JP2014162968A - 導電体基板の製造方法、導電体基板、発光素子、電子機器、光電変換素子及び太陽電池パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光領域においてシリコンなどの半導体層に近い屈折率と透明性を有する導電体基板の製造方法、導電体基板、発光素子、電子機器、光電変換素子及び太陽電池パネルを提供すること。
【解決手段】可視光域で高い屈折率を持つアナターゼ型TaONからなる導電層の形成。単結晶基板と導電層あるいは結晶成長を制御するシード層と導電層からなる構造の作製。
【選択図】図1
【解決手段】可視光域で高い屈折率を持つアナターゼ型TaONからなる導電層の形成。単結晶基板と導電層あるいは結晶成長を制御するシード層と導電層からなる構造の作製。
【選択図】図1
Description
本発明は、導電体基板の製造方法、導電体基板、発光素子、電子機器、光電変換素子及び太陽電池パネルに関する。
例えばLEDなどの発光素子を備えた電子機器や光電変換素子を備えた太陽電池パネルなどに用いられる電極として、光透過率が高く電気抵抗率が低い透明導電体薄膜の需要が高まっている。透明導電体薄膜の代表例は、スズをドープした酸化インジウムからなるインジウム・ティン・オキサイド膜(以下、ITO膜という)である。ITO膜は透明性に優れ、高い導電性を有する。
このような透明導電性薄膜は、実用化するためには低抵抗率であることが求められる。低抵抗率を実現させるためには、導電性薄膜が好適な結晶構造を有すると共に伝導キャリアを十分に含んでいること、結晶の配向が揃っていること、といった性質を有していることが好ましいとされている。
一方、透明導電体薄膜は、例えば半導体によって形成される発光層や受光層の上に積層された状態で用いられる。このような場合、透明導電体と半導体層との界面で光反射が生じると、発光効率又は光電効率が低下するため、界面での光反射を抑制することが求められている。これに対して、フレネルの式より、界面での光反射を抑制するためには、発光層又は受光層の光屈折率と透明導電体の光屈折率とが近似していればよいことが知られている。したがって、界面において接する半導体層の光屈折率に近似した光屈折率を有する材料であれば、透明導電体として好適に用いられることになる。
このように、近年では、発光素子や受光素子として透明導電体を用いる場合において、高光透過率及び低電気抵抗率であることに加え、光屈折率など素子に応じた光学的特性にも優れていることも求められている。
以上のような事情に鑑み、本発明は、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、光学的特性に優れた導電体基板の製造方法、導電体基板、発光素子、電子機器、光電変換素子及び太陽電池パネルを提供することを目的とする。
本発明に係る導電体基板の製造方法は、650℃〜900℃の所定温度となるように基板を加熱する加熱ステップと、前記所定温度を成長温度として基板上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させる成長ステップとを含む。
本発明によれば、650℃〜900℃の所定温度となるように基板を加熱し、当該所定温度を成長温度として基板上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、結晶性に優れ安定した状態のアナターゼ型TaONの単相膜を形成することができる。アナターゼ型TaONの単相膜は、光透過率が高く、電気抵抗率が低いことに加え、電気陰性度の比較的小さい窒素を含んでいるため、高い光屈折率(n>2.7)を有することになる。このため、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、発光素子や光電変換素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板を製造することができる。
上記の導電体基板の製造方法において、前記成長ステップは、パルスレーザー堆積法によって前記単相膜を成長させることを含む。
本発明によれば、パルスレーザー堆積法によってアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、結晶性の高い単相膜を製造することができる。
本発明によれば、パルスレーザー堆積法によってアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、結晶性の高い単相膜を製造することができる。
上記の導電体基板の製造方法において、前記成長ステップは、Ta2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットにパルスレーザーを照射することと、前記パルスレーザーの照射の後、前記基板へ向けて移動する原子と窒素ラジカルとを反応させてアナターゼ型TaONの結晶を生成することとを含む。
本発明によれば、Ta2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットにパルスレーザーを照射した後、基板へ向けて移動する原子と窒素ラジカルとを反応させてアナターゼ型TaONの結晶を生成するため、結晶性に優れた単相膜を得ることができる。
上記の導電体基板の製造方法は、前記加熱ステップに先立ち、前記基板の表面にアナターゼ型TaONの結晶構造を安定させる安定化層を形成する安定化層形成ステップを更に含み、前記成長ステップは、前記安定化層上にアナターゼ型TaONの前記単相膜を成長させることを含む。
本発明によれば、基板の加熱に先立ち、基板の表面にアナターゼ型TaONの結晶構造を安定させる安定化層を形成し、安定化層上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、アナターゼ型TaONを安定的に成長させることができる。これにより、成長温度が比較的低温であっても結晶性の高い単相膜を形成することができる。
上記の導電体基板の製造方法において、前記安定化層形成ステップは、前記安定化層としてアナターゼ型TiO2の薄膜を形成することを含む。
本発明によれば、安定化層として、アナターゼ型TaONと同一構造であるアナターゼ型TiO2の薄膜を形成するため、アナターゼ型TaONが成長しやすくなる。これにより、アナターゼ型TaONの成長可能な条件の幅が広がることになる。
本発明によれば、安定化層として、アナターゼ型TaONと同一構造であるアナターゼ型TiO2の薄膜を形成するため、アナターゼ型TaONが成長しやすくなる。これにより、アナターゼ型TaONの成長可能な条件の幅が広がることになる。
上記の導電体基板の製造方法は、前記基板は、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を有する。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
上記の導電体基板の製造方法は、前記物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いられる。
本発明によれば、物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いることにより、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明によれば、物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いることにより、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明に係る導電体基板は、アナターゼ型TaONの格子定数に対応する格子定数を有する物質の単結晶が含まれた基板と、前記基板の表面に設けられたアナターゼ型TaONの単相膜からなる導電層とを備える。
本発明によれば、アナターゼ型TaONの格子定数に対応する格子定数を有する物質の単結晶が含まれた基板の表面に、アナターゼ型TaONの単相膜からなる導電層が設けられているため、基板と導電層との間で格子整合された状態となる。これにより、結晶性の高い導電層が得られる。また、アナターゼ型TaONは、光透過率が高く、電気抵抗率が低いことに加え、電気陰性度の比較的小さい窒素を含んでいるため高い光屈折率(n>2.7)を有する。これにより、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板が得られる。
上記の導電体基板において、前記導電層の可視光域での光屈折率は、2.7より大きい。
本発明によれば、導電層の可視光域での光屈折率が2.7より大きいため、シリコンなどの光屈折率の高い半導体材料に接する場合であっても光利用効率が高められることになる。
本発明によれば、導電層の可視光域での光屈折率が2.7より大きいため、シリコンなどの光屈折率の高い半導体材料に接する場合であっても光利用効率が高められることになる。
上記の導電体基板において、前記基板は、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を有する。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
上記の導電体基板は、前記物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いられる。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を基板として用いるため、基板とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。
本発明に係る発光素子は、上記の導電体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板を備えるため、発光効率の高い発光素子が得られる。
本発明によれば、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板を備えるため、発光効率の高い発光素子が得られる。
本発明に係る電子機器は、上記の発光素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、発光効率の高い発光素子を備えることとしたので、表示特性の高い電子機器が得られる。
本発明によれば、発光効率の高い発光素子を備えることとしたので、表示特性の高い電子機器が得られる。
本発明に係る光電変換素子は、上記の導電体基板を備えることを特徴とする。
本発明によれば、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板を備えるため、光の利用効率の高い光電変換素子が得られる。
本発明によれば、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、素子に求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板を備えるため、光の利用効率の高い光電変換素子が得られる。
本発明に係る太陽電池パネルは、上記の光電変換素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、光の利用効率の高い光電変換素子を備えるので、変換効率に優れた太陽電池パネルが得られる。
本発明によれば、光の利用効率の高い光電変換素子を備えるので、変換効率に優れた太陽電池パネルが得られる。
本発明によれば、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、光学的特性に優れた導電体基板の製造方法、導電体基板、発光素子、電子機器、光電変換素子及び太陽電池パネルを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、導電体基板1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、導電体基板1は、基板11、シード層12及び導電層13を有している。本実施形態では、導電層13として、アナターゼ型TaONの単相膜が設けられている。導電層13は、シード層12上にエピタキシャル成長によって成長形成された導電体薄膜である。
図1は、導電体基板1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、導電体基板1は、基板11、シード層12及び導電層13を有している。本実施形態では、導電層13として、アナターゼ型TaONの単相膜が設けられている。導電層13は、シード層12上にエピタキシャル成長によって成長形成された導電体薄膜である。
基板11は、例えばガラスなどの非晶質材料からなる基板である。基板11としては、この他、例えば単結晶材料、多結晶材料、またはアモルファス材料でもよく、これらの結晶状態が混在する材料でもよい。また、例えば基板11が、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質を用いて形成されていてもよい。このような材料としては、例えばLSAT((LaAlO3)0.3−(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7)、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4などが挙げられる。
また、ペロブスカイト型結晶構造またはそれと類似構造を有する岩塩型やスピネル型結晶からなる単結晶基板または多結晶基板、水晶基板、ノンアルカリガラス(例えば旭硝子社製、製品名:AN100)等のガラス基板、表面に熱酸化膜が形成されたシリコン基板(熱酸化Si基板)等の半導体基板等が挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲でドーパント、不純物などが含まれていてもよい。本発明における基板11の形状は特に限定されない。
基板11の厚さは特に限定されない。基板11の透明性が要求される場合には例えば1mm以下が好ましい。板状の基板において機械的強度が求められ、透過率を多少犠牲にしてもよい場合であれば、1mmより厚くてもよい。基板11の厚さは、例えば0.2〜1mmが好ましい。
基板11は、必要に応じて研磨したものを用いることができる。SrTiO3基板等の結晶性を有する基板は、研磨して用いることが好ましい。例えば研磨材としてダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨することが好ましい。その後、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さの二乗平均粗さ(rms)が10Å(1nm)以下となるまで平坦化させてもよい。
シード層12は、基板11上に設けられており、導電層13の結晶構造を安定化させる安定化層である。シード層12としては、例えばアナターゼ型のTiO2などを用いることができる。シート層12として、アナターゼ型TaONと同一構造であるアナターゼ型TiO2の薄膜が形成されるため、アナターゼ型TaONが成長しやすくなる。
図2は、導電体基板2の構成を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る導電体基板として、基板11上に直接導電層13が形成された構成を有する導電体基板2であってもよい。この場合の導電層13としては、導電体基板1と同様、アナターゼ型TaONの単相膜が設けられている。導電層13は、基板11上にエピタキシャル成長によって成長形成された導電体薄膜である。
図2に示すように、本実施形態に係る導電体基板として、基板11上に直接導電層13が形成された構成を有する導電体基板2であってもよい。この場合の導電層13としては、導電体基板1と同様、アナターゼ型TaONの単相膜が設けられている。導電層13は、基板11上にエピタキシャル成長によって成長形成された導電体薄膜である。
基板11上にアナターゼ型TaONの単相膜を直接形成する場合、当該基板11を構成する物質として、例えば格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質を用いることが好ましい。導電層13を構成するアナターゼ型TaONの格子定数は、3.92(Å)である。この場合、基板11上に直接形成される導電層13の格子定数が、基板11の格子定数に近似する。したがって、導電層13を構成するアナターゼ型TaONの結晶が成長しやすくなり、導電層13の結晶性が高められることになる。
上記のような格子定数を有する材料としては、例えばLSAT((LaAlO3)0.3−(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7)、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4などが挙げられる。基板11は、これらのうち少なくとも1種類の物質の単結晶を含む構成であることが好ましい。これにより、導電層13の結晶性が一層高められることになる。
次に、図1に示す構成の導電体基板1の製造方法を説明する。
導電体基板1は、基板11上に結晶成長を制御するシード層12を形成するシード層形成ステップと、シード層12上にTaON透明導電体の結晶を成長させ、導電層13を形成する結晶成長ステップとを経て製造される。
導電体基板1は、基板11上に結晶成長を制御するシード層12を形成するシード層形成ステップと、シード層12上にTaON透明導電体の結晶を成長させ、導電層13を形成する結晶成長ステップとを経て製造される。
シード層12を形成する前に、基板11を前処理してもよい。前処理は例えば以下の手順で行うことができる。まず基板をアセトン、エタノール等により洗浄する。次に、基板を高純度塩酸(例えば、ELグレード、濃度36質量%、関東化学社製)中に2分間浸す。次に、基板を純水中に移して塩酸等をすすぐ。次に、基板を新たな純水中に移し、ここで超音波洗浄を5分間行う。次に、基板を純水中から取り出し、窒素ガスを基板表面に吹き付けて水分を基板表面から除去する。これらの処理は例えば室温で行う。これらの処理により、基板表面から酸化物、有機物等が除去されると考えられる。上記の例では塩酸を使用したが、これに代えて王水、フッ酸等の酸を使用してもよい。また、酸による処理は室温下で行ってもよいし、加熱した酸を使用してもよい。
シード層形成ステップでは、例えばパルスレーザー堆積(Pulsed Laser Deposition:PLD)法、スパッタリング法等の物理気相蒸着(PVD)法を用いてシード層12を形成しても良いし、例えばMOCVD法等の化学気相蒸着(CVD)法、ゾルゲル法、化学溶液法等の溶液からの合成プロセスによる成膜法を用いてシード層12を形成しても構わない。特にPLD法は良好な膜状態が得られ易い点で好ましく、スパッタリング法は、基板の結晶性に関わらず成膜しやすい点で好ましい。
図3は本方法に好適に用いられるPLD装置30の例を示した概略構成図である。このPLD装置30は、チャンバ31内に、基板11とターゲット39とが対向して、かつ対向面が互いにほぼ平行となるように配置されるようになっている。チャンバ31は、適切な真空度を維持すると共に、外部からの不純物混入を防止することにより、高品質な薄膜を作製できるようになっている。
基板11は、図示しないモーターにより、基板11の表面に垂直な回転軸35を中心に回転可能となっている。またターゲット39も、図示しないモーターにより、その表面39aに垂直な回転軸38を中心に回転可能となっている。
チャンバ31内には、基板11を加熱するための赤外線ランプ36が設置されている。基板11の温度は窓31bを介して、チャンバ31外部に設置された放射温度計37によってモニターされており、常に一定温度となるように制御されている。
チャンバ31の外部には、例えばRFプラズマ型ラジカル供給装置44が設けられており、窒素ガスの流量を調節するための窒素ガス流量調整弁45を介して、チャンバ31内へ窒素ガスを注入できるようになっている。また、減圧下における製膜を実現するため、チャンバ31にはターボ分子ポンプ42および圧力弁43が連結されている。
チャンバ31の外部には光発振器32が設けられており、光発振器32により発振されたパルスレーザー光が、照射位置を調節するための反射鏡33、スポット径を制御するためのレンズ34およびチャンバ31の窓31aを介して、ターゲット39の基板11と対向する表面39aに入射されるようになっている。光発振器32は、パルスレーザー光として、例えばパルス周波数が1〜10Hzであり、レーザフルエンス(レーザパワー)が1〜2J/cm2であり、波長が248nmであるKrFエキシマレーザを発振する。
発振されたパルスレーザー光は、反射鏡33およびレンズ34により焦点位置がターゲット39近傍となるようにスポット調整され、ターゲット39の表面39aに対して約45°の角度で入射される。
図1に示す構成の導電体基板1の製造方法を説明する。
導電体基板1は、導電体13の結晶構造を安定化させるためのシード層12を基板11上に形成するシード層形成ステップと、シード層12が形成された基板11を所定温度まで加熱する加熱ステップと、加熱された基板11上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させる成長ステップとを経て製造される。
導電体基板1は、導電体13の結晶構造を安定化させるためのシード層12を基板11上に形成するシード層形成ステップと、シード層12が形成された基板11を所定温度まで加熱する加熱ステップと、加熱された基板11上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させる成長ステップとを経て製造される。
シード層形成ステップでは、PLD装置30が用いられる。PLD装置30を用いてシード層12を形成する場合、ターゲット39としては、例えばTiO2焼結体が用いられる。シード層形成ステップでは、まず、基板11をチャンバ31内に設置する。次に、基板表面の不純物を取り除き、基板温度500℃とするほか、所定の条件下で前処理アニールを行ってもよい。前処理アニールは、例えば1時間以上行うことが好ましい。
次に、チャンバ内を所定の圧力に保ちつつ、基板温度を所定の温度に設定し、基板11を回転駆動させる。またターゲット39を回転駆動させつつ、パルスレーザー光を断続的に照射することにより、ターゲット39表面の温度を急激に上昇させ、アブレーションプラズマを発生させる。このアブレーションプラズマ中に含まれるTi原子、O原子は、チャンバ31中の酸素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させて基板11へ移動する。そして基板11へ到達したTi原子、O原子を含む粒子は、そのまま基板11の表面に拡散し、薄膜化される。こうして基板11上にシード層12が形成される。
シード層12を形成した後、アニールを行ってもよい。本実施形態におけるアニールとは、シード層12を所定の温度(アニール温度)まで上昇させた後、温度を下げる操作をいう。本実施形態のように基板11上にシード層12が形成されている場合は、アニール温度として基板温度を適用することができる。アニール温度は、シード層12の結晶化温度よりも高い温度が好ましい。例えばドーパントが添加されていないTiO2の結晶化温度は約400℃である。したがって、シード層12の抵抗を良好に低下させるうえで好ましいアニール温度は、例えば400℃以上が好ましい。基板11の耐熱性、エネルギー削減、昇温時間の短縮等の点からはアニール温度が低い方が望ましい。
このように基板11上にシード層12を形成してアニールを行い、温度を下げてシード層12の膜質を向上させた後、再び基板11を所定温度まで加熱し(加熱ステップ)、その後、所定温度を成長温度としてシード層12上に導電膜13を形成する(成長ステップ)。
加熱ステップ及び成長ステップでは、シード層12が形成された基板11をPLD装置30に収容させたまま連続して行うことができる。まず、シード層12が形成された基板11をPLD装置30のチャンバ31内に収容する。次に、基板表面の不純物を取り除き、シード層形成ステップと同様に前処理アニールを行ってもよい。
次に、チャンバ31内の窒素分圧を所定の値に保ちつつ、加熱ステップを行う。加熱ステップでは、基板温度を所定温度に設定し、基板11を回転駆動させる。このときの所定温度は、650℃〜900℃の範囲に設定することができ、好ましくは700℃〜800℃の範囲に設定することができる。なお、更に好ましくは、750℃程度に設定することができる。
基板11の温度が上記所定温度に到達した後、成長ステップを行う。成長ステップにおいて、ターゲット39として例えばTa2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットを用いることができる。
成長ステップでは、ターゲット39を回転駆動させつつ、パルスレーザー光を断続的に照射する。これにより、ターゲット39表面の温度を急激に上昇させ、アブレーションプラズマを発生させる。このアブレーションプラズマ中に含まれるTa原子、O原子、N原子は、チャンバ31中の窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させて基板11へ移動する。そして基板11へ到達したTa原子、O原子、N原子を含む粒子は、そのまま基板11の表面に拡散し、窒素原子のラジカルと反応しつつ薄膜化される。こうして基板11上にアナターゼ構造のTaONが形成される。なお、導電層13を形成した後、真空中でアニールを行ってもよい。この場合のアニール温度は、例えば800℃以下とすることができる。
なお、導電層13の形成方法としては、シード層12の形成方法と同様、パルスレーザー堆積法に限られず、スパッタリング法等の物理気相蒸着(PVD)法や、MOCVD法等の化学気相蒸着(CVD)法、ゾルゲル法、化学溶液法等の溶液からの合成プロセスによる成膜法を用いて形成することができる。
次に、図2に示す構成の導電体基板2の製造方法を説明する。
導電体基板2は、基板11を加熱する加熱ステップと、加熱した基板11上に直接導電層13を形成する成長ステップとを経て製造される。
加熱ステップ及び成長ステップでは、基板11をPLD装置30に収容させたまま連続して行うことができる。まず、格子定数が3.85より大きく4.05未満である上記の物質を用いて形成された基板11をPLD装置30のチャンバ31内に収容する。その後、例えば基板表面の不純物を取り除き、前処理アニールを行ってもよい。
導電体基板2は、基板11を加熱する加熱ステップと、加熱した基板11上に直接導電層13を形成する成長ステップとを経て製造される。
加熱ステップ及び成長ステップでは、基板11をPLD装置30に収容させたまま連続して行うことができる。まず、格子定数が3.85より大きく4.05未満である上記の物質を用いて形成された基板11をPLD装置30のチャンバ31内に収容する。その後、例えば基板表面の不純物を取り除き、前処理アニールを行ってもよい。
次に、チャンバ31内の窒素分圧を所定の値に保ちつつ、加熱ステップを行う。加熱ステップでは、基板温度を所定温度に設定し、当該基板11を回転駆動させる。このときの所定温度は、700℃〜900℃の範囲に設定することができ、好ましくは750℃〜800℃程度に設定することができる。
基板11の温度が上記所定温度に到達した後、成長ステップを行う。成長ステップにおいて、ターゲット39として例えばTa2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットを用いることができる。成長ステップでは、加熱ステップで加熱した基板11の温度を成長温度として、基板11の表面上に直接アナターゼ型TaONの単相膜をエピタキシャル成長させる。
当該成長ステップでは、ターゲット39を回転駆動させつつ、パルスレーザー光を断続的に照射する。これにより、ターゲット39表面の温度を急激に上昇させ、アブレーションプラズマを発生させる。また、このとき、チャンバ31内の窒素分圧を、例えば1×10−5〜2×10−5Torr(1.33×10−3Pa〜2.66×10−3Pa)程度とすることができる。これにより、パルスレーザー光を受けて基板11へ向けて移動する粒子に対して、適量の窒素ラジカルを供給することができる。
このアブレーションプラズマ中に含まれるTa原子、O原子、N原子は、チャンバ31中の窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させて基板11へ移動する。そして基板11へ到達したTa原子、O原子、N原子を含む粒子は、そのまま基板11の表面に拡散し、窒素原子のラジカルと反応しつつ薄膜化される。こうして基板11上に安定したアナターゼ構造のTaONが形成される。なお、導電層13を形成した後、真空中でアニールを行ってもよい。この場合のアニール温度は、例えば800℃以下とすることができる。
以上のように、本実施形態によれば、650℃〜900℃の所定温度となるように基板11を加熱し、当該所定温度を成長温度として基板11上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、結晶性に優れ安定した状態のアナターゼ型TaONの単相膜を形成することができる。アナターゼ型TaONの単相膜は、光透過率が高く、電気抵抗率が低いことに加え、電気陰性度の比較的小さい窒素を含んでいるため、高い光屈折率(n>2.7)を有することになる。このため、高光透過率及び低電気抵抗率を実現可能であり、発光素子や光電変換素子などに求められる光学的特性である光屈折率に優れた導電体基板1、2を製造することができる。
また、本実施形態によれば、パルスレーザー堆積法によって導電層13を形成する、すなわち、Ta2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットにパルスレーザーを照射し、パルスレーザーの照射の後、基板へ向けて移動する原子と窒素ラジカルとを反応させてアナターゼ型TaONの結晶を生成するため、結晶性の高い導電層13を製造することができる。
また、本実施形態によれば、基板11の加熱に先立ち、基板11の表面にアナターゼ型TaONの結晶構造を安定させる安定化層であるシード層12を形成し、当該シード層12上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させるため、アナターゼ型TaONを安定的に成長させることができる。これにより、成長温度が比較的低温であっても結晶性の高い単相膜を形成することができる。この場合、シード層12として、アナターゼ型TaONと同一構造であるアナターゼ型TiO2の薄膜を形成するため、アナターゼ型TaONが成長しやすくなる。これにより、アナターゼ型TaONの成長可能な条件の幅が広がることになる。
また、本実施形態によれば、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた基板11が用いられるため、基板11とアナターゼ型TaONとの間が格子整合しやすくなる。例えば、このような物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いられる。これらの物質が複数種類混合された基板11が用いられてもよい。
また、本実施形態によれば、アナターゼ型TaONの格子定数に対応する格子定数を有する物質の単結晶が含まれた基板11の表面に、アナターゼ型TaONの単相膜からなる導電層13が直接的に設けられているため、基板11と導電層13との間で格子整合された状態となる。これにより、結晶性の高い導電層13が得られる。また、当該導電層13の可視光域での光屈折率は、2.7より大きい。このため、シリコンなどの光屈折率の高い半導体材料に接する場合であっても光利用効率が高められることになる。
本発明の技術範囲は実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
本発明の導電体基板1は適用範囲が広く、銅酸化物系の高温超電導体薄膜をテープ基板上に形成するための中間層の作製や、非晶質基板上への発光ダイオード、半導体レーザなどの薄膜デバイス形成などに用いることができる。また、透明導電体薄膜を用いた非晶質基板上への透明回路としても用いることができる。
本発明の導電体基板1は適用範囲が広く、銅酸化物系の高温超電導体薄膜をテープ基板上に形成するための中間層の作製や、非晶質基板上への発光ダイオード、半導体レーザなどの薄膜デバイス形成などに用いることができる。また、透明導電体薄膜を用いた非晶質基板上への透明回路としても用いることができる。
例えばガラス基板上への薄膜を形成することにより、一層のコストダウンを見込むことができる。例えば銅酸化物系の高温超電導体線材などに用いる場合、低コスト化によって得られる利益は大きいといえる。コストダウンに加えて、ガラス基板上での高機能薄膜デバイスを形成することができる。例えば酸化亜鉛系の発光ダイオードなどを形成することができ、更にはフレキシブルデバイスを実現させることができる。
このほかにも、例えばフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極へ適用が考えられる。また、反射防止膜に用いられる電磁波の遮蔽、静電気により埃がつかないようにするフィルム、帯電防止膜、熱線反射ガラス、紫外線反射ガラスへ適用も考えられる。SiO2からなる層とNbをドープしたTiO2層とからなる多層膜を作製すれば反射防止膜としても適用できる。
用途の例として、色素増感太陽電池の電極;ディスプレイパネル、有機ELパネル、発光素子、発光ダイオード(LED)、白色LEDやレーザの透明電極;面発光レーザの透明電極;照明装置;通信装置;特定の波長範囲だけ光を通すというアプリケーションも考えられる。
さらに具体的な用途として次のものを挙げることができる。液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)における透明導電膜;カラーフィルタ部における透明導電性膜;EL(EL:Electro Luminescence)ディスプレイにおける透明導電性膜;プラズマディスプレイ(PDP)における透明導電膜;PDP光学フィルタ;電磁波遮蔽のための透明導電膜;近赤外線遮蔽のための透明導電膜;表面反射防止のための透明導電膜;色再現性の向上のための透明導電膜;破損対策のための透明導電膜;光学フィルタ;タッチパネル;抵抗膜式タッチパネル;電磁誘導式タッチパネル;超音波式タッチパネル;光学式タッチパネル;静電容量式タッチパネル;携帯情報端末向け抵抗膜式タッチパネル;ディスプレイと一体化したタッチパネル(インナータッチパネル);太陽電池;アモルファスシリコン(a−Si)系太陽電池;微結晶Si薄膜太陽電池;CIGS太陽電池;色素増感太陽電池(DSC);電子部品の静電気対策用透明導電材料;帯電防止用透明導電材;調光材料;調光ミラー;発熱体(面ヒーター、電熱ガラス);電磁波遮蔽ガラス。
次に、本発明の実施例1を説明する。
本実施例1では、基板11としてLSAT(001)の単結晶基板を用いた。基板11上には、シード層12としてアナターゼ構造のTiO2を形成した。また、上記実施形態に記載の手法により、所定温度(成長温度)を変更しつつ、シード層12上に導電層13を成長させて導電体基板1を形成した。
本実施例1では、基板11としてLSAT(001)の単結晶基板を用いた。基板11上には、シード層12としてアナターゼ構造のTiO2を形成した。また、上記実施形態に記載の手法により、所定温度(成長温度)を変更しつつ、シード層12上に導電層13を成長させて導電体基板1を形成した。
図4は、導電層13のXRDパターンを示すグラフである。本実施例では、導電層13(アナターゼ型TaON)の成長温度を600℃、650℃、700℃、750℃、800℃と変更した場合における結果である。
図4に示すように、成長温度が600℃の場合、アナターゼ型TaONの結晶方向である(001)方向への配向が見られるものの、それほど強くは見られない。したがって、導電層13には強い配向を示すアナターゼ型TaONの結晶は含まれていないことが読み取れる。
図4に示すように、成長温度が600℃の場合、アナターゼ型TaONの結晶方向である(001)方向への配向が見られるものの、それほど強くは見られない。したがって、導電層13には強い配向を示すアナターゼ型TaONの結晶は含まれていないことが読み取れる。
成長温度が650℃の場合、(001)方向への配向はやや強く見られる。その後、成長温度を700℃、750℃、800℃として導電層13を成長させた場合、アナターゼ型TaONの結晶方向で(001)方向への配向が強く見られる。したがって、650℃以上では、導電層13には強い配向を示す高品質な単結晶が含まれていることが読み取れる。
本実施例2では、基板11としてLSAT(001)の単結晶基板を用いた。基板11上には、シード層12を設けることなく、上記実施形態に記載の手法により、所定温度(成長温度)を変更しつつ、基板11上に直接的に導電層13を成長させて導電体基板2を形成した。
図5は、導電層13のXRDパターンを示すグラフである。本実施例では、導電層13(アナターゼ型TaON)の成長温度を650℃、700℃、750℃、800℃と変更した場合における結果である。
図5に示すように、成長温度が650℃の場合、35°付近にアナターゼ型TaONによる回折信号はほとんど見られない。したがって、導電層13にはアナターゼ型TaONの結晶がほとんど含まれていないことが読み取れる。
図5に示すように、成長温度が650℃の場合、35°付近にアナターゼ型TaONによる回折信号はほとんど見られない。したがって、導電層13にはアナターゼ型TaONの結晶がほとんど含まれていないことが読み取れる。
成長温度が650℃の場合、アナターゼ型TaONの(001)方向への配向はやや強く見られる。その後、成長温度を700℃、750℃、800℃として導電層13を成長させた場合、アナターゼ型TaONの結晶方向で(004)方向への配向が強く見られる。したがって、650℃以上では、導電層13には強い配向を示す高品質な単結晶が含まれていることが読み取れる。
図6は、本実施例に係る導電体基板2に形成される導電層13のX線ロッキングカーブを示すグラフある。
図6に示すように、成長温度が750℃及び800℃の場合には、成長温度が700℃の場合に比べて、半値幅が著しく小さくなっている。この点からも、成長温度750℃及び800℃で導電層13を形成した場合、当該導電層13には強い配向を示す高品質な単結晶が含まれていることが読み取れる。
図6に示すように、成長温度が750℃及び800℃の場合には、成長温度が700℃の場合に比べて、半値幅が著しく小さくなっている。この点からも、成長温度750℃及び800℃で導電層13を形成した場合、当該導電層13には強い配向を示す高品質な単結晶が含まれていることが読み取れる。
本実施例3では、基板11として、LSAO(LaSrAlO4)からなる基板、LSATからなる基板、SrTiO3からなる基板、KaTaO3からなる基板、MgAl2O4からなる基板を用いた。各基板11上には、シード層12を設けることなく、上記実施形態に記載の手法により、所定温度(成長温度)を750℃として、基板11上に直接的に導電層13を成長させて導電体基板2を形成した。
図7は、LSAOからなる基板11上に成長させた導電層13、及び、LSATからなる基板11上に成長させた導電層13、についてのXRDパターンを示す図である。
図7に示すように、LSAOからなる基板11上に成長させた導電層13は、アナターゼ型TaONの配向がほとんど見られない。これに対して、LSATからなる基板11上に成長させた導電層13は、アナターゼ型TaONの強い配向が見られる。
図8は、各材料を主成分とする基板11の基板格子定数と、導電層13のX線ロッキングカーブの半値幅の値、a軸方向の格子定数、c軸方向の格子定数との関係をまとめたグラフである。
図8に示すように、LSAOからなる基板については、アナターゼ型TaONの配向が見られなかったため半値幅を算出できなかった。LSATからなる基板についての半値幅は、0.2°程度であった。SrTiO3からなる基板についての半値幅は、0.5°程度であった。KaTaO3からなる基板についての半値幅は、1.4°程度であった。MgAl2O4からなる基板についての半値幅は、1.9°程度であった。
図8に示すように、LSAOからなる基板については、アナターゼ型TaONの配向が見られなかったため半値幅を算出できなかった。LSATからなる基板についての半値幅は、0.2°程度であった。SrTiO3からなる基板についての半値幅は、0.5°程度であった。KaTaO3からなる基板についての半値幅は、1.4°程度であった。MgAl2O4からなる基板についての半値幅は、1.9°程度であった。
一方、図8に示すように、アナターゼ型TaONの基板格子定数は、約3.92(Å)と読み取れる。また、LSATの基板格子定数は約3.86(Å)、SrTiO3の基板格子定数は約3.90(Å)、KaTaO3の基板格子定数は約3.99(Å)、MgAl2O4の基板格子定数は約4.04(Å)と読み取れる。一方、LSAOの基板格子定数は3.77(Å)と読み取れる。この結果、LSAOの基板格子定数は、アナターゼ型TaONの基板格子定数に対して最も離れた値であることがわかる。
また、LSAOのa軸における格子定数は約3.75(Å)であり、c軸における格子定数は約12.63(Å)である。したがって、LSAOのa軸及びc軸における格子定数についても、上記4つの物質とは大きく離れていることがわかる。このように、アナターゼ型TaONとは格子定数が異なるLSAOからなる基板を用いた場合、導電層13の成長が困難であることが読み取れる。
本実施例4では、基板11として、LSAOからなる基板を2枚用いた。1枚の基板11上には、シード層12を設けることなく、基板11上に直接的に導電層13を成長させて導電体基板2を形成した。もう1枚の基板11上には、シード層12としてアナターゼ構造のTiO2を形成し、当該シード層12上に導電層13を成長させて導電体基板1を形成した。なお、2枚の基板共に、所定温度(成長温度)を750℃とした。
図9は、2枚の基板に形成された導電層13のXRDパターンを示すグラフである。シード層が設けられない基板11に形成される導電層13のグラフでは、アナターゼ構造TaONの配向が確認できず、不純物の成長が見られた。一方、シード層12が設けられた基板11に形成される導電層13のグラフでは、アナターゼ構造TaONの強い配向が確認された。この結果から、シード層12として、アナターゼ構造TaONと同一構造のアナターゼTiO2を形成することにより、基板11の基板格子定数が離れた値であっても、導電層13には強い配向を示す高品質な単結晶が含まれることが確認された。
本実施例5では、上記実施形態の手法で形成された導電層13の光学的特性を評価した。図10は、導電層13の可視光域での光屈折率を示すグラフである。図10の横軸は光子エネルギー(単位はeV)を示しており、縦軸は屈折率の値を示している。なお、可視光域は、概ね1.5eV〜3.0eV(波長400nm〜800nm相当)の範囲である。
図10では、(1)成長温度を750℃として導電層13を形成した場合の評価結果と、(2)成長温度を800℃として導電層13を形成した場合の評価結果と、(3)成長温度を750℃として導電層13を形成した後、800℃で真空アニールを行った場合の評価結果とを示している。
図10(1)〜(3)の評価結果から、可視光域の範囲では、光屈折率は2.7以上の値となっている。
(1)の評価結果では、光子エネルギーが1.5eV程度の値から大きくなるにつれて光屈折率は徐々に大きくなっている。また、光子エネルギーが2.8eV〜2.9eVの場合に光屈折率は当該範囲における最大値3.3程度となっている。更に、光子エネルギーが2.9eVから大きくなるにつれて光屈折率は徐々に小さくなっている。
(1)の評価結果では、光子エネルギーが1.5eV程度の値から大きくなるにつれて光屈折率は徐々に大きくなっている。また、光子エネルギーが2.8eV〜2.9eVの場合に光屈折率は当該範囲における最大値3.3程度となっている。更に、光子エネルギーが2.9eVから大きくなるにつれて光屈折率は徐々に小さくなっている。
(2)の評価結果では、光子エネルギーが1.5eV程度の値から大きくなるにつれて光屈折率は徐々に大きくなっている。また、光子エネルギーが2.7eV〜2.8eVの場合に光屈折率は当該範囲における最大値3.3程度となっている。更に、光子エネルギーが2.8eVから大きくなるにつれて光屈折率は徐々に小さくなっている。
(3)の評価結果では、光子エネルギーが1.5eV程度の値から大きくなるにつれて光屈折率は徐々に大きくなっている。また、光子エネルギーが2.9eVの場合に光屈折率は当該範囲における最大値3.2程度となっている。更に、光子エネルギーが2.9eVから大きくなるにつれて光屈折率は徐々に小さくなっている。
図11は、導電層13のバンドギャップを示すグラフである。
図11に示すように、導電層13のバンドギャップは540nm(2.3eV)となっており、波長540nm以上の赤色光、緑色光などの光吸収率が低くなっている(光透過率が高くなっている)。このため、当該導電層13は、赤色光、緑色光を発光又は受光する光学デバイスの電極として用いることが可能である。
図11に示すように、導電層13のバンドギャップは540nm(2.3eV)となっており、波長540nm以上の赤色光、緑色光などの光吸収率が低くなっている(光透過率が高くなっている)。このため、当該導電層13は、赤色光、緑色光を発光又は受光する光学デバイスの電極として用いることが可能である。
本実施例6では、上記実施形態の手法で形成された導電層13の電気的特性を評価した。図12は、導電層13の電気抵抗率(単位Ω・cm)を示すグラフである。グラフの横軸は窒素ガスを供給するRFプラズマ型ラジカル供給装置44の出力電力(単位W)を示しており、窒素ラジカルの供給速度の大きさを示している。
図12では、(1)成長温度を750℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(2)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(3)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を2×10−5Torr(約2.66×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果をそれぞれ示している。
図12に示すように、(2)(3)のグラフにおいてRFプラズマ型ラジカル供給装置44の出力電力が250Wの場合、電気抵抗率が0.008〜0.015Ω・cmとなっている。この値は、アナターゼ型TiO2の電気抵抗率(図15(a):Nbドープが0となるx=0のときの値を参照)と同程度であり、アナターゼ型TaONが電気抵抗率に優れていることが読み取れる。
図13は、導電層13のキャリア密度(単位1019cm−3)を示すグラフである。グラフの横軸は窒素ガスを供給するRFプラズマ型ラジカル供給装置44の出力電力(単位W)を示しており、窒素ラジカルの供給速度の大きさを示している。
図13では、図12と同様に、(1)成長温度を750℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(2)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(3)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を2×10−5Torr(約2.66×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果をそれぞれ示している。
図13に示すように、(1)〜(3)の値は、0.5〜4(×1019cm−3)となっている。この値は、アナターゼ型TiO2のキャリア密度(図15(b):Nbドープが0となるx=0のときの値を参照。但し、単位は1021cm−3である。)に比べて低いものの、一定程度の値を有していることが読み取れる。
図14は、導電層13の移動度(単位cm2V−1s−1)を示すグラフである。グラフの横軸は窒素ガスを供給するRFプラズマ型ラジカル供給装置44の出力電力(単位W)を示しており、窒素ラジカルの供給速度の大きさを示している。
図14では、図12及び図13と同様に、(1)成長温度を750℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(2)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を1×10−5Torr(約1.33×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果、(3)成長温度を800℃、窒素ガスの分圧を2×10−5Torr(約2.66×10−3Pa)として形成した導電層13についての評価結果をそれぞれ示している。
図14に示すように、(2)(3)のグラフにおいてRFプラズマ型ラジカル供給装置44の出力電力が250Wの場合、移動度が15〜20(cm2V−1s−1)となっている。この値は、アナターゼ型TiO2の移動度(図15(a):Nbドープが0となるx=0のときの値を参照)に匹敵する値であり、アナターゼ型TaONが移動度の面で優れていることが読み取れる。
1…導電体基板 11…基板 12…シード層 13…導電層
Claims (15)
- 650℃〜900℃の所定温度となるように基板を加熱する加熱ステップと、
前記所定温度を成長温度として前記基板上にアナターゼ型TaONの単相膜を成長させる成長ステップと
を含む導電体基板の製造方法。 - 前記成長ステップは、パルスレーザー堆積法によって前記単相膜を成長させることを含む
請求項1に記載の導電体基板の製造方法。 - 前記成長ステップは、
Ta2O5及びTaON焼結体のうち少なくとも一方を含むターゲットにパルスレーザーを照射することと、
前記パルスレーザーの照射の後、前記基板へ向けて移動する原子と窒素ラジカルとを反応させてアナターゼ型TaONの結晶を生成することと
を含む
請求項2に記載の導電体基板の製造方法。 - 前記加熱ステップに先立ち、前記基板の表面にアナターゼ型TaONの結晶構造を安定させる安定化層を形成する安定化層形成ステップ
を更に含み、
前記成長ステップは、前記安定化層上にアナターゼ型TaONの前記単相膜を成長させることを含む
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の導電体基板の製造方法。 - 前記安定化層形成ステップは、前記安定化層としてアナターゼ型TiO2の薄膜を形成することを含む
請求項4に記載の導電体基板の製造方法。 - 前記基板は、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の導電体基板の製造方法。 - 前記物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いられる
請求項5に記載の導電体基板の製造方法。 - アナターゼ型TaONの格子定数に対応する格子定数を有する物質の単結晶が含まれた基板と、
前記基板の表面に設けられたアナターゼ型TaONの単相膜からなる導電層と
を備える導電体基板。 - 前記導電層の可視光域での光屈折率は、2.7より大きい
請求項8に記載の導電体基板。 - 前記基板は、格子定数が3.85より大きく4.05未満である物質の単結晶が含まれた板状部材を有する
請求項8又は請求項9に記載の導電体基板。 - 前記物質として、LSAT、SrTiO3、KaTaO3、MgAl2O4のうち少なくとも一種類が用いられる
請求項10に記載の導電体基板。 - 請求項8から請求項11のうちいずれか一項に記載の導電体基板を備える発光素子。
- 請求項12に記載の発光素子を備える電子機器。
- 請求項8から請求項11のうちいずれか一項に記載の導電体基板を備える光電変換素子。
- 請求項14に記載の光電変換素子を備える太陽電池パネル。
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