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JP2014139514A - 絶縁材料の劣化度計測方法及び絶縁材料の劣化度計測装置 - Google Patents

絶縁材料の劣化度計測方法及び絶縁材料の劣化度計測装置 Download PDF

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JP2014139514A
JP2014139514A JP2013007960A JP2013007960A JP2014139514A JP 2014139514 A JP2014139514 A JP 2014139514A JP 2013007960 A JP2013007960 A JP 2013007960A JP 2013007960 A JP2013007960 A JP 2013007960A JP 2014139514 A JP2014139514 A JP 2014139514A
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Keiko Maruyama
慶子 丸山
Naoko Hosono
奈穂子 細野
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Meidensha Electric Manufacturing Co Ltd
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Meidensha Electric Manufacturing Co Ltd
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Abstract

【課題】様々な種類及び形状の絶縁材料の劣化度合いを簡便に計測する。
【解決手段】劣化前の絶縁材料及び劣化後の絶縁材料を溶媒に溶解し、それぞれの溶液の濃度と粘度に基づいて固有粘度を算出する。固有粘度の算出は、Solomon‐Ciuta式に基づいて算出する。劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度及び劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に基づいて、劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する。また、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に対する劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の割合を分子量保持率として算出し、この分子量保持率に基づいて劣化後の絶縁材料の劣化度合いを計測する。
【選択図】図2

Description

本発明は、絶縁材料の劣化度合いを計測する劣化度計測方法及び劣化度計測装置に関する。
合成樹脂等の絶縁材料の最大の弱点は劣化であり、ポリマー成形加工前の製造直後の原料の状態でもわずかであるが劣化が進行する。絶縁材料の劣化とは、絶縁材料を構成する分子の主鎖や側鎖が切断されたり架橋されたりする等の理由により、絶縁材料の性能や機能、外観等の特性が低下することを意味する。
絶縁材料の劣化は、応力、温度、酸素、水分、紫外線、放射線、オゾン、薬品等の種々の要因が関与して、促進される。例えば、酸素の存在下では絶縁材料の熱劣化が進行する。また、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の分子骨格にエステル結合を有する絶縁材料は、水分の存在下で加水分解が進行される。
絶縁材料の劣化評価は、絶縁材料の種類が多様であること、使用条件が異なること、寿命の判定基準が多様であること等の理由により現在でも困難であり、絶縁材料の劣化評価に関する明確な規定がない。
絶縁材料の使用状況は世界でも増加傾向であるため、各種材料毎に劣化評価が行えなければ、使用条件や使用状態により不具合や事故を起こすおそれがある。どの程度の環境や負荷で絶縁材料が劣化するのかを予測することができれば、事故の発生や交換時期に対して先んじて対応することができる。しかし、絶縁材料を使用した製品の使用環境が不明なため、材料メーカは絶縁材料の劣化に対してのデータはほとんど持っていない。
このように、絶縁材料を使用した製品の信頼性を高めるためには絶縁材料の劣化を診断する技術が必要であるが、簡便に絶縁材料の劣化を評価できる技術はなかった。
絶縁材料の劣化度合いの診断方法として、初期状態の絶縁材料と所定時間劣化後の絶縁材料の引張強度を比較して絶縁材料の劣化度合いを診断する方法がある(例えば、特許文献1)。
また、絶縁材料の劣化度合いを診断する他の診断方法として、絶縁材料の伸びに基づいて絶縁材料の寿命判断を行う方法がある(例えば、特許文献2)。特許文献2では、ケーブル(絶縁材料)を寿命となる値(例えば、伸びが初期状態の50%となる状態)まで劣化させ、その伸びの値における加速温度と試験期間との関係式であるアレニウスプロットを作成し、このアレニウスプロットに基づいてケーブルの寿命判断を行っている。この診断方法で行われる環境試験では、実機の使用環境条件相当の加速試験が実施される。この加速試験の加速条件は、ケーブルの活性化エネルギーと運転期間とに基づいて設定される。この活性化エネルギーの算出には、少なくとも加速温度の異なる3条件でケーブルを熱劣化させる必要がある。
このように、絶縁材料の劣化度合いの診断方法としては、絶縁材料を種々の恒温恒湿条件で加速劣化させ絶縁材料の引張強度や破断する伸び等の時間変化を測定し、所定のしきい値(例えば、引張強度や破断する伸びが初期値の50%に低下する時間(半減期)等)を絶縁材料の寿命としている。また、これらの加速劣化の測定結果を温度の逆数に対してプロットするアレニウスプロットを行い、実際の自然環境下で劣化した絶縁材料の引張強度等の測定を行い、アレニウスプロットの結果と比較することにより、劣化した絶縁材料の劣化度合いを判定している。
なお、絶縁材料の劣化度合いを診断する他の診断方法としては、絶縁材料の表面の絶縁抵抗の測定値を劣化度合いの指標とする診断方法や、絶縁材料が劣化度合いに応じて変色する場合には、絶縁材料の変色の度合いを劣化度合いの指標とする診断方法もある。
特開平6−308000号公報 特開2001−255262号公報
しかし、引張強度や破断する伸び等機械的な測定のためには、比較的大きな試験片を採取しなくてはならない。つまり、実際に使用される絶縁材料は、試験片が採取できるほどの大きさや形状を有している必要があり、広く適用することは困難となるおそれがある。
また、紫外線等の光を要因として劣化が促進する絶縁材料の劣化は、熱劣化や加水分解による劣化とは異なり紫外線が当たった表面の劣化が特に促進される。その結果、紫外線が当たった絶縁材料の表面から深さ方向に劣化度合いが異なる場合があり、この場合、試験片を採取して機械的な強度等を測定しても、正しく劣化度合いを評価できないおそれがある。
上記事情に鑑み、本発明は、絶縁材料の劣化度合いの計測方法または計測装置において、計測対象となる絶縁材料の範囲を広げることに貢献する技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の絶縁材料の劣化度計測方法は、絶縁材料の劣化度合いを計測する方法であって、初期状態の絶縁材料を溶媒に溶解し、この溶液の粘度を計測し、所定時間劣化後の絶縁材料を溶媒に溶解し、この溶液の粘度を計測し、前記初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の粘度と、前記劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度に基づいて、前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定することを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の絶縁材料の劣化度計測装置は、初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の固有粘度を保存する手段と、所定時間劣化後の前記絶縁材料を溶解した溶液の粘度を計測する手段と、前記初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の固有粘度と、前記劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度に基づいて算出される固有粘度とに基づいて、前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する手段と、を有することを特徴としている。
以上の発明によれば、絶縁材料の劣化度合いを計測する絶縁材料の劣化度計測方法または劣化度計測装置において、計測対象となる絶縁材料の範囲を広げることに貢献することができる。
試料を採取する試験片の模式図である。 本発明の実施例1で行った絶縁材料の劣化度計測方法を説明するフロー図(溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用いた場合)である。 本発明の実施例1で行った絶縁材料の劣化度計測方法を説明するフロー図(溶媒にトルエンを用いた場合)である。 落体式自動マイクロ粘度計の測定原理を説明する説明図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、PC+PBTの劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、PC+PBTの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、層状に採取したPC+PBT各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したPC各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)PCの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したバイオPC各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)バイオPCの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例1の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したPPE各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)PPEの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、PC+PBTの劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、PC+PBTの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、層状に採取したPC+PBT各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したPC各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)PCの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したバイオPC各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)バイオPCの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したPC+PET各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)PC+PETの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例2の計測結果を示す図であり、(a)層状に採取したPPE各層の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す特性図、(b)PPEの劣化時間に対する引張強度、伸び及び分子量保持率の変化を示す特性図である。 実施例3の計測結果を示す図であり、劣化条件の異なるPEフィルムの分子量保持率及びPEフィルムの引張強度の計測結果を示す図である。 本発明の実施形態に係る絶縁材料の劣化度計測装置の概略図である。
本発明の絶縁材料の劣化度計測方法及び劣化度計測装置について、図を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る劣化度計測方法及び劣化度計測装置は、劣化前の絶縁材料(初期状態の絶縁材料)と劣化後の絶縁材料をそれぞれ溶媒に溶解し、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度と劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度をそれぞれ算出し、算出された固有粘度に基づいて、絶縁材料の劣化度合いを計測するものである。なお、ここでいう劣化前の絶縁材料とは、劣化後の絶縁材料の劣化度合いの進行具合を判断する基準となる絶縁材料のことを示す。
また、絶縁材料の劣化度合いの計測において、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に対する劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の比率を分子量保持率とし、この分子量保持率を絶縁材料の劣化度合いの指標とすることを特徴としている。
絶縁材料を溶解する溶媒は、絶縁材料を溶解できるものを適宜選択して用いればよく、例えば、ギ酸、硫酸、m−クレゾール、フェノール、テトラクロロエタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、デカハイドロナフタレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロメタン、塩化メチレン、トリクロロメタン、クロロフェノール、トルエン、ヘキサフルオロイソプロパノール等の溶媒が単独若しくは組み合わせて用いられる。混合溶媒としては、例えば、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒やフェノールとジクロロベンゼンの混合溶媒等が用いられる。
ここで、絶縁材料の固有粘度[η](極限粘度とも呼ばれる)について説明する。固有粘度[η]は、溶液中に分散する溶質(絶縁材料)の粒径や分子量と関係付けることができる量である。
固有粘度[η]は、無限希釈溶液での(比粘度ηsp)/(溶液の濃度c)の値である。したがって、ηsp/cをcに対してプロットしてcを0へ外挿した値(外挿値)として求めることができる。比粘度ηspは、溶媒に溶質を溶かしたことによる溶液の粘度の増加分に相当し、絶縁材料を溶媒に溶かした溶液の粘度ηと溶媒の粘度η0との比である相対粘度ηrel(=η/η0)から1を引いた値である。すなわち、比粘度ηspは、式(1)で示される。
ηsp=ηrel−1=η/η0−1=(η−η0)/η0 …(1)
なお、溶液の濃度と粘度に基づいて固有粘度を求める式が種々提案されている。例えば、式(2)に示すSolomon−Ciutaの式があり、固有粘度[η]は、溶液の濃度c、比粘度ηsp及び相対粘度ηrelの関数で表される。このように、1点の溶液の濃度で粘度を測定し、この溶液の濃度と粘度とに基づいて固有粘度を算出する簡便な方法も提案されている。
また、絶縁材料の固有粘度[η]と絶縁材料の分子量Mとの関係には、式(3)に示すMark−Houwink−Sakuradaの関係式が成り立つ。式(3)において、K及びaは、絶縁材料の種類、溶媒の種類によって定まる定数である。したがって、固有粘度[η]に基づいて絶縁材料の分子量(粘度平均分子量)を求めることができる。
[η]=KMa …(3)
このように、固有粘度[η]と絶縁材料の分子量Mには一定の関係性があり、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に対する劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の比率を求めることは、劣化前の絶縁材料の分子量と劣化後の絶縁材料の分子量の比を求めることに他ならない。
すなわち、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の測定結果を分子量保持率100%として、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に対する劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の割合を分子量保持率として算出し、この分子量保持率を絶縁材料の劣化度合いの指標とすることができる。
その結果、Mark−Houwink−Sakuradaの関係式において絶縁材料と溶媒に固有な定数であるKとaを、それぞれの絶縁材料に対して、予め複雑な測定や算出作業を通じて求めておかなくても、劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度と劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の比率を求めるだけで、絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明の実施形態に係る絶縁材料の劣化度計測方法及び劣化度計測装置について詳細に説明する。
[実施例1]
実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法では、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの混合樹脂(以下、PC+PBTとする)で形成された試験片を恒温恒湿法で加速劣化させ、劣化後のPC+PBTの劣化度合いを測定した。劣化度合いの測定は、試験片を溶解した溶液の粘度測定に基づいて行った。
粘度測定は、アントンパール ジャパン製の粘度測定機(型番:自動マイクロ粘度計 AMVn)を用い、加速劣化試験には、ISUZU製の恒温恒湿試験機(型番:μ SERIES 水晶)を用いた。また、引張試験及び伸び試験は、インストロン ジャパン製の引張試験機(型番:インストロン 33R4206)を用いた。
試験片は、PC+PBTの他に、ポリカーボネート(以下、PCとする)、植物由来のPC(以下、バイオPCとする)、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの混合樹脂(以下、PC+PETとする)、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEとする)で形成された試験片についても同様に試験を行った。
図1に示すように、試験片の形状は、本発明の実施例1に係る劣化度診断方法に対する比較試験として引張試験と伸び試験を行うことも考え、JIS規格に規定されているダンベル状(JIS K1113 1号型)とした。
まず、試験片を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿装置中で加速劣化させた。劣化時間は、0、144、270、504、1008、2000時間とし、0時間の試料としては加速劣化前の試験片を用いた。
図2、3を参照して、実施例1の劣化度計測方法について説明する。図2は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いた場合の劣化度計測方法のフロー図である。また、図3は、溶媒としてトルエンを用いた場合の劣化度計測方法のフロー図である。図2に示す劣化度計測方法と図3に示す劣化度計測方法は、試料溶解工程が異なる以外は同じ工程を行うので、同じ工程については同じ符号を付す。
図2、3に示すように、劣化度計測方法は、試料採取工程S1、試料溶解工程S2(試料溶解工程S5)、粘度測定工程S3、劣化度合い判定工程S4を有する。
まず、試料採取工程S1について説明する。試料採取工程S1では、次の手順1から手順4を行うことで試験片から粘度測定用の試料を採取した。
手順1:各試験片の厚みをマイクロメータで3箇所測定し、試験片の厚みを記録した。
手順2:試験片をミニかんな(刃先ダイヤモンド付)または彫刻刀等で0.01g程度削りとり、表面からある程度削ったら、それを薬包紙で包み、粘度測定試料とした。
手順3:試験片を始めの厚みより深さ0.3mm(0.25mm以上〜0.35mm未満)になるようにマイクロメータで測定しながら、やすりで削った。この際、削剥面がなるべく平面になるようにやすりをかけた。なお、試験片を削る深さを0.3mmとしたが、これは、所定のサンプル量(0.01g程度)を削りとることが目的であって、0.3mmに限定されるものではない。しかし、深さが浅すぎては精度良く削り取ることが困難であり、また、深さが深すぎても必要以上にサンプルを採取することになる。また、削り取る面積によっても採取量が左右されることから、0.2〜0.5mmの深さの範囲で削り取るのが好ましい。
手順4:手順1から手順3を繰り返して、試験片の2層目、3層目の試料の採取を行った。
次に、試料溶解工程S2(試料溶解工程S5)について説明する。試験片から採取した試料を溶媒に溶解するにあたり、試験片を構成する材料である絶縁材料を種々の溶媒に溶解させたところ、一番多くの絶縁材料が溶解したのはヘキサフルオロイソプロパノールであった。この溶媒は、用いた絶縁材料のうちPPE以外の絶縁材料を常温で溶解することが可能であった。試験片を溶解させる溶媒を同じ溶媒で統一できれば、測定値の比較や粘度測定装置のブランク測定において利便性を有するので、実施例では、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。そして、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解しなかったPPEはトルエンに溶解させた。PPEは、トルエンに対してもやや加温しないと溶解しないので、トルエンにPPEを加えた後に20分間超音波振動により攪拌し、35℃に設定したアルミバスに15分間静置し、溶液の粘度を測定する直前までアルミバス中に保管した。
なお、試料溶解工程S2(試料溶解工程S5)では、絶縁材料が劣化しすぎていると試料の一部が溶解しないことがある。その際は、溶液の上澄み液の固有粘度を測定し、溶解せず沈殿した試料は、ろ過、乾燥させた後にその重量を秤量し、秤量した重量を採取した試料の重さから引いて溶液の濃度計算を行った。
図2に示すように、試料溶解工程S2では、採取した試料(PC+PBT、0.01g)を5mLメスフラスコに移し、ヘキサフルオロイソプロパノールでメスアップし、0.2wt%の溶液を作成した。そして、常温で24時間放置し、採取した試料を完全に溶解した。一方、図3に示すように、試料溶解工程S5では、PPE(0.01g)を5mLメスフラスコに移した後トルエンでメスアップし、20分間超音波振動により攪拌した。そして、35℃に設定したアルミバスに15分静置し、溶液の粘度を測定する直前までアルミバス中に保管した。
粘度測定工程S3では、落体式自動マイクロ粘度計を用いて、試料が溶解した溶液(以後、溶液という)の粘度を測定した。まず、図4に示す落体式自動マイクロ粘度計のφ1.6mmキャピラリー2に、溶液を約0.4mL採取した。設定温度は、ヘキサフルオロイソプロパノールが溶媒の場合は30℃、トルエンが溶媒の場合は40℃に設定した。
測定温度の違いは粘度に影響するため一定に保った。測定温度は、溶媒の揮発による影響が粘度の測定結果に影響を及ぼさない温度に設定した。設定温度が低い方が、溶媒の揮発の影響を低減することができる。また、設定温度が高い方が粘度が小さくなり、ボール3が転がる速度が速く測定時間を短縮することができる。ゆえに、測定サンプルの溶解具合によっては室温で測定を行うこともできる。
キャピラリー2の傾斜角度は、30、35、40、45、50、55、60、65、70°に設定し、それぞれのキャピラリー2の傾斜角度でボール3の落下時間を測定した。落体式自動マイクロ粘度計では、少なくとも4点のキャピラリー2の角度でボール3の落下時間の測定を行い、この測定に基づいて粘度が算出される。よって、キャピラリー2の傾斜角度は、実施例に限定されるものではなく、適宜設定したキャピラリー2の傾斜角度毎にボール3の落下時間を計測し、この落下時間に基づいて溶液の粘度を算出すればよい。例えば、キャピラリー2の傾斜角度は、1つの角度の傾斜による測定時間が10〜45秒程度になるように設定するとよい。なお、キャピラリー2の傾斜角度を10°〜20°と設定すると、ボール3の落下時間の測定に時間がかかり過ぎるおそれがある。また、キャピラリー2の傾斜角度が80°〜90°程度となると、ボール3が転がっているのではなく、滑って移動するおそれがあり、正確な粘度の測定結果が得られないおそれが生じる。ゆえに、キャピラリー2の傾斜角度は、30°〜70°に設定することが好ましい。
劣化度合い判定工程S4では、計測された溶液の粘度をSolomon−Ciutaの式に代入し、固有粘度[η]を算出した。また、劣化前の試料を溶解した溶液の固有粘度に対する劣化後の試料を溶解した溶液の固有粘度の比率を算出することで、劣化後の試料の分子量保持率を算出した。
図5に、PC+PBT(劣化表面から1層目の採取試料)の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す。図5に示すように、劣化時間の経過にしたがって分子量保持率が低下することが確認された。
また、図6に、PC+PBTの劣化時間に対する引張試験の測定結果、伸び試験の測定結果及び分子量保持率(劣化表面から1層目の採取試料)の測定結果を示す。試験片の引張試験と伸び試験は、試験片の分子量保持率の低下と試験片の劣化との関係を確認するために行った。なお、図6において、伸び[mm]と引張強度[MPa]の値を示す縦軸は、目盛が同じで、単位が異なる軸である(他の測定結果を示す図についても同様である)。
図6に示すように、劣化時間の経過にしたがって引張強度が低下することが確認された。図6から明らかなように、分子量保持率が低下すると引張強度も低下した。また、伸び試験の結果では、一部劣化時間の経過にしたがって伸びが上昇する点もあったが、概ね分子量保持率が低下すると試料の伸びも低下した。
図7は、試験片から厚さ方向に層状に試料を採取し、それぞれの試料で劣化度合いを測定した結果である。図7に示すように、試験片から層状に試料を採取することにより、劣化時間の経過にしたがって、試験片の内部のどこまで劣化が進行しているのかを計測することができた。つまり、1層目から3層目の試料の分子量保持率を比較することで、同じ恒温恒湿下での加速劣化した場合でも表面に近い層の方が若干であるが劣化がより進行していることわかった。
実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法でPCの劣化度合いを測定した結果を、図8(a)及び図8(b)に示す。図8(a)に示すように、劣化時間の経過にしたがって分子量保持率が低下することが確認された。なお、PCでは、1層目、2層目、3層目の計測結果で大きな差は確認できなかった。また、図8(b)に示すように、劣化初期段階で、分子量保持率、引張強度及び伸びが減少しているが、いずれの劣化試験でもその後わずかであるが増加し、その後、再び劣化時間にしたがって減少している。これは、絶縁材料がPCの場合においても、分子量保持率の変化に基づいて絶縁材料の劣化度合いを評価できることを示している。
実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法でバイオPCの劣化度合いを測定した結果を、図9(a)及び図9(b)に示す。図9(a)に示すように、劣化時間の経過にしたがって分子量保持率がわずかであるが低下することが確認された。なお、バイオPCでは、1層目、2層目、3層目の計測結果で大きな差は確認できなかった。また、図9(b)に示すように、500時間以降は、劣化時間の経過にしたがって、分子量保持率、引張強度及び伸びがわずかであるが減少している。これは、絶縁材料がバイオPCの場合においても、分子量保持率の変化に基づいて絶縁材料の劣化度合いを評価できることを示している。
実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法でPPEの劣化度合いを測定した結果を、図10(a)及び図10(b)に示す。図10(a)に示すように、実施例1の劣化時間では、PPEはほとんど劣化しなかった。また、図10(b)に示すように、引張強度及び伸びの計測結果もPPEが劣化していないことを示した。つまり、絶縁材料がPPEの場合においても、分子量保持率の変化に基づいて絶縁材料の劣化度合いを評価できることがわかった。
[実施例2]
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法では、絶縁材料で形成された試験片の耐候性試験として紫外線による促進劣化試験を行い、劣化後の試験片が溶解した溶液の固有粘度を測定した。促進耐候性試験機には、スガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメータSX75(XWOM)を用いた。これは湿温度管理された室内の蛍光灯下での経年劣化を想定したためである。
キセノンアークランプ式の促進耐候性試験機を用いて紫外線を試験片に照射して、試験片を加速劣化させた。劣化時間は、0、100、200、500、1000、2000時間とし、0時間の試料としては加速劣化前の試験片を用いた。
試験片は、PC+PBTの他に、PC、バイオPC、PC+PET、PPEで形成された試験片についても同様に試験を行った。
試験片の形状は、実施例1と同様に、JIS規格に規定されているダンベル状(JIS K1113 1号型)とした。
試験片からの粘度測定用の試料の採取方法は、実施例1と同様であり、劣化表面から層状に深さ0.3mm毎に試料を採取した。ただし、実施例2のように試料の表面に紫外線を照射して紫外線劣化させた試験片は、試験片の片面側に紫外線を照射して試験片を劣化させるので、紫外光が照射された面から試料を採取した。
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法は、試験片の劣化促進方法が異なること以外は、実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法と同様の方法で試験片の劣化度合いを評価した。つまり、実施例2の劣化度合い評価方法のフロー図は、図2及び図3に示したものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。また、実施例1に係る絶縁材料の劣化度計測方法と同様に、試験片の分子量保持率が低下したことで、試験片が劣化したことを確認するために、同じ試験片を用いて、引張試験と伸び試験を行った。
図11に、紫外線を照射して促進劣化させたPC+PBT(劣化表面から1層目の採取試料)の劣化時間に対する分子量保持率の変化を示す。図11に示すように、劣化時間の経過にしたがって、分子量保持率が低下することが確認された。
また、図12に、PC+PBTの劣化時間に対する引張試験の測定結果、伸び試験の測定結果及び分子量保持率(劣化表面から1層目の採取試料)の測定結果を示す。図12の結果から、試料の表層が劣化すると、引張試験及び伸び試験の結果も低下するが、引張強度や伸びも分子量保持率の低下と同様に劣化時間に対してある程度劣化した時間以後はほとんど劣化度合いが低下しない結果となった。これは、紫外光による絶縁材料の劣化は、試験片の表面から深い層ではあまり進行しないためであると考えられる。
図13は、試験片から厚さ方向に層状に試料を採取して、それぞれの試料で劣化度合いを測定した結果を示す。図13に示すように、紫外線による促進劣化の場合は、紫外線が直接照射される表面(劣化表面から1層目の採取試料)は、劣化時間とともに分子量保持率が低下し、ある程度の時間が経過すると劣化度合いが飽和するように見える。これに対して、0.3mmより深い2層目と3層目の採取試料は、分子量保持率がほとんど低下しないことが確認された。これらのことから、紫外線による促進劣化では、ごく表層は劣化時間とともに分子量保持率も低下するが、表面からある程度の深さでは、紫外線による劣化はあまり促進されないものと推定できる。図13の結果から明らかなように、試料を層状に採取し、それぞれの試料において固有粘度を測定することで、劣化試料表面からどこの深さまで劣化が進行しているのかも推定することができる。すなわち、絶縁材料の表面から粘度測定用試料を層状に採取することで、絶縁材料の表面からの劣化の進行度合いも確認することができる。
なお、紫外線による促進劣化を行うことで絶縁材料の表面の色が変色することが確認された。そこで、予め劣化前と劣化後の試料の劣化表面の色と、その色における分子量保持率との関係を求めておくことにより絶縁材料の色の変化にしきい値を設定し、劣化表面の色から絶縁材料の劣化の進行度合いや劣化表面から絶縁材料の試料内部の劣化進行速度を推定することもできる。
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法でPCの劣化度合いを測定した結果を、図14(a)及び図14(b)に示す。図14(a)に示すように、絶縁材料がPCの場合であっても絶縁材料の深さ方向の劣化度合いのを把握することができた。また、図14(b)に示すように、劣化時間の経過に伴う分子量保持率と伸びの測定値は、相関関係があるが、引張強度は、劣化時間の経過に伴ってほとんど変化していない。これは、絶縁材料の表面の劣化度合いが絶縁材料の引張強度に与える影響が少ないためであると考えられる。
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法でバイオPCの劣化度合いを測定した結果を、図15(a)及び図15(b)に示す。図15(a)に示すように、絶縁材料がバイオPCの場合、劣化時間の経過にしたがって1層目の劣化が進むものの、2層目や3層目の劣化度合いは比較的緩やかに進むことがわかる。また、図15(b)に示すように、劣化時間の経過にしたがって、分子量保持率、引張強度及び伸びが減少している。これは、絶縁材料がバイオPCの場合においても、分子量保持率の変化に基づいて絶縁材料の劣化度合いを評価できることを示している。
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法でPC+PETの劣化度合いを測定した結果を、図16(a)及び図16(b)に示す。図16(a)に示すように、絶縁材料がPC+PETの場合においても絶縁材料の深さ方向の劣化度合いを把握することができた。また、図16(b)に示すように、劣化時間の経過にしたがって、分子量保持率、引張強度及び伸びが減少している。特に、劣化時間の経過に伴う分子量保持率と引張試験の低下度合いに相関関係が見られた。これは、絶縁材料がPC+PETの場合においても、分子量保持率の変化に基づいて絶縁材料の劣化度合いを評価できることを示している。
実施例2に係る絶縁材料の劣化度計測方法でPPEの劣化度合いを測定した結果を、図17(a)及び図17(b)に示す。図17(a)に示すように、絶縁材料がPPEの場合、劣化時間の経過にしたがって1層目の劣化が進むものの、2層目や3層目の劣化度合いは比較的緩やかに進むことがわかる。また、図17(b)に示すように、劣化時間の経過にしたがって、1層目の分子量保持率は低下するものの、引張強度及び伸びはほとんど減少していない。これは、絶縁材料がPPEの場合、絶縁材料の表面の劣化が引張強度や伸びの測定値に与える影響が少ないことを示している。
[実施例3]
実施例3に係る絶縁材料の劣化度計測方法では、絶縁材料の試料として耐熱ポリエステルのフィルム(以下、PEフィルムとする)の劣化度合いを計測した。加速劣化条件は、140℃で5時間、200℃で5時間、200℃長期保存(200℃で約80時間)恒温槽中に保管し、PEフィルムを加速劣化させた。また、未使用のPEフィルムを劣化前の試料とした。
試料の劣化度合い計測方法は、実施例1と同様に、図3に示したトルエンを溶媒として用いた劣化度合い計測方法と同様の方法により行った。具体的に説明すると、試料溶解工程S5で、PEフィルムを5mLのメスフラスコに0.01g採取し、トルエンでメスアップした後、20分間超音波振動により攪拌した。その後、35℃に設定したアルミバスに15分間静置し、溶液の粘度を測定する直前までアルミバス中に保管した。
なお、試料溶解工程S5において、200℃長期保存(200℃で約80時間)保管したPEフィルムについては劣化による分子構造の変化で、PEフィルムが溶媒に完全には溶解しなかった。そこで、溶液の上澄み液の固有粘度を測定し、溶解せず沈殿した試料は、ろ過、乾燥させた後にその重量を秤量し、秤量した重量を採取した重さから引いて溶液の濃度計算を行った。
試料溶解工程S5により得られた溶液に対して、粘度測定工程S3、劣化度合い判定工程S4を行い、劣化後のPEフィルムの分子量保持率を算出し、劣化後のPEフィルムの劣化度合いを計測した。そして、実施例1と同様に、分子量保持率が低下したことで、PEフィルムが劣化したことを確認するために、同じ試験片を用いて、引張強度試験を行った。
図18は、それぞれのPEフィルムの加速劣化条件における、分子量保持率と引張強度との関係を測定した結果を示す。劣化温度が上昇する(若しくは、劣化時間が長くなる)とともにPEフィルムの分子量保持率も引張強度も低下することが確認された。なお、200℃長期保存(200℃で約80時間)したPEフィルムは劣化が著しく、引張試験を行うことができなかった。
以上、具体的な実施例を挙げて説明したように、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法によれば、絶縁材料を溶解した溶液の粘度に基づいて当該溶液の固有粘度を算出し、この固有粘度に基づいて、絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。その結果、熱劣化や加水分解等の劣化のように絶縁材料全体が劣化する場合は勿論のこと、紫外線劣化のように絶縁材料の表面から劣化する場合も、局部的な絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。
また、劣化前の絶縁材料を溶解させた溶液の固有粘度に対する劣化後の絶縁材料を溶解させた固有粘度の比率(分子量保持率)を絶縁材料の劣化度合いの指標とすることで、容易に絶縁材料の劣化度合いを判定することができる。
また、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法によれば、溶媒に溶解可能な多種類の絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。
また、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法によれば、例えば、0.01g程度の少量の試料を採取することで絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。よって、引張試験(または、伸び試験)を行うことができない絶縁材料に適用することができる。例えば、引張試験用の試験片を採取できないような小型のプラスチック製品や、特に応力の集中する微小部の劣化度合い等も計測することができる。つまり、プラスチック製品の任意の場所の劣化度合いを計測することができる。さらに、劣化度を計測する試料を採取する部位を選択する自由度が高いので、絶縁材料の成型時の熱や、残留水分による成形時の熱分解、加水分解等の劣化が特徴的な部位の劣化度合いの判定も、それぞれ劣化が特徴的なプラスチック製品の部位から試料を採取することにより判定可能となる。
プラスチック製品の成形時には当然のことながら絶縁材料を金型へ充填するために、絶縁材料を加熱する。絶縁材料の乾燥不足や長時間の加熱によって成形時に絶縁材料が劣化と同様の分解を起こす場合がある。本発明の絶縁材料の劣化計測方法は、このような成形時の絶縁材料の分解の確認、特に金型の流入口(ゲート)から最も遠い部分であって、ねじ取付け部等応力集中し易い部分の強度(劣化度合い)を判定することもできる。
また、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法によれば、予め分子量保持率と引張試験や伸び試験との関係を求めておくことにより、引張試験や伸び試験用の試験片を採取できないような小型のプラスチック製品であっても、分子量保持率の測定結果から引張試験や伸び試験による劣化の計測を推定することができる。つまり、分子量保持率の低下と引張強度(または、伸び)の低下に基づいて分子量保持率にしきい値を設定し、分子量保持率に基づいて絶縁材料の寿命を判断することができる。
また、濃度1点法であるSolomon−Ciutaの式を採用すると、試料が少量、短時間で固有粘度を計測して劣化度合いを算出できるので、1回の劣化度合いの測定を30〜45分という短時間で計測できる。
また、絶縁材料を溶解する溶媒に、ヘキサフルオロイソプロパノールやトルエンを用いると、溶媒を安全に取り扱うことができる常温から40℃で固有粘度を計測することができる。特に、ヘキサフルオロイソプロパノールは、溶解することができる絶縁材料の種類が多いので、測定値の比較やブランク測定が容易になる。
また、絶縁材料の表面から0.2〜0.5mmの深さ毎に複数回試料を採取すると、絶縁材料の深さ方向の劣化度合いを計測することができる。例えば、紫外線照射による劣化のように、絶縁材料の表面が特に劣化する場合において、絶縁材料の表面から深さ方向の劣化度合いの分布を計測することができる。
また、予め劣化前の試料と加速劣化後の試料の表面の色と、当該色の変化に対する分子量保持率の変化との関係を求めておくことにより、劣化表面の色から絶縁材料の劣化の進行度合いを推定することができる。すなわち、絶縁材料の色の変化に基づいて、劣化表面から絶縁材料の試料内部の劣化の進行速度を計測することができる。特に、本発明の劣化度計測方法は、絶縁材料の表面近傍の劣化度合いを評価することができるので、絶縁材料の劣化度合いと絶縁材料の色の変化との相関性を精度良く求めることができる。
また、本発明の劣化度計測装置は、本発明の劣化度計測方法を利用して、絶縁材料の劣化度合いを計測することができる。例えば、図19に示すように、保存手段4と、粘度計測手段5と、劣化度計測手段6と、を有する劣化度計測装置7を用いることで、絶縁材料の劣化度合いを容易に計測することができる。
劣化度計測装置7の各手段について具体的に説明すると、保存手段4は、予め所定の溶媒に劣化前の絶縁材料を溶解した溶液の濃度と粘度との関係若しくは劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度を保存する手段である。粘度計測手段5は、劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の粘度を計測する手段である。劣化度計測手段6は、粘度計測手段5で計測された劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の粘度とこの溶液の濃度に基づいて、劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度を算出し、この固有粘度と保存手段4に保存されたデータにより算出される劣化前の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度とに基づいて、劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する手段である。
このように、本発明の劣化度計測装置7は、予め保存手段4に劣化前の絶縁材料を溶解した溶液の固有粘度(若しくは、固有粘度を算出することができる計測値)を保存することで、劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度と濃度に基づいて、簡単に劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定することができる。
以上、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法及び劣化度計測装置について、具体例を示して詳細に説明したが、本発明の絶縁材料の劣化度計測方法及び劣化度計測装置は、上述した実施形態に限らず、本発明の特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、そのように変更された形態も本発明の技術的範囲に属する。
例えば、本発明の絶縁材料は、溶媒に溶解できる絶縁材料であれば適宜適用することができるので、劣化度合いを判定する絶縁材料は実施形態に限定されるものでなく、様々な絶縁材料の劣化度合いの計測に適用することができる。そして、絶縁材料を溶解する溶媒も、絶縁材料に応じて絶縁材料を溶解することができる溶媒が適宜選択される。
また、絶縁材料を溶解した溶液の濃度及び粘度に基づいて固有粘度を算出しているが、絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の算出方法は、Solomon‐Ciuta式に基づいて算出することに限定されるものではなく、他の固有粘度の算出方法を用いてもよい。
また、分子量保持率に基づいて絶縁材料の劣化度合いを判定することで、劣化度合いの計測が容易になるが、直接溶液の固有粘度の値に基づいて絶縁材料の劣化度合いを判定してもよい。
また、絶縁材料を溶解した溶液の粘度は、適宜周知の粘度計測方法を用いた測定することができ、周知の粘度計測方法を用いた計測した粘度に基づいて絶縁材料の評価を行うことができる。しかしながら、溶液の粘度の計測方法に落体式の粘度計測方法を用いることで、微量の試料量で計測を行うことができることや高精度で再現性の良い計測を行うことができること、密閉されていて空気との接触を防止できること、正確な温度制御ができること等の利点がある。特に、落体式の粘度計測方法を用いることで、粘度計測用の試料量が微量で済み、その結果として、層状に試料を採取して、試料の劣化度合いの評価を行うことができる。
1…試験片
2…キャピラリー
3…ボール
4…保存手段
5…粘度計測手段
6…劣化度計測手段
7…劣化度計測装置

Claims (9)

  1. 絶縁材料の劣化度合いを計測する方法であって、
    初期状態の絶縁材料を溶媒に溶解し、この溶液の粘度を計測し、
    所定時間劣化後の絶縁材料を溶媒に溶解し、この溶液の粘度を計測し、
    前記初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の粘度と、前記劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度に基づいて、前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する
    ことを特徴とする絶縁材料の劣化度計測方法。
  2. 前記溶液の粘度の測定結果に基づいて、当該溶液の固有粘度を算出し、
    前記初期状態の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度と、前記劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に基づいて、前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  3. 前記初期状態の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度に対する前記劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の固有粘度の割合を分子量保持率として算出し、
    当該分子量保持率に基づいて前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する
    ことを特徴とする請求項2に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  4. 前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いの判定を、当該絶縁材料の表面から0.2〜0.5mmの深さ毎に行う
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  5. 前記粘度は、落体式粘度法により計測し、
    前記落体式粘度法において、前記溶液を保持するキャピラリーの傾斜角度を30°から70°の範囲とする
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  6. 前記固有粘度は、Solomon‐Ciutaの式に基づいて算出する
    ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  7. 前記溶媒は、ヘキサフルオロイソプロパノールであり、
    前記絶縁材料がヘキサフルオロイソプロパノールに溶解しない場合は、前記溶媒はトルエンである
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  8. 前記劣化後の絶縁材料が溶解した溶液の粘度に基づいて判定される劣化度合いと、前記劣化後の絶縁材料の色とを対応付け、
    前記絶縁材料の色に基づいて絶縁材料の劣化度合いを判定する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の絶縁材料の劣化度計測方法。
  9. 初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の固有粘度を保存する保存手段と、
    所定時間劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度を計測する手段と、
    前記初期状態の絶縁材料を溶解した溶液の固有粘度と、前記劣化後の絶縁材料を溶解した溶液の粘度に基づいて算出される固有粘度とに基づいて、前記劣化後の絶縁材料の劣化度合いを判定する手段と、を有する
    ことを特徴とする絶縁材料の劣化度計測装置。
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