以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、モニタ2と、入力装置3と、超音波プローブ10と、装置本体20とを有する。
モニタ2は、超音波診断装置1の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体20において生成された画像等を表示したりする。
入力装置3は、トラックボール、スイッチ、ボタン、タッチコマンドスクリーン等の装置であり、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体20に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
超音波プローブ10は、超音波の送受信を行う。超音波プローブ10は、超音波を発生して被検体Pに超音波を送信し、被検体Pからの反射波を受信する。そして、第1の実施形態に係る超音波プローブ10は、受信した反射波信号から反射波データを生成し、後述の装置本体20へ送信する。なお、超音波プローブ10は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
例えば、図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波プローブ10は、トランスデューサー11と、送受信部12と、無線通信部13とを有する。
トランスデューサー11は、複数の振動子から構成される。例えば、トランスデューサー11を構成する振動子は、圧電振動子である。トランスデューサー11は、後述の送受信部12から供給される駆動信号に基づいて複数の圧電振動子に超音波を発生させることで、超音波をビーム状に集束させた超音波ビームを送信する。また、トランスデューサー11は、被検体Pから反射される反射波を受信して電気信号に変換する。
トランスデューサー11から被検体Pに超音波ビームが送信されると、送信された超音波ビームは、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号としてトランスデューサー11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
送受信部12は、トリガ発生回路、送信遅延回路およびパルサ回路等を有し、トランスデューサー11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生させる。また、送信遅延回路は、トランスデューサー11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、パルサ回路によって発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、トランスデューサー11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
また、送受信部12は、アンプ回路、A/D変換器、加算器等を有し、トランスデューサー11が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行い、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信ビームが形成される。送受信部12は、被検体Pから次々と反射される反射波を所定時間間隔でサンプリングすることで、サンプリング時間に対応する深度の反射波信号(受信信号)を取得する。
なお、送受信部12からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、IQ信号である場合、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
このように、送受信部12は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。また、送受信部12は、後述の制御部26の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部12は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
無線通信部13は、超音波プローブ10と装置本体20とを無線通信により接続する。例えば、無線通信部13は、送受信部12から反射波データを受信する。そして、無線通信部13は、受信した反射波データに対して所定の変調処理を行って、送信データとして装置本体20へ送信する。また、無線通信部13は、装置本体20から送信される超音波の送受信条件を受信し、送受信部12へ出力する。超音波の送受信条件とは、例えば、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数等を制御するための情報である。
なお、第1の実施形態は、超音波プローブ10により被検体Pが2次元走査される場合であっても、3次元走査される場合であっても適用可能である。
装置本体20は、超音波プローブ10から送信される送信データに基づいて超音波画像データの出力を行う装置である。図1に示すように、装置本体20は、無線通信部21と、Bモード処理部22と、ドプラ処理部23と、画像生成部24と、画像メモリ25と、制御部26と、内部記憶部27とを有する。
無線通信部21は、超音波プローブ10と装置本体20とを無線通信により接続する。例えば、無線通信部21は、超音波プローブ10から送信される送信データを受信する。そして、無線通信部21は、受信した送信データに対し所定の復調処理を行って反射波データを復調し、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方へ出力する。また、無線通信部13は、超音波の送受信条件を制御部26から受け付け、超音波プローブ10へ送信する。
Bモード処理部22は、超音波プローブ10によって受信された受信信号の信号処理を行う。例えば、Bモード処理部22は、無線通信部21から反射波データを受信する。そして、Bモード処理部22は、受信した反射波データに対数増幅、包絡線検波処理等を行って、各サンプル点の信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理部23は、超音波プローブ10によって受信された受信信号の信号処理を行う。例えば、ドプラ処理部23は、無線通信部21から反射波データを受信する。そして、ドプラ処理部23は、受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を各サンプル点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
画像生成部24は、Bモード処理部22が生成したBモードデータや、ドプラ処理部23が生成したドプラデータから、超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部24は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、Bモードデータやドプラデータから表示用の超音波画像データ(Bモード画像データやドプラ画像データ)を生成する。
例えば、画像生成部24は、ドプラデータから平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ(Color Doppler)画像データを生成する。また、例えば、画像生成部24は、ドプラデータの時系列データから、操作者が設定したレンジゲートにおける血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形画像データを生成する。なお、ドプラ波形画像データは、連続波(CW:Continuous Wave)ドプラ法やパルス波(PW:Pulsed Wave)ドプラ法により収集されたドプラデータから生成される。
画像メモリ25は、画像生成部24によって生成された画像データを記憶する。また、画像メモリ25は、送受信部12を経た直後の出力信号(RF信号)や画像の輝度信号、種々の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。画像メモリ25が記憶する画像データのデータ形式は、画像生成部24によって生成されたスキャンコンバート後の画像データであっても、Bモード処理部22及びドプラ処理部23によって生成されたスキャンコンバート前の生データであっても良い。
制御部26は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部26は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部27から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報に基づき、送受信部12、Bモード処理部22、ドプラ処理部23および画像生成部24の処理を制御したり、画像メモリ25が記憶する超音波画像等をモニタ2にて表示するように制御したりする。
内部記憶部27は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコル等の各種データを記憶する。さらに、内部記憶部27は、必要に応じて、画像メモリ25が記憶する画像の保管等にも使用される。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と装置本体20との間で無線通信を行って、超音波プローブ10によって取得した反射波データに基づき、装置本体20にて超音波画像データを出力する。しかしながら、無線通信では、電波状況の変化によって通信品質が低下してしまう場合がある。かかる場合には、装置本体20側で超音波画像データを生成するための反射波データの受信に遅延が生じる結果、超音波診断装置1は、画像表示のリアルタイム性を確保することができなくなってしまう。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、通信品質が低下した場合でも、リアルタイムで画像を表示するために、以下に説明する制御部26の処理を行う。
図2は、第1の実施形態に係る制御部26の構成の一例を説明するための図である。第1の実施形態に係る制御部26は、図2に示すように、監視部261と、通信量制御部262とを有する。
監視部261は、無線通信の通信品質を示す指標値を監視する。例えば、監視部261は、指標値の一つとして、無線通信の通信速度を監視する。つまり、監視部261は、所定期間に無線通信部21が無線通信部13から受信した送信データのデータ量を、通信速度として無線通信部21から取得する。監視部261は、取得した通信速度が閾値未満か否かを判定する。この閾値は、例えば、超音波診断装置1が略リアルタイムで画像を表示することが可能な通信速度の値として、フレームレート、受信ビーム数及び受信サンプル数等の超音波の送受信条件から計算され、超音波診断装置1に予め設定される。そして、監視部261は、通信速度が閾値未満になると、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う旨の指示を通信量制御部262へ出力する。なお、以下では、監視武261が通信速度を監視する場合を説明するが、実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば、監視部261は、無線通信部21が受信した無線信号の受信強度やSN比、受信信号のエラーレート、無線信号の送信時刻と受信時刻との差分である伝搬遅延等を監視することとしても良い。
通信量制御部262は、監視部261によって監視される通信速度が閾値未満になると、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う。第1の実施形態では、通信量制御部262は、超音波プローブ10によって受信される受信信号のデータ量を削減する制御を行う。例えば、通信量制御部262は、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う旨の指示を監視部261から受け付けると、被検体Pからの反射波信号を削減させる指示を送受信部12へ送出する。すなわち、通信量制御部262は、通信速度が閾値未満になると、現時点で設定されている超音波送受信条件を変更することで、トランスデューサー11から送受信部12に出力される反射波信号のデータ量を削減する。これにより、通信量制御部262は、装置本体20へ送信されるデータ量を削減する。ここで、被検体Pからの反射波信号を削減する方法の一例として、通信量制御部262は、フレームレート、受信ビーム数及び受信サンプル数等の超音波の送受信条件を調節する。以下では、これらの超音波の送受信条件を通信量制御部262が調節する制御について説明する。
図3は、フレームレートを削減する制御について説明するための図である。図3には、トランスデューサー11によって行われる1フレーム分の超音波走査を時間間隔「t」で行う送信条件が設定されている場合を例示している。かかる場合、フレームレートは、「1/t」となる。
ここで、通信速度が閾値未満になると、通信量制御部262は、図3に示すように、例えば、1フレーム分の超音波走査を時間間隔「2t」で行う送信条件に変更する指示を、送受信部12に送信する。かかる場合、フレームレートは、「1/2t」となる。この結果、トランスデューサー11が受信する反射波信号が削減される。なお、ここで調節される時間間隔tは、例えば、操作者により任意に調節されて良い。また、フレームレートを削減する場合には、装置本体20において間引かれたフレームの超音波画像データを、前後のフレームの超音波画像データを用いた補間処理により、フレームレートを保つことも可能である。
図4Aから図4Dは、受信ビーム数を削減する制御について説明するための図である。図4A及び図4Cには、走査範囲である撮像領域4bの大きさを略変えずに、走査線密度を減少する送信条件に変更して、受信ビーム4aの数を削減する場合を例示している。また、図4Dには、走査線密度を変えずに、走査範囲である撮像領域を縮小する送信条件に変更して、受信ビーム数を削減する場合を例示している。
図4Aに示すように、例えば、通信量制御部262は、トランスデューサー11から送信される超音波ビームの数を一定割合削減させる指示を送受信部12へ送出する。この結果、送信条件変更後の撮像領域4cの走査線密度は、送信条件変更前の撮像領域4の走査線密度より減少することとなり、受信ビーム4aの数が減少し、被検体Pからの反射波信号のデータ量が削減される。なお、削減される超音波ビームの割合は、例えば、操作者によって任意に設定されて良い。
また、図4Bに示すように、通信量制御部262は、撮像領域4bの中央の超音波ビームの数を変更させずに、撮像領域4bの両側の超音波ビームの数を一定割合削減させる指示を送受信部12へ送出する。この結果、送信条件変更後の撮像領域4dの走査線密度は、中央の領域4eでは維持され、両側の領域4fでは減少することとなり、受信ビーム4aの数が削減される。撮像領域4bの中央は、操作者の関心領域である場合が多いので、かかる場合、関心領域付近の画質を維持することができる。
また、図4Cに示すように、操作者によって関心領域4gが設定される場合がある。かかる場合には、通信量制御部262は、関心領域4gを走査するための超音波ビームを維持し、それ以外の領域の超音波ビームの数を一定割合削減させる指示を送受信部12に送出する。この結果、送信条件変更後の撮像領域4hの走査線密度は、関心領域4gを含む領域4iでは維持され他状態で、関心領域4gを含まない領域4jでは減少することとなり、受信ビーム数が削減される。
また、図4Dに示すように、通信量制御部262は、撮像領域4bの中央の超音波ビームの数を変更させずに、撮像領域4bの両側の超音波ビームを送信しない指示を送受信部12へ送出する。この結果、送信条件変更後の撮像領域4kの方位方向の幅は、撮像領域4bに比べて狭められることとなり、受信ビーム数が削減される。
図5A及び図5Bは、受信サンプル数を削減する制御について説明するための図である。図5Aには、撮像領域の深さ方向の幅を略変えずに、受信ビーム4a上のサンプル点5aの密度を減少する受信条件に変更して、受信サンプル数を削減する場合を例示している。また、図5Bには、受信ビーム4a上のサンプル点5aの密度を変えずに、撮像領域の深さ方向の幅を狭める受信条件に変更して、受信サンプル数を削減する場合を例示している。
図5Aに示すように、通信量制御部262は、送受信部12が反射波を取得するサンプリング間隔を長くする指示を、送受信部12へ送出する。この結果、受信条件変更後の撮像領域5bにおける受信ビーム4a上のサンプル点5aの密度は、撮像領域4bに比べて減少することとなり、受信サンプル数が削減される。なお、送受信部12によって調整されるサンプリング間隔は、例えば、操作者によって任意に設定されて良い。
図5Bに示すように、通信量制御部262は、送受信部12が1本の走査線上で反射波をサンプリングするサンプリング時間を短くする指示を、送受信部12へ送出する。この結果、受信条件変更後の撮像領域5cの深さ方向の幅は、撮像領域4bに比べて狭まることとなり、受信サンプル数が削減される。なお、かかる場合、通信量制御部262は、深さ方向の幅の変更に伴って、送信条件として送信フォーカスを変更する指示を行っても良い。また、かかる場合、通信量制御部262は、深さ方向の幅の変更に伴って、受信条件として受信フォーカスを変更する指示を行っても良い。また、送受信部12によって調整されるサンプリング時間は、例えば、操作者によって任意に設定されて良い。
このように、通信量制御部262は、送受信部12にフレームレート、受信ビーム数及び受信サンプル数等の超音波の送受信条件を調節させる。これにより、通信量制御部262は、装置本体20へ送信されるデータ量を削減する。なお、通信量制御部262は、上記の超音波の送受信条件をそれぞれ単独で調節させるだけでなく、複数の送受信条件を組み合わせて調節しても良い。また、通信量制御部262は、上記の超音波の送受信条件を調節させた場合には、通信速度の低下によって送受信条件を削減させた旨の情報をモニタ2に表示させる制御を行っても良い。さらに、通信量制御部262は、上記の送受信条件を調節させた場合には、送受信条件の調節に伴って表示画像が変化した領域をモニタ2に表示させる制御を行っても良い。
図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理例を説明するためのフローチャートである。図6に示すように、監視部261は、超音波画像の撮像が開始されると、無線通信の通信速度を監視する(ステップS101)。そして、監視部261は、通信速度が閾値未満か否かを判定する(ステップS102)。
監視部261によって監視される通信速度が閾値未満である場合には(ステップS102肯定)、通信量制御部262は、超音波プローブ10によって受信される受信信号のデータ量を削減する制御を行う(ステップS103)。例えば、通信量制御部262は、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う旨の指示を監視部261から受け付けると、フレームレート、受信ビーム数及び受信サンプル数等の超音波の送受信条件を調節する指示を送受信部12へ送出する。
一方、通信速度が閾値未満ではない場合には(ステップS102否定)、通信量制御部262は、データ量を削減する制御を行っているか否かを判定する(ステップS104)。データ量を削減する制御を行っている場合には(ステップS104肯定)、通信量制御部262は、データ量を削減する制御を解除する(ステップS105)。なお、データ量を削減する制御を行っていない場合には(ステップS104否定)、通信量制御部262は、処理を終了する。超音波診断装置1は、上記のステップS101〜ステップS105の処理を繰り返し実行する。
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、無線通信部13及び無線通信部21は、超音波プローブ10と装置本体20とを無線通信により接続する。監視部261は、無線通信の通信品質の指標値を監視する。通信量制御部262は、監視部261によって監視される指標値が閾値未満になると、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う。このため、超音波診断装置1は、超音波プローブと装置本体とが無線通信により接続される場合でも、画像表示のリアルタイム性を確保することができる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、通信量制御部262は、超音波プローブによって受信される受信信号のデータ量を削減する制御を行う。このため、超音波診断装置1は、超音波プローブ10にデータ量を削減するための新たな処理部を持たせることなく、超音波プローブ10と装置本体20とが無線通信により接続される場合でも、画像表示のリアルタイム性を確保することができる。
なお、第1の実施形態では、監視部261が単独の閾値を用いてデータ量を削減する制御を行うか否かを判定したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の閾値を用いてデータ量を削減する制御を行うか否かを判定しても良い。例えば、監視部261は、2段階の閾値を用いて、データ量を削減する制御を行うか否かを判定する。そして、監視部261は、通信速度が1段階目の閾値に到達した場合にはフレームレートを削減し、2段階目の閾値に到達した場合にはフレームレートの削減とともに、受信ビーム数及び受信サンプル数の少なくとも一つの削減を組み合わせて実行しても良い。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、超音波プローブ10がトランスデューサー11、送受信部12及び無線通信部13を有する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波プローブ10は、トランスデューサー11、送受信部12及び無線通信部13に加えて、さらにBモード処理部22及びドプラ処理部23を有していても良い。かかる場合、超音波診断装置1は、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方から出力されるデータのデータ量を削減することが可能である。そこで、第2の実施形態では、Bモード処理部22及びドプラ処理部23から出力されるデータのデータ量を削減することで、送信データのデータ量を削減する場合を説明する。
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を説明するための図である。図7に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1において、超音波プローブ10は、第1の実施形態と比較して、Bモード処理部22及びドプラ処理部23をさらに有する点が異なる。以下、これを中心に説明する。
Bモード処理部22は、超音波プローブ10によって受信された受信信号の信号処理を行う。例えば、Bモード処理部22は、送受信部12から反射波データを受信する。そして、Bモード処理部22は、受信した反射波データに対数増幅、包絡線検波処理等を行って、各サンプル点の信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理部22は、生成したBモードデータを、無線通信部13を介して装置本体20へ送信する。
ドプラ処理部23は、超音波プローブ10によって受信された受信信号の信号処理を行う。例えば、ドプラ処理部23は、送受信部12から反射波データを受信する。そして、ドプラ処理部23は、受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を各サンプル点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ドプラ処理部23は、生成したドプラデータを、無線通信部13を介して装置本体20へ送信する。
第2の実施形態に係る制御部26は、図2に示した制御部26と同様の構成を有する。このうち、第2の実施形態に係る通信量制御部262は、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方から出力されるデータのデータ量を削減する制御を行う。
例えば、通信量制御部262は、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータ量を削減する制御を行う旨の指示を監視部261から受け付けると、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方から出力されるデータのデータ量を削減させる指示を送受信部12へ送出する。これにより、通信量制御部262は、装置本体20へ送信されるデータ量を削減する。ここで、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方から出力されるデータのデータ量を削減する方法の一例として、フレームレートを削減すること、及び、1サンプル当たりのビット長を削減することが挙げられる。
図8は、フレームレートを削減する制御について説明するための図である。図8には、所定のフレームレートで生成されたBモードデータ8aと、前後のフレームのBモードデータ8a同士で合成されたBモードデータ8bとを例示する。
図8に示すように、通信量制御部262は、前後のフレームのBモードデータ8a同士を合成させる指示をBモード処理部22へ送出する。この結果、指示送出後にBモード処理部22によって生成されるBモードデータ8bのフレームレートは、指示送出前の約半分に削減されることとなり、Bモード処理部22から出力されるデータのデータ量が削減される。なお、ここではBモードデータが合成される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Bモード処理部22によって生成されるBモードデータ8aのうち、2つに1つの割合でBモードデータ8aを破棄しても良い。また、ドプラ処理部23によって生成されるドプラデータが合成されても良い。また、Bモードデータ8aにおいて隣り合うスキャンライン同士を合成させても良く、隣り合うサンプル点同士を合成させても良い。
図9は、1サンプル当たりのビット長を削減する制御について説明するための図である。図9には、スキャンライン9a上の各サンプル点9bが所定の輝度値で表現されるBモードデータ9cを例示する。
図9に示すように、通信量制御部262は、生成されるBモードデータ9cのスキャンライン9a上の各サンプル点9bの輝度値を表すときのビット長を削減させる指示を、Bモード処理部22へ送出する。Bモード処理部22は、各サンプル点9bの輝度値を表すときのビット長を、例えば12ビットから8ビットに削減させて、Bモードデータ9cを生成する。この結果、指示送出後の各サンプル点9bの輝度値に関する情報量が削減されることとなり、Bモード処理部22から出力されるデータのデータ量が削減される。なお、ここではBモードデータが生成される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ドプラ処理部23によって生成されるドプラデータにおける各サンプル点のビット長が削減されても良い。
このように、通信量制御部262は、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方に対して、フレームレート及び1サンプル当たりのビット長を削減させる。これにより、通信量制御部262は、装置本体20へ送信されるデータ量を削減する。
第2の実施形態に係る超音波診断装置1の処理については、通信量制御部262がBモード処理部22及びドプラ処理部23から出力されるデータのデータ量を削減すること以外は第1の実施形態と同様である。具体的には、図6に示すステップS103においてデータ量を削減する制御を行う処理が、Bモード処理部22やドプラ処理部23から出力されるデータのデータ量を削減する制御を行う処理であり、ステップS105においてデータ量を削減する制御を解除する処理が、Bモード処理部22及びドプラ処理部23から出力されるデータのデータ量を削減する制御を解除する処理である。
上述したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1において、Bモード処理部22及びドプラ処理部23は、超音波プローブ10によって受信された受信信号の信号処理を行う。通信量制御部262は、Bモード処理部22及びドプラ処理部23のうち少なくとも一方から出力されるデータのデータ量を削減する制御を行う。このため、超音波診断装置1は、超音波プローブにおける超音波の送受信条件を変更することなく、画像表示のリアルタイム性を確保することができる。
なお、第2の実施形態に係る通信量制御部262は、第1の実施形態において説明した送受信条件の調整と組み合わせて、装置本体20へ送信されるデータ量を削減しても良い。
また、第2の実施形態は、超音波プローブ10により被検体Pが2次元走査される場合であっても、3次元走査される場合であっても適用可能である。
また、第2の実施形態は、画像生成部24が超音波プローブ10に備えられる場合であっても適用可能である。
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータのデータ量の削減に用いるパラメータについて種々説明した。そこで、第3の実施形態では、超音波プローブ10によって撮像される撮像部位に応じて、データ量の削減に用いるパラメータを変更する場合を説明する。
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、一例として、図1に示した超音波診断装置1と同様の構成を有する。なお、第3の実施形態においては、図1と同様の機能を有する点についてはその説明を省略することとし、相違する点を中心に説明する。
第3の実施形態に係る通信量制御部262は、超音波プローブによって撮像される撮像部位に応じて、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータのデータ量の削減に用いるパラメータを変更する。例えば、第3の実施形態に係る通信量制御部262は、超音波プローブによって撮像される撮像部位(診断部位)に応じて、第1の実施形態で説明したように、超音波の送受信条件に関する各種パラメータを変更する。なお、通信量制御部262は、例えば、超音波検査開始時に操作者が検査メニューに入力した撮像部位の情報を参照して、撮像部位(心臓、肝臓等)を取得する。
また、第3の実施形態では、上記の処理を行うため、内部記憶部27は、撮像部位ごとに、通信速度が低下した場合に優先して維持するパラメータが順位順に設定された設定情報を記憶する。かかる設定情報の一例について、以下、図10及び図11を用いて説明する。図10及び図11は、撮影部位に応じた優先順位情報の一例を示す図である。
図10は、循環器領域の検査を行う場合に設定されるパラメータの優先順位の一例を示す。例えば、心臓等の循環器領域の検査では、拍動により動きが大きい臓器が含まれる領域であることから、超音波画像データの時間分解能を維持すること、すなわち、フレームレートを優先して維持することが要求される。このため、循環器領域におけるパラメータの優先順位は、図10に例示するように、「1.フレームレート、2.ビーム数(密度)、3.サンプル数(密度)、4.サンプル数(撮像領域深度)、5.ビーム数(撮像領域幅)」と設定される。
図10に示す優先順位が設定されている場合、通信量制御部262は、例えば、5つの閾値を用いた通信量制御を行う。例えば、通信速度が第1閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図10に示す設定情報を参照して、5位のパラメータ「ビーム数(撮像領域幅)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、撮像領域の方位方向における幅を狭める送信条件を送受信部12に送信する(図4Dを参照)。
また、例えば、通信速度が第1閾値より小さい第2閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図10に示す設定情報を参照して、4位のパラメータ「サンプル数(撮像領域深度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、撮像領域の深度を浅くする送受信条件を送受信部12に送信する(図5Bを参照)。換言すると、図10に示す5位及び4位のパラメータは、超音波画像データの画質を維持した状態で、撮像領域を縮小するパラメータである。通信量制御部262は、図10に示す5位及び4位のパラメータを用いる場合、検査対象である関心領域が撮像領域に含まれるように、撮像領域を縮小する送受信条件に変更する。
また、例えば、通信速度が第2閾値より小さい第3閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図10に示す設定情報を参照して、3位のパラメータ「サンプル数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、サンプル点の密度を低下する受信条件を送受信部12に送信する(図5Aを参照)。
また、例えば、通信速度が第3閾値より小さい第4閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図10に示す設定情報を参照して、2位のパラメータ「ビーム数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、走査線密度を低下して受信ビーム数を間引く送信条件を送受信部12に送信する(図4Aを参照)。換言すると、図10に示す3位及び2位のパラメータは、撮像領域を関心領域が含まれる領域まで狭めた状態で、画像の空間分解能を低減させるパラメータである。
また、例えば、通信速度が第4閾値より小さい第5閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図10に示す設定情報を参照して、1位のパラメータ「フレームレート」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、フレームレートを低下する送信条件を送受信部12に送信する(図3を参照)。
図11は、腹部領域の検査を行う場合に設定されるパラメータの優先順位の一例を示す。例えば、肝臓等の腹部領域の検査では、腫瘍の有無や、腫瘍の悪性度の鑑別が行われるため、超音波画像データの画質(空間分解能)を維持することが要求される。このため、腹部領域におけるパラメータの優先順位は、図10に示すように、「1.ビーム数(密度)、2.サンプル数(密度)、3.ビーム数(撮像領域幅)、4.サンプル数(撮像領域深度)、5.フレームレート」と設定される。
図11に示す優先順位が設定されている場合、通信量制御部262は、例えば、5つの閾値を用いた通信量制御を行う。例えば、通信速度が第1閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図11に示す設定情報を参照して、5位のパラメータ「フレームレート」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、フレームレートを低下する送信条件を送受信部12に送信する(図3を参照)。換言すると、図11に示す5位のパラメータは、超音波画像データの画質を維持した状態で、フレームレートを低下するパラメータである。
また、例えば、通信速度が第1閾値より小さい第2閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図11に示す設定情報を参照して、4位のパラメータ「サンプル数(撮像領域深度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、撮像領域の深度を浅くする送受信条件を送受信部12に送信する(図5Bを参照)。
また、例えば、通信速度が第2閾値より小さい第3閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図11に示す設定情報を参照して、3位のパラメータパラメータ「ビーム数(撮像領域幅)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、撮像領域の方位方向における幅を狭める送信条件を送受信部12に送信する(図4Dを参照)。換言すると、図10に示す4位及び3位のパラメータは、フレームレートが低下しているが超音波画像データの画質を維持した状態で、更に、撮像領域を縮小するパラメータである。
また、例えば、通信速度が第3閾値より小さい第4閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図11に示す設定情報を参照して、2位のパラメータ「サンプル数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、サンプル点の密度を低下する受信条件を送受信部12に送信する(図5Aを参照)。
また、例えば、通信速度が第4閾値より小さい第5閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図11に示す設定情報を参照して、1位のパラメータ「ビーム数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、走査線密度を低下して受信ビーム数を間引く送信条件を送受信部12に送信する(図4Aを参照)。
図12は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1の処理例を説明するためのフローチャートである。図12に示すように、通信量制御部262は、超音波画像の撮像が開始されると、超音波検査開始時に操作者が検査メニューに入力した撮像部位の情報を参照して、撮像部位(心臓、肝臓等)を取得する(ステップS201)。
監視部261は、無線通信の通信速度を監視する(ステップS202)。そして、監視部261は、通信速度が閾値未満か否かを判定する(ステップS203)。ここで、上述したように、通信速度と比較される閾値が複数段階で設定されている場合、通信量制御部262は、以下の判定処理を行う。仮に、n段階で設定される複数の閾値を、「第1閾値>第2閾値>・・・>第n閾値」とする。かかる場合、通信量制御部262は、前回の判定処理で通信速度が第k閾値未満であると判定していた場合、次回の判定処理で通信速度が第k+1閾値未満であるか否かを判定する。なお、通信量制御部262は、前回の判定処理で第1閾値以上であると判定していた場合、次回の判定処理で通信速度が第1閾値未満であるか否かを判定する。また、通信量制御部262は、前回の判定処理で第n閾値未満であると判定していた場合、次回の判定処理でも通信速度が第n閾値未満であるか否かを判定する。
監視部261によって監視される通信速度が閾値未満である場合には(ステップS203肯定)、通信量制御部262は、取得した診断部位に応じた優先順位情報を参照し(ステップS204)、診断部位に応じてデータ量を削減する制御を行う(ステップS205)。例えば、通信量制御部262は、第4閾値未満であり、診断部位が心臓であれば、循環器領域における優先順位情報を参照して、2位のパラメータ「ビーム数(密度)」の変更を行う。
一方、通信速度が閾値未満ではない場合には(ステップS203否定)、通信量制御部262は、取得した診断部位に応じた優先順位情報を参照し(ステップS206)、現在行われているデータ量を削減する制御を解除する(ステップS207)。超音波診断装置1は、上記のステップS201〜ステップS207の処理を繰り返し実行する。
上述したように、第3の実施形態に係る超音波診断装置1において、通信量制御部262は、超音波プローブ10によって撮像される撮像部位に応じて、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータのデータ量の削減に用いるパラメータを変更する。このため、超音波診断装置1は、診断部位に適した超音波画像データを出力することができる。
なお、第3の実施形態においてフレームレート、ビーム数(密度)及びサンプル数(密度)を低減する場合には、第2の実施形態で説明した方法が適用されても良い。
また、第3の実施形態は、超音波プローブ10により被検体Pが2次元走査される場合であっても、3次元走査される場合であっても適用可能である。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、超音波プローブ10によって撮像される撮像モードに応じて、データ量の削減に用いるパラメータを変更する場合を説明する。
第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、一例として、図1に示した超音波診断装置1と同様の構成を有する。なお、第4の実施形態においては、図1と同様の機能を有する点についてはその説明を省略することとし、相違する点を中心に説明する。
ここで、超音波検査では、様々な撮像モードで超音波画像の撮像が行われる。撮像モードとしては、Bモード画像を撮像するBモード、カラードプラ画像を撮像するカラードプラモード(以下、Cモード)、ドプラ波形画像を撮像するモード(以下、Dモード)がある。Cモードでは、通常、Bモード画像の一部に関心領域が設定され、当該関心領域のカラードプラ画像の撮像が行われる。かかる場合、Bモード用の超音波走査とCモード用の超音波走査とが交互に行われる。また、Dモードでは、通常、Bモード画像の一部にレンジゲートが設定され、当該レンジゲートのドプラ波形画像の撮像が行われる。かかる場合、Bモード用の超音波走査とDモード用の超音波走査とが交互に行われる。
図13は、撮像モードの一例を説明するための図である。Dモード撮像が行われる場合、図13の上図に示すように、Bモード画像中にレンジゲートが設定される。そして、レンジゲートを含む範囲で連続波の超音波が送信されることで、図13の下図に示すドプラ波形画像データが生成表示される。Bモード撮像及びDモード撮像が行われる場合、操作者の主な目的は、レンジゲートにおける血流情報を示すドプラ波形を詳細に観察することである。すなわち、Dモード撮像では、時間分解能が優先される。一方、Dモード撮像とともに行われるBモード撮像のBモード画像は、レンジゲートを設定した後は、ドプラ波形の参照画像として参照される画像であるため、時間分解能の優先順位は低い。
また、Bモード撮像及びCモード撮像が行われる場合、操作者の主な目的は、関心領域における血流情報を示すカラードプラ画像を詳細に観察することである。すなわち、Cモード撮像では、時間分解能が優先される。一方、Cモード撮像とともに行われるBモード撮像のBモード画像は、関心領域を設定した後は、カラードプラ画像の参照画像として参照される画像であるため、時間分解能の優先順位は低い。
また、撮像モードとしては、Bモード画像を参照しながら生体組織検査やラジオ波焼灼治療(RFA:Radio Frequency Ablation)等の穿刺を行う穿刺モードがある。穿刺を行う場合、例えば、超音波プローブ10には、穿刺アダプタが取り付けられる。穿刺アダプタには、穿刺針が取り付けられ、医師は、Bモード画像を参照しながら、穿刺アダプタに取り付けられた穿刺針を被検体Pのターゲット部位まで挿入する。穿刺モードでは、穿刺アダプタに対して穿刺針が取り付けられる角度に基づいて、Bモード画像中に、穿刺針の挿入方向を示すガイドラインが重畳表示される。
Bモード撮像が行われる場合、操作者の主な目的は、Bモード画像を参照しながら生体組織を詳細に観察することである。すなわち、通常のBモード撮像では、Bモード画像の画質(空間分解能)が優先される。一方、穿刺モード撮像が行われる場合、操作者の主な目的は、Bモード画像を参照しながら高輝度に描出された穿刺針の先端部位の位置を観察することである。ここで、穿刺針の先端は、順位移動するため、穿刺モード撮像では、Bモード画像の時間分解能が優先される。
そこで、第4の実施形態に係る通信量制御部262は、超音波プローブによって撮像される撮像モードに応じて、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータのデータ量の削減に用いるパラメータを変更する。例えば、第4の実施形態に係る通信量制御部262は、撮像モードに応じて、第1の実施形態で説明したように、超音波の送受信条件に関する各種パラメータを変更する。なお、通信量制御部262は、例えば、超音波検査開始時に操作者が検査メニューに入力した撮像モードの情報を参照して、撮像モード(Bモード、Cモード等)を取得する。
また、第4の実施形態では、上記の処理を行うため、内部記憶部27は、撮像モードごとに、通信速度が低下した場合に優先して維持するパラメータが順位順に設定された設定情報を記憶する。かかる設定情報の一例について、以下、図14から図16を用いて説明する。図14から図16は、撮影モードに応じた優先順位情報の一例を示す図である。
図14は、Bモードの撮像を行う場合に設定されるパラメータの優先順位の一例を示す。Bモードの撮像におけるパラメータの優先順位は、画質を優先するために、図14に例示するように、「1.ビーム数(密度)、2.サンプル数(密度)、3.ビーム数(撮像領域幅)、4.サンプル数(撮像領域深度)、5.フレームレート」と設定される。
図14に示す優先順位が設定されている場合、通信量制御部262は、例えば、5つの閾値を用いた通信量制御を行う。なお、図14に示す優先順位は、第2の実施形態の説明で用いた図11に示す優先順位と同様であり、通信量制御部262が行う通信量制御も、第2の実施形態において図11を用いて説明した処理と同様であるので説明を省略する。
図15は、Bモードの撮像から穿刺モードの撮像に変更された場合に設定されるパラメータの優先順位の一例を示す。穿刺モードの撮像におけるパラメータの優先順位は、時間分解能を優先するために、図15に例示するように、「1.フレームレート、2.ビーム数(密度)、3.サンプル数(密度)、4.サンプル数(撮像領域深度)、5.ビーム数(撮像領域幅)」と設定される。
図15に示す優先順位が設定されている場合、通信量制御部262は、例えば、5つの閾値を用いた通信量制御を行う。なお、図15に示す優先順位は、第2の実施形態の説明で用いた図10に示す優先順位と同様であり、通信量制御部262が行う通信量制御も、第2の実施形態において図10を用いて説明した処理と同様であるので説明を省略する。
図16は、Bモードの撮像とCモードの撮像とを行う場合に設定されるパラメータの優先順位の一例を示す。「Bモード+Cモード」の撮像におけるパラメータの優先順位は、Bモード画像の時間分解能や画質の優先順位を下げて、カラードプラ画像の時間分解能を最優先とするために、図16に例示するように優先順位が設定される。図16に示す一例では、「Bモード+Cモード」の撮像におけるパラメータの優先順位は、「1.Cフレームレート、2.Cサンプル数(密度)、3.Cビーム数(密度)、4.Bサンプル数(撮像領域深度)、5.Bビーム数(撮像領域幅)、6.Cサンプル数(撮像領域深度)、7.Cビーム数(撮像領域幅)、8.Bサンプル数(密度)、9.Bビーム数(密度)、10.Bフレームレート」と設定される。
図16に示す優先順位が設定されている場合、通信量制御部262は、例えば、10個の閾値を用いた通信量制御を行う。例えば、通信速度が第1閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、10位のパラメータ「Bフレームレート」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、Bモード画像のフレームレートを低下する送信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第1閾値より小さい第2閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、9位のパラメータ「Bビーム数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Bモード用の走査線密度を低下して受信ビーム数を間引く送信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第2閾値より小さい第3閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、8位のパラメータ「Bサンプル数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、更に、Bモード用のサンプル点の密度を低下する受信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第3閾値より小さい第4閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、7位のパラメータ「Cビーム数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Cモード用の走査線密度を低下して受信ビーム数を間引く送信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第4閾値より小さい第5閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、6位のパラメータ「Cサンプル数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Cモード用のサンプル点の密度を低下する受信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第5閾値より小さい第6閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、5位のパラメータ「Bビーム数(撮像領域幅)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Bモード撮像領域の方位方向における幅を狭める送信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第6閾値より小さい第7閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、4位のパラメータ「Bサンプル数(撮像領域深度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Bモード撮像領域の深度を浅くする送受信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第7閾値より小さい第8閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、3位のパラメータ「Cビーム数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、Cモード用の走査線密度を低下して受信ビーム数を間引く送信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第8閾値より小さい第9閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、2位のパラメータ「Cサンプル数(密度)」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、更に、更に、Cモード用のサンプル点の密度を低下する受信条件を送受信部12に送信する。
また、例えば、通信速度が第9閾値より小さい第10閾値未満となった場合、通信量制御部262は、図16に示す設定情報を参照して、1位のパラメータ「Cフレームレート」の変更を行う。具体的には、通信量制御部262は、Cモード画像のフレームレートを低下する送信条件を送受信部12に送信する。
図17は、第4の実施形態に係る超音波診断装置1の処理例を説明するためのフローチャートである。図17に示すように、通信量制御部262は、超音波画像の撮像が開始されると、超音波検査開始時に操作者が検査メニューに入力した撮像モードの情報を参照して、撮像モード(Bモード、Cモード等)を取得する(ステップS301)。
監視部261は、無線通信の通信速度を監視する(ステップS302)。そして、監視部261は、通信速度が閾値未満か否かを判定する(ステップS303)。なお、このステップS303における処理は、図12のステップS203における処理と同様であるので、詳細な説明を省略する。
監視部261によって監視される通信速度が閾値未満である場合には(ステップS303肯定)、通信量制御部262は、取得した撮像モードに応じた優先順位情報を参照し(ステップS304)、診断部位に応じてデータ量を削減する制御を行う(ステップS305)。例えば、通信量制御部262は、「Bモード+Cモード」であり、第7閾値未満であれば、「Bモード+Cモード」における優先順位情報を参照して、4位のパラメータ「Bサンプル数(撮像領域深度)」の変更を行う。
一方、通信速度が閾値未満ではない場合には(ステップS303否定)、通信量制御部262は、取得した診断部位に応じた優先順位情報を参照し(ステップS306)、現在行われているデータ量を削減する制御を解除する(ステップS307)。超音波診断装置1は、上記のステップS301〜ステップS307の処理を繰り返し実行する。
上述したように、第4の実施形態に係る超音波診断装置1において、通信量制御部262は、超音波プローブ10によって撮像される撮像モードに応じて、超音波プローブ10から装置本体20へ送信されるデータのデータ量の削減に用いるパラメータを変更する。このため、超音波診断装置1は、撮像モードに適した超音波画像データを出力することができる。
なお、第4の実施形態においてフレームレート、ビーム数(密度)及びサンプル数(密度)を低減する場合には、第2の実施形態で説明した方法が適用されても良い。
また、第4の実施形態は、超音波プローブ10により被検体Pが2次元走査される場合であっても、3次元走査される場合であっても適用可能である。
また、上述した実施形態では、超音波診断装置1が通信品質の指標値の一つとして通信速度を監視する場合を説明したが、実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1の監視部261は、無線通信部21が受信した無線信号の受信強度やSN比、受信信号のエラーレート、無線信号の送信時刻と受信時刻との差分である伝搬遅延等を監視することとしても良い。また、超音波診断装置1は、これらの指標値を組み合わせ、データ量の削減に用いるパラメータを変更しても良い。例えば、超音波診断装置1の監視部261は、通信速度と受信強度をそれぞれ監視し、いずれか一方が閾値を下回った場合に、パラメータを変更することとしても良い。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、超音波プローブと装置本体とが無線通信により接続される場合でも、画像表示のリアルタイム性を確保することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。