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JP2015115343A - 窒化物半導体素子の製造方法 - Google Patents

窒化物半導体素子の製造方法 Download PDF

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JP2015115343A JP2013254015A JP2013254015A JP2015115343A JP 2015115343 A JP2015115343 A JP 2015115343A JP 2013254015 A JP2013254015 A JP 2013254015A JP 2013254015 A JP2013254015 A JP 2013254015A JP 2015115343 A JP2015115343 A JP 2015115343A
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Mayuko Fudeta
麻祐子 筆田
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和也 荒木
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英司 山田
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Abstract

【課題】発光効率に優れた窒化物半導体素子を製造する方法の提供。【解決手段】窒化物半導体素子の製造方法は、バンドギャップエネルギーが相対的に低くInを含む層である低バンドギャップ層とバンドギャップエネルギーが相対的に高い層である高バンドギャップ層とを少なくとも1組含む窒化物半導体素子を製造する方法である。高バンドギャップ層を形成する工程は、水素ガスが意図的に添加された雰囲気下で高バンドギャップ層の一部を成長させる工程を含む。水素ガスの濃度をH(%)とし、高バンドギャップ層の一部の成長速度をBとしたとき、下記式(1)、(2)を満たす。H≧0.0332?B−0.3222(B≰100nm/h)・・・式(1)H≧3(B>100nm/h) ・・・式(2)。【選択図】図2

Description

本発明は、窒化物半導体素子の製造方法に関する。
窒素を含むIII-V族化合物半導体材料(以下「窒化物半導体材料」と記す)は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光のエネルギーに相当するバンドギャップエネルギーを有する。そのため、窒化物半導体材料は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光を発する発光素子の材料、または、赤外領域から紫外領域の波長を有する光を受ける受光素子の材料などに有用である。
また、窒化物半導体材料を構成する原子間の結合が強く、窒化物半導体材料の絶縁破壊電圧が高く、窒化物半導体材料の飽和電子速度が大きい。これらのことから、窒化物半導体材料は、耐高温且つ高出力な高周波トランジスタなどの電子デバイスの材料としても有用である。さらに、窒化物半導体材料は、環境を害することがほとんどないので、取り扱い易い材料としても注目されている。
このような窒化物半導体材料を用いた窒化物半導体素子では、Inを含む半導体層(たとえばInGaN層またはAlGaInN層など)が用いられる。通常、In濃度が高くなるとバンドギャップエネルギーが小さくなり、In濃度が低くなるとバンドギャップエネルギーが大きくなる。
特許文献1には、InGaN系量子井戸活性層の井戸層を成長させた後、障壁層を成長させる際に、初期の膜成長時にのみ、窒素およびアンモニアからなるガス雰囲気に水素ガスを添加して膜を成長させ、その後は水素ガスの添加を中断し、窒素およびアンモニアからなるガス雰囲気で膜を成長させることが開示されている。特許文献1には、初期の膜成長時における水素ガスの添加濃度はガス雰囲気の1%以上であり、その成長膜厚は数nm以上とすることも開示されている。
特許文献2および3には、障壁層の成長時には、水素ガスを添加しても良いことが開示されている。
非特許文献1には、GaNバリア層のうち、最初の1〜3nmを水素ガスを添加せずに形成し、あとの6nmを水素ガスを5%添加して形成することにより、発光効率が改善することが開示されている。
非特許文献2には、GaNバリア層成長中に水素ガスを用いることでPL強度が増加したことが開示されている。
特開2010−141242号公報 特開2008−28121号公報 特開2011−171431号公報
Jpn. J. Appl. Phys. Vol.40 (2001) pp.L1170-L1172 "Suppression of GaInN/GaN Multi-Quantum-Well Decomposition during Growth of Light-Emitting-Diode Structure" 2002 IEICE 「InGaN量子井戸構造における水素雰囲気の影響」
水素ガスは、Inを蒸発させる作用を有する。そのため、特許文献1に記載の方法にしたがって障壁層を成長させると、その障壁層の直下の井戸層のInがエッチングされるので、その井戸層がダメージを受ける。これにより、発光効率が低下することがある。
Inは、蒸気圧が高いので、結晶中に取り込まれ難い。そのため、一般的には、Inを含む層は、比較的低温で成長され、また、エッチング作用がある水素ガスを用いずに成長される。一方、GaN層またはAlGaN層などのようにInを含まない層を成長させる場合には、水素ガスを用いることが一般的である。比較的高温で水素ガスを用いて成長させた方が、GaN層またはAlGaN層の結晶品質が良好となるからである。
多くの窒化物半導体発光素子には、多重量子井戸が用いられる。井戸層には例えばInGaNが用いられ、障壁層には例えばGaNが用いられ、さらに、短い周期でInGaN層とGaN層とを繰り返し形成する。前述のとおり、Inを含む層は、低温で水素ガスを用いずに成長されることが好ましく、Inを含まない層(たとえばGaN障壁層)は、高温で水素ガスを用いて成長されることが望ましい。
短い周期で温度を変化させることは成長中断などを要し、成長中断の間に結晶欠陥が生じるなどの悪影響がある。そのため、実際には、温度を変化させずに、水素ガスの供給の切り替えだけを実施している。しかし、GaN層などのInを含まない層は、本来ならば、高温で水素ガス雰囲気下で成長されることが望ましい。そのため、低い温度で水素ガスを導入するだけでは、十分に良好な結晶品質を得ることが難しい。
また、Inを含まない層とInを含む層とを隣接させる場合には、水素ガスの供給のタイミングによっては、Inを含む層のInが蒸発することがある。よって、Inを含む層の結晶品質を却って悪化させることがある。
このようなことは、発光素子の多重量子井戸構造にのみ言えることではなく、発光素子で多く取り入れられている多層構造にも言える。発光素子で多く取り入れられている多層構造とは、たとえば、In濃度が高い層とIn濃度が低い層またはInを含まない層との繰り返し構造(たとえば、InGaN/GaNまたはAlGaInN/AlGaNなど)を意味する。この多層構造には、たとえば、発光層以外の多層構造であって、ひずみ緩和のために導入される多層構造が含まれ、キャリアブロック層またはキャリア拡散層などとして用いられる多層構造も含まれる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発光効率に優れた窒化物半導体素子を製造する方法を提供することである。
本発明の窒化物半導体素子の製造方法は、Inを含む低バンドギャップ層と低バンドギャップ層よりもバンドギャップエネルギーが高い高バンドギャップ層とを少なくとも1組含む窒化物半導体素子を製造する方法である。高バンドギャップ層を形成する工程は、水素ガスが意図的に添加された雰囲気下で高バンドギャップ層の一部を成長させる工程を含む。水素ガスの濃度をH(%)とし、高バンドギャップ層の一部の成長速度をBとしたとき、下記式(1)、(2)を満たす。
H≧0.0332×B−0.3222(B≦100nm/h)・・・式(1)
H≧3(B>100nm/h) ・・・式(2)。
高バンドギャップ層は、下部高バンドギャップ層と上部高バンドギャップ層とを有することが好ましい。高バンドギャップ層を形成する工程は、低バンドギャップ層に接するように低バンドギャップ層の上に下部高バンドギャップ層を形成する工程と、下部高バンドギャップ層の上に上部高バンドギャップ層を形成する工程とを含むことが好ましい。好ましくは、下部高バンドギャップ層を形成する工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない。好ましくは、上部高バンドギャップ層を形成する工程では、上記式(1)、(2)を満たす。
より好ましくは、下部高バンドギャップ層を形成するときの水素ガスの濃度は上部高バンドギャップ層を形成するときの水素ガスの濃度よりも低く、または、水素ガスを添加することなく下部高バンドギャップ層を形成する。より好ましくは、下部高バンドギャップ層の成長速度は、上部高バンドギャップ層の成長速度よりも遅い。
下部高バンドギャップ層の厚さは、1原子層の厚さ以上であることが好ましい。上部高バンドギャップ層の厚さは、3原子層の厚さ以上であることが好ましい。
低バンドギャップ層を形成する工程の後であって高バンドギャップ層を形成する工程の前に、成長中断工程を行うことが好ましい。好ましくは、成長中断工程は、2秒以上行われ、成長中断工程では、材料ガスとしてNH3を用い、キャリアガスとしてN2を用いる。
好ましくは、成長中断工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない。
高バンドギャップ層と低バンドギャップ層とは、少なくとも1組以上の量子井戸構造を有する発光層を構成することが好ましい。発光層を挟むようにn型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とを形成することが好ましい。
本発明では、発光効率に優れた窒化物半導体素子を得ることができる。
本発明の一実施形態の窒化物半導体素子の断面図である。 本実施形態の発光層のエネルギーバンド構造を示す図である。 本実施形態の窒化物半導体素子の要部のエネルギーバンド構造を示す図である。 実施例1の結果を示すグラフである。 実施例1の結果を示すグラフである。 実施例2〜4においてガスを供給するタイミングを示す図である。 実施例3の発光層のエネルギーバンド構造を示す図である。 実施例4の発光層のエネルギーバンド構造を示す図である。 SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)による深さ方向におけるIn濃度の分析結果を示すグラフである。 (a)は、水素ガスを添加することなく上部高バンドギャップ層を成長させたときの観察画像であり、(b)は、水素ガスを添加して上部高バンドギャップ層を成長させたときの観察画像である。 Vピットが形成された部分の断面構造を概略的に示す図である。
以下、本発明の窒化物半導体素子の製造方法について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[窒化物半導体素子の製造方法]
図1は、本発明の実施形態の窒化物半導体素子の製造方法にしたがって製造された窒化物半導体素子の断面図である。図2は、本実施形態の発光層のエネルギーバンド構造を示す図である。図3は、本実施形態の窒化物半導体素子の要部のエネルギーバンド構造を示す図である。図2、図3では、水素ガスが添加された層にハッチングを付している。
本実施形態の窒化物半導体素子1では、基板2の上面に、バッファ層3と、下地層4と、第1のn型窒化物半導体層5と、第2のn型窒化物半導体層6と、超格子層7と、発光層8と、第1のp型窒化物半導体層9と、第2のp型窒化物半導体層10と、第3のp型窒化物半導体層11とがこの順に積層されている。
第2のn型窒化物半導体層6の上面の一部分は超格子層7などから露出しており、その露出面にはn側電極14が設けられている。第3のp型窒化物半導体層11の上には、透明電極12を介してp側電極13が設けられている。窒化物半導体素子1の表面は、透明保護膜15で覆われている。このような窒化物半導体素子1は発光素子として機能する。以下、窒化物半導体素子の製造方法を順に示す。
<基板の準備>
準備する基板2は、たとえばサファイアのような絶縁性基板であってもよいし、GaN、SiCまたはZnOなどのような導電性基板であってもよい。基板2の厚さは特に限定されず、たとえば60μm以上300μm以下であることが好ましい。本実施形態では、基板2の上面には湾曲面状の凸部2Aと平坦面状の凹部2Bとが交互に形成されているが、基板2の上面は平坦であってもよい。
<バッファ層の形成>
基板2の上面にバッファ層3を形成する。バッファ層3を形成する方法は特に限定されず、たとえばスパッタ法であることが好ましい。
形成するバッファ層3は、たとえばAls0Gat0N(0≦s0≦1、0≦t0≦1、s0+t0≠0)層であることが好ましく、より好ましくはAlN層またはAlON層(Oを0.2〜5%含む)である。公知のスパッタ法により形成されたAlON層をバッファ層3として用いることが好ましい。これにより、基板2の成長面の法線方向に伸長するようにバッファ層3が形成されるので、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなるバッファ層3が得られる。
バッファ層3の厚さは特に限定されず、5nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上50nm以下である。
<下地層の形成>
バッファ層3の上面に下地層4を形成する。下地層4を形成する方法は特に限定されず、たとえばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法であることが好ましい。MOCVD法により下地層4を構成する結晶を成長させると、当該結晶は凹部2B上に優先的に成長される(第1層の形成)。その後、結晶成長温度を下げて結晶成長を続行させると、3次元成長が促進され、ファセット面が形成される。その後、結晶成長温度を上げて結晶成長を続行させると、横方向成長が促進される。これにより、上面が平坦な下地層4が得られる。このような下地層4を形成することにより、バッファ層3中に存在する転位などの結晶欠陥がファセット面で折れ曲がるので、その転位が発光層8などへ到達することを防止できる。
形成する下地層4は、Als1Gat1Inu1N(0≦s1≦1、0≦t1≦1、0≦u1≦1、s1+t1+u1≠0)層であることが好ましく、より好ましくはAls1Gat1N(0≦s1≦1、0≦t1≦1、s1+t1≠0)層であり、さらに好ましくはGaN層である。下地層4をGaNで形成することにより、バッファ層3中に存在する転位などの結晶欠陥がバッファ層3と下地層4との界面付近でループされ易くなる。よって、その結晶欠陥がバッファ層3から下地層4へ引き継がれることを防止できる。
下地層4はn型不純物を含んでいてもよい。しかし、下地層4がn型不純物を含んでいなければ、下地層4の良好な結晶性を維持することができる。よって、下地層4は、n型不純物を含んでいないことが好ましい。下地層4の厚さは、特に限定されないが、たとえば1μm以上12μm以下であることが好ましい。
<n型窒化物半導体層の形成>
下地層4の上に第1のn型窒化物半導体層5を形成してから第2のn型窒化物半導体層6を形成する。第1のn型窒化物半導体層5および第2のn型窒化物半導体層6を形成する方法は特に限定されず、たとえばMOCVD法であることが好ましい。
形成される第1のn型窒化物半導体層5および第2のn型窒化物半導体層6は、各々、Als2Gat2Inu2N(0≦s2≦1、0≦t2≦1、0≦u2≦1、s2+t2+u2≠0)層にn型不純物がドーピングされた層であることが好ましく、より好ましくはAls2Ga1-s2N(0≦s2≦1、好ましくは0≦s2≦0.5、より好ましくは0≦s2≦0.1)層にn型不純物がドーピングされた層である。
ドーピングされるn型不純物は特に限定されず、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、より好ましくはSiである。第1のn型窒化物半導体層5および第2のn型窒化物半導体層6の各々のn型不純物の濃度は特に限定されず、たとえば1×1018cm-3以上2×1019cm-3以下である。第1のn型窒化物半導体層5および第2のn型窒化物半導体層6の各々の厚さは特に限定されず、たとえば0.5μm以上10μm以下である。
下地層4の上には単層のn型窒化物半導体層が形成されていても良い。第1のn型窒化物半導体層5および第2のn型窒化物半導体層6は互いに同一の組成からなっても良いし、互いに異なる組成からなっても良い。第1のn型窒化物半導体層5と第2のn型窒化物半導体層6とでは、厚さは、同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
<超格子層の形成>
第2のn型窒化物半導体層6上に超格子層7を形成する。超格子層7を形成する方法は特に限定されず、たとえばMOCVD法であることが好ましい。
「超格子層」とは、複数の種類の結晶格子の重ね合わせにより、その周期構造が基本単位格子よりも長い結晶格子からなる層を意味する。形成される超格子層7では、第1半導体層7Aと第2半導体層7Bとが交互に積層されて超格子構造が構成され(図3)、その周期構造は第1半導体層7Aを構成する半導体材料の基本単位格子および第2半導体層7Bを構成する半導体材料の基本単位格子よりも長い。
なお、超格子層7においては、第1半導体層7Aと、第2半導体層7Bと、第1半導体層7Aおよび第2半導体層7Bとは異なる1層以上の半導体層とが順に積層されて超格子構造が構成されてもよい。超格子層7の1周期当たりの厚さは特に限定されず、たとえば1nm以上7nm以下である。
各第1半導体層7Aは、たとえばAlGaInN層にn型不純物がドーピングされた層であることが好ましく、より好ましくはGaN層にn型不純物がドーピングされた層である。
各第1半導体層7Aのn型不純物濃度は特に限定されず、たとえば1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下であることが好ましい。
第1半導体層7Aの各々の厚さは特に限定されず、たとえば0.5nm以上5nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上4nm以下である。第1半導体層7Aの各々の厚さが0.5nm以上であれば、第1半導体層7Aの各々の厚さが1原子層の厚さ以上となるので、厚さが均一な第1半導体層7Aを形成することができる。よって、後述の発光層8の結晶品質を高く維持できる。
n型窒化物半導体層よりも低い温度で、高濃度のn型不純物を第1半導体層7Aにドープすることがある。その場合、第1半導体層7Aの各々の厚さが5nm以下であれば、第1半導体層7Aの平坦性が高く維持されるので、後述の発光層8の結晶性が高く維持される。これにより、発光層8の結晶品質が高く維持されるので、窒化物半導体素子1の発光効率が高く維持される。
各第2半導体層7Bは、たとえばAlGaInN層であることが好ましく、より好ましくはInGaN層である。第2半導体層7Bがn型不純物を含んでいなければ、超格子層7の平坦性の低下を防止でき、よって、後述の発光層8の結晶性の低下を防止できる。なお、各第2半導体層7Bは、n型不純物を含んでいてもよい。
第2半導体層7Bの各々の厚さは特に限定されず、たとえば0.5nm以上5nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上4nm以下である。第2半導体層7Bの各々の厚さが0.5nm以上であれば、第2半導体層7Bの各々の厚さが1原子層の厚さ以上となるので、厚さが均一な第2半導体層7Bを形成することができる。よって、後述の発光層8の結晶品質を高く維持できる。一方、第2半導体層7Bの各々の厚さが5nm以下であれば、第2半導体層7Bの成長時間が長くなり過ぎることが防止されるので、窒化物半導体素子1の生産性が高く維持される。
第1半導体層7Aの層数は特に限定されず、たとえば20層である。第2半導体層7Bの層数についても同様のことが言える。
<発光層の形成>
超格子層7上に発光層8を形成する。発光層8を形成する方法は特に限定されず、たとえばMOCVD法であることが好ましい。
形成される発光層8は、高バンドギャップ層8Aと低バンドギャップ層8Bとが交互に積層されて構成された多重量子井戸構造を有している。具体的には、低バンドギャップ層8Bが高バンドギャップ層8Aを両側から挟むように、高バンドギャップ層8Aと低バンドギャップ層8Bとが交互に積層されている。高バンドギャップ層8Aは、低バンドギャップ層8Bは、高バンドギャップ層8Aよりもバンドギャップエネルギーが低い層であり、Inを含む。
(高バンドギャップ層)
本実施形態では、水素ガスが意図的に添加された雰囲気下で高バンドギャップ層8Aの一部(後述の上部高バンドギャップ層83A)を成長させる。水素ガスの濃度をH(%)とし、高バンドギャップ層8Aの一部の成長速度をBとすると、下記式(1)、(2)を満たす。好ましくは、下記式(3)、(4)を満たす。
H≧0.0332×B−0.3222(B≦100nm/h)・・・式(1)
H≧3(B>100nm/h) ・・・式(2)
100≧H≧0.0332×B−0.3222(13nm/h≦B≦100nm/h) ・・・式(3)
100≧H≧3(500nm/h≧B>100nm/h) ・・・式(4)。
ここで、「水素ガスが意図的に添加された雰囲気」とは、所定量の水素ガスが供給された雰囲気を意味し、「意図的に添加された水素ガス」には、成膜装置内に存在するNH3などが分解して発生した水素ガスは含まれない。「水素ガスの濃度」は、成膜装置へ供給されるガスの総流量に対する成膜装置へ供給される水素ガスの流量の割合を意味し、「成膜装置へ供給される水素ガス」には、成膜装置内に存在するNH3などが分解して発生した水素ガスは含まれない。
このように高バンドギャップ層8Aの成長速度に応じて水素ガスの濃度を調整すれば、低バンドギャップ層8Bにダメージを与えることなく結晶品質に優れた高バンドギャップ層8Aを形成できる。よって、発光効率に優れた窒化物半導体素子を提供できる(後述の実施例1)。なお、TEGまたはTMGなどのIII族原料の供給量を変更すれば、高バンドギャップ層8Aの成長速度を変更できる。また、V族原料の供給量、成長時の温度、キャリアガスの種類、または、キャリアガスの供給量などによっても、高バンドギャップ層8Aの成長速度を変更できる。よって、各条件の成長速度に応じて水素ガス濃度を調整することが好ましい。
具体的には、低バンドギャップ層8Bに接するように低バンドギャップ層8Bの上に下部高バンドギャップ層81Aを形成してから、下部高バンドギャップ層81Aの上に上部高バンドギャップ層83Aを形成する。
好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aを形成する工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない。これにより、低バンドギャップ層8Bの上面に存在するInが水素ガスによりエッチングされることを防止できる。よって、Inの抜けによる発光波長の短波長化が防止され、また、低バンドギャップ層8Bにおける結晶欠陥の発生が防止される。よって、発光層となる低バンドギャップ層8Bの結晶品質が高く維持されるので、窒化物半導体素子の発光効率が高くなる。また、低バンドギャップ層8Bにおける結晶欠陥の発生が防止されることにより、低バンドギャップ層8Bの上に形成される下部高バンドギャップ層81Aの結晶品質が高く維持される。よって、非発光再結合を抑制できる。
また、上部高バンドギャップ層83Aを形成する工程では、上記式(1)、(2)を満たすことが好ましい。これにより、上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質が高く維持される。上部高バンドギャップ層83Aを形成する工程では、上記式(3)、(4)を満たすことがより好ましい。これにより、上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質がさらに高く維持される。ここで、上記式(1)〜(4)における「B」は上部高バンドギャップ層83Aの成長速度に相当する。
以上をまとめると、下部高バンドギャップ層81Aおよび上部高バンドギャップ層83Aを形成するときの水素ガスの濃度を上記のように調整すれば、低バンドギャップ層8Bが水素に曝されることにより結晶欠陥が当該低バンドギャップ層8Bに発生することを防止できる。また、上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質が高く維持される。よって、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質が高くなる。それだけでなく、p型窒化物半導体層側に位置する高バンドギャップ層8Aでは、その上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質が高く維持されることにより、p型ドーパントなどの不純物がp型窒化物半導体層側から発光層8へ拡散することを防止できる。これによっても、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質が高くなる。したがって、より優れた発光効率を有する窒化物半導体素子を提供できる。
たとえば上部高バンドギャップ層83Aの成長速度B1が60nm/hourである場合、上記式(1)に代入すると、水素ガスの濃度H1は1.7%以上となる。よって、水素ガスの濃度H1は、1.7%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上であり、さらに好ましくは6%以上である。
より好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aを形成するときの水素ガスの濃度は、上部高バンドギャップ層83Aを形成するときの水素ガスの濃度よりも低い、または、水素ガスを添加することなく下部高バンドギャップ層81Aを形成する。これにより、Inの抜けによる発光波長の短波長化がさらに防止される。また、低バンドギャップ層8Bにおける結晶欠陥の発生がさらに防止され、よって、上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質がさらに高く維持される。
高バンドギャップ層8A全体の結晶品質を高く維持するためには、上記式(1)を満たした状態で高バンドギャップ層8A全体を成長させることが好ましい。しかし、低バンドギャップ層8Bを成長後、高バンドギャップ層8Aの成長開始と同時に水素を流し始めると、低バンドギャップ層8Bの表面全体が高バンドギャップ層8Aで覆われるまでの間、低バンドギャップ層8Bが水素に曝される。その結果、低バンドギャップ層8Bに結晶欠陥が発生してしまう。それを防ぐためには、低バンドギャップ層8Bにダメージを与えない程度に水素濃度を下げる、または、水素ガスを流さずに、下部高バンドギャップ層81Aを成長させることが好ましい。
また、下部高バンドギャップ層81Aの成長速度は、上部高バンドギャップ層83Aの成長速度よりも遅いことがより好ましい。これにより、水素ガスを添加することなく下部高バンドギャップ層81Aを形成した場合であっても、成膜装置の内面などに付着したInが下部高バンドギャップ層81Aに取り込まれることを防止できる。よって、より優れた結晶品質を有する下部高バンドギャップ層81Aを形成できるので、上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質の低下がさらに防止され、したがって、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質をさらに高く維持できる。
たとえば、下部高バンドギャップ層81Aの成長速度は、好ましくは20nm/h以上500nm/h以下であり、より好ましくは20nm/h以上100nm/h以下である。一方、上部高バンドギャップ層83Aの成長速度は、好ましくは20nm/h以上500nm/h以下であり、より好ましくは40nm/h以上200nm/h以下である。水素ガスを添加することにより、または、水素ガスの濃度を高めることにより、原料ガスの分解効率が上がるので、成長速度が速くなると考えられる。
形成される下部高バンドギャップ層81Aおよび上部高バンドギャップ層83Aは、たとえばAlxGayIn(1-x-y)N(0≦x<1、0<y≦1)層であることが好ましい。下部高バンドギャップ層81Aおよび上部高バンドギャップ層83Aは互いに同一の組成からなっても良いし、互いに異なる組成からなっても良い。下部高バンドギャップ層81Aおよび上部高バンドギャップ層83Aは、各々、ノンドープ層であっても良いし、n型不純物またはp型不純物を含んでいても良い。
下部高バンドギャップ層81Aの厚さは、1原子層の厚さ以上であることが好ましい。下部高バンドギャップ層81Aの厚さが1原子層の厚さ未満であれば、低バンドギャップ層8B全体が下部高バンドギャップ層81Aで覆われていないことになる。そのため、上部高バンドギャップ層83Aの成長開始と同時に水素を流し始めると、下部高バンドギャップ層81Aで覆われていない領域における低バンドギャップ層8Bの表面が水素にさらされる。その結果、上記領域における低バンドギャップ層8Bに結晶欠陥が発生することがある。より好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aの厚さは2原子層の厚さ以上4原子層の厚さ以下である。GaN層の場合には、「1原子層の厚さ」は0.52nmを意味する。
上部高バンドギャップ層83Aの厚さは、3原子層の厚さ以上であることが好ましい。これにより、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質を高く維持することができる。より好ましくは、上部高バンドギャップ層83Aの厚さは4原子層の厚さ以上20原子層の厚さ以下である。GaN層の場合には、「1原子層の厚さ」は0.52nmを意味するので、「3原子層の厚さ」は1.56nmを意味する。下部高バンドギャップ層81Aの厚さおよび上部高バンドギャップ層83Aの厚さは、各々、走査型電子顕微鏡などを用いて高倍率の観察像で格子像を観察することにより見積もることができる。
各高バンドギャップ層8Aの厚さは特に限定されず、たとえば8nm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5nm以上8nm以下である。各高バンドギャップ層8Aの厚さが1.5nm以上であれば、高バンドギャップ層8Aの平坦性を高く維持できるので、高バンドギャップ層8Aの結晶品質を高く維持できる。よって、窒化物半導体素子1の発光効率を高く維持できる。各高バンドギャップ層8Aの厚さが8nm以下であれば、注入されたキャリアが発光層8中で十分拡散される。よって、窒化物半導体素子1の駆動電圧の上昇が防止され、その発光効率の低下が防止される。
(低バンドギャップ層)
形成される低バンドギャップ層8Bは、たとえばアンドープInzGa(1-z)N(0<z≦1)層であることが好ましく、より好ましくはアンドープInzGa(1-z)N(0<z≦0.5)層である。このように各低バンドギャップ層8Bがn型不純物を含んでいなければ、発光層8の平坦性を高く維持できるので、後述のp型窒化物半導体層の結晶性を高く維持できる。よって、低バンドギャップ層8Bはn型不純物を含んでいないことが好ましい。
各低バンドギャップ層8Bの厚さは特に限定されず、たとえば2nm以上7nm以下であることが好ましい。各低バンドギャップ層8Bの厚さがこの範囲内であれば、窒化物半導体素子1の駆動電圧の上昇が防止され、その発光効率の低下が防止される。
低バンドギャップ層8Bの層数は、特に限定されず、2以上であれば良い。低バンドギャップ層8Bが複数、設けられれば、発光層8の電流密度が低下する。これにより、窒化物半導体素子1を大電流で駆動した場合においても、発光層8での発熱量の低下を図ることができる。よって、発光層8からのキャリアのオーバーフローを防止できる。したがって、発光層8以外の層における非発光再結合の発生を防止できる。
<成長中断>
低バンドギャップ層8Bを形成する工程の後であって高バンドギャップ層8Aを形成する工程の前に、成長中断工程を行うことが好ましい。成長中断工程では、材料ガスとしてNH3を用いることが好ましく、キャリアガスとしてN2を用いることが好ましい。これにより、低バンドギャップ層8Bの表面状態が改善されるので、低バンドギャップ層8Bと下部高バンドギャップ層81Aとの界面状態が改善され、よって、発光効率が向上する。
より好ましくは、成長中断工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない。これにより、成長中断工程を行ったことによるIn抜けを防止できる。よって、発光波長の短波長化をさらに防止でき、また、低バンドギャップ層8Bにおける結晶欠陥の発生をさらに防止できる。
このような成長中断工程は、2秒以上行われることが好ましく、より好ましくは2秒以上60秒以下行われる。成長中断工程を2秒以上行えば、成長中断工程を行ったことによる効果を有効に得ることができる。成長中断工程を60秒以下行えば、窒化物半導体素子1の製造時間が長くなり過ぎることを防止できる。
<p型窒化物半導体層の形成>
発光層8の上に、第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11を順に形成する。第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11を形成する方法は特に限定されず、たとえばMOCVD法であることが好ましい。
形成される第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11は、たとえばAls3Gat3Inu3N(0≦s3≦1、0≦t3≦1、0≦u3≦1、s3+t3+u3≠0)層にp型不純物がドーピングされた層であることが好ましく、より好ましくはAls3Ga1-s3N(0<s3≦0.4、好ましくは0.1≦s3≦0.3)層にp型不純物がドーピングされた層である。
ドーピングされるp型不純物は特に限定されず、たとえばマグネシウムであることが好ましい。第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11の各々のp型不純物の濃度は特に限定されず、たとえば1×1018cm-3以上2×1020cm-3以下であることが好ましい。第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11の各々の厚さは特に限定されず、たとえば10nm以上200nm以下であることが好ましい。
発光層8の上には単層のp型窒化物半導体層が形成されていても良い。第1のp型窒化物半導体層9、第2のp型窒化物半導体層10および第3のp型窒化物半導体層11は互いに同一の組成からなっても良いし、互いに異なる組成からなっても良い。第1のp型窒化物半導体層9と第2のp型窒化物半導体層10と第3のp型窒化物半導体層11とでは、厚さは、同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
<n側電極、透明電極、p側電極、透明保護膜の形成>
第2のn型窒化物半導体層6の一部が露出するように、第3のp型窒化物半導体層11、第2のp型窒化物半導体層10、第1のp型窒化物半導体層9、発光層8、超格子層7および第2のn型窒化物半導体層6をエッチングする。第2のn型窒化物半導体層6の露出面にn側電極14を形成する。
第3のp型窒化物半導体層11上に透明電極12を形成し、透明電極12上にp側電極13を形成する。その後、窒化物半導体素子1の表面を透明保護膜15で被覆する。具体的には、p側電極13から露出する透明電極12、n側電極14から露出する第2のn型窒化物半導体層6の露出面、第2のn型窒化物半導体層6から透明電極12までの各層の側面を覆うように、透明保護膜15を形成する。
透明電極12、p側電極13、n側電極14および透明保護膜15の各々の形成方法は特に限定されず、たとえばスパッタ法であることが好ましい。
形成される透明電極12は特に限定されず、たとえばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などからなることが好ましい。透明電極12の厚さは特に限定されず、たとえば50nm以上500nm以下であることが好ましい。なお、透明電極12の代わりに、アルミニウムまたは銀などからなる反射電極を設けてもよい。
形成されるp側電極13およびn側電極14は、窒化物半導体素子1に駆動電力を供給するための電極である。p側電極13およびn側電極14の各々は特に限定されず、たとえばニッケル層、プラチナ層および金層がこの順序で積層されてなることが好ましい。p側電極13およびn側電極14の各々の厚さは特に限定されず、たとえば300nm以上3000nm以下であることが好ましい。
形成される透明保護膜15は特に限定されず、たとえばSiO2からなることが好ましい。透明保護膜15の厚さは特に限定されない。
<発光層における作用および効果>
一般に、InzGa(1-z)N(0<z≦1)などからなる井戸層を含む発光層(発光層8に相当)の成長温度は、Inを含まない窒化物半導体(たとえばGaNまたはAlGaNなど)からなる井戸層を含む発光層の成長温度に比べて低い。また、発光層をMOCVD法により成長させる場合、水素ガスをほとんど含まないキャリアガス(窒素ガスなど)を使用する。これらの成長条件から、InzGa(1-z)N(0<z≦1)などからなる井戸層を含む発光層には結晶欠陥が発生し易い。そのため、結晶欠陥において非発光再結合が発生するという問題があった。
障壁層の成長中のキャリアガスに水素ガスを添加した場合、障壁層の結晶欠陥が低減されるので、その障壁層上に成長する井戸層の結晶品質が改善される。よって、非発光再結合の発生が低減する。
しかし、井戸層の成長後であって障壁層の成長開始と同時に水素ガスを添加すると、井戸層の上面に存在するInが水素ガスによりエッチングされ、Inが井戸層から抜けることがある。これにより、発光波長が短波長化する。それだけでなく、結晶欠陥が井戸層に発生するので、かえって発光効率が低下する。
Inの抜けを防止するために、障壁層の成長初期には水素ガスを添加せず、障壁層の成長途中から水素ガスを添加するということが考えられる。この場合、障壁層の成長速度と水素ガスの濃度とが最適化されていなければ、水素ガスの添加による障壁層の結晶品質の改善効果よりも井戸層へのダメージが上回る。そのため、十分な効果が得られない。
本発明者は、鋭意研究の結果、障壁層(高バンドギャップエネルギー層)の成長速度に応じた最適な水素ガスの濃度を見つけ出し、井戸層(低バンドギャップエネルギー層)にダメージを与えることなく障壁層の結晶品質が向上し、よって、発光効率が向上することを見出した。
つまり、本実施形態の窒化物半導体素子1の製造方法は、水素ガスが意図的に添加された雰囲気下で高バンドギャップ層8Aの一部を成長させる工程を含む。水素ガスの濃度をH(%)とし、高バンドギャップ層の一部の成長速度をBとしたとき、上記式(1)、(2)を満たす。これにより、発光効率に優れた窒化物半導体素子1を提供できる。
本実施形態では、高バンドギャップ層8Aは、下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83Aとを有することが好ましい。高バンドギャップ層8Aを形成する工程は、低バンドギャップ層8Bに接するように低バンドギャップ層8Bの上に下部高バンドギャップ層81Aを形成する工程と、下部高バンドギャップ層81Aの上に上部高バンドギャップ層83Aを形成する工程とを含むことが好ましい。好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aを形成する工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない。好ましくは、上部高バンドギャップ層83Aを形成する工程では、上記式(1)、(2)を満たす。これにより、より優れた発光効率を有する窒化物半導体素子1を提供できる。
より好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aを形成するときの水素ガスの濃度は上部高バンドギャップ層83Aを形成するときの水素ガスの濃度よりも低い、または、水素ガスを添加することなく下部高バンドギャップ層81Aを形成する。より好ましくは、下部高バンドギャップ層81Aの成長速度は、上部高バンドギャップ層83Aの成長速度よりも遅い。これにより、発光効率にさらに優れた窒化物半導体素子1を提供できる。
下部高バンドギャップ層81Aの厚さは1原子層の厚さ以上であることが好ましく、上部高バンドギャップ層83Aの厚さは3原子層の厚さ以上であることが好ましい。これにより、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質をさらに高く維持できる。
低バンドギャップ層8Bを形成する工程の後であって高バンドギャップ層8Aを形成する工程の前に、成長中断工程を行うことが好ましい。成長中断工程は、2秒以上行われることが好ましい。成長中断工程では、材料ガスとしてNH3を用い、キャリアガスとしてN2を用いることが好ましい。これにより、発光効率がさらに優れた窒化物半導体素子1を提供することができる。
成長中断工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しないことが好ましい。これにより、低バンドギャップ層8Bにおける結晶欠陥の発生をさらに防止できる。
高バンドギャップ層8Aと低バンドギャップ層8Bとは、少なくとも1組以上の量子井戸構造を有する発光層8を構成することが好ましい。発光層8を挟むようにn型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とを形成することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(バッファ層、下地層の形成)
基板2として、凹凸加工が上面に施されたサファイアからなる100mm径のウエハを準備した。基板2の上面にAlNからなるバッファ層3をスパッタ法により形成した。
その後、ウエハを第1のMOCVD装置に入れた。原料ガスとしてTMG(trimethyl gallium)ガスとNH3ガスとを用い、アンドープGaNからなる下地層4をMOCVD法により成長させた。下地層4の厚さは4μmであった。
(n型窒化物半導体層の形成)
ドーパント用ガスとしてSiH4ガスを加え、n型GaNからなる第1のn型窒化物半導体層5を成長させた。第1のn型窒化物半導体層5の厚さは3μmであった。第1のn型窒化物半導体層5のn型不純物濃度は1×1019cm-3であった。
その後、ウエハを第1のMOCVD装置から取り出して第2のMOCVD装置に入れた。ウエハの温度を1050℃の温度に保持し、n型GaNからなる第2のn型窒化物半導体層6を成長させた。第2のn型窒化物半導体層6の厚さは1.5μmであった。
(超格子層の形成)
ウエハの温度を880℃に保持して超格子層7を成長させた。具体的には、SiドープGaN層からなる第1半導体層7AとSiドープInGaN層からなる第2半導体層7Bとを交互に成長させて20周期分、成長させた。1つの第1半導体層7Aと1つの第2半導体層7Bとで1周期とした。
第1半導体層7Aの原料ガスとして、TEGガスとNH3ガスとSiH4ガスとを用いた。各第1半導体層7Aの厚さは1.75nmであり、各第1半導体層7AのSi濃度は1×1019cm-3であった。
第2半導体層7Bの原料ガスとして、TEGガスとTMI(trimethyl indium)ガスとNH3ガスとSiH4ガスとを用いた。各第2半導体層7Bの厚さは1.75nmであった。第2半導体層7Bを成長させる際、第2半導体層7Bがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が375nmとなるように、TMIの流量および成長温度を調整した。そのため、各第2半導体層7Bの組成はInvGa1-vN(v=0.04)であった。キャリアが第1半導体層7Aと第2半導体層7Bとに拡散して平均化されたため、超格子層7の平均キャリア濃度は、約1×1019cm-3であった。
(発光層の形成)
ウエハの温度を850℃に下げた状態で、発光層8を成長させた。具体的には、アンドープGaNからなる高バンドギャップ層8AとアンドープInGaNからなる低バンドギャップ層8Bとを交互に成長させて8周期分、成長させた。1つの高バンドギャップ層8Aと1つの低バンドギャップ層8Bとで1周期とした。
まず、原料ガスとしてTEGガスとNH3ガスとを用い、キャリアガスとしてN2ガスのみを用いて、下部高バンドギャップ層81Aを成長させた。つまり、水素ガスを添加させることなく下部高バンドギャップ層81Aを成長させた。これにより、厚さが1.3nmの下部高バンドギャップ層81Aが形成された。
次に、原料ガスとしてTEGガスとNH3ガスとを用い、キャリアガスとしてN2ガスと水素ガスとを用いて、上部高バンドギャップ層83Aを成長させた。上部高バンドギャップ層83Aの成長速度Bを20nm/h、40nm/h、60nm/h、80nm/h、100nm/hおよび200nm/hに変え、それぞれにおいて上部高バンドギャップ層83Aの成長時における水素ガス濃度を0〜20%に変えた。
高バンドギャップ層8Aの成長後、TEGガスの供給を切断すると同時に水素ガスの供給も切断し、NH3ガスとN2ガスとのみを30秒間、供給した(成長中断工程の実施)。その後、低バンドギャップ層8Bの成長を開始した。
原料ガスとしてTEGガスとTMIガスとNH3ガスとを用い、キャリアガスとして窒素ガスを用いて、低バンドギャップ層8Bを成長させた。低バンドギャップ層8Bの成長速度を40nm/hourとした。これにより、厚さが4nmの低バンドギャップ層8Bが形成された。低バンドギャップ層8Bがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が445nmとなるように、TMIの流量を調整した。そのため、低バンドギャップ層8Bの組成はInzGa1-zN(z=0.18)であった。
下部高バンドギャップ層81A、上部高バンドギャップ層83A、および、低バンドギャップ層8Bをこの順に繰り返し成長させた。最上層の低バンドギャップ層8Bの上に、最上層の高バンドギャップ層8Aとして厚さが8nmのアンドープのGaN層を成長させた。具体的には、水素ガスを添加せずに厚さが1.3nmの下部高バンドギャップ層81Aを形成してから、水素ガスの濃度を6%として厚さが6.7nmの上部高バンドギャップ層83Aを形成した。
(p型窒化物半導体層の形成)
ウエハの温度を上げた。最上層の高バンドギャップ層8Aの上面に、第1のp型窒化物半導体層9としてp型Al0.3Ga0.7N層を成長させ、その上に、第2のp型窒化物半導体層10としてp型GaN層を成長させ、その上に、第3のp型窒化物半導体層11としてp型コンタクト層を成長させた。
(電極などの形成)
第2のn型窒化物半導体層6の一部が露出するように、第3のp型窒化物半導体層11、第2のp型窒化物半導体層10、第1のp型窒化物半導体層9、発光層8、超格子層7、および、第2のn型窒化物半導体層6をエッチングした。
このエッチングにより露出した第2のn型窒化物半導体層6の上面にAuからなるn側電極14を形成した。第3のp型窒化物半導体層11の上面に、ITOからなる透明電極12とAuからなるp側電極13とを順に形成した。透明電極12および上記エッチングによって露出した各層の側面を主に覆うように、SiO2からなる透明保護膜15を形成した。
その後、ウエハを430μm×480μmサイズのチップに分割して、本実施例の窒化物半導体素子1を作製した。
(評価)
得られた窒化物半導体素子1をTO−18型ステムにマウントし、樹脂封止を行なわずに光出力を測定し、外部量子効率を求めた。その結果を図4および図5に示す。図4は、上部高バンドギャップ層83Aの成長時における水素ガス濃度と窒化物半導体素子の外部量子効率との関係を示したグラフである。図5は、図4を用いて求められたグラフであり、上部高バンドギャップ層83Aの成長速度と窒化物半導体素子の外部量子効率が50%になるときの水素ガスの濃度との関係を示したグラフである。
図5から分かるように、上記式(1)、(2)を満たしていれば、窒化物半導体素子の外部量子効率が50%以上となることが分かった。窒化物半導体素子の外部量子効率が50%以上であれば、窒化物半導体素子は発光効率に優れていると言える。よって、上部高バンドギャップ層83Aを成長させるときに上記式(1)、(2)を満たしていれば、発光効率に優れた窒化物半導体素子が得られることが分かった。
なお、図5の縦軸を「窒化物半導体素子の外部量子効率が50%になるときの水素ガスの濃度」とした理由は次に示す2つである。1つ目の理由としては、窒化物半導体素子の外部量子効率が50%以上であれば、窒化物半導体素子は発光効率に優れていると言える。そのため、上部高バンドギャップ層83Aの成長速度と窒化物半導体素子の外部量子効率が50%になるときの水素ガスの濃度との関係を規定すれば、窒化物半導体素子の発光効率を高めるための条件を提供できると考えられる。2つ目の理由としては、窒化物半導体素子の外部量子効率が50%以上であれば、その外部量子効率は、上部高バンドギャップ層83Aの成長時における水素ガス濃度に依存せず、ほぼ一定となったからである(図4)。
<実施例2>
上部高バンドギャップ層83Aの成長速度を60nm/hourとし、水素ガスの濃度を6%として、厚さが2.7nmの上部高バンドギャップ層83Aを形成したことを除いては上記実施例1の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体素子を得た。
(評価)
得られた窒化物半導体素子1をTO−18型ステムにマウントし、樹脂封止を行なわずに光出力を測定した。駆動電流50mAおよび駆動電圧2.9Vにおいて、窒化物半導体素子1の光出力は77mW(ドミナント波長451nm)であった。このことから、駆動電流が50mAであるときの外部量子効率は55%と算出された。
また、駆動電流120mAおよび駆動電圧3.0Vにおいて、窒化物半導体素子1の光出力は177mW(ドミナント波長451nm)であった。このことから、駆動電流が120mAであるときの外部量子効率は52.7%と算出された。
以上の結果から、本実施例では、駆動電流が50mAであるときの外部量子効率に対して駆動電流が120mAであるときの外部量子効率は95.8%と算出された。このように、駆動電流を大きくしても外部量子効率の低下はほとんど認められず、よって、ドループ現象が抑制されていることを確認した。
また、室温での外部量子効率に対して外部温度が100℃での外部量子効率は99%と算出された。このように、温度を上げても外部量子効率がほとんど低下しないことを確認した。
このような結果が得られた理由として、次に示すことが考えられる。本実施例では、水素ガスを添加することなく下部高バンドギャップ層81Aを成長させ、水素ガスを意図的に添加して上部高バンドギャップ層83Aを成長させた。これにより、水素ガスによるダメージを低バンドギャップ層8Bに与えずに、高バンドギャップ層8A全体の結晶品質を高く保つことができる。よって、非発光の原因となる結晶欠陥の発生を抑制することができた。
水素ガスを意図的に添加して最上層の高バンドギャップ層8Aの上部高バンドギャップ層83Aを成長させた。これにより、不純物(Mgなどのp型ドーパント)がp型窒化物半導体層側から発光層8へ拡散することを防止できた。このことも、上記結果が得られた理由の一つとして考えられる。
<実施例3>
本実施例では、高バンドギャップ層8Aの成長速度を80nm/hとし、水素ガスの濃度を12%として上部高バンドギャップ層83Aを成長させたことを除いては上記実施例2に記載の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体素子を製造した。
本実施例の窒化物半導体素子においては、大電流密度においても発光効率はほとんど低下せず、電流密度が0.05A/cm-2以上200A/cm-2以下の広い範囲で50%以上の外部量子効率が得られた。
また、室温での外部量子効率に対して外部温度が100℃での外部量子効率は99.5%と算出された。このように、温度を上げても外部量子効率がほとんど低下しないことを確認した。一般に、温度が上昇すると、駆動電圧が下がる。よって、単位電力あたりの発光効率は実施例2よりも改善された。
<実施例4>
本実施例では、高バンドギャップ層8Aの成長速度を80nm/hとし、水素ガスの濃度を9%として第1の上部高バンドギャップ層183A(図8参照)を成長させ、水素ガスの濃度を15%として第2の上部高バンドギャップ層283A(図8参照)を成長させたことを除いては、上記実施例2に記載の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体素子を製造した。
本実施例の窒化物半導体素子においては、大電流密度においても発光効率はほとんど低下せず、電流密度が0.05A/cm-2以上200A/cm-2以下の広い範囲で50%以上の外部量子効率が得られた。
また、室温での外部量子効率に対して外部温度が100℃での外部量子効率は99.5%と算出された。
一般に、ウエハの周縁部では窒化物半導体素子の特性が悪化し易いと言われている。しかし、本実施例では、窒化物半導体素子の特性のウエハ面内分布が改善されたため、ウエハ全面で高性能な窒化物半導体素子を作製できた。よって、窒化物半導体素子の製造歩留まりが上記実施例3よりも改善された。
<実施例2〜4の考察>
(成長速度と水素ガスとの関係)
図6は、実施例2〜4において、ガスを供給するタイミングを示す図である。低バンドギャップ層8Bを成長後、III族原料であるTEGガスおよびTMIガスを流さずにNH3ガスとN2ガスとだけを流した(成長中断)。これにより、低バンドギャップ層8Bの表面状態が改善されるので、低バンドギャップ層8Bと下部高バンドギャップ層81Aとの界面が改善された。
その後、TEGガスを流して下部高バンドギャップ層81Aを成長させ、次に、水素ガスの添加を開始して上部高バンドギャップ層83Aを成長させた。下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83AとでTEGガスの流量が一定であっても、水素ガスの添加を開始すると成長速度が速くなることが分かっている。つまり、上部高バンドギャップ層83Aの方が下部高バンドギャップ層81Aよりも成長速度が速くなる。その理由としては、水素ガスの添加によりTEGガスの分解効率が上がることが考えられる。TEGガスの分解効率が上がると、原料が効率良くウエハの表面に届く。よって、成長速度が速くなっても上部高バンドギャップ層83Aの結晶品質が良好となる。
TEGガスの流量を上げることにより成長速度を上げると、TEGガスの分解効率を高めるためにさらに多くの水素ガスが必要となる。よって、成長速度に応じて最低限必要な水素ガスの添加量が異なると本発明者らは結論付けた。この結論に基づいて鋭意研究した結果、上記式(1)、(2)を得るに至った。
(成膜装置の内面に付着したInによる影響)
図7は、実施例3の窒化物半導体素子のバンド構造を示す図である。図8は、実施例4の窒化物半導体素子のバンド構造を示す図である。図7、図8において、高バンドギャップ層8Aのうち水素ガスが添加された層にはハッチングを付している。図7、図8では、分かりやすくするために、下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83Aとでバンドギャップエネルギーの差を誇張して記載している。図7、図8では、ピエゾ電界によるバンドの曲がりを記載していない。
実施例2〜4では、TEGガスとNH3ガスとを供給したがTMIガスを供給することなく下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83Aとを成長させた。しかし、成長された下部高バンドギャップ層81Aには、0.01%程度のInが含まれていた。この理由としては、MOCVD装置の内面に付着したInが蒸発して下部高バンドギャップ層81Aに取り込まれたことが考えられる。
水素ガスの濃度が比較的低い場合、または、高バンドギャップ層8Aの成長速度が遅い場合(実施例2)、Inが取り込まれる割合は、下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83Aとで変わらない。よって、図2に示すように、バンドギャップエネルギーの大きさは下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83Aとで同じである。
しかし、高バンドギャップ層8Aの成長速度が速い場合(実施例3、4)、水素を添加することなく下部高バンドギャップ層81Aを成長させると、当該下部高バンドギャップ層81Aに取り込まれるIn量は増加する。一方、水素の添加量を多くして上部高バンドギャップ層83Aを成長させると、当該上部高バンドギャップ層83Aに取り込まれるIn量は減少する。これらのことから、実施例3、4では、下部高バンドギャップ層81Aと上部高バンドギャップ層83AとでIn組成比が異なるので、バンドギャップエネルギーの大きさは下部高バンドギャップ層81Aの方が上部高バンドギャップ層83Aよりも小さくなる(図7、図8)。
図9は、SIMSによる深さ方向におけるIn濃度の分析結果を示すグラフである。図9において、L91は850℃でのGaN層の成長時において水素ガスを添加しなかった場合の結果を表わし、L92は850℃でのGaN層の成長時において水素ガスを添加した場合の結果を表わす。
まず、高温(1190℃)でGaN層を成長させた。このとき、一般的なGaN層の成長条件でGaN層を成長させ、キャリアガスとしては主に水素ガスを用いた。成長されたGaN層には、Inは含まれなかった。
次に、低温(850℃)でGaN層を成長させた。キャリアガスにN2ガスを用い、水素ガスを添加させることなくGaN層を成長させると、MOCVD装置の内部で蒸発したInがエピ層中に取り込まれ、よって、Inが検出された(L61)。しかし、水素ガスを添加して(水素ガスの濃度が12%)GaN層を成長させると、Inがエピ層中に取り込まれることが防止され、高温(1190℃)で成長されたGaN層と同様にInが検出されなかった。
低温で成長されたGaN層の結晶品質が悪い原因の一つとして、MOCVD装置の内部で蒸発したInが意図せずにエピ層中に取り込まれることが挙げられる。しかし、水素ガスを添加しながらGaN層を成長させることにより、MOCVD装置の内部で蒸発したInがエピ層中に取り込まれることを防止できる。よって、低温でGaN層を成長させる場合には、水素ガスを添加しながらGaN層を成長させることにより当該GaN層の結晶品質が改善されると言える。
上部高バンドギャップ層83Aの成長後、結晶成長を終了させてウエハをMOCVD装置の内部から取り出して、そのエピ表面をAFM(Atomic Force Microscope)で観察した。図10(a)は、水素ガスを添加することなく上部高バンドギャップ層83Aを成長させたときの観察画像であり、図10(b)は、水素ガスを添加して(水素ガスの濃度が12%)上部高バンドギャップ層83Aを成長させたときの観察画像である。図10(a)、(b)から、水素ガスを添加して上部高バンドギャップ層83Aを成長させるとVピットが発生することが分かった。
(Vピットの作用)
図11は、Vピットが形成された部分の断面構造を概略的に示す図である。Vピットは貫通転位を起点として発生し、GaN層の場合には概ね900℃以下でGaN層を成長させた場合に発生しやすい。また、Vピットは、Inを含む層で埋まりやすい性質を有するので、MQW構造では井戸層で埋まって消える傾向にある。よって、水素ガスを添加することなく上部高バンドギャップ層83Aを成長させると、Vピットは形成されないか、非常に小さい(図10(a))。
しかし、水素ガスを添加して上部高バンドギャップ層83Aを成長させると、Inが取り込まれることなく上部高バンドギャップ層83Aが成長されるので(図9参照)、Vピットが埋まり難い。そのため、図11に示すように、貫通転位は、Vピットの底部で終端する。また、V形状の傾斜部分(領域A)では、下部高バンドギャップ層81Aおよび上部高バンドギャップ層83Aが薄膜化する。よって、領域Aのバンドギャップエネルギーは、領域Bのバンドギャップエネルギーよりも大きくなる。その結果、キャリアは領域Aに流れ込まないので、キャリアが貫通転位にとらわれて非発光再結合を起こすおそれがない。このように、Vピットは、非発光再結合の発生原因となる欠陥(たとえば貫通転位)を不活性化させることにより窒化物半導体素子の発光効率の向上に寄与する。
上述のように、水素ガスを添加して上部高バンドギャップ層83Aを成長させると、Vピットが発生する。水素ガスの添加量が少なすぎると、Vピットが形成されない。上記式(1)、(2)から求められる水素ガスの濃度以上に水素ガスを添加すると、Vピットが発生し、これによっても、窒化物半導体素子の発光効率が改善される。以上説明したように、水素ガスの添加は、各種効果によって窒化物半導体素子の発光効率の改善に寄与するが、結晶成長速度に応じた水素ガスの添加量の最小値があり、その最小値以上の水素ガスの添加により効果が発揮される。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 窒化物半導体素子、2 基板、2A 凸部、2B 凹部、3 バッファ層、4 下地層、5 第1のn型窒化物半導体層、6 第2のn型窒化物半導体層、7 超格子層、7A 第1半導体層、7B 第2半導体層、8 発光層、8A 高バンドギャップ層、8B 低バンドギャップ層、9 第1のp型窒化物半導体層、10 第2のp型窒化物半導体層、11 第3のp型窒化物半導体層、12 透明電極、13 p側電極、14 n側電極、15 透明保護膜、81A 下部高バンドギャップ層、83A 上部高バンドギャップ層。

Claims (8)

  1. Inを含む低バンドギャップ層と前記低バンドギャップ層よりもバンドギャップエネルギーが高い高バンドギャップ層とを少なくとも1組含む窒化物半導体素子の製造方法であって、
    前記高バンドギャップ層を形成する工程は、水素ガスが意図的に添加された雰囲気下で前記高バンドギャップ層の一部を成長させる工程を含み、
    水素ガスの濃度をH(%)とし、前記高バンドギャップ層の前記一部の成長速度をBとしたとき、下記式(1)、(2)を満たす窒化物半導体素子の製造方法。
    H≧0.0332×B−0.3222(B≦100nm/h)・・・式(1)
    H≧3(B>100nm/h) ・・・式(2)
  2. 前記高バンドギャップ層は、下部高バンドギャップ層と上部高バンドギャップ層とを有し、
    前記高バンドギャップ層を形成する工程は、前記低バンドギャップ層に接するように前記低バンドギャップ層の上に前記下部高バンドギャップ層を形成する工程と、前記下部高バンドギャップ層の上に前記上部高バンドギャップ層を形成する工程とを含み、
    前記下部高バンドギャップ層を形成する工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加せず、
    前記上部高バンドギャップ層を形成する工程では、前記式(1)、(2)を満たす請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  3. 前記下部高バンドギャップ層を形成するときの水素ガスの濃度は前記上部高バンドギャップ層を形成するときの水素ガスの濃度よりも低く、または、水素ガスを添加することなく前記下部高バンドギャップ層を形成し、
    前記下部高バンドギャップ層の成長速度は、前記上部高バンドギャップ層の成長速度よりも遅い請求項2に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  4. 前記下部高バンドギャップ層の厚さは、1原子層の厚さ以上である請求項2または3に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  5. 前記上部高バンドギャップ層の厚さは、3原子層の厚さ以上である請求項2〜4のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  6. 前記低バンドギャップ層を形成する工程の後であって前記高バンドギャップ層を形成する工程の前に、成長中断工程を行い、
    前記成長中断工程は、2秒以上行われ、
    前記成長中断工程では、材料ガスとしてNH3を用い、キャリアガスとしてN2を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  7. 前記成長中断工程では、意図的に添加された水素ガスの濃度が0.1%以下である、または、水素ガスを添加しない請求項6に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
  8. 前記高バンドギャップ層と前記低バンドギャップ層とは、少なくとも1組以上の量子井戸構造を有する発光層を構成し、
    前記発光層を挟むようにn型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とを形成する請求項1〜7のいずれかに記載の窒化物半導体素子の製造方法。
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