JP2015102459A - センサ装置および測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光源強度や、光結合度、外的環境の変動による影響を受けずにSPR現象による光の強度変化を検出可能なセンサ装置を提供する。【解決手段】センサ装置(1)は、光源(7)と、光源からの光を導波するコアおよびコアを被覆するクラッドを含む光導波路(3,3’)と、コアに接するように配置され、光源からの光により表面プラズモン共鳴現象が生じる金属層(40)と、金属層の表面に形成され、被測定物質を含む溶液が滴下されて被測定物質と特異的に結合するセンサ膜(41)と、光導波路の長手方向に沿った複数の位置における光導波路からの散乱光の強度を検知する散乱光検知部(8,8A,8B)と、散乱光検知部により検知された散乱光の複数の強度値に基づいて、センサ膜に滴下された溶液中の被測定物質を定量する制御部(11)とを有する。【選択図】図1
Description
本発明は、センサ装置および測定方法に関する。
多重反射を用いる光導波路型のSPRセンサが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。SPRセンサは、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した屈折率センサであり、例えば、サンプル溶液の濃度の測定や免疫反応の検出といった、化学分析や生物化学分析に用いられる。表面プラズモン共鳴は、サンプル溶液に接触している金属層の内表面に全反射角度以上で光が入射したときに、サンプル溶液の屈折率に応じた波長の光が吸収される現象である。
図15は、従来の光導波路型のSPRセンサ100の模式図である。SPRセンサ100は、光導波路103と、金属層140と、センサ膜141と、光源107と、光センサ108とを有する。光導波路103は、例えば円形断面を有する光ファイバであり、コア130とクラッド131を有する。金属層140とセンサ膜141は、コア130の一部の表面を取り囲むように重ねて形成されている。光導波路103の周囲には、センサ膜141に接触するようにサンプル溶液106が滴下される。
測定時には、光源107から光導波路103に光を入射させる。入射光が光導波路103内で全反射を繰り返しながら伝搬するときに、特定の波長の光により金属層140において表面プラズモン共鳴が発生する。センサ膜141は、サンプル溶液106に含まれる被測定物質を抗原として認識する抗体膜であり、被測定物質と特異的に結合する性質を有し、金属層表面のエバネッセント波が染み出した領域での屈折率を変化させる。このとき、金属層140では、コア130の屈折率、サンプル溶液106の屈折率および光の波長で決まる量の光吸収が生じる。以下では、表面プラズモン共鳴による金属層140での光の吸収量のことを「SPR吸収量」という。光導波路103を通る光は、金属層140でSPR吸収により減衰し、最終的に出射面から出射され、光センサ108で検出される。
図16(A)は、入射光の波長λと光導波路の透過率Tとの関係を示すグラフである。表面プラズモン共鳴を発生させる波長は、サンプル溶液の屈折率によって異なる。図16(A)に示すように、サンプル溶液の屈折率nが増加すると、SPR吸収のピーク波長が長波長側にシフトする。
図16(B)は、波長660nmの入射光で測定されたサンプル溶液の屈折率nと透過率Tとの関係を示すグラフである。図16(A)に示すように、波長660nmは、SPR吸収のピーク波長より短波長の光である。SPR吸収のピーク波長より短波長の光を光導波路に入射させた場合、サンプル溶液の屈折率nが増加すると、透過率Tが増加し、光導波路からの出射光強度が強くなる。
このため、光導波路からの出射光を光センサで検出し、透過光量や入射光に対する出射光のスペクトル変化を見ることにより、サンプル溶液による屈折率変化が測定される。さらに、サンプル溶液の屈折率はその濃度に依存するため、サンプル溶液の屈折率からサンプル溶液の濃度が求められる。すなわち、特定の波長の光を入射させたときの出射光強度を光センサで測定することで、透過率の値から、サンプル溶液中に含まれる被測定物質の量が求められる。
図15のSPRセンサ100では光導波路103の透過光を測定するが、光導波路からの散乱光を測定して被測定物質を定量するSPRセンサも知られている。例えば、特許文献3には、金属微小構造体を有するセンサ領域を表面上に一つ又は複数有しセンサ領域を照明する照明光を内部で導光可能な測定チップと、照明光となる光を出力する光源部と、センサ領域における金属微小構造体によって照明光が散乱された散乱光を検出する受光装置とを備えるセンシング装置が記載されている。また、特許文献4には、透明平板導光体の一対の主面の一方に1層の金属薄膜を形成してなるセンサチップおよびフローセルからなるセンサ部と、光源と、光源からの光を導光体の入射端面に入射させる光学系と、導光体の出射面からの出射光を検出する第1検出部と、一対の主面の他方からの出射光を検出する第2検出部とを有するSPRセンサが記載されている。第2検出部は、LPR(局在プラズモン共鳴)により散乱された光の総量を測定する。
一般に、SPRセンサで測定を行う際は、まずサンプル溶液を滴下する前の状態で出射光強度を測定し、その測定値をリファレンスとする。その後で、センサ膜にサンプル溶液を滴下し、出射光強度を測定する。そして、サンプル溶液の測定値とリファレンスとの差を求めることでサンプル溶液に基づくSPR吸収量を求め、予め測定された検量線、すなわちサンプル溶液中の被測定物質の量とSPR吸収量との関係を用いて、被測定物質を定量する。
一方、被測定物質がある状態で取得されたリファレンス値を用いてスペクトル差分から被測定物質を測定する方法が知られている。例えば、特許文献5には、内部反射回数が異なる条件で表面状態を測定すべきウエハなどの基板に赤外線を入射し、それぞれの条件について多重内部反射スペクトルを測定し、内部反射回数が少ない内部多重反射スペクトルをリファレンススペクトルとし、内部反射回数が多いものをサンプルスペクトルとして吸光度スペクトルを求める表面状態測定装置が記載されている。
特許文献5の装置では、異なる2つの入射角度で光を入射し、それらの出射光の相対的な強度変化を比較する。この装置では、実時間でリファレンスを取得するため、測定中に発生する変動要因を打ち消すことができる。特許文献5の装置は、シリコンウエハ上に付着した有機物質による汚染状態を把握するためにシリコンウエハを光導波路としてSPRセンサを構成したものであるが、シリコンウエハをガラスやポリマーの光導波路と置き換えれば、液体中で用いられる光導波路型のSPRセンサと考えられる。
光導波路型のSPRセンサでは、光源強度の変動や、光源と光導波路と光センサの間における光結合度の変動(アライメントのズレ)、温度・湿度などの外的環境の変化によって出射光強度が変化し、それが測定誤差となる。本来、リファレンスの測定とサンプルの測定は同時刻に行う必要があるが、実際には異なる時刻に行われるため、リファレンスを測定してからサンプルを測定するまでの間に生じた変動や、サンプルの測定中に生じた変動が測定誤差となる。
特許文献5の装置のようにサンプルがある状態でリファレンス値を取得する場合でも、2つの光路を交互に測定するため、厳密には異なる時刻における2つのスペクトルを用いて変動を打ち消すことになり、結局は測定誤差を含む可能性がある。同時刻に2つの光路におけるスペクトルを得るには、予め目的の光路に設置された2組の光源と赤外線分析装置が必要であり、コストが増加するとともに装置が大型化してしまう。
また、理想的な光導波路では、透過光強度の減衰はSPR吸収によるものであり、透過光強度の変化を求めることで、被測定物質を容易に定量することができる。一方、実際の光導波路では、コア−クラッド界面で生じる光の散乱により透過光強度が減衰し、光センサで受光される光強度が減少する。散乱による光強度減少はSPR吸収による光強度減少と区別できないため、透過光強度だけを測定する方法では、散乱光強度の変化がノイズとして透過光強度に加算されて、測定精度が悪化する。
そこで、本発明の目的は、光源強度や、光結合度、外的環境などの変動による影響を受けずに表面プラズモン共鳴による光の強度変化を検出可能なセンサ装置を提供することである。また、本発明の目的は、光導波路での光の散乱があっても、本構成を有しない場合と比べて表面プラズモン共鳴による光の吸収量をより高精度に検出可能なセンサ装置を提供することである。また、本発明の目的は、より低コストかつ小型のセンサ装置を提供することである。
本発明に係るセンサ装置は、光源と、光源からの光を導波するコアおよびコアを被覆するクラッドを含む光導波路と、コアに接するように配置され、光源からの光により表面プラズモン共鳴現象が生じる金属層と、金属層の表面に形成され、被測定物質を含む溶液が滴下されて被測定物質と特異的に結合するセンサ膜と、光導波路の長手方向に沿った複数の位置における光導波路からの散乱光の強度を検知する散乱光検知部と、散乱光検知部により検知された散乱光の複数の強度値に基づいて、センサ膜に滴下された溶液中の被測定物質を定量する制御部とを有することを特徴とする。
本発明に係るセンサ装置では、散乱光検知部は、光導波路における金属層より上流側の位置での散乱光の強度である上流側強度と、金属層より下流側の位置での散乱光の強度である下流側強度とを検知することが好ましい。
本発明に係るセンサ装置では、制御部は、上流側強度と下流側強度との比から、金属層での光の吸収量を求めることが好ましい。
本発明に係るセンサ装置では、制御部は、光導波路の長手方向における距離と光導波路の透過光の強度との関係を記述する理論式のパラメータを上流側強度および下流側強度の値から決定することにより、金属層での光の吸収量を求めることが好ましい。
本発明に係るセンサ装置では、光導波路は光ファイバであり、散乱光検知部は、光ファイバを取り囲み、当該光ファイバの長手方向に沿って配置された光センサアレイであることが好ましい。
本発明に係るセンサ装置では、光導波路は、コアが表面に露出するように平板状に形成され、散乱光検知部は、コアに沿うように光導波路に隣接して配置された光センサアレイであることが好ましい。
また、本発明に係る測定方法は、光源と、光源からの光を導波するコアおよびコアを被覆するクラッドを含む光導波路と、コアに接するように配置され、光源からの光により表面プラズモン共鳴現象が生じる金属層と、金属層の表面に形成され、被測定物質を含む溶液が滴下されて被測定物質と特異的に結合するセンサ膜とを有するセンサ装置を用いた測定方法であって、光導波路の長手方向に沿った複数の位置における光導波路からの散乱光の強度を検知するステップと、検知された散乱光の複数の強度値に基づいて、センサ膜に滴下された溶液中の被測定物質を定量するステップとを有することを特徴とする。
本発明によれば、光源強度や、光結合度、外的環境などの変動による影響を受けずに表面プラズモン共鳴による光の強度変化を検出可能なセンサ装置を提供することができる。また、本発明によれば、光導波路での光の散乱があっても、本構成を有しない場合と比べて表面プラズモン共鳴による光の吸収量をより高精度に検出可能なセンサ装置を提供することができる。また、本発明によれば、より低コストかつ小型のセンサ装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るセンサ装置および測定方法について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、センサ装置1の模式図である。センサ装置1は、特に、局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance)を利用して被測定物質を定量するSPRセンサである。センサ装置1は、センサチップ2と、光源7と、光センサ8A,8B,9と、アンプ10A,10B,10Cと、制御部11と、光源駆動回路12と、表示装置13とを有する。以下では、光源7から光センサ9に向かう方向をz方向とし、図1に示すようにx,y,z軸を定義する。
センサチップ2は、光導波路3と、サンプル溶液保持部5とを有する。図1では、yz面内におけるセンサチップ2の断面を示している。光導波路3は、ガラスまたはポリマーから構成される光ファイバである。光導波路3のクラッドの一部が除去されて、その部分に検出部4が形成されている。サンプル溶液保持部5は、内部にサンプル溶液6を保持する。
図2(A)〜図2(C)は、検出部4の例を示す断面図である。図2(A)〜図2(C)では、光導波路3の一部も示している。光導波路3は、コア30と、コア30を被覆しコア30より屈折率の低いクラッド31とを有する。光導波路3は、円形断面を有し、コア30内に光を閉じ込める。
まず、図2(A)を参照すると、検出部4は、金属層40と、センサ膜41とを有し、z方向に延びる中心軸に関して回転対称に形成されている。
金属層40は、光が入射することで表面プラズモン共鳴が生じる層であり、エッチングなどによりクラッド31の一部が除去されて露出したコア30の上に形成されている。金属層40は、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、またはこれらの合金などの金属粒子により構成された層(金属粒子層)である。検出部4では、金属層40に含まれる微細な金属粒子にて局在表面プラズモン共鳴が生じる。金属層40では、各金属粒子は、厚み方向に互いに積層されず、平面方向にも、互いに接触しないようにわずかに間隔を隔てて配置されることが好ましい。また、検出部4の検出精度を良好にするためには、各金属粒子の粒子径は、5〜300nm程度であることが好ましい。
センサ膜41は、被測定物質と特異的に結合する抗原や、抗体、レセプターなどで形成される。センサ膜41は、金属層40を構成する金属粒子の表面に形成される。
図2(B)は、検出部4の別の例を示す断面図である。図2(B)の検出部4Aは、金属粒子で構成された金属層40Aと、センサ膜41とを有する。図2(A)の検出部4との違いは、各金属粒子の間のコア30上にもセンサ膜41が形成されている点である。図2(A)の検出部4は、予めセンサ膜41が表面に設けられた金属粒子で構成される金属層40を有するが、図2(B)の検出部4Aのように、金属粒子を含む金属層40Aを形成した後で、金属層40Aの上にセンサ膜41を形成してもよい。
図2(C)は、検出部4のさらに別の例を示す断面図である。図2(C)の検出部4Bは、コア30の表面に形成された極めて薄い島状の金属層40Bと、金属層40Bの上に形成されたセンサ膜41とを有する。金属層40Bの厚さは、例えば数nm〜数10nm程度であることが好ましい。検出部4Bでは、金属層40Bに含まれる微細な各島にて局在表面プラズモン共鳴が生じる。
光源7には、例えばLED光源が用いられる。光源7と光導波路3の間隔は、光の利用効率を上げるためにできるだけ接近させることが好ましく、必要に応じて接触させてもよい。位置ずれが生じても入射光強度が変動しにくくなるように、光源7の発光面のサイズは光導波路3のコア径よりも大きくすることが好ましい。
光センサ8Aは、サンプル溶液保持部5より上流側(光源7に近い側)でセンサチップ2に接するように配置され、光導波路3の上流側部分からの散乱光14Aを検知する。光センサ8Bは、サンプル溶液保持部5より下流側(光源7から遠い側)でセンサチップ2に接するように配置され、光導波路3の下流側部分からの散乱光14Bを検知する。光センサ8A,8Bは、光導波路3の外周面を取り囲む円筒状でもよいし、外周方向の一部分を覆う平面形状でもよい。光センサ8A,8Bは、光導波路の長手方向に沿った複数の位置における光導波路からの散乱光の強度を検知する散乱光検知部の一例である。
センサ装置1では散乱光を検知する2個の光センサ8A,8Bを設けているが、光導波路3の長手方向であるz方向に沿って散乱光の強度変化を検出できるように、z方向に沿って光センサアレイを配置することが好ましい。この光センサアレイは、光導波路3の外周面を取り囲みz方向に延びる円筒状の2次元の光センサアレイでもよいし、平面形状で光導波路3の外周に沿ってz方向に延びる1次元の光センサアレイでもよい。以下では、光センサ8A,8Bをまとめて「光センサ8」ともいう。
光センサ9は、光導波路3の出射面3Cからの透過光を検知する。光センサ9は、センサ装置1で、従来の方法により透過光強度を用いてサンプル溶液を測定することもできるように設けられている。
アンプ10A,10B,10Cは、それぞれ、光センサ8A,8B,9での光の検知により生成された電気信号を増幅する。
制御部11は、アンプ10A,10B,10Cからの電気信号を取得し、A/D変換によりデジタル信号に変換する。その上で、制御部11は、後述する方法にて散乱光の複数の強度値に基づきSPR吸収量を求めることで、サンプル溶液中の被測定物質を定量する。定量とは、例えば、サンプル溶液中の被測定物質の濃度や屈折率を求めることである。また、制御部11は、光源駆動回路12や表示装置13の動作を制御する。
光源駆動回路12は、光源7を駆動するための回路である。表示装置13は、制御部11にて求められた被測定物質の測定結果を表示する。
図3は、フローセル型のセンサチップ2Aの模式図である。センサ装置1では、図1のセンサチップ2に代えて、図3に示すフローセル型のセンサチップ2Aを用いてもよい。
センサチップ2Aは、フローセル50を有する。フローセル50は、図1のサンプル溶液保持部5に流入口51と流出口52を設けたものである。サンプル溶液6は、シリンジポンプ53によりサンプル溶液保持部5に送り込まれ、センサ膜41と接触して反応した後で、リザーバー54に排出される。
図4は、角型断面の光導波路3’を使用した場合のセンサ装置1の模式図である。図5は、角型断面の光導波路3’を有するセンサチップ2Bの模式図である。センサ装置1では、図1のセンサチップ2に代えて、図5に示すセンサチップ2Bを用いてもよい。
図1のセンサチップ2では光導波路3として円形断面の光ファイバを用いているが、センサチップ2Bは、光ファイバに代えて角型断面の光導波路3’を有する。光導波路3’は、コア30’と、クラッド31’と、ベース基板32’とを有する。ベース基板32’は、クラッドを兼ねた平板状の基板であり、その上にコア30’とクラッド31’が形成されている。コア30’は、上面が露出するようにベース基板32’に埋め込まれ、ベース基板32’の幅方向(x方向)の中央でベース基板32’の長手方向(z方向)に平行に配置されている。コア30’は、xy面に沿った断面が長方形状を有する。クラッド31’は、コア30’の両脇に、ベース基板32’の上面を覆うように配置されている。
検出部4は、クラッド31’の一部を取り除いて形成されており、クラッド31’が取り除かれた部分のベース基板32’の上面と、コア30’の一部の上面とを覆うように配置されている。検出部4には、センサチップ2と同様に、金属層40とセンサ膜41が形成されている。なお、センサチップ2Bでも、図2(B)の検出部4Aまたは図2(C)の検出部4Bを用いてもよい。
ベース基板32’が透明基板である場合は、図4に示すように、散乱光を検出する光センサ8A,8Bをベース基板32’の下面側に隣接して配置してもよい。一方、ベース基板32’が不透明基板である場合は、光センサ8A,8Bをベース基板32’の上面側に隣接して配置する。
なお、図4のセンサチップ2Bを、図3に示すようなフローセル型のセンサチップとしてもよい。また、光導波路は、コアが表面に露出するように平板状に形成されたものであれば、角型断面に限らず、例えば半円形など、他の形状の断面を有するものであってもよい。
以下では、センサ装置1による測定原理について説明する。説明は、円形断面の光ファイバである光導波路3を用いて行うが、角型断面の光導波路3’を用いる場合も同様である。
図6は、センサ装置1による測定原理を説明するための図である。光源7から光導波路3に入射した光は、コア−クラッド界面で反射を繰り返しながら光導波路3を伝搬していくが、反射の際に一部が散乱光14として外部に漏れ出す。検出部4の部分でも、サンプル溶液6の屈折率に応じたSPR吸収により減衰するとともに、一部が散乱光14として外部に漏れ出す。以下では、光導波路3のうち、検出部4が設けられておりSPR吸収が起こる部分のことを「SPR部分」という。
センサ装置1では、1次元または2次元のアレイ型の光センサ8を用いて、SPR部分を含む光導波路3の側面からセンサチップ外部に散乱する光を測定する。特に、センサ装置1では、光導波路3の長手方向であるz方向の距離に応じた散乱光の強度変化を測定する。そして、センサ装置1は、SPR部分の前後の散乱光強度からSPR吸収量を測定することにより、サンプル溶液中の被測定物質を定量する。
まず、z方向の距離に応じた透過光強度変化と散乱光強度変化を記述する理論式について説明する。
簡単のため、光導波路からは単位長さ当たり等方的に一定量の光が散乱すると仮定すると、散乱の度合いを表すパラメータをα、光導波路の入射面である距離0での透過光強度をI0として、透過光強度I(z)は(1)式で表される。
透過光強度I(z)は光導波路の長手方向の距離zとともに減少し、その減少分は散乱として光導波路外に漏れ出すので、散乱光強度Ls(z)は、透過光強度の距離微分dI(z)/dzに比例すると考えられる。したがって、散乱光強度Ls(z)は(2)式で表される。
ここで、LS0は、光導波路の入射面である距離0での散乱光強度であり、(1)式のI0とはLS0=αI0の関係がある。また、αは、散乱の度合いを表す(1)式と同じパラメータであり、散乱光強度が1/e(eは自然対数の底)になる距離に相当する。このαを散乱係数と定義する。散乱係数αの値は、光導波路の構造や製造条件などで決まり、同一の光導波路中では一定であると仮定する。
図7(A)および図7(B)は、それぞれ、光導波路の長手方向の距離に応じた透過光強度と散乱光強度の変化を示すグラフである。各グラフでは、散乱のある実際の光導波路を用いた場合に、光導波路を伝搬する光の強度が光導波路に沿ってどのように変化するかを示している。各グラフにおいて、曲線L1はSPR吸収が0の場合の、曲線L2はSPR吸収が比較的小さい場合の、曲線L3はSPR吸収がL2よりも大きい場合の強度変化を示す。L1は、検出部4がなく光導波路3内での散乱のみにより減衰が起こると仮定したときの強度変化に相当する。各グラフ内の矢印WSで示した部分は、SPR部分である検出部4の位置に相当する。
図7(A)のグラフでは、曲線L0として、散乱のない理想的な光導波路についての透過光強度変化も示している。SPR部分では、SPR吸収のため、光導波路の他の部分よりも大きく光強度が減衰する。また、図7(B)のグラフでは、SPR部分での光強度変化がすべて散乱によると仮定した場合の散乱光強度を示している。実際には、SPR部分では散乱の他にSPR吸収や反射などによる強度変動があるが、図7(B)では、それらの寄与は全て散乱光に含めている。
次に、SPR部分の前後における光強度変化とSPR吸収量の関係について説明する。
ここで、ZIはSPR部分の上流側の端から上流側の光センサ8Aまでのz方向の距離、ZSPRはSPR部分の長さ、ZOはSPR部分の下流側の端から下流側の光センサ8Bまでのz方向の距離である(図1および図4を参照)。散乱係数αはSPR部分を含めて一定と見なす。したがって、SPR部分の透過率をTSPRとすると、入射光強度IIと出射光強度IOの強度比Yは、(4)式で表される。
(3)式の指数関数部分は、検出部4を含む上流側の光センサ8Aの位置から下流側の光センサ8Bの位置までの全領域における散乱による損失を表す。検出部4があるSPR部分の散乱係数は、他の部分の散乱係数と同一と見なし、距離zによらない一定値であると仮定する。全領域での損失は、上流側の光センサ8Aから下流側の光センサ8Bまでの距離(ZI+ZSPR+ZO)で決まるが、光センサ8A,8Bの位置は固定されているので、センサチップ2の位置がz方向にずれてもこの距離は変化せず、一定と見なすことができる。そこで、散乱による全損失は、一定値を表すconstとしている。
ここで、Sは光導波路内を伝播する透過光強度と、光導波路からの散乱光強度との比を表す定数である。散乱係数αは光導波路内で一定と見なす。したがって、入射光強度IIと出射光強度IOの強度比Yは、散乱光強度の比を用いて(6)式で表される。
散乱による全損失量(const)は検量線から求められるため、SPR部分の前後における散乱光強度LSI,LSOの強度比Yを求めれば、SPR部分を含む光導波路での散乱を考慮せずにSPR部分の透過率TSPRを求めることができる。この強度比Yは、SPR吸収量に対応する測定量である。したがって、強度比Yの変化から、サンプル溶液中の被測定物質を定量することが可能である。
以上の考察から、強度比Yを求めるときの散乱光強度LSI,LSOは、SPR部分の前後であれば、その直前および直後でなくても任意の距離zにおける値を用いてよい。このことは、散乱係数αを一定と仮定していることから帰結される。
SPR部分の前後における散乱光強度LSI,LSOを求めるには、いくつかの方法がある。最も簡単な方法は、例えば図1に示した光センサ8A,8Bにより、SPR部分の前後の任意の2点での散乱光強度を求めることである。あるいは、光センサ8として1次元の光センサアレイを用いて距離zに応じた散乱光強度のデータを取得し、そのデータを(2)式にフィッティングして係数α,LS0を求めることで、SPR部分の直前および直後における散乱光強度を求めてもよい。あるいは、光センサ8として2次元の光センサアレイを用いて、SPR部分の入射側と出射側の散乱光強度をそれぞれ積分により求めてもよい。
以下では、SPR部分の前後の2点における散乱光強度LSI,LSOを求める1つ目の方法と、距離zに応じた散乱光強度のデータを(2)式にフィッティングして散乱光強度LSI,LSOを求める2つ目の方法とを順に説明する。
図8は、SPR部分の前後の2点における散乱光強度を測定してサンプル溶液中の被測定物質を定量する方法のフローチャートである。図8に示したフローは、制御部11内のメモリに予め記憶されたプログラムに従って、制御部11内のCPUにより実行される。
最初に、制御部11を用いて、光源駆動回路12から光源7に電流を印加し、光源7を点灯させておく。光源7は発光と同時に発熱するので、熱的に安定するのを待って測定を開始することが好ましい。
光源7を点灯させたら、まず、サンプル溶液を滴下する前の状態で光導波路3からの散乱光を測定する(S1)。その際は、SPR部分より前にある光導波路3の上流側部分からの散乱光14Aと、SPR部分より後ろにある光導波路3の下流側部分からの散乱光14Bとをそれぞれ光センサ8A,8Bで検出し、アンプ10A,10Bで増幅して光強度信号とする。
そして、測定されたSPR部分の前後における散乱光強度LSI,LSOから、制御部11にて(6)式により強度比Yを求める(S2)。この強度比Yの値をYINIとおく。
散乱光強度の測定値にノイズが含まれる場合は、複数回測定を行い、その平均値を用いるとよい。ステップS2でYINIを求めたら、サンプル溶液を測定する前の強度比Yを例えば1秒に1回などのように連続的に測定し、相対強度比Yr=Y/YINIを時系列でプロットすると、測定値のノイズや変動を把握することができる。
次に、未知量の被測定物質を含むサンプル溶液をシリンジなどでサンプル溶液保持部5に必要量滴下して、検出部4をサンプル溶液で覆う(S3)。
その後、一定時間ごとに散乱光強度を測定して、SPR吸収量に対応する散乱光強度比Yを求め、相対強度比Yrを計算する(S4)。具体的には、i回目の強度比Yの測定値をYiとして、相対強度比Yri=Yi/YINIを順次プロットしていく。
そして、平衡状態に達したときの最終的な相対強度比Yrの値を、予め測定しておいた検量線データと比較して、被測定物質を定量する(S5)。測定結果や途中結果などは必要に応じて表示装置13に表示する。以上で、図8のフローは終了する。
なお、ステップS4で相対強度比Yriを計算するときに強度比YiをYINIで除算しているが、これは強度比Yを1にスケーリングする処理であり、光源強度や光結合の変動をキャンセルするための処理でないことは明らかである。必要なら、強度比Yiを用いて被測定物質を定量してもよい。その場合には、検量線データもYiを用いて作成しておく。
図9は、相対強度比Yrの時間変化の例を示すグラフである。図9において、0から10秒の間は、サンプル溶液を滴下する前の、図8のステップS1における測定値に相当する。そして、10秒経過した時点でサンプル溶液を滴下している。相対強度比Yrの値は、サンプル溶液が滴下されたときに低下するが、その後は時間とともに増加する。これは、センサ膜41と被測定物質との反応が時間とともに進み、やがて平衡状態に達することを示している。平衡状態に達した時点での相対強度比Yrの値を、予め測定しておいた検量線データと比較して、被測定物質の量が求められる。
以上のように、センサ装置1では、光導波路からの散乱光強度は光導波路の透過光強度に比例し、光導波路からの散乱は距離zによらず一定であると仮定する。そして上記の1つ目の方法では、光導波路のうちSPR部分を挟む前後2箇所からの散乱光の相対強度比を用いてSPR部分の透過率を測定することにより、簡単な方法で、光源7の強度変動によらずにSPR吸収量を求めることが可能になる。また、この方法では、散乱光を測定するSPR部分の前後2箇所を任意に選べるので、光センサ8と光導波路3とを高精度に位置決めする必要がない。
さらに、センサ装置1では1個の光源7で測定が可能であり、複数の光源を用いたり、光源の角度を変えたりして光強度の変動を打ち消す必要がない。このため、センサ装置1では、装置を小型化かつ低価格化することも可能になる。
次に、距離zに応じた散乱光強度のデータを(2)式にフィッティングして散乱光強度LSI,LSOを求める2つ目の方法について説明する。
最初に、SPR部分でのSPR吸収について説明する。表1は、サンプル溶液中の被測定物質の濃度に応じたSPR部分での吸収率および透過率の変化の例を示す。ここでは、説明のため、光源の波長λにおいて、SPR部分での吸収率および透過率が、被測定物質の濃度に応じて表1のように変化すると仮定する。
図10(A)および図10(B)は、それぞれ、表1の例における0%、1%、3%および10%の濃度についての透過光強度と散乱光強度の変化を示すグラフである。上記の(1)式および(2)式より、透過光強度はI(z)=I0e−αzと表され、散乱光強度はLS(z)=αI0e−αzと表される。これらの式に従い、0%、1%、3%および10%の濃度について、光導波路の長手方向の距離に応じた透過光強度I(z)と散乱光強度Ls(z)の変化をプロットすると、図10(A)および図10(B)のようになる。ここで、光導波路の散乱係数αは0.5%とし、図10(B)に示す散乱光強度にはランダムなノイズを重畳している。ノイズの大きさは、散乱光強度のうちSPR部分を除いた最大値に対して振幅が最大0.5%になるように設定している。
各グラフ内の矢印WSで示した部分は、SPR吸収が起こる検出部4の位置に相当する。SPR部分では、SPR吸収による減衰と、光導波路での散乱による減衰とが同時に生じている。また、各グラフ内の矢印W1,W2で示した部分は、それぞれ光導波路の上流側部分と下流側部分に相当する。矢印W1の部分ではSPR吸収の影響を受けないため、透過光と散乱光は、サンプル溶液の濃度にかかわらず同じ強度をもつ。一方、矢印W2の部分では、サンプル溶液の濃度に応じてSPR吸収量が異なるため、透過光と散乱光は、各濃度で異なる強度をもつ。そこで、フィッティングにより散乱光強度を求める2つ目の方法では、矢印W1の部分のデータをリファレンスとして用いる。以下では、矢印W1の部分を「リファレンス領域」と、矢印W2の部分を「シグナル領域」という。
図11は、光導波路の長手方向の距離に応じた散乱光強度のデータを理論式にフィッティングしてサンプル溶液中の被測定物質を定量する方法のフローチャートである。図11に示したフローは、制御部11内のメモリに予め記憶されたプログラムに従って、制御部11内のCPUにより実行される。
まず、未知量の被測定物質を含むサンプル溶液をシリンジなどでサンプル溶液保持部5に滴下して、検出部4をサンプル溶液で覆う(S21)。なお、フィッティングを行う2つ目の方法では、サンプル溶液を滴下させる前のリファレンス測定は不要になる。
そして、光源7を点灯させたら、光導波路に沿って設けられた光センサ8(1次元または2次元の光センサアレイ)により、散乱光強度変化を測定する(S22)。
ここで測定された散乱光強度のデータを、リファレンス領域とシグナル領域のそれぞれにおいて、散乱光強度の理論式LS(z)=me−nzにフィッティングすることにより、パラメータm,nの値を求める(S23)。フィッティングは、上記の理論式Ls(z)で両辺の自然対数を取って線形化すれば、最小二乗法により容易に計算することが可能である。あるいは、非線形最小二乗法を用いて直接、理論式からパラメータm,nを計算してもよい。その際、nはリファレンス領域とシグナル領域で同じ値になるように条件付けを行うが、mは2つの領域で異なる値になる。
次に、リファレンス領域とシグナル領域のそれぞれのデータについて、得られたm,nの値から、n=αとm=αI0の関係式により、散乱係数αと透過光強度のパラメータI0を求める(S24)。リファレンス領域のデータについてのパラメータI0をI0REFとし、シグナル領域のデータについてのパラメータI0をI0SIGとする。
そして、得られたI0SIGとI0REFとの強度比Y=I0SIG/I0REFを求める(S25)。この強度比Yは、SPR部分の透過率と等しい。そこで、強度比Yが得られたら、サンプル溶液の濃度や屈折率とSPR部分の透過率(SPR吸収量)との対応関係を示す予め作成されたテーブルを参照することにより、被測定物質を定量する(S26)。以上で、図11のフローは終了する。
図12(A)は、フィッティングによりSPR吸収量を求める方法を説明するためのグラフである。図12(A)では、図11のステップS24で求められたパラメータを用いて計算された透過光強度I(z)の変化を、表1の例における0%、1%、3%および10%の濃度について点列で示している。
ステップS24により、2つの系列のデータが得られる。一方の系列は、図12(A)に×印で示したリファレンスデータ(ref)である。これはリファレンス領域における透過光強度の曲線に相当するが、図12(A)ではその曲線をシグナル領域まで延ばして示している。また、他方の系列は、サンプル溶液の濃度に応じて垂直方向の位置が変化する、○印などの他の記号で示したシグナルデータである。これはシグナル領域における透過光強度の曲線に相当するが、図12(A)ではその曲線をリファレンス領域まで延ばして示している。図12(A)に示すように、これら2つの系列のデータをSPR部分で折れ曲がるようにつなぐと、最終的な透過光強度I(z)のグラフになる。
ステップS25で計算される強度比Yは、例えば、図12(A)に縦線で示したSPR部分の終端に相当する位置zsでのリファレンスデータ(×印)とシグナルデータ(×印以外)との強度比に相当する。ただし、強度比Yを求める位置はzsに限らず、どの位置でも同じであることが、散乱係数αを一定と仮定していることから帰結される。あるいは、濃度が0%のときを基準として、SPR部分の終端位置zsにおける濃度0%のときのデータ(○印)とシグナルデータとの強度差を求めてもよい。この強度比Yあるいは強度差は、サンプル溶液の濃度により異なるため、例えばサンプル溶液の濃度とSPR吸収量との対応関係を示す予め作成されたテーブルを参照することにより、SPR吸収量からサンプル溶液中の被測定物質の濃度が求められる。
表2は、表1の例における、サンプル溶液の濃度に応じたSPR吸収による透過光強度の変化を示す。また、図12(B)は、表2の結果を示したグラフである。表2では、透過光の実測により求めた結果と、散乱光強度のカーブへのフィッティングにより求めた結果とを比較している。
表2のデータでは、サンプル溶液を滴下する前の状態の強度を基準(100%)にしている。「透過光実測による強度比Y」は、シグナル領域の終端である光導波路の出射面にて光センサ9により測定される透過光強度であり、図12(A)に楕円61で示した部分での強度に相当する。ただし、ノイズの影響を比較するため、透過光強度にはランダムなノイズを重畳している。ノイズの大きさは、透過光強度の最大値に対して振幅が最大0.5%になるように設定している。また、「フィッティングによる強度比Y」は、SPR部分の終端位置zsにおいて図11のステップS25で求められる透過光の強度比Yであり、図12(A)に楕円62で示した部分での強度に相当する。この強度比Yは、SPR部分の透過率と等しい。
図12(B)に示すように、ノイズを含んだ散乱光を用いてフィッティングにより求めた強度比Yは、SPR部分の透過率とよく一致していることがわかる。また、表2および図12(B)に示すように、散乱光から求めた強度比Yは、透過光から求めた強度比より誤差が小さい。透過光実測による強度比は、光導波路の出射面の1点で測定されるため、光源の強度変化やセンサチップのアライメントずれによる透過光強度変化の影響を受けて、誤差が発生しやすい。しかしながら、フィッティングを行う2つ目の方法では、上流側と下流側の散乱光の測定データから理論式のパラメータを求めて透過光強度を計算するので、光源の強度変化や、センサチップのアライメントずれ(特にz方向)の変化による影響を受けにくい。このため、フィッティングの方法では、光導波路の出射面で透過光強度を測定する場合と比べて、高い精度でSPR吸収量を求めることができ、被測定物質を高精度に測定することが可能になる。
また、フィッティングの方法では、サンプル溶液の測定時にSPR部分に入射される前の光強度をリファレンスとして用いることができる。すなわち、サンプル溶液がある状態でリファレンスも同時に測定することができるため、リファレンス用の測定は不要になる。このため、フィッティングの方法では、センサの位置ズレによるセンサ入射光量の変化や、光源自体の発光強度のバラつき、外的環境(温度、湿度)の経時変化などの影響を受けずにサンプル溶液を測定することが可能になる。
また、センサ装置1では、分光器が不要であるから、装置を小型化かつ低価格化することも可能になる。
図5に示す角型断面の光導波路3’を有するセンサチップ2Bを使い、エチレングリコールを被測定物質として、SPR部分の前後の2点における光強度を求める1つ目の方法により、サンプル溶液の濃度を測定する実験を行った。光導波路3’にはポリマー製のものを使用し、光源には波長660nmのLED光源を使用した。また、ベース基板32’には不透明な基板を使用したため、光センサ8A,8Bはベース基板32’の上面側に隣接して設けた。
まず、図8のステップS1で、サンプル溶液を滴下する前に入射側散乱光14Aと出射側散乱光14Bの強度を測定し、ステップS2でそれらの強度比を求めた。測定は約1秒に1回ずつ行い、30秒分の測定データを平均化した。
表3は、サンプル溶液を滴下する前に光センサ8A,8Bで入射側散乱光14Aと出射側散乱光14Bを検知し、アンプ10A,10Bで増幅して得られた電圧値Vsi,Vsoと、それらの比YINIとを示す。YINIは、平均化された電圧値の比Vso/Vsiである。
次に、ステップS3でサンプル溶液として純水を滴下し、ステップS4で一定時間ごとに散乱光強度を測定して強度比Yを求めた。
図13は、サンプル溶液として純水を用いたときの、SPR部分の入射側散乱光強度、出射側散乱光強度および相対強度比の時間変化を示すグラフである。図13では、入射側散乱光強度LSIを示す電圧値Vsiと、出射側散乱光強度LSOを示す電圧値Vsoと、それらの比をYINIで割った相対強度比Yr(=Vsi/Vso/YINI)とをプロットしている。時間tが30〜50秒の範囲におけるデータの変動は、サンプル溶液を滴下する際に生じたノイズである。サンプル溶液を滴下すると相対強度比Yrが0.7程度まで低下し、その後も徐々に低下しているが、これはサンプル溶液に純水を使用したことに起因する現象である。
引き続いて、検量線を得るために、サンプル溶液として濃度を1%、3%、5%、10%と変えたエチレングリコール溶液を用いて、図8のステップS1〜S4の測定を繰り返した。これにより、サンプル溶液の濃度と相対強度比Yrとを対応付けたデータを取得した。エチレングリコール溶液を用いる場合も、純水の場合と同様に相対強度比Yrが時間変動するが、図13における最後の30秒間で安定したところの平均値を検量線の相対強度比Yrの値として用いた。
図14(A)は、サンプル溶液としてエチレングリコール溶液を用いたときの、濃度Cと相対強度比Yrとの関係を示すグラフである。濃度Cが増加するにつれて、相対強度比Yrも増加していることがわかる。このように相対強度比Yrが増加するのは、SPR吸収のピーク波長より短い波長の光源を用いているためである。また、濃度Cの増加とともに曲線の傾きが緩やかになっているのは、図16(A)および図16(B)に示すように、SPR吸収スペククトルが長波長側にシフトした際に、光源波長660nmにおける透過率の傾きが減少することに起因している。
図14(B)は、サンプル溶液としてエチレングリコール溶液を用いたときの、屈折率nと相対強度比Yrとの関係を示すグラフである。エチレングリコール溶液は濃度と屈折率の関係が既知であるため、図14(A)のデータから図14(B)が得られる。
このように、サンプル溶液としてエチレングリコール溶液の濃度を変えて相対強度比Yrを測定することにより、エチレングリコール溶液についての検量線データが得られる。したがって、濃度が未知のエチレングリコール溶液を測定して相対強度比Yrを求めれば、図14(A)と図14(B)の検量線から、その溶液の濃度と屈折率が求められる。
1 センサ装置
2,2A,2B センサチップ
3,3’ 光導波路
4,4A,4B 検出部
6 サンプル溶液
7 光源
8A,8B,9 光センサ
11 制御部
30,30’ コア
31,31’ クラッド
40,40A,40B 金属層
41 センサ膜
2,2A,2B センサチップ
3,3’ 光導波路
4,4A,4B 検出部
6 サンプル溶液
7 光源
8A,8B,9 光センサ
11 制御部
30,30’ コア
31,31’ クラッド
40,40A,40B 金属層
41 センサ膜
Claims (7)
- 光源と、
前記光源からの光を導波するコアおよび前記コアを被覆するクラッドを含む光導波路と、
前記コアに接するように配置され、前記光源からの光により表面プラズモン共鳴現象が生じる金属層と、
前記金属層の表面に形成され、被測定物質を含む溶液が滴下されて被測定物質と特異的に結合するセンサ膜と、
前記光導波路の長手方向に沿った複数の位置における前記光導波路からの散乱光の強度を検知する散乱光検知部と、
前記散乱光検知部により検知された散乱光の複数の強度値に基づいて、前記センサ膜に滴下された溶液中の被測定物質を定量する制御部と、
を有するセンサ装置。 - 前記散乱光検知部は、前記光導波路における前記金属層より上流側の位置での散乱光の強度である上流側強度と、前記金属層より下流側の位置での散乱光の強度である下流側強度とを検知する、請求項1に記載のセンサ装置。
- 前記制御部は、前記上流側強度と前記下流側強度との比から、前記金属層での光の吸収量を求める、請求項2に記載のセンサ装置。
- 前記制御部は、前記光導波路の長手方向における距離と前記光導波路の透過光の強度との関係を記述する理論式のパラメータを前記上流側強度および前記下流側強度の値から決定することにより、前記金属層での光の吸収量を求める、請求項2に記載のセンサ装置。
- 前記光導波路は光ファイバであり、
前記散乱光検知部は、前記光ファイバを取り囲み、当該光ファイバの長手方向に沿って配置された光センサアレイである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置。 - 前記光導波路は、前記コアが表面に露出するように平板状に形成され、
前記散乱光検知部は、前記コアに沿うように前記光導波路に隣接して配置された光センサアレイである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置。 - 光源と、前記光源からの光を導波するコアおよび前記コアを被覆するクラッドを含む光導波路と、前記コアに接するように配置され、前記光源からの光により表面プラズモン共鳴現象が生じる金属層と、前記金属層の表面に形成され、被測定物質を含む溶液が滴下されて被測定物質と特異的に結合するセンサ膜とを有するセンサ装置を用いた測定方法であって、
前記光導波路の長手方向に沿った複数の位置における前記光導波路からの散乱光の強度を検知するステップと、
検知された散乱光の複数の強度値に基づいて、前記センサ膜に滴下された溶液中の被測定物質を定量するステップと、
を有する測定方法。
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JP2013244029A JP2015102459A (ja) | 2013-11-26 | 2013-11-26 | センサ装置および測定方法 |
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-
2013
- 2013-11-26 JP JP2013244029A patent/JP2015102459A/ja active Pending
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