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JP2014509603A - システイン置換を含むヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体 - Google Patents

システイン置換を含むヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体 Download PDF

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Abstract

本発明は、置換システインを含有するヒトインスリン類似体、PEG化された置換システインを含有するヒトインスリン誘導体、ならびにこのような類似体および誘導体を作製する方法に関する。本発明の化合物は、糖尿病の治療に有用であり得る。

Description

本発明は、新規のヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体に関する。本発明はまた、このような類似体および誘導体を作製する方法にも関する。
参照による配列表の組込み
「配列表」と題する配列表は6,317バイトであり、2011年3月1日に作成されたものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
糖尿病とは、グルコースを利用する能力が部分的にまたは完全に失われる代謝性障害である。現在、1型糖尿病および2型糖尿病のいずれの糖尿病の治療も、ますますインスリン療法に依拠している。
最近の10年間において、多数のヒトインスリン類似体が、特定の作用プロファイル、すなわち、速効作用または持続作用のために設計されている。例えば、インスリンDetemir(登録商標)は、インスリンの基礎レベルを維持するための、長時間作用型のヒトインスリン類似体である。B29位のリシンに共有結合により結合させた脂肪酸(ミリスチン酸)の存在が、インスリンの作用を遅延させる。
市販されるインスリン類似体の近年における改善にもかかわらず、患者の多様な特定の必要を満たすためには、インスリン類似体の既存のパネルを拡張および多様化して、有効なインスリン活性を維持しながら、安定性プロファイルおよび作用プロファイルなど、多様な薬理学的特性を呈示することが常に必要である。
リシン残基は、化合物のインスリン分子に対する結合部位として用いられてきた。しかし、リシンをアンカリング点として用いてインスリン誘導体を調製する方法は限界を提示し、操作が容易ではない。実際、インスリン分子はまた、同様な条件下でリシンのε-アミノ基と反応する2つのN末端α-アミノ基も含むので、リシンは、インスリン分子への部位特異的結合を可能としない。さらなる化学基との反応は、多様な部位においてインスリンに結合したこのような化学基のうちの1または複数の不均質な混合物を結果としてもたらし得る。加えて、リシン残基の下流で切断するA.リティクス(A.lyticus)プロテアーゼ(ALP)をインスリンのプロセシングにおいて用いる場合、インスリン分子において内部リシンを有することは不可能である。したがって、化学基の結合部位は、A鎖および/またはB鎖のC末端のリシン残基に制約される。
システインをアンカリング点として用いることが示唆されている。Kuoらは、肺内投与を意図する治療用ペプチドに関する特許文献WO2010/033220において、インスリンのB鎖の最初の4つのアミノ酸のうちのいずれか1つを、システイン残基で置換し、次いで、このようなシステイン残基を、チオール基との反応に特異的な活性化ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、N-マレイミジルポリマーと反応させることを示唆している。しかし、システイン残基のインスリンへの付加は一般に、分子を不安定化させることが知られており、Kuoらは、このようなペプチドを調製する方法を開示しておらず、このような化合物の実現可能性および有効性を実証していない。
WO2010/033220 EP0214826 US6500645 米国特許第4,343,898号 米国特許第4,916,212号
したがって、新たなインスリン類似体およびインスリン誘導体、インスリン分子への新たなアンカリング部位、およびそれらの調製方法の改善が必要とされている。
本発明は、新たなインスリン類似体および新たなインスリン誘導体に関する。
本発明は、A10C位、A14C位、A15C位、A18C位、A19C位、A21C位、B25C位、およびB27C位のうちの1つにおけるインスリン分子へのさらなるシステインの導入により、化学選択的反応を可能とする新たな化学アンカリング点がもたらされるという認識に基づく。
驚くべきことに、本発明のインスリン類似体は、宿主細胞内で良好な発現率を示し、さらなるシステインは、インスリンにおける既存のジスルフィド結合に対する干渉を引き起こさず、さらなるシステインに結合した化合物を保有するインスリン誘導体は、インスリン受容体に対する高度な結合親和性および有効な生物学的活性を提示することが見出されている。
驚くべきことに、本発明者らは、いくつかのシステイン置換された類似体を調製することができ、これらのシステイン置換された類似体のいくつかを、ポリマーの結合に効率的にまたは容易に用い得ることを見出したために、これは、実際に重要である。本発明者らは、常法に従う実験をはるかに超える複数の困難に直面し、これを克服した。
一態様では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンを含むヒトインスリン類似体に関する。
別の態様では、本発明は、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体を含むヒトインスリン誘導体であって、置換システインが、メチルマレイミドポリエチレングリコール分子(MM(PEG))またはN-エチルマレイミド分子(NEM)に共有結合により結合しているヒトインスリン誘導体に関する。
一態様では、本発明の新規のインスリン化合物が、現在使用可能なインスリン化合物に対する有効な代替物を提供する。加えて、または代替的に、本発明の新規のインスリン化合物は、容易に調製することもでき、効率的に調製することもできる。加えて、または代替的に、本発明の新規のインスリン化合物は、インスリン受容体に対する有効な結合親和性を提示する。加えて、または代替的に、本発明の新規のインスリン化合物は、糖尿病患者の治療に用いることができる。加えて、または代替的に、本発明の新規のインスリン化合物は、ヒトインスリンと比較して、安定性の増強および/またはin vivoにおける半減期の延長を提示する。加えて、または代替的に、本発明の新規のインスリン化合物は、皮下経路を介して投与することができる。
別の態様では、本発明は、医薬を調製するための出発材料または中間体化合物としての、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体の使用に関する。加えて、または代替的に、本発明は、インスリン化合物もしくはヒトインスリン誘導体を調製するための、またはインスリン化合物もしくはヒトインスリン誘導体を調製する方法における、出発材料もしくは中間体化合物としての、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体の使用に関する。本発明のインスリン類似体はまた、さらなる化合物を結合させ、新規のインスリン誘導体を生成させるための部位特異的結合反応ももたらす。
別の態様では、本発明は、このようなヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体を調製する方法に関する。一態様では、本発明の方法は、先行技術の方法と比較して簡略化されており、かつ/または操作が容易である。加えて、または代替的に、それらは化学選択性である。加えて、または代替的に、それらはインスリン分子の保護ステップを必要としない。
別の態様では、本発明は、医薬としてのそれらの使用のための、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体に関する。加えて、または代替的に、本発明は、糖尿病の治療におけるそれらの使用のための、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体およびヒトインスリン誘導体に関する。
別の態様では、本発明は、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体またはその前駆体をコードする核酸配列に関する。
別の態様では、本発明は、本明細書で定義される核酸配列を含む発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
[図1a]置換Cysを保有する多様なインスリン類似体の発現収率を示す図である。図1aは、A鎖に置換Cysを伴う類似体に関する図である。 [図1b]置換Cysを保有する多様なインスリン類似体の発現収率を示す図である。図1bは、B鎖に置換Cysを伴う類似体に関する図である。 多様なインスリン類似体について、発現する類似体の前駆体の総量に対する修飾前駆体の比率を示す図である。 MM(PEG)12によるA21CdesB30のアルキル化の前(図3a)および後(図3b)における、A21CdesB30類似体および誘導体の集団を示す図である。 インスリン類似体またはヒトインスリンの静脈内注射後のラットにおける血中グルコースレベルの低下を示す図である。
本発明では、新規のインスリン類似体およびインスリン誘導体が提示される。新規の類似体は、後続の化学選択的反応を勘案した、新たな化学アンカリング点を提供する。本発明の新規のインスリン類似体およびインスリン誘導体は、糖尿病の治療に用いることができる。
一態様では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンに関する。
本明細書で用いられる「ヒトインスリン」という用語は、その配列、構造、および特性がよく知られているヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンは、A鎖およびB鎖と称する2つのポリペプチド鎖を有する。A鎖は、21アミノ酸のペプチドであり、B鎖は、30アミノ酸のペプチドであり、2つの鎖は、以下のジスルフィド架橋により連結されている:A鎖の7位におけるシステインとB鎖の7位におけるシステインとの間の第1の架橋、およびA鎖の20位におけるシステインとB鎖の19位におけるシステインとの間の第2の架橋。第3の架橋は、A鎖の6位におけるシステインとA鎖の11位におけるシステインとの間に存在する。
本明細書で用いられる「desB30ヒトインスリン」という用語は、B30アミノ酸を欠失させたヒトインスリンの類似体を意味する。desB30ヒトインスリンの配列は、よく知られている。また、ヒトインスリンをコードする核酸配列およびdesB30ヒトインスリンをコードする核酸配列もよく知られている。
インスリン分子における修飾は、鎖(A鎖またはB鎖)、位置、および天然のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基の1文字コードまたは3文字コードに言及して示す。本明細書における「A1」、「A2」、および「A3」などの用語は、ヒトインスリンのN末端から数えて、インスリンA鎖の、それぞれ、1位、2位、および3位などにおけるアミノ酸を示す。同様に、B1、B2、およびB3などの用語は、ヒトインスリンのN末端から数えて、インスリンB鎖の、それぞれ、1位、2位、および3位などにおけるアミノ酸を示す。アミノ酸位置の番号付けは、ヒトインスリンの天然配列に基づく。例えば、これは、天然ヒトインスリン配列のA1位およびA2位におけるアミノ酸を欠失させたインスリン類似体が、アミノ酸A3から始まることを意味する。A10CまたはA10Cysなどの用語は、A10位のアミノ酸がシステインで置換されていることを指し示す。
本明細書で用いられる「システイン置換」という用語は、いわゆる親インスリン分子内のアミノ酸残基のシステインアミノ酸残基による置換を意味する。本発明の最も広い範囲では、システインで置換されたアミノ酸残基が、親インスリン分子のA10位、A14位、A15位、A18位、A19位、A21位、B25位、またはB27位に位置する。前記システインアミノ酸残基を「置換システイン」と称し、結果として得られるインスリン分子を「置換インスリン」または「インスリン類似体」または「ヒトインスリン類似体」と称する。
一実施形態では、本発明は、1つの、かつ1つだけのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはそのdesB30ヒトインスリンであって、前記置換がA10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択されるヒトインスリンまたはそのdesB30ヒトインスリンに関する。
本発明の一実施形態では、システイン置換がA21Cである。
別の実施形態では、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されている。
本発明に従う置換インスリンの非限定的な例は、A10Cヒトインスリン、A14Cヒトインスリン、A15Cヒトインスリン、A18Cヒトインスリン、A19Cヒトインスリン、A21Cヒトインスリン、B25Cヒトインスリン、B27Cヒトインスリン、A10C、desB30ヒトインスリン、A14C、desB30ヒトインスリン、A15C、desB30ヒトインスリン、A18C、desB30ヒトインスリン、A19C、desB30ヒトインスリン、A21C、desB30ヒトインスリン、B25C、desB30ヒトインスリンおよびB27C、desB30ヒトインスリンである。これらの化合物の二量体もまた、本発明の一部である。B25Cヒトインスリンの二量体およびB25C, desB30ヒトインスリンの二量体は、このような二量体の非限定的な例である。
非限定的な例として述べると、A21C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号1として報告され、B鎖が配列番号2として報告される)は、以下の化学式1で表される。
Figure 2014509603
[式中、C*は、A21位における置換システインを指し示し、-S-S-は、ジスルフィド架橋を示す]。本発明の他のインスリン類似体の配列は、以下の通りに定義される。
非限定的な例として、B25C, desB30ヒトインスリンの二量体の配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号3として報告され、B鎖が配列番号4として報告される)は、以下の化学式2で表される。
Figure 2014509603
[式中、C*は、B25位における置換システインを指し示し、-S-S-は、ジスルフィド架橋を示し、-C*-C*-は、二量体化を示す]。
非限定的な例として、A10C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号5として報告され、B鎖が配列番号6として報告される)は、以下の化学式3で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、A14C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号7として報告され、B鎖が配列番号8として報告される)は、以下の化学式4で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、A15C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号9として報告され、B鎖が配列番号10として報告される)は、以下の化学式5で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、A18C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号11として報告され、B鎖が配列番号12として報告される)は、以下の化学式6で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、A19C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号13として報告され、B鎖が配列番号14として報告される)は、以下の化学式7で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、B25C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号15として報告され、B鎖が配列番号16として報告される)は、以下の化学式8で表される。
Figure 2014509603
非限定的な例として、B27C, desB30ヒトインスリンの配列(付属の配列表では、A鎖が配列番号17として報告され、B鎖が配列番号18として報告される)は、以下の化学式9で表される。
Figure 2014509603
化学式1〜化学式9の化学式では、インスリン類似体が、成熟形態で示され、C*は、置換システインを指し示し、-S-S-は、ジスルフィド架橋を示す。
本発明の置換インスリンは、宿主細胞における良好な発現率という驚くべき利点を提示する。図1に示す通り、本発明者らは、酵母細胞における、各インスリンが異なる置換システインを保有する、合計43の置換インスリンの生成について調べた。驚くべきことに、これらのインスリン類似体のうちの8つは、十分な収率、すなわち、これらの類似体によりさらに作業することを可能とする、ヒトインスリン(HI)と比べて12.5%高い収率で発現した。酵母細胞から前駆体の形態で発現した、これらの8つのインスリン類似体は、以下のシステイン置換:A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27Cのうちの1つを有した。
さらなるシステインが、インスリン分子内の既存のジスルフィド結合に対して干渉を引き起こさないことは、本発明の置換インスリンの別の驚くべき利点である。この態様は、PEG化されたインスリン誘導体を得るための、本発明の置換インスリンの、出発材料または中間体化合物としての使用を可能とするので、特に重要である。実際、本発明に従う置換システインは、マレイミドポリエチレングリコール(PEG)分子の選択的結合のためのアンカリング点として有用である。
別の態様では、本発明は、置換システインがさらにPEG化されている、上記で定義された置換インスリンを含むヒトインスリン誘導体に関する。
本明細書で用いられる「インスリン誘導体」とは、既に開示されている通りの置換インスリンであって、1つの置換システインにPEG側鎖またはN-エチルマレイミド(NEM)部分を導入することによりさらに化学修飾した置換インスリンを意味する。
本明細書では、「PEG化」が、ポリエチレングリコール(PEG)の、別の化合物との、おそらく、リンカーを介する共有結合による結合を指し示すことが理解される。本明細書における「PEG」という用語は、当技術分野で知られる通り、最終的にはリンカーへと共役されるポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体を指し示す。
一実施形態では、PEGを、PEGnという名称で定義するが、これは、化学式10:
化学式10:HO-CH2-(CH2-0-CH2-)n-CH2-OH
[式中、nは、整数であり、1〜12の範囲である]により表される構造のPEGを指し示す。一実施形態では、nが、8〜12の範囲である。別の実施形態では、nが12である。短鎖(CH2-O-CH2)はまた、オリゴエチレングリコール(OEG)とも称する。
別の実施形態では、PEG化が、リンカーを介して、置換システイン残基のスルフヒドリル基において生じる。リンカーは、マレイミド部分を含み得る。一実施形態では、ポリエチレングリコール分子が、MM(PEG)n[式中、PEGは、化学式1の分子であり、リンカーとしてのマレイミド基を伴い、PEG分子の遊離末端におけるメチル基を伴い、「n」が、整数であり、1〜12、8〜12の範囲であるか、または「n」が12である]であるかまたはこれを含む。一実施形態では、ポリエチレングリコール分子が、化学式11:
Figure 2014509603
のPEG分子を指し示すMM(PEG)12であるかまたはこれを含む。言い換えれば、MM(PEG)12は、化学式10のPEG分子であり、nが12であり、リンカーとしてのマレイミド基を伴い、PEG分子の遊離末端におけるメチル基を伴う。
非限定的な例として、「A10C-MM(PEG)12ヒトインスリン」とは、自然発生のヒトインスリン中A10位におけるアミノ酸がシステインにより置換されており、MM(PEG)12を前記システインのスルフヒドリル基に結合させたインスリン誘導体を意味する。
別の実施形態では、N-エチルマレイミド(NEM)を、MM(PEG)n分子の代わりに、本発明の置換インスリンの置換システインに共有結合により結合させている。非限定的な例として、化学式12は、A21C-NEM desB30インスリンを表す。
Figure 2014509603
[式中、C*は、A21位における置換システインを指し示し、-S-S-は、ジスルフィド架橋を示す]。
本発明に従うインスリン誘導体の非限定的な例は、A10C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B27C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A10C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12desB30ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンおよびB27C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A10C-NEMヒトインスリン、A14C-NEMヒトインスリン、A15C-NEMヒトインスリン、A18C-NEMヒトインスリン、A19C-NEMヒトインスリン、A21C-NEMヒトインスリン、B25C-NEMヒトインスリン、B27C-NEMヒトインスリン、A10C-NEM desB30ヒトインスリン、A14C-NEM desB30ヒトインスリン、A15C-NEM desB30ヒトインスリン、A18C-NEM desB30ヒトインスリン、A19C-NEM desB30ヒトインスリン、A21C-NEM desB30ヒトインスリン、B25C-NEM desB30ヒトインスリンおよびB27C-NEM desB30ヒトインスリンである。
非限定的な例として、A21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンはまた、S{ベータ-A21}-[1-[3-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エトキシ]エチルアミノ]-3-オキソプロピル]-2,5-ジオキソピロリジン-3-イル]-[CysA21], des-ThrB30-インスリン(ヒト)とも称する。
本発明のインスリン誘導体は、糖尿病患者の治療に有用な代替的なインスリン化合物を表す。実際、それらはインスリン受容体に対する結合親和性を確かに提示する。一実施形態では、本発明のインスリン誘導体が、自然発生のヒトインスリンと比較して0%を超える、インスリン受容体に対する結合親和性を提示する。別の実施形態では、本発明のインスリン誘導体が、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、または0.5%を超える、インスリン受容体に対する結合親和性を提示する。別の実施形態では、本発明のインスリン誘導体が、1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、もしくは11%を超えるか、または10%もしくは11%の、インスリン受容体に対する結合親和性を提示する。
一実施形態では、本発明は、PEG化されたインスリン誘導体の1つの光学異性体を含む。別の実施形態では、本発明は、PEG化されたインスリン誘導体の光学異性体の混合物を含む。
非限定的な例として、A21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンは、以下の化学式13で表され、
Figure 2014509603
R光学異性体もしくはS光学異性体またはR光学異性体およびS光学異性体の混合物を含む。いずれの光学異性体も、インスリン受容体に対する有効な結合を提示する[式中、C*は、A21位における置換システインを指し示し、-S-S-は、ジスルフィド架橋を示す]。
本発明の置換インスリン類似体は、特許文献EP0214826において開示されているタンパク質操作の分野における既知の技法を用いて調製することができる。
別の態様では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンの前駆体を生成する方法に関する。
一実施形態では、前記方法が、上記で定義された前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップ(i)を含む。
一実施形態では、ステップ(i)の宿主細胞が、酵母の宿主細胞であり、さらなる実施形態では、酵母の宿主細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)属から選択される。さらなる実施形態では、酵母の宿主細胞が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)種から選択される。さらなる実施形態では、酵母の宿主細胞が、出芽酵母MT663株である。
宿主細胞は、特許US6500645において開示されている技法およびプロトコールなど、よく知られている技法およびプロトコールに従い培養することができる。宿主細胞は一般に、適切な条件下で適切な培養培地へと培養し、ステップ(i)から結果として得られる前駆体は一般に、宿主細胞を介して発現し、培養培地へと放出される。前駆体はさらに、既知の技法に従い培養培地から回収し、分離し、精製および/または濃縮することができる。
別の実施形態では、ステップ(i)の核酸配列が、自然発生のインスリンまたはdesB30ヒトインスリンをコードする配列であって、結果として得られる前駆体におけるA10、A14、A15、A18、A19、A21、B25、およびB27位のうちの1つにおけるアミノ酸に対応するコドンが、システインアミノ酸をコードするコドンへと修飾されている配列を含む。別の態様では、本発明は、ステップ(i)の核酸に関する。当技術分野では、自然発生のインスリン、desB30ヒトインスリンをコードする核酸配列、およびシステインをコードするコドンが知られている。
別の態様では、本発明は、ステップ(i)の核酸配列を含むベクターに関する。当技術分野では、多様な宿主細胞のためのベクターが知られている。
ステップ(i)の核酸配列およびこのような核酸配列を含有するベクターは、分子生物学の分野でよく知られている技法に従い得られる。一実施形態では、本発明に従うシステイン置換を、オーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインスリンコード配列に導入する。
ステップ(i)の核酸を含有するベクターは、形質転換される宿主細胞に従い選択する。当技術分野ではまた、適切な形質転換法もよく知られている。
別の態様では、本発明は、ステップ(i)の核酸配列またはステップ(i)の核酸配列を含むベクターを含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、上記で定義されている。
別の態様では、本発明は、ステップ(i)から得られる前駆体に関する。
一実施形態では、ステップ(i)でコードされる前駆体が、スペーサーに続き、ミニC-ペプチドによりA鎖(A1〜A21)に連結されたB鎖を含むかまたはこれからなるプロインスリン様融合タンパク質である。さらなる実施形態では、スペーサーがアミノ酸配列EEAEAEAPKを含むかまたはこれからなり、B鎖がB鎖(B1〜B29)であり、ミニC-ペプチドが配列AAKであり、A鎖がA鎖(A1〜A21)である。
本明細書で用いられる「前駆体」という用語は、非成熟形態であるインスリン分子を指す。一実施形態では、「前駆体」という用語が、成熟するために何らかのさらなるプロセシングを必要とするインスリン分子を指す。本明細書で用いられる「成熟」という用語は、インスリン分子の活性形態を指す。一実施形態では、インスリン前駆体が、ジスルフィド架橋によるだけでなく、1または複数のさらなるペプチド配列によってもまた併せて連結されたA鎖およびB鎖を含む。一実施形態では、インスリン前駆体が、スペーサー(EEAEAEAPK)に続き、ミニC-ペプチドAAKによりA鎖(A1〜A21)に連結されたB鎖(B1〜B29)からなる、いわゆるプロインスリン様融合タンパク質であるかまたはこれを含む。
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の置換インスリンが、宿主細胞から効率的に発現することを見出した。実際、合計43の核酸配列を設計し、各々が1つの異なる置換システインを保有する、desB30ヒトインスリンの43の可能な変異体をコードする酵母細胞へと形質転換した。結果として、B鎖に修飾を伴う類似体のうちで、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により測定可能な発現収率を示す類似体は半数未満であった。A鎖にシステイン修飾を伴う類似体の大半は発現したが、収率は、A鎖およびB鎖の両方について一般に低度であった。一部の類似体がマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)のスペクトルから検出されなかったことから、それらは発現しないか、または発現収率が検出限界を下回ることが示されたが、これは、システイン置換A16C、B11C、B15C、B22C、およびB23Cを伴う類似体の場合であった。
全体で、8つの類似体の前駆体が十分な収率で発現した。前記8つの前駆体は、以下のシステイン置換:A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27Cのうちの1つを有する類似体の前駆体である。酵母細胞では、これらの8つの類似体が、ヒトインスリン(HI)と比べて12.5%高い収率で発現した。
発現した類似体の前駆体のうちの一部はステップ(i)により発現し、このような前駆体のうちのある比率は、置換システインのスルフヒドリル基において修飾を保有する。このような修飾は、共有結合による二量体の形成の場合もあり、システイン部分の結合の場合もあり、グルタチオン部分の結合の場合もあり、別の同定されていない修飾の場合もある。このような修飾前駆体の、発現する前駆体の総量に対する比率は、類似体ごとに変化する。類似体A18C、A19C、およびA21Cは、非修飾前駆体の、発現する前駆体の総量に対する最高の比率を提示する。高比率の修飾前駆体により発現する類似体、例えば、A10C、A14C、A15C、B25C、およびB27Cはまた、修飾前駆体の比率を低減するための還元ステップの後で用いることもできる。
別の態様では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27Cからなる群から選択されるシステイン置換を有するヒトインスリンまたはその類似体を生成する方法に関する。一実施形態では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27Cからなる群から選択されるシステイン置換を有するヒトインスリンまたはその類似体の前駆体を生成する方法に関する。
一実施形態では、前記方法が、以下のステップを含む:
(i)置換インスリンの前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップ;および
(ii)前駆体を、本発明の成熟置換インスリンへと転換するステップ。
ステップ(i)およびその多様な実施形態は、既に開示されている通りである。
一実施形態では、転換ステップ(ii)を、ステップ(i)のインスリン前駆体を含有する培養培地において行う。別の実施形態では、転換ステップ(ii)を、宿主細胞を除去した後のステップ(i)の培養培地において、例えば、遠心分離後の細胞を含まない上清において行う。
別の実施形態では、転換ステップ(ii)に、ステップ(i)のインスリン前駆体を培養培地から単離するステップが先行する。これは、既知の技法に従い行うことができる。
別の実施形態では、前駆体を、転換ステップ(ii)の前に、例えば、カチオン交換カラムを介する捕捉ステップにより濃縮、精製、または部分精製する。
ステップ(ii)の転換は、ステップ(i)のインスリン前駆体を、成熟インスリンへと転換することを目的とする。転換法の非限定的な例には、トリプシンを介する酵素的転換またはアクロモバクター・リティクス(Achromobacter lyticus)プロテアーゼ(ALP)を介する酵素的転換が含まれる。一実施形態では、米国特許明細書第4,343,898号または同第4,916,212号において記載されている通り、ALPをL-トレオニンエステルの存在下で用いた後で、塩基性または酸性の加水分解により、インスリン類似体のトレオニンエステルのインスリン類似体への転換を行った。
一実施形態では、ステップ(i)の前駆体を、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼによる消化を介して、成熟インスリン類似体へと転換する。ALP酵素は、リシン残基の下流で前駆体を切断する。結果として、スペーサーおよびCペプチドが、インスリン分子から切断される。A鎖とB鎖とは、ジスルフィド架橋だけで連結されている。プロインスリン様融合タンパク質が、既に開示したEEAEAEAPKスペーサーおよびAAKミニC-ペプチドを含む実施形態では、ALPが、スペーサーのリシン残基の下流、ミニC-ペプチドのリシン残基、およびB29のリシンの下流で切断する結果として、des(B30)置換インスリンがもたらされる。必要な場合は、その後既知の方法に従い、アミノ酸残基をB30位に添加することができる。
一実施形態では、転換ステップ(ii)を、ALP酵素により、4〜10の範囲のpHで行う。別の実施形態では、それが、ALPがその最適の消化活性を提示する範囲であるので、転換ステップ(ii)を、8.5〜9.5または9〜9.5の範囲のpHで行う。
本発明の置換インスリンは、pH9〜9.5またはその近傍など、高pHの範囲において、ジスルフィド結合のある程度の誤対合またはある程度の分解をもたらすジスルフィドスクランブリング、すなわち、還元されたシステインとジスルフィド結合とのチオール-ジスルフィド間交換に対して感受性であることが観察されている。これは、遊離スルフヒドリル基の存在およびインスリンにおけるさらなるシステインの存在に起因する。ALPが最適の活性を示す高pHで転換を実施する場合は、ある程度の百分率の成熟インスリン類似体を回収することが可能であるが、本発明者らは驚くべきことに、ALPの消化活性とインスリン前駆体の安定性との間で最適の均衡をもたらすpH範囲を見出した。したがって、本発明の別の実施形態では、転換ステップ(ii)を、酵素ALPにより、4〜8.5、4〜8、4〜7.5、4〜7、4.5〜6.5、5〜6の範囲のpH、または5.5のpHで行う。この特定の実施形態に従い選択されるpH範囲は、この高感受性を勘案したステップ(ii)の転換法を容易にし、最適化する。このpH範囲は、消化が、遊離スルフヒドリル基を伴う類似体の喪失を許容可能に低度としながら十分に速く進行することを可能とする。
別の態様では、本発明は、A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27Cからなる群から選択されるシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンを含むヒトインスリン誘導体を生成する方法であって、置換システインをさらにPEG化する、方法に関する。
一実施形態では、前記方法が、ポリエチレングリコール分子を、上記で定義されたヒトインスリン類似体またはその前駆体の置換システインへと結合させるステップを含む。
一実施形態では、前記方法が、以下のステップを含む:
(i)ヒトインスリン前駆体またはdesB30ヒトインスリン前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップ;
(ii)ステップ(i)のインスリン前駆体を成熟インスリンへと転換するステップ;および
(iii)ステップ(ii)の転換されたインスリンを、PEG分子と反応させるステップ。
ステップ(i)および(ii)ならびにそれらの多様な実施形態は、既に開示されている。
ステップ(iii)では、PEG分子の1つのリンカーを、インスリン類似体の置換システインの遊離スルフヒドリル基と反応させ、これに共有結合により結合させて、ステップ(ii)の置換インスリンのPEG化された誘導体をもたらす。
「PEG化」、「PEG分子」、およびリンカーの定義および範囲は、本発明のインスリン誘導体との関連で既に定義されている。
一実施形態では、結果として得られるインスリン誘導体を、RP-HPLCにより分離および精製する。別の実施形態では、結果として得られるインスリン誘導体を、さらに凍結乾燥させる。
一実施形態では、PEG化ステップ(iii)が、転換ステップ(ii)に後続する。PEG分子をステップ(ii)のインスリン類似体へと添加し、これと共にインキュベートする。
別の実施形態では、PEG化ステップが、転換ステップに先行する。したがって、この実施形態では、本発明の方法が、以下のステップを含む。
(i)ヒトインスリン前駆体またはdesB30ヒトインスリン前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップ;
(ii)ステップ(i)のインスリン前駆体を、PEG分子と反応させるステップ;および
(iii)ステップ(ii)のPEG化されたインスリン前駆体を、成熟インスリン誘導体へと転換するステップ。これはとりわけ、類似体A19Cなど、極めて分解しやすいインスリン類似体に関するが、これらだけに関するわけではない。
別の実施形態では、PEG化ステップおよび還元ステップを、いわゆるワンポット反応で実施する。この実施形態は、インスリン前駆体をステップ(i)により発現させる場合であって、このような前駆体のうちのある比率が、置換システインのスルフヒドリル基において修飾を保有する場合に適用される。これは、例えば、二量体を単量体へと還元するために、B25Cヒトインスリン類似体の二量体に適用されるが、これらだけに適用されるわけではない。
一実施形態では、「ワンポット」反応という用語が、反応の全ての成分が、同時的または逐次的に1つの同じポットへと添加されることを意味する。
一実施形態では、還元およびPEG化によるワンポット反応が、ステップ(iii)の転換の前に実施される。
一実施形態では、還元およびPEG化によるワンポット反応を、前駆体の形態である対象のインスリン類似体を、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)と混合し、反応化合物を類似体-TCEP混合物へとさらに添加することにより達成する。
一実施形態では、インスリン類似体をTCEPへと混合する前に、塩をインスリン類似体および/またはTCEPへと添加する。一実施形態では、塩がNaOAc(酢酸ナトリウム)である。
一実施形態では、TCEPが固定化TCEPであり、インスリン類似体へと混合される前に緩衝液で平衡化する。一実施形態では、緩衝液が、NaOAcなどの塩を含む。
一実施形態では、TCEPとインスリン類似体とを併せて反応させ、次いで、反応性化合物を混合物へと添加し、インスリン類似体と反応させる。一実施形態では、添加された反応性化合物との反応が、45分間にわたり進行する。
一実施形態では、反応性化合物が、マレイミド会合化合物である。一実施形態では、反応性のマレイミド会合化合物が、N-エチルマレイミド(NEM)分子またはMM(PEG)分子であって、MM(PEG)分子には上記で定義されたMM(PEG)nが含まれる。
本発明は、以下の非限定的な実施形態を対象とする:
実施形態1:A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンを含むヒトインスリン類似体。
実施形態2:A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有し、かつ、システイン置換が1つだけである、実施形態1に従うヒトインスリン類似体。
実施形態3:システイン置換がA21CまたはB25Cである、実施形態1または2のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体。
実施形態4:desB30ヒトインスリンであるかまたはこれを含む、実施形態1〜3のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体。
実施形態5: A10Cヒトインスリン、A14Cヒトインスリン、A15Cヒトインスリン、A18Cヒトインスリン、A19Cヒトインスリン、A21Cヒトインスリン、B25Cヒトインスリン、B27Cヒトインスリン、A10C、desB30ヒトインスリン、A14C、desB30ヒトインスリン、A15C、desB30ヒトインスリン、A18C、desB30ヒトインスリン、A19C、desB30ヒトインスリン、A21C、desB30ヒトインスリン、B25C、desB30ヒトインスリン、B27C、desB30ヒトインスリン、A10Cヒトインスリンの二量体、A14Cヒトインスリンの二量体、A15Cヒトインスリンの二量体、A18Cヒトインスリンの二量体、A19Cヒトインスリンの二量体、A21Cヒトインスリンの二量体、B25Cヒトインスリンの二量体、B27Cヒトインスリンの二量体、A10Cの二量体、desB30ヒトインスリン、A14Cの二量体、desB30ヒトインスリン、A15Cの二量体、desB30ヒトインスリン、A18Cの二量体、desB30ヒトインスリン、A19Cの二量体、desB30ヒトインスリン、A21Cの二量体、desB30ヒトインスリン、B25Cの二量体、desB30ヒトインスリンおよびB27Cの二量体、desB30ヒトインスリンからなる群から選択されるヒトインスリン類似体。
実施形態6:前駆体の形態である、実施形態1〜5のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体。
実施形態7:前駆体形態が、スペーサーに続くB鎖(B1〜B29)であるかまたはこれを含み、B鎖がミニペプチドによりA鎖(A1〜A21)に連結された、実施形態6のヒトインスリン類似体。
実施形態8:スペーサーがペプチド配列EEAEAEAPKであり、ミニペプチドがミニC-ペプチドAAKである、実施形態7のヒトインスリン類似体。
実施形態9:成熟形態である、実施形態1〜5のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体。
実施形態10:置換システインがPEG化されている、実施形態1〜9のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体を含むヒトインスリン誘導体。
実施形態11:(PEG)n分子[式中、「n」は、1〜12の整数である]が、リンカーを介して置換システインに共有結合により結合している、実施形態10のヒトインスリン誘導体。
実施形態12:「n」が12であり、かつ/またはリンカーがマレイミド基である、実施形態11のヒトインスリン誘導体。
実施形態13:置換システインが、メチルマレイミドポリエチレングリコール分子MM(PEG)n[式中、「n」は、1〜12、8〜12の範囲の整数であるか、または「n」は、12である]に共有結合により結合している、実施形態12のヒトインスリン誘導体。
実施形態14: A10C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B27C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A10C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12desB30ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンおよびB27C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンからなる群から選択される、実施形態13のヒトインスリン誘導体。
実施形態15:置換システインが、N-エチルマレイミド分子(NEM)に共有結合により結合している、実施形態1〜9に従うヒトインスリン類似体を含むヒトインスリン誘導体。
実施形態16:A10C-NEMヒトインスリン、A14C-NEMヒトインスリン、A15C-NEMヒトインスリン、A18C-NEMヒトインスリン、A19C-NEMヒトインスリン、A21C-NEMヒトインスリン、B25C-NEMヒトインスリン、B27C-NEMヒトインスリン、A10C-NEM desB30ヒトインスリン、A14C-NEM desB30ヒトインスリン、A15C-NEM desB30ヒトインスリン、A18C-NEM desB30ヒトインスリン、A19C-NEM desB30ヒトインスリン、A21C-NEM desB30ヒトインスリン、B25C-NEM desB30ヒトインスリン、およびB27C-NEM desB30ヒトインスリンからなる群から選択される、実施形態15のヒトインスリン誘導体。
実施形態17:前駆体の形態である、実施形態10〜16のうちのいずれかに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態18:前駆体形態が、スペーサーに続くB鎖(B1〜B29)であるかまたはこれを含み、B鎖がミニペプチドによりA鎖(A1〜A21)に連結された、実施形態16のヒトインスリン誘導体。
実施形態19:スペーサーがペプチド配列EEAEAEAPKであり、ミニペプチドがミニC-ペプチドAAKである、実施形態18のヒトインスリン誘導体。
実施形態20:成熟形態である、実施形態10〜16のうちのいずれかに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態21:A21CヒトインスリンまたはA21C, desB30ヒトインスリンからなる群から選択され、前記インスリンが置換システインにおいてPEG化されている、実施形態10〜12のうちのいずれかに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態22:A21C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12ヒトインスリンの前駆体、A21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンの前駆体、またはこれらの二量体からなる群から選択される、実施形態10〜14および17〜21のうちのいずれかに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態23:B25C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12ヒトインスリンの前駆体、B25C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンの前駆体、またはこれらの二量体からなる群から選択される、実施形態10〜14および17〜21のうちのいずれかに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態24:スペーサーに続くB鎖(B1〜B29)であるかまたはこれを含み、B鎖がミニペプチドによりA鎖(A1〜A21)に連結された前駆体の形態である、実施形態22または23のうちのいずれか1つに従うヒトインスリン誘導体。
実施形態25:スペーサーがペプチド配列EEAEAEAPKであり、ミニペプチドがミニC-ペプチドAAKである、実施形態24のヒトインスリン誘導体。
実施形態26:実施形態1〜8で定義されるヒトインスリン類似体の前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップを含む、ヒトインスリン類似体を調製する方法。
実施形態27:宿主細胞が酵母細胞である、実施形態26の方法。
実施形態28:前駆体を成熟ヒトインスリン類似体へと転換するステップをさらに含む、実施形態26または27の方法。
実施形態29:転換ステップを、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼにより行う、実施形態28の方法。
実施形態30:転換ステップを、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼにより、4〜10の範囲のpHで行う、実施形態29の方法。
実施形態31:転換ステップを、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼにより、8.5〜9.5または9〜9.5の範囲のpHで行う、実施形態30の方法。
実施形態32:転換ステップを、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼにより、4〜8.5、4〜8、4〜7.5、4〜7、4.5〜6.5、5〜6の範囲のpH、または5.5のpHで行う、実施形態30の方法。
実施形態33:ポリエチレングリコール分子を、実施形態1〜9のうちのいずれかで定義される、ヒトインスリン類似体の置換システインへと結合させるステップを含む、ヒトインスリン誘導体を調製する方法。
実施形態34:ポリエチレングリコール分子、またはNEM化合物を、リンカーを介して、実施形態1〜9のうちのいずれかで定義される、ヒトインスリン類似体の置換システインへと結合させるステップを含む、ヒトインスリン誘導体を調製する方法。
実施形態35:ポリエチレングリコール分子が、MM(PEG)n分子[式中、「n」は、1〜12、1〜8の整数であるか、または「n」は12である]である、実施形態34に従う方法。
実施形態36:結合ステップをヒトインスリン類似体の前駆体に対して実行する、実施形態33〜35のうちのいずれかに従う方法。
実施形態37:結合ステップを成熟ヒトインスリン類似体に対して実行する、実施形態33〜35のうちのいずれかに従う方法。
実施形態38:ヒトインスリン類似体が、A19CヒトインスリンまたはA19C, desB30ヒトインスリンである、実施形態37に従う方法。
実施形態39:PEG化ステップおよび還元ステップを、いわゆるワンポット反応で実施する、実施形態33〜38のうちのいずれかに従う方法。
実施形態40:ヒトインスリン類似体が、置換システインのスルフヒドリル基において修飾を保有する、実施形態39に従う方法。
実施形態41:置換システインのスルフヒドリル基における修飾が、グルタチオニル化、システイニル化、アルキル化、もしくは二量体化であるか、またはヒトインスリン類似体が、B25Cヒトインスリンの二量体もしくはB25C, desB30ヒトインスリンの二量体である、実施形態40に従う方法。
実施形態42:還元およびPEG化によるワンポット反応が、ヒトインスリン類似体の前駆体に対して実施される、実施形態39〜41のうちのいずれかに従う方法。
実施形態43:還元およびPEG化によるワンポット反応が、好ましくは前駆体の形態であるインスリン類似体を、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)と混合し、PEG化合物を類似体-TCEP混合物へとさらに添加することにより達成される、実施形態39〜42のうちのいずれかに従う方法。
実施形態44:インスリン類似体をTCEPへと混合する前に、塩をインスリン類似体および/またはTCEPへと添加する、実施形態43に従う方法。
実施形態45:塩がNaOAC(酢酸ナトリウム)である、実施形態44に従う方法。
実施形態46:TCEPが固定化TCEPであり、インスリン類似体へと混合される前に緩衝液により平衡化される、実施形態43〜45のうちのいずれかに従う方法。
実施形態47:緩衝液が、酢酸ナトリウムなどの塩を含む、実施形態46に従う方法。
実施形態48:TCEPとインスリン類似体とを併せて反応させ、次いで、PEG化合物を混合物へと添加する、実施形態43〜47のうちのいずれかに従う方法。
実施形態49:添加されたPEG化合物との反応が、45分間にわたり進行する、実施形態43〜48のうちのいずれかに従う方法。
実施形態50:PEG化合物がマレイミド会合化合物である、実施形態43〜49のうちのいずれかに従う方法。
実施形態51: PEG化合物が、MM-PEG分子、またはMM(PEG)n分子[式中、「n」は、1〜12、1〜8の整数であるか、または「n」は12である]である、実施形態43〜50のうちのいずれかに従う方法。
実施形態52:N-エチルマレイミド(NEM)分子をPEG化合物の代わりに用いる、実施形態43〜50のうちのいずれかに従う方法。
実施形態53:実施形態1〜8のうちのいずれかに従う、ヒトインスリン類似体をコードする核酸配列。
実施形態54:医薬を調製する方法における出発材料または中間体化合物としての、実施形態1〜9のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体の使用。
実施形態55:新規のインスリン誘導体を調製する方法における出発材料または中間体化合物としての、実施形態1〜9のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体の使用。
実施形態56:PEG化合物またはNEM分子などのさらなる化合物を、前記ヒトインスリン類似体の置換システインへと結合するための、実施形態1〜9のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体の使用。
実施形態57:ヒトインスリン誘導体、とりわけ、実施形態10〜25のうちのいずれかで定義されるヒトインスリン誘導体を調製する方法における、実施形態1〜9のうちのいずれかに従うヒトインスリン類似体の使用。
実施形態58:医薬としてのその使用のための、実施形態1〜9のうちのいずれかのヒトインスリン類似体、または実施形態10〜25のうちのいずれかのヒトインスリン誘導体。
実施形態59:糖尿病の治療におけるその使用のための、実施形態1〜9のうちのいずれかのヒトインスリン類似体、または実施形態10〜25のうちのいずれかのヒトインスリン誘導体。本発明の実施形態は、本明細書で定義されるヒトインスリン類似体をコードする核酸配列、またはその前駆体に関する。
実施形態60:実施形態1〜8で定義されるヒトインスリン類似体の前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞。
本発明はまた、例示的な実施形態の開示から明らかとなる、さらなる問題も解決する。
実施例
(a)プラスミドおよび発現の構築
後のプロセシングで用いられるB29Lysを除く合計43の可能なインスリン変異体を用いてdesB30インスリンの全ての位置に単一の突然変異を導入して、インスリンの体系的なシステイン走査を実施した。突然変異は、よく知られている技法に従うオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインスリンコード配列に導入した。材料、ベクター、株、および構築は、既に記載されている(Kjeldsenら、1999; Kjeldsenら、1996; Kristensenら、1997)通りとした。
インスリン前駆体は、出芽酵母株MT663において、スペーサー(EEAEAEAPK)に続き、ミニC-ペプチドAAKによりA鎖(A1〜A21)に連結されたB鎖(B1〜B29)からなるプロインスリン様融合タンパク質として発現させた。前駆体は、5mlの培養物中で発現させた。培養培地および条件は、当技術分野で知られる通りとする。
各インスリン前駆体の発現収率は、ヒトインスリン(HI)を外部基準物質として用いる、ピーク面積に基づく逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により決定した。結果を図1に報告する。図1のグラフは、置換Cysを保有する類似体の各インスリン前駆体についての発現収率を、ヒトインスリン発現レベルに対する百分率として表す。図1aは、A鎖に置換Cysを伴う類似体に関し、図1bは、B鎖に置換Cysを伴う類似体に関する。x軸は、各インスリン類似体の置換位置(A1、A2、A3、B1、B2など)を示し、y軸は、発現収率を示す。
これらの結果は、CysをA鎖に導入した類似体のうちの大部分(図1a)が発現し、B鎖に修飾を伴う類似体(図1b)のうちのほぼ半数が、RP-HPLCにより測定可能な収率をもたらしたことを示す。導入された第7のCysと、3つの既存のジスルフィド結合との間におけるジスルフィドスクランブリングの可能性が高いにもかかわらず、合計で、構築した類似体のうちの約60%が発現した。星印と共に示される類似体は、低発現収率を提示し、MALDI MSにより検出されただけであり、HPLCによっては検出されなかった。発現した60%の類似体のうち、合計8つの類似体(A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、およびB27C)の収率は、HIの収率と比べて12.5%超え、これらをPEG化のための候補物質とした。
(b)PEG化に適する類似体の選択
発現した前駆体の全体における修飾前駆体の分布をさらに解析するために、類似体であるA10C, desB30、A14C, desB30、A15C, desB30、A18C, desB30、A19C, desB30、A21C, desB30、B25C, desB30、およびB27C, desB30を選択した。
したがって、本発明に従うインスリン類似体であるA10C, desB30ヒトインスリン、A14C, desB30ヒトインスリン、A15C, desB30ヒトインスリン、A18C, desB30ヒトインスリン、A19C, desB30ヒトインスリン、A21C, desB30ヒトインスリン、B25C, desB30ヒトインスリン、およびB27C, desB30ヒトインスリンを、Yeast Extract Peptone Dextrose(YPD)培地の200mlという少量の培養物中、同等に処理された2連(A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、およびB25C)および3連(A21CおよびB27C)で発酵させた。細胞を遠心分離およびデカンテーションにより除去し、上清を3または3をわずかに下回るpHまで酸性化させた。前駆体を、カチオン交換カラムを介する捕捉ステップにより部分精製および濃縮した。
類似体をLC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)により解析し、既知の技法に従い、214nmの紫外光(UV)出力における面積に基づき、前駆体の各形態の相対量を計算した。
結果を図2に報告する。図2のグラフは、被験類似体(Cys置換の位置をx軸に沿って示す)の各々について、多様な修飾前駆体の、発現した類似体の全体に対する百分率としての比率(y軸)を表す。黒色バーが、また遊離前駆体とも称する非修飾前駆体を表すのに対し、縦縞の白色バーは、システイニル化前駆体を表し、横縞の白色バーは、グルタチオニル化前駆体を表し、ドットの白色バーは、二量体の前駆体を表し、格子縞の白色バーは、他の同定されていない修飾を伴う前駆体を表す。
図2は、発現する前駆体の全体における修飾前駆体の百分率および修飾の性質が、類似体ごとに異なることを示す。前駆体の形態は、非修飾置換システイン(すなわち、非修飾前駆体)から、システイニル化変異体、グルタチオニル化変異体、および/または変異体の共有結合による二量体の混合物まで変化する。
図2はまた、類似体であるA18C, desB30ヒトインスリン類似体、A19C, desB30ヒトインスリン類似体、およびA21C, desB30ヒトインスリン類似体が、20%を上回る非修飾前駆体の最高比率を提示することも示す。これらの類似体は、PEG化ステップを方向付けることを可能とする。
遊離スルフヒドリル基を露出させるために、第7のシステインを伴うジスルフィド結合の選択的還元ステップを先行させれば、低比率の非修飾化合物と共に発現する前駆体から出発して、さらなるPEG化の効率を改善することができる。選択的還元は、例(d)で報告される方法に従い得ることができる。
本発明のインスリン前駆体がアルカリ性のpHに対して高感受性であることにより、ALPによる切断時におけるpHの最適化を行ったところ、消化は、イオン交換による精製ステップで用いられる溶出緩衝液のpHであるpH5.5で、遊離スルフヒドリル基を伴う誘導体の喪失を許容可能に低度としながら十分に速く進行することが結論された。このpHにおいて、前駆体A19Cは不安定であり、著しい分解をもたらすことが観察されている。したがって、この類似体をアルキル化のために選択すれば、ALPによる消化の前にアルキル化反応を実施することが好ましくなる。
非修飾誘導体の発現収率および分解安定性に基づくと、A21C, desB30インスリン類似体は、さらなるPEG化研究のためにA18C, desB30類似体およびA19C, desB30類似体と同様に好適な候補物質であった。また、A10C, desB30、A14C, desB30、A15C, desB30、B25C, desB30、およびB27C, desB30類似体も、還元ステップによるさらなるPEG化に好適な候補物質である。
(c)精製およびPEG化
インスリン類似体であるA21C, desB30ヒトインスリンを、3Lの培養物中で発酵させた。細胞を含まない培養物上清を、3または3をわずかに下回るpHまで酸性化させ、前駆体を、カチオン交換カラムを介する捕捉ステップにより部分的に精製および濃縮した。溶出後、類似体は、pH5.5の緩衝液中で見出された。次いで、前駆体を、マトリックスに結合させたALPにより2つの鎖による成熟A21C, desB30ヒトインスリンへと転換し、MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)により転換を検証した。ALP消化の後、類似体を、MM(PEG)12:類似体のモル比を1:25とする100mMの過剰なMM(PEG)12水溶液により、室温で3日間にわたり混合しながらPEG化させた。反応が完了した後、LC/MSにより試料を解析した。
図3は、MM(PEG)12によるアルキル化の前(図3a)および後(図3b)におけるA21C, desB30類似体および誘導体についてのLC/MS試行に由来するUVクロマトグラムを表す。LC/MSから検出されるシグナル強度は、mAU単位(ミリ吸光度単位)(y軸)で、分単位の時間(x軸)の関数として表す。ピークは、異なる誘導体に対応し、試薬は、以下である:1:グルタチオニル化A21C-PEG、2:システイニル化A21C-PEG、3:非修飾A21C-PEG、4:試薬、5:アルキル化A21C-PEG1、6:アルキル化A21C-PEG2。PEG1およびPEG2は、化合物の2つの光学異性体形態を指す。アルキル化後、非修飾類似体を表すピーク3は減衰し、2つの新たなピーク5および6が長い保持時間で見られ、いずれも、単一のPEG化を伴う非修飾類似体に対応する質量を伴う。MM(PEG)12による反応前と反応後とを比較すると、マレイミド化合物が、遊離スルフヒドリル基を伴う類似体と反応することが考えられる。ピーク5とピーク6との保持時間の差異は、おそらく、新たなキラル中心の、チオエーテルにおける形成により引き起こされる、2つの異性体形態の存在により説明される。既存の結合と第7のCysとの間のジスルフィドスクランブリングは、MS/MS解析(タンデム質量分析)と併せて、V8酵素を伴う消化解析により除外した(データは示さない)。
Cys化学反応を介するアルキル化は極めて化学選択性であり、遊離スルフヒドリルを伴う誘導体の100%に近い転換が見られたと考えられる。
アルキル化の直後、異なる誘導体を、トリフルオロ酢酸(TFA)緩衝液系を用いるRP-HPLCにより分離および精製した。画分を凍結乾燥させ、純度を、中性および酸性のpHでUV220nmにより測定した。
(d)固定化TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を用いるワンポット反応における還元およびPEG化
インスリン前駆体を発現させる場合であって、このような前駆体のうちのある比率が、置換システインのスルフヒドリル基において修飾を保有する場合は、いわゆるワンポット反応において、還元ステップと併せてPEG化ステップを実施する。これは、例えば、二量体を単量体へと還元するために、B25Cヒトインスリン類似体の二量体に適用される。
インスリン類似体の前駆体であるA10C, desB30ヒトインスリン、A14C, desB30ヒトインスリン、A15C, desB30ヒトインスリン、A18C, desB30ヒトインスリン、A19C, desB30ヒトインスリン、A21C, desB30ヒトインスリン、B25C, desB30ヒトインスリン、およびB27C, desB30ヒトインスリンを調製し、例(b)で説明されるカチオン交換クロマトグラフィーを用いて部分精製する。
アガロースゲル(ThermoScientific(登録商標))上に固定化したTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を、溶出緩衝液(カチオン交換クロマトグラフィーに由来する)中で平衡化し、1MのNaOAc(酢酸ナトリウム)と1:1としてpH5.5で混合した。
次いで、TCEPスラリー(平衡緩衝液は除去する)100μlを、1MのNaOAc pH5.5 30μlおよび部分精製された、上記で定義された類似体の前駆体25μlと混合した。ゲルを懸濁させるために、試料を回転させることにより、室温で15分間にわたり混合してから、水中に10mMのMM(PEG)12(または100mMのNEM)5μlを添加した。次いで、試料を回転させることにより、室温でさらに45分間にわたり混合してから、pHが3を下回ることを確保するために、10%のTFA(2,2,2-トリフルオロ酢酸またはトリフルオロ酢酸)60μlを添加した。
このステップの間、同じポットにおけるPEG化を後続させる非修飾前駆体の比率を増大させるために、修飾前駆体をTCEPで還元した。
結果として得られる試料を、遠心分離によりTCEPゲルから分離し、LC/MSにより解析して、PEG化に成功した前駆体の存在を同定した。保持時間および質量を、各被験類似体についてTable 1(表1)に示す。
LC法では、60℃の温度で、Dionex(登録商標)Ultimate(登録商標)3000液体クロマトグラフィー、緩衝液Aとしての0.05% TFA、および緩衝液Bとしての0.04% TFA+80%アセトニトリル(w/w)を用いた。用いる捕捉カラムは、Agilent(登録商標)Technologies製、3.5μm、35×0.3mmのZorbax(登録商標)XDB-C18カラムであり、用いる解析カラムは、Agilent(登録商標)Technologies製、3.5μm、150×0.3mmのZorbax(登録商標)XDB-C18カラムであった。
MS法では、ThermoFisher(登録商標)Scientific (San Jose、CA)製のLTQ Orbitrap(登録商標)XL装置を用いた。MSのために選択される質量範囲は、100〜2000 m/z(m/zは、質量mと電荷zとの比を表す)とした。
以下のTable 1(表1)では、捕捉カラムに用いられる溶出緩衝液パラメータ:時間(分単位の保持時間)(左欄)と共に、勾配溶出緩衝液の内容(ある%の緩衝液Bを含む緩衝液A)(右欄)、溶出緩衝液の流量(μl/分単位)(中央欄)が報告される。
Figure 2014509603
以下のTable 2(表2)では、解析カラムに用いられる溶出緩衝液パラメータ:時間(分単位の保持時間)(左欄)と共に、勾配溶出緩衝液の内容(ある%の緩衝液Bを含む緩衝液A)(右欄)、溶出緩衝液の流量(μl/分単位)(中央欄)が報告される。
Figure 2014509603
以下のTable 3(表3)は、捕捉カラムおよび解析カラムを介する溶出緩衝液の経路を制御する、2つのカラムの間のバルブ切換えのタイミングを示す。
Figure 2014509603
結果を、以下のTable 4(表4)に報告する。
Figure 2014509603
このTable 4(表4)は、予測される類似体の前駆体化合物の各々についてのDa単位の理論的モノアイソトピック質量を、有効に溶出させた化合物について測定したモノアイソトピック質量と比較して示す。理論質量と測定質量との一致は、還元-PEG化反応が成功したことを示す。RTは、各化合物の溶出時間、すなわち、ピークがUV出力上に現れた時間を示す(データは示さない)。これらのうちの一部は、A21C化合物について前出で示した通り(図3を参照されたい)、キラル中心に起因して2つのピークを示した。
(e)受容体結合アッセイ
Cysの導入およびPEG鎖の付加の後で類似体が効力を保持していたかどうかを探索するため、当技術分野で記載されているシンチレーション近接アッセイ(SPA)により、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞から精製されたインスリン受容体のAアイソフォームに対して、in vitroにおけるインスリン受容体(IR)競合結合アッセイを実施した。PEG化された成熟A21C, desB30の2つの光学異性体形態であるA21C-PEG1およびA21C-PEG2について調べた。また、成熟B25C-NEM desB30インスリン誘導体の2つの光学異性体形態であるB25C-NEM1およびB25C-NEM2も調べた(化合物は、例(c)に記載されている通りに得、HPLCにより精製し、凍結乾燥させた)。
SPAアッセイにおけるインスリン類似体と、[125I]TyrA14標識したインスリンとの結合の競合を用いて、受容体に対する結合親和性を決定した。各プレートは、ヒトインスリン(HI)基準物質(実験は、4回にわたり繰り返した)および被験類似体(実験は、4回にわたり繰り返した)を含有した。これを3回にわたり繰り返した。当技術分野で記載されている4パラメータのロジスティックモデルに従いデータを解析し、以下の数式:
数式1:[(IC50(insulin)/IC50(analogue))*100%]
により定義される通り、ヒトインスリン基準物質と比べた親和性を表した。
結果は、A21C-PEG1およびA21C-PEG2が、括弧内をそれぞれ標準偏差として、10%(±1.7)および11%(±1.8)の平均相対結合効力を有することを示す。2つの間には統計学的有意差が認められなかった。PEG鎖とインスリン分子との間のリンカーにおけるキラル中心の存在は、結合特性に影響を及ぼさない。したがって、A21位のアスパラギン残基からシステイン残基への変化および12単位のPEG鎖の付加にもかかわらず、類似体は、結合親和性のうちのかなりの部分をやはり保持していた。
結果はまた、B25C-NEM1 desB30インスリン誘導体およびB25C-NEM2 desB30インスリン誘導体の相対結合効力が、HIと比べて0.24%であったことも示す。したがって、インスリン誘導体における変化にもかかわらず、インスリン誘導体は、その結合親和性の一部を保持していた。
(f)代謝効力の決定
2つの立体異性体であるA21C-PEG1とA21C-PEG2とが、in vitroにおける応答を同等に発生させ得るかどうかを探索するため、既知の技法に従う脂質生成によりそれらの代謝効力を決定した。化合物は、例(c)で言及した通りに得た。
このために、SPRDラットから単離された初代ラット脂肪細胞を用いた。脂肪体を摘出し、Hepes緩衝液、Krebs緩衝液、0.1% HSA(ヒト血清アルブミン)、コラゲナーゼ、およびグルコースを含有する分解緩衝液に入れた。細胞を37℃で1時間にわたり強く振とうし、細胞懸濁液を濾過し、2回にわたり洗浄し、Hepes緩衝液、Krebs緩衝液および0.1% HSAを含有するインキュベーション緩衝液中に再懸濁させた。100μLのアリコートを96ウェルPicoプレート内に分配し、D-[3-3H]グルコースおよびグルコースを含有するグルコース溶液10μL、ならびに濃度を上昇させるヒトインスリン(基準物質の)またはA21C-MM(PEG12)インスリン類似体、一方もしくは他方の光学異性体形態10μLと併せて静かに振とうしながら37℃で2時間にわたりインキュベートした。MicroScint(登録商標)E(Packard(登録商標))150μLを添加することによりインキュベーションを停止させ、組み込まれた放射能の量を、TopCount(登録商標)NXT(PerkinElmer(登録商標)Life Science)により、各プレートについてカウントした。
4パラメータのロジスティックモデルに従い、データを解析し、数式1の数式(例(e)を参照されたい)により定義される通り、ヒトインスリン基準物質と比べた親和性を表した。いずれの形態も、A21C-PEG1およびA21C-PEG2のそれぞれについて、7.57%(±2.0)および10.32%(±3.2)でそれらの受容体親和性を反映する応答を発生させ、2つの間の統計学的有意差は明らかでなかった。
(g)WistarラットにおけるA21C-MM(PEG12)desB30ヒトインスリンのin vivo効果
異性体のうちの1つであるA21C-PEG1をin vivoにおいて調べ、血中グルコースを低下させるその能力を探索した。Wistarラットに静脈内投与される2回の投与において、類似体をヒトインスリンと比較した。
したがって、被験物質投与前の-35分の時点にプライミング用量としての2ml/kg、被験物質投与前の-5分にさらに1ml/kg、次いで、45分ごとに(4回にわたり)1ml/kgずつ、Hypnorm-Dormicum(0.081mg/mlのフェンタニルクエン酸塩および1.25mg/mlのミダゾラム)を用いて、飼育された29匹の雄Wistarラット(253〜319g)に麻酔をかけた。
ラットを5群に割り当て、4つの群における6匹ずつのラットには、ヒトインスリンおよびA21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンを投与し、5つ目の群における5匹のラットにはビヒクルを投与した。動物には、尾静脈への静脈内注射(1ml/kg)により、ビヒクル(5mMのリン酸緩衝液、140mMのNaCl、70ppmのポリソルベート20、pH 7.4)、または誘導体であるA21C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン(1.2ナノモル/kgまたは3.6ナノモル/kg)、またはヒトインスリン(1.2ナノモル/kgまたは3.6ナノモル/kg)を投与した。投与前の-15分および0分の時間、ならびに投与の3、7、15、30、60、120、180、および240分後の時間に、尾の先端の毛細血管を穿刺することにより、全血液中グルコース濃度を決定するための血液試料をヘパリン化した10μlのガラス製試験管内に回収した。血中グルコース濃度は、Biosen(登録商標)autoanalyzer(EKF Diagnostic(登録商標)、Germany)を用いて固定化グルコースオキシダーゼ法により、解析緩衝液(500μl)中で希釈した後に測定した。
結果を、ラットにおける血中グルコースレベル(y軸:ミリモル/L単位)の差異が、インスリン類似体またはヒトインスリンの静脈内注射後の時間(x軸:分単位)に沿って示される図4に報告する。
(○)曲線は、1.2ナノモル/kgのヒトインスリンに対応し、(●)曲線は、3.6ナノモル/kgのヒトインスリンに対応し、(□)曲線は、1.2ナノモル/kgのA21C-PEG1に対応し、(■)曲線は、3.6ナノモル/kgのA21C-PEG1に対応し、(▼)曲線は、ビヒクルだけに対応する。値は、各々が5〜6回ずつ繰り返される実験による平均値である。
データは、類似体が、ヒトインスリンと同程度ではないが、ラットにおける血中グルコースレベルを低下させることを示す。ELISAによる血漿中平均滞留時間(MRT)の推定は、低用量の場合、ヒトインスリンと比較して、5分間から31分間への延長を示した。これは、本発明のインスリン誘導体が、ヒトインスリンと比較して、投与後における半減期の延長を提示することを意味する。
本明細書では、本発明の特定の特色について例示および説明してきたが、今や当業者は、多くの改変、置換、変更、および均等物に想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような改変および変更を、本発明の真の精神の範囲内に収まるものとして対象とすることを意図すると理解される。

Claims (15)

  1. A10C、A14C、A15C、A18C、A19C、A21C、B25C、B27Cからなる群から選択される1つのシステイン置換を有するヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンを含むヒトインスリン類似体。
  2. システイン置換がA21Cである、請求項1に記載のヒトインスリン類似体。
  3. A10Cヒトインスリン、A14Cヒトインスリン、A15Cヒトインスリン、A18Cヒトインスリン、A19Cヒトインスリン、A21Cヒトインスリン、B25Cヒトインスリン、B27Cヒトインスリン、A10C、desB30ヒトインスリン、A14C、desB30ヒトインスリン、A15C、desB30ヒトインスリン、A18C、desB30ヒトインスリン、A19C、desB30ヒトインスリン、A21C、desB30ヒトインスリン、B25C、desB30ヒトインスリン、B27C、desB30ヒトインスリンおよびこれらの二量体からなる群から選択される、請求項1に記載のヒトインスリン類似体。
  4. 置換システインが、メチルマレイミドポリエチレングリコール分子(MM(PEG))またはN-エチルマレイミド分子(NEM)に共有結合により結合している、請求項1から3に記載のヒトインスリン類似体を含むヒトインスリン誘導体。
  5. A10C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12ヒトインスリン、B27C-MM(PEG)12ヒトインスリン、A10C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A14C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A15C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A18C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A19C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A21C-MM(PEG)12desB30ヒトインスリン、B25C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリンおよびB27C-MM(PEG)12 desB30ヒトインスリン、A10C-NEMヒトインスリン、A14C-NEMヒトインスリン、A15C-NEMヒトインスリン、A18C-NEMヒトインスリン、A19C-NEMヒトインスリン、A21C-NEMヒトインスリン、B25C-NEMヒトインスリン、B27C-NEMヒトインスリン、A10C-NEM desB30ヒトインスリン、A14C-NEM desB30ヒトインスリン、A15C-NEM desB30ヒトインスリン、A18C-NEM desB30ヒトインスリン、A19C-NEM desB30ヒトインスリン、A21C-NEM desB30ヒトインスリン、B25C-NEM desB30ヒトインスリンおよびB27C-NEM desB30ヒトインスリンからなる群から選択される、請求項4に記載のヒトインスリン誘導体。
  6. 請求項1から3に記載のヒトインスリン類似体の前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップを含む、ヒトインスリン類似体を調製する方法。
  7. 前記前駆体を、請求項1から3に記載の成熟ヒトインスリン類似体へと転換するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  8. 転換ステップを、アクロモバクター・リティクスプロテアーゼにより、4〜10の範囲のpHで行う、請求項7に記載の方法。
  9. ポリエチレングリコール分子を、請求項1から3に記載のヒトインスリン類似体またはその前駆体の置換システインへと結合させるステップを含む、請求項4または5に記載のヒトインスリン誘導体を調製する方法。
  10. ポリエチレングリコール分子の結合ステップを、請求項6に記載の方法から得られるヒトインスリン類似体の前駆体に対して実行する、請求項9に記載の方法。
  11. ポリエチレングリコール分子の結合ステップを、請求項7または8に記載の方法から得られる成熟ヒトインスリン類似体に対して実行する、請求項9に記載の方法。
  12. ポリエチレングリコール分子の結合ステップおよび還元ステップを、いわゆるワンポット反応において実施する、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
  13. ヒトインスリン誘導体を調製する方法における出発材料または中間体化合物としての、請求項1から3のいずれかに記載のヒトインスリン類似体の使用。
  14. 医薬としてのその使用のための、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒトインスリン類似体または請求項4から6のいずれか一項に記載のヒトインスリン誘導体。
  15. 糖尿病の治療におけるその使用のための、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒトインスリン類似体または請求項4から6のいずれか一項に記載のヒトインスリン誘導体。
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