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JP2015028573A - 表面層用塗布液の製造方法、表面層用塗布液、該表面層用塗布液を用いた電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体の製造方法により製造された電子写真感光体、及び該電子写真感光体を備えた画像形成装置 - Google Patents

表面層用塗布液の製造方法、表面層用塗布液、該表面層用塗布液を用いた電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体の製造方法により製造された電子写真感光体、及び該電子写真感光体を備えた画像形成装置 Download PDF

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JP2015028573A
JP2015028573A JP2013158423A JP2013158423A JP2015028573A JP 2015028573 A JP2015028573 A JP 2015028573A JP 2013158423 A JP2013158423 A JP 2013158423A JP 2013158423 A JP2013158423 A JP 2013158423A JP 2015028573 A JP2015028573 A JP 2015028573A
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博 杉村
功太郎 福島
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功太郎 福島
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Abstract

【課題】 本発明は、耐摩耗性に優れ、長期にわたって電気的に安定な電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の表面層用塗布液の製造方法は、電子写真感光体に用いられる表面層用塗布液の製造方法であって、テトラフルオロエチレンモノマーと第1の有機溶剤に電離性放射線を放射し、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を得る放射線照射工程と、放射線照射工程で得た架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子と、バインダー樹脂とを、第2の有機溶剤に分散させ、懸濁液を得る乳化分散工程と、乳化分散工程で得た乳化分散系に、特定の構造を有するエナミン系化合物を添加し、表面層用塗布液を得る添加工程と、を含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、表面層用塗布液の製造方法、表面層用塗布液、該表面層用塗布液を用いた電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体の製造方法により製造された電子写真感光体、及び該電子写真感光体を備えた画像形成装置に関する。
画像形成装置に搭載される電子写真感光体は、導電性材料からなる導電基体上に、有機系材料からなる光電性材料を含有する感光層が形成される構成になっている。また、近年の電子写真感光体の構成は、感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに機能分離した積層型の電子写真感光体が主流となっている。さらに、複雑な電子写真感光体の構成は、画質の向上を目的として導電性基体と感光層の間に中間層を設けたり、感光層表面の機械的強度の向上を目的として感光層上に保護層を設けたりすることもある。保護層には、電荷輸送層と同様に電荷輸送物質が含まれる。
積層型の電子写真感光体の製造方法は、導電性基体上あるいは導電性基体上に形成された中間層上に、バインダー樹脂と電荷発生物質あるいは電荷輸送物質を分散させた電荷発生層用塗布液と電荷輸送物質用塗布液を順々に塗膜していく製造方法が一般的である。中間層あるいは保護層を設けた電子写真感光体の製造方法においても、バインダー樹脂と各層の成分を含む塗布液を製造し導電性基体上あるいは感光層上に塗膜してく製造方法が採用される。
一方で、電子写真感光体に求められる性能としては、搭載される画像形成装置の電子写真プロセスに応じた電気特性及び光学特性が求められるだけでなく、機械的強度が求められる。特に、電子写真感光体の表面層には、帯電、現像、転写及びクリーニングを通した電子写真プロセスにより、電気的あるいは機械的外力が繰り返し加えられるため、これらに対する機械的強度の向上が求められる。
具体的には、電子写真感光体の表面は、電子写真表面を帯電させるための帯電装置や電子写真感光体表面に付着した残留トナーを除去するクリーニングブレードなどの接触部材によって、削り取られることを余儀なくされる。そのため、電子写真感光体の表面には、接触部材との摩擦による摩耗やキズの発生に対し、耐摩耗性の向上が要求される。
電子写真感光体表面層の耐摩耗性の向上させる方法として、電荷輸送層あるいは保護層などの電子写真感光体表面にあたる表面層に摩擦係数を低減するような潤滑剤を添加することが提案されている。例えば、特許文献1には、その表面層に、潤滑材としてポリテトラフルオロエチレン系粒子などのフッ素樹脂粒子を含有させ、表面層の耐摩耗性を向上させた電子写真感光体が開示されている。
また、電子写真感光体の表面層の耐摩耗性を向上させる方法としては、潤滑材の添加の他にも、表面層に電気特性の高い電荷輸送物質を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献2には、電子写真感光体の表面層に電荷輸送物質として、エナミン骨格を有するエナミン系化合物を用いることで、表面層に含まれるバインダー樹脂の含有量を増やし、表面層の耐摩耗性を向上させた電子写真感光体が開示されている。
さらに、画像形成装置の小型化に要求される小径ドラム電子写真感光体の表面層には、フッ素樹脂粒子とエナミン系化合物の両方を含有させることで、さらなる耐久性の向上が期待される。
特開2005−181396号公報 特開2000−235272号公報
しかしながら、特許文献1記載のポリテトラフルエチレン系粒子などのフッ素樹脂粒子と特許文献2記載のエナミン系化合物は、互いの物性を理由に、電子写真感光体表面層に併用することが困難であった。
フッ素樹脂粒子には極性のないものが多く、特にポリテトラフルオロエチレン系粒子は、優れた潤滑性を有する代わりに、極性がなく、非常に大きな凝集力を有する。そのため、ポリテトラフルオロエチレン系粒子は、電子写真感光体の表面層を形成するバインダー樹脂に対する分散安定性が悪く、表面層用塗布液の中で凝集してしまうといった欠点がある。
これに対し、エナミン系化合物は、優れた電荷輸送機能を有する代わりに、熱によって分解され易いといった欠点がある。
したがって、ポリテトラフルオロエチレン系粒子とエナミン系化合物を含む表面層用塗布液を作製時には、ポリテトラフルオロエチレン系粒子の凝集とエナミン系化合物の熱分解を考慮しなければならない。
ポリテトラフルオロエチレン系粒子とエナミン系化合物を含む表面層用塗布液作製時において、ポリテトラフルオロエチレン系粒子の凝集を抑えるためには、乳化分散装置による乳化分散処理を該表面層用塗布液に施す必要がある。しかし、乳化分散装置による乳化分散処理は、該表面層塗布液に強力なせん断力を加えるため、熱の発生を避けることができない。そのため、該表面層用塗布液に含まれるエナミン系化合物は、乳化分散装置の使用により熱分解され、その電気特性を十分に活かすことができない。
上記のように、ポリテトラフルオロエチレン系粒子とエナミン系化合物を含む表面層用塗布液の作製が困難であるため、ポリテトラフルオロエチレン系粒子の潤滑性とエナミン系化合物の電荷輸送機能を活かし、耐摩耗性に優れ、長期的にわたって安定した電気特性を有する電子写真感光体の製造することができないといった課題があった。
本発明は上記課題に顧みてなされたものであり、電子写真感光体の表面層に分散性を改善したポリテトラフルオロエチレン系粒子と特定の構造式を有するエナミン系化合物を含む表面層用塗布液を製造し、耐摩耗性に優れ、長期的にわたって安定した電気特性を有する電子写真感光体の製造方法を提供する。
本発明の表面層用塗布液の製造方法は、テトラフルオロエチレンモノマーと第1の有機溶剤に電離性放射線を放射し、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を得る放射線照射工程と、放射線照射工程で得た架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子と、バインダー樹脂とを、第2の有機溶剤に分散させ、懸濁液を得る乳化分散工程と、乳化分散工程で得た乳化分散系に、下記の一般式(1)で示されるエナミン系化合物を添加し、表面層用塗布液を得る添加工程と、を含むことを特徴とする。
(式中、Ar及びArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar及びArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar及びArが共に水素原子になることはない。Ar及びArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,R及びRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
また、本発明の表面層用塗布液は、本発明の表面層用塗布液の製造方法によって、製造されたことを特徴とする。
また、本発明の電子写真感光体の製造方法は、本発明の表面層用塗布液を塗布することで表面層を形成する表面層形成工程を有する電子写真感光体の製造方法である。
また、本発明の電子写真感光体は、少なくとも表面層を有する電子写真感光体であって、表面層が架橋構造を有する架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子及び上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体である。
また、本発明の画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を備えた画像形成装置である。
本発明に係る表面層用塗布液の製造方法によって、耐摩耗性に優れ、長期にわたって電気的に安定な表面層を有する電子写真感光体を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の製造法における、表面層用塗布液の製造方法を示す概略フロー図である。 本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の概略構成図である。 本発明の一実施形態に係る本発明の電子写真感光体を備えた画像形成装置の概略構成図である。
以下、本発明に係る表面層用塗布液の製造方法、表面層用塗布液、本発明に係る表面層用塗布液を用いた電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体及び本発明に係る電子感光体を備えた画像形成装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明が具現化された一例に過ぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更され得ることは勿論である。
[表面層用塗布液の製造方法]
まず、本発明に係る表面層用塗布液の製造方法について説明する。図1は、本発明の電子写真感光体の製造方法の一実施形態における、表面層用塗布液の製造方法を示す概略フロー図である。
本発明に係る表面層用塗布液の製造方法は、テトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤に電離性放射線を放射し、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を得る放射線照射工程と、乳化分散装置により、バインダー樹脂と放射線照射工程で得た架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を第2の有機溶剤に分散させた乳化分散系を得る乳化分散工程と、乳化分散工程で得た乳化分散系に、特定の構造式を有するエナミン系化合物を添加する添加工程を含む。
以下、表面層用塗布液の製造方法における各工程の詳細について説明する。
(放射線照射工程)
放射線照射工程では、テトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤に、電離性放射線を照射する。テトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤に、電離性放射線を照射することで、テトラフルオロエチレンが重合して、ゲル状のポリテトラフルオロエチレンを含む有機溶媒分散系が得られる。この段階のポリテトラフルオロエチレンは、第1の有機溶剤によって溶媒和して膨潤した状態で分散しているゲル状態のため、結晶状態では存在せず、非晶化している。
さらに、このゲル状態のポリテトラフルオロエチレンを含む有機溶媒分散系に、繰り返し電離性放射線を照射することで、第1の有機溶剤の成分を揮発させながら、ポリテトラフルオロエチレンの架橋反応を促進させ、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を含む架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液を得る。
ここで、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液に含まれる架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子は、架橋反応が促進されたことにより、直鎖状の高分子結合だけでなく、分子が整然と配列していない分枝を有する架橋型の構造を有することが期待される。
なお、1回目の電離放射線照射後に、ゲル状のポリテトラフルオロエチレンを含む有機溶媒分散系から、ゲル状のポリテトラフルオロエチレンを回収し、回収したゲル状のポリフルオロエチレンに2回目の電離放射線を照射してもよい。
重合を行うためのテトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤への電離性放射線の照射及び架橋反応を促進するためのポリテトラフルオロエチレンを含む有機溶媒分散系への電離性放射線の照射は、照射時の酸化を防止するために酸素の不存在下、すなわち真空中もしくは不活性ガス雰囲気(窒素、アルゴン及びヘリウムなど)中において電離性放射線を照射することによって行うのが好ましい。電離性放射線としては、ガンマ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオンなどを用いることができるが、特にガンマ線が、物質を透過する能力が高く、反応容器外部からの照射が容易であるため好ましい。照射温度は室温であってもよい。好ましい照射温度は−78℃ 〜30℃ である。
第1の有機溶剤としては、極性が小さく、テトラフルオロエチレンモノマーを溶解する有機溶剤の中から適宜選択される。特に、アセトンは、揮発性が高いため、その分離作業が容易であり、分離したアセトンは、捕集して繰り返し使用することができるため、好ましい。
また、得られた架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液に含まれる架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の粒子径及び物性は、テトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤におけるテトラフルオロエチレンモノマーの濃度及び電離放射線の照射量により規定される。すなわち、第1の有機溶剤に含まれるテトラフルオロエチレンモノマー濃度を1wt% から10wt%まで変化させることにより、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の粒子径は、約0.15μmから0.5μmまで変化する。また、例えば、照射ガンマ線量を1kGyから150kGyまで変化させることにより、表面層塗布液中での架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散安定性は変化する。照射ガンマ線量が1kGy未満では、表面層塗布液中での架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の十分な分散安定性が得られない。また、照射ガンマ線量が、150kGyを超える場合は、高照射による架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の構造変体により、得られる電子写真感光体の電気特性の悪化を招く結果となる。したがって、好ましい照射ガンマ線量は、1kGyから150kGyが適当な照射量となる。
(乳化分散工程)
次に、乳化分散装置により、バインダー樹脂と放射線照射工程で得られた架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液を第2の有機溶剤に分散させた乳化分散系を得る。
放射線照射工程で得られた架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン系粒子は架橋構造を有する。そのため、このポリテトラフルオロエチレン系粒子は、極性のない直鎖状のポリテトラフルオロエチレンとは異なり、極性を有する。したがって、架橋ポリテトラフルオロエチレンは、従来の直鎖状のポリテトラフルオロエチレンに比べ、分散性が改良され、乳化分散装置を用いることで、バインダー樹脂中に均一に分散させることが可能になる。
ここで、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液の代わりに、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液を乾燥させることで、含まれる有機溶剤の成分を揮発させて得る粉末の架橋ポリテトラフルオロエチレン粒子を用いてもよい。
乳化分散工程において用いられる乳化分散装置は、高圧による強いせん断力を加えることができるメディアレスタイプの乳化分散装置を用いることが好ましい。メディアレルタイプの乳化分散装置によって、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子が均一に分散した表面層用塗布液を得ることができる。
具体的な乳化分散装置としては、マイクロフルイダイザー(パウレック社製)、ホモミキサー(プライミクス社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)、ナノヴェイタ(吉田機械興業社製)などがあげられる。
また、バインダー樹脂には、透明性や耐刷性に優れることの理由から、当該分野では周知のポリカーボネート系を主成分とするポリカーボネート樹脂が好適に選択される。さらに、バインダー樹脂には、ポリカーボネート樹脂の他に、第2成分として、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂及びこれらを構成する繰り返し単位のうち2つを含む共重合体、並びにポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びフェノール樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物を使用してもよい。
なお、上記の主成分とは、ポリカーボネート樹脂の重量%が、バインダー樹脂中で最も高い割合を占めることを意味し、より好ましくは50〜90重量%の範囲を占めることを意味する。
また、上記の第2成分としての樹脂は、バインダー樹脂中10〜50重量%の範囲で用いられ得る。
また、第2の有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、並びにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
また、第2の有機溶剤には、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
(添加工程)
添加工程では、乳化分散工程で得られた乳化分散系に、電荷輸送物質として、下記一般式(1)で示されるエナミン系化合物を添加しながら攪拌し、表面層用塗布液とする。
上記一般式(1)において、Ar及びArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Ar及びArの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル及びビフェニリルなどのアリール基、並びにフリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル及びN−メチルインドリルなどの複素環基を挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Arの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニル及びp−フェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル及びN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル及び1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、並びにイソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル及びシクロペンチルなどのアルキル基を挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、Ar及びArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar及びArが共に水素原子になることはない。Ar及びArの具体例としては、水素原子以外では、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニル、p−(フェニルチオ)フェニル及びp−スチリルフェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル及びN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル及び1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、並びにメチル、エチル、トリフルオロメチル、フルオロメチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル及び2−チエニルメチルなどのアルキル基を挙げることができる。
Ar及びArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。ArとArとを結合する原子の具体例としては、酸素原子及び硫黄原子などを挙げることができる。ArとArとを結合する原子団の具体例としては、アルキル基を有する窒素原子などの2価の原子団、並びにメチレン、エチレン及びメチルメチレンなどのアルキレン基、ビニレン及びプロペニレンなどの不飽和アルキレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH2−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基、チオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含む不飽和アルキレン基などの2価基などを挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。aの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、フルオロメチル及び1−メトキシエチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及びジイソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、メトキシフェニル及びナフチルなどのアリール基、並びにフッ素原子及び塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Rの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びトリフルオロメチルなどのアルキル基、並びにフッ素原子及び塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、R、R及びRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。R、R及びRの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル及び2−チエニルメチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、メトキシフェニル及びナフチルなどのアリール基、フリル、チエニル及びチアゾリルなどの複素環基、並びにベンジル及びp−メトキシベンジルなどのアラルキル基を挙げることができる。
また、上記一般式(1)において、nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、上記一般式(1)において、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。
上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、下記一般式(2)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(3)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(4)で示されるエナミン中間体を製造する。
上記一般式(2)中、Ar、Ar及びRは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。
上記一般式(3)中、Ar,a及びmは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。
上記一般式(4)中、Ar,Ar,Ar,R,a及びmは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。
この脱水縮合反応は、例えば、以下のように行う。上記一般式(2)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、これと略等モル量の上記一般式(3)で示される2級アミン化合物とを、芳香族系溶剤、アルコール類またはエーテル類などの溶剤に溶解させ、溶液を調製する。用いる溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブタノール及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。調製した溶液中に、触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、加熱下で反応させる。触媒の添加量は、上記一般式(2)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、1/10〜1/1000モル当量であることが好ましく、より好ましくは1/15〜1/500モル当量であり、1/50〜1/200モル当量が最適である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶剤と共沸させ系外に取り除く。これによって、上記一般式(4)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。
次に、上記一般式(4)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化またはフリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うことによって、下記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うと、下記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うと、下記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケトン中間体を製造することができる。
上記一般式(5)中、Rは、上記一般式(1)において、nが0のときRを示し、nが1,2または3のときRを示す。Ar,Ar,Ar,R,R,R,a,m及びnは、上記一般式(1)において定義したものと同義である
ビルスマイヤー反応は、例えば、以下のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide;略称:DMF)または1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド、またはオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬1.0モル当量〜1.3モル当量に、上記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0モル当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、上記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
また、フリーデル−クラフト反応は、例えば以下のように行う。1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、塩化アルミニウムと酸塩化物とによって調製した試薬1.0モル当量〜1.3モル当量と、上記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0モル当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、上記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。
最後に、上記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体と下記一般式(6−1)または(6−2)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させるWittig−Horner反応を行うことによって、本発明の電子写真感光体の製造方法に用いる電荷輸送物質である上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物を製造することができる。このとき、下記一般式(6−1)で示されるWittig試薬を用いると、上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物のうち、nが0であるものを得ることができ、下記一般式(6−2)で示されるWittig試薬を用いると、上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物のうち、nが1、2または3であるものを得ることができる。
上記一般式(6−1)中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar及びArは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。
上記一般式(6−2)中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。nは1〜3の整数を示す。Ar,Ar,R,R及びRは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。
このWittig−Horner反応は、例えば、以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶剤中に、上記一般式(5)で示されるエナミン−カルボニル中間体1.0モル当量と、上記一般式(6−1)または(6−2)で示されるWittig試薬1.0〜1.20モル当量と、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイドまたはナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基1.0〜1.5モル当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物を高収率で製造することができる。
また、上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物は、従来のエナミン系化合物と比べ、高い電荷輸送機能を有する。そのため、上記一般式(1)で示されるエナミン系化合物は、バインダー樹脂に対し、従来のエナミン系化合物よりも少ない重量比率で加えられたとしても、得られる電子写真感光体の電気特性及び光学特性を損なうことはない。したがって、耐摩耗性の向上の観点から、上記一般式(1)のエナミン系化合物の添加量は、上記一般式(1)エナミン系化合物とバインダー樹脂の割合が重量比で10/10〜10/18の範囲が好ましい。
ここで、乳化分散系に含まれている架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子は、架橋構造による極性を有するため、その凝集力が直鎖状のポリテトラフルオロエチレンよりも小さい。そのため、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子は、乳化分散系にエナミン系化合物を分散する目的で攪拌させる際にも、その凝集が抑制され、得られる表面層用塗布液の中でも十分な分散安定性を有する。
また、添加工程では、上記一般式(1)のエナミン系化合物の他に、必要に応じて、感度の向上を図り、さらに繰返し使用による残留電位の上昇及び疲労などを抑えるために、電子受容物質及び色素などの増感剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
色素としては、例えばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
さらに、添加工程では、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。酸化防止剤または紫外線吸収剤の添加によって、各層を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高めることができる。特に電荷輸送層には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することが好ましい
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。
さらに、添加工程では、上記一般式(1)のエナミン系化合物の他に、必要に応じて、成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させるために、可塑剤またはレベリング剤などを電荷輸送層用塗布液に添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。
また、レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
以上の工程を以って、本発明に係る表面層用塗布液が製造される。この表面層用塗布液を塗布することで製造される電子写真感光体は、その表面層に均一に分散した架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子及び上記一般式(1)のエナミン系化合物を含む。そのため、本発明に係る電子写真感光体の製造方法で製造された電子写真感光体は、架橋ポリテトラフルオロエチレン粒子及び上記一般式(1)のエナミン系化合物が含まれることに起因して表面層の耐摩耗性が向上し、さらに、長期にわたって電気的に安定した電子写真感光体を得ることができる。
[電子写真感光体の製造方法]
次に、本発明に係る電子写真感光体の製造方法について説明する。本発明に係る電子写真感光体の製造方法は、本発明に係る表面層用塗布液を電荷発生層あるいは電荷輸送層の上に塗布することで表面層用形成する表面層形成工程を有する。
表面層形成工程における、表面層塗布用塗布液の塗布方法は、従来公知の塗布方法が選択され、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。
[電子写真感光体]
次に、本発明の電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体の構成の一例について説明する。
本発明に係る電子写真感光体は、導電性基体、導電性基体上に形成された感光層を有する。また、感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに機能分離した積層型感光層とが挙げられる。また、電荷発生層を積層構造としてもよく、電荷輸送層を積層構造としてもよい。また、導電性基体と感光層の密着性を向上させる目的として、導電性基体上に中間層を形成し、中間層の上に感光層を形成する構成であってもよい。また、電子写真感光体の耐久性を向上させる目的として、感光層上に保護層を形成してもよい。
本発明の電子写真感光体の表面層について、単層型感光層の場合は感光層が表面層であり、積層型感光層の電荷輸送層が最表面である場合は電荷輸送層が表面層であり、感光層上に保護層が設けられている場合は保護層が表面層である。
図2は、本発明の一実施形態に係る電子写真感光体1の概略断面図であり、図3は、図2に示す電子写真感光体1の構成の詳細を示す概略構成図である。
本実施形態に係る電子写真感光体1は、図2に示す通り、円筒状の導電性基体2の外周面上に中間層3が形成され、中間層3上に感光層4が形成される構成になっている。
さらに、電子写真感光体1は、図3に示す通り、感光層4が、電荷発生物質を含有する電荷発生層5と、その電荷発生層5の上に積層される層であって電荷輸送物質を含有する電荷輸送層6とに機能分離した積層型感光体である。また、本実施形態において、保護層は設けられておらず、表面層は電荷輸送層6である。
以下、図3に基づいて、本実施形態に係る電子写真感光体1を構成する各層について説明する。
(導電性基体)
導電性基体2は、電子写真感光体1の電極として役割を果たすとともに、導電性基体に順次積層される層、すなわち中間層3及び感光層4の支持部材としても機能する。
導電性基体2を構成する導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金及び白金などの導電性金属、アルミニウム合金、真鍮などの銅合金及び亜鉛合金などの導電性合金及び酸化錫、酸化インジウムなど導電性金属化合物を用いることができる。
また、導電性基体2を構成する導電性材料としては、ポリチオフェレン系、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系の導電性高分子を用いてもよい。さらに、導電性基体2を構成する導電性材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリオキシメチレン若しくはポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、上記導電性金属、導電性合金から選択される金属箔をラミネートしたもの、あるいは上記導電性化合物または導電性高分子を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。
導電性基体2の形状は、図2に示すような円筒状に限定されず、望まれる電子写真感光体1の形状に合わせ、シート状など、所定の形状に加工されて使用されてもよい。
また、導電性基体2の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、あるいは表面を粗面化するなどの乱反射処理を施されてもよい。
導電性基体2の表面は、上記のような処理を施されることによって、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスの場合に生じる、露光光源からのレーザ光と感光層4内部で反射されたレーザ光の干渉による画像欠陥を防ぐことができる。
(中間層)
中間層3は、上記の導電性基体2上に積層された層である。この中間層3には、各種樹脂材料からなる樹脂層あるいはアルマイト層など用いられる。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びポリアミド樹脂などの樹脂、若しくはこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、さらに、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、ニトロセルロース及びエチルセルロースなどが挙げられる。
これらの樹脂層を構成する樹脂材料の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。
好ましいアルコール可溶性樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロン及び12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、並びにN−アルコキシメチル変性ナイロン及びN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
また、中間層3は、電荷調整機能を持たせることを目的に、フィラー粒子が添加されてもよい。フィラー粒子は、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉛などの金属酸化物微粒子及び水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物粒子などが挙げられる。フィラー粒子の粒子径としては、0.01μm以上0.3μm以下程度が適当である。好ましくは、0.02μm以上0.1μm以下程度である。
中間層3は、例えば、上記の樹脂材料を適当な溶剤中に溶解または分散させて調整された中間層塗布液を導電性基体2の表面に塗布することによって形成される。中間層3にフィラー粒子を含有させる場合には、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて得られる樹脂溶液中に、カーボンナノコイルを分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体2の表面に塗布することによって中間層3を形成することができる。
中間層用塗布液の溶剤には、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられ、例えば、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール混液、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどのハロゲン系有機溶剤とアルコール類などの混合溶剤が用いられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
フィラー粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機またはペイントシェーカなどを用いる一般的な方法を使用することができる。また、微小空隙中にフィラー粒子を含む溶剤を超高圧で通過させることによって発生する非常に強いせん断力を利用したメディアレスタイプの分散装置を利用することによってより、安定な中間層用塗布液を製造することが可能となる。
中間層用塗布液の塗布方法としては、従来公知の塗布方法から選択され、従来公知の塗布方法が選択され、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。
中間層3を設けることによって、導電性基体2からの感光層4への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光層4の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。
さらに中間層3を設けることによって、導電性基体2表面の凸凹を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層4の成膜性を高めることができる。また、中間層3を設けることによって、導電性基体2から感光層4の剥離を抑え、導電性基体2と感光層4との接着性を向上させることができる。
中間層3の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。
中間層3の膜厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層3として機能しなくなり、導電性基体2の凸凹を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性基体2からの感光層4への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層4の帯電性の低下が生じる。
また、中間層3の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層3を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層3の形成が困難にするとともに、中間層3上に感光層4を均一に形成することができず、得られる電子写真感光体の感度が低下するので好ましくない。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体1では、導電性基体2と感光層4の間に中間層3を設ける構成になっているが、必ずしも設ける必要はない。ただし、導電性基体2と感光層4との間に中間層3がない場合、導電性基体2または感光層4の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥を生じることがある。
(電荷発生層)
電荷発生層5は、中間層3上に形成された層である。電荷発生層5は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。
電荷発生層5に含まれる電荷発生物質は、有機系顔料を含む有機系光導電性材料及び無機系顔料を含む無機系光導電性材料が挙げられる。
有機系顔料を含む有機系光導電性材料としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミド及びペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類及びチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料が挙げられる。
無機顔料を含む無機系光導電性材料としては、セレン及びその合金、ヒ素-セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体が挙げられる。
また、電荷発生物質は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー及びビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ及びフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルー及びメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルー及びメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と混合して用いてもよい。
電荷発生層5の形成方法としては、従来公知の形成方法から選択され、上記の電荷発生物質を導電性基体あるいは中間層3の表面に真空蒸着する方法、または電荷発生物質を適当な溶剤に中に分散させて得られる電荷発生層用塗布液を中間層3の表面に塗布する方法などが用いられる。
中でも、結着剤であるバインダー樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダー樹脂溶液中に、上記電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させて電荷発生層用塗布液を調製し、得られた電荷発生層用塗布液を中間層3の表面に塗布する方法が好適に用いられる。
電荷発生層5に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、プチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。
バインダー樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂を結着樹脂として使用することができる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
電荷発生層用塗布液の溶剤には、例えば、ジクロロメタンもしくはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンもしくはシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランもしくはジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N−ジメチルホルムアミドもしくはN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられ、1種が単独で使用されてもよく、2種以上の混合溶剤として使用してもよい。中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
電荷発生物質とバインダー樹脂とを含んで構成される電荷発生層5において、電荷発生物質の重量とバインダー樹脂の重量の重量比率は、10/100以上400/100以下であることが好ましい。
電荷発生物質の重量とバインダー樹脂の重量の重量比率が10/100未満であると、電子写真感光体1の感度が低下する。一方で、電荷発生物質の重量とバインダー樹脂の重量の重量比率が400/100を超えると、電荷発生層5の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大するので、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。
電荷発生物質は、バインダー樹脂溶液中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。
粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル及び超音波分散機などを挙げることができる。
また、電荷発生物質をバインダー樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル及びサンドミルなどを挙げることができる。分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、中間層用塗布液の塗布方法と同様に、従来公知の塗布方法が選択され、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。
電荷発生層5の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層5の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、得られる電子写真感光体1の感度が低下する。一方で、電荷発生層5の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層5内部での電荷移動が感光層4の表面電荷を消去する過程の律速段階となり、得られる電子写真感光体1の感度が低下する。
(電荷輸送層)
電荷輸送層6は、電荷発生層5上に形成された層である。ここで、本実施形態の電子写真感光体1の表面層は、この電荷輸送層6にあたる。したがって、本実施形態の電子写真感光体1の電荷輸送層6は、電荷発生層5上に、本発明に係る表面層用塗布液の製造方法によって、製造された表面層用塗布液を電荷輸送層用塗布液として塗布することで形成される。
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、中間層用塗布液及び電荷発生層用塗布液の塗布方法と同様に従来公知の塗布方法が選択され、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。
電荷輸送層6の膜厚はそれぞれ、5μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上30μm以下である。電荷輸送層6の膜厚が5μm未満であると、得られる電子写真感光体の帯電保持機能が低下する。また、電荷輸送層6の膜厚が40μmを超えると、得られる電子写真感光体1の解像度が低下する。したがって、電荷輸送層6の膜厚の好適な範囲を、5μm以上40μm以下とした。
また、電荷輸送層用塗布液には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。すなわち、成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させるために、可塑剤またはレベリング剤などを電荷輸送層用塗布液に添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。
また、レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
なお、本発明の電子写真感光体の感光層を形成する電荷発生層及び電荷輸送層には、感度の向上を図り、さらに繰返し使用による残留電位の上昇及び疲労などを抑えるために、電子受容物質及び色素などの増感剤を1種または2種以上添加してもよい。
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
色素としては、例えば、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
なお、本発明の電子写真感光体の感光層を形成する電荷発生層及び電荷輸送層には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することで、電荷発生層及び電荷輸送層を各種塗布法によって形成する際の塗布液の安定性を高めることができる。特に、電荷輸送層には、酸化防止剤を添加するのが特に好ましい。酸化防止剤を電荷輸送層への添加により、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する感光層の劣化を低減することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。
なお、必要に応じて、感光層の上に保護層を設ける場合もある。保護層を設けた場合は、保護層が本発明の電子写真感光体の表面層となり、本発明に係る表面層用塗布液を感光層の上に塗布してもよい。
また、本実施形態では、感光層が電荷発生層と電荷輸送層の2層で構成される形態について説明したが、電荷発生層及び電荷輸送層は複数層複数層で構成されていてもよい。電荷輸送層が複数の層で形成されている際には、電荷輸送層各層の電荷輸送物質の含有量及び種類が異なるように形成されてもよく、最表面にある電荷輸送層が本発明に係る表面層用塗布液を塗布することで形成されるとよい。
[画像形成装置]
次に、本発明の一実施形態として、本発明に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について説明する。
図4は、本発明の電子写真感光体を備えた画像形成装置の概略構成図を示す。
本発明の画像形成装置10は、本発明の電子写真感光体1の周囲に、電子写真感光体1の回転方向Rの回転方向に沿って順に、帯電器11、露光手段12、現像器13、転写器14、分離手段15、クリーナ16が配置されている。
本発明に係る電子写真感光体1、帯電器11、現像器13、分離手段15、クリーナ16は、ハウジング17内に収容されている。また、本発明に係る画像形成装置10は、転写紙18の搬送方向Pに、定着器19を備えている
帯電器11は、例えば、チャージャー帯電器であり、外部電源20から供給される電力によって、本発明に係る電子写真感光体1表面を均一に帯電させる。露光手段12は、半導体レーザなどによって構成される。露光手段12は、半導体レーザからのレーザビームによって、本発明に係る電子写真感光体1表面を露光して、静電潜像を形成する。現像器13は、露光手段12の露光によって形成された本発明に係る電子写真感光体1表面の静電潜像を現像するために、トナー(現像剤)を供給する。そのため、現像器13は、ケーシング21内に現像ローラ22を備え、現像ローラ22によって、ケーシング21内で撹拌されたトナーを本発明に係る電子写真感光体1表面に供給する。現像器13に用いられるトナーは、一成分系であってもよく、キャリアを含む二成分系であってもよい。
転写器14は、本発明に係る電子写真感光体1に、転写紙18を介して接触するように設けられている。転写器14は、外部電源20から電圧が供給され、本発明に係る電子写真感光体1表面上に形成されたトナー像を転写紙18上に転写する。
分離手段15は、本発明に係る電子写真感光体1表面から転写紙18を剥離するために設けられている。クリーナ16は、本発明に係る電子写真感光体1 表面に残留するトナーを回収するために設けられている。すなわち、クリーナ16は、クリーニングブレード23によって、本発明に係る電子写真感光体1表面に付着した残留トナーを掻き取り、回収用ケーシング24に回収する。
定着器19は、転写器14によって転写されたトナー像を有する転写紙18 を、加熱ローラ25と加圧ローラ26との間に搬送し、トナー像を溶融して、転写紙18上に加熱圧着させて、定着させる。
上記構成の画像形成装置10にて、電子写真プロセスは、以下のように行われる。すなわち、画像形成装置10に対して、所定の画像データに基づく画像形成が要求されると、帯電器11が本発明に係る電子写真感光体1表面を所定の電位に均一に帯電させる。次いで、上記画像データに基づいて、露光手段12から出射されたレーザビームが本発明に係る電子写真感光体1表面を露光することによって、本発明に係る電子写真感光体1表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。静電潜像は、本発明に係る電子写真感光体1の回転方向Rに対して、露光手段12よりも下流側に設けられた現像器13によって順次顕像化され、本発明に係る電子写真感光体1表面にはトナー像が形成される。
本発明に係る電子写真感光体1表面の露光と同期して、転写紙18が、図4 中、矢印P方向から、本発明に係る電子写真感光体1と転写器14との間に搬送される。これにより、本発明に係る電子写真感光体1の回転及び転写紙18の搬送とともに、本発明に係る電子写真感光体1表面に形成されたトナー像が、転写紙18上に順次転写される。続いて、トナー像が転写された転写紙18は、定着器19に搬送され、トナー像が転写紙18上に定着された後、画像形成装置10の外部に排出される。
一方、トナー像を転写した後に、本発明に係る電子写真感光体1 表面に残留するトナーは、本発明の電子写真感光体1の回転に伴って、クリーニングブレード23がトナーを掻き取ることによって除去される。その後、さらに本発明に係る電子写真感光体1を回転させることにより、上記した電子写真プロセスが繰り返され、転写紙18上への画像形成が行われる。
画像形成装置10は、本発明に係る電子写真感光体1を備えている。そのため、低電位の現像条件下においても、露光手段12による露光後、現像器13による現像処理が開始されるまでの間に、本発明に係る電子写真感光体1の感光層に発生した電荷が速やかに本発明に係る電子写真感光体1表面に移動して、表面電荷を打ち消すことができる。従って、画像形成工程によって、良好な画像濃度の画像を転写紙18上に形成することができる。
さらに、表面層の耐摩耗性が向上した本発明に係る電子写真感光体を備えたことで、本発明に係る画像形成装置は、電子写真プロセスを通して、本発明に電子写真感光体1表面に接触するクリーニングブレード23などの接触部材による摩耗が抑制されるので、その寿命を向上することができる。
以下、実施例を用いてこの発明をさらに詳細に説明するが、この発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。
(実施例1)
[中間層の作製]
酸化チタン(商品名:タイベークTTO−D−1、石原産業株式会社製)3重量部及び市販のポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)2重量部を、メタノール25重量部に混合し、得られた混合物に対してペイントシェーカにて8時間分散処理を行って、中間層用塗布液3kgを作成した。そして、浸漬塗布法にて中間層用塗布液を導電性支持体に塗布した。具体的には、得られた中間層形成用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製のドラム状支持体を中間層用塗布液に浸漬した後引き上げ、膜厚1μmの中間層を形成した。
[電荷発生層の作製]
電荷発生物質として、CuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が27.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニンを電荷発生物質とし、ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−2、積水化学工業株式会社製)をバインダー樹脂とする。そして、電荷発生物質1重量部とバインダー樹脂1重量部とをメチルエチルケトン98重量部に混合し、得られた混合物をペイントシェーカにて8時間分散処理して、電荷発生層用塗布液3kgを作成した。そして、中間層の作製の場合と同様、浸漬塗布法にて電荷発生層用塗布液を中間層の表面に塗布した。すなわち、得られた電荷発生層用塗布液を塗布槽に満たし、中間層が形成されたドラム状支持体を電荷発生層用塗布液に浸漬した後引き上げ、自然乾燥して膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
[表面層用塗布液の作製]
30mlのガラスアンプルにアセトン5mlとテトラフルオロエチレンモノマー0.2ml(液体窒素によってガラスアンプル内で一度固化させ、溶解したときの液体の体積で計量)を充填して、テトラフルオロエチレンモノマー濃度が4体積%の混合溶液を作成した。なお、このテトラフルオロエチレンモノマー濃度は、アセトンの体積に対するテトラフルオロエチレンモノマーの体積の百分率(体積パーセント濃度)であり、テトラフルオロエチレンモノマーの体積をアセトンの体積で割って100を乗じた値である。
ドライアイスとメタノールとの混合物に上記ガラスアンプルを浸漬することによって、テトラフルオロエチレンモノマーとアセトンの混合溶液の温度を−78℃に調節し、この混合溶液にコバルト60からのガンマ線を真空中で60kGy照射した後、混合溶液温度を室温に戻した。さらに、混合溶液温度を−78℃にしてガンマ線を照射して混合溶液温度を室温に戻す操作を繰り返した後、アセトンを濃縮することにより、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子が20重量%である架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液(架橋PTFE系粒子分散液)を得た。得られた架橋ポリフルオロエチレン系粒子分散液に含まれる架橋ポリフルオロエチレン系粒子の粒子径は0.3μmであった。
そして、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂、商品名:TS2050:帝人化成社製)180重量部と、架橋ポリフルオロエチレン系粒子分散液156重量部とを、テトラヒドロフラン665重量部に混合し、乳化分散装置(マイクロフィルダイザーM−110P:パウレック社製)を用いて、乳化分散処理を施し、固形分21重量%の乳化分散系を得た。この乳化分散処理は、乳化分散装置の設定圧力が100MPaの条件で5pass操作を行うよう設定した。
その後、乳化分散処理を施した乳化分散系に、電荷輸送物質として下記一般式(7)を有するエナミン系化合物100重量部を添加し、撹拌して表面層用塗布液3kgを作成した。
[電荷輸送層の作製]
表面層用塗布液を塗工槽に満たし、電荷発生層及び中間層が形成されたドラム状支持体を表面層用塗布液に浸漬した後引き上げ、温度130℃の条件で1時間乾燥して25μmの電荷輸送層を形成して実施例1の電子写真感光体を作製した。
(実施例2)
実施例1と同様に、中間層及び電荷発生層を作製した。その後、実施例1で作製した架橋ポリフルオロエチレン系粒子分散液を真空乾燥し、乾燥したポリフルオロエチレン系粒子(架橋PTFE系粒子)の粉末を得た。
その後、実施例1における表面層用塗布液の作成時おいてに、テトラヒドロフラン790重量部に、架橋ポリフルオロエチレン系粒子分散液158重量部に代えて、乾燥した架橋ポリフルオロエチレン系粒子31重量部を用いた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を作製した。
(実施例3)
実施例1の架橋ポリフルオロエチレン系粒子分散液の作製時において、30mlのガラスアンプルにアセトン10mlとテトラフルオロエチレン0.1mlを充填した点以外は、実施例1と同様にして実施形態3の電子写真感光体を作製した。なお、実施例3の架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液の架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の粒子径は0.15μmであった。
(実施例4)
実施例1の表面層用塗布液作製時において、上記一般式(7)を有するエナミン系化合物100重量部の代わりに、電荷輸送物質として下記一般式(8)を有するエナミン系化合物100重量部を添加した点以外は、すべて実施例1と同様にして、実施例4の電子写真感光体を作製した。
(実施例5)
実施例1の表面層用塗布液作製時において、上記一般式(7)を有するエナミン系化合物100重量部の代わりに、電荷輸送物質として下記一般式(9)を有するエナミン系化合物100重量部を添加した点以外は、実施例1と同様にして、実施例5の電子写真感光体を作製した。
(実施例6)
実施例1の表面層用塗布液作製時において、テトラヒドロフラン821重量部に、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液を混合しなかった点以外は、実施例1と同様にして、膜厚20μmの電荷輸送層を有する電子写真感光体を作製した。
次に、実施例1で作製した電荷輸送層用塗布液を、上記の電子写真感光体の電荷輸送層の上にスプレー塗布し、130℃の温度条件で1時間乾燥して、膜厚5μmの保護層を形成し、実施例6の電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
実施例2の表面層用塗布液作製時において、テトラヒドロフラン790重量部に、電荷輸送物質として上記一般式(7)を有するエナミン系化合物100重量部を混合し、乳化分散処理を施した乳化分散系に電荷輸送物質を加えなかった点以外は、実施例2と同様にして比較例1の電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
実施例2の電荷輸送層用塗布液の作製時において、テトラヒドロフラン790重量部に、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子31重量部に代えて、市販のポリテトラフルオロエチレン系粒子(市販PTFE系粒子、商品名:ルブロンL2、ダイキン工業社製、粒子径:0.3μm)30重量部と分散剤としてフッ素原子含有樹脂(商品名:GF−400、東亞合成社製)1重量部を混合した点以外は、実施例2と同様にして比較例2の電子写真感光体を作製した。
(比較例3)
実施例2の表面層用塗布液の作製時において、テトラヒドロフラン790重量部に、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子31重量部に代えて、市販のポリテトラフルオロエチレン系粒子(市販PTFE系粒子、商品名:ルブロンL2、ダイキン工業社製、粒子径:0.3μm)30重量部、分散剤としてフッ素原子含有樹脂(商品名:GF−400、東亞合成社製)1重量部及び上記一般式(7)を有するエナミン系化合物100重量部を混合し、乳化分散処理を施した乳化分散系に、電荷輸送物資を添加しかった点以外は、実施例2と同様にして比較例3の電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
実施例2の表面層用塗布液の作成時において、電荷輸送物質として下記一般式(10)を有する市販のアミン系化合物(商品名:D3236、東京化成工業社製)100重量部を混合し、乳化処理を施した乳化分散系に電荷輸送物質を添加しなかった点以外すべて実施例2と同様に行い、比較例4の電子写真感光体を作製した。
(比較例5)
実施例2の表面層用塗布液の作製時において、テトラヒドロフラン790重量部に、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子31重量部に代えて、市販のポリテトラフルオロエチレン系粒子(市販PTFE系粒子、商品名:ルブロンL2、ダイキン工業社製、粒子径:0.3μm)30重量部、分散剤としてフッ素原子含有樹脂(商品名:GF−400、東亞合成社製)1重量部を混合し、乳化分散系処理を施した乳化分散系に、上記一般式(7)のエナミン系化合物に代えて、上記一般式(10)を有するアミン系化合物(商品名:D3236、東京化成工業社製)100重量部を添加した点以外すべて実施例2と同様に行い、比較例5の電子写真用感光体を作製した。
上記の実施例1〜6の電子写真感光体の電荷輸送層の各成分及び膜厚と保護層の膜厚について表1にまとめた。また、以上に述べた実施例2及び比較例1〜5の電子写真感光体の電荷輸送層の各成分及び膜厚について表2にまとめた。
(実施例及び比較例の評価)
<分散安定性>
実施例1〜6及び比較例1〜5について、作製した表面層用塗布液中の架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子及び市販のポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散状態の安定性(分散安定性)を、レーザ回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT−3000II、日機装社製)を用いて評価した。
具体的には、実施例1〜6及び比較例1〜5の各表面層用塗布液を直ちにサンプル管(50ml)中に40ml移しとり、スターラー攪拌(100rpm、15h)実施後の凝集粒子の粒子径(メジアン径;d50)を測定した。
そして、ここで測定した粒子径(攪拌後粒子径)を用いて分散安定性の評価を以下のように行った。
◎:良好である(攪拌後粒子径が1.0μm未満)。
○:実使用上問題なしである(攪拌後粒子径が1.0以上3.0μm未満)。
□:実使用可能なレベルである(攪拌後粒子径が3.0以上6.0μm未満)。
×:実使用不可である(攪拌後粒子径が6.0μm以上)。
<電気特性>
実施例1〜6及び比較例1〜5の電子写真感光体に対する電気特性の評価を以下に説明する。
デジタル複写機(商品名:MX−2600、シャープ社製)を改造した試験用複写機に実施例1〜6及び比較例1〜5の電子写真感光体を搭載した。そして、電子写真プロセスにおける各電子写真感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(TREK JAPAN社製、mode1344)を設けた。なお、各電子写真感光体を露光するための光源として波長780mmのレーザ光源を用いた。
そして、上記の試験用複写機を用いて、常温/常湿(N/N)の環境下で、実施例1〜6及び比較例1〜5の電子写真感光体における初期(印刷前)表面電位VL及び10万枚連続印刷後の表面電位VLを測定した。なお、本実施例においてN/N環境は、25℃且つ50%RH(相対湿度)を指す。また、表面電位VLは、露光時における黒地部分の電子写真感光体の表面電位を指す(現像部での電子写真感光体の表面電位を指す)。
次に、実施例1〜6及び比較例1〜5の各電子写真感光体ついて、初期表面電位と10万枚連続印刷後の電子写真感光体の表面電位の差ΔVLを算出し、以下の基準で電気特性の評価を行った。
◎:良好である(ΔVL=0以上であり10未満)。
○:実使用上問題なしである(ΔVL=10以上であり20未満)。
□:実使用可能なレベルである(ΔVL=20以上であり35未満)。
×:実使用不可である(ΔVL=35以上)。
<画質>
次に、実施例1〜6及び比較例1〜5について、画質評価を行った。具体的に説明すると、電気特性の評価に用いた試験用複写機に実施例1〜6及び比較例1〜5の電子写真感光体を搭載して、N/N環境で無地画像を10枚印刷し、印刷紙(A3版)1枚当たりに形成される周期性と各電子写真感光体の回転周期と一致しており且つ目視可能な黒ポチ(直径0.4mm以上)の個数を計測し、画質評価を下記の基準で行った。
◎:良好である(全ての印刷紙において黒ポチが3個/枚以下)。
○:実用上問題無である(全ての印刷紙において黒ポチが4〜7個/枚)。
□:実用可能なレベルである(全ての印刷紙において黒ポチが8〜10個/枚)。
×:実用上問題ありである(黒ポチが11個/枚以上の印刷紙が1枚以上あり)。
<耐摩耗性>
実施例1〜6及び比較例1〜5の電子写真感光体について、10万枚実写による膜厚の変化量(10万枚の実写前の電子写真感光体膜厚と10万枚の実写後の電子写真感光体膜厚との差)を、渦電流式膜厚計(フィッシャー社製)を用いて測定し、測定値を、感光体10万回転当たりの膜べり量に換算した。つまり、前記の変化量をそのまま膜べり量とし、耐摩耗性を評価する指標とした。この膜べり量に基づいて耐摩耗性評価を以下のように行った。
◎:改良レベル非常に良好(10万回転当たりの膜べり量が0.5μm/未満)。
○:改良レベル良好(10万回転当たりの膜べり量が0.5以上1.0μm未満)。
□:改良がみられる(10万回当たりの膜べり量が1.0以上2.0μm未満)。
×:改良がみられない(10万回当たりの膜べり量が2.0μm以上)。
以上に述べた分散安定性評価、電気特性評価、画質評価、耐摩耗性評価の結果を表3に示す。
比較例1の電子写真感光体は、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散安定性は維持できているが、電気特性及び画質共に悪化している。比較例1では、電荷輸送物質として、乳化分散処理前に上記一般式(7)のエナミン系化合物を加えていたため、乳化分散処理を施した際に発生した熱により上記一般式(7)のエナミン系化合物が分解している可能性が高い。
比較例2の電子写真感光体は、実施例1〜6の電子写真感光体に比べて、分散安定性及び電気特性が悪化している。比較例2の電子写真感光体は、従来からある市販のポリテトラフルオロエチレン粒子を用いたものであり、分散状態を維持するために分散剤を加えている。そのため、比較例2の電子写真感光体では、分散剤を使用したことに起因して電気特性が劣化したと考えられる。
比較例3の電子写真感光体は、実施例1〜6の電子写真感光体に比べて、分散安定性、電気特性及び画質が劣化している。比較例3では、比較例1と同様に、乳化分散処理前に上記一般式(7)のエナミン系化合物を加えていたため、乳化分散処理において発生した熱によって、上記一般式(7)のエナミン系化合物が分解し、十分に電荷輸送物質として機能しなかったと考えられる。
比較例4の電子写真感光体は、実施例1〜6の電子写真感光体と比べて、分散安定性及び電気特性が劣化し、やや耐摩耗性に劣る結果となった。比較例4では、乳化分散処理前に上記一般式(10)の市販のアミン系化合物を加えているため、本発明のエナミン系化合物とは異なり、耐熱性を有するので乳化分散処理において、電荷輸送物質の熱分解は抑制され電気特性の劣化は防ぐことができたと思われる。
比較例5の電子写真感光体は、実施例1〜6の電子写真感光体に比べて、分散安定性、電気特性及び画質が共に悪化した。比較例5では、実施例1〜6及び比較例1と異なり、市販のポリテトラフルオロエチレン系粒子を用いていたものであり、乳化分散後に上記一般式(10)の市販のアミン系化合物を添加したため、上記一般式(10)の市販のアミン系化合物が溶解しきれず、この不溶分の影響で画像に黒点が発生したものと考えられる。また、アミン系化合物溶解しきれなかったために、比較例5の電子写真感光体は十分な電気特性が得られない結果になったと考えられる。
一方、実施例1〜6の電子写真感光体は、表面層に架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を含むので、いずれも良好な分散安定性、電気特性、画質及び耐摩耗性を有している。
具体的には、実施例1及び実施例3の電子写真感光体は、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を含む架橋PTFE系粒子分散液と、バインダー樹脂であるポリカーボネート系樹脂とをテトラヒドロフランに混入し、乳化分散装置で乳化分散処理をした後に、電荷輸送物質としての上記一般式(7)のエナミン系化合物を添加することにより表面用塗布液を作製している。これにより、表面用塗布液中のポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散安定性が向上し、電子写真感光体の電荷輸送層として塗布することにより、電気特性を損なうことなく、良好な耐摩耗性を得ることができた。
また、実施例2の電子写真感光体に示すように、実施例1の表面層用塗布液の作製時において、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液の代わりに、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子分散液を濃縮・乾燥させた粉末の架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を用いることも可能である。このように作製した表面層用塗布液も、ポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散安定性が向上し、電子写真感光体の電荷輸送層として塗布することにより、電気特性を損なうことなく、良好な耐摩耗性を得ることができた。
また、実施例4及び実施例5の電子写真感光体に示すように、実施例1〜3の表面層用塗布液の作製時に用いた、上記一般式(7)のエナミン系化合物の代わりに、それぞれ上記一般式(8)と上記一般式(9)のエナミン系化合物を用いることも可能である。このように作製した表面層用塗布液も、ポリテトラフルオロエチレン系粒子の分散安定性が向上し、電子写真感光体の電荷輸送層として塗布することにより、電気特性を損なうことなく、良好な耐摩耗性を得ることができた。
さらに、実施例6の電子写真感光体に示すように、ポリテトラフルオロエチレン系粒子を含まず、上記一般式(10)のエナミン系化合物のみを含む電荷輸送層の上に、実施例1で作製した表面層用塗布液をスプレー法で塗布し、保護層を形成した電子写真感光体であっても、実施例1〜5と同様に、電子写真感光体表面層の電気特性を損なうことなく、良好な耐摩耗性を得ることができた。
1 電子写真感光体
2 導電性基体
3 中間層
4 感光層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
10 画像形成装置
11 帯電器
12 露光手段
13 現像器
14 転写器
15 分離手段
16 クリーナ
17 ハウジング
18 転写紙
19 定着器
20 外部電源
21 ケーシング
22 現像ローラ
23 クリーニングブレード
24 回収用ケーシング
25 加熱ローラ
26 加圧ローラ

Claims (5)

  1. 電子写真感光体に用いられる表面層用塗布液の製造方法あって、
    テトラフルオロエチレンモノマーを含む第1の有機溶剤に、電離性放射線を放射し、架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子を得る放射線照射工程と、
    乳化分散装置を用いて、前記架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子とバインダー樹脂を第2の有機溶剤中に分散させた乳化分散系を得る乳化分散工程と、
    前記乳化分散系に、下記の一般式(1)で示されるエナミン系化合物を添加し、前記表面層用塗布液を得る添加工程と、を含むことを特徴とする表面層用塗布液の製造方法。
    (式中、Ar及びArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar及びArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar及びArが共に水素原子になることはない。Ar及びArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,R及びRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  2. 請求項1記載の表面層用塗布液の製造方法により製造された表面層用塗布液。
  3. 請求項2記載の表面層用塗布液を塗布することで表面層を形成する表面層形成工程を有する電子写真感光体の製造方法。
  4. 少なくとも表面層を有する電子写真感光体であって、
    前記表面層が架橋構造を有する架橋ポリテトラフルオロエチレン系粒子及び下記一般式(1)で示されるエナミン系化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体。
    (式中、Ar及びArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar及びArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar及びArが共に水素原子になることはない。Ar及びArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,R及びRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  5. 請求項4記載の電子写真感光体を備えた画像形成装置。
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