(癌)
腫瘍は、組織の異常な集団である。腫瘍は、良性か悪性かどちらか一方である。良性腫瘍は、局所で成長するが、身体の他の部位には広がらない。良性腫瘍は、正常組織を圧迫し及び移動させるため、良性腫瘍が広がることによる問題を生じさせる。良性腫瘍は、頭蓋骨といった閉鎖された空間内において危険なものである。悪性腫瘍は、身体の他の領域を侵すことができる。転移癌は、正常組織を侵し遠位の組織に広がることにより拡散する癌である。
(癌治療)
いくつかの形態の放射線治療が、癌治療のために存在する。それには、小線源治療、伝統的な電磁X線治療、及び陽子線治療が含まれる。各々については、以下にさらに記載する。
小線源治療は、体内に埋め込まれた放射線源を用いた放射線治療である。この治療法において、癌専門医は、腫瘍に、又は腫瘍のごく近傍に、直接放射線マテリアルを埋め込む。放射線源はまた、子宮頸部といった体腔内に置かれる。
第二の形態である、電磁放射線を用いる伝統的癌治療法は、X線及びガンマ線を用いる治療法を含む。X線は高エネルギー、電離、電磁波放射線であり、疾患の診断には低線量で、癌治療には高線量で用いられる。X線又はレントゲン線は、10−0.01ナノメートル(nm)の範囲の波長を持つ電磁放射線の形態であり、これは30PHz−30EHzの範囲の周波数に相当する。X線は、ガンマ線より長く、紫外線より短い。X線は主にX線診断に用いられる。X線は、電離放射線の形態であり、危険を伴うものでもあり得る。ガンマ線もまた、電磁放射線の形態であり、電子陽電子消滅又は放射線崩壊といった素粒子の相互作用により作られる周波数にある。電磁スペクトラムにおいて、ガンマ線は概して、高周波数を有し、高エネルギーを有し、約10ピコメートル以下といった短波長を有する電磁放射線として特徴づけられる。ガンマ線は、約100keV以上のエネルギーを有する高エネルギー光子からなる。X線は通常、癌性腫瘍の治療のために用いられる。しかしながら、X線は、癌性腫瘍の治療に最適ではない。X線は、ターゲットとされた組織の表面近傍に最高線量の放射線を与え、組織に浸透するにつれて運ばれる放射線が指数関数的に減少するからである。これは、腫瘍の外側に運ばれる多量の放射線をもたらす。ガンマ線は、同様の制限を有する。
癌治療の第三の形態は、陽子を用いる。陽子線治療システムは典型的には、ビーム発生器、加速置、及び陽子が患者の身体の腫瘍に配送される複数の治療室に発生した加速された陽子を運ぶためのビーム輸送システムを含む。
陽子線治療は、粒子加速器により加速された陽子といったエネルギー電離粒子をターゲットの腫瘍に向かわせることによりなされる。これらの粒子は、細胞のDNAにダメージを与え、最終的にはそれらの死を起こさせる。癌性腫瘍は、分裂速度が速くダメージを受けたDNAの修復能力が低減されているため、それらのDNAに対するアタックに特に脆弱である。
陽子のサイズは比較的大きいため、陽子の組織における散乱はX線又はガンマ線よりも容易ではなく、横方向分散はほとんどみられない。したがって、陽子ビームは、周囲の組織の横方向のダメージを多く与えること無しに腫瘍の形に集束してとどまる。所定のエネルギーのすべての陽子は、ブラッグピークにより規定される一定の範囲を有し、組織への線量配送の比率は、粒子の範囲の最後の数ミリメータにわたって最大となる。浸透深度は粒子のエネルギーに依存し、それは陽子加速器により加速された粒子のスピードに直接関連する。陽子のスピードは、加速器の最大定格に適応可能である。したがって、腫瘍が存在する組織における非常に深いところで陽子ビームによって細胞ダメージを集中させることができる。ブラッグピーク前に存在する組織はいくらか低減された線量を受け、ピーク後の組織は何も受けない。
(シンクロトロン)
ここで本発明に関連する特許を要約する。
(陽子ビーム療法システム)
ローマ・リンダ・ユニバーシティ・メディカルセンターのF.Coleらの“Multi−Station Proton Beam Therapy System”(特許文献1)(1989年9月26日)は、陽子ビームを選択的に発生させ、単一の陽子源及び加速器から複数の患者治療室の選択された治療室に陽子ビームを移送するための陽子ビーム療法システムを説明する。
(ビーム形成)
C.Johnstoneの“Method and Apparatus for Laser Controlled Proton Beam Radiology”(特許文献2)(1998年6月2日)は、H−ビーム及びレーザーを作り出す加速器を有する陽子ビーム放射線システムを説明する。中性粒子ビームを形成するように、レーザー及びH−ビームが組み合わされる。光脱離モジュールはさらに、ストリッピングフォイルを用いており、それは中性粒子ビームから陽子ビームを形成する。
T.Ikeguchiらの“Synchrotron Radiation Source With Beam Stabilizers”(特許文献3)(1993年1月5日)は、シンクロトロン放射線源を説明し、それは、荷電粒子ビームのライフタイムを長くする目的で、低い光脱離収率を有するマテリアルから作られたビーム吸収装置(ベンディングセクション/真空チャンバー内部に配置される)を有する。
(注入)
K.Hiramotoらの“Accelerator System”(特許文献4)(1989年9月26日)は、前加速器により加速されたイオンビームをラジオアイソトープ生成ユニット又はシンクロトロンのどちらか一方に導入するための選択電磁石を有する加速器システムを説明する。
K.Hiramotoらの“Circular Accelerator,Method of Injection of Charged Particle Thereof,and Apparatus for Injection of Charged Particle Thereof”(特許文献5)(1998年8月4日)及びK.Hiramotorらの“Circular Accelerator,Method of Injection of Charged Particle Thereof,and Apparatus for Injection of Charged Particle Thereof”(特許文献6)(1997年2月4日)の両方は、多くの荷電粒子を、注入のビームがダクトの幾何学的中心に対して高さ及び幅を有する真空ダクトに注入するための方法及び装置を説明する。
(加速器/シンクロトロン)
H.Tanakaらの“Charged Particle Accelerator”(特許文献7)(2007年8月21日)は、固定磁場による2つの期間の加速プロセスを有する荷電粒子加速器を説明する。それは、第一時期及びタイミングが計られた第二加速時期で適用され、コンパクトかつ高性能な荷電粒子の加速をもたらす。
T.Habererらの“Ion Beam Therapy System and a Method for Operating the System”(特許文献8)(2004年1月27日)は、イオンビーム療法システム及び該システムを操作する方法を説明する。イオンビームシステムは、垂直偏向システム及び水平偏向システムを有するガントリを用いており、それらはエッジ集束効果に起因する並列走査モードをもたらす最後の偏向磁石の前方に配置される。
V.Kulishらの“Inductional Undulative EH−Accelerator”(特許文献9)(2002年8月13日)は、荷電粒子のビームの加速のための誘導型波動EH−加速器を説明する。装置は電磁波動システムからなっており、その電磁石の駆動装置は、約100KHzから10GHzの周波数の範囲において作動するラジオ周波数(RF)発振器の形態において作られる。
K.Saitoらの“Radio−Frequency Accelerating System and Ring Type Accelerator Provided with the Same”(特許文献10)(1999年6月29日)は、磁気コアグループに連結しているループアンテナを有するラジオ周波数加速システム及びループアンテナに接続されているインピーダンス調整手段を説明する。比較的低い電圧が、調整手段の小さい構成を許容するインピーダンス調整手段に加えられる。
J.Hirotaらの“Ion Beam Accelerating Device Having Separately Excited Magnetic Cores”(特許文献11)(1997年8月26日)は、ユニット及び磁気コアを誘導する複数の高周波磁場を有するイオンビーム加速装置を説明する。
J.Hirotaらの“Acceleration Device for Charged Particles”(特許文献12)(1992年12月1日)は、制御のもとで作動する高周波数の電源及びループコンダクターを有する加速空洞を説明する。それらは、組み合わされて、電力のより効果的な粒子への伝送を許容する結合定数(coupling constant)及び/又は離調(de−tuning)を制御する。
(真空チャンバー)
T.Kobariらの“Apparatus For Treating the Inner Surface of Vacuum Chamber”(特許文献13)(1998年10月13日)及びT.Kobariらの“Process and Apparatus for Treating Inner Surface Treatment of Chamber and Vacuum Chamber”(特許文献14)(1997年5月6日)の両方は、真空チャンバーの内面を処理する装置を説明し、それは、ブローチにより真空チャンバーの表面に不活性ガス又は窒素を供給する手段を含む。もう一つとして、ブローチは、真空チャンバーの表面において混入物質を溶解させるための真空チャンバーに低級アルコールを供給するために用いられる。
(磁石形状)
M.Tadokoroらの“Electromagnetic and Magnetic Field Generating Apparatus”(特許文献15)(2002年4月2日)及びM.Tadokoroらの“Electromagnetic and Magnetic Field Generating Apparatus”(特許文献16)(2001年5月22日)は各々、一組の磁極、リターンヨーク、及び励磁コイルを説明する。磁極の内部は各々、磁場の強度を上げるために複数のエアギャップスペーサーを有する。
(抽出)
T.Nakanishiらの“Charged−Particle Beam Accelerator,Particle Beam Radiation Therapy System Using the Charged−Particle Beam Accelerator,and Method of Operating the Particle Beam Radiation Therapy System”(特許文献17)(2006年10月17日)は、共鳴の安定領域内の荷電粒子ビームのベータトロン振動の振幅を増加させるためのRF−KOユニット及び共鳴の安定領域を変化させるための抽出四極電磁ユニットを有する荷電粒子ビーム加速器を説明する。RF−KOユニットは、循環ビームが共鳴の安定領域の境界を越えない周波数の範囲内で作動され、抽出四極電磁石は、ビーム抽出に要求されるタイミングで作動される。
T.Habererらの“Method and Device for Controlling a Beam Extraction Raster Scan Irradiation Device for Heavy Ions or Protons”(特許文献18)(2006年8月15日)は、加速器サイクルごとのビームエネルギー、ビーム集束、及びビーム強度の条件においてビーム抽出照射を制御する方法を説明する。
K.Hiramotoらの“Accelerator and Medical System and Operating Method of the Same”(特許文献19)(2002年10月29日)は、荷電粒子ビームを循環させるための偏向電磁石及び四極電磁石を有する循環型加速器、ベータトロン振動の共鳴の安定限界を作り出すための多極電磁石、並びにビームを安定限界の外側に移動させるように高周波数電磁場をビームに与えるための高周波源を説明する。高周波源は、複数の交流電流(AC)シグナルの合計シグナルを作り出し、瞬時周波数は時間に関連して変化し、時間に関連する瞬時周波数の平均値は異なる。該システムは電極による合計シグナルをビームに与える。
K.Hiramotoらの“Synchrotron Type Accelerator and Medical Treatment System Employing the Same”(特許文献20)(2000年7月11日)及びK.Hiramotoらの“Synchrotron Type Accelerator and Medical Treatment System Employing the Same”(特許文献21)(1999年12月28日)は、高周波電磁場を荷電粒子ビーム循環に適用するための、及び粒子ビームのベータトロン振動の振幅を共鳴の安定限界より上のレベルまで増加させるための循環軌道上に配置された高周波適用ユニットを有するシンクロトロン加速器を説明する。さらに、ビーム放出のために、四極発散電磁石は、(1)第一偏向器に対して下流に、(2)偏向電磁石に対して上流に、(3)偏向電磁石に対して下流に、及び(4)第二偏向器に対して上流に配置される。
K.Hiramotoらの“Circular Accelerator and Method and Apparatus for Extracting Charged−Particle Beam in Circular Accelerator”(特許文献22)(1994年11月8日)は、荷電粒子ビームの抽出のための循環加速器を説明する。それは、(1)ベータトロン振動の共鳴の効果によりビームの変位を向上させるように、(2)粒子のベータトロン振動の振幅を向上させるように(共鳴に対する安定限界内に初期のベータトロン振動を有する)、(3)共鳴の安定限界を超える粒子を結果として抽出する共鳴安定限界を超えるように配置される。
K.Hiramotoらの“Method of Extracting Charged Particles from Accelerator,and Accelerator Capable Carrying Out the Method,by Shifting Particle Orbit”(特許文献23)(1994年2月8日)は、荷電粒子ビームを抽出する方法を説明する。偏向磁石及び6要素よりも多い多極要素を有する磁石により維持された荷電粒子の平衡軌道は、荷電粒子の整調(tune)を変えるように、これらの磁石以外の加速器の構成要素によりシフトされる。
(輸送/スキャニングコントロール)
K.Matsudaらの“Particle Beam Irradiation Apparatus,Treatment Planning Unit,and Particle Beam Irradiation Method”(特許文献24)(2007年6月5日);K.Matsudaらの“Particle Beam Irradiation Treatment Planning Unit,and Particle Beam Irradiation Method”(特許文献25)(2006年10月17日);及びK.Matsudaらの“Particle Beam Irradiation Apparatus,Treatment Planning Unit,and Particle Beam Irradiation Method”(2006年9月5日)は各々、イオンビームの出力を停止させ、スキャニング電磁石の制御により照射位置を変え、及び治療計画情報に基づき治療を再開させるスキャニングコントローラーを有する粒子ビーム照射装置を説明する。
T.Norimineらの“Particle Therapy System Apparatus”(特許文献26)(2006年6月13日);T.Norimineらの“Particle Therapy System Apparatus”(特許文献27)(2005年8月30日);及びT.Norimineらの“Particle Therapy System Apparatus”(特許文献28)(2004年8月10日)は各々、第一ビーム位置モニター及び第二ビーム位置モニターにより制御されるシンクトロンの後の荷電粒子ビーム経路に配置される第一ステアリング電磁石及び第二ステアリング電磁石を有する粒子療法システムを説明する。
K.Moriyamaらの“Particle Beam Therapy System”(特許文献29)(2006年3月14日)は、準備がイオンビームの患者への輸送に対して完了したことを示す準備シグナルへの手動入力を説明する。
H.Haradaらの“Irradiation Apparatus and Irradiation Method”(特許文献30)(2006年1月10日)は、線量分布を均一にすることができる大照射場を有する照射方法を説明する。それは、照射場装置の強化パフォーマンス無しであり、多葉コリメータの使用を介した複数の照射により形成された多重領域を有する位置コントローラーを用いる。該システムは、ターゲットの全表面にわたる平坦かつ均一な線量分布を提供する。
H.Akiyamaらの“Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies”(特許文献31)(2005年6月7日);H.Akiyamaらの“Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies”(特許文献32)(2005年5月31日);及びH.Akiyamaらの“Charged Particle Beam Irradiation Equipment Having Scanning Electromagnet Power Supplies”(特許文献33)(2005年4月19日)はすべて、電圧を荷電粒子ビームを偏向させるスキャニング電磁石に与えるための電力供給装置、及びパルセーション要素無しの第二電力供給装置を説明する。それによってより正確にスキャニング電磁石を制御することでき、照射対象の均一な照射が可能となる。
K.Amemiyaらの“Accelerator System and Medical Accelerator Facility”(特許文献34)(2004年10月5日)は、低い電力消費で作動可能な広域イオンビーム制御電流範囲を有する、及び長いメンテナンス間隔を有する加速器システムを説明する。
A.Dolinskiiらの“Gantry with an Ion−Optical System”(特許文献35)(2002年11月5日)は、イオン源及び回転軸の周りでイオンビームを偏向させる3つの偏向磁石を備えるイオン光学システムのためのガントリを説明する。複数の四重極はまた、水平面及び垂直面における異なるエミッタンスにより完全なアクロマチックビーム移送並びにイオンビームを作り出すために、ビーム経路に沿って提供される。さらに、2つのスキャニング磁石は、ビームを管理するように、第二偏向磁石と第三偏向磁石との間に提供される。
H.Akiyamaらの“Charged Particle Beam Irradiation Apparatus”(特許文献36)(2001年4月17日)は、ターゲットに荷電粒子ビームを照射するための荷電粒子ビーム照射装置を説明する。それは、複数のスキャニング電磁石、及び複数のスキャニング電磁石のうちの2つの間にある四極電磁石を含む。
K.Matsudaらの“Charged Particle Beam Irradiation System and Method Thereof”(特許文献37)(2000年7月11日)は、ターゲットの細い領域に対応する領域における荷電粒子ビームの一部を遮蔽するように遮蔽要素を伴うリッジフィルタを有する荷電粒子ビーム照射システムを説明する。
P.Youngらの“Raster Scan Control System for a Charged−Particle Beam”(特許文献38)(1991年5月21日)は、荷電粒子ビーム配送システムでの使用のためのラスタースキャン制御システムを説明する。それは、荷電粒子ビームが通過するノズルを含む。該ノズルは、プログラマブルラスター発生器並びに高速及び低速スイープスキャン電磁石を含み、協同してターゲットでの所望のラスタースキャンパターンに従ったビームをもたらすスイーピング磁場を作り出す。
(ビーム形状制御)
M.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Field Forming Apparatus”(特許文献39)(2006年12月26日)及びM.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Field Forming Apparatus”(特許文献40)(2006年5月23日)は各々、散乱補正器及びレンジ変調ホイールを有する粒子療法システムを説明する。散乱補正器及びレンジ変調ホイールの動きは、イオンビーム及び散乱強度に適応し、ペナンブラ制御及び身体の病変部へのより均一な線量分布をもたらす。
T.Habererらの“Device and Method for Adapting the Size of an Ion Beam Spot in the Domain of Tumor Irradiation”(特許文献41)(2005年2月22日)は、腫瘍照射におけるイオンビームのサイズを適合させる方法及び装置を説明する。イオンビームスポットのサイズを決定する4つの磁石は、イオンビームスポットのサイズを決定するラスタースキャニング磁石のすぐ前に配置される。装置は、さらにイオンビームスポットのサイズを制御するように電流補正値を得るための制御ループを含む。
K.Matsudaらの“Charged Particle Irradiation Apparatus and an Operating Method Thereof”(特許文献42)(1999年11月16日)は、荷電粒子ビームの照射場の境界での横方向線量減衰を低減させることができる荷電粒子照射装置を説明する。それは、四極電磁石及び偏向電磁石の磁場の制御を用いており、スキャニング電磁石により作られた磁場の方向及び強度にかかわらず散乱体の中心を通過する荷電粒子ビームの中心を制御する。
K.Hiramotoらの“Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same”(特許文献43)(1999年10月19日)は、荷電粒子ビームが散乱体により拡大される荷電粒子ビーム装置を説明する。それは、変化するスポットポジションに適用される照射線量のオーバーラッピングを許容するガウス分布をもたらす。
M.Moyersらの“Charged Particle Beam Scattering System”(特許文献44)(1995年8月8日)は、粒子ビーム及び荷電粒子ビームの直径を変化させるための散乱箔を作る放射治療装置を説明する。
C.Nunanの“Multileaf Collimator for Radiotherapy Machines”(特許文献45)(1989年9月19日)は、矩形照射野を形成するように可動である複数の重金属箔棒の形状をしている多葉コリメータを有する放射治療装置を説明する。
R.Maughanらの“Variable Radiation Collimator”(特許文献46)(1988年6月28日)は、ロッドに依存する放射ビームの横断面を形成するための可変コリメータを説明する。それはビーム軸の周りに配置される。ロッドは、照射される患者の領域の形に切り出された成形部材により形成される。
(治療室選択)
J.Naumannらの“Beam Allocation Apparatus and Beam Allocation Method for Medical Particle Accelerators”(特許文献47)(2008年4月1日)は、アービトレーションユニット、スウィッチング論理、モニタリングユニット、及び流出中断安全システムを伴うシーケンス制御を有する医療用粒子加速器のためのビーム割り当て装置を説明する。
K.Moriyamaらの“Particle Beam Therapy System”(特許文献48)(2008年1月15日)は、治療ビームの先着順の制御を許容する照射準備シグナルを伴う複数の治療室へのビーム供給器システムを説明する。
K.Moriyamaらの“Particle Beam Therapy System”(特許文献49)(2007年8月28日)は、イオンビームの配送を制御する治療室から複数の治療室のうちのひとつへの情報を用いる粒子ビーム療法システムを説明する。
I.Morganらの“Multiple Target,Multiple Energy Radioisotope Production”(特許文献50)(2002年9月3日)は、入口経路及び多キッカー磁石を有する粒子ビーム輸送経路を説明する。所定のキッカー磁石をオンにすることで、粒子ビームが対応する部屋に向かう。
M.Takanakaらの“Beam Supply Device”(特許文献51)(1994年9月20日)は、粒子又は放射ビームを治療室に供給するビーム供給装置を説明する。システムは回転可能なビーム輸送装置及び回転可能な偏向電磁石の回転軸の周りに配置された複数のビーム利用室を含む。
(ビームエネルギー/強度)
M.Yanagisawaらの“Charged Particle Therapy System,Range Modulation Wheel Device,and Method of Installing Range Modulation Wheel Device”(特許文献52)(2008年4月8日)及びYanagisawaらの“Charged Particle Therapy System,Range Modulation Wheel Device,and Method of Installing Range Modulation Wheel Device”(特許文献53)(2008年5月30日)は両方、レンジ変調ホイールを有する粒子療法システムを説明する。イオンビームはレンジ変調ホイールを通過し、レンジ変調ホイールの複数の段階的な厚さに対応した複数のエネルギーレベルをもたらす。
M.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus”(特許文献54)(2007年11月20日);M.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus”(特許文献55)(2006年7月4日);M.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus”(特許文献56)(2006年4月11日);及びM.Yanagisawaらの“Particle Beam Irradiation System and Method of Adjusting Irradiation Apparatus”(特許文献57)(2004年8月17日)はすべて、散乱装置、範囲調節装置、及びピーク発散装置を説明する。散乱装置及び範囲調節装置はともに組み合わされてビーム軸に沿って動かされる。ピーク発散装置はイオンビーム散乱の度合いを調節するように軸に沿って独立して動かされる。組み合わされると、装置は病変組織への放射線量分配の均一性の程度を向上させる。
A.Sliskiらの“Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation”(特許文献58)(2007年4月24日)は、既定の方法において散乱角及びビーム範囲を変調させるように粒子ビームの中に置かれた液体のプログラム可能な経路長を説明する。荷電粒子ビーム散乱/範囲変調器は、粒子ビーム経路において対抗する壁を有する液体容器、及びプログラム可能なコントローラの制御のもと液体容器の壁の間の距離を調節する駆動部を備え、組織の既定深度で既定の拡大ブラッグピークを作り出す。ビーム散乱及び変調は腫瘍の治療の間、継続的かつ動的に調節され、ターゲットとされた既定の三次元ボリュームでの線量をもたらす。
M.Tadokoroらの“Particle Therapy System”(特許文献59)(2007年7月24日)及び(特許文献60)(2006年12月26日)は各々、腫瘍組織の照射の間荷電粒子ビームのエネルギーを測定することのできる粒子療法システムを説明する。該システムは、一組のコリメータ、エネルギー検出器、及びシグナルプロセッシングユニットの間のビーム移動を含む。
G.Kraftらの“Ion Beam Scanner System and Operating Method”(特許文献61)(2005年5月10日)は、スキャンされるターゲットボリュームに対する機械的アラインメントシステムを有するイオンビームスキャニングシステムを説明する。それは、リニアモータ及びエネルギー吸収手段の横方向移動によりイオンビームの深度変調を可能とし、ターゲットボリュームのボリューム要素の深度調整スキャニングをもたらす。
G.Hartmannらの“Method for Operating an Ion Beam Therapy System by Monitoring the Distribution of the Radiation Dose”(特許文献62)(2004年5月18日)は、アイソセンタの周囲の領域を照射及びスキャンするグリッドスキャナーを有するイオンビーム療法システムの操作方法を説明する。アイソセンタの領域における種々の位置でのグリッドスキャナー装置の深さ方向の線量分布及び横方向の線量分布が測定され評価される。
Y.Jongenの“Method for Treating a Target Volume with a Particle Beam and Device Implementing Same”(特許文献63)(2004年4月6日)は、粒子ビームからターゲットボリュームの方向に向かう狭いスポットを作る方法を説明する。それは、スポット掃引速度及び粒子ビーム強度が同時に変化するという特徴を有する。
G.Kraftらの“Device for Irradiating a Tumor Tissue”(特許文献64)(2004年3月23日)は、腫瘍組織を照射する方法及び装置を説明する。該装置は、イオンビーム方向及びイオンビーム範囲を調節する、陽子ビームの深さ方向の調節のための陽子ビーム経路における電磁的に駆動されるイオンブレーキング装置を有する。
K.Matsudaらの“Charged Particle Beam Irradiation Apparatus”(特許文献65)(2003年9月9日)は、フィルター要素の各々の通過された位置の違いにより作られた異なるエネルギーを有する3つのイオンビーム要素を備える拡大装置を介してブラッグピークを通過することによりブラッグピークの深さ方向における幅を増加させる荷電粒子ビーム照射装置を説明する。
H.Stelzerらの“Ionization Chamber for Ion Beams and Method for Monitoring the Intensity of an Ion Beam”(特許文献66)(2002年8月20日)は、イオンビームのためのイオン化チャンバー及びイオン療法ビームの強度をモニターする方法を説明する。イオン化チャンバーは、チャンバーハウジング、ビーム入口窓、ビーム出口窓、及び計数気体で満たされたチャンバーボリュームを含む。
H.Akiyamaらの“Charged−Particle Beam Irradiation Method and System”(特許文献67)(2002年8月13日)及びH.Akiyamaらの“Charged−Particle Beam Irradiation Method and System”(特許文献68)(2001年7月24日)の両方は、粒子の変化するエネルギーに対するチャンバー及び荷電粒子ビームの強度を制御する強度コントローラを含む荷電粒子ビーム照射システムを説明する。
Y.Puの“Charged Particle Beam Irradiation Apparatus and Method of Irradiation with Charged Particle Beam”(特許文献69)(2000年3月7日)は、(1)長さを有するシリンダー状部材、及び(2)回転軸の周りの周方向の壁厚の分布を含む、エネルギー減衰器を有する荷電粒子ビーム照射装置を説明する。壁厚は、照射ビームのエネルギー減衰を決定する。
(線量)
K.Matsudaらの“Particle Beam Irradiation System”(特許文献70)(2007年11月27日)は、ストップシグナルの使用を介した照射対象へのより均一な線量分布を保証する粒子ビーム照射システムを説明する。それは、照射装置からのイオンビームの出力を停止させる。
H.Sakamotoらの“Radiation Treatment Plan Making System and Method”(特許文献71)(2006年5月30日)は、照射領域を複数の照射領域に入れ、所望の領域で均一な放射線照射を得るように放射線治療コンディションを計画する放射線シミュレーションを用いる放射線照射システムを説明する。
G.Hartmannらの“Method For Verifying the Calculated Radiation Dose of an Ion Beam Therapy System”(特許文献72)(2004年9月28日)は、ファントム及び計算された放射線量とファントムとの間の相違を含む、イオンビーム療法システムの計算された線量の検査のための方法を説明する。
H.Brandらの“Method for Monitoring the Irradiation Control of an Ion Beam Therapy System”(特許文献73)(2003年9月2日)は、イオンビーム療法システムの計算された照射制御ユニットをチェックする方法を説明する。スキャンデータセット、コントロールコンピューターパラメータ、計測センサーパラメータ、及びスキャナー磁石の所望の現在値が恒久的に保存される。
T.Kanらの“Water Phantom Type Dose Distribution Determining Apparatus”(特許文献74)(2001年3月27日)は、閉鎖された水タンクを含む水ファントム型線量分配装置を説明する。それは、水がなみなみと満たされており、放射線療法の前に放射線の現実の線量分配を決定するために用いられる内蔵センサーを有する。
(安全性)
K.Moriyamaらの“Particle Beam Therapy System”(特許文献75)(2008年3月18日)は、加速器におけるイオンビームの発生のための調整が完了し、ビーム輸送システムにおけるイオンビームの輸送のための調整が完了することを確認する安全装置を説明する。準備情報を表示する準備状態のディスプレーユニットがさらに提供される。
C.Chengらの“Path Planning and Collision Avoidance for Movement of Instruments in a Radiation Therapy Environment”(特許文献76)(2007年10月9日)は、外部測定装置を含む患者位置調整システムを説明する。それは、対象の位置及び方向を測定し、放射線療法システムの要素を含むものである。位置調整システムはまた、職員又は部外者の対象による治療システムのアクティブエリアへの侵入を監視し、放射線療法システムの操作上の安全性を向上させる。
K.Moriyamaらの“Particle Beam Therapy System”(特許文献77)(2007年2月6日)は、選ばれていない治療室の誤った下流の照射を防ぐように一群のシャッターを有する粒子ビーム療法システムを説明する。
E.Baduraらの“Method for Checking Beam Generation and Beam Acceleration Means of an Ion Beam Therapy System”(特許文献78)(2004年6月1日)は、イオンビーム療法システムのビーム発生手段及びビーム加速手段をチェックする方法を説明する。イオンのタイプ、イオンビームエネルギー、イオンビーム強度、加速器のブロッキング、及び抽出を終了させる手段がチェックされる。
E.Baduraらの“Method for Checking Beam Steering in an Ion Beam Therapy System”(特許文献79)(2003年10月28日)は、イオンビーム療法システムのビームガイダンスをチェックする方法を説明する。冗長手段は、(1)抽出の終了、(2)終了の確認のために用いられる。
E.Baduraらの“Method of Operating an Ion Beam Therapy System with Monitoring of Beam Position”(特許文献80)(2003年7月29日)は、ビームをアイソセンタに向かわせるビームスキャナ装置を含むイオンビーム療法システムの操作のための方法を説明する。アイソセンタの領域は、ビームプロファイルの半値幅に基づく許容値から離れる際に実行された介入によりモニターされ評価される。
E.Baduraらの“Method for Monitoring an Emergency Switch−Off of an Ion−Beam Therapy System”(特許文献81)(2003年7月22日)は、イオンビーム療法システムの緊急シャットダウンをチェックする方法を説明する。
B.Brittonらの“Beamline Control and Security System for a Radiation Treatment Facility”(特許文献82)(1999年4月20日)は、放射線ビーム治療施設におけるビームラインの安全性のための方法及び装置を説明する。エラーが検出されると、ビームラインの電力供給が停止される。
T.Nakanishiらの“Particle Beam Irradiation Apparatus”(特許文献83)(1998年10月6日)は、放射軸に対して対称に配置された、放射線遮蔽のためのシールドを有する粒子ビーム照射場を説明する。
B.Brittonらの“Beamline Control and Security System for a Radiation Treatment Facility”(特許文献84)(1996年12月17日)は、放射線ビーム治療設備におけるビームラインの安全性のための方法及び装置を説明する。それは、優遇還元論理通信経路を用いる要求されたビーム構成に対応してビーム経路構成シグナルを比較する。エラーが検出されると、ビームラインの電力供給が停止される。
D.Lesynaらの“Method of Treatment Room Selection Verification in a Radiation Beam Therapy System”(特許文献85)(1993年11月9日)は、放射線ビーム療法システムにおける治療室選択確認の方法を説明する。それは、治療室での要求シグナルを、加速器から治療室へのビーム移動の経路を制御する操作室からの経路構成シグナルと比較する。
(測定)
V.Bashkirovらの“Nanodosimeter Based on Single Ion Detection”(特許文献86)(2006年7月25日)及びV.Bashkirovらの“Nanodosimeter Based on Single Ion Detection”(特許文献87)(2004年9月7日)は両方、開口部を通過し、高感度気体ボリュームを通過し、検出器に到達する陽イオンを検出するナノドシメータ装置を説明する。該発明は、サンプル内の核酸にダメージを与える放射線照射を測定するためのナノドシメータの使用を含む。
G.Hartmannらの“Method of Checking an Isocentre and a Patient−Positioning Device of an Ion Beam Therapy System”(特許文献88)(2003年12月30日)は、グリッドスキャナー装置及び球状ファントムを用いるイオンビームのアイソセンタをチェックする方法を説明する。空間の中心のポイントが既定の閾値から逸脱すると、イオンビームシステムはメンテナンスを受ける。
M.Woffordらの“System and Method for Automatic Calibration of a Multileaf Collimator”(特許文献89)(2001年11月27日)は、コリメータのリーフを動かすことにより放射線療法装置を調整し、リーフとラインとの間の距離が既定の測定結果とおよそ等しいかどうかを調べ、既定の測定結果をコリメータ特異的なカウントに関連づけるためのシステム及び方法を説明する。
D.Leggらの“Normalizing and Calibrating Therapeutic Radiation Delivery Systems”(特許文献90)(1996年4月30日)は、放射線療法配送システムの正常化及び線量測定のための方法を説明する。複数の配送システムを有する陽子療法設備に特に有利である。該方法により、所定の治療は、初期治療計画に関連するステーションばかりでなく利用可能な配送ステーションにおいても正確に実施され得る。
(照射の開始/停止)
K.Hiramotoらの“Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same”(特許文献91)(2001年11月13日)は、荷電粒子ビームが位置調整され、開始され、停止され、及び繰り返し再位置調整される、荷電粒子ビーム装置を説明する。残留粒子は、十分な荷電が可能であれば、新しい粒子の供給無しで加速器において利用される。
K.Matsudaらの“Method and Apparatus for Controlling Circular Accelerator”(特許文献92)(2002年10月8日)は、放出荷電粒子のタイミングを調節するための循環加速器に対する制御方法及び装置を説明する。クロックパルスは、荷電粒子の流れの配送後に停止され、照射される対象の状態に基づき再開される。
(ガントリ)
T.Yamashitaらの“Rotating Irradiation Apparatus”(特許文献93)(2008年6月3日)は、前方リング及び後方リングを有する回転ガントリを説明する。各々のリングは放射状の支持装置を有し、放射状の支持装置は後方ガイドを有する。該システムは、回転可能な身体の回転軸の方向において回転可能な身体の動きを制限する推力支持装置を有する。
T.Yamashitaらの“Rotating Gantry of Particle Beam Therapy System”(特許文献94)(2008年5月13日)は、放射線治療の間のガントリの迅速な動作、制動、及び停止を可能にする空気制動システムにより支持された回転ガントリを説明する。
M.Yanagisawaらの“Medical Charged Particle Irradiation Apparatus”(特許文献95)(2006年1月31日);M.Yanagisawaらの“Medical Charged Particle Irradiation Apparatus”(特許文献96)(2005年12月27日);及びM.Yanagisawaらの“Medical Charged Particle Irradiation Apparatus”(特許文献97)(2005年10月11日)はすべて、上方向及び水平方向からの照射が可能な装置を説明する。ガントリは、照射軸が回転軸とは異なる位置を通過するというように、デバイスを形成する照射場が偏心して配置された回転軸の周囲を回転可能である。
H.Kaercherらの“Isokinetic Gantry Arrangement for the Isocentric Guidance of a Particle Beam And a Method for Constructing Same”(特許文献98)(2005年5月24日)は、水平縦軸の周囲を回転することのできる粒子ビームのアイソセンタガイダンスに対する等運動性ガントリ配置を説明する。
G.Kraftらの“Ion Beam System for Irradiating Tumor Tissues”(特許文献99)(2004年5月4日)は、水平に配置された患者椅子に関連する種々の照射角で腫瘍組織を照射するイオンビームシステムを説明する。患者椅子は中心軸の周囲を回転可能であり、リフティング機構を有する。該システムは、水平方向に対して±15度までの中心イオンビーム偏向を有する。
M.Pavlovicらの“Gantry System and Method for Operating Same”(特許文献100)(2003年10月21日)は、自由に規定可能な有効治療角度からターゲットにイオンビームを調節し配列するためのガントリシステムを説明する。イオンビームは、ガントリ回転軸の周囲の0度から360度の調節可能な角度で、及びガントリ回転軸の周囲の全回転で回転された場合の照射の円錐を作るガントリ回転軸の45度から90度引いた角度で、ターゲットにおいて配列される。
(検出器)
E.Berdermannらの“Detector for Detecting Particle Beams and Method for the Production Thereof”(特許文献101)(2007年9月25日)は、検出器及び検出器の製造方法を説明する。検出器は、結晶性の半導体ダイアモンドプレート及びセラミックプレート基板に配置されたアルミニウム金属コーティングからなる。
(移動可能である患者)
N.Rigneyらの“Patient Alignment System with External Measurement and Object Coordination for Radiation Therapy System”(特許文献102)(2007年4月3日)は、放射線療法システムの可動要素の位置測定結果を得る多数の外部測定装置を含む放射線療法システムのための患者配列システムを説明する。配列システムは、放射線ビームに患者をより正確に記録するように修正位置調整フィードバックを提供する外部の測定結果を用いる。
Y.Muramatsuらの“Medical Particle Irradiation Apparatus”(特許文献103)(2006年4月18日);Y.Muramatsuらの“Medical Particle Irradiation Apparatus”(特許文献104)(2005年6月7日);及びY.Muramatsuらの“Medical Particle Irradiation Apparatus”(特許文献105)(2004年10月12日)はすべて、回転ガントリ、回転ガントリに関連して回転し得るようなガントリ内に配置された環状フレーム、フレームがガントリとともに回転しないようにする反相関機構、及びガントリが回転している間実質的に最低レベルで自由に動くような手段でフレームに連動された柔軟に動くフロアを有する医療用粒子照射装置を説明する。
H.Nonakaらの“Rotating Radiation Chamber for Radiation Therapy”(特許文献106)(1999年11月30日)は、自由かつ柔軟な手段で接続された一連の多数のプレートからなる水平可動フロアを説明する。可動フロアは、放射線ビーム照射セクションの回転に同調して動かされる。
(呼吸)
K.Matsudaの“Radioactive Beam Irradiation Method and Apparatus Taking Movement of the Irradiation Area Into Consideration”(特許文献107)(1996年7月23日)は、呼吸及び心拍動といった身体的なアクティビティに起因して位置が変化する疾患部位の場合でも照射を可能にする方法及び装置を説明する。最初に、罹患している身体の部位の位置変化及び患者の身体的なアクティビティが同時に測定され、それらの間の関係性が関数として規定される。放射線療法は該関数に従って実行される。
(患者位置調整)
Y.Nagamineらの“Patient Positioning Device and Patient Positioning Method”(特許文献108)(2007年5月1日)及びY.Nagamineらの“Patient Positioning Device and Patient Positioning Method”(特許文献109)(2007年5月1日)は、パターンマッチングを用いて参照X線像の対照領域と現在の患者位置の現在のX線像とを比較する患者位置調整システムを説明する。
D.Millerらの“Modular Patient Support System”(特許文献110)(2007年2月6日)は、モジュール拡張可能な患者ポッド及び成形可能な形態のクレードルといった少なくともひとつの固定装置を含む患者支持システムを有する放射線治療システムを説明する。
K.Katoらの“Multi−Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator”(特許文献111)(2005年8月16日);K.Katoらの“Multi−Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator”(特許文献112)(2004年11月23日);K.Katoらの“Multi−Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator”(特許文献113)(2004年11月16日);及びK.Katoらの“Multi−Leaf Collimator and Medical System Including Accelerator”(特許文献114)(2004年9月14日)はすべて、照射療法のための患者の位置調整時間を短縮するように用いられるリーフプレートのシステムを説明する。モーター駆動力は、ピニオンギアを介して同時に複数のリーフプレートに伝達される。該システムはまた、患者を位置調整するために上下空気シリンダー及び上下ガイドを用いる。
(コンピュータ制御)
A.Beloussovらの“Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System”(特許文献115)(2008年5月6日);A.Beloussovらの“Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System”(特許文献116)(2006年8月1日);及びA.Beloussovらの“Configuration Management and Retrieval System for Proton Beam Therapy System”(特許文献117)(2004年11月23日)はすべて、治療の設定可能なパラメータを有するマルチプロセッサソフトウェア制御陽子ビームシステムを説明する。該パラメータは、種々の作動モードに対するソフトウェア制御システムを作成するために認定ユーザーにより容易に修正される。それは、シグナルポイントの不具合がデータベースにおいて発生しても、データ及び設定パラメータは利用可能であることを保証する。
J.Hirotaらの“Automatically Operated Accelerator Using Obtained Operating Patterns”(特許文献118)(1997年12月16日)は、作動パターンに由来する制御により、制御の量及び加速器機構の各要素の制御タイミングを決定するためのメインコントローラを説明する。
(イメージング)
P.Adameeらの“Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same”(特許文献119)(2007年9月25日)及びP.Adameeらの“Charged Particle Beam Apparatus and Method for Operating the Same”(特許文献120)(2006年5月16日)は、対象の一連の及び/又はパラレルなイメージングのために構成された荷電粒子ビーム装置を説明する。
K.Hiramotoらの“Ion Beam Therapy System and its Couch Positioning System”(特許文献121)(2007年3月20日)は、回転ガントリと連動して動くX線イメージングシステムを有するイオンビーム療法システムを説明する。
C.Maurerらの“Apparatus and Method for Registration of Images to Physical Space Using a Weighted Combination of Points and Surfaces”(特許文献122)(2003年5月6日)は、患者の身体で測定された身体的測定値に記録されたX線コンピュータ断層撮影のプロセスを説明する。それにおいては、異なる身体部位が異なるウェイトで与えられる。ウェイトは、剛体トランスフォーメーションプロセスを決定する反復記録プロセスにおいて用いられる。それにおいては、トランスフォーメーション機能は、外科的手順又は定位固定手順を支援するために用いられる。
M.Blairらの“Proton Beam Digital Imaging System”(特許文献123)(1998年10月20日)は、身体の領域を介してX線ビームを作り出すことのできる治療ビームラインに可動である、X線源を有する陽子ビームデジタルイメージングシステムを説明する。患者の方向イメージにおけるビームの中心の相対位置と、選択されたモニュメントに対する最上規定イメージにおけるアイソセンタと、の比較により、ベストのビーム中心をターゲットアイソセンタに対応させるように患者の動きの程度及び方向が決定される。
S.Nishiharaらの“Therapeutic Apparatus”(特許文献124)(1991年8月13日)は、治療ビームを位置調整するための方法及び装置を説明する。それにおいては、第一距離は第一イメージに基づき決定され、第二距離は第二イメージに基づき決定され、及び患者は第一及び第二距離に基づき治療ビーム照射位置に動かされる。
(陽子及び中性子治療/粒子選択)
L.Dahlらの“Apparatus for Generating and Selecting Ions used in a Heavy Ion Cancer Therapy Facility”(特許文献125)(2004年10月26日)は、重イオン癌治療施設において用いられるイオンの発生、抽出、及び選択のための装置(重イオン及び軽イオンを発生させるためのサイクロトロン共鳴イオン源を含む)及び各イオン源のひとつの同位体の形態の下流の重イオン種を選択するための選択手段を説明する。
J.Slaterらの“System and Method for Multiple Particle Therapy”(特許文献126)(1999年2月2日)は、陽子ビーム療法システムを説明する。それにおいては、陽子は、陽子及び中性子源を発生させるベリリウムの中性子源を通過する。
本発明は概して、固形癌の治療に関する。
一実施態様において、荷電粒子ビーム癌治療システムが、患者の固形癌を治療するために用いられる。
他の実施態様において、本発明は、多方向荷電粒子線癌治療方法及び装置に関する。
さらに他の実施態様において、患者位置調整方法及び装置が、癌治療多軸荷電粒子ビーム又は陽子ビーム照射治療方法及び装置と連動して用いられる。該患者位置調整システムは、陽子ビームがターゲティングシステムを用いて腫瘍をスキャンすることのできるゾーンに、患者を移動させ、及び/又は患者を回転させるために用いられる。該患者位置調整システムは、半垂直、座位、又は臥位での位置調整システムといった、患者の動きを拘束するために用いられるシステムと連動して任意に用いられる。
さらなる他の実施態様において、荷電粒子ビーム加速及び抽出方法及び装置が、癌性腫瘍の荷電粒子ビーム照射に連動して用いられる。具体的には、新しいシンクロトロンの方向転換磁石が、シンクロトロンの全体のサイズを最小化するために、厳重に制御された陽子ビームを提供するために、所要の磁場のサイズを直接的に低減するために、所要の稼働電力を直接的に低減するために、及びシンクロトロンからの陽子の抽出のプロセスの間でさえもシンクロトロンにおける陽子の継続的な加速を許容するために用いられる。
他の実施態様において、荷電粒子線癌治療システムは、結合された回転/ラスター方法及び装置を有するよう説明され、多方向荷電粒子線癌治療といわれる。該システムは、多方向からの腫瘍照射をもたらすように、回転する患者に対して固定された方向の陽子源を用いる。該システムは、選択された腫瘍ボリューム又は照射されたスライス内のピーク陽子ビームエネルギーを配送するために、多方向からの層方向の腫瘍照射を、制御されたエネルギー陽子照射と組み合わせる。任意に、所定の角度からの照射に対する選択された腫瘍ボリュームは、腫瘍の末端部である。この方法において、入射のブラッグピークのエネルギーは、腫瘍の周辺に広げられ、健常組織へのダメージが最小化され、及びピーク陽子エネルギーは効果的に、正確かつ精密に腫瘍に配送される。
さらなる他の実施態様において、荷電粒子線癌治療システムを用いて、腫瘍への効果的な放射線量配送のための方法及び装置が説明される。放射線は腫瘍へのエントリーポイントを通って運ばれ、ブラッグピークエネルギーは入射ポイントから腫瘍の末端側又は遠位側にターゲットされる。入射ポイントから腫瘍の末端側へのブラッグピークエネルギーの配送は、多数の回転方向から繰り返される。各々の照射方向からの腫瘍の遠位側をターゲットとするエネルギーレベルによる多方向照射プロセスは、腫瘍への均一かつ効果的な荷電粒子放射線量配送を提供する。好ましくは、荷電粒子線療法は、荷電粒子ビーム注入、加速、抽出、並びに/又はターゲティング方法及び装置の制御によって患者の呼吸のタイミングに合わせられる。
さらなる他の実施態様において、半垂直患者位置調整、位置合わせ、並びに/又は制御方法及び装置が、癌性腫瘍の荷電粒子、陽子ビーム照射療法に連動して用いられる。患者位置調整拘束具は、治療位置に患者を維持するために用いられ、それはシートサポート、背部サポート、頭部サポート、腕部サポート、膝部サポート、及び足部サポートのうちの1又は2以上を含む。位置調整拘束具の1又は2以上は、可動であり、並びに/又は患者の迅速な位置調整及び/若しくは固定のためにコンピュータ制御下にある。該システムは任意に、粒子ビーム癌治療システムの陽子ビーム経路と実質的に同じ経路に存在するX線ビームを用いる。作られたイメージは、陽子ビーム経路に対する良好な方向転換した身体の位置合わせに(正確かつ精密に腫瘍をターゲットするように陽子ビーム経路を制御する)、並びに/又はシステムの検証及びバリデーションにおいて利用可能である。
さらなる実施態様において、半垂直又は座位患者位置調整、位置合わせ、並びに/又は制御方法及び装置が、多軸荷電粒子、若しくは癌性腫瘍の陽子ビーム、放射線療法と連動して用いられる。患者位置調整拘束具は、治療位置に患者を維持するために用いられる。患者位置調整拘束具は、シートサポート、背部サポート、頭部サポート、腕部サポート、膝部サポート、及び足部サポートのうちの1又は2以上を含む。位置調整拘束具の1又は2以上は、可動であり、並びに/又は患者の迅速な位置調整及び/若しくは固定のためにコンピュータ制御下にある。
他の実施態様において、患者の呼吸若しくは呼吸モニタリング並びに/又は制御方法及び装置が、多軸荷電粒子、若しくは癌性腫瘍の陽子ビーム、放射線療法と連動して用いられる。呼吸モニタリングシステムは、呼吸制御を必要とする場合に患者に知らせるために患者に送られるフィードバックシグナル制御と組み合わせて、患者が呼吸周期のどこにいるのかを決定する温度センサー及び/又は力センサーを用いる。もたらされる呼吸制御は、腫瘍治療の正確さ、精密さ、及び/又は効果を向上させるように荷電粒子の腫瘍への配送のタイミングに合わせられる。
さらなる他の実施態様において、本発明は概して、固形癌の治療に関する。より具体的には、コンピュータ制御された患者位置調整、固定、及び再位置調整方法及び装置は、患者の呼吸パターンと連動された多方向荷電粒子線治療とあわせて用いられ、それはさらには荷電粒子ビーム注入、加速、抽出、並びに/又はターゲティング方法及び装置と組み合わされる。
さらなる他の実施態様において、陰イオン源の方法及び装置が、イオンビーム注入システムの一部として用いられる。それは、癌性腫瘍の多軸荷電粒子線又は陽子ビーム照射療法と連動して用いられる。陰イオン源は好ましくは、高温プラズマチャンバーへの水素ガスの注入のための入口ポートを含む。ひとつの場合において、プラズマチャンバーは磁性マテリアルを含み、それは高温プラズマチャンバーと磁場バリアの反対側の低温プラズマ領域との間の磁場バリアを提供する。抽出パルスは、陰イオンビームを陰イオンビーム経路に引き入れるように陰イオン抽出電極に適用される。それは、第一の部分的な真空システムを通り、イオンビーム集束システムを通り、直列加速器に入り、シンクロトロンに入っていく。
さらなる他の実施態様において、陰イオンビーム源の真空方法及び装置が、イオンビーム注入システムの一部として用いられる。それは、癌性腫瘍の多軸荷電粒子線又は陽子ビーム照射療法と連動して用いられる。陰イオンビーム源は、シンクロトロンの真空チューブからの真空バリアにより分離された真空チャンバーを含む。陰イオンビーム源真空システムは好ましくは、第一ポンプターボ分子ポンプ、大型ホールディングボリューム、及び半継続的な作動ポンプを含む。イオンビーム源真空チャンバーを膨張させることのみにより、及び大型ホールディングボリュームにおける又はその周囲におけるセンサー表示に基づきイオンビーム源真空を半継続的に作動させることにのみにより、半継続的に作動するポンプの寿命が延ばされる。
さらなる他の実施態様において、イオンビーム集束方法及び装置が、イオンビーム注入システムの一部として用いられる。それは、癌性腫瘍の多軸荷電粒子線又は陽子ビーム照射療法と連動して用いられる。イオンビーム集束システムは、2又は3以上の電極を含み、それにおいては、各々の電極対のひとつの電極は、導電性メッシュといった導電性の経路でイオンビーム経路を部分的に妨害する。所定の電極対において、電場ライン(第一電極の導電性メッシュと第二電極との間を走行する)は、陰イオンビームを集束させる内向きの力を提供する。多数のこのような電極対は、領域を集束させる多数の陰イオンビームを提供する。
他の実施態様において、直列加速器方法及び装置(イオンビーム注入システムの一部である)が、癌性腫瘍の多軸荷電粒子線照射療法と連動して用いられる。陰イオンビーム源は好ましくは、注入システム真空システム及びフォイルにより分離されたシンクロトロン真空システムを含み、それにおいては、陰イオンが陽イオンに変換される。フォイルは好ましくは、注入システム真空チャンバーにおける高い分圧及びシンクロトロン真空システムにおける低圧をもたらす真空チューブの端に直接に又は非直接にシールされる。
真空チャンバーを2つの圧力領域に物理的に分けてフォイルを有することは、シンクロトロンにおいて低圧システムを維持するためのより少なく及び/又はより小さいポンプを可能にする。入口水素ガスが注入部分的真空システムにより分かれて収容され及び分離されたスペースに抽出されるためである。
さらなる他の実施態様において、ラジオ周波数(RF)加速器方法及び装置が、癌性腫瘍の多軸荷電粒子線照射療法と連動して用いられる。RF合成器は、一連の統合超小型回路、ループ、及びコイルに、低電圧のRFシグナル(陽子ビーム経路における陽子の循環の時期に同期される)を提供する。それにおいて、コイルはシンクロトロンの陽子ビーム経路の周囲を取り囲む。統合要素は組み合わされて、圧縮されたサイズ及び低減された価格のフォーマットにおいて陽子ビーム経路のプロトンに加速している電圧をもたらす。統合RF増幅超小型回路/加速コイルシステムは、約1MHz(低エネルギー陽子ビーム用)から約15MHz(高エネルギー陽子ビーム用)まで作動可能である。
さらなる他の実施態様において、多方向イメージング及び多方向荷電粒子線癌治療方法及び装置は、患者の呼吸をモニターし及び/又は制御するために用いられるフィードバックセンサーの使用によって患者の呼吸に連動される。
本発明の実施態様と組み合わせて用いられると、荷電粒子ビーム癌治療システムの1又は2以上の新しいデザインの特徴が説明される。具体的には、陰イオン源、イオン源真空システム、イオンビーム集束レンズ、及び直列加速器における新しい特徴を有する陰イオンビーム源が説明される。さらに、シンクロトロンは、方向転換磁石及びエッジ集束磁石を含み、それはシンクロトロンの全体のサイズを最小化し、厳重に制御された陽子ビームを提供し、所要の磁場のサイズを直接に低減し、所要の稼働電力を直接に低減する。イオンビーム源システム及びシンクロトロンは好ましくは、患者イメージングシステム並びに呼吸モニタリングセンサー及び患者位置調整要素を含む患者インターフェースと統合されたコンピュータである。さらに、該システムは、加速及び/又はターゲティング方法及び装置と統合される。より具体的には、エネルギー及びシンクロトロンの荷電粒子ストリームのタイミング制御は、患者位置調整及び癌治療と連動される。シンクロトロン制御要素は、荷電粒子ビームの厳重な制御を許容し、それは健常組織の周囲への低減された組織ダメージを伴う固形癌の効果的な治療をもたらすように患者位置調整の厳重な制御を実行する。加えて、該システムは、シンクロトロンの全体のサイズを低減し、厳重に制御された陽子ビームを提供し、所要の磁場のサイズを直接に低減し、所要の稼働電力を直接に低減し、及びシンクロトロンからの陽子の抽出のプロセスの間でさえもシンクロトロンにおける陽子の継続的な加速を可能にする。組み合わせることで、該システムは、健常組織の周囲へのダメージを最小限にしつつ効果的で、正確かつ精密な、非侵襲的な癌治療をもたらす。
種々の実施態様において、荷電粒子線癌治療システムは、以下のいずれをも包含する。
・中央磁性部材、並びに高温及び低温プラズマ領域を分離する磁場を有する注入システム;
・直列加速器におけるフォイルのプラズマ発生システム側の第一分圧領域、及びフォイルのシンクロトロン側の第二低分圧領域を作り出す2つの真空システム;
・陰イオンビームを軸方向に横断する導電性メッシュを有する陰イオンビーム集束システム;
・4つの直線部及び4つの方向転換部を有するシンクロトロン;
・六極磁石を有しないシンクロトロン;
・シンクロトロンの各方向転換部における4つの偏向磁石;
・多数の偏向磁石を包む巻線コイル;
・斜角である複数の偏向磁石、及び各方向転換部において集束する荷電粒子;
・加速コイルの周りでループを介した電流を提供する統合されたRF−増幅器超小型回路;
・多方向イメージング及び/又は多方向陽子療法を許容する、対象を方向転換させるための回転可能なプラットフォーム;
・腫瘍の周囲360度で入射のブラッグピークエネルギーを分散させる放射計画;
・位置調整、固定、及び再位置調整システム;
・呼吸センサー;
・以下の同時かつ独立した制御:
・陽子ビームエネルギー;
・x−軸陽子ビーム制御;
・y−軸陽子ビーム制御;
・患者移動;及び
・患者回転;並びに
・荷電粒子線療法を以下の1又は2以上のタイミングに合わせるシステム:
・患者移動;
・患者回転;及び
・患者の呼吸
(陽子療法)
プロトンは、その比較的巨大なサイズに起因して、組織においてX線又はガンマ線よりも容易には散乱せず、ほとんど横分散しない。したがって、陽子ビームは、組織周囲への横方向へのダメージをそれほど与えることなく、腫瘍の形状に集中して留まる。すべての陽子の所定のエネルギーは、一定の範囲を有し(ブラッグピークにより規定される)、組織に対する線量配送の比率は、粒子の範囲の最後の数ミリメーターにわたって最大となる。浸透深度は粒子のエネルギーに依存し、それは粒子が陽子加速器により加速されたスピードに直接に関係している。陽子のスピードは、加速器の最大比率に調節可能である。そのために、腫瘍が存在している組織の非常に深いところにおいて陽子ビームによる細胞ダメージを集中させることができる。ブラッグピーク前に存在する組織はいくらか低減された線量を受け、ブラッグピーク後に存在する組織は何も受けない。
(サイクロトロン/シンクロトロン)
サイクロトロンは持続する磁場及び一定周波数の印加電場を用いる。2つの場のうちのひとつは、シンクロトロンにおいて変えられる。これらの場の両方は、シンクロトロンにおいて変えられる。したがって、シンクロトロンは、磁場が粒子を方向転換させるために用いられる、特定のタイプの循環粒子加速器である。粒子は循環し、電場は粒子を加速するために用いられる。シンクロトロンは注意深く、印加電場を、移動している粒子ビームに同期させる。
粒子がエネルギーを得るときに適切に印加磁場を増大させることにより、荷電粒子が加速されるときに電荷粒子経路は一定に保たれる。それにより、粒子のための真空容器は大型の細い円環面となる。実際には、偏向磁石と、円環面に円い角の多角形の形状を与えるいくつかの方向転換部と、の間にいくつかの直線部を用いることはより簡単である。このようにして、大型の有効半径の経路は、簡素な直線及び曲線状のパイプ部分を用いて構成され、サイクロトロン型の装置の円盤状のチャンバーとは異なる。該形状はまた、粒子ビームを偏向させるための多数の磁石の使用を許容し及び必要とする。
循環加速器がもたらすことのできる最大エネルギーは典型的には、磁場の強さ及び粒子経路の最小半径/最大曲率により制限される。サイクロトロンにおいて、粒子が中心及びらせんの外で開始すると、最大半径はかなり限られる。したがって、この全体の経路は自立した円盤状の真空チャンバーでなければならない。半径は制限されているため、機器の電力は、磁場の強さにより制限されるようになる。通常の電磁石の場合において、磁場の強さはコアの飽和により制限される。すべての磁区が配列されるとき、磁場は実用的な程度までさらに増強され得ないからである。単一のペアの磁石のアレンジメントはまた、装置の経済的なサイズを制限する。
シンクロトロンは、より小さくより厳密な集束磁石に取り囲まれた狭いビームパイプを用いて、これらの制限を克服する。シンクロトロンの粒子を加速する能力は、粒子がとにかく加速されるために荷電されなければならないが加速下の荷電粒子は光子を放射しその結果エネルギーを失うという事実により制限されている。ビームエネルギーの限界は、循環におけるビーム経路を維持するのに要する横方向の加速に失われたエネルギーが各サイクルに加えられたエネルギーと同等となるときに到達する。より強力な加速器は、コーナー間の粒子ビームを加速するために、大きな半径の経路を用いることで、並びにより大きく及びより強力なマイクロ波空洞を用いることで作られる。電子といったより軽い粒子は、方向転換の際にそのエネルギーの大部分を失う。事実上、電子/陽電子加速器のエネルギーは、この放射ロスにより制限されるが、陽子又はイオン加速器の力学においてはたいして重要な役割を果たさない。これらのエネルギーは、磁石の強さにより及びコストにより厳しく制限される。
(荷電粒子ビーム療法)
本明細書においては、陽子ビーム、水素イオンビーム、又は炭素イオンビームといった荷電粒子ビーム療法システムが説明される。本明細書において、荷電粒子ビーム療法システムは、陽子ビームを用いて説明される。しかしながら、陽子ビームの表現で教示され説明された態様は、陽子ビームのそれに制限することを目的とせず、及び荷電粒子ビームシステムを説明している。いかなる荷電粒子ビームシステムも等しく本明細書に記載された技術に適用可能である。
図1を参照すると、荷電粒子ビームシステム100が図示されている。荷電粒子ビームシステムは好ましくは、メインコントローラ110;注入システム120;典型的には(1)加速器システム132及び(2)抽出システム134を含むシンクロトロン130;スキャニング/ターゲティング/配送システム140;患者インターフェースモジュール150;ディスプレイシステム160;並びに/又はイメージングシステム170のいずれかを含むいくつかのサブシステムを備える。
荷電粒子ビームシステム100の使用の典型的な方法が提供される。メインコントローラ110は、正確かつ精密に陽子を患者の腫瘍に配送するために1又は2以上のサブシステムを制御する。例えば、メインコントローラ110は、イメージングシステム170から、身体及び/又は腫瘍の一部といったイメージを取得する。メインコントローラ110はまた、患者インターフェースモジュール150から位置及び/又はタイミングの情報を取得する。メインコントローラ110はその後任意に、陽子をシンクロトロン130に注入するために注入システム120を制御する。シンクロトロンは典型的には、少なくとも加速器システム132及び抽出システム134を収容する。メインコントローラは好ましくは、陽子ビームのスピード、軌道、及びタイミングを制御するといったことにより、加速器システム内の陽子ビームを制御する。メインコントローラはその後、抽出システム134を経由して加速器からの陽子ビームの抽出を制御する。例えば、コントローラは、抽出されたビームのタイミング及び/又はエネルギーを制御する。コントローラ110はまた好ましくは、スキャニング/ターゲティング/配送システム140を経由した陽子ビームの患者インターフェースモジュール150へのターゲティングを制御する。患者の移動位置及び回転位置といった患者インターフェースモジュール150の1又は2以上の要素は好ましくは、メインコントローラ110により制御される。さらに、ディスプレイシステム160のディスプレイ要素は好ましくは、メインコントローラ110により制御される。ディスプレイスクリーンといったディスプレイは典型的には、1若しくは2以上のオペレーター及び/又は1若しくは2以上の患者に提供される。一実施態様において、メインコントローラ110はすべてのシステムからの陽子ビームの配送の時間を調節し、陽子が患者の腫瘍に最適な治療様式で配送されるようにする。
本明細書において、メインコントローラ110は、荷電粒子ビームシステム100を制御する単一システムを、荷電粒子ビームシステム100を制御する複数のサブシステムを制御する単一コントローラを、又は荷電粒子ビームシステム100の1又は2以上のサブシステムを制御する複数の個々のコントローラをいう。
次に図2を参照すると、荷電粒子ビームシステム100のひとつのバージョンの実例となる典型態様が提供される。数字、位置、及び要素の記載されたタイプが図示され、事実上制限はない。図示された態様において、注入システム120又はイオン源若しくは荷電粒子ビーム源は陽子を発生させる。陽子は、シンクロトロンに入り、シンクロトロンを経由し、及びシンクロトロンから走行する真空チューブに配送される。発生した陽子は、初期経路262に沿って配送される。四極磁石又は注入四極磁石といった集束磁石230は、陽子ビーム経路を集束させるために用いられる。四極磁石は、集束磁石である。注入器偏向磁石232は、シンクロトロン130の平面の方向に陽子ビームを偏向させる。初期エネルギーを有する集束された陽子は、注入器磁石240に導入され、それは好ましくは注入Lamberson磁石である。典型的には、初期ビーム経路262は、シンクロトロン130の循環平面の軸外(例えば、上方)に沿う。注入器偏向磁石232及び注入器磁石240は組み合わされて陽子をシンクロトロン130に移動させる。メイン偏向磁石、双極磁石、又は循環磁石250は、循環しているビーム経路264に沿って陽子を方向転換させるために用いられる。双極磁石は、偏向磁石である。メイン偏向磁石250は、循環しているビーム経路264に初期ビーム経路262を偏向させる。この例において、メイン偏向磁石250又は循環磁石は、安定して循環しているビーム経路に循環ビーム経路264を維持するために4つの磁石の4セットとして示される。しかしながら、磁石又は一連の磁石のいずれも任意に、循環プロセスにおける単一の軌道の周囲の陽子を動かすために用いられる。陽子は加速器270を通過する。加速器は、循環ビーム経路264において陽子を加速する。陽子が加速されるにつれて、磁石により印加された電場が増大する。具体的には、加速器270により達成された陽子のスピードは、メイン偏向磁石250又は循環磁石の磁場に同期され、シンクロトロンの中心点又は領域280の周りの陽子の安定した循環を維持する。時間において分離したポイントにおいて、加速器270/メイン偏向磁石250の組み合わせは、循環経路又は軌道において陽子を維持している間、循環している陽子を加速及び/又は減速させるために用いられる。インフレクター/デフレクターシステム290の抽出要素は、シンクロトロン130内の循環ビーム経路264からの陽子を除くために、Lamberson抽出磁石292と組み合わせて用いられる。デフレクター要素の一例は、Lamberson磁石である。典型的には、デフレクターは、陽子を、循環平面から、循環平面の上方といった循環平面の軸外へと移動させる。抽出された陽子は好ましくは、抽出偏向磁石237及び抽出集束磁石235を用いて動かされ及び/又は集束される。それは例えば、スキャニング/ターゲティング/配送システム140への移送経路268に沿った四極磁石である。スキャニングシステム140又はターゲティングシステムの2要素は典型的には、垂直コントロールといった第一軸コントロール142、及び水平コントロールといった第二軸コントロール144を含む。一実施態様において、第一軸コントロール142は陽子ビーム268の約100mmの垂直又はy−軸スキャニングを可能とし、第二軸コントロール144は陽子ビーム268の約700mmの水平又はx−軸スキャニングを可能とする。
陽子は制御されて患者インターフェースモジュール150及び患者の腫瘍に配送される。上述にリストされた要素のすべては任意であり、種々の置換及び組み合わせにおいて用いられ得る。上述にリストされた要素の各々はさらに以下に説明される。
(イオンビーム発生システム)
イオンビーム発生システムは、水素アニオン又はH−ビームといった陰イオンビームを発生させ;好ましくは陰イオンビームを集束させ;陰イオンビームを陽子又はH+ビームといった陽イオンビームに変換し;及びシンクロトロン130に陽イオンビーム262を注入する。イオンビーム経路の部分は好ましくは、部分的に真空下にある。これらのシステムの各々はさらに以下に説明される。
図3を参照すると、典型的なイオンビーム発生システム300が図示されている。図示されている通り、イオンビーム発生システム300は、陰イオン源310、第一部分真空システム330、選択イオンビーム集束システム350、及び直列加速器390の4つの主要なサブセクションを有する。
さらに図3を参照すると、陰イオン源310は好ましくは、水素ガスを高温プラズマチャンバー314に注入するための注入ポート312を含む。一実施態様において、プラズマチャンバーは磁性マテリアル316を含み、それは高温プラズマチャンバー314と磁場バリアの反対側の低温プラズマ領域との間の磁場317を提供する。抽出パルスは、陰イオンビームを陰イオンビーム経路319に引き入れるために陰イオン抽出電極318に与えられる。それは、第一部分的真空システム330を経由して、選択イオンビーム集束システム350を経由して、直列加速器390に進む。
さらに図3を参照すると、第一部分真空システム330は、水素ガス入口ポート312から直列加速器390におけるフォイル395に走行する閉鎖システムである。フォイル395は好ましくは、約10−5トールといったより高い圧力(フォイル395の第一部分的真空システム330側において維持される)及び約10−7トールといったより低い圧力(フォイル390のシンクロトロン側において維持される)を提供する真空チューブ320の端に直接に又は非直接にシールされている。第一部分的真空システム330を膨張させることのみにより、及びセンサー表示に基づきイオンビーム源真空システムを半連続的に作動させることのみにより、半継続的に作動するポンプの寿命は引き延ばされる。センサー表示はさらに以下に説明される。
さらに図3を参照すると、第一部分的真空システム330は好ましくは、連続的に作動するポンプ及び/又はターボ分子ポンプといった第一ポンプ332;大型ホールディングボリューム334;及び半連続的作動ポンプ336を含む。好ましくは、ポンプコントローラー340は、大型ホールディングボリューム334の圧力をモニターする圧力センサー342からのシグナルを受ける。大型ホールディングボリューム334における十分な圧力を表すシグナルにおいて、ポンプコントローラー340は、アクチュエーター345に大型ホールディングボリュームと半連続的作動ポンプ336との間のバルブ346を開けるように指示し、及び半連続的作動ポンプ336に起動し荷電粒子ストリームの周りの真空ライン320から空気残留ガスに汲み上げるように指示する。この態様において、半連続的作動ポンプ336の寿命は、反連続的かつ必要に応じて作動することのみにより引き延ばされる。一例において、半連続的作動ポンプ336は、4時間ごとに5分間というように数時間ごとに数分間作動し、約2,000時間から約96,000時間のポンプの寿命を引き延ばす。
さらに、入口ガスをシンクロトロン真空システムから分離することにより、シンクロトロン真空ポンプが取り扱うより少ないガス分子を有する場合、ターボ分子ポンプといったシンクロトロン真空ポンプは、より長い寿命で作動し得る。例えば、入口ガスは主として水素ガスであるが、窒素及び二酸化炭素といった不純物を含むかもしれない。陰イオン源システム310、第一部分真空システム330、イオンビーム集束システム350、及び直列加速器390の陰イオンビーム側において入口ガスを分離することにより、シンクロトロン真空ポンプはより長い寿命で低圧で作動し得る。それはシンクロトロン130の作動効率を向上させる。
さらに図3を参照すると、最適なイオンビーム集束システム350は好ましくは、各電極対のひとつの電極が導電性メッシュといった導電性経路372でイオンビーム経路を部分的に妨害する、2又は3以上の電極を含む。図示された例において、二電極イオンビーム集束セクション360、第一の三電極イオンビーム集束セクション370、及び第二の三電極イオンビーム集束セクション380の3つのイオンビーム集束システムセクションが図示されている。所定の電極対に対して、電場ライン(第一電極と第二電極との導電性メッシュの間を走行する)は、陰イオンビームを集束させる内部の力を提供する。多数のこのような電極対は、領域を集束させる多数の陰イオンビームを提供する。好ましくは、二電極イオンビーム集束セクション360、第一の三電極イオンビーム集束セクション370、及び第二の三電極イオンビーム集束セクション380は、陰イオン源の後に及び直列加速器の前に配置され、並びに/又はイオンビーム経路に沿って約0.5,1,又は2メートルのスペースを覆う。イオンビーム集束システムはさらに以下に説明される。
さらに図3を参照すると、直列加速器390は好ましくは、炭素フォイルといったフォイル395を含む。陰イオンビーム経路319における陰イオンは、陽子といった陽イオンに変換され、初期イオンビーム経路262が生じる。フォイル395は好ましくは、約10−5トールといったより高い圧力(陰イオンビーム経路319を有するフォイル395の側において維持される)及び約10−7トールといったより低い圧力(陽子イオンビーム経路262を有するフォイル390の側において維持される)を提供する真空チューブ320の端に直接に又は非直接にシールされている。真空チャンバーを2つの圧力領域に物理的に分離するフォイル395を有することは、シンクロトロン130における低圧システムを維持するためのより少なく及び/又はより小さいポンプを有するシステムを可能にする。入口水素及び残留物が第一部分的真空システム330により独立して収容され及び分離されたスペースにおいて抽出されるからである。
(陰イオン源)
本明細書において陰イオン源310の例がさらに説明される。図4を参照すると、典型的な陰イオン源システム400の横断図が提供される。陰イオンビーム319は、多数のステージにおいて作られる。第一ステージの間、水素ガスはチャンバーに注入される。第二ステージの間、陰イオンが第一高圧パルスの付加により作られ、それは陰イオンを作り出すために水素ガスの周りにプラズマを作り出す。第三ステージの間、磁場フィルターはプラズマの要素に付与される。第四ステージの間、陰イオンが低温プラズマ領域から抽出され、それは磁場バリアの反対側において、第二高電圧パルスの付与によるものである。4つのステージの各々はさらに以下に説明される。チャンバーがシリンダーの横断図として図示されている一方で、シリンダーは例示にすぎず、いかなる形状も磁気ループ格納壁に適応する(以下に説明される)。
第一ステージにおいて、水素ガス440が入口ポート312を経由して高温プラズマ領域490に注入される。注入ポート312は、真空チャンバー320の条件を維持するための真空ポンプの条件を最小限にするために、1,5,又は10マイクロ秒未満といった短い期間、開いている。高温プラズマ領域は、部分的真空システム330により低減された圧力に維持される。水素ガスの注入は、メインコントローラ110により任意に制御され、それはイメージングシステム170の情報及び患者位置調整及び呼吸サイクルの期間といった患者インターフェースモジュール150の情報に応答する。
第二ステージにおいて、高温プラズマ領域490は、第一電極422及び第二電極424における第一高電圧パルスを付与することにより作られる。例えば、5kVのパルスが第二電極424において5kVで約20マイクロ秒付与され、及び約0kVが第一電極422において付与される。チャンバー内の水素は、高温プラズマ領域490において、水素原子、H0、陽子、H+、電子、e−、及び水素アニオン、H−のいずれかといった構成部分に分解される。高電圧パルスの例は、少なくとも15マイクロ秒の時間で少なくとも4キロボルトのパルスである。
第三ステージにおいて、高温プラズマ領域490は、磁場317又はこの具体例においては磁場バリア430によって低温プラズマ領域492から少なくとも部分的に分離している。高エネルギー電極は、磁場バリア430を通過することを禁止されている。この方法において、磁場バリア430は、陰イオン源において、ゾーンA及びゾーンBの間のフィルターとして機能する。好ましくは、中心磁性マテリアル410は(磁性マテリアル316の例である)、高温プラズマ領域490の中心軸に沿うというように、高温プラズマ領域490内に配置される。好ましくは、第一電極422及び第二電極424は、鉄といった磁性マテリアルからなる。好ましくは、シリンダー壁といった高温プラズマ領域の外壁450は、永久磁石といった磁性マテリアル、鉄(ferric)若しくは鉄(iron)をベースにしたマテリアル、又は鉄誘電体リング磁石からなる。この態様において、磁場ループは、中心磁性マテリアル410、第一電極422、外壁450、第二電極424、及び磁場バリア430により作られる。再度、磁場バリア430は、高エネルギー電極が磁場バリア430を通過することを禁止する。低エネルギー電子は、低温プラズマ領域492において、水素原子、H0(水素アニオン、H−を作り出す)と相互作用する。
第四ステージにおいて、第二高電圧パルス又は抽出パルスは、第三電極426に付与される。第二高電圧パルスは、第一高電圧パルスの付与の後半の間、優先的に付与される。例えば、約25kVの抽出パルスは、約20マイクロ秒の第一発生パルスの最後約5マイクロ秒付与される。第二の例において、抽出パルスのタイミングは、第一高電圧パルスの期間、例えば約1,3,5,又は10マイクロ秒間重なる。第三電極426と第二電極424との間の約20kVの電位差は、低温プラズマ領域492から陰イオン、H−を抽出し、ゾーンBからゾーンCへ陰イオンビーム319を誘導する。
磁場バリア430は任意に、いくつかの方法で作られる。コイルを用いた磁場バリア430の生成の例が提供される。この例において、図4に関連して上記で説明された構成要素がいくつかの違いを伴い維持される。第一に、磁場はコイルを用いて作られる。絶縁マテリアルが好ましくは、第二電極424とシリンダー壁450との間と同様に、第一電極422とシリンダー壁450との間に提供される。中心マテリアル410及び/又はシリンダー壁450は任意に、金属製である。この方法において、コイルは、第一電極422、絶縁マテリアル、外壁450、第二電極424、磁場バリア430、及び中心マテリアル420を経由して磁場ループを作り出す。基本的に、コイルは、磁性マテリアル410による磁場発生の場所において磁場を発生させる。磁場バリア430は上記で説明されたように機能する。概して、高温プラズマ領域490と低温プラズマ領域492との間に磁場バリア430を作り出すいかなる態様も、本明細書で説明されたイオンビーム抽出システム400に機能的に適用可能である。
(イオンビーム集束システム)
図5を参照すると、イオンビーム集束システム350がさらに説明される。この例において、3つの電極が用いられる。この例において、第一電極510及び第三電極530は両方とも陰性荷電されており、各々は陰イオンビーム経路319を周囲に取り囲む又は少なくとも部分的に取り囲むリング電極である。第二電極520は陽性荷電されており、また陰イオンビーム経路を少なくとも部分的に及び好ましくは実質的に周囲に取り囲むリング電極である。加えて、第二電極は陰イオンビーム経路319を走行する1又は2以上の導電経路372を含む。例えば、導電経路は、ワイヤーメッシュ、導電グリッド、又は第二電極を通過する一連の実質的に並列な導電ラインである。使用において、電場ラインは、陽性荷電された電極の導電経路から陰性荷電された電極に走行する。例えば、使用において、電場ライン540は、陰イオンビーム経路319における導電経路372から陰性荷電された電極510,530に走行する。陰イオンビーム経路の2本の光線追跡ライン550,560は、集束する力を図示するために用いられる。第一光線追跡ライン550において、陰イオンビームは、ポイントMで第一電場ラインと遭遇する。陰イオンビーム550における陰性荷電されたイオンは、電場ライン572を上げる力と遭遇し、x−軸要素ベクトル571で図示される。x−軸要素力ベクトル571は、第一光線追跡ラインの軌道を内向き力ベクトル552に変える。それはポイントNで第二電場ラインに遭遇する。再度、陰イオンビーム552は、電場ライン574を上げる力に遭遇し、それはx−軸要素573を伴う内向き力ベクトル552を有するように図示される。それは、内向き力ベクトル552をさらなる内向き力ベクトル554に変える。同様に、第二光線追跡ライン560において、陰イオンビームは、ポイントOで第一電場ラインに遭遇する。陰イオンビームにおける陰性荷電されたイオンは、電場ライン576を上げる力に遭遇し、それはx−軸力575を伴う力ベクトルを有するように図示される。内向き力ベクトル575は、第二光線追跡ライン560の軌道を内向き力ベクトル562に変える。それはポイントPで第二電場ラインに遭遇する。再度、陰イオンビームは、電場ライン578を上げる力に遭遇し、それはx−軸要素577を伴う力ベクトルを有するように図示される。それは内向き力ベクトル562をさらなる内向き力ベクトル564に変える。最終結果は、陰イオンビームへの集束効果である。力ベクトル572,574,576,578は任意に、陰イオンビーム経路の三次元集束をもたらすx及び/又はy力ベクトル要素を有する。当然ながら、力ベクトルが事実上実例となり、多くの電場ラインが遭遇され、集束効果が全体の集束をもたらす各々の遭遇で観察される。例は、集束効果を図示するために用いられる。
さらに図5を参照すると、2,3,4,5,6,7,8,又は9電極といった任意にいずれかの数字の電極が用いられ、所定の集束セクションにおいて他のすべての電極が陽性荷電又は陰性荷電されている陰イオンビーム経路を集束する。例えば、3つの集束セクションが任意に用いられる。第一イオン集束セクション360において、電極対は、陰イオンビーム経路に沿って遭遇された第一電極が陰性荷電され、第二電極が陽性荷電されているところで用いられる。それにより陰イオンビーム経路の集束がもたらされる。第二イオン集束セクション370において、2つの電極対が用いられ、そこでは陰イオンビーム経路319を走行する導電メッシュで陽性荷電された通常の電極が用いられる。したがって、第二イオン集束セクション370において、陰イオンビーム経路に沿って遭遇された第一電極は陰性荷電され、第二電極は陽性荷電され、陰イオンビーム経路の集束がもたらされる。さらに、第二イオン集束セクションにおいて、陰イオンビーム経路に沿って移動し、第二集束効果が第二陽性荷電電極と第三陰性荷電電極との間で観察される。この例において、第三イオン集束セクション380は再度3つの電極を有するところで用いられ、上記で説明されたように、第二イオン集束セクションの態様で機能する。
図6を参照すると、イオンビーム集束システム350における電極の中心領域がさらに説明される。図6Aを参照すると、陰性荷電リング電極510の中心領域は好ましくは、導電性マテリアルの空間である。図6B−Dを参照すると、陽性荷電電極リング520の中心領域は好ましくは、導電性経路372を含む。好ましくは、陽性荷電電極リング520内の導電性経路372又は導電性マテリアルは領域の約1,2,5,又は10パーセントをブロックし、より好ましくは、陰イオンビーム経路319の断面積の約5パーセントをブロックする。図6Bを参照すると、ひとつのオプションは、導電性メッシュ610である。図6Cを参照すると、2つめのオプションは、陰イオンビーム経路319の一部を囲む陽性荷電電極リング520を実質的に並列に走行する一連の導電性ライン620である。図6Dを参照すると、3つめのオプションは、フォイル630又は金属層がマテリアルを通して開けられた孔を伴う陰イオンビーム経路の断面領域のすべてを覆うようにすることである。そこにおいては、孔がフォイルの領域の約90−99パーセント及びより好ましくは約95パーセントを占める。より一般的に、電極対510,520は、上記で説明されるように、陰イオンビーム319におけるイオンが電場ラインを介して変換するとき、陰イオンビーム319に集束力ベクトルを提供する電場ラインを提供するように構成される。
第一断面直径d1を有する2つの電極陰性ビームイオン集束システムの例において、陰イオンは第二断面直径d2に集束される。ここで、d1>d2である。同様に、第一イオンビーム断面直径d1を有する3つの電極陰性ビームイオン集束システムの例において、陰イオンは3つの電極システムを用いて第三陰イオンビーム断面直径d3に集束される。ここで、d1>d3である。電極におけるポテンシャルに対して、3つの電極システムは、2つの電極システム(d3<d2)に比してよりタイトかつ強力な集束を提供する。
多電極イオンビーム集束システムの例(上記で提供された)において、電極はリングである。より一般的に、電極は、上記で説明されたように、陰イオンビーム319におけるイオンが電場ラインを介して変換するときに、陰イオンビームに集束力ベクトルを提供する電場ラインを提供するのに十分な形状からなる。例えば、ひとつの陰性リング電極は任意に、陰イオンビームプローブの横断面領域の外側領域の周りに配置された約2,3,4,6,8,10,又はそれ以上の電極といった、多数の陰性荷電電極により置換される。概して、より多くの電極がより早く又は高いエネルギービームを集中させ又は発散させるために必要とされる。
他の実施態様において、上述の例における電極の極性を反対にさせることにより、陰イオンビームが作られて分散する。したがって、陰イオンビーム経路319は任意に、電極対の組み合わせを用いて集束され及び/又は拡大される。例えば、陰イオンビーム経路におけるメッシュを有する電極が陰性に作られると、陰イオンビーム経路が作られて非集束する。ゆえに、電極対の組み合わせは陰イオンビーム経路を集束し及び非集束するために用いられる。例えば、第一の対は集束に対する陽性荷電メッシュを含み、第二の対は非集束に対する陰性荷電メッシュを含む。
(直列加速器)
図7Aを参照すると、直列加速器390がさらに説明される。直列加速器は、一連の電極710,711,712,713,714,715を用いてイオンを加速する。例えば、陰イオンビーム経路における陰イオン(例えばH−)は、陰イオンビーム源310の抽出電極426又は第三電極426の電圧に比して漸次的に高い電圧を有する一連の電極を用いて加速される。例えば、直列加速器390は任意に、抽出電極426の25kVから直列加速器390のフォイル395近傍の約525kVまでの範囲の電極を有する。
フォイル395を通過する際、陰イオンH−は2つの電子を失い、式1に従い陽子H+を発生させる。
陽子はさらに、多数のさらなる電極713,714,715の適切な電圧を用いて直列加速器において加速される。陽子はその後、上記に記載されたように、シンクロトロン130に注入される。
さらに図7を参照すると、直列加速器390におけるフォイル395がさらに説明される。フォイル395は好ましくは、厚さ約30−200オングストロームの非常に薄いカーボンフィルムである。フォイルの厚さは、(1)イオンビームをブロックせず、(2)陽子を発生させる電子の移動により陽子ビーム経路262を形成するようにデザインされる。フォイル395は好ましくは、支持グリッドといった支持層720と実質的に接触している。支持層720は、フォイルに機械的強度を与え、組み合わされて真空ブロッキング要素を形成する。フォイル395は、窒素、二酸化炭素、水素、及び他のガスが通過できないようにし、真空バリアとして機能する。一実施態様において、フォイル395は好ましくは、約10−5トールといったより高い圧力(陰イオンビーム経路319を有するフォイル395の側において維持される)及び約10−7トールといったより低い圧力(陽子イオンビーム経路262を有するフォイル395の側において維持される)を提供する真空チューブ320の端に直接に又は非直接にシールされている。真空チャンバー320を2つの圧力領域に物理的に分離するフォイル395を有することは、シンクロトロン130における低圧システムを維持するためにより少なく及び/又はより小さいポンプを有する真空システムを可能にする。入口水素及び残留物が、第一部分的真空システム330により独立して収容され及び分離されたスペースにおいて抽出されるからである。フォイル395及び支持層720は好ましくは、直列加速器390又は真空チューブ320の構造体750に取り付けられ、アタッチメントスクリュー740により壁に押しつけられた金属製、プラスチック製、又はセラミック製リング730といった機械的手段を用いて圧力バリアを形成する。フォイル395により2つの真空チャンバー側を分離し及びシールするいかなる機械的手段もこのシステムに等しく適用可能である。図7B及び7Cを参照すると、支持構造720及びフォイル395は、x−平面、y−平面において個別に示される。
図8を参照すると、荷電粒子ビームシステム100の他の典型的な使用方法が提供される。メインコントローラ110又は1若しくは2以上のサブコントローラは、患者の腫瘍に陽子を正確かつ精密に配送するようにサブシステムの1又は2以上を制御する。例えば、メインコントローラは、患者にいつ又はどのように呼吸するかを示すメッセージを送る。メインコントローラ110は、温度呼吸センサーといった患者インターフェースモジュールからのセンサー読み取り値、又は呼吸サイクルにおいて対象がどこにいるのかを示す力読み取り値を取得する。呼吸サイクルにおける特異的かつ再現可能なポイントで連動され、メインコントローラは、イメージングシステム170から、身体及び/又は腫瘍の部分といったイメージを収集する。メインコントローラ110はまた、患者インターフェースモジュール150から位置及び/又はタイミングの情報を取得する。メインコントローラ110はその後任意に、水素ガスを陰イオンビーム源310に注入する注入システム120を制御し、及び陰イオンビーム源310から陰イオンを抽出するタイミングを制御する。任意に、メインコントローラは、イオンビーム集束レンズシステム350を用いるイオンビーム集束;直列加速器390による陽子ビームの加速;及び/又は陽子のシンクロトロン130への注入を制御する。シンクロトロンは典型的には、少なくとも加速器システム132及び抽出システム134を収容する。シンクロトロンは好ましくは、方向転換磁石及びエッジ集束磁石のうちの1又は2以上を収容し、それは任意にメインコントローラ110による制御下にある。メインコントローラは好ましくは、加速器システム内の陽子ビームを制御する(例えば、陽子ビームのスピード、軌道、及び/又はタイミングを制御することによる)。メインコントローラはその後、抽出システム134経由で加速器からの陽子ビームの抽出を制御する。例えば、コントローラは、抽出されたビームのタイミング、エネルギー、及び/又は強度を制御する。メインコントローラ110はまた好ましくは、ターゲティング/配送システム140を経由した陽子ビームの患者インターフェースモジュール150へのターゲティングを制御する。患者インターフェースモジュール150の1又は2以上の要素は好ましくは、メインコントローラ110により制御され、それは例えば患者の垂直位置、患者の回転位置、及び患者椅子の位置調整/安定化/固定/制御要素である。さらに、ディスプレイシステム160のディスプレイ要素が好ましくは、メインコントローラ110により制御される。ディスプレイスクリーンといったディスプレイは典型的には、1若しくは2以上のオペレーター及び/又は1若しくは2以上の患者に提供される。一実施態様において、メインコントローラ110は、陽子が患者の腫瘍に最適な治療態様で配送されるというように、すべてのシステムからの陽子ビームの配送の時間を調節する。
(シンクロトロン)
本明細書において、シンクロトロンという用語は、循環経路における荷電粒子ビームを維持するシステムに言及するために用いられる。しかし、シンクロトロンは、そのエネルギー、強度、及び抽出制御の固有の限界を伴うにもかかわらず、選択的に用いられる。さらに、荷電粒子ビームは本明細書において、シンクロトロンの中心ポイントの周りの循環経路に沿って循環するとされる。循環経路は選択的に、軌道経路とされる。しかし、軌道経路は完全な円又は楕円とされるのではなく、むしろ中心ポイント又は領域280の周りの陽子の循環とされる。
(循環システム)
図9を参照すると、シンクロトロン130は好ましくは、直線部910及びイオンビーム方向転換部920の組み合わせを含む。それゆえ、陽子の循環経路はシンクロトロンにおいて円ではないが、むしろ丸みを帯びた角を伴う多角形である。
ひとつの図示可能な実施態様において、シンクロトロン130(また加速器システムとされる)は、4つの直線部及び4つの方向転換部を有する。直線部910の例は、インフレクター240,加速器270,抽出システム290,及びデフレクター292を含む。4つの直線部と並んで、4つのイオンビーム方向転換部があり、それはまた磁石部又は方向転換部とされる。方向転換部はさらに下記に説明される。
さらに図9を参照すると、典型的なシンクロトロンが図示されている。この例において、初期陽子ビーム経路262に沿って運ばれた陽子は、インフレクター240により循環ビーム経路に屈曲され、加速後にデフレクター292によってビーム移送経路268に抽出される。この例において、シンクロトロン130は4つの直線部910及び4つの偏向又は方向転換部920を含む。そこでは、4つの方向転換部の各々が1又は2以上の磁石を用いて約90度陽子ビームを方向転換させる。以下にさらに説明されるように、方向転換部を狭い間隔で置き及び効率的に陽子ビームを方向転換させる能力は、より短い直線部をもたらす。より短い直線部は、シンクロトロンの循環ビーム経路における集束四極の使用無しでのシンクロトロンのデザインを可能にする。集束陽子ビーム経路からの集束四極の除去は、よりコンパクトなデザインをもたらす。この例において、図示されたシンクロトロンは、循環陽子ビーム経路における四極集束磁石を使用するシステムに対する8メートル及びより大きい断面直径に対して約5メートルの直径を有する。
図10を参照すると、第一偏向又は方向転換部920の付加的な記載が提供される。方向転換部の各々は好ましくは、約2,4,6,8,10,又は12磁石といった多数の磁石を備える。この例において、第一方向転換部920における4つの方向転換磁石1010,1020,1030,1040が、基本原理を図示するために用いられる。それらは方向転換部920における磁石の数字にかかわらず同じである。方向転換磁石1010,1020,1030,1040は、特定のタイプのメイン偏向又は循環磁石250である。
物理学において、ローレンツ力は電磁場に起因する点電荷における力である。ローレンツ力は、電場の項は含まない、磁場の項における式2により与えられる。
式2において、Fはニュートンの力であり;qはクーロンにおける電荷であり;Bはテスラにおける磁場であり;及びvはメートル毎秒における粒子の瞬間速度である。
図11を参照すると、単一の磁石偏向又は方向転換部1010の例が拡張される。方向転換部は、陽子が循環するギャップ1110を含む。ギャップ1110は好ましくは、フラットギャップであり、より均一、均等かつ強力なギャップ1110における磁場を可能にする。磁場は、磁場入射表面を介してギャップ1110に入り、磁場出射表面を介してギャップ1110から出る。ギャップ1110は、2つの磁石の半分の間の真空チューブにおいて走行する。ギャップ1110は、(1)ギャップ1110が陽子の喪失を最小限にするようにできるだけ大きく保たれ、(2)ギャップ1110が磁石サイズ及び関連サイズ並びに磁石電力供給の必要電力を最小限にするようにできるだけ小さく保たれるという少なくとも2つのパラメータにより制御される。ギャップ1110の平坦な特性は、ギャップ1110における圧縮されより均一な磁場を可能にする。ギャップ寸法の一例は、約5−6cmの水平ビームサイズで、約2cmの垂直陽子ビームサイズを提供することである。
上記で説明されたように、より大きなギャップサイズは、より大きな電力供給を必要とする。例えば、ギャップ1110のサイズが垂直方向のサイズで2倍になれば、必要な電力供給は約4倍に増加する。ギャップ1110が平坦であることはまた重要である。例えば、ギャップ1110の平坦な特性は、約250MeVから約330MeVの抽出された陽子のエネルギー増加を可能にする。より具体的には、ギャップ1110が極めて平坦な表面を有していれば、鉄磁石の磁場の限界は到達可能である。ギャップ1110の平坦な表面の典型的な精密さは、約5ミクロン未満に研磨することであり、好ましくは約1−3ミクロンに研磨することである。表面にむらがあると、印加された磁場に不都合が生じる。研磨された平坦な表面は、印加された磁場のむらを広げる。
さらに図11を参照すると、荷電粒子ビームは、瞬間速度vでギャップ1110を経由して移動する。第一磁性コイル1120及び第二磁性コイル1130は、各々ギャップの前方及び後方を走行する。コイル1120,1130を通過する電流は、単一の磁石方向転換部1010を走行する磁場Bをもたらす。この例において、磁場Bは上方へ走行して力Fをもたらし、内部の荷電粒子ビームをシンクロトロンの中心ポイントに押し出し、それはアークにおける荷電粒子ビームを方向転換させる。
さらに図11を参照すると、任意の第二磁石偏向又は方向転換部1020の一部が図示されている。コイル1120,1130は典型的には、リターン要素1140,1150又は磁石の端でのターン(例えば、第一磁石方向転換部1010の端)を有する。ターン1140,1150は、スペースをとる。スペースは、方向転換磁石により被覆されたシンクロトロンのひとつの軌道の周りの経路のパーセンテージを低減する。これは、陽子が方向転換されない及び/又は集束されない循環経路の部分をもたらし、及び陽子経路が非集束する循環経路の部分を可能にする。したがって、スペースはより大きなシンクロトロンをもたらす。その結果、磁石方向転換部1160の間のスペースは、好ましく最小化される。第二偏向磁石は、コイル1120,1130が任意に2,3,4,5,6,又はそれ以上の磁石といった複数の磁石に沿って走行することを図示するために用いられる。複数の方向転換部磁石を走行するコイル1120,1130は、ターンの立体的な制限の除去に起因して相互に空間的により近くに配置される2つの方向転換部磁石を可能にする。それは、2つの方向転換部磁石の間のスペース1160を低減し及び/又は最小化する。
図12及び図13を参照すると、単一の磁石偏向又は方向転換部1010の2つの実例となる90度回転された横断面が示されている。磁石アセンブリは、第一磁石1210及び第二磁石1220を有する。コイルにより誘導される磁場(以下に説明される)は、第一磁石1210から第二磁石1220へギャップ1110を超えて走行する。リターン磁場は、第一ヨーク1212及び第二ヨーク1222を走行する。リターンヨークの組み合わされた断面積は、第一磁石1210又は第二磁石1220の断面積におよそ近似する。荷電粒子は、ギャップ1110において真空チューブを経由して走行する。図示されたように、陽子はギャップ1110を経由して図12に入り、磁場(ベクトルBとして図示される)は力Fを陽子に適用し、陽子をシンクロトロンの中心に押し出す(図12の右側)。磁場は巻線を用いて作られる。第一コイルは第一巻線コイル1250を作り出し、個々の巻線に対するワイヤの横断面を典型的に提示する図12における黒領域として図示され、及び図13において巻線コイルとして図示される。第二巻線コイル1260を作り出すワイヤの第二コイルが同様に、図示されて示される。ギャップ1230,1240(例えば空気ギャップ)を分離し及び集中させることは、ギャップ1110から鉄ベースのヨークを分離する。ギャップ1110は、上記に説明されるように、ギャップ1110における均一な磁場を発生させるようにおよそフラットである。
図13をさらに参照すると、単一の偏向又は方向転換磁石の端は好ましくは斜角である。方向転換磁石1010の垂線又は垂直の端は、破線1374,1384で示される。破線1374,1384は、シンクロトロン280の中心を超えてポイント1390で交差する。好ましくは、方向転換磁石の端は角度アルファ、α、及びベータ、βで斜角であり、それは、方向転換磁石1010の端及び中心280から向かう第一ライン1372,1382、並びに方向転換磁石の同様の端及び交差ポイント1390から向かう第二ライン1374,1384により形成される角度である。角度アルファは効果を説明するために用いられ、角度アルファの記載は角度ベータに適用されるが、角度アルファは任意に角度ベータとは異なる。角度アルファは、効果を集中させる端を提供する。角度アルファで方向転換磁石1010の端を斜角にすることは、陽子ビームを集中させる。
多数の方向転換磁石は、シンクロトロン130におけるエッジ集束効果を各々有する多数の磁石エッジを提供する。ひとつの方向転換磁石のみが用いられれば、ビームは、角度アルファに対して一回、又は角度アルファ及び角度ベータに対して二回集束される。しかしながら、より小さい方向転換磁石を用いることにより、より多くの方向転換磁石は、シンクロトロン130の方向転換部920にフィットする。例えば、4つの磁石がシンクロトロンの方向転換部920において用いられれば、単一の方向転換部に対して8つの可能なエッジ集束効果表面(マグネット当たり2つのエッジ)が存在する。8つの集束表面は、より小さい横断面ビームのサイズを生み出し、それはより小さいギャップの使用を可能にする。
方向転換磁石における多数のエッジ集束効果の使用は、より小さいギャップ1110のみならず、より小さい磁石及びより小さい電力供給の使用をもたらす。各々の方向転換部が4つの方向転換磁石を有し各々の方向転換磁石が2つの集束エッジを有する4つの方向転換部を有するシンクロトロン130に対して、合計32の集束エッジがシンクロトロン130の循環経路における陽子の各軌道のために存在する。同様に、2,6,又は8の磁石が所定の方向転換部に用いられれば、又は2,3,5,又は6の方向転換部用いられれば、エッジ集束表面の数は、式3に従って拡張し又は縮小する。
ここで、TFEは合計の集束エッジの数であり、NTSは方向転換部の数であり、Mは磁石の数であり、及びFEは集束エッジの数である。当然ながら、全ての磁石が必ずしも斜角にされているわけではなく、いくつかの磁石は任意にひとつのエッジのみにおいて斜角にされている。
発明者は、多数のより小さい磁石が、より少ない大きな磁石における利益を有することを見出した。例えば、4つのより大きな磁石の使用が8つのみの集束エッジを発生させる一方で、16個の小さな磁石の使用は32個の集束エッジを発生させる。より多くの集束エッジを有するシンクロトロンの使用は、集束四極磁石の使用無しで作られるシンクロトロンの循環経路をもたらす。すべての従来技術のシンクロトロンは、シンクロトロンの循環経路において四極を使用する。さらに、循環経路における四極の使用は、シンクロトロンの循環経路における付加的な直線部を必要とする。したがって、シンクロトロンの循環経路における四極の使用は、より大きな直径、より大きな循環ビーム経路長、及び/又はより大きい外周を有するシンクロトロンをもたらす。
本明細書で説明されるシステムの種々の実施態様において、シンクロトロンは、
・4つの方向転換部を有するシンクロトロンにおける荷電粒子ビームの90度の方向転換ごとにエッジを集束させる、少なくとも4及び好ましくは6,8,10,又はそれ以上のエッジ、
・シンクロトロンにおける荷電粒子ビームの軌道ごとにエッジを集束させる、少なくとも約16及び好ましくは24,32,又はそれ以上のエッジ、
・方向転換部の各々がエッジを集束させる少なくとも4及び好ましくは8のエッジを含む、4つのみの方向転換部、
・直線部と方向転換部の数が等しいこと、
・正確に4つの方向転換部、
・方向転換部ごとの少なくとも4つの集束エッジ、
・シンクロトロンの循環経路における四極が無いこと、
・円い角の長方形の多角形構造、
・60メートル未満の外周、
・60メートル未満の外周及び32のエッジ集束表面、及び/又は
・シンクロトロンの循環経路ごとの約8,16,24,又は32の非四極磁石のいずれか(非四極磁石がエッジを集束させるエッジを含む)、
のいずれかの組み合わせを有する。
(平坦なギャップの表面)
ギャップ表面は第一方向転換磁石1010に関して説明される一方で、ディスカッションはシンクロトロンにおける方向転換磁石の各々に適用される。同様に、ギャップ1110の表面が磁場入射表面670に関して説明される一方で、ディスカッションは付加的に任意に表面680を出る磁場に適用される。
図12を再度参照すると、第一磁石1210の入射磁場表面1270がさらに説明される。図12は正確な縮尺ではなく、事実上図示される。入射表面1270の終わりの質におけるローカルの不完全性又は不均一性は、ギャップ1110に付与された磁場における不完全性又は不均等性をもたらす。磁場入射表面1270及び/又は第一磁石1210の出射表面1280は好ましくはおよそ平坦であり、例えば、約0ミクロンから3ミクロンまでの研磨仕上げ、又は好ましくは約10ミクロン未満までの研磨仕上げである。非常に平坦にすることによって、研磨された表面は、ギャップ1110において印加磁場の不均一性を広げる。非常に平坦な表面(約0,1,2,4,6,8,10,15,又は20ミクロンの仕上げ)は、より小さいギャップのサイズ、より小さい印加磁場、より小さい電力供給、及び陽子ビーム断面積のより厳密な制御を可能とする。
図14A及び図14Bを参照すると、ラジオ周波数(RF)加速器システムといった加速器システム270がさらに説明される。加速器は、鉄又はフェライトコイルといった、一連のコイル1410−1419を含み、陽子ビーム264がシンクロトロン130において通過する真空システム320を各々周囲に取り囲む。図14Bを参照すると、第一コイル1410がさらに説明される。スタンダードワイヤ1430のループは、第一コイル1410の周りで少なくとも1ターンで完結する。ループは、超小型回路1420に付着する。図14Aを再度参照すると、RF合成器1440は(好ましくはメインコントローラ110に接続されている)、陽子ビーム経路264において陽子の循環の時期に同調された低電圧のRFシグナルを提供する。RF合成器1440、超小型回路1420、ループ1430、及びコイル1410は組み合わされて、陽子ビーム経路264において陽子に加速電圧を提供する。例えば、RF合成器1440は超小型回路1420にシグナルを送り、それは低電圧のRFシグナルを増幅し、及び約10ボルトといった加速電圧を発生させる。単一の超小型回路/ループ/コイルの組み合わせに対する現実の加速電圧は、約5,10,15,又は20ボルトであるが、好ましくは約10ボルトである。好ましくは、RF−増幅器超小型回路及び加速コイルは、一体化されている。
さらに図14Aを参照すると、図14Bに示された、一体化されたRF−増幅器超小型回路及び加速コイルが示されており、真空チューブ320の周りの一連のコイル1411−1419として図示されている。例えば、RF合成器1440(メインコントローラ130の指示下にある)は、RF−シグナルを各々コイル1410−1419に接続されている超小型回路1420−1429に送る。超小型回路/ループ/コイルの組み合わせの各々は、各々約10ボルトといった陽子加速電圧を発生させる。ゆえに、一連の5つのコイルの組み合わせは、陽子加速に対して約50ボルトを発生させる。加速器システム270において、好ましくは、約5から20の超小型回路/ループ/コイルの組み合わせが用いられ、より好ましくは、約9から10の超小型回路/ループ/コイルの組み合わせが用いられる。
さらに明白な例として、RF合成器1440は、RF−シグナルを、シンクロトロン130の周りの陽子の循環の時期に等しい時期で、一連の10の超小型回路/ループ/コイルの組み合わせに送り、それは陽子ビーム経路264において陽子の加速に対して約100ボルトをもたらす。100ボルトは、低エネルギー陽子ビームに対する約1MHzから高エネルギー陽子ビームに対する約15MHzといった範囲の周波数で発生する。RF−シグナルは任意に、シンクロトロン循環経路の周りの陽子の循環の期間の整数の倍数でセットされる。超小型回路/ループ/コイルの組み合わせの各々は任意に独立して、加速電圧及び周波数に関連して制御される。
各々の超小型回路/ループ/コイルの組み合わせにおけるRF−増幅器超小型回路及び加速コイルの統合は、3つの重要な利点をもたらす。第一に、シンクロトロンに対して、先行技術は、加速コイルと統合された超小型回路を用いることなく、むしろ電力を周囲の一連のコイルに提供する一連の長いケーブルを用いる。長いケーブルは、インピーダンス/抵抗を有し、高い周波数のRF制御には問題がある。結果として、先行技術のシステムは、約10MHz以上といった高い周波数で作動可能ではない。統合されたRF−増幅器超小型回路/加速コイルシステムは、約10MHz及びさらには15MHz以上で作動可能であり、そこでは、先行技術のシステムにおける長いケーブルのインピーダンス及び/又は抵抗は、不十分な制御又は陽子加速における障害をもたらす。第二に、長いケーブルのシステム(より低い周波数で作動する)は約50,000ドルのコストがかかり、統合された超小型回路システムは約1000ドルのコストがかかる(50倍安価である)。第三に、RF−増幅器システムと連動した超小型回路/ループ/コイルの組み合わせは、コンパクトな低消費デザインをもたらし、小さなスペース(上記に説明された通り)及びコスト効率的な態様での陽子癌治療システムの作成及び使用を許容する。
図15を参照すると、例は、配送時間及び/又は陽子パルス配送の時期を変えるようにフィードバックループ1500を用いる磁場制御を明確にするために用いられる。ひとつのケースにおいて、呼吸センサー1510は、対象の呼吸サイクルを感知する。呼吸センサーは情報を磁場コントローラ1520のアルゴリズムに送り、それは典型的には患者インターフェースモジュール150を経由し、及び/又はメインコントローラ110若しくはそのサブコンポーネントを経由する。アルゴリズムは、対象がいつ呼吸の底といった呼吸サイクルの特定のポイントにあるかを予測し及び/又は測定する。磁場センサー1530は、磁場コントローラへの入力として用いられ、それは、シンクロトロン130の第一方向転換磁石1010内といった所定の磁場1550に対する磁石電力供給1540を制御する。制御フィードバックループはこのように、シンクロトロンを選択されたエネルギーレベルに戻すために、及び呼吸の底といった選択された時間ポイントで所望のエネルギーにより陽子を運ぶために用いられる。より具体的には、メインコントローラは、陽子をシンクロトロンに注入し、抽出と組み合わされて陽子を呼吸サイクルの選択されたポイントで腫瘍に運ぶ方法で陽子を加速する。陽子ビームの強度はまた、このステージでメインコントローラにより選択可能であり及び制御可能である。補正コイルへのフィードバック制御は、患者の呼吸サイクルに関係しているシンクロトロンのエネルギーレベルの早急な選択を可能にする。このシステムは、電流が安定化され、シンクロトロンが固定された時期で毎秒10又は20サイクルといった時期でパルスを配送するシステムとは全く対照的である。任意に、フィードバック又は磁場デザインは、患者の変化する呼吸速度にマッチする抽出サイクルを可能にする。
伝統的な抽出システムは、磁石が正弦波の大きさ及び振幅の両方に関連した記憶を有するとき、この制御を許容しない。したがって、伝統的なシステムにおいて、周波数を変えるために、電流の遅い変化が用いられなければならない。しかしながら、磁場センサーを用いるフィードバックループの使用を伴い、シンクロトロンの周波数及びエネルギーレベルは、迅速に調節可能である。さらにこのプロセスを支援することは、抽出プロセスの間陽子の加速を可能とする新しい抽出システムの使用である。
(患者位置調整)
図16を参照すると、患者は好ましくは、患者インターフェースモジュール150の患者移動及び回転位置調整システム1610において又はその中に置かれる。患者移動及び回転位置調整システム1610は、陽子ビームがスキャニングシステム140又は陽子ターゲティングシステム(以下に説明される)を用いて腫瘍をスキャンすることのできるゾーン内に患者を移動させ及び/又は患者を回転させるために用いられる。本質的に、患者位置調整システム1610は、腫瘍を陽子ビーム経路268の中心近傍に置くように患者の大きな動きを実行し、及び陽子スキャニング又はターゲティングシステム140は、腫瘍1620のターゲティングにおいて瞬間的ビーム位置269の良好な動きを実行する。図示するために、図16Aは、陽子スキャニング又はターゲティングシステム140を用いて瞬間的陽子ビーム位置269及びスキャン可能な位置1640の範囲を示す。そこでは、スキャン可能な位置1640は患者1630の腫瘍1620の周りである。この例において、スキャン可能な位置はx−軸及びy−軸に沿ってスキャンされるが、しかしながら、スキャニングは任意に同時に、以下に説明されるように、z−軸に沿って実行される。これは図解的に、陽子ビーム268のスキャン可能な領域が約1,2,4,6,8,10,又は12インチの領域といった身体の一部をカバーする一方で、患者のy−軸の動きは約1,2,3,又は4フィートの調節といった身体のスケールで起こることを示す。患者位置調整システム並びに患者のその回転及び/又は移動は、陽子ターゲティングシステムと組み合わされて、腫瘍への陽子の正確及び/又は精密な配送をもたらす。
図16をさらに参照すると、患者位置調整システム1610は任意に、ディスク又はプラットフォームといった、ボトムユニット1612及びトップユニット1614を含む。図16Aを参照すると、患者位置調整ユニット1610は好ましくは、陽子療法ビーム268に対して患者の垂直シフトを許容するためにy−軸に調節可能1616である。好ましくは、患者位置調整ユニット1610の垂直動作は、毎分約10,20,30,又は50センチメートルである。図16Bを参照すると、患者位置調整ユニット1610はまた好ましくは、回転軸の周りを回転可能1617(例えば、ボトムユニット1612の中心を走行するy−軸の周り、又は腫瘍1620を走行するy−軸の周り)であり、陽子ビーム経路268に対する患者の回転制御及び位置調整を許容する。好ましくは、患者位置調整ユニット1610の回転動作は、毎分約360度である。任意に、患者位置調整ユニットは、約45,90,又は180度回転する。任意に、患者位置調整ユニット1610は、毎分約45,90,180,360,720,又は1080度のレートで回転する。位置調整ユニット1617の回転は、2つの異なる時間t1及びt2で回転軸の周りで図示される。陽子は任意にn回腫瘍に配送され、n回の各々は回転軸の周りの患者1617の回転によって患者1630にヒットする入射陽子ビーム269の異なる相対的な方向を表す。
以下に説明された、半垂直、座位、又は臥位患者位置調整態様のいずれも、任意に垂直上に、y−軸に沿って移動可能であり、又は回転軸若しくはy−軸の周りを回転可能である。
好ましくは、トップ及びボトムユニット1612,1614は、それらが同じ速度で回転し及び同じ速度で位置移動するといったように、ともに動く。任意に、トップ及びボトムユニット1612,1614は独立して、y−軸に沿って調節可能であり、トップユニット1614とボトムユニット1612との間の距離に差異をもたらす。トップ及びボトムユニット1612,1614を動かすためのモーター、電力供給、及び機械的アセンブリは好ましくは、ボトムユニット1612の下方及び/又はトップユニット1614の上方といった、陽子ビーム経路269から外れて置かれる。これは、患者位置調整ユニット1610が好ましくは約360度回転可能であり、並びにモーター、電力供給、及び機械的アセンブリが陽子ビーム経路269に置かれた場合に陽子を邪魔する場合に、好ましい。
(陽子配送効率)
図17を参照すると、X線及び陽子照射に対する相対的線量の通常の分布が示されている。示されるように、X線はターゲットされた組織の表面近傍でもっとも高い線量で蓄積し、及び蓄積された線量は指数関数的に組織深度の関数として減少する。表面近傍のX線蓄積は、身体内の深部に存在する腫瘍にとって理想的ではなく、それはよくあるケースであり過度のダメージが腫瘍1620周辺の軟組織層に与えられる。陽子の利点は、粒子速度を減少させることともに陽子を増加させることにより横断された吸収体の単位経路毎のエネルギー損失として飛行軌道の終末近傍でエネルギーの大部分を蓄積することである。それは、その範囲の終末近傍でイオン化におけるピークの最大値をもたらし、本明細書においてブラッグピークとされる。さらに、陽子の飛行軌道は陽子の初期動力学的エネルギー又は初期速度を増加させ又は減少させることにより可変であるため、最大エネルギーに対応するピークは、組織内で移動可能である。したがって、陽子の浸透深度のz−軸制御は、加速プロセスにより許容される。陽子線量分布特性の結果として、放射線腫瘍医は、正常組織周辺への線量を最小化する一方で、腫瘍1620への線量を最適化することができる。
ブラッグピークのエネルギープロファイルは、陽子が、最大の浸透深度まで陽子により浸透された身体の全長にわたってそのエネルギーを配送する、ということを示す。結果として、エネルギーは(ブラッグピークのエネルギープロファイルの抹消部位において)、陽子ビームが腫瘍をヒットする前に、健常組織、骨、及び他の身体構成部分に配送される。腫瘍の前の身体における経路長が短ければ短いほど、陽子配送効率が高くなる、ということが生じる。そこでは、陽子配送効率は、どれくらい多くのエネルギーが患者の健常部位に比して腫瘍に運ばれたかの値となる。陽子配送効率の例は、(1)非腫瘍組織に配送された陽子エネルギーに対する腫瘍に配送された陽子エネルギーの比率、(2)非腫瘍組織での経路長に対する腫瘍での陽子の経路長;及び/又は(3)健常身体部分へのダメージと比較した腫瘍へのダメージ、を含む。これらの値のいずれも任意に、神経系要素、脊柱、脳、目、心臓、又は他の臓器といった影響を受けやすい組織へのダメージにより重み付けられる。示すように、患者が治療の間y−軸の周りを回転する臥位姿勢における患者に対して、心臓近傍の腫瘍はしばしば、頭部−心臓経路、足部−心臓経路、又は臀部−心臓経路を通過する陽子により治療されるであろう。それらはすべて、陽子がすべてより短い胸部−心臓;身体の側面−心臓、又は腰部−心臓経路を経由して配送される座位又は半垂直姿勢における患者に比して非効率である。具体的には、臥位姿勢に比して、患者の座位又は半垂直姿勢を用いて、身体を経由した腫瘍へのより短い経路長が、胴部又は頭部に存在する腫瘍に提供される。それにより、より高く又はより良好な陽子配送効率がもたらされる。
本明細書において、陽子配送効率は、時間効率又はシンクロトロン使用効率から独立して説明される。それは、荷電粒子ビーム装置が癌治療作動モードにあるほんのわずかな時間である。
(深度ターゲティング)
図18A−Eを参照すると、陽子ビームのz−軸エネルギーが腫瘍のスライスの照射を許容するように制御された変化1800を経験する間の、陽子ビームのx−軸スキャニングが図示される。表示を明確にするために、実行される同時のy−軸スキャニングは図示されない。図18Aにおいて、照射は、第一のスライスのスタートにおいて瞬間陽子ビーム位置269で始められている。図18Bを参照すると、瞬間陽子ビーム位置は第一のスライスの終わりにある。重要なことは、照射の所定のスライスの間、陽子ビームエネルギーは好ましくは、組織質量及び腫瘍1620の前の密度に従って継続的に制御され及び変えられる。
したがって、組織の密度による陽子ビームエネルギーの変化は、ビーム停止ポイント又はブラッグピークを組織スライス内部に留まらせる。スキャニングの間又はx−,y−軸のスキャニングの間の陽子ビームエネルギーを変化させることが可能である。図18C,18D,及び18Eは各々、第二のスライスの中間における、第三のスライスを経由した経路の3分の2の、及び所定の方向からの照射を終了させた後の瞬間陽子ビーム位置を示す。このアプローチを用いて、腫瘍1620への、指定された腫瘍サブセクションへの、又は腫瘍層への制御された、正確かつ精密な陽子照射エネルギーの配送が実現される。腫瘍への陽子エネルギーの蓄積効率は(健常組織に配送された陽子照射エネルギーに対する腫瘍に配送された陽子照射エネルギーの比率として定義される)、さらに以下に説明される。
(多方向照射)
腫瘍1620への陽子の蓄積効率を最大化することが理想的である(健常組織に配送された陽子照射エネルギーに対する、腫瘍1620に配送された陽子照射エネルギーの比率を最大化することにより規定される)。一,二,又は三方向からの身体内への照射(例えば、照射サブセッション間で約90度身体を回転させることによる)は、各々、1,2,又は3の健常組織ボリュームへのブラッグピーク濃縮の末梢部からの陽子照射をもたらす。腫瘍1620の周囲の健常ボリューム組織を均一に経てブラッグピークエネルギーの末梢部をさらに分配することは望ましい。
多方向照射は、複数のエントリーポイントからの身体内への陽子ビーム照射である。例えば、患者1630は回転され、放射線源ポイントは一定に保たれる。例えば、患者1630は360度回転され、陽子療法は、多数の角度から適用される。それにより、腫瘍の周りに拡散された末梢放射がもたらされ、陽子照射効率が向上する。ひとつのケースにおいて、身体は3,5,10,15,20,25,30,又は35の位置より多く回転され、陽子照射は各回転位置で行われる。患者の回転は好ましくは、患者位置調整システム1610及び/又はボトムユニット1612若しくはディスク(上記に説明された)を用いて実行される。比較的固定された方向で陽子ビーム268の配送を維持している間、患者1630の回転は、各方向で新しいコリメータの使用をすることなく、多方面からの腫瘍1620の照射が可能となる。さらに、新しいセットアップが患者1630の各回転位置で必要とされないため、システムは腫瘍1620が患者を再着席又は位置調整することなく多方向から治療されることを許容する。その結果、腫瘍1620の再生時間を最小化させ、シンクロトロンの効率を向上させ、患者治療能力を向上させることができる。
患者は任意に、ボトムユニット1612の中心に置かれ、又は腫瘍1620は任意に、ボトムユニット1612の中心に置かれる。患者がボトムユニット1612の中心に置かれると、第一軸制御要素142及び第二軸制御要素144は、腫瘍1620が回転位置変化の中心軸からはずれるのを補うようにプログラムされる。
図19A−Eを参照すると、多方向照射1900の例が示される。この例において、5つの患者回転位置が図示される。しかしながら、5つの回転位置は約360度の回転位置の別々の回転位置である。身体は各位置で約10度回転される。図19Aを参照すると、照射ビーム位置269の範囲は、第一身体回転位置から図示される。それは陽子照射ビームを受けている患者1630として図示され、第一健常ボリューム1911はブラッグピーク照射プロファイルの入射又は末梢部により照射される。図19Bを参照すると、患者1630は約40度回転され、照射は繰り返される。第二位置において、腫瘍1620は再度照射エネルギーの大半を受け、第二健常組織ボリューム1912はブラッグピークエネルギーのより小さい入射又は末梢部を受ける。図19C−Eを参照すると、患者1630は各々、トータルで約90,130,及び180度回転される。第三、第四、及び第五回転位置の各々に対して、腫瘍1620は照射エネルギーの大半を受け、第三、第四、及び第五健常組織ボリューム1913,1914,1915は各々、ブラッグピークエネルギーのより小さい入射又は末梢部を受ける。したがって、所定の軸に沿ってエネルギーの少なくとも約75,80,85,90,又は95パーセントが腫瘍1620に配送される一方で、陽子療法の間の患者の回転は、腫瘍1620の周り(例えば、1から5の1911−1915の領域)に分配される予定であった配送された陽子エネルギーの抹消エネルギーの分布をもたらす。
所定の回転位置に対して、腫瘍のすべて又は一部が照射される。例えば、一実施態様において、腫瘍1620の末梢部又は末梢スライスのみが各回転位置で照射され、末梢部は患者1630への陽子ビームのエントリーポイントから最も遠いセクションである。例えば、患者1630が陽子ビームを受けているとき、末梢部は腫瘍の背面であり、患者1630が陽子ビームを受けていないとき、末梢部は腫瘍の前面である。
図20を参照すると、多方向照射2000の第二例が示される。それにおいては、陽子源は固定され、患者1630は回転される。説明しやすいようにするために、固定されるがスキャンしている陽子ビーム経路269は、患者が回転すると、時間t1,t2,t3,・・・tn,tn+1で変化している側から患者1630に侵入するように図示される。第一の時間t1において、ブラッグピークプロファイルの末梢端は、第一の健常組織領域2010をヒットする。患者は回転され、陽子ビーム経路は第二の時間t2において図示され、ブラッグピークの末梢端は、第一の健常組織領域2020をヒットする。第三の時間において、ブラッグピークプロファイルの末梢端は、第三の健常組織領域2030をヒットする。この回転及び照射プロセスはn回繰り返され、ここでnは4より大きい正の数字であり、好ましくは約10,20,30,100,又は300より大きい。図示されるように、第n健常組織領域2040が照射されるn回目において、患者1630がさらに回転されると、スキャニング陽子ビーム269は、脊髄又は目といった影響を受けやすい身体要素1650をヒットするであろう。照射は好ましくは、影響を受けやすい身体要素がスキャニング陽子ビーム269経路から外れて回転されるまで、停止される。照射は、影響を受けやすい身体要素1650が陽子ビーム経路から外れて回転された後、時間tn+1で再開され、第n+1健常組織領域2050が照射される。この態様において、ブラッグピークエネルギーは常に腫瘍内にあり、ブラッグピークプロファイルの末梢領域は腫瘍1620の周りの健常組織で分配され、影響を受けやすい身体要素1650は最小限の陽子ビーム照射を受けるか又は陽子ビーム照射を受けない。
ひとつの多方向照射の例において、6メートル未満のシンクロトロンのリング直径を有する粒子療法システムは、
・約360度患者を回転する;
・約0.1−10秒で放射線を抽出する;
・約100ミリメートルで垂直スキャンする;
・約700ミリメートルで水平スキャンする;
・照射の間約30−300MeV/秒からビームエネルギーを変化させる;
・陽子ビームエネルギーを変化させることとは独立して陽子ビーム強度を変化させる;
・腫瘍において約2−20ミリメートル陽子ビームを集束させる;及び/又は
・患者1630への陽子配送を開始する時間から測定されるように約1,2,4,又は6分未満で腫瘍に多方向照射を完了する;能力を含む。
図21を参照すると、2つの多方向照射方法2100が説明される。第一の方法において、メインコントローラ110は回転して患者1630を位置調整し(2110)、その後腫瘍1620を照射する(2120)。プロセスは、多方向照射プランが終了するまで繰り返される。第二の方法において、メインコントローラ110は、多方向照射プランが終了するまで、患者1630内の腫瘍1620を同時に回転させ照射する(2130)。より具体的には、陽子ビーム照射は、患者1630が回転されている間に生じる。
陽子スポット焦点の三次元スキャニングシステム(本明細書において説明される)は好ましくは、回転/ラスター方法と組み合わされる。該方法は、多方向からの層方向の腫瘍照射を含む。所定の照射スライスの間、陽子ビームエネルギーは継続的に腫瘍の前の組織の密度に従って変えられ、ビーム停止ポイントをもたらす。ブラッグピークにより規定され、常に、腫瘍内部及び照射されたスライスの内部に存在する。新しい方法は、同時に既存の方法に比べて健常組織の周りへの可能性のある副作用を著しく低減させる一方で、腫瘍レベルで最大限の有効線量を成し遂げるように、多方面からの照射(本明細書において多方向照射として言及される)を可能にする。本質的に、多方向照射システムは腫瘍に到達していない組織深度で線量を分布する。
(陽子ビーム位置制御)
現在、世界的な放射線治療コミュニティは、ペンシルビームスキャニングシステムを用いた線量場形成の方法を用いる。著しく対照的に、任意のスポットスキャニングシステム又は組織ボリュームスキャニングシステムが用いられる。組織ボリュームスキャニングシステムにおいて、陽子ビームは(輸送及び分布に関して)、安価かつ精密なスキャニングシステムを用いて制御される。スキャニングシステムはアクティブシステムであり、ビームは直径1,2,又は3ミリメートルの約2分の1のスポット焦点に集束される。焦点は、同時に陽子ビームの付与されるエネルギーを変える間、2軸に沿って移動される。それは、焦点の第三次元を効果的に変化させる。
システムは上述で説明された身体の回転との組み合わせで適用可能であり、それは好ましくは、腫瘍への陽子配送の個々の瞬間又はサイクルの間に発生する。任意に、上述で説明されたシステムによる身体の回転は、腫瘍への陽子配送とともに継続的にかつ同時に生じる。
例えば、スポットは水平に移動され、垂直y−軸の下方向に動かされ、及び水平軸に沿って戻される。この例において、電流は少なくとも1つの磁石を有する垂直スキャニングシステムを制御するために用いられる。付与される電流は、陽子ビームの垂直偏向を制御するように垂直スキャニングシステムの磁場を変える。同様に、水平スキャニング磁石システムは、陽子ビームの水平偏向を制御する。各軸に沿った移動の程度は、所定深度で腫瘍横断面を一致させるように制御される。深度は、陽子ビームのエネルギーを変化させることにより制御される。例えば、陽子ビームエネルギーは低減され(新しい浸透深度を規定する)、スキャニングプロセスは腫瘍の新しい断面積をカバーする水平及び垂直軸に沿って繰り返される。組み合わされて、制御の3軸は、スキャニング又は癌性腫瘍の全ボリュームにわたる陽子ビーム焦点の移動を可能とする。各スポットでの時間及び各スポットに対する身体への方向は制御され、腫瘍の外側をヒットするエネルギーを分配する間、癌性ボリュームの各サブボリュームでの所望の放射線量を生み出す。
集束されたビームスポットボリュームの範囲は好ましくは、約0.5,1,又は2ミリメーターの直径に厳密に制御されるが、又は数センチメートルの直径である。好ましいデザイン制御は、(1)約100mm振幅の垂直振幅及び約200Hzまでの周波数、(2)約700mm振幅の水平振幅及び約1Hzまでの周波数の2つの方向におけるスキャニングを許容する。
この例において、陽子がz−軸に沿って組織に移動する距離は、陽子の動的エネルギーにより制御される。このコーディネートシステムは、任意かつ典型的である。陽子ビームの現実の制御は、2つのスキャニング磁石システムを用いて、及び陽子ビームの動的エネルギーを制御することにより三次元的空間において制御される。具体的に、システムは、固形癌の照射におけるx−,y−,及びz−軸の同時調節を許容する。再度説明すると、x−,y−平面に沿ってスキャニングし及び陽子のエネルギーを調節する(例えば、レンジモジュレーションホイールで)代わりに、システムは、同時にx−,及びy−軸を調節する一方でz−軸に沿って動くことを可能にする。したがって、腫瘍のスライスを照射するというよりもむしろ、腫瘍は任意に、三次元において同時に照射される。例えば、腫瘍は、三次元において腫瘍の外縁の周囲で照射される。その後、腫瘍は、腫瘍の内部の外縁の周囲で照射される。このプロセスは、全体の腫瘍が照射されるまで繰り返される。外縁照射は好ましくは、垂直y−軸の周りといった、対象の同時の回転と組み合わされる。このシステムは、腫瘍への陽子の蓄積の最大効率を可能とし、それは健常組織に配送された陽子照射エネルギーに対する腫瘍に配送された陽子照射エネルギーの比率として規定される。
組み合わされて、システムは、低い電力供給で小さなスペースにおける荷電粒子ビームシステムの多軸制御を可能にする。例えば、システムは、各磁石がシンクロトロンの各方向転換部における少なくともひとつのエッジ集束効果を有する、多数の磁石を用いる。シンクロトロンの循環ビーム経路における多数のエッジ集束効果は、
・約50メートル未満といった小さな外周のシステム;
・約2cmの垂直陽子ビームサイズギャップ;
・低減されたギャップサイズに関連した、対応する低減された電力供給要件;及び
・z−軸の制御;
を有するシンクロトロンを可能にする。
結果物は、三次元スキャニングシステムであり、それはx−,y−,及びz−軸制御である。z−軸制御はシンクロトロンに属し、z−軸のエネルギーはシンクロトロン内の抽出プロセスの間可変的に制御される。
三次元スキャンニング制御により腫瘍に陽子を向かわせるために用いられる陽子スキャニング又はターゲティングシステム140の例が提供され、上記で説明されるように、三次元スキャニング制御はx−,y−,及びz−軸に沿う。第四の制御可能な軸は、時間である。第五の制御可能な軸は、患者の回転である。垂直軸の周りの対象の回転と組み合わされて、多方向照射プロセスは、腫瘍のまだ照射されていない部分が好ましくは陽子入射ポイントから身体への腫瘍のさらに遠い距離で照射されるところで用いられる。これは、腫瘍への陽子配送の最大パーセンテージ(ブラッグピークにより規定される)をもたらし、周辺の健常組織へのダメージを最小化する。
(イメージング/X線システム)
本明細書において、X線システムは、イメージングシステムを図示するために用いられる。
(タイミング)
X線は好ましくは、2〜3の理由のために、陽子療法で(1)対象を治療する前に、又は(2)対象を治療すると同時に、のいずれかに集められる。第一に、上記で説明した身体の動きは、他の身体構成要素に関連して身体における腫瘍の局所位置を変化させる。患者又は対象1630がX線を受けその後身体が陽子治療室に移動したら、腫瘍への陽子ビームの精密な位置合わせが問題となる。1又は2以上のX線を用いる腫瘍1620への陽子ビームの位置合わせは、陽子配送のときに、又は陽子配送の数秒若しくは数分直前に、及び患者が治療の身体位置に置かれた後に最適に行われる。それは典型的には、固定された位置又は部分的に固定された位置である。第二に、患者の位置調整の後に撮られるX線写真は、腫瘍及び/又は内臓の位置といったターゲットされた位置への陽子ビーム位置合わせの確認のために用いられる。
(患者固定)
患者の腫瘍への正確かつ精密な陽子ビームの配送は、(1)陽子ビームの位置調整制御、及び(2)患者の位置調整制御を要する。上記に記載されるように、陽子ビームは、アルゴリズム及び磁場を用いて約0.5,1,又は2ミリメーターの直径に制御される。このセクションは、厳密に制御された陽子ビームが効果的にターゲットの腫瘍をヒットし、患者の動きによる周囲の健常組織へのヒットをしないことを保証するために、患者の部分的な固定、拘束、及び/又は位置合わせに取り組む。
本明細書において、x−,y−,及びz−軸はシステムを調整し、回転軸は陽子ビームに対する患者の方向を記述するために用いられる。z−軸は、患者への陽子ビームの深度といった、陽子ビームの移動を表す。陽子ビームの移動のz−軸下方向での患者で観察する場合、x−軸は患者の左右を横断して移動するとされ、y−軸は患者の上下方向にを移動するとされる。第一の回転軸はy−軸の周りの患者の回転であり、本明細書において回転軸、ボトムユニット1612回転軸、又は回転のy−軸1617とされる。加えて、チルトはx−軸の周りの回転であり、ヨーはy−軸の周りの回転であり、ロールはz−軸の周りの回転である。このコーディネートシステムにおいて、陽子ビーム経路269は任意に、いかなる方向にも走行する。図示するための便宜上、治療室を走行する陽子ビーム経路は、治療室を水平に走行するように記載される。
このセクションにおいて、位置調整システムの3つの例が提供される:(1)半垂直部分的固定システム2220;(2)座位部分的固定システム2300;及び(3)臥位姿勢2400である。ひとつの固定システムに対して記載される要素は、小さい変化を伴って他の固定システムに適用される。例えば、ヘッドレスト、頭部サポート、又は頭部拘束具は、リクライニング姿勢に対する第一の軸に沿って、座位姿勢に対する第二の軸に沿って、又は臥位姿勢に対する第三の軸に沿って適応する。しかしながら、ヘッドレストそれ自体は各々の固定位置に対して同様である。
(垂直患者位置調整/固定)
図22を参照すると、半垂直患者位置調整システム2200は好ましくは、胴部の腫瘍の陽子療法に連動して用いられる。患者位置調整及び/又は固定システムは、陽子ビーム療法の間、患者の動きを制御及び/又は制限する。第一の部分的固定の態様において、患者は、陽子ビーム療法システムにおいて半垂直姿勢に置かれる。図示されるように、患者は、患者の頭部から足部まで走行する軸により規定されるようにy−軸より約45度傾いた角度アルファ(α)でリクライニングしている。より一般的に、患者は任意に、y−軸に対して0度の垂直位置において完全に起立している、又はy−軸に対してz−軸の方向に約5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,若しくは65度リクライニングされた半垂直位置アルファにいる。
治療位置に患者を維持するために用いられる患者位置調整拘束具2215は、シートサポート2220、腰部サポート2230、頭部サポート2240、腕部サポート2250、膝部サポート2260、及び足部サポート2270のうちの1又は2以上を含む。拘束具は任意に及び独立して、剛体又は半剛体である。半剛体マテリアルの例は、高密度又は低密度の形態、又は粘弾性の形態を含む。例えば、足部サポートは好ましくは剛体であり、腰部サポートは好ましくは半剛体である(例えば、高密度の形態のマテリアル)。1又は2以上の位置調整拘束具2215は、患者の迅速な位置調整及び/又は固定のために、可動であり及び/又はコンピュータ制御下にある。例えば、シートサポート2220はシート調節軸2222に沿って調節可能であり(それは好ましくはy−軸である);腰部サポート2230は腰部サポート軸2232に沿って調節可能であり(それは好ましくはy−軸要素に伴うz−軸の動きにより支配される);頭部サポート2240は頭部サポート軸2242に沿って調節可能であり(それは好ましくはy−軸要素に伴うz−軸の動きにより支配される);腕部サポート2250は腕部サポート軸2252に沿って調節可能であり(それは好ましくはy−軸要素に伴うz−軸の動きにより支配される);膝部サポート2260は膝部サポート軸2262に沿って調節可能であり(それは好ましくはy−軸要素に伴うz−軸の動きにより支配される);及び足部サポート2270は足部サポート軸2272に沿って調節可能である(それは好ましくはz−軸要素に伴うy−軸の動きにより支配される)。
患者が、侵入する陽子ビームに直面していなかったら、軸に沿ったサポート要素の動きの記述は変わるが、固定要素は同様である。
任意のカメラ2280は、患者固定システムとともに用いられる。カメラは、患者/対象1630を観察してビデオイメージを作る。イメージは、荷電粒子ビームシステムの1又は2以上のオペレーターに提供され、対象が動いたか又は陽子ビーム療法治療行為を終わらせたいかどうかを確認するための安全なメカニズムをオペレーターに提供する。ビデオイメージに基づき、オペレーターは陽子療法治療を中断又は終了させ得る。例えば、オペレーターがビデオイメージを介して対象が動いているのを観察したら、オペレーターは陽子療法治療を終了又は中断させる選択肢を有する。
任意のビデオディスプレイ又はディスプレイモニター2290が、患者に提供される。ビデオディスプレイは任意に、オペレーター指示、システム指示、治療の状態、又はエンターテイメントのいずれをも患者に表示する。
患者位置調整拘束具2215の位置調整のためのモーター、カメラ2280、及び/又はビデオディスプレイ2290が好ましくは、陽子輸送経路268又は瞬間陽子スキャニング経路269の上部又は下部に備え付けられる。
呼吸制御は任意に、ビデオディスプレイを用いることにより行われる。患者が呼吸すると、身体の内部及び外部の構造体は、絶対的な条件及び相対的な条件の両方において動く。例えば、胸腔の外側及び内臓の両方は、呼吸に伴い絶対的に動く。加えて、身体の外面領域、骨、支持組織、又は他の臓器といった他の身体構成要素に対する内臓の相対的な位置は、各呼吸に伴い動く。したがって、より正確かつ精密な腫瘍ターゲティングのために、陽子ビームは好ましくは、内部構造体又は腫瘍の位置が良好に決められるポイント(例えば、各呼吸のボトム又はトップ)にタイミングを合わせて配送される。ビデオディスプレイは、陽子ビーム配送を患者の呼吸サイクルに連動させる一助とするために用いられる。例えば、ビデオディスプレイは任意に、患者に指示を表示し、それは例えば、息止めの状態、呼吸の状態、次の息止めが必要なときを示すカウントダウン、又は呼吸を再開し得るまでのカウントダウンである。
(座位患者位置調整/固定)
第二の部分的固定の態様において、患者は部分的に、座位姿勢2300で拘束される。座位拘束システムは、上記で記載された、半垂直位置調整システムにおけるサポート構造体と同様のサポート構造体を用いるが、それには、シートサポートが椅子により置換され、膝部サポートが必要とされないという例外を伴う。座位拘束システムは概して、上記の半垂直の態様において記載された調節可能なサポート、y−軸の周りの回転、カメラ、ビデオ、及び呼吸制御パラメータを保持する。
図23を参照すると、座位患者半固定システム2300の特定例が提供される。座位システムは好ましくは、頭部及び/又は頚部の腫瘍の治療のために用いられる。図示されるように、患者は粒子療法のための椅子2310における座位姿勢に置かれる。患者は、頭部サポート2240、腰部サポート2230、手部サポート2250、膝部サポート2260及び足部サポート2270のうちのいずれをも用いてさらに固定される。サポート2220,2230,2240,2250,2260,2270は好ましくは、図示されるように各々の調節軸2222,2232,2242,2252,2262,2272を有する。椅子2310は、異なる患者拘束システムの使用を可能とするように容易に取り外されるか、コンピュータ制御のもと半垂直システムといった、新しい患者姿勢に適応する。
(臥位患者位置調整/固定)
第三の部分的固定の態様において、患者は部分的に、臥位姿勢で拘束される。臥位拘束システム2400は、上記の座位位置調整システム2300及び半垂直位置調整システム2200において用いられるサポート構造体と同様のサポート構造体を有する。臥位姿勢において、任意の拘束具、サポート、又は部分的固定要素は、頭部サポート2240及び腰部サポート、臀部及び肩部2230サポートのうちの1又は2以上を含む。サポートは好ましくは、患者の臥位姿勢に対して適切に回転される各々の調節軸を有する。臥位姿勢拘束システムは概して、上記の半垂直の態様において記載された調節可能なサポート、y−軸の周りの回転、カメラ、ビデオ、及び呼吸制御パラメータを保持する。
図24を参照すると、患者が治療に必要とされる約1〜3分間の時間立つのが困難であるというように、患者が重病である場合、部分的にサポートされたシステムは、筋肉の緊張に起因する患者のいくらかの動きをもたらし得る。この状態及び同様の状態において、サポートテーブル2420での臥位姿勢における患者の治療が、優先的に用いられる。サポートテーブルは、患者の体重の大部分を支える水平のプラットフォームを有する。好ましくは、水平プラットフォームは、治療プラットフォームから取り外し可能である。臥位位置調整システム2400において、患者はプラットフォーム2410上に置かれ、それは水平の姿勢での体重を支えるための実質的な水平部分を有する。以下に記載の任意のハンドグリップが用いられる。一実施態様において、プラットフォーム2410は、機械的ストップ若しくはロック要素2430及びマッチングキー要素2435を用いてテーブル2420に対して取り付けられ、並びに/又は患者1630は、配置要素2460に対して位置合わせされ若しくは位置調整される。
加えて、上部足部サポート2444、下部足部サポート2440、及び/又は腕部サポート2450の要素が任意に加えられ、それにより、胴部における腫瘍の治療のための陽子ビーム経路269の外に腕若しくは足を各々上げることができ、又は腕若しくは足の腫瘍の治療のための陽子ビーム経路269に腕若しくは足を動かすことができる。これは、上記のように、陽子配送効果を向上させる。足部サポート2440,2444及び腕部サポート2450は各々任意に、サポート軸又はアーク2442,2446,2452に沿って調節可能である。1又は2以上の足部サポート要素は任意に、アークに沿って調節可能であり、それにより、以下に記載されるように、陽子ビーム経路269の中に足を位置調整し、又は陽子ビーム経路269から足を除くことができる。腕部サポート要素は好ましくは、少なくとも1つの調節軸に沿って又はアークに沿って調節可能であり、それにより、以下に記載されるように、陽子ビーム経路269の中に腕を置き、又は陽子ビーム経路269から腕を除くことができる。
好ましくは、患者は陽子ビーム経路268の外の領域又は部屋におけるプラットフォーム2410に置かれ、治療室又は陽子ビーム経路領域に動かされ又はスライドされる。例えば、患者は、ガーニー(ガーニーのトップ(プラットフォームである)が分離する)の治療室に動かされ、テーブルの上に置かれる。ガーニー又はベッドがテーブルの上に持ち上げられないようにするために、プラットフォームは好ましくはテーブルの上でスライドされる。
半垂直患者位置調整システム2200及び座位患者位置調整システム2300は優先的に、効率性に起因して頭部又は胴部の腫瘍の治療に用いられる。半垂直患者位置調整システム2200、座位患者位置調整システム2300、及び臥位患者位置調整システム2400はすべて、患者の四肢の腫瘍の治療に有用である。
(サポートシステム要素)
位置調整拘束具2215は、半垂直位置調整システム2200、座位位置調整システム2300、及び臥位位置調整システム2400において記載されるように、患者を位置調整するために用いられるすべての要素を含む。好ましくは、位置調整拘束具又はサポートシステム要素は、陽子ビーム経路269を妨害せず又は覆うことのない位置に位置合わせされる。しかしながら、いくつかの場合において、位置調整拘束具は、患者の治療の時間の少なくとも一部の間、陽子ビーム経路269にある。例えば、位置調整拘束具要素は、患者が治療の間y−軸の周りを回転される期間の一部の間、陽子ビーム経路269に存在し得る。位置調整拘束具又はサポートシステム要素が陽子ビーム経路にある場合又は時間において、陽子ビームエネルギーの上方調節が好ましくは適用されて陽子ビームエネルギーを増加させ、陽子ビームの位置調整拘束具要素による障害が弱められる。ひとつの場合において、陽子ビームエネルギーは、y−軸の周りの回転の関数として、位置調整拘束システム要素の参照スキャン又は位置調整拘束要素の一連の参照スキャンの間測定された位置調整拘束要素の障害の独立した測定値により増強される。
明確にするために、本明細書において、位置調整拘束具2215又はサポートシステム要素が、半垂直位置調整システム2200に対して記載される;しかしながら、位置調整要素及び記述的なx−,y−,及びz−軸は、いかなるコーディネートシステム、座位位置調整システム2300、又は臥位位置調整システム2400にも適合可能である。
頭部サポートシステムの例は、ヒトの頭部の動きを支持し、位置合わせし、及び/又は制限するために記載される。頭部サポートシステムは好ましくは、後頭部のサポート、右頭部の位置合わせ要素、及び左頭部の位置合わせ要素のいずれをも含むいくつかの頭部サポート要素を有する。後頭部のサポート要素は好ましくは、カーブして頭部にフィットし、z−軸に沿うというように、任意に頭部サポート軸に沿って調節可能である。さらに、他の患者位置調整拘束具と同様に、頭部サポートは好ましくは、低密度又は高密度の形態といった、半剛体マテリアルからなっており、プラスチック又は革といった任意のカバーリングを有する。右頭部位置合わせ要素及び左頭部位置合わせ要素又は頭部位置合わせ要素は主に、頭部の動きを半拘束するために、又は頭部を完全に固定するために用いられる。頭部位置合わせ要素は好ましくは、パッド入り及び平坦であるが、任意に頭部の側面にフィットするように曲率半径を有する。右及び左頭部位置合わせ要素は好ましくは各々、頭部の側面との接触を作り出すように移動軸に沿って可動である。陽子療法の間制限された頭部の動きは、頭部又は頚部の腫瘍をターゲティング及び治療している時に重要である。頭部位置合わせ要素及び後頭部サポート要素は組み合わされて、x−,y−,z−軸コーディネートシステムにおける頭部のチルト、回転若しくはヨー、ロール及び/又は位置を制限する。
図25を参照すると、頭部サポートシステム2500の他の例が、頭部又は頚部における固形癌の陽子療法の間、ヒトの頭部1602の動きを位置調整及び/又は制限するために記載される。このシステムにおいて、頭部は1,2,3,4,又はそれ以上のストラップ又はベルトを用いて拘束される。それは好ましくは、頭部サポート要素2510の背面に接続され又は取り外しができるように接続されている。図示された例において、第一のストラップ2520は、額を頭部サポート要素2510に引き寄せ又は位置調整する(例えば、主にz−軸に沿って走行することによる)。好ましくは、第二のストラップ2530は、頭部がチルト、ヨー、ロールを経験しないように又は頭部がx−、y−、及びz−軸コーディネートシステムにおける並進運動に関連して動かないように、第一のストラップ2520に連動して機能する。第二のストラップ2530は好ましくは、(1)額2532において若しくはその周りで;(2)頭部2534の片方の側又は両側において;及び/又は(3)サポート要素2510において若しくはその周りで、第一のストラップ2520に取り付けられ、又は取り外し可能に取り付けられる。第三のストラップ2540は好ましくは、主にz−軸に沿って走行することにより、サポート要素2510に対して対象の顎を置く。第四のストラップ2550は好ましくは、頭部サポート要素2510及び/又は陽子ビーム経路に対して顎を支えるように、主にy−軸及びz−軸に沿って走行する。第三のストラップ2540は好ましくは、患者の顎2542における又はその周りでの使用の間、第四のストラップ2550に取り付けられ、又は取り外し可能に取り付けられる。第二のストラップ2530は任意に、サポート要素2510において又はその周りで2536を第四のストラップ2550に接続する。4つのストラップ2520,2530,2540,2550は、経路及び相互接続において図示される。ストラップのいずれも任意に、頭部の周囲で異なる経路に沿って頭部を支え、又は独立した態様で互いに接続する。当然ながら、所定のストラップは好ましくは、頭部の周りを走行し、頭部の片側のみを走行しない。ストラップ2520,2530,2540,及び2550のいずれも任意に、独立して又は他のストラップとの組み合わせ及び置換により用いられる。ストラップは任意に、頭部サポート要素2510といったサポート要素を介して互いに間接的に接続されている。ストラップは任意に、フック及びループ技術、バックル、又は留め具を用いて頭部サポート要素2510に取り付けられている。概して、ストラップは組み合わされて、位置、頭部の前後の動き、頭部の左右の動き、チルト、ヨー、ロール、及び/又は頭部の並進位置を制御する。
ストラップは好ましくは、z−軸に沿ったピークエネルギー放出の計算がされることを許容する陽子移送に対する既知のインピーダンスである。例えば、ブラッグピークエネルギーへの調節は、陽子移送へのストラップの減速傾向に基づき作られる。
図26を参照すると、頭部サポートシステム2240のさらなる他の例が記載される。頭部サポート2240は好ましくは、標準的又は子供のサイズの頭にフィットするよう、カーブを描く。頭部サポート2240は任意に、頭部サポート軸2242に沿って調節可能である。さらに、頭部サポートは好ましくは、他の患者位置調整拘束具と同様に、低密度又は高密度の形態といった半剛体マテリアルからなり、プラスチック又は皮革といった任意のカバーリングを有する。
上記で記載された頭部サポート、頭部位置調整及び頭部固定システムの要素は任意に、独立して又は組み合わせて用いられる。
さらに図26を参照すると、腕部サポート2250の例がさらに記載される。腕部サポートは好ましくは、患者の手1634で左手及び右手グリップ2610,2620を握る患者1630の動作のために、患者1630の上半身を位置合わせするために用いられる左手グリップ2610及び右手グリップ2620を有する。左手グリップ2610及び右手グリップ2620は好ましくは、患者の腕の大部分を支える腕部サポート2250に接続される。左手グリップ2610及び右手グリップ2620は好ましくは、半剛体マテリアルを用いて構成される。左手グリップ2610及び右手グリップ2620は任意に、位置合わせの一助となるように患者の手に合わせられている。左手グリップ及び右手グリップは任意に、上記に記載されるように、電極を有する。
腰部サポートの例がさらに記載される。腰部サポートは好ましくは、患者の腰部を支えるように、及び患者の胴部の側面を包むように曲線を描く。腰部サポートは好ましくは、2つの半剛体の部分、左側面、及び右側面を有する。さらに、腰部サポートは、トップエンド及びボトムエンドを有する。左側面のトップエンドと右側面のトップエンドとの間の第一の距離は好ましくは、患者の腰部の上部分にフィットするように調節可能である。左側面のボトムエンドと右側面のボトムエンドとの間の第二の距離は好ましくは、患者の腰部の下部分にフィットするように独立して調節可能である。
膝部サポートの例がさらに記載される。膝部サポートは好ましくは、任意に接続され又は個別に可動である左膝部サポート及び右膝部サポートを有する。左膝部サポート及び右膝部サポートの両方は好ましくは、標準的なサイズの膝部にフィットするように曲線を描いている。左膝部サポートは任意に左膝部サポート軸に沿って調節可能であり、右膝部サポートは任意に右膝部サポート軸に沿って調節可能である。あるいは、左膝部サポート及び右膝部サポートは接続され、膝部サポート軸に沿って可動である。左膝部サポート及び右膝部サポートの両方は好ましくは、他の患者位置調整拘束具と同様に、低密度又は高密度の形態といった、半剛体マテリアルからなり、プラスチック又は皮革といった任意のカバーリングを有する。
(患者呼吸モニタリング)
好ましくは、患者の呼吸のパターンがモニターされる。対象又は患者1630が呼吸すると、身体の多くの部分が呼吸ごとに動く。例えば、対象が呼吸すると、肺は、胃、腎臓、肝臓、胸筋、皮膚、心臓、及び肺といった身体内の臓器の相対的な位置の動きと同調して動く。概して、胴部のほとんどの部分又はすべての部分は、呼吸ごとに動く。たしかに、発明者らは、呼吸ごとの胴部の動きに加えて、種々の動きもまた呼吸ごとに頭部及び四肢に存在することを認識していた。陽子が優先的に腫瘍に配送され組織の周囲には配送されないように、動きは身体への陽子線量の配送において考慮されるべきである。したがって動きは、腫瘍がビーム経路に対して存在するところの曖昧さをもたらす。部分的にこの問題を克服するために、陽子は優先的に、一連の呼吸サイクルの各々における同じポイントに配送される。
はじめに、対象の呼吸のリズムパターンが決定される。サイクルが観察され又は測定される。例えば、X線ビームオペレーター又は陽子ビームオペレーターは、いつ対象が呼吸するか、いつ呼吸の間にいるか観察することができ、呼吸ごとの所定の時期への陽子の配送の時期を調節することができる。代わりに、あるいは、対象は、息を吸い込み、息を吐き出し、及び/又は呼吸を止めるように言われ、陽子は指示された時期の間運ばれる。
好ましくは、1又は2以上のセンサーが、個人の呼吸サイクルを決定するために用いられる。呼吸モニタリングシステムの2つの例が提供される:(1)熱モニタリングシステム、及び(2)力モニタリングシステムである。
図25を参照すると、熱呼吸モニタリングシステムの第一の例が提供される。該熱呼吸モニタリングシステムにおいて、センサーは患者の鼻及び/又は口の近くに置かれる。上述のように患者の顎が任意に拘束されると、熱呼吸モニタリングシステムは好ましくは、患者の鼻の呼吸経路の近くに置かれる。熱センサーシステムの構成要素の陽子療法への立体的干渉を回避するために、熱呼吸モニタリングシステムは好ましくは、胴部又は四肢における腫瘍を治療するときというように、頭部又は頚部に存在しない腫瘍を治療するときに用いられる。熱モニタリングシステムにおいて、第一の熱レジスタ2570は、患者の呼吸サイクル及び/又は患者の呼吸サイクルにおける位置をモニターするために用いられる。好ましくは、第一の熱レジスタ2570における鼻を経由した患者の呼気が呼気を示す第一の熱レジスタ2570を温めるというように、第一の熱レジスタ2570は患者の鼻の近くに置かれる。好ましくは、第二の熱レジスタ2560は、周囲の温度センサーとして機能する。第二の熱レジスタ2560は好ましくは、患者の呼気経路の外に置かれるが、第一の熱レジスタ2570と同様の局所環境に置かれる。熱レジスタ2570,2560からの電流といった発生されたシグナルは好ましくは、電圧に変換され、メインコントローラ110又はメインコントローラのサブ−コントローラに連通される。好ましくは、第二の熱レジスタ2560は、第一の熱レジスタ2570のシグナルの一部である周囲の温度の変動を調節するために用いられ(例えば、熱レジスタ2570,2560の値の間の差異を計算することによる)、患者の呼吸サイクルのより正確な読み出しを行う。
図23を再度参照すると、モニタリングシステムの第二の例が提供される。力呼吸モニタリングシステムの例において、センサーは胴部の近くに置かれる。例えば、力測定器は、患者の胸に取り外しできるように取り付けられる。力センサーシステムの構成要素の陽子療法への立体的干渉を回避するために、力呼吸モニタリングシステムは好ましくは、頭部、頚部又は四肢に存在する腫瘍を治療するときに用いられる。力モニタリングシステムにおいて、ベルト又はストラップ2350が、患者の呼吸サイクルごとに拡張及び膨張する患者の胴部の領域周囲に置かれる。ベルト2350は好ましくは、患者の胸をしっかしと締め、かつ柔軟性がある。力測定器2352は、ベルトに取り付けられ、患者の呼吸パターンを感知する。力測定器2352に付与された力は、呼吸サイクルの期間に相関する。力測定器2352からのシグナルは好ましくは、メインコントローラ110又はメインコントローラのサブ−コントローラに連通される。
(呼吸制御)
一実施態様において、患者が位置調整され、ひとたび対象の呼吸(breathing)又は呼吸(respiration)サイクルのリズムパターンが決定されると、シグナルは任意に、より正確に呼吸頻度を制御するために、例えばディスプレイモニター2290を経由して、患者に運ばれる。例えば、ディスプレイスクリーン2290は患者の前に置かれ、メッセージ又はシグナルは、いつ呼吸を止めるか又はいつ呼吸するかを対象に指示するディスプレイスクリーン2290に伝送される。典型的には、呼吸制御モジュールは、呼吸センサーの1又は2以上からの入力を用いる。例えば、入力は、いつ次の呼気が終了すべきかを決定するために用いられる。呼吸のボトムにおいて、制御モジュールは、例えばモニターにおいて、対象に息止めシグナルを表示する。それは、口頭のシグナル、デジタル化され自動的に作られた音声命令によるか、又は視覚制御シグナルによる。好ましくは、ディスプレイモニター2290は対象の前に置かれ、ディスプレイモニターは対象への呼吸命令を表示する。典型的には、対象は、約1/2,1,2,3,5,又は10秒間といった短い時間、息止めするように命令される。息止めの時間は好ましくは、腫瘍への陽子ビームの配送時間に同期され、それは約1/2,1,2,又は3秒間である。呼吸のボトムでの陽子の配送が好適である一方で、陽子は任意に吸気の頂点といった呼吸サイクルのあるポイントで配送される。呼吸のトップでの、又は患者が呼吸制御モジュールにより深く息を吸い息止めするように指示されるときの配送は、任意に行われる。呼吸のトップで胸腔が最大となり、いくつかの腫瘍では腫瘍と周囲組織との間の距離が最大となり、又は周囲組織が増加したボリュームに起因して薄くなるためである。したがって、周囲の組織をヒットする陽子が最小化される。任意に、ディスプレイスクリーンは、対象がまさに息止めをするように求められている任務に気づくように、例えば3,2,1秒のカウントダウンを伴って、いつまさに息止めをするように求められるかを対象に知らせる。
(陽子ビーム療法の呼吸との同期)
一実施態様において、荷電粒子線療法及び好ましくは多方向陽子療法は、患者の呼吸をモニターし及び/又は制御するために用いられる、上述の呼吸フィードバックセンサーの使用により患者の呼吸に連動され及び同期される。好ましくは、荷電粒子線療法は、部分的に固定され再位置調整可能な姿勢で患者に行われ、腫瘍1620への陽子配送は、荷電粒子ビーム注入、加速、抽出、並びに/又はターゲティング方法及び装置の制御により患者の呼吸のタイミングに合わせられる。同期は、患者の呼吸サイクルの間、身体の構成要素の相対的な動きに起因する位置の曖昧さを取り除くことにより陽子配送の正確さを向上させる。
第二の実施態様において、X線システムは陽子療法ビームにより見ると、同じ姿勢における患者のX線イメージを提供するために用いられ、X線システム及び陽子療法ビームの両方は患者の呼吸に同期される。好ましくは、同期されたシステムは、患者の呼吸のタイミングに合わせたX線を提供するために、陰イオンビーム源、シンクロトロン、並びに/又はターゲティング方法及び装置と連動して用いられる。それにおいては、X線は、患者の位置に対してターゲットされ制御されたエネルギーの配送を保証するために、粒子ビーム療法照射の直前に及び/又はそれと同時に集められる。それにより、陽子ビーム位置検証システムを用いる、患者における周囲の健常組織へのダメージを最小化させた、固形癌性腫瘍の十分な、正確及び/又は精密な治療がもたらされる。
陽子配送制御アルゴリズムは、呼吸ごとの所定の時間内(例えば、呼吸のトップ、呼吸のボトム、及び/又は対象が息止めしているとき)に腫瘍への陽子の配送に同期するために用いられる。陽子配送制御アルゴリズムは好ましくは、呼吸制御モジュールと一体化している。このようにして、陽子配送制御アルゴリズムは、対象がいつ呼吸するのか、呼吸サイクルにおいて対象がどこにいるのか、及び/又は対象がいつ息止めするのかを知る。陽子配送制御アルゴリズムは、陽子がいつシンクロトロンに注入され及び/又は屈曲されるのか、RFシグナルがいつ上述のように振動を誘導するように付与されるのか、並びにDC電圧がいつ上述のようにシンクロトロンから陽子を抽出するように付与されるのかを制御する。典型的には、陽子配送制御アルゴリムは、対象が息止めをするように指示される前に、又は陽子配送時間に対して選択された呼吸サイクルの特定の時間の前に、陽子屈曲及び次のRF誘起振動を開始させる。この態様において、陽子配送制御アルゴリズムは、呼吸サイクルの選択された時間で陽子を配送する。陽子配送制御アルゴリズムは任意に、呼吸サイクル又は対象の指示された呼吸サイクルにマッチするAC RFシグナルにセットされる。
上述の荷電粒子線療法要素は、以下に記載される、腫瘍治療計画を進め及び実行することでの組み合わせ及び/又は置換において組み合わされる。
(コンピュータ制御された患者再位置調整)
患者位置調整ユニット構成要素の1若しくは2以上及び/又は患者位置調整拘束具の1若しくは2以上は好ましくは、コンピュータ制御下にある。例えば、コンピュータは、例えば患者位置調整要素2215を動かすドライブに接続された一連のモーター位置を記録することにより、患者位置調整要素2215の位置を記録又は制御する。例えば、患者は最初に、患者位置調整拘束具2215により位置調整及び拘束される。患者位置調整拘束具の各々のポジションは、メインコントローラ110により、メインコントローラ110のサブコントローラにより、又は独立したコンピュータコントローラにより記録され及び保存される。その後、イメージングシステムは、患者が最終治療の制御された位置にいる間、患者1630において腫瘍1620の場所を決めるために用いられる。好ましくは、患者が制御された位置にいるとき、多方向イメージングが本明細書で記載されるように行われる。イメージングシステム170は、MRI、X線、CT、陽子ビームトモグラフィー、及び同様物のうちの1又は2以上を含む。時間は任意に、イメージングシステム170からのイメージが分析され陽子療法治療計画が考案されている間、このポイントで経過する。患者は任意に、この期間の間拘束具システムを出て、それは分、時間、又は日単位であり得る。患者が戻ってきて患者位置調整ユニットに最初に患者を配置するとき、及び好ましくはその後、コンピュータは、患者位置調整拘束具を記録されたポジションに戻す。このシステムは、イメージング及び多方向荷電粒子線照射治療計画の展開の間用いられる位置に患者を早期に再位置調整することを可能とし、それは患者位置調整のセットアップ時間を最小化し、荷電粒子ビームシステム100が癌治療に用いられる時間を最小化する。
(患者位置調整及び固定化の再現)
一実施態様において、患者位置調整及び固定化システムを用いて、腫瘍1620の周りの患者1630の領域は、再生可能な方法で位置調整及び固定化される。それは例えば、電動の患者移動及び回転位置調整システム1610及び/又は患者位置調整拘束具2215により行われる。例えば、(1)半垂直部分的固定化システム2200;(2)座位部分的固定化システム2300;又は(3)臥位位置調整システム2400といった、上述の位置調整システムのひとつは、陽子ビーム経路268に対して患者1630の腫瘍1620を位置調整するように、患者移動及び回転システム1610と組み合わせて用いられる。好ましくは、位置調整及び固定化システムは、陽子ビーム経路268に対して腫瘍1620の位置を制御し、腫瘍1620の位置を固定し、及び陽子ビーム経路268に対して腫瘍1620の再配置を促進する。それは、照射治療計画の展開の間というように、患者1630が陽子ビーム経路268から離れた後である。
好ましくは、患者1630の腫瘍1620は、三次元位置に関連して、及び姿勢に関連して、位置調整される。本明細書において、三次元位置はx−,y−,及びz−軸に関連して規定され、姿勢はピッチ、ヨー、及びロールの状態である。ロールはz−軸周囲の面の回転であり、ピッチはx−軸周囲の面の回転であり、及びヨーはy−軸周囲の面の回転である。チルトは、ロール及びピッチの両方を記述するために用いられる。好ましくは、位置調整及び固定化システムは、ピッチ、ヨー、ロール、x−軸位置、y−軸位置、及びz−軸位置のうち、少なくとも3つに関連して、好ましくは4,5,又は6つに関連して、陽子ビーム経路268に対して腫瘍1620の位置を制御する。
(椅子)
患者位置調整及び固定化システムはさらに、椅子位置調整の例を用いて記述される。明確にするために、肩の腫瘍を位置調整及び固定化するケースが、椅子位置調整を用いて記述される。半垂直固定化システム2200を用いて、患者は概して、シートサポート2220、膝部サポート2260、及び/又は足部サポート2270を用いて位置調整される。さらに肩を位置調整するために、腰部サポート2230におけるモーターは、患者の胴部を再度押す。付加的な腕部サポート2250モーターは、例えば患者の肘に対して一方向での第一の力で押すことにより、腕部を位置合わせし、患者の手首は反対の方向での第二の力を用いて位置調整される。これは腕の動きを制限し、肩を位置調整する一助となる。任意に、頭部サポートが、首に張力を付与することにより肩の動きをさらに制限するように位置調整される。組み合わされて、患者位置調整拘束具2215は、少なくとも三次元において患者1630の腫瘍1620の位置を制御し、好ましくはx−,y−,及びz−軸位置に関連するのと同様にヨー、ロール、及びピッチの動きのすべてに関連して腫瘍1620の位置を制御する。例えば、患者位置調整拘束具は、腫瘍1620を位置調整し、例えば患者が倒れ込むのを防ぐことにより、腫瘍の動きを制限する。任意に、患者位置調整拘束具2215の1又は2以上におけるセンサーは、付与された力を記録する。ひとつのケースにおいて、シートサポートは体重を感知し、患者の体重の一部(例えば患者の体重の約50,60,70,又は80パーセント)を支えるように力を付与する。第二のケースにおいて、首、腕、及び/又は足に付与された力が記録される。
概して、患者位置調整及び固定化システムは、X線ビーム経路、陽子ビーム経路268、及び/又はイメージングビーム経路に対して腫瘍1620の位置を正確かつ精密に位置調整及び制御するように、患者1630から動きの自由の程度を奪う。さらに、ひとたび自由の程度が奪われると、患者位置調整拘束具の各々に対するモーター位置は、記録され、及びメインコントローラ110にデジタル化されて伝達される。ひとたび患者が例えば照射治療計画が作り出されたときに固定化システムから動くと、患者1630は照射計画が実行される前に正確に再位置調整されなければならない。これを実行するために、患者1630は椅子といった位置調整装置に概して座り、メインコントローラはモーター位置シグナル及び任意に付与された力を患者位置調整拘束具2215の各々を制御するモーターに送り返し、患者位置調整拘束具2215の各々は自動的に個別の記録された位置に戻される。したがって、患者1630を再位置調整及び再固定化することは、約10,30,60,又は120秒間未満において、座ってから完全に位置が制御されるまでに行われる。
コンピュータ制御され及び自動化された患者位置調整システムを用いて、患者は、呼び戻された患者位置調整拘束具2215モーター位置を用いる位置調整及び固定化システムにおいて再位置調整される;患者1630は、陽子ビーム268に対する患者移動及び回転システム1620を用いて移動及び回転される;及び陽子ビーム268は、メインコントローラ110によりその瞬間ビーム位置269にスキャンされる。それは作り出された照射治療計画に続く。
本発明はある好ましい実施態様に関連して本明細書において記載されるが、本技術分野における当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の適用が本明細書の記載に置き換えられ得ることを容易に理解するであろう。