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JP2015063645A - ポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形体 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形体 Download PDF

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JP2015063645A
JP2015063645A JP2013199764A JP2013199764A JP2015063645A JP 2015063645 A JP2015063645 A JP 2015063645A JP 2013199764 A JP2013199764 A JP 2013199764A JP 2013199764 A JP2013199764 A JP 2013199764A JP 2015063645 A JP2015063645 A JP 2015063645A
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polylactic acid
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acid
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JP2013199764A
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幸浩 木内
Yukihiro Kiuchi
幸浩 木内
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NEC Corp
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NEC Corp
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Abstract

【課題】持続的な抗菌性と十分な安定性を有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、0.1質量%水溶液のpHが4.0から10.0を示す無機化合物とを含む抗菌性を有するポリ乳酸系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形体に関する。
ポリ乳酸樹脂をはじめとするポリヒドロキシカルボン酸は、比較的優れた成形加工性、靱性、剛性等を有する。なかでもポリ乳酸樹脂は、トウモロコシ等の天然原料から合成することが可能で、優れた成形加工性、生分解性等を有することから環境調和型樹脂として、種々の分野において開発が進められている。しかし、ポリ乳酸樹脂は優れた物性を有する一方で、抗菌性に劣る。そのため、このようなポリ乳酸樹脂を、高度な抗菌性が要求される住宅設備機器、公共施設および店舗などの設備や機器、さらに電子機器の外装材等に使用するためには抗菌性能を強化する必要がある。
このようなポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物に抗菌性を付与する試みが数々なされている。例えば、特許文献1には、生分解性ポリエステルすなわちポリ乳酸に、芳香環を有するホスホン酸化合物と、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンから選択される金属イオンとから形成されるホスホン酸金属塩を抗菌剤として添加して抗菌性を付与した樹脂組成物が挙げられている。しかし、この樹脂組成物で成形した部品を、温水に浸漬したり、家庭用洗剤で拭いたり、光を照射したりすると、金属イオンが溶出したり、抗菌剤が劣化してしまい、抗菌性能が大幅に低下する。このような樹脂組成物は、持続的な抗菌性を発現することが困難であり、住宅設備機器や、公共施設および店舗などの設備や機器、さらに電子機器の外装材等に要求される実用性に欠ける。
また、特許文献2には、ポリ乳酸に抗菌剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、チャ抽出などの食品添加物を使用した樹脂組成物の例が開示されている。しかし、この樹脂組成物で成形した部品を、温水に浸漬したり、家庭用洗剤で拭いたりすると、食品添加物自体が溶出してしまい、抗菌性能が大幅に低下する。このような樹脂組成物は、持続的な抗菌性を発現することが困難であり、住宅設備機器や、公共施設および店舗などの設備や機器、さらに電子機器の外装材等に要求される実用性に欠ける。
また、炭酸カルシウムが主成分のホタテの貝殻を焼成して酸化カルシウムに変化させ、加水することで水酸化カルシウムに変化させて製造した抗菌剤が市販されている(株式会社抗菌研究所製、商品名:スカロー)。しかし、この抗菌剤は、強アルカリ性であるため、ポリ乳酸樹脂に添加するとポリ乳酸樹脂の分解を促進してしまうのでこのような抗菌剤を含有するポリ乳酸樹脂組成物は、成形時や保存時の安定性に問題がある。そのため、住宅設備機器や、公共施設および店舗などの設備や機器、さらに電子機器の外装材等に要求される実用性に欠ける。
その他に、特許文献3には、銅、銀、亜鉛から選ばれる1種または2種以上の金属を担持するゼオライト等の無機多孔質物質を含み、マイクロファイバーからなる遷移構造物層と、この層に積層されたポリ乳酸および/またはポリアミドからなるナノファイバーを含むナノファイバー不織布層とを備える抗菌・防塵生地が記載されている。
特許第4591662号 特開2011−12221号公報 特開2008−188791号公報
本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、持続的な抗菌性と、十分な安定性を有するポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形体を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂(A)、
0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)を併用することで、持続的な抗菌性と安定性の両立が可能な知見を得た。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様による抗菌性を有するポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)を含む。
また、本発明の他の態様による成形体は、上記のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して得られたものである。
本発明の実施形態によれば、持続的な抗菌性と十分な安定性を有するポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形体を提供できる。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物は、持続的な抗菌性と十分な安定性(成形時や保存時に樹脂が分解しにくい)を同時に達成できる。その理由は以下の通りと考える。すなわち、ポリ乳酸系樹脂(A)と、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)を併用することで、抗菌性成分(例えば亜鉛イオンや銀イオン)の徐放速度が制御可能となるため、抗菌性の持続性を高めることができると考える。加えて、無機化合物(B)が、ポリ乳酸系樹脂(A)の分解を促進しないため、ポリ乳酸系樹脂(A)と無機化合物(B)を溶融混練する際や、これらを含むポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体を高温高湿下に長時間保管した際の分解による劣化を抑えることができる。
このようなポリ乳酸系樹脂組成物は、持続的な抗菌性と安定性が要求される用途、例えば、住宅設備機器や、公共施設および店舗などの設備や機器、さらには電子機器の筐体等の外装材に好適である。しかも、この樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系樹脂は、天然原料から得られ、またポリ乳酸系樹脂は生分解性を有するため、製造時や廃棄をする場合においても環境負荷を低減することができる。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分として含有し、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)を必須成分として含有する。
ここで「主成分」とは、ポリ乳酸系樹脂組成物を構成する有機成分中の主成分を意味し、この組成物の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味する。特に、この主成分(ベース樹脂)の含有割合を特定するものではないが、この主成分がポリ乳酸系組成物を構成する有機成分中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である形態を包含するものである。従って、本発明の実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物においては、ポリ乳酸系樹脂(A)の含有率を、ポリ乳酸系樹脂組成物を構成する有機成分全体に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上の範囲に選択することができる。ポリ乳酸系樹脂組成物中の樹脂成分の含有量は例えば40質量%以上に設定でき、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂(A)としては、バイオマス原料から得られるポリ乳酸系樹脂の抽出物やこれらの誘導体若しくは変性体、又は、バイオマス原料から得られる乳酸系化合物のモノマー、オリゴマーや、これらの誘導体若しくは変性体を用いて合成される縮重合物が挙げられる。その他、バイオマス原料以外を原料として合成されるポリ乳酸系樹脂のセグメントを含む樹脂を挙げることができる。
ポリ乳酸系樹脂(A)としては、下記式(1)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2015063645
式(1)中、R17は炭素数18以下のアルキル基を表し、a、cは0を超える整数、b’は0以上の整数を表す。aは500以上13000以下の整数であることが好ましく、より好ましくは1500以上4000以下の整数である。b’は0以上5000以下の整数であることが好ましく、cは1以上50以下の整数であることが好ましい。式(1)に示すポリ乳酸系樹脂においては、繰返し単位数a、b’でそれぞれ示される繰返し単位は、同種の繰返し単位が連続して接続されていても、交互に繰り返されていてもよい。
式(1)で表されるポリ乳酸系樹脂としては、具体的には、L−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体、これら乳酸の誘導体の重合体、更に、これらを主成分とする共重合体、これらの重合体の2種以上からなる混合物を挙げることができる。かかる共重合体として、L−乳酸、D−乳酸、又はこれらの誘導体と、例えば、グリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート等の1種又は2種以上とから得られる共重合体を挙げることができる。このような共重合体は、石油資源節約、耐熱性、成形性等の点から、乳酸由来の単位が80モル%以上の重合体が好ましく、90モル%以上の重合体がより好ましい。これらの重合体のうち、石油資源節約という観点からは、植物由来のものを原料とするものが好ましく、さらに耐熱性、成形性の面から、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、L−乳酸とD−乳酸の共重合体が特に好ましい。また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸の融点は、D−乳酸成分の比率によってその融点が異なるが、成形体の機械的特性や耐熱性を考慮すると、160℃以上の融点を有するものが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は3万〜100万であることが好ましく、より好ましくは10万〜30万である。
またポリ乳酸系樹脂を、カルボジイミド化合物、エポキシ基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、脂肪族不飽和二重結合を有する化合物など、ポリ乳酸系樹脂と反応可能な化合物で架橋して高分子量化したポリ乳酸系樹脂も使用できる。エポキシ基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、脂肪族不飽和二重結合を有する化合物の例としては、これらの官能基を有するシロキサン化合物が挙げられる。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物の必須成分である、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)としては、銀イオンや亜鉛イオン等の金属イオン等の抗菌性成分を徐放できる無機化合物が好ましい。このような無機化合物(B)としては、リン酸複合化物、アルミノケイ酸塩などのゼオライト構造を有する化合物、亜鉛成分(例えば酸化亜鉛等の亜鉛化合物や亜鉛イオン)を含有する化合物が好ましく、ゼオライト構造を有し、亜鉛成分を含む無機化合物がより好ましい。なかでも、亜鉛イオンと銀イオンを徐放できる亜鉛イオンと銀イオンを保持したアルミノケイ酸塩とリン酸の複合化物、銀イオンを徐放できる銀イオンを保持したアルミノケイ酸塩と酸化亜鉛の複合化物から選ばれる1種の化合物または2種以上の混合物が好ましい。
無機化合物(B)は、ポリ乳酸系樹脂組成物の安定性の観点からすると、0.1質量%水溶液のpHが4.0から8.0を示す化合物がさらに好ましい。
無機化合物(B)は、例えば、シランカップリング剤で表面処理された状態で使用することもできる。シランカップリング剤により金属水酸化物を表面処理する方法は、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤を、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶媒に溶解させた溶液を、金属水酸化物の表面に噴霧または塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法等が挙げられる。
無機化合物(B)をポリ乳酸系樹脂(A)に添加することにより、得られた樹脂組成物に、持続的な抗菌性を発現させることができる。この抗菌性の持続性の向上効果は、無機化合物(B)が亜鉛イオンや銀イオン等の金属イオンを徐放することに起因すると考えられる。
無機化合物(B)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と無機化合物(B)の総和に占める質量割合として、0.1〜15質量%の範囲に設定することができる。無機化合物(B)の十分な添加効果を得る観点から、無機化合物(B)の含有量は、0.1質量%以上が好ましい。ポリ乳酸系樹脂(A)と無機化合物(B)のマスターバッチを安定的に製造する観点から、また成形安定性の観点から、無機化合物(B)の含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。0.1質量%水溶液のpHが高い値(例えばpHが8.0より大きく10.0以下、さらにpHが9.0以上10.0以下)を示す無機化合物(B)を用いる場合は、成形安定性の観点から、無機化合物(B)の含有量は8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
無機化合物(B)中の亜鉛イオンの含有量は、0.1〜18質量%の範囲にあることが好ましい。無機化合物(B)中の銀イオンの含有量は、0.1〜5質量%の範囲にあることが好ましい。
その他、本発明の実施形態による樹脂組成物に用いることができる成分として、ハロゲン化合物やリン化合物等の難燃剤、無機系の難燃剤、耐加水分解抑制剤、繊維、含フッ素樹脂などが例示できる。
リン化合物としては、ホスファゼン誘導体および芳香族縮合型リン酸エステルが難燃効果に優れるので好ましい。ホスファゼン誘導体としては、環状のシクロホスファゼン化合物として、下記一般式で示される環状化合物が挙げられる。
Figure 2015063645
(式中、nは3以上の整数を示し、R及びRはそれぞれ有機基を示す。)
式中のnは3〜25の範囲にあることが好ましく、nが3〜5の範囲にあることがより好ましい。シクロホスファゼン化合物は、R及びRとして、それぞれ独立に、例えば置換もしくは非置換のフェノキシ基、置換もしくは非置換のナフトキシ基(例えばβ−ナフトキシ)を有することができる。
リン化合物の一つであるホスファゼン誘導体としては、フェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、シアノフェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、アミノフェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、置換もしくは非置換のナフトキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、フェノール性水酸基を有するシクロホスファゼン化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。ただし、フェノール性水酸基は、酸化されると着色の原因となるキノン構造を形成しやすいため、フェノール性水酸基を含有しないことが好ましい。すなわち、シクロホスファゼン化合物は、耐変色性の観点から、フェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、シアノフェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、アミノフェノキシ基を有するシクロホスファゼン化合物、置換もしくは非置換のナフトキシ基を有するシクロホスファゼン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。このようなシクロホスファゼン化合物は、置換もしくは非置換のフェノキシ基または置換もしくは非置換のナフトキシ基を有する、シクロトリホスファゼン、シクロテトラホスファゼン又はシクロペンタホスファゼンが好ましく、置換もしくは非置換のフェノキシ基を有するシクロトリホスファゼンを好適に用いることができる。例えば、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(フェノキシ基は置換基を有していてもよい)が挙げられる。
またリン化合物の一つである芳香族縮合型リン酸エステルとしては、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールA−ビスジフェニルホスフェート、レゾルシノール−ビス−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノール−ビス−2,6−ビスジフェニルホスフェート、ビフェノール−ビスジフェニルホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニルなどが挙げられる。
リン化合物の配合量は、添加に応じた難燃性向上効果を得る点から、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対し、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。他方、耐ブリード性の観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、7質量部以下が特に好ましい。
また、無機系の難燃剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物が使用できる。さらに、前記した難燃剤以外に窒素系の難燃剤、メラミンシアヌレート、高分子量のホスファフェナントレン誘導体なども使用できる。高分子量のホスファフェナントレン誘導体としては三光株式会社製のME−P8(商品名)が例示できる。特に良好な流動性を得る観点から、メラミンシアヌレートを使用することがより好ましい。
耐加水分解抑制剤としては、例えばカルボジイミド系化合物が好ましい。カルボジイミド系化合物は、分子内に少なくとも一つのカルボジイミド基を有する化合物である。このようなカルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ビス(メチルフェニル)カルボジイミド、ビス(メトキシフェニル)カルボジイミド、ビス(ニトロフェニル)カルボジイミド、ビス(ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジイソプロピル)カルボジイミド、ビス(t−ブチル)カルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ビス(トリフェニルシリル)カルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが挙げられる。N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドの市販品として、Rhein Chemie社製のスタバクゾールI(商品名)を用いることができる。カルボジイミド基を二つ以上有するカルボジイミド系化合物(ポリカルボジイミド)としては、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン及び1,5−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミドが挙げられる。脂肪族ポリカルボジイミドとしては、シクロヘキサン環などの脂環式構造を有する脂肪族ポリカルボジイミドが好ましい。例えば、一般式「−(N=C=N−R)−」(nは2以上の整数)における有機系連結基Rがシクロヘキシレン基等の脂環式の二価基を少なくとも含むポリカルボジイミドが挙げられる。このような脂肪族ポリカルボジイミドとしては、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)を好適に用いることができる。このポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)の市販品として、日清紡ケミカル(株)製のカルボジライトLA−1(商品名)を用いることができる。芳香族ポリカルボジイミドは、ベンゼン環などの芳香環構造を有するポリカルボジイミドが挙げられる。芳香族ポリカルボジイミドとしては、市販品として、Rhein Chemie社製のスタバクゾールP(商品名、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド))や、スタバクゾールP−100(商品名)を用いることができる。
カルボジイミド系化合物の配合量は、十分な難燃性向上効果を得る点から、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部以上に設定でき、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。脂肪族カルボジイミドと芳香族カルボジイミドを併用する場合、芳香族カルボジイミドの配合量は、十分な添加効果を得る点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。脂肪族カルボジイミドと芳香族カルボジイミドの配合比(質量比)は、例えば1/9〜9/1の範囲に設定でき、3/7〜7/3の範囲が好ましく、4/6〜6/4の範囲に設定することができる。一方、カルボジイミド系化合物の配合量が多すぎると、添加量に応じた効果は得られなくなるため、20質量部以下に設定することができ、樹脂の成形性や、耐ブリード性、製造コスト等の観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物は、無機繊維、有機合成繊維、植物由来の天然繊維等の繊維を含んでいてもよい。耐熱性等の点から無機繊維が好ましく、無機繊維としては、金属繊維、ガラス繊維、金属ケイ酸塩繊維、無機酸化物繊維、無機窒化物繊維などの無機繊維が挙げられる。繊維は1種単独で用いても良く、また2種以上を混合して使用してもよい。無機繊維、有機合成繊維および植物由来の天然繊維から選ばれる2種以上を混合して使用してもよく、少なくとも無機繊維を含むことが好ましい。繊維を含むことにより、成形体の熱変形防止効果、ドリップ抑制効果を得ることができる。繊維の形状は、繊維断面が円形であってもよいが、多角形、不定形あるいは凹凸のある形状のものであってもよい。樹脂との接合面積が大きくなる観点から、アスペクト比の高い凹凸を有するものや、繊維径の小さいものが望ましい。繊維には、必要に応じて、基材となる樹脂との親和性または繊維間の絡み合いを高めるために、表面処理を施すことができる。表面処理方法としては、シラン系、チタネート系などのカップリング剤による処理、オゾンやプラズマ処理、さらには、アルキルリン酸エステル型の界面活性剤による処理などが有効である。しかしながら、これらに特に限定されず、充填材の表面改質に通常使用できる処理方法が使用できる。繊維の平均繊維長(破砕片を除く繊維の数平均繊維長)は、0.1mm〜20mmの範囲にあることが好ましく、0.1mm〜10mmの範囲にあることがより好ましい。また、300μm〜20mmの繊維長の繊維を含むことが好ましい。繊維の含有量は特に制限はないが、十分な添加効果を得る点から、ポリ乳酸系樹脂組成物全体を基準として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上が好ましく、樹脂組成物の成形性や機械強度を十分に確保する観点から、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、例えば1質量%以上10質量%以下に設定することができる。さらに有機合成繊維として、ポリアミド繊維やポリアリレート繊維を使用することができる。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物には、含フッ素樹脂を含有させてもよい。これにより、耐ドリップ性を高めることができる。含フッ素樹脂としては、繊維形成型(フィブリル状構造を形成するもの)が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)が挙げられる。含フッ素樹脂の含有量は、十分な添加効果を得る点から、ポリ乳酸系樹脂組成物全体を基準として、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。他方、樹脂組成物の製造(造粒)等の点から、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
さらに、本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物の機能を阻害しない範囲において、各種の結晶核剤、耐衝撃性改良材、可塑剤、他の樹脂、酸化防止剤、滑剤等を配合させてもよい。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物が結晶性樹脂を含有する場合、成形体の成形において、流動開始温度が低い非晶質分の結晶化をより促進させるために、結晶核剤を使用することが好ましい。結晶核剤は、成形体の成形時にそれ自身が結晶核となり、樹脂の構成分子を規則的な三次元構造に配列させるように作用し、成形体の成形性、成形時間の短縮、機械的強度、耐熱性の向上を図ることができる。更に、非晶質分の結晶化が促進されることにより、成形時の金型温度が高い場合であっても成形体の変形が抑制され、成形後の離型を容易にする。金型温度が樹脂のガラス転移温度Tgよりも高い場合であっても同様の効果が得られる。
結晶核剤のうち無機系の結晶核剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、窒化硼素、合成珪酸、珪酸塩、シリカ、カオリン、カーボンブラック、亜鉛華、モンモリロナイト、粘土鉱物、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、ガラスファイバー、ガラス粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等を使用することができる。
結晶核剤のうち有機系の結晶核剤としては、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、テレフタル酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸、イソフタル酸モノメチルエステル、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、コール酸等の有機カルボン酸;上記有機カルボン酸のアルカリ(土類)金属塩等の有機カルボン酸アルカリ(土類)金属塩;ポリエチレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリエチレンの金属塩、ポリプロピレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリプロピレンの金属塩、エチレンやプロピレン、ブテン−1等のオレフィン類とアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体の金属塩、スチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体の金属塩、オレフィン類と無水マレイン酸との共重合体の金属塩、スチレンと無水マレイン酸との共重合体の金属塩等のカルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N’−エチレンビス(ステアロアミド)、N,N'-エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、N,N’−メチレンビス(ステアロアミド)、メチロール・ステアロアミド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ブチレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N’−ジステアリルセバシン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、ジメチトール油アマイド、ジメチルラウリン酸アマイド、ジメチルステアリン酸アマイド等、N,N’−シクロヘキサンビス(ステアロアミド)、N−ラウロイルーL−グルタミン酸−α,γ−n−ブチルアミド等の脂肪族カルボン酸アミド;N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−プロピル−N’−ステアリル酸尿素、N−アリル−N'ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素等の尿素化合物が挙げられる。
高分子化合物からなる有機系結晶核剤としては、3,3−ジメチルブテン、1,3−メチルブテン、1,3−メチルペンテン、1,3−メチルヘキセン、1,3,5,5−トリメチルヘキセン−1等の炭素数5以上の3位分岐α−オレフィンの重合体;ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニルシクロアルカンの重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリグリコール酸;セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース系化合物;ポリエステル;ポリカーボネートが挙げられる。
リン系化合物からなる有機系結晶核剤としては、リン酸ジフェニル、亜リン酸ジフェニル、リン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸メチレン(2,4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム等のリン酸又は亜リン酸の有機化合物又はその金属塩が挙げられる。
その他の有機系結晶核剤として、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール誘導体;コレステリルステアレート、コレステリロキシステアラミド等のコレステロール誘導体;無水チオグリコール酸;パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸アミド及びその金属塩等を挙げることができる。
これらのうち、ポリエステルの加水分解を促進しない中性物質からなる結晶核剤が、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による低分子量化を抑制できるため、好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂のエステル交換反応による低分子量化を抑制する観点から、カルボキシ基を有する結晶核剤よりもその誘導体であるエステルやアミド化合物の方が好ましく、また、ヒドロキシ基を有する結晶核剤よりもその誘導体であるエステルやエーテル化合物の方が好ましい。
結晶核剤は、射出成形等において高温溶融状態で樹脂と相溶あるいは樹脂中で微分散し、金型内での成形冷却段階で析出あるいは相分離し、結晶核として作用するものが好ましい。このような結晶核剤として、タルク等の層状化合物が好ましい。
無機系の結晶核剤と有機系の結晶核剤を併用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物に対する比率として、0.1〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
耐衝撃性改良材として、柔軟成分をポリ乳酸系樹脂組成物へ添加してもよい。柔軟成分としては、例えば、ポリエステルセグメント、ポリエーテルセグメント及びポリヒドロキシカルボン酸セグメントからなる群から選ばれるポリマーブロック(共重合体);ポリ乳酸セグメント、芳香族ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルセグメントが互いに結合されてなるブロック共重合物;ポリ乳酸セグメントとポリカプロラクトンセグメントからなるブロック共重合物;不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を主成分とする重合体;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル;ポリエチレングリコール及びそのエステル、ポリグリセリン酢酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル、アジピン酸系脂肪族ポリエステル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アルキルフタリルアルキルグリコレート等の可塑剤等を挙げることができる。
また必要に応じて可塑剤をポリ乳酸系樹脂組成物へ添加してもよい。可塑剤としては、脂肪鎖のみからなるジエステル系化合物や芳香族基を有するジエステル化合物など、ポリ乳酸系樹脂やエステル系樹脂の可塑剤として一般に利用されているものを用いることができる。具体的には、ベンジル-2-(2-メトキシエトキシ)エチルアジペートやトリエチレングリコールモノメチルエーテルとコハク酸の共重合体などが挙げられる。
必要に応じて他の樹脂をポリ乳酸系樹脂組成物へ添加してもよい。他の樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、これら熱可塑性樹脂のアロイを使用することができる。また、結晶性を有する熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらのポリ乳酸系樹脂とのアロイ等が好ましい。
また、他の樹脂として、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等のアクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネート系樹脂、イソシアネート系樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化型ポリミド、熱硬化型ポリアミド、スチリルピリジン系樹脂、ニトリル末端型樹脂、付加硬化型キノキサリン、付加硬化型ポリキノキサリン樹脂等の熱硬化性樹脂や、リグニン、ヘミセルロース、セルロース等の植物原料を使用した熱硬化性樹脂も使用することができる。熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化反応に必要な硬化剤や硬化促進剤を使用することが好ましい。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物には、ヒンダードフェノールやホスファイト系化合物などの酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤等の滑剤を含有させてもよい。酸化防止剤、滑剤のそれぞれの含有量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対し0.05〜3質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、熱安定剤、耐候剤、離型剤、充填剤を、本発明の目的に係る所望の効果を妨げない範囲で含有することができる。
本発明の実施形態によるポリ乳酸系樹脂組成物の各種配合成分の混合方法には、特に制限はなく、公知の混合機、たとえばタンブラー、リボンブレンダー、単軸や二軸の混練機等による混合や、押出機、ロール等による溶融混合が挙げられる。
本発明の実施形態による成形体は、上述のポリ乳酸系樹脂組成物を、射出成形、射出・圧縮成形、押出成形、金型成形等の方法により成形して得ることができる。製造工程中、又は、成形後、結晶化を促進することが、耐衝撃性、機械的強度に優れた成形体が得られることから好ましい。結晶化を促進する方法としては、上記の結晶核剤を上記範囲で使用する方法を挙げることができる。
このような成形体は、持続的な抗菌性と安定性に優れるので、住宅設備機器や、公共施設および店舗などの設備や機器、さらには電子機器の外装部品に好適である。
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
実施例、参考例、比較例において、使用した各原料の詳細は以下のとおりである。
ポリ乳酸系樹脂(A)
ポリ乳酸樹脂1:ユニチカ(株)製のテラマックTE−4000N(商品名)(融点170℃)。
無機化合物(B)
無機化合物1:(株)シナネンゼオミック製のZeomic KM10D(商品名)、
アルミノケイ酸塩とリン酸の複合化物であり、亜鉛イオンと銀イオンを徐放可能、
0.1質量%水溶液のpH=4.5;
無機化合物2:(株)シナネンゼオミック製Zeomic DAW502(商品名)、
アルミノケイ酸塩と酸化亜鉛の複合化物であり、銀イオンを徐放可能、
0.1質量%水溶液のpH=9.5。
添加剤1:日産化学工業(株)製のエコプロモート(商品名)、
フェニルホスホン酸亜鉛、
0.1質量%水溶液のpH=8.0;
添加剤2:(株)抗菌研究所製 スカローK(商品名)、
水酸化カルシウム、
0.1質量%水溶液のpH=12.2。
[実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1]
表1〜3に示す質量割合で原料をドライブレンドして得た混合物を、シリンダー温度が195〜200℃に設定された連続混練押出機(栗本製作所製のS1ニーダー(商品名))のホッパー口から供給した。スクリューを150rpmで回転させ、溶融剪断下において混合撹拌して、樹脂組成物を得た。
ストランド化できるポリ乳酸系樹脂組成物は、ペレタイザーでペレット化した。このペレットを100±5℃で5時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)製のEC20P−0.4A(商品名)、樹脂温度:200℃、金型表面温度:25℃)を用いて試験片(40×40×2.0mm)を成形した。
[成形安定性の確認1]
押出機のダイス口から吐出した溶融混合物を以下の基準にしたがって判定し、成形安定性の指標(成形安定性1)とした。
◎(良好):容易にストランド化が可能、
×(不良):吐出物をピンセットで挟んである程度引っ張ることはできるがストランド化が不可能、
××(不適):吐出物が激しく分解したためピンセットで挟むことすら不可能。
[成形安定性の確認2]
押出機のダイス口から吐出した溶融混合物をクロロホルムに溶解して、ポリスチレン換算の分子量を測定した。測定には、島津製作所製のゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC装置)LC−10ADvp(商品名)(カラム:GPC-80MC, GPC-80M, GPC-8025C)を用いた。
同じ連続混練押出機を用いて同じ条件でポリ乳酸樹脂のみを溶融混練し、水槽で冷却した後に測定した数平均分子量(最大ピークのMn)を基準として、各組成物の最大ピークの数平均分子量の変化を観察し、また最大ピークの割合(質量%)を求め、以下の基準で判定し、成形安定性の指標(成形安定性2)とした。
◎(良好):最大ピークの数平均分子量に変化なし、最大ピークの割合98%以上、
△(不十分):最大ピークの数平均分子量に変化なし、最大ピークの割合95%以上98%未満、
×(不適):最大ピークの数平均分子量が基準の50%以下に低下。
[抗菌性の評価]
上記の方法で作製した試験片について、JIS Z2801:2010(黄色ブドウ球菌、大腸菌)と、社団法人 日本建設産業協会が制定した「建材・住宅設備機器における抗菌性能試験方法・表示及び判定基準」に基づいて、試験片(成形体)について無処理の場合と前処理後の抗菌性を評価した。抗菌活性値が2.0以上の場合に抗菌性を有し(基準を合格)、この数値が高いほうが抗菌性により優れている。試験結果を表2と表3に示す。
抗菌性試験の前処理の条件は以下の通りとした。
1.温水浸漬:試験片を50±5℃の温水に16時間浸漬、
2.光照射:試験片表面にサンシャインウェザメータで16時間照射、
3.洗剤処理:試験片表面にトイレ用一般中性洗剤を適量塗布し、常温で8時間放置後、水洗し、24時間自然乾燥。
表1は、表に示される質量割合で原料をドライブレンドした混合物について、樹脂組成物の成形安定性1、2と、成形性(マスターバッチの作製が可能かどうか)の判定結果を示している。
表2及び表3は、表に示される質量割合で原料をドライブレンドした混合物について、樹脂組成物の成形安定性と成形性に加えて、抗菌性の判定結果を示している。
Figure 2015063645
Figure 2015063645
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実施例1から7の結果から、本実施例のポリ乳酸系樹脂組成物は、持続的な抗菌性と安定性を兼ね備えていることがわかった。
一方、ポリ乳酸系樹脂に対し、0.1質量%水溶液のpHが12.2の添加剤2(抗菌剤:水酸化カルシウム)を添加した比較例1と比較例3では、成形時の安定性が不十分であり、これらの溶融混合物をストランド化できないことがわかった。
また、ポリ乳酸系樹脂99.5質量%に対して添加剤1(フェニルホスホン酸亜鉛)を0.5質量%添加した比較例2は、成形時の安定性と無処理の場合の抗菌性は良好なものの、前処理後に抗菌性が低下することから、持続的な抗菌性が不十分であることが分かった。これは、亜鉛イオンの溶出やフェニルホスホン酸の光酸化劣化による影響と考察した。
なお、ポリ乳酸系樹脂90質量%に対して、亜鉛を含有する無機化合物(B)を10質量%添加した実施例1と参考例1の比較から(表1)、0.1質量%水溶液のpHが4.5の無機化合物1を含有する場合の方が、0.1質量%水溶液のpHが9.5の無機化合物2を含有する場合よりも、安定性に優れており、マスターバッチを容易に作成可能なことが分かった。例えば0.1から0.5%程度の少量の無機化合物(B)をポリ乳酸系樹脂(A)と直接溶融混合する場合は、溶融混合物の組成が不均一になりやすく、この混合物を用いて作製する成形体の抗菌性にばらつきが生じる恐れがある。これに対して、無機化合物(B)を5%超から15%程度の高濃度でポリ乳酸系樹脂(A)と直接溶融混合して、ペレット化可能な高濃度マスターバッチを安定して得ることができれば、この高濃度マスターバッチのペレットとポリ乳酸系樹脂(A)のペレットとを混合して成形することで、組成が均一な成形体が得られ、無機化合物(B)を直接に少量添加した場合に懸念される成形体ごとの抗菌性のばらつきの発生の可能性を軽減することができる。したがって、マスターバッチを形成する観点からは、0.1質量%水溶液のpHが比較的低い(好ましくはpHが4.0〜8.0)無機化合物(B)を用いることが好ましい。

Claims (10)

  1. ポリ乳酸系樹脂(A)と、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から10.0を示す無機化合物(B)とを含む抗菌性を有するポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 前記無機化合物(B)が、ゼオライト構造を有する化合物である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 前記無機化合物(B)が、亜鉛成分を含有する化合物である、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 前記無機化合物(B)が、銀イオンを含有する化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  5. 前記無機化合物(B)が、アルミノケイ酸塩とリン酸の複合化物、アルミノケイ酸塩と酸化亜鉛の複合化物から選ばれる1種の化合物または2種以上の混合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  6. 前記無機化合物(B)が、0.1質量%水溶液のpH(水素イオン濃度)が4.0から8.0を示す化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  7. 前記無機化合物(B)の含有量が、ポリ乳酸系樹脂(A)と無機化合物(B)の総和に占める質量割合として、0.1〜15質量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  8. 前記無機化合物(B)の含有量が、ポリ乳酸系樹脂(A)と無機化合物(B)の総和に占める質量割合として、0.1〜8質量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して得られる成形体。
  10. 請求項9に記載の成形体からなる外装材。
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