロースタッカ29と硬貨カセット30の間には、これらオーバーフロースタッカ29及び硬貨カセット30から繰り出される硬貨を上方の一時保留部に搬送する搬送機構31が配置されている。オーバーフロースタッカ29には、硬貨を搬送機構31に繰り出すためのベルト32と、受皿部14内の取り忘れ硬貨を回収するための回収カセット33とが配設されている。また、硬貨カセット30には、硬貨を搬送機構31に繰り出すためのベルト34と、リジェクト硬貨を回収するためのリジェクトボックス35とが配設されている。
第1搬送路部18には、オーバーフロー硬貨をオーバーフロースタッカ29に分岐する分岐部36と、取り忘れ硬貨を回収カセット33に分岐する分岐部37と、リジェクト硬貨をリジェクトボックス35に分岐する分岐部38と、回収硬貨を硬貨カセット30に分岐する分岐部39とが設けられている。
繰出部21、収納部22及び一時保留部23は、硬貨収納繰出ユニットで構成されており、多数の硬貨を収納すると共に、収納されている硬貨を1枚ずつ搬送路17に繰り出す機能を有する。
[硬貨収納繰出ユニット]
図2は、繰出部21を構成する硬貨収納繰出ユニットの構造を示す図である。硬貨収納繰出ユニットは、上方一部のみを露出した状態で、図2に斜線で示したカバー43によって覆われており、回転円盤41とカバー43との間に、多数の硬貨を収納する収納空間が形成されるようになっている。
硬貨収納繰出ユニットは、斜め上方に向く傾斜姿勢で回転する回転円盤41、この回転円盤41の表面41a側との間に硬貨を収納する収納空間を形成するカバー43、回転円盤41の表面41aの上部域に対向配置されて回転円盤41から搬送路17へ向けて繰り出す硬貨をガイドする繰出ガイド44、この繰出ガイド44によって回転円盤41の上部域から搬送路17へ繰り出される硬貨が通る湾曲形状の案内通路45、この案内通路45と搬送路17とにまたがって配置される受渡円盤46、この受渡円盤46に対向して配置される図示しない規制ガイド等を備えている。
回転円盤41は、回転軸49を中心として回転する。表面41aの周辺域には、硬貨接触面50が形成されている。硬貨接触面50の径方向の寸法は、外径が処理対象範囲内の硬貨1枚の直径寸法より大きくかつ硬貨2枚分の直径寸法より小さくなっている。搬送路17へ繰り出される硬貨は、硬貨面を硬貨接触面50に接触させた状態で、回転円盤41の回転に伴って上方へ送られる。
硬貨接触面50には、収納空間内で、硬貨接触面50に硬貨面が接触した1枚の硬貨の周縁部に接触して、この硬貨を回転円盤41の上部域に拾い上げる繰出突起52が、径方向に複数個配置されている。また、繰出突起52は、硬貨接触面50の円周方向では、処理対象範囲の硬貨径より大きい所定の間隔をあけて複数個配置されている。回転円盤41の表面41a(硬貨接触面50)から突出する繰出突起52は、突出寸法が処理対象とする最小厚さ硬貨の厚さ寸法より小さく、厚さ方向に1枚の硬貨のみが引っ掛かるように構成されている。繰出突起52は、繰出回転方向(図2反時計回り方向)に対向する先端面が曲面に形成され、反対の後端側の表面が回転円盤41の表面41aから傾斜状に立ち上がる傾斜面に形成されている。
回転円盤41の溝部51の内周側には、各繰出突起52で回転円盤41の上部域に拾い上げられる硬貨の周縁下部側を支持する硬貨支持部53が、各繰出突起52の位置に対応して円周方向に複数個配置されている。回転円盤41の表面41a(硬貨接触面50)から突出する硬貨支持部53は、突出寸法が処理対象とする最小厚さの硬貨の厚さ寸法より小さく、厚さ方向に1枚の硬貨のみが載るように構成されている。硬貨支持部53と回転円盤41の外周縁との間の径方向の寸法は、外径が処理対象範囲内の硬貨1枚の直径寸法より大きくかつ硬貨2枚分の直径寸法より小さく、1枚の硬貨のみが載るように構成されている。
これら繰出突起52及び硬貨支持部53によって、回転円盤41の回転により収納空間内の硬貨を1枚ずつ支持して回転円盤41の上部域に移動させると共に、繰出ガイド44と協働して回転円盤41の上部域から搬送路17へ向けて硬貨を繰り出す繰出手段54が構成されている。
回転円盤41の硬貨接触面50には、各繰出突起52及び硬貨支持部53の位置に対応して、収納空間内の硬貨の残留を検知するための複数のセンサ用孔部55が形成されている。
また、回転円盤41には、回転円盤41の回転により回転円盤41の上部域に移動する硬貨のうち外径が処理対象範囲外の硬貨が落下するように、排除手段57が設けられている。排除手段57は、外径が処理対象範囲の硬貨より小径の硬貨を排除させる複数の小径側排除部58を有している。小径側排除部58の繰出回転方向先端部及びその反対側の後端部が、外径が処理対象範囲外の硬貨に接触して、この硬貨を落下させるようになっている。
繰出ガイド44は、回転円盤41の硬貨接触面50との間に硬貨が入り込まない間隙をあけて対向配置されている。回転円盤41の硬貨接触面50に対向する繰出ガイド44の裏面には、回転円盤41の回転により各繰出突起52及び小径側排除部58が通過可能な溝部が形成されており、繰出ガイド44に衝突することなく回転円盤41が回転できるようになっている。繰出ガイド44は、先端が回転円盤41の溝部51内に入り込んだ状態で配置され、この繰出ガイド44の先端から連続する上縁に、上方の搬送路17へ向けて湾曲しながら硬貨を案内するガイド縁部44aが形成されている。
ガイド縁部44aに沿って硬貨を案内する案内通路45は、通路面が回転円盤41の表面41a(硬貨接触面50)及び搬送路17の通路面と面一に形成され、回転円盤41の上部域と搬送路17に開口する出入口21aとの間を接続している。この案内通路45には、ガイド部材60と一体に移動して案内通路45の通路面から出没する規制部63が配置されている。この規制部63は、ガイド部材60の閉塞部61が開放状態のときには案内通路45の通路面に埋没して硬貨の通過を許容し、閉塞部61が閉塞位置に移動したときには案内通路45の通路面から突出して案内通路45内に進入しようとする硬貨を収納空間内に落下させるように構成されている。
また、受渡円盤46は、案内通路45と搬送路17とにまたがった位置に、受渡円盤46の表面が回転円盤41の表面41a(硬貨接触面50)及び搬送路17の通路面と面一となるように回転可能に配置されている。受渡円盤46の周辺部には、硬貨の周縁部に当接して回転円盤41側から搬送路17へこの硬貨を押しながら繰り出す突部65が突設されている。受渡円盤46は、回転円盤41と連動して回転駆動され、回転円盤41が繰出回転方向(図中反時計回り方向)に回転するときに、この受渡円盤46も繰出回転方向(図中時計回り方向)に回転する。回転円盤41の繰出突起52で押されながら繰出ガイド44に沿って案内通路45に送り込まれる硬貨の周縁部に、受渡円盤46の突部65が当接して、この硬貨を搬送路17へ繰り出すようになっている。搬送路17に繰り出された硬貨は、搬送ベルト211に設けられた搬送突起212によって押されながら搬送される。
この他、硬貨が通過する案内通路45及び受渡円盤46が配置された領域で、硬貨1枚のみが通過するように、処理対象とする硬貨の厚さ寸法に合わせて、硬貨が通過する空間を規制する規制ガイドや、この空間に硬貨が詰まってしまった場合に、この硬貨が落下するように、規制ガイドを移動させて空間を拡げる駆動部等が設けられている。これらを含め、回転円盤41を利用する硬貨収納繰出ユニットの機能及び構造や、硬貨収納繰出ユニットを利用して硬貨の入金処理及び出金処理を行う硬貨処理装置の機能及び構造は、特許第5441256号公報、特許第5466895号公報等に開示しているので詳細な説明は省略する。なお、以下に説明する各処理は、図示しない制御部が、各部の機能及び動作を制御することによって行われる。
[回転円盤の位置合わせ]
硬貨収納繰出ユニットでは、回転円盤41で掻き上げて受渡円盤46によって搬送路17に送り出された硬貨が、搬送ベルト211の搬送突起212に衝突することがないように、回転円盤41及び受渡円盤46の回転と、搬送ベルト211の駆動とが同期した状態で行われる。このため、硬貨収納繰出ユニットでは、回転円盤41を所定の回転位置で停止できるようになっている。具体的には、回転円盤41が所定位置となった場合に、回転円盤41に設けられたセンサ用孔部55透過した検知光を受光できるように、検知光を投受光する収納部センサが設けられている。収納部センサを利用することにより、回転円盤41を回転させて、所定の回転位置で停止させることができる。
収納部センサは、収納空間内に残留する硬貨を検知するための位置、収納空間が硬貨で満杯になったことを検知するための位置等、複数の位置に設けられている。回転円盤41を所定の回転位置で停止させる際には、収納空間内の硬貨が満杯状態になっても、これらの硬貨によって検知光が遮られることがないように、繰出ガイド44より上方の位置に設けた収納部センサを利用して回転円盤41の回転位置を検知するが、繰出ガイド44から搬送路17へ至る領域で硬貨の詰まりが発生すると、検知光が遮られて回転円盤41の回転位置を検知できなくなる。
硬貨処理装置11では、繰り出しガイド44上部の搬送路17の搬送ベルトを低速で駆動したり、受渡円盤46を回転させたりするなどして、この硬貨の詰まりを解消する動作を行えるようになっている。これにより、検知光を遮る硬貨が移動して検知光を利用できるようになれば収納部センサを利用するが、硬貨による検知光の遮光が解消されない場合には、別のセンサを利用して回転円盤41の回転位置を検知する。
具体的には、回転円盤41を回転させる回転軸49の回転位置を検知するように設けられたロータリーエンコーダ等の回転センサを利用する。そして、センサ用孔部55を透過する収納部センサの検知光を利用できる場合には、この検知光による検知結果を利用して回転円盤41の位置を検知して、検知光による検知結果を利用できない場合には、回転センサを利用して回転円盤41の位置を検知する。
これにより、硬貨収納繰出ユニットでは、収納空間に収納された硬貨や、繰出ガイド44の周辺に詰まった硬貨等により、回転円盤41の回転位置の検知に利用している収納部センサが利用できなくなった場合でも、別のセンサを利用して回転円盤41の回転位置を検知して、回転円盤41を所定の回転位置で停止させることができる。回転円盤41を所定の回転位置で停止させることができなければ、エラーとなって硬貨処理を実行できなくなるが、これを回避して硬貨処理を継続することができる。
[初期化動作]
回転円盤41の位置合わせは、例えば、入金処理の開始時に初期化動作の一部として実行される。入金処理等が連続して行われている間は、先の入金処理時に回転円盤41の回転位置を認識しているので、これを利用して続けて次の入金処理を行うことができる。このため、回転円盤41の位置合わせ等を行わずに連続して入金処理を実行できるが、例えば、硬貨処理装置11が起動された直後や、硬貨処理装置11が省エネモードになった後、省エネモードから復帰した際には、回転円盤41がどの回転位置にあるかが不明になるため、回転円盤41の位置合わせを含む初期化動作が必要になる。
まず、入金処理時の硬貨の流れを説明する。図3は、入金処理時に硬貨取引口13から投入された入金硬貨が一時保留部23に収納されるまでの硬貨の動きを示す模式図である。また、図4は、入金処理時に一時保留部23に収納された硬貨が、対応する収納部22へ収納されるまでの硬貨の動きを示す模式図である。
入金処理では、硬貨取引口13から受皿部14に投入された入金硬貨が、シュート25を経て、図3の矢印201で示すように繰出部21に収納される。繰出部21に収納された入金硬貨は、回転円盤41によって1枚ずつ順に搬送路17に繰り出された後、矢印202で示すように、識別部24へ向けて搬送される。そして、識別部24で識別計数された後、異常な硬貨は、リジェクト硬貨として、矢印203で示すように受皿部14に返却される。一方、正常硬貨は、矢印204で示すように一時保留部23に収納される。
そして、入金処理に係る取引が確定されると、一時保留部23に収納されている硬貨が回転円盤41によって1枚ずつ順に搬送路17に繰り出されて、図4に矢印205で示すように識別部24へ向けて搬送される。そして、識別部24で識別計数された後、正常硬貨は、識別結果に応じて、矢印206で示すように対応する収納部22に収納される。一方、異常な硬貨は、リジェクト硬貨として分岐部38で分岐され、矢印207で示すようにリジェクトボックス35に収納される。
このため、入金処理を開始する前の初期化動作では、受皿部14の内部を空の状態にすると共に、搬送路17へ硬貨を繰り出す繰出部21及び一時保留部23で回転円盤41の位置合わせが必要になる。
図5は、初期化動作の流れを示すフローチャートである。まず、繰出部21の回転円盤41の回転位置を合わせる処理が行われる(ステップS1)。そして、その後、受皿部14の内部を空にするために、受皿部14の底面に設けられている受皿部ゲートを開閉する処理(ステップS2)と、一時保留部23の回転円盤41の回転位置を合わせる処理(ステップS3)とが並行して行われる。
例えば、受皿部14に異物がある状態で受皿部14の受皿部ゲートを開閉すると、この異物がシュート25を経て繰出部21へ落下して、この異物が繰出部21での回転円盤41の位置合わせを妨げる可能性がある。このため、硬貨処理装置11では、先に繰出部21の回転円盤41の位置合わせ(ステップS1)を行った後に、受皿部14の受皿部ゲートを開閉する(ステップS2)。また、受皿部14の受皿部ゲートを開閉する処理(ステップS2)と並行して、一時保留部23の回転円盤の位置合わせを行うことにより初期化動作に係る処理時間を短縮することができる。
(発明:資料の12)
[異常硬貨の返却]
図3の矢印203で示したように、入金処理時に、識別部24で真の硬貨ではないと識別された硬貨は受皿部14に返却される。識別部24は、硬貨を撮像した画像に表れる特徴や硬貨の磁気特性等に基づいて硬貨の金種や真偽等を識別するが、変形した硬貨や穴が開いた硬貨等、状態の悪い異常硬貨を検出できない場合がある。硬貨処理装置11では、このような異常硬貨を検出するために、搬送路17に設けられた搬送路センサを利用することができる。
搬送路17では、繰出部21、収納部22及び一時保留部23を構成する硬貨収納繰出ユニットへ収納する硬貨や該ユニットから繰り出された硬貨の検知、分岐部36〜39へ分岐する硬貨の検知等を行うために、複数箇所に搬送路センサが設けられている。搬送路センサでは、投光部と受光部との間で投受光する検知光が搬送路17を搬送される硬貨によって遮られることによって、この硬貨を検知する。
図6は、搬送路センサから出力される硬貨の検知波形の例を示す図である。図6(a)は正常な硬貨を検知した際の波形の例を示し、同図(b)は穴の開いた異常硬貨を検知した際の波形の例を示している。正常な硬貨を検知した場合には、搬送速度及び硬貨径に応じ時間だけ遮光が続くパルス状の正常波形が出力される。一方、穴が開いた硬貨の場合は、穴の部分で、搬送路センサの出力値が遮光状態とは異なる値を示すため、波形割れと呼ばれる形状の異常波形が出力される。この他、硬貨が変形している場合にも、変形した部分で通常とは異なる出力値を示すため、図6(a)の正常波形とは異なる形状の異常波形が得られる。
硬貨処理装置11で入金処理を行う際には、繰出部21から繰り出された硬貨は、識別部24へ至るまでの間に、搬送路17に設けられた複数の搬送路センサによって検知される。硬貨処理装置11では、繰出部21から識別部24までの間に設けられている複数の搬送路センサ、すなわち識別部24に対して図3の矢印202で示す反時計回りの繰出搬送方向で上流側にある搬送路センサのうち1つでも図6(b)に示すような異常波形を示す搬送路センサがあった場合には、たとえこの硬貨が識別部24で正常硬貨であると判定された場合でも、この硬貨を受皿部14へ搬送する。受皿部14に搬送された硬貨は、入金処理を開始した顧客に返却される。
このとき、識別部24から受皿部14までの間で搬送路17に設けられた搬送路センサ、すなわち識別部24に対して図3の矢印202で示す反時計回りの繰出搬送方向で下流側にある搬送路センサについては、先に異常波形が得られた硬貨を検知して出力された波形が正常波形であるか異常波形であるかによらず、この硬貨を受皿部14へ搬送する。言い換えれば、識別部24より上流側にある搬送路センサで異常硬貨を示す出力波形が得られた場合には、
識別部24より下流側にある搬送路センサの出力波形を利用せずに、硬貨処理を継続する。
図7は、搬送路センサからの出力波形及び識別部による識別結果と、硬貨の搬送先との関係を示す図である。なお、図7に示す上流側及び下流側とは、図3の矢印202で示す反時計回りの繰出搬送方向に基づいている。
識別部24より上流側の搬送路センサで正常波形が出力された場合でも、識別部24で偽の硬貨であると識別された場合等、識別部24で異常硬貨であると識別された硬貨は、識別部24より下流側の搬送路センサで正常波形及び異常波形のいずれが出力されたかによらず、受皿部14へ搬送されて装置外へ返却される。
識別部24より上流側の搬送路センサで正常波形が出力された後、識別部24で真の硬貨であり正常硬貨であると識別されて、かつ、識別部24より下流側の搬送路センサでも正常波形が得られた場合には、この正常硬貨は一時保留部23に収納される。この硬貨は、入金処理が確定した後、対応する収納部22に収納され、出金処理時には出金硬貨として利用されることになる。
識別部24より上流側の搬送路センサで正常波形が出力された後、識別部24で真の正常硬貨であると判定されたにも拘わらず、識別部24より下流側の搬送路センサで異常波形が出力された場合には、識別部による硬貨の識別結果又は搬送路センサによる検知結果(出力波形)に問題がある可能性があるため、エラーとして、硬貨処理を停止する。この場合は、硬貨処理装置11を管理する担当者によって識別部24、搬送路センサ、硬貨等を確認する作業が行われることになる。
一方、識別部24より上流側の搬送路センサで異常波形が出力された場合は、識別部24による識別結果、及び識別部24より下流側の搬送路センサで出力された出力波形によらず、この硬貨は受皿部14へ搬送されて装置外へ返却される。
このように、識別部24より上流側の搬送路センサで異常波形が得られた硬貨は、その後の識別部24による識別結果や、他の搬送路センサによる検知波形によらず、受皿部14へ搬送して返却することにより、変形した硬貨や穴が開いた硬貨等の異常硬貨が、装置内に収納され、出金硬貨として顧客に出金されることを回避することができる。また、このような異常硬貨を一時保留部23や収納部22から繰り出せずにエラーとなって硬貨処理を停止することを回避することができる。
[入金処理時エラー対応での硬貨搬送]
硬貨処理装置11で入金処理を行っている間に、搬送路17を搬送中の硬貨に関するエラーが発生すると、これに対応するための処理が行われる。図8は、エラー対応時の硬貨の動きを示す模式図である。搬送路17を搬送中の硬貨に関するエラーが発生すると、まず矢印208で示すように、搬送路17上にある全ての硬貨を受皿部14へ向けて搬送する。そして、全ての硬貨を受皿部14へ搬送した後、続いて、矢印209で示すように、一時保留部23に収納されている硬貨を搬送路17へ繰り出して、繰出部21へ搬送して収納する。
そして、エラーが発生するまでに得られていた識別計数結果をクリアして、再度、繰出部21から硬貨を繰り出して識別部24によって識別計数する。すなわち、入金硬貨の識別計数処理をやり直す。
例えば、硬貨が変形している場合に、この硬貨の繰り出しや搬送を行う際にエラーが発生しやすい。エラーの発生原因となった硬貨が繰出部21へ戻されて再処理される場合には、再びエラーが発生しないように、硬貨の搬送速度や硬貨を繰り出す回転円盤41の回転速度を低速にするといった対応が必要になるが、このような対応を行っても再びエラーが発生して、硬貨処理を停止せざるを得なくなる場合がある。このような事態を回避するため、硬貨処理装置11では、エラー発生時に搬送路17上にあった全ての硬貨を受皿部14へ搬送して返却する。これにより、エラーの発生原因となった硬貨を取り除いた状態で入金硬貨の識別計数処理を行うことができるので、硬貨処理の速度を低速にせず、高速のまま継続することができる。
[入金処理時エラー対応での硬貨引戻]
エラー対応時に、図8の矢印208で示すように、搬送路17上の硬貨を受皿部14へ向けて搬送する際には、この搬送を開始するよりも前に、一時保留部23へ収納途中の硬貨を搬送路17へ引き戻す処理が行われる。図9は、エラー対応時に収納途中の硬貨を搬送路17へ引き戻す処理を説明する模式図である。搬送路17には、搬送路17と一時保留部23とを接続する案内通路45に対して、図8の矢印208で示す反時計回りの繰出搬送方向の上流側(図9右側)及び下流側(図9左側)に、それぞれ搬送路センサ231及び232が設けられている。なお、搬送路17の硬貨は、搬送ベルト211の搬送突起212によって押されながら搬送されるが、図9では搬送突起212の図示を省略している。
図9(a)に示すように、硬貨の搬送方向を一時保留部23から識別部24へ移動する方向(図中右方向)に搬送ベルト211を僅かに動かすと共に、これと連動して一時保留部23の回転円盤41及び受渡円盤46を搬送路17へ硬貨を繰り出す方向へ僅かに回転させることにより、エラー発生時に一時保留部23へ収納される途中で停止した硬貨100aを、破線で示した硬貨100bの位置へ引き戻す。
この後、図9(b)に示すように、硬貨の搬送方向を一時保留部23から受皿部14へ移動する方向(図中左方向)にして、搬送路17に引き戻した硬貨100cを、受皿部14へ向けて搬送する。こうして、図8の矢印208で示すように、搬送路17上の硬貨を受皿部14へ搬送した後、同図の矢印209で示すように一時保留部23の硬貨を繰出部21へ移動させる。このとき、エラー発生時に一時保留部23に収納されていた硬貨枚数と、一時保留部23から繰出部21へ移動させた硬貨枚数とを比較して、両者が一致することを確認する処理が行われる。両者が一致しない場合にはエラーとして硬貨処理が停止され、硬貨処理装置11を管理する担当者によって確認作業が行われることになる。
例えば、一時保留部23に3枚の硬貨が収納された後にエラーが発生したものとする。このとき、一時保留部23へ収納するはずの4枚目の硬貨が図9(a)に示す硬貨100aであった場合には、この硬貨は、一時保留部23へ収納する硬貨を検知する搬送路センサ231を通過しているので、硬貨処理装置11では一時保留部23に収納されている硬貨枚数は4枚と認識されている。
この状態で、図9(a)に示すように硬貨100aを引き戻す処理を行って、この硬貨100aが搬送路センサ231によって検知された場合には、硬貨処理装置11では、一時保留部23への収納途中であった4枚目の硬貨100aが搬送路17へ引き戻されたことを認識して、一時保留部23に収納されている硬貨枚数を3枚に修正する。
一方、硬貨100aを引き戻した際に、この硬貨100aが搬送路センサ231によって検知されなかった場合は、一時保留部23に収納されている硬貨枚数は4枚のままとなる。この状態で、図8に矢印209に示すように一時保留部23の硬貨を繰出部21へ移動させる処理を行うと、一時保留部23に収納されている硬貨枚数を4枚としているのに、実際に一時保留部23から繰り出されて繰出部21へ搬送される硬貨が3枚のみとなるためエラーとなってしまう。
硬貨処理装置11では、このような事態を回避するため、エラー発生後に、収納途中の硬貨を搬送路17へ引き戻す引戻処理を行って、一時保留部23よりも識別部24側にある搬送路センサ231で硬貨100aを検知できなかった場合でも、引戻処理を行ってから所定時間の間に、一時保留部23よりも受皿部14側にある搬送路センサ232で硬貨が検知されれば、この硬貨100aが、一時保留部23へ収納する途中で搬送路17へ引き戻された4枚目の硬貨100aであることを認識して、一時保留部23に収納されている硬貨枚数を4枚から3枚に修正する。すなわち、引戻処理から所定時間内に、搬送路センサ231及び232のいずれか一方で硬貨を検知した場合に、一時保留部23に収納されている硬貨枚数を修正する。なお、所定時間は、搬送路17による搬送速度や硬貨径等に基づいて設定されている。
このように、硬貨処理装置11では、エラー発生時に一時保留部23へ収納されている硬貨枚数を正確に認識することができるので、一時保留部23に収納されている硬貨枚数と、一時保留部23から繰出部21へ搬送して収納した硬貨枚数とを比較することにより、一時保留部23に収納されていた全ての硬貨が繰り出されたことを検証することができる。
[一時保留部の操出不良検出]
硬貨処理装置11では、入金処理時に一時保留部23で操出不良が発生した場合には、これに対応する処理を行って、それでも操出不良が解消しなかった場合には、操出不良エラーとして硬貨処理を停止する。この操出不良エラーの発生を判定する際にも、一時保留部23へ収納した硬貨枚数による検証が行われる。
図10は、操出不良エラーの発生を判定する際の処理の流れを示すフローチャートである。なお、図10に示す処理を開始する際には、硬貨処理装置11が、入金処理時に繰出部21から繰り出されて一時保留部23へ収納された硬貨枚数を認識している状態にある。
一時保留部23で操出不良の発生を監視して(ステップS11;No)、繰出不良が発生すると(ステップS11;Yes)、これに対応する処理が実行される。具体的には、回転円盤41による操出処理を繰り返したり、収納空間内での硬貨の収納状態が変化するように回転円盤41を高速回転させた後に再度操出処理を行ったり、回転円盤41の回転速度を落として低速回転させながら操出処理を行ったりすることによって繰出不良を解消しようとする。これにより、一時保留部23から搬送路17に硬貨を繰り出すことに成功して、この硬貨を搬送路17に設けられた搬送路センサによって検知すると共に、一時保留部23に設けられた収納部センサによって一時保留部23の残留硬貨がなくなったことを検知できれば(ステップS12;Yes)、一時保留部23に収納されていた全ての硬貨を正常に繰り出したものとして処理を終了する。
操出不良に対応する処理が行われたにも拘わらず、一時保留部23から搬送路17に繰り出された硬貨を検知できない場合には(ステップS12;No)、再度、一時保留部23の残留硬貨を検知する処理を行う(ステップS13)。そして、残留硬貨が検知された場合には(ステップS13;Yes)、この残留硬貨は、繰出不要に対応する処理を行っても搬送路17へ繰り出すことができないものとして操出不良エラーであると判定される(ステップS14)。
一方、繰出不良が発生して一時保留部23に残留硬貨があることを検知した後、繰出不良を解消する処理を行っても、一時保留部23から搬送路17に繰り出された硬貨を検知できなかったにも拘わらず、その後の処理で、一時保留部23で残留硬貨が検知されなかった場合には(ステップS13;No)、続いて、一時保留部23に収納された硬貨枚数と、一時保留部23から繰り出された硬貨枚数とを比較する(ステップS15)。
そして、両者が一致しない場合には(ステップS15;No)、一時保留部23へ収納された硬貨枚数、一時保留部23から繰り出された硬貨枚数及び残留硬貨の検知結果のいずれかに誤りがあるものとして、繰出不良エラーであると判定して(ステップS14)、処理を終了する。繰出不良エラーであると判定された場合には、硬貨処理装置11を管理する担当者によって確認作業が行われることになる。
一方、一時保留部23に収納された硬貨枚数と、一時保留部23から繰り出された硬貨枚数とが一致した場合には(ステップS15;Yes)、繰出不良はなかったものと判定して処理を終了する。
例えば、一時保留部23で残留硬貨を検知する際に、誤って異物を残留硬貨と検知する場合がある。この場合は、異物を検知した後に、残留硬貨を繰り出すための処理を行っても一時保留部23から搬送路17に繰り出された硬貨を検知することができない。硬貨処理装置11では、一時保留部23内にあるはずの硬貨が搬送路17に繰り出されないまま、残留硬貨を検知できなくなってしまった場合には、一時保留部23に収納された硬貨枚数と一時保留部23から繰り出された硬貨枚数とを比較して、両者が一致すれば、先に検知されたものが硬貨ではなく異物であったと判定して、繰出不良エラーとはせずに処理を終了するものである。
[搬送路クリーニング時の例外処理]
入金処理の途中でエラーが発生して、硬貨処理装置11内の搬送路17、繰出部21、収納部22、一時保留部23等から手作業で硬貨を取り除くなどしてエラー解除作業を行った後、搬送路17に残留している硬貨がないことを確認するために、搬送路クリーニングと呼ばれる処理が行われることがある。具体的には、収納部22に金種別に収納されている硬貨の中から1枚の硬貨をクリーニング硬貨として搬送路17に繰り出して搬送し、搬送路17上に残留する他の硬貨が存在せず、クリーニング硬貨が正常に搬送されることを確認する。そして、搬送路クリーニングを実行して搬送路17に異常がないことを確認した後、硬貨処理を開始する。なお、搬送路クリーニングに利用したクリーニング硬貨は、元の収納部22へ収納される。
硬貨処理装置11では、金種別に硬貨を収納する収納部22が空の状態になると、硬貨の出金処理を行うことができなくなるため、エラーとして硬貨処理を停止するが、エラー解除処理を行っている際に、クリーニング処理用に硬貨を繰り出したためにエラーとなって処理が停止してしまうとクリーニング処理を実行できない。硬貨処理装置11では、このような事態を回避するため、クリーニング硬貨を繰り出したために収納部22が空になった場合には、例外処理として、これをエラーとはせずに搬送路クリーニングを実行できるようになっている。
なお、搬送路クリーニングの実行時に、搬送路17上に残っている他の硬貨があった場合には、この硬貨及びクリーニング硬貨をリジェクトボックス35へ回収した後、再度クリーニング硬貨による搬送路クリーニングを行う。この際にも、クリーニング硬貨を繰り出したために収納部22が空になっても、例外処理として、これをエラーとはせずに搬送路クリーニングを実行できるようになっている。
[連続リジェクトエラーの例外処理]
硬貨処理装置11では、繰出部21、収納部22及び一時保留部23のいずれかで、硬貨を繰り出すことができない繰出不良が所定回数以上連続して発生した場合に、回転円盤41の回転速度を落として低速で回転させて、硬貨の繰り出しを試みるようになっている。
例えば、入金処理時に、図4に示したように、一時保留部23に収納した硬貨を繰り出して、識別部24によって識別して、金種別に収納部22に収納する際に、一時保留部23での繰出不良が連続して、予め定められた所定回数(例えば11回)に到達すると、回転円盤41の回転速度を落として低速回転しながら硬貨の繰り出しを開始する。
そして、回転円盤41を低速で回転させてから最初に搬送路17に繰り出された硬貨を1枚目として、3枚目までの硬貨は、変形した硬貨等、繰出不良の原因となった異常硬貨である可能性が高いため、収納部22へは収納せずにリジェクトボックス35へ収納する。そして、4枚目以降の硬貨からは、通常通り、識別部24による識別結果に基づいて、対応する収納部22へ収納する。
なお、硬貨処理装置11では、所定枚数(例えば10枚)の硬貨が連続してリジェクトされると、連続リジェクトエラーとして硬貨処理を停止するようになっているが、繰出不良の後、回転円盤41を低速回転にして繰り出されて強制的にリジェクトされた3枚の硬貨については、例外として、連続リジェクトエラーを判定するためのリジェクト枚数から除外されるようになっている。
繰出部21で操出不良が生じた場合も、同様に、操出不良に対応するために回転円盤41の回転速度を落として低速回転で繰り出しを開始して、繰り出された最初の3枚を強制的にリジェクト硬貨としてリジェクトボックス35へ回収する。このとき、一時保留部23の場合と同様に、強制的にリジェクトされた3枚の硬貨は、例外として、連続リジェクトエラーを判定するためのリジェクト枚数から除外される。
なお、繰出不良への対応処理を開始してから強制的にリジェクトボックス35へリジェクトする硬貨枚数を3枚としたのは一例であって、強制リジェクトする硬貨枚数は、設定により変更することができる。
[受皿部での残留硬貨検知]
受皿部14には、受皿部14内の硬貨を検知するための複数の受皿部センサが設けられている。図11は、受皿部14に設けられている受皿部センサの一部を示す模式図である。受皿部14には、様々な異物を検知したり硬貨の量を検知したりするために多数のセンサが受皿部センサとして設けられているが、図11には、受皿部14の底面に残留する硬貨や異物を検知するために設けられた第1センサ101、第2センサ102及び第3センサ103を示している。図11(a)は上方から見た図を示し、同図(b)は側方から見た図を示している。
図11(a)に示すように、第1センサ101〜第3センサ103は、Y軸正方向へ検知光を照射する投光部101a〜103aと、投光部101a〜103aから照射された検知光を受光する受光部101b〜103bとによって構成され、検知光を遮る物体を検知できるようになっている。図11(b)に示すように、第1センサ101〜第3センサ103は、受皿部14の底面近傍に、湾曲した底面の側面形状に合わせてX軸方向に距離を離して配置されている。
受皿部14は、側方から見た形状が半円筒形状を有しており、受皿部14に残留する硬貨があれば、底面に移動するようになっている。また、硬貨処理装置11では、受皿部14に残留する硬貨があれば、これが底面側に移動するように、硬貨処理を行っていないときに受皿部14を振動させる。第1センサ101〜第3センサ103は、こうして硬貨を受皿部14の底面に移動させた際に、少なくとも2つのセンサで硬貨を検知するように位置を調整して配置されている。言い換えれば、第1センサ101〜第3センサ103の3つのセンサのうち1つのセンサでしか検出されない物体は、硬貨ではないと判定することができる。これにより、図11(b)に示すように、第2センサ102のみで物体が検知された場合には、この物体は硬貨ではなく異物200であると判定する。
第1センサ101〜第3センサ103は、2つ以上のセンサを同時に動作させると、各センサが他のセンサが利用する検知光の影響を受けるため、同時に検知光を照射することなく、検知光を順に照射するようになっている。具体的には、第1センサ101、第2センサ102、第3センサ103の順で、投光部101a〜103aから順に検知光を照射して、対応する受光部101b〜103bで検知光を受光する。
このとき、例えば、受皿部14の内部で側面に付着していた異物が落下して、底面部で第1センサ101〜第3センサ103による検知領域を横切ったり往復したりした場合に、第1センサ101による検知時に検知され、第2センサ102による検知時にもこれを遮って検知されると、2つ以上の受皿部センサで検知されたために、異物が硬貨であると誤判定されてしまう。硬貨処理装置11では、このような誤検知を回避して残留硬貨を正確に検知できるようになっている。
図12は、第1センサ101〜第3センサ103による残留硬貨の検知方法を説明するためのタイミングチャートである。第1センサ101〜第3センサ103は、40mS(ミリ秒)の時間をあけて、順に検知を行うようになっている。すなわち、各センサは、120mSに1回、受皿部14での検知処理を行う。
例えば、受皿部14内を移動する異物が、時間t1で第1センサ101による検知領域を通過すると、図12(a1)に示すように、異物を検知した第1センサ101の出力がオンになる。その後、この異物が第1センサ101による検知領域を通過することがなければ、時間t4、t7、t10、t13では第1センサ101の出力はオフになる。
第1センサ101による検知は、時間t1、t4というように120mS毎に行われるので、時間t1で異物を検知した後、時間t4以降の検知で異物を検知しなかった場合には、図12(b1)に示すように、時間t1〜t4の120mSの間、検知結果がオンになる。
硬貨処理装置11では、センサによる2回の検知で連続して物体を検知したとき、すなわち検知結果が240mS連続してオンになったときに、物体を検知したと判定するようになっている。このため、図12(a1)に示すように1回の検知でしか物体を検知しなかった場合、すなわち同図(b1)に示すように検知結果が120mSの間だけオンになった場合には、同図(c1)に示すように物体は検知されなかったと判定される。
第1センサ101で検知された異物が受皿部14内を移動して、時間t2及びt5で第2センサ102による検知領域を通過すると、図12(a2)に示すように、時間t2及びt5で第2センサ102の出力がオンになる。その後、この異物が第2センサ102による検知領域を通過することがなければ、時間t8、t11、t14では第2センサ102の出力はオフになる。
第2センサ102による検知は、時間t2、t5というように120mS毎に行われるが、時間t2及びt5で異物を検知して、時間t8以降の検知で異物を検知しなかった場合には、図12(b2)に示すように、時間t2〜t8の240mSの間、検知結果がオンになる。
硬貨処理装置11では、2回の検知で連続して物体を検知したとき、すなわち検知結果が240mS連続してオンになったときに、物体を検知したと判定するようになっているので、図12(a2)に示すように2回の検知で連続して物体を検知したとき、すなわち同図(b2)に示すように検知結果が240mSの間オンになったときには、同図(c2)に示すように、物体を2回目に検知した時間t5から、物体が検知されなくなった時間t8までの間、物体が検知されたと判定される。
続いて、第1センサ101及び第2センサ102で検知された異物が受皿部14内を移動して、時間t9以降、第3センサ103による検知領域に留まった場合には、図12(a3)に示すように、時間t9以降、第3センサ103の出力がオンになる。この結果、図12(b3)に示すように、時間t9以降で検知結果がオンになり、同図(c3)に示すように、物体を2回目に検知した時間t12以降で物体が検知されたと判定される。
こうして、第1センサ101〜第3センサ103による判定結果(図12(c1)〜(c3))が得られると、2つ以上のセンサで物体を検知したとの判定結果が得られている場合に、この物体を硬貨であると判定する。図12の例では、2つ以上のセンサで同時に物体を検知していないので、第2センサ102及び第3センサ103で検知された物体は、硬貨ではないと判定される。
例えば、図12(b1)〜(b3)に示す各センサの検知結果をそのまま利用すると、時間t2〜t4の間で、第1センサ101及び第2センサ102の検知結果がオンとなり、2つ以上のセンサで同時に物体を検知しているものとして、異物を硬貨であると誤検知してしまうが、同図(c1)〜(c3)に示すように、各センサで連続して2回検知した場合に2回目の検知以降で物体を検知したとする判定結果を利用することにより、受皿部14の内部を移動する異物があった場合でも、これを硬貨と誤検知することを回避することができる。
[搬送突起のすり抜け硬貨]
図13は、搬送路17を搬送される硬貨の例を示す模式図である。図13(a)は、硬貨の正常な搬送状態を示し、同図(b)は硬貨が搬送突起をすり抜けた搬送異常の状態を示している。
具体的には、通常、搬送路17の硬貨100(100c、100d)は、図13(a)に示すように、硬貨面を搬送路17の搬送面に接触させた状態で、搬送ベルト211に所定間隔で設けられている搬送突起212(212a、212b)によって後方から押されるようにして矢印で示した方向に搬送されている。
ところが、硬貨が変形していたりバリがあったりすると、図13(b)に示すように、搬送中の硬貨100cが、この硬貨100cを後方から押していた搬送突起212aをすり抜けて搬送方向下流側へ移動してしまうことがある。この結果、搬送方向下流側で別の硬貨100dが搬送されていれば、この硬貨100dによって、搬送突起212aをすり抜けた硬貨100cが押されながら搬送される。また、搬送方向下流側に硬貨100dがなければ、搬送突起212aをすり抜けた硬貨100cは、搬送方向下流側の次の搬送突起212bで押されながら搬送される。搬送路17で搬送される各硬貨は、搬送路17に繰り出されてから搬送先の収納部22や一時保留部23に収納されるまでの間、搬送路各所に設けられた搬送路センサによって監視されており、搬送突起212aをすり抜けた硬貨100cの存在、この硬貨100cの下流側にある硬貨100dの有無、すり抜けた後の硬貨100cの搬送状況等を検知できるようになっている。
硬貨処理装置11では、搬送突起212をすり抜けたすり抜け硬貨100cがある場合でも、搬送エラーとして硬貨処理を停止することなく、硬貨処理を継続できるようになっている。図14は、すり抜け硬貨に関する処理の流れを示すフローチャートである。
搬送路センサによって搬送突起212をすり抜けた硬貨100の有無を監視して(ステップS21;No)、すり抜け硬貨100cが発生した場合には(ステップS21;Yes)、すり抜け硬貨100cに続いて搬送方向下流側を搬送される後続硬貨100dの有無を確認する(ステップS22)。
後続硬貨100dがなく、すり抜け硬貨100cが次の搬送突起212bによって押されながら搬送されている場合には(ステップS22;No)、すり抜け硬貨100cの搬送先をオーバーフロースタッカ29に変更して、オーバーフロースタッカ29に収納する(ステップS23)。
すり抜け硬貨100cに続いて搬送される後続硬貨100dがある場合には(ステップS22;Yes)、この後続硬貨100dの搬送先が所定収納部であるか否かを確認する(ステップS24)。具体的には、後続硬貨100dの搬送先が、オーバーフロースタッカ29、硬貨カセット30、回収カセット33及びリジェクトボックス35のいずれかであるか否かを確認する。すなわち、後続硬貨100dが、出金硬貨として再使用されることがない硬貨が収納される所定収納部へ搬送されるか否かを確認する。
そして、後続硬貨100dの搬送先が、これらの所定収納部である場合は(ステップS24;Yes)、すり抜け硬貨100cを後続硬貨100dと共に搬送して所定収納部へ収納する(ステップS25)。
一方、後続硬貨100d搬送先が、所定収納部でない場合には(ステップS24;No)、後続硬貨100dの搬送先をオーバーフロースタッカ29へ変更する(ステップS26)、そして、すり抜け硬貨100cを後続硬貨100dと共にオーバーフロースタッカ29へ搬送して収納する(ステップS27)。
搬送突起212をすり抜けた硬貨は、変形した硬貨やバリがある硬貨である可能性がある。このため、収納部22や一時保留部23に収納すると、その後の搬送で、再び搬送突起212をすり抜けるなどして搬送エラーを生ずる可能性がある。このため、硬貨を一時的に収納した後すぐに搬送路17へ繰り出す一時保留部23や、収納した硬貨を出金硬貨として再使用する収納部22へは収納せず、オーバーフロースタッカ29、硬貨カセット30、回収カセット33及びリジェクトボックス35のいずれかに、すり抜け硬貨100cを収納する。このとき、すり抜け硬貨に続く後続硬貨100dがあれば、この後続硬貨の搬送先をオーバーフロースタッカ29へ変更することにより、すり抜け硬貨100cをオーバーフロースタッカ29へ回収する。これにより、すり抜け硬貨100cが、すぐに一時保留部23や収納部22から繰り出されて、再び搬送路17を搬送されることがなく、搬送エラーにより硬貨処理が停止することを回避することができる。
[識別部による異物検知]
図15は、識別部24近傍の搬送路17を搬送される硬貨100の例を示す模式図である。識別部24では、硬貨100を識別するために硬貨100の撮像や特徴量の取得が行われる。このため、識別部24は、識別部24に到来する硬貨100を検知して撮像や計測のタイミングを決定するための識別部タイミングセンサ221を備えている。
また、搬送路17には各所に搬送路センサが配置されているが、識別部24から一時保留部23へ至るまでの間の位置にも搬送路センサ222が配置されており、識別部24を通過した硬貨を監視できるようになっている。なお、図13に示したように、搬送路17では、搬送ベルト211及び搬送突起212を利用して硬貨搬送が行われるが、図15ではこれらを省略している。
図15(a)に示すように、矢印で示す方向に硬貨100と共に異物223が搬送されている場合に、識別部タイミングセンサ221で異物223が検知され、この異物が、硬貨100に異常接近した状態で搬送される異常接近硬貨であると誤判定されることがある。このとき、図15(b)に示すように、その後の搬送中に異物223が停止して、硬貨100のみが搬送されると、識別部24の搬送方向下流側にある搬送路センサ222では、硬貨100のみが検知され、異物223が検知されない。このような場合に、硬貨処理装置11では、先に検知された異常接近硬貨が異物を誤検知したものであると判定できるようになっている。
図16は、識別部24近傍の搬送路17での異物検知処理の流れを示すフローチャートである。識別部タイミングセンサ221による異常接近硬貨の検知の有無を監視して(ステップS31;No)、異常接近硬貨が検知された場合には(ステップS31;Yes)、異常接近硬貨があることを示す情報を記録する(ステップS32)。
続いて、識別部24の搬送方向下流側にある搬送路センサ222でも異常接近硬貨が検知された場合には(ステップS33;Yes)、この異常接近硬貨の搬送状況の監視を続けて、受皿部14への返却等、所定の処理を行って(ステップS37)、処理を終了する。
一方、搬送路センサ222で異常接近硬貨が検知されず(ステップS33;No)、硬貨100に続いて搬送路17を正常に搬送される後続の硬貨が検知された場合には(ステップS34;Yes)、先に記録した異常接近硬貨の記録を削除して(ステップS36)、異常接近硬貨に関する処理を終了する。搬送路センサ222によって異常接近硬貨を伴う硬貨100を検知した後、異常接近硬貨を検知しないまま、後続の硬貨を検知した場合には、先に検知された異常接近硬貨は異物223を誤検知したものであり、硬貨100及び後続の硬貨は正常に搬送されていると判定して硬貨処理を継続するものである。
また、異常接近硬貨が検知されず、硬貨100に後続する正常硬貨も検知できない場合には(ステップS34;No)、識別部タイミングセンサ221で異常接近硬貨を検知してから所定時間が経過しているか否かを判定する(ステップS35)。ステップS33〜S35の処理は、所定時間が経過するまで継続される(ステップS35;No)。
搬送路センサ222で、異常接近硬貨及び後続の正常硬貨を検知しないまま所定時間が経過した場合は(ステップS35;Yes)、先に記録した異常接近硬貨の記録を削除して(ステップS36)、異常接近硬貨に関する処理を終了する。搬送路センサ222によって異常接近硬貨を伴う硬貨100を検知した後、所定時間を経過しても異常接近硬貨を検知できない場合には、先に検知された異常接近硬貨は異物223を誤検知したものであり、硬貨100は正常に搬送されていると判定して硬貨処理を継続するものである。
なお、ステップS35の判定に用いる所定時間については、硬貨100の搬送速度、隣り合う状態で搬送される硬貨間の距離等に応じて設定される。具体的には、正常に搬送される硬貨100を検知してから、検知した物体を異常接近硬貨と判定するよう設定された時間長さよりも長く、正常に搬送される硬貨100を検知してから隣り合う状態で搬送される後続の硬貨を検知するまでの時間長さよりも短い時間に設定される。
このように、硬貨処理装置11では、識別部タイミングセンサ221による検知結果と、識別部24より搬送方向下流側にある搬送路センサ222による検知結果とに基づいて、異常接近硬貨が異物を誤検知したものであるか否かを判定し、誤検知であった場合には、硬貨処理を停止せずに継続できるようになっている。
[繰出部の清掃処理]
硬貨処理装置11では、入金処理を終えた後、繰出部21の埃等を排出する清掃処理を行うことができる。また、繰出部21に硬貨と共に異物が混入した場合や、その可能性がある場合には返却口26に異物を返却する異物返却処理を行うことができる。
図17は、入金処理後に繰出部21で行われる清掃処理及び異物返却処理の流れを示すフローチャートである。入金処理を終えた後、この入金処理中に繰出部21で繰出不良が生じていた場合には(ステップS41;Yes)、繰出部21に異物が混入していた可能性があるため、繰出部21の底面に設けられた繰出部ゲートを全開にして返却口26に異物を返却する異物返却処理を行う(ステップS42)。また、これにより返却口26に異物が返却されている可能性があるため、異物の有無を確認するよう報知する報知処理を実行する(ステップS43)。この報知処理は、硬貨処理装置11が表示部等を備える場合にはこれを利用して行い、硬貨処理装置11がATM等の貨幣処理装置に内蔵して利用されている場合には、貨幣処理装置によって行われる。
一方、入金処理中に繰出不良が発生していなかった場合は(ステップS41;No)、入金処理中に繰出部21から繰り出された硬貨の繰出枚数が所定枚数以上であったか否かを判定する(ステップS44)。所定枚数とする硬貨枚数は設定により変更することができるが、例えばこれを15枚に設定して、繰出枚数が15枚に満たなかった場合には(ステップS44;No)、清掃処理は不要であると判定して、そのまま処理を終了する。
繰出不良が15枚以上であった場合には(ステップS44;Yes)、繰出部21の底面に設けられた繰出部ゲートを僅かに開いて繰出部21を清掃する清掃処理を行う(ステップS45)。なお、異物返却処理(ステップS42)では繰出部ゲートを全開にするが、清掃処理(ステップS45)では、繰出部ゲートの開きを微開に留めることにより、短時間で処理を終了するようになっている。
繰出部ゲートを微開にして清掃した後、繰出部ゲートを正常に閉じることができた場合には(ステップS46;Yes)、清掃処理によって、返却口26に異物が返却されている可能性があるため、これを報知する(ステップS48)。
一方、清掃処理を行った後、繰出部ゲートを閉状態にできない場合には(ステップS46;No)、繰出部ゲートを全開にして異物返却処理を行う(ステップS47)。例えば、繰出部21にクリップ等の異物が残っていた場合に、繰出部ゲートを微開にして清掃処理を行うと、異物が繰出部ゲートに挟まった状態になり、繰出部ゲートを閉じることができないことがある。このような場合に、繰出部ゲートを全開にして異物返却処理を行って、異物を排出するものである。
こうして、異物返却処理を行って繰出部ゲートを閉状態にした後、返却口26に異物が返却されている可能性があることを報知する報知処理を行って(ステップS48)、処理を終了する。
入金処理時に繰出部21から繰り出された硬貨の繰出枚数が多い場合、すなわち入金処理時に受皿部14へ投入された硬貨の枚数が多い場合には、投入された硬貨の間に、クリップ等の異物が混入している可能性がある。このため、繰出枚数が多い場合には、繰出部21で清掃処理を行って、次の入金処理時に繰出部21に残っている異物により繰出不良等が発生することを防ぐことができる。また、清掃処理は繰出部ゲートを微開することによって行うため、短時間で処理を完了することができる。また、清掃処理後に繰出部ゲートを閉状態にできない場合には、繰出部ゲートを全開にして異物返却処理を行うことにより、異物を排出して繰出部ゲートを閉状態にして硬貨処理を継続することができる。
本実施形態に係る硬貨処理装置11によれば、上述してきた各処理を実行することにより、硬貨処理に係るエラーの発生を抑制して硬貨処理を効率よく行うことができる。例えば、識別部24による識別結果に加えて、搬送路センサを利用して搬送路17を搬送される硬貨を検知して出力される波形を利用して硬貨の変形等の異常を検知することができる。入金処理時に受皿部14に投入された入金硬貨の中に、変形した硬貨や穴の開いた硬貨等の異常硬貨が含まれている場合には、これを装置内に収納することなく装置外へ返却することができるので、異常硬貨が収納部22に収納されて出金硬貨として利用されることを回避することができる。また、硬貨処理装置11内で異常硬貨が処理されることにより、繰出や搬送でエラーが発生して硬貨処理を停止せざるをえなくなるといった事態を回避して、硬貨処理を継続することができる。