以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る分注装置の好適な実施形態が示されている。図1に示す分注装置は水薬分注装置である。この水薬分注装置は処方箋に従って1又は複数の水薬を投薬ボトルへ分注する装置であり、水薬装置は病院内における薬剤部や調剤薬局等に設けられるものである。もちろん、本発明が水薬分注装置以外の分注装置に適用されてもよい。
図1において、水薬分注装置10は、搬送台12上において水平方向に運動する運動体14を備えている。運動体14は、本実施形態において、投薬ボトル18及びホルダ16を有している。ホルダ16は投薬ボトル18を保持するものであり、ホルダ16内には重量センサ20が設けられている。投薬ボトル18は、処方箋にしたがって分注される1又は複数の水薬を受け入れる容器である。その上部には開口18Aを有する口部が設けられており、その口部には図示されていない蓋が取り付けられる。
搬送台12の下部には運動体14を水平方向に搬送するための搬送機構が設けられている。本実施形態においては、投薬ボトル18が水平方向に運動しており、これによって分注対象となる水薬ボトルの直下に投薬ボトル18が位置決められている。もちろん、投薬ボトル18を固定し、水薬ボトルを運動させることにより、水薬吐出状態を形成してもよい。例えば、そのような場合には回転テーブル上に複数の水薬ボトルを設置し、回転テーブルを回転させることにより、所望の水薬ボトルが選択されるように構成してもよい。
図1に示す水薬分注装置10において、回転ユニット22は、回転板24と、複数の水薬分注ユニット26,28,30とを有している。回転板24は、その水平軸回りにおいて回転運動をするプレートである。回転板24に対して複数の水薬ボトルをセットする場合には、回転板24が正立した状態とされる。一方、水薬の分注を行う場合には、回転板24が回転運動し、倒立した状態となる。すなわち図1に示されるように、複数の水薬ボトル32が倒立した状態が形成される。なお、回転ユニット22の全体を回転運動させることにより複数の水薬に対する攪拌を行うことも可能である。
本実施形態においては、回転ユニット22に対して3つの水薬分注ユニット26,28,30が設けられている。それぞれの水薬分注ユニット26,28,30は同じ構成を有しており、以下においては、水薬分注ユニット26を代表させ、その構成を説明する。
水薬分注ユニット26は、水薬ボトル32を保持する保持部材34を有している。この保持部材34及び他の構造体により水薬ボトル32が回転ユニット22に対して着脱自在に保持される。水薬ボトル32の内部には水薬が収容されており、水薬ボトル32の開口部にはキャップ32Aが取り付けられている。キャップ32Aを貫通するように、エアチューブ36及び吐出チューブ40が設けられている。エアチューブ36は、図示されていないポンプからのエアを水薬ボトル32内に送り込むものである。これによって、水薬ボトル32の内圧が高められ、水薬ボトル32内から水薬が吐出チューブ40内へ送り込まれる。ただし、水薬の吐出方式としては様々な方式を利用可能である。圧力センサ38はエアチューブ36の途中に設けられ、エアチューブ36内の圧力を監視している。エアチューブ36における水薬ボトル32内の端部には逆止弁等が設けられている。
吐出チューブ40は、それ全体として水薬ボトル32の中心軸に沿って下方に伸張をしている。図1に示す状態においてその一部分が湾曲している。具体的には、吐出チューブ40は、上方から下方にかけて設けられた、接続部分、中間部分、下端部分からなり、すなわち3つの区間により構成されている。下端部分の先端が吐出口40Aである。吐出チューブ40は、例えば透明な材料、特に柔軟性をもった材料で構成されている。後に説明するように、中間部分において変形が可能な限りにおいて、他の部分については硬質の材料をもって構成することも可能である。
吐出チューブ40における接続部分(上端部分)にはピンチバルブ42が設けられている。このピンチバルブ42は上端部分を挟み込むことにより流路を閉止するものである。ピンチバルブ42は回転ユニット22に固定配置されている。
吐出口レベル可変機構44は、本実施形態において中間部分の形態を変化させることにより、結果として、吐出口40Aの高さ(レベル)を可変する機構である。すなわち、吐出口レベル可変機構44は吐出チューブ40における部分的な形態の可変をもって吐出口40Aを上下に昇降させる機構である。吐出口レベル可変機構44は、接続部分を保持するクランプ機構46と、下端部分を保持するクランプ機構48と、を有している。また、クランプ部材48を上下方向に運動させるアクチュエータ50を有している。本実施形態において、クランプ部材46は上下に運動しない固定部材であり、クランプ部材48が上下に運動する可動部材である。クランプ部材46とクランプ部材48とによって挟まれる区間が中間部分である。すなわち、クランプ部材46によって保持されているクランプ部分は接続部分の一部であり、クランプ部材48によって保持されている部分は下端部分の一部である。
本実施形態においては、以下に説明するように、分注対象となった水薬ボトルの直下に投薬ボトル18が位置決められ、その後において、クランプ部材48を下方に引き下げることにより、中間部分がストレートな形態になり、これによって吐出口40Aの高さが引き下げられる。その状態においては、投薬ボトル18の開口18A内に吐出口40Aが挿入されることになる。この状態で水薬の吐出が行われる。仮にその過程において水薬の噴出が生じたとしても、飛び散った水薬は投薬ボトル18内に捕獲される。分注後において、クランプ部材48を上方に引き上げることにより、中間部分が再び湾曲状態となり、その状態では吐出口40Aが上方に引き上げられる。すなわち開口18Aから所定距離だけ隔てられた高さに吐出口40Aが位置決められることになる。その状態では投薬ボトル18を水平方向に運動させることが可能となる。なお水薬の分注量は重量センサ20の出力信号に基づいて検出することが可能である。この水薬分注装置10における動作が制御部100によって制御されている。制御部100は重量センサ20の出力信号を入力しており、またアクチュエータ50に対して信号を出力している。また、制御部100はピンチバルブ42に対して駆動信号を出力している。更に、圧力センサ38の出力信号が制御部100に入力されている。
図2には、水薬分注ユニット28の拡大図が示されている。既に説明したように、水薬ボトル32にはキャップ32Aが取り付けられており、そのキャップ32Aを貫通するようにエアチューブ36および吐出チューブ40が設けられている。吐出チューブ40は接続部分(上端部分)40Bと、中間部分40Cと、下端部分40Dと、を有している。下端部分40Dの下端すなわち先端が吐出口40Aである。上端部分40Bにはピンチバルブ42が設けられており、そのピンチバルブ42によって流路の開閉を行うことが可能である。
アクチュエータ50にはクランプ部材46およびクランプ部材48が取り付けられている。それらの間が中間部分40Cである。アクチュエータ50はスライド機構52を備え、そのスライド機構52によってクランプ部材48の高さが可変される。図2においては、クランプ部材48が上昇端に位置決められており、これによって中間部分40Cが水平方向に湾曲している。その湾曲する方向を何らかの構造体により規定するのが望ましいが、自由な方向に湾曲するように構成してもよい。
クランプ部材46,48は、吐出チューブ40を潰すことなくそれを確実に保持するものである。なお、クランプ部材46を省略してもよい。その場合においては、ピンチバルブ42がクランプ部材46の機能を発揮することになる。本実施形態においては、ピンチバルブ42が接続部分40B上に設けられており、すなわちピンチバルブ42が回転プレート上に固定配置されていたが、中間部分40Cよりも下方にピンチバルブ42を設けることも可能である。その場合においては、ピンチバルブ42が下端部分40Dと共に上下方向に運動することになる。そのような構成によれば中間部分40Cが変形した場合において、そこから液体が下方に押し出されようとした場合においても、ピンチバルブ42の作用により液垂れを防止することが可能となる。
図2において、40Aが上昇端位置にある吐出口を示しており、40A’が下降端にある吐出口を示している。上昇端レベルがh1で示され、下降端レベルがh3で示されている。それらの間に投薬ボトル18の開口レベルh2が存在する。すなわち、本実施形態によれば、中間部分40Cをストレートな形態にすることにより吐出口40Aの高さを下方に引き下げることが可能であり、一方、中間部分40Cを湾曲変形させることにより、吐出口40Aの高さを上方に引き上げることが可能である。そのような運動の過程において吐出口40Aが投薬ボトル18の開口の内外を運動することになる。ちなみに、例えば光学的なセンサを設け、吐出口40Aの高さをモニタリングするようにしてもよい。その場合においては、例えば符号54,56で示される2つの位置で光学的な計測を行い、両者の位置においてチューブが観測された場合に、吐出口40Aが投薬ボトル18内に進入していることを検出し、また両者の位置において吐出チューブが検出されない場合に、吐出口40Aが上昇端にあることを検出することが可能である。
図3には、吐出口40Aが投薬ボトル18内に挿入された状態が示されている。湾曲した中間部分40C’が、クランプ部材48の下方運動に伴い、ストレートな形態を有する中間部分40Cとなり、それに伴い吐出口40Aが投薬ボトル18内に差し込まれる。そのような運動において、水薬ボトルの高さを可変する必要はないし、投薬ボトル18の高さを可変する必要がない。もっとも、それらのボトルを昇降運動させる機構を付加してもよい。例えば、投薬ボトルの種類に応じてその高さを可変する機構を設けてもよい。いずれの場合においても。吐出チューブにおける部分的な形態変更によって吐出口の高さを簡易に変更することが可能である。
図4には、クランプ部材48の水平断面が示されている。ちなみに、もう一つのクランプ部材46も同様の構造を有するものである。図4において、クランプ部材48は、水平バー58,60を備え、それらの間に吐出チューブ40が挟み込まれている。具体的には、吐出チューブ40の外側にスリーブ62が設けられ、スリーブ62と共に吐出チューブ40が二つのバー58,60によって挟まれている。二つのバー58,60にわたってピン64,66が設けられている。
図5には、クランプ部材48の垂直断面が示されている。吐出チューブ40の外側にはスリーブ62が設けられ、そのスリーブ62は、水平方向に広がった上部62A、水平方向に広がった下部62B及びそれらの間の中間部62Cからなる。もっとも、クランプ部材の構造としては図4及び図5に示したものには限られず、他の構成を利用してもよい。本実施形態においてクランプ部材48は吐出口の向きを定めるものであるため、少なくとも下端部分の中心軸が昇降運動によってもぶれないようにクランプ部材48を構成するのが望ましい。クランプ部材48に代えてピンチバルブを設け、そのピンチバルブによってクランプ部材の機能を発揮させるようにしてもよい。
図6には、図1に示した水薬分注装置の動作例が示されている。S10においては、ホルダに対して投薬ボトルが手作業によりセットされる。S12においては、制御部による制御により、投薬ボトルが分注対象となる水薬ボトルの直下に搬送される。S14においては、下側のクランプ部材を引き下げることにより、ノズルすなわち吐出チューブの先端を構成する吐出口が下方に引き下げられる。これにより吐出口が投薬ボトルの開口内に差し込まれる。S16においては、差し込まれた状態において、ピンチバルブが開となり、水薬の吐出が実施される。重量センサの出力信号に基づいて所定量の水薬の吐出が完了した時点で、ピンチバルブにより流路が閉止される。S18において下側のクランプ部材を上昇させることにより中間部分の変形が生じ、それと共に吐出口が上方に引き上げられる。その状態では、吐出口は投薬ボトルの開口レベルより上方に位置決められる。S20では、次の水薬に対する分注を行うか否かが判断され、分注を行う場合には上述したS12以降の各工程が繰り返し実行される。S22においては投薬ボトルが所定の排出口に搬送され、その搬送後において手作業により投薬ボトルがホルダから引き出される。
図7には、吐出口を昇降させるための他の実施形態が示されている。吐出チューブ40は二つのクランプ部材46,48によって保持されており、その内でクランプ部材48が可動クランプ部材である。クランプ部材48を符号48’で示すように上方に引き上げた場合、中間部分40Eが符号40E’で示すように水平方向に均等に膨らみ、それによって中間部分40Eが変形する。すなわち第1実施形態においては特定の方向に中間部分が湾曲していたが、図7に示す第2実施形態においては中間部分が水平方向に膨らむように変形しており、これによって中間部分の上下方向の区間長が変化している。図7に示す第2実施形態によれば、中間部分40E内の内容積も膨らむことになるので、下端部分において存在していた水薬を上側に吸い上げる作用を得ることが可能である。これにより液垂れを効果的に防止することができる。
図8には第3実施形態が示されている。(A)には吐出口を上方に引き上げた状態が示されており、(B)には吐出口が下方に引き下げられた状態が示されている。吐出チューブは固定部分68と可動部分70とにより構成され、固定部分68が第1クランプ部材によって保持され、可動部分70が第2クランプ部材によって保持される。第2クランプ部材を上下させることにより、可動部分70を上下に運動させることが可能である。固定部分68内に可動部分70の一部分が差し込まれており、両者間における隙間がシール部材72によって封止されている。符号70Aは挿入部分を示している。(A)に示す挿入量が大の状態から、(B)に示す挿入量が小の状態となった場合、符号74で示されるように、吐出口が下方に引き下げられることになる。このような二重管構造によっても吐出口の高さの可変を行うことができ、その場合においても接続部分の高さを維持することが可能である。ちなみに、図8に示す構成では、固定部分68の内部に可動部分70が差しこまれていたが、両者の関係を逆転させてもよい。
中間部分の上下方向の区間長を可変する方式として他の方式を挙げることもできる。例えば蛇腹状の構造を利用して区間長を変更するようにしてもよい。また中間部分の全部又は一部に上下方向に伸縮可能な構造を設け、これによって区間長を変更できるように構成してもよい。上記実施形態においては水薬分注装置が構成されていたが、一般の分注装置に上記構成を適用することももちろん可能である。本実施形態においては、吐出口が直下を向くように設けられていたが、吐出口が斜め下方に向くように設けられてもよい。また首振り自在な構成を採用することも可能である。