JP2015054819A - 3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射性物質を使わず、高い選択率で、2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造する方法を提供すること。【解決手段】3−ブテン−2−オールの製造方法は、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体から成る群より選ばれる少なくとも1種を触媒として用いて、2,3−ブタンジオールを脱水することを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、バイオマス資源由来物質を原料として3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造する方法に関する。
3−ブテン−2−オールは、化成品や医薬品等の原料として使用できる有用な物質である。また、3−ブテン−2−オールは、脱水によって簡便に1,3−ブタジエンに変換することができるため、1,3−ブタジエンの中間原料としても有用である。3−ブテン−2−オールを1,3−ブタジエンに変換する方法としては、シリカ−アルミナ触媒の存在下に3−ブテン−2−オールを脱水する方法等が挙げられる。3−ブテン−2−オールの製造方法として、アクロレインにヨウ化メチルマグネシウムを作用させて製造する方法、2−ブタノールを部分酸化して製造する方法、メチルビニルケトンを還元して製造する方法等が知られている。
1,3−ブタジエンは様々な化学製品の原料として使われる、化学工業における極めて重要な基幹物質である。1,3−ブタジエンを原料として、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴムの他、ABS樹脂、アジポニトリル、1,4−ブタンジオール等の化学製品が製造されている。1,3−ブタジエンの工業的な製造方法としては、ナフサ分解で生成するB−B留分(炭素数4のオレフィンを主体とする混合物)から1,3−ブタジエンを分離して製造する方法、又はブタン若しくはブテンの脱水素によって製造する方法等が知られている。
一方、近年、化石資源から発生する二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化問題や、化石資源の枯渇の問題が深刻化している。このため、地球温暖化を阻止し、持続可能な循環型社会に転換する必要性が高まっている。化学産業では、再生可能資源であるバイオマス資源に由来する物質から、各種化学製品を製造する技術の構築が急務となっている。前述した3-ブテン-2-オール及び1,3−ブタジエンは、いずれも化石資源を原料として製造されており、その原料をバイオマス資源に転換することは、地球環境保護及び化石資源節減の観点で非常に重要である。
2,3−ブタンジオールは、糖を原料として微生物発酵により製造することができため、バイオマス資源から誘導可能な物質である(非特許文献1)。従って、2,3−ブタンジオールを3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンに変換することができれば、3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンの原料をバイオマス資源に転換することが可能となる。
2,3−ブタンジオールを3−ブテン−2−オールに変換する反応は、2,3−ブタンジオールから水分子を1分子脱離させる脱水反応であり、2,3−ブタンジオールを1,3−ブタジエンに変換する反応は、2,3−ブタンジオールから水分子を2分子脱離させる脱水反応である。2,3−ブタンジオールの脱水反応は、酸触媒によって進行することが知られているが、多くの場合、主生成物は3−ブテン−2−オールや1,3−ブタジエンではなくメチルエチルケトンである。例えば、アルコール類の脱水反応に汎用されるアルミナを用いて2,3−ブタンジオールを脱水すると、メチルエチルケトンが選択的に生成することが報告されている(特許文献1)。また、白色珪藻土やゼオライトを用いて2,3−ブタンジオールを脱水する方法も報告されているが、これらの方法における主生成物もメチルエチルケトンである(非特許文献2、非特許文献3)。
2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オールを選択的に製造しようとする方法として、酸化トリウムを触媒に用いて脱水反応により製造する方法が報告されている(非特許文献4)。また、ハイドロキシアパタイトを含む触媒を用いて2,3−ブタンジオールを脱水することによって、3−ブテン−2−オールが生成することが報告されている(特許文献1)。
また、2,3−ブタンジオールから1,3−ブタジエンを選択的に製造しようとする方法として、酸化トリウムを触媒に用いて脱水反応により製造する方法(非特許文献4)、セシウム酸化物−シリカ複合体を触媒に用いて脱水反応によって製造する方法(特許文献2)等が報告されている。
2,3−ブタンジオールを脱水して3−ブテン−2−オールを生成させる反応は、ジオールを脱水して不飽和アルコールを生成させる反応に属する。ジオールを脱水して不飽和アルコールを生成させる反応の例として、1,4−ブタンジオールを脱水して3−ブテン−1−オールを選択的に生成させる反応が報告されている。この反応を進行させる触媒として、特許文献3には酸化ジルコニウムが、特許文献4には塩基性物質を作用させた酸化ジルコニウムが、非特許文献5には酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化サマリウム等が報告されている。
Biotechnology Advances、27巻、p.715−725(2009年).
日本農業化学会誌 18巻,p.143−150(1942年).
Industrial & Engineering Chemistry Research,52巻,p.56−60(2013年).
Journal of the Council of Industrial Research、18巻、p.412−423(1945年).
Applied Catalysis A: General、356巻、p.64−71(2009年).
前述したように、2,3−ブタンジオールはバイオマス資源から誘導可能であり、化学変換により3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンに変換可能である。しかしながら、前述の通り、酸触媒を用いて2,3−ブタンジオールを脱水した場合、多くの場合主生成物はメチルエチルケトンであり、3−ブテン−2−オールや1,3−ブタジエンはほとんど生成しない。特許文献1に開示されているアルミナ、非特許文献2に開示されている白色珪藻土、非特許文献3に開示されているゼオライトを触媒に用いる方法では、メチルエチルケトンがそれぞれ65モル%、66モル%、90モル%の選択率で生成する。
また、前述の通り、2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オールを選択的に製造しようとする方法が開示されており、非特許文献4に開示されている酸化トリウムを触媒に用いる方法では、3−ブテン−2−オールの選択率は70.3%である。しかしながら、酸化トリウムは放射性物質であるため、これを工業生産に適用することは非常に困難である。また、特許文献1に開示されている、ハイドロキシアパタイトを含む触媒を用いて2,3−ブタンジオールを3−ブテン−2−オールに変換する方法は、3−ブテン−2−オールの選択率が25.0モル%であり、選択率が極めて低い。
また、前述したように、2,3−ブタンジオールから1,3−ブタジエンを選択的に製造しようとする方法も開示されており、非特許文献4に開示されている酸化トリウムを触媒として用いる方法では、1,3−ブタジエンの選択率は62.1%である。しかしながら、酸化トリウムは放射性物質であるため、これを工業生産に適用することは非常に困難である。また、特許文献2には、セシウム酸化物−シリカ複合体を触媒として用いると、1,3−ブタジエンの選択率は62モル%であると報告されている。しかし、本願の比較例1に示す通り、本発明者らがこの方法を追試した結果、1,3−ブタジエンの選択率は18.4モル%に留まり、この方法では選択率が非常に低かった。
以上のように、2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造する方法はいくつか知られているが、放射性物質を使わず、高い選択率で製造する方法が切望されている。
なお、前述したように、特許文献3、特許文献4及び非特許文献5には、ジオールを脱水して不飽和アルコールを生成させる反応として、1,4−ブタンジオールを脱水して3−ブテン−1−オールを選択的に生成させる方法が報告されている。しかし、非特許文献5には、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化サマリウム等の多種類の希土類酸化物を用いる方法が報告されており、これらを用いて1,4−ブタンジオールを脱水した場合には、3−ブテン−1−オールの選択率は40.4モル%〜87.4モル%であるが、比較例3−14に示すように、発明者らが本方法の12種類の希土類酸化物を、2,3−ブタンジオールの脱水による3−ブテン−2−オールの生成反応に適用したところ、3−ブテン−2−オールの選択率は0.00モル%〜33.5モル%であった。すなわち、1,4−ブタンジオールと2,3−ブタンジオールとは、化学構造は類似しているものの、脱水に対する反応性が大きく異なり、この方法では2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オールを選択的に製造できないことが明確に示された。
したがって、1,4−ブタンジオールの脱水により3−ブテン−1−オールを選択的に製造する方法が報告されていたとしても、同じ方法を、2,3−ブタンジオールの脱水にそのまま適用して、3−ブテン−2−オールを選択的に製造することができるとは限らないことが明らかである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、放射性物質を使わず、高い選択率で2,3−ブタンジオールから3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体から成る群より選ばれる少なくとも1種を触媒として用いて、2,3−ブタンジオールを脱水することを含む、3−ブテン−2−オールの製造方法を提供する。
本発明の一つの態様では、2,3−ブタンジオールの脱水の反応温度が250℃以上400℃以下である。
本発明の一つの態様では、触媒として用いる酸化ジルコニウムが、500℃以上1000℃以下の範囲で焼成して調製された酸化ジルコニウムである。
また、本発明の一つの態様では、触媒として用いる酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体が、500℃以上1000℃以下の範囲で焼成して調製された酸化ジルコニウムを用いて調製されたものである。
また、本発明は、2,3−ブタンジオールを脱水することによって生成した3−ブテン−2−オールを、酸触媒の存在下で脱水することによって1,3−ブタジエンを製造する方法を提供する。
本発明の一つの態様である、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体の存在下に、2,3−ブタンジオールを脱水することによって3−ブテン−2−オールを製造する反応は、下記反応式によって記述することができる。
本発明の一つの態様である、2,3−ブタンジオールを脱水することによって生成した3−ブテン−2−オールを、酸触媒の存在下で脱水することによって1,3−ブタジエンを製造する反応は、下記反応式によって記述することができる。
本発明により、2,3−ブタンジオールから、放射性物質を使用すること無く、高い選択率で3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造することができる。
本発明においてバイオマス資源とは、再生可能な生物由来の有機性資源を意味し、植物が太陽エネルギーを用いて二酸化炭素を固定化して生成した有機物を起源とする資源を指す。具体的には、トウモロコシ、サトウキビ、イモ類、小麦、米、大豆、パルプ、ケナフ、稲藁、麦藁、バガス、コーンストーバー、スイッチグラス、雑草、木材、古紙、木炭、天然ゴム、綿花等の他、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、ヒマシ油、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動植物油脂等が挙げられる。
本発明において、バイオマス資源に由来する物質(バイオマス資源由来物質)とは、上記のバイオマス資源から発酵や化学変換等により誘導される物質、誘導され得る物質又は誘導された物質を意味する。
本発明の原料である2,3−ブタンジオールは、非特許文献3に記述されているように、微生物の発酵によってバイオマス資源由来のものを入手することができる。糖類を炭素源として発酵する微生物では、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxymora、Paenibacillus polymyxaは天然に存在し、(2R、3R)−2,3−ブタンジオールや、(2S,3R)−2,3−ブタンジオール(meso−2,3−ブタンジオール)を生産することができる。また、国際公開2007/094178号に示されるようなOchribactrum属では、(2S,3S)−2,3−ブタンジオールが選択的に生産されることが知られている。その他、国際公開第2009/151342号に記載されるように一酸化炭素を炭素源として発酵する微生物としてClostridium autoethanogenumも知られており、このような微生物から生産される2,3−ブタンジオールも本発明の対象となりうる。
これらの他、遺伝子組み換えにより、2,3−ブタンジオール生産能を付与した微生物を用いる方法であってもよく、具体例として、「Applied Microbiolgy and Biotechnology、87巻、6号、p.2001−2009(2010年)」に記載の方法が挙げられる。
微生物による2,3−ブタンジオールの発酵に用いられる糖は、デンプン由来グルコース、セルロース由来グルコース、ショ糖、糖蜜、ブドウ糖、ガラクトース、キシロース、フルクトース、アラビノース、マンノース等、微生物が利用できる糖であればよい。また、グリセロールを2,3−ブタンジオールの発酵に用いても良い。発酵液中の2,3−ブタンジオールは、膜分離、イオン交換、蒸留等の分離操作を一つ又は複数組み合わせることによって精製することができる。例えば、特開2010−150248号公報、国際公開2013−054874号に開示されている方法により、発酵液から高純度の2,3−ブタンジオールを単離することができる。
前述のとおり、微生物の発酵によって製造される2,3−ブタンジオールには、(2R、3R)−2,3−ブタンジオール、(2S、3S)−2,3−ブタンジオール、(2S,3R)−2,3−ブタンジオール(meso−2,3−ブタンジオール)の3つの異性体が存在する。本発明の原料としてはいずれの異性体でもよく、又は複数の異性体の混合物であってもよい。また、2,3−ブタンジオールは、精製品でもよく、未精製品でもよい。なお、本発明は、バイオマス資源由来物質として調達可能な2,3−ブタンジオールを原料として用いることができることを特徴とするが、石油等の化石資源に由来する2,3−ブタンジオールを原料として用いることを排除するものではない。
本発明には、2,3−ブタンジオールを脱水する工程が含まれ、また、本発明の一つの態様では3−ブテン−2−オールを脱水する工程も含まれる。これら脱水工程は連続式反応器を用いて進行させることができる。連続式反応器は管状の反応器に固体触媒を充填し、触媒層に原料を通過させて反応を進行させる反応器である。触媒層を充填する形式としては、触媒を静置する固定床、触媒を移動させる移動床、触媒を流動させる流動床等が挙げられるが、2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オールを脱水する工程ではこれらいずれの形式も適用できる。
2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オールを脱水する工程で使用される反応装置は特に限定されないが、例えば図1に例示する装置を用いることができる。図1の装置は、反応管4、原料導入口1及びキャリアーガス導入口2を備えた気化器3、反応液捕集容器(冷却器)7、管状炉5によって構成されており、触媒層6は、反応管4の内部に固定することができる。管状炉5によって反応管4を所望の温度に加熱することができる。図1の装置を用いた気相流通反応は、原料を原料導入口1から気化器3に供給し、気化した原料を反応管4に導入して行うことができる。原料をキャリアーガスと共に反応管4に導入することもできる。生成物は、反応液捕集容器7に液体として捕集するか、ガス開放口8からガスとして捕集することができる。
2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オールを脱水する工程では、反応器内の圧力は特に限定されないが、0.001MPa以上、0.5MPa以下が好ましく、減圧又は加圧用の装置や操作が不要な大気圧下において簡便に行うことができる。
2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オールを脱水する工程では、反応器内に反応原料と共にキャリアーガスを流通することもできる。キャリアーガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスの他、水素が好ましく用いられ、これらのガスを単独で用いることもできるが、複数のガスが任意の割合で混合したものも用いることができる。脱水反応に用いる触媒の活性劣化を抑制するためには、キャリアーガスに水素が含まれていることが好ましい。キャリアーガスには水蒸気、空気、酸素などが混入していても良い。反応原料とキャリアーガスの混合比率は適宜選択することができる。例えば、2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オール1g/時間当りキャリアーガスの流量を20mL/分〜120mL/分とすることができるがこれに限定されるものではない。
2,3−ブタンジオール又は3−ブテン−2−オールを脱水する工程では、反応原料の供給速度をF(g/時間)、触媒重量をW(g)としたとき、W/F(時間)で与えられる物理量である接触時間は特に限定されないが、0.01時間以上10時間以下が好ましく、0.05時間以上5時間以下がより好ましい。
本発明では、2,3−ブタンジオールを脱水する工程において、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体から成る群より選ばれる少なくとも1種を触媒として用いることを特徴としている。何れの触媒も酸化ジルコニウム(ZrO2)を含有しており、市販の酸化ジルコニウムを触媒として、又は酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体触媒又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体触媒の原料として用いることができる。また、ジルコニウムの水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等から酸化ジルコニウムを調製することができ、これを触媒として又は触媒の原料として用いることもできる。
本発明の酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体は、酸化ジルコニウムにアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属酸化物が付着した状態のものを指す。また、本発明の酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体は、酸化ジルコニウムにアルカリ土類金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属酸化物が付着した状態のものを指す。
酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体は、例えば含浸法によって調製することができる。含浸法では、例えば、粉末状の酸化ジルコニウムに、アルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ金属塩の溶液、又は、アルカリ土類金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属塩の溶液を染み込ませ、乾燥、焼成することによって、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体、又は、酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体が調製される。含浸法は「「触媒活用大事典」編集委員会編、触媒活用大事典、工業調査会、2004年12月20日発行、p.17〜18」に示されているように、蒸発乾固法、平衡吸着法、incipient−wetness法、スプレードライ法、CVD法等に分類されるが、本発明においては何れの方法も用いることができる。
酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体における、酸化ジルコニウムとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の含有比は、各複合体の調製において原料として用いる酸化ジルコニウムと、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属塩の添加量を変えることによって、適宜調整することができる。
本発明で用いられる酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体は、例えば、「Journal of Molecular Catalysis、243巻、p.52−59(2006年)」又は「岩本正和監修、触媒調製ハンドブック、株式会社エヌ・ティー・エス、2011年4月25日発行、p.162−163」において報告されているように、incipient−wetness法によって、酸化ジルコニウムに水酸化リチウム水溶液を含浸し、乾燥、焼成することにより調製することができる。
酸化ジルコニウムと他のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物との複合体も基本的に酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体と同様にして調製することができる。酸化ジルコニウム−ナトリウム化合物複合体を調製する場合、水酸化リチウム水溶液の代わりに、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いることによって、酸化ジルコニウム−ナトリウム化合物複合体を調製することができる。同様に、水酸化リチウム水溶液の代わりに、例えば硝酸マグネシウム水溶液を用いることによって、酸化ジルコニウム−マグネシウム化合物複合体を調製することができる。同様に、水酸化リチウム水溶液の代わりに、例えば硝酸カルシウム水溶液を用いることによって、酸化ジルコニウム−カルシウム化合物複合体を調製することができる。他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属についても同様である。
本発明の方法に用いられる酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体において、酸化ジルコニウムとアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在比は、特に限定されないが、ジルコニウム原子1に対するモル比として、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子が0.0001以上1以下が好ましく、0.001以上0.5以下がより好ましい。
本発明の方法に用いられる酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体において、アルカリ金属としては特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく用いられる。
本発明の方法に用いられる酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体において、アルカリ土類金属としては特に限定されないが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムが好ましく用いられる。
上記した酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体は、それぞれ、単独で用いることもできるし、2種以上の酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体を組み合わせて用いることもできる。また、触媒として用いられる酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体は、それぞれ単独で用いることもできるし、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の2,3−ブタンジオールを脱水する工程の反応温度は、転化率を良好に保つためには250℃以上が好ましく、3−ブテン−2−オールの選択率を良好に保つためには400℃以下が好ましい。
本発明で触媒として用いられる酸化ジルコニウムは、焼成して調製したものが好ましく用いられる。焼成温度としては、500℃以上1000℃以下が好ましく、600℃以上900℃以下がより好ましい。酸化ジルコニウムの焼成は、電気炉等を用い、炉内に酸素を含む気体を流通させながら加熱することにより行うことができる。酸素を含む気体の流通量、焼成時間は適宜調整することができる。例えば、内容量2Lの電気炉を用いる場合、空気を10〜60mL/分程度の流量で流通させながら、1時間〜12時間程度焼成することができるが、焼成条件はこれに限定されるものではない。
本発明で触媒として用いられる酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体は、焼成された酸化ジルコニウムを用いて調製されたものが好ましく用いられる。酸化ジルコニウムの焼成温度としては、500℃以上1000℃以下が好ましく、600℃以上900℃以下がより好ましい。酸化ジルコニウムの焼成は、電気炉等を用い、炉内に酸素を含む気体を流通させながら加熱することにより行うことができる。酸素を含む気体の流通量、焼成時間は適宜調整することができる。例えば、内容量2Lの電気炉を用いる場合、空気を10〜60mL/分程度の流量で流通させながら、1時間〜12時間程度焼成することができるが焼成条件はこれに限定されるものではない。このようにして焼成された酸化ジルコニウムを用い、上記のようにアルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ金属塩の溶液、又は、アルカリ土類金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属塩の溶液を加えて乾燥等を行うことにより、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体を調製することができる。
本発明は、2,3−ブタンジオールを脱水する工程で生成した3−ブテン−2−オールを、酸触媒の存在下で脱水して1,3−ブタジエンを製造する工程を含むことができる。3−ブテン−2−オールの脱水工程は、2,3−ブタンジオールの脱水工程と同じ反応管内で進行させることができる。この場合、原料の流路の上流側に2,3−ブタンジオールの脱水に用いる触媒を、下流側に3−ブテン−2−オールの脱水に用いる触媒を充填することにより、2,3−ブタンジオールの脱水及び3−ブテン−2−オールの脱水を逐次的に進行させ、1,3−ブタジエンを生成させることができる。したがって、この場合は、3−ブテン−2−オールの脱水工程の反応温度も上記した2,3−ブタンジオールの脱水工程と同様、250℃以上400℃以下の温度下で行うことが好ましい。
また、2,3−ブタンジオールの脱水工程と3−ブテン−2−オールの脱水工程を別個の反応装置によって進行させることもできる。この場合、2,3−ブタンジオールの脱水工程で生成する3−ブテン−2−オールは、精製されていても、精製されていなくてもよい。
3−ブテン−2−オールの脱水工程に用いる酸触媒としては、特に限定されず、気相脱水反応で一般に用いられる酸触媒を用いることができる。酸触媒としては、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ゼオライト、珪藻土、粘土、リン酸、リン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
2,3−ブタンジオールの脱水で得られる3−ブテン−2−オールは、常温、常圧では液体として存在し、脱水反応の生成物のうち液体成分として回収することができる。回収した3−ブテン−2−オールは、例えば、蒸留によって他の成分と分離することができる。蒸留で水との混合物として得られた場合は、共沸蒸留、ゼオライト膜等の分離膜等によって3−ブテン−2−オールと水を分離し、高純度の3−ブテン−2−オールを得ることができる。
2,3―ブタンジオールの脱水又は3−ブテン−2−オールの脱水によって生成する1,3−ブタジエンは、蒸留、抽出蒸留等によって精製することができる。
2,3−ブタンジオールの脱水において、転化率が100%未満の場合は、未反応の2,3−ブタンジオールは液体成分として回収することができる。回収した2,3−ブタンジオールは、例えば蒸留によって他の成分と分離することができる。分離された2,3−ブタンジオールを再利用することによって、3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンの収量を増大させることができる。
以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において示される転化率及び選択率は、それぞれ下記の計算式(式1)、(式2)によって算出した。
(式1)転化率(%)=((供給原料の物質量−反応後の原料の物質量)/供給原料の物質量))×100
(式2)選択率(%)=(生成物の物質量)/供給原料の物質量)×100
(式2)選択率(%)=(生成物の物質量)/供給原料の物質量)×100
実施例、比較例では、図1に示す固定床流通式の反応装置を用いた。内径20mm、全長400mmの石英製反応管4を備え、該反応管の上部には、キャリアーガス導入口2と原料導入口1を備えた気化器3があり、下端には、ガス開放口8を有する反応液捕集容器(冷却器)7を有するものを用いた。反応管の中央部に触媒を固定して充填し、触媒層6をセラミックス電気管状炉5(アサヒ理化製作所、ARF−30KC、炉内長300mm)で反応温度まで加熱し、該温度で保持した。反応中、反応液捕集容器7を氷浴で冷却した。
反応は3時間又は5時間継続して行った。1時間おきに、捕集された反応液、及びガス開放口から漏出したガスをガスクロマトグラフィ分析に供した。各化合物の基準試料を用いて作成した検量線と各化合物のピーク面積値から各化合物の含有量を算出し、原料の転化率、生成物の選択率を求めた。反応時間全体での転化率、選択率として、1時間おきに求めた転化率、選択率の平均値を算出した。
参考例1 酸化ジルコニウムの焼成
酸化ジルコニウム(ZrO2、第一希元素化学工業株式会社)を、空気(流量30mL/分)を流通させた電気炉(内容量2L)内に静置し、100℃/hの速度で焼成温度(700℃、750℃、800℃、850℃、900℃又は1000℃)まで昇温し、該焼成温度で3時間保持することにより焼成した。
酸化ジルコニウム(ZrO2、第一希元素化学工業株式会社)を、空気(流量30mL/分)を流通させた電気炉(内容量2L)内に静置し、100℃/hの速度で焼成温度(700℃、750℃、800℃、850℃、900℃又は1000℃)まで昇温し、該焼成温度で3時間保持することにより焼成した。
実施例1〜4 2,3−ブタンジオールの脱水反応
反応管に900℃で焼成した酸化ジルコニウム(1.0g)を充填し、キャリアーガス導入口から水素を45mL/分の流量で流通した。反応温度は表1に示す温度とした。2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社、立体異性体混合物)をシリンジポンプにて1.06g/時間の流量で原料導入口から気化器に供給し、キャリアーガスと共に反応管に導入した。反応は5時間継続して行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表1に示す通りであった。
反応管に900℃で焼成した酸化ジルコニウム(1.0g)を充填し、キャリアーガス導入口から水素を45mL/分の流量で流通した。反応温度は表1に示す温度とした。2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社、立体異性体混合物)をシリンジポンプにて1.06g/時間の流量で原料導入口から気化器に供給し、キャリアーガスと共に反応管に導入した。反応は5時間継続して行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表1に示す通りであった。
実施例5 2,3−ブタンジオールの脱水反応
キャリアーガスとして窒素を用いて、反応温度を表2に示す温度とし、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表2に示す通りであった。
キャリアーガスとして窒素を用いて、反応温度を表2に示す温度とし、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表2に示す通りであった。
実施例6〜11 2,3−ブタンジオールの脱水反応
表3に示す温度で焼成した酸化ジルコニウムを用いて、反応温度を表3に示す温度として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表3に示す通りであった。
表3に示す温度で焼成した酸化ジルコニウムを用いて、反応温度を表3に示す温度として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表3に示す通りであった。
参考例2 酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒1)の調製
900℃で焼成した酸化ジルコニウムを加えた磁性皿をホットプレート(ホットプレートの温度は65〜80℃)上に置き、上部から白熱ランプで加熱し、水酸化リチウム水溶液を滴下しながら、水分を蒸発除去した。水酸化リチウム水溶液は、リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.26:1となる比率で添加した。得られた混合物を電気炉内に入れ、600℃で3時間焼成することにより、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒1)を得た。
900℃で焼成した酸化ジルコニウムを加えた磁性皿をホットプレート(ホットプレートの温度は65〜80℃)上に置き、上部から白熱ランプで加熱し、水酸化リチウム水溶液を滴下しながら、水分を蒸発除去した。水酸化リチウム水溶液は、リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.26:1となる比率で添加した。得られた混合物を電気炉内に入れ、600℃で3時間焼成することにより、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒1)を得た。
参考例3 酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒2)の調製
リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.041:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒2)を得えた。
リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.041:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒2)を得えた。
参考例4 酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒3)の調製
リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.016:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒3)を得た。
リチウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.016:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−リチウム化合物複合体(触媒3)を得た。
参考例5 酸化ジルコニウム−ナトリウム化合物複合体(触媒4)の調製
水酸化リチウム水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を用いて、ナトリウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.12:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−ナトリウム化合物複合体(触媒4)を得えた。
水酸化リチウム水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を用いて、ナトリウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.12:1となる比率として、他の条件は参考例2と同様にして、酸化ジルコニウム−ナトリウム化合物複合体(触媒4)を得えた。
参考例6 酸化ジルコニウム−マグネシウム化合物複合体(触媒5)の調製
800℃で焼成した酸化ジルコニウムを加えた磁性皿をホットプレート(ホットプレートの温度は65〜80℃)上に置き、上部から白熱ランプで加熱し、硝酸マグネシウム水溶液を滴下しながら、水分を蒸発除去した。硝酸マグネシウム水溶液は、マグネシウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.095:1となる比率で添加した。得られた混合物を電気炉内に入れ、800℃で3時間焼成することにより、酸化ジルコニウム−マグネシウム化合物複合体(触媒5)を得た。
800℃で焼成した酸化ジルコニウムを加えた磁性皿をホットプレート(ホットプレートの温度は65〜80℃)上に置き、上部から白熱ランプで加熱し、硝酸マグネシウム水溶液を滴下しながら、水分を蒸発除去した。硝酸マグネシウム水溶液は、マグネシウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.095:1となる比率で添加した。得られた混合物を電気炉内に入れ、800℃で3時間焼成することにより、酸化ジルコニウム−マグネシウム化合物複合体(触媒5)を得た。
参考例7 酸化ジルコニウム−カルシウム化合物複合体(触媒6)の調製
硝酸マグネシウム水溶液の代わりに硝酸カルシウム水溶液を用いて、カルシウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.068:1となる比率として、他の条件は参考例6と同様にして、酸化ジルコニウム−カルシウム化合物複合体(触媒6)を得た。
硝酸マグネシウム水溶液の代わりに硝酸カルシウム水溶液を用いて、カルシウム原子:ジルコニウム原子のモル比が0.068:1となる比率として、他の条件は参考例6と同様にして、酸化ジルコニウム−カルシウム化合物複合体(触媒6)を得た。
実施例11〜17 2,3−ブタンジオールの脱水反応
酸化ジルコニウムの変わりに触媒1〜6のうちの一種を用いて、反応温度を350℃として、水素の流量を80mL/分として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表4及び表5に示す通りであった。
酸化ジルコニウムの変わりに触媒1〜6のうちの一種を用いて、反応温度を350℃として、水素の流量を80mL/分として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表4及び表5に示す通りであった。
比較例1 2,3−ブタンジオールの脱水反応
特許文献2に従い、以下の手順でセシウム酸化物−シリカ複合体を調製した。炭酸セシウム(和光純薬工業株式会社、4.65g)を超純粋(50mL)に溶解し、シリカゲル(Sigma−Aldrich、Davisil(登録商標)、35−60メッシュ、10g)を加えた。得られた混合物を80℃で24時間撹拌することにより、水を蒸発させた。得られた粉末を空気流通下、600℃で焼成することにより、セシウム酸化物−シリカ複合体(13.1g)を調製した。
特許文献2に従い、以下の手順でセシウム酸化物−シリカ複合体を調製した。炭酸セシウム(和光純薬工業株式会社、4.65g)を超純粋(50mL)に溶解し、シリカゲル(Sigma−Aldrich、Davisil(登録商標)、35−60メッシュ、10g)を加えた。得られた混合物を80℃で24時間撹拌することにより、水を蒸発させた。得られた粉末を空気流通下、600℃で焼成することにより、セシウム酸化物−シリカ複合体(13.1g)を調製した。
反応管にセシウム酸化物−シリカ複合体(5.0g)を充填し、キャリアーガス導入口から窒素を45mL/分の流量で流通した。反応温度は400℃とした。2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社、立体異性体混合物)をシリンジポンプにて2mL/時間の流量で原料導入口から気化器に供給し、キャリアーガスと共に反応管に導入した。反応は5時間継続して行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表6に示す通りであった。
比較例2 2,3−ブタンジオールの脱水反応
触媒として酸化ジルコニウムの替わりに、アルミナ(Catalysis Society of Japan、触媒学会参照触媒、JRC−ALO−6)を用いて、反応温度を325℃として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表6に示す通りであった。
触媒として酸化ジルコニウムの替わりに、アルミナ(Catalysis Society of Japan、触媒学会参照触媒、JRC−ALO−6)を用いて、反応温度を325℃として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は表6に示す通りであった。
比較例3〜14 2,3−ブタンジオールの脱水反応
触媒として酸化ジルコニウムの替わりに、表6に示す金属酸化物を用いて、反応温度を表6に示す温度として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。各金属酸化物は、参考例1に示す方法により800℃で焼成したものを用いた。転化率及び選択率の5時間の平均値は表6に示す通りであった。
触媒として酸化ジルコニウムの替わりに、表6に示す金属酸化物を用いて、反応温度を表6に示す温度として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。各金属酸化物は、参考例1に示す方法により800℃で焼成したものを用いた。転化率及び選択率の5時間の平均値は表6に示す通りであった。
実施例18 3−ブテン−2−オールの脱水反応
原料として3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich)を用い、触媒としてアルミナ(Catalysis Society of Japan、触媒学会参照触媒、JRC−ALO−6)を用い、反応温度を350℃として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は下記の通りであった。
転化率(モル%):100
1,3−ブタジエン選択率(モル%):94.9
原料として3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich)を用い、触媒としてアルミナ(Catalysis Society of Japan、触媒学会参照触媒、JRC−ALO−6)を用い、反応温度を350℃として、他の条件は実施例1と同様にして脱水反応を行った。転化率及び選択率の5時間の平均値は下記の通りであった。
転化率(モル%):100
1,3−ブタジエン選択率(モル%):94.9
実施例19 3−ブテン−2−オールの脱水反応
実施例16の反応液から2,3−ブタンジオールを回収した3−ブテン−2−オールの粗精製液の組成にあわせ、メチルエチルケトン(関東化学株式会社、14mg)、イソブチルアルデヒド(東京化成工業株式会社、278mg)、イソブタノール(関東化学株式会社、38mg)、3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich、6.71g)、アセトイン(東京化成工業株式会社、994mg)、蒸留水(1.97g)を混合し、該粗精製を調製した。
実施例16の反応液から2,3−ブタンジオールを回収した3−ブテン−2−オールの粗精製液の組成にあわせ、メチルエチルケトン(関東化学株式会社、14mg)、イソブチルアルデヒド(東京化成工業株式会社、278mg)、イソブタノール(関東化学株式会社、38mg)、3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich、6.71g)、アセトイン(東京化成工業株式会社、994mg)、蒸留水(1.97g)を混合し、該粗精製を調製した。
反応管にアルミナ(Catalysis Society of Japan、触媒学会参照触媒、JRC−ALO−6、1.0g)を充填し、キャリアーガス導入口から窒素を30mL/分の流量で流通した。反応温度は280℃とした。前述の通り調製した粗精製液をシリンジポンプにて1.0mL/時間の流量で原料導入口から気化器に供給し、キャリアーガスと共に反応管に導入した。反応は1時間継続して行った。3−ブテン−2−オールの転化率及び3−ブテン−2−オールに対する1,3−ブタジエンの収率は下記の通りであった。
転化率(モル%):100
1,3−ブタジエン収率(モル%):94.8
転化率(モル%):100
1,3−ブタジエン収率(モル%):94.8
参考例8 2,3−ブタンジオールの回収
実施例2で生成した反応液の組成に合わせ、擬似反応液を調製した。すなわち、2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社、立体異性体混合物、97%、32.5g)、メチルエチルケトン(関東化学株式会社、99%、5.88mg)、イソブチルアルデヒド(東京化成工業株式会社、97%、451mg)、イソブタノール(関東化学株式会社、99%、2.32mg)、3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich、97%、22.7g)、アセトイン(東京化成工業株式会社、98%、2.36g)、蒸留水(9.17g)を混合し、擬似反応液を調製した。得られた擬似反応溶液を、減圧下で蒸留することにより、2,3−ブタンジオール(31.3g)を単離した。単離した2,3−ブタンジオールの純度をガスクロマトグラフィによって測定したところ、96.9%であった。2,3−ブタンジオールの回収率は96%であった。
実施例2で生成した反応液の組成に合わせ、擬似反応液を調製した。すなわち、2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社、立体異性体混合物、97%、32.5g)、メチルエチルケトン(関東化学株式会社、99%、5.88mg)、イソブチルアルデヒド(東京化成工業株式会社、97%、451mg)、イソブタノール(関東化学株式会社、99%、2.32mg)、3−ブテン−2−オール(Sigma−Aldrich、97%、22.7g)、アセトイン(東京化成工業株式会社、98%、2.36g)、蒸留水(9.17g)を混合し、擬似反応液を調製した。得られた擬似反応溶液を、減圧下で蒸留することにより、2,3−ブタンジオール(31.3g)を単離した。単離した2,3−ブタンジオールの純度をガスクロマトグラフィによって測定したところ、96.9%であった。2,3−ブタンジオールの回収率は96%であった。
実施例1乃至17から、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体の存在下に、2,3−ブタンジオールを脱水することによって3−ブテン−2−オールが高い選択率で製造可能であることが示された。
実施例3及び実施例6乃至11から、酸化ジルコニウムを焼成することにより、3−ブテン−2−オールの選択率が向上する傾向にあることが示された。
比較例3乃至14から、非特許文献10に開示されている、1,4−ブタンジオールを脱水して3−ブテン−1−オールを選択的に生成させる触媒は、2,3−ブタンジオールの脱水による3−ブテン−2−オールの生成には適用できないことが示された。
実施例18から、3−ブテン−2−オールは、酸触媒の存在下に脱水することによって、定量的に1,3−ブタジエンに変換できることが示された。
実施例19から、2,3−ブタンジオールから生成した3−ブテン−2−オールは、粗精製状態であっても、定量的に1,3−ブタジエンに変換できることが示された。
実施例1乃至17で示されたとおり、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体を触媒として用いて、2,3−ブタンジオールを脱水することによって3−ブテン−2−オールを高い選択率で製造することができる。また、実施例18及び19で示されたとおり、3−ブテン−2−オールは定量的に1,3−ブタジエンに変換できる。従って、実施例1乃至19から、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体を触媒として用いて、2,3−ブタンジオールを脱水することによって3−ブテン−2−オールを製造し、得られた3−ブテン−2−オールを酸触媒の存在下で脱水することにより、2,3−ブタンジオールから1,3−ブタジエンが高い選択率で製造可能であることが示された。
比較例1から、先行技術であるセシウム酸化物−シリカ複合体を用いる方法は、3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンの選択率が低いことが示された。
比較例2から、一般的な酸触媒であるアルミナでは、2,3−ブタンジオールの脱水によってメチルエチルケトンが多く生成し、3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンの選択率は低いことが示された。
参考例8から、2,3−ブタンジオールの脱水反応における未反応の2,3−ブタンジオールは、反応液から蒸留によって、高い回収率、高い純度で回収可能であることが示された。
本発明により、2,3−ブタンジオールから放射性物質を使用すること無く、高い選択率で3−ブテン−2−オール及び1,3−ブタジエンを製造することができる。3−ブテン−2−オールは医薬品等の原料となる他、1,3−ブタジエンに容易に変換でき、1,3−ブタジエンは合成ゴム、ナイロンの原料となる基幹化学製品であるため、本発明は産業上極めて有用である。
1 原料導入口
2 キャリアーガス導入口
3 気化器
4 反応管
5 管状炉
6 触媒層
7 反応液捕集容器(冷却器)
8 ガス開放口
2 キャリアーガス導入口
3 気化器
4 反応管
5 管状炉
6 触媒層
7 反応液捕集容器(冷却器)
8 ガス開放口
Claims (5)
- 酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体及び酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物複合体から成る群より選ばれる少なくとも1種を触媒として用いて、2,3−ブタンジオールを脱水することを含む、3−ブテン−2−オールの製造方法。
- 脱水の反応温度が250℃以上400℃以下である、請求項1に記載の方法。
- 触媒として用いる酸化ジルコニウムが、500℃以上1000℃以下の範囲で焼成された酸化ジルコニウムである、請求項1又は2に記載の方法。
- 触媒として用いる酸化ジルコニウム−アルカリ金属化合物複合体又は酸化ジルコニウム−アルカリ土類金属化合物が、500℃以上1000℃以下の範囲で焼成された酸化ジルコニウムを用いて調製されたものである、請求項1又は2に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により製造された3−ブテン−2−オールを、酸触媒の存在下で脱水することを含む、1,3−ブタジエンの製造方法。
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