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JP2015180606A - 抗癌剤の併用による癌治療方法 - Google Patents

抗癌剤の併用による癌治療方法 Download PDF

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JP2015180606A JP2012171017A JP2012171017A JP2015180606A JP 2015180606 A JP2015180606 A JP 2015180606A JP 2012171017 A JP2012171017 A JP 2012171017A JP 2012171017 A JP2012171017 A JP 2012171017A JP 2015180606 A JP2015180606 A JP 2015180606A
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幸規 荒井
金子 直樹
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直樹 金子
香菜子 井口
Kanako Iguchi
香菜子 井口
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Abstract

【課題】タキサン系抗腫瘍剤の、各種腫瘍に対する薬効を増大させる治療方法が求められている。【解決手段】本発明者は、タキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強方法について検討した結果、NO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物が、タキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用を増強させることを確認し、本発明を完成した。即ち、本願は、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤との併用投与用であるNO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物に関する。【選択図】図7

Description

本発明は、医薬、殊に、癌治療用医薬組成物、特に、NO産生抑制剤を有効成分として含有する、他の抗癌剤との併用のための癌治療用医薬組成物に関する。また、NO産生抑制剤、及び、抗癌剤の併用療法に関する。
悪性腫瘍の化学療法において、タキサン系抗腫瘍剤、殊にパクリタキセルやドセタキセルはいくつかの癌腫において有効な薬剤として使用されている。
タキサン系抗腫瘍剤は、細胞分裂に必要な微小管の脱重合を阻害することで、癌細胞の分裂を阻害することが知られている。パクリタキセルは卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌等の治療に、ドセタキセルは乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頚部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌等の治療に使用されている。
臨床の場においては、薬効の増強や抗癌スペクトラムの拡大を目的に、タキサン系抗腫瘍剤と作用機序の異なる他の抗腫瘍剤を組み合わせた多剤併用療法が行われている。例えば、パクリタキセルとカルボプラチンの併用(Cancer, 1996, 77:2458-63.)や、ドセタキセルとシスプラチン等の併用が知られている(Eur. J. Surg. Oncol. 2006 32 (3) 297-302)。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)が提供する各種データベース、例えば、"Drugs@FDA" (http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/index.cfm)や欧州医薬品庁(EMA)のホームページ(http://www.ema.europa.eu/)には、パクリタキセルやドセタキセルと他の抗腫瘍剤を併用する臨床レジメンが開示されている。
一般に、抗腫瘍剤の投与量を多くすると、副作用もそれに比例して見られることから、その投与は慎重になされる必要がある。そのため、抗腫瘍剤の投与においては副作用の観点から最大耐用量(MTD)が設定され、その投与量が制限されている。また、例えば、日本の医薬品医薬機器情報提供ホームページのタキソール注(登録商標:パクリタキセルの商品名)の添付文書によると、パクリタキセルは「1日1回210mg/m2を3時間かけて点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。なお、投与量は、年齢、症状により適宜減量する」と記載される様に、パクリタキセルは用量に加え投与方法も特定されている。また、タキソテール注(登録商標:ドセタキセルの商品名)についても「1回最高用量は70mg/m2とする」との記載があり用量が指示されている。
一酸化窒素(NO)は、生体内において種々の細胞から産生されるガス状のラジカルであり、L-アルギニンが一酸化窒素合成酵素(NO synthase, NOS)のホモダイマーによりNADPH依存性に酸化され、L-システインに変換される過程で生成される(Biochem. Pharmacol.2008;75:923-30, Mol. Pharmacol. 2009;76:153-62)。NOSには、神経型一酸化窒素合成酵素(neuronal NO synthase, nNOS)、誘導型一酸化窒素合成酵素 (inducible NO synthase, iNOS)、内皮型一酸化窒素合成酵素 (endothelial NO synthase, eNOS)の3つのアイソフォームが存在する(Cancer Metastasis Rev.,1998;17:7-23)。nNOSとeNOSは主として構成的に発現し、その活性はCa2+依存性カルモジュリン(calmodulin)により調整されており、少量のNOを産生する。nNOSは神経伝達に関与し、eNOSは血管トーヌス又は免疫機構の調整等に関与している。iNOSは、上皮細胞、平滑筋細胞、マクロファージ等の種々のタイプの細胞で発現が認められ、感染や炎症などにより誘導されたサイトカイン等により転写レベルでその発現が誘導され、多量のNOを産生する。iNOSは、感染や生体防御等での中心的なメディエーターの役割を担っている一方、iNOSが恒常的に発現することにより産生された多量のNOは、種々の炎症性疾患に関与している(J. Med. Chem. 1994;37:3886-8, Biochem. Pharmacol. 2008;75:923-30)。
NOは癌の進行或いは転移を促進する一方、これらを抑制することがあることも、これまでの数多くの研究から、明らかになっている。NOの癌における作用は、NOSアイソフォームの活性や局在性、NO暴露の濃度や期間、NOに対する細胞の感受性に依存する(非特許文献1)ことが報告されており、NO産生促進及びNO産生抑制の両面から癌の生理学的研究がなされており、癌治療への応用には、NO産生促進またはNO産生阻害の何れがよいのか一定の見解は得られていない(非特許文献2及び3)。
非特許文献4及び5には、ヒト卵巣癌細胞や頚頭癌細胞において、低濃度のNOはシスプラチン及びパクリタキセルによるアポトーシスを抑制する傾向を示し、高濃度のNOはアポトーシスを促進することが記載されている。これらの文献には、iNOS阻害剤1400WとサーバイビンRNAiの併用によってパクリタキセルだけでなくシスプラチンによるアポトーシスを促進することも記載されており、NOの細胞保護効果はパクリタキセル選択的な作用ではないといえる。
非特許文献6には、NOが単独で微小管重合を阻害することが報告されているが、癌細胞における生理的意義や抗癌剤との関連についての記述はない。
非特許文献7では、ヒト肺癌細胞において、NOは、アポトーシス抑制活性癌遺伝子であるBcl-2をNOがS-ニトロシル化することにより、Bcl-2のプロテアソームによる分解を抑制し、シスプラチンによるアポトーシス誘発作用を抑制することが報告されている。また、NOが、アポトーシス誘導のシグナル伝達系を構成する主要酵素であるカスパーゼ-3を直接S-ニトロシル化することで不活性化することも報告されている(非特許文献8)。HIF-1αは、通常、正常酸素条件下においてプロテアソームにより分解され、転写因子として機能しないが、特許文献1では、NOは、HIF-1αをS-ニトロシル化することにより、正常酸素条件下でのHIF-1αのプロテアソームによる分解を抑制し、化学療法剤や放射線障害後の腫瘍血管の新生に関与していることが報告されている。特許文献2は、NO産生を調節すること(血管内皮ではeNOSの増加、腫瘍ではiNOSの阻害)で未成熟な腫瘍血管を正常化することにより、化学療法剤や放射線治療との併用に有効と主張しているが、実際に化学療法剤との併用効果は検討されていない。
米国特許出願公開第2011-0054023号明細書 国際公開第2008/100591号パンフレット
Nature Reviews Cancer, 6(7), 521-34 (2006) Cancer Chemotherapy and Pharmacology, 67, 1211-1224 (2011) Nitric Oxide 19, 158-163 (2008) Cancer Research, 68, 5158-5166 (2008) International Journal of Cancer, 124, 2033-2041 (2009) Chemical Research in Toxicology, 20(11), 1693-700 (2007) Cancer Research, 66(12), 6353-6360 (2006) Journal of Biological Chemstry, 274, 6823-6826 (1999)
タキサン系抗腫瘍剤は各種腫瘍の治療に有用であるが、副作用の点から投与量や用法が制限されており、投与量を増加させることなく、各種腫瘍に対する薬効をより増大させる治療方法が今なお求められている。また、治療当初は有効であるものの、治療を継続するうちに抗腫瘍効果が減弱する獲得耐性が問題となっている。
本発明者は、タキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強方法について鋭意検討した結果、意外にもNO産生抑制剤を併用することにより、顕著な抗腫瘍作用増強が達成されること、及び、その増強作用のメカニズムを知見して本発明を完成した。
即ち、本発明は、
(1)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、NO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物。
(2)パクリタキセル又はドセタキセルと組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、(1)記載の癌治療用医薬組成物。
(3)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(1)及び(2)記載の癌治療用医薬組成物。
(4)NO産生抑制剤が、iNOS阻害剤である、(1)乃至(3)記載の癌治療用医薬組成物。
(5)iNOS阻害剤が、KD-7040又はGW-274150である、(1)乃至(4)記載の癌治療用医薬組成物。
(6)タキサン系抗腫瘍剤が用いられている癌の治療用である(1)乃至(5)記載の癌治療用医薬組成物。
(7)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする癌治療用医薬組成物を製造するための、NO産生抑制剤の使用。
(8)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、癌治療のための、NO産生抑制剤。
(9)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量、並びに、NO産生抑制剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量を組み合わせて、対象に投与することを特徴とする癌の治療方法。
(10)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量、並びに、NO産生抑制剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量を、同時に、別々に、連続して、或いは間隔をあけて、対象に投与することを特徴とする癌の治療方法。
なお、「対象」とは、その予防若しくは治療を必要とするヒト又はその他の動物であり、ある態様としては、その予防若しくは治療を必要とするヒトである。
また、本発明は以下に関する。
(11)NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強剤。
、に関する。
(12)更に、プラチナ系抗腫瘍剤、アントラサイクリン系抗腫瘍剤、シクロフォスファミド、フルオロウラシル、トラスツズマブ及びカペシタビンから選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与するよう用いられることを特徴とする(1)記載の組成物。
(13)NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤による治療を受けている対象を治療するための癌治療用医薬組成物。
(14)NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の耐性化抑制剤又は耐性化予防剤。
(15)NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の感受性増強剤。
本発明のNO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤との併用により、タキサン系抗腫瘍剤の癌治療効果の増強が達成されることから、本願発明の癌治療用医薬組成物は、既存のタキサン系抗腫瘍剤が適応されることが知られる各種癌の治療に、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と併用して使用できる。適応される癌としては、タキサン系抗腫瘍剤が用いられている固形癌及びリンパ腫である。
図1は、実施例1において、FK330とドキソルビシンの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。Doxはドキソルビシンを示す。 図2は、実施例1において、FK330とゲムシタビンの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。Gemはゲムシタビンを示す。 図3は、実施例1において、FK330とイリノテカンの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。Iriはイリノテカンを示す。 図4は、実施例1において、FK330とカルボプラチンの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。CBDCAはカルボプラチンを示す。 図5は、実施例1において、FK330とパクリタキセルの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図6は、実施例1において、FK330とドセタキセルの単独又は併用投与における抗腫瘍効果を示すグラフである。Doceはドセタキセルを示す。 図7は、ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおけるFK330のパクリタキセル複数サイクル投与時の抗腫瘍効果増強作用を検討した実施例2の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図8は、ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおけるFK330のパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用の用量依存性を検討した実施例3の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図9は、ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおけるFK330の投与タイミングを検討した実施例4の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図10は、ヒト胃癌(AZ-521)担癌マウスにおけるFK330によるパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用を検討した実施例5の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図11は、ヒト胃癌(MKN-28)担癌マウスにおけるFK330によるパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用を検討した実施例5の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図12は、ヒト胃癌(NCI-N87)担癌マウスにおけるFK330によるパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用を検討した実施例5の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図13は、ヒト乳癌細胞(MDA-MB-231)担癌マウスにおけるFK330によるパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用を検討した実施例6の結果を示すグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図14は、タキサン誘発チューブリン重合作用に対するNO供与体であるSNAPの抑制作用を検討した実施例7の結果を示すグラフである。図14のA)及びB)は、パクリタキセル誘発チューブリン重合に対するSNAPの抑制作用の代表例とチューブリン重合開始後60分の集計値をそれぞれ示す。PTXはパクリタキセルSNAPはS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamineを示す。 図15は、タキサン誘発チューブリン重合作用に対するNO供与体であるSNAPの抑制作用を検討した実施例7の結果を示すグラフである。図15のA)及びB)は、ドセタキセル誘発チューブリン重合に対するSNAPの抑制作用の代表例とチューブリン重合開始後60分の集計値をそれぞれ示す。DTXはドセタキセル、SNAPはS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamineを示す。 図16は、ヒト肺癌細胞株Calu-6担癌マウスにおいて、パクリタキセル単独及びFK330併用時の腫瘍組織内iNOS蛋白発現に対する作用を検討した実施例8の結果を示したグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図17は、ヒト肺癌細胞株Calu-6担癌マウスにおいて、パクリタキセル単独及びFK330併用時の腫瘍組織内マクロファージ(F4/80)浸潤に対する作用を検討した実施例8の結果を示したグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図18は、ヒト肺癌細胞株Calu-6担癌マウスにおいて、パクリタキセル単独及びFK330併用時の腫瘍組織内ニトロチロシン(NOの主な最終生成物)発現に対する作用を検討した実施例8の結果を示したグラフである。PTXはパクリタキセルを示す。 図19は、ヒト肺癌細胞株Calu-6において、各種化学療法剤により誘発される癌細胞の細胞生存率低下に対するNO供与体であるSNAPの抑制作用を検討した実施例9の結果を示すグラフである。SNAPはS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamineを示す。 図20は、ヒト胃癌細胞株MKN-28において、各種化学療法剤により誘発される癌細胞の細胞生存率低下に対するNO供与体であるSNAPの抑制作用を検討した実施例9の結果を示すグラフである。SNAPはS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamineを示す。 図21は、ヒト肺癌細胞株Calu-6及びヒト胃癌細胞株MKN-28において、タキサンにより誘発されるカスパーゼ-3/7活性化に対するNO供与体であるSNAPの抑制作用を検討した実施例10の結果を示すグラフである。A)及びB)は、ヒト肺癌細胞株Calu-6におけるパクリタキセル及びドセタキセルにより誘発されるカスパーゼ-3/7活性化に対するSNAPの抑制作用を、C)及びD)は、ヒト胃癌細胞株MKN-28におけるパクリタキセル及びドセタキセルにより誘発されるカスパーゼ-3/7活性に対するSNAPの抑制作用をそれぞれ示す。SNAPはS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamineを示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「癌治療用組成物」は、タキサン系抗腫瘍剤と併用するための医薬組成物であり、別の態様としては、タキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用を増強する医薬組成物である。
本発明の「癌治療用医薬組成物」における「癌」には、タキサン系抗腫瘍剤が用いられている癌、即ち、タキサン系抗腫瘍剤が用いられているすべての固形癌及びリンパ腫が含まれる。ある態様としては、乳癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、胃(胃腺)癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、食道癌、膀胱癌、メラノーマ、大腸癌、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌等が挙げられる。別の態様としては、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃(胃腺)癌、非小細胞肺癌等、また別の態様としては、乳癌、胃(胃腺)癌、非小細胞肺癌等、さらに別の態様としては、乳癌、またさらに別の態様としては、非小細胞癌が挙げられる。
乳癌の別の態様としては、例えば、HER2陽性転移性乳癌、HER2陰性転移性乳癌、HER2陽性乳癌、或いは、転移性乳癌が挙げられ、別の態様としては、HER2陰性転移性乳癌が挙げられ、また別の態様としては、HER2陽性乳癌が挙げられる。
非小細胞肺癌の別の態様としては、例えば、局所進行性非小細胞肺癌、或いは、転移性の非小細胞肺癌が挙げられ、別の態様としては、非小細胞肺癌における非扁平上皮癌が挙げられ、また別の態様としては、転移性の非小細胞肺癌における非扁平上皮癌が挙げられ、さらに別の態様としては、転移性の非小細胞肺癌における扁平上皮癌が挙げられる。
胃癌の別の態様としては、転移性胃癌、転移性胃食道接合部癌等が挙げられる。
前立腺癌の別の態様としては、転移性去勢抵抗性前立腺癌、ホルモン抵抗性前立腺癌等が挙げられ、別の態様としては、ホルモン抵抗性前立腺癌が挙げられ、また別の態様としては、転移性去勢抵抗性前立腺癌が挙げられる。
「NO産生抑制剤」とは、NOの産生を抑制する物質を意味し、例えば、低分子化合物、ペプチド、天然物、RNAi、アンチセンスRNA等のどのような形態であってもよい。ある態様としては、「NO産生抑制作用を有する化合物」である。「NO産生抑制剤」の別の態様としては、FK330を除くNO産生抑制剤である。
「NO産生抑制剤」或いは「NO産生抑制作用を有する化合物」の別の態様としては、NOS転写阻害剤、NOスカベンジャー、NOS阻害剤等である。「FK330を除くNO産生抑制剤」のある態様としては、NOS転写阻害剤、NOスカベンジャー、FK330を除くNOS阻害剤等である。
「NOS転写阻害剤」の具体的な態様としては、例えば、CR-3294、PMI-001、PMI-005が挙げられる。NOS転写阻害剤の別の態様としては、NOS転写因子阻害剤が挙げられ、具体的には例えば、NFkB阻害剤、IL-1阻害剤、TNF阻害剤、IFN-γ阻害剤等が挙げられる。NOS転写阻害剤のまた別の態様としては、、炎症を抑えて間接的にNOS蛋白の産生を抑制する各種薬剤も含まれ、例えば、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
「NOスカベンジャー」のある態様としては、非ヘム鉄含有ペプチド、非ヘム鉄含有タンパク質、ポルフィリン (porphyrins)、メタロポルフィリン (metalloporphyrins)、ジチオカルバメート (dithiocarbamates)、ジメルカプトコハク酸、フェナントロリン (phenanthroline)、デスフェリオキサミン (desferrioxamine)、ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン (PIH, NSC-77674)、1,2-ジメチル-3-ヒドロキシピリジン-4-オン(L1)、[+]1,2-ビス(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン(ICRF-187)、2-(4-カルボキシフェニル9-4,5-ジヒドロ-4,4,5,5-テトラメチル-1H-イミダゾリル-1-オキシ-3-オキサイド(カルボキシ-PTIO)等が挙げられる。
「NOS阻害剤」とは、NOSのNO産生機能を阻害する物質を意味し、ある態様としては、「NOS阻害作用を有する化合物」である。「NOS阻害剤」の別の態様としては、NOSを選択的に阻害する物質が挙げられ、具体的には、NOS以外のターゲットに対する阻害作用に比べて、NOSに対する阻害作用が、例えば、10倍以上、別の態様としては100倍以上の活性を有する物質が挙げられる。
「NOS阻害剤」のある態様としては、NG-モノメチルL-アルギニン(NMMA)、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(NAME)、NG-ニトロ-L-アルギニン(NNA)、NG-アミノ-L-アルギニン(NAA)、NG,NG-ジメチルアルギニン(非対称ジメチルアルギニン、ADMA)、L-チオシトルリン (L-Thiocitrulline)、S-メチル-L-チオシトルリン、ジフェニレンヨードニウムクロリド (diphenyleneiononium chloride)、2-(4-カルボキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシ-3-オキシド、7-ニトロインダゾール、N(5)-(1-イミノエチル)-L-オルニチン、アミノグアニジン、カナバニン (canavanine)、エブセレン (ebselen)、S-メチル-L-シトルリン、S-メチルイソウレア、2-メルカプトエチルグアニジン等が挙げられる。
「NOS阻害剤」の別の態様としては、iNOS阻害剤、nNOS阻害剤、eNOS阻害剤が挙げられ、また別の態様としては、iNOS阻害剤が挙げられる。「iNOS阻害剤」とは、iNOSのNO産生機能を阻害する物質を意味し、ある態様としては、「iNOS阻害作用を有する化合物」である。「eNOS阻害剤」とは、eNOSのNO産生機能を阻害する物質を意味し、ある態様としては、「eNOS阻害作用を有する化合物」である。「nNOS阻害剤」とは、nNOSのNO産生機能を阻害する物質を意味し、ある態様としては、「nNOS阻害作用を有する化合物」である。
「FK330を除くNOS阻害剤」のある態様としては、FK330を除くiNOS阻害剤、nNOS阻害剤、eNOS阻害剤等が挙げられ、別の多様としては、FK330を除くiNOS阻害剤が挙げられる。
nNOS阻害剤のある態様としては、L-NPA、7-ニトロインダゾール、ARL17477、ビニル-L-NIO、TRIM等が挙げられる。
eNOS阻害剤のある態様としては、以下が挙げられる。何れの化合物もかっこ内に表示した参照文献に記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。
4-メチルl-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-2-イミン・塩酸塩(特開1996-311028号公報を参照)、
6-(2-[18F]フルオロプロピル)-4-メチルピリジン-2-アミン(米国特許出願公開2010-278751号明細書を参照)、PHS-203(国際公開第2006/058669号パンフレットを参照)、Cavtratin (CavNoxin)(国際公開第2002/020768号パンフレットを参照)、PSH-334(国際公開第2001/021619号パンフレットを参照)、N-[4-(3-アミノ-2-メチル-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イルメチルアミノ)ブチル]-2,2,2-トリフルオロアセトアミド・二塩酸塩(国際公開第2001/014347号パンフレットを参照)6-エチル-4-メチルピリジン-2-アミン・フマル酸塩(特開1996-311028号公報を参照)、4(R)-メチルピペリジン-2-イミン・塩酸塩(国際公開第1996/014844号パンフレットを参照)、5-エチル-4-メチルピロリジン-2-イミン(国際公開第1996/014844号パンフレットを参照)、(4R,4aR,7aR)-4-メチルペルヒドロシクロペンタ[b]ピリジン-2-イミン(国際公開第1996/014844号パンフレットを参照)、VAS-203等が挙げられる。
上記「iNOS阻害作用を有する化合物」のある態様としては、以下の記載した化合物が挙げられる。一部の化合物については構造式を表1に示した。何れの化合物も参照文献に記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。
FK330 (FR260330):化学名は、N2-[(2E)-3-(4-クロロフェニル)-2-プロペノイル]-N-[2-オキソ-2-(4-{[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)エチル]-3-ピリジン-2-イル-L-アラニンアミドであり、国際公開第02/055541号パンフレット記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。優れたiNOS阻害活性を示すことが報告されている(European Journal of Pharmacology,2005, 509:71)。
KD-7040:化学名は、N'-ベンゾ[1,3]ジオキシ-5-イルメチル-N-(3-イミダゾル-1-イル-[1,2,4]チアジアゾル-5-イル)-N-メチル-プロパン-1,3-ジアミンであり、国際公開第2006/060424号パンフレット記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。
GW-274150:化学名は、(s)-[2-(1-(イミノエチルアミノ)エチル)-L-ホモシステインであり、国際公開第98/30537号パンフレット記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。
SD-6010 (Cindunistat):化学名は、(s)-[2-(1-(イミノエチルアミノ)エチル)-2-メチル-L-システインであり、国際公開第2001/072702号パンフレット記載の方法、若しくは、当業者にとって自明である方法、又は、それらの変法によって容易に入手可能である。
上記に加えて、以下も挙げられる。Gingivex、L-NIL-TA (国際公開第1996/0151202号パンフレットを参照)、ONO-1714 (欧州特許出願第0870763号明細書を参照)、CR3558、2-イミノビオチン (2-Iminobiotin)(国際公開第2011/49349号パンフレットを参照)、アミノグアニジンジスルフィド炭酸塩(Guanidinoethyldisulfide bicarbonate, GED bicarbonate)(米国特許5929063号明細書を参照)、KLYP-961(国際公開第2009/029592号パンフレットを参照)、GW273629 (国際公開第1998/030537号パンフレットを参照)、1400W、アミノグアニジン(aminoguanidine, AG)。
また別の態様としては、FK330、KD-7040、GW-274150、SD-6010、Gingivexが挙げられ、さらに別の態様としては、FK330、KD-7040、GW-274150、SD-6010が挙げられ、またさらに別の態様としては、FK330、KD-7040、SD-6010が挙げられる。
別の態様としては、KD-7040、GW-274150 、SD-6010が挙げられ、また別の態様としては、KD-7040、GW-274150が挙げられる。
Figure 2015180606
「iNOS阻害作用を有する化合物」、「eNOS阻害作用を有する化合物」、又は「nNOS阻害作用を有する化合物」は、例えば、当業者に公知の方法、或いは、British Journal of Pharmacology, 2005, 145, 301-312に記載の実験方法、若しくはこれらに準ずる当業者に自明な評価方法に従って、化合物のiNOS阻害活性、eNOS阻害活性又はnNOS阻害活性をスクリーニングすることにより取得することができる。
この際、スクリーニングの手法としては当業者によく知られるHTS(High-throughput screening)が慣習的且つ効率的である。ここで、評価する化合物としては、新規合成化合物、市販されている化合物、コンビナトリアルケミストリーによって合成された化合物、及びこれらから成る化合物ライブラリーに登録されている化合物、或いは公知化合物等を用いることができる。更に、微生物或いは動植物から単離される種々の天然化合物とその誘導体を用いることができる。また更に、HTS評価により取得されたiNOS阻害活性を有する化合物の周辺誘導体合成の展開により、更なるiNOS阻害剤を取得することができる。
「NOS阻害活性を有する化合物」、「iNOS阻害活性を有する化合物」、「nNOS阻害活性を有する化合物」、又は「eNOS阻害活性を有する化合物」の50%阻害濃度(IC50)は、ある態様では約10μM未満、別の態様では約1μM未満、また別の態様では100nM未満、さらに別の態様では10nM未満であることが挙げられる。
NO産生抑制剤のタキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強果は、後述の実施例に示すとおり、担癌動物モデル試験によっても確認できる。さらに、適切な他のin nitro又はin vivo実験によっても確認できる他、癌患者に対する臨床試験によっても確認することができる。
「NO産生抑制作用を有する化合物」には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、「NO産生抑制作用を有する化合物」が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、「NO産生抑制作用を有する化合物」には、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、「NO産生抑制作用を有する化合物」の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
さらに、本発明は、「NO産生抑制作用を有する化合物」の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等に変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
「NO産生抑制作用を有する化合物」は、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、「NO産生抑制作用を有する化合物」の製薬学的に許容される塩であり、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明は、「NO産生抑制作用を有する化合物」及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
「NO産生抑制作用を有する化合物」の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えば滑沢剤や崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばエタノールのようなアルコール類がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜30 mg/kg、更に好ましくは0.1〜10 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2回〜4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
投与経路、剤形、投与部位、賦形剤や添加剤の種類によって異なるが、本発明の医薬組成物は0.01〜100重量%、ある態様としては0.01〜50重量%の有効成分である1種又はそれ以上の「NO産生抑制剤」を含有する。
本発明の癌治療用医薬組成物と併用可能なタキサン系抗腫瘍剤としては、タキサン環又はその類縁構造を有する化合物を有効成分とする医薬組成物が挙げられ、別の態様としては、タキサン環を有する化合物を有効成分とする医薬組成物が挙げられる。タキサン系抗腫瘍剤のまた別の態様としては、微小管脱重合阻害作用を有する化合物を有効成分とする医薬組成物が挙げられる。医薬組成物に適用される賦形剤及び剤形は、前述したものを用いることができる。
本発明の癌治療用医薬組成物と併用可能なタキサン系抗腫瘍剤としては、タキサン環又はその類縁構造を有する化合物と併用可能なタキサン系抗腫瘍剤の別の態様としては、パクリタキセル(pactitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、カバジタキセル(cabazitaxel)、アブラキサン(abraxane)、テセタキセル(tesetaxel)、オルタタキセル(ortataxel)等が挙げられ、また別の態様としては、パクリタキセル(pactitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、又はアブラキサン(abraxane)が挙げられ、さらに別の態様としては、パクリタキセル(pactitaxel)又はアブラキサン(abraxane)が挙げられ、またさらに別の態様としては、パクリタキセル(pactitaxel)が挙げられ、別の態様としては、ドセタキセル(docetaxel)が挙げられる。
本発明の癌治療用医薬組成物と併用可能なタキサン系抗腫瘍剤としては、タキサン環又はその類縁構造を有する化合物と併用可能な主な既存タキサン系抗腫瘍剤を、主な適応癌種または適応候補癌腫とともに下表に示す。但し、本発明の併用治療において、これらの抗腫瘍剤の適応癌種はこれらに限定されるものではない。
Figure 2015180606
パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、又はアブラキサンは、市販品を購入して使用することが可能であり、或いは、当業者にとって自明である方法又はそれらの変法によって容易に入手可能である。
カバジタキセルは、また、国際公開96/30355号パンフレットに開示される製造方法又はそれらの変法によって容易に入手可能である。テセタキセルは、当業者にとって自明である方法、或いは、国際公開01/27115号パンフレットに開示される製造方法又はそれらの変法によって容易に入手可能である。オルタタキセルは、当業者にとって自明である方法、或いは、米国特許5705508号明細書に開示される製造方法又はそれらの変法によって容易に入手可能である。
上記の抗腫瘍剤は既に臨床的に使用されており、その投与経路、投与サイクル、投与量は当業者に明らかである。癌種や症状、併用する薬剤によって好適な用法・用量(Dosage and Administration)は異なり、これらの詳細な情報はFDAが提供する各種データベース、例えば、"Orange Book"(http://www.fda.gov/cder/orange/default.htm)や、日本の医薬品医薬機器情報提供ホームページ(http://www.info.pmda.go.jp/)により容易に入手可能である。これらのデータベースにある各抗腫瘍剤の情報は本願に組み込まれるものである。
例えば、パクリタキセルの用法・用量の例としては、日本の医薬品医薬機器情報提供ホームページのタキソール注(登録商標:パクリタキセルの商品名)の添付文書には、「[効能又は効果]卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌;[用法及び用量];1.通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回210mg/m2を3時間かけて点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。なお、投与量は、年齢、症状により適宜減量する。」と記載される。
また、ドセタキセルの用法・用量の例としては、日本の医薬品医薬機器情報提供ホームページのタキソテール注(登録商標:ドセタキセルの商品名)の添付文書には、「1.乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌;効能又は効果毎の用法及び用量;1.通常、成人に1日1回、ドセタキセルとして60mg/m2を1時間以上かけて、3〜4週間間隔で点滴静注する。なお、症状により適宜増減すること、ただし、1回最高用量は70mg/m2とする」と記載される。
本発明における併用治療に用いる場合の治療有効用量は、通常投与される投与経路により、通常単独で投与される場合と同じ投与量若しくはそれより低用量(例えば、単独で投与した場合の最高投与量の0.10〜0.99倍)に設定することができる。一定の投与サイクルで投与されるタキサン系抗腫瘍剤の場合は、本発明の癌治療用医薬組成物との併用に適するように投与サイクルを適宜調整することもできる。具体的な投与頻度、投与量、投与サイクル等は、患者の症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
本発明の癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤を併用投与する場合の投与形態としては、それぞれに適した投与経路、投与頻度及び投与量を採用する限りは特に限定されず、例えば、(1)本発明の癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤とを含有する組成物、即ち、単一の製剤としての投与、(2)NO産生抑制剤とタキサン系抗腫瘍剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明の癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与(例えば本発明の癌治療用医薬組成物、タキサン系抗腫瘍剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(4)本発明の癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明の癌治療用医薬組成物とタキサン系抗腫瘍剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば本発明の癌治療用医薬組成物、タキサン系抗腫瘍剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。ある態様としては、本発明の癌治療用医薬組成物はタキサン系抗腫瘍剤とは別に製剤化し、タキサン系抗腫瘍剤は静注、点滴静注若しくは経口により投与され、本発明の癌治療用医薬組成物は経口若しくは非経口で投与される。別の態様としては、タキサン系抗腫瘍剤は静注、点滴静注により投与され、本発明の癌治療用医薬組成物は経口で投与される。
本発明の癌治療用医薬組成物の好ましい投与形態は、そのタキサン系抗腫瘍剤投与の1サイクル中の少なくとも1日に本発明の癌治療用医薬組成物を経口若しくは非経口的に投与する方法である。ここに、「サイクル」とは、一定のレジメンによる治療サイクル或いは治療クールを意味し、例えば、パクリタキセルやドセタキセルでは、投与の開始から休薬期間を経て次の投与を行う前までの3〜4週間程度の投与単位期間である。ある投与形態としては、NO産生抑制剤を含む本発明の癌治療用医薬組成物を、タキサン系抗腫瘍剤の投与日の少なくとも1日に経口投与する方法、タキサン系抗腫瘍剤の投与日の全日に経口投与する方法、タキサン系抗腫瘍剤の休薬日の少なくとも1日に経口投与する方法、タキサン系抗腫瘍剤の休薬日の全日に経口投与する方法、タキサン系抗腫瘍剤の投与日の少なくとも1日及び休薬日の少なくとも1日に経口投与する方法、タキサン系抗腫瘍剤投与の1サイクル中の全日に経口投与する方法、又は、タキサン系抗腫瘍剤投与の1サイクル中に間歇的(2日に1回、1週間に1回等)に経口投与する方法である。ある態様としては、タキサン系抗腫瘍剤投与の1サイクル中の全日に経口投与する方法である。タキサン系抗腫瘍剤の投与の数日前〜前日から本発明の癌治療用医薬組成物を投与してもよく、この態様はタキサン系抗腫瘍剤の休薬日の投与に包含される。NO産生抑制剤とタキサン系抗腫瘍剤の薬物相互作用が懸念される場合は、相互作用を回避するために投与時期を分ける、及び/又は、必要な間隔を空けて投与することができる。
本発明は、「NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤による治療を受けている対象を治療するための癌治療用医薬組成物」の形態であってもよい。「対象」は、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤による治療を受けていれば、他の抗腫瘍剤の投与を受けていてもよい。他の抗腫瘍剤は後述するものが挙げられる。「対象」は、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤を、NO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物と同時、別々に、連続して、或いは間隔を空けて投与されていてもよい。
本発明は、「(a) NO産生抑制剤、並びに、(b)タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤、を組み合わせて包含するキット」の形態であってもよい。これは、有効成分(a)を含む製剤(第一製剤)及び有効成分(b)を含む製剤(第二製剤)を、これらの有効成分の併用療法に用いることができるように組み合わせて含むものである。本発明のキットは、所望により、プラセボ剤等のそれぞれの投与時期に合わせた投与を容易にする追加的な製剤や表示部材を含んでいてもよい包装品であってもよい。
2種類の製剤は、例えば、各製剤のバイオアベイラビリティー、安定性等を考慮し、それぞれの製剤に適した製剤処方、投与経路、投与頻度等の投与条件下にて、同一又は異なる投与ルートで同時、別々に、連続して、或いは間隔を空けて投与されるものである。ここで、「同時に」とは、第一製剤と第二製剤を一緒に同じ投与経路で投与することを意味し、「別々に」とは、第一製剤と第二製剤を同一若しくは異なる投与経路で、同一若しくは異なる投与頻度又は投与間隔で、別々に投与することを意味する。「連続して」とは、第一製剤と第二製剤を同一若しくは異なる投与経路で、第一製剤に続いて第二製剤の順序、あるは逆の順序で投与することを意味する。「間隔を空けて」とは、第一製剤と第二製剤を同一若しくは異なる投与経路で、第一製剤に続いて一定の間隔を空けて第二製剤の順序、あるは逆の順序で投与することを意味する。
本発明は、「(a) NO産生抑制剤を有効成分として含有する医薬組成物と、(c) タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と併用することが表示された添付文書を含有してなる、癌治療用医薬品」の形態であってもよい。これは、併用治療に用いる場合の治療有効用量の有効成分を含有する組成物(a)と、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と併用することが表示された、前記(a)の組成物に係る添付文書(c)、の両方を含んで包装された、癌治療用の医薬品を意味する。
また、本発明の癌治療用医薬組成物を、タキサン系抗腫瘍剤と併用して用いる場合、所望により更に化学療法に使用される他の抗腫瘍剤を併用することもできる。更に併用することができる化学療法に使用される他の抗腫瘍剤としては、従来タキサン系抗腫瘍剤と併用することが知られている抗腫瘍剤であり、例えば、プラチナ系抗腫瘍剤、アントラサイクリン系抗腫瘍剤、シクロフォスファミド、フルオロウラシル、トラスツズマブ及びカペシタビンから選択される1以上の抗腫瘍剤が挙げられ、ある態様としては、シスプラチン若しくはカルボプラチンであり、別の態様としては、ドキソルビシンである。
本願明細書の実施例1−6に示すように、NO産生抑制剤とタキサン系抗腫瘍剤の併用治療により、癌治療作用が増強されることが見出された。その効果は、NO産生抑制剤若しくはタキサン系抗腫瘍剤の単剤投与に比べて有意に平均腫瘍体積(mean tumor volume)を減少させることにより確認された。
実施例に示した動物モデルでは、NO産生抑制剤はタキサン系抗腫瘍剤選択的、かつ用量依存的に抗腫瘍作用を増強することが確認された。即ち、NO産生抑制剤のみの場合は、有意な抗腫瘍効果が見られず、また、NO産生抑制剤をタキサン以外の抗腫瘍剤と併用しても、格別顕著な抗腫瘍作用増強作用は確認されないが、タキサン系抗腫瘍剤と組み合わせた場合は良好な抗腫瘍作用増強作用が確認された。殊に、NO産生抑制剤の複数サイクル処置によるタキサン系薬剤の抗腫瘍効果の減弱を改善し、腫瘍増殖を良好に抑制することが示された(図7参照)。これはNO産生抑制剤がタキサン系抗腫瘍剤の耐性化を抑制しうることを示唆する。
本願明細書の実施例7−10に示すように、本発明者らは、NO産生抑制剤によるタキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強のメカニズムとして以下を明らかにした。すなわち、タキサン系抗腫瘍剤は、腫瘍組織でiNOS蛋白の発現を亢進し,その結果NO産生を増強する。産生されたNOは、タキサンの微小管脱重合阻害作用を直接的に抑制することでタキサン系抗腫瘍剤のアポトーシスを介した抗腫瘍効果の減弱を引き起こす。一方、NO産生抑制剤は、タキサン系抗腫瘍剤によって増強されたNO産生を阻害することにより、タキサン系抗腫瘍剤の効果の減弱を抑制して抗腫瘍作用を増強できることを明らかにしたものである。
以上のことから、NO産生抑制剤は、微小管脱重合阻害作用をターゲットとするすべてのタキサン系抗腫瘍剤の作用を増強できるといえるとともに、本発明は、iNOS阻害剤を含むNO産生抑制剤が、タキサン系抗腫瘍剤の作用を増強し得ることを、in vivoのデータをもって初めて明らかにしたものである。
本発明の癌治療用医薬組成物の有用性を示す薬理試験結果を以下に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例で使用されるiNOS阻害剤であるFK330フリー体2水和物は、国際公開第02/055541号パンフレットの実施例41に記載の方法により得られるFK330フリー体を、アルコール/水溶媒系、例えばエタノール/水、又はイソプロパノール/水等にて再結晶を行い、得られた結晶を減圧下乾燥させて得たフリー体無水物に対して調湿操作を行うことにより、得ることができる。
実施例1
1) 被験物質
FK330としてはフリー体2水和物を用いた。以下、FK330の投与量は当該2水和物の重量で表示した。ドセタキセル水和物注射剤(タキソテール(商標)点滴静注用)はサノフィ-アベンティス株式会社から購入し、ドセタキセルとして使用した。パクリタキセル注射剤(パクリタキセル注射液「サワイ」)は沢井製薬株式会社から購入し、パクリタキセルとして使用した。塩酸イリノテカン(トポテシン(商標)注)は第一三共株式会社から購入し、イリノテカンとして使用した。注射用ゲムシタビン塩酸塩(ジェムザール(商標)注射用)は日本イーライリリー株式会社から購入し、ゲムシタビンとして使用した。注射用塩酸ドキソルビシン(アドリアシン(商標)注用10)は協和醗酵工業株式会社から購入し、ドキソルビシンとして使用した。カルボプラチン注射液(パラプラチン(商標)注射液)はブリストル・マイヤーズ株式会社から購入し、カルボプラチンとして使用した。
2) 被験物質の調製及び投与
FK330は0.5%メチルセルロース水溶液(0.5% MC)に懸濁した(20mg/mL)。ドセタキセルは添付溶解液にて4mg/kgに調製した後、生理食塩液(大塚製薬)で1mg/mLに希釈した。パクリタキセル、イリノテカン、ゲムシタビン、ドキソルビシン及びカルボプラチンは注射用生理食塩水にてそれぞれ、1mg/mL、3mg/mL、16mg/mL、1mg/mL及び6mg/mLに用時調製した。
3) 細胞
ヒト肺癌由来Calu 6 (HTB-56)はAmerican Type Culture Collection (VA, USA)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。トリプシンを用いて回収した細胞をPBSで6x107 cells/mLに懸濁し、等量のMatrigel(商標) Basement Membrane Matrix (Becton Dickinson Co.製, Bedford, MA, USA)と混合した。
4) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が111.9 から 369.3 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
5) 薬物投与および測定
投与初日をDay1としてDay29まで観察を行った。それぞれの群 (n=5又は6)を以下の様に処理した。FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)し、各化学療法剤は尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
対照群:未処置
FK330単独投与群:FK330 100mg/kg を1日2回投与(bid)(200mg/kg/day、実験開始から終了時まで連日投与)
ドセタキセル単独投与群:ドセタキセル10mg/kg/day(Day1、5及び9)
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10mg/kg/day(Day1から7)
イリノテカン単独投与群:イリノテカン30mg/kg/day(Day1から7)
ゲムシタビン単独投与群:ゲムシタビン160mg/kg/day(Day1、4及び7)
ドキソルビシン単独投与群:ドキソルビシン10mg/kg/day(Day1及び8)
カルボプラチン単独投与群:カルボプラチン60mg/kg/day(Day1及び2)
併用群:
FK330 100 mg/kg/day bid + ドセタキセル 10 mg/kg/day(Day1、5及び9)、n=6
FK330 100 mg/kg/day bid + パクリタキセル 10 mg/kg/day(Day1から7)、n=6
FK330 100 mg/kg/day bid + イリノテカン 30 mg/kg/day(Day1から7)、n=6
FK330 100 mg/kg/day bid + ゲムシタビン 160 mg/kg/day(Day1、4及び7)、n=6
FK330 100 mg/kg/day bid + ドキソルビシン 10 mg/kg/day(Day1及び8)、n=6
FK330 100 mg/kg/day bid + カルボプラチン 60 mg/kg/day(Day1及び2)、n=5
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)した。各化学療法剤はFK330投与後2〜4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
3〜4日ごとに体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
6) 統計解析
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。試験期間中、触診限界以下を完全消失(CR)として判定し、測定値は0とした。試験終了時の腫瘍体積の実測値について、単独投与群と併用群で対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)を行い、5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはSASまたはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
7) 結果
FK330と各種化学療法剤を併用投与した時の抗腫瘍作用を検討した。結果は図1から図6に示した。即ち、FK330とドキソルビシンの併用効果は図1に、ゲムシタビンとの併用効果は図2に、イリノテカンとの併用効果は図3に、カルボプラチンとの併用効果は図4に、パクリタキセルとの併用効果は図5に、ドセタキセルとの併用効果は図6にそれぞれ示した。FK330単独では抗腫瘍効果は認められなかったものの、抗腫瘍効果の有意な増強がパクリタキセル(Day29でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率57.6%)及びドセタキセル(Day29でのドセタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率65.2%)で確認された。一方、FK330はゲムシタビン及びカルボプラチンの抗腫瘍効果には影響を与えず、抗腫瘍効果の若干の増強がドキソルビシン(Day29でのドキソルビシン単独群に対する腫瘍体積減少率34.5%)及びイリノテカン(Day29でのイリノテカン単独群に対する腫瘍体積減少率34.1%)で観察されたが、有意な作用ではなかった。
結果は平均値(Mean)± 標準誤差(SEM)で示した(n=6)。*: P<0.03、**: P<0.01は併用群を化学療法剤単独投与群と比較した時の有意差を示す。N.S.:併用群を化学療法剤単独投与群と比較した時に有意差がないことを示す (Student's t-test)。
8) 結論
FK330は、単独では抗腫瘍効果は認められなかったものの、パクリタキセル及びドセタキセルの抗腫瘍効果を増強させた。一方、イリノテカン、ゲムシタビン、ドキソルビシン及びカルボプラチンの抗腫瘍効果には影響を与えなかった。これらの結果は、FK330はタキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を選択的に増強することを示唆するものである。
実施例2
1) 被験物質
FK330の用量は水和物を含む重量で表示した。パクリタキセル注射剤(パクリタキセル注射液「サワイ」)は沢井製薬株式会社から購入し、パクリタキセルとして使用した。
2) 被験物質の調製及び投与
FK330は0.5%メチルセルロース水溶液(0.5% MC)に懸濁した(20mg/mL)。パクリタキセルは注射用生理食塩水(大塚製薬)にて1mg/mLに用時調製した。
3) 細胞
ヒト肺癌由来Calu 6 (HTB-56)はAmerican Type Culture Collection (VA, USA)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。トリプシンを用いて回収した細胞をPBSで6x107 cells/mLに懸濁し、等量のMatrigel(商標) Basement Membrane Matrix (Becton Dickinson Co.製, Bedford, MA, USA)と混合した。
4) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が126.1 から 299.0 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
5) 薬物投与および測定
投与初日をDay1としてDay83まで観察を行った。それぞれの群 (n=6)を以下の様に処理した。FK330は5mL/kgで強制経口投与を行い、パクリタキセルは10mL/kgで尾静脈内投与を行った。パクリタキセルはDay1からDay7の連続投与を行った後24日間の休薬した(1サイクル)。PTXの2サイクル及び3サイクル目の投与では、それぞれDay31またはDay60から6日間連続投与した。
対照群:未処置
FK330単独投与群:FK330 100mg/kg bid(200mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与)
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10mg/kg/day(1サイクルでは7日間連続投与、2サイクル以降は6日間連続投与)
併用群:
FK330 100 mg/kg/kg bid(200mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(1サイクルでは7日間連続投与、2サイクル以降は6日間連続投与)
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)した。パクリタキセルはFK330投与後2〜4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
3〜4日ごとに体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
6) 統計解析
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。試験期間中、触診限界以下を完全消失(CR)として判定し、測定値は0とした。各測定時の腫瘍体積の実測値について、単独投与群と併用群で対応のない2群間の差の検定(Student's t-test)を行い、5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはSASを用いた。
7) 結果
FK330のパクリタキセル複数サイクル投与時の併用作用を検討した。結果は図7に示した。ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおいて、複数サイクル投与するにつれてパクリタキセルの抗腫瘍効果は減弱する傾向が認められた。FK330はパクリタキセルの抗腫瘍効果を著明に増強し、Day29でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は57.6%(P<0.01)、Day60でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は86.1%(P<0.01)、Day83でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は87.6%(P<0.01)であった。
結果は平均値(Mean)± 標準誤差(SEM)で示した(n=6)。**: P<0.01は併用群を化学療法剤単独投与群と比較した時の有意差を示す(Student's t-test)。
8) 結論
ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおいて、パクリタキセルの抗腫瘍効果は、サイクル依存的に減弱した。一方FK330の併用は、複数サイクル投与によるパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強し、腫瘍の再増殖を著明に抑制した。この結果は、FK330が複数サイクル処置によるタキサン系薬剤の抗腫瘍効果の減弱を改善することを示唆するものである。
実施例3
被験物質の調製、及び細胞の調整は実施例2と同様に行った。
1) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が123.3 から 274.4 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
2) 薬物投与および測定
投与初日をDay0としてDay59まで観察を行った。それぞれの群 (n=5)を以下の様に処理した。FK330は5mL/kgで強制経口投与を行い、パクリタキセルは10mL/kgで尾静脈内投与を行った。パクリタキセルはDay0からDay5の連続投与後に21日の休薬期間を設定し、これを1サイクルとして2サイクルまで投与した。
対照群:未処置
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10mg/kg/day(1サイクルではDay0から6日間連続投与、2サイクルではDay27から6日間連続投与)
併用群:
FK330 30 mg/kg bid (60 mg/kg/day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(1サイクルではDay0から6日間連続投与、2サイクルではDay27から6日間連続投与)
FK330 60 mg/kg bid (120 mg/kg /day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(1サイクルではDay0から6日間連続投与、2サイクルではDay27から6日間連続投与)
FK330 100 mg/kg bid (200 mg/kg /day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(1サイクルではDay0から6日間連続投与、2サイクルではDay27から6日間連続投与)
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)した。パクリタキセルはFK330投与後2〜4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
3〜4日ごとに体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
3) 結果
FK330のパクリタキセルの抗腫瘍効果増強作用の用量依存性を検討した結果を図8に示した。結果は平均値(Mean)± 標準誤差(SEM)で示した(n=4から5)。試験終了時(Day59)の腫瘍体積は、パクリタキセル単独群では1640.1±902.8 mm3、FK330 30mg/kg bid併用群では、955.9±231.0 mm3、FK330 60mg/kg bid併用群では706.2±256.1 mm3、FK330 100mg/kg bid併用群では297.9±101.4 mm3であり、FK330は用量依存的にパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強した(パクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率:FK330 30mg/kg bidでは41.7%、FK330 60mg/kg bidでは56.9%、FK330 100mg/kg bidでは81.8%)。
4) 結論
FK330の併用は、用量依存的にパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強した。
実施例4
被験物質の調製、及び細胞の調整は実施例2と同様に行った。
1) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が142.1 から 323.7 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
2) 薬物投与および測定
投与初日をDay0としてDay55まで観察を行った。それぞれの群 (n=5又は6)を以下の様に処理した。FK330は5mL/kgで強制経口投与を行い、パクリタキセルは10mL/kgで尾静脈内投与を行った。パクリタキセルはDay0からDay5の連続投与後に21日の休薬期間を設定し、Day27からDay31まで5日間連続投与した。
対照群:未処置
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10mg/kg/day(Day0からDay5及びDay27からDay31)
併用群:
同時投与FK330 100 mg/kg bid (200 mg/kg /day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(Day0からDay5及びDay27からDay31)
順次投与FK330 100 mg/kg bid (200 mg/kg /day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(Day0からDay5及びDay27からDay31)
連続投与FK330 100 mg/kg bid (200 mg/kg /day) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(Day0からDay5及びDay27からDay31)
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)した。同時投与ではFK330はパクリタキセルの投与日に(Day0からDay5及びDay27からDay31)、連続投与ではパクリタキセル投与日後の休薬日に(Day6からDay26及びDay32からDay55)、連続投与は実験開始日から実験終了日までの全日に投与した。パクリタキセルはFK330投与後2から4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
3から4日ごとに体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
3) 結果
ヒト非小細胞肺癌(Calu-6)担癌マウスにおいて、パクリタキセル併用におけるFK330の投与タイミングを検討した結果を図9に示した。結果は平均値(Mean)± 標準誤差(SEM)で示した(n=5又は6)。
試験期間中、触診限界以下を完全消失(CR)として判定し、測定値は0とした。試験終了時(Day55)の腫瘍体積は、パクリタキセル単独群では1229.2±289.6 mm3、パクリタキセルとFK330の同時投与では、559.8±161.8 mm3、FK330の順次投与では1150.9±264.9 mm3、FK330の連続投与では168.5±66.0 mm3であり、それぞれ、パクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は、54.5%、6.4%及び86.3%であった。
4) 結論
FK330の投与タイミングはタキサン系薬剤の投与開始日よりサイクル期間中連日投与した場合が最も併用効果が高いことが示唆された。
実施例5
被験物質の調製は実施例2と同様に行った。
1) 細胞
ヒト胃癌由来NCI-N87(CRL-5822)はAmerican Type Culture Collection (VA, USA)より、MKN-28(JCRB0253)は医薬基盤研究所(HSRRB)より、AZ-521(RCB2087)は理研BRCより入手したものを使用した。NCI-N87及びMKN-28細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、AZ-521は10%の加熱不活性化したFBSを含むDMEM培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。トリプシンを用いて回収した細胞をPBSで6x107 cells/mLに懸濁し、等量のMatrigel(商標) Basement Membrane Matrix (Becton Dickinson Co.製, Bedford, MA, USA)と混合した。
2) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。AZ-521担癌マウスでは腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が386.6から766.6 mm3に、MKN-28担癌マウスでは腫瘍体積が186.0から319.2 mm3に、NCI-N87担癌マウスでは腫瘍体積が192.1から364.2なったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
3) 薬物投与および測定
投与初日をDay0として、AZ-521担癌マウスではDay46まで、MKN-28担癌マウスではDay84まで、NCI-N87担癌マウスではDay56まで観察を行った。それぞれの群 (n=5又は6)を以下の様に処理した。FK330は5mL/kgで強制経口投与を行い、パクリタキセルは10mL/kgで尾静脈内投与を行った。パクリタキセルは下記の条件にて複数サイクル投与した。
対照群:未処置
FK330単独投与群:FK330 100mg/kg bid(200mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与)
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10mg/kg/day
AZ-521担癌マウス:
パクリタキセルをDay0〜Day5まで6日間連続投与を行った後22日間の休薬期間を置き(1サイクル)、パクリタキセルをDay28〜Day32まで5日間連続投与した(2サイクル)。
MKN-28担癌マウス:
パクリタキセルをDay0からDay5まで6日間連続投与を行った後22日間の休薬期間の後、Day28からDay32の5日間連続投与し23日間の休薬期間をおいた(2サイクル)。さらに、Day56からDay60の5日間の連続投与をおこなった(3サイクル)。
NCI-N87担癌マウス:
パクリタキセルをDay0からDay5まで6日間連続投与を行った後26日間の休薬期間の後、Day32からDay36の5日間連続投与した(2サイクル)。
併用群:
FK330 100 mg/kg bid(200mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与)+ パクリタキセル 10 mg/kg/day
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5mL/kg)した。パクリタキセルはFK330投与後2から4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10mL/kg)した。
3から4日ごとに体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
4) 統計解析
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。各測定時の腫瘍体積の実測値について、単独投与群と併用群で対応のない2群間の差の検定(Student's t-test)を行い、5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
5) 結果
ヒト胃癌(AZ-521、MKN-28、NCI-N87)担癌マウスにおいて、FK330のパクリタキセルとの併用効果を検討した結果を図10から図12に示した。即ち、AZ-521担癌マウスにおけるFK330とパクリタキセルの併用効果を図10に、MKN-28担癌マウスにおける併用効果を図11に、NCI-N87担癌マウスにおける併用効果を図12にそれぞれ示した。ヒト非小細胞肺癌担癌マウスと同様に、FK330はパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強した。AZ-521担癌マウスにおいて、実験最終日のパクリタキセル単独群の腫瘍体積は3285.4±359.4 mm3、パクリタキセルとFK330の併用群では795.0±223.3 mm3であり、パクリタキセル単独群に対して腫瘍体積が75.8%(P<0.01)減少した。MKN-28並びにNCI-N87担癌マウスにおいても、FK330はパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強した(MKN-28担癌マウス:454.1±147.5 mm3 vs 164.8±18.5 mm3、63.7%減少、P=0.08、NCI-N87担癌マウス:492.0±48.5 mm3 vs 223.9±85.1 mm3、54.5%減少、P<0.03)。
結果は平均値(Mean)± 標準誤差(SEM)で示した(n=5又は6)。P値は併用群を化学療法剤単独投与群と比較した時の有意差を示す (Student's t-test)。
6) 結論
FK330の併用は、ヒト胃癌担癌モデルにおいてパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強し、殊に、複数サイクル処置によるパクリタキセルの抗腫瘍効果の減弱を改善する効果が認められた。
実施例6
1) 被験物質
FK330の用量は単体(非水和物)重量に換算して表示した。パクリタキセルはLC Laboratories社(Woburn, MA, USA)から購入し、パクリタキセルとして使用した。
2) 被験物質の調製及び投与
FK330は0.5%メチルセルロース水溶液(0.5% MC)に懸濁し(20mg/mL)、経口投与した。パクリタキセルは、エタノール/クロモフォアー溶液(1:1で混合)にて10 mg/mLのストック溶液を調製した後、投与直前に注射用生理食塩水(大塚製薬)にて1mg/mLに希釈して尾静脈内投与した。
3) 細胞
ヒト乳癌由来MDA-MB-231(HTB-26)はAmerican Type Culture Collection(VA, USA)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたDMEM培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。トリプシンを用いて回収した細胞をPBSで6x107 cells/mLに懸濁し、等量のMatrigel(商標) Basement Membrane Matrix (Becton Dickinson社, Bedford, MA, USA)と混合した。
4) 動物
5週齢の雌性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が148.7から312.5 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
5) 薬物投与および測定
投与初日をDay1としてDay66まで観察を行った。それぞれの群 (n=6)を以下の様に処理した。FK330は5 mL/kgで強制経口投与を行い、パクリタキセルは10 mL/kgで尾静脈内投与を行った。パクリタキセルは、Day1からDay4までの4日間連続投与を行った後、25日間の休薬を行った(1サイクル)。PTXの2サイクル目の投与では、Day30から4日間連続投与した。
対照群:未処置
FK330単独投与群:FK330 100 mg/kg bid(200 mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与)
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10 mg/kg/day(各サイクル4日間連続投与)
併用群:
FK330 100 mg/kg/kg bid(200 mg/kg/day、実験開始から実験終了時まで連続投与) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(各サイクル4日間連続投与)
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5 mL/kg)した。パクリタキセルはFK330投与後1〜4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10 mL/kg)した。
体重とデジタルノギスを用い腫瘍径を週2回測定した。腫瘍体積は(短径 x [長径]2 x 0.52)の楕円体積の計算式より算出した。
6) 統計解析
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。試験期間中、触診限界以下を完全消失(CR)として判定し、測定値は0とした。各測定時の腫瘍体積の実測値を用い、単独投与群と併用群の比較について、対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)を行った。5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
7) 結果
ヒト乳癌担癌マウスにおけるFK330のパクリタキセルとの併用効果を検討した結果を図13に示した。ヒト乳癌(MDA-MB-231)担癌マウスにおいて、FK330はパクリタキセルの抗腫瘍効果を著明に増強し、Day28でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は59.6%(P<0.01)、Day66でのパクリタキセル単独群に対する腫瘍体積減少率は82.8%(P<0.01)であった。
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した(n=6)。**: P<0.01は併用群をパクリタキセル単独投与群と比較した時の有意差を示す (Student's t-test)。
8) 結論
ヒト乳癌(MDA-MB-231)担癌マウスにおいて、FK330の併用は、複数サイクル投与によるパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強し、腫瘍の再増殖を著明に抑制した。
実施例7
1) 被験物質
NO供与体であるS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamine(SNAP)はCayman Chemical社(Ann Arbor, MI, USA) から購入したものを使用した。チューブリン重合測定キットはCytoskeleton社(Denver, CO, USA)から購入し使用した。パクリタキセルは、測定キットに同封されているパクリタキセルをパクリタキセルとして使用した。ドセタキセルはSigma-Aldrich社(St. Louis, MO,USA)から購入し、ドセタキセルとして使用した。
2) 試験方法
蛍光法によるチューブリン重合反応測定は、キットの説明書に従い実施した。即ち、精製ブタ脳由来チューブリン(最終濃2 mg/mL)とSNAP(最終濃度200または500 μmol/L)をキットに同封されている緩衝液中で15分以上、室温でインキュベートした。次にパクリタキセル(最終濃度3 μmol/L)またはドセタキセル(最終濃度1μmol/L)、及びGPT(最終濃度1 mmol/L)をこの緩衝液に加え、37℃で60分間インキュベートした。このインキュベーションの間、マイクロプレートリーダー(SpectraMax社, Molecular Devices社, Sunnyvale, CA, USA)にて蛍光強度(測定波長:励起350 nm/蛍光435 nm)を1分毎に測定した。蛍光強度の値は、平衡定常期に当たる反応開始60分後の値を用い、SNAP及びタキサン未処置群に対する百分率で示し、3回施行した平均値をその値とした。
3) 統計解析
結果は、独立した5回の実験の平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。パクリタキセルまたはドセタキセル処置群と未処置群の比較は、対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)を行った。タキサン系薬剤処置及び未処置におけるSNAP未処置群(対照群)とSNAP処置群(200及び500 μmol/L)の比較は、Dunnett's多重比較検定を行った。5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
4) 結果
パクリタキセル誘発チューブリン重合作用に対するSNAPの抑制作用の代表例、及びチューブリン重合開始後60分の集計値を図14のA)及びB)に、ドセタキセル誘発チューブリン重合に対するSNAPの抑制作用の代表例、及びチューブリン重合開始後60分の集計値を図15のA)及びB)に、それぞれ示した。パクリタキセルまたはドセタキセルは、各タキサン未処置に比較してチューブリン重合をそれぞれ、152.7%(P<0.05)及び184.1%(P<0.001)有意に促進した。NO供与体であるSNAPは、パクリタキセル及びドセタキセルにより促進されたチューブリン重合反応を有意に抑制した。また、SNAPは自然に惹起されるチューブリン重合反応も有意に抑制した。
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した(n=5)。#: P<0.05及び###: P<0.001は、パクリタキセルまたはドセタキセル処置群と各タキサン薬剤未処置群を比較したときの有意差を示す (Student's t-test)。$: P<0.05及び$$$: P<0.001は、タキサン未処置における、SNAP未処置群(対照群)に対するSNAP処置群の有意差を示す(Dunnett's多重比較検定)。*: P<0.05、**: P<0.01及び***: P<0.001は、タキサン処置における、SNAP未処置群(対照群)に対するSNAP処置群の有意差を示す(Dunnett's多重比較検定)。
5) 結論
NO供与体は、パクリタキセル及びドセタキセルにより促進されたチューブリン重合反応を直接抑制した。
実施例8
1) 被験物質
FK330の用量は単体(非水和物)重量に換算して表示した。パクリタキセル注射剤(パクリタキセル注射液「サワイ」)は沢井製薬株式会社から購入し、パクリタキセルとして使用した。ラット抗マウスF4/80抗原モノクローナル抗体、ウサギ抗iNOSポリクローナル抗体、及びウサギ抗ニトロチロシン抗体は、それぞれAbD Serotec社(Oxford, UK)、Santa Cruz Biotechnology社(Santa Cruz, CA, US)、及びMillipore社(Billerica, MA, USA)から購入したものを使用した。
2) 被験物質の調製及び投与
FK330は0.5%メチルセルロース水溶液(0.5% MC)に懸濁し(20mg/mL)、経口投与した。パクリタキセルは、注射用生理食塩水(大塚製薬)にて1mg/mLに用時調製した。
3) 細胞
ヒト肺癌由来Calu-6(HTB-56)はAmerican Type Culture Collection(VA, USA)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。トリプシンを用いて回収した細胞をPBSで6x107 cells/mLに懸濁し、等量のMatrigel(商標) Basement Membrane Matrix (Becton Dickinson社, Bedford, MA, USA)と混合した。
4) 動物
5週齢の雄性ヌードマウス(CAnN Cg-Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu))は日本チャールスリバー社(日本、神奈川)より購入した。動物は試験期間を通じて特定病原体未感染(SPF)条件下で標準的な飼料と飲水を与えて飼育した。培養した細胞を3x106 cells/0.1 mL/mouseでヌードマウスの背部皮下に移植した。腫瘍体積(短径 x [長径]2 x 0.5)が136.8 から 248.5 mm3になったヌードマウスを群間および群内の腫瘍体積ばらつきが小さくなるようにSASを用いて群分けした。
5) 薬物投与
薬物投与は、投与初日(Day 1)より開始した。それぞれの群 (n=5)を以下の様に処理した。FK330は5mL/kgで強制経口投与をDay 1からDay 6まで、パクリタキセルは10mL/kgで尾静脈内投与をDay 1からDay 5まで行った。
対照群:未処置
FK330単独投与群:FK330 100 mg/kg bid(200 mg/kg/day、Day 1からDay 6)
パクリタキセル単独投与群:パクリタキセル10 mg/kg/day(Day 1からDay 5)
併用群:FK330 100 mg/kg/kg bid(200 mg/kg/day、Day 1からDay 6) + パクリタキセル 10 mg/kg/day(Day 1からDay 5)
FK330は1日2回、6から8時間間隔で強制経口投与(5 mL/kg)した。パクリタキセルはFK330投与後1〜4時間後に尾静脈より静脈内ボーラス投与(10 mL/kg)した。
6) 組織固定及び凍結切片作成
Day 6にマウスより腫瘍組織を採材した。4%パラホルムアルデヒド-リン酸緩衝液(和光純薬工業株)にて、4℃で12時間浸潤固定を行った。組織固定度、10%、15%及び20%スクロース/リン酸緩衝液を用い,常法に従い、4℃で段階的にスクロース置換した。置換終了後、O.C.T.コンパウンド(Toronto Research Chemicals社, Toronto, Canada)中に癌組織を包埋し、ドライアイス/アセトンにて凍結切片を作成し、-80℃で保存した。
7) 免疫化学染色及び画像解析
5 μmの薄さの凍結切片をクライオスタット(サクラファインテックジャパン株式会社)にて作成し、風乾した。4%パラホルムアルデヒド-リン酸緩衝液で乾燥させた凍結切片を洗浄後、内因性ペルオキシダーゼを失活化させるため、0.3%過酸化水素/メタノールで切片を30分間処理した。マウスマクロファージ,iNOS及びニトロチロシン染色は以下の手順により行った。iNOS及びニトロチロシン染色に関しては、免疫化学染色を行う前に、マイクロウエーブ(3分/500 W)により抗原賦活化を行った。
マウスマクロファージ染色:
一次抗体処理:ラット抗マウスF4/80抗原モノクローナル抗体(1:200希釈)と60分間、室温でインキュベーションした。
二次抗体処理:ビオチン化抗ラットIgG抗体(1:100希釈, vector laboratories社)と30分間、室温でインキュベーションした。
検出系:VECTASTAIN ABC kit(Vector Laboratories社)を用い、切片を30分間,室温でインキュベーションした。
発色:3,3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAB,Dako社)試薬を用い,室温で1分間処理した。
iNOS染色:
一次抗体処理:ウサギ抗iNOSポリクローナル抗体(1:500希釈)と一昼夜、4℃でインキュベーションした。
検出系:EnVision (DAKO;)を用い、切片を30分間,室温でインキュベーションした。
発色:DAB試薬を用い,室温で1分間処理した。
ニトロチロシン染色:
一次抗体処理:ウサギ抗ニトロチロシン抗体(1:500希釈)と一昼夜、4℃でインキュベーションした。
検出系:EnVision (DAKO;)を用い、切片を30分間,室温でインキュベーションした。
発色:DAB試薬を用い,室温で1分間処理した。
染色した画像(F4/80染色画像及びiNOS画像は200倍、ニトロチロシン染色画像は400倍)は顕微鏡を介しコンピュータに取り込み、WinROOF(version 5.7)を搭載した画像解析システム(三谷商事株式会社)により解析した。値は、総面積当たりの陽性面積の比(%)で表した。各切片当たり5視野を計測し、その平均値を値とした。
8) 統計解析
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。腫瘍組織内iNOS蛋白発現、マクロファージ(F4/80)浸潤、及びニトロチロシン(NOの主な最終生成物)の各測定値について、対照群とパクリタキセル単独群、FK330単独群、またはパクリタキセル及びFK330併用群の比較、並びにパクリタキセル単独群とパクリタキセル及びFK330併用群の比較について、対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)を行った。5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
9) 結果
ヒト肺癌細胞株Calu-6担癌マウスにおけるパクリタキセル単独及びFK330併用時の腫瘍組織内iNOS蛋白発現、マクロファージ(F4/80)浸潤、及びニトロチロシン(NOの主な最終生成物)発現に対する作用を、図16乃至18に示した。対照群の腫瘍組織内には、iNOS陽性細胞並びにマクロファージは殆ど認められず、ニトロチロシン(NOの最終生成物)も低かった。一方、パクリタキセル投与により、腫瘍組織内へのマクロファージの浸潤が著明に認められた。また、腫瘍組織内iNOS蛋白発現も著明に亢進、その結果、腫瘍組織内ニトロチロシン量も増加した。iNOS阻害剤であるFK330の併用は、腫瘍内マクロファージ浸潤及びiNOS蛋白発現には作用を及ぼさなかったものの、ニトロチロシン産生を抑制した。
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した(n=5)。***: P<0.001は、対照群と比較したときの有意差を示す (Student's t-test)。
10) 結論
ヒト肺癌(Calu-6)担癌マウスにおいて、パクリタキセルは、腫瘍組織内へのマクロファージの浸潤、及び腫瘍組織内iNOS蛋白発現を誘発し、その結果、腫瘍内NO産生を誘発した。iNOS阻害剤であるFK330の併用は、パクリタキセルにより誘発されるiNOS由来NO産生を抑制した。
実施例9
1) 被験物質
NO供与体であるS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamine(SNAP)はCayman Chemical Company社(Ann Arbor, MI, USA)から購入したものを使用した。パクリタキセルはLC Laboratories社(Woburn, MA, USA)から購入し、パクリタキセルとして使用した。ドセタキセル、ドキソルビシン、イリノテカン、及びカルボプラチンは、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO,USA)から購入したもの、それぞれドセタキセル、ドキソルビシン、イリノテカン及びカルボプラチンとして使用した。ゲムシタビンは、Toronto Research Chemicals社(Ontario, Canada)より購入したものを、ゲムシタビンとして使用した。細胞生存率測定用キット(CellTiter-Glo(商標) Luminescent Cell Viability assay kit)は、Promega社(Madison, WI, USA)から購入したものを使用した。
2) 細胞
ヒト肺癌由来Calu-6(HTB-56)はAmerican Type Culture Collection(VA, USA)より入手した。MKN-28(JCRB0253)は医薬基盤研究所(HSRRB)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。
3) 試験方法
96穴プレート(岩城硝子社製)に1x104 cells/wellの細胞密度でヒト癌細胞を播種し、一昼夜培養した。細胞播種した翌日、ヒト癌細胞をSNAP(200 μmol/L)で2時間前処置した後、ヒト癌細胞を以下の濃度の各種化学療法剤で処理した。
パクリタキセル,ドセタキセル及び ゲムシタビン:0.1 nmol/L から1 μmol/L。
ドキソルビシン: 1 nmol/L から10 μmol/L。
イリノテカン: 1 μmol/L and 10 μmol/L
カルボプラチン: 10 μmol/L and 100 μmol/L.
各種化学療法剤処置72時間後、癌細胞の細胞生存率を市販のキット(CellTiter-Glo(商標) luminescent cell viability assay kit)を用い、説明書に従い測定した。発光強度は、発光測定装置ARVO(Perkin Elmer社, Waltham, MA, USA)を用い測定した。実験は3回施行し、その平均値を値とした。細胞生存率は、SNAP及び化学療法剤未処置に対する相対値で示した。
4) 統計解析
結果は、独立した3回の実験の平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。化学療法剤の各濃度におけるSNAP処置群とSNAP未処置群(対照群)との比較は、対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)で行った。5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
5) 結果
各種化学療法剤により誘発されるヒト肺癌細胞株Calu-6及びヒト胃癌細胞株MKN-28の細胞生存率低下に対するSNAPの抑制作用を、図19及び20にそれぞれ示した。両ヒト細胞株において、SNAPは、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン及びカルボプラチンによる細胞生存率低下には作用を示さなかった。一方、SNAPはパクリタキセル及びドセタキセルによる細胞生存率の低下を有意に抑制した。
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した(n=3)。#: P<0.05及び##: P<0.01は、化学療法剤の各濃度において、SNAP処置群とSNAP未処置群(対照群)を比較したときの有意差を示す (Student's t-test)。
6) 結論
NO供与体は、ヒト肺癌細胞Calu-6及びヒト胃癌細胞MKN-28において、タキサン系薬剤による癌細胞生存率低下作用を選択的に阻害した。
実施例10
1) 被験物質
NO供与体であるS-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamine(SNAP)はCayman Chemical Company社(Ann Arbor, MI, USA)から購入したものを使用した。パクリタキセルはLC Laboratories社(Woburn, MA, USA)から購入し、パクリタキセルとして使用した。ドセタキセルは、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO,USA)から購入したもの、それぞれドセタキセルとして使用した。細胞生存率測定用キット(CellTiter-Glo(商標) Luminescent Cell Viability assay kit)及びカスパーゼ-3/7活性測定キット(Caspase-Glo(商標) 3/7 assay kit)は、Promega社(Madison, WI, USA)から購入したものを使用した。
2) 細胞
ヒト肺癌由来Calu-6(HTB-56)はAmerican Type Culture Collection(VA, USA)より入手した。MKN-28(JCRB0253)は医薬基盤研究所(HSRRB)より入手した。細胞は10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)が添加されたRPMI1640培地を用いて、37℃、5% CO2の条件で培養した。
3) 試験方法
96穴プレート(岩城硝子社製)に1x104 cells/wellの細胞密度でヒト癌細胞を播種し、一昼夜培養した。細胞播種した翌日、ヒト癌細胞をSNAP(200 μmol/L)で2時間前処置した後、ヒト癌細胞をパクリタキセルまたはドセタキセル(1から1000 nmol/L)で処理した。Calu-6ではタキサン処理24時間後に、MKN-28ではタキサン処理24時間後に、癌細胞の細胞生存率及びカスパーゼ-3/7活性を市販のキット(CellTiter-Glo(商標) luminescent cell viability assay kit及びCaspase-Glo(商標) 3/7 assay kit)を用い、説明書に従い測定した。発光強度は、発光測定装置ARVO(Perkin Elmer社, Waltham,, MA, USA)を用い測定した。カスパーゼ-3/7活性値は細胞生存率の値で補正した。実験は3回施行し、その平均値を値とした。カスパーゼ-3/7活性は、SNAP及びタキサン未処置に対する相対値で示した。
4) 統計解析
結果は、独立した3回の実験の平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した。タキサンの各濃度におけるSNAP処置群とSNAP未処置群(対照群)との比較は、対応のない2群間の差の検定 (Student's t-test)で行った。5%未満を有意差ありと判定した。データ処理にはGraphpad Prism version 5.03を用いた。
5) 結果
パクリタキセル及びドセタキセルにより誘発されるヒト肺癌細胞株Calu-6におけるカスパーゼ-3/7活性に対するSNAPの抑制作用を、図21のA)及びB)に、パクリタキセル及びドセタキセルにより誘発されるヒト胃癌細胞株MKN-28におけるカスパーゼ-3/7活性に対するSNAPの抑制作用を、図21のC)及びD)にそれぞれ示した。両ヒト細胞株において、パクリタキセル及びドセタキセルは用量依存的にカスパーゼ-3/7を活性化した。SNAPは、タキサンで誘発されるカスパーゼ-3/7の活性化を抑制し、SNAPによるその抑制作用は、10 nmol/L以上の濃度のタキサン処置の際、有意であった。
結果は平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で示した(n=3)。*: P<0.05及び**: P<0.01は、タキサンの各濃度において、SNAP処置群とSNAP未処置群(対照群)を比較したときの有意差を示す (Student's t-test)。
6) 結論
NO供与体は、ヒト肺癌細胞Calu-6及びヒト胃癌細胞MKN-28において、タキサン系薬剤により誘発されるカスパーゼ-3/7の活性化を有意に抑制した。
本発明のタキサン系抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、NO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物は、タキサン系抗腫瘍剤との併用により高い癌治療効果が得られることから、殊に、既存のタキサン系抗腫瘍剤に適応されることが知られる各種癌の治療に有用である。適応される癌としては、タキサン系抗腫瘍剤が用いられている固形癌及びリンパ腫であり、ある態様としては、乳癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、胃(胃腺)癌、非小細胞肺癌、頭頚部扁平上皮癌、食道癌、膀胱癌、メラノーマ、大腸癌、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫等が挙げられる。

Claims (11)

  1. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、NO産生抑制剤を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物。
  2. パクリタキセル又はドセタキセルと組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1記載の癌治療用医薬組成物。
  3. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、請求項1及び2記載の癌治療用医薬組成物。
  4. NO産生抑制剤が、iNOS阻害剤である、請求項1乃至3記載の癌治療用医薬組成物。
  5. iNOS阻害剤が、KD-7040又はGW-274150である、請求項1乃至4記載の癌治療用医薬組成物。
  6. タキサン系抗腫瘍剤が用いられている癌の治療用である請求項1乃至5記載の癌治療用医薬組成物。
  7. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする癌治療用医薬組成物を製造するための、NO産生抑制剤の使用。
  8. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤と組み合わせて併用投与されるように用いられることを特徴とする、癌治療のための、NO産生抑制剤。
  9. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量、並びに、NO産生抑制剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量を組み合わせて、対象に投与することを特徴とする癌の治療方法。
  10. タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量、並びに、NO産生抑制剤の併用治療に用いる場合の治療有効用量を、同時に、別々に、連続して、或いは間隔をあけて、対象に投与することを特徴とする癌の治療方法。
  11. NO産生抑制剤を有効成分として含有する、タキサン系抗腫瘍剤から選択される1以上の抗腫瘍剤の抗腫瘍作用増強剤。
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