[go: up one dir, main page]

JP2015080858A - 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法 - Google Patents

光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015080858A
JP2015080858A JP2013218181A JP2013218181A JP2015080858A JP 2015080858 A JP2015080858 A JP 2015080858A JP 2013218181 A JP2013218181 A JP 2013218181A JP 2013218181 A JP2013218181 A JP 2013218181A JP 2015080858 A JP2015080858 A JP 2015080858A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
laminated
resin composition
laminated sheet
monomer
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013218181A
Other languages
English (en)
Inventor
慎子 藤本
Shinko Fujimoto
慎子 藤本
義彰 佐藤
Yoshiaki Sato
義彰 佐藤
康一郎 實藤
Koichiro Saneto
康一郎 實藤
善紀 安部
Yoshiaki Abe
善紀 安部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2013218181A priority Critical patent/JP2015080858A/ja
Publication of JP2015080858A publication Critical patent/JP2015080858A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)

Abstract

【課題】予備成形品が非加熱の成形用金型に追従する際に必要な程度の延伸性があり、かつ優れた外観等を有し、耐磨耗性等に優れた積層成形品を得ることができる積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】アクリル基材シート(A)の片面に、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)、光重合開始剤(D)を含み、(C)以外の架橋性低分子モノマーを実質的に含まない光硬化性樹脂組成物(B)を積層した積層シートを用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性樹脂組成物、積層シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法に関する。詳しくは、光硬化後の優れた外観、意匠性、耐薬品性、耐磨耗性及び耐候性を有し、光硬化前の成形時の加工性が良好で表面粘着性のない積層シート、及びその積層シートを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法に関する。
プラスチック製品の成形と同時にその表面に装飾を施す方法として、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物を使用した光硬化性シートが提案されている(特許文献1)。
これらの光硬化性樹脂組成物又は光硬化性シートは、光硬化前の優れた成形性と光硬化後の優れた表面性能(硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、耐候性、耐薬品性、密着性等)を併せ持っており、自動車内装用途に好適に使用される。しかしながら、例えばサンルーフやリアスポイラーの上面部のように直射日光に曝される度合いが極端に多い自動車外装用途では、光硬化性樹脂組成物の層が変色したり、クラックを生じたり、或は基材シートより剥離するという問題を生じることがあった。
また、これらの問題を解決するために、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を含有する光硬化性樹脂組成物を使用した光硬化性シートが提案されている(特許文献2)。これらの光硬化性樹脂組成物又は光硬化性シートは、耐候性が必要とされる用途において好適に使用される。
特開2002−79621号公報 特開2004−277725号公報
しかしながら、上記特許文献において提案した光硬化性樹脂組成物又は光硬化性シートは、加熱時のみの成形性には優れているものの、室温下での伸びは考慮されておらず、それにより取り扱い性や歩留まりが悪くなるという問題があった。例えば、予備成形した積層シートを成形用金型に挿入配置し、溶融樹脂を金型内に射出する際に、予備成形した積層シートが成形用金型に追従すると、成形用金型を加熱せずに使用した場合表面クラックが発生するという問題を生じることがあった。成形用金型は通常加熱して使用するが、成形用金型が複雑な形状をとっている場合鏡面を磨くことが困難なため、成形用金型の細かいキズの転写防止として成形用金型を加熱せずに用いることがある。
本発明の課題は、上記の問題を解決することであり、硬化後の優れた外観、意匠性、耐薬品性、耐磨耗性及び長期耐候性を有し、光硬化前の成形時の加工性が良好で表面粘着性のない積層シート、及びそれを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法を提供することである。
本発明は、アクリル基材シート(A)の片面上に光硬化性樹脂組成物(B)からなる層を積層した積層シートであって、光硬化性樹脂組成物(B)が、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)と、光重合開始剤(D)
とを含み、下記条件の試験において表層クラックが目視上発生しない積層シートである。
(条件)
アクリル基材シート(A)の厚み: 300μm
該光硬化性樹脂組成物(B)からなる層の厚み: 2〜10μm
温度: 23℃
引っ張り試験: 20mm/minの速さで5%伸張
本発明の一態様は、また、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)のガラス転移温度が40〜72℃である積層シートである。
本発明の一態様は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)が、ホモポリマーのガラス転移温度が90〜230℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−1)3〜60質量%と、ホモポリマーのガラス転移温度が−100〜30℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−2)25〜85質量%と、反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)12〜50質量%とを含んで共重合させた主鎖ポリマーに、側鎖として反応性官能基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体(c−4)を反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)に対してモル比で50〜100%導入した樹脂である積層シートである。
本発明の一態様では、単量体(c−1)がメチルメタアクリレートであることが好ましい。
本発明の一態様では、また、単量体(c−3)がグリシジルメタアクリレートであることが好ましい。
本発明の一態様は、光硬化性樹脂組成物(B)が側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)以外の架橋性低分子モノマーを実質的に含まない積層シートである。
本発明の一態様では、光硬化性樹脂組成物(B)が、無機微粒子(E)を含む積層シートであることが好ましい。
本発明の一態様は、また、得られた積層シートの光硬化性樹脂組成物(B)を積層されている層が金型の内壁面と向かい合うように予備成形用金型内に挿入配置するシート挿入工程(1)、積層シートを予備成形して積層シートを金型形状に追従させる予備成形工程(2)、予備成形した積層シートを光硬化性樹脂組成物(B)が積層されている層が金型の内壁面に向かい合うように成形用金型に挿入配置する予備成形シート挿入工程(3)、成形用金型を閉じて、溶融樹脂(F)を金型内に射出し、溶融樹脂(F)を固化させることにより積層シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する成形品形成工程(4)、及び光照射することにより積層成形品表面の光硬化性樹脂組成物(B)を光硬化させる硬化工程(5)を含む積層成形品の製造方法である。
本発明の一態様では、また、上記の成形用金型の温度が20〜60℃である、積層成形品の製造方法である。
本発明の一態様は、また、上記の方法により得られる積層成形品である。
本発明によれば、硬化後の優れた外観、意匠性、耐薬品性、耐磨耗性及び長期耐候性を有し、光硬化前の成形時の加工性が良好で表面粘着性のない積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法を提供することができる。
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
引張試験
得られる積層シートの室温下での延伸性を確認する方法としては、引張試験を用いる。引張試験において試験の詳細は以下の通りである。
(原理)積層シートの試験片を鉛直方向に沿って一定速度で引っ張り、伸度5%で光硬化性樹脂組成物(B)からなる層にクラックが目視上発生していないことを条件とする。
(引張速度)20mm/min
(温度)23℃
(装置)JIS K 7161の規格に適合する試験機であることとする。
(試験片)アクリル基材シートの厚み:300μm
表層の厚み:2〜10μm
形状:1号形ダンベル状
チャック間距離:90mm
(試験繰り返し数)5回
(判断)目視
試験片をカットする際は目視で確認できるひび、かき傷等がないように作製するが、試験においてアクリル基材シート端部の傷由来の破断が起きた場合は、それを5回のうちにカウントしない。
アクリル基材シート(A)
本発明にかかるアクリル基材シート(A)としては、光硬化性樹脂組成物(B)との密着性やアクリル基材シート(A)の耐候性、透明性等の点で、架橋ゴム成分を有する透明熱可塑性アクリル樹脂のシートが好ましい。例えば、下記で示されるゴム含有重合体(A1)及び、必要に応じて後述する熱可塑性重合体(A2)を有するアクリル樹脂を押出成形することによって得られる透明熱可塑性アクリル樹脂のシートが挙げられる。
アクリル基材シート(A)が熱可塑性重合体(A2)を含む場合、製膜性・透明性等の点から、アクリル基材シート(A)中に熱可塑性重合体(A2)を0質量%〜90質量%、好ましくは0〜60質量%含むことが好ましい。
ゴム含有重合体(A1)は、アクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体成分(A1−i)を重合してゴム重合体(A1−i’)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A1−i’)の存在下にメタクリル酸アルキルを51質量%以上含む単量体成分(A1−ii)を重合する工程を経て製造される。
ゴム含有重合体(A1)を製造する方法は、単量体成分(A1−i)を乳化重合する工程と単量体成分(A1−ii)を乳化重合する工程とを含んでいる。単量体成分(A1−i)は、その重合体のガラス転移温度(Tg)が−50〜25℃となる成分であり、単量体成分(A1−ii)は、その重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜120℃となる成分である。単量体成分(A1−i)の重合に先立ち、重合体のTgが70〜120℃となる成分(A1−iii)を乳化重合する工程を含むことができる。これらの2つの乳化重合工程の間には、必要に応じて単量体成分(A1−iv)等を乳化重合する工程を含むことができる。
先ず単量体成分を説明し、次いで重合方法を説明する。本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
〔単量体成分(A1−i)]
単量体成分(A1−i)は、単量体の総量100質量%を基準にして、アクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体混合物であって、一段目の重合の原料となる単量体混合物である。
単量体成分(A1−i)を原料として重合することによってゴム重合体(A1−i’)が製造される。
アクリル酸アルキル(以下、「単量体(A1−i−1)」という場合がある。)としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−,i−プロピル、アクリル酸n−,i−,t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらの中で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単量体成分(A1−i)中のアクリル酸アルキル(A1−i−1)以外の単量体としては、メタクリル酸アルキル(以下、「単量体(A1−i−2)」という場合がある。)、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体(以下、「単官能性単量体(A1−i−3)」という場合がある。)、及び多官能性単量体(以下、「多官能性単量体(A1−i−4)」という場合がある。)等が挙げられる。
メタクリル酸アルキル(A1−i−2)としては、例えば、アルキル基が直鎖状は分岐鎖状のものが挙げられる。メタクリル酸アルキルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−,i−プロピル及びメタクリル酸n−,i−,t−ブチルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単官能性単量体(A1−i−3)としては、例えば、アクリル酸アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
多官能性単量体(A1−i−4)としては、共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する架橋性単量体が挙げられ、具体例としては以下のものが挙げられる。ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール等のジ(メタ)アクリル酸アルキレングリコール;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;及びトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート系単量体、メタクリル酸アリル等のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステル等。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単量体成分(A1−i)中のアクリル酸アルキル(A1−i−1)の含有量は、好ましくは30〜99.9質量%である。単量体成分(A1−i)中のメタクリル酸アルキル(A1−i−2)の含有量は、好ましくは0〜69.9質量%である。単量体成分(A1−i)中の単官能性単量体(A1−i−3)の含有量は、好ましくは0〜20質量%である。単量体成分(A1−i)中の多官能性単量体(A1−i−4)の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%である。
重合方法の全工程において使用される単量体成分(A1)の総量100質量%中に占める、単量体成分(A1−i)の使用量は、例えばフィルム用途におけるゴム含有重合体(A1)の製膜性、衝撃強度改質剤用途におけるゴム含有重合体(A1)が添加された樹脂の耐衝撃性などの点から、好ましくは5〜70質量%である。
ゴム重合体(A1−i’)のガラス転移温度(以下、「Tg」という。)は、例えばフィルム用途における柔軟性、衝撃強度改質剤用途における耐衝撃性などの点から、好ましくは−100℃〜25℃であり、より好ましくは−50℃〜0℃である。なお、本発明においては、Tgは、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出される値をいう。また、ゴム含有重合体(A1)中のゴム重合体(A1−i’)の含有量は、例えばフィルム用途におけるゴム含有重合体(A1)の製膜性、衝撃強度改質剤用途におけるゴム含有重合体(A1)が添加された樹脂の耐衝撃性などの点から、好ましくは5〜70質量%である。
ゴム含有重合体(A1)中の単量体成分(A1−i)は2段以上に分けて重合してもよい。
〔単量体成分(A1−ii)〕
単量体成分(A1−ii)は最終段目の重合の原料となる単量体混合物であり、ゴム含有重合体(A1)の成形性、機械的性質に関与する成分である。単量体成分(A1−ii)中のメタクリル酸アルキル(以下、「単官能性単量体(A1−ii−1)」という場合がある。)としては、単量体成分(A1−i)の説明において「単量体(A1−i−2)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。単量体成分(A1−ii)中の、メタクリル酸アルキル以外の他の単量体としては、アクリル酸アルキル(以下、「単官能性単量体(A1−ii−2)」という場合がある。)、及び、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体(以下、「単官能性単量体(A1−ii−3)」という場合がある。)を挙げることができる。アクリル酸アルキル(A1−ii−2)としては、「単量体(A1−i−1)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。単官能性単量体(A1−ii−3)としては、「単官能性単量体(A1−i−3)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。
単量体成分(A1−ii)から得られる重合体単独のTgは、70℃以上120℃以下が好ましい。
単量体成分(A1−ii)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。
単量体成分(A1−ii)中のメタクリル酸アルキル(A1−ii−1)の含有量は、好ましくは51〜100質量%である。単量体成分(A1−ii)中のアクリル酸アルキル(A1−ii−2)の含有量は、好ましくは0〜20質量%である。単量体成分(A1−ii)中の単量体(A1−ii−3)の含有量は、好ましくは0〜49質量%である。
重合方法の全工程において使用される単量体成分(A1)の総量100質量%中に占める、単量体成分(A1−ii)の使用量は、例えばフィルム用途におけるゴム含有重合体(A1)の製膜性、衝撃強度改質剤用途におけるゴム含有重合体(A1)が添加された樹脂の耐衝撃性などの点から、好ましくは30〜95質量%である。
〔単量体成分(A1−iii)〕
単量体成分(A1−i)を重合してゴム重合体(A1−i’)を製造する工程に先立ち、重合体のTgが70〜120℃となる成分(A1−iii)を乳化重合する工程を含むことができる。単量体成分(A1−iii)としては単量体(A1−ii)と同じものを挙げることができる。
重合方法の全工程において使用される単量体成分(A1)の総量100質量%中に占める、単量体成分(A1−iii)の使用量は、耐衝撃性、耐白化性などの点から、好ましくは1〜30質量%である。
〔単量体成分(A1−iv)〕
単量体成分(A1−i)を重合してゴム重合体(A1−i’)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A1−i’)の存在下に単量体成分(A1−ii)を重合する工程の間には、単量体成分(A1−iv)を乳化重合する工程を含むことができる。単量体成分(A1−iv)としては、アクリル酸アルキル9.9〜90質量%、メタクリル酸アルキル0〜90質量%、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体0〜20質量%、及び多官能性単量体0.1〜10質量%を含む混合物が挙げられる。ここで用いられる他の単量体及び多官能性単量体としては、前述の単官能性単量体(A1−i−3)及び多官能性単量体(A1−i−4)が挙げられる。
単量体成分(A1−iv)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。二段以上で重合する場合、単量体成分(A1−iv)の組成は同一でもよく異なっていてもよい。また、単量体成分(A1−iv)は界面活性剤を含んでいても良く、さらに水と混合・撹拌して乳化液として重合容器内に供給しても良い。
重合方法の全工程において使用される単量体成分(A1)の総量100質量%中に占める、単量体成分(A1−iv)の使用量は、耐衝撃性、耐白化性などの点から、好ましくは1〜20質量%である。
〔ゴム含有重合体(A1)の製造方法〕
ゴム含有重合体(A1)の製造法としては、例えば、逐次多段乳化重合法が挙げられる。
ゴム含有重合体(A1)を逐次多段乳化重合法で製造する方法としては、例えば、ゴム状重合体(A)を得るための単量体成分(A1−i)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合した後に、単量体成分(A1−iv)を重合容器内に供給して重合し、さらに単量体成分(A1−ii)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合する方法が挙げられる。なお、単量体成分(A1−iv)を重合容器内に供給して重合する工程は、必要に応じて行われる工程である。
上記の方法で製造されたゴム含有重合体(A1)を用いて得られる重合体製品は、最終的に得られる重合体ラテックス中における粗大粒子が少ないという利点を有する。特に重合体製品がフィルムである場合はフィッシュアイが少ない点で好ましい。
逐次多段乳化重合法で製造する際に使用される界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。アニオン系の界面活性剤としては、例えば以下のものが挙げられる。ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;及び、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩。アニオン系の界面活性剤の市販品の具体例としては、例えば以下の商品名のものが挙げられる。三洋化成工業(株)製のエレミノールNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLO−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA及びフォスファノールRS−660NA、並びに花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406及びラテムルP−0407。
単量体成分(A1−i)及び単量体成分(A1−ii)を重合する際、又は更に単量体成分(A1−iv)を重合する際に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤としては公知のものが使用できる。重合開始剤及び連鎖移動剤の添加方法としては、水相中、単量体相中のいずれか片方に添加する方法、又は両相中に添加する方法が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤及びレドックス系開始剤が挙げられる。レドックス系開始剤とは、過酸化物と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤、及びアゾ系開始剤と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤であり、レドックス系開始剤の具体例としては、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール及び四塩化炭素が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。例えば、n−オクチルメルカプタンが挙げられる。
ゴム含有重合体(A1)のラテックスの製造方法として、単量体成分(A1−i)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(A1−iv)を反応器内に供給して重合し、さらに単量体成分(A1−ii)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合する方法で製造する方法が挙げられる。この場合、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート2水和物を含む、反応器内の水溶液を重合温度まで昇温した後に、単量体成分(A1−i)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(A1−iv)を反応器内に供給して重合し、さらに単量体成分(A1−ii)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合する方法が好ましい。
ゴム含有重合体(A1)のラテックスを得るための重合温度としては用いる重合開始剤等の種類や量によって異なるが、例えば40〜120℃程度である。
このようにして得られたゴム含有重合体(A1)のラテックスは、塩析凝固法、酸析凝固法、凍結凝固法、スプレードライ法など公知の方法により、ラテックス中からゴム含有重合体(A1)を回収し、これを乾燥して、ゴム含有重合体(A1)の粉体として使用することができる。更に、この粉体を溶融押し出ししてペレット化して、使用することができる。
また、本発明のゴム含有重合体(A1)を用いてフィルムを成形する方法としては、特に限定されず、公知の溶液流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられ、このうち経済性の点でTダイ法がもっとも好ましい。
〔熱可塑性重合体(A2)〕
本発明においてアクリル系樹脂組成物(Y)の一部を構成することができる熱可塑性重合体(A2)は、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含有する重合体である。重合体(A2)中の、メタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性の観点から、50〜100質量%であることがより好ましく、80質量%以上、99.9質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(A2)を構成する「メタクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等が挙げられる。メタクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でも良く、そのアルキル基の炭素数はフィルム(Y)の耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点からメタクリル酸メチルがより好ましい。これらは単独で、又は二種以上を混合して使用できる。
また、重合体(A2)は、任意成分として「アクリル酸アルキルエステル単位」0〜50質量%と、これらの2つの単量体単位以外の「他の単量体単位」0〜50質量%とを含むことができる。
重合体(A2)中における「アクリル酸アルキルエステル単位」の含有量は、フィルム(Y)に製膜性と、インサート成形及び/又はインモールド成形可能な靭性とを付与する観点から、0〜50質量%であることが好ましい。この含有量は、より好ましくは0.1質量%以上、20質量%以下である。
前記「アクリル酸アルキルエステル単位」の原料となる単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル等が使用できる。アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、分岐鎖状でも直鎖状でも良く、そのアルキル基の炭素数は、フィルム(Y)耐熱性の観点から4以下であることが好ましい。また、これらのうちフィルム(Y)の耐熱性の観点から、アクリル酸メチルがより好ましい。これらは単独で、又は二種以上を混合して使用できる。
重合体(A2)中における前記「他の単量体単位」の含有量は、フィルム(Y)の成形性の観点から、0〜50質量%であることが好ましい。この含有量は、より好ましくは0質量%以上、20質量%以下である。
前記「他の単量体単位」の原料となる「他の単量体」としては、公知の単量体を必要に応じて使用できる。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を混合して使用できる。
なお、重合体(A2)中の各単量体単位の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析により特定することができる。
さらに、重合体(A2)の還元粘度は、フィルム(Y)のインサート成形性、インモールド成形性、及び製膜性の観点から、0.15L/g以下であることが好ましく、0.1L/g以下であることがより好ましい。また、重合体(A2)の還元粘度は、フィルム(Y)の製膜性の観点から、0.01L/g以上であることが好ましく、0.03L/g以上であることがより好ましい。尚、「還元粘度」は、0.1gの重合体をクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定される粘度である。
以上より、重合体(A2)は、アルキル基の炭素数が1以上4以下のメタクリル酸アルキルエステル50〜100質量%と、アクリル酸アルキルエステル0〜50質量%と、前記「他の単量体」0〜50質量%とを、重合又は共重合して得られる、還元粘度が0.15L/g以下の重合体又は共重合体であることが好ましい。
熱可塑性重合体(A2)は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。しかしながら、2種以上の重合体(A2)を併用することで、フィルム(Y)の表面硬度及び耐熱性を容易に高めることができる。したがって、フィルム(Y)の耐熱性の観点から、重合体(A2)のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。
なお、重合体(A2)の質量平均分子量は、フィルム(Y)の機械的特性の観点から3万以上であることが好ましく、フィルム(Y)の成形性の観点から20万以下であることが好ましい。
重合体(A2)の製造方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合及び塊状重合等の方法で重合することができる。
アクリル基材シート(A)の厚みとしては、50〜400μmであることが好ましい。厚みが50μm以上の場合、成形時に延伸された後も十分な厚みを保持しやすく、また、厚みが400μm以下の場合、成形時の取り扱いが容易である。
アクリル基材シート(A)中には、必要に応じて、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の滑剤、シリカ、球状アルミナ、鱗片状アルミナ等の減摩剤、可塑剤、安定剤、着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
また、例えば、後述する積層成形品を屋外で使用する場合には、アクリル基材シート(A)中に紫外線吸収剤や光安定剤を配合することができる。上記紫外線吸収剤及び光安定剤としては、後述する光硬化性樹脂組成物中に配合されるものと同様のものが挙げられる。
光硬化性樹脂組成物(B)
本発明にかかる光硬化性樹脂組成物(B)は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)、光重合開始剤(D)を含むものである。また、後述する無機微粒子(E)を含有していても良い。
さらに、光硬化性樹脂組成物(B)は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)以外の架橋性低分子モノマーを実質的に含まないのが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、含有量が、2質量%以下であることをいう。
光硬化性樹脂組成物(B)は、本発明の目的を逸脱しない範囲で必要に応じて増感剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、変性用樹脂、染料、顔料、レベリング剤、ハジキ防止剤、及び酸化安定剤、酸素阻害抑制剤等の各種添加剤を配合することができる。各種添加剤の含有量としては、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)100質量部に対して0〜15質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましく、0〜5質量部がさらに好ましい。
増感剤を配合することで、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化反応を促進できる傾向にある。増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル及びチオキサントンが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
紫外線吸収剤を配合することで、紫外線を吸収し熱エネルギーに変換することにより、光硬化性樹脂組成物の層、基材シート、加飾層、接着層又は樹脂層中の発色団の光励起や光化学反応を抑制し、得られる積層成形品の変色、褪色、物性低下等の劣化を抑制できる傾向にある。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤のいずれも使用することができる。有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、例えば、粒子径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機化合物が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
尚、紫外線吸収剤を使用するに際し、紫外線吸収剤の吸収波長領域と光重合開始剤(D)の吸収波長領域が重なることがある。その場合は、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化性、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の耐候性や耐磨耗性等が低下することがあるので、紫外線吸収剤の吸収波長領域と光重合開始剤(D)の吸収波長領域が重ならないようにすることが好ましい。上記の紫外線吸収剤の中で、有機系紫外線吸収剤の方が光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の透明性の点で好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、化学構造中に窒素原子の隣接する2つの炭素原子に複数の立体障害作用を示す置換基が結合されたピペリジン環を有する化合物が挙げられる。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えばメチル基等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、公知の化合物を用いることができ、特に限定されない。例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基を有する化合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Uvinul(商標) 5050 H、Uvinul(商標) 4050 FF、Tinuvin(商標) 622 LD、Tinuvin(商標) 622 SF、Tinuvin(商標) 144、Tinuvin(商標) PA144、Tinuvin(商標) 765、Tinuvin(商標) 770 DF、Tinuvin(商標) 123、Tinuvin(商標) 292、Chimassorb(商標) 2020 FDL、Chimassorb(商標) 944 FDL、Sanol(商標) LS−2626(以上商品名、BASFジャパン(株)製)、アデカスタブ(商標) LA−52、LA−57、LA−63P、LA−68、LA−81、LA−82、LA−87、LA94G(以上商品名、(株)ADEKA製)等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
尚、前記ヒンダードアミン系光安定剤を使用するに際し、含有量を増やすことで耐候性の向上を図った場合は、その含有量に伴って耐磨耗性が低下する傾向があるため、耐磨耗性を損なわない範囲の含有量が好ましく、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)100質量部に対して0〜5質量部が好ましく、0〜3質量部がより好ましい。
また、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤を使用した場合は、添加量に伴う耐磨耗性の低下が抑えられる傾向にある。
後述する本発明にかかる積層成形品の製造時に光硬化性樹脂組成物(B)の層が高温となる場合には、光硬化性樹脂組成物(B)の層の表面硬度を良好とするために、n−メチルジエタノールアミン等の酸素阻害抑制剤を添加することができる。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)に前記各種添加剤を配合する方法としては、後述する無機微粒子(E)の場合と同様の方法が挙げられる。尚、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を重合した後に前記各種添加剤を配合する方法の方が、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の重合を阻害することがない点で好ましい。
光硬化性樹脂組成物(B)をアクリル基材シート(A)上に積層する場合は、厚み2〜10μmの範囲が好ましく、3〜8μmの範囲がさらに好ましい。光硬化性樹脂組成物(B)の厚みが2μm以上である場合、光硬化性樹脂組成物(B)の光硬化後の耐擦傷性や耐磨耗性、耐薬品性等の特性が良好である。一方、光硬化性樹脂組成物(B)の厚みが10μm以下の場合には、室温下における加工性が良好であり、また、製造される積層成形品の表面外観が良好となる。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)
本発明にかかる側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)としては、例えば、単量体を単独重合又は共重合させた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入した熱可塑性樹脂が挙げられる。
単量体としては、室温下における延伸性を出すため、ホモポリマーのガラス転移温度が90〜230℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−1)3〜60質量%と、ホモポリマーのガラス転移温度が−100〜30℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−2)25〜85質量%と、反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)(以下、単に「単量体(c−3)」とも言う)12〜50質量%とを共重合させることが好ましい。
ホモポリマーのガラス転移温度が90〜230℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−1)としては、例えば、メチルメタアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、tert−ブチルメタアクリレート、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、N−フェニルマレイミド、フェニルメタアクリレート等が挙げられる。
さらに、ホモポリマーのガラス転移温度が90〜230℃である単量体(c−1)は、メチルメタアクリレートであることが好ましい。
また、ホモポリマーのガラス転移温度が−100〜30℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−2)としては、例えば、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニルアクリレート等が挙げられる。
また、反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体、(メタ)アクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等のカルボキシル基を有する単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等のアジリジニル基を有する単量体、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基を有する単量体、2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの等モル付加物のようなジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する単量体が挙げられる。中でも、グリシジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
次に、例えば以下の方法により、前記単量体を単独重合又は共重合させた重合体に側鎖として反応性官能基及びラジカル重合性不飽和基の両方を有する単量体(c−4)(以下、単に「単量体(c−4)」とも言う)を反応させ、ラジカル重合性不飽和基を導入することができる。尚、単量体(c−4)としては、単量体(c−3)と同様のものを使用することができる。尚、単量体(c−4)は、単量体(c−3)に対してモル比で50〜100%の量を使用するものとする。硬化後の耐磨耗性や耐擦傷性向上のためには、架橋密度を増やすという点で等モル量であることが好ましい。
前記水酸基を有する単量体の単独重合体又は共重合体の場合には、前記カルボキシル基又はスルホ基を有する単量体を縮合反応させるか、前記エポキシ基、アジリジニル基又はイソシアネート基を有する単量体を付加反応させることができる。前記カルボキシル基又はスルホ基を有する単量体から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する単独重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基を有する単量体を縮合反応させることができる。前記エポキシ基、イソシアネート基又はアジリジニル基を有する単量体から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する単独重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基又はカルボキシル基を有する単量体を付加反応させることができる。前記カルボキシル基を有する単量体の単独重合体又は共重合体の場合には、前記エポキシ基、アジリジニル基又はイソシアネート基を有する単量体を付加反応させることができる。これらの反応は、微量のハイドロキノン等の重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
これらの単量体を単独重合又は共重合させた重合体のガラス転移温度(Tg)を調節するために、これらの単量体と共重合可能な単量体とをさらに共重合させることもできる。側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)のガラス転移温度としては、40〜72℃であることが好ましく、60〜70℃であることがより好ましい。
ガラス転移温度が低過ぎる場合、表面粘着性を有し、成形用金型へ貼り付きやすくなるなど取り扱いが困難になる。また、ガラス転移温度が高過ぎる場合、室温下における成形性が悪化する。
前記単量体を単独重合又は共重合させた重合体の重合法は、溶液重合法、乳化重合法及び懸濁重合法が挙げられる。また、前記単量体を単独重合又は共重合させた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入する場合には、例えば、前記単量体を単独重合又は共重合させた重合体を有機溶媒に溶解した溶液を用いて前記縮合反応又は付加反応させることにより、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を得ることができる。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の数平均分子量(Mn)は、5,000〜2,500,000であることが好ましく、10,000〜1,000,000であることがより好ましい。Mnが5,000以上である場合、後述する光硬化性樹脂組成物(B)の層を積層した積層シートを成形する際に、成形時に予備加熱を行っても成形用金型に積層シートが貼り付きにくくなる。また、製造される積層成形品の表面硬度が適切となる。一方、Mnが2,500,000以下である場合、合成が容易であり、外観、基材シートとの密着性が良好となる。尚、Mnの測定方法は後述する。
また、後述するように光硬化性樹脂組成物(B)中に無機微粒子(E)を添加する場合には、無機微粒子(E)の表面官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、シラノール基等)と反応しうる官能基を分子内に有するビニル重合性単量体を単量体として用いることで、光硬化性樹脂組成物(B)の剛性、靱性、耐熱性等の物性をより向上させることができる。
光重合開始剤(D)
本発明にかかる光重合開始剤(D)としては、例えば、電子線、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を照射することによってラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、特に限定されない。光硬化時の黄変性や耐候時の劣化等を考慮すると、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような分子内にアミノ基を含まない化合物が好ましい。例えば、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
これらの化合物の中には、後述する本発明の態様にかかる積層成形品の製造方法の温度条件によっては、一時的にその化合物の沸点以上の温度になる場合があるので、積層成形品の製造時の温度条件より沸点が高い化合物を用いることが好ましい。
光重合開始剤(D)の含有量としては、硬化後の残存量が耐候性に影響するため、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。また、光重合開始剤(D)として硬化時の黄変に関与するアミノ系の光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、1質量部以下が好ましい。
光重合開始剤(D)を、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)に添加する方法としては、特に限定されない。例えば、予め側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を重合した後、光重合開始剤(D)を混合してもよいし、また側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を構成する単量体と光重合開始剤(D)とを混合した条件下で、該単量体を重合する方法等、任意の方法を選択することができる。
無機微粒子(E)
光硬化性樹脂組成物(B)は、さらに無機微粒子(E)を含有することが、耐擦傷性や耐磨耗性が向上する観点から好ましい。無機微粒子(E)としては、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の透明性が確保されれば、その種類、粒子径及び形態は特に制限されない。
無機微粒子(E)としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。この中でも、入手の容易さや価格面、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の透明性や耐磨耗性発現の観点から、コロイダルシリカが好ましい。
コロイダルシリカは通常の水性分散液の形態及び有機溶媒に分散させた形態で用いることができる。しかしながら、光硬化性樹脂組成物(B)中に均一かつ安定に分散させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
該有機溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はトルエン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。この中でも、光硬化性樹脂組成物中により均一に分散させることができる観点から、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)が溶解可能な有機溶媒を選択することが好ましい。
無機微粒子(E)の粒子径は、光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の透明性の観点から200nm以下が好ましい。100nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。また、無機微粒子(E)の粒子径の下限値としては、1nm以上が好ましい。尚、無機微粒子(E)の粒子径は、無機微粒子(E)を含む光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の断面をTEM写真により観察し、その平均値とする。
無機微粒子(E)の添加量は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)100質量部に対して、無機微粒子固形分で5〜100質量部が好ましく、10〜60質量部がより好ましい。無機微粒子(E)の添加量が5質量部以上の場合には、耐磨耗性向上効果が認められる。一方、無機微粒子(E)の添加量が100質量部以下の場合には、光硬化性樹脂組成物(B)の保存安定性が高く、後述する積層シートの成形性も高い。
また、無機微粒子(E)としては、下記式(I)で表されるシラン化合物によって予め表面が処理された無機微粒子を用いてもよい。表面処理された無機微粒子を使用した場合、光硬化性樹脂組成物(B)の保存安定性がさらに良好となり、また後述する積層シートの表面硬度及び耐候性も良好となるためである。
SiR (OR (I)
(前記式(I)中、R及びRは、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、エポキシ結合又は炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Rは水素原子又はエーテル結合、エステル結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。a及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である。)
前記式(I)で表されるシラン化合物の中でも、下記式(II)〜(VII)で表されるシラン化合物がより好ましい。
SiR (OR (II)
SiR (OCHCHOCO(R)C=CH4−n (III)
CH=C(R)COO(CHSiR (OR3−n (IV)
CH=CHSiR (OR3−n (V)
HS(CHSiR (OR3−n (VI)
CH=C(R)PhSiR (OR3−n (VII)
(前記式(VII)中、Phはフェニル基を表す。前記式(II)から(VII)中、R及びRは、それぞれ、エーテル結合、エステル結合又はエポキシ結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表す。a及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である。nは0〜2の整数である。pは1〜6の整数である。)
前記式(II)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリエトキシシラン、ジエトキシエチルジメトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(III)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラキス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、テトラキス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
前記式(IV)で表されるシラン化合物としては、例えば、β−アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記式(VI)で表されるシラン化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(VII)で表されるシラン化合物としては、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらのシラン化合物は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
無機微粒子(E)を、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)に添加する方法としては、特に限定されない。例えば、予め側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を重合した後、無機微粒子(E)を混合してもよいし、また側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)を構成する単量体と無機微粒子(E)とを混合した条件下で、該単量体を重合する方法等、任意の方法を選択することができる。
積層シート
本発明にかかる積層シートとしては、アクリル基材シート(A)の上に光硬化性樹脂組成物(B)の層が積層された積層シートが挙げられる。また、必要に応じて積層シートのアクリル基材シート(A)側に後述する加飾層並びに/又は接着層を積層することができる。
本発明の態様にかかる光硬化性樹脂組成物(B)の層は、表面が粘着性を有さず、粘着性の経時変化を抑制できることから、積層シートをロール状態で保存する際の保存安定性が良好である。また、加飾層並びに/又は接着層を形成する際のトラブルを抑制することができるため、歩留まりが良好となる。
アクリル基材シート(A)の上に光硬化性樹脂組成物(B)の層を積層する方法としては、例えば、光硬化性樹脂組成物(B)を有機溶媒に十分に攪拌溶解させた溶液をアクリル基材シート(A)の上に塗付した後、有機溶媒を乾燥して積層シートを得る方法が挙げられる。
さらに、光硬化性樹脂組成物(B)が光硬化時に体積収縮して光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物とアクリル基材シート(A)との密着性が低下するのを防ぐ目的で、アクリル基材シート(A)と光硬化性樹脂組成物(B)との間にプライマー層を形成することができる。
光硬化性樹脂組成物(B)の層の形成方法としては、ナイフコート法、コンマコート法、リバースコート法、ディップコート法等の公知のコーティング方法、又は後述する印刷層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
保護シート
本発明の態様にかかる積層シートには、必要に応じて積層シートの光硬化性樹脂組成物(B)の層の上に保護シートを積層することができる。保護シートは光硬化性樹脂組成物(B)の層の表面の防塵に有効であると共に、硬化前の光硬化性樹脂組成物(B)の層の表面の傷つき防止にも有効である。
保護シートは、光硬化性樹脂組成物(B)の層に密着しており、積層成形品の加工前に剥離又は貼り合わせたまま加工し、その後剥離するため、光硬化性樹脂組成物(B)の層に対して適度な密着性と良好な離型性を有することが好ましい。このような条件を満たす保護シートであれば、任意の保護シートを選択して用いることができる。そのような保護シートとしては、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
加飾層
本発明にかかる積層シートには、必要に応じて後述する印刷層及び蒸着層から選ばれる少なくとも1種で構成されている加飾層を積層することができる。
本発明にかかる加飾層は、積層成形品の表面に模様や文字等の加飾を施すために積層される。加飾の種類としては任意のものを選択することができるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字及び全面ベタの柄が挙げられる。
加飾層の厚みとしては、所望の積層成形品の表面外観が得られるよう、例えば、成形時の伸張度合いに応じて任意に選択することができる。
印刷層
印刷層に使用される材料としては、例えば、樹脂バインダー及び着色剤を含有する着色インキが挙げられる。
樹脂バインダーとしては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂及び塩素化ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
着色剤としては、公知の染料及び顔料から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛等の無機顔料等の黄色顔料;ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄等の無機顔料等の赤色顔料;フタロシアニンブルー等の有機顔料、コバルトブルー等の無機顔料等の青色顔料;アニリンブラック等の黒色顔料;及び二酸化チタン等の白色顔料が挙げられる。
印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法及びロールコート法、スプレーコート法等のコート法が挙げられる。
蒸着層
蒸着層に使用される材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛及び亜鉛から選ばれる少なくとも1つの金属又はそれらの合金若しくは金属化合物が挙げられる。
蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及び鍍金法が挙げられる。
印刷層及び蒸着層は、積層シートのアクリル基材シート(A)側に積層される。
接着層
本発明にかかる接着層は、積層シートと加飾層、後述するプライマーシート又は後述する成形品との密着性を向上させるために必要に応じて形成することができる。
接着層に使用される材料としては、積層シートと加飾層、プライマーシート又は成形品との密着性を向上させるものであれば任意の合成樹脂材料が挙げられる。
接着層に使用される材料は、例えば、プライマーシート又は成形品に使用される樹脂がポリアクリル系樹脂の場合には、ポリアクリル系樹脂が挙げられる。また、プライマーシート又は成形品に使用される樹脂がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂又はポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、それら樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はポリアミド系樹脂が挙げられる。さらに、プライマーシート又は成形品に使用される樹脂がポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の場合には、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン系樹脂又はブロックイソシアネートを用いた熱硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。これらの接着層に使用される樹脂は目的に応じて一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
尚、接着層には、接着層の粘着性低減や耐熱性向上を目的として、疎水性シリカ、エポキシ樹脂、石油樹脂等を必要に応じて配合することができる。
本発明においては、接着層と成形品との密着性の向上や、成形品の表面欠陥による積層シート上の光硬化性樹脂組成物(B)の硬化物の層への欠陥伝播の抑制のために、接着層と成形品との間にプライマーシートを形成させることができる。
プライマーシートとしては、成形品との密着性を高める点で相溶性の高い樹脂を使用したシートが好ましく、成形品と同じ樹脂材料を使用したシートがより好ましい。
プライマーシートの厚みとしては30〜750μmが好ましい。プライマーシートの厚みが30μm以上で、曲面でのシート厚みを著しく低下させることなく、深しぼり成形を行うことができる傾向にある。また、プライマーシートの厚みが750μm以下で、金型への形状追従性を低下させることなく、成形を行うことができる傾向にある。
接着層の形成方法としては、前述した光硬化性樹脂組成物(B)の層の形成方法や印刷層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
溶融樹脂(F)
本発明にかかる溶融樹脂(F)としては、射出成形等の各種成形が可能な全ての樹脂が挙げられる。
溶融樹脂(F)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体系樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン系共重合体)系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の汎用の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂;ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂;及びポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂が挙げられる。
また、溶融樹脂(F)中には目的に応じてガラス繊維やタルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等の無機フィラー等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂、各種変性樹脂等を配合することができる。
また、溶融樹脂(F)の成形後の収縮率を積層シートの収縮率に近似させることにより、積層成形品の反りや積層シートの剥がれ等の不具合を解消できる傾向にあり、好ましい。
積層成形品の製造方法
本発明にかかる積層成形品の製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
まず、シート挿入工程(1)において、積層シート上の光硬化性樹脂組成物(B)の層を金型の内壁面と向き合うように挿入配置する。次いで、予備成形工程(2)において、積層シートを予備成形して積層シートを金型形状に追従させる。次いで、予備成形シート挿入工程(3)において、予備成形した積層シートを光硬化性樹脂組成物(B)の層が金型の内壁面と向かい合うように成形用金型に挿入配置する。この後、成形品形成工程(4)において、積層シートが挿入配置された金型を閉じて、溶融樹脂(F)を金型内に射出し、溶融樹脂(F)を固化させることにより積層シートが表面に配置された光硬化前積層成形品を形成する。さらに、光硬化工程(5)において、活性エネルギー線を照射することにより光硬化前積層成形品表面の光硬化性樹脂組成物(B)を光硬化させ、本発明の積層成形品を得る。
また、別の製造方法としては、予備成形シート挿入工程(3)を経ずに一つの金型を用いて成形する方法でも製造することができる。まず、シート挿入工程(1)において、積層シート上の光硬化性樹脂組成物(B)の層が金型の内壁面と向き合うように挿入配置する。次いで、予備成形工程(2)において、積層シートを予備成形して積層シートを金型形状に追従させる。さらに、成形品形成工程(4)において、積層シートが挿入配置された金型を閉じて、溶融樹脂(F)を金型内に射出し、溶融樹脂(F)を固化させることにより積層シートが表面に配置された光硬化前積層成形品を形成する。この後、光硬化工程(5)において、活性エネルギー線を照射することにより光硬化前積層成形品表面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させ、本発明の積層成形品を得る。
尚、本発明の態様においては、本発明の目的を逸脱しなければ、光硬化工程(5)を省くことができる。
本発明においては、積層シートの表面に保護シートが設けられている場合には、保護シートを積層シートから剥離して使用するのが好ましい。尚、保護シートの剥離時期は金型内に積層シートを挿入配置する前であればいつでもよいが、光硬化性樹脂組成物の層の表面の防塵や傷つき防止の点で、金型内に積層シートを挿入配置する直前に剥離するのが好ましい。
シート挿入工程(1)において、挿入配置するための積層シートの挿入方法としては、ロールから巻き出しながら長尺のシートの状態で必要部分を間欠的に送り込む方法及び積層シートを枚葉化して1枚ずつ送り込む方法のいずれの方法でもよい。また、積層シートとして加飾層が積層された長尺のシート状のものを使用する場合には、位置決め機構を有する送り装置を使用して加飾層と金型との見当が一致するようにするのが好ましい。また、積層シートを間欠的に送り込む際に、積層シートの位置をセンサーで検出した後に積層シートを固定するようにすれば、常に同じ位置でシートを固定することができ、加飾層の位置ずれが生じないので便利である。
予備成形工程(2)における予備成形の方法としては、例えば、ホットパック等の加熱手段により積層シートをその軟化点以上に軟化させ、金型に設けられた吸引孔を通じて真空吸引することにより金型形状にシートを追従させる方法が挙げられる。尚、積層シートを金型内に挿入配置する前に、積層シートを予め積層シートの熱変形温度未満の温度に予熱しておくと、積層シートを金型内に挿入配置後に行う加熱時間を短縮することができ、生産性を向上させる点で好ましい。また、成形品形成工程(4)で使用される射出成形用金型とは別の立体加工成形用型を用いる場合は、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、熱せられたゴムを押し付ける押圧成形法、プレス成形法等の公知の成形法により、積層シートを予め所望の形状に予備成形する。また、予備成形シート挿入工程(3)を経ずに成形品形成工程(4)で本光硬化前積層成形品を形成させる場合に、積層シートを予め予備加熱して軟化させておくことも可能である。
予備成形シート挿入工程(3)で予備成形シートを挿入する方法としては、予備成形した積層シートを成形用金型の立体形状に合うようにはめ込み、挿入する方法が挙げられる。ここで、成形用金型を加熱せず使用し、連続して溶融樹脂(F)を射出することで上がる温度を考慮した20〜60℃範囲内の成形用金型を用いても、後述の光硬化前積層成形品の形成において溶融樹脂(F)が射出され予備成形シートが成形用金型に追従する際にクラックが発生することなく良好な成形品が得られる。
成形品形成工程(4)で光硬化前積層成形品を形成させる方法としては、成形用金型に挿入した予備成形シートに溶融樹脂(F)を射出し、積層シートと樹脂を一体化させる方法が挙げられる。
本発明においては、光硬化工程(5)において光硬化性樹脂組成物(B)の層に活性エネルギー線を照射することにより光硬化前積層成形品表面の光硬化性樹脂組成物(B)の層を光硬化させる。尚、光硬化性樹脂組成物(B)の層に活性エネルギー線を照射する時期としては、成形品形成工程(4)で得られた光硬化前積層成形品を金型から剥離した後に照射する方法及び成形品形成工程(4)で得られた光硬化前積層成形品を金型内に残した状態で照射する方法のいずれでもよい。活性エネルギー線は、本発明にかかる光重合開始剤(D)が活性エネルギー線を照射されることによってラジカルを発生するものであれば特に限定しない。照射条件は任意に設定できるが、通常、照射エネルギーで100〜10,000mJ/cm程度である。
本発明においては、得られる積層成形品の端部に形成される積層シート又はその硬化物の不要部分は適宜トリミングして除去することができる。このトリミングの時期としては、積層シートを予備成形した後や、積層成形品に活性エネルギー線を照射する前又は照射した後のいずれの時期でもよい。
不要部分のトリミングの方法としては、例えば、レーザー光線等を照射してシートを焼き切る方法、トリミング用の打ち抜き型を作製し、プレス加工によってシートを打ち抜く方法及び人手によりシートをちぎるようにして除去する方法が挙げられる。
本発明により、成形と同時に色又はデザインを付与した積層成形品を得ることができ、また短時間の照射によって、耐磨耗性に優れた表面を有する積層成形品を得ることができる。さらに、本発明の方法により、従来の成形後のスプレー塗装等と比較して、工程の短縮、歩留まりの向上及び環境への影響低減を達成することができる。
また、積層成形品は前述した光硬化前積層成形品の成形時に積層シートを使用するだけでなく、成形品として既に射出成形等により成形された物品を使用し、この物品の表面に直接又は接着剤層を介して積層シートをラミネートした後に積層シートを光硬化させて積層成形品を得ることができる。
成形品の材質としては、上記溶融樹脂(F)に挙げたものを使用できる。
積層成形品
本発明にかかる積層成形品としては、積層シートの光硬化性樹脂組成物(B)の層が成形品に積層された積層成形品であって、硬化後の光硬化性樹脂組成物(B)の層が最表面に設けられた積層成形品が挙げられる。
例えば、積層シートのアクリル基材シート(A)側が成形品と接するように積層された積層成形品、積層シートの加飾層側が成形品と接するように積層された積層成形品、及び積層シートの接着層側が成形品と接するように積層された積層成形品が挙げられる。また、必要に応じて積層成形品の最表面に設けられた硬化後の光硬化性樹脂組成物の層に表面微細凹凸構造が付与された積層成形品が挙げられる。
前記プライマーシートを使用する場合には、積層シートのプライマーシート側が成形品と接するように積層された積層成形品とすることができる。
また、成形品が自動車のボディーパネルやスポイラー等のように大型形状で、成形品の肉厚が薄い場合には、成形品の成形時に後述する樹脂から発生するガスが成形品内に残留したり、金型内の空気が成形品と積層シートとの間に介在しやすくなったり、成形品に対する積層シートの密着性が低下するという問題が生じることがある。このような問題を解決するために、成形品と積層シートの間にガス透過性を有する層を設けることができる。
上記ガス透過性を有する層としては、スパンデックス、アクリル繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維等で構成された織布又は不織布の層を挙げることができる。また、織布や不織布の代わりに、発泡層を有する層を用いてもよい。発泡層の形成方法としては、例えば、公知の発泡剤を含む樹脂溶液を塗付した後に加熱等により発泡させて連続空孔を形成させる方法が挙げられる。
積層成形品の用途としては、例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器等の各種フロントパネル;ボタン、エンブレム等の表面化粧材;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の各種部品;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;及び瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料、景品、小物等の雑貨等のその他各種用途が挙げられる。
以下に、本発明の態様を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。尚、本実施例における各種測定、評価は以下の方法により行った。
(1)固形分
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の固形分は以下の方法により測定した。側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の溶液又は分散液約0.5gをアルミ皿の上に採取し、正確な質量を測定した。室温にて溶媒又は分散媒を揮発させた後、80℃で4時間加熱して得られる側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の透明固体の質量を測定し、固形分(質量%)を算出した。
(2)数平均分子量(Mn)
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)のMnは、高速GPC装置(東ソー(株)製、型式:HLC−8220GPC)を用いて測定した。尚、数値に関してはポリスチレン換算した値を用いた。
(3)ガラス転移温度(Tg)
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)のTgは、示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、型式:DSC6200)を用いて測定した。
(4)耐擦傷性
光硬化後の積層成形品を50mm×100mmの試験片に切り分け、耐擦傷性評価用サンプルとした。スチールウール擦傷試験機を用いて、13.7kPaの荷重でスチールウールNo.0000を該サンプル上にセットした後、往復距離が45mm、往復速度が100mm/sec、往復回数が11回の条件にて該サンプルを試験し、ヘイズをJIS K 7136に準拠してヘイズメーター(日本電色工業(株)製、型式:NDH4000)で測定した。ヘイズを耐擦傷性(%)として示した。
(5)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準じて、鉛筆(三菱鉛筆(株)製、製品名:uni)を使用して評価した。
(6)未硬化状態の表面タック性
未硬化状態の光硬化性樹脂組成物(B)の層について表面タックの評価を行った。この評価は、塗膜表面のタック感の有無を指触によって判定した。
○:塗膜表面のタック感が無い
×:塗膜表面のタック感が有る
[合成例1〜3]側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の合成
各原料の分量については表1に示す通りである。
(イ)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた0.5Lの4つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトンを入れ、79℃に昇温した。次いで、フラスコ内を窒素雰囲気下とし、メチルエチルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルメタアクリレート(合成例1及び2)又はブチルアクリレート(合成例3)、及びグリシジルメタクリレートの単量体混合物を4時間かけて滴下した。
(ロ)この後、メチルエチルケトンとアゾビスイソブチロニトリルの混合物を30分間かけて滴下し、重合を実施した。
(ハ)重合開始から11時間30分経過した後、メチルエチルケトン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、トリフェニルホスフィン、及びアクリル酸の単量体混合物を30分間かけて滴下し、空気を吹き込みながら80℃で34時間30分攪拌した。
(ニ)次いで、フラスコ内を冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の溶液を得た。
合成例1で得られた側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の固形分は39質量%、Mnは約3万、及びTgは65℃であった。
合成例2で得られた側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の固形分は37質量%、Mnは約3万、及びTgは68℃であった。
合成例3で得られた側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の固形分は33質量%、Mnは約3万、及びTgは54℃であった。
[参考合成例1〜3]側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の合成
各原料の分量については表1に示す通りである。
(イ)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた0.5Lの4つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトンを入れ、80℃に昇温した。次いで、フラスコ内を窒素雰囲気下とし、メチルエチルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、参考合成例2についてはブチルメタアクリレート、参考合成例3についてはブチルアクリレートを含む単量体混合物を4時間かけて滴下した。
(ロ)この後、メチルエチルケトンとアゾビスイソブチロニトリルの混合物を30分間かけて滴下し、重合を実施した。
(ハ)重合開始から11時間30分経過した後、メチルエチルケトン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、トリフェニルホスフィン、及びアクリル酸の単量体混合物を30分間かけて滴下し、空気を吹き込みながら80℃で34時間30分攪拌した。
(ニ)次いで、フラスコ内を冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の溶液を得た。
参考合成例1で得られたアクリル樹脂の固形分は35質量%、Mnは約3万、及びTgは96℃であった。
参考合成例2で得られたアクリル樹脂の固形分は30質量%、Mnは約3万、及びTgは86℃であった。
参考合成例3で得られたアクリル樹脂の固形分は33質量%、Mnは約3万、及びTgは73℃であった。
Figure 2015080858
尚、表1中の質量%は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂の主鎖ポリマー組成として用いている単量体の質量合計を100%とした時の各単量体の値を表している。
[実施例1]
表2の実施例1に示す組成の光硬化性樹脂組成物の溶液を調製した。この際、光安定剤は、合成例1で得た側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)と無機粒子(E)を合わせた固形分質量100質量部に対して約0.5質量部添加した。また、光重合開始剤(D)は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)100質量部に対して約2.5質量部添加した。無機微粒子(E)は、無機微粒子(E)の固形分の質量が側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の固形分の質量に対して3分の2になるよう調製した。得られた光硬化性樹脂組成物の溶液をアクリル基材シート(A)として架橋ゴム成分を含有する厚さ300μmの透明軟質アクリル樹脂シート(三菱レイヨン(株)製、アクリプレンHBS010P)上に塗工幅300mmで塗布した後、熱風乾燥機を用いて乾燥し、厚さ5μmの光硬化性樹脂組成物の層がアクリル基材シート(A)の上に積層された積層シートを得た。
得られた積層シートを、チャック間距離90mmの1号ダンベル片にカットし、引張試験機((株)東洋精機製作所)を用いて20mm/minの速度で引っ張った。伸度5%の際の試験片を目視で確認し、表層にクラックが入るかを評価した。結果を表2に示す。
また、得られた積層シートの表面タック性を指触により判定した。
さらに、得られた積層シートを厚さ3mmのポリカーボネート樹脂(タキロン(株)、PC−1600)に温度180℃で熱プレス成形し、得られた光硬化前積層成形品に、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名:アイグランテージ(商標)(4kw)ECS−401GX)を用いて、約560mJ/cmの紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、アクリル基材シート(A)の上に光硬化性樹脂組成物の硬化物の層が積層された積層成形品を得た。光硬化後の積層成形品の耐擦傷性及び鉛筆硬度を評価した。
[実施例2、3、及び比較例1〜3]
[合成例2、3]、及び[参考合成例1〜3]で得た側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)の溶液を用いた以外は、実施例1と同様に成形品を得て、評価した。結果を表2に示す。
Figure 2015080858
(光硬化性樹脂組成物(B)の各成分の数値は、質量部による)
表2中の化合物は以下のものを使用した。
光安定剤:デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(商品名:Tinuvin 123、分子量:737、BASFジャパン(株)製)
光重合開始剤(D):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:Irgacure 184、分子量:204.3、BASFジャパン(株)製)
無機微粒子(E):有機・無機ポリマー(トルエン溶媒中に分散、固形分60〜65%)(商品名:ダイヤビームUK−3903、三菱レイヨン(株)製)
実施例1〜3は、室温下での引っ張り試験において5%延伸時にクラックが発生せず、かつ耐擦傷性や鉛筆硬度等の物性が良好であった。
比較例1〜3は、硬度等の物性は優れているが、室温下での引っ張り試験では良好な結果は得られなかった。

Claims (10)

  1. アクリル基材シート(A)の片面上に光硬化性樹脂組成物(B)からなる層を積層した積層シートであって、該光硬化性樹脂組成物(B)が側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、下記条件の試験において表層クラックが目視上発生しない積層シート。
    (条件)
    アクリル基材シート(A)の厚み: 300μm
    該光硬化性樹脂組成物(B)からなる層の厚み: 2〜10μm
    温度: 23℃
    引っ張り試験: 20mm/minの速さで5%伸張
  2. 該側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)のガラス転移温度が40〜72℃である、請求項1に記載の積層シート。
  3. 該側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)が、ホモポリマーのガラス転移温度が90〜230℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−1)3〜60質量%と、ホモポリマーのガラス転移温度が−100〜30℃であり且つ反応性官能基を有しない重合性単量体(c−2)25〜85質量%と、反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)12〜50質量%とを含んで共重合させた主鎖ポリマーに、側鎖として反応性官能基とラジカル重合性不飽和基を有する単量体(c−4)を反応性官能基を有する重合性単量体(c−3)に対してモル比で50〜100%導入した樹脂である、請求項1又は2に記載の積層シート。
  4. 該単量体(c−1)がメチルメタアクリレートである、請求項3に記載の積層シート。
  5. 該単量体(c−3)がグリシジルメタアクリレートである、請求項3又は4に記載の積層シート。
  6. 該光硬化性樹脂組成物(B)が、該側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性アクリル樹脂(C)以外の架橋性低分子モノマーを実質的に含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層シート。
  7. 該光硬化性樹脂組成物(B)が、無機微粒子(E)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層シート。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載した積層シートの光硬化性樹脂組成物(B)を、積層されている層が金型の内壁面と向かい合うように予備成形用金型内に挿入配置するシート挿入工程(1)、積層シートを予備成形して積層シートを金型形状に追従させる予備成形工程(2)、予備成形した積層シートを光硬化性樹脂組成物(B)が積層されている層が金型の内壁面に向かい合うように成形用金型に挿入配置する予備成形シート挿入工程(3)、成形用金型を閉じて、溶融樹脂(F)を金型内に射出し、溶融樹脂(F)を固化させることにより積層シートが表面に配置された樹脂成形品を形成する成形品形成工程(4)、及び光照射することにより積層成形品表面の光硬化性樹脂組成物(B)を光硬化させる硬化工程(5)を含む、積層成形品の製造方法。
  9. 請求項8に記載した成形用金型の温度が20〜60℃である、積層成形品の製造方法。
  10. 請求項8又は9に記載した方法により得られる、積層成形品。
JP2013218181A 2013-10-21 2013-10-21 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法 Pending JP2015080858A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013218181A JP2015080858A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013218181A JP2015080858A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015080858A true JP2015080858A (ja) 2015-04-27

Family

ID=53011742

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013218181A Pending JP2015080858A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015080858A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1582538B1 (en) Multilayer structure polymer and resin composition together with acrylic resin film material, acrylic resin laminate film, photocurable acrylic resin film or sheet, laminate film or sheet and laminate molding obtained by laminating thereof
EP1170109B1 (en) Photocuring resin compositions, photocuring sheets using the same, production thereof and process of production of a molded article using the same sheets
JP4406304B2 (ja) 多層構造重合体及びこれを含む樹脂組成物、並びに、アクリル樹脂フィルム状物、アクリル樹脂積層フィルム、光硬化性アクリル樹脂フィルム又はシート、積層フィルム又はシート、及び、これらを積層した積層成形品
JP4695561B2 (ja) アクリル樹脂フィルム状物、アクリル樹脂積層フィルム、光硬化性アクリル樹脂フィルム又はシート、積層フィルム又はシート、及び、これらを積層した積層成形品
JP5158852B2 (ja) アクリル樹脂組成物、アクリル樹脂フィルム、熱成形用艶消しアクリル樹脂フィルム、光硬化性アクリル樹脂フィルム及びこれらを積層した積層体
JP4307242B2 (ja) アクリル樹脂フィルム状物、アクリル樹脂積層フィルム、光硬化性アクリル樹脂フィルム又はシート、積層フィルム又はシート、及び、これらを積層した積層成形品
JP5573507B2 (ja) 積層シートロールの製造方法
JP2010163576A (ja) 光硬化性樹脂組成物、光硬化性シート、光硬化性加飾シート、光硬化性成形用シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法
JP4293886B2 (ja) 光硬化性樹脂組成物並びにそれを用いた光硬化性シート及びそれを用いた成形品の製造方法
JP2013151133A (ja) 熱成形用ハードコートフィルム
CN104718230A (zh) 光固化性树脂组合物、积层片、积层成形品以及积层成形品的制造方法
JP4046482B2 (ja) 光硬化性樹脂組成物、光硬化性シートおよびインサート成形品の製造方法
JP2006044195A (ja) 光硬化性シートおよびそれを用いた成形品
JP2014015537A (ja) 光硬化性樹脂組成物、光硬化性シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法
JP2015038173A (ja) 光硬化性樹脂組成物、積層シート、積層成形品及び積層成形品の製造方法
JP2008296539A (ja) 熱成形用ハードコートアクリル樹脂フィルム、その製造方法、およびそれを含む成形品
JP4210127B2 (ja) 光硬化性シートの製造方法、光硬化性シートおよびインサート成形品の製造方法
JP2004277725A (ja) 光硬化性樹脂組成物、光硬化性シートおよびそれを用いた成形品の製造方法
JP2013086279A (ja) 熱成形用フィルム向け硬化性樹脂組成物とこの樹脂組成物を積層した熱成形用フィルム
JP2003165178A (ja) 転写シートおよび樹脂成形品の製造方法
JP2016036977A (ja) 光硬化性樹脂組成物、積層フィルム、積層成形品およびその製造方法
JP2015080858A (ja) 光硬化性樹脂組成物を積層した積層シート、それを用いた積層成形品及び積層成形品の製造方法
JP2006327173A (ja) 艶消しアクリル樹脂フィルム、その製造方法、および積層体
JP4182194B2 (ja) 光硬化シートおよびそれを用いた成形品の製造方法
JP4395285B2 (ja) 光硬化性シートおよびそれを用いた成形品の製造方法