以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、実施形態に係るリクライニング機構1が設けられた乗物用シートSに座る乗員を基準とする。
図1に示すように、リクライニング機構1は、乗物用シートSのシートクッションS1に対するシートバックS2の傾斜角度を調整するための機構であり、シートクッションS1の後部の左右方向の一方に設けられている。なお、本実施形態では、リクライニング機構1は、シートクッションS1の右側に設けられているものとする。
シートクッションS1は、左右に離間して配置される一対のクッションサイドフレームF1を有し、シートバックS2は、左右に離間して配置される一対のバックサイドフレームF2を有する。それぞれのバックサイドフレームF2の下端部は、対応するクッションサイドフレームF1の後端部と左右方向から見て重なり、クッションサイドフレームF1の後端部よりも左右方向内側に配置されている。そして、リクライニング機構1は、右側のクッションサイドフレームF1の後端部と右側のバックサイドフレームF2の下端部との間に設けられている。
図2に示すように、リクライニング機構1は、ベースプレート10と、2つのロックギヤ20と、カムとしてのスライドカム30と、操作部材40と、付勢部材50と、インターナルギヤ60と、リング70とを主に備えて構成されている。
ベースプレート10は、シートクッションS1を構成するクッションサイドフレームF1(図1参照)に固定されている。インターナルギヤ60は、リング70を介してベースプレート10に対し回動可能に支持されており、シートバックS2を構成するバックサイドフレームF2(図1参照)に固定され、シートバックS2と一体に回動するようになっている。
インターナルギヤ60のベースプレート10に対する回動は、スライドカム30などによって動作するロックギヤ20によって規制または許容されるようになっている。これにより、シートクッションS1に対するシートバックS2の傾動を規制または許容することが可能となっている。以下、各部材の構成について詳細に説明する。
ベースプレート10は、円板状の基部11と、基部11の外周部から左側に延出する環状の外周壁部12と、基部11から左側(ロックギヤ20側)に突出する一対のカムガイド部13、一対の軸支部14、支持凸部15および複数の荷重受部16と、基部11に設けられた被係合部17とを有している。
基部11は、左右方向(インターナルギヤ60の回動軸方向)において各ロックギヤ20やスライドカム30などと対向する部分であり、左右方向から見た中央に左右方向に貫通する貫通穴11Bを有している。貫通穴11Bは、操作部材40を回動させる図示しない操作レバーの回動軸91(図5参照)を挿通させるための穴である。
一対のカムガイド部13は、スライドカム30の移動を案内する部分であり、図3に示すように、左右方向から見て、インターナルギヤ60や操作部材40(図2参照)の回動中心Cを通り上下方向(スライドカム30の移動方向)に平行な直線L1に関して対称に設けられている。具体的に、一対のカムガイド部13は、前後方向(スライドカム30の移動方向に直交する直交方向)において貫通穴11Bやスライドカム30を挟むように配置されており、各カムガイド部13は、前後方向においてスライドカム30と対向し、スライドカム30を上下方向にスライド移動可能に支持するスライドカムガイド面13Aを有している。なお、一対のカムガイド部13が貫通穴11Bを挟むように配置されていることで、基部11から突出する剛性が高い部分の間に貫通穴11Bが配置されることになるので、ベースプレート10の剛性を高めることができる。
図4に示すように、各カムガイド部13は、左側の面に、左側(インターナルギヤ60の対面部61側)に突出するベース側回動規制凸部13Bおよび隣接凸部13Cを有している。
図5(a),(b)に示すように、ベース側回動規制凸部13Bは、インターナルギヤ60のギヤ側回動規制凸部63(図7も参照)が当接したときにギヤ側回動規制凸部63の移動を規制することで、インターナルギヤ60の回動量を規制する部位である。このようなベース側回動規制凸部13Bおよびギヤ側回動規制凸部63を有することで、乗物用シートSは、インターナルギヤ60と一体に回動するシートバックS2の傾動量を規制することが可能となっている。
隣接凸部13Cは、インターナルギヤ60の回動方向においてベース側回動規制凸部13Bに隣接して配置されている。より詳細に、隣接凸部13Cは、ベース側回動規制凸部13Bの下側において、ベース側回動規制凸部13Bとの間に所定の間隔をあけた状態で、ベース側回動規制凸部13Bに隣接して配置されている。
各ベース側回動規制凸部13Bおよび各隣接凸部13Cは、回動中心Cを中心とする円の径方向内側に、操作部材ガイド面13Dを有している。操作部材ガイド面13Dは、操作部材40の外周面に摺接して操作部材40の回動を案内する面であり、左右方向から見て回動中心Cを中心とする略円弧状に湾曲した曲面状に形成されている。このように操作部材ガイド面13Dがカムガイド部13の一部として形成されていることで、回動カムガイド面をカムガイド部とは別の部分に設ける構成と比較して、コンパクトな構成で操作部材40を良好に回動させることができる。そして、これにより、コンパクトな構成で、操作部材40によって駆動するスライドカム30を良好に動作させることができる。
図3および図4に示すように、軸支部14は、ロックギヤ20を回動可能に支持する回動軸として機能する、基部11に設けられた凸部であり、各カムガイド部13の上側に1つずつ配置されている。一対の軸支部14は、一対のカムガイド部13と同様に、左右方向から見て、直線L1に関して対称に設けられている。なお、本実施形態において、ベースプレート10は、左右方向から見て、直線L1に関して対称に形成されている。
支持凸部15は、ロックギヤ20からの荷重、具体的には、インターナルギヤ60の回動方向の荷重を受ける部分であり、前後方向において一対の軸支部14の間に配置されている。より詳細には、支持凸部15は、前後方向において第1ロックギヤ20Aの上端部(インターナルギヤ60の周方向における第1ロックギヤ20Aの一端部)と第2ロックギヤ20Bの上端部(インターナルギヤ60の周方向における第2ロックギヤ20Bの一端部)との間に配置されている。さらに言えば、支持凸部15は、一対のカムガイド部13の上側(支持凸部15側)の端部同士を結ぶ直線L2に対し一対のカムガイド部13とは反対側、すなわち、直線L2の上側に配置されている。
支持凸部15は、上下方向(回動中心Cを中心とする円の径方向)における中央部の幅がその上下両端部の幅よりも小さい形状に形成されている。言い換えると、支持凸部15は、上下方向における中央部が上下両端部よりも前後方向内側に凹む形状に形成されている。より詳細に、支持凸部15は、インターナルギヤ60の回動方向において、支持凸部15の前側(一方側)に配置された第1ギヤ支持面15Aと、支持凸部15の後側(他方側)に配置された第2ギヤ支持面15Bとを有している。そして、第1ギヤ支持面15Aは、左右方向から見て前側の軸支部14(第1ロックギヤ20Aの回動中心)を中心とする円弧状に形成され、第2ギヤ支持面15Bは、左右方向から見て後側の軸支部14(第2ロックギヤ20Bの回動中心)を中心とする円弧状に形成されている。
第1ギヤ支持面15Aは、第1ロックギヤ20Aの左右方向から見た輪廓を構成する側面の一部である接触面25Bと接触して、第1ロックギヤ20Aからのインターナルギヤ60の回動方向の荷重を受ける面である。また、第2ギヤ支持面15Bは、第2ロックギヤ20Bの左右方向から見た輪廓を構成する側面の一部である接触面25Bと接触して、第2ロックギヤ20Bからのインターナルギヤ60の回動方向の荷重を受ける面である。
荷重受部16は、支持凸部15と同様に、ロックギヤ20からのインターナルギヤ60の回動方向の荷重を受ける部分である。荷重受部16は、一対のカムガイド部13の前後方向外側の上寄りに配置された第1荷重受部16Aと、一対のカムガイド部13の前後方向外側の下寄りに配置された第2荷重受部16Bとを有している。各荷重受部16A,16Bは、左右方向から見て、インターナルギヤ60の回動方向を向く一対の面と、回動中心Cを中心とする円の径方向を向く一対の面とを有する略四角形状に形成されている。各荷重受部16A,16Bの荷重を受ける面は、左右方向から見て、軸支部14(ロックギヤ20の回動中心)を中心とする円の円周に沿うような略円弧状に形成されている。
被係合部17は、基部11の下部に設けられた上下方向に長く延びる溝状の凹部であり、一対のカムガイド部13と同様に、左右方向から見て、直線L1に関して対称に設けられている。被係合部17は、その上端が直線L2と、一対のカムガイド部13の下側の端部同士を結ぶ直線L3との間の領域(一対のカムガイド部13に挟まれた領域)の内側に配置され、上端よりも下側の部分が一対のカムガイド部13に挟まれた領域の外側(直線L3の下側)に配置されている。すなわち、被係合部17は、一対のカムガイド部13に挟まれた領域から当該領域の外側にわたって配置されている。このような構成によれば、凹状の被係合部17の一部が、剛性が高い一対の凸状のカムガイド部13に挟まれた領域に配置されることになるので、上下方向において被係合部17を長く形成しても、ベースプレート10の剛性低下を抑制することができる。
図6に示すように、ベースプレート10は、基部11から右側(ロックギヤ20やスライドカム30側とは反対側)に突出する位置決め凸部18および溶接凸部19を有している。
位置決め凸部18は、シートクッションS1のクッションサイドフレームF1(図1参照)に対するベースプレート10の位置を決めるための部分である。より詳細には、ベースプレート10は、位置決め凸部18が、クッションサイドフレームF1の図示しないベースプレート固定面に設けられた凹部に係合することで、シートクッションS1に対する位置が決まるようになっている。
位置決め凸部18は、ベースプレート10に2つ設けられている。具体的に、位置決め凸部18は、図3に示すように、左右方向から見て、支持凸部15の前側と後側に1つずつ設けられ、支持凸部15に隣接して配置されている。また、支持凸部15側から見ると、支持凸部15は、左右方向から見て、前後に隣り合う2つの位置決め凸部18の中心を結ぶ直線L4上に配置されている。
このような構成によれば、支持凸部15が設けられた剛性が高い部分の近くに位置決め凸部18が配置されることになるので、シートクッションS1に対するベースプレート10の位置決めの精度を向上させることができる。また、互いに近くに設けられた、支持凸部15が左側に突出し、位置決め凸部18が右側に突出しているので、基部11の支持凸部15付近に凹凸形状が形成され、支持凸部15付近のベースプレート10の剛性を高めることができる。特に本実施形態では、支持凸部15の両側に位置決め凸部18が隣接して配置されているので、位置決め凸部が1つだけ設けられるような構成と比較して、ベースプレート10の剛性をより高めることができる。
図6に戻り、溶接凸部19は、ベースプレート10をシートクッションS1のクッションサイドフレームF1(図1参照)に溶接によって固定するための部分である。より詳細には、ベースプレート10は、溶接凸部19がクッションサイドフレームF1のベースプレート固定面に設けられた凹部に係合した状態で、溶接凸部19とクッションサイドフレームF1とが溶接されることで、シートクッションS1に固定されるようになっている。溶接凸部19は、複数設けられ、前後方向において対向して配置された一対の第1溶接凸部19Aと、基部11の下端部に配置された1つの第2溶接凸部19Bとを有している。
ベースプレート10は、金属製の板をプレス加工することにより形成されている。これにより、第2溶接凸部19Bは、図4に示すように、その裏(基部11のスライドカム30側の面)に凹形状をなす溶接凹部19Dを形成している。被係合部17の下端部は、溶接凹部19Dの前後方向中央部につながっている。より詳細に、被係合部17と溶接凹部19Dは、略同じ深さを有し、左右方向から見て略T字形状をなす、1つの連続した凹部として形成されている。
また、ベースプレート10が金属製の板をプレス加工することにより形成されていることで、ベースプレート10には、図4および図6に示すように、ベース側回動規制凸部13Bの裏に凹形状をなす第1凹部13Eが形成され、隣接凸部13Cの裏に凹形状なす第2凹部13Fが形成されている。このような構成によれば、上下に延びる1つの大きな凹部(凹部13E,13Fが連続したような凹部)が、当該凹部の前後の壁をつなぐように延びる、第1凹部13Eと第2凹部13Fとの間の凸部13Gによって小さな凹部に分断されることになるので、1つの大きな凹部が形成される構成と比較して、カムガイド部13の剛性低下を抑制することができる。
図2および図7に示すように、インターナルギヤ60は、ベースプレート10とともに、ロックギヤ20、スライドカム30、操作部材40および付勢部材50を収容する筐体を形成する部材である。インターナルギヤ60は、円板状の対面部61と、対面部61の外周部から右側に延出する環状の内歯形成部62と、対面部61から右側(ベースプレート10側)に突出するギヤ側回動規制凸部63と、対面部61から左側に突出する4つの溶接凸部64とを有している。
対面部61は、左右方向においてベースプレート10の基部11と対面する部分であり、基部11との間でロックギヤ20やスライドカム30、操作部材40などを挟んだ状態で保持している。
内歯形成部62は、内周部に内歯62Aを有し、ベースプレート10の外周壁部12の内側に係合するように形成されている。
溶接凸部64は、インターナルギヤ60をシートバックS2のバックサイドフレームF2(図1参照)に溶接によって固定するための部分である。より詳細には、インターナルギヤ60は、溶接凸部64がバックサイドフレームF2の図示しないインターナルギヤ固定面に設けられた凹部に係合した状態で、溶接凸部64とバックサイドフレームF2とが溶接されることで、シートバックS2に固定されるようになっている。
図3に示すように、ロックギヤ20は、インターナルギヤ60のベースプレート10に対する回動を規制する状態と、回動を許容する状態とを切り替える部材である。より詳細に、ロックギヤ20は、インターナルギヤ60の内歯62Aに噛み合うことでインターナルギヤ60の回動を規制するロック姿勢(図10の姿勢)と、インターナルギヤ60の内歯62Aから外れることでインターナルギヤ60の回動を許容する解除姿勢(図11の姿勢)との間で変位可能、具体的には、回動可能となるように、ベースプレート10に回動可能(変位可能)に支持されている。
ロックギヤ20は、2つ設けられ、第1ロックギヤ20Aと第2ロックギヤ20Bとを含んでいる。第1ロックギヤ20Aおよび第2ロックギヤ20Bは、一対のカムガイド部13を挟んで、第1ロックギヤ20Aが一対のカムガイド部13の前側に配置され、第2ロックギヤ20Bが一対のカムガイド部13の後側に配置されている。第1ロックギヤ20Aおよび第2ロックギヤ20Bは、直線L1に関して対称に形成されている。
各ロックギヤ20は、インターナルギヤ60の周方向(回動方向)に沿って湾曲して延びる長尺状に形成されており、周方向の中央部から下端にかけての外周面に、インターナルギヤ60の内歯62Aと噛み合い可能な複数のギヤ歯21が設けられている。
図8に示すように、各ロックギヤ20は、基部11側の面に、長穴部22と、荷重伝達部23とを有している。
長穴部22は、インターナルギヤ60の周方向に長く延びる凹部であり、ロックギヤ20の上端部(周方向の一端部)に配置されている。長穴部22は、被軸支部22Aと、被軸支部22Aからロックギヤ20の下端部側に向かうようにインターナルギヤ60の周方向に沿って延びる延出凹部22Bとを有している。
被軸支部22Aは、ベースプレート10の軸支部14に係合する凹部であり、左右方向から見て中心角が180°よりも大きい円弧状に形成されている。また、被軸支部22Aの幅(回動中心Cを中心とする円の径方向の長さ)は、延出凹部22Bの幅よりも大きくなっている。
荷重伝達部23は、荷重受部16からのインターナルギヤ60の回動方向の荷重を受ける部分、より正確には、荷重受部16に与えた荷重の反力を受ける部分であり、ベースプレート10の凸状の荷重受部16と係合する凹部として形成されている。荷重伝達部23は、各ロックギヤ20に2つずつ設けられ、第1荷重受部16Aと係合する第1荷重伝達部23Aと、第2荷重受部16Bと係合する第2荷重伝達部23Bとを含んでいる。
第1荷重伝達部23Aは、第1荷重受部16Aに対応する位置に配置されている。具体的に、第1荷重伝達部23Aは、長穴部22の斜め下方であって、インターナルギヤ60の周方向におけるロックギヤ20の中央よりも上側で、長穴部22(延出凹部22B)に隣接して配置されている。また、第2荷重伝達部23Bは、第2荷重受部16Bに対応する位置に配置されている。具体的に、第2荷重伝達部23Bは、インターナルギヤ60の周方向において第1荷重伝達部23Aを挟んで長穴部22(被軸支部22A)とは反対側であって、周方向におけるロックギヤ20の中央よりも下側に配置されている。
各荷重伝達部23A,23Bは、左右方向から見て、インターナルギヤ60の回動方向において対向する一対の面と、回動中心Cを中心とする円の径方向において対向する一対の面とを有する略四角形状に形成されている。各荷重伝達部23A,23Bは、ベースプレート10に対するロックギヤ20の回動を許容するため、第1荷重伝達部23Aが第1荷重受部16Aよりも大きい四角形状に形成され、第2荷重伝達部23Bが第2荷重受部16Bよりも大きい四角形状に形成されている。
長穴部22(被軸支部22A)および荷重伝達部23は、左右方向から見て対応するロックギヤ20の輪廓の内側に配置されている。これにより、長穴部22および荷重伝達部23は、左右方向から見て閉じた輪廓の凹部として形成されている。また、ベースプレート10に設けられた軸支部14および荷重受部16は、被軸支部22Aや荷重伝達部23に対応して、被軸支部22Aや荷重伝達部23と同様に、左右方向から見てロックギヤ20の輪廓の内側に配置されている。
各ロックギヤ20は、下端にロック側被押圧部24を有し、上端(ロックギヤ20の被軸支部22Aが配置された部分よりもインターナルギヤ60の周方向の一端側の先端部)に被押圧部としての解除側被押圧部25を有している。
ロック側被押圧部24は、ロックギヤ20を解除姿勢からロック姿勢に回動させるときにスライドカム30によって押圧される部分である。各ロックギヤ20のロック側被押圧部24は、前後方向内側に、略上下方向に沿って延びる第1被当接面24Aと、第1被当接面24Aの上端から前後方向外側の斜め上方に向けて延びる第1傾斜面24Bと、第1傾斜面24Bの上端から略上下方向に沿って延びる被当接面としての第2被当接面24Cと、第2被当接面24Cの上端から前後方向外側の斜め上方に向けて延びる第2傾斜面24Dとを有している。
ロックギヤ20が図8に示すロック姿勢にあるとき、第1被当接面24Aおよび第2被当接面24Cは、スライドカム30が当接し、ギヤ歯21は、インターナルギヤ60の内歯62Aと噛み合っている。
本実施形態において、荷重伝達部23、特に第2荷重伝達部23Bは、第2被当接面24Cまでの距離がロックギヤ20の外周面(ギヤ歯21)までの距離よりも大きくなる位置、言い換えれば、ギヤ歯21側に寄った位置に配置されている。このような構成によれば、スライドカム30から力を受ける第2被当接面24Cから遠い位置に荷重伝達部23が配置されることになるので、凹状の荷重伝達部23の変形を抑制することができる。これにより、ロックギヤ20を良好に回動させつつ、荷重伝達部23で荷重を受けることができるので、軸支部14や被軸支部22Aにかかる荷重を低減することができる。
解除側被押圧部25は、ロックギヤ20をロック姿勢から解除姿勢に回動させるときにスライドカム30によって押圧される部分である。解除側被押圧部25は、被軸支部22Aが配置された部分の幅よりも幅が大きくなるように形成されている。具体的に、第1ロックギヤ20Aの上端部の被軸支部22Aが配置された部分よりも先端側の部分は、支持凸部15と前側のカムガイド部13との間に延出するように形成され、第2ロックギヤ20Bの上端部の被軸支部22Aが配置された部分よりも先端側の部分は、支持凸部15と後側のカムガイド部13との間に延出するように形成されている。このような構成によれば、ロックギヤ20の上端部が支持凸部15とカムガイド部13との間に挟まれた状態で配置されることになるので、ベースプレート10でロックギヤ20を安定して支持することができる。
各ロックギヤ20の解除側被押圧部25は、スライドカム30によって押圧される被押圧面25Aと、ロックギヤ20のギヤ支持面15A,15Bに接触する接触面25Bとを有している。
第1ロックギヤ20Aの第1ギヤ支持面15Aに接触する接触面25B(第1接触面)は、第1ギヤ支持面15Aと合致するように、左右方向から見て前側の軸支部14を中心とする円弧状に形成されている。また、第2ロックギヤ20Bの第2ギヤ支持面15Bに接触する接触面25B(第2接触面)は、第2ギヤ支持面15Bと合致するように、左右方向から見て後側の軸支部14を中心とする円弧状に形成されている。このような構成によれば、ギヤ支持面15A,15Bおよび接触面25Bが互いに合致する円弧状に形成され、かつ、支持凸部15の両側にギヤ支持面15A,15Bがそれぞれ配置されて両側から荷重がかかるようになっていることで、ロックギヤ20を安定して支持することができる。
図2に示すように、各ロックギヤ20は、ロック側被押圧部24(インターナルギヤ60の周方向の他端部)の左側の面に、左側に突出する浮き上がり抑制凸部26を有している。浮き上がり抑制凸部26は、インターナルギヤ60の対面部61に当接するようになっている。このような構成によれば、浮き上がり抑制凸部26が対面部61に当接することで、ベースプレート10の基部11からのロックギヤ20の浮き上がり、特にロック状態においてインターナルギヤ60の内歯62Aに押し当てられるロックギヤ20の下端部の浮き上がりを抑制することができる。
ロックギヤ20は、金属製の板をプレス加工することにより形成されている。これにより、被軸支部22A(長穴部22)は、ロックギヤ20の右側(左右方向の一方側)が凹状をなし、ロックギヤ20の左側(左右方向の他方側)が凸状をなすように形成されている。本実施形態では、ロックギヤ20に凹凸形状を形成する被軸支部22Aと、被軸支部22Aが配置された部分の幅よりも幅が大きい解除側被押圧部25とが互いに近くに配置されているので、被軸支部22Aと解除側被押圧部25とが互いに補強しあうことになり、ロックギヤ20の剛性を向上させることができる。
また、ロックギヤ20が金属製の板をプレス加工することにより形成されていることで、ロックギヤ20には、荷重伝達部23の裏に凸部が形成されている。荷重伝達部23の裏の凸部は、浮き上がり抑制凸部26と略同じ高さに形成されており、インターナルギヤ60の対面部61に当接することで、浮き上がり抑制凸部26とともにロックギヤ20の浮き上がりを抑制している。
スライドカム30は、各ロックギヤ20を押圧することで、各ロックギヤ20をロック姿勢または解除姿勢にする部材であり、ベースプレート10に変位可能に支持されている。より詳細に、スライドカム30は、一対のカムガイド部13の間に配置されてベースプレート10に対して上下方向にスライド移動可能に支持されており、各ロックギヤ20をロック姿勢に向けて押圧するロック位置(図10の位置)と、各ロックギヤ20を解除姿勢に向けて押圧する解除位置(図11の位置)とに移動可能に構成されている。
図3および図4に示すように、スライドカム30は、板状のカム本体部31と、カム本体部31から右側(ベースプレート10側)に突出する係合部33と、カム本体部31から左側(ベースプレート10とは反対側)に突出する駆動凸部34と、左右方向に貫通する貫通穴35と、突出縁部36とを有している。
カム本体部31は、上下方向に長く形成されている。より詳細に、カム本体部31は、左右方向から見て、回動中心Cから下方(スライドカム30の移動方向の一方)に向けて延出するような下側部分(延出部32)の上下方向の長さが、回動中心Cから上方に向けて延出するような上側部分の上下方向の長さよりも長く形成されている。カム本体部31は、上面に形成された一対の解除側押圧部31Aと、一対のカムガイド部13のスライドカムガイド面13Aによってスライド移動が案内される被ガイド部31Bと、被ガイド部31Bから下方に向けて延びる先端部31Cとを有している。延出部32は、先端部31C側、すなわち、後述する第1押圧面32Aや第2押圧面32C側に設けられている。
解除側押圧部31Aは、対応するロックギヤ20の被押圧面25Aを押圧することで各ロックギヤ20を解除姿勢に回動させる部分であり、前後方向に略平行な面として形成されている。
被ガイド部31Bは、カム本体部31のうちの前後方向の幅が略一定となっている部分であり、下端部の前後方向外側に、ロックギヤ20の第2被当接面24Cに当接する一対の第2当接面32Dを有している。
先端部31Cは、被ガイド部31Bよりも前後方向の幅が細くなる形状、具体的には、下方に向かうにつれて前後方向の幅が小さくなる先細り形状に形成され、一対のカムガイド部13に挟まれた領域の外側(直線L3の下側)に配置されている。先端部31Cは、前後方向外側に、当該先端部31Cの先端から斜め上方に向けて延びる一対の第1押圧面32Aと、第1押圧面32Aの上端から上方に向けて延びる一対の第1当接面32Bと、第1当接面32Bの上端から斜め上方に向けて延びて第2当接面32Dに連結する一対の第2押圧面32Cとを有している。各第1当接面32Bは、下端部が略上下方向に延びた後、上下方向の中央部が前後方向外側の斜め上方に向けて傾斜し、上端部が略上下方向に延びる形状に形成されている。
係合部33は、ベースプレート10の被係合部17に係合する凸部であり、上下方向に長く形成され、被ガイド部31Bの下端部から先端部31Cにわたって配置されている。ここで、係合部33が凹状の被係合部17に係合する凸部として形成されることで、スライドカム30は、係合部33付近に凹凸形状を有する剛性が高い部分を有することとなる。そして、この剛性が高い部分(係合部33)が被ガイド部31Bの下端部から先端部31Cにわたって配置されていることで、本実施形態では、被ガイド部31Bよりも幅が細くなる形状の先端部31Cの剛性低下を抑制することができるため、スライドカム30全体の剛性を向上させることができる。
係合部33の上下方向の長さは、被係合部17の上下方向の長さよりも短く形成されている。そのため、被係合部17に係合した係合部33は、被係合部17に沿って上下方向に移動可能となっている。言い換えると、係合部33および被係合部17は、スライドカム30の上下方向へのスライド移動を案内するように構成されている。これにより、スライドカム30は、一対のカムガイド部13と被係合部17の両方によってスライド移動が案内されるようになっている。
駆動凸部34は、操作部材40に係合することで操作部材40の動作をスライドカム30に伝達する部分であり、略円柱状に形成されている。駆動凸部34は、左右方向から見て、回動中心Cを通り前後方向に延びる直線L5に対し下側(延出部32側)に配置されている。また、駆動凸部34は、カム本体部31の直線L5よりも下側の部分のうち、先端部31Cではなく、被ガイド部31B(幅広部)に配置されている。駆動凸部34は、操作部材40から力を受けるので、幅が細い先端部31Cよりも剛性が高い被ガイド部31Bに配置されていることで、スライドカム30の駆動凸部34付近の剛性を高めることができる。これにより、スライドカム30の動作を安定させることができる。
また、駆動凸部34は、左右方向から見て、回動中心C(前後方向におけるスライドカム30の中央)を通り上下方向に延びる直線L1に対し前後方向の一方側にずれた位置、具体的には、直線L1の前側に配置されている。別の言い方をすれば、駆動凸部34は、係合部33の裏に形成された凹部を避けるように直線L1の前側に配置されている。
また、駆動凸部34は、左右方向から見て、スライドカム30の剛性を高める補強部としての係合部33と、回動中心Cを中心とする同一の円の円周上に隣接して配置されている。このような構成によれば、操作部材40から力を受ける駆動凸部34を、係合部33が設けられた剛性が高い部分の近くに配置できるので、スライドカム30の駆動凸部34付近の剛性をより高めることができ、スライドカム30の動作をより安定させることができる。
貫通穴35は、操作レバーの回動軸91(図5参照)を挿通させるための穴である。貫通穴35は、スライドカム30の上下方向へのスライド移動を許容するため、上下方向に長い長円形状に形成され、係合部33の上側に配置されている。
図9に示すように、突出縁部36は、貫通穴35の縁部分であって左側にわずかに突出する環状の凸部である。操作部材40は、回動するときに突出縁部36上を摺動するように配置されている。これにより、スライドカム30と操作部材40との接触面積を小さくすることができるので、スライドカム30と操作部材40との摺動抵抗を小さくすることができる。その結果、操作部材40を良好に動作させることができるので、スライドカム30をスライド移動させるための操作荷重を小さくすることができる。
図2に示すように、操作部材40は、ベースプレート10に対して回動可能に支持され、回動することで、スライドカム30をロック位置または解除位置に移動させる部材であり、スライドカム30の左側でスライドカム30に対向して配置されている。操作部材40は、板状の本体部を構成する被支持部41および回動規制部42と、係合穴43と、駆動溝部44と、一対の掛止穴45とを有し、図10に示すように、直線L1に関して対称に形成されている。
被支持部41は、左右方向(操作部材40の回動軸方向)から見て略長円形状をなす部分であり、ベースプレート10の前後のベース側回動規制凸部13Bおよび隣接凸部13Cの間に配置されている。被支持部41は、スライドカム30がロック位置にあるときに、左右方向から見て前後の面が回動中心Cを中心とする円弧状に形成されている。操作部材40は、被支持部41の外周面が操作部材ガイド面13Dに沿って案内されることで、ベースプレート10に対して回動可能となっている。
回動規制部42は、スライドカム30がロック位置にあるときに、被支持部41から下方に向けて延出する左右方向から見て略矩形状をなす部分である。操作部材40は、当該操作部材40の回動方向における回動規制部42の両端部がベースプレート10の隣接凸部13Cに当接することで、回動量が規制されるようになっている。
係合穴43は、リクライニング機構1を操作するための操作レバーの回動軸91が係合する穴であり、左右方向から見て被支持部41の中央に配置されている。係合穴43は、略十字形状をなすように形成され、その縁部分が被支持部41から左側に突出する環状の突出部として形成されている(図2も参照)。操作部材40は、係合穴43に回動軸91が係合することで、乗員によって操作される操作レバーと一体に回動するようになっている。
駆動溝部44は、スライドカム30の駆動凸部34が係合する溝であり、回動規制部42に配置されている。駆動溝部44は、スライドカム30がロック位置にあるロック姿勢において、前後方向に延びる第1溝部44Aと、第1溝部44Aの両端部から回動軸91(操作部材40の回動軸)の径方向外側に向けて互いに広がるように延びる一対の第2溝部44Bとを有している。リクライニング機構1の動作については後述するが、各第2溝部44Bは、操作部材40が回動することで、駆動凸部34を案内してスライドカム30をロック位置または解除位置に移動させるように構成されている。なお、本実施形態において、駆動溝部44に係合する駆動凸部34は、ロック姿勢において、前側の第2溝部44Bの下端部に位置している。
掛止穴45は、付勢部材50の端が挿通される穴であり、係合穴43の前後方向外側の下寄りに配置されている。
付勢部材50は、操作部材40を介してスライドカム30をロック位置に向けて付勢する線状の部材であり、付勢部材本体部51と、一端に形成された第1掛止部52と、他端に形成された第2掛止部53とを有している。
第1掛止部52は、付勢部材本体部51の一端から回動中心Cを中心とする円の径方向外側に向けて延びる第1部分52Aと、第1部分52Aの端部から付勢部材本体部51に沿うように延びる第2部分52Bとを有している。第1掛止部52は、前側のカムガイド部13に形成されたベース側回動規制凸部13Bに掛止されている。より詳細に、第1掛止部52は、第1部分52Aがベース側回動規制凸部13Bと隣接凸部13Cの間を通って配置され、第2部分52Bがベース側回動規制凸部13Bに掛けられることで、第2部分52Bと付勢部材本体部51の一端部との間でベース側回動規制凸部13Bを挟むようにして掛止されている。さらに言えば、付勢部材50の一端は、付勢部材本体部51の一端部、第2部分52Bおよび第1部分52Aが、ベース側回動規制凸部13Bの側面に沿う略U字形状に形成され、ベース側回動規制凸部13Bに巻きかけられるように掛止されている。
なお、図11に示すように、第1掛止部52は、前側のロックギヤ20が解除姿勢に回動した場合であっても、当該ロックギヤ20とは当接しない位置に配置されている。具体的に、第1掛止部52は、左右方向から見て、前側のカムガイド部13の輪廓の内側に配置されている。これにより、第1掛止部52と、解除姿勢に回動した前側のロックギヤ20との干渉を抑制することができる。
図10に戻り、第2掛止部53は、付勢部材本体部51の他端から基部11側に向けて延びるように形成されている。付勢部材50は、第1掛止部52が前側のベース側回動規制凸部13Bに掛止された上で、付勢部材本体部51が前側のベース側回動規制凸部13B、後側のベース側回動規制凸部13Bおよび後側の隣接凸部13Cの操作部材ガイド面13Dに沿うように配置されて、第2掛止部53が操作部材40の前側の掛止穴45に掛止されることで配設されている。
図2に示すように、リング70は、インターナルギヤ60をベースプレート10に回動可能に保持するための部材であり、環状のリング本体部71と、リング本体部71の左端部から径方向内側に延出する保持部72とを有している。図9に示すように、リング70は、リング本体部71の右端部とベースプレート10とが溶接されることでベースプレート10に固定され、保持部72がインターナルギヤ60の外周部(内歯形成部62)を保持している。これにより、インターナルギヤ60がベースプレート10に回動可能に保持され、ベースプレート10とインターナルギヤ60の間でロックギヤ20、スライドカム30、操作部材40および付勢部材50が保持されることとなる。
次に、以上のように構成されたリクライニング機構1の動作について説明する。
図10に示すように、各ロックギヤ20がロック姿勢にある状態(ロック状態)において、乗員が操作レバーを付勢部材50の付勢力に抗して解除方向に操作すると、操作部材40が図示時計回りに回動する。そうすると、スライドカム30の駆動凸部34が前側の第2溝部44Bの下側の面によって押圧されることで、前側の第2溝部44Bの下側の面に沿って押し上げられていき、これによって、スライドカム30が、ロック位置から上方の解除位置に向けてスライド移動する。
そして、図11に示すように、スライドカム30の解除側押圧部31Aが各ロックギヤ20の被押圧面25Aに当接して被押圧面25Aを押圧すると、解除側被押圧部25が押し上げられて、各ロックギヤ20が軸支部14を中心にロック姿勢から解除姿勢に向けて回動する。スライドカム30が解除位置に到達すると、各ロックギヤ20が解除姿勢となり、ギヤ歯21がインターナルギヤ60の内歯62Aから完全に外れた状態となる。これにより、インターナルギヤ60のベースプレート10に対する回動が許容されるようになるため、シートクッションS1に対するシートバックS2の傾動が許容されることとなる。なお、図5(a),(b)に示すように、インターナルギヤ60は、ギヤ側回動規制凸部63がベースプレート10のベース側回動規制凸部13Bに当接することで、その回動量が規制される。これにより、シートバックS2の傾動量が規制されることとなる。
図11に示すように、スライドカム30が解除位置に到達したとき、駆動凸部34は、前側の第2溝部44Bの上端部に位置することとなる。この状態から、乗員の操作によって操作部材40が図示時計回りにさらに回動した場合には、第1溝部44Aが駆動凸部34に係合することとなるが、第1溝部44Aは前後方向に延びる溝なので、駆動凸部34は、それ以上押し上げられることはない。これにより、スライドカム30や各ロックギヤ20に過大な荷重がかかるのを抑制することができる。なお、操作部材40は、回動規制部42がベースプレート10の隣接凸部13Cに当接することで、その回動量が規制される。
各ロックギヤ20が解除姿勢にある状態(解除状態)において、乗員が操作レバーから手を放すと、付勢部材50の付勢力によって操作部材40が図示反時計回りに回動する。そうすると、スライドカム30の駆動凸部34が前側の第2溝部44Bの上側の面によって押圧されることで、前側の第2溝部44Bの上側の面に沿って押し下げられていき、これによって、スライドカム30が、解除位置から下方のロック位置に向けてスライド移動する。
そして、スライドカム30の一対の第2押圧面32Cが各ロックギヤ20の第2傾斜面24Dに当接して第2傾斜面24Dを押圧すると、ロック側被押圧部24が押し下げられて、各ロックギヤ20が軸支部14を中心に解除姿勢からロック姿勢に向けて回動する。その後、図10に示すように、第2押圧面32Cが第2傾斜面24Dから外れて、スライドカム30の一対の第2当接面32Dが各ロックギヤ20の第2被当接面24Cの間に入り込むと、各ロックギヤ20が略ロック姿勢となり、ギヤ歯21がインターナルギヤ60の内歯62Aに噛み合う。
また、スライドカム30の一対の第1当接面32Bが各ロックギヤ20の第1被当接面24Aの間に入り込み、スライドカム30がロック位置に向けてスライド移動すると、第1当接面32Bの中央部が前後方向外側の斜め上方に向けて傾斜していることで、各ロックギヤ20のロック側被押圧部24が押し広げられ、スライドカム30が解除位置に到達すると、各ロックギヤ20がロック姿勢に保持される。これにより、インターナルギヤ60のベースプレート10に対する回動が規制されるようになるため、シートクッションS1に対するシートバックS2の傾動が規制されることとなる。
リクライニング機構1がロック状態にあるときにシートバックS2に力が加わると、インターナルギヤ60に回動方向の荷重が作用し、インターナルギヤ60の内歯62Aと噛み合う各ロックギヤ20に対してもインターナルギヤ60に回動方向の荷重が作用することとなる。例えば、図示時計回りに荷重が作用した場合、前側のロックギヤ20では、荷重伝達部23から荷重受部16に対し、また、接触面25Bから支持凸部15の第1ギヤ支持面15Aに対してそれぞれ荷重がかかることとなる。また、後側のロックギヤ20では、被軸支部22Aから軸支部14に対し、荷重伝達部23から荷重受部16に対し、第2被当接面24Cから第2当接面32Dに対し、そして、第1被当接面24Aから第1当接面32Bに対してそれぞれ荷重がかかることとなる。さらに、後側のロックギヤ20から荷重が作用したスライドカム30では、係合部33から被係合部17に対して荷重がかかることとなる。
本実施形態では、ロックギヤ20に荷重伝達部23が設けられ、ベースプレート10に荷重受部16が設けられているので、荷重を分散することができ、軸支部14や被軸支部22A、支持凸部15にかかる荷重を低減することができる。特に本実施形態では、荷重伝達部23と荷重受部16が左右方向から見たロックギヤ20の輪廓の内側に配置されているため、荷重伝達部などが当該輪廓から飛び出すように設けられている構成と比較して、コンパクトな構成で軸支部14や被軸支部22A、支持凸部15にかかる荷重を低減することができる。
また、各ロックギヤ20に複数の荷重伝達部23が設けられているので、荷重をより分散することができ、軸支部14や被軸支部22A、支持凸部15にかかる荷重をより低減することができる。さらに、第2荷重伝達部23Bがインターナルギヤ60の周方向において第1荷重伝達部23Aを挟んで被軸支部22Aとは反対側に配置されていることで(図3も参照)、荷重伝達部23が長尺状のロックギヤ20の短手方向に並んで設けられる構成と比較して、各荷重伝達部23などの荷重を受ける部分の大きさを確保できるので、軸支部14や被軸支部22A、支持凸部15にかかる荷重を一層低減することができる。
以上説明した本実施形態のリクライニング機構1によれば、スライドカム30は、一対のカムガイド部13に挟まれるとともに、凸状の係合部33がベースプレート10に形成された凹状の被係合部17と係合しているので、スライドカム30の位置を正確に決めることができる。また、スライドカム30は、一対のカムガイド部13と被係合部17の両方によって移動が案内されるので、スライドカム30の移動を安定させることができる。
特に本実施形態では、被係合部17の下側の部分が一対のカムガイド部13に挟まれた領域の外側に配置されているので、スライドカム30の、カムガイド部13に挟まれた領域の外側にある部分の移動を被係合部17によって案内することができる。これにより、一対のカムガイド部13に挟まれた領域の外側でもスライドカム30の移動を安定させることができる。
また、本実施形態では、被係合部17が凹部であり、係合部33が凸部であるので、比較的簡単な構成で、スライドカム30の位置を正確に決めることができるとともに、スライドカム30の移動を安定させることができる。
また、本実施形態では、凹状の被係合部17が溶接凹部19Dにつながっているので、被係合部17と溶接凹部19Dとがつながる部分を被係合部17の一部としてスライドカム30の移動の案内に利用することが可能となる。これにより、スライドカム30の移動量を確保することができる。また、被係合部17と溶接凹部19Dとがつながっていることで、ベースプレート10の剛性を向上させることができる。
また、ベースプレート10の軸支部14とロックギヤ20の被軸支部22Aが左右方向から見てロックギヤ20の輪廓の内側に配置されているので、ロックギヤの周囲(輪廓の外側)に軸支部を配置するような構成と比較して、リクライニング機構1の径方向の大型化を抑制することができる。
また、本実施形態では、軸支部14がロックギヤ20側に突出する凸部であり、被軸支部22Aが凹部であるので、軸支部14が、クッションサイドフレームF1(図1参照)の図示しないベースプレート固定面に影響を及ぼすことを抑制することができる。補足すると、ベースプレートの軸支部が凹部であると、例えば、ベースプレートを金属製の板をプレス加工して形成した場合などに凹状の軸支部の裏に凸部が形成されることがある。そうすると、クッションサイドフレームF1のベースプレート固定面に当該凸部を受け入れるための凹部などを形成する必要が生じ、ベースプレート固定面の形状などに影響を及ぼすことがある。一方、本実施形態では、軸支部14が凸部であるので、軸支部14の裏には凸部は形成されないため、クッションサイドフレームF1のベースプレート固定面への影響を抑制することができる。
また、付勢部材50の一端(第1掛止部52)を掛止する部分として、スライドカム30の移動を案内するカムガイド部13を利用しているので、付勢部材50を掛止するための構成が複雑になることがない。また、ベースプレート10の基部11から突出する剛性が高いカムガイド部13に付勢部材50の一端が掛止されているので、付勢部材50を安定して掛止することができる。
特に本実施形態では、突出するカムガイド部13にさらに凸部(ベース側回動規制凸部13B)が設けられているので、カムガイド部13の剛性をより高めることができ、剛性がより高くなったカムガイド部13の一部であるベース側回動規制凸部13Bに付勢部材50の一端が掛止されているので、付勢部材50をより安定して掛止することができる。
また、本実施形態では、付勢部材50の一端がベース側回動規制凸部13Bと隣接凸部13Cの間を通ってベース側回動規制凸部13Bに掛止されているので、2つの凸部が並ぶ方向への付勢部材50の動きを抑制したり、付勢部材50の一端がその周辺に配置された部材に干渉することを抑制したりすることができる。これにより、付勢部材50を一層安定して掛止することができる。
また、本実施形態では、付勢部材50の一端が2つの凸部13B,13Cの間を通って配置され、ベース側回動規制凸部13Bに巻きかけられるように掛止されているので、付勢部材50をより一層安定して掛止することができる。また、付勢部材50の一端をベース側回動規制凸部13Bに沿った形状に予め形成しておくことで、付勢部材50の組付性を向上させたり、組付後の付勢部材50の取付剛性を向上させたりすることができる。
また、図3に示したように、スライドカム30の駆動凸部34が回動中心Cから長く延出するカム本体部31の下側部分(延出部32側)に配置されているので、駆動凸部34を回動中心Cから離れたところに配置可能となる。これにより、スライドカム30を移動させるための操作荷重を小さくすることができる。また、駆動凸部34を、回動中心Cを基準としたカム本体部31の上側部分よりも長い下側部分に配置することで、例えば、カム本体部の上側部分を長く形成して駆動凸部を配置するような構成と比較して、スライドカム30全体の大型化を抑制することができる。これにより、リクライニング機構1の大型化を抑制することができる。
また、ベースプレート10の1つの支持凸部15に第1ロックギヤ20Aからの荷重を受ける第1ギヤ支持面15Aと、第2ロックギヤ20Bからの荷重を受ける第2ギヤ支持面15Bとが設けられているので、各ロックギヤに対して支持凸部を1つずつ設けるような構成と比較して支持凸部の数を減らすことができる。これにより、ベースプレート10の大型化を抑制できるので、リクライニング機構1の大型化を抑制することができる。
また、本実施形態では、支持凸部15は、上下方向における中央部の幅が両端部の幅よりも小さい形状に形成されているので、支持凸部15の両側にギヤ支持面15A,15Bがそれぞれ配置されて両側から荷重がかかるようになっており、かつ、ギヤ支持面15A,15Bを中央部が両端部よりも凹む形状の連続した面とすることができる。これにより、ギヤ支持面15A,15Bによりロックギヤ20を安定して支持することができる。
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、図12に示すように、ベースプレート10は、基部11とカムガイド部13とによって形成される隅部に、傾斜面11Cが形成されていてもよい。より詳細に、傾斜面11Cは、基部11に近づくにつれて、基部11との間で隅部を形成するカムガイド部13と対向するカムガイド部13に近づくように傾斜する面として形成されている。別の言い方をすれば、傾斜面11Cは、基部11側に近づくにつれて前後方向内側に近づくように傾斜する面として形成されている。また、スライドカム30の傾斜面11Cに対向する角部37は、面取りされていることが望ましく、R形状に面取りされていることがより望ましい。このような構成によれば、スライドカム30を傾斜面11Cによって、傾斜面11Cとは反対側のカムガイド部13や操作部材40などに寄せることができるので、スライドカム30のがたつきを抑制することができる。なお、ベースプレートは、基部と一方のカムガイド部との間の隅部だけに傾斜面が形成され、基部と他方のカムガイド部との間の隅部には傾斜面が形成されていない構成としてもよい。
前記実施形態では、被軸支部22Aが、左右方向から見て、円弧状に形成された凹部であったが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、被軸支部122は、左右方向(インターナルギヤ60の回動軸方向)から見て、円形状に形成された凹部であってもよい。このような構成によれば、凹状の被軸支部122が円形状であることで、被軸支部122の内周面の全周と凸状の軸支部14の側面の全周とが摺動可能となるため、軸支部14と被軸支部122の支持面積をより確保することができる。これにより、ロックギヤ20の回動を安定させることができる。
前記実施形態では、係合部33が、被ガイド部31Bから先端部31Cにわたって配置されていたが、これに限定されず、例えば、係合部は、被ガイド部または先端部のいずれか一方に配置される構成であってもよい。
前記実施形態では、被係合部17は、その上端が一対のカムガイド部13に挟まれた領域の内側に配置され、上端よりも下側の部分が一対のカムガイド部13に挟まれた領域の外側に配置されていたが、これに限定されるものではない。例えば、被係合部は、その全部がカムガイド部に挟まれた領域の外側に配置されていてもよいし、全部がカムガイド部に挟まれた領域の内側に配置されていてもよい。
前記実施形態では、ベースプレート10の被係合部17が凹部であり、スライドカム30の係合部33が凸部であったが、これに限定されず、例えば、被係合部が凸部であり、係合部が凹部であってもよい。
前記実施形態では、ベースプレート10の軸支部14が凸部であり、ロックギヤ20の被軸支部22Aが凹部であったが、これに限定されず、例えば、軸支部が凹部であり、被軸支部が凸部であってもよい。
前記実施形態では、付勢部材50の一端(第1掛止部52)がベース側回動規制凸部13Bに掛止されていたが、これに限定されるものではない。例えば、付勢部材の一端は、隣接凸部に掛止されていてもよいし、カムガイド部(ベース側回動規制凸部や隣接凸部を除くカムガイド部の本体部分)に掛止されていてもよい。
前記実施形態で示した付勢部材50の構成は一例であり、前記した構成に限定されるものではない。例えば、付勢部材は、渦巻バネやコイルバネ、板バネなどであってもよい。
前記実施形態では、カムガイド部13がスライドカム30の前側と後側に1つずつ設けられていたが、これに限定されず、例えば、カムガイド部は、スライドカムの前側と後側のそれぞれに複数設けられていてもよい。
前記実施形態では、スライドカム30に設けられた補強部として、ベースプレート10側に突出する係合部33を例示したが、これに限定されず、例えば、補強部は、係合部とは別に設けられた突出部であってもよい。この場合、補強部は、ベースプレート側とは反対側に突出するように設けられていてもよい。
前記実施形態では、駆動凸部34が、カム本体部31の直線L5よりも下側の部分のうち、先端部31Cではなく、被ガイド部31B(幅広部)に配置されていたが、これに限定されず、例えば、駆動凸部は、先端部に配置されていてもよい。
前記実施形態では、リクライニング機構1がシートクッションS1の右側に設けられていたが、これに限定されず、例えば、リクライニング機構は、シートクッションの左側に設けられていてもよいし、左右両側に設けられていてもよい。
なお、前記実施形態のリクライニング機構1をシートクッションS1の左側に設ける場合、少なくともスライドカムおよび付勢部材は、前記実施形態のスライドカム30および付勢部材50と左右対称に構成されることとなる。一方、図3に示したように、ベースプレート10は、一対のカムガイド部13や被係合部17などが、左右方向から見て直線L1に関して対称に設けられているので、ベースプレート10を左右共通の部品として構成することが可能となる。また、第1ロックギヤ20Aおよび第2ロックギヤ20Bは、直線L1に関して対称に形成されているので、左右共通の部品として構成することが可能となる。
また、スライドカム30の駆動凸部34は、左右方向から見て直線L1に対し前後方向の一方側にずれた位置に配置され、操作部材40の駆動溝部44は、ロック姿勢において、第1溝部44Aと、第1溝部44Aの両端部から延びる一対の第2溝部44Bとを有し、各第2溝部44Bが操作部材40の回動によって駆動凸部34を案内してスライドカム30をロック位置または解除位置に移動させるように構成されているので、操作部材40を左右共通の部品として構成することができる。補足すると、図10に示す状態の操作部材40において、前側の第2溝部44Bは、リクライニング機構1がシートクッションS1の右側に設けられた場合にスライドカム30の駆動凸部34を案内するのに用いられ、後側の第2溝部44Bは、リクライニング機構1がシートクッションS1の左側に設けられた場合にスライドカム30とは左右対称に構成されたスライドカムの駆動凸部を案内するのに用いられる。
このようにベースプレート10やロックギヤ20、操作部材40を左右共通の部品として構成することができることで、リクライニング機構1(乗物用シートS)の部品点数を削減することができる。これにより、例えば、コストを抑えたり、左右共通の部品であることでベースプレート10や操作部材40などの誤組みを抑制したりすることができる。
前記実施形態で示した操作部材40(操作部材)の構成は一例であり、前記した構成に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、駆動溝部44が、第1溝部44Aと、第1溝部44Aの両端部に設けられた一対の第2溝部44Bとを有する構成であったが、これに限定されず、第2溝部が第1溝部の一端部だけに設けられている構成であってもよい。
前記実施形態では、リクライニング機構1は、ベースプレート10がシートクッションS1に固定され、インターナルギヤ60がシートバックS2に固定される構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、リクライニング機構は、ベースプレートがシートバックに固定され、インターナルギヤがシートクッションに固定される構成であってもよい。なお、この構成において、ベースプレートが位置決め凸部を有する場合には、位置決め凸部は、シートバックに対するベースプレートの位置を決めるための部分となる。また、ベースプレートが溶接凸部を有する場合には、溶接凸部は、ベースプレートをシートバックに溶接によって固定するための部分となる。
前記実施形態では、リクライニング機構1が乗物用シートSに設けられていたが、これに限定されず、例えば、リクライニング機構は、事務用の椅子などのような、乗物用シート以外のシートに設けられていてもよい。