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JP2015178689A - 強化繊維束、その製造方法及びそれを用いた複合材料 - Google Patents

強化繊維束、その製造方法及びそれを用いた複合材料 Download PDF

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JP2015178689A JP2014056549A JP2014056549A JP2015178689A JP 2015178689 A JP2015178689 A JP 2015178689A JP 2014056549 A JP2014056549 A JP 2014056549A JP 2014056549 A JP2014056549 A JP 2014056549A JP 2015178689 A JP2015178689 A JP 2015178689A
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櫻井 博志
Hiroshi Sakurai
博志 櫻井
洋 木村
Hiroshi Kimura
洋 木村
内藤 猛
Takeshi Naito
猛 内藤
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Abstract

【課題】マトリックス樹脂と良好な接着力を有し、生産性の良好な強化繊維束、繊維束の製造方法及びそれを用いた複合材料を提供すること。【解決手段】繊維表面に共重合体が付着している強化繊維からなる強化繊維束であって、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなることを特徴とする強化繊維束。さらには、ポリアミド部位が共重合体の主たる成分であることや、ポリオレフィン部位が共重合体のグラフト鎖であること、酸無水物構造がカルボン酸無水物であること、共重合体がオルトジクロロベンゼンに不溶であることが好ましい。また、強化繊維が炭素繊維であることや、強化繊維束が扁平形状であることが好ましい。さらにこれらの強化繊維束を用いてなるランダムマットや、それを用いてなる成形体を包含する。また強化繊維束の製造方法は、強化繊維から構成される繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液を付与し熱処理する強化繊維束の製造方法であって、親水性ポリアミド樹脂がN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸とを有する親水性ビニルポリマーとからなり、熱処理により酸無水物構造を生成させることを特徴とする方法である。【選択図】なし

Description

本発明は強化繊維束、繊維束の製造方法およびそれを用いた複合材料に関する。さらに詳しくは繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料に最適な強化繊維束およびその製造方法に関する。
繊維によってマトリックス樹脂が強化された複合材料は、軽量でありながら強度、剛性、寸法安定性等に優れることから、事務機器用途、自動車用途、コンピュータ用途(ICトレイ、ノートパソコンの筐体(ハウジング)など)等の一般産業分野に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。しかしこの複合材料に用いられる強化用の繊維は、マトリックス樹脂と化学組成や分子構造が異なるために、親和性や接着性の向上が大きな課題となっている。
特にマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材料は、コンパウンドペレットの射出成型、射出圧縮成型、押出成型、ランダムマットを使用したスタンピング成型などの様々な方法で成型されるが、これらの成型法では、強化用の繊維が繊維束の形態で使用される場合が多い。そしてこのような繊維束の形態で使用される場合には、上記の繊維とマトリックス樹脂との親和性、接着性などの界面の問題に加えて、繊維束の集束状態もまた、複合体の物性に大きく影響を与えることが知られている。
そこでこのような問題を解決するために、すなわち繊維とマトリックス樹脂との親和性や、マトリックス樹脂中での繊維の集束状態を調整する目的で、さまざまなサイジング剤が従来から検討されている。例えば、エポキシエマルジョン系サイジング剤を繊維に付着させることで、各繊維の集束性を向上させ、熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料の強度を改善する方法が、特許文献1で開示されている。しかし、複合体のマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、繊維束の集束性こそ向上するものの、マトリックス樹脂とサイジング剤として用いたエポキシ樹脂間の接着性に難があり、十分に複合体の物性を向上させることができなかった。
他方、繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させる目的で、N−メトキシメチル化ポリアミド樹脂を親水性のアクリル酸等で変性した親水性ポリアミド樹脂(例えば、アクリル酸変性N−メトキシメチル化ナイロン6)を用いる方法が知られている。しかしこの方法では、親水性ポリアミド樹脂は吸湿性が高く、保存安定に劣るという問題があった。またマトリックス樹脂の含浸過程でコンポジットにボイドが発生するといった問題が生じやすく、その物性も不十分であった。
そこでこの問題を解決するために、特許文献2では親水性ポリアミド樹脂を付着した炭素繊維を、さらに疎水性樹脂でコートする方法が開示されている。しかしこの方法では、親水性ポリアミド樹脂が熱反応で水分を発生させることは従来技術と同様であり、最終的に得られるコンポジットの物性を十分に向上させることはできなかった。また、例えばナイロン6のように表面張力の大きいマトリックスを用いた場合には、繊維の表面にコートした疎水性樹脂の存在により、含浸に長時間を要するという問題があった。
特開平4−170435号公報 特開平2−84577号公報
本発明は、マトリックス樹脂と良好な接着力を有し、生産性の良好な強化繊維束、繊維束の製造方法及びそれを用いた複合材料を提供することにある。
本発明の強化繊維束は、繊維表面に共重合体が付着している強化繊維からなる強化繊維束であって、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなることを特徴とする。
さらには、ポリアミド部位が共重合体の主たる成分であることや、ポリオレフィン部位が共重合体のグラフト鎖であること、酸無水物構造がカルボン酸無水物であること、共重合体がオルトジクロロベンゼンに不溶であること、赤外線分光法で評価した共重合体の1720〜1730cm−1におけるピークの透過率(T)と2500〜2550cm−1におけるピークの透過率(T)の比(T/T)が0.35〜0.55であることが好ましい。また、強化繊維が炭素繊維であることや、強化繊維束が扁平形状であることが好ましい。
さらに本発明は、これらの本発明の強化繊維束を用いてなるランダムマットや、さらにそれを用いてなる成形体を包含する。
また別の本発明の強化繊維束の製造方法は、強化繊維からから構成される繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液を付与し熱処理する強化繊維束の製造方法であって、親水性ポリアミド樹脂がN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸とを有する親水性ビニルポリマーとからなり、熱処理により酸無水物構造を生成させることを特徴とする。さらには、熱処理の工程が気相中で行われることや、処理液を付与する工程に引き続き熱処理を行うことが好ましい。
またもう一つの本発明の複合材料は、強化繊維束とマトリックス樹脂とからなる複合材料であって、該強化繊維束を構成する強化繊維の繊維表面に共重合体が付着しており、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる共重合体であることを特徴とする。さらにマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明によれば、マトリックス樹脂と良好な接着力を有し、生産性の良好な強化繊維束、及びそれを用いた複合材料が提供される。
本発明の強化繊維束は、繊維表面に共重合体が付着している強化繊維からなる強化繊維束である。そしてこの繊維表面に付着している共重合体は、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる強化繊維束である。
ここで本発明の強化繊維束を構成する繊維としては、マトリックス樹脂を補強することができる繊維であれば特に制限はない。具体的にそのような強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭化ケイ素繊維などの各種無機繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維を、好ましく挙げることができる。中でもマトリックス樹脂用に適した本発明の強化繊維束を構成する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましく、特に比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維であることが好ましい。
本発明では、この強化繊維は繊維束として使用されるものであるが、繊維束を構成するモノフィラメント(単糸)の構成本数としては10本以上であることが好ましく、さらには100本以上、特には500本以上であることが好ましい。また上限としては10万本以下であることが好ましく、1万本以下、特には5000本以下であることが好ましい。1000〜2000本の範囲が特に好ましい。もっとも本発明で用いられる強化繊維は必ずしもすべてが繊維束を構成する必要は無く、一部になら繊維束から離れて単繊維の状態で存在していても良い。なおこの繊維束は、一旦太い繊維束を作成してから分繊したものであることもこのましい。このような場合、特に強化繊維が炭素繊維である場合には、3000〜80000本であることが好ましく、さらには6000本〜50000本の範囲であることが好ましい。繊維束を構成するモノフィラメントの本数が少なすぎると、繊維束の柔軟性が増してハンドリング性こそ向上するものの、強化繊維の生産性が低下する傾向にある。一方、本数が多すぎる場合は繊維束の生産が困難になることに加え、表面処理剤が十分に処理されにくい傾向にある。例えば強化繊維が炭素繊維である場合には、50000本を超えると炭素繊維前駆体繊維の耐炎化または不融化処理を十分に完了させることが困難になり、最終的に得られる炭素繊維の機械物性を低下させる傾向にある。
強化繊維束を構成する各強化繊維(単繊維)の平均直径としては、3〜20μmの範囲が好ましい。より好ましい平均直径の範囲としては4〜15μm、さらには5〜10μmである。強化繊維の平均直径が小さすぎる場合には同じ補強効果を得るためには繊維の総本数を増加させる必要がある。その場合、特に短い繊維を用いてマトリックス樹脂を補強する場合、結果的に繊維成分が嵩高くなって複合材料中の繊維の体積分率を高めることができず、機械強度の優れた複合材料を得ることが困難になる場合がある。特に炭素繊維のような無機繊維の場合にはこの傾向は顕著である。一方、強化繊維の平均直径が大きすぎると、十分な繊維強度を確保することが困難な傾向にある。たとえば強化繊維が炭素繊維の場合には、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化または不融化処理を十分に完了させることが出来ず、最終的に得られる炭素繊維の機械物性が低下しやすい傾向にある。
また本発明においては、特にその強化繊維が炭素繊維である場合には、その強化繊維表面の全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合が20%以上であることが好ましい。このようにカルボニル構造の比率を高めることにより、強化繊維とその表面の共重合体との間で、強固な界面接着力を持たせることが可能となる。強化繊維表面のカルボニル構造は、共重合体中のポリアミド部位に存在する水素原子と、効率よく水素結合を形成するためである。逆に全表面官能基中のカルボニル構造の割合が低くなると、強化繊維束表面の表面張力も低くなり、繊維表面に付着する共重合体ばかりか、複合体を得る際のマトリックス樹脂の濡れ性も低下し、接着性が低下する傾向にある。もっとも、全表面官能基に占めるカルボニル構造の比率が高すぎても強化繊維自体の物性が低下する傾向にある。強化繊維表面の欠陥が多くなり、機械強度が低下するためである。強化繊維の全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合としては90%以下であることが好ましく、より好ましい範囲としては、30〜70%の範囲であることが好ましい。
強化繊維表面の全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合は、例えば強化繊維として炭素繊維を用いる場合には電解表面処理の程度を変えることで変更可能である。具体的には、電解溶液の濃度、電気量などを調整する事で、全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合を変えることが出来る。なお、電解表面処理で使用する電解溶液は酸、有機または無機塩基、有機または無機塩類を使用するのが好ましい。
また本発明の強化繊維束の全体形状としては、扁平形状であることが好ましい。強化繊維束が扁平であることにより、繊維表面に塗布するポリアミド部位を有する共重合体や、その後の複合体作製時に用いるマトリックス樹脂を、より拡散しやすくするためである。特に最終的に複合体を製造する際にこのことは顕著であり、扁平繊維束を用いた場合には、強化繊維束の中にマトリックス樹脂が含浸する時間が強化繊維束の厚みの2乗に比例する。このため、短時間で含浸を完了させるためには、強化繊維束を拡幅し、強化繊維束の厚みを薄くして扁平化することが好ましい。各種の剤の含浸時間を効率的に短縮できるのである。より具体的には強化繊維束の厚みとしては200μm以下であることが好ましい。ただし強化繊維束の厚みが薄すぎると、特に短繊維からなる長さの短い強化繊維束を用いる場合に、嵩が不必要に高くなり、ハンドリング性が低下する傾向にある。その観点からは強化繊維束の厚みとしては10μm以上であることが好ましい。さらには強化繊維束の厚みとしては30〜150μmの範囲が好ましく、特には50〜120μmの範囲がより好ましい。
このような強化繊維束の幅としては5mm以上であることが好ましく、10〜100mmの範囲であることが特に好ましい。繊維束の扁平率(繊維束の幅/厚み)としては10倍以上、特には50〜4500倍の範囲にあることが好ましい。また強化繊維束の長さとしては連続繊維の状態で用いても良いが、短繊維形状で用いる場合には1〜100mmの範囲であることが好ましい。さらには5〜50mmの範囲であることが好ましい。このような高い扁平率の、特に短い繊維束とすることにより、後の工程にて繊維束を容易に開繊しやすくなる。そして本発明の強化繊維束は、複合材料の中でも特に物性の優れたランダムマット形状に加工することに適した炭素繊維束となる。
本発明の強化繊維束は、上記のような強化繊維束の繊維表面に共重合体が付着している強化繊維束である。さらにはこの共重合体が、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなることを特徴とする。なおここで共重合体は、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位以外の成分を少量ならば含んでいても構わない。本発明では、このような共重合体が強化繊維束表面に付着することにより、集束性と接着性に優れた強化繊維束を得ることが可能となった。
また本発明の強化繊維束の表面に付着する、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位とアルコキシメチル基を有するポリアミド部位との共重合体としては、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの共重合体を用いることも可能である。中でも、この共重合体を強化繊維のサイジング剤として使用するためには、ブロック又はグラフト共重合体であることが好ましい。その場合、特に良好な溶剤分散性が確保できる。この観点からは、特には共重合体がグラフト重合体であることが好ましい。
そして本発明で用いられる共重合体を構成する酸無水物構造を有するポリオレフィン部位としては、オキソ酸を有する親水性ビニルモノマーに由来するものであることが好ましい。ここでポリオレフィン部位は親水性ビニルモノマーを重合させたものであり、親水性ビニルモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イタコン酸、またはアクリル酸と上記の親水性ビニルモノマーの混合物、グリコール類と親水性ビニルモノマーの混合物などを例示できる。特には変性のし易さから、アクリル酸単体またはアクリル酸と他親水性ビニルモノマーの混合物を使用することが好ましい。
そしてポリオレフィン部位に存在する酸無水物構造は、ヒドロキシル基とオキソ基を有するオキソ酸に由来し、脱水されて無水物となった構造であることが好ましい。中でもオキソ酸としては反応性の高いカルボン酸であることが好ましく、本発明の共重合体中の酸無水物構造としては、カルボン酸無水物構造であることが好ましい。そしてこのポリオレフィン部位は、共重合体の側鎖に結合していることが好ましい。側鎖は共重合体の表面に位置するために、酸無水物の接着性への寄与が大きくなるからである。
また本発明で用いられる共重合体を構成するアルコキシメチル基を有するポリアミド部位としては、アルコキシメチル基で変性されたポリアミド樹脂に由来するものであることが好ましい。そしてこのアルコキシメチル基で変性されたポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂のアミド結合の一部をアルコキシメチル基で変性したN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂であることが好ましい。
さらに本発明の共重合体を構成するポリアミド部位は、共重合体の主成分であることが好ましく、さらには共重合体高分子の主鎖となっていることが好ましい。そのような主成分となるポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンや、これらのランダム共重合体、オキシアルキレン基を有するジアミンとジカルボン酸の塩に、ラクタムを共重合させて得られるポリアミド系共重合体樹脂などを挙げることができる。
また本発明の共重合体を構成するポリアミド部位は、アルコキシメチル基を有しているものである。中でもこのようなポリアミド部位としては、N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂に由来するものであることが好ましい。このようなN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂は公知の方法で製造することができ、アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基やエトキシメチル基、ブトキシメチル基などを例示することができる。N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂の製造法としては、具体的には例えばアミド樹脂にホルムアルデヒドとメタノールを反応させて、N−メトキシメチル化ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
なお、ポリアミド樹脂のアルコキシメチル化の変性率が高すぎると、最終的に得られる複合体において、強化繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性が低下する傾向にある。逆に変性率が低すぎてもポリアミド樹脂の溶剤への溶解性が低下し、工程安定性が低下する。その場合、共重合体の中間体である親水性ポリアミド樹脂を得ることが困難となり、安定した共重合体を得にくいのである。したがってアルコキシメチル基の変性率としては、5〜60%が好ましく、10〜50%がより好ましく、15〜35%が最も好ましい。なおここで、アルコキシメチル基による変性率とは、ポリアミド樹脂のアミド結合の水素原子がアルコキシメチル基に置換された比率をいう。
本発明の繊維束の表面に付着する共重合体は、上記のアルコキシメチル基を有するポリアミド部位と、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位とを有するものである。このような酸無水物構造を有するポリオレフィン部位が構成成分中に存在することにより、最終的にこの本発明の繊維束を用いて複合体に加工する際にも、複合材料作製時の加熱時の脱水反応が大幅に減少し、脱水によって生じるボイドを有効に減少させ、強い機械特性の複合体を得ることが可能となった。
また、通常ポリオレフィン部位は、最終的に複合材料とする際のマトリックス樹脂との相溶性が低く、マトリックス樹脂との濡れ性を阻害する傾向にある。しかし、本発明で用いる共重合体は酸無水物構造を有するために、共重合体の表面エネルギーを顕著に増加させる。その結果、マトリックス樹脂の強化繊維束表面の濡れ性が向上する。特にナイロン6のような大きな表面張力を持つマトリックス樹脂を用いた際に、その効果は顕著である。
なお、本発明で用いる共重合体は、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位を有するものなのであるが、一部であれば、カルボン酸無水物構造等の酸無水物構造に加えて、脱水化されていないカルボン酸が存在していることが好ましい。カルボン酸の存在により最終的に得られるコンポジット物性が高くなる傾向にある。この理由は定かではないが、おそらくカルボン酸部位が強化繊維表面の官能基と相互作用を起こすためであると考えられる。特に強化繊維が炭素繊維であった場合には、その繊維表面のカルボニル基との間で水素結合を形成し、接着力を高めていると考えられる。
本発明においては、赤外線分光法で評価した共重合体の1720〜1730cm−1におけるピークの透過率(T)と、2500〜2550cm−1におけるピークの透過率(T)の比(T/T)が0.30〜0.55であることが好ましい。Tは酸無水物構造のC=O伸縮振動付近の透過率に由来し、Tは親水性ポリアミド樹脂の2量化したカルボン酸に起因する透過率を含んでいる。このため、両者の比は、どの程度カルボン酸から脱水反応が進行したかを示す指標となる。T/Tが0.55よりも大きいと脱水反応が不十分なため、複合材料作製時の加熱時の脱水によってボイドを生じやすいだけでなく、マトリックス樹脂との界面接着力が低下する傾向にある。一方、T/Tが0.30未満であると脱水化されていないカルボン酸量が大幅に低下するため、この場合においてもコンポジット物性が低くなる傾向にある。T/Tの好ましい範囲としては0.35〜0.50であり、0.40〜0.48の範囲が最も好ましい。
さらに本発明で用いられる共重合体においては、ポリオレフィン部位に加えて他の部分に酸無水物構造を有することも好ましい。例えば、親水性ポリアミド樹脂の熱反応によって共重合体を合成する場合、分子の絡み合いで偶発的に隣接した分子鎖間の脱水反応で酸無水物構造を形成することができる。具体的には、例えば親水性ポリアミド樹脂の主鎖がN−アルコキシメチル化ポリアミドであり、グラフト鎖が親水性ビニルモノマー由来のオレフィン骨格である場合、グラフト鎖内の脱水反応に加えて、グラフト鎖間の脱水反応で酸無水物構造を形成することができる。
このようにポリオレフィン部位に加えて他の部分にも酸無水物構造を有することによって、本発明で用いられる共重合体の表面自由エネルギーはさらに高くなり、結果としてよりマトリックス樹脂に濡れやすい強化繊維束を得ることが可能となる。
本発明で用いられるこの共重合体は、オルトクロロベンゼンに不溶であることが好ましい。特に高温、具体的には130℃の高温のオルトクロロベンゼンに不溶であることが好ましい。例えば共重合体のグラフト鎖間で脱水反応を進行させることにより、そのようなオルトクロロベンゼンに不溶な共重合体とすることが可能となる。このような共重合体は酸無水物構造の存在比が大きく、製造工程途中での強化繊維束への吸着水の付着を大きく減少させることが可能になる。加えて、複合材料作製時の熱処理においても、共重合体の脱水による水の生成を防止でき、ボイドが発生しない複合材料を製造することが可能になる。
さらに本発明で用いられる共重合体は、酸無水物構造の一部が環状ケトン構造であることが好ましい。環状ケトン構造を有することにより、繊維表面に付着した共重合体の表面自由エネルギーがさらに増加し、複合材料とする際のマトリックス樹脂をより濡らしやすくすることが可能となる。このような環状ケトン構造は、酸無水物構造を有する共重合体が付着した繊維束を、さらに高温で熱処理することにより得ることが可能である。
なお、上述の酸無水物構造や環状ケトン構造を形成する為の熱処理雰囲気としては特に制限は無いが、空気雰囲気中で実施することが、最も経済的である。
また本発明の強化繊維束では、このような共重合体が繊維束内部の各モノフィラメント表面に付着していることが好ましい。このような付着の程度は用いる強化繊維束を構成する各単繊維の直径と、付着させるエマルジョンの粒子径を調整することにより達成することが可能である。
例えば、本発明の強化繊維束を構成する各単繊維は、一般には上述のように直径数μmの繊維の集合体であるが、処理時の親水性ポリアミド粒子の0.2μm未満の粒子量を調整することにより、繊維束内部への微粒子の侵入率を適度に調整することが可能である。さらには、0.2μm未満の微粒子が30%以上存在する事により、0.2μm以上の大きな粒子も繊維束内部にまで拡散浸透することが可能となる。本発明では親水性ポリアミドが、強化繊維束を構成する各モノフィラメントの繊維−繊維間の隙間に、均一に拡散することにより、最終的には複合材料において、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性、親和性を高めることができる。
また、処理時の親水性ポリアミド粒子の重量平均分子量(Mw)としては、50000〜400000の範囲であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0〜7.0の範囲であることが好ましい。
さらに本発明の強化繊維束の表面には、共重合体の他に界面活性剤やビニルエステルなどの添加剤が付着していても良い。添加剤の付着量としては、共重合体100重量部に対して0.01〜50重量部であることが好ましい。界面活性剤やビニルエステルが強化繊維の表面に付着することで、強化繊維束の柔軟性を増す。このため、ワインダーでの巻き取りを可能にするだけでなく、強化繊維束の開繊性を高める効果がある。
本発明の強化繊維束の柔軟性は、例えばHandle−O−Meter(大栄科学精機製作所製のHOM−200)を用い、スリット溝が設けられた試験台に強化繊維束をのせ、ブレードにて溝の一定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)、すなわち風合い度を測定することで評価出来る。本発明の強化繊維束の風合い度としては30〜180gの範囲であることが好ましい。強化繊維束の風合い度のより好ましい範囲は35〜150gである。強化繊維束の風合い度が高すぎると、強化繊維束のワインダーでの巻き取り性や強化繊維束の開繊性が低下する傾向にある。一方、小さすぎると強化繊維束の収束性が低下する傾向にある。このような風合い度を確保するためには、特に炭素繊維などの剛直な繊維からなる繊維束を用いる場合には、繊維束が扁平形状であることが好ましい。このような強化繊維束の風合い度は、強化繊維束の総フィラメント数にも関係するため、強化繊維束の風合い度としては、総フィラメント数が3000〜50000本の範囲で風合い度が30〜180gの範囲であることが好ましい。強化繊維束の風合い度は、総フィラメント数以外に、繊維束の扁平度や界面活性剤やビニルエステルの添加量などにより調整することが可能である。
そしてこのような本発明の強化繊維束は、もう一つの本発明である強化繊維束の製造方法にて得ることができる。すなわち、強化繊維からから構成される繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液を付与し加熱する強化繊維束の製造方法であって、親水性ポリアミド樹脂がN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸を有する親水性ビニルポリマーとからなり、熱処理を行う製造方法である。この時の熱処理温度としては130℃以上であることが好ましい。さらには熱処理温度が150℃〜250℃の高温熱処理であることが好ましい。そして本発明の製造方法では高温の付着後の熱処理により酸無水物構造を生成させることが好ましい。
このような本発明で用いられる親水性ポリアミド樹脂は、N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂を、オキソ酸を有する親水性ビニルモノマーによって変性させて親水性のポリアミド樹脂とすることにより得ることが可能である。そして、この親水性のポリアミド樹脂を含む処理液を繊維束表面に付着させた後に、親水性ビニルモノマー由来のオキソ酸部位、特に好ましくはカルボン酸部位を、高温の熱処理により脱水反応させて、繊維束の表面に酸無水物構造を形成させることが好ましい(J.Polym.Sci PartA−1,6,1243(1968))。なおこの熱処理工程は、処理液を繊維表面に付与した直後に必ずしも行う必要は無く、複合材料とするために強化繊維束を不織布形状等に加工してから行うことや、マトリックス樹脂とともに加熱処理することも可能である。もっとも工程通過性の観点からは付与直後に熱処理することが好ましい。また、接着性の観点からは、複合材料用のマトリックス樹脂が繊維表面に付着する前に熱処理が完了していることが好ましい。
本発明の強化繊維束の製造方法に用いる繊維としては、強化繊維束として先に述べた繊維を用いることができる。すなわちマトリックス樹脂を補強することができる繊維であれば特に制限はないが、特には炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維等の高強力繊維であることが好ましい。中でも比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維であることが好ましい。
さらに本発明の強化繊維束の製造方法においては、特にその強化繊維が炭素繊維である場合、強化繊維束の表面張力が35mN/m以上であることが好ましい。このような表面張力の繊維束は、例えば電界処理などの表面処理を行うことにより、得ることが可能である。このように表面張力を調整することにより、繊維束の内部にまでサイジング剤として用いる親水性ポリアミド樹脂や、最終的に複合材料とする際のマトリックス樹脂がより拡散しやすくなるためである。強化繊維束の表面張力が小さすぎると濡れ性が低下し、接着性が阻害される傾向にある。逆に、強化繊維束の表面張力が大きすぎても、強化繊維表面の欠陥が多くなるため機械強度が低下する傾向にある。強化繊維束の表面張力としては、35〜75mN/mの範囲が好ましく、より好ましい範囲は37〜60mN/mである。
さらに先に述べたように本発明においては、特にその強化繊維が炭素繊維である場合には、その強化繊維表面の全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合が20%以上であることが好ましい。強化繊維の全表面官能基に占めるカルボニル構造の割合としては90%以下であることが好ましく、より好ましい範囲としては、30〜70%の範囲であることが好ましい。
また本発明の強化繊維束の全体形状としては、含浸しやすいように扁平形状であることが好ましい。具体的には強化繊維束の厚みとしては10μm以上200μm以下であることが好ましい。さらには強化繊維束の厚みとしては30〜150μmの範囲が好ましく、特には50〜120μmの範囲がより好ましい。このような強化繊維束の幅としては5mm以上であることが好ましく、10〜100mmの範囲であることが特に好ましい。繊維束の扁平率(繊維束の幅/厚み)としては10倍以上、特には50〜4500倍の範囲にあることが好ましい。
そして本発明の強化繊維束の製造方法は、上記のような強化繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液をサイジング剤として付着させ、熱処理する強化繊維束の製造方法である。ここで、親水性ポリアミド樹脂は上述したようにN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸を有する親水性ビニルポリマーとからなるものである。N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂としては、特にはN−メトキシメチル化ポリアミド樹脂が好ましい。オキソ酸を有する親水性ビニルポリマーとしては、オキソ酸を有する親水性ビニルモノマーに由来するものであることが好ましい。特にはカルボン酸を有するアクリル樹脂等であることが好ましい。
さらに本発明の製造方法では、熱処理することによって、オキソ酸を脱水反応させて酸無水物構造を形成している。熱処理温度としては、130℃以上、さらには150℃〜250℃の高温熱処理であることが好ましい。さらには処理液としては親水性ポリアミド樹脂をエマルジョン化したサイジング剤であることが好ましい。親水性ビニルモノマー由来のオキソ酸部位での脱水反応は、一般的には150℃から進行するとされていた(J.Polym.Sci PartA−1,6,1243(1968))。しかしながら、本発明のように強化繊維束の表面に付着した親水性ポリアミド樹脂では、文献よりも低温である130℃以上の温度でも酸無水物構造を形成するのである。この理由は定かではないが、強化繊維表面に薄膜状に被覆した親水性ポリアミド樹脂は、その大半が空気界面に位置するため、樹脂バルクよりも分子運動性が高くなったことが原因であると推測される。もっともさらに低温の場合、親水性ビニルモノマー由来のオキソ酸部位での脱水反応が進行し難い傾向にある。なお繊維束の表面に酸無水物を形成していない親水性ポリアミド樹脂が付着したままの状態において、マトリックス樹脂と複合材料を製造した場合であっても、その後の熱処理にて酸無水物が発生すれば接着性は向上する。しかしコンポジットの作製過程では若干ながら脱水反応が生じ、コンポジットにボイドを発生させると同時にマトリックスを加水分解させてしまう場合があり、物性の低下を引き起こす傾向がある。本発明の強化繊維束の製造方法では、このように強化繊維束を熱処理することにより、脱水反応を促進させ、コンポジット作製過程でマトリックスの劣化を抑制し、ボイドを形成させないのである。
この本発明の製造方法では、親水性ビニルモノマーで変性した親水性ポリアミド樹脂を熱反応させて、酸無水物構造を有する樹脂に構造を変化させている。そして酸無水物構造とすることによって、吸湿しやすい親水性ビニルモノマー由来の骨格部分の悪影響や、複合材料作製時の加熱により発生する親水性ポリアミド樹脂の脱水反応に伴う悪影響をより少なくすることが可能となった。脱水反応時には水分が発生しやすい傾向にあるが、例えば、複合材料作成時ではなく成形の前までに予め脱水反応を行うことにより、従来とは異なり複合材料におけるボイドの形成や、複合材料の機械特性を低下させるという問題をより高いレベルで解決するに至った。
また本発明では、熱処理により繊維表面に酸無水物構造が形成されており、処理後の強化繊維束の表面エネルギーが顕著に増加することとなった。通常の親水性ビニルモノマー由来の骨格部分は、酸無水物構造の無い単なるポリオレフィン部位であるために、マトリックス樹脂と相溶性が低く、繊維束とマトリックス樹脂との濡れ性を阻害する傾向にさえあった。しかし本発明は酸無水物構造を有するために、たとえナイロン6のような大きな表面張力を持つマトリックス樹脂を用いた際にも、強化繊維束の表面を良好に濡らすことが可能になった。さらに、ここで用いられる酸無水物は好ましくはカルボニル骨格を有するものであるが、ナイロン6等のアミド結合部位と水素結合を形成し、より強固な界面接着力を発現するものとなった。
さらに本発明においては、親水性ビニルモノマーのオキソ酸を脱水反応し酸無水物構造を形成する際、一部のオキソ酸、特に好ましくはカルボン酸を反応させずに残すことにより、最終的に得られるコンポジット物性を高くすることができる。この理由は定かではないが、おそらくオキソ酸やカルボン酸部位が強化繊維表面の官能基と相互作用するためであると考えられる。強化繊維表面の官能基としては、例えば具体的には炭素繊維表面のカルボニル基などが考えられ、水素結合を形成して接着力を高めているのであると考えられる。
本発明の製造方法では、繊維束表面に付着した親水性ポリアミド樹脂を熱処理するのであるが、この時、隣接した分子鎖間の脱水反応で酸無水物構造を形成することが好ましい。このような反応が進行する事で、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位とN−アルコキシメチル化ポリアミド部位からなる共重合体の表面自由エネルギーは高くなり、結果としてよりマトリックス樹脂に濡れやすくなる傾向にある。グラフト鎖間で脱水反応が進行している事は、共重合体が130℃のオルトジクロロベンゼンに不溶になることで確認することが出来る。
また本発明のこの製造方法では、親水性ポリアミドが付着した強化繊維束を熱処理し脱水反応を進行させているため、親水性ポリアミドの分子構造が変化し、強化繊維束への吸着水を著しく低下させることが出来た。また、最終的に複合材料作製時には、本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂の全体が熱処理されるが、繊維束表面に存在する親水性ポリアミド樹脂の反応を伴う脱水が発生しない。そのため脱水反応に伴う水分の発生に起因するボイド欠点も、加水分解によるマトリックス樹脂の劣化もまた、複合材料中に発生しないこととなる。また、繊維表面に存在する酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる共重合体は、熱処理前と比べて有意に表面エネルギーが高く、ナイロン6のような高い表面エネルギーをもつマトリックス樹脂を用いた際でも、繊維束表面に濡れ広がらせることを可能とし、複合材料の繊維とマトリックス樹脂界面の接着強度を高めることができる。
本発明の強化繊維束の製造方法では、親水性ポリアミド樹脂を付着した後の熱処理において、酸無水物構造を生成させることが必要である。そのため熱処理としては高温処理が必要である。処理温度としては130℃以上で熱処理する事が好ましく、さらには150〜250℃、より好ましくは170〜230℃の条件で熱処理することが好ましい。熱処理時間としては熱処理温度にも依存するが10秒以上であることが好ましく、さらに好ましくは30秒以上、最も好ましくは40秒以上の熱処理を行うことである。なお、オキソ酸の反応を進行させるためには熱処理温度は高く、熱処理時間は長いほど好ましいものの、生産性等の観点から上限は600秒以下であることが好ましい。本発明の製造方法では、このような処理を施す事により、吸水しにくく、かつ後の製造工程の加熱処理時にも、水分の発生しない強化繊維束を得ることが出来る。
また、本発明の製造方法にて得られた強化繊維束は、250〜300℃でさらに熱処理して酸無水物構造の一部を環状ケトン構造に変化させることも好ましい。このようなさらに高温の熱処理により、強化繊維束表面に存在する樹脂の表面自由エネルギーが増加し、複合材料用のマトリックス樹脂によって濡れやすくなる効果がある。強化繊維束を250〜300℃の高温で熱処理する時間としては、5秒以上であることが好ましく、さらには10秒以上、最も好ましくは20秒以上である。なお、反応を進行させるために熱処理温度は長いほど好ましいが、生産性の観点から上限は600秒以下が好ましい。
なお、本発明の製造方法における酸無水物構造や環状ケトン構造を形成する際の熱処理雰囲気としては、特に制約は無く、複合材料を製造する際のマトリックス樹脂中にて行うことも可能であるが、好ましくは処理液を付与後の熱処理の工程が、気相中で行われることが好ましい。気相中とは、空気や窒素などの気体雰囲気中や、真空中で行われることをいう。特には空気中で熱処理することが好ましい。また、例えば溶融したマトリックス樹脂などに繊維束が包囲されていない状態で熱処理を行っても良く、繊維束単独で熱処理する場合ばかりではなく、繊維束とマトリックス樹脂粒子からなるランダムマットの状態で、マトリックス樹脂が溶融して繊維束を包囲する前の段階にて、実質的には気相中で熱処理することも好ましい態様である。
そしてもっとも好ましくは通常の空気中の雰囲気下で実施することが経済的である。また設定温度を上記の環状ケトン構造に変化させる高温に設定し、工程途中で酸無水物を生成させる温度域を通過させる手法を採用することも可能である。
さて本発明の強化繊維束の製造方法では上記のように熱処理が重要なのであるが、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液としては、エマルジョンであることが好ましい。より具体的には、本発明の強化繊維束の製造方法では、親水性ポリアミド樹脂のエマルジョンに強化繊維束を浸漬して、その後乾燥熱処理することが好ましい。
この時、エマルジョン中の親水性ポリアミド樹脂の粒子径はレーザー回折散乱式粒度分布で評価した累積90%粒子径(D90)が1.5μm未満であることが必須である。このD90の値としては1.0μm未満であること、さらにはD90が0.2μm未満であることが好ましい。
そしてもっと好ましくは累積90%粒子径(D90)が0.005〜0.15μmの範囲にあることであり、特には0.01〜0.10μmの範囲が好ましい。ちなみにレーザー回折散乱式粒度分布では、被測定粒子と同じ回析・散乱光のパターンを示す球の直径に換算して粒度を表しており、D90が1.5μm未満とは、言い換えると直径1.5μm以上の粒子が10%以下しか含有されていないことを意味している。
また観点を変えると、粒子径0.2μm未満の微粒子の存在比が30%以上であることが好ましい。さらには、粒子径0.2μm未満の微粒子の存在比が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。特には90%以上であることが好ましい。本発明の強化繊維束を構成する各単繊維は、一般には上述のように直径数μmの繊維の集合体であるが、微粒子の粒子径が0.2μm未満の粒子量を調整することにより、繊維束内部への微粒子の侵入率を適度に調整することが可能である。また驚くべきことに、0.2μm未満の微粒子が30%以上存在する事で、0.2μm以上の大きな粒子も繊維束内部にまで拡散浸透するようになる。この理由は定かではないが、おそらく0.2μm未満の微粒子を含有するエマルジョン溶液がまず繊維表面を濡らす事で、0.2μm以上の大きな粒子を含有するエマルジョン溶液との親和性を高くするためであると考えられる。親和性が高くなることで、0.2μm以上の大きな粒子も繊維束内部にまで拡散できるようになったと推測される。そして親水性ポリアミド樹脂は、強化繊維束を構成する各モノフィラメントの繊維−繊維間の隙間に、均一に拡散し、繊維とマトリックス樹脂との接着性、親和性を高めるのである。逆に0.2μm未満の微粒子が30%以上存在しても、累積90%粒子径(D90)が1.5μm以上の大きい粒子では、各モノフィラメントの繊維−繊維間の隙間に均一に拡散させることが困難となるため、効果を発揮できない。
一方、親水性ポリアミド樹脂の粒子が小さすぎる場合には、エマルジョンが高粘度化する傾向にある。高粘度を避けるために低濃度で処理した場合には付着量が少なくなる傾向にあるし、高粘度のまま処理した場合には、強化繊維束の内部にエマルジョンを拡散させることが困難な傾向にある。
その観点からは、本発明で用いられる微粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布で評価した累積10%粒子径(D10)が0.01μm以上であることが好ましい。さらにはこのD10の値としては0.02μm以上であること、さらにはD10が0.03μm以上であることが好ましい。
本発明で用いられる親水性ポリアミド樹脂は、N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂に親水性ビニルモノマーをグラフト重合し、親水基を付与することにより得られる。その変性方法は、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。そしてこの親水性ポリアミド樹脂の粒子径は、例えばN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂に対する親水性ビニルモノマーのグラフト量、すなわち親水性ビニルモノマーの仕込み量により制御する事が可能である。具体的には、N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂に対する親水性ビニルモノマーの仕込み量が増加するにつれて、粒子は小径化する傾向にある。N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂100重量部に対する親水性ビニルモノマーの添加量の好ましい範囲は20〜150重量部である。N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂に対する親水性ビニルモノマーの添加量が少ないと、親水性ポリアミド樹脂の粒子径が大きくなり、強化繊維束の内部に均等に親水性ポリアミド樹脂を付着させることが困難になる傾向にある。一方、親水性ビニルモノマーの添加量が多すぎると、繊維表面に形成される共重合体の表面エネルギーが低下する傾向にあり、例えばナイロン6のような、表面張力の大きいマトリックス樹脂を濡らすことが難しくなる傾向にある。N−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂100重量部に対する親水性ビニルモノマーの添加量のより好ましい範囲は30〜100重量部、さらには40〜80重量の範囲である。
また本発明の強化繊維束は、このように繊維表面に均一に親水性ポリアミド樹脂を付着処理した後、熱処理することで得られる。なお、ここで言う熱処理とは、強化繊維束からの水分除去と酸無水物構造を形成させる熱反応を指しており、必ずしも付着処理した直後でなくても良い。
そして本発明の強化繊維束の製造方法では、処理液を付与する工程に引き続き熱処理を行うことが好ましい。ここで、処理液を付与する工程に引き続き熱処理を行うとは、処理液の付与後に他の剤を表面に付着させずに、そのまま熱処理を行うことをいう。これは処理液付与工程に引き続き、すぐに連続して熱処理する場合のほか、例えば長繊維形状から短繊維形状への切断や不織布化、ランダムマット化を行うなどの繊維束の形態のみを変化させる処理を行い、その後引き続き熱処理を行う場合をいい、本発明の効果を最大限発揮させることが可能である。逆に、例えば処理液の付与工程と熱処理工程の間で、マトリックス樹脂を溶融させて繊維束の表面に付着、含浸させた場合、繊維束とマトリックス樹脂の界面にてボイド等が発生し、最終的な物性が低下する傾向にある。 本発明の強化繊維束は、この乾燥や熱処理時にもカールが少なく、折れなどが存在しにくい繊維束となる。これは、親水性ポリアミド樹脂が繊維束に均等に付着するためである。すなわち、水分除去と熱反応の過程でストランド厚み方向の熱膨張差が小さいため、強化繊維束がカールしたり、繊維方向に折りたたまれることを有効に防止するのである。
また、本発明の強化繊維束の製造方法では、熱処理の前または後に繊維束を長さ方向に切断することが好ましい。特には熱処理後に長さ方向に切断し、短い長さの繊維束とすることが好ましい。熱処理の前に切断する場合には、繊維束は予備的な低温での乾燥を行うことが好ましく、工程途中でのスカム等の発生を防止することができる。さらに熱処理を処理液付与後すぐに行い、その後短い長さの繊維束に切断することが特に好ましく、工程安定性に優れた製造方法となる。このような短い長さの強化繊維束は、後に述べるランダムマット等に特に有効に用いられる。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで見積もった親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、50000〜400000の範囲であることが好ましい。さらには200000〜380000の範囲であることが、特には250000〜350000の範囲であることが好ましい。また、微粒子を構成する親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0〜7.0であることが好ましく、さらには3.5〜6.5の範囲であることが、特には4.0〜5.5の範囲であることが好ましい。
親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)が小さい場合、強化繊維表面に位置する共重合体は、複合材料作成時に強化繊維束へのマトリックス樹脂の含浸を促進する可塑剤として働き、良好な含浸性を担う。しかしながら、共重合体とマトリックス樹脂との絡み合い効果が低減し、接着性が低下する傾向にある。最終的に得られる複合材料のコンポジット物性が低下するのである。逆に、重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、共重合体が高粘度化し、マトリックス樹脂の含浸性が低下するため、こちらもコンポジット物性の低下を引き起こす。そのため、親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、50000〜400000の範囲であることが好ましい。
また、親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、3.0〜7.0の範囲にあることが好ましい。Mw/Mn比が小さすぎると、分子量分布が狭いため、可塑剤の役割を担う共重合体の存在割合が低下する。その結果、強化繊維へのマトリックス樹脂の含浸性が低下する傾向にある。一方、Mw/Mn比が大きいと、可塑剤の役割を担う共重合体の割合が増加し、含浸性は向上する。しかし、共重合体とマトリックス樹脂との絡み合い効果が低減するため、接着性が低下する傾向にある。
そしてこのMw/Mn比の最適な値は、重量平均分子量(Mw)の値とも相関している。親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)のより好ましい範囲は、重量平均分子量(Mw)が200000〜380000、かつMw/Mnが3.5〜6.5の範囲であることである。さらには重量平均分子量(Mw)が250000〜350000、かつMw/Mnが4.0〜5.5の範囲であることが好ましい。
そしてこのような本発明の強化繊維束の製造方法を用いることにより、酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる共重合体が表面に付着している強化繊維束を得ることができるのである。
さらには、このような本発明の強化繊維束を用いることにより複合材料の製造に適したランダムマットを得ることが可能である。ここでランダムマットとは、強化繊維がランダムな方向に配向したシート状の材料であって、強化繊維のみからなるものや、強化繊維とマリックス樹脂が混合したものであっても良く、さらに工程を経て最終的には成形体とすることができる材料である。
さらに本発明の強化繊維束から製造される強化繊維がランダムに配向しているランダムマットは、プレス成形等によりマトリックス樹脂と複合させることによって、強度に優れた複合体を形成する。これらのランダムマットや複合材料は、本発明の強化繊維束から製造されるものであるが、さらにはそのマトリックス樹脂が熱可塑性高分子であることが好ましい。なお、ここで言う本発明の強化繊維束から製造される強化繊維とは、強化繊維束を加工したものをいう。強化繊維束を拡幅、開繊、短繊維化するなどの加工を行った強化繊維である。その強化繊維としては1本の単繊維状態であるものや、複数本の単繊維が集合した繊維束の状態であるものも含む。また適度に拡幅した繊維束や、拡幅されていない繊維束、またはそれらの混合物からなる繊維束の状態であっても良い。さらにそのままの長繊維や、適度な長さにチョップされた短繊維の状態の強化繊維であっても良い。
ランダムマットとは、マット面内において、強化繊維が特定の方向に配向しておらず、無作為な方向に分散して配置されているものであり、基本的に強化繊維は短繊維化されて用いられるものである。ランダムマットが上記の強化繊維束から製造される強化繊維である場合、強化繊維の繊維長としては2〜100mmの不連続繊維であることが好ましく、ランダムマットを構成する繊維の目付としては25〜10000g/mとすることが好ましい。さらには繊維長を3〜60mmの不連続繊維とし、目付を25〜3000g/mとすることが好ましい。
このように補強用の強化繊維をランダムに配置するためには、使用する強化繊維束は、一旦開繊させたものであることが好ましい。そしてランダムマットとしては強化繊維束だけからなるものでも良いが、そのような開繊された強化繊維束を短繊維にカットしたものと、樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が実質的に面内ランダムに配向しているものであることが好ましい。
強化繊維束を開繊するためには、本発明の強化繊維束を開繊拡幅処理工程に供すれば良い。開繊拡幅処理工程としては特に限定されるものではないが、好ましくは丸棒で繊維をしごく方法、気流を用いる方法、超音波等で繊維を振動させる方法等を挙げることが出来る。この時強化繊維束としては、上述したような扁平形状の強化繊維束であることが好ましい。より容易に開繊させることが可能となる。また例えば強化繊維束に空気を吹き付けることで繊維束を開繊させる方法では、開繊の程度を空気の圧力等により適宜コントロールすることができる。これらの開繊拡幅処理工程に供する繊維束は連続した繊維束の状態でも不連続な繊維束の状態でもよい。
ランダムマットに最適な開繊された強化繊維束の開繊率としては40%以上であることが好ましい。開繊率は得ようとする複合材料により適宜選択できるが、さらには45〜90%が好ましく、より好ましくは45〜80%の範囲であることが好ましい。なおここで強化繊維束の開繊率とは、強化繊維束を20mmにカットし、強化繊維投入口直径20mm、かつ吹き出し口直径55mm、かつ管の長さが投入口から吹き出し口まで400mmであるテーパ管内に導入し、テーパ管に導入する圧縮空気圧力が0.25MPaであるようにして圧縮空気を流すことで、吹き付けた後の繊維全体中に存在する幅0.6mm未満の繊維束の重量割合として評価したものである。
このような本発明の強化繊維束を用いて得られるランダムマットは、例えば次のような具体的な工程を経て製造することが可能である。
1.本発明の強化繊維束を開繊してカットする工程。
2.カットされた強化繊維束を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程。
3.開繊させた強化繊維を拡散させ、熱可塑性樹脂を散布する塗布工程。
4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を定着させる工程。
この工程において、3.では繊維状、粉末状、又は粒状の熱可塑性樹脂を同時に散布する以外にも、溶液状態にある熱可塑性樹脂をフィルム状に塗布しても良いし、炭素繊維のみを散布し、その後固化した、厚さ10μm〜300μmの熱可塑性高分子フィルムを上に被せてもよい。なお、熱可塑性樹脂を散布する場合には、開繊させた強化繊維束と熱可塑性樹脂とを同時に吸引させて散布することが好ましい。
本発明の強化繊維束から得られるこのようなランダムマットは、複合材料の強化材として最適に用いられる。さらにはランダムマットと共に、複合材料の強化材として一軸配向繊維、織物などの各種の強化繊維の形態を併用することも好ましい。
ランダムマットとしては、強化繊維束の開繊程度をコントロールし、強化繊維が特定本数以上で存在する不十分な開繊の強化繊維と、十分に開繊された強化繊維とを、特定の割合で含むことが好ましい。前記1ないし4の製造方法によれば、開繊程度を適切にコントロールすることが容易であり、種々の用途、目的に適したランダムマットを提供することができる。適切な開繊率のランダムマットを作製することにより、強化繊維と熱可塑性樹脂をより緻密に密着させ、高い物性を達成することが可能となる。
もう一つの本発明の複合材料は上記の強化繊維とマトリックス樹脂からなるものである。さらに具体的には、強化繊維束とマトリックス樹脂とからなる複合材料であって、該強化繊維束を構成する強化繊維の繊維表面に共重合体が付着しており、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる共重合体である複合材料である。
また本発明の複合材料は強化繊維が一旦上記のランダムマットの形態を経たものであることが好ましい。この複合材料は強化繊維と熱可塑性樹脂とを定着させたものであるが、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(高分子)の軟化点以上で加熱成形することで、容易に得ることができる。なお、ここで言う軟化点とは熱可塑性樹脂が十分に流動できる温度であり、例えば軟化点測定装置などで測定出来る。結晶性樹脂の場合、軟化点は融点よりも数℃高い温度となり、非晶性樹脂の場合は分子量にもよるがガラス転移温度よりも10〜150℃高い温度が軟化点となる。強化繊維および熱可塑性樹脂を定着、すなわち成形する温度としては、より好ましくは軟化点よりも10〜70℃高温であることが好ましい。また、繊維束での熱処理工程を省略または簡略化し、この加熱成形時に酸無水物を生成させるのも好ましい方法の一つである。
すなわちこのような複合材料は、例えば強化繊維からから構成される繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液を付与し、熱可塑性樹脂と共に加熱処理する複合材料の製造方法にて得ることができ、その場合、親水性ポリアミド樹脂がN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸を有する親水性ビニルポリマーとからなり、加熱処理により酸無水物構造を生成させることが好ましい。
ここで複合材料中の強化繊維の含有量としては、10〜60体積%の範囲であることが好ましい。本発明の強化繊維束から製造される複合材料は、複合化させるマトリックス樹脂の含浸が十分に行われ、また強度ムラなどが少ない高品位なものとなる。このような強化繊維を含有する複合材料は、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を含んでも良い。また、開繊された強化繊維束以外に含まれている物として、強化繊維単糸、1種類以上の熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の複合体に用いられるマトリックス樹脂は限定されないが、特には熱可塑性高分子からなる樹脂であることが好ましく、特にはポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
例えばマトリックス樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール(ノボラック型など)樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、飽和ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などを例示することが出来る。また、機械的特性向上のために、上記熱可塑性樹脂にその他のエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂であっても良い。これらの中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂とポリプロピレン系樹脂が成形品の力学特性、成形サイクルの速さの観点から好適である。
特にマトリックス樹脂に好ましく用いられるポリアミド系樹脂としては、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン等が、ポリエステル系樹脂としてはポリブチレンテレフタレートが、ポリプロピレン系樹脂としては酸変性ポリプロピレンが好ましく挙げられる。これらの重合体または共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。このようなポリアミド系、ポリエステル系、ポリプロピレン系の樹脂は特に剛直な短繊維、特には本発明のランダムマットと共に用いることで、その相乗効果によって、より高い物性となる。さらには短繊維が剛直な炭素繊維の場合にその効果は顕著である。
なお本発明の複合材料に用いられるマトリックス樹脂としては、そのマトリックス樹脂の250℃における表面張力が、35mN/m以下であることが好ましい。マトリックス樹脂の表面張力が大きすぎる場合、マトリックス樹脂が共重合体で被覆された強化繊維束の表面にて、十分に濡れ広がることが出来ず、溶融凝集する傾向にある。マトリックス樹脂が溶融凝集した場合には、複合材料の界面接着性およびコンポジット物性が低下する。さらにマトリックス樹脂の表面張力としては、共重合体の表面張力よりも小さい値であることが好ましい。しかしマトリックス樹脂の表面張力が小さすぎる場合には、分子内の極性基や水素結合可能な官能基が少なく、マトリックス樹脂の強化繊維表面との接着性が低下し、複合材料のコンポジット物性も低下する傾向にある。なお、複合材料の成形温度は、せいぜい300℃であることが一般的であり、一方でマトリックス樹脂の表面張力は250℃以上でおおよそ平衡に到達する。すなわち250℃の温度でのマトリックス樹脂の物性を規定することにより、適切な複合材料を得ることが可能となる。本発明の複合材料においては、マトリックス樹脂の250℃における表面張力としては24〜34mN/mの範囲がより好ましく、特には26〜33mN/mの範囲であることが好ましい。
また、本発明の複合材料に用いられる強化繊維束の表面に付着した酸無水物構造を有するポリオレフィン部位とアルコキシメチル基を有するポリアミド部位からなる共重合体の表面張力は、最終的に25mN/m以上であることが好ましい。そして、本発明の複合材料においては、その成形温度における、共重合体とマトリックス樹脂の表面張力差の絶対値が、6mN/m以下であることが好ましい。共重合体とマトリックス樹脂との表面張力差が大きすぎると、溶融状態にある共重合体とマトリックス樹脂とが相分離を引き起こしやすい傾向にある。相分離が発生した場合には、強化繊維とマトリックス樹脂の界面接着性が低下する。この複合材料の成形温度における、共重合体とマトリックス樹脂の表面張力差の絶対値のより好ましい範囲は3mN/m以下、さらには2mN/m以下であることである。
さらに、成形温度における共重合体の表面張力が、マトリックス樹脂の表面張力よりも大きいことが好ましい。この場合、共重合体で被覆された強化繊維の表面を、複合体のマトリックス樹脂が、短時間で濡れ広がることが可能となる。なお、共重合体がマトリックス樹脂と反応する場合においても、共重合体の表面張力がマトリックス樹脂の表面張力よりも大きいことが好ましい。この場合、共重合体とマトリックス樹脂の表面張力差の絶対値はあまり影響を与えないことになる。
また、本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂とから構成された複合材料には、上記のランダムマットに用いた切断された短い繊維束に加えて、長繊維状態の一軸配向材を併用することもできる。ここで一軸配向材とは、一軸配向強化繊維束を引き揃えた後、溶融軟化した熱可塑性樹脂と接触させることで得ることができるものである。
なおこの複合材料には、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラー等の各種の添加剤を含んでも良い。無機フィラーとしては、タルク、珪酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイトや各種の無機ナノフィラーを挙げることができる。また、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤など、従来から熱可塑性樹脂に配合されている他の添加剤を、配合することもできる。また、本発明の強化繊維束以外に含まれている構成成分として、各種の強化繊維単糸や、1種類以上の熱可塑性樹脂を併用することも好ましい。
このような複合材料は本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂との接着性が高いため、軽量であるにも関わらず、強度特性、特に曲げ強度や曲げ弾性率等の曲げ特性に優れた複合材料となる。そして本発明の複合材料は、事務機器用途、自動車用途、コンピュータ用途(ICトレイ、ノートパソコンの筐体(ハウジング)など)等の様々な分野に最適に使用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、本発明の実施例は、下記に示す方法で評価した。
(1)粒子径
処理液においてエマルジョンとなっている樹脂(熱可塑性粒子)の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製LA−500)を用い、超音波で3分処理後の累積10%粒子径(D10)と累積90%粒子径(D90)を測定した。
(2)樹脂の表面張力の測定方法
サイジング処理液中のエマルジョンから真空凍結乾燥法で抽出した樹脂成分、およびマトリックス樹脂について、繊維複合材料の成形温度である250℃で懸滴を作製した。そして自動接触角計(協和界面科学株式会社製「DM−501」)を用いて、懸滴法で表面張力を測定した。表面張力は3回の懸滴から得られる測定値の平均から求めた。
(3)強化繊維の表面張力の測定方法
1cmに裁断した未サイジングの強化繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント)を150ccの水が入ったトールビーカーに浮かべた。撹拌しながら3ml/分でエタノールを追液し、強化繊維が沈降するまでのエタノール添加量を測定した。強化繊維が沈降したエタノール水溶液の表面張力を社団法人アルコール協会が提供するエタノール水溶液の表面張力から見積もり、その値を強化繊維の表面張力とした。
(4)分子量および分子量分布の測定
サイジング処理液中のエマルジョンから真空凍結乾燥法で抽出した樹脂成分を、130℃のオルトジクロロベンゼンに溶解させ、高温GPCシステム(日本ウォーターズ株式会社製、型番「Alliance」、使用カラム「Styragel HT6E,4,3」)にて、130℃に加熱したカラムに溶解液を通し、分子量および分子量分布の測定を実施した。
(5)処理液の含浸性評価
ガラス製の容器の底から5cmの高さまで、処理液(サイジング処理液、エマルジョン)を入れた。繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの強化繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント)を着液させ、着液後の繊維束表面の濡れ具合、繊維束がガラス容器の底に沈むまでの時間を計測することで、処理液の含浸性を評価した。
(6)サイジング剤の付着量
サイジング剤付着量は、サイジング処理を行った1.0mの強化繊維束(炭素繊維束)を2本採取し、これらを窒素雰囲気下10℃/分で550℃に昇温後、同温度で10分間焼成し、重量減少した分をサイジング剤の付着分として以下の式(1)で算出した。
サイジング剤の付着量=(a−b)/b×100 [%] (1)
a:焼成処理前の炭素繊維束重量 [g]
b:焼成処理後の炭素繊維束重量 [g]
(7)サイジング剤の付着状態の評価
サイジング剤を付着した強化繊維束(炭素繊維束)の表面SEM像の窒素マッピング(HORIBA製:エネルギー分散型X線分析装置 EMAX ENERGY EX−450)を加速電圧500Vで実施した。次に、強化繊維束の両表面にグラファイトの粘着シートを0.1MPaの圧力で貼り付けた後、粘着シートの片方を剥がして、剥がした粘着シートに張り付いた強化繊維表面の窒素マッピングを実施した。この操作を5回繰り返して、窒素マッピング像を比較することで、強化繊維束内部のサイジング剤の付着状態を確認した。なお、粘着シートにより1回あたり20μmの厚さを剥いでおり、5回では繊維束表面から100μm内部の状態を観察したこととなる。
(8)サイジング剤の付着した強化繊維束の濡れ性評価
サイジング剤の付着した強化繊維束の濡れ性は、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番「DM901」)を用いて評価した。具体的には窒素雰囲気下、280℃に制御されたチャンバー内に強化繊維束を置き、その上に約3μLのナイロン6樹脂玉を滴下し、接触角の経時変化を追跡した。接触角がほぼ平衡に到達するまでの時間と接触角を計測する事で濡れ性を評価した。
(9)サイジング剤の付着した強化繊維束とマトリックス樹脂との接着性評価(マイクロドロップレット法)
複合材料界面特性評価装置(東栄産業株式会社製、「HM410」)を使用し、接着性を評価した。強化繊維束からモノフィラメントを取り出し、複合材料界面特性評価装置にセッティングした。装置上で250℃に溶融したナイロン6樹脂のドロップを強化繊維フィラメント上に形成させ(約3秒樹脂は加熱されている)、すぐに室温で十分に冷却し、測定用の試料を得た。再度測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。次式により界面剪断強度τを算出し、サイズの付着した強化繊維フィラメントとナイロン6樹脂との接着性を評価した。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:炭素繊維フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
(10)開繊率の評価
開繊された強化繊維束(炭素繊維束)の開繊率は、まず強化繊維束を20mmにカットし、強化繊維投入口直径20mm、吹き出し口直径55mm、管の長さが投入口から吹き出し口まで400mmで、かつ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけたテーパ管内に導入し、テーパ管に導入する圧縮空気圧力が0.25MPaであるようにして圧縮空気を流す。そして圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより強化繊維束を開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布し測定した。吹き付けた後の繊維全体中に存在する幅0.6mm未満の繊維束の重量割合を、開繊率として評価した。
(11)強化繊維束の風合い度の評価
強化繊維束(炭素繊維束)の風合い度は、JIS L−1096 E法(ハンドルオメータ法)に準じ、HANDLE−O−Meter(大栄科学精機製作所製「HOM−200」)を用いて測定した。風合い度測定に用いる試験片の長さは10cm、幅はフィラメント数1600本で1mmとなるように強化繊維束を開繊調整した。また、スリット幅は10mmに設定した。このスリット溝が設けられた試験台に試験片となる強化繊維束を1束乗せ、ブレードにて溝の一定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)を測定した。強化繊維束の風合い度は5回の測定の平均値から得た。
(12)強化繊維複合材料(成型板)の曲げ物性測定方法
成形板から、幅15mm×長さ100mmの試験片を切り出し、JIS K7074に準拠した中央荷重とする3点曲げにて評価した。支点間距離を80mmとしたr=2mmの支点上に試験片を置き、支点間中央部にr=5mmの圧子にて、試験速度5mm/分で荷重を与えた場合の最大荷重および中央たわみ量を測定し、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
(13)樹脂(共重合体)の溶解性
親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液(エマルジョン、サイジング処理液)を用いて、キャストフィルムを作製した。そしてそのキャストフィルムを80℃で熱処理して約5μmの薄膜フィルムを得た。次に、サイジング処理した強化繊維束を乾燥、熱処理するのと同じ温度、時間で、薄膜フィルムを熱プレスし、親水性ポリアミド樹脂を熱変性させた共重合体フィルムを作製した。この共重合体フィルムの、130℃、オルトジクロロベンゼンへの溶解性を観察した。なお、熱変性する前の架橋前の親水性ポリアミド樹脂の薄膜フィルムは、オルトジクロロベンゼンに容易に溶解した。
(14)樹脂(共重合体)のIR分析
上記の(13)で作成した熱処理前の薄膜フィルムおよび熱処理後の共重合体フィルムを透過法により赤外線分光装置(日本分光株式会社製、「FTIR−4200」)で分析した。測定に用いた熱処理前後の薄膜フィルムの厚みは2〜5μmであった。
なお、親水性ポリアミド樹脂のカルボン酸の2量化に伴うブロードな吸収は3200〜2500cm−1付近であり、モノカルボン酸のO−H伸縮振動に由来の吸収は3400cm−1付近で観察される。また、酸無水物およびケトン構造由来のC=O伸縮振動は1800〜1700cm−1付近であり、親水性ポリアミド樹脂のアミド構造部位のC=O伸縮振動は1638cm−1付近で観察される。
また、カルボン酸からの脱水の指標となる共重合体の1720〜1730cm−1におけるピークの透過率(T)と、2500〜2550cm−1におけるピークの透過率(T)の比(T/T)を評価した。
(15)強化繊維の表面分析
強化繊維として、電解処理前後の未サイジングの炭素繊維束を準備し、約25mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げた。次に、試料支持台をX線光電子分光分析装置(株式会社島津製作所製「Axis Nova」)の試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。続いて、X線源としてAlKα1、2を用い、光電子脱出角度を90°として両サンプルのC1s測定を行った。表面処理を施した強化繊維束のスペクトルから。表面処理を施していない強化繊維束のスペクトルを差し引き、差スペクトルを得た。この差スペクトルを286,287,288.2eVの3つの波形により合成波形を作成し、差スペクトルと完全一致させた。3つの波形の全面積に占める287eVの割合を強化繊維の表面官能基に占めるカルボニル構造の割合とした。
[実施例1]
<処理液の作成>
冷却還流装置を備えた反応容器中にN−メトキシメチル化ポリアミド(株式会社鉛市製「ファインレジン FR101」)200重量部、エタノール1000重量部を仕込み、50℃で撹拌溶解した。次いで、ポリオレフィン成分としてアクリル酸115重量部、アゾビスイソブチロニトリル2.4重量部を加え、窒素雰囲気下50〜60℃で4時間グラフト重合した。水860g、13.5%アンモニア水175重量部を加え、エタノールを留去し、不揮発分14.1重量%の水エマルジョンである親水性ポリアミド樹脂の水性分散液(エタノール残留量は40%)を得た。
なお、この水性分散液から真空凍結乾燥法で水分を除去し、親水性ポリアミド樹脂を得た。親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は310100であり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.9、250℃における表面張力は31.2mN/mであった。また水性分散液中のポリアミド粒子の粒子径を測定したところ、累積90%粒子径(D90)が0.09μmであった。また累積10%粒子径(D10)が0.04μmであり、粒子径0.2μm未満の微粒子の存在比が100%であった。
またこの水性分散液(親水性ポリアミド樹脂の水エマルジョン)300g(14.3重量%濃度)に、水3500gを、室温で撹拌しながら追加し、ポリアミド粒子が分散した処理液(エマルジョン、固形分濃度1.1重量%)を得た。
なお、浸漬性を測定したところ、直に繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
<強化繊維束の製造>
次に、この処理液(エマルジョン)の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未サイジングの強化繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、強化繊維束の表面張力が44mN/m、表面官能基に占めるカルボニル構造の割合が58%)を連続的に浸漬させ、繊維束中の単糸フィラメント間に処理液を拡散させた。これを170℃の乾燥炉に60秒間通して乾燥し、幅約13mm、厚さ154μmの強化繊維束を得た。得られた強化繊維束中のサイジング剤の付着量は、強化繊維重量100重量部に対して0.3重量部であり、強化繊維束の風合い度は88gであった。また、サイジング剤の付着状態の評価を行ったところ、窒素原子の存在比率は変わらず、繊維束の表面だけでなく内部にも均一に共重合体が付着していることを確認した。
一方で、親水性ポリアミド樹脂の薄膜フィルムを上記乾燥温度と同条件の170℃で60秒間熱処理し、共重合体フィルムを得て、熱処理前の薄膜フィルムおよび熱処理後の共重合体フィルムのIR分析を行った。グラフト鎖であるポリアクリル酸の2量体カルボン酸に由来するブロードな吸収(3200〜2500cm−1)とモノカルボン酸由来の3400cm−1付近のO−H伸縮による吸収が大幅に低下し、代わりに酸無水物のC=O伸縮に由来する1720〜1730cm−1付近のピーク(主に1721cm−1)の吸収が親水性ポリアミド樹脂のアミド構造由来のC=O伸縮振動(1638cm−1)に比べ相対的に大きくなっていることを確認した。なお、カルボン酸からの脱水の指標となる共重合体の1720〜1730cm−1付近のピークの透過率(T)と2500〜2550cm−1付近のピーク(主に2550cm−1)の透過率(T)の比(T/T)は0.44であった。また、熱処理前の親水性ポリアミド樹脂は130℃に加温したオルトジクロロベンゼンに完全溶解するが、熱処理した親水性ポリアミド樹脂は、一晩溶解させても完全に溶けることはなく、大半が不溶物として残存した。すなわち炭素繊維の表面にサイズされた親水性ポリアミド樹脂は熱処理で反応していることを確認した。
またこの強化繊維束の開繊率は、53%の高いものであり、ナイロン6との界面接着性(マイクロドロップレット法)も56MPaと非常に強固であることを確認した。さらにナイロン6樹脂との濡れ性を評価したところ、強化繊維束上のナイロン6樹脂玉は約7分で平衡に到達し、その際の接触角は10°であった。
[比較例1]
<強化繊維束の製造>
実施例1と同じ処理液(エマルジョン)と、同じ未サイジングの強化繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を用い、ただし乾燥温度を105℃、60秒間に変更して、幅約13mm、厚さ153μm、サイジング剤付着量0.9重量部、風合い度96gの強化繊維束を得た。繊維束における窒素原子の存在比率は変わらず、サイジング剤は繊維束の表面だけでなく内部にも均一に共重合体が付着していた。
また、この親水性ポリアミド樹脂の薄膜フィルムを上記乾燥温度と同条件の105℃で60秒間熱処理し、熱処理前後の薄膜フィルムのIR分析を行った。グラフト鎖であるポリアクリル酸の2量体カルボン酸に由来するブロードな吸収(3200〜2500cm−1)とモノカルボン酸由来の3400cm−1付近のO−H伸縮による吸収が観察でき、酸無水物のC=O伸縮に由来する1721cm−1の吸収が成長していないことを確認した。なお、カルボン酸からの脱水の指標となる共重合体の1721cm−1の透過率(T)と2550cm−1の透過率(T)の比(T/T)は0.63であった。
また、熱処理した親水性ポリアミド樹脂からなる薄膜フィルムは、130℃に加温したオルトジクロロベンゼンに完全溶解した。すなわち、親水性ポリアミド樹脂はこの熱処理条件では、反応していないことを確認した。
なお、この強化繊維束の開繊率は、55%の高いものではあるものの、ナイロン6との界面接着性(マイクロドロップレット法)は40MPaしかなく、実施例1に比べて低値であった。さらにナイロン6樹脂との濡れ性を評価したところ、強化繊維束上のナイロン6樹脂玉は10分経っても平衡に到達せず、その際の接触角は45°であった。
[比較例2]
比較例1の処理液付着後の乾燥条件を105℃、60秒間から105℃240秒間に変更したが、ナイロン6との界面接着性(マイクロドロップレット法)こそ41MPaに若干向上したが、得られた結果は比較例1と同様であった。
[実施例2]
比較例1で得られた強化繊維束を用い、ただしナイロン6との界面接着性(マイクロドロップレット法)の測定時に、マイクロドロップを強化繊維フィラメント上に形成させた後、電気炉にて250℃、60秒間の加熱処理を行った。するとナイロン6との界面接着性(マイクロドロップレット法)は、48MPaに向上していた。なお、250℃、60秒間加熱処理した親水性ポリアミド樹脂の薄膜フィルムのT/Tは0.47であった。
[実施例3]
<複合材料の製造>
実施例1で得られた強化繊維束を20mmにカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー、ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、強化繊維束の供給量を600g/min、熱可塑性樹脂の供給量を730g/minにセットしてテーパ管内に導入した。なお、この熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)の軟化点は228℃であった。また、この熱可塑性樹脂の250℃における表面張力は33mN/mであった。テーパ管内で空気を強化繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、熱可塑性樹脂パウダーとともにテーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。散布された強化繊維および熱可塑性樹脂パウダーを、テーブル下部よりブロワにて吸引し、定着させて、厚み5mm程度の強化繊維束がランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。
得られたランダムマットを260℃で60秒間予熱し、引き続き260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、繊維と樹脂の全目付け2700g/m、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。なお、成形温度である260℃における親水性ポリアミド樹脂とナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ30mN/m、32mN/mであり、両者の表面張力差の絶対値は2mN/mであった。得られた複合材料に未含浸部はなかった。曲げ物性は、曲げ強度524MPa、曲げ弾性率27GPaとのきわめて優秀なものであった。
[実施例4]
<強化繊維束の製造>
実施例1で得られた170℃で60秒間熱処理した強化繊維束を、さらに270℃で60秒間加熱して熱処理した強化繊維束を得た。
また実施例1で作成した、170℃で60秒間熱処理した親水性ポリアミド樹脂の共重合体フィルムを、上記の強化繊維束と同様にさらに270℃で60秒間熱処理した共重合体フィルムを作成し、実施例1と同様に熱処理前の薄膜フィルムおよび熱処理後の共重合体フィルムのIR分析を行った。グラフト鎖であるポリアクリル酸の2量体カルボン酸に由来するブロードな吸収(3200〜2500cm−1)とモノカルボン酸由来の3400cm−1付近のO−H伸縮による吸収は殆ど消失し、代わりに酸無水物のC=O伸縮に由来する1721cm−1の吸収に加えて、ケトン構造に由来する1715cm−1の吸収が新たに観察された。熱処理前から観察される親水性ポリアミド樹脂のアミド構造由来のC=O伸縮振動(1638cm−1)に比べ、これらのC=O伸縮に由来する吸収は、実施例1よりもさらに大きくなっていることを確認した。すなわち強化繊維束(炭素繊維束)の表面に付着した親水性ポリアミド樹脂は、熱処理によって、酸無水物構造に加えてケトン構造を形成していることを確認した。なお、上述の270℃で60秒間熱処理した共重合体フィルムのT/Tは0.46であった。
またこの強化繊維束の開繊率は、52%の高いものであり、ナイロン6との界面接着性も60MPaと非常に強固であることを確認した。さらにナイロン6樹脂との濡れ性を評価したところ、強化繊維束上のナイロン6樹脂玉は約7分で平衡に到達し、その際の接触角は7°であった。
<複合材料の製造>
次に、実施例3と同様にして複合材料を製造した。すなわち、厚み5mm程度の強化繊維束がランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得て、さらにプレスし、繊維と樹脂の全目付け2700g/m、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。
得られた複合材料に未含浸部はなかった。曲げ物性は、曲げ強度535MPa、曲げ弾性率27GPaとのきわめて高い物性を示した。
[実施例5]
<複合材料の製造>
実施例3と同様に、実施例1で得られた強化繊維束を用い、マトリックスとなる熱可塑性樹脂を実施例3のナイロン6の代りにポリブチレンテレフタレート樹脂に変更した以外は、実施例3と同様にして繊維と樹脂の全目付け2700g/m、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。
成形温度である260℃における親水性ポリアミド樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ30mN/m、30mN/mであり、親水性ポリアミド樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は0mN/mであった。得られた複合材料に未含浸部はなかった。曲げ物性は、曲げ強度456MPa、曲げ弾性率25GPaとの優秀なものであった。なお、強化繊維とポリブチレンテレフタレートとの界面接着力は48MPaと強固であることを確認した。さらにポリブチレンテレフタレート樹脂との濡れ性を評価したところ、強化繊維束上のナイロン6樹脂玉は約2分で平衡に到達し、その際の接触角は5°であった。
[実施例6]
<処理液の作成>
実施例1と同様に、N−メトキシメチル化ポリアミド、エタノール、アクリル酸、アゾビスイソブチロニトリルを用い、ただしアクリル酸の配合量を115重量部から80重量部に変更して、グラフト重合を行った。さらに実施例1と同様に水、アンモニア水を加え、エタノールを留去し、不揮発分14.1重量%の水エマルジョンである親水性ポリアミド樹脂(エタノール残留量は40%)を得た。
なお、120℃の熱風乾燥器でこの水性分散液から水分を除去し、親水性ポリアミド樹脂を得た。親水性ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は301100であり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.7、250℃における表面張力は31.2mN/mであった。また水性分散液のポリアミド粒子の粒子径を測定したところ、累積90%粒子径(D90)が0.32μmであった。また累積10%粒子径(D10)が0.08μmであり、粒子径0.2μm未満の微粒子の存在比が72%であった。
また実施例1と同様に、この水性分散液(親水性ポリアミド樹脂の水エマルジョン)に、水を撹拌しながら追加し、ポリアミド粒子が分散した処理液(エマルジョン、固形分濃度1.1重量%)を得た。
なお、浸漬性を測定したところ、直に繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
<強化繊維束の製造>
次に実施例1と同様に、この処理液(エマルジョン)の浴に、未サイジングの強化繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬し、170℃の乾燥炉に60秒間通して乾燥し、幅約12mm、厚さ165μm、サイジング剤付着量0.32重量部、風合い度90gの強化繊維束を得た。このもののサイジング剤の付着状態の評価を行ったところ、窒素原子の存在比率は変わらず、繊維束の表面だけでなく内部にも均一に共重合体が付着していることを確認した。
また、親水性ポリアミド樹脂の薄膜フィルムを上記乾燥温度と同条件の170℃で60秒間熱処理し、共重合体フィルムを得て、熱処理前の薄膜フィルムおよび熱処理後の共重合体フィルムのIR分析を行った。実施例1と同様にグラフト鎖であるポリアクリル酸の2量体カルボン酸に由来するブロードな吸収とモノカルボン酸由来の吸収が大幅に低下し、代わりに酸無水物のC=O伸縮に由来する吸収が親水性ポリアミド樹脂のアミド構造由来のC=O伸縮振動に比べ相対的に大きくなっていることを確認した。なお、カルボン酸からの脱水の指標となる共重合体の1721cm−1の透過率(T)と2550cm−1の透過率(T)の比(T/T)は0.44であった。
また、熱処理前の親水性ポリアミド樹脂は130℃に加温したオルトジクロロベンゼンに完全溶解するが、熱処理した親水性ポリアミド樹脂は、一晩溶解させても完全に溶けることはなく、大半が不溶物として残存した。すなわち炭素繊維の表面にサイズされた親水性ポリアミド樹脂は熱処理で反応していることを確認した。
またこの強化繊維束の開繊率は、49%の高いものであり、ナイロン6との界面接着性も54MPaと非常に強固であることを確認した。さらにナイロン6樹脂との濡れ性を評価したところ、強化繊維束上のナイロン6樹脂玉は約7分で平衡に到達し、その際の接触角は12°であった。
[実施例7]
<複合材料の製造>
上記の実施例6で得られた強化繊維束と、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー、ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例3と同様にして、厚み5mm程度の強化繊維束がランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。さらに実施例3と同様にプレスして、繊維と樹脂の全目付け2700g/m、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。なお、成形温度である260℃における親水性ポリアミド樹脂とナイロン6樹脂パウダーの表面張力差は、実施例3と同じく2mN/mであった。得られた複合材料に未含浸部はなかった。曲げ物性は、曲げ強度522MPa、曲げ弾性率27GPaとのきわめて優秀なものであった。
[実施例8]
<複合材料の製造>
上記の実施例2(比較例1)で使用した強化繊維束と、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー、ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例3と同様にして、厚み5mm程度の強化繊維束がランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。さらに実施例3と同様に、得られたランダムマットを260℃で60秒間予熱し、引き続き260℃に加熱したプレス装置にてプレスして、繊維と樹脂の全目付け2700g/m、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。なお、成形温度である260℃における親水性ポリアミド樹脂とナイロン6樹脂パウダーの表面張力差は、実施例1と同じく2mN/mであった。
得られた複合材料には親水性ポリアミド樹脂からの脱水に起因するボイドが認めらこそしたものの、曲げ物性は、曲げ強度460MPa、曲げ弾性率23GPaと、十分に使用できるレベルであった。

Claims (15)

  1. 繊維表面に共重合体が付着している強化繊維からなる強化繊維束であって、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなることを特徴とする強化繊維束。
  2. ポリアミド部位が共重合体の主たる成分である請求項1記載の強化繊維束。
  3. ポリオレフィン部位が共重合体のグラフト鎖である請求項1または2記載の強化繊維束。
  4. 酸無水物構造がカルボン酸無水物である請求項1〜3のいずれか1項記載の強化繊維束。
  5. 共重合体がオルトジクロロベンゼンに不溶である請求項1〜4のいずれか1項記載の強化繊維束。
  6. 赤外線分光法で評価した共重合体の1720〜1730cm−1におけるピークの透過率(T)と、2500〜2550cm−1におけるピークの透過率(T)の比(T/T)が0.35〜0.55である請求項1〜5のいずれか1項記載の強化繊維束。
  7. 強化繊維が炭素繊維である請求項1〜6のいずれか1項記載の強化繊維束。
  8. 強化繊維束が扁平形状である請求項1〜7のいずれか1項記載の強化繊維束。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載の強化繊維束を用いてなるランダムマット。
  10. 請求項9記載のランダムマットを用いてなる成形体。
  11. 強化繊維からから構成される繊維束の表面に、親水性ポリアミド樹脂を含有する処理液を付与し熱処理する強化繊維束の製造方法であって、親水性ポリアミド樹脂がN−アルコキシメチル化ポリアミド樹脂と、オキソ酸とを有する親水性ビニルポリマーとからなり、熱処理により酸無水物構造を生成させることを特徴とする強化繊維束の製造方法。
  12. 熱処理の工程が気相中で行われる請求項11記載の強化繊維束の製造方法。
  13. 処理液を付与する工程に引き続き熱処理を行う請求項11または12に記載の強化繊維束の製造方法。
  14. 強化繊維束とマトリックス樹脂とからなる複合材料であって、該強化繊維束を構成する強化繊維の繊維表面に共重合体が付着しており、該共重合体が酸無水物構造を有するポリオレフィン部位と、アルコキシメチル基を有するポリアミド部位とからなる共重合体であることを特徴とする複合材料。
  15. マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である請求項14記載の複合材料。
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