図1は、本発明に係るワイヤハーネスの製造装置及び組立ライン形成方法の一実施形態の基本構成を示すものである。
このワイヤハーネスの製造装置1は、上流側と下流側の少なくとも二つのラウンドコンベア2,3をコンベア長手方向に並列に備え、各ラウンドコンベア2,3には複数(多数)の作業台車4(41〜4n)が配置され、上流側のラウンドコンベア2から下流側のラウンドコンベア3にかけて連動搬送装置5,6が配置されたものである。
各ラウンドコンベア2,3は、長手方向両端側のスプロケット7,8に無端の搬送チェン9を歯合させて構成されている。何れか一方のスプロケット7又は8が不図示のモータで時計回りに回転駆動される。各ラウンドコンベア2,3の搬送チェン9には後述の連結ピン(図6参照)が立設され、各作業台車4には連結ピンに係合する後述のコンベア連結装置(図6参照)が設けられている。
上流側のラウンドコンベア2の下流側(右側)のスプロケット7と下流側のラウンドコンベア3の上流側(左側)のスプロケット7との間において、各ラウンドコンベア2,3の外側に近接して長いメインの連動搬送装置6が直線的に配置され、上流側のラウンドコンベア2の内側において、下流側(右側)のスプロケット8の上側を通過して短いサブの連動搬送装置5が配置されている。
サブの連動搬送装置5が上流側のラウンドコンベア2からメインの連動搬送装置6に作業台車4を送り出し、メインの連動搬送装置6がサブの連動搬送装置5から下流側のラウンドコンベア3に作業台車4を受け渡す。サブの連動搬送装置5とメインの連動搬送装置6とで一組の連動搬送装置10を構成する。
各連動搬送装置5,6は、ラウンドコンベア2,3の搬送チェン(主搬送チェン)9よりも細い搬送チェン(副搬送チェン)11と、各搬送チェン11の180度方向に対称に配置固定された各一対の搬送駒(押し部材)12,13と、搬送チェン11の長手方向両端側に歯合された各一対の小さなスプロケット14と、搬送チェン11ごとにスプロケット14を回転駆動する不図示のモータとを備えている。
サブの連動搬送装置5が時計回りに回転して、その搬送駒12でラウンドコンベア5上の作業台車4の中央内寄りの被押し部15を押して(その際に搬送チェン9の不図示の連結ピンから作業台車4の不図示のコンベア連結装置が離脱して)、メインの連動搬送装置6に作業台車4を送り出し、メインの連動搬送装置6の搬送チェン11が反時計回りに回転して、その搬送駒13で作業台車4の後端の被押し部4aを押して下流側のラウンドコンベア3に作業台車4を受け渡す(その際に下流側の搬送チェン9の不図示の連結ピンに作業台車4の不図示のコンベア連結装置が係合する)。
図1において、上流側のラウンドコンベア2上の作業台車を符号41,42で示し、メインの連動搬送装置6に渡された作業台車を符号43で示し、メインの連動搬送装置6から下流側のラウンドコンベア3に渡された作業台車(鎖線は渡される前の状態)を符号44で示している。
上流側のラウンドコンベア2から各連動搬送装置5,6に作業台車4を渡すタイミングや、メインの連動搬送装置6から下流のラウンドコンベア3に作業台車4を渡すタイミングは、各作業台車4の位置を不図示のセンサ(スイッチ)で検知して、不図示の制御装置でこれらラウンドコンベア2,3や連動搬送装置5,6の動きを制御することで図られる。
メインの連動搬送装置6の搬送駒13は180°方向に各一つであるので、メインの連動搬送装置6には鎖線で示す一つの搬送台車44がバッファされる。例えばメインの連動搬送装置6に四つの搬送駒14を等ピッチで配置した場合は、メインの連動搬送装置6に二つの搬送台車4をバッファ可能である。バッファとは溜め置きの意味であり、例えば下流側のラウンドコンベア3が一時的にトラブルで停止している場合に、上流側のラウンドコンベア2は止めることなく、上流側のラウンドコンベア2の作業台車4の不図示の布線板に電線やチューブ等のワイヤハーネス部品を組付(組立)可能である。
図1の例では、例えば上流側のラウンドコンベア2の往路9a(図で下側)の右端側から組立作業を開始し、下流側のラウンドコンベア3の復路9b(図で下側)の左端側で組立作業を終了する。なお、明細書で下側や上側は説明の便宜上のもので、各ラウンドコンベア2,3は工場内の一フロア上に水平に配置される。各作業台車4は不図示の各布線板を有するが、布線板の向きは傾斜状の縦置きでも横置き(水平ないし略水平)でもよい。
なお、図1の実施形態において、連動搬送装置10と対称に第二の連動搬送装置(図示せず)を設けて、右側(第二)のラウンドコンベア3から第二の連動搬送装置を経て左側(第一)のラウンドコンベア2に作業台車4を搬送することも可能である。この場合は、例えば第一のラウンドコンベア2の上側の往路9cの左端側から組立作業を開始し、第二のラウンドコンベア3を経て、第一のラウンドコンベア2の下側の復路9aの左端側で組立作業を終了する。
また、図1の実施形態において、各ラウンドコンベア2,3と平行に第三,第四のラウンドコンベア(図示せず)を配置し、平行な二つのラウンドコンベアの対向する端部同士を湾曲状の連動搬送装置(図示しないターン部)で連結し、及び/又は、メインの連動搬送装置6を上流側のラウンドコンベア2側に少し延長して、サブの連動搬送装置5を省略することも可能である。以下にこの構成のワイヤハーネスの製造装置の詳細例について図2〜図9を用いて説明する。
図2〜図9は、本発明に係るワイヤハーネスの製造装置及び組立ライン形成方法の他の実施形態の詳細構成を示すものである。
図2の如く、このワイヤハーネスの製造装置21は、前後左右の各二本計四本のラウンドコンベア22〜25をそれぞれ連動搬送装置26で連結したものである。
ラウンドコンベア22〜25は、図2で左側且つ下側の長い第一のラウンドコンベア22と、第一のラウンドコンベア22の幅方向に平行(並列)に配置された第二のラウンドコンベア23と、図2で右側において第二のラウンドコンベア23の長手方向に直列に配置された短い第三のラウンドコンベア24と、第三のラウンドコンベア24の幅方向に平行に且つ第一のラウンドコンベア22の長手方向に直列に配置された短い第四のラウンドコンベア25とで構成されている。各ラウンドコンベア22〜25には複数(多数)の作業台車27がコンベア長手方向に隙間を存して並列に配置されている。
また、図3の如く、連動搬送装置26は、第一と第四の各ラウンドコンベア22,25を直線的に連結する第一の連動搬送装置(ストレート部)28と、第一と第二の各ラウンドコンベア22,23の右側の端部を湾曲状に連結する第二の連動搬送装置(ターン部)29と、第二と第三の各ラウンドコンベア23,24を直線的に連結する第三の連動搬送装置(ストレート部)30と、第三と第四の各ラウンドコンベア24,25の左側の端部を湾曲状に連結する第四の連動搬送装置(ターン部)31とで構成されている。第一と第三の連動搬送装置28,30は平行に位置し、第二と第四の連動搬送装置29,31は略半円状で背中合わせに対称に位置している。
図2においては、説明の便宜上、第一〜第四の連動搬送装置28〜31を矢印で示し、そのターン部29,31においては一台の作業台車27の動きを実線で連続的に示している。各連動搬送装置28〜31にはそれぞれ一台の作業台車27が配置される。図2において、符号61は作業エリア、62は、作業台車27を乗せる水平なガイド壁部をそれぞれ示している。
「第一〜第四」とは、各種ワイヤハーネス部品の組立順に対応した上流側から下流側を意味している。第一のラウンドコンベア22の右端側の位置32でサブワイヤハーネスが投入され(図2の作業台車27への部品の組立作業がスタートし)、第四のラウンドコンベア25の左端側の位置33でワイヤハーネスの組立が完了し、ワイヤハーネスは図2の作業台車27から外して次工程(箱詰め等)に送られる。第一の連動搬送装置(ストレート部)28では図2の作業台車27がカラの状態で第四から第一のラウンドコンベア25,22に送られる。
図4に、図3の連動搬送装置26を詳細に示す如く、第一と第三の各連動搬送装置(ストレート部)28,30は、真直で垂直且つ平行な一対の縦ガイド壁(レール)34と、一対の縦ガイド壁34の間に配置された真直な搬送チェン(副搬送チェン)35と、縦ガイド壁34の幅方向両側に配置された水平な横ガイド壁36とを備えている。搬送チェン35は、左右端側に配置された小さな一対のスプロケット37(図5参照)で無端ループ状に配置されている。搬送チェン35には180°方向に一対の搬送駒(押し部材)38(図5参照)が固定して設けられている。
第二と第四の各連動搬送装置(ターン部)29,31は、半円状で垂直且つ平行な縦ガイド壁(レール)39とそれに続く短い平行な延長縦ガイド壁39’と、各縦ガイド壁39,39’の内側に沿って配置された略半円ループ状の搬送チェン(副搬送チェン)40と、各縦ガイド壁39,39’の幅方向両側に配置された水平な横ガイド壁41と、搬送チェン40の長手方向両端部に歯合した小さな一対の不図示のスプロケット(図5のスプロケット37と同様のもの)とを備えている。搬送チェン40には180°方向に一対の不図示の搬送駒(図5の搬送駒38と同様なもの)が固定して設けられている。
図4で符号42は、図3の第1〜第4のラウンドコンベア22〜25の各搬送チェン(主搬送チェン)43に歯合した大きなスプロケット(図8参照)を示している。図4においては全ての構造物を便宜上実線で示している。図4において第2〜第4の連動搬送装置29〜31に作業台車27が配置されている。各ラウンドコンベア22〜25においても、作業台車27を案内する縦ガイド壁(図示せず)と、作業台車27を支持する横ガイド壁(図示せず)とが搬送チェン43(図3)の外側に隣接して設けられている。
図2,図4の如く、各連動搬送装置(ストレート部及びターン部)28〜31において少なくとも一台の作業台車27をそれぞれバッファする(溜め置く)ことができるので、例えば何れかのラウンドコンベア22〜25(図2)が一時的に作業停滞した場合に、このバッファ機能を発揮させて、作業停滞したラウンドコンベアのみを停止させて、停滞した作業を完遂させることができる。
各作業台車27は、台車部分27aと、台車部分27aに固定された傾斜状の布線板27bとで構成されている。台車部分27aと布線板27bとの幅(厚み)はほぼ同程度で、布線板27bの長さは台車部分27aの略三倍程度で、布線板27bの長手方向中央に台車部分27aが配置されている。
図4,図5の如く、各台車部分27aの四隅には大きな縦キャスタ44が設けられると共に、縦キャスタ44の内側において小さな横キャスタ45が設けられている。例えば横キャスタ45とは横向きの車輪という意味である。各縦キャスタ44は各横ガイド壁36,41の上面に接触して作業台車27を支えつつ各横ガイド壁36,41に沿って回転し、各横キャスタ44は各縦ガイド壁34,39の外側面に接触して作業台車27を幅方向に位置決めしつつ縦ガイド壁34,39に沿って回転する。
図5の如く、各連動搬送装置28〜31の搬送チェン35,40に垂直な板片状の搬送駒38が固定され、台車部分27aの後端のフレーム47に、搬送駒38を当接させる垂直な板状の被押し部46が固定されている。被押し部46は台車部分27aのフレーム47であってもよい。
図5の連動搬送装置28(30)の搬送チェン35は反時計回りに回転し、図5において搬送駒38は台車部分27aの被押し部46を押し終えて、搬送チェン35と共に一時停止している。その状態で、作業台車27がラウンドコンベア22(24)の搬送チェン43のコンベア連結装置50で連動搬送装置28(30)の前方に搬送されている。搬送駒38は搬送チェン35の再起動で左側部分35aに移動する。搬送駒38は停止することなく作業台車27を搬送チェン35の終端まで押してもよい。図5で台車部分27aの左側に、傾斜状に起立した布線板27bの裏面側が固定され、布線板27bの表面側に各ワイヤハーネス部品が組み付けられる。図5において連動搬送装置28(30)の搬送チェン35の右側にラウンドコンベア22(24)の搬送チェン43が配置されている。
図5は、図3,図4の左下の第一のラウンドコンベア22と下側の第一の連動搬送装置28(ストレート部)、又は図3,図4の右上の第三のラウンドコンベア24と上側の第三の連動搬送装置30(ストレート部)を示している。第二,第四の連動搬送装置(ターン部)29,31においては、略半円状に湾曲した無端ループ状の搬送チェン40に同様の搬送駒38が固定されている。
図6,図7の如く、各ラウンドコンベア22〜25(図3)の搬送チェン43には、前後一対の連結ピン(連結部材)48,49を有する連結搬送具50が配設されている。作業台車27の台車部分27aには、一対の連結ピン48,49に係合する前後一対の爪部材(被連結部材)51,52を有するコンベア連結装置53が固定して設けられている。
各連結ピン48,49は水平な板部54の上面に垂直に立設され、板部54の一側方の下面がラウンドコンベア22〜25の搬送チェン43の上面にボルト締めや溶接等で固定されている。板部54の他側方の下面は複数のフリーローラ55で支持されている。搬送チェン43は複数の上下一対のチェン駒43c(図9)を垂直方向の前後のローラ軸43d(図9)で連結して構成され、水平方向に屈曲自在である。これは各連動搬送装置28〜31の細い搬送チェン35,40もおいて同様である。
搬送方向前側の連結ピン48が短く、後側の連結ピン49が長く設定され、それに合わせて(連結ピン48,49に係合できるように)、コンベア連結装置53の前側の爪部51が下向きに長く突出され、後側の爪部材52が下向きに短く突出されている。
各爪部材51,52は、水平な一対の爪本体51a,52aと、一対の爪本体51a,52aの間のスリット孔51b,52bと、爪本体51a,52aに直交して上方に続く支持杆51c,52cとを備えている。スリット孔51b,52bの先端側の入り口51b’,52b’は連結ピン48,49を拾いやすいようにテーパ状に広げられている。各連結ピン48,49は上端にスリット孔51b,52bよりも大径な頭部48a,49aを有している。
支持杆51c,52cは正面壁(符号51c,52cで代用)と、正面壁に直交して搬送方向に沿う側壁51c’,52c’とで構成されている。各支持杆51c,52cの上下方向長さはほぼ同じで、各支持杆51c,52cの上端は段差状に配置されている。支持杆51c,52cの側壁51c’,52c’は、作業台車27の台車部分27aに固定された垂直な固定板56に支軸58で後方向(図6で左側)に回動自在に支持され、固定板56に突設された段差状の各ストッパ部57に各支持杆51c,52cの正面壁の上部後面が当接して、爪部材51,52の前方向(図6で右側、搬送方向)への回動が阻止されている。
図5においては、作業台車27の搬送方向後側の爪部材52と、爪部材52に係合した後側の連結ピン49とを示している。図5においてラウンドコンベア22(24)の搬送チェン43は矢印の如く手前から奥側へ移動する。図5,図6の如く各連結ピン48,49が各爪部材51,52のスリット孔51b,52bに係合してスリット孔51b,52bの前端(円弧状の終端)を矢印の如く前方(図5で奥方向、図6で右方向)に押すことで、作業台車27が搬送される。
図7の如く、各爪部材51,52は各連結ピン48,49から搬送方向前方(矢印A方向)に離脱可能である。また、例えば図5の搬送駒38で作業台車27が前方(矢印A方向)へ押されて移動しつつ、図7の停止した状態又は作業台車27よりも移動速度の遅い連結ピン48,49を爪部材51,52が前方(矢印A方向)へ乗り越えて(追い越して)、連結ピン48,49の前方に移動して搬送チェン35,40や作業台車27と共に停止する。
搬送駒38を移動させる各連動搬送装置28〜31(図4)の搬送チェン35,40の速度は、連結ピン48,49を移動させる各ラウンドコンベア22〜25(図3)の搬送チェン43の速度(停止状態を含む)よりも早く設定されている。
爪部材51,52が連結ピン48,49を乗り越える際に、爪部材51,52は連結ピン48,49の頭部48a,49aに爪本体51a,52aの前端(支持杆51c,52cとの交差部)を摺接しつつ、水平な支軸58を中心に図7の矢印Dのように後方に回動する。乗り越え(追い越し)が完了した時点で各爪部材51,52は自重等(ばね付勢も可能である)で前方(矢印Dとは反対方向すなわち矢印A方向)に回動して復帰する。
その状態で各連結ピン51,52が搬送チェン43で前方に駆動されて、爪本体51a,52aのスリット孔51b,52bに係合する。その際、前側の連結ピン48が短く、後側の連結ピン49が長く、前側の爪部材51が下向きに長く、後側の爪部材52が下向きに短いことで、各爪部材51,52に各連結ピン48,49が確実に係合する。
もしも前後の連結ピン48,49や前後の爪部材51,52の長さが同じである場合には、乗り越え(追い越し)が完了して後側の爪部材52の後方に前側の連結ピン48が位置した際に、各連結ピン48,49の前進動作で前側の連結ピン48が後側の爪部材52に係合してしまい、後側の連結ピン52と前側の爪部材48は未係合となって、ラウンドコンベア22〜25のターン部59(図3)等における連結ピン48と爪部材52との係合外れが生じ兼ねない。前後の連結ピン48,49等の長さを規定することでこのような不具合が防止される。
また、図6の如く連結ピン48,49に爪部材51,52が係合した状態において、連動搬送装置28〜31(図4)の搬送駒38(図5)が作業台車27を連結ピン48,49の移動速度よりも早い速度で(連結ピン48,49は搬送チェン43と共に一時停止していてもよい)前方(搬送方向)へ押して移動させることで、図7の如く連結ピン48,49から爪部材51,52が前方へ離脱する。この状態でラウンドコンベア22〜25から連動搬送装置28〜31への搬送台車27の受け渡しが行われる。
このようにして、第一〜第四の各連動搬送装置28〜31における作業台車27の受け取り及び受け渡しが行われる。すなわち図3において、第一のラウンドコンベア22から第二の連動搬送装置(ターン部)29を経て第二のラウンドコンベア23に作業台車27が受け渡され、第二のラウンドコンベア23から第三の連動搬送装置(ストレート部)30を経て第三のラウンドコンベア24に作業台車27が受け渡され、第三のラウンドコンベア24から第四の連動搬送装置(ターン部)31を経て第四のラウンドコンベア25に作業台車27が受け渡され、第四のラウンドコンベア25から第一の連動搬送装置(ストレート部)28を経て第一のラウンドコンベア22に作業台車27が受け渡される。
図8の如く、ラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43に、前後一対の連結ピン48,49を含む連結具50が各作業台車27のピッチで複数配置され、各作業台車27のコンベア連結装置53の爪部材51,52が連結ピン48,49に係合した状態で、各作業台車27が傾斜状に起立した布線板27bと一体に(布線板27bは作業台車27の一部である)、ラウンドコンベア23(25)のスプロケット42で駆動される搬送チェン43で矢印方向(時計回り)にゆっくりと搬送される。
搬送の途中で各布線板27bの表面上のY字フォーク等の多数の布線具60に従来同様にサブワイヤハーネスや外装部品等といったワイヤハーネス部品が工程ごとに作業者によって組み付けられていく。
図8は、図3,図4の左上(第二)又は右下(第四)のラウンドコンベア23,25の一端部側(第二又は第四の連動搬送装置(ターン部)29,31の近傍部分)を示している。第一,第三のラウンドコンベア22,24においても基本構造は図8と同じである(ターン部29,31の向きが逆になる)。
図8のラウンドコンベア23(25)の一端側のスプロケット42の近傍において、ラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43の往路43aと復路43bとに沿って幅方向外側に平行に連動搬送装置(ストレート部)30(28)が配置されている。ラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43と連動搬送装置30(28)の搬送チェン35とはラップして平行に位置している。ラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43の往路43aに沿って連動搬送装置30(28)の他端側のスプロケット37が位置している。これはラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43の復路43b側においても同様である。なお、往路や復路や説明の便宜上のものであり、必ずしも上流や下流に対応するものではない。
図8で符号38は、ラウンドコンベア23(25)の復路側の搬送チェン43bに向かう(沿う)連動搬送装置(ターン部)29(31)の搬送駒を示し、搬送駒38は図8で手前側の作業台車27の被押し部46を押して作業台車27を矢印Aの如く前方へ移動させている。ラウンドコンベア23(25)の復路側の搬送チェン43bと連動搬送装置(ターン部)29(31)の搬送チェン40とがラップした位置で、連動搬送装置29(31)からラウンドコンベア23(25)への作業台車27の受け渡しが行われる。
すなわち、図9の如く、ラウンドコンベア23(25)の時計回りの回転によって、搬送チェン43と一体に連結ピン48,49が前方へ移動し、連結ピン48,49の後方に作業台車27が連動搬送装置(ターン部)29(31)の搬送駒38で押されて接近し、連動搬送装置29(31)の速度がラウンドコンベア23(25)の速度よりも速いことで(ラウンドコンベア23(25)は一時停止することが好ましい)、作業台車27の爪部材51,52が連結ピン48,49を前方へ乗り越えて(追い越して)、この際、爪本体52a,52aは後方へ向けて突出しており、その状態から連結ピン48,49がラウンドコンベア23(25)の搬送チェン43と一体に前方へ移動して爪部材51,52に係合し、その状態で作業台車27を前方に搬送する。
各ラウンドコンベア22〜25や各連動搬送装置28〜31における作業台車27の位置の検出(作業台車27の受け渡しや受け取りのタイミング取り)は不図示のスイッチやセンサで行われる。例えば図8において、ラウンドコンベア23(25)の右側(往路側43a)の作業台車27を接触式のスイッチで検知すると、不図示の制御装置を介して作業台車27の送り方向の連動搬送装置30(28)の搬送チェン35が矢印B方向に駆動されてその搬送駒38(図8では現れていない)が作業台車27の後端の被押し部46を押すべき位置に待機する。
また、図8において、左側且つ手前(連動搬送装置29(31)で移動中)の作業台車27の爪部材51,52よりも先にラウンドコンベア23(25)の連結ピン48,49が矢印Cの如く前方へ先回りして待機するタイミングも作業台車27を接触式のスイッチで検知することで行われる。各スイッチは不図示の制御装置に接続されて作業台車27の動きすなわち各搬送チェン35,40,43の駆動(始動や停止)を制御する。
図8の例でラウンドコンベア23(25)の一端部のスプロケット42に沿って作業台車27が回転移動することはないが(左側の作業台車27と衝突してしまうため、右側の作業台車27は必ず連動搬送装置30(28)で手前側の不図示のラウンドコンベア24(22)に移動される)、図2,図3における各ラウンドコンベア22〜25の他端部(ターン部29,31とは反対側の端部)においては、作業台車27はスプロケット42に沿って矢印59の如く小さな半径で回転移動する。
この際、ラウンドコンベア22〜25の前後一対の連結ピン48,49に作業台車27の前後一対の爪部材51,52が連結係合しているので、連結ピン48,49から不意に爪部材51,52が離脱してしまうという不具合が防止される(連結ピンと爪部材とが各一本である場合は作業台車27の走行時の揺れ等によって離脱する懸念があるのでその対策が採られている)。
また、ラウンドコンベア22〜25の他端部のスプロケット42に沿って作業台車27を回転させる場合は、爪部材51,52を回転方向外側の不図示のガイド板に沿って摺接させながら回転させることで、作業台車27の小さな半径でのターンをスムーズ且つ確実に行わせることができる。このガイド板はスプロケット42の径方向外側においてラウンドコンベア22〜25の水平な横ガイド壁に立設しておく。図8においては連動搬送装置30(28)の水平な横ガイド壁36と垂直な縦ガイド壁34を示しているが、ラウンドコンベア22〜25の横ガイド壁や縦ガイド壁はこれらのガイド壁36,34を延長したものである。
以下に、本発明のワイヤハーネスの製造装置及び組立ライン形成方法の特徴をまとめて記述する。
本発明の目的は、ワイヤハーネスの組立ラインにおいて、既存の工場建屋の設備設置スペースを増大させることなく組立作業面数を増加させ、それに加えて、一時的な作業停滞が発生した場合においても、その影響がライン全体に波及することを防止することにある。
上記目的を達成するために、従来同様のラウンドコンベア22〜25を四台配置し、各ラウンドコンベア22〜25を連動搬送装置28〜31で連結した形態のワイヤハーネスの製造装置21(図1)を採用した。各ラウンドコンベア22〜25は従来同様に一本の無端の搬送(駆動)チェン43で連結された複数の作業台車27を搬送するが、作業台車27は各ラウンドコンベア間の移動を可能とするために、搬送チェン43からの離脱と連結とが可能なコンベア連結装置53を備えている。
これにより、作業台車27は、四台のラウンドコンベア22〜25に配置された全ての作業エリア(作業者)を通過でき、四台のラウンドコンベア22〜25を一つのラインとして運用することが可能となる。
連動搬送装置28〜31の基本動作は、上流側のラウンドコンベア22から搬出される作業台車27を下流側のラウンドコンベア23〜25に搬送することであるが、各ラウンドコンベア22〜25はそれぞれ独立した駆動モータによって運転されるので、運用サイクルタイムの同期ずれや、作業者の一時的な停滞による遅れ等が発生した場合は、各ラウンドコンベア22〜25の運転が安定するように、連動搬送装置28〜31が搬送タイミングを自動的に調整する機能(バッファ機能)を備えている。
各作業台車27が備えるコンベア連結装置53は、ラウンドコンベア22〜25の搬送チェン43への連結と離脱を行う。従来のラウンドコンベアであれば作業台車はラウンドコンベアからの離脱と再連結を行う必要はないので、同機能は備えていないが、本発明のワイヤハーネス製造装置21は、四台のラウンドコンベア22〜25の全ての作業エリアを通過する必要があるので、同機能は必須である。
基本動作としては、ラウンドコンベア22〜25の搬送チェン43における作業台車27が連結される箇所に配置した連結ピン48,49に、作業台車27のコンベア連結装置53の連結機構である爪部材51,52が後続から連結ピン48,49を追い越すことにより係合が行われ、係合後はラウンドコンベア22〜25の搬送チェン43により作業台車27の搬送が行われる。
二本の爪部材51,52と二本の連結ピン48,49との係合で、作業台車27と搬送チェン43との連結が行われているので、作業台車27がラウンドコンベア22〜25のターン部59(図3)を通過する場合においても、作業台車27がコンベアチェン43から離脱することがなく、作業台車27の搬送が安定して行われる。
従来のラウンドコンベアであれば作業台車(作業エリア)の追加は、主に長さ方向において設備設置スペースの制約を受けるが、本発明のワイヤハーネス製造装置21は、複数のラウンドコンベア22〜25を連結する連動搬送装置28〜31により、複数のラウンドコンベア22〜25を長さ方向や幅方向に配置し、それらを一つのラインとして構成することができるので、設備設置スペースを有効に活用することができる。また、連動搬送装置28〜31は、各ラウンドコンベア22〜25で発生する搬送速度のばらつきや一時的な停滞(停止)の影響を低減させる機能を備えているので、作業タクトを一定に保つことができる。
なお、上記実施形態においては、各ラウンドコンベア22〜25や各連動搬送装置28〜31の搬送速度を一定(ラウンドコンベア22〜25と連動搬送装置28〜31とでは異なる)としたが、例えば各ラウンドコンベア22〜25や各連動搬送装置28〜31の不図示のチェン駆動モータの回転数を制御(増減)して、上流側のラウンドコンベア(例えば符号22)から連動搬送装置29への作業台車27の受け渡しや連動搬送装置29から下流側のラウンドコンベア23への作業台車27の受け渡しを、ラウンドコンベア22〜25や連動搬送装置28〜31の各チェン35,40,43を停止させることなく行わせることも可能である。但しラウンドコンベア22〜25の速度の増加は作業性に悪影響を与えるので好ましくない。
また、上記実施形態においては、ラウンドコンベア22〜25に連結ピン(連結部材)48,49を起立して設け、作業台車27に爪部材(被連結部材)51,52を垂下して設けたが、それとは逆に、ラウンドコンベア22〜25に爪部材(連結部材)51,52を起立して設け、作業台車27に連結ピン(被連結部材)48,49を垂下して設けることも可能である。但しこの場合は爪部材(連結部材)51,52を小型化する必要がある。
また、連結ピン48,49と小型化した爪部材51,52とを垂直方向ではなく水平方向に突設することも可能である。また、ラウンドコンベア22〜25のターン部59が大径である場合は連結ピン48,49や爪部材51,52を各一対ではなく各一個とすることも可能ではある(注意は要する)。また、爪部材51,52の形状を適宜変更して用いる(例えばスリット孔51b,52bを半円状の溝としたり、爪部材51,52の前側部に不図示の傾斜面を設けて、傾斜面に沿って連結ピン48,49を摺接させつつ爪部材51,52が前後方向ではなく左右方向(チェン幅方向)に回動して連結ピン48,49を乗り越えるようにする等)ことも可能である。また、一対の爪部材51,52を同時に前後方向に回動するように不図示のリンク等で連結することも可能である。