以下、本実施形態について説明する。なお、以下で説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
例えば以下では、インクを収容するインクカートリッジ及びインクを吐出する印刷装置を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、種々の液体を収容する液体収容容器及びその液体を吐出(噴射)する液体消費装置に適用可能である。液体は、液体消費装置が吐出可能なものであればよく、例えば溶液、溶媒、ゾル、ゲルや、それらに種々の物質或いは微粒子等を溶解・混合させたものを含む。
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。前述した特許文献1に開示されているように、光センサーを用いて液体の残存状態を判定する手法(インクニアエンドを判定する手法)が知られている。このような手法では、光センサーが光を精度よく検出することが必要であり、光センサーに故障等が発生した場合、当該光センサーを用いた残存状態の判定結果は精度が低いものとなってしまう。
例えば、液体の残存状態を判定する際に、光センサーの受光部が外乱光を受光してしまうと、実際には液体収容容器内の液体が残存状態である場合でも、非残存状態であると誤って判定してしまうことがある。外乱光等の光は、残存状態の判定において本来検出したくない光であり、残存状態の判定への悪影響という意味ではセンサー故障と同様に検出することが望ましい。なお、ここでの外乱光とは、例えば液体消費装置の外部から装置内部に進入する光のことであり、外乱光の具体例としては、液体消費装置のカバーが開けられた状態で検出される光などが挙げられる。
これに対して、前述した特許文献2に開示されているように、光センサーの故障を検出する手法も種々知られている。特許文献2では、光を全反射するミラーで構成された故障検出板が、光センサーの真上となるような位置で、発光部を発光させた状態での受光部の検出信号を用いて、故障を検知している。具体的には、所定の電圧値範囲を設定しておき、当該範囲内であれば正常、当該範囲外となった場合に故障と判定する。
特許文献2の発明では、光センサーが外乱光による悪影響を受けている場合も、光センサーの故障として併せて検出することができる。しかし、光センサー自体に故障が発生しているのか、光センサーが外乱光により悪影響をうけているのかを切り分けて判定することはできない。
そして、光センサーが故障又は外乱光の影響を受けていると判定した場合には、光センサーから得られる検出信号に基づいて残存状態を判定せずに、推定した液体残量に基づいて残存状態を判定する。そのため、実際には液体収容容器内の液体が残存状態である場合でも、非残存状態であると誤って判定し、インクカートリッジの交換表示を行ってしまうことがある。この際には、印刷の途中であっても、印刷を停止するため、印刷を終了するまでの時間が長くなってしまう。
そもそも、印刷を停止して、外乱光の影響を排除するようにユーザーに報知したり、インクカートリッジの交換表示を行ったりする必要があるのは、インクカートリッジ内の液体が非残存状態(ニアエンド)である場合である。つまり、インクカートリッジ内の液体が、残存状態から非残存状態に移行する際に、光センサーによる残存状態の判定を行う必要があるのであって、例えばドットカウントなどにより、インクカートリッジ内の液体が残存状態であると判定できる場合には、光センサーによる残存状態判定処理を行う必要性は高くない。従って、この場合には、必ずしも印刷を停止する必要はない。このように、光センサーが外乱光により悪影響を受けている場合には、液体消費装置は、誤って非残存状態を検出してしまい、印刷を停止させる必要がないにも関わらず、印刷を停止させ、結果的に印刷が終了するまでに時間がかかることがあった。
よって、本実施形態の液体消費装置では、光センサーの受光部が外乱光を受光しており、光センサーの検出信号に基づいて、インクカートリッジ内の液体が非残存状態であると誤って判定した場合であっても、例えばドットカウント等の他の方法により、液体が残存状態である(ニアエンドでない)と判定できる場合には、印刷を続行し、すぐには印刷を停止しないようにする。
具体的には、後述する図3に示すように、本実施形態の液体消費装置200は、液体収容容器(IC1〜IC4に対応)の液体残量を推定する液体残量推定部150と、発光部82と受光部84とを有し、液体収容容器に設けられたプリズム320と対向可能な光センサー80と、光センサー80から得られる検出信号に基づいて、液体収容容器内における液体の残存状態判定処理を行い、印刷の制御を行う制御部100と、を含む。そして、制御部100は、検出信号に基づいて、液体収容容器内の液体が非残存状態であると判定したが、液体残量推定部150により推定された液体残量が所与の残量以上であると判定した場合には、印刷を続行する。
例えば、後述する図7(B)に示す例のように、外乱光NLを受光している光センサー80から得られる検出信号に基づいて、制御部100が、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態であると誤って判定したとする。さらに、制御部100が、液体残量推定部150によるドットカウントで推定されたインクIKの残量が、所与の残量以上であると判定したとする。本実施形態では、この場合に制御部100が印刷を停止せずに、印刷を続行する。
このように、液体収容容器内の液体が残存状態であり、印刷を停止する必要がないと判定できる場合に、印刷を続行することができる。よって、本実施形態の液体消費装置は、印刷中に印刷を停止する頻度を抑制することが可能となる。これにより、印刷を終了するまでの時間を短縮することが可能になる。さらには、印刷が失敗しない範囲で可能な限り、液体収容容器の交換指示を出さないようにするため、液体収容容器内の印刷に使用することが可能な液体の量を、実質的に増やすこと等が可能になる。
また、制御部100は、検出信号に基づいて液体が非残存状態であると判定し、液体残量推定部150により推定された液体残量が所与の残量よりも少ないと判定した場合には、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する外乱光判定処理を行う。
例えば、後述する図7(C)及び図7(D)に示す例のように、外乱光NLを受光している可能性のある光センサー80から得られる検出信号に基づいて、制御部100が、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態であると判定したとする。さらに、制御部100が、液体残量推定部150によるドットカウントで推定されたインクIKの残量が、所与の残量よりも少ないと判定したとする。この場合には、制御部100は、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する外乱光判定処理を行う。この外乱光判定処理は、光センサー80からの検出信号に基づいて行う残存状態判定処理の結果が、信頼できるものであるか否かを判定するために行うものである。
本実施形態では、前述したように、液体が非残存状態であると判定し、推定された液体残量が所与の残量よりも少ないと判定した場合に、外乱光判定処理を行うため、外乱光判定処理を行う頻度を抑制することが可能になる。すなわち、ドットカウントにより液体が残存状態であると断定できる時に、不要な外乱光判定処理を行わずに済むようになる。
そして、外乱光判定処理において、図7(C)の例のように、外乱光の影響を受けていないと判定された場合には、光センサー80からの検出信号に基づいて行う残存状態判定処理は、信頼できるものであると判定する。すなわち、制御部100は、外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対する外乱光の影響が無いと判定した場合に、液体が非残存状態であることを確定する。
これにより、光センサーによる液体の残存状態判定処理に外乱光の悪影響がないと判定でき、かつ液体が非残存状態であると判定した場合に、使用者に液体収容容器の交換指示を報知することが可能になる。
一方、例えば、図7(D)の例のように、外乱光の影響を受けていると判定した場合には、光センサー80からの検出信号に基づいて行う残存状態判定処理は、信頼できないものであると判定し、印刷を停止し、使用者に対して、外乱光による悪影響を受けていることを報知する。
これにより、光センサーによる液体の残存状態判定処理を行う必要があるが、外乱光の影響により精度良く残存状態の判定ができない時にだけ、使用者に外乱光の影響を排除する指示を報知すること等が可能になる。
また実際には、液体消費装置200は、例えば後述する図3に示すように複数の液体収容容器(IC1〜IC4)を有している。そして、液体残量推定部150は、複数の液体収容容器のうちの各液体収容容器について、液体残量を推定する。さらに、制御部100は、光センサー80から得られる各液体収容容器についての検出信号に基づいて、残存状態判定処理を行い、液体残量推定部150により推定された液体残量と、残存状態判定処理の結果とに基づいて、液体収容容器毎に、印刷を続行するか否かを判定する。
これにより、複数の液体収容容器のうちの各液体収容容器について、液体の残存状態を判定し、液体収容容器毎に、交換指示を報知することが可能になる。
以下、本実施形態の液体消費装置について詳細に説明する。まず、液体消費装置の基本構成及びインクカートリッジの構成例について説明した後、液体消費装置の詳細な構成例を説明し、さらに液体の残存状態の判定手法(インクニアエンドの検出手法)について説明する。その後、本実施形態の処理の詳細についてフローチャートを用いて説明する。
2.印刷装置の基本構成、インクカートリッジ
図1は、本実施形態における印刷装置(液体消費装置の一例である。)の要部を示す斜視図である。図1には、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向を示す。印刷装置の通常の使用姿勢において、印刷装置の正面方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とする。例えばX方向を例にとると、矢印の向く方向を+X方向(又は単にX方向)と呼び、その反対方向を−X方向と呼ぶ。
図1の印刷装置は、インクカートリッジIC1〜IC4(液体収容容器、液体収容部)と、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能に収容するホルダー21を備えるキャリッジ20と、ケーブル30と、紙送りモーター40と、キャリッジモーター50と、キャリッジ駆動ベルト55と、光センサー80(検出部)を含む。なお、ホルダー21とキャリッジ20は一体の部材として形成されてもよいし、別体の部材として形成されてキャリッジ20にホルダー21が組み付けられてもよい。
インクカートリッジIC1〜IC4には、それぞれ一色ずつのインク(液体、印刷材)が収容される。ホルダー21には、インクカートリッジIC1〜IC4が着脱可能に装着される。キャリッジ20の−Z方向の面には、ヘッドが設けられている。インクカートリッジIC1〜IC4から供給されるインクは、ヘッドから記録媒体に向かって吐出される。記録媒体は、例えば印刷用紙である。キャリッジ20は、ケーブル30により制御部(後述する図3の制御部100)に接続されており、このケーブル30を介して制御部により吐出制御が行われる。紙送りモーター40は、紙送りローラー45(図3に記載)を回転駆動し、図1に示すX方向に印刷用紙を送る。キャリッジモーター50は、キャリッジ駆動ベルト55を駆動し、キャリッジ20を±Y方向に移動させる。これらの吐出や紙送り、キャリッジ20の移動を制御部が制御することにより印刷動作が行われる。なお以下では、キャリッジ20を移動させる±Y方向を「主走査方向」と呼び、印刷用紙を紙送りするX方向を「副走査方向」と呼ぶ。
光センサー80は、インクカートリッジIC1〜IC4のインク残存状態を検出するための信号を出力する。具体的には、光センサー80は、インクカートリッジIC1〜IC4に設けられたプリズム(後述する図2のプリズム320)へ光を照射する発光部82(発光素子)と、プリズムからの反射光を受光して電気信号に変換する受光部84(受光素子)と、を含む。例えば、発光部82はLED(Light Emission Diode)により構成され、受光部84はフォトトランジスターにより構成される。
次に図2について説明する。図2は、インクカートリッジICの要部を示す斜視図である。図2に示すインクカートリッジICは、図1のインクカートリッジIC1〜IC4の各インクカートリッジに対応する。
インクカートリッジICは、インクを収容する直方体(略直方体を含む)のインク収容部300と、回路基板350(基板)と、インクカートリッジICをホルダー21に着脱するためのレバー340と、ヘッドにインクを供給するインク供給口330と、インクカートリッジICの底面310に設けられたプリズム320と、を含む。回路基板350の裏面には、インクカートリッジICに関する情報を記憶する記憶装置352が実装されている。回路基板350の表面には、記憶装置352に電気的に接続される複数の端子354が配置されている。これらの複数の端子354は、インクカートリッジICがホルダー21に装着された時に、ホルダー21に設けられた複数の本体側端子を介して、本体側の制御部100に電気的に接続される。記憶装置352としては、例えばEEPROM等の不揮発性メモリーを用いることができる。
プリズム320は、発光部82からの光に対して透明な部材で構成され、例えばポリプロピレンにより構成される。プリズム320は、発光部82からの光が入射する入射面が、インクカートリッジICの底面310に露出するように設けられる。底面310は、図1のホルダー21にインクカートリッジICが装着された場合に−Z方向側に向く面である。ホルダー21には、発光部82からの光をプリズム320の入射面に入射させるための開口が設けられている。即ち、ホルダー21を備えたキャリッジ20が図1の主走査方向(±Y方向)に移動すると、インクカートリッジIC1〜IC4が、順次、光センサー80の上(+Z方向)を通過し、各インクカートリッジのプリズム320からの反射光が受光部84により受光される。そして、光センサー80は、受光部84の受光結果を、キャリッジ20の位置に対応したセンサー出力信号(受光結果信号)として出力する。本実施形態では、このキャリッジ20の位置に対応したセンサー出力信号に基づいて、各インクカートリッジのインクニアエンドを検出する。
ここで、インクニアエンドとは、インク収容部300に収容されたインクの残量や液面レベルが所定値以下となり、インクカートリッジICのインク量が残り少ない状態のことである。例えば、光センサーによりインクニアエンドが検出された後に印刷を続行し、インクニアエンドを検出した後に、液体残量推定部150が推定するインク消費量が所定の量を超えた場合に、ヘッドがインクを吐出しなくなる可能性のある状態である。なお、インクニアエンドのことを非残存状態とも言う。あるいは、光センサーがインクニアエンドを検出した時点で、空打ち状態となる可能性がある状態であってもよい。空打ち状態となる可能性がある状態になったときには、印刷装置は印刷を停止する。
3.印刷装置の詳細な構成
図3に、本実施形態における印刷装置の詳細な構成例を示す。図3では、第1の方向D1を主走査方向とし、第1の方向D1に直交する第2の方向D2を副走査方向とする。なお以下では、光センサー80が出力する受光結果信号が、電圧信号(検出信号)である場合を例に説明する。
図3の印刷装置200は、インクカートリッジIC1〜IC4と、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能に保持する(不図示の)ホルダー21を備えるキャリッジ20と、紙送りモーター40と、紙送りローラー45と、キャリッジモーター50と、キャリッジ駆動ベルト55と、A/D変換部70と、光センサー80と、制御部100と、液体残量推定部150と、記憶部190と、表示部210と、インターフェース部(I/F部)220と、を含む。なお、図1で説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。また、印刷装置200は、図3の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
A/D変換部70は、光センサー80からの検出信号をA/D変換し、そのA/D変換後のデジタル信号を制御部100へ出力する。具体的には、A/D変換部70は、例えばロータリーエンコーダーのカウント値や制御部100を構成するCPUの割り込み周期等に応じた所定の位置間隔で、検出信号をサンプリングし、複数個のサンプリング電圧を取得する。例えば、1個のカートリッジが光センサー80の上を通過するときに、数10個のサンプリング電圧を取得する。
制御部100は、駆動制御部110と、検出制御部120と、位置特定部140と、残存状態判定部160と、外乱光判定部180とを含む。制御部100は、CPU等のプロセッサーや、プロセッサー上で動作するプログラムにより実現される。例えばROMに記憶されたプログラムが、記憶部190に展開され、このプログラムをプロセッサーが実行することで、制御部100の各部の処理が実行される。なお制御部100を専用のASICにより実現することも可能である。また、外乱光判定部180の処理の詳細は後述する。
駆動制御部110は、印刷装置200の駆動部の制御を行う。具体的には、駆動部であるキャリッジモーター50の制御を行う。キャリッジモーター50を制御して、キャリッジ20を移動させる制御を行う。これにより、キャリッジ20に備えられるホルダー21とヘッド22を移動させる駆動が、キャリッジモーター50により行われるようになる。
検出制御部120は、光センサー80の各種の制御を行う。例えば光センサー80の発光部82の制御を行う。例えば検出制御部120は、光センサー80からの検出信号等に基づいて発光部82の発光量を決定する処理を行う。そして決定された発光量に基づいてPWM信号を生成し、発光部82の発光量を制御する。或いは検出制御部120は、受光部84の受光結果に基づき行われるインクニアエンドの閾値の決定処理なども行う。
位置特定部140は、主走査方向D1におけるキャリッジ20(ホルダー21)の位置を特定する処理を行う。キャリッジの位置が特定されると、主走査方向D1における各インクカートリッジICのプリズムが光センサーの直上となる位置(光センサーと対向する位置ともいう。)も特定される。より具体的には、キャリッジモーター50にはロータリーエンコーダーが設けられており、位置特定部140は、ロータリーエンコーダーのカウント値に基づいてキャリッジ20の移動量を特定し、印刷の各パス中におけるキャリッジ20の位置を特定する。なお、ロータリーエンコーダーのカウント値と、各インクカートリッジICのプリズムが光センサーと対向する位置は、対応がつけられている。
残存状態判定部160は、インクカートリッジのインクの残存状態判定処理を行う。例えば残存状態判定部160は、光センサー80と各インクカートリッジICが対向する位置にあるときの光センサー80からの検出信号(検出電圧)に基づいて、各インクカートリッジにインクが残存しているか否かの判定処理(インクニアエンドの判定処理)を行う。具体的には、光センサー80からの検出信号である検出電圧は、A/D変換部70によりA/D変換され、デジタル信号として制御部100に入力される。そして制御部100の残存状態判定部160は、このデジタル信号に変換された検出電圧に基づいて、検出電圧と閾値との比較処理を行って、インクの残存状態判定処理を行う。そして、インクが非残存状態であると判定されたインクカートリッジ(インクニアエンドであると判定されたインクカートリッジ)については、表示部210に対して、或いはI/F部220を介して接続されるPC(パーソナルコンピューター)250の表示部に対して、インク交換を知らせるアラームを表示させ、ユーザーにインクカートリッジの交換を促す。
次に、液体残量推定部150は、インク残量(インク量情報もしくは液体量情報)及びインク消費量の推定処理を行う。例えばヘッド22からの印刷のために使用されたインクの吐出数のドットカウント値に基づいて、インクの消費量を推定する。具体的には、ヘッド22から噴射されるインク滴の数を計数し、計数されたインク滴の数とインク滴当たりの質量とを積算することでインクの消費量(使用量)を算出する。この消費量には、印刷のために消費されたインク量、ヘッドのクリーニングのために消費されたインク量が含まれる。そして、各インクカートリッジの初期充填量から、算出された消費量を差し引くことで、インク残量を推定する。印刷実行中には、印刷のパス毎にインク残量を更新して記憶部190に記憶している。このようにして推定されたインク残量は、図2のインクカートリッジIC毎の記憶装置352に書き込まれて記憶される。そして、印刷装置200の起動時に、インクカートリッジICの記憶装置352からインク残量を読み出して取得し、記憶部190の残量記憶部194に記憶させる。そして、電源が投入されている間は、印刷の実行やヘッド22のクリーニング等に伴って、この残量記憶部194のインク残量を更新する。さらに、印刷装置200の電源オフ時や、インクカートリッジICの交換時、或いは、所定のインク量を消費するごとに、更新された推定インク残量が、インクカートリッジICの記憶装置352に書き戻される。
なお、以下では、インク量情報がインク残量である場合について説明するが、インク量情報は、インク消費量であってもよい。また、インク残量やインク消費量は、インクの重量データとして記憶されてもよいし、インクカートリッジICのインクの使用開始前の充填量に対する割合のデータとして記憶されてもよい。
記憶部190は、残量記憶部194を含む。残量記憶部194は、順次更新される、液体残量推定部150により推定されたインク残量を記憶する。また、記憶部190は、制御部100や液体残量推定部150のワーク領域となるもので、その機能はRAMやEEPROMのメモリーやHDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。
図15に光センサー80の具体的な構成例を示す。なお光センサー80の構成は図15に限定されず、種々の変形実施が可能である。
光センサー80は、発光部82と受光部84を有する。発光部82は光を照射し、受光部84は光を受光する。光センサー80は、反射型のフォトインタラプタによって構成されている。光センサー80は、PWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティ比(オン時間とオフ時間の割合)を調整してLEDを発光させる。LEDから発光された光は、インクカートリッジIC内のプリズム320で反射してフォトトランジスターに入射した後、電流値に変換される。この電流値は抵抗R1により電圧Vcに変換され、この電圧VcがA/D変換部70によりA/D変換され、A/D変換後のデジタル信号が制御部100の残存状態判定部160に入力される。
このように本実施形態では光センサー80は発光部82と受光部84とを有し、インクカートリッジは、光センサー80の発光部82から出射された光をインクの残存状態に応じて反射するプリズム320を有する。そして制御部100は、プリズム320からの反射光を光センサー80の受光部84が受光することで得られた検出信号(A/D変換後の検出電圧)に基づいて、インクカートリッジのインクの残存状態判定処理を行う。
4.インクニアエンドの検出手法
次に、インクニアエンドの検出手法について説明する。図4、図5には、インクカートリッジICのプリズム320を通過するYZ平面の断面図を示す。また、図4、図5では、プリズム320と光センサー80の位置関係が、インクニアエンドを検出可能な位置関係(インクカートリッジのプリズムが光センサーと対向する位置関係)となったときの状態を示している。
図4に示すように、プリズム320の入射面EFには、プリズム320を形成するときに生じる変形を抑制するために、空洞部BPが設けられている。ホルダー21には開口が設けられており、インクカートリッジICがホルダー21に装着されたときに開口を通して入射面EFと光センサー80が対向するように構成されている。具体的にホルダー21の開口OP1は、インクカートリッジICのプリズム320が、光センサー80と対向する位置関係にある場合に、発光部82から出射される光EMLが、開口OP1を通って、プリズム320の斜面SF1に入射可能な位置に設けられている。一方、ホルダー21の開口OP2は、プリズム320の斜面SF2に反射された反射光RTLが、開口OP2を通って、受光部84に入射可能な位置に設けられている。つまり、ホルダー21において開口(OP1及びOP2)は、光センサー80における発光部82と受光部84の間隔と、同じ間隔で設けられている。また、プリズム320の斜面SF1、SF2は、図2に示すインク収容部300の内側を向いており、インク収容部300にインクIKが満たされている場合には斜面SF1、SF2はインクIKに接する。斜面SF1は例えば斜面SF2に直交する面であり、斜面SF1と斜面SF2は、図1のXZ平面に平行な平面に対して対称となるように配置される。
インクカートリッジICにインクIKが満たされている場合、発光部82からプリズム320に入射した光EMLは、ホルダー21の開口を通り、斜面SF1からインクIK内に入射する(光FCL)。この場合、斜面SF1、SF2で反射される光RTLは非常に少なくなるため、受光部84はほとんど光を受光しない。例えば、インクの屈折率を水の屈折率とほぼ同様の1.5と仮定し、プリズム320をポリプロピレンにより構成する場合、斜面SF1、SF2における全反射の臨界角は約64度である。入射角は45度なので、斜面SF1、SF2では全反射されず、入射光EMLはインクIK内に入射する。
次に、図5に示すように、インクカートリッジIC内のインクIKが印刷のために消費され、インクカートリッジICにインクIKが満たされていない場合を考える。プリズム320の斜面SF1、SF2のうち、少なくとも発光部82からの光が照射される部分が、空気に接しているとする。この場合、発光部82からプリズム320に入射した光EMLは、斜面SF1、SF2で全反射され、入射面EFからプリズム320の外へ再び出射する(光RTL)。受光部84は、全反射した光RTLを受光するため、インクで満たされている場合の検出電圧とは異なる(基準電圧との差が大きい)検出電圧が得られる。例えば、空気の屈折率を1とし、プリズム320をポリプロピレンにより構成する場合、斜面SF1、SF2における全反射の臨界角は約43度である。入射角は45度なので、入射光EMLは斜面SF1、SF2で全反射される。
次に、図6に、1個のインクカートリッジICが光センサー80の上を通過した場合の検出電圧の特性例を示す。図6の横軸は、プリズム320と光センサー80の相対的な位置を表し、プリズム320の中心と光センサー80の中心が一致したときの位置(例えば図4に示すインクカートリッジICと光センサー80との位置関係)を“0”としている。なお、光センサー80の中心とは、主走査方向における発光部82と受光部84の中央である。また、図6の縦軸は、横軸の各位置において光センサー80から出力される検出電圧を表す。
そして、図6に示すように、受光部84の受光量がゼロに近いほど検出電圧が上限電圧Vmax(基準電圧)に近くなり、受光部84の受光量が多いほど検出電圧が下限電圧Vminに近くなる(基準電圧との差が大きくなる)。受光量が所定値を越えると、検出電圧が飽和して下限電圧Vminとなる。上限電圧Vmaxと下限電圧Vminは、例えば、図4に示した受光部84がコレクタ端子に出力する電圧範囲の上限電圧と下限電圧に対応する。
図6に示すように、検出電圧は、光センサー80とプリズム320との相対位置に応じて変化する。まず、SIKは、図4で説明したインクカートリッジICがインクIKで満たされている場合の検出電圧特性である。この場合、受光部84の受光量は小さいため、位置“0”において検出電圧はVmaxに近くなる。位置“0”から、プリズム320の中心と光センサー80の中心との相対位置が主走査方向にずれた位置pk1、pk2には、プリズム入射面EFからの反射光によってピークSpk1、Spk2が生じる。
一方、SEPは、図5で説明したインクカートリッジICがインクIKで満たされていない場合の検出電圧特性である。この場合、受光部84の受光量は多いため、位置“0”において検出電圧はVminに達する(あるいは、近くなる)。このように、インクカートリッジICがインクIKで満たされているか否かによって検出電圧の特性が大きく異なっており、本実施形態では、この検出電圧の特性の違いを検出することにより、インクカートリッジのインクニアエンドを検出する。
具体的には、検出電圧特性SIKのピーク値Vpk1に基づいて、ピーク値Vpk1と下限電圧Vminとの間に閾値Vthを設定する。そして、インクカートリッジICが光センサー80の上を通る検出範囲となったときに、光センサー80の検出電圧が閾値Vthよりも小さい場合には、インクニアエンド(インクが非残存状態)であると判定し、検出電圧が閾値Vth以上である場合には、インクが残存状態であると判定する。
5.処理の詳細
次に、本実施形態の処理の流れを説明する前に、図7(A)〜図7(D)を用いて、インクの残存状態と外乱光の関係について具体例を説明する。
図7(A)は、インクカートリッジIC内にインクIKが十分に充填されている場合の例である。この場合には、インクカートリッジIC内のインクIKは残存状態であると言える。そして、光センサー80の受光部84が外乱光を受光していないため、この状態で光センサー80から得られる検出信号に基づき残存状態判定処理を行えば、インクは残存状態であると正しく判定することが可能である。
図7(B)は、図7(A)と同様に、インクカートリッジIC内のインクIKが残存状態であり、かつ光センサー80の受光部84が外乱光NLを受光している場合の具体例である。この状態で、光センサー80から得られる検出信号に基づき残存状態判定処理を行うと、受光部84は、発光部82から照射された光がプリズムによって反射された反射光をほとんど受光しないが、外乱光NLを受光してしまう。そのため、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態であると、誤って判定してしまうことがある。この場合には、インクが残存状態であるにも関わらず、印刷を停止して、使用者に対して、インクカートリッジICの交換指示を出してしまうことがあるため問題となる。
図7(C)は、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態(ニアエンド)である場合の例である。図7(C)の例では、図7(A)の例と同様に、光センサー80の受光部84が外乱光を受光していない。そのため、この状態で光センサー80から得られる検出信号に基づき残存状態判定処理を行えば、インクは非残存状態であると正しく判定することが可能である。
図7(D)は、図7(C)と同様に、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態であり、かつ光センサー80の受光部84が外乱光NLを受光している場合の具体例である。この状態で、光センサー80から得られる検出信号に基づき残存状態判定処理を行うと、受光部84は、発光部82から照射された光がプリズムによって反射された反射光と、外乱光NLの両方を受光する。そのため、多くの場合には、インクカートリッジIC内のインクIKが非残存状態であると、正しく判定することにはなり、結果的に実害はないとも考えられる。ただし、外乱光の影響があるため、正常に残存状態判定処理を行っているとは言えない。光センサー80からの検出信号に基づいて、液体残量を推定する場合には、外乱光の影響で液体残量の推定を誤ることもあり、問題となる。
次に、図8及び図9のフローチャートを用いて、本実施形態の処理の詳細について説明する。また、以下の説明では、一つのインクカートリッジに対する処理を説明する。ただし、前述したように実際には、液体消費装置200は、複数のインクカートリッジを有しており、制御部100及び液体残量推定部150は、インクカートリッジ毎に図8及び図9のフローチャートの各処理を行うものとする。
まず、印刷JOBを受け付けると、制御部100(主に駆動制御部110、位置特定部140)が、キャリッジモーター50の制御を行って、1回のパスによる印刷を行う(S100)。なお、印刷に伴う+Y方向又は−Y方向へのヘッド22の移動を1パスとする。例えば、両方向への移動の際に印刷をする場合には1往復で2パスとなる。そして、制御部100(主に検出制御部120、残存状態判定部160)が、1パスの印刷中に発光部を発光させ、光センサー80から得られる検出信号に基づいて、インクカートリッジ内における液体の残存状態判定処理を行う(S101)。なお、この残存状態判定処理は、図4〜図6を用いて前述したインクニアエンドの検出手法に従って行う。
そして、制御部100(残存状態判定部160)は、残存状態判定処理においてインクが残存している、すなわち前述した図7(A)のように、インクが残存状態であると判定した場合には(S102)、1ページ分の印刷が終了したか否かを判定する(S103)。さらに、制御部100が1ページ分の印刷が終了したと判定した場合には、次のページの印刷に移行する(S104)。一方、制御部100が1ページ分の印刷がまだ終了していないと判定した場合には、同ページの印刷を続行するために、次のパスへ移行し(S105)、ステップS100の処理から、処理を繰り返す。
また、ステップS101の残存状態判定処理において、インクが非残存状態であると、制御部100(残存状態判定部160)が判定した場合には(S102)、記憶部190は非残存状態の検出情報を記憶する。なお、非残存状態の検出情報とは、インクが非残存状態である可能性があることを示す情報(フラグ)であり、非残存状態が確定したことを示す情報ではない。なぜなら、この時点では、光センサー80が外乱光の悪影響を受けているか否かが分からないため、光センサー80の検出信号に基づいて判定されたインクの残存状態が実際の状態と一致しているとは言い切れないためである。そのため、この場合には、インクカートリッジ内のインクと光センサー80は、前述した図7(B)〜図7(D)のいずれかの状態にあると考えられる。
次に、ドットカウントにより推定された液体残量が、所与の残量(規定値)以上であるか否かを、制御部100が判定する(S106)。なお、本ステップにおける液体残量は、液体残量推定部150が前述した方法でドットカウントを行って推定したものである。
ここで、ステップS106の処理の詳細について、図10(A)及び図10(B)を用いて説明する。図10(A)及び図10(B)には、インクカートリッジIC内のインクIKが残存状態ではあるが、非残存状態に近づいている様子を示す。前提として、図10(A)及び図10(B)の例では、インクカートリッジIC内のインクIKの残量が第1の残量TH1以上である場合に、残存状態であると判定し、インクカートリッジIC内のインクIKの残量が第1の残量TH1よりも少ない場合に、非残存状態であると判定するものとする。つまり、インク液面が図10(A)及び図10(B)に示す範囲FIL内にある場合には、残存状態であると判定し、インク液面が図10(A)及び図10(B)に示す範囲EMP内にある場合には、非残存状態であると判定する。
インクIKの残存状態の精密な判定処理は、前述した通り、光センサー80により行うが、実際に厳密な判定が必要となるのは、範囲FILと範囲EMPの境界付近の範囲AR2内にインク液面がある場合である。一方で、範囲AR2よりも上方の範囲AR1内にインク液面がある場合には、インクIKが十分に残っており、しばらく印刷を続けても、非残存状態にはならないため、今すぐに光センサー80の検出信号に基づく残存状態判定処理を行う必要はない。
そのため、ステップS106では、インク液面が範囲AR1内にあるのか、範囲AR2内にあるのかを、第2の残量TH2(前述した所与の残量)以上である否かにより判定する。第2の残量TH2は、推定残量部による残量に、印刷装置の固体差によるばらつきがあったとしても必ずインクが残っていると推定される量で設定されている。そして、その結果に基づいて、今すぐに光センサー80の検出信号に基づく外乱光判定処理を行う必要があるか否かを判定する。本実施形態では、ドットカウントにより推定されたインク残量に基づいて、インクが非残存状態(第2の残量TH2)に近付いているか否かを大まかに判定し、インクが非残存状態に近付いている場合に、光センサー80の検出信号に基づいて、インクの残存状態が正しく検出されているかどうかを判定する。
そして、ドットカウントにより推定された液体残量が所与の残量TH2以上であると、制御部100が判定した場合(S106)、つまり図10(B)の例のような場合には、光センサー80から得られる検出信号によるインクの残存状態判定処理を行う必要がないと判断できる。前述したように、インクが残存状態から非残存状態へ移行する間際(又は移行後)には、光センサー80から得られる検出信号に基づいて残存状態を精密に判定する必要があるが、インクが十分あると判定できる時にまで、光センサー80の検出信号に基づく残存状態判定処理を行う必要はないためである。そのため、この場合には、制御部100は、ステップS101の残存状態判定処理の結果が誤っていると判定する。つまり、この場合には、図7(B)の例のように、インクIKは実際には残存状態であったものの、外乱光等の影響により、非残存状態であると誤って判定されていたと考えられる。そして、制御部100は、記憶部190に記憶された検出情報の破棄処理を行う(S107)。この検出情報の破棄処理は、記憶部190に記憶された非残存状態の検出情報を消去する処理である。外乱光により光センサー80に非残存状態を検出したとしても、インクは残っていると推定されるので印刷は続行できる。そのため、ステップS107後には、ステップS102でインクが残存状態であると判定した場合と同様に、印刷を続行する(S103〜S105)。
つまり、制御部100は、複数のインクカートリッジのうちの第1のインクカートリッジ内の液体が非残存状態であると判定し、液体残量推定部150により推定された第1のインクカートリッジの液体残量が所与の残量以上であると判定した場合に、第1のインクカートリッジの液体が非残存状態であるという判定を取り消して、印刷を続行する。
これにより、残存状態判定処理に対して、外乱光による悪影響がある場合でも、インクが残存状態であると判定できる場合に、印刷を続行すること等が可能になる。
一方で、ステップS106において、ドットカウントにより推定された液体残量が所与の残量TH2よりも小さいと、制御部100が判定した場合、つまり図10(A)の例のような場合には、インクが残存状態から非残存状態へと移行する間際である、或いは既に非残存状態に移行後である可能性がある。この時点では、インクカートリッジ内のインクと光センサー80は、前述した図7(C)又は図7(D)のいずれかの状態にあると考えられる。よって、この場合には、ステップS101で行った残存状態判定処理に、外乱光の悪影響があったか否かを判定するための外乱光判定処理を行う。
つまり、制御部100は、印刷実行中の残存状態判定処理(S101)において、液体が非残存状態であると判定した場合に、外乱光判定処理を行う(S108)。
具体的には、制御部100(主に検出制御部120)が光センサー80を消灯して、制御部100(主に外乱光判定部180)が、外乱光判定処理を行う(S108)。
また、この際には、制御部100は、光センサー80とインクカートリッジのプリズムとが互いに対向する位置関係となった場合に、外乱光判定処理を行う。光センサー80とインクカートリッジのプリズムとが互いに対向する位置関係とは、例えば図4に示すインクカートリッジICと光センサー80との位置関係である。
まとめると、液体消費装置200は、光センサー80又はインクカートリッジが搭載され、往復移動するキャリッジ20を含む。そして、制御部100は、印刷実行時にインクカートリッジと光センサー80との相対的な位置関係を変化させ、所与の印字パスでは光センサー80を発光させて、光センサー80から得られる検出信号に基づいて残存状態判定処理を行い、所与の印字パスとは異なる印字パスでは光センサー80を消灯させて、光センサー80から得られる検出信号に基づいて外乱光判定処理を行う。
ここで、図11(A)に液体の残存状態判定処理時の様子を示し、図11(B)に外乱光判定処理時の様子を示す。図11(A)及び図11(B)では、ホルダー21がインクカートリッジIC1〜IC4を収容しており、インクカートリッジIC1と光センサー80とが互いに対向する位置関係にある。また、図11(A)及び図11(B)のどちらの場合にも、光センサー80の受光部84に外乱光NLが入射されている。
図11(A)に示すように、液体の残存状態判定処理では、光センサー80の発光部82がインクカートリッジIC1のプリズム320に対して、光を照射しており、プリズム320からの反射光を受光部84が受光することにより、液体の残存状態を判定する。ただし、この際には、受光部84が外乱光NLも同時に受光してしまうため、判定処理結果を誤ることがある。
これに対して、外乱光判定処理では、図11(B)に示すように、インクカートリッジIC1と光センサー80を、図11(A)と同じ位置関係にし、かつ発光部82を消灯して、図11(A)の状態で受光部84が受光する外乱光NLを検出する。なお、外乱光判定処理自体は、図4〜図6を用いて説明したインクニアエンドの検出手法と同様に行う。例えば、光センサー80を消灯しているにも関わらず、検出電圧がVmaxよりも所定レベル低下しているときには、外乱光ありと判定し、検出電圧が上限電圧Vmax(基準電圧)に近いままの場合には、外乱光なしと判定する。
これにより、光センサー80の受光部84が、発光部82により照射される光を受光せずに、外乱光だけを検出して、液体の残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定すること等が可能になる。
また、インクカートリッジと光センサー80を対向する位置関係にすることにより、そのインクカートリッジにおいて、光センサー80を用いてインクの残存状態判定処理を行う際に光センサー80が受光してしまう外乱光を、検出することが可能になる。
次に、ステップS109において、光センサー80が外乱光を受光していないと、制御部100が判定した場合には(S109)、ステップS101の残存状態判定処理の結果が正しいと判定し、インクが非残存状態であることを確定する(S110)。つまり、この場合には、図7(C)の例のように、インクIKは実際に非残存状態であり、外乱光等の影響を受けずに、非残存状態であると正しく判定されていたと考えられる。そしてこの際には、印刷を停止して、使用者に対して、インクカートリッジの交換を促す表示を行ったりする。
一方、ステップS109において、光センサー80が外乱光を受光していると、制御部100が判定した場合には(S109)、ステップS101の残存状態判定処理の結果が誤りを含んでいる可能性があると判定し、ステップS107と同様に、制御部100は、記憶部190に記憶された検出情報の破棄処理を行う(S111)。このように、ステップS111に進んだ場合には、ステップS101における光センサー80の検出信号に基づく残存状態判定処理の結果は、外乱光により信頼性の低いものであると判定できる。そのため、直ちにインクが非残存状態であるとは判定できない。しかし、液体残量推定部150のドットカウントにより推定された液体残量は、所与の残量よりも小さいと判定されているため、少なくとも図7(D)又は図10(A)の例のように、非残存状態に近付いている又は既に非残存状態であると判定できる。つまり、図10(A)の例で説明すれば、少なくともインク液面が範囲AR2内にあるが、インクが非残存状態である範囲EMP内に、インク液面があるとは断定できない状態である。
ここで、ステップS110又はステップS111に至る処理の流れをまとめると、制御部100は、例えば複数のインクカートリッジのうちの第2のインクカートリッジ内の液体が非残存状態であると判定し(S102)、液体残量推定部150により推定された第2のインクカートリッジの液体残量が所与の残量よりも小さいと判定した場合には(S106)、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する外乱光判定処理を行う(S108)。さらに、制御部100は、外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響が無いと判定した場合に(S109)、第2のインクカートリッジの液体が非残存状態であることを確定し(S110)、残存状態判定処理に対して外乱光の影響があると判定した場合に、第2のインクカートリッジの液体が非残存状態であるという判定を取り消して(S111)、印刷を続行する(後述する図9のS112)。
これにより、光センサー80から得られる検出信号に基づく、液体の残存状態判定処理の結果が、正しいか否かを判定することが可能になる。
さらに本実施形態では、ステップS111に進んだ場合にも、現在行っている印刷が用紙(又はページ)の途中である場合には、この用紙への印刷が終わるまでは印刷を停止せずに、印刷を続行する。1枚の用紙の途中で印刷が停止してしまった場合には、使用者が再度印刷をやり直すケースが多く、その用紙への印刷が無駄になってしまうことが多いためである。また、インクが非残存状態であると判定された場合であっても、用紙1枚程度の印刷ならば、インクカートリッジ内に残っているインクで印刷可能なことがほとんどだからである。
つまり本実施形態では、制御部100は、光センサー80の発光時のプリズム320からの反射により、光センサー80で検出された検出信号に基づいて、インクカートリッジ内における液体の残存状態判定処理を行う(S101)。そして、制御部100は、光センサー80の消灯時のプリズム320からの反射により、光センサー80で検出された検出信号に基づいて、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する外乱光判定処理を行い(S108)、印刷実行中に、外乱光判定処理により外乱光の影響があると判定した場合であっても(S109)、印刷実行中の用紙の最後まで印刷を続行する。
これにより、1枚の用紙への印刷の途中で印刷を停止することを抑制することが可能になる。
具体的には、図8のステップS111の後に、図9のステップS112に示すように、印刷を続行する。そして、制御部100は、現在、印刷の被対象となっている用紙への印刷が終了したか否かを判定する(S113)。
そして、制御部100は、外乱光判定処理(S108)において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響があると判定した(S109)後も、印刷を続行し(S112)、所与の規定量の液体を消費する毎に(後述するS114)、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する第2の外乱光判定処理を行い(後述するS115)、第2の外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響がないと判定した場合に(後述するS116)、残存状態判定処理を行う(S101)。
これにより、印刷を継続している間に、残存状態判定処理に対する外乱光の影響がなくなったか否かを判定することが可能になる。また、所与の規定量だけインクを消費する度に、第2の外乱光判定処理を行うため、印刷中に外乱光による悪影響がなくなった場合に、外乱光による悪影響があると判定された状態から、外乱光による悪影響がなくなった状態に復帰したことを、早く確認することが可能になる。
具体的には、ステップS113において、現在の用紙への印刷が終了していないと判定した場合には、制御部100は、ステップS112の印刷において、規定値以上のインク量のインクを消費したか否か判定する(S114)。この際には、液体残量推定部150が、ドットカウントを行って、インクの消費量を算出する。そして、制御部100が、液体残量推定部150により推定されたインクの消費量が、規定値以上か否かを判定する。また、この際に推定されるインクの消費量は、ステップS112〜ステップS114のループ処理を行っている間に消費されたインク量である。後述するように、ステップS112〜ステップS114のループ処理を抜けた場合には、ステップS112で消費された液体残量推定部150により推定されるインク消費量がリセットされる。
そして、制御部100が、ステップS112の印刷において、規定値以上のインク量のインクを消費していないと判定した場合には(S114)、ステップS112の印刷処理へと戻る。
一方で、制御部100が、ステップS112の印刷において、規定値以上のインク量のインクを消費したと判定した場合には、ステップS108と同様に、制御部100が光センサー80を消灯して、第2の外乱光判定処理を行う(S108)。
この第2の外乱光判定処理は、ステップS112で印刷を継続している間に、外乱光が残存状態判定処理に悪影響を及ぼす環境が、使用者等により改善されたか否か(外乱光が遮断されたか否か)を判定するために行う処理である。第2の外乱光判定処理において、印刷を継続している間に、外乱光による悪影響が取り除かれたと判定できるのであれば(S116)、光センサー80の検出信号に基づいて、正確に液体の残存状態判定処理を行うことが可能になる。そのため、この場合にはステップS100へ戻る。
一方で、第2の外乱光判定処理において、ステップS112で印刷を継続している間も、外乱光による悪影響があり、環境が改善されていないと判定された場合には(S116)、制御部100は、空打ちの可能性があるか否かを判定する(S117)。具体的には、制御部100は、液体残量推定部150により推定されたインクの累積消費量が所与の閾値以上か否かを判定する。累積消費量とは、ステップS111以降に消費されたインクの量のことであり、ドットカウントにより液体残量推定部150に推定される。なお、累積消費量は、ステップS114で用いた消費量とは異なるものであり、ステップS112〜ステップS114のループを繰り返しても、リセットされずに累積される。
また、本実施形態では、前述したように、現在、印刷の被対象となっている用紙への印刷が終わるまでは、基本的に印刷を停止しない。しかし、例外的にその用紙への印刷に大量のインクを使用する場合などには、現在の用紙への印刷が全て終わっていない場合であっても、途中で印刷を停止しなければならないことがある。これは、インクがない状態で印刷を続行すると、インクの空打ちが発生してしまうためである。
具体的には、制御部100は、外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響があると判定した後に、所与の量以上の液体が消費されたと液体残量推定部150が推定した場合には(つまり、制御部100が、累積消費量が所与の量以上であると判定した場合には)(S117)、空打ちの可能性があると判定して、用紙に印刷する途中であっても印刷を停止する(S118)。なお、制御部100は、印刷を停止する際には、キャリッジの駆動を停止させる。そして、制御部100は、例えばインクカートリッジの交換指示のメッセージを表示部210に表示させる(S119)。
これにより、インクの空打ちを抑制すること等が可能になる。
一方で、制御部100が、インクの累積消費量が所与の量よりも少ないと判定した場合には(S117)、ステップS112に戻り、処理を繰り返す。
また、前述したステップS113において、現在の用紙への印刷が終了したと判定した場合には、区切りがよいため、この機会に外乱光判定処理やインクの残存状態判定処理をやり直す。前述したように、印刷を継続している間に、外乱光が残存状態判定処理に悪影響を及ぼす環境が改善されている可能性があり、環境が改善されている場合には、外乱光の悪影響がない状態で、正確にインクの残存状態を判定することが可能だからである。また、このタイミングであれば、各処理を行っている間、印刷を一時的に中断しても印刷待ち時間への影響が比較的少ないためである。
そこでまず、制御部100は、用紙1枚の印刷が終了した時に、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無を判定する第3の外乱光判定処理を行う(S120)。この第3の外乱光判定処理は、第2の外乱光判定処理と同様に、制御部100が光センサー80を消灯して行う。
これにより、用紙1枚分の印刷が終了したタイミングで、残存状態判定処理に対する外乱光の影響の有無が変化したか否かを判定すること等が可能になる。
次に、制御部100は、第3の外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響があると判定した場合には(S121)、外乱光がある旨を使用者に報知する(S122)。
これにより、用紙1枚分の印刷が終了したタイミングで、制御部100が、例えば印刷装置のカバーの開閉確認を指示するメッセージを表示部210に表示させること等が可能になる(S122)。
一方、制御部100は、第3の外乱光判定処理において、残存状態判定処理に対して外乱光の影響がないと判定した場合には、インクカートリッジ内における液体の第2の残存状態判定処理を行う(S123)。そして、制御部100は、第2の残存状態判定処理において、液体が非残存状態であると判定した場合には(S124)、非残存状態であるという判定結果を確定する(S125)。
これにより、用紙1枚分の印刷が終了したタイミングで、外乱光の悪影響がない場合に、インクが非残存状態であることを確かめること等が可能になる。
また、制御部100は、第2の残存状態判定処理において、液体が残存状態であると判定した場合には(S124)、次の用紙の印刷を行う(S126)。
これにより、用紙1枚分の印刷が終了したタイミングで、外乱光の悪影響がない場合に、インクが残存状態であると正しい判定をし直し、印刷を続行すること等が可能になる。以上が本実施形態の処理の流れである。
なお、ステップS110或いはステップS125で非残存状態が確定された場合には、ステップS101の後からのインクの累積消費量が所与の量となるまでは印刷を続行してもよい。
なお、以上では、インクカートリッジが搭載されるホルダー21及びヘッド22がキャリッジ20に搭載されるオンキャリッジ構成の場合に、本実施形態の手法を適用した場合を例にとり説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、インクカートリッジが搭載されるホルダー21がキャリッジ20上になく、印刷装置内の固定の位置にあるオフキャリッジの印刷装置でも適用できる。
図12はオフキャリッジの印刷装置に本発明を適用した場合を示す。光センサー80が、ヘッド22を備えるキャリッジ20に搭載され、キャリッジモーター50が、ヘッド22及び光センサー80が搭載されたキャリッジ20を、インクカートリッジのプリズム320と対向するように移動させる。この場合には制御部100は、キャリッジ20に搭載された光センサー80と、インクカートリッジとが、所与の位置関係(光センサー80によるインクカートリッジのインクの残存状態の検出が可能な位置関係)になるように、キャリッジモーター50により、光センサー80を備えるキャリッジ20を移動させる制御を行うことになる。
即ち、図11(A)及び図11(B)では、光センサー80の位置(検出位置)が固定で、キャリッジ20のホルダー21に搭載されたインクカートリッジの方が移動して、残存状態判定処理及び外乱光判定処理が行われている。これに対して図12では、インクカートリッジが、印刷装置に固定されており、ヘッド22及び光センサー80を搭載するキャリッジ20が、キャリッジモーター50の駆動により移動して、残存状態判定処理及び外乱光判定処理が行われる。このようにすることで、いわゆるオフキャリッジの印刷装置においても本実施形態の手法を適用することが可能になる。
6.比較例
次に、図13のフローチャートを用いて本実施形態の比較例を説明し、本実施形態の手法が比較例に対して優れている点について説明する。
図14は本実施形態と比較例の印刷装置200の外観図である。印刷装置200は、筐体65と筐体65に取り付けられたカバー66を備える。筐体はホルダー21と光センサー80を収容している。光センサー80はホルダー21の下方(−Z軸方向)に配置されているため、図14では図示を省略する。
図13で、比較例の制御部が実施する処理を説明する。比較例の印刷装置は、インクの残存状態判定処理に対する外乱光の影響を排除するために、実際に印刷を行う前に、印刷装置のカバー66が開いているか否かを判定する(S201)。比較例の印刷装置は、カバー66の開閉を検出可能なセンサーを備えている。
そして、比較例の印刷装置は、カバー66が開いていると判定した場合には、残存状態判定処理に対して外乱光の悪影響があると判定し、印刷を停止して(S202)、カバー66が開いている旨を表示部に表示する(S203)。
一方で、印刷装置は、カバー66が正しく閉じられていると判定した場合には、残存状態判定処理に対して外乱光の悪影響がないと判定し、1回のパスによる印刷を行う(S204)。その後に、印刷装置は、光センサーから得られる検出信号に基づいて、インクの残存状態判定処理を行う(S205)。そして、印刷装置は、残存状態判定処理において、インクが残存状態であると判定した場合には(S206)、次のパスの印刷へ移行し(S207)、ステップS201の前に戻る。
一方、残存状態判定処理において、インクが非残存状態であると判定した場合には(S206)、印刷装置は、推定された液体残量が所与の量以上であるか否かを判定する(S208)。そして、印刷装置は、推定された液体残量が所与の量以上であると判定した場合には、図8で前述した本実施形態の処理のステップS107と同様に、インクが非残存状態であるという判定結果を破棄し(S209)、次のパスの印刷へ移行し(S207)、ステップS201の前に戻る。
また、印刷装置は、推定された液体残量が所与の量よりも少ないと判定した場合には、インクが非残存状態であるという判定結果を確定する。(S210)。以上が、比較例の処理の流れである。
このように、比較例の場合は、カートリッジ内の残量に関わらず、カバー66が開いていたらキャリッジを停止するため、印字中にキャリッジを停止する頻度が上がる。これに対して、本実施形態では、液体残量推定部により推定された残量が所与の残量以上であれば、カバー66の開閉にかかわらず、印刷を続行する。つまり、カバーが開いており、光センサー80により外乱光の影響でインクカートリッジ内のインクの非残存状態が検出されても、空打ちの可能性がないと判断できれば印刷を継続することができる。
つまり、本実施形態の液体消費装置200は、液体収容容器の液体残量を推定する液体残量推定部150と、発光部82と受光部84とを有し、液体収容容器の液体の残存状態を検出するための検出信号を出力する光センサー80と、光センサー80から得られる検出信号に基づいて、液体収容容器内における液体の残存状態判定処理を行い、印刷の制御を行う制御部100と、光センサー80を収容し、カバー66を備える筐体65と、を含む。そして、制御部100は、液体残量推定部150により推定された液体残量が所与の残量以上であると判定した場合には、カバー66の開閉にかかわらず、印刷を続行する。
また、制御部100は、カバー66が開かれた状態で、検出信号に基づいて液体収容容器内の液体が非残存状態であると判定したが、液体残量推定部150により推定された液体残量が所与の残量以上であると判定した場合には、印刷を続行してもよい。
なお、前述した図9のステップS113の現在の用紙への印刷が終了しているか否かの判定は、印刷JOBが片面印刷であれば1ページ分が終了しているか否かの判定となる。印刷JOBが両面印刷であれば2ページ分の印刷、すなわち用紙1枚分の印刷が終了しているか否かの判定となる。
以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、液体消費装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。