(実施形態1)
以下では、本実施形態の赤外線検出素子20について図1に基づいて説明する。
赤外線検出素子20は、焦電体基板2gに受光部2rが形成されている。また、赤外線検出素子20は、焦電体基板2gに、平面視において受光部2rの一部を除いて受光部2rを取り囲む孔2sが形成されている。
受光部2rは、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され互いに対向する第1電極2h、第2電極2iと、焦電体基板2gにおいて第1電極2hと第2電極2iとに挟まれた部分2ggと、赤外線吸収層26とで構成される。要するに、赤外線検出素子20は、焦電体基板2gの表側に、平面視において孔2sで囲んだ領域全体を覆う赤外線吸収層26が設けられている。赤外線吸収層26は、樹脂中に、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末が分散された樹脂層からなる。
赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26を設けたことにより、赤外線吸収率を高めることが可能となり、且つ、赤外線吸収層26が第1電極2hとともに焦電体基板2gの自発分極で発生した電荷を集める電極として機能するため、焦電電流の検出領域を大きくすることが可能となる。これにより、赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26を設けていない場合に比べて、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線検出素子20は、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され第1電極2h、第2電極2iそれぞれに電気的に接続された第1配線2m、第2配線2nを備えている。そして、孔2sは、第1配線2m及び第2配線2nを避けた位置に形成されている。また、赤外線検出素子20は、第1出力端子2j及び第2出力端子2kを備えている。第1出力端子2jは、第1配線2mを介して第1電極2hに電気的に接続されている。第2出力端子2kは、第2配線2nを介して第2電極2iに電気的に接続されている。なお、図1(a)では、焦電体基板2gの裏側を表側から透視した場合の第2電極2i、第2配線2n及び第2出力端子2kを一点鎖線で示してある。
以下、赤外線検出素子20の各構成要素について詳細に説明する。
焦電体基板2gは、焦電性を有する基板である。焦電体基板2gは、単結晶のLiTaO3基板により構成されている。焦電体基板2gの材料である焦電材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)などを採用してもよい。
焦電体基板2gの自発分極の方向は、この焦電体基板2gの厚み方向に沿った一方向であり、図1(b)の上方向である。
焦電体基板2gは、平面視形状を矩形状としてある。焦電体基板2gの平面視形状は、特に限定するものではない。
焦電体基板2gの厚さは、50μmに設定してあるが、この値に限定するものではない。焦電体基板2gの厚さは、例えば、薄い方が赤外線検出素子20の感度を向上させる観点から好ましい。このため、焦電体基板2gの厚さは、30μm〜150μm程度の範囲で設定するのが好ましい。焦電体基板2gの厚さは、30μmよりも薄いと脆弱性による破損の懸念があり、150μmよりも厚いと感度が低下してしまう懸念がある。
第1電極2h及び第2電極2iは、導電性を有し且つ検出対象の赤外線を吸収可能な導電膜により構成されている。この導電膜は、Ni膜からなる。導電膜は、Ni膜に限らず、例えば、NiCr膜や金黒膜などでもよい。この導電膜は、膜厚が厚いほうが、電気抵抗が小さくなる一方、膜厚が薄いほうが、赤外線の吸収量を高めることが可能となる。このため、受光部2rは、第1電極2hの膜厚を第2電極2iの膜厚よりも薄くしてもよい。受光部2rは、第1電極2hの膜厚と第2電極2iの膜厚とを同じとしてもよい。
第1電極2hの膜厚は、30nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第1電極2hの膜厚は、100nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。第1電極2hは、例えば、蒸着法やスパッタ法などにより形成することができる。
第2電極2iの膜厚は、100nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第2電極2iの膜厚は、40nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。第2電極2iは、例えば、蒸着法やスパッタ法などにより形成することができる。
受光部2rは、第1電極2hの膜厚と第2電極2iの膜厚とを同じとする場合、第1電極2h及び第2電極2iの膜厚を、例えば、40nm〜100nm程度の範囲で設定すればよい。
第1電極2hは、シート抵抗の値によって赤外線吸収率が変化する。第1電極2hの赤外線吸収率は、例えば、20%〜50%の範囲で設定するのが好ましい。赤外線検出素子20において赤外線吸収層26を設けない場合、第1電極2hの赤外線吸収率の理論的な最大値は、50%である。第1電極2hの赤外線吸収率が50%となる第1電極2hのシート抵抗は、189Ω/□(189Ω/sq.)である。つまり、赤外線検出素子20は、第1電極2hのシート抵抗を189Ω/□とすれば、第1電極2hの赤外線吸収率を最大とすることが可能となる。したがって、赤外線検出素子20は、第1電極2hにおいて例えば40%以上の赤外線吸収率を確保するためには、第1電極2hのシート抵抗を73〜493Ω/□の範囲で設定すればよい。
受光部2rの平面視形状は、長方形状としてある。受光部2rは、第1電極2hと、この第1電極2hに対向する第2電極2iとが同じ形状であり、第2電極2iが、第1電極2hの投影領域に一致するように配置されている。このため、受光部2rの平面視形状は、第1電極2hの平面視形状により決まる。要するに、受光部2rの平面視形状は、第1電極2hの平面視形状と同じである。受光部2rは、第1電極2hと第2電極2iとで大きさが異なってもよい。この場合、受光部2rは、第1電極2hと焦電体基板2gと第2電極2iとが重複する領域により規定される。
受光部2rの平面視形状は、長方形状に限らず、例えば、正方形状や、円形状、半円形状、楕円形状、半楕円形状、矩形以外の多角形状などでもよい。
赤外線検出素子20は、2つの受光部2rを備えている。赤外線検出素子20は、焦電体基板2gにおいて2つの受光部2rの並ぶ方向の両端部の各々に、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが設けられている。各第1出力端子2jの各々は、焦電体基板2gの表側の面に設けられている。各第2出力端子2kの各々は、焦電体基板2gの裏側の面に設けられている。
焦電体基板2gの表側の第1配線2m及び第1出力端子2jは、材料、厚みそれぞれを第1電極2hと同じとしてあるのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20の形成にあたっては、第1配線2m及び第1出力端子2jを第1電極2hと同時に形成することが可能となり、且つ、第1電極2hと第1配線2mと第1出力端子2jとを連続膜として形成することが可能となる。
焦電体基板2gの裏側の第2配線2n及び第2出力端子2kは、材料、厚みそれぞれを第2電極2iと同じとしてあるのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20の形成にあたっては、第2配線2n及び第2出力端子2kを第2電極2iと同時に形成することが可能となり、且つ、第2電極2iと第2配線2nと第2出力端子2kとを連続膜として形成することが可能となる。
また、赤外線検出素子20は、2つの受光部2rの並ぶ方向に直交し且つ焦電体基板2gの中心を通る平面を対称面として面対称となるように、各受光部2r、各第1配線2m、各第2配線2n、各第1出力端子2j、各第2出力端子2k及び各孔2sが設けられている。よって、赤外線検出素子20は、2つの受光部2rの並ぶ方向を例えば上下方向とする場合、上下を入れ換えて使用しても同等の性能を得ることが可能となる。
赤外線検出素子20は、2つの受光部2rが電気的に絶縁されている。このため、赤外線検出素子20は、各受光部2rの出力を各別に取り出すことが可能である。要するに、赤外線検出素子20は、2つの受光素子2a、2bを備えている。受光素子2aは、図1(a)における下側の受光部2rと、この受光部2rの第1電極2hに電気的に接続された第1配線2m及び第1出力端子2jと、この受光部2rの第2電極2iに電気的に接続された第2配線2n及び第2出力端子2kとを備えている。受光素子2bは、図1(a)における上側の受光部2rと、この受光部2rの第1電極2hに電気的に接続された第1配線2m及び第1出力端子2jと、この受光部2rの第2電極2iに電気的に接続された第2配線2n及び第2出力端子2kとを備えている。受光素子2a(以下、第1受光素子2aとも称する)及び受光素子2b(以下、第2受光素子2bとも称する)は、それぞれ、赤外線を受光して光電変換した出力信号を発生する。
赤外線検出素子20は、受光部2rの第1電極2hに電気的に接続された第1出力端子2jと、この受光部2rの第2電極2iに電気的に接続された第2出力端子2kとが、焦電体基板2gの厚み方向において重ならないように配置されている。これにより、赤外線検出素子20は、各受光素子2a、2bの各々において、第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間の寄生容量を低減することが可能となる。また、赤外線検出素子20は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間の沿面距離を長くすることが可能となる。
ところで、赤外線検出素子20は、回路基板などの実装基板に実装して用いる場合、実装基板のリード端子と、第1出力端子2j、第2出力端子2kのそれぞれとを、導電性を有する接合部を介して電気的に接続して用いるのが好ましい。接合部は、例えば、導電ペーストから形成することができる。導電ペーストは、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペーストなどである。赤外線検出素子20は、受光素子2a、2bの各々において、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが、焦電体基板2gの厚み方向において重ならないように配置されているので、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが接合部を介して短絡するのを抑制することが可能である。
赤外線検出素子20は、2つの受光部2rが電気的に絶縁された構成に限らず、例えば、焦電体基板2gの表側、裏側で2つの受光部2r同士を電気的に接続する配線を設けてもよい。この場合、赤外線検出素子20は、デュアルタイプの焦電型赤外線検知素子と同様の構成とすることが可能となる。
受光部2rの数は、特に限定するものではなく、1つでも複数でもよく、複数の場合、例えば、4つでもよい。また、焦電体基板2gに対する受光部2rのレイアウトは、特に限定するものではない。受光部2rの数が4つの場合には、例えば、4つの受光部2rを2×2のアレイ状に配列したり、1×4のアレイ状に配列したりすることができ、クワッドタイプの焦電型赤外線検知素子と同様の構成とすることが可能となる。
赤外線吸収層26は、上述のように、樹脂中に、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末が分散された樹脂層からなる。導電性微粉末は、導電性を有する微粉末である。赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度は、17%に設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。導電性微粉末の体積濃度は、例えば、1〜30%程度の範囲内で設定することができる。これにより、赤外線吸収層26は、導電性を有するが、第1電極2hに比べて比抵抗が大きくなる。
赤外線吸収層26は、樹脂に導電性微粉末を分散させ有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷してから、ベークすることで硬化させることによって形成することができる。赤外線吸収層26の形成にあたっては、例えば、ペーストにおける導電性微粉末の組成を8.5%とすれば、赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度を17%程度とすることが可能である。
赤外線吸収層26は、より広い温度範囲で化学的及び物理的に安定していることが望ましい。このため、赤外線吸収層26の樹脂としては、熱硬化性樹脂が望ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。そして、赤外線検出素子20は、これらの熱硬化性樹脂のうち、赤外線検出素子20の検出対象の赤外線の吸収率がより高い熱硬化性樹脂を採用することが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26の厚みを薄くすることが可能となり、感度をより高めることが可能となる。検出対象の赤外線を吸収可能な樹脂は、検出対象の赤外線に対する吸収率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
赤外線検出素子20をガスの検知などの用途に用い、検出対象の赤外線の波長が3〜8μm、特に3〜5μmの範囲内にある場合、赤外線吸収層26の樹脂としては、水酸基を含む樹脂が好ましい。水酸基を含む樹脂は、多分子間で水素結合しているため、3μm付近から長波長側にかけて赤外線を吸収する特性を有している。この種の樹脂としては、フェノール系樹脂が挙げられる。フェノール系樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、シクロペンタジエン、フェノール重合体、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、赤外線検出素子20を人体の検知などの用途に用い、検出対象の赤外線の波長が8〜13μmの範囲内にある場合、赤外線吸収層26の樹脂としては、芳香族系の樹脂が好ましい。この種の樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。
ガスの検知、人体の検知の両方への適用を考慮した場合、赤外線吸収層26の樹脂としては、水酸基を持つ芳香族系の樹脂が好ましく、例えば、フェノール系樹脂を挙げることができる。
カーボン系微粉末としては、固体炭素材料で赤外線吸収率が高く、樹脂中に分散できる微粉末が適している。この種のカーボン系微粉末としては、例えば、非晶質(微結晶)炭素として分類される、カーボンブラック、カーボンファイバー、黒鉛などや、ナノカーボンとして分類される、フラーレン、ナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。特に、カーボンブラックは、粒子径が小さく、化学的にも安定しており、好ましい。
金属系微粉末に関しては、粒子径が0.1μm程度以下の金属系微粉末が、赤外線を吸収する性質があり、幅広い赤外波長域で吸収率が高いという特徴を有している。そして、この特徴は、金属の種類に依存しない。このため、金属系微粉末の材料としては、化学的に安定なAu、Pt、Agなどの貴金属や、耐熱性の高いW、Moなどの高融点金属や、微粉末の作りやすいZn、Mg、Cd、Al、Cu、Fe、Cr、Ni、Co、Snや、それらの2種以上の合金など、が挙げられる。
金属酸化物系微粉末は、遠赤外線を効率よく吸収し、また、化学的にも安定しているため、赤外線検出素子20を人体の検知などの用途に適用する場合などに好適に採用することができる。金属酸化物系微粉末の材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、AZO(AlドープZnO)、GZO(GaドープZnO)などが挙げられる。
赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26を付加することによって、受光部2rの赤外線吸収率を高めることができて感度を高めることが可能であるが、その一方で、受光部2rの熱容量が増大し、受光部2rで受光した赤外線による受光部2rの温度上昇が小さくなって感度が低くなる傾向にある。図2は、赤外線吸収層26を設けたことによる感度の変化方向の模式的な説明図であり、横軸が赤外線の周波数、縦軸が感度(電流感度)である。図2は、赤外線吸収率の増加により矢印A1に示すように感度が高くなり、熱容量の増加により矢印A2に示すように感度が低くなることを模式的に表わしている。このため、赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26の厚さによっては、赤外線吸収層26を設けたことによる効果が得られなくなる懸念がある。また、図2は、熱容量の増加による熱応答性の悪化に起因して、感度の周波数特性が矢印A3のように悪化することを模式的に表している。図2から、赤外線検出素子20は、高い周波数域での感度が重視される場合、赤外線吸収層26の厚さを薄めに設定するのが好ましいことが分かる。
受光部2rは、放熱性が変化しないと仮定すると、感度が熱容量に反比例する。また、受光部2rの感度は、赤外線吸収率に比例する。したがって、赤外線吸収層26を付加したことによる感度の変化率は、〔感度の変化率〕=〔赤外線吸収率の変化率〕/〔熱容量の変化率〕で表すことができる。ここで、感度を向上させるためには、感度の変化率を1よりも大きくする必要がある。また、単位面積当りの熱容量で考えた場合、厚みと体積熱容量との積により、感度の変化率を議論できる。
ここでは、第1電極2h上の赤外線吸収層26の厚さをAd〔μm〕、赤外線吸収層26の体積熱容量Aρ〔J/K〕、焦電体基板2gの厚さをSd〔μm〕、焦電体基板2gの体積熱容量をSρ〔J/K〕とする。この場合には、赤外線吸収層26を設けることで受光部2rの単位面積当りの熱容量がSd×Sρから、Sd×Sρ+Ad×Aρに変化する。よって、この場合には、赤外線吸収率が20%から40%に上昇したとすると、感度が向上するための条件を、下記の式で表すことができる。
1<(0.4/0.2)/{(Sd×Sρ+Ad×Aρ)/(Sd×Sρ)}
そして、この式を整理すると、
0.2/(Sd×Sρ)<0.4/(Sd×Sρ+Ad×Aρ)
となり、更に整理すると、
Ad<(Sd×Sρ)/Aρ
となる。
また、赤外線吸収層26を付加したことによる感度の変化がない場合は、不等号が等号となるから、
Ad=(Sd×Sρ)/Aρ
となる。これは、赤外線吸収層26の厚さをAdが、(Sd×Sρ)/Aρのときには感度の変化がないことを意味し、(Sd×Sρ)/Aρよりも薄ければ感度が向上することを意味している。ここで、赤外線吸収層26の厚さAdの規格化厚さをNAd=(Sd×Sρ)/Aρ、規格化厚さNAd=1のときの感度を1とする相対的な感度を規格化感度と定義する。この場合、赤外線吸収層26の規格化厚さNAdと受光部2rの規格化感度との関係は、図3に示すようになる。赤外線検出素子20は、図3から分かるように、赤外線吸収層26の規格化厚さNAdを1よりも小さくすることにより、規格化感度を1よりも大きくすることが可能となる。
赤外線検出素子20は、検出対象の赤外線の波長に対する赤外線吸収層26の屈折率をAn、第1電極2h上の赤外線吸収層26の厚さをAd〔μm〕、検出対象の赤外線の波長をλt〔μm〕とするとき、
(An×Ad)>(λt/4)
の関係を満たすのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26の赤外線吸収率を高めることが可能となる。
この場合は、赤外線吸収層26の厚さと赤外線吸収層26の赤外線吸収率との関係が図4に示すシミュレーション結果のようになる。
このシミュレーションでは、シミュレーション条件として、赤外線吸収層26の赤外線吸収率が、ランベルトベールの法則によって赤外線吸収層26の厚さに依存するとし、赤外線吸収層26の赤外線吸収率を90%とし、赤外線吸収層26の樹脂をフェノール樹脂とし、赤外線吸収層26の屈折率Anをフェノール樹脂の1.6とし、検出対象の赤外線の波長λtを4μmと仮定した。なお、赤外線吸収層26は、樹脂中に導電性微粉末を分散させてあるが、導電性微粉末の体積濃度が小さいため、赤外線吸収層26の屈折率は概ね樹脂の屈折率で定義することができる。一方、金属黒などの単体の赤外線吸収層では、単位体積当たりの空気の割合が高いため、その屈折率が空気の屈折率である1に近い値となる。
また、赤外線吸収層26の厚さと規格化感度との関係は、図5に示すシミュレーション結果のようになる。このシミュレーションでは、シミュレーション条件を図4の場合と同じとし、また、焦電体基板2gの材料をLiTaO3、焦電体基板2gの厚さを50μmとした。
図5の例では、赤外線吸収層26を設けることにより、規格化感度を1よりも大きくできる、つまり、感度を向上できることが分かる。また、図5の例では、赤外線吸収層26の厚さを75μmよりも薄くすることにより、規格化感度を1よりも大きくできる、つまり、感度を向上できることが分かる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の赤外線検出素子20について図6に基づいて説明する。
本実施形態の赤外線検出素子20は、実施形態1の赤外線検出素子20と基本構成が略同じであり、第1電極2hの外周縁が、第1電極2hを囲む孔2sの第1電極2h側の開孔縁から離れている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態の赤外線検出素子20では、第1電極2hの外周縁が、第1電極2hを囲む孔2sの第1電極2h側の開孔縁から離れているので、高感度化を図りながらも、第1電極2hと第2電極2iとの短絡をより確実に抑制することが可能となる。
また、本実施形態の赤外線検出素子20は、第2電極2iの外周縁が、第2電極2iを囲む孔2sの第2電極2i側の開孔縁から離れているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、第1電極2hと第2電極2iとの短絡をより確実に抑制することが可能となり、電気的安定性の低下を抑制することが可能となる。
ところで、従来の赤外線検出器を用いた赤外線式ガスセンサでは、測定精度のより一層の高精度化が望まれている。
これに対して、本願発明者らは、本実施形態の赤外線検出素子20を備えた赤外線受光ユニット2(図7〜図9参照)を赤外線式ガスセンサの赤外線検出器として適用することにより、赤外線式ガスセンサの高精度化を図ることを考えた。
以下では、赤外線光学ユニット2について図7〜図13に基づいて説明する。
赤外線受光ユニット2は、赤外線式ガスセンサの赤外線検出器として用いるものであり、光源(赤外光源)から放射された赤外線を受光する機能を有する。なお、赤外線式ガスセンサでは、光源と赤外線受光ユニット2との間に試料セル(図示せず)が設けられる。上記試料セルは、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。
赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20と、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と、基板43と、パッケージ29とを備えている。
赤外線検出素子20は、実施形態1において説明したように、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを有する。第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの受光面(図9(a)における上面)の前方に配置されている。基板43は、赤外線検出素子20が実装される。パッケージ29は、赤外線検出素子20、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32及び基板43を収納する。
パッケージ29は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の光入射面(図9(a)、図13における上面)側にある窓孔29cと、窓孔29cを塞ぎ赤外線を透過可能な窓材29wとを有する。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32がパッケージ29内に収納され外気に曝されるのを抑制することが可能となり、フィルタ特性の経時変化を抑制することが可能となる。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、上述のように、1つの受光部2rと、受光部2rに電気的に接続された第1出力端子2j及び第2出力端子2kとを備えた焦電素子である。
回路ブロック44の基板43は、電気絶縁性を有する絶縁性基材43aと、2つの第1リード端子43jと、2つの第2リード端子43kとを備えている。各第1リード端子43j及び各第2リード端子43kは、絶縁性基材43aと一体に設けられている。各第1リード端子43jは、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第1出力端子2jが、導電性接着剤からなる第1接合部7j(図11参照)を介して電気的に接続される。各第2リード端子43kは、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第2出力端子2kが、導電性接着剤からなる第2接合部7k(図11参照)を介して電気的に接続される。
絶縁性基材43aは、隣り合う第1リード端子43jと第2リード端子43kとの間で赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側から赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向に突出し赤外線検出素子20を位置決めする突起43cが形成されている。
これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20を突起43cにより位置決めでき、赤外線検出素子20の位置精度を高めることが可能となるから、赤外線検出素子20の位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、隣り合う第1接合部7jと第2接合部7kとの間に突起43cが位置することで、第1電極2hと第2電極2iとの短絡の発生を抑制することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1電極2hと第2電極2iとの間のリークに伴う浮動電荷によるノイズの発生を抑制することが可能となり、S/N比の向上及び高感度化を図ることが可能となる。
また、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向に突出し第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めする位置決め部43dが形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43において第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めすることが可能となる。よって、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と第1受光素子2a及び第2受光素子2bとの相対的な位置精度を高めることが可能となり、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の小型化を図ることが可能となる。赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の小型化により、低コスト化が可能となる。
また、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの出力信号を各別に増幅する第1増幅回路41及び第2増幅回路42(図9、図12参照)が基板43に設けられている。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bと第1増幅回路41及び第2増幅回路42との間の配線長を短くすることが可能となり、S/N比や感度の低下を抑制することが可能となる。
赤外線受光ユニット2は、基板43、第1増幅回路41及び第2増幅回路42等により、回路ブロック44を構成している。したがって、赤外線受光ユニット2は、回路ブロック44が、パッケージ29に収納されている。
以下では、赤外線受光ユニット2の各構成要素について、より詳細に説明する。
赤外線検出素子20は、上述のように、平面視において各受光部2rの各々の一部を除いて各受光部2rの各々を取り囲み厚み方向に貫通する孔2sが形成されている。孔2sは、第1配線2m及びその周部、第2配線2n及びその周部を避けて、受光部2rを取り囲むように形成されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、受光部2r同士を熱絶縁することが可能となり、また、突発的なノイズであるポップコーンノイズを低減することが可能となる。
基板43は、例えば、MID(Molded InterconnectDevices)基板、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。MID基板は、樹脂成形品からなる絶縁性基材43aの表面に第1リード端子43j、第2リード端子43kや、その他の配線を適宜形成すればよい。
また、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20が、基板43に実装されている。赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第1出力端子2jと各第1リード端子43jとが、導電性接着剤からなる第1接合部7jを介して電気的に接続される。また、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第2出力端子2kと各第2リード端子43kとが、導電性接着剤からなる第2接合部7kを介して電気的に接続される。導電性接着剤は、例えば、AgまたはAu粉末を含んだエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂の接着剤である。導電性接着剤としては、導電ペーストを用いることができる。導電ペーストは、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等である。
導電性接着剤としては、有機樹脂系の導電性接着剤を採用するのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43から赤外線検出素子20への熱伝導を抑制することが可能となる。
回路ブロック44は、第1受光素子2aの出力信号を増幅して出力する第1増幅回路41と、第2受光素子2bの出力信号を増幅して出力する第2増幅回路42とを備えている。
なお、赤外線受光ユニット2は、第1増幅回路41と第2増幅回路42とを集積化して1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。また、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、複数のディスクリート部品を適宜接続して構成してもよい。
赤外線受光ユニット2は、基板43の厚み方向の一面側に赤外線検出素子20が配置され、基板43の厚み方向の他面側に第1増幅回路41及び第2増幅回路42が配置されているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43の厚み方向の一面側において赤外線検出素子20の側方に第1増幅回路41及び第2増幅回路42が配置されている場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1増幅回路41及び第2増幅回路42それぞれで発生した熱が赤外線検出素子20へ伝熱されることを、より抑制することが可能となる。
第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、ベアチップのIC素子により形成されており、基板43の上記他面側に設けた凹部43y(図9、図12参照)の内底面に、エポキシ樹脂等のダイボンド材により固定されている。また、基板43には、図12に示すように、第1増幅回路41及び第2増幅回路42が導電性の金属細線(ワイヤ)45を介して電気的に接続される導電部46を備えている。金属細線45の材料としては、例えば、金、アルミニウム、銅等を採用することができる。導電部46としては、第1増幅回路41及び第2増幅回路42への給電用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46sと、グランド用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46gとがある。また、導電部46としては、第1増幅回路41の出力信号を取り出す第1出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46aと、第2増幅回路42の出力信号を取り出す第2出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46bとがある。
第1増幅回路41、第2増幅回路42及び各金属細線45は、封止材料(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)からなる封止部(図示せず)により覆われているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、各金属細線45の断線や各金属細線45とパッケージ29との接触を防止することが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、上記封止部を設けたことによって、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々で発生した熱が赤外線検出素子20側へ伝熱されにくくなるという利点もある。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、赤外線受光ユニット2の用途に必要とされる光学特性を有するようにフィルタ特性を設計すればよい。
第1光学フィルタ31は、例えば、図13(a)に示すように、基板31sと、第1フィルタ部31aと、第2フィルタ部31bとを備えている。また、第2光学フィルタ32は、例えば、図13(b)に示すように、基板32sと、第3フィルタ部32aと、第4フィルタ部32bとを備えた構成を採用することができる。基板31s、32sは、赤外線を透過可能なものである。基板31s、32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。赤外線受光ユニット2は、第2フィルタ部31bと第4フィルタ部32bとを同じ構成とすることができる。これにより、赤外線受光ユニット2は、第2フィルタ部31bの分光特性と第4フィルタ部32bの分光特性とを略同じとすることが可能となる。
第1フィルタ部31aは、例えば、λ/4多層膜34と、波長選択層35と、λ/4多層膜36とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜36は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。波長選択層35は、λ/4多層膜34とλ/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜34及びλ/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第3フィルタ部32aは、例えば、λ/4多層膜37と、波長選択層38と、λ/4多層膜39とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜39は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。波長選択層38は、λ/4多層膜37とλ/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜37及びλ/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1フィルタ部31aの薄膜31aa、31abと第3フィルタ部32aの薄膜32aa、32abとはそれぞれ同じ材料を採用することができる。
第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層35、38を設けて屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、反射帯域の中に反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い透過帯域を局在させることができる。第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、波長選択層35、38の光学膜厚を適宜変化させることによって、透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第1フィルタ部31aの選択波長は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長λ1である。また、第3フィルタ部32aの選択波長は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長λ2である。
第2フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31ba、31bb)が積層された多層膜である。第2フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第4フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32ba、32bb)が積層された多層膜である。第4フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
赤外線式ガスセンサでは、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、メタン(CH4)が3.3μm、二酸化炭素(CO2)が4.3μm、一酸化炭素(CO)が4.7μm、一酸化窒素(NO)が5.3μmである。このため、赤外線受光ユニット2は、赤外線式ガスセンサに適用する場合、例えば、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長(参照波長)に設定すればよい。第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとしては、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、赤外線受光ユニット2は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1と第2フィルタ部32aの中心波長λ2との差が小さい方が好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。赤外線受光ユニット2は、赤外線式ガスセンサの検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を例えば3.9μmに設定することができる。
第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32とは、1チップ化したものでもよい。
赤外線受光ユニット2のパッケージ29としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、台座29aと、台座29aに固着されるキャップ29bとを備え、キャップ29bにおける第1受光素子2a及び第2受光素子の前方に1つの窓孔29cが形成された構成とすることができる。
台座29aは、金属製である。台座29aは、円板状に形成されている。キャップ29bは、金属製である。キャップ29bは、缶状に形成されている。
台座29aには、4本のリードピン29dが厚み方向に貫通して設けられる。台座29aは、これら4本のリードピン29dを保持している。各リードピン29dは、回路ブロック44に結合されている。4本のリードピン29dは、給電用、グラウンド用、第1増幅回路41の出力信号の取り出し用、及び第2増幅回路42の出力信号の取り出し用それぞれに、1本ずつ利用される。グラウンド用のリードピン29dは、台座29aに対して導電性の封止材で固定されており、台座29aと電気的に接続されている。それ以外のリードピン29dは、台座29aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座29aと電気的に絶縁されている。なお、赤外線受光ユニット2は、回路ブロック44に、グラウンド用のリードピン29dが電気的に接続されるシールド板やシールド層を設けてもよい。
台座29aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ29bの形状は、台座29aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座29aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ29bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
窓孔29cは、第1受光素子2aと第2受光素子2bとを併せたサイズよりもやや大きな開口サイズとしてある。窓孔29cの開口形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、円形状や矩形以外の多角形状等でもよい。
窓孔29cを塞ぐ窓材29wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材29wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材29wは、窓孔29cの開口サイズよりもやや大きな矩形板状に形成されている。窓材29wは、導電性材料(例えば、半田、導電性接着剤等)によりキャップ29bに固着されているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、窓材29wをキャップ29bと略同電位とすることが可能となり、外来の電磁ノイズの影響を受けにくくなるという利点がある。窓材29wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材29wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
半導体レンズの製造にあたっては、例えば、半導体基板(例えば、シリコン基板等)を準備する。その後には、所望のレンズ形状に応じて半導体基板との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成する。その後には、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成する。その後には、当該多孔質部を除去することにより半導体レンズを形成する。なお、上述の半導体レンズからなるレンズは、例えば、半導体基板として半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)を用い、多数のレンズを形成した後に、ダイシング等によって個々のレンズに分離すればよい。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと赤外線受光素子20との距離の精度を高めることが可能となる。
基板43の絶縁性基材43aは、各受光部2rの投影領域に熱絶縁用の穴43bが設けられていることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、受光部2rと絶縁性基材43aとの間の熱絶縁性を高めることが可能となり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの感度の向上を図ることが可能となる。熱絶縁用の穴43bは、各受光部2rに対して1つずつ設けてもよいが、投影視で2つの受光部2rに跨って設けられているのが好ましい。
絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の搭載予定領域は、平面視において赤外線検出素子20が重なる領域である。赤外線検出素子20を位置決めする突起43cは、絶縁性基材43aにおいて、隣り合う第1リード端子43jと第2リード端子43kとの間で赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側の部位から、赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向(図9における上方向)に突出している。よって、絶縁性基材43aには、2つの受光部2rの並ぶ方向の両側の各々において、突起43cが1つずつ形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20を2つの突起43cにより位置決めでき、2つの受光部2rの並ぶ方向における赤外線検出素子20の位置精度を高めることが可能となるから、赤外線検出素子20の位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、突起43cが無い場合や例えば赤外線受光素子20の四隅それぞれの近傍に突起が位置している場合等に比べて、第1電極2hと第2電極2iとの短絡の発生を抑制することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1電極2hと第2電極2iとの間のリークに伴う浮動電荷によるノイズの発生を抑制することが可能となり、S/N比の向上及び高感度化を図ることが可能となる。
また、赤外線受光ユニット2は、突起43cの突出寸法が、第1接合部7jの高さ寸法よりも大きいことが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが第1接合部7jを介して短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
基板43は、第1リード端子43jが、赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側に設けられ、第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている。そして、第1接合部7jは、赤外線検出素子20の表側に設けられている。一方、第2接合部7kは、赤外線検出素子20の裏側に設けられている。よって、赤外線受光ユニット2は、第1リード端子43j及び第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている場合に比べて、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
この赤外線受光ユニット2において、位置決め部43dは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の位置を規定する壁部43eと、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が架設される支持部43fとを備えることが好ましい。壁部43e及び支持部43fは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける両側の各々に形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と赤外線検出素子20との相対的な位置精度を高めることが可能となる。よって、赤外線受光ユニット2は、小型化及び高感度化を図ることが可能となる。なお、支持部43fからの壁部43eの高さ寸法は、特に限定するものではなく、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の厚さ寸法よりも小さくてもよい。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、例えば、壁部43eに対して接着剤により固定することが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を支持部43fに対して接着剤により固定する場合に比べて、赤外線検出素子20と第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32との距離の精度を高めることが可能となる。赤外線受光ユニット2は、支持部43fの突出寸法が赤外線検出素子20の厚み寸法よりも大きく、赤外線検出素子20の厚み方向において第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と赤外線検出素子20との間に間隙があることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20と第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32とを熱絶縁することが可能となり、赤外線検出素子20の高感度化を図ることが可能となる。
赤外線受光ユニット2は、壁部43eに、先端面及び第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32との対向面が開放された窪み部43gが形成されており、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が、窪み部43g内の接着剤からなる接着部9(図3(b)参照)により壁部43eに固定されていることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、製造時に、接着剤の塗布量を安定させることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。接着部9の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを採用することができる。接着剤としては、熱硬化型の接着剤でもよいが、紫外線硬化型の接着剤を採用するのがより好ましい。
図14は、赤外線検出器(光検出器)として赤外線受光ユニット2を備えた赤外線式ガスセンサ300の一例を示す。
赤外線式ガスセンサ300は、光源1と、赤外線受光ユニット2と、光源1と赤外線受光ユニット2との間に配置された試料セル6と、信号処理部4とを備える。また、赤外線式ガスセンサ300は、光源1を駆動する駆動回路5を備えている。赤外線式ガスセンサは、駆動回路5によって、光源1から放射される赤外線の強度を変調させる。駆動回路5は、光源1から放射される光の強度が一定周期で周期的に変化するように光源1を駆動するが、光の強度が連続的に変化するように駆動してもよいし光の強度が間欠的に変化するように駆動するようにしてもよい。
光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源であるのが好ましい。光源1としては、例えば、熱放射により赤外線を放射する赤外線放射素子10と、この赤外線放射素子10を収納したパッケージ19とを備えたものを用いることができる。パッケージ19としては、例えば、赤外線検出素子10の前方に窓孔19rを有し、窓材19wにより窓孔19rが塞がれている構成のものを用いることができる。赤外線放射素子10としては、例えば、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造したものを採用することができる。赤外線放射素子10は、基板と、前記基板の一表面側に設けられた薄膜部と、前記基板の厚み方向に貫通した孔と、前記薄膜部における前記基板側とは反対側に設けられた赤外線放射層とを備えており、前記赤外線放射層への通電により前記赤外線放射層が発熱し、前記赤外線放射層から熱放射により赤外線が放射される。前記赤外線放射層の材料は、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウム、導電性ポリシリコン等を採用することができる。
赤外線式ガスセンサ300は、例えば、駆動回路5から赤外線放射素子10の前記赤外線放射層へ与える入力電力を調整することにより、前記赤外線放射層に発生するジュール熱を変化させることができ、前記赤外線放射層の温度を変化させることができる。よって、赤外線式ガスセンサ300では、赤外線放射素子10の前記赤外線放射層の温度を変化させることで前記赤外線放射層から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
パッケージ19としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、赤外線放射素子10が実装される台座19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bとを備え、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に窓孔19rが形成された構成とすることができる。なお、台座19aには、赤外線放射素子10への給電用の複数本のピン19dが厚み方向に貫通して設けられている。パッケージ19としては、キャンパッケージに限らず、例えば、セラミックパッケージ等を採用してもよい。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
光源1は、熱放射により赤外線を放射するものであるから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。
試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の空気が導出されたりする。
赤外線式ガスセンサ300は、試料セル6の軸方向の一端部側に光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に赤外線受光ユニット2が配置されている。赤外線式ガスセンサ300は、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に、例えば、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が導入される。このため、赤外線式ガスセンサ300では、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が増加する。
信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比に基づいて検知対象のガスの濃度を求める。このため、信号処理部4は、第1増幅回路41にて増幅された出力信号と第2増幅回路42にて増幅された出力信号との比に基づく出力を発生する信号処理回路45を備えている。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分に基づいて検知対象のガスの濃度を求めるようにしてもよい。このため、信号処理部4は、信号処理回路45が、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分に基づいて検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力を発生するようにしてもよい。
以上説明した赤外線受光ユニット2は、上述の赤外線吸収層26を有する赤外線検出素子20を備えているので、赤外線式ガスセンサ300に用いる場合に、高感度化を図ることが可能となり、また、測定精度のより一層の高精度化を図ることが可能となる。赤外線検出素子20は、実施形態2で説明したものに限らず、実施形態1で説明したものでもよい。
図15は、図6に示した構成の赤外線検出素子20を備えた赤外線センサ400の一例を示す。
赤外線センサ400は、赤外線検出素子20と、赤外線検出素子20の出力信号を信号処理する信号処理部404と、赤外線検出素子20及び信号処理部404が収納されたパッケージ429とを備えている。
信号処理部404は、赤外線検出素子20がゲートに接続されるインピーダンス変換用の電界効果トランジスタ412と、電界効果トランジスタ412のゲート電位を設定するための高抵抗値の抵抗413とを用いた電流電圧変換回路を備えている。信号処理部404は、赤外線検出素子20と、電界効果トランジスタ412と、抵抗413と、これらが実装された回路基板411とで構成されている。回路基板411は、プリント基板である。回路基板411は、円板状に形成されている。赤外線センサ400は、信号処理部404において、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分が電流電圧変換回路に入力されるように配線が形成されている。
赤外線センサ400は、人体検知センサとして適用できる。赤外線検出素子20は、回路基板411の一表面上に配置された2つの支持台414,214により支持されている。
パッケージ429は、金属製の台座429aと、金属製のキャップ429bとを備え、台座429aとキャップ429bとが接合されている。また、パッケージ429は、キャップ429bにおける赤外線検出素子20の前方に窓孔429cを有し、窓孔429cが窓材429wにより塞がれている。台座429aは、信号処理部404の出力信号を外部に取り出すための3本のリードピン429dを保持している。各リードピン429dは、回路基板411に結合されて信号処理部404と電気的に接続される。
赤外線センサ400は、検出対象の赤外線として人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、窓材429wの材料として、シリコンを採用している。窓材429の材料は、シリコンに限らず、例えば、ゲルマニウム、硫化亜鉛や砒化ガリウムなどを採用することもできる。ただし、窓材429の材料は、硫化亜鉛や砒化ガリウムなどに比べて環境負荷が少なく且つ、ゲルマニウムに比べて低コスト化が可能であり、しかも、硫化亜鉛に比べて波長分散が小さなシリコンを採用することが好ましい。
また、窓材429wは、赤外線入射面側と赤外線出射面側との少なくとも一方に、光学フィルタ膜を設けることが好ましい。赤外線センサ400では、検出対象の赤外線の波長帯を8〜13μmと想定し、前記光学フィルタ膜の光学特性を、5μm〜15μmの波長域の赤外線を透過するように光学設計してある。前記光学フィルタ膜は、例えば、屈折率の異なる複数種類の薄膜を交互に積層することにより形成することができる。この種の薄膜の材料としては、例えば、ゲルマニウム、硫化亜鉛、硫化セレン、アルミナ、酸化シリコン、窒化シリコン、フッ化マグネシウムなどを採用することができる。
窓材429とキャップ429とを接合している接合部(図示せず)の材料としては、例えば、半田などを採用することができる。
窓材429は、平板状のものに限らず、レンズを採用してもよい。窓材429を構成するレンズとしては、例えば、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズなど)を採用することができる。半導体レンズは、前記光学フィルタ膜を備えているのが好ましい。
以上説明した赤外線センサ400は、上述の赤外線吸収層26を有する赤外線検出素子20を備えているので、人体検知センサとして用いる場合に、高感度化を図ることが可能となる。赤外線検出素子20は、実施形態2で説明したものに限らず、実施形態1で説明したものでもよい。
人体検知センサの構成は、赤外線センサ400の構成に限らず、赤外線検出素子20を備えていればよい。