以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。また、以下に説明する各種の例示的態様は、適宜に組み合わせて実施しても構わない。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
図1は、一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す無線通信システム1は、例示的に、1又は複数の無線基地局10と、1又は複数の無線端末20と、1又は複数のM2Mデバイス30と、を備える。
無線基地局10は、無線エリア100を形成し、無線エリア100に位置する無線端末20及びM2Mデバイス30と無線通信が可能である。「無線エリア」は、「セル」、「カバレッジエリア」あるいは「通信エリア」と称してもよい。
「セル」は「セクタセル」に分割されていてもよい。「セル」には、マクロセルやスモールセルが含まれてよい。スモールセルは、マクロセルよりも電波到達範囲(カバレッジ)の小さいセルの一例である。スモールセルは、カバレッジエリアに応じて呼称が異なってよい。例えば、スモールセルは、「フェムトセル」、「ピコセル」、「マイクロセル」、「ナノセル」、「メトロセル」、「ホームセル」等と称されてもよい。
無線基地局10は、「ベースステーション(BS)」、「ノードB(NB)」あるいは「エンハンスドNB(eNB)」と称されてもよい。
無線端末20は、無線エリア100において無線基地局10と無線通信が可能な無線機器の一例である。無線端末20は、無線装置、端末装置、又は、ユーザ機器(UE)と称されてもよい。無線端末20は、その位置が変化しない固定端末であってもよいし、その位置が変化する移動端末(「移動機」と称してもよい。)であってもよい。本実施形態では、非限定的な一例として、無線端末20は、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末等の移動可能なUEである。
M2Mデバイス30は、無線端末20と同様に、無線エリア100において無線基地局10と無線通信が可能な無線機器の一例である。ただし、M2Mデバイス30は、人(ユーザ)による操作が介在しない通信(M2M通信)が可能な無線機器であってよい。
例えば、M2Mデバイス30は、無線通信機能を具備したセンサデバイスやメータ(測定器)等であってよい。また、M2Mデバイス30は、車両や航空機、船舶等の移動体(「乗り物」と称してもよい。)に取り付けられた無線機器であってよい。
車両等の「乗り物」に取り付けられたM2Mデバイス30は、「移動機」に相当すると捉えてよい。したがって、UE20とM2Mデバイス30とは、「移動機」と総称してよい。「乗り物」に取り付けられたM2Mデバイス30は、例示的に、当該「乗り物」の状態を示す情報を無線基地局10へ送信可能である。
「乗り物」の状態を示す情報は、定期的あるいは不定期に送信されてよい。「乗り物」の状態を示す情報の非限定的な一例としては、「乗り物」の正常又は異常(故障)を示す情報や、「乗り物」の運行速度や運行経路等の運行状態を示す情報等が挙げられる。
無線基地局10と、UE20及びM2Mデバイス30と、の間の無線通信は、「セルラー通信」と称してもよい。セルラー通信には、例示的に、3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Term Evolution)やLTE−Advancedに準拠した無線通信方式を適用してよい。
代替的あるいは複合的に、無線基地局10と、UE20及びM2Mデバイス30と、の間の無線通信には、「Worldwide Interoperability for Microwave Access, (WiMAX)」(登録商標)等の他の方式に準拠した無線通信方式を適用してもよい。
無線基地局10は、例えば図2に模式的に示すようにコアネットワーク50に通信可能に接続されてよい。コアネットワーク50には、図2に例示するように、サービスゲートウェイ(SGW)やパケットデータネットワークゲートウェイ(PGW)、モビリティマネージメントエンティティ(MME)等が含まれてよい。
例示的に、SGWは、ユーザプレーンの信号(別言すると、ユーザデータ)を処理してよく、MMEは、制御プレーンの信号(別言すると、制御信号)を処理してよい。MMEは、例示的に、UE20やM2Mデバイス30の位置情報を、SGWと連携して管理してよい。
位置情報は、UE20やM2Mデバイス30の地理的な位置を識別可能な情報であればよい。例示的に、位置情報は、グローバルポジショニングシステム(GPS)を用いて取得可能な緯度及び経度の情報であってもよいし、UE20やM2Mデバイスが接続しているセルの識別子(セルID)であってもよい。
MMEで管理されている位置情報を基に、例えば、SGWは、UE20やM2Mデバイス30の移動(例えば、ハンドオーバ)に伴うユーザデータのパス切り替え等の制御を実施してよい。なお、MMEは、位置情報管理装置の一例である。
無線基地局10とコアネットワーク50とを含む通信網は、「アクセスネットワーク」と称されてもよい。アクセスネットワークは、「Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network, E-UTRAN」と称されてもよい。或る通信事業者によって管理される「アクセスネットワーク」は、「通信事業者網」と称してもよい。
無線基地局10は、コアネットワーク50と例えば有線インタフェースによって接続されてよい。当該有線インタフェースは、「S1インタフェース」と称されてよい。ただし、無線基地局10は、無線インタフェースによってコアネットワーク50と通信可能に接続されても構わない。
また、図1及び図2に例示するように、無線基地局10は、他の無線基地局10と例えば有線インタフェースにより通信可能に接続されてよい。当該有線インタフェースは、「X2インタフェース」と称されてよい。
X2インタフェースを通じた通信は、「基地局間通信」と称してよい。ただし、基地局間通信には、無線インタフェースによる無線通信が適用されてもよいし含まれてもよい。また、基地局間通信は、ルータ等の通信装置が介在して行なわれてもよい。
無線基地局10は、自局10の形成するセル100に位置するUE20及びM2Mデバイス30に対して、セルラー通信に用いる無線リソースを割り当てることができる。無線リソースの割り当ては「スケジューリング」と称してもよい。
UE20及びM2Mデバイス30は、無線基地局10から割り当てられた無線リソースを用いて無線基地局10とセルラー通信を行なうことができる。無線リソースのスケジューリングは、UE20毎、及び、M2Mデバイス30毎に、アップリンク(UL)及びダウンリンク(DL)のそれぞれについて実施されてよい。
無線リソースは、例示的に、時間及び周波数によって識別されてよい。例えば、無線リソースの識別は、無線通信システム1が利用可能な無線リソースを時間及び周波数によって分割した分割リソースの単位で行なわれてよい。
分割リソースは、「リソースブロック(RB)」と称されてもよいし「リソースエレメント(RE)」と称されてもよい。REは、無線リソース割り当ての最小単位であってよく、例示的に、1つのサブキャリアの1つのシンボルとして定義されてよい。
複数のREでREグループ(REG)が構成されてよい。また、複数のREで1つのRBが構成されてよい。例えば、周波数領域の12サブキャリア×時間領域の7シンボル又は6シンボルで1つのRBが構成されてよい。無線リソースのスケジューリングは、RBの単位で行なわれてよい。
ここで、M2M技術が普及して、M2Mデバイス30の数が増加すると、図3に模式的に例示するように、無線基地局10がM2Mデバイス30に割り当てる無線リソース量が増加する。割り当てる無線リソース量が増加すると、例えば、無線リソースのスケジューリングの処理負荷も増加し易い。
また、例えば図4に模式的に示すように、M2Mデバイス30が移動可能な場合、その移動に伴う通信事業者網(例えば、MME)への位置登録処理やパス切り替え等の、移動制御の数(頻度)も、M2Mデバイス30の数の増加に応じて増加し易い。なお、「パス切り替え」は、「呼切替制御」と称してもよい。
移動制御の頻度が増加すると、通信事業者網においてシグナリング等の制御信号の送受信数が増加するため、やはり通信事業者網での処理負荷が増加し易い。そのため、処理遅延や通信事業者網を成す通信装置、例えばMME等のネットワークエレメント(NE)の故障等を引き起こす可能性がある。
無線リソースの有効利用という観点からは、例えば図5に模式的に示すように、複数のM2Mデバイス30を1つのグループにグルーピングし、当該グループに対して無線リソースを割り当てることが考えられる。グループに属する複数のM2Mデバイス30は、例示的に、メッシュネットワークによって通信可能に接続されてよい。
そして、例えば、同一グループに属するM2Mデバイス30のいずれかが、割り当てられた無線リソースにて、他のM2Mデバイス30の通信をまとめて通信事業者網と通信する。
この場合、上位の通信事業者網には、グループの代表となるM2Mデバイス30に限って接続が認識されている状態である。個々のM2Mデバイス30に無線リソースを割り当てなくてよいため、無線リソースの消費量を削減できる。別言すると、無線リソースの利用効率向上を図ることができる。
しかし、多くのM2Mデバイス30の移動に伴うパス切り替えの頻度(別言すると、シグナリング数)の増加に対しては、M2Mデバイス30のグルーピングでは対処できない。そこで、以下では、M2Mデバイス30の数が増加しても、シグナリング数を削減可能にすることについて検討する。
例えば図6に模式的に示すように、M2Mデバイス30は、アクセスネットワークに位置登録済みのUE20に割り当てられている無線リソースを利用してアクセスネットワークとの通信を行なう。
別言すると、M2Mデバイス30は、UE20を中継ポイントとしてアクセスネットワークとの間で通信(「中継通信」と称してよい。)を行なう。また、M2Mデバイス30の移動制御に関しても、UE20の移動制御と関連付けて(連携させて)行なう。
そのため、アクセスネットワーク(例えば、MME)は、位置登録済みのUE20にM2Mデバイス30を関連付けて位置情報等を管理する。例えば、UE20がアクセスネットワークに対して送信する信号に、当該UE20に関連付けられたM2Mデバイス30を識別可能な情報(「識別子」と称してよい。)を付与する。
これにより、シグナリングを発生させずに、M2Mデバイス30の位置情報をUE20と関連付けて(別言すると、UE20の位置情報と同期して)MMEに登録することが可能になる。
また、M2Mデバイス30の位置情報がUE20と関連付けて管理されているので、UE20を介した中継通信が切断あるいは終了しても、M2Mデバイス30は、新たに位置登録処理を実施しなくても通信(セルラー通信)を確立できる。
したがって、UE20を介した中継通信を、UE20を介さないセルラー通信に、最小限の処理遅延で切り替えることができる。よって、M2Mデバイス30は、アクセスネットワークとの間の通信を正常に継続できる。
更に、MMEは、UE20とM2Mデバイス30との関連付け解除に応じて、当該M2Mデバイス30を、新規にセルラー通信を行なうM2Mデバイス30として登録、管理してよい。これにより、MMEは、M2Mデバイス30がセルラー通信を行なうためにMMEに対して位置登録処理を行なった場合と同等の情報を管理できる。
なお、通常時には、M2Mデバイス30の送信信号の優先度をUE20の送信信号よりも低く設定することで、UE20の通信に対する影響を抑制してよい。緊急時(例示的に、車両の故障時等)には、M2Mデバイス30の送信信号の優先度を、UE20の送信信号の優先度よりも高く設定(例示的に、トッププライオリティに設定)してよい。
これにより、緊急時における早急なM2Mデバイス30の信号送信が可能になる。優先度の判定は、M2Mデバイス30の送信信号を中継するUE20にて実施してよい。これにより、M2Mデバイス30に対して高級な機能追加を行なわずに、アクセスネットワークの輻輳等の負荷抑制が可能となる。
なお、UE20を中継ポイントとした中継通信には、「無線中継技術」と呼ばれる技術を適用してよい。「無線中継技術」の一例としては、例示的に、無線LAN(Local Area Network)を用いたリレー技術や、3GPPで規定されているリレー技術がある。
例えば、3GPPでは、レイヤ1リレー技術、レイヤ2リレー技術、及び、レイヤ3リレー技術が規定されている。
リピータ等を用いたレイヤ1リレー技術は、例えば、無線基地局と移動機との間の送受信信号を電力増幅してそれぞれに送信する技術であり、山岳部や屋内のカバレッジ改善を目的として利用されている。ただし、レイヤ1リレー技術は、雑音や、他セルの干渉に弱く、受信信号と共に雑音等も増幅してしまう。
レイヤ2リレー技術は、例えば、無線基地局からの受信信号を復調及び復号した後に、再度、符号化及び変調を行なって移動機に送信する技術であり、レイヤ1リレー技術での雑音や他セル干渉等の影響を克服可能である。ただし、レイヤ1リレー技術に比べて、変復調処理や符号化及び復号処理に伴う処理遅延が生じ易い。
レイヤ3リレー技術は、無線基地局からの受信信号の復調及び復号処理に加えて、秘匿やユーザデータ分割等の処理を行なう。レイヤ2リレー技術と同様に雑音や他セル干渉等に対する耐性を向上できる。また、レイヤ3リレー技術では、秘匿処理によって、盗聴防止等のセキュリティ面の向上を図り易い。
ただし、レイヤ1リレー技術及びレイヤ2リレー技術に比べて処理量が増えるので、処理遅延が生じ易い。レイヤ3リレー技術は、無線基地局が有する機能と同様の機能を有することで実現されると捉えてもよい。
(動作概要)
以下、実施形態に係る動作概要として、2つの利用シーンにおける動作を説明する。なお、以下では、M2Mデバイス30が自動車等の車両に搭載されており、当該車両に搭乗するユーザ(例えば、ドライバー)がUE20を所有していることを想定する。
(第1の利用シーン:図7)
第1の利用シーンは、車両が停車中(エンジンOFF)か否か、及び、ユーザが車両から離れている(ユーザ不在)か否かに関わらず、車載M2Mデバイス30は、ON状態でありアクセスネットワークと通信を行なうシーンである。
例えば、車両の故障の有無等の車両状態を示す情報は、車両が停車中か否か、また、ユーザ不在か否かに関わらず、車両の遠隔監視や管理のためにアクセスネットワークへ送信されることが想定される。
図7の(1)は、車両が停車中(エンジンOFF)であり、且つ、ユーザ不在であるが、車載M2Mデバイスは、アクセスネットワーク(以下、単に「ネットワーク(NW)」とも称する。)とセルラー通信を行なう様子を模式的に例示している。
図7の(2)は、停車中の車両に、UE20を所有するユーザが乗車した際のNWとの通信動作例を模式的に例示している。例えば、車載M2Mデバイス30は、ユーザの乗車に伴ってUE20を検出すると、セルラー通信の無線リンク(例えば、コネクション設定及び無線リソース)を解放する。代替的に、車載M2Mデバイス30は、中継ポイントとなるUE20との間で無線リンク(コネクション)を設定し、当該UE20に割り当てられている無線リソースを利用してNWとの通信を行なう。一方、NWは、UE20からの受信信号に含まれる車載M2Mデバイスの識別子を基に、UE20と車載M2Mデバイス30とを関連付けて管理する。
図7の(3)は、ユーザが車両で移動(走行)している状態でのNWとの通信動作例を模式的に例示している。例えば、NW(MME)において、車両の移動に伴ってUE20が移動してUE20の位置情報が更新されると、当該更新に応じて車載M2Mデバイス30の位置情報も更新される。
図7の(4)は、車両が停車(エンジンOFF)し、ユーザが車両から降車した際のNWとの通信動作例を模式的に例示している。例えば、ユーザが車両から降車すると、M2Mデバイス30とUE20との間の無線リンクが切断されてコネクション設定が解除される。
NW(MME)は、当該解除に応じて、それまでUE20と関連付けて管理していた位置情報を車載M2Mデバイス30の位置情報として引き継ぐ。これにより、車載M2Mデバイス30は、UE20を介した通信が切断あるいは終了してUE20との関連付け(接続)が解除されても、改めてNWに対して位置登録処理を行なわなくても、NWとの通信を確立できる。
なお、車載M2Mデバイス30とUE20との間のコネクション設定が解除されたことは、UE20がNWに対して通知してもよいし、コネクション設定解除前に車載M2Mデバイス30がUE20経由でNWにコネクション設定を解除する旨を通知してもよい。
(第2の利用シーン:図8)
第2の利用シーンは、車両停車中(エンジンOFF時)には車載M2Mデバイス30も電源OFFとなってNWとのセルラー通信は行なわないシーンである。
例えば、交通状況等の管理においては、車両が移動している際(エンジンON時)の情報が取得できればよく、車載M2Mデバイス30は、車両のエンジンがOFFの状態ではNWと通信しなくてよいことが想定される。
通信が不要な時にM2Mデバイス30が電源OFF状態(あるいはスリープモード)になることで、車載M2Mデバイス30の消費電力を節約してバッテリ駆動時間を延ばすことができる。
図8の(1)は、車両停車中(エンジンOFF時)には車載M2Mデバイスも電源OFFとなってNWとのセルラー通信は行なわれない様子を模式的に例示している。
図8の(2)は、停車中の車両にユーザが乗車してエンジンONした際のNWとの通信動作例を模式的に例示している。例えば、車載M2Mデバイスは、車両のエンジンONに応じて電源ONされ、周辺のUE20を探索する。車両に乗車したユーザのUE20を検出できれば、車載M2Mデバイス30は、UE20から現在の位置情報を取得し、NWに対する位置登録処理はスキップしてよい。
そして、車載M2Mデバイス30は、NWに位置登録済みのUE20を中継ポイントとして当該UE20に割り当てられている無線リソースを利用してNWとの通信を行なう。一方、NWは、UE20からの受信信号に含まれる車載M2Mデバイスの識別子を基に、UE20と車載M2Mデバイス30とを関連付けて管理する。
図8の(3)は、ユーザが車両で移動(走行)している状態でのNWとの通信動作例を模式的に例示している。図8の(3)の通信動作例は、図7の(3)の通信動作例と同様であり、例えば、NW(MME)において、車両の移動に伴ってUE20が移動してUE20の位置情報が更新されると、当該更新に応じて車載M2Mデバイス30の位置情報も更新される。
また、図8の(4)は、車両が停車(エンジンOFF)し、ユーザが車両から降車した際のNWとの通信動作例を模式的に例示している。例えば、車両の停車(エンジンOFF)に応じて、車載M2Mデバイス30は電源OFFされ、中継ポイントとしてのUE20との間の無線リンク(コネクション設定)が解除される。
当該コネクション設定の解除に応じて、NW(MME)は、UE20と関連付けて管理していたM2Mデバイス30の位置情報を削除してよい。車載M2Mデバイス30とUE20とのコネクション設定が解除されたことは、例えば、UE20がNWに対して通知してよい。あるいは、電源OFF前に車載M2Mデバイス30がUE20経由でNWにコネクション設定を解除する旨を通知するようにしてもよい。
(補足)
なお、図7及び図8に例示した第1及び第2の利用シーンのいずれにおいても、車載M2Mデバイス30は、1つの車両に1つとは限らず複数備えられていてもよい。複数のM2Mデバイス30が、それぞれ、図7に例示した通信動作、及び、図8に例示した通信動作のいずれかを個別的に実施することも想定される。
そのため、図7及び図8に例示した2つのパターンの通信動作は、M2Mデバイス30毎に個別的に制御可能であってよく、複数のM2Mデバイス30に対する制御が許容されてよい。
また、車両に乗車するユーザが複数である場合、別言すると、車載M2Mデバイス30が中継ポイントとして接続(コネクション設定)可能なUE20の候補が複数存在する場合も考えられる。
その場合、M2Mデバイス30は、予め決められたUE20(例えば、ドライバー所有のUE20)とコネクションを設定してもよいし、何らかのルールや条件に従って動的にコネクション設定対象のUE20を選んでもよい。
(機能的構成例)
次に、図9を参照して、図7及び図8により上述した通信動作を実現可能な無線通信システム1の機能的な構成例について説明する。
図9に示す無線通信システム1は、例示的に、既述のUE20及び車載M2Mデバイス30と、位置情報管理装置51と、アクセスネットワーク52と、を備える。位置情報管理装置51は、例示的に、既述のMMEに相当する。アクセスネットワーク52は、既述の無線基地局10、SGW、及び、PGWを含んでよい。なお、位置情報管理装置51は、アクセスネットワーク52に含まれてもよい。
図9に示すように、UE20は、例示的に、通信制御部201と、車載M2Mデバイスデータ送受信部202と、位置情報通知部203と、を備える。
車載M2Mデバイス30は、例示的に、通信制御部301と、通信切替処理部302と、位置情報管理部303と、を備える。
位置情報管理装置51は、例示的に、位置情報管理部511と、位置情報関連付け処理部512と、を備える。
アクセスネットワーク52は、通信制御部521を備える。
(UE20)
UE20の通信制御部210は、例示的に、アクセスネットワーク52との間のセルラー通信を制御する。当該セルラー通信の制御には、UE20の移動に伴う位置情報管理装置51に対する位置登録処理や、アクセスネットワーク52から割り当てられた無線リソースを用いた信号の送受信処理等が含まれてよい。そのため、通信制御部210は、「セルラー通信制御部210」と称してもよい。
UE20の車載M2Mデバイスデータ送受信部202は、例示的に、車載M2Mデバイス30との間でコネクション設定処理を行なう。当該コネクション設定処理は、車載M2Mデバイス30からの要求に応じて実施されてもよいし、UE20からM2Mデバイス30への要求に応じて実施されてもよい。
また、車載M2Mデバイスデータ送受信部202は、通信制御部201と連携して、UE20に接続(コネクション設定)した車載M2Mデバイス30と、アクセスネットワーク52と、の間の通信を中継する。
例えば、車載M2Mデバイスデータ送受信部202は、車載M2Mデバイス30から受信される信号を受信し、受信した信号をアクセスネットワーク52へ送信する。また、車載M2Mデバイスデータ送受信部202は、アクセスネットワーク52から受信した、車載M2Mデバイス30宛の信号を当該車載M2Mデバイス30へ送信する。
そのため、車載M2Mデバイスデータ送受信部202は、車載M2Mデバイス30とUE20を介したアクセスネットワーク52との間の中継通信を制御する「中継通信制御部202」と称してもよい。
UE20の位置情報通知部203は、当該UE20との間でコネクション設定した車載M2Mデバイス30に、UE20の位置情報を通知する。UE20の位置情報は、UE20の移動に伴って動的に更新され、例えば通信制御部201の位置登録処理によって位置情報管理装置51に通知される。
位置情報通知部203は、このように位置情報管理装置51に通知した位置情報をM2Mデバイス30に通知する。これにより、位置情報管理装置51とM2Mデバイス30との間でUE20の位置情報の同期をとることが可能になる。
(M2Mデバイス30)
一方、車載M2Mデバイス30の通信制御部301は、UE20の通信制御部201と同様に、アクセスネットワーク52との間のセルラー通信を制御する。当該セルラー通信の制御には、車載M2Mデバイス30の移動に伴う位置情報管理装置51に対する位置登録処理や、アクセスネットワーク52から割り当てられた無線リソースを用いた信号の送受信処理等が含まれてよい。通信制御部301は、「セルラー通信制御部301」と称してもよい。
車載M2Mデバイス30の通信切替処理部302は、通信制御部301による制御の下でのセルラー通信と、UE20を介したアクセスネットワーク52との間の中継通信と、を切り替える。セルラー通信と中継通信との切り替えは、通信モードの切り替え(あるいは選択)に相当すると捉えてよい。ただし、通信切替処理部302は、セルラー通信の確立を試行する前に、UE20を介した中継通信の確立(開始)を試行してよい。通信切替処理部302は、「中継通信制御部302」と称してもよい。
車載M2Mデバイス30の位置情報管理部303は、UE20の位置情報通知部203から通知された、UE20の位置情報を管理する。既述のとおり、位置情報管理部303で管理される位置情報は、位置情報管理装置51で管理される位置情報と同期がとられてよい。
したがって、UE20とのコネクション設定が解除されても、車載M2Mデバイス30は、位置情報管理部303で管理している位置情報を基に、アクセスネットワーク52との間のセルラー通信の確立を制御できる。別言すると、車載M2Mデバイス30は、位置情報管理装置51に対する位置登録処理をスキップしてよい。
(位置情報管理装置51)
位置情報管理装置51の位置情報管理部511は、UE20の位置情報を管理すると共に、位置情報関連付け処理部512によって当該UE20に関連付けられたM2Mデバイスの識別子を管理する。
位置情報関連付け処理部512は、アクセスネットワーク52から通知される、UE20及びM2Mデバイス30の識別子を基に、位置情報管理部51で管理されているUE20の位置情報に、M2Mデバイス30の識別子を関連付ける処理を行なう。位置情報関連付け処理部512は、位置情報管理部51における位置情報の管理を制御する制御部の一例であると捉えてもよい。
(アクセスネットワーク52)
アクセスネットワーク52の通信制御部521は、位置情報管理装置51で管理されている移動機20(及び30)の位置情報を基に、アクセスネットワーク52と移動機20(及び30)との間の通信を制御する。通信制御部521は、既述のSGWやPGWに相当すると捉えてよい。通信制御部521は、「セルラー通信制御部521」と称してもよい。
(第1の利用シーンでの通信動作例)
次に、図10〜16を参照して、図7に例示した第1の利用シーンでの通信動作例について詳述する。
(停車中の車両にユーザが乗車する際の通信動作例)
図10は、図7の(1)及び(2)に例示したように、停車中の車両にUE20を携帯したユーザが乗車した際の通信動作例を示すシーケンス図である。第1の利用シーンでは、車載M2Mデバイス30は、常時、電源ONであり、車両のユーザの乗車の有無に関わらず、アクセスネットワーク52とセルラー通信が可能な状態にある。
別言すると、図10に例示するように、車載M2Mデバイス30は、アクセスネットワーク52との間でコネクション設定が済んでいる(処理P11)。また、車両のユーザが携帯するUE20についても、アクセスネットワーク52との間のコネクション設定が済んでいると仮定する(処理P12)。
かかる状態で、ユーザが停車中の車両に乗車しようとしてユーザが車両に接近すると、車載M2Mデバイス30が、ユーザの携帯するUE20の接近を検出する(処理P13)。UE20の接近検出は、例示的に、図9に示した通信切替処理部302にて実施してよい。接近検出方法については、特に限定しないが、例えば、既知の端末ディスカバリ技術等を適用してよい。
車載M2Mデバイス30は、UE20の接近を検出すると、当該UE20に対してコネクションの設定要求を送信する(処理P14及びP15)。なお、コネクション設定要求は、例示的に、通信切替処理部302にて生成され、通信制御部301によってUE20宛に送信されてよい。
UE20は、車載M2Mデバイス30からのコネクション設定要求を受信すると、当該コネクション設定要求の送信元である車載M2Mデバイス30との間でコネクションの設定を行なう(処理P16)。当該コネクション設定は、例示的に、UE20の通信制御部201と、車載M2Mデバイス30の通信制御部301とが、協働して実施してよい。
コネクション設定が完了すると、車載M2Mデバイス30は、UE20と直接の通信が可能な状態になる。車載M2Mデバイス30とUE20との間の直接通信には、WiFi通信やBlueTooth(登録商標)通信等を適用してよいが、これらに限定されない。
車載M2Mデバイス30とUE20との間のコネクション設定がなされると、UE20は、アクセスネットワーク52に対して通信切替要求を送信してよい(処理P17)。当該通信切替要求は、車載M2Mデバイス30がアクセスネットワーク52との直接通信をUE20との直接通信に切り替えることを要求する信号の一例である。
通信切替要求は、例示的に、通信制御部201にて生成されてよく、車載M2Mデバイス30及びUE20の識別子を含んでよい。別言すると、通信切替要求は、車載M2Mデバイス30及びUE20の識別子をアクセスネットワーク52へ通知する信号の一例である。
なお、車載M2Mデバイス30の識別子は、処理P16でのコネクション設定処理を通じて、UE20にて取得、記憶することが可能である。例えば、車載M2Mデバイス30(通信制御部301)は、コネクション設定に応じて、位置情報管理装置51にてUE20の位置情報と関連付けられる情報(識別子)を、UE20へ送信してよい。なお、UE20の識別子は、便宜的に、「UEID」と表記されてよく、M2Mデバイス30の識別子は、便宜的に、「M2MデバイスID」と表記されてよい。
UEID及びM2MデバイスIDを通知する信号の一例である通信切替要求は、例示的に、ユーザプレーン信号にて送信されてよい。ユーザプレーン信号の一例は、GTP(GPRS Tunneling Protocol for User Plane)信号(「パケット」と称してもよい。)である。なお、「GPRS」は、「General Packet Radio Service」の略称である。
GTPパケットのフォーマット例を図11に示す。図11に例示するように、GTPパケットの第2オクテットに、当該パケットの種別を示す「Message Type」フィールド(8ビット)が規定されている。
「Message Type」フィールドの予備(Reserve)領域に、GTPパケットにUEID及びM2MデバイスIDが付与されていることを示す値を設定してよい。例示的に、8ビットのうちの予備領域が3〜25、27〜30及び32〜253であれば、これらのいずれかの値(例えば、253)を、UEID及びM2MデバイスIDがGTPパケットに付与されていることを示す値に割り当ててよい。
UEID及びM2MデバイスIDの実体は、GTPパケットのデータフィールド(「ペイロードフィールド」と称してもよい。)に設定されてよい。例えば図11に示すように、ユーザプレーンのGTPパケット(GTP−Uパケット)のヘッダに続くデータ部(13オクテット以降)に、UEID及びM2MデバイスIDが設定されてよい。なお、GTP−Uパケットを受信した機器は、ヘッダ情報を基に通信相手である送信元のUEを識別可能であるから、GTPパケットのデータ部へのUEIDの設定は不要としてもよい。
このように、M2MデバイスIDの通知に、ユーザプレーン信号(例示的に、GTPパケット)を利用することで、制御プレーンを用いた新規のシグナリング発生を削減可能であり、アクセスネットワーク52の処理負荷軽減を図ることができる。
一方、アクセスネットワーク52は、UE20からUEID及びM2MデバイスIDが付与されたユーザプレーン信号を受信すると、付与されている各IDを位置情報管理装置51に通知する(処理P18)。IDの通知は、アクセスネットワーク52の通信制御部521によって実施されてよい。
位置情報管理装置51は、M2MデバイスID及びUEIDを受信すると、例えば、位置情報管理部511にて、本来的に管理しているUE20の位置情報に、通知されたM2MデバイスIDを関連付けて登録、管理する(処理P19及びP20)。図12に、位置情報管理データの一例を示す。
図12の例では、UEIDが「aaaaaaaa」,「cccccccc」及び「ffffffff」の3台のUE20の位置情報に、それぞれ、M2MデバイスIDが「oooooooo」,「pppppppp」及び「qqqqqqqqqq」の3台のM2Mデバイス30が関連付けられている。なお、位置情報「xxx.xxx.xxx.xxx」は、任意の位置情報であってよいことを表し、図12の例において6台のUE20の位置情報がそれぞれ同じであることを表しているわけではない。
また、図12の例では、1台のUE20に対して複数台のM2Mデバイス30を位置情報管理データにて関連付けて管理できることを示している。例えば、車両に複数のM2Mデバイス30が搭載されている場合、1台のUE20に当該複数のM2Mデバイス30を関連付けて管理することが可能である。
位置情報管理装置51にてM2MデバイスIDの登録(関連付け)が完了すると、位置情報管理装置51は、登録完了通知をアクセスネットワーク52へ送信する(処理P21及びP22)。
アクセスネットワーク52(通信制御部521)は、位置情報管理装置51から登録完了通知を受信すると、車載M2Mデバイス30のセルラー通信をUE20との直接通信に切り替えるよう通信切替指示をUE20宛に送信する(処理P23)。
UE20は、アクセスネットワーク52から通信切替指示を受信すると、例えば通信制御部201によって車載M2Mデバイス30の通信制御部301に対して通信切替指示を送信する(処理P24)。
車載M2Mデバイス30は、通信制御部301にてUE20からの通信切替指示を受信すると、アクセスネットワーク52との間のセルラー通信のコネクション設定を解放し、通信切替処理部302によってUE20との直接通信に切り替える(処理P25)。
以後、車載M2Mデバイス30は、UE20を中継ポイントとしてアクセスネットワーク52との通信を行なう。
なお、図10の処理P13では、M2Mデバイス30からUE20へのコネクション設定要求をUE20の接近検知をトリガに実施しているが、他の条件をトリガにしてもよい。
例えば、車両のエンジンがON状態で、かつ、UE20の接近状態が一定時間以上継続する条件の成立をトリガにして、M2Mデバイス30からUE20へのコネクション設定要求を実施するようにしてもよい。
これによれば、車両にユーザが一時的にでも近づく度にコネクション設定要求が車載M2Mデバイス30からUE20に対して頻繁に送信されてしまうことを抑止できる。
また、図10の処理P13において、車載M2Mデバイス30に複数のUE20が接近することも有り得る。その場合、車載M2Mデバイス30を関連付けるUE20の選択方法については、幾つか方法が考えられる。
例えば、予め関連付けるUE20を設定しておく方法や最初にコネクション設定が成功したUE20を選択する方法等が考えられる。また、車両のドライバー等、通常は、同じユーザのUE20が車載M2Mデバイス30と通信するUE20になる可能性が高いと考えられる。
そこで、過去に車載M2Mデバイス30とコネクション設定したUE20の履歴をM2Mデバイス30において記憶(「学習」と称してもよい。)しておき、コネクション設定回数の多いUE20を優先的にコネクション設定対象に選ぶようにしてもよい。ただし、コネクション設定対象のUE20の選択方法は、以上に限られない。
(ユーザが車両で移動中の通信動作例)
図7の(2)及び(3)に例示したように、ユーザが車両で移動している際、車載M2Mデバイスは、ユーザのUE20を介してアクセスネットワーク52と通信(中継通信)する。当該中継通信には、テザリング機能等の既知の通信技術を利用してよい。
例えば図13に示すように、アクセスネットワーク52の通信制御部521は、車載M2Mデバイス30宛のデータが有れば、当該データを車載M2Mデバイス30の中継ポイントであるUE20へ送信する(処理P31)。当該データには、車載M2Mデバイス30が宛先であることを示す情報が通信制御部521にて設定されてよい。
UE20は、アクセスネットワーク52からデータを受信すると、当該受信データがUE20宛か車載M2Mデバイス30宛かを例えば通信制御部201にて識別する(処理P32)。
当該識別は、例示的に、図11に例示したように、GTPパケットの「Message Type」フィールドの値に基づいて実施されてよい。識別の結果、受信データが、車載M2Mデバイス30宛であれば、通信制御部201は、受信データを車載M2Mデータ送受信部202へ送信する(処理P33)。
車載M2Mデータ送受信部202は、通信制御部201から受信したデータを車載M2Mデバイス30へ送信する(処理P34)。当該データは、例えば車載M2Mデバイス30の通信制御部301にて受信される。
なお、車載M2Mデバイス30は、アクセスネットワーク52への送信データがあれば、UE20へ送信する。UE20は、車載M2Mデバイス30から受信したデータに、例えば送信元を示すM2MデバイスIDを付与してよい。当該M2MデバイスIDの付与は、例えば、車載M2Mデータ送受信部202にて実施されてよい。これにより、アクセスネットワーク52は、UE20から受信したデータのうち、車載M2Mデバイス30が送信元のデータを識別できる。
その後、車両の移動に伴ってUE20とアクセスネットワーク52との間でハンドオーバ処理等の移動制御が発生したとする(処理P35)。アクセスネットワーク52は、UE20に対する移動制御に応じて、UE20の位置情報の更新を位置情報管理装置51に依頼する(処理P36)。当該依頼には、更新対象のUE20の例えば識別子が含められてよい。
位置情報管理装置51は、アクセスネットワーク52からの位置情報更新依頼の受信に応じて、表1に例示したUE20の位置情報のうち該当UE20の位置情報を更新する(処理P37)。図14に、位置情報管理データの更新例を示す。
図14の例では、UEIDが「aaaaaaaa」であるUE20の位置情報が「yyy.yyy.yyy.yyy」に更新されることで、当該UE20に関連付けられたM2Mデバイス30(M2MデバイスID=「oooooooo」)の位置情報も併せて更新される様子を示している。
UE20の移動制御に伴う当該UE20の位置情報の更新に応じて、当該UE20に関連付けられた車載M2Mデバイス30の位置情報も併せて更新されるので、M2Mデバイス30の移動に伴うシグナリングの発生を抑えることができる。したがって、アクセスネットワーク52の処理負荷上昇を抑制できる。
一方、UE20は、アクセスネットワーク52との間の移動制御に伴って当該UE20の位置情報を車載M2Mデバイス30に通知してよい(処理P38)。位置情報の通知は、例示的に、通信制御部301及び位置情報通知部203(図9参照)によって実施されてよい。
車載M2Mデバイス30は、UE20から位置情報の通知を受信すると、当該車載M2Mデバイス30が記憶する位置情報リストを、通知された位置情報によって更新する(処理P39及びP40)。位置情報リストの更新は、例示的に、位置情報管理部303(図9参照)によって実施されてよい。
図15に、車載M2Mデバイス30の位置情報管理部303にて記憶、管理される位置情報リストの一例を示す。
UE20から車載M2Mデバイス30へ位置情報を通知することで、アクセスネットワーク52にデータ(シグナリングを含む。)を流すことなく位置情報の通知が可能であり、アクセスネットワーク52の処理負荷軽減を図ることができる。
図16に、UE20から車載M2Mデバイス30への位置情報の通知をWiFi通信にて行なう場合のプロトコルスタックの一例を示す。UE20の位置情報通知部203は、例えば図16において、TCP(Transmission Control Protocol)のユーザデータ(ペイロード)に位置情報を付与してよい。
TCPのユーザデータに位置情報が付与されていることは、例えば図17に示すように、TCPヘッダのオプションフィールドに、当該付与を識別可能な情報(識別子)を付与することで表示されてよい。
車載M2Mデバイス30は、TCPヘッダを終端してオプションフィールドに当該識別子が付与されていることを検出することで、TCPのユーザデータに付与されている位置情報を認識、取得することができる。
以上のようにして、車載M2Mデバイス30は、位置情報管理装置51で管理されているUE20の位置情報と同じ情報を同期して管理することができる。したがって、UE20を介した中継通信が終了あるいは切断しても、車載M2Mデバイス30は、当該位置情報リストを基に、現在の位置情報を識別できる。
よって、後述するように、車載M2Mデバイス30は、UE20を介した中継通信が終了しても、アクセスネットワーク52に対して新たに位置登録処理を行なわずに(スキップして)、アクセスネットワーク52との通信を確立できる。
(UE20によるM2Mデバイス30のデータ送信制御)
M2Mデバイス30がUE20を中継ポイントとしてアクセスネットワーク52と通信する場合、当該通信の制御をUE20が行なってよい。例えば、M2Mデバイス30の通信には、「定期的なデータ送信」、「小容量な送信データ」、「緊急を要する送信データが少ない」等の特性がある。
そこで、このような特性に基づいて、M2Mデバイス30の送信データ制御を中継ポイントであるUE20(例示的に、車載M2Mデータ送受信部202)で実施してよい。例えば、通常時には、M2Mデバイス30の送信データ(以下「M2Mデータ」とも称する。)は、UE20の送信データ(以下「UEデータ」とも称する。)よりも低い優先度に設定しておいてよい。優先度の指標は、QoS(Quality of Service)であってよい。
これにより、UE20は、QoSの高いUEデータの合間に、QoSの低いM2Mデータを送信する制御が可能になる。したがって、UE20の通常の通信に影響しないようにM2Mデバイス30の通信を制御できる。
一方、M2Mデータが緊急性を有するデータ(例示的に、車両の故障情報等)である場合には、M2MデータのQoSをUEデータのQoSよりも高く(例えば、トッププライオリティに)設定してよい。
これにより、UE20は、緊急性を有するM2Mデバイスの送信データを、通常のUEデータよりも優先して送信する制御が可能になる。なお、M2Mデータが緊急性を有するデータであるか否かは、M2Mデバイス30にて当該送信データに緊急性を識別可能な情報を付与しておくことで、UE20にて識別可能としてよい。
また、UE20は、周囲の電波状態が悪い場合、M2Mデータの送信間隔を制御することで、アクセスネットワーク52の負荷や輻輳を軽減するようにしてもよい。例えば図18に模式的に例示するように、UE20において、スループットの低下や受信電波強度の悪化等が検出されることがある。なお、スループットや受信電波強度は、無線信号品質の指標の一例である。
当該検出に応じて、UE20は、緊急性を有さない(別言すると、QoSが相対的に低い)M2Mデータを一時的にバッファリングしておいてよい。そして、その後に、スループットが回復する等してM2Mデータを送信してよい状態になると、UE20は、バッファリングしたM2Mデータをいくつかまとめてアクセスネットワーク52へ送信する。
また、UE20によるM2Mデータの送信制御は、時間や場所等毎の電波状態やスループット等の無線信号品質に基づいて実施されてもよい。例えば図19に模式的に示すように、UE20のユーザが車両で移動する時間帯及び経路(場所)の一方又は双方での無線信号品質をUE20にて測定、学習、記憶しておく。なお、無線信号品質の測定方法については、特に限定されず、既存の測定技術を適用してよい。
UE20は、無線信号品質の学習結果(別言すると、測定履歴)を基に、アクセスネットワーク52へのM2Mデータの送信間隔を制御してよい。これにより、UE20は、信号品質の測定を常時行なわなくても、時間帯や場所等に応じた適切なM2Mデータの中継制御を実施することが可能になる。したがって、UE20の処理負荷や電力消費量を抑えることができる。
図20に、上述したUE20(例えば、車載M2Mデータ送受信部202)によるM2Mデータの送信制御例を示す。
図20に例示するように、UE20は、M2Mデバイス30とのデータ通信を開始すると(処理P51)、M2Mデータの優先度がUEデータの優先度よりも高いか否かを判定する(処理P52)。
判定の結果、M2Mデータの優先度がUEデータの優先度よりも高ければ(処理P52でYESの場合)、UE20は、例示的に、M2MデータのQoSを最優先に設定して、当該M2Mデータをアクセスネットワーク52へ送信する(処理P53)。
一方、M2Mデータの優先度がUEデータの優先度よりも高くなければ(処理P52でNOの場合)、UE20は、例えば、図19に例示したようにして学習した時間帯や場所等毎の無線信号品質の良否を判定する(処理P54)。無線信号品質の良否判定は、例えば、所定の閾値を用いた閾値判定であってよい。
判定の結果、学習結果に基づく無線信号品質が悪ければ(処理P54でNOの場合)、UE20は、図18に例示したように、M2Mデータを一時的にバッファリングして、その後のM2Mデータとまとめてアクセスネットワーク52へ送信する(処理P55)。
一方、学習結果に基づく無線信号品質が良ければ(処理P54でYESの場合)、UE20は、現在の無線信号品質の良否を、例えば所定の閾値を用いて判定する(処理P56)。
判定の結果、現在の無線信号品質が悪ければ(処理P56でNOの場合)、UE20は、処理P55と同様に、M2Mデータを一時的にバッファリングして、その後のM2Mデータとまとめてアクセスネットワーク52へ送信する(処理P57)。
一方、現在の無線信号品質が良ければ(処理P56でYESの場合)、UE20は、UEデータの合間にM2Mデータをアクセスネットワーク52へ送信する(処理P58)。
以上のようにして、UE20は、M2Mデータの優先度や、時間帯や場所等毎の無線信号品質の学習結果、現在の無線信号品質等に基づいて、M2Mデータの送信制御を行なう。これにより、UEデータ送信への影響やアクセスネットワーク52の負荷等を軽減しつつ、M2Mデータの適応的な送信制御が可能になる。
なお、図20の例では、M2Mデータの優先度、時間帯や場所等毎の信号品質の学習結果、現在の信号品質の3種類について判定処理を行なっているが、いずれかの判定処理は省略してもよい。
(車両が停車してユーザが車両から降車した際の通信動作例)
次に、図21に例示するシーケンス図を参照して、図7の(3)及び(4)に例示したように、車両が停止してユーザが車両から降車した際の通信動作例について詳述する。
車載M2Mデバイス30は、車両が停車してユーザが車両から降車したことを検知すると、UE20を介した中継通信を終了し、アクセスネットワーク52とのセルラー通信の確立を試行する。
なお、ユーザの降車は、例示的に、車両のエンジン停止をもって検知することとしてもよいし、ユーザが車両から一定距離以上離れてUE20との無線リンクが切断されたことをもって検知することとしてもよい。ただし、ユーザの降車検知の方法は、これらに限られない。
ユーザの降車を検知した車載M2Mデバイス30は、例えば、アクセスネットワーク52に対してセルラー通信の確立要求を送信する(処理P61)。当該セルラー通信の確立要求は、車載M2Mデバイス30のUE20へのコネクション設定を解除することを示す信号の一例に相当すると捉えてもよい。ここで、通常のセルラー通信確立時にはM2Mデバイス30とアクセスネットワーク52との間で位置登録処理(シーケンス)が実施される。
しかし、本実施形態では、既述のとおり、車両(UE20)の移動制御に応じて、位置情報管理装置51で車載M2Mデバイス30の位置情報が管理されており、また、車載M2Mデバイス30においても位置情報をUE30から通知されている。
そのため、車載M2Mデバイス30は、アクセスネットワーク52との間で新たに位置登録シーケンスを実施しなくても(別言すると、位置登録シーケンスをスキップして)セルラー通信を確立することができる。例示的に、車載M2Mデバイス30は、自身のM2MデバイスIDを、セルラー通信の確立要求に含めてアクセスネットワーク52へ送信する。
アクセスネットワーク52の通信制御部521は、車載M2Mデバイス30からセルラー通信の確立要求を受信すると、当該確立要求に含まれているM2MデバイスIDを位置情報管理装置51に通知する(処理P62)。
位置情報管理装置51は、例えば位置情報関連付け処理部512によって、通知されたM2MデバイスIDを基に位置情報管理部511にて管理されている位置情報(図14に例示した位置情報管理データ)を参照する。
参照の結果、該当M2MデバイスIDの登録されたエントリが有れば、位置情報関連付け処理部512は、当該エントリに登録されているM2MデバイスIDを削除してM2Mデバイス30のUE20への関連付けを解除する(処理P63)。
併せて、位置情報関連付け処理部512は、関連付けを解除したM2Mデバイス30を新規の移動機として位置情報管理部511に登録する。その際、位置情報関連付け処理部512は、M2Mデバイス30の位置情報として、関連付けを解除したUE20の位置情報を登録する。
図22に、以上の関連付け解除処理に応じた位置情報管理データの更新例を示す。図22の例では、M2MデバイスID=「oooooooo」のM2Mデバイス30が、1項のエントリにおいてUEID=「aaaaaaa」のUE20との関連付けを解除される。併せて、7項のエントリに、M2MデバイスID=「oooooooo」のM2Mデバイス30が登録され、その位置情報として、UEID=「aaaaaaa」の位置情報「yyy.yyy.yyy.yyy」が登録される。
これにより、UE20との関連付けが解除されたM2Mデバイス30は、単独でアクセスネットワーク52と通信している移動機として位置情報管理装置51にて管理されることになる。
図21に例示するように、位置情報管理装置51は、車載M2Mデバイス30の関連付け解除及び新規登録が完了すると、アクセスネットワーク52へ、その旨を示す関連付け解除通知を送信する(処理P64)。
アクセスネットワーク52は、位置情報管理装置51から関連付け解除通知を受信すると、車載M2Mデバイス30との間で、通常のセルラー通信確立処理を実施する(処理P65)。当該セルラー通信確立処理は、例示的に、アクセスネットワーク52の通信制御部521と、車載M2Mデバイス30の通信制御部301と、が協働して実施してよい。
セルラー通信が確立すると、車載M2Mデバイス30の通信制御部301は、通信切替処理部302に、セルラー通信が確立したことを通知する(処理P66)。通信切替処理部302は、当該通知に応じて、中継通信からセルラー通信への通信切替を実施して(処理P67)、UE20に通信切替通知を送信する(処理P68)。
UE20は、車載M2Mデバイス30から通信切替通知を受信すると、車載M2Mデバイス30との間に設定したコネクションを解放する(処理P69)。
(第2の利用シーンでの通信動作例)
次に、図23及び図24を参照して、図8に例示した第2の利用シーンでの通信動作例について詳述する。
(停車中の車両にユーザが乗車する際の通信動作例)
図8の(1)に例示したように、第2の利用シーンでは、車両停車中(エンジンOFF時)には車載M2Mデバイス30も電源OFFとなってNWとのセルラー通信は行なわない。そのため、車載M2Mデバイス30は、アクセスネットワーク52との間でコネクションが未設定の状態である。
一方、車両のユーザが携帯するUE20については、図23に例示するように、アクセスネットワーク52との間のコネクション設定が済んでいると仮定する(処理P71)。
車載M2Mデバイス30は、ウェイクアップに応じて、周辺に接続(コネクション設定)が可能なUE20が存在するか否かを検索する(処理P72及びP73)。当該ウェイクアップに応じたUE検索処理は、例示的に、位置情報管理部303及び通信切替処理部302が連携して実施してよい。
例えば、車載M2Mデバイス30のウェイクアップに応じて、位置情報管理部303が周辺UE20のUE検索依頼を通信切替処理部302へ送信し、当該UE検索依頼に応じて、通信切替処理部302が、周辺UE20の検索処理を実施してよい。周辺UE20の検索方法については、特に限定しないが、例えば、既知の端末ディスカバリ技術等を適用してよい。
なお、車載M2Mデバイス30の「ウェイクアップ」は、例示的に、車載M2Mデバイス30が電源ONされた時や、車載M2Mデバイス30がスリープモードから復帰した時に生じる。車載M2Mデバイス30のウェイクアップは、例えば、車両のエンジンONをトリガに実施されてよいが、これに限られない。
M2Mデバイス30のウェイクアップ時には、通常は位置登録シーケンスが実施される。しかし、本実施形態のM2Mデバイス30は、ウェイクアップ時に、周辺のUE20を検索し、発見したUE20との間でコネクションの設定を試行する。これにより、車載M2Mデバイス30のウェイクアップ時の位置登録シーケンスを削減でき、アクセスネットワーク52の負荷を低減できる。
車載M2Mデバイス30は、周辺UE20の検索処理により、例えば車両に乗車したユーザのUE20を発見すると(処理P74)、当該UE20に対してコネクションの設定要求を送信する(処理P75及びP76)。なお、コネクション設定要求は、例示的に、通信切替処理部302にて生成され、通信制御部301によってUE20宛に送信されてよい。
UE20は、車載M2Mデバイス30からのコネクション設定要求を受信すると、当該コネクション設定要求の送信元である車載M2Mデバイス30との間でコネクションの設定を行なう(処理P77)。当該コネクション設定は、例示的に、UE20の通信制御部201と、車載M2Mデバイス30の通信制御部301とが、協働して実施してよい。
コネクション設定が完了すると、車載M2Mデバイス30は、UE20と直接の通信が可能な状態になる。車載M2Mデバイス30とUE20との間の直接通信には、WiFi通信やBlueTooth(登録商標)通信等を適用してよいが、これらに限定されない。
コネクション設定完了後の処理としては、図10に例示した処理P17〜P25において、「通信切替要求」及び「通信切替指示」を、それぞれ、「通信開始要求」及び「通信開始指示」に読み替えた処理に相当する処理が実施されてよい。
例えば図23に示すように、車載M2Mデバイス30とUE20との間のコネクション設定がなされると、UE20は、アクセスネットワーク52に対して通信開始要求を送信してよい(処理P78)。当該通信開始要求は、車載M2Mデバイス30がUE20を介した通信の開始を要求する信号の一例である。
通信開始要求は、例示的に、通信制御部201にて生成されてよく、車載M2Mデバイス30及びUE20の識別子を含んでよい。別言すると、通信開始要求は、車載M2MデバイスID及びUEIDをアクセスネットワーク52へ通知する信号の一例である。
UEID及びM2MデバイスIDを通知する信号の一例である通信開始要求は、既述の通信切替要求と同様に、例えば、ユーザプレーン信号にて送信されてよく、ユーザプレーン信号は、GTPパケット(図11参照)であってよい。
本例においても、M2MデバイスIDの通知に、ユーザプレーン信号(例示的に、GTPパケット)を利用することで、制御プレーンを用いた新規のシグナリング発生を削減可能であり、アクセスネットワーク52の処理負荷軽減を図ることができる。
一方、アクセスネットワーク52は、UE20からUEID及びM2MデバイスIDが付与されたユーザプレーン信号を受信すると、付与されている各IDを位置情報管理装置51に通知する(処理P79)。IDの通知は、アクセスネットワーク52の通信制御部521によって実施されてよい。
位置情報管理装置51は、M2MデバイスID及びUEIDを受信すると、例えば、位置情報管理部511にて、本来的に管理しているUE20の位置情報に、通知されたM2MデバイスIDを関連付けて登録、管理する(処理P80及びP81)。位置情報管理データの一例は、図12に示したデータと同じデータであってよい。
位置情報管理装置51にてM2MデバイスIDの登録(関連付け)が完了すると、位置情報管理装置51は、登録完了通知をアクセスネットワーク52へ送信する(処理P82及びP83)。
アクセスネットワーク52(通信制御部521)は、位置情報管理装置51から登録完了通知を受信すると、車載M2Mデバイス30がUE20を介した通信を開始してよいことを示す通信開始指示をUE20宛に送信する(処理P84)。
UE20は、アクセスネットワーク52から通信開始指示を受信すると、例えば通信制御部201によって車載M2Mデバイス30の通信制御部301に対して通信開始指示を送信する(処理P85)。
車載M2Mデバイス30は、通信制御部301にてUE20からの通信開始指示を受信すると、通信切替処理部302に通信開始指示を送信する(処理P86)。これにより、通信切替処理部302は、UE20を中継ポイントとしてアクセスネットワーク52との通信を開始する。
(ユーザが車両で移動中の通信動作例)
図8の(2)及び(3)に例示したように、ユーザが車両で移動している際、車載M2Mデバイス30は、ユーザのUE20を介してアクセスネットワーク52と通信(中継通信)する。当該中継通信には、テザリング機能等の既知の通信技術を利用してよい。
第2の利用シーンでの中継通信シーケンス、及び、車両(UE20)の移動に伴うハンドオーバ等の移動制御に応じたUE20及び車載M2Mデバイス30の位置情報の更新シーケンスについては、第1の利用シーンと同様でよい(例えば図13参照)。
また、UE20から車載M2Mデバイス30へ位置情報を通知する方法や、中継通信でのUE20によるM2Mデータの送信制御についても、第1の利用シーンと同様でよい(例えば、図14〜図20参照)。
(車両が停車してユーザが車両から降車した際の通信動作例)
次に、図24のシーケンス図を参照して、図8の(3)及び(4)に例示したように、第2の利用シーンにおいて、車両が停止してユーザが車両から降車した際の通信動作例について詳述する。
車載M2Mデバイス30は、車両が停車してユーザが車両から降車したことを検知すると、UE20を介した中継通信を終了する。ユーザの降車は、例示的に、車両のエンジン停止をもって検知することとしてもよいし、ユーザが車両から一定距離以上離れてUE20との無線リンクが切断されたことをもって検知することとしてもよい。ただし、ユーザの降車検知の方法は、これらに限られない。
ここで、第2の利用シーンでは、車載M2Mデバイス30は、通信完了に応じて電源OFFあるいはスリープモードとなってセルラー通信を実施しなくてよい。そのため、車載M2Mデバイス30は、セルラー通信確立のためのコネクション設定処理を実施しなくてよい。
また、既述のとおり、車両(UE20)の移動制御に応じて、位置情報管理装置51で車載M2Mデバイス30の位置情報が管理されており、車載M2Mデバイス30においても位置情報をUE20から通知されている。
そのため、車載M2Mデバイス30は、アクセスネットワーク52に対して信号を送信するために、アクセスネットワーク52との間で新たに位置登録シーケンスを実施しなくてよい(別言すると、位置登録シーケンスをスキップしてよい)。
例えば、ユーザの降車を検知した車載M2Mデバイス30は、電源OFF又はスリープモードに移行する前に、アクセスネットワーク52に対して通信完了通知を、位置登録シーケンスをスキップして送信してよい(処理P91)。当該通信完了通知は、例示的に、通信制御部301にて生成されてよく、M2MデバイスIDが含められてよい。当該通信完了通知は、車載M2Mデバイス30のUE20へのコネクション設定を解除することを示す信号の一例に相当すると捉えてもよい。
アクセスネットワーク52の通信制御部521は、車載M2Mデバイス30から通信完了通知を受信すると、当該通信完了通知に含まれているM2MデバイスIDを位置情報管理装置51に通知する(処理P92)。
位置情報管理装置51は、例えば位置情報関連付け処理部512によって、通知されたM2MデバイスIDを基に位置情報管理部512にて管理されている位置情報(例えば図14に例示した位置情報管理データ)を参照する。
参照の結果、該当M2MデバイスIDの登録されたエントリが有れば、位置情報関連付け処理部512は、当該エントリに登録されているM2MデバイスIDを削除してM2Mデバイス30のUE20への関連付けを解除する(処理P93)。
図25に、以上の関連付け解除処理に応じた位置情報管理データの更新例を示す。図25の例では、1項のエントリにおいて、UEID=「aaaaaaaa」のUE20に関連付けられていた、M2Mデバイス30の情報(M2MデバイスID=「oooooooo」)が削除されている。併せて、7項のエントリに、M2MデバイスID=「oooooooo」のM2Mデバイス30が登録され、その位置情報として、UEID=「aaaaaaa」の位置情報「yyy.yyy.yyy.yyy」が登録される。
これにより、UE20との関連付けが解除されたM2Mデバイス30は、単独でアクセスネットワーク52と通信可能な移動機として位置情報管理装置51にて管理されることになる。
図24に例示するように、位置情報管理装置51は、車載M2Mデバイス30の関連付け解除及び新規登録が完了すると、アクセスネットワーク52へ、その旨を示す関連付け解除通知を送信する(処理P94)。
アクセスネットワーク52は、位置情報管理装置51から関連付け解除通知を受信すると、UE20宛に関連付け解除通知を送信する(処理P95)。
UE20は、アクセスネットワーク52からの関連付け解除通知の受信に応じて、車載M2Mデバイス30との間のコネクション設定を解放してよい(処理P96)。
コネクション設定の解放は、例示的に、UE20の通信制御部201と、車載M2Mデバイス30の通信制御部301と、が協働して実施してよい。
なお、上述した第1及び第2の利用シーンのいずれにおいても、車両は停止したがエンジンはONのままの状態でユーザが車両から降車することも有り得る。この場合、車載M2Mデバイス30は、UE20との間の無線リンク(コネクション設定)の切断に応じて、アクセスネットワーク52との間でセルラー通信の確立を試行してよい(例えば図21参照)。
また、上述した第1及び第2の利用シーンのいずれにおいても、1台の車両にUE20を所有するユーザが複数人同乗していることが有り得る。この場合、車載M2Mデバイス30は、セルラー通信の確立を試行する前に、無線リンクが切断されたUE20とは異なる他のUE20への接続を試行してもよい。
以上詳述したように、上述した実施形態によれば、車載M2Mデバイス30のすべてに個別的に無線リソースを割り当てなくてよいので、無線リソースの利用効率を向上できる。
また、車載M2Mデバイス30と共に移動するUE20の位置情報を車載M2Mデバイス30の識別子と関連付けて管理することで、車載M2Mデバイス30の個別的な移動制御に伴うシグナリングの削減が可能になる。
更に、車載M2Mデバイス30は、UE20を介したアクセスネットワーク52との間の中継通信が終了しても、位置登録処理をスキップしてセルラー通信を確立できるので、位置登録処理に関わるシグナリングの削除が可能になる。
したがって、アクセスネットワーク52の負荷(無線リソースの消費量やシグナリング数)の軽減を図ることができる。
(UE20及びM2Mデバイス30のハードウェア構成例)
次に、図26を参照してUE20及びM2Mデバイス30のハードウェア構成例について説明する。
図26に示すように、UE20は、例示的に、アンテナ61、増幅器(アンプ)62、ベースバンド処理部63、プロセッサ64、及び、メモリ65を備える。なお、M2Mデバイス30の構成例も、図26に例示するUE20の構成例と同様であってよい。ただし、M2Mデバイス30には、例えばプロセッサ64と通信可能に接続された、センサや測定器等が追加的に備えられてよい。
アンテナ61は、無線信号を送受信する。アンテナ61は、送受信に共用であってもよいし個別であってもよい。
アンプ62は、ベースバンド処理部63から受信される無線信号を増幅してアンテナ61へ送信する。また、アンプ62は、アンテナ61で受信された無線信号を増幅してベースバンド処理部63へ送信する。アンプ62は、送受信に共用であってもよいし、送受信に個別であってもよい。送信用のアンプ62は、例示的に、パワーアンプ(PA)であってよく、受信用のアンプ62は、低雑音増幅器(LNA)であってよい。
ベースバンド処理部63は、例示的に、プロセッサ64で生成された送信信号を変調してアンプ62へ出力する。また、ベースバンド処理部63は、例示的に、アンプ62から受信される受信信号を復調してプロセッサ64へ出力する。
送受信信号の変復調には、例示的に、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変復調技術を適用してよい。ベースバンド処理部63によるベースバンド処理には、誤り訂正符号化、誤り訂正復号化、チャネル推定、チャネル補償(等化)等の処理が含まれてよい。
ベースバンド処理部63は、例示的に、DSP(Digital Signal Processor)や、大規模集積回路(LSI)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてよい。
プロセッサ64は、例えば、メモリ65に記憶された情報を読み取って動作することにより、UE20の動作を統括的に制御する。そのため、プロセッサ64は、UE20(又は、M2Mデバイス30)の制御部の一例に相当すると捉えてもよい。プロセッサ64は、演算能力を備えたプロセッサデバイス又はプロセッサ回路の一例であり、例えばCPU(Central Processing Unit)が適用されてよい。
メモリ65は、プロセッサ64が読み取り可能な情報を記憶する記憶装置の一例であり、例えばRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)が適用されてよい。メモリ65に記憶される情報には、プログラム(「ソフトウェア」と称してもよい。)やデータが含まれてよい。プログラムには、UE20(M2Mデバイス30)の動作を制御するプログラムが含まれてよい。
例えば、プロセッサ64がUE20の動作を制御するプログラムをメモリ65から読み取って動作することで、図9に例示した各部201〜203(又は、301〜303)の動作(機能)が実現される。
メモリ65に記憶されるデータには、プログラムに付随するデータの他、上記の各部201〜203(又は、301〜303)の動作に応じて用いられるデータや情報が含まれてよい。
例えば、アクセスネットワーク52との間で送受信されるデータ(UEデータ又はM2Mデータ)がメモリ65にバッファリングされてよい。また、M2Mデバイス30のメモリ65には、図15に例示した位置情報リストが記憶されてよく、UE20のメモリ65には、図19や図20にて説明した、時間帯や場所毎の無線信号品質の学習結果、無線信号品質の判定閾値等の情報が記憶されてよい。
(位置情報管理装置51のハードウェア構成例)
次に、図27を参照して、位置情報管理装置51のハードウェア構成例について説明する。
図27に示すように、位置情報管理装置51は、例示的に、ネットワークインタフェース(IF)71、プロセッサ72、及び、メモリ73を備える。
ネットワークIF71は、例示的に、アクセスネットワーク52との通信を可能にするインタフェースである。ネットワークIF71は、例示的に、既述のSGWやPGWとの間で送受信される信号のプロトコル変換等の処理を実施してよい。ネットワークIF71を通じて既述の位置情報管理のための信号が送受信される。
プロセッサ72は、例えば、メモリ73に記憶された情報を読み取って動作することにより、位置情報管理装置51の動作を統括的に制御する。そのため、プロセッサ72は、位置情報管理装置51の制御部の一例に相当すると捉えてもよい。プロセッサ72は、演算能力を備えたプロセッサデバイス又はプロセッサ回路の一例であり、例えばCPUが適用されてよい。
メモリ73は、プロセッサ72が読み取り可能な情報を記憶する記憶装置の一例であり、例えばRAMやHDDが適用されてよい。メモリ73に記憶される情報には、プログラムやデータが含まれてよい。プログラムには、位置情報管理装置51の動作を制御するプログラムが含まれてよい。
例えば、プロセッサ72が位置情報管理装置51の動作を制御するプログラムをメモリ73から読み取って動作することで、図9に例示した位置情報管理部511及び位置情報関連付け処理部512の動作(機能)が実現される。
メモリ73に記憶されるデータには、プログラムに付随するデータの他、上記の各部511及び512の動作に応じて用いられるデータや情報が含まれてよい。
例えば、アクセスネットワーク52との間で送受信されるデータ(UEデータ又はM2Mデータ)がメモリ73にバッファリングされてよい。また、図12や図14、図22、及び図25に例示した位置情報管理データがメモリ73に記憶されてよい。