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JP2014064472A - グルタチオンの製造方法 - Google Patents

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JP2014064472A
JP2014064472A JP2012209750A JP2012209750A JP2014064472A JP 2014064472 A JP2014064472 A JP 2014064472A JP 2012209750 A JP2012209750 A JP 2012209750A JP 2012209750 A JP2012209750 A JP 2012209750A JP 2014064472 A JP2014064472 A JP 2014064472A
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Kiyotaka Hara
清敬 原
Akihiko Kondo
昭彦 近藤
Akira Iwasaki
晃 岩崎
Yuichi Iwamoto
裕一 岩本
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Kaneka Corp
Kobe University NUC
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Kaneka Corp
Kobe University NUC
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Abstract

【課題】グルタチオンの生産を向上させるように遺伝子が改変されている酵母を利用した、グルタチオンの製造法を提供する。
【解決手段】グルタチオンペルオキシダーゼ、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素の発現が強化され、更にグルタチオンレダクターゼの発現が抑制された酵母を培養することを特徴とする、グルタチオンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬品などの用途に用いられるグルタチオンの高生産株、及び該生産株を用いた生産方法に関するものである。
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸から成るペプチドで、人体だけでなく、他の動物や植物、微生物などの多くの生体内に存在し、活性酸素の消去作用、解毒作用、アミノ酸の代謝など、生体にとって重要な化合物である。そのため医薬品、食品、化粧品産業で注目されている。また、近年、酸化型グルタチオンに植物の生長を促進する効果があることなどの知見も得られるなど、農業を含めたさまざまな分野での用途が期待されている。
またグルタチオンは、現在工業的には、酵母を用いた発酵法により生産されている。グルタチオンは酵母の細胞内に蓄積されるため、実際には、酵母を培養し、その菌体中からグルタチオンを抽出する方法が広く用いられている。それ故に、これまで、グルタチオン生産に使用する酵母への突然変異処理(特許文献1〜3)やグルタチオンの合成に関与する酵素を遺伝子組換えにより導入すること(特許文献4〜8)、また、培地中にグルタチオンを構成する3種のアミノ酸であるL−グルタミン酸、L−システイン、グリシンを添加すること(特許文献9〜12)により、培養菌体内のグルタチオン含量を向上させ生産性を改善させる試みがなされてきた。
しかしながら、更に工業的に安価なグルタチオンの製造には、より効率的にグルタチンを生産する酵母の取得が必要である。
特開昭59−151894号公報 特開平03−18872号公報 特開平10−191963号公報 特開昭61−52299号公報 特開昭62−275685号公報 特開昭63−129985号公報 特開昭64−51098号公報 特開平4−179484号公報 特開昭47−16990号公報 特開昭48−92579号公報 特開昭51−139686号公報 特開昭53−94089号公報
本発明は、上記の技術背景の下に、グルタチオンの生産を向上させるように遺伝子が改変されている酵母、及び該酵母を利用したグルタチオンの製造法を提供することを目的としている。
上述の課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、酵母においてグルタチオンペルオキシダーゼの発現を強化することにより、酸化型グルタチオンを含めたグルタチオンの菌体内の含量が増加することを見出した。また、グルタチオンペルオキシダーゼの発現が強化された株において、グルタチオンの生産に関与するγ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH1)および/またはグルタチオン合成酵素(GSH2)の発現を強化させたところ、驚くべきことにグルタチオン生産に関して相乗的な増加が確認され、菌体内のグルタチオン含量(酸化型グルタチオン+還元型グルタチオン)が大幅に増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、グルタチオンペルオキシダーゼの発現が強化された株において、グルタチオンレダクターゼの発現を抑制させることで、グルタチオンの生産を改善できることを確認した。
即ち、本発明は、グルタチオンペルオキシダーゼの発現が強化された酵母を培養することを特徴とするグルタチオンの製造方法に関する。
グルタチオンペルオキシダーゼが、下記(a)〜(f):
(a)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
(c)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質、
(d)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(e)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、および、
(f)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠矢、挿入および/または付加されたDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
からなる群から選択されることが好ましい。
酵母が、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素の発現が強化された酵母であることが好ましい。
γ−グルタミルシステイン合成酵素がGSH1でコードされる酵素であることが好ましい。
グルタチオン合成酵素がGSH2でコードされる酵素であることが好ましい。
酵母が、グルタチオンレダクターゼの発現が抑制された酵母であることが好ましい。
グルタチオンレダクターゼがGLR1でコードされる酵素であることが好ましい。
酵母が、サッカロマイセス属、キャンディダ属、またはピキア属の酵母であることが好ましい。
また、本発明は、グルタチオンペルオキシダーゼ、並びに、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素の発現が強化された酵母に関する。
グルタチオンレダクターゼの発現が抑制されていることが好ましい。
本発明の方法によれば、グルタチオン生産効率を改善することができ、さらに、生産される総グルタチオン中の、酸化型グルタチオンの割合を増大させることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、グルタチオン産生能を有する微生物の特定のタンパク質の発現が強化、または発現が抑制された変異微生物によるグルタチオンの製造方法である。本発明において、グルタチオン高生産のために発現を強化されるタンパク質は、グルタチオンペルオキシダーゼである。さらに、γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH1)および/またはグルタチオン合成酵素(GSH2)の発現が強化されることが好ましい。また、グルタチオン高生産のためにグルタチオンレダクターゼの発現が抑制されることが好ましい。
タンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する方法は当業者に周知であり、例えば、当該タンパク質をコードする塩基配列からなるDNAをベクターDNAにクローニングした発現ベクターなどを用いて強発現させる方法や、酵母ゲノムに当該遺伝子を組込んでコピー数を増加させること、当該遺伝子のものより強力なプロモーターの制御下に配置すること、当該遺伝子の発現を制御しているプロモーターに突然変異を導入すること等によって行うことができる。
また、エチルメタンスルフォン酸、ニトロソグアニジン、或いはUV照射、放射線照射等、通常変異操作に使われる変異誘発処理によっても当該タンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する酵母を得ることは可能である。
本明細書において、タンパク質の発現が抑制されるとは、当該タンパク質をコードする遺伝子をゲノムから欠損させること、当該タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害すること、当該タンパク質の活性を低下させることを含む意味である。
より詳細に、特定のタンパク質をコードする遺伝子を欠損させる方法としては、特に限定されないが、相同組換えにより目的の遺伝子を別の遺伝子に置換する方法(例えば特開2002−209574号参照)、トランスポゾンを用いて目的の遺伝子を破壊する方法(例えば特開2005−328769号参照)、栄養要求性を解除する選択マーカーを利用した目的遺伝子の破壊方法(例えば再表01/014522号参照)などを挙げることができる。また、遺伝子を欠損させる場合には、当該遺伝子の全長を欠損させても良いし、部分的に欠損させてもよい。また、酵素活性ドメイン、制御ドメインへの点突然変異の導入により機能を欠損させてもよい。
また、特定のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する方法としては、特に限定されないが、当該遺伝子の発現を制御しているプロモーターを欠損させる方法、当該遺伝子の発現を制御しているプロモーターを発現誘導型プロモーターに置換する方法、当該遺伝子の発現を制御しているプロモーターに突然変異を導入する方法、RNA干渉を利用して当該遺伝子の転写産物を分解する方法、及びアンチセンスRNAを利用して当該遺伝子の翻訳を阻害する方法を挙げることができる。
さらに、特定のタンパク質の活性を低下させる方法としては、当該タンパク質をコードする遺伝子に変異を導入することにより機能を低下または欠損させることを挙げることができる。また、当該タンパク質に特異的に結合して活性を抑制する機能を有する物質を作用させる方法を挙げることができる。当該物質としては、当該タンパク質の機能を阻害できる抗体や阻害物質を挙げることができる。
タンパク質をコードする遺伝子へ変異を導入する方法は当業者に周知であり、遺伝子操作的手法や、エチルメタンスルフォン酸、ニトロソグアニジン、或いはUV照射、放射線照射等、通常変異操作に使われる変異誘発処理によって行うことができる。
グルタチオンペルオキシダーゼ酵素は、生体内において脂質過酸化物の除去に関与する酵素のひとつである。生物の組織内には様々な原因により脂質過酸化物が生じる。この脂質過酸化物が分解されて生じる活性酵素の増加が、動脈硬化、糖尿病などのいわゆる生活習慣病や、白内障など老化に関わる疾患に関与している。生体内には活性酵素を分解、除去する酵素系が各種存在しているが、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素はその中のひとつであり、式1の反応を触媒する酵素である。
Figure 2014064472
グルタチオンペルオキシダーゼ酵素は活性酸素生成のもととなる脂質過酸化物を還元、除去する働きを有しており、該反応においては水素供与体として還元型グルタチオンを必要とする(渡部烈・平塚明:蛋白質核酸酵素(臨時増刊)−活性酸素・生物での生成、消去、作用の分子機構、33、2949〜2956頁(1988)参照)。
一方、グルタチオンレダクターゼとは、式2の、酸化型グルタチオンをNADPHを利用して還元する反応を触媒する酵素である。
Figure 2014064472
(1)グルタチオンペルオキシダーゼ
本発明におけるグルタチオンペルオキシダーゼは還元型グルタチオンを利用して、例えば過酸化水素や脂質ヒドロペルオキシドを還元し、水やヒドロキシ型脂質を生成する活性を有していれば良く、特に限定されないが、例えば、以下の(a)〜(f):
(a)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
(c)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質、
(d)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(e)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、および、
(f)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠矢、挿入および/または付加されたDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
のいずれかであることが好ましい。
配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、グルタチオンペルオキシダーゼ活性を有する限り上記タンパク質に包含される。
置換、挿入、欠失および/または付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする。
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Met,Cys,Pro,Phe
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser,Thr,Gln,Asn,Trp,Tyr
(第3群:酸性アミノ酸)Glu,Asp
(第4群:塩基性アミノ酸)His,Lys,Arg。
上記の複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらにより好ましくは5個、4個、3個、特に好ましくは2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号1〜3のいずれかに示したアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1〜3のいずれかに示したアミノ酸配列と評価したいアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
グルタチオンペルオキシダーゼ活性を有する限り、配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。また、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、グルタチオンのペルオキシダーゼ活性を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
配列表4〜6のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)」等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAを挙げることができる。好ましくは65℃で1倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、さらに好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、最も好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、ハイブリダイゼーション条件はこれらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号4〜6のいずれかに示されるDNAとの配列同一性が70%以上、好ましくは74%以上、より好ましくは79%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上のDNAを挙げることができる。
DNAの配列同一性(%)とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
DNAの配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P.(1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、および、the.e.xPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
ここで、配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠矢、挿入および/または付加されたDNAとは、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc.,1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができる。
置換、挿入、欠失および/または付加により改変された塩基配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種類以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
上記の記載の複数個の塩基とは例えば150個、好ましくは100個、より好ましくは50個、さらに好ましくは20個、さらにより好ましくは10個、5個、4 個、3個、または2個以下の塩基、を意味する。
本発明におけるグルタチオンペルオキシダーゼとしては、上記タンパク質のうち、配列番号1で示されるグルタチオンペルオキシダーゼ1(GPX1)、配列番号2で示されるグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)、又は配列番号3で示されるグルタチオンペルオキシダーゼ3(GPX3)が好ましい。これらの酵素は非特許文献(J.Biochem.Vol. 274, pp. 27002−27009)に記載されている。
(2)γ−グルタミルシステイン合成酵素
本発明におけるγ−グルタミルシステイン合成酵素としては、
[a]配列表の配列番号7に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
[b]配列表の配列番号7に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつγ−グルタミルシステインシンターゼ活性を有するタンパク質、および
[c]配列表の配列番号7に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、かつγ−グルタミルシステインシンターゼ活性を有するタンパク質、を挙げることができる。
上記において、1以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつγ−グルタミルシステインシンターゼ活性を有するタンパク質は、上記(1)と同様の方法によって得られ、同様の数のアミノ酸残基が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。欠失、置換または付加が許容されるアミノ酸残基の位置、種類などは、上記(1)と同様である。
また、γ−グルタミルシステイン合成酵素としては、配列番号7で表されるアミノ酸配列との配列同一性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつγ−グルタミルシステインシンターゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、上記(1)と同義である。
配列番号7で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質が、γ−グルタミルシステインシンターゼ活性を有するタンパク質であることを確認する手段としては、例えばDNA組換え法を用いて活性を確認したいタンパク質を発現する形質転換体を作製し、該形質転換体を用いて該タンパク質を製造した後、該タンパク質、ならびにL−グルタミン酸およびL−システインを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にγ−グルタミルシステインが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法を挙げることができる。
本発明におけるγ−グルタミルシステイン合成酵素としては、上記タンパク質のうち、配列番号7で示されるGSH1が好ましい。
(3)グルタチオン合成酵素
本発明におけるグルタチオン合成酵素としては、
[a]配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
[b]配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつグルタチオンシンターゼ活性を有するタンパク質、および
[c]配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、かつグルタチオンシンターゼ活性を有するタンパク質、を挙げることができる。
上記において、1以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタチオンシンターゼ活性を有するタンパク質は、上記(1)と同様の方法によって得られ、同様の数のアミノ酸残基が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。欠失、置換または付加が許容されるアミノ酸残基の位置、種類などは、上記(1)と同様である。
また、グルタチオン合成酵素としては、配列番号8で表されるアミノ酸配列との配列同一性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつグルタチオンシンターゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、上記(1)と同義である。
配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質が、グルタチオンシンターゼ活性を有するタンパク質であることを確認する手段としては、例えばDNA組換え法を用いて活性を確認したいタンパク質を発現する形質転換体を作製し、該形質転換体を用いて該タンパク質を製造した後、該タンパク質、ならびにγ−グルタミルシステインおよびグリシンを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にグルタチオンが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法を挙げることができる。
本発明におけるグルタチオン合成酵素としては、配列番号8で示されるGSH2が好ましい。
(4)グルタチオンレダクターゼ
本発明におけるグルタチオンレダクターゼとしては、
[a]配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
[b]配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、グルタチオンレダクターゼ活性を有するタンパク質、および
[c]配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、かつグルタチオンレダクターゼ活性を有するタンパク質、を挙げることができる。
上記において、1以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタチオンレダクターゼ活性を有するタンパク質は、上記(1)と同様の方法によって得られ、同様の数のアミノ酸残基が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。欠失、置換または付加が許容されるアミノ酸残基の位置、種類などは、上記(1)と同様である。
また、グルタチオンレダクターゼに関わるタンパク質としては、配列番号9で表されるアミノ酸配列との配列同一性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつグルタチオンレダクターゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、上記(1)と同義である。
配列番号9で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質が、グルタチオンレダクターゼ活性を有するタンパク質であることを確認する手段としては、例えばDNA組換え法を用いて活性を確認したいタンパク質を発現する形質転換体を作製し、該形質転換体を用いて該タンパク質を製造した後、該タンパク質、ならびに酸化型グルタチオン、NADPHを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に還元型グルタチオンまたはNADPが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法を挙げることができる。
本発明におけるグルタチオンレダクターゼとしては、上記タンパク質のうち、配列番号9で示されるGLR1が好ましい。
(5)グルタチオン生産酵母
本発明の酵母は、グルタチオン生産能を有する酵母であれば、特に制限はなく、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlesbergensis)、サッカロマイセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、サッカロマイセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)などのサッカロマイセス属、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などのキャンディダ属、シゾサッカロマオセス・ポンべ(Schizosaccaromyces pombe)などのシゾサッカロミセス属、トルロプシス・バーサティリス(Toluropsis versatilis)、トルロプシス・ペトロフィラム(Toluropsis petrophilum)などのトルロプシス属、その他(Pichia)属、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属、マイコトルラ(Mycotorula)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ハンゼニュラ(Hansenula)属、エンドマイセス(Endomyces)属などの酵母が挙げられる。
中でも、サッカロマイセス属、キャンディダ属、またはピキア属の酵母が好ましく、サッカロマイセス属のサッカロマイセス・セレビシエ、キャンディダ属のキャンディダ・ユーティリスがより好ましい。
(6)グルタチオンの製造方法
本発明のグルタチオンの製造方法において、酵母の培養は通常の微生物の培養と同様に行えばよい。すなわち炭素源、窒素源、無機物その他の栄養等を含有しておれば、合成培地、半合成培地、天然(複合)培地のいずれも使用可能である。
炭素源としてはグルコース、グリセロール、フラクトース、シュクロース、マルトース、マンノース、マニトール、キシロース、ガラクトース、デンプン、デンプン加水分解物液、糖蜜などの種々の炭水化物原料が使用できる。またピルビン酸、酢酸、乳酸などの各種有機酸、アスパラギン酸、アラニンなどの各種アミノ酸類も使用可能である。
窒素源としてはアンモニアあるいは塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種の無機および有機アンモニウム塩類、あるいは尿素その他の窒素含有化合物ならびにペプトン、NZアミン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、フィシュミールあるいはその消化物、脱脂大豆あるいはその消化物や加水分解物などの窒素性有機物質あるいはアスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニンなどの各種アミノ酸が使用可能である。
更に無機物としてはリン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが使用できる。
培養は振とう培養、通気攪拌深部培養などの好気的培養条件下で実施する。培養時pHは、好ましくは3.0〜8.0、より好ましくは4.0〜6.0、最も好ましくは5.0に制御される。pH制御の中和剤としてはアンモニア水、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが使用可能である。好気的培養時の培地への空気供給量は、培地1Lに対し、好ましくは0.2L/分以上、より好ましくは0.5L/分以上、さらに好ましくは1L/分以上である。また、総容量2Lのジャーファーメンターを使用して培養する場合、好気的培養条件としては上記通気量に加え、攪拌数は好ましくは200rpm以上、より好ましくは300rpm以上、さらに好ましくは400rpm以上である。また、培養時の温度は、20〜45℃、好ましくは25〜35℃、最も好ましくは28〜32℃である。培地中への初期細胞濃度(仕込み濃度)は酵母の種類、培地組成などにより異なるが、初発濁度(OD600)は好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.02〜1.0、さらに好ましくは0.1〜0.4である。
培養方法として、グルコースなどの上記炭素源に関しては培養初期に一括に仕込んで培養する回分方式、培養期間を通じて少しずつ添加する半回分方式のいずれの方式も適用可能であるが、本発明者らの検討結果によれば、使用する微生物にもよるが、半回分方式の方が増殖速度が向上し、最終菌濃度もより高位となり、菌体内のグルタチオン合成関連酵素の活性も高まるので好ましい。半回分方式でグルコースなどの炭素源の流加速度を決定する指標としては、培養液の濁度、酸素消費速度、二酸化炭素発生速度、pH調整用中和剤の消費量などが有効利用でき、使用する酵母に合わせて適切な指標を選び、その変化に対応させて炭素源の流加速度を変化させることにより、酵母培養の最適化が図れ、最終菌濃度およびグルタチオン合成関連酵素の活性向上、その結果グルタチオンの生産性向上が実現できる。
本発明の製造方法により、高濃度のグルタチオンを菌体内に含有する培養液が得られる。その培養液から濾過や遠心分離操作により菌体を分離することができ、菌体から、熱水抽出、アルカリ抽出法、酵素分解法、自己消化法、物理的な破砕操作などによりグルタチオンを抽出することができる。さらにグルタチオンを精製することによりグルタチオンを高度に含有する分画や、グルタチオン粉末を得ることができる。また、培養液に直接、上記の抽出操作や破砕操作を行うことにより、菌体中のグルタチオンを培地中に抽出し、さらに精製することによりグルタチオンを高度に含有する分画や、グルタチオン粉末を得ることができる。
[製造例1]GPX1の発現を強化した株(GPX1強化株)の作製
Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとして、5’−GGCCGTCGACATGACCACATCTTTTTATGATTTAGAATC−3’(配列番号10)および5’−GGCCGGATCCTCATTTACTTAACAGGCTTTGGATTTCTTGG−3’(配列番号11)を用いてPCR増幅を行い、増幅物をSalIおよびBamHIで消化して、グルタチオンペルオキシダーゼ1(GPX1)遺伝子SalI−BamHI断片を得た。この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK405のSalI−BamHI消化部位に連結し、GPX1発現プラスミドpGK405−GPX1を得た。得られたプラスミドpGK405−GPX1を制限酵素EcoRVで消化した。Saccharomyces cerevisiae YPH499株を宿主酵母株とし、形質転換を行い、形質転換体YPH499/GPX1株を得た。
[製造例2]GPX3の発現を強化した株(GPX3強化株)の作製
Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとして、5’−GGCCGTCGACATGTCAGAATTCTATAAGCTAGC−3’(配列番号12)および5’−GGCCGGATCCCTATTCCACCTCTTTCAAAAGTTC−3’(配列番号13)を用いてPCR増幅を行い、増幅物をSalIおよびBamHIで消化して、グルタチオンペルオキシダーゼ3(GPX3)遺伝子SalI−BamHI断片を得た。この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK405のSalI−BamHI消化部位に連結し、GPX3発現プラスミドpGK405−GPX3を得た。得られたプラスミドpGK405−GPX3を制限酵素EcoRVで消化した。Saccharomyces cerevisiae YPH499株を宿主酵母株とし、形質転換を行い、形質転換体YPH499/GPX3株を得た。
[製造例3]GSH1およびGSH2の発現を強化した株(GSH1強化+GSH2強化株)の作製
非特許文献(Hara KY, Kiriyama K, Inagaki A, Nakayama H, Kondo A. (2012) Improvement of glutathione production by metabolic engineering the sulfate assimilation pathway of Saccharomyces cerevisiae. Appl Microbiol Biotechnol,94(5):1313−9)に記載の方法で、GSH1およびGSH2を強化したSaccharomyces cerevisiae YPH499/GSH1、GSH2株を得た。
[製造例4]GSH1およびGSH2の発現を強化し、さらにGPX1の発現を強化した株(GSH1強化+GSH2強化+GPX1強化株)の作製
製造例1に記載のプラスミドpGK405−GPX1を制限酵素EcoRVで消化した。当該消化物により、製造例3に記載のSaccharomyces cerevisiae YPH499/GSH1、GSH2株を宿主酵母株として形質転換を行い、形質転換体YPH499/GSH1、GSH2、GPX1株を得た。
[製造例5]GSH1およびGSH2の発現を強化し、さらにGPX3の発現を強化した株(GSH1強化+GSH2強化+GPX3強化株)の作製
製造例2に記載のプラスミドpGK405−GPX3を制限酵素EcoRVで消化した。当該消化物により、製造例3に記載のSaccharomyces cerevisiae YPH499/GSH1、GSH2株を宿主酵母株として形質転換を行い、形質転換体YPH499/GSH1、GSH2、GPX3株を得た。
[製造例6]GLR1遺伝子破壊株の作製
Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノム配列のうち、GLR1をコードしている遺伝子配列の上流領域50塩基と相同な配列およびHIS3遺伝子の開始コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA(DNA−FH)5’−TTTCCTTCATATGTATATATATCTATTTACATATTAGTTTACAGAACTTTAATTCCCGTTTTAAGAGCTTGGTGA−3’(配列番号14)を合成した。一方で、GLR1遺伝子配列の下流領域50塩基と相同な配列およびHIS3遺伝子の終始コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA(DNA−RH)5’−TACAAAAGTCCAGTATAGCAACAGCAGATTGGACGTCTAGTTTCGTTGCTGATCCGTCGAGTTCAAGAGAAAAAA−3’(配列番号15)を合成した。次に、HIS3遺伝子を含むプラスミドをテンプレートとし、DNA−FHおよびDNA−RHをプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAを酢酸リチウム法にてSaccharomyces cerevisiae YPH499株に導入した。GLR1遺伝子とHIS3遺伝子が組み換わった目的の遺伝子組み換え株は、ヒスチジンを含まない選択培地プレートにて、コロニーを形成させることで選抜することができる。この結果、組換え酵母YPH499/ΔGLR1株を得た。
[製造例7]GSH1、GSH2およびGPX1の発現を強化し、GLR1遺伝子を破壊した株(GSH1強化+GSH2強化+GPX1強化+GLR1破壊株)の作製
製造例1に記載のプラスミドpGK405−GPX1を制限酵素EcoRVで消化した。当該消化産物により、Saccharomyces cerevisiae YPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2株を宿主酵母株として形質転換を行い、形質転換体YPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2、GPX1株を得た。
[製造例8]GSH1、GSH2およびGPX3の発現を強化し、GLR1遺伝子を破壊した株(GSH1強化+GSH2強化+GPX3強化+GLR1破壊株)の作製
製造例2に記載のプラスミドpGK405−GPX3を制限酵素EcoRVで消化した。当該消化産物により、Saccharomyces cerevisiae YPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2株を宿主酵母株として形質転換を行い、形質転換体YPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2、GPX3株を得た。
[実施例1]GPX1の発現を強化した株およびGPX3の発現を強化した株によるグルタチオンの生産
製造例1と製造例2で取得した、GPX1、またはGPX3遺伝子の発現を強化した組換え酵母YPH499/GPX1、またはYPH499/GPX3をSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories社製)、20g/L グルコース)5mlで30℃、16〜24時間振盪することにより種母培養を行った。
次にYPD培地(10g/L酵母エキストラクト(Difco laboratories社製)、20g/Lポリペプトン(和光純薬工業(株)製)、20g/Lグルコース(ナカライテスク(株)製))20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.03となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間培養を行い、培養液を1ml回収した。
遠心分離して集めた菌体を滅菌水にて2度洗い、95℃で3分間熱処理することで、菌体内のグルタチオンを溶出した。25℃、20000×gにて5分間遠心し、上清のグルタチオン濃度をHPLC法にて分析し、培地あたりのグルタチオン濃度を決定した。菌体濃度は600nmの吸光度を測定することにより求めた。乾燥菌体重量は、培養液を80℃で12時間以上静置した後に重量を測定し、予め秤量した容器の重量を差し引くことで求めた。グルタチオン濃度を菌体濃度で除することでグルタチオンの、乾燥菌体当たりにおける重量(グルタチオン含量)を算出した。
[比較例1]親株(YPH499株)によるグルタチオンの生産
酵母として、Saccharomyces cerevisiae YPH499/HIS3株を使用した以外は実施例1と同様の方法で培養を行い、グルタチオンの乾燥菌体当たりにおける重量を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2014064472
表1からわかるように、GPX1またはGPX3遺伝子の発現を強化することにより、酸化型グルタチオン含量が増加し、総グルタチオン(還元型グルタチオン+酸化型グルタチオン)含量も向上した。
[実施例2]GSH1およびGSH2の発現を強化し、さらにGPX1の発現を強化した株によるグルタチオンの生産
製造例4で取得した、GSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の発現を強化し、更にグルタチオンペルオキシダーゼ活性を強化させたYPH499/GSH1、GSH2、GPX1株を0.5μg/L aureobasidin Aを含むSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories社製)、20g/L グルコース)5mlで30℃、16〜24時間振盪することにより種母培養を行った。
次にYPD培地(10g/L酵母エキストラクト(Difco laboratories社製)、20g/Lポリペプトン(和光純薬工業(株)製)、20g/Lグルコース(ナカライテスク(株)製))20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.03となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間培養を行い、菌体内のグルタチオン含量を実施例1に記載の方法で測定した。結果を表2に示す。
[比較例2]GSH1およびGSH2の発現を強化した株によるグルタチオンの生産
酵母として、製造例3で取得した、GSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の発現を強化し、グルタチオンの合成活性を向上させた組換え酵母YPH499/GSH1、GSH2株を使用した以外は、実施例2と同様の方法で培養を行い、菌体内のグルタチオン含量を測定した。結果を、比較例1の結果と合わせて、表2に示す。
Figure 2014064472
表2からわかるように、GSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の発現を強化し、グルタチオンの合成活性を向上させることでも、菌体当たりのグルタチオン含量は向上するが、さらにGPX1遺伝子の発現を強化することでグルタチオン含量が飛躍的に向上した。
[実施例3]GSH1およびGSH2の発現を強化し、さらにGPX3の発現を強化した株によるグルタチオンの生産
製造例5で取得したGSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の発現を強化し、更にグルタチオンペルオキシダーゼ活性を強化させたYPH499/GSH1、GSH2、GPX3株を0.5μg/L aureobasidin Aを含むSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories社製)、20g/L グルコース)5mlで30℃、16〜24時間振盪することにより種母培養を行った。
次にYPD培地(10g/L酵母エキストラクト(Difco laboratories社製)、20g/Lポリペプトン(和光純薬工業(株)製)、20g/Lグルコース(ナカライテスク(株)製))20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.03となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間培養を行い、菌体内のグルタチオン含量を実施例1に記載の方法で測定した。結果を、比較例1及び2の結果と合わせて、表3に示す。
Figure 2014064472
表3からわかるように、GSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の発現を強化し、グルタチオンの合成活性を向上させることでも、培地中の総グルタチオン含量は向上するが、さらにGPX3遺伝子の発現を強化することでグルタチオン含量が飛躍的に向上した。
[実施例4]GSH1、GSH2およびGPX1の発現を強化し、GLR1遺伝子を破壊した株によるグルタチオンの生産
製造例7で取得した、GLR1遺伝子を破壊し、GSH1遺伝子、GSH2遺伝子、GPX1遺伝子の発現を強化したYPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2、GPX1株を0.5μg/L aureobasidin Aを含むSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories社製)、20g/L グルコース)5mlで30℃、16〜24時間振盪することにより種母培養を行った。
次にYPD培地(10g/L酵母エキストラクト(Difco laboratories社製)、20g/Lポリペプトン(和光純薬工業(株)製)、20g/Lグルコース(ナカライテスク(株)製))20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.03となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間培養を行い、菌体内のグルタチオン含量を実施例1に記載の方法で測定した。結果を、実施例2の結果と合わせて、表4に示す。
Figure 2014064472
表4からわかるように、GLR1遺伝子を破壊することで、グルタチオン含量はさらに向上した。
[実施例5]GSH1、GSH2およびGPX3の発現を強化し、GLR1遺伝子を破壊した株によるグルタチオンの生産
製造例8で取得したGLR1遺伝子を破壊し、GSH1遺伝子、GSH2遺伝子、GPX3遺伝子の発現を強化したYPH499/ΔGLR1、GSH1、GSH2、GPX3株を0.5μg/L aureobasidin Aを含むSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories社製)、20g/L グルコース)5mlで30℃、16〜24時間振盪することにより種母培養を行った。
次にYPD培地(10g/L酵母エキストラクト(Difco laboratories社製)、20g/Lポリペプトン(和光純薬工業(株)製)、20g/Lグルコース(ナカライテスク(株)製))20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.03となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間培養を行い、菌体内のグルタチオン含量を実施例1に記載の方法で測定した。結果を、実施例3の結果と合わせて、表5に示す。
Figure 2014064472
表5からわかるように、GLR1遺伝子を破壊することで、グルタチオン含量はさらに向上した。

Claims (10)

  1. グルタチオンペルオキシダーゼの発現が強化された酵母を培養することを特徴とするグルタチオンの製造方法。
  2. グルタチオンペルオキシダーゼが、下記(a)〜(f):
    (a)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (b)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (c)配列表の配列番号1〜3のいずれかに示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (d)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (e)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、および、
    (f)配列表の配列番号4〜6のいずれかに示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠矢、挿入および/または付加されたDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
  3. 酵母が、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素の発現が強化された酵母である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. γ−グルタミルシステイン合成酵素がGSH1でコードされる酵素である、請求項3に記載の製造方法。
  5. グルタチオン合成酵素がGSH2でコードされる酵素である、請求項3に記載の製造方法。
  6. 酵母が、グルタチオンレダクターゼの発現が抑制された酵母である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. グルタチオンレダクターゼがGLR1でコードされる酵素である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 酵母が、サッカロマイセス属、キャンディダ属、またはピキア属の酵母である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. グルタチオンペルオキシダーゼ、並びに、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素の発現が強化された酵母。
  10. グルタチオンレダクターゼの発現が抑制された請求項9に記載の酵母。
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