車体前部にフードを備えた自動車等の車両において、このフードは、アウタパネルと、アウタパネルの下面側に配置されたインナパネルと、アウタパネルとインナパネルとの間に配置された補強材とを備えている。そして、フード自体の剛性及び強度を確保するために、アウタパネルとインナパネルとが空間を介した閉断面構造をとるようにして接合されており、その内部に、複数個の補強材が設置されている。
近年、フードパネルについては、フード剛性、耐デント性及び張り剛性等に加えて、歩行者頭部が衝突したときの傷害値を低減できる構造も要求されるようになってきた。この歩行者保護性能を評価するためには、衝突時の加速度−時間波形から算出されるHIC(Head Injury Criteria)値が一般的に用いられており、HIC値が小さいほど、歩行者頭部の傷害が生じにくいとされている。つまり、フードとして必要な剛性及び強度を確保した上で、HIC値を低くすることができるフード構造が求められている。また、フード下側に配置されるエンジン等の各種機能部品のレイアウト自由度を確保するために、これらの部品とフード下面との隙間を小さくすることができるフード構造も望まれている。
歩行者の頭部がフードに衝突する場合、加速度波形は、頭部がフードのアウタパネルに接触したときに第1波が生じ、その後、フード下側に配置される各種機能部品との接触により加速度第2波が生じる形態が一般的である。そして、HIC値低減のためには、この加速度第2波を小さくすることが最も有効であり、フード下面とフード下側に配置される各種機能部品との隙間を十分に確保することが理想的である。しかし、前述のごとく、この隙間を小さくしたいという要望を考えれば、加速度第1波を大きくして、エネルギ吸収ストローク自体を小さくすることが必要となっている。
加速度第1波を大きくするためには、頭部衝突の際にその荷重を受け持つ領域を広くし、被衝突物の慣性質量を大きくすることが重要であり、衝突時の応力を広く周囲に伝播させることが必要である。このためには、アウタパネルの裏面にマスチックを介して配置されるインナパネル又は各種補強材の構造が重要になってきている。
近時、特に、フードのフロント側のストライカ近傍部では、耐デント性に関する要求性能が厳しくなり、ストライカ直上の近傍の部分に、デント補強材と呼ばれる補強材をアウタパネルに近接して設け、アウタパネルの張り剛性及び耐デント性の確保と歩行者保護性能向上との両立を図ることが一般的に行われている(特許文献1,2)。
特許文献1には、アウタパネルに近接して設けられた補助リインフォースの前端に、屈曲形状からなる衝撃緩和構造を備えたフード構造が開示されている。この従来技術は、歩行者の衝突時に、衝撃緩和構造の屈曲した形状に基づいて補助リインフォースが車両長手方向に変形し、衝突における衝撃力を低減して、歩行者保護性能を向上させようとするものである。
また、特許文献2には、フードを補強するデントリインフォース(デント補強材)が、アウタパネルに近接して配置されており、このデントリインフォースに、デントリインフォースの剛性を高めるためのビードが設けられたフード構造が開示されている。この特許文献2は、フードの上側から、歩行者の頭部等が衝突して、フードが変形しても、デントリインフォースの剛性を高くすることによって、アウタパネル及びデントリインフォースが局所変形されることを抑制して、衝突時のエネルギ吸収量を高めようとするものである。
また、フードを強く閉じたときのフードの強度を確保すると共に、このフードを車両に係合するストライカが取り付けられた部分の剛性を確保するため、ストライカ補強材と呼ばれる補強材をインナパネルに近接して設けることも行われている。このストライカ補強材は、フードの強度及び剛性を確保するため、インナパネル又はデント補強材等に比べて板厚を厚く設計する場合が多い。そして、デント補強材の代わりにストライカ補強材をアウタパネルに接合することで、部品点数を増やさずに耐デント性を向上させるような構造も一般的に用いられている。しかし、ストライカ補強材は、デント補強材よりも変形しにくいため、歩行者の頭部が衝突したときに、このストライカ補強材が大きく変形するような状態になると、加速度2次ピークが大きくなり、HIC値が高く、即ち、歩行者保護性能が悪くなるという問題がある。
このため、ストライカ補強材をアウタパネルに連結するような構造を採用する場合には、ストライカ補強材のストライカ連結部とアウタパネルとのマスチック接合部とを連結する接合脚に、弱体部を設定すること等が提案されている。このストライカ近傍の強度及び剛性の確保と、歩行者保護性能の両立のために、歩行者頭部衝突の際に変形させる必要がある車両後方側のスティフナ部に薄肉材を使用し、ストライカが接合されるインナパネルの部分及びストライカを支持する部分に厚肉材を使用する構造が提案されている(特許文献3,4,5)。
特許文献3は、ストライカ支持部(11)と、このストライカ支持部(11)から車両後方に延びるスティフナ部(12)(接合脚)とを、別々の部品として形成し、これらを結合してテーラードブランクによりフードストライカレインフォースメント(10)(ストライカ補強材)が形成されており、このフードストライカレインフォースメント(10)が、アウタパネルとインナパネルとの間に設けられている。スティフナ部(12)は、フードアウタパネル(3)を下方に押す程度の弱い力に対するフードアウタパネル(3)の変形を抑制するが、歩行者との衝突に対する衝撃力には脆弱な剛性を示すと特許文献3に記載されている(段落0023、符号は特許文献3の図2参照)。また、このスティフナ部(12)の剛性は、ストライカ支持部(11)の剛性よりも低い。これにより、この従来技術は、ストライカ支持部(11)の剛性を確保しつつ、歩行者の頭部が衝突した際、剛性が低いスティフナ部(12)が容易に変形して、歩行者頭部衝突時の衝撃力を低減させようとするものである。
また、特許文献4には、ストライカをインナパネルに固定するストライカ固定パッチを、インナパネルの上面に締結し、このストライカ固定パッチの上面に、更に、車両長手方向に延びるフードロックリインフォースメント(ストライカ補強材)を配置して締結したフード構造が開示されている。この特許文献4は、ストライカが固定される部分には、ストライカ固定パッチ及びフードロックリインフォースメントが設置され、ストライカが固定される部分よりも車両後方側は、フードロックリインフォースメントのみが設置され、このフードロックリインフォースメントがアウタパネルに接合されている。これにより、この特許文献4は、ストライカ固定部の近傍を、ストライカ固定パッチ及びフードロックリインフォースメントという2個の部品によって、剛性を高め、且つ、車両後方側においては、フードロックリインフォースメントのみを設置することで、ストライカ固定部よりも弱体化させて、歩行者頭部衝突時の変形強度を低くして、歩行者保護性能を高めようとするものである。
更に、特許文献5には、板厚が異なる2個の部材をプレス成形により形成し、この2個の部材をスポット溶接により接合したフードロックリインフォースが、アウタパネルとインナパネルとの間に配置されたフード構造が開示されている。この特許文献5のフードロックリインフォースは、ストライカが固定される底部(ストライカ連結部)を厚板にして、剛性を高めると共に、アウタパネルに接合される延接部(接合脚)を薄板にして、剛性を低くしている。これにより、この従来技術も、ストライカ固定部位の剛性を高めると共に、歩行者の頭部が衝突しても、剛性が低い延接部(接合脚)の変形ストロークを大きくして、衝突エネルギを吸収しようとするものである。
アルミ押出形材は、断面内の肉厚及びリブ配置が比較的自由に設定できるという利点があり、特に、溶接を伴わずに、予め閉断面の形状が得られることから、自動車のフレーム及びエネルギ吸収部品への採用が増加している。しかし、パネル内の補強材としても、ドアビーム等の直線状部品への採用事例はあるものの、フードパネルへの採用実績は少ない。例えば、特許文献6には、アウタパネルの内面を補強するスティフナがアルミニウム合金等の押出材で成形されていることが開示されているが、これは高剛性のフレーム状部品で構成するように押出形材を適用した事例であり、従来、歩行者保護と剛性、強度要件の両立という観点で押出形材の適用を検討した事例は見当たらない。
しかしながら、フード閉止時のフードの強度及びストライカ近傍の剛性を確保するために、ストライカ補強材におけるストライカ連結部及び接合脚を厚肉にすると、アウタパネルに歩行者の頭部が衝突する際、アウタパネルに接合された接合脚が変形しにくくなる。一方、この接合脚を変形させやすくするために、接合脚に、折れ部を設定(折れ線設定)する方法があるが、折れ部を設定しただけでは、接合脚の強度自体は下がらないため、接合脚を変形させる上で不十分である。そこで、接合脚が容易に変形するように弱体化させるためには、変形の起点となる変形部の面積を減少させる必要がある。変形部の面積を減少させるため、変形部に弱体化孔を設けることによって、変形部を弱体化させる。なお、この場合、孔あけ加工を可能とするために、接合脚に段差を設けて、棚を形成したりする必要もあり、孔あけ位置には制限がある。
また、特許文献3,5のように、ストライカ補強材におけるストライカ連結部を厚肉の部品として形成し、ストライカ補強材におけるアウタパネル又はデント補強材との接合脚を薄肉の部品として形成し、この2個の部品を結合することによって、ストライカ補強材を構成すれば、ストライカ近傍の強度及び剛性の確保と、歩行者保護性能確保のための接合脚の弱体化とを両立させることは可能である。しかし、この場合、部品点数の増加及びこれらの部品を溶接する溶接点数の増加によって、コストが高くなってしまう。
また、特許文献1は、補助リインフォースのインナパネル側に、フードロックリインフォースを設けており、特許文献2も、デントリインフォースのインナパネル側に、ロックリインフォースを設けているが、この特許文献1,2で用いられるロックリインフォースは、板厚一定の板材のプレス成形品で形成されているために、ロックリインフォースのストライカ取り付け部近傍と、デントリインフォース接合位置近傍の板厚、つまり、剛性が同じになり、ストライカ取り付け位置の剛性確保と、歩行者保護性能確保とを両立させることができない。更に、特許文献4のように、ストライカを取付ける部分に、2個の部品を配置することによって、ストライカ近傍の剛性を高めようとすることも可能であるが、部品点数及び接合点数の増加によるコスト上昇が問題になる。
更に、従来からあるアルミ板材のプレス成形品で構成されたストライカ補強材は、ストライカ連結部から車両後方又は車両前方に、インナパネルに沿って延在し、この延在する部分をインナパネルと接合することで、ストライカ近傍の剛性を向上させることができる。しかし、アウタパネル又はデント補強材との接合脚部を設ける場合、車両前方又は車両後方に延在する部分が長くなると、ストライカの直上から遠い位置で、ストライカ補強材とアウタパネル又はデント補強材とを接合することになり、ストライカ補強材によるアウタパネル又はデント補強材の支持点間隔が広くなって、耐デント性及び歩行者保護性能が低下する。一方、ストライカ補強材の車両前方又は車両後方への延在部分を短くすると、ストライカ近傍の剛性が低下するため、この剛性と、耐デント性及び歩行者保護性能とのバランスをとることが難しいという問題があった。
また、特許文献6のように、アウタパネルのスティフナ(補強材)を押出材で成形した構造は、パネルの剛成向上のみが目的であり、ストライカ近傍の高強度及び高剛性の確保と、歩行者保護性能の確保との両立の方法を示唆するものではない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ストライカ近傍の高強度及び高剛性と歩行者保護性能確保とを両立させると共に、比較的低コストで製造可能な車両用フード構造及びストライカ補強材を提供することを目的とする。
本発明に係る車両用フード構造は、アウタパネルと、このアウタパネルの下面側に配置されたインナパネルと、フードを車両本体に係合するためのストライカと、車両幅方向を押出方向として一体成形されたアルミニウム押出形材からなるストライカ補強材と、を有し、前記ストライカ補強材は、前記インナパネルに固定されると共に、前記ストライカを取り付けるための連結部を有するストライカ連結部と、このストライカ連結部から車両上方且つ車両長手方向に延び前記アウタパネルに接合される接合脚部と、を有し、押出成形により一体成形された前記ストライカ連結部と前記接合脚部とは、前記接合脚部の厚さが前記ストライカ連結部よりも薄く成形されていることを特徴とする。
本発明に係る他の車両用フード構造は、アウタパネルと、このアウタパネルの下面に固定されて配置されたデント補強材と、前記アウタパネルの下面側に配置されたインナパネルと、フードを車両本体に係合するためのストライカと、車両幅方向を押出方向として一体成形されたアルミニウム押出形材からなるストライカ補強材と、を有し、前記ストライカ補強材は、前記インナパネルに固定されると共に、前記ストライカを取り付けるための連結部を有するストライカ連結部と、このストライカ連結部から車両上方且つ車両長手方向に延び前記デント補強材に接合される接合脚部と、を有し、押出成形により一体成形された前記ストライカ連結部と前記接合脚部とは、前記接合脚部の厚さが前記ストライカ連結部よりも薄く成形されていることを特徴とする。
本発明においては、例えば、前記接合脚部は、前記ストライカ連結部の後端から車両上方に延び、前記アウタパネル又は前記デント補強材に接合されており、前記ストライカ連結部は、前記インナパネルに沿って、車両後方に延びる後方フランジを有する。また、前記接合脚部は、前記ストライカ連結部の前端から車両上方に延び、前記アウタパネル又は前記デント補強材に接合されており、前記ストライカ連結部は、前記インナパネルに沿って、車両前方に延びる前方フランジを有するように構成してもよい。
更に、前記接合脚部は、衝突時に折れ変形する起点となる折れ部を有するように構成してもよい。この場合、例えば、前記折れ部の肉厚が、接合脚部における前記折れ部以外の部分よりも肉厚が薄い。更にまた、前記接合脚部は、分岐点から複数に枝分かれして、前記アウタパネル又は前記デント補強材の複数箇所に接合されるように構成してもよい。
そして、前記ストライカ補強材が車両幅方向に平行に形成され、前記インナパネルに対し車両幅方向に平行に接合されるように構成してもよく、また、前記ストライカ補強材が車両幅方向に平行に形成され、前記デント補強材に対し車両幅方向に平行に接合されるように構成してもよい。
また、前記ストライカ補強材の材質がアルミニウム6000系合金製押出形材であり、前記ストライカ連結部の厚さが1.4mm以上であるように構成してもよい。
本発明に係るストライカ補強材は、アウタパネルと、このアウタパネルの下面側に配置されたインナパネルと、フードを車両本体に係合するためのストライカと、を有する車両用フード構造に設けられたストライカ補強材において、前記インナパネルに固定されると共に、前記ストライカを取り付けるための連結部を有するストライカ連結部と、このストライカ連結部から車両上方且つ車両長手方向に延び前記アウタパネルに接合される接合脚部と、を有し、前記ストライカ連結部と前記接合脚部とは、車両幅方向を押出方向として一体成形されたアルミニウム押出形材により、前記接合脚部の厚さが前記ストライカ連結部よりも薄くなるように一体成形されていることを特徴とする。
本発明に係る他のストライカ補強材は、アウタパネルと、このアウタパネルの下面に固定されて配置されたデント補強材と、前記アウタパネルの下面側に配置されたインナパネルと、フードを車両本体に係合するためのストライカと、を有する車両用フード構造に設けられたストライカ補強材において、前記インナパネルに固定されると共に、前記ストライカを取り付けるための連結部を有するストライカ連結部と、このストライカ連結部から車両上方且つ車両長手方向に延び前記デント補強材に接合される接合脚部と、を有し、前記ストライカ連結部と前記接合脚部とは、車両幅方向を押出方向として一体成形されたアルミニウム押出形材により、前記接合脚部の厚さが前記ストライカ連結部よりも薄くなるように一体成形されていることを特徴とする。
本発明によれば、ストライカ補強材にアルミニウム押出形材を用いることによって、1個の部品に複数の肉厚を形成することができ、断面の肉厚を最適化することができる。これにより、ストライカ連結部を強度上必要な厚さにして、ストライカ近傍の剛性及び強度を確保すると共に、アウタパネル又はデント補強材と接合される接合脚部のうち、少なくとも歩行者頭部の衝突時に変形が生じる領域の板厚をストライカ連結部よりも薄肉化して、折れ変形しやすくすることにより、歩行者頭部衝突時の加速度増加を抑えて、歩行者保護性能を確保することができる。
また、このストライカ補強材は、ストライカ連結部の車両前方側、車両後方側又は車両前方と車両後方との両方の側にインナパネルの形状に沿って延長されるフランジを有し、且つ、このフランジから分岐して車両上方に延在する接合脚部を有することが望ましい。この接合脚部は、アウタパネル又はデント補強材に連結される。この構成により、ストライカ連結部近傍の剛性を高くすると共に、ストライカ直上に近い位置で、アウタパネル又はデント補強材と、ストライカ補強材とを接合して、この支持点とストライカとの間隔の短縮による耐デント性及び歩行者保護性能の向上が可能となる。
また、歩行者頭部衝突時に、接合脚部の折れ位置を安定させるために、この接合脚部の中間に、折れ部を設けていることが望ましい。そして、この折れ部近傍の肉厚を他部位に比べて薄肉化することにより、歩行者頭部衝突時の変形強度を更に低減することができ、他部位の変形を抑制することで、安定した衝突性能を確保することができる。本発明は、ストライカ補強材に押出形材を用いることで、プレス成形では負角になるような曲げ形状も容易に形成することができるという利点があり、頭部衝突時に、より容易にストライカ補強材を変形させることが可能である。また、歩行者保護の観点から、このアウタパネル又はデント補強材と接合される接合脚部の強度を更に低くする場合には、この接合脚部に弱体化孔等を設けてもよい。
このアウタパネル又はデント補強材と接合される接合脚部は、車両前方側、車両後方側又は車両前方と車両後方との両方の側に複数設けてもよい。また、車両上方に延在する接合脚部の途中に分岐を設け、この分岐点から複数に枝分かれして、アウタパネル又はデント補強材の複数箇所で接合してもよい。これらの接合位置については、デント性及び歩行者保護性能確保の観点から適宜選択されるが、断面の肉厚設計の自由度が高く、溶接等を伴わずにT字状セクションを容易に設定できる押出形材であれば、比較的自由に接合位置を設定することができ、従来の板材のプレス成型品の構造に比べて、よりストライカ直上に近い位置をストライカ補強材で支持することが可能になる。
また、一般的に自動車用アウタパネルは、車両幅方向にも曲率を有する。このため、ストライカ補強材を直接アウタパネルにマスチック接合させる場合、少なくとも接合座面部は、長手方向(車両幅方向)に形状を変化させる必要がある。この場合でも、長手方向に一定形状の押出形材部品にプレス成形又は曲げ加工等を施し、長手方向の形状を変化させればよい。なお、より望ましくは、ストライカ補強材をアウタパネルではなく、デント補強材に接合する構造において、このデント補強材側の接合部を、予め車両幅方向に平行の位置に設定しておくことである。また、このデント補強材と同様に、インナパネルにおけるストライカ補強材との接合部も、予め車両幅方向に平行の位置に設定しておく。これにより、車両幅方向に一定の断面となる本発明のストライカ補強材は、プレス成形によって車両幅方向に形状を変化させることなく、デント補強材及びインナパネルに組み付けることが可能となり、比較的低コストで製造が可能となる。
次に、本発明の第1の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の車両用フード構造を示す断面図である。なお、図1は、車輌のフードストライカの近傍を代表的に示すものである。図1に示すように、車両用フード構造1の断面構造は、フード上面を構成するアウタパネル2が、車両長手方向に緩やかな曲率を有して延在し、その下面側にインナパネル3が配置されている。そして、アウタパネル前端部2aは、ヘム加工により、インナパネル前端部3aを取り込んで、インナパネル3を固定する部分となっている。また、インナパネル3の車輌最下側面(以下、底面)の上には、ストライカ補強材4が配置されており、ストライカ7が接合された鋼板製ベースプレート8とインナパネル3に挟持されることにより、インナパネル3に固着されている。
このストライカ補強材4は、インナパネル3に固定されたストライカ連結部5と、このストライカ連結部5の後端部から車両上方且つ車両後方に延びる接合脚部6とから構成されている。本実施形態においては、ストライカ連結部5は、剛性向上を目的としてインナパネル3底面の前端に対応する位置に屈曲部が設けられている。また、このストライカ連結部5には、ストライカ7が上方向から挿入できるように、これに対応したトリム孔が形成されている。接合脚部6は、ストライカ連結部5の後端部から車両上方且つ車両後方に延在し、接合脚部6の中間には折れ部10が設けられている。また、接合脚部6は、折れ部10の車両上方且つ車両後方には、アウタパネル2に近接したマスチック座面を有し、マスチックを介してアウタパネル2と接合されるとともに、その後方側でインナパネル3と接合されている。この接合脚部6は、車両幅方向に全面的に設けられた接合脚部6aでも良いし(図10(b)参照)、又はトリム加工を施すことにより、車幅方向に複数本設けるような構造の接合脚部6bであっても良い(図10(c)参照)。なお、図10(a)は図1と同一である。この接合脚部6の中間に設けられた折れ部10は、歩行者の頭部がフードに衝突した際に、ストライカ補強材4が折れ変形する起点となる部分である。
なお、一般的に、自動車用のアウタパネルは、車両幅方向にも曲率を有して湾曲している。このため、ストライカ補強材を直接アウタパネルにマスチック接合させる場合、少なくともストライカ補強材におけるマスチック接合用の座面部は、接合座面部の長手方向(車両幅方向)に形状を変化させる必要がある。このため、接合座面部については、押出加工された素材に対して、プレス成形や曲げ加工等を施し、接合座面の位置をアウタパネルに応じて形成するする必要があるといえる。
このストライカ補強材4は、アルミニウム押出形材からなっており、車両幅方向を押出方向として、ストライカ連結部5と接合脚部6とが押出成形により一体成形されている。そして、このストライカ補強材4の材質は、リサイクルを考慮したフード材質のユニアロイ化(同一材質の使用)、FSW(Friction Stir Welding)接合(摩擦撹拌接合)性の確保及び押出加工の容易さの観点から、アルミニウム6000系合金製押出形材であることが好ましい。また、ストライカ補強材4におけるアウタパネル2及びインナパネル3に接合される接合脚部6は、インナパネル3の底面に接合されたストライカ連結部5よりも、肉厚が薄くなっている。そして、ストライカ連結部5の肉厚を強度上必要な厚さにして、フード内におけるストライカ7近傍の剛性及び強度を確保しつつ、接合脚部6をストライカ連結部5よりも薄肉にすることにより、歩行者の頭部がフードに衝突した際に、折れ変形しやすくして、歩行者頭部衝突性能を高めることができる。このストライカ連結部5の肉厚は1.4mm以上であることが好ましい。これにより、ストライカ7取り付け位置近傍の剛性及び強度を更に高めることができる。また、歩行者保護の観点から、このアウタパネル2との接合脚部6の強度を更に低くする場合には、この接合脚部6に、弱体化孔を設けてもよい。
次に、本実施形態の車両用フード構造1の組み付け工程について説明する。先ず、インナパネルにストライカ補強材4を接合する。その後、鋼材製のストライカ7が溶接されている鋼板製のベースプレート8を、車両上方から組み付け、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5及びインナパネル3の孔に挿入する。そして、ストライカ7とインナパネル3とをストライカ補強材4を挟んだ状態で配置し、その後、ストライカ補強材4とインナパネル3との接合を行う。このように、ストライカ7を、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5の孔に挿入する際に、ストライカ7の侵入が可能なように、ストライカ連結部5の上方に空間を設ける必要がある。このため、ストライカ補強材4における接合脚部6は、この空間を考慮して、設定することが必要である。この接合脚部6は、アウタパネル2との接合部にマスチックを塗布して、接合脚部6をアウタパネル2に接合する。このようにして、車両用フード構造1が組み付けられる。
次に、本実施形態の車両用フード構造1の動作について説明する。図8に示すストライカ補強材4は、ストライカ連結部5と接合脚部6とを板材のプレス成形品で一体成形した従来構造である。この図8に示すストライカ補強材4は、板厚が均一であるため、ストライカ連結部5と接合脚部6との剛性が同じである。そこで、両者の剛性を高めると、接合脚部6が変形しづらくなって、歩行者保護性能が低下してしまう。一方、ストライカ連結部5及び接合脚部6の剛性を低くすると、ストライカ7近傍の剛性が不足してしまう。これに対し、本実施形態のストライカ補強材は、ストライカ連結部5の厚さを強度上必要な厚さにすると共に、接合脚部6の厚さをストライカ連結部5よりも薄くしている。このため、ストライカ7近傍の高強度及び高剛性と歩行者保護性能の向上とを両立させることができる。
即ち、本実施形態の車両用フード構造1においては、フード上面を構成するアウタパネル2に、歩行者の頭部が衝突すると、アウタパネル2が車両下方に変形する。このアウタパネル2の変形に伴って、アウタパネル2に接合されたストライカ補強材4における接合脚部6も車両下方に変形する。その際、接合脚部6がストライカ連結部5よりも薄肉であるため、容易に変形させることができる。一方、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5は、厚肉にしているため、ストライカ7の近傍の部分は、高剛性及び高強度を確保することができる。このように、本発明は、ストライカ連結部5よりも、接合脚部6の厚さを薄くし、折れ部10を設けることによって、ストライカ7近傍の強度及び剛性を確保しつつ、歩行者保護性能を確保するための接合脚部6の弱体化を図ることができる。また、接合脚部6の中間に折れ部10が設けられていれば、この折れ部10が、接合脚部6が折れ変形する起点となるため、接合脚部6が折れる位置を安定化させることができる。
また、本発明は、ストライカ補強材4として、アルミニウム押出形材を用いることによって、ストライカ補強材4を1個の部品で形成しても、この部品において、複数の肉厚の部分を形成することができる。また、アルミニウム押出形材の押出方向を、車両幅方向とすることによって、車両長手方向において、異なる肉厚の部分を複数形成することができる。このように、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5と接合脚部6とを押出成形により一体的に形成することにより、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5を厚肉にして、ストライカ7近傍の剛性及び強度を確保すると共に、ストライカ補強材4における接合脚部6をストライカ連結部5よりも薄肉にして、その剛性を低下させて、歩行者頭部衝突時に、この接合脚部6を折れ変形しやすくすることによって、歩行者頭部衝突時の加速度増加を抑えて、歩行者保護性能を確保することができる。また、本発明のストライカ補強材4は、押出形材を用いているため、プレス成形では負角になるような曲げ形状も容易に形成することができるので、歩行者頭部衝突時に、より容易に接合脚部6を変形させることが可能である。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ設定部近傍の断面図である。図2に示すように、本実施形態は、ストライカ補強材4における接合脚部6に設けられた折れ部10の近傍が、この折れ部10の近傍以外の接合脚部6の部分よりも、肉厚が薄くなっている。これ以外の構成は、第1実施形態の車両用フード構造1と共通する。つまり、ストライカ補強材4は、ストライカ連結部5がもっとも肉厚が厚く、接合脚部6における折れ部10の近傍以外の部分が、2番目に肉厚が厚く、接合脚部6の折れ部10の近傍が、もっとも肉厚が薄くなっている。このように、折れ部10の近傍の肉厚を他部位に比べて薄肉化することで、接合脚部6における歩行者頭部衝突時の変形強度を低減することが可能であり、また、他部位の変形を抑制することで安定した衝突性能を確保することができる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図3は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ設定部近傍の断面図である。図3に示すように、本実施形態は、アウタパネル2、インナパネル3、ストライカ7及びベースプレート8が、第1実施形態と共通する。そして、このアウタパネル2とインナパネル3との間には、アウタパネル2を補強するデント補強材9が設けられている。このデント補強材9の前端部は、インナパネル3のアウタパネル2側に接触して、インナパネル3に接合されており、この前端部から車両上方且つ車両後方に延びて、アウタパネル2のインナパネル3側に接触した後、アウタパネル2に沿って車両後方に延在する縦壁と、アウタパネル2と近接するマスチック接合面を有し、その後方側には、ストライカ補強材4における接合脚部6と接合される接合座面9aを有している。本実施形態のデント補強材9においては、接合脚部6との接合座面9aの後方側に、アウタパネルと近接し、マスチック接合されるマスチック接合座面9bを有し、後端部にインナパネル3に接合される接合座面9cを有している。また、本実施形態におけるストライカ補強材4では、その接合脚部6が、アウタパネル2ではなくデント補強材9の接合座面9aと接合されている点が、第1実施形態と異なる。
第1実施形態では、ストライカ補強材4を緩やかな曲率を有する曲面であるアウタパネル2にマスチック接合させるため、プレス成形により、ストライカ補強材4における接合座面部の形状を、長手方向(車両幅方向)において変化させる必要があった。しかし、本実施形態は、ストライカ補強材4が、アウタパネル2ではなく、デント補強材9に接合される構造である。このため、このデント補強材9側の接合部を車両幅方向に平行になるように形成することによって、車両幅方向に平行に形成されたストライカ補強材4は、プレス成形により車両幅方向に形状を変化させることなく、デント補強材9に組み付けることが可能となり、ストライカ補強材4を比較的低コストに製造することができる。また、デント補強材9と同様に、インナパネル3についても、ストライカ補強材4のストライカ接合部5と対応する領域の形状を車両幅方向に平行になるように形成していれば、同様にストライカ接合部5についてもプレス成形などを施さずにインナパネルに組みつけ可能になり、比較的低コストで製造が可能になる。
次に、第3実施形態の車両用フード構造1の組み付け工程について説明する。第3実施形態の車両用フード構造1の組み付け工程は、第1、第2実施形態のフードと同様であり、最後にアウタパネル1を組み付ける前に、デント補強材9を車両上方から組み付ける点が異なる。なお、他の組みつけ方法として、以下のような工程で組みつけを行っても良い。ストライカ補強材4に、鋼材製のストライカ7が溶接されている鋼板製のベースプレート8を、車両上方から仮付けし、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5に設けられたトリム孔に、ストライカ7を挿入する。そして、ストライカ補強材に対して、デント補強材を車両上方向から組み付けて接合し、サブアッシー部品を作成する。このサブアッシー部品を車両上方向からインナパネル3に組みつけ、接合する。そして、デント補強材に設けた作業孔(図示しない)を通して工具を挿入し、インナパネル3とベースプレート8でストライカ補強材4のストライカ連結部5を挟持するように組みつける。また、デント補強材9及びストライカ補強材4のインナパネル3との接合も行い、最後にデント補強材9のアウタパネル2との近接面にマスチックを塗布して、アウタパネル2に接合する。
図9に示すストライカ補強材は、デント補強材が設けられた車両用フード構造において、ストライカ補強材を板材のプレス成形品で構成した従来構造である。この図9に示すストライカ連結部5と接合脚部6とは厚さが均一であるため、両者の剛性は同じである。このため、ストライカ連結部5の剛性を高めようとすると、接合脚部6の剛性も高くなり、従って、接合脚部6が変形しにくくなって、歩行者保護性能が低下する。また、この歩行者保護性能を確保するために、接合脚部6の剛性を低くすると、ストライカ連結部5の剛性も低くなってしまう。これに対し、本実施形態は、ストライカ連結部5の肉厚を強度上必要な厚さにすることにより、強度及び剛性を確保すると共に、接合脚部6の肉厚をストライカ連結部5よりも薄くすることにより、接合脚部6の変形強度を低下させて、歩行者保護性能を向上させることができる。このように、本実施形態においても、1個の部品で、接合脚部6をストライカ連結部5よりも薄肉にすることができ、これにより、第1実施形態と同様に、ストライカ連結部5の強度及び剛性の確保と、歩行者保護性能向上のための接合脚部6の弱体化とを、両立させることができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図4は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ設定部近傍の断面図である。図4に示すように、本実施形態は、アウタパネル2、インナパネル3、ストライカ7、ベースプレート8及びデント補強材9が、第3実施形態と同じ構成となっている。そして、ストライカ補強材4は、第1実施形態と同様のストライカ連結部5の後端から、更に、インナパネル3に沿って、車両後方に延びる後方フランジ5aが設けられたストライカ連結部5を有している。また、このストライカ連結部5のストライカ7が固定された部分の車両後方の部分から、車両上方に、接合脚部6が延びている。この接合脚部6は、車両上方に延びた後、折れ部10で曲がり、車両上方且つ車両後方に延び、後端部が、デント補強材9に接触して、このデント補強材9に接合される。
本実施形態は、ストライカ連結部5に、ストライカ連結部5から車両後方に延びる後方フランジ5aが設けられているため、このストライカ7近傍の剛性を更に高くすることができる。この効果は、デント補強材9がなくても、同様に得ることができる。また、接合脚部6が、ストライカ連結部5aの後端ではなく、ストライカ連結部5の後端から分岐して車両上方に延在させていることで、従来構造よりもストライカ7の直上に近い位置で、デント補強材9とストライカ補強材4とを接合できている。このため、デント補強材9とストライカ補強材4の支持点と、デント補強材のフロント側の縦壁との間隔が短縮されることで、アウタとのマスチック接合面の支持点間隔が短くなり、耐デント性及び歩行者保護性能の向上が可能となる。この効果も、デント補強材9がない場合においても、接合脚部6が、アウタパネル2に接合されることにより、同様に得ることができる。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図5は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ設定部近傍の断面図である。図5に示すように、本実施形態は、アウタパネル2、インナパネル3、ストライカ7、ベースプレート8及びデント補強材9が、第4実施形態と共通しており、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5が後方フランジ5aを有している点でも、第4実施形態と共通する。本実施形態は、ストライカ補強材4における接合脚部6が、ストライカ連結部5のストライカが固定された部分の車両後方の部分から、車両上方に延びた後、分岐点から、第1接合脚部6aと第2接合脚部6bに枝分かれしている。第1接合脚部6aは、第4実施形態と同様に、車両上方且つ車両後方に延び、デント補強材9に接触して、このデント補強材9に接合される。また、第2接合脚部6bは、車両前側に延在するフランジを有し、このフランジを介して車両前方のデント補強材9に接合される。
本実施形態は、接合脚部6を、第1接合脚部6a及び第2接合脚部6bに分岐させて、これらの第1接合脚部6a及び第2接合脚部6bとデント補強材9とが接合されており、デント補強材9とストライカ補強材4との支持点が2個になり、よりストライカ直上に近い部位を支持でき、前述したアウタパネルとのマスチック接合面の支持点間隔を短くすることが可能になり、更に、耐デント性を向上させることができる。そして、この接合脚部の車両下側は1本のフランジで形成されており、この分岐点近傍が折れ変形することで、変形抵抗は、分岐がない場合と大きな差異は無く、歩行者保護性能への悪影響は抑制できる。また、本実施例では、分岐点から、第1接合脚部6a及び第2接合脚部6bに2個枝分かれしているが、更に多くの接合脚部に枝分かれしてもよい。但し、分岐する数が増えるほど、ストライカ補強材の部品重量は増加するため、軽量化を考慮した場合、分岐数は2個以下にすることが望ましい。
そして、本実施形態では、同一断面上に接合脚部6a、6bと、デント補強材9との接合部を設けているが、図11(a)に示すように、デント補強材9に接合座面9dを設けて、第2接合脚部6bとこの接合座面9dとを接合するようにしても良い。また、図11(b)に示すように、車両幅方向に交互にデント補強材9との各1対の接合部9e,9fを有するような構造でも良い。また、本実施形態においては、接合脚部6aの代わりに接合脚部6bのみを有し、よりストライカ直上に近い部分を1点で保持しても支持点間隔を短くするという効果は得られており、耐デント性の向上と歩行者保護性能の両立という点では良い効果が得られる。また、接合脚部6の枝分かれ及び接合脚部6bのみ考慮した構造の効果については、デント補強材9がない場合においても、接合脚部6が、アウタパネル2の複数箇所に接合されることにより、同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図6は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ近傍の断面図である。図6に示すように、本実施形態は、アウタパネル2、インナパネル3、ストライカ7及びベースプレート8が、第3実施形態と同じ構成となっている。また、本実施形態では、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5は、第4実施形態のように後方フランジ5aが設けられており、更に、インナパネル3に沿って、車両前方に延びる前方フランジ5bが設けられている。アウタパネル2とインナパネル3との間に配置されるデント補強材9は、前端部が、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5の前方フランジ5bと接合されており、その後方側から、車両上方に延びて、アウタパネル2とのマスチック接合面を有し、その後方に、ストライカ補強材4の接合脚部6との接合面を有し、その後方には、さらにアウタパネルとのマスチック接合面を設定した後、インナパネル3と接合する構造になっている。
そして、ストライカ補強材4における前方フランジ5bの中間から、車両上方且つ車両後方に、接合脚部6が延びており、この接合脚部6が、デント補強材9のインナパネル3側の面に接触して、このデント補強材9に接合されている。この接合脚部6が接合されるデント補強材9の部分は、前述の如く、アウタパネル2に接合された後、車両下方且つ車両後方に若干延び、その後、車両後方に延びた部分である。なお、この図6における白抜き矢印は、ストライカ7が、車両上方からストライカ補強材4の孔及びインナパネル3の孔に挿入される挿入コースを示している。このように、ストライカ連結部5の上方に、ストライカ7を挿入することができる空間を確保しつつ、ストライカ補強材4における接合脚部6を配置する必要がある。
本実施形態は、ストライカ連結部5に、ストライカ連結部5から車両後方に延びる後方フランジ5aに加え、ストライカ連結部5から車両前方に延びる前方フランジ5bが設けられているため、ストライカ7近傍の剛性を更に向上させることができる。この効果は、デント補強材9がなくても、同様に得ることができる。また、接合脚部6が車両上方且つ車両後方に延びた後、デント補強材9に接合されており、デント補強材9との接合部と後方側のインナパネル接合部との間隔、つまり、アウタパネルとのマスチック接合面の支持点間隔を短縮できる。従って、第4実施形態と同様に、この間隔の短縮による耐デント性及び歩行者保護性能の向上が可能となる。なお、これについては、デント補強材9がない場合においても、ストライカ補強材4とアウタパネル2との支持点とストライカ7との間隔が短縮されることにより、同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第7実施形態について説明する。図7は、本実施形態の車両用フード構造1を示すストライカ近傍の断面図である。図7に示すように、本実施形態は、アウタパネル2、インナパネル3、ストライカ7及びベースプレート8が、第6実施形態と共通する。本実施形態では、デント補強材9は、前端部が、アウタパネル2への近接面を有し、この部位でアウタパネル2とマスチック接合されているとともに、その後方にストライカ補強材4における前方接合脚部6dとの接合部、アウタパネルとのマスチック接合面、ストライカ補強材4における後方接合脚部6cとの接合部、アウタパネルとのマスチック接合面を介して、最後端部ではインナパネル3に接合される。また、図示では、ストライカ補強材4における前方接合脚部6dとの接合部と後方接合脚部6cとの接合部を同一断面上に設定した構造として示しているが、これらの接合部は、車幅方向に互い違いに設定するなど、必ずしも同一断面に設定しなくてはいけないということはない。
そして、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5は、第6実施形態と同様に、前方フランジ5b及び後方フランジ5aが設けられている。このストライカ連結部5における前方フランジ5bの中間から車両上方且つ車両後方に、前方接合脚部6dが延びており、この前方接合脚部6dは、デント補強材9に接触して、このデント補強材9に接合されている。また、このストライカ連結部5における後方フランジ5aの中間から車両上方に、後方接合脚部6cが延び、デント補強材9に接合される。
本実施形態は、ストライカ補強材4におけるストライカ連結部5の前方フランジ5bから延びる前方接合脚部6dと、このストライカ連結部5の後方フランジ5aから延びる後方接合脚部6cとが、デント補強材9に接合されており、ストライカ補強材4とデント補強材9とが、デント補強材9の車両前方及び後方の2箇所で接合されているため、デント補強材9のアウタパネルとのマスチック接合面の支持点間隔をより短くすることができ、耐デント性及び歩行者保護性能を、更に向上させることができる。なお、これについては、デント補強材9がない場合においても、ストライカ補強材4とアウタパネル2とが2箇所で接合されることにより、同様の効果を得ることができる。
また、これらの複数の接合位置については、デント性及び歩行者保護性能確保の観点から、適宜選択されるが、断面の肉厚設計の自由度が高く、溶接等を伴わずにT字状セクションを容易に設定することができる押出形材を用いることにより、比較的自由に、これらの接合位置を設定することができる。また、この押出形材を用いることにより、従来の板材のプレス成型品の構造に比べて、よりストライカ7直上に近い位置において、デント補強材9をストライカ補強材4で支持することが可能となる。