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JP2013536804A - 灌流組成物 - Google Patents

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Abstract

発明は、移植用のドナーの臓器を保存するための灌流原液組成物であって、60〜100mMのNa+の源と、10〜20mMのK+の源と、5〜10mMのMg2+の源と、0.25〜0.75mMのCa2+の源と、10〜40mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリスまたはTHAM)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、またはN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)と、10〜30mMのHCO3 -の源と、1〜30mMのグルコースと、1〜20U/Lのインスリンと、1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、1〜10mMの還元グルタチオンと、30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、任意に希釈液とを備える、灌流原液組成物を提供する。発明は、各々が灌流原液組成物に関連する、灌流組成物、キット、方法、および灌流装置も提供する。

Description

分野
発明は、灌流組成物および移植用のドナーの臓器を保存するための方法に関する。発明は、灌流組成物を調製するための灌流原液、灌流原液組成物または灌流組成物を備えるキット、および灌流組成物を用いてドナーの臓器を灌流するための灌流装置にも関する。
背景
何らかの先行技術の刊行物を本明細書中で参照する場合、そのような参照は、オーストラリアまたはいずれの他の国においても当該刊行物が当該技術分野の常識の一部を形成することの容認を構成するものではない。
臓器の外科的移植は、外科技術の向上、バイパス循環の導入、およびドナーの臓器の免疫拒絶を抑制する薬剤の開発により、1960年以来成功裡に行なわれてきた。臓器の生存度または生存率は、臓器提供、輸送、および移植の鎖の中の極めて重要な輪であり、移植後の臓器の機能および臓器の生存率に対する影響が大きい。
臓器のドナーは世界中で不足している。現在、移植用の臓器は、心臓および循環系が依然として機能している非常に限られた数の脳死ドナーからのものである。(境界ドナーまたは心停止ドナーとしても公知の)心臓死後臓器提供(DCD)ドナーは、心肺停止に基づき死亡確認が行なわれた別の種類のドナーである。DCD臓器提供は、腎臓、肝臓、および肺の臨床移植を拡大している。心臓はいずれの他の移植可能な臓器よりも温虚血の影響を受けやすいため、これはDCD臓器提供に対するかなりより大きな困難を呈する。
臓器の生存度を高くする1つの方法は、生理的な圧力および流れのパラメータを維持しながらの臓器の温灌流に係る。そのような方法は本質的に血液を灌流させる人工心肺に依拠する。ドナーの心臓またはレシピエントとのいかなる血液不適合反応も回避するため、正しい血液型の大量の血液が必要である。血液は、血液凝固阻止がなされていなければならない。血液型抗原は赤血球膜上に位置するので、全血の代わりに精製ヘモグロビンを用いればいずれの血液不適合反応も排除されるが、レシピエントがヘモグロビン輸血という複雑さに晒されてしまう。これに代えて、血漿および化学溶液を温灌流に用いてきた。しかしながら、温灌流に必要な機器は、嵩張り、扱いにくく、重く、輸送が困難であり、かつ高価である。
臓器が4℃に冷却されれば、代謝が大きく低下し、栄養分および酸素の必要性が低くなり、乳酸および代謝の他の毒性最終生成物の産生も大きく低減するため、臓器はより長時間エクスビボで生存するであろうことが長い間知られている。これに応じて、ドナーの臓器の受動的保存および能動的灌流が各々、4℃という低くされた温度で一般的に行なわれてきた。
心臓の保存は近年ほとんど変わっていない。臨床的には、最も広く用いられている保存の形態は、低体温による細胞代謝低下に基づく低体温保存である。ドナーの心臓が摘出される直前に4℃の心筋保護液をドナーの循環系に注入して心拍を停止させ、エネルギ消費を最小限にする。ドナーの心臓を無菌状態で迅速に摘出し、次に氷のように冷たい等浸透性食塩水で素早く洗浄する。次に、保存溶液(栄養分を含有するバッファ塩溶液)を含むプラスチックの袋に心臓を入れ、移植まで氷の上に保持する。溶液には酸素添加せず、臓器の血管を通って溶液を灌流しない。低体温保存の利点は、普遍的な利用可能性および輸送の容易さを含む。しかしながら、一般的に許容される冷虚血の限界は4時間である。さらに、低体温保存はDCD心臓からの移植では成功しておらず、そのため潜在的な移植用臓器のプールを制限している。
これに代えて、1967年に開発された低体温灌流は、栄養分を含有するバッファ塩溶液を用いて臓器の血管床を通した灌流に依拠する。単離された臓器のエクスビボ生存率は、灌流液に酸素添加すれば、さらに高めることができる。灌流流体は臓器が利用可能な酸素および栄養分を連続的に補充し、乳酸および他の毒性代謝産物を除去し、アデノシン三リン酸(ATP)および他の分子の合成を含むイオンポンプ活動および代謝を維持する。バッファは臓器の生理的pHおよびイオン強度を維持する。冷灌流法は移植臓器の生存度をより長時間にしたが、一般的に6〜8時間の虚血期間に限られている。
いくつかの低体温保存溶液が利用可能である。Collins保存溶液は高濃度のカリウム、マグネシウム、リン酸塩、硫酸塩、およびグルコースを含有する。高レベルのグルコースは細胞の膨張を抑制する効果的な浸透剤として作用する。マグネシウムは膜安定剤として作用するが、リン酸塩の存在下ではリン酸マグネシウムは沈殿物を形成した。Euro-Collins溶液は元のCollins溶液の変形であり、高濃度のカリウム、リン酸塩、およびグルコースを含有するが、マグネシウムを欠いている。
Ross-Marshall保存溶液はCollins溶液の代替物として開発された。それらの電解質組成物は、クエン酸塩がリン酸塩を置き換えていることとマンニトールがグルコースを置き換えていることとを除いて同様である。クエン酸塩はバッファとして作用し、マグネシウムとともにキレート化して細胞外環境を安定化させるのを助ける不浸透性分子を形成する。
ウィスコンシン大学(UW)保存溶液は、肝臓、腎臓、および膵臓の保存のために開発された。これは腎臓および肝臓の保存の基準として考えられており、腎臓および肝臓の虚血時間を効果的に延長するとともに、待機中のレシピエントまでのかなりの距離それらを輸送することを可能にする。
Bretschneider保存溶液は、ヒスチジン、マンニトール、トリプトファン、およびアルファケトグルタル酸を含む。これは、低濃度のナトリウム、カリウム、およびマグネシウムも含有する。ヒスチジンがバッファとして働き、トリプトファン、ヒスチジン、およびマンニトールが酸素フリーラジカル捕獲剤として作用する。
Celsior(登録商標)は、UW溶液からの不透過不活性浸透性担体とBretschneider溶液からの強力なバッファとを結合する最近開発された細胞外型低粘度保存溶液である。Celsior(登録商標)溶液中の還元グルタチオンは危険なフリーラジカルを除去する酸化防止剤として用いられる。溶液は心臓移植のために特定的に設計された。
いくつかの保存溶液は、たとえばニューレグリンまたはタクソール(登録商標)などの、輸送の間および輸送後の臓器の生存度を上昇させると考えられている化合物を導入している。
重要なことに、保存溶液は灌流用に設計されていない。それにも拘わらず、多くの保存溶液が心臓を灌流するのに用いられてきた。Celsior(登録商標)という例外があるが、それらは灌流溶液として働かず、Celsior(登録商標)は、特定的に誂えられた灌流溶液のようにうまくは働かない。一般的に、保存溶液は粘性であり、機械による灌流を必要とする。保存溶液を用いる灌流は心尖の遠位血管に到達せず、不完全であることがしばしばである。たとえば、ウィスコンシン溶液は非常に粘度が高いため、これは毛細管床を通って流れない。保存溶液を用いた灌流の結果、心臓の生存度は少し高まった。細胞内電解質プロファイルを有する溶液は灌流溶液としては毒性である。多数の報告は、右心房および右心室を洗い流す下大静脈中への溶液の注入と、左心房および左心室を洗い流す肺静脈中への溶液の注入とを記載する。そのように呼ばれることがあるが、これは灌流ではない。
したがって、移植用のドナーの臓器、特に心臓、特にDCD心臓の保存および生存度を向上させる灌流溶液の必要性が存在する。
要約
第1の局面は、移植用のドナーの臓器を保存するための灌流原液組成物を提供し、灌流原液組成物は、
(a) 60〜100mMのNa+の源と、
(b) 10〜20mMのK+の源と、
(c) 5〜10mMのMg2+の源と、
(d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
(e) 10〜40mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリスまたはTHAM)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、またはN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)と、
(f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
(g) 1〜30mMのグルコースと、
(h) 1〜20U/Lのインスリンと、
(i) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
(j) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
(k) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
(l) 1〜10mMの還元グルタチオンと、
(m) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、任意に
(n) 希釈液とを備える。
第2の局面は、第1の局面の灌流原液組成物と希釈液とを備える灌流組成物を提供し、灌流組成物は7.2〜7.4のpHおよび280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する。
第3の局面は、灌流原液組成物を備える、移植用のドナーの臓器を保存するための灌流組成物を調製するためのキットを提供し、灌流原液組成物は、
(a) 60〜100mMのNa+の源と、
(b) 10〜20mMのK+の源と、
(c) 5〜10mMのMg2+の源と、
(d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
(e) 10〜40mMのトリス、HEPES、MOPS、MEP、BES、またはTESと、
(f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
(g) 1〜30mMのグルコースと、
(h) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
(i) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
(j) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、
(k) 1〜20U/Lのインスリンと、
(l) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
(m) 1〜10mMの還元グルタチオンと、任意に
(n) 希釈液とを備え、
任意に(a)〜(j)は(k)〜(m)および任意に(n)から分離され、使用の際、(a)〜(m)および任意に(n)を組合せて灌流組成物を調製し、灌流組成物は7.2〜7.4のpHおよび280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する。
第4の局面は、移植用のドナーの臓器を保存する方法を提供し、方法は、灌流組成物を用いて5〜10℃でドナーの臓器を灌流するステップを備え、灌流組成物は、
(a) 60〜100mMのNa+の源と、
(b) 10〜20mMのK+の源と、
(c) 5〜10mMのMg2+の源と、
(d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
(e) 10〜40mMのトリス、HEPES、MOPS、MEP、BES、またはTESと、
(f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
(g) 1〜30mMのグルコースと、
(h) 1〜20U/Lのインスリンと、
(i) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
(j) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
(k) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
(l) 1〜10mMの還元グルタチオンと、
(m) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、
(n) 50〜100%飽和O2とを備え、
還流組成物は7.2〜7.4のpH、280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する。
本発明のさらなる局面に従うと、調整可能な弁を介して心臓の大動脈基部に結合されるように適合される灌流溶液貯蔵部を内蔵する温度制御された筺体と、大動脈基部から心臓を懸架し、それにより灌流溶液が心臓を通って重力送りされて集められる手段とを備える、灌流装置が提供される。
臓器移植は50年にわたって行なわれてきたが、臓器のレシピエントにおいて臓器の生存度を保証するドナー臓器を保存する方法または灌流組成物は分かっていない。たとえば、低体温保存、低体温灌流保存、および低体温晶質灌流などの特定的な状況下で少しずつ改善がなされてきた。そのような保存技術で用いるために、たとえば溶液などの数多くの組成物が開発されてきた。それにも拘わらず、移植用のドナーの臓器を保存するための普遍的なまたは普遍に近い灌流組成物は分かっていない。その結果、ドナーの臓器の生存度を改善することができるそのような普遍的なまたは普遍に近い灌流組成物の必要性が長く感じられてきた。
発明者らは今回、以下の利点を有するそのような普遍的なまたは普遍に近い灌流組成物を開発した。
1.標準的保存の現在の4時間という限界を超える、ドナー臓器、特にDCDドナーの心臓の保存の長期化、
2.保存の間の、ドナー臓器、特にDCDドナーの心臓の好気性代謝の容易化、
3.標準的保存(標準的心臓保護および冷保管)と比較した、ドナー臓器、特にDCDドナーの心臓の優れた機能的および代謝的回復の提供、
4.移植に十分な、ドナー臓器、特にDCDドナーの心臓の回復の可能化、
5.移植の間および移植後の、損傷を受けたドナー臓器、特にDCDドナーの心臓の蘇生の促進、ならびに
6.臨床適用のための簡略さおよび実用性。
換言すると、発明者らは、保存期間を長くすることによって臓器の生存度を高めるだけでなく、臓器のレシピエントにおけるドナー臓器の回復および蘇生も促進する、灌流組成物および移植用のドナーの臓器を保存するための方法を開発した。
発明者らは、灌流組成物および方法が心臓、腎臓、肝臓、肺、および心臓移植に好適であると結論付けるが、発明者らは、灌流組成物および方法がDCDドナーの臓器移植および特に心臓移植に特に適していることを実証した。
脳死ドナーと管理(controlled)心停止後臓器提供(DCD)ドナーとの図示による比較の図である。 5℃〜35℃の間の温度での心筋酸素需要を示すグラフの図である。 ドナーの心臓に取付けられる灌流組成物送達ラインアセンブリを収納するキャビネットを図示する斜視図である。 キャビネットのドアを外した状態の、ドナーの心臓に結合されるアセンブリを内蔵する図3のキャビネットの斜視図である。 ドナーの心臓に結合された送達ラインアセンブリの詳細図である。 図3から図5の装置を用いて灌流される心臓の機能的評価に用いられる、ワーキングハート装置(working heart apparatus)の概略図である。 実施例2に従って12時間灌流された正常な心臓における心臓出力に対する左心房内圧の影響のグラフの図である。 実施例2に従って12時間灌流された正常な心臓における心臓仕事率に対する左心房内圧の影響のグラフの図である。 実施例2に従って12時間灌流された正常な心臓における心臓効率に対する冷保管または灌流の影響のグラフの図である。 実施例2に従って12時間灌流された正常な心臓における乳酸塩変化に対する冷保管(嫌気性代謝)または灌流(好気性代謝)の影響のグラフの図である。 現在の臨床医療に対して発明の灌流組成物を比較するための実施例3の実験プロトコルの概略図であり、左側は4時間の低体温灌流保存または標準的保存がされたDCD心臓の図であり、右は正常な心臓の図である。 左室面積変化率の算出に用いる心エコー図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓の灌流保存の間の個別の実験の灌流圧のグラフの図である。 図13Aのすべての実験についての平均灌流圧のグラフの図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓中の冠灌流に対する灌流の間の心筋酸素消費のグラフの図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓中の乳酸塩産生に対する灌流時間の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓のRIG装置における乳酸塩レベルのグラフの図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓における心臓仕事率に対する左心房内圧の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って処置される、15mmHgの左心房内圧でのDCD心臓の心臓仕事率に対する4時間の標準的保存(冷保管)または灌流の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って4時間灌流されたDCD心臓における心臓出力に対する左心房内圧の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って処置される、15mmHgの左心房内圧でのDCD心臓の心臓出力に対する4時間の標準的保存(冷保管)または灌流の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って処置される、15mmHgの左心房内圧でのDCD心臓の左心室内圧の最大変化率に対する4時間の標準的保存(冷保管)または灌流の影響のグラフの図である。 図11および実施例3に従って処置される、10mmHgの左心房内圧でのDCD心臓の心筋酸素効率に対する4時間の標準的保存(冷保管)または灌流の影響のグラフの図である。
詳細な説明
灌流保存
本発明は、エクスビボの臓器を通して灌流されると、細胞損傷および再灌流損傷を最小限にするのに必要な極めて重要な化学的平衡を持続する灌流組成物に関する。このように、発明は、移植用のドナーの臓器を保存する方法にも関する。この発明は、虚血の際の細胞中のカリウム/ナトリウムの平衡および有害なフリーラジカルの排除を説明する。この灌流組成物は心臓灌流組成物として例示されるが、組成物は、腎臓、肝臓、肺、および膵臓などの他の臓器を灌流するのに用いられてもよい。
本明細書中で用いるように、「保存する」、「保存」、および同様の用語は、ドナーの臓器が臓器提供前にドナーの中で行なっていたようにレシピエント中で同等に機能するように、ドナーの臓器の摘出から臓器のレシピエント中での蘇生まで生存度を維持することを指す。
本明細書中で用いるように、「保存」組成物は、灌流が存在しない状態でドナーの臓器を受動的に保存するように設計される組成物である。これに対し、本明細書中で用いるように、「灌流」組成物は、灌流によりドナーの臓器を能動的に保存するように設計される組成物である。
臓器が摘出されると、臓器は虚血によりすぐに劣化し始め、次にこれらの臓器は、移植臓器がその新しい宿主に導入されると再灌流障害を受ける。組織に対するこの損傷は、虚血の期間後に血液の供給、特に血液中を運ばれる酸素、が組織に戻った際に、継続する可能性がある。酸素の再導入は、損傷を与えるフリーラジカルのより多くの産生と、細胞外アシドーシス状態の除去を介したカルシウムの流入およびしたがってカルシウム過負荷とを許してしまう。そのようなラジカルは細胞膜脂質、タンパク質、およびグリコサミノグリカンを攻撃して、さらに損傷を与える可能性がある。血液中に酸素および栄養分がないことは、正常な機能の回復よりもむしろ、再灌流が酸化ストレスの誘導を通して炎症および酸化損傷という結果を招いてしまう状態も作り出してしまう。虚血の期間の間に体外で細胞寿命を維持する際の別の問題は、細胞水和の致命的な変化の防止である。灌流組成物が、臓器の細胞が細胞完全性を維持するのに必要とするのと同じ数の栄養分を維持することと、フリーラジカル、毒素、および廃棄物が、それらが正常機能臓器中ではそうされるように細胞から除去されることが極めて重要である。
冷灌流または低体温灌流は、代謝活動の低下により、細胞の崩壊および破壊の速度を遅くするが、代謝が完全に抑制されるわけではない。37℃から10℃への冷却は細胞の代謝を約12倍低下させる一方で、2〜4℃へのさらなる冷却は細胞代謝を20〜40倍低下させる。1つの実施形態では、発明の灌流組成物を用いて臓器を2〜10℃の間で灌流する。別の実施形態では、灌流組成物を用いて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20℃、またはその間の任意の範囲で臓器を灌流してもよい。これは代謝活動を低下させ、細胞成分の酵素分解を遅くし、正常な活動のために臓器が必要とする酸素および有機物質の臓器による需要も低減し、こうして毒性の酸、廃棄物を含むその代謝活動の廃棄副生成物およびフリーラジカルの産生も少なくする。代謝および細胞エネルギ貯蔵分の利用が遅くなるが、細胞代謝エネルギの主な源であるATPおよびアデノシン二リン酸(ADP)も、低体温の間に徐々に涸渇する。低体温は脂質の相転移を生じ、その結果、膜の安定性が低くなる可能性がある。さらに、これは膜に結合した酵素の機能を劇的に変える。低体温によって誘導された膜の構造的変化は浸透性を増大させ、これはセルの膨張に寄与する。
4〜8℃での灌流は、基礎嫌気性代謝に優先して基礎好気性代謝を維持することを除き、全体的な代謝を低下させる必要性のバランスを取る。
虚血心臓の冷灌流の間の主な目標は、心臓細胞膜の完全性および心臓細胞膜電位の完全性を維持することである。心臓細胞は通常、高濃度のカリウムおよび低濃度のナトリウムを有する一方で、細胞外流体は低カリウム濃度および高ナトリウム濃度を有する。細胞内心臓イオン濃度は、精力的に駆動されるプロセスによって細胞外へナトリウムイオンをポンプ排出することによって維持される。心臓が冷却されると、酸化的リン酸化によるエネルギ発生が停止し、ナトリウムイオンはポンプ排出されなくなる。次に細胞内ナトリウム濃度が上昇する。発生したナトリウム過負荷は、いくつかの異なるメカニズムにより筋肉細胞傷害および細胞死を生じる、異常に高いカルシウム流入を伴う。これらの状況下で、好気性糖分解から嫌気性糖分解への切換が達成されるが、乳酸の産生も増大する。
心臓死後臓器提供(DCD)
現在、ほとんどすべてのドナーの心臓は限られた数の脳死ドナーから得られる。脳死の判断基準は1968年に導入され、今日世界中で受入れられている。脳死は、脳幹を含む脳全体の機能の不可逆的停止である。脳死の診断は臨床的に行なわれるが、コンピュータ断層撮影(CT)、脳血管造影法、および脳波記録法(EEG)などの他の検査が当該プロセスを補助することができる。
最近まで、大部分の移植臓器は標準的な判断基準のドナーから得ていた。これらは、臓器提供のための厳しい医学的判断基準を満たす、ハートビーティングドナー(HBD)とも称される脳死ドナーである。標準的な判断基準のドナーは、彼らの若い年齢、好ましい医学的状態、ならびに適時の臓器調達、保存技術の即時の開始、および虚血時間の短縮を可能にする病院の集中治療室(ICU)内の場所により、「理想的な」ドナーとみなされる。移植を増やそうとして、境界ドナーまたは拡大基準ドナーと称される標準的な判断基準では理想的と考えられない臓器(たとえばより高齢の患者からの臓器)を利用し始めている移植ユニットがある。
ドナーの臓器の別の潜在的な源は、「心臓死後臓器提供」または「DCD」ドナーである。DCDでは、ドナーを死亡と診断するのに2つの判断基準を満たさなければならない。第1は、心肺機能の停止、すなわち不全収縮、無呼吸、および刺激に対する無応答である。第2は、機能の停止が不可逆であることである。オーストラリア、メルボルンのAlfred Hospitalでは、DCDドナーは、触診できる脈がないことおよび/または心電図(ECG)モニタ上の電気的活動がないこととして定義される心停止(不全収縮)の開始5分後に死亡確認がされる。DCDドナーと同義の用語は、心停止ドナー(NHBD)および心循環系死後臓器提供ドナーを含む。
脳死ドナーとDCDドナーとの間の決定的な違いは、インサイチュー温虚血が著しい心筋障害(図1)に繋がるDCDに固有であることである。温虚血時間の定義は施設によって異なる。Alfred Hospitalでは、温虚血時間は、収縮期血圧が50mmHgを下回ることと冷保存の開始との間の持続時間である。別の一般的な定義は、機械的な換気の停止から冷保存の開始までの間の時間間隔である。これは、心停止と患者の死亡確認との間に適用されるスタンドオフ期間(stand-off period)(典型的には2〜5分)を含む。脳死ドナーはそのような温虚血には遭遇しない。神経学的判断基準に基づき、死亡が臓器提供の十分に前に宣告され、臓器は冷保存が施される瞬間まで心臓によって灌流されたままである。
冷虚血時間は冷保存の開始から移植後の血液灌流の回復までにわたり、グラフト植込の期間を含む。この期間は脳死ドナーおよびDCDドナーについて同じである。
DCDの臓器に対するさらなる損傷を最小限にすることが特に重要である。というのも、それらは既に温虚血によって傷害を受けているからである。本発明はこの必要性に対処している。4種類のDCDドナーが同定されている(表1)。
カテゴリIIIのドナーがDCD臓器提供の最も一般的な源である。このドナーは、回復の見込みがない深刻な不可逆的脳損傷を有しているが脳死の判断基準を満たしていない。生命維持の中止および臓器提供の両方についてインフォームドコンセントが一旦得られると、機械的な換気および生命維持がICUまたは手術室のいずれかで中止される。結果的に低酸素心停止が起こり、必須のスタンドオフ期間後に死亡が宣告される。そのときのみ臓器の調達を進めることができる。カテゴリIIIのドナーは管理DCDドナーと呼ばれる。というのも、循環停止の瞬間を計画することができ、温虚血の正確な期間がわかっているからである。
他のDCDドナーは、カテゴリI、II、およびIVドナーを含む。カテゴリIVでは、脳死患者は、冷灌流の開始の数分前に臓器調達の際の心停止を起こす。したがって、温虚血はほんの数分に限られる。カテゴリIVのドナーは管理DCDドナーと考えられる。カテゴリIおよびIIは非管理(uncontrolled)DCDドナーである。死亡は不測であり、温虚血の正確な持続時間がわからないことが多い。これは、移植医療への可能な適用を複雑にする臓器の生存度の問題を提起する。
DCDドナーのシナリオは、確立された臓器移植の倫理的原則の他に、付加的な要因の検討を義務付ける。心肺機能の不可逆的停止を宣言するのに必要な、不全収縮の開始後の観察持続時間は議論の的である。一方では、不全収縮が実際に永続的でありかつ自動蘇生(機能の自発的な再開)が起こらないことが確実になるには、十分な観察期間が絶対必要である。しかしながら、DCDプロセスの性質は、提供される臓器およびそれらのレシピエントの回復の可能性を最大限にするには虚血時間を短縮することが最良であるというものである。後に自動蘇生する最長不全収縮期間は60秒未満である。これは、不全収縮後に死亡を宣告するには「少なくとも2分間の観察が必要であり、5分超は推奨されない」と結論付けた医学研究所および米国集中医療学会によって考えられたことである。2分間の不全収縮後に外部刺激によって心臓が再開する可能性があることには議論の余地があるが、しかし、行なわれている治療の無駄および治療を中止するというその後の決断の設定においては、大部分は、心肺機能が停止し、自発的に再開しないであろうときに死亡となったと同意する。しかしながら、心臓が再開すれば、心臓の判断基準に従うと、心臓が摘出されたドナーが死亡したということはあり得ない。そうでない場合、心臓が一旦3〜4分を超えて停止すれば、脳死が後で起こり、体全体が生き返ることはあり得ない。
移植の歴史が浅いときは、腎臓、肝臓、および膵臓を含むグラフトがDCDドナーから得られた。しかしながら、脳死の導入後、大部分の臓器は脳死ドナーから調達されてきた。過去15年間、ドナー臓器不足の増大がDCDドナーに対する関心を新たにした。
管理DCDドナーおよび非管理DCDドナーの両方からの腎臓の移植において良好な臨床結果が達成された。カテゴリIIIのDCDドナーの腎臓の提供を受ける患者は、結果的に入院がより長くなる、遅延したグラフト機能の率が上昇するにも拘わらず、一次グラフト不全および12ヶ月での平均クレアチニンという観点で、脳死ドナーの腎臓の提供を受ける患者と大きく異ならない。6年での患者およびグラフトの生存率は、脳死臓器提供の場合の89%および87%とそれぞれ比較して、DCDではそれぞれ83%および80%と報告されている。
移植センターは、カテゴリIIIのドナーに由来するDCDドナーの肺を用いた肺移植および肝臓移植においてもDCDドナーを利用した。非管理DCDドナーの肺移植の有望な話もある。
最初のヒトの心臓移植は、実際にDCDドナーを用いた。しかしながら、脳死後の臓器提供の開始以来、多数の理由により、DCD心臓の臨床移植は稀であった。第1にかつ真っ先に挙げられるのは、温虚血に対する心臓の脆弱さに関する大きな懸念であった。心臓は、この損傷により十分に耐えることができる腎臓、肝臓、および肺とは異なる。第2に、DCD心臓では再灌流傷害が特に深刻であり、既に損傷した心筋に対してさらに傷害を加えてしまう。第3に、保存技術は、DCD心臓の一貫したかつ十分な心筋の回復を与えることに失敗した。第4に、DCD心臓が植込前に受けるかもしれない潜在的な損傷を考慮すると、生死に係わるグラフトの生存度を評価する好適な方法が存在しない。
傷害のメカニズム
「虚血」は、需要に対する不十分な血液供給を意味する。これは、動脈脈管構造中の機械的障害物によって生じて、酸素および栄養分の供給の減少に繋がる血流の減少または中断によることがほとんどである。虚血の開始時には、酸化的リン酸化がATP生成の減少の発生を止める。虚血心筋は嫌気性糖分解を介してATPを産生し続けることができるが、このプロセスは非常に非効率的であり、(好気性条件における38モルのATPと比較して)グルコース1モル当たり2モルのATPを産することしかできない。減少するATPはナトリウム−カリウムポンプの不全をもたらし、その結果、細胞内のナトリウム過負荷および浮腫が生じる。ATP生成を妨げるミトコンドリア透過性遷移孔(MPTP)が開いている細胞内空間の中にカルシウムがどっと流れ込み、細胞膜を破壊する酵素を刺激し、心筋拘縮および不整脈を生じる。乳酸塩などの有害な代謝産物が蓄積する結果、組織のアシドーシスが起こる。これらの早期の変化は、血液および酸素の供給が迅速に再確立されれば可逆である。しかしながら、虚血が持続すれば、組織に対する不可逆的傷害が後で起こる。
心筋は虚血傷害に対して極めて脆弱である。可逆の傷害が不可逆になる虚血の正確な持続時間はわからない。しかしながら、10分間の温虚血後にイヌの心臓はATPレベルの70%の低下を示し、20分間の温虚血の後には心筋組織に対する不可逆的傷害の証拠が存在し、60分間の温虚血間隔の後には、心臓は、「急性心臓死(stone heart)」と称される状態である収縮機能を有しない過剰収縮となる。心筋に対する不可逆的傷害は深刻な虚血の開始の約20〜30分後に始まると一般的に考えられている。確かに、心臓は虚血に対して非常に敏感であり、それが被る損傷は可逆から不可逆へと急速に進む。
血流が減少したまたは存在しない期間の後の血流の再導入は「再灌流」として公知である。適時の再灌流は虚血傷害の程度を最小限にし、可逆に傷害を受ける細胞の回復を促進することができる。しかしながら、再灌流自体は、虚血組織が被り、これによりさもなければ回復しなかったかもしれない細胞死を生じる損傷を逆説的に悪化させ、かつ加速させる可能性がある。これは「再灌流傷害」または「虚血−再灌流傷害」として公知であり、心筋梗塞、脳卒中、および臓器移植における重要な検討課題である。いくつかのメカニズムが再灌流傷害の原因であると考えられ、以下のものを含む。
1.カルシウム過負荷。再灌流の早期段階では、ナトリウム/水素(Na+/H+)交換輸送体(NHE)は、ナトリウムを細胞の中に入れて、虚血の際に生じる既存のナトリウム過負荷を悪化させることにより細胞内アシドーシスを補正しようとする。ナトリウム−カルシウムポンプはその後、ナトリウムをカルシウムに交換し、カルシウム過負荷およびその有害な結果を生じてしまう。
2.酸化ストレス、再灌流、およびより特定的には再酸素化が、フリーラジカルとしても公知の活性酸素種(ROS)を生成する。ROSは、脂質過酸化により細胞膜を直接に損傷し、細胞タンパク質、炭水化物、およびDNAも損傷する。
3.補体系の活性化は血管ホメオスタシスを変化させ、血流が損なわれるという結果を生じる白血球−内皮細胞接着を増す。
4.白血球活性化は、ROS、プロテアーゼ、およびエラスターゼを放出させ、その結果、増大した微小血管の浸透性、浮腫、血栓、および実質細胞死を生じる。
5.無リフロー現象。虚血および再灌流が両者とも血管傷害を生じ、これが十分に深刻であれば、血液供給が回復された後ですら虚血組織への血流が妨げられたままとなる、無リフロー現象という結果を生じ得る。
ドナーの心臓は多数の潜在的な傷害源に晒される。これらは、脳死によって誘導される心筋損傷、DCDにおけるインサイチュー温虚血、外科的傷害、保管の間のエクスビボ冷虚血、および再灌流傷害を含む。これらの傷害の各々の深刻さを最小限にすると、ドナーの心臓の回復の可能性が最大限になる(表2)。温虚血に対する心臓の許容度が劣っているために、ドナーの心臓の管理はDCDドナーではより一層重大である。
心臓保護液
心臓保護液は、冠動脈バイパスグラフティング、弁修復および置換を含む心臓手術の大部分の形態で用いられる。これらの溶液は、心停止を迅速に誘導し、心臓の温度を低下させて心筋エネルギ需要を低下させ、かつエネルギ貯蔵分を保存するように、ドナーの心臓調達にも用いられる(図2)。
本明細書中で用いるように、「心臓保護」は、当業者には公知の「心臓保護液」を用いて一般的に誘導される心臓活動の意図的かつ一時的な停止を指す。
本明細書中で用いるように、「標準的心臓保護」は、当業者には公知の単一の心臓保護液を用いて誘導される心臓保護を指す。
臓器の保護を最適化しようとして多数の心臓保護液が開発された。これらを細胞内型および細胞外型溶液に大まかに分けることができる。前者はウィスコンシン大学(UW)液によって例示され、後者は聖トマス病院No.2およびCelsior(登録商標)溶液によって例示される(表3)。細胞内型溶液は、生理的細胞内空間と同様のイオン濃度を有し、細胞外型溶液は生理的細胞外空間と同様のイオン濃度を有する。たとえばラクトビオン酸塩、ラフィノース、およびグルタチオンなどの、心臓保護液で用いられている数多くの添加剤も存在する。さまざまな心臓保護液および添加剤の相対的な有効性についての詳細な議論はこの検討の範囲を超えるが、以下は細胞内型および細胞外型溶液の簡単な比較である。
細胞内溶液は元々、腎臓および肝臓を含む固形臓器の保存のために開発された。しかしながら、通常の心臓手術では、外科医は主に心臓を停止させるのに細胞外溶液を用いる。Alfred Hospitalでは、聖トマス病院No.2溶液が通常の心臓手術およびドナーの心臓保存に用いられる標準的心臓保護である。
低体温は心筋のエネルギ要求を低減する(図2)。虚血心臓の代謝率を低下させることにより、低体温は組織の劣化を遅くする。長期保存(3〜6時間)のための理想的な温度は4℃であることが示されている。尤も、受入れられる限界は4時間である。この技術には、酵素機能の阻害、ATP生成および利用に対する干渉、ならびに細胞浮腫を含む欠点もある。
冷保管は、今日心臓移植で用いられる心臓保存の標準的技術である。心臓保護停止の後、心臓は、保管期間の間、冷たい保存流体で満たした袋の中に入れられる。袋は、低体温を維持するように氷で囲まれる。
本明細書中で用いるように、「低体温保存」、「冷保管保存」、「冷保管」、および同様の用語は、氷または氷の置換物を一般的に用いた、かつ灌流なしの約2〜4℃でのドナーの臓器の維持を指す。
冷保管の強みは、その簡便さ、便利さ、および低コストである。しかしながら、これは、6時間の最大安全虚血時間を含む多くの限界を有する不完全な技術である。これは、オーストラリアのドナーが時々ニュージーランドのレシピエントに適合するまたはその逆の場合に、特にオーストラリアおよびニュージーランドで、地理的に遠隔の場所から心臓を輸送する際の大きな障害となる。この制限時間内ですら、虚血期間が延びるにつれて細胞の完全性が劣化し、再灌流後の心筋障害のリスクが劇的に上昇する。臓器の虚血時間が6時間である心臓移植レシピエントの1年死亡率は、虚血時間が3時間以下であるレシピエントの2倍高いと報告されている。オーストラリアおよびニュージーランドでは、一次グラフト不全はレシピエントの死亡原因の9%となっている。
本明細書中で用いるように、「標準的保存」とは、冷保管とも称される単一の心臓保護液および低体温保存を用いる心臓保護を指す。
灌流保存は、血液またはたとえば灌流液として公知の溶液などの晶質(非血液)組成物を用いてエクスビボで臓器を灌流する技術である。これは多くの利点を有し、腎臓、肝臓、膵臓、肺、および心臓を含むさまざまな臓器の保存を改良する潜在的な方法として認識されている。
本明細書中で用いるように、「灌流」とは、「灌流組成物」または「灌流液」中に与えられる栄養分の、ドナーの臓器中の毛細管床への送達のプロセスを指す。
心臓の低体温灌流保存で、灌流液は、心筋の完全性を保存するように設計されるさまざまな添加剤を含む心臓保護液に基づいている。細胞内および細胞外溶液の両者ともが用いられてきた。
本明細書中で用いるように、「低体温灌流保存」、「低体温灌流」、「冷灌流」、および同様の用語は、灌流と結合される、約0〜10℃での臓器の維持によるドナーの臓器の保存を指す。灌流液または灌流組成物は、血液のみ、血液を備える溶液、または非血液溶液を備えてもよい。心臓保護は、当業者にとって公知の単一の心臓保護液を用いる標準的心臓保護であってもよく、または本明細書中に開示するような2つの心臓保護液を用いる2部式心臓保護であってもよい。
実験の証拠は、冷保管と比較して、低体温灌流保存がドナーの心臓の保存を改良し得ることを示唆する。これは、より長距離からの臓器のアクセスと、移植前のより良好なドナー/レシピエント組織適合のための機会とを可能にする安全な虚血時間を長くする。4〜24時間とさまざまである虚血時間にわたる基質および酸素の連続的な供給により、好気性代謝を進行させることができ、これは、冷保管と比較して、心筋ATP貯蔵分および組織のpHをより良好に保護する。酸素ストレス、DNAの損傷、およびアポトーシスも低減される。低体温灌流保存は乳酸塩産生を低減し、このことは、与えられた基質および酸素をこれらの心臓が好気性代謝のために利用することができることを示唆する。最後に、低体温灌流保存は、短い保管間隔と長い保管間隔との両方の後のグラフト機能を向上させる。
組織浮腫は灌流保存の主な懸念である。以前の研究は、冷保管で保存された心臓と比較して、灌流された心臓は重量増加の程度が5倍高いことを示した。灌流保存では、浮腫ができるために、血管圧迫による冠抵抗が増す可能性があり、その結果、循環が妨げられ、心筋保護が最適以下となる。しかしながら、浮腫は可逆であり得、少量の浮腫は必ずしも心臓の機能を損なわないかもしれない。浮腫に係るメカニズムをより十分に理解することにより、たとえばより低い灌流速度および灌流液への膨張剤の添加などにより本灌流方法を変更してこの問題を最小限にすることができる。
低体温灌流保存が冷保管よりも良好な心筋回復を与えるという証拠にも拘わらず、移植ユニットはドナーの心臓保存のための標準的技術としての冷保管の使用を続けてきた。これは、冷保管が単純で、安全で、予測可能で、安価であり、虚血が4時間に制限された場合に標準的なドナーの心臓の十分な保護を与えるからである。また、既存の技術の異種性(heterogeneous nature)および低体温灌流保存の制限された臨床適用は、心臓の灌流保存のための最適なプロトコルが依然として定まっていないことを意味する。しかしながら、境界ドナーおよびDCDドナーを利用することによってドナーのプールを拡大しようとする協調した取り組みは、これらの損傷した臓器を保存するための技術としての灌流保存への関心を新たにした。
氷の中での冷保管は、4時間までの標準的な脳死ドナーの心臓の保存には十分かもしれないが、DCD心臓は死期の深刻な温虚血傷害を受けており、したがってそれ以上のいかなる損傷も不可逆的傷害を生じる可能性がはるかに高い。以前の研究は、豚の心臓に0〜60分の間のさまざまな温虚血期間を与え、その後に2時間これを冷保管した。著者らは、死後10分以上たって調達して、次に冷保管した心臓は蘇生できず、移植には不適であると結論付けた。我々のユニットからのその後の研究は、イヌモデルで、30分間放置し、その後換気を停止し、4時間冷保管した心臓の回復が非常に不十分であることを実証した。機能的な回復は、ドナーに予め処置を施すことによって実験的に向上させることができる。しかしながら、メチルプレドニゾロン、デキストロース、ニフェジピン、およびプロスタグランジンE1などのドナーの予めの処置は、最適な臓器保護のためには望ましいかもしれないが、それらは倫理的に許容不可能である。なぜなら、それらはドナーにとって有益でなく、したがって臨床的に好適でないからである。
DCD心臓の保存のための冷保管の好適な代替策を見出すために試みがなされてきた。「血液心臓保護」(全血と心臓保護液との混合)および/または全血を用いた灌流を試験し、部分的には成功し、部分的には失敗した。今日までの研究は、DCD心臓が、血液心臓保護および/または全血を用いて灌流されれば移植に向けて十分に回復することができるかもしれないと示唆する。しかしながら、以前注記したように、これは技術的に厳しくかつ高価である。
低体温灌流保存の別の形態は、改変された心臓保護液とは異なるたとえば溶液などの晶質(非血液)組成物を用いる。DCDドナーの心臓のいわゆる「低体温晶質灌流」は、DCDドナーとは関係のない、放血によって死亡を誘導した動物モデルにおいてのみ試験された。
本明細書中で用いるように、「低体温晶質保存」は、灌流組成物または灌流液がたとえば溶液などの非血液組成物である「低体温灌流保存」を指す。
DCD心臓の蘇生および移植による臨床経験は稀である。報告されている成功した小児科DCD心臓移植は3件である。生命維持の中止後のドナーの死亡までの平均時間は18.3分であり、保存技術の開始前のスタンドオフ期間は1.25〜3分の間であり、平均合計虚血時間は162分であった。患者が少数であると出せる結論が限られるが、標準的な臓器提供を通じて調達された移植を受けた17人の幼児の対照群と比較して、移植後6ヶ月で、DCD心臓移植レシピエントは、より高い生存率(100%対84%)、同様の数の拒絶症状発現、心エコーで測定される同等の心臓機能を有した。単離されたワーキングハート装置(isolated working heart apparatus)でのエクスビボ評価を用いた管理DCDドナーからのヒトの心臓の保存に向けられた2つの試みが報告されている。一方の心臓は23分間の温低酸素後の血液再灌流により完全な機能を回復した一方で、他方の心臓は、17分間というより短い温虚血時間に拘わらず、劣った機能回復を示した。ヒトのDCDドナーの心臓を用いたこれらの予備的な経験は、DCDドナー心臓移植の分野での将来的な研究開発を支援する。
氷中での冷保管のドナー心臓保管のための臨床医療における通常の技術は、4時間までの虚血時間については標準的な脳死ドナーの心臓の十分な保護を与える。しかしながら、死の過程の間の深刻な温虚血傷害を受けるDCDドナーの心臓は、冷保管で保存されれば、回復が不十分となってしまう。一方で、正常体温血液灌流は、DCD心臓が移植に好適な機能を回復できるようにした。ドナーの心臓の臨床的血液灌流に利用可能な市販の機械があるが、脳死ドナーの心臓の心臓移植においては臨床適用が限られており、DCD心臓移植においては明らかに適用例がなかった。残念ながら、この複雑な機械は通常、購入に100,000ドルの費用がかかり、使用する毎に50,000ドルの価値の使い捨て物品も必要とする。このひどく高くつくコストは、通常の臨床医療への血液灌流の適用を厳しく限定する。灌流は、たとえば溶液などの晶質(非血液)組成物を用いて低体温温度で送達することも可能である。この技術は、血液灌流よりも潜在的により費用対効果が高くかつ単純であり、正常な心臓で効果的であると実証されている。DCDドナーの心臓の低体温晶質灌流についての既存の研究は有望な結果を与えているが、これらは臨床医療に適用できない条件下で行なわれた。この保存方法は、臨床DCD臓器提供のうち多数、すなわちマーストリヒトカテゴリIIIのDCD臓器提供、を反映するモデルでは実行されていない。表4は、ドナーの心臓の保存のための冷保管と、正常体温血液灌流と、低体温晶質灌流とを比較する。
いずれの特定の仮説にも拘束されることを望まず、発明者らは、以下の成分およびそれらの提案されるメカニズムが発明の灌流組成物および方法の基礎であると考える。
2部式AMPI心臓保護
DCDドナーでは、心停止は低酸素によって誘導されるが、発明者らは、心臓を冷却する、代謝基質を供給する、および再灌流傷害を低減する役割のある心臓保護を「抑制する酸性ミトコンドリア孔」を利用した。本明細書中に開示するような低体温晶質灌流は、標準的な心臓保護とは区別される2部式心臓保護を利用した。両方の部分は添加剤および改変を含む聖トマス病院No.2(表3)心臓保護に基づいており、これらは以下を含む。
・アスパラギン酸塩、ATP産生を刺激するアミノ酸。アスパラギン酸塩は、大動脈流および心臓出力の両方によって測定されるような心臓の機能的回復を向上させ得る。アスパラギン酸塩は、心筋組織のイオン完全性を維持することがあり、心臓中の重要な中間代謝産物である。アスパラギン酸塩は、細胞へのミネラルおよび栄養分の輸送を補助することがある。アスパラギン酸塩は、ATPアーゼポンプが中断する期間の間に高レベルのカルシウムイオンが細胞に入るときに興奮毒性に抗することもある。グルタミン酸塩をアスパラギン酸塩の代替物として用いてもよい。1つの実施形態では、心臓保護液は14mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩を備える。別の実施形態では、心臓保護液は20mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩を備える。他の実施形態では、心臓保護液は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩を備えてもよい。アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩はK+またはNa+塩として与えられてもよい。
・アデノシンはA2Bアドレナリン受容体を介して冠動脈の血管拡張を生じさせ、これにより冠血管抵抗を低下させる。アデノシンは、乳酸塩の蓄積を低減し、機能を向上させることもある。血管拡張神経薬は細胞膜の浸透性を増すことがある。アデノシンは過分極化媒介カルシウムチャネル遮断薬であり、細胞内カルシウムのレベルに影響し、これにより細胞内カルシウムを減少させる。アデノシンは、虚血事象の際に膜の電位を安定させるATPに感度のあるカリウムチャネルも広げる。アデノシンは、長期にわたる灌流の間に冠循環における末梢血管収縮を防止する。というのも、これは心筋における高エネルギのリン酸塩の貯蔵分も増加させ、およびしたがって灌流の際の代謝の回復を容易にするからである。たとえば、糖分解活性に対して好ましい影響も有する環状アデノシン一リン酸(cAMP)および環状グアノシン一リン酸(cGMP)などの他の血管拡張神経薬を心臓保護液中で用いることができる。1つの実施形態では、心臓保護液は5μMのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備える。他の実施形態では、心臓保護液は、1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25μMのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備えてもよい。これに代えて、心臓保護液は、1、2、3、4、5、6、または7mg/Lのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備えてもよい。
・インスリンを心臓保護液に含んでもよい。1つの実施形態では、心臓保護液は、100U/Lのインスリンを備える。他の実施形態では、心臓保護液は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200U/Lのインスリンを備えてもよい。
・シクロスポリンは、虚血/再灌流傷害からミトコンドリアを保護することによって虚血後の機能を向上させ、かつ乳酸デヒドロゲナーゼおよびトロポニンIの虚血性放出を低減するミトコンドリア透過性遷移孔(MPTP)阻害剤である。早期の再灌流の際のアシドーシスはMPTP形成を妨げ、これにより酸化ストレスおよび再灌流傷害を低減する。1つの実施形態では、心臓保護液は5mg/Lのシクロスポリンを備える。他の実施形態では、心臓保護液は、1、2、3、4、6、7、8、9、または10mg/Lのシクロスポリンを備えてもよい。
・カリポリドは、たとえばDCDドナーの心臓などの灌流されたドナーの臓器の回復を向上させ得るナトリウム/水素(Na+/H+)交換輸送体(NHE)阻害剤である。これに代えて、アミロリドまたは別のナトリウム−水素交換阻害剤を心臓保護液に組入れてもよい。1つの実施形態では、心臓保護液は3.79mg/Lのカリポリドを備える。他の実施形態では、AMPI心臓保護液は、1、2、3、4、5、6、7、または8mg/Lのカリポリドを備えてもよい。
・酸素は好気性代謝を容易にし、80%O2を用いて心臓保護液の中に気泡で供給されてもよい。
心臓保護液の好ましいpHは7.2である。この酸性のpHはミトコンドリアを保護することが示されている。別の実施形態では、心臓保護液のpHは、7.1、7.11、7.12、7.13、7.14、7.15、7.16、7.17、7.18、7.19、7.21、7.22、7.23、7.24、7.25、7.26、7.27、7.28、7.29、または7.3であってもよい。
灌流組成物
発明の灌流組成物は、ドナーの心臓の灌流のための灌流液として最近開発されたが、腎臓、肺、肝臓、または膵臓を灌流するのに用いられてもよい。これは細胞外心臓保護液と同様であり、さまざまな添加剤を有する。灌流組成物は、12時間以上の間、移植用に成功裡に生存する状態に虚血心臓を保つ。他の実施形態では、灌流組成物は、ドナーの臓器を、その摘出後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36時間以上の間保存する。灌流組成物の調剤の要約は以下のとおりである。
虚血期間の間エクスビボで細胞の寿命を維持する際の主な問題のうち1つは、細胞水和および細胞化学反応における致命的な変化の防止であるため、この灌流組成物はナトリウム/カルシウム/カリウムのバランスを含む細胞機能をできる限り「正常化する」。
摘出前または虚血前に、ナトリウム−カリウムアデノシン三リン酸(Na−K ATPアーゼ)ポンプは、細胞のイオン組成を維持するように機能する。ポンプは、ATP産生の欠如のために虚血によって、および虚血の際の嫌気性代謝による水素イオンの過剰な産生によって中断される。虚血状態では、好気性糖分解から嫌気性糖分解への切換があり、乳酸の産生が増大する。ナトリウム−カリウムATPアーゼポンプが中断すると、カリウムが細胞の外に移動する一方で、通常は細胞内で低濃度に保たれるナトリウムが流入する。このイオンの遷移はセルの膨張を生じ、阻止されなければ細胞が破壊されてしまう。細胞内へのカルシウムの流入は、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、およびカルパインなどのプロテアーゼを含む多数の酵素を活性化させる。これらの酵素は、細胞骨格、膜、およびDNAの成分などの細胞構造を損傷し続ける。水素イオン産生は虚血臓器中で継続し、バッファリング能力の補充がなければ細胞内pHを低下させてしまう。カルシウムイオンの透過性は虚血とともに増し、カルシウムの急速な流入は細胞内のバッファリング能力を上回る。
それにも拘わらず、カルシウム(Ca2+)は、組成中のカリウムに対する反作用剤として灌流組成物の中により低濃度で組入れられる。通常の減極された心臓では、カリウムとカルシウムとの間の相互作用は心筋線維の興奮を通じて心筋の収縮において働く。1つの実施形態では、灌流組成物は0.5mMのカルシウムを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、または1.0mMのカルシウムを備えてもよい。1つの実施例では、Ca2+の源は塩化カルシウムである。
カリウム(K+)は、虚血の嫌気性代謝の間に失われるカリウムをナトリウムが置き換えると細胞浮腫に繋がる可能性がある、虚血の際の低カリウム血症の防止のための細胞構造を安定させる。1つの実施形態では、灌流組成物は15mMのカリウムを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30mMのカリウムを備えてもよい。1つの実施例では、K+の源は塩化カリウムである。
2部式心臓保護液について以上示したように、ナトリウム/水素(Na+/H+)交換輸送体(NHE)阻害剤は、移植後の無酸素症および再灌流傷害からの損傷を低減するとともに、心臓細胞によるカリウム保持も助ける。
灌流組成物は、心臓を過分極化された停止状態に保ち、かつ心筋細胞膜を保存するのを助けるために、カルシウム濃度に対して高濃度のマグネシウム(Mg2+)を備える。これにより、膜の興奮性は移植後により良好に回復される。マグネシウムはカルシウムのアンタゴニストとして作用し、これによりカルシウム過負荷を防止する。マグネシウムは、虚血後活性のためのATP保存分を保護するミオシンホスホリラーゼを阻害することによって心筋膜を安定させるためにも存在する。マグネシウムは心臓細胞のナトリウム−カリウム−カルシウムポンプを調整するとともに、このバランスを取る。マグネシウムは、虚血と関連付けられる乳酸アシドーシスに対抗するためにも存在する。低マグネシウムは細胞壁の完全性を損なって、障害を生じさせる。1つの実施形態では、灌流組成物は7.5mMのマグネシウムを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mMのマグネシウムを備えてもよい。1つの実施例では、Mg2+の源は塩化マグネシウムである。
灌流組成物中のナトリウム(Na+)の濃度は、細胞膜の完全性を維持して、再灌流の間のカルシウムパラドックスの尤度を下げる。1つの実施形態では、灌流組成物は80mMのナトリウムを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、10、20、30、40、50、60、70、90、100、110、120、130、140、150、または160mMのナトリウムを備えてもよい。1つの実施例では、Na+の源は塩化ナトリウムである。
塩化物(Cl-)は、組成物の電気的中性を維持する対イオンとして存在してもよい。Cl-の源は、Ca2+、Mg2+、K+、またはNa+の源のうちいずれか1つ以上の源に由来してもよい。
当業者が理解するように、塩化物塩以外の塩がCa2+、Mg2+、K+、またはNa+の源であってもよい。しかしながら、Ca2+、Mg2+の不溶性塩は回避すべきである。1つの実施例では、Ca2+、Mg2+、K+、またはNa+の源の対イオンはグルコン酸塩である。当業者は、たとえばCa2+およびMg2+の塩の源が水和物であってもよいことを認めるであろう。
グルコースおよびインスリンは糖分解およびATP産生を促進し、灌流された心臓の回復を向上させ得る。4℃での長期にわたる心筋の生存率は、筋肉グリコーゲン貯蔵分を利用し、かつ乳酸とCO2を産生する他の代謝産物とを産生する糖分解に依存する。グルコースおよびインスリンを含むことにより、細胞はグルコースを摂取し、これを新陳代謝することができ、これにより細胞グリコーゲン貯蔵分を保存し、臓器を移植した後に補充を必要としない。グルコースは安静時の心臓中の主要な代謝基質ではないため、虚血の際などの、これがより大きな重要度を有する状況が存在する。グルコースは、酸素の欠如が、グルコース摂取、グリコーゲン分解、および解糖流量の急速な刺激により嫌気性代謝への遷移を誘導する際に、虚血心臓におけるエネルギ発生のための中心的な役割を果たす。虚血によって生じる損傷は、(乳酸塩などの)糖分解の生成物ならびに酵素および細胞膜リン脂質に対する酸素由来のフリーラジカルの損傷の影響に対処できないことを含む。
グルコースはしばしば、ランゲンドルフ灌流のためのクレブズ−ヘンゼレイト灌流組成物中で用いられてきたが、これは「保存」組成物または溶液中で用いられてこなかった。なぜなら、虚血心臓中の過剰なグルコースは過剰な乳酸塩産生を促進する可能性があるからである。
1つの実施形態では、灌流組成物は14mMのグルコースを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30mMのグルコースを備えてもよい。別の実施形態では、フルクトースまたはマンニトールをグルコースに対する代替物として用いてもよい。フルクトースはグルコースよりもゆっくりとそのエネルギを放出し、グルコースに対し、代謝のためにインスリンを必要としない。マンニトールは、グルコース置換物、フリーラジカルまたはROS捕獲剤、膨張コロイド剤としての3つの目的を果たすことができる。
インスリンは、心臓保護液中よりも低濃度の灌流組成物の成分であってもよく、心筋細胞中へのグルコースの摂取を向上させるように用いられる。インスリンは、再灌流された心臓に対して直接的な好ましい変力効果を有する。インスリンは、再灌流の間に増大したグルコース利用および酸化も促進する。インスリンはプログラミングされた細胞死(アポトーシス)も阻害する。インスリンは、グルコースおよびカリウムと組合されると、この発明のように心筋再灌流傷害も弱め、こうして再灌流を受ける患者の意義深い心保護を行ない得る。1つの実施形態では、灌流組成物は6ユニットの短時間作用性またはレギュラーインスリンを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20ユニットの短時間作用性またはレギュラーインスリンを備えてもよい。別の実施形態では、灌流組成物は、NPHなどの中時間作用性インスリンまたは長時間作用性インスリンまたはウルトラレンテなどのその類似物を備えてもよい。これに代えて、灌流組成物は、短時間作用性、中時間作用性、および/または長時間作用性インスリンの組合せを備えてもよい。インスリンはヒトまたはブタのものであってもよい。インスリンは組換型であってもよい。好ましくはインスリンは非凝集性である。
フルクトース−1,6−二リン酸(FDP)は細胞膜に吸着して、これを安定させてもよい。1つの実施形態では、灌流組成物は2mMのFDPを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.6、3.8、4、4.2、4.4、4.6、4.8、5、5.2、5.4、5.6、5.8、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、8、8.2、8.4、8.6、8.8、9、9.2、9.4、9.6、9.8、または10mMのFDPを備えてもよい。FDPはナトリウムまたはカリウム塩として与えられてもよい。
アスパラギン酸塩または置換物は、上記心臓保護液中に組入れられるのと同じまたは同様の濃度で灌流組成物中に組入れられてもよい。
アデノシンまたは置換物は、上記心臓保護液中に組入れられるのと同じまたは同様の濃度で灌流組成物中に組入れられてもよい。1つの実施形態では、灌流組成物は、5mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備える。他の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備えてもよい。これに代えて、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、または7g/Lのアデノシン、cAMP、またはcGMPを備えてもよい。
灌流組成物は、還元剤およびフリーラジカル捕獲剤として機能する還元グルタチオン(GSH)を備えてもよい。フリーラジカルは、再灌流誘導細胞損傷および臓器損傷において重要な役割を果たすことと、虚血心筋の突然の再灌流がROSの大量形成に繋がる可能性があることとが公知である。フリーラジカルを捕獲するまたはその形成を阻害することがわかっている薬剤は再灌流誘導傷害を防止することができる。GSHは、過酸化水素および他の有機ヒドロペルオキシドの酵素破壊のための補因子である。人体中のすべての細胞はグルタチオンを合成することができるが、肝臓グルタチオン合成が人体の正常な機能にとって必須であることが示されている。5mMまでの比較的高濃度のグルタチオンが肝臓中の細胞に貯蔵されることが示されている。このように、肝臓以外の摘出臓器は、フリーラジカルおよびROSの中和に直接に加わるこの内因性酸化防止剤のその主な源を有していない。GSHは酵素機能を最適化し得、拡張機能、冠血流、および心臓出力を向上させ得る。1つの実施形態では、灌流組成物は3mMのGSHを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、0.5、1、1.5、2、2.5、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10mMのGSHを備えてもよい。
水素イオン(H+)の調整は非常に重要である。というのも、これは多くの生体酵素の活性およびしたがって細胞の機能に影響を及ぼすからである。体内にはpHの乱れに対するいくつかの防御手段が存在し、1つはバッファ、すなわちH+を可逆に結合する物質、の存在である。虚血の際、心臓はアシドーシスになり、これは心室の収縮性を損なう可能性があり、これが十分に深刻で長引けば、タンパク質変性および不可逆的細胞傷害に繋がる。灌流保存は、冷保管よりも、心筋のpHを生理的レベルにより良好に維持することが示されている。
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリスまたはTHAM)はバッファとして用いられ、これは7.0〜9.2の間の有効なpH範囲を有し、代謝性アシドーシスの発生に対抗する。虚血心臓中の組織は、酸素がない状態では嫌気性代謝に頼り、かなりの量の乳酸が筋組織の中におよび周囲の細胞内流体の中に放出される。トリスは、酸素の存在に対抗して、心臓細胞と灌流液との両方の適切なpHを維持する。1つの実施形態では、灌流組成物は、20mMのトリスまたはHEPES、MOPS、MES、BES、またはTESを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、またはN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)を備えてもよい。他の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mMのトリス、HEPES、MOPS、MES、BES、またはTESを備えてもよい。
重炭酸塩(炭酸水素塩、HCO3 -)は、細胞外アシドーシスを制御することにより、乳酸を産生する代謝アシドーシスおよびCO2の蓄積を抑制するように用いられ、虚血の開始の際にカリウムレベルのバランスが取られると、カリウム過剰血症を調整するのに用いられる。重炭酸塩は心筋細胞膜におけるCO2−重炭酸塩交換を促進し、これは細胞の生存度にとって重要である。1つの実施形態では、灌流組成物は20mMの重炭酸塩を備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mMの重炭酸塩を備える。2つの実施例では、HCO3 -の源はK HCO3またはNa HCO3である。
1つの実施形態では、灌流組成物のpHは7.3である。他の実施形態では、灌流組成物のpHは、7.2、7.21、7.22、7.23、7.24、7.25、7.26、7.27、7.28、7.29、7.31、7.32、7.33、7.34、7.35、7.36、7.37、7.38、7.39、または7.4であってもよい。
間質浮腫は、臓器灌流保存の潜在的な欠点のうちの1つである。灌流液の膨張圧は、間質への流体の移動を最小化するため、間質組織の膨張圧と一致する必要がある。血液は、インビボでおよび血液ベースの灌流組成物中に、膨張圧を与えるアルブミンおよびグロブリンを含有する。しかしながら、晶質(非血液)灌流液はこれらの天然膨張剤を有していない。コロイドが添加されない非血液灌流液の使用は組織浮腫のリスクを大きく高める。このリスクはより低い灌流圧を与えることによって低減することができるが、しかし、これは臓器を不十分かつ不均一な組織灌流の可能性に晒してしまう。組織浮腫を起こすことに寄与する別の要因はリンパの流れの欠如である。これにより少量の流体が通常は間質から循環系に戻るのである。
発明の灌流組成物は、間質浮腫を低減する半透性化合物であるラクトビオン酸塩を備える。1つの実施形態では、灌流組成物は70mMのラクトビオン酸塩および/またはマンニトールを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、10、20、30、40、50、60、80、90、100、110、120、130、140、または150mMのラクトビオン酸塩および/またはマンニトールを備えてもよい。
細胞内空間と細胞外空間との間の流体分布は、両方の区画中の溶質の浸透圧効果によって主に決まる。体液の正常な容量オスモル濃度は280〜300mOsm/Lである。1つの実施形態では、灌流組成物は等浸透性であり、浸透圧は280、290、または300mOsm/Lである。別の実施形態では、灌流組成物は高浸透性であり、浸透圧は310、320、330、340、350、360、370、または380mOsm/Lである。
保存の間のドナーの臓器への酸素添加はその後のグラフト回復における極めて重要な要因であり、DCDドナーの臓器においてはより一層そうである。十分な酸素添加は、保存される腎臓における基質の供給または廃棄物の洗浄よりもはるかに重要であることが示されている。発明の灌流組成物は、80%、90%、または100%の酸素を直接に気泡で供給することによって酸素で補足されてもよい。酸素添加は、酸素を灌流組成物に供給すること、灌流組成物を振ること、灌流組成物を排出すること、および1回、2回以上繰返すことによって達成されてもよい。各回の振動の際に、供給される酸素は灌流組成物と平衡し、各回の供給、振動、および排出が灌流組成物の酸素濃度を高める。1つの実施形態では、灌流組成物は酸素で100%飽和される。別の実施形態では、酸素飽和は、50、60、70、80、または90%酸素で飽和されてもよい。他の実施形態では、灌流組成物は、200、300、400、500、または600mmHgのpO2を備えてもよい。
表5は、灌流組成物の1つの実施形態の最終組成を与える。
灌流液の流れを拍動または非拍動態様で送達すべきか否かの問題は、エクスビボ臓器灌流における重要な検討課題である。脈動ポンプは複雑で、高価で、かつ重く、可能ならばより簡単なポンプを用いることがかなりの経済的な利点となるであろう。発明の灌流組成物は、脈動ポンプ、無脈動ポンプ、または重力を用いて灌流されてもよい。
発明の灌流組成物は、低流量でまたは微小灌流によって灌流されてもよい。本明細書中で用いるように、「微小灌流」は2〜8mL/100g/分の流量を指す。1つの実施形態では、灌流組成物は4または5mL/100g/分(20mL/分)の速度で微小灌流される。別の実施形態では、灌流組成物は、2、3、4、6、7、または8mL/100g/分の速度で微小灌流されてもよい。
灌流組成物は、2〜10mmHgの大動脈基部における圧力でドナーの臓器を通して灌流されてもよい。1つの実施形態では、大動脈基部における圧力は4〜8mmHgであってもよい。別の実施形態では、大動脈基部における圧力は5〜7mmHgであってもよい。灌流の間の大動脈基部における平均圧力は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12mmHgであってもよい。
本明細書中で用いるように、「制御された再灌流」とは、最初に虚血組織に再灌流する際に(たとえば温度、圧力などの)条件を修正する技術を指す。制御された再灌流は、心臓、肺、脳、および四肢における再灌流傷害を低減することが示されている。有利を実証した技術は以下のものを含む。
・白血球涸渇、
・20〜26℃の間の生温かい温度および15〜40mmHgの間の低灌流圧、ならびに
・初期低酸素圧(約60−70mmHg)。
1つの実施形態では、灌流組成物の他の成分よりも不安定な成分を他の成分とは別に保管し、灌流組成物の使用の前に他の成分に加える。灌流組成物の使用の前に加え得るより不安定な成分は、インスリン、FDP、およびGSHを備える。これらの成分を別々に他の成分に加えてもよい。これに代えて、より不安定な成分のうち1つ以上を同時に他の成分に加えてもよい。たとえば、より不安定な成分を、他の成分を備える第1の組成物と組合される第2の組成物に調剤して、これにより灌流組成物を生じてもよい。1つの実施形態では、FDPおよびGSHを1つの組成物に調剤して、灌流組成物の使用の直前にインスリンをFDPプラスGSH組成物または他の成分に加えてもよい。
たとえば溶液などの2つ以上の組成物を組合せて灌流組成物を産する場合、各々を適切にバッファリングして、正しくバッファリングした灌流組成物を産してもよい。
このように、灌流組成物を、たとえば、使用までは分離されているキット中の2つ以上の部分で提供してもよい。好ましくは、一旦組合せると、48時間以内に灌流組成物を使用すべきである。
心臓保護液は、使用のために心臓保護液を調製するために希釈可能な濃縮形態で提供されてもよい。同様に、灌流組成物は、使用のために灌流組成物を調製するために希釈可能な濃縮形態で提供されてもよい。
心臓保護液および灌流組成物を単位用量形態で提供してもよい。たとえば、心臓保護液および灌流組成物を、シリンジ、瓶、バイアル、アンプル、または袋で提供してもよい。灌流の持続時間および灌流の流量に依存して、複数ユニット用量を発明の方法で用いてもよい。
灌流組成物のより不安定な成分を他の成分から分離する1つの実施形態では、より不安定な成分をシリンジで提供してもよく、または瓶、バイアル、アンプルもしくは袋で提供し、シリンジに移して、次にたとえば灌流組成物の他の成分を含有する袋の中に注入して使用のための灌流組成物を調製してもよい。1つの実施形態では、袋は重力送りされる点滴型の袋である。
同様に、心臓保護液または灌流組成物の濃縮液を、シリンジ、瓶、バイアル、アンプル、または袋で提供してもよい。
当業者は、心臓保護液、灌流組成物、またはその濃縮液をどのように調製するかを理解するであろう。1つの簡単な実施例では、800mLの容積まで成分を脱イオン水に加える。この時点でpHを測定して、水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いて22.5℃で7.3+/−0.15に調節する。一旦pHを調節すると、1000mlの容積まで水を加える。pHを再びチェックして、必要に応じて調節してもよい。4℃で、心臓は糖分解を介して乳酸を産生する。灌流組成物のpHは、乳酸を中和するように通常よりもわずかにアルカリのpHに調節される。
同様に、原液組成物を希釈液で希釈してもよい。好ましくは、希釈液は水である。別の実施例では、希釈液は、希釈液が灌流組成物中のNa+またはK+およびCl-の源とされるならば、塩化ナトリウム溶液(塩水)または塩化カリウム溶液であってもよい。
好ましくは、心臓保護液および灌流組成物は無菌である。当業者には公知のように、加圧蒸気殺菌、乾熱滅菌、化学冷熱殺菌、放射線殺菌、またはフィルタ殺菌によって、難なく殺菌を達成し得る。
好ましくは、心臓保護液および灌流組成物には発熱物質および内毒素は含まれず、これはたとえば乾熱滅菌によって達成されてもよい。
心臓保護液および灌流組成物は抗菌薬を備えてもよい。たとえば、心臓保護液および灌流組成物は、細菌壁合成阻害剤(たとえば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、もしくはバンコマイシン);細胞質膜を損傷する剤(たとえばポリミキシン);核酸の合成もしくは代謝を修正する剤(たとえばキノロン、リファンピン、もしくはニトロフラントイン);タンパク質合成阻害剤(たとえばアミノ配糖体、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、もしくはクリンダマイシン);または葉酸塩阻害剤もしくはエネルギ代謝を修正する剤(たとえばスルホンアミドもしくはトリメトプリム)を備えてもよい。
本明細書中で用いるように、「キット」は、物品の物理的な配置を指す。このように、物品は、キットの形態の中に提供され得る心臓保護液および/または灌流組成物を備えてもよい。キットの心臓保護液および/または灌流組成物は単位用量形態で「すぐに使用できる」状態であってもよい。これに代えて、心臓保護液および/または灌流組成物は、使用前は、希釈用の濃縮形態で提示されてもよい。灌流組成物はここでも、組合せ以外の「すぐに使用できる」単位用量形態または希釈および組合せ用の濃縮形態のいずれかの、より不安定な成分と他の成分とに分割されてもよい。灌流組成物の調製に必要な場合は、希釈および組合せを任意の順序で行なってもよい。
キットは、必要な場合に原液を希釈し、原液および/または組成物を必要に応じて組合せ、かつドナーの臓器を灌流するための指示または命令を伴うことがある。加えてまたはこれに代えて、キットは、発明に従う移植用のドナーの臓器を保存するための方法においてキットを用いる指示または命令を伴うことがある。同様に、発明の灌流装置を発明の方法に従って用いてもよい。
本明細書中で用いるように、発明の灌流組成物、灌流原液組成物、キット、または装置は代替的な形態で規定されてもよい。1つの形態は特定的な使用に対する好適性またはそれへの制限を指定し、「ために」という語で示される。別の形態は特定的な使用のみに制限され、「使用において」または「ために使用される場合」または同様の語によって示される。
本明細書中で用いるように、移植用のドナーの臓器を保存する「方法」は代替的な形態で規定されてもよい。
1つの実施例では、方法は、移植用のドナーの臓器を保存するための選択された成分の「使用」の形態で規定されてもよい。
別の実施例では、方法は、たとえば、移植用のドナーの臓器を保存するための灌流組成物の製造における選択された成分の使用などの「スイス」スタイルで規定されてもよい。
第3の実施例では、方法は、たとえば、移植用のドナーの臓器を保存する際の使用のための選択された成分を備える灌流組成物などの「使用のための剤」形態で規定されてもよい。
本明細書中で用いるように、「a」、「an」、および「the」という単数の形態は、文脈がそうでないと明確に述べていなければ、複数の局面を含む。
本明細書中で用いるように、文脈がさもなければ明確な文言または必要な暗示によって要件とする場合を除き、「備える」という語または「備え」または「備えている」などの変形は包括的な意味で用いられる。すなわち、述べた特徴の存在を明示するが、発明のさまざまな実施形態中のさらなる特徴の存在または追加を排除するために用いられるのではない。
明瞭性および理解の目的のために発明をやや詳しく説明したが、この明細書中に開示する発明の概念の範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の実施形態および方法に対するさまざまな修正および変更がなされてもよいことが当業者には明らかであろう。
発明の任意の局面について例示される実施形態は発明の任意の他の局面に適用可能である。換言すると、発明の任意の局面について例示される任意の実施形態は発明のその特定の局面のみに限定されるものではない。
以下の実施例を参照してここで発明をさらに詳細に説明する。実施例は例示の目的のためにのみ提供され、特にそうでないと明記されなければ限定的であることを意図するものではない。このように、発明は、本明細書中に与える教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含する。
実施例1−灌流装置
1つの実施例では、静脈内滴注型袋中で第1および第2の溶液を組合せることによって灌流溶液を作る。好ましくは、組合せの約24時間以内に灌流溶液を用いるべきである。次に、使用の直前に、第1および第2の溶液を含有する袋の中に3段階の手順で100%の酸素を気泡で供給して、溶液に確実に酸素添加がされるようにする。
図3、図4、および図5に示すように、必要な灌流時間の長さに依存する数の複数の袋10を微小灌流滴注装置1の一部を形成する絶縁筺体3の中に吊るす。筺体3は前面でヒンジ付きガラスドア4を有する自立式矩形キャビネットである。運搬用取っ手7、8がキャビネットの側面および上面に位置する。キャビネットは、しばしば携帯型冷蔵庫および冷却器で用いられる絶縁プラスチックで製造される。絶縁筺体3は、氷嚢(図示せず)の使用により、4℃〜10℃の間の温度で維持される。溶液袋10を筺体の頂部に取付け、スタンド5を用いて心臓2を支持するため、心臓をプラスチックの袋19内に懸架する。
滴注ライン9によって袋10を滴注チャンバ12の中に出ていく共通マニホルド14に接続する。滴注チャンバ12の出口は蛇口によって三方コネクタ15に結合される軟らかいプラスチックの配管の長さに結合される。調節可能ゲートクランプ11の形態の流量調整弁を軟らかいプラスチックのコネクタ13上に位置決めする。三方コネクタ15の出口を、心臓2の大動脈の内側にしっかりと嵌合される大動脈カニューレ23に結合する。適切なクランプ(図示せず)によってカニューレを大動脈内に保持する。
灌流の間は心臓の大動脈弁を閉じることも重要である。溶液は、冠動脈、冠静脈洞、右心房を通って流れ、袋19の中に滴下し、次に筺体3の基部に位置する廃棄物収集または排出袋16の中に出てくる。流体は集められ、再使用しない。心臓2は、支持なしにプラスチックの袋19内に重力によって吊るされていることに注目すべきである。プラスチックの袋19の基部内の溶液18は、心臓が乾ききるのを防止するように湿気のある環境に心臓を置くことを確実にする。心臓が流体18に浮かないことが重要である。
三方コネクタの角度付けられた出口を、溶液の流量によって生じる圧力の測定を与えるようにカニューレ23の近くで圧力線22に結合する。圧力線22は重要な圧力フィードバックを与える。圧力線22を、筺体の外側に達する水圧計26に結合される。これに代えて、圧力計は筺体内または筺体のガラスドア上に位置することができる。圧力の読取は2つの理由のために有用である。すなわち、1)あまりに高い圧力は浮腫をもたらす可能性があり、2)大動脈弁が閉じているか否かを判断するための容易なチェックは流量を簡単に増やすことであり、圧力を増大すべきである。灌流流量を一時的に増やす場合、通常の圧力試験を行なう。大動脈弁が不全でない場合は、失われる大動脈圧は応じて上昇する。圧力が上昇しなければ、これは大動脈弁閉鎖不全を示す。これは、流れを増大させることによって達成される弁の加圧によって補正され、確実に弁が閉じるように心臓が正しく位置決めされることを確実にする。
心臓2は4〜10℃の間の温度で大動脈カニューレ23によって懸架される。温度計は、筺体内で見えるように位置決めされる。この実施例では、20mL/分の流れで4時間の間溶液で心臓を灌流し、その時間の間心筋の温度は5〜10℃の間に留まり、大動脈基部の圧力は4−8mmHgの間であった。
図3から図5を参照して説明する灌流装置は、非常に単純かつ有効な携帯型機器を提供する。これは軽くかつ容易に運搬可能となるように設計され、特に信頼性が高いと考えられる。移動部品は存在せず、電池または電源、ポンプ、ガスボンベ、および冷蔵器具の必要性はない。装置は、流量を制御することによりかつ制御された温度での重力送りの使用により、移植前の輸送の際に心臓を継続して灌流することを確実にする。装置は、輸送の際の損傷に耐えるように強固に設計される。最後に、装置は、これが高度な技能を有する専門家が効率的な動作を確実にする必要性なく、非熟練者によって管理可能であるように設計されている。
実施例2−正常な心臓の12時間の保存
伝統的に、移植用のドナーの心臓の保存を冷保管を用いて行なってきたが、これは標準的な脳死患者からの摘出の4時間後までの良好な保護を提供する。現在、ドナーの不足により、外科医は境界ドナーおよびDCDドナーとともに、移植前の虚血時間が長期である心臓をますます受入れるようになっている。
第1の事例では、グレーハウンドに麻酔をかけて、聖トマスカリウム心臓保護を用いた停止後に心臓を摘出した。グレーハウンドの心臓は、ヒトの心臓に非常によく似た構造、重さ、および組成を有している。心臓を12時間の灌流(n=5)または氷蔵(n=4)に割当てた。灌流心臓は、発明の灌流組成物を用いた冷晶質重力送り微小灌流(20mL/分、6mmHg、4−10℃)を受けた。摘出後の心臓、特に心停止後に臓器提供される心臓が受ける虚血損傷に加わることが公知である従来の臨床医療におけるように、冷保管心臓を氷の中で12時間保存した。次に心臓の組を、2時間の再灌流のために、血液灌流されたワーキングハート装置に移して、その後最終評価を行なった。虚血のない5つの非保存心臓を評価して、正常に機能する心臓に対する基準を与えた。図7から図10は、氷の中での標準的心臓保護技法に従って保った心臓および対照ロットとして用いた正常な心臓に対する灌流された正常な心臓の試験結果を詳細に示す。従来の氷蔵と比較して、本明細書中に開示する灌流組成物は、ドナーの心臓が優れた保存後ポンプ機能、効率、および乳酸塩代謝と関連付けられるそれらの保存の間の酸素の利用を可能にすると判断された。灌流の間、灌流された心臓は酸素を消費した。保存の後、冷保管した心臓と比較して、灌流された心臓はより高い心臓出力、LV dP/dt max、および効率と、より低い乳酸塩とを有した。血流力学的値は非保存心臓の50%〜80%であった。乳酸塩代謝の観点で、灌流後、心臓は好気性であり、乳酸塩を消費した一方で、冷保管の心臓は嫌気性であり、有害な乳酸塩を産生することが示された。
応じて、開示するようなこの発明は、現在利用可能な方法および溶液に勝る、輸送の際、摘出と移植との間の臓器の生存度の時間を長くするであろう。これは、再灌流により適合し、したがって新しい体に成功裡に移植され、その中で機能する可能性がより高い臓器も提示する。
実施例3−DCD心臓の4時間の保存
動物の準備
プロトコルは、科学的目的のための動物のケアおよび使用のためのオーストラリア実施規則2004年第7版(the Australian code of practice for the care and use of animals for scientific purposes 7th Edition 2004)に従ってAlfred Medical ResearchおよびEducation Precinct Animal Ethics Committeeによって承認された。
雄のグレーハウンド犬に筋肉内アセチルプロマジン(0.1mg/kg)を前投薬した。次に、プロポフォール(6mg/kg)を用いて麻酔を誘導し、犬に挿管して機械的に換気した。必要に応じてイソフルレン(0.5−2%)の吸入によって麻酔を維持した。リンガー液、重炭酸ナトリウム(20mL/時)を注入し、中心静脈圧を測定するために右内頸静脈の中にカニューレを置いた。痛覚脱失のために静脈内モルヒネ(20mg)を投与した。左大腿動脈および静脈にカニューレを挿入して、動脈圧のモニタおよび流体置き換えのための別の経路を設けた。外科手術の準備のために犬を背臥位に置いたとき、血圧が劇的に下降し、代償的な頻脈が起こったことが観察された。この現象は、(心エコーで見られるような)左心室の歪みによって生じ、静脈内リンガー液を注入することおよび安定した血圧を維持するために必要に応じて動物を部分的に横向きに寝かせることによって管理された。胸骨正中切開を行ない、心膜を開いた。リグノカイン(50mg)を直接に心膜の中に投与して不整脈を防止した。大血管を単離し、奇静脈を結紮し、基線心外膜心エコーを行なった。
ヘパリン(10,000U)を静脈内投与して、大腿動脈からの放血(600〜900mL)を可能にした。この血液は単離心臓(isolated heart)(RIG)装置をプライミングするのに必要であった。血液を除去するにつれて動脈圧および心拍を注意深くモニタした。リンガー液を用いて血液容量を置き換えて、生理的レベルに血圧を維持するために必要に応じて静脈内フェニレフリン(5−10mg)を与えた。
灌流群
灌流群のための実験プロトコルを図11に要約する。
換気の中止による心停止の誘導
血液を集めた後、麻酔を深くし、モルヒネ(10mg)およびプロポフォール(200mg)の投与によって潜在的な呼吸努力を弱めた。その後、機械的な換気を停止した。換気の停止後に厳密に30分のスタンドオフ期間を適用し、その時間の間は何の保存方策も用いなかった。この持続時間は、Alfred Hospitalで行なったDCDドナー肺移植からの臨床経験に基づいて選んだ。心臓出力なしとAlfred HospitalでのヒトDCDドナー肺移植における冷保存の開始との間の平均時間は、抜管を集中治療室(ICU)で行なう場合は38.4分であり、抜管を手術室で行なう場合は12.7分であった。Alfred Hospitalでの移植ユニットの職員は、換気の停止から保存方策の実現までの30分が適切かつ現実的であると合意した。保存技術は何も用いなかったが、換気の停止の後に、RIG装置の動作のために大腿静脈から血液を集め(200mL)、血行動態障害を回避するために等しい容量のリンガー液を内頸静脈を通して注入した。スタンドオフ期間の間、心拍、心電図(ECG)、動脈圧、および中心静脈圧をモニタした。心停止は機械的換気の中止後6〜14分で起こった。次に温度プローブを心筋に挿入した。
2部式(AMPI)心臓保護
30分のスタンドオフ期間後に、氷を用いた局所的冷却と組合せて、6分間にわたって2部式心臓保護を投与した。合計で1000mLの晶質心臓保護を4℃の温度で注入した。左心耳および下大静脈を通して心臓保護を抜いた。
第1の部分はAMPI心臓保護であった。500mLのAMPI心臓保護を3分間にわたって投与した。この溶液のベースは聖トマス病院No.2心臓保護であり、以下の添加剤を含んだ。
・アスパラギン酸塩(14mM)
・アデノシン(3mg/L)
・インスリン(100U/L)
・シクロスポリン(5mg/L)
・20%二酸化炭素による飽和によって溶液を酸性にした(7.2のpH)
第2の部分を「回復心臓保護」と呼んだ。500mLのAMPI心臓保護を一旦送達すると、500mLの回復心臓保護を3分間にわたって投与した。ベース溶液は100%の酸素で飽和された聖トマス病院No.2心臓保護であり、以下の添加剤を含んだ。
・アスパラギン酸塩(14mM)
・重炭酸ナトリウム(10mM)
・カリポリド(3.79mg/L)
・第2のまたは回復心臓保護液のpHは4℃で7.8であった。
保存条件
心筋温度は心臓保護後5−15℃の間であった。次に心臓を切除し計量した。肺静脈を結紮し、大動脈カニューレ(2分の1インチ径のPVC配管のカラーを有する8分の3インチ径のPVC配管(Lovell Surgical、メルボルン))を挿入した。次に、左心耳および肺動脈に4分の1インチ径のPVC配管をカニューレ挿入した。
心臓を発明の灌流装置(図3から図5)に移した。これは、これを携帯型にする、および、便利にするためにできるだけ簡略なものになるように設計された。これは寸法が92cm×35cm×35cmのポリスチレンの箱を備える。前方扉はモニタを可能にするように窓を有し、ベルクロ(登録商標)ストラップで閉じられる。まず、灌流組成物の4つの1リットル袋を、滴注チャンバに繋がるマニホルドに取付けられた箱の頂部から懸架した。必要に応じてこれらの袋を新しいものに置き換えた。心臓をこの滴注チャンバの遠位に取付け、大動脈基部を通して灌流液の注入を受けた。ゲートクランプによって流量を制御した。
灌流液は、冠動脈、冠静脈洞、右心房、右心室、および最終的に主肺大動脈を通って流れた。肺動脈から集められた流出灌流液は、冠動脈を灌流した栄養分の流れの証拠であった。大動脈弁閉鎖不全の存在下では、流出分は、大動脈弁を越えて左心室の中に入り、左心房から流れ出て、こうして冠動脈をバイパスするであろう。大動脈弁閉鎖不全の潜在的な問題は、灌流の流量が一時的に増大した通常の「圧力試験」を行なうことによって解消した。大動脈弁が不全でなければ、大動脈基部圧力は応じて上昇するであろう。圧力が上昇しなければ、これは大動脈弁閉鎖不全を示した。これは、(流れを増大することによって達成される)弁の加圧によって、および弁が確実に閉じるように心臓を正しく位置決めすることを確実にすることによって補正された。
滴注チャンバに取付けられた大動脈カニューレによって心臓を懸架した。氷嚢を箱の壁の上に吊るして低い周囲温度を維持した。肺動脈流出流、心筋温度(Shiley Inc.、カリフォルニア)、灌流装置箱内部の温度、および大動脈圧(Datex Ohmeda、メルボルン)を常にモニタした。
合計して、20mL/分の流れで灌流組成物で心臓を4時間灌流された、この時間の間、心筋温度は5−10℃の間に留まり、平均大動脈基部圧は4−8mmHgの間であった(図13)。
灌流組成物
これらの実験で用いた灌流組成物を表5に規定する。
シミュレーションされた移植
4時間の保存期間後に、心臓を灌流装置から取り外し、温かい通常の塩水に浸漬することによって徐々に室温(23℃)に温めた。この40分間のシミュレーションされた移植期間が、植込の際にドナーの心臓が経験する温めを模倣した。
血液再灌流
次に心臓をRIG装置に接続し(図6)、非作動モードで50分間血液で再灌流した。RIG装置は、ローラポンプ(COBE cardiovascular、アルヴァダ)、膜型人工肺(Capiox SX18, Terumo、メルボルン)、白血球フィルタ(LeukoGuard, Pall、シドニー)、および加熱冷却ユニット(Jostra、ニュージャージー)を内蔵する改変体外膜型人工肺(ECMO)回路である。非作動モードでは、冠動脈は大動脈基部を通して灌流され、抵抗に対抗して心臓が拍出する必要はない。作動モードでは、心臓は左心房を通して灌流され、後負荷に対して拍出しなければならない。
灌流液はグレーハウンドから集められた全血からなった。いくつかの実験では、リンガー液を加えて1200mLの必要なプライミング容量の回路を達成した。血液は白血球が涸渇しており、温度が制御され、その酸素および二酸化炭素の分圧を注意深く調整した。回路プライミングの間に以下のものを血液に加えた。
・ヘパリン(1000IU/1200mL)
・グルコース(2g/1200mL)
・インスリン(50U/1200mL)
・アスパラギン酸塩(14mmol/1200mL)
・重炭酸ナトリウム(20mmol/1200mL)
再灌流傷害を最小限にしかつ機能的回復を最適化しようとして、制御された再灌流方策を用いた(表7)。まず、以下の条件下で心臓を再灌流した。
・20−25mmHgの大動脈圧
・20℃の血液温度
・20%酸素:空気の混合物で酸素添加した血液
・血液を酸性にし(pH7.30−7.35)、二酸化炭素の分圧を高くする(45−60mmHg)ための、約150mL/分の二酸化炭素の流れ
・保存期間から心臓の中に残留する心臓保護を確実に回路に加えないようにするために、第1の100−200mLの灌流液を廃棄した
5分の再灌流の後、大動脈基部圧を30mmHgに上げ、加熱冷却ユニット温度を30℃に上げ、酸素:空気比を50%に上げた。次に15分の再灌流で、大動脈基部圧を35mmHgに上げ、加熱冷却ユニットの温度を39℃に上げ、40mmHgの分圧を達成するために二酸化炭素の流れを調節した。最後に、20分の再灌流で、大動脈基部圧を60mmHgに上げた。
徐々に心臓を温め、心筋が36−37℃に達すると、電気的に細動を止めた。不整脈を防止するためにすべての心臓がリグノカイン(1mg/kg)を受けた。心臓が安定したリズムを達成しない場合は、アミオダロン(2.5mg/kg)を投与した。心拍が1分当たり90回の拍動を下回った場合に電気的ペーシングを導入した。pH、酸素の分圧、二酸化炭素の分圧、過剰塩基、およびカリウムの濃度に特に注意を払って、血液灌流液組成物を注意深く制御した。変力物質は投与しなかった。
50分の再灌流の後、機能および代謝の最終評価を行なうためにRIG装置を作動モードに切換えた。実験を完了するため、大動脈基部を通して10%の中性バッファホルマリンで心臓全体を灌流した。
標準的保存群
標準的保存群のための実験プロトコルを図11に要約する。標準保存データは部分的に我々の過去のデータから導出する。
灌流群について、換気の中止による心停止の誘導を行った。
心臓保護
30分のスタンドオフ期間の後、大動脈をクロスクランプし、12ゲージ静脈内カニューレを介して大動脈基部中に1000mLの心臓保護を注入した。この群で用いる心臓保護液は、Alfred Hospitalでヒトの心臓移植で用いる標準的なものであった。これは100%の酸素で飽和された聖トマス病院No.2心臓保護からなり、以下の添加剤を含んだ。
・アスパラギン酸塩(14mM)
・重炭酸ナトリウム(10mM)
4℃で6分間にわたって心臓保護を投与し、流出分を破棄した。心臓は氷での局所冷却を受けた。
保存条件
心臓保護後は心筋温度は5−15℃の間であった。次に心臓を切除し、計量した。肺静脈を外科的に結紮し、カニューレを大動脈に挿入し、心筋温度プローブを心筋内に位置決めした。その後心臓をアイスボックス中に置き、氷によって囲まれ冷塩水(4℃)を満たした防水袋内にしっかりと固定した。心筋温度は保存の早期段階で徐々に低下し、保管の大部分の間は1−4℃の間に留まった。合計で心臓を4時間冷保管した。
保存期間の終わりに、左心耳および肺動脈に4分の1インチ径のPVC配管をカニューレ挿入した。
灌流群についてシミュレーションされた移植を行なった。
灌流群について血液再灌流を行なった。
正常心臓群
以前に説明した実験群についての基準点を提供するため、正常心臓群を含んだ。この群ではDCDプロセスまたは保管期間はなかった(図11)。
心臓保護
動脈血を収集後、大動脈をクロスクランプし、大動脈基部を通して1000mLの冷たい(4℃)心臓保護を投与した。標準的なAlfred Hospital心臓保護をこの群で用いた(14mMのアスパラギン酸塩、10mMの重炭酸ナトリウムを含み、酸素で飽和された聖トマス病院No.2溶液)。氷を用いて局所冷却を達成した。心停止後に換気を停止した。心筋温度は、停止時5−15℃の間であった。RIG装置のために頸静脈および大腿静脈から血液を集めた(1000〜1500mL)。心臓を即時に切除し、計量した。肺静脈を外科的に閉じ、大動脈、左心房、および肺動脈カニューレを挿入した。
灌流群について血液再灌流を行なった。
機能、代謝、および組織学の評価
心エコー(ACUSON Cypress cardiovascular system, Siemens Medical Solutions、モルヴァン、USA)を用いて基線心臓機能を評価した。心収縮期および心拡張期の両方で測定される左心室空洞の区域および乳頭筋の先端のレベルで二次元単軸画像を得た。これらの値を用いて左室面積変化率(FAC)を算出した(図12)。FACが25%未満の心臓は研究の対象外とした。FACのために用いた式は以下のとおりであった。
左室面積変化率(%)=(心拡張面積−心収縮面積)/心拡張面積
灌流の間の酸素消費について灌流群を評価した。灌流液および流出分中の酸素含有量を測定することによってこれを達成した。値を測定可能な範囲にするため、サンプルを希釈した。灌流液および流出分の両方の1mLのサンプルを各々、1mLの脱飽和灌流液(酸素含有せず)と混合した。次に、これらの2mLの希釈灌流液および希釈流出分のサンプルを37℃で血液ガス測定装置(Osmetech OPTI, Osmetech Critical Care、ロンドン)で分析した。これは、冠動脈の灌流液の流れと酸素消費との間の関係を調査するために低、中、高流で行なった。以下は、心臓の酸素消費を算出するのに用いた式である。
1.[O2]=(希釈された灌流液または流出分のpO2×0.0289×2mL)−(脱飽和された灌流液のpO2×0.0289×1mL)
[O2]=灌流液または流出分の酸素含有量(mL O2/mL)、pO2=酸素の分圧(mmHg)、0.0289は37℃での酸素の可溶性の値である
2.MVO2=(CPF×([PO2]−[EO2]))/(心臓の重量/100)
MVO2=心筋酸素消費(mL O2/100g/分)、CPF=冠動脈の灌流液の流れ(mL/分)、[PO2]=灌流液の酸素含有量(mL O2/mL)、[EO2]=流出分の酸素含有量(mL O2/mL)、心臓の重量(g)
灌流の間の乳酸塩産生についても灌流された心臓をモニタした。灌流の開始時およびその後2時間毎に、乳酸塩測定のための流出分のサンプルを取得した。以下のように乳酸塩産生を算出した。
乳酸塩産生=乳酸塩レベル×CPF
乳酸塩産生(mmol/分)、乳酸塩レベル(mmol/L)、CPF=冠動脈の灌流(L/分)
保存を通して等間隔に灌流圧を記録した。
後負荷に対する心臓の拍動を伴う作動モードでRIG装置ですべての3つの群を評価した。圧力変換器(Edwards Lifesciences、カリフォルニア)によって左心房、左心室、および大動脈基部圧を連続的に測定し、PowerLabシステム(ADInstruments、シドニー)によって記録した。
ポンプの流れを低左心房内圧(たとえば5mmHg)に調節することおよび流れを徐々に増加することによってスターリング機能曲線を生成して、増大する予荷重に応答する心臓の能力を評価した。この技術は、心臓仕事率(1分当たり心臓が行なう仕事)対左心房内圧(LAP)および(ポンプの流れによって測定される)心臓出力対LAPの機能曲線の構築を可能にした。心臓仕事率についての式は以下のとおりである。
心臓仕事率=0.0133×CO×(MAP−LAP)
心臓仕事率(ジュール/分)、CO=心臓出力(dL/分)、MAP=平均動脈圧(mmHg)、LAP=左心房内圧(mmHg)、0.0133はmmHg dLとジュールとの間の転換因子である。
左心室圧(LVP)は、高忠実度圧力計ラインおよび圧力変換器に接続された左心室管腔内に位置決めされた頂点カニューレを通して測定した。これは左心室圧の最大変化率(LV+dp/dt)の算出を可能にした。
消費された酸素単位当たりの心臓が発生したジュールの数(仕事の量)で心筋酸素効率を測定した。効率を評価するため、10mmHgのLAPで心臓を作動モードに置いた。血液ガス測定装置(Osmetech OPTI, Osmetech Critical Care、ロンドン)によって動脈(大動脈ライン)および静脈(肺動脈ライン)血液サンプルの分析によって酸素消費を算出した。まず、動脈および静脈サンプルの酸素含有量を定め、次にフィックの原理を用いて心臓の酸素消費を算出した。最後に、心臓仕事率および酸素消費を用いて心筋酸素効率を定めた。
1.[O2]=[Hb]×1.34×(SaO2/100)+(PO2×0.003)
[O2]=酸素含有量(mL O2/dL)、[Hb]=ヘモグロビン濃度(g/dL)、SaO2=酸素飽和(%)、PO2=酸素の分圧(mmHg)、1.34mLはヘモグロビンの各グラムが結合することができる酸素の量であり、0.003は血漿中に溶解される酸素についての定数である
2.O2消費=CBF×([AO2]−[VO2])
2消費(mL O2/分)、CBF=冠動脈血流(dL/分)、[AO2]=動脈血の酸素含有量(mL O2/dL)、[VO2]=静脈血の酸素含有量(mL O2/dL)
3.心筋酸素効率=心臓仕事率/O2消費
心筋酸素効率(J/mL O2)、心臓仕事率(J/分)、O2消費(mL O2/分)
灌流技術群および標準的保存群において、実験の異なる段階での乳酸塩レベルを定めるために、RIG装置から血液サンプルを取った。血液灌流液中の基線乳酸塩レベルを定めるために、心臓をRIG装置に取付ける直前に血液サンプルを取った。次に、心臓をRIGに取付けた15分後のシミュレーションされた移植の後に、そして作動モードでの機能的評価の後にサンプルを得た。すべての乳酸塩分析は、Alfred Hospitalの臨床生化学部が行なった。
仕事率の算出は過去のデータに基づいていた。左心室圧の最大変化率(LV+dp/dt)は、これらの算出を行なうために選ばれたパラメータであった。灌流群と冷保管群との間のLV+dp/dtの平均の差は785mmHg/sであり、共通の標準偏差は466mmHg/sであった。80%の統計的仕事率および0.05という有意水準が望ましかった。このように、算出された必要なサンプルサイズは群当たり6であった。
統計上の有意のため、<0.05のpの値が用いられた。統計的比較は、灌流技術群と標準的保存群との間でのみ行なった。正常心臓群は単に正常範囲の指標を与えた。正規分布に従ったデータを平均プラス/マイナス平均標準誤差(平均±SEM)として提示する。統計的比較のため、独立t検定、対応のあるt検定、一元配置分散分析(ANOVA)、および反復観測ANOVAを用いた。非パラメータデータを中央値および四分位数間範囲(中央値(IQR))として表現し、統計的有意を定めるためにマン−ホイットニー符号付き順位検定法を用いた。
結果
合計16匹の雄のグレーハウンド犬をこの研究のために用いた。心エコーでの劣った基線左室面積変化率(FAC)のために、1回の灌流実験を対象外とした。分析に含まれた犬の基線特徴は非常に類似していた。7回の標準的保存実験のうち、1回を最近行なった一方で、他の6回は、同一のプロトコルを施した、ユニットの以前のDCDドナーの心臓プロジェクトからの過去の対照であった。
灌流圧は低く留まり(一般的に4−8mmHgの間)、灌流を通して安定したままであった(図13)。すべての実験についての全期間にわたる平均灌流圧は5.4±0.8mmHgであった。灌流の開始時と終了時との間の灌流圧の平均の増加(0.6±0.7mmHg)は統計的に有意でなかった(p=0.426)。
心筋酸素消費は冠動脈灌流とともに増大した、これは灌流期間を通して減少する方向への傾向も示した(図14)。灌流の早期段階では(0〜2時間の間)、10mL/分の流れでの心筋酸素消費は1分当たり100gの心臓重量当たり(mL O2/100g/分)0.046mL O2であり、20mL/分で0.092mL O2/100g/分であり、30mL/分で0.138mL O2/100g/分であった。後の時間では(2〜4時間の灌流の間)、心筋酸素消費は減少し、10mL/分の流れでは0.038mL O2/100g/分であり、20mL/分では0.073mL O2/100g/分であり、30mL/分では0.108mL O2/100g/分であった。
灌流の開始時の乳酸塩産生は0.030±0.005mmol/分であり、2時間の灌流で0.008±0.001mmol/分であり、灌流の終了時に0.007±0.002mmol/分であった。乳酸塩産生は、灌流の開始時と比較して、灌流の終了時により少なかった(p=0.015)(図15A)。
単離された心臓(RIG)装置から血液サンプルを得て、乳酸塩レベルを測定した(図15B)。測定値は、基線(RIGに取付けられていない心臓)、シミュレーションされた移植の後(心臓をRIGに取付けた15分後)、および最終評価後のものであった。灌流技術群では、シミュレーションされた移植後および最終評価後の乳酸塩レベルの変化はそれぞれ1.7±0.2mmol/Lおよび0.9±0.5mmol/Lであり、標準的保存群では、それぞれ4.4±1.5mmol/Lおよび5.6±1.1mmol/Lであった。標準的保存群の平均乳酸塩レベルは灌流技術群よりも有意に大きかった(p=0.015)。
さまざまな左心房内圧(LAP)で心臓仕事率および心臓出力を測定することによって心臓機能を評価した。心臓機能曲線は、灌流技術群が標準的保存群と比較して優れた心臓仕事率および心臓出力を有したことを示唆する。いずれの群も正常心臓群の機能に達しなかった(図16A、図17A)。
最大心臓性能点である左心房内圧15mmHgでの心臓仕事率、心臓出力、および左心室圧の最大変化率(LV+dp/dt)について統計的比較を行なった。
心臓仕事率は、灌流技術群において9.6(9.56−9.96)J/分と、標準的保存群の0.09(0.04−0.43)J/分と比較して有意により高かった(p=0.007)。正常な心臓は心臓仕事率17.90(15.01−18.23)J/分を達成した(図16B)。
同様に、灌流技術群は、標準的保存群の0.28(0.24−0.46)L/分と比較して、有意により高い心臓出力1.24(1.08−1.33)L/分を有した(p=0.007)。心臓出力は、正常心臓群において2.34(2.23−2.35)L/分であった(図17B)。
LV+dp/dtも、標準的保存群の190(139−395)mmHg/秒と比較して、灌流技術群においては2127(2057−2162)mmHg/秒と、有意に大きかった(p=0.004)。正常心臓群は、2319(2015−2344)mmHg/秒というLV+dp/dtを有した(図18)。
統計的分析のため、LAP10mmHgで心筋酸素効率を算出した。灌流技術群は、標準的保存群の0.011(0.000−0.074)J/mL O2と比較して、有意により高い心筋酸素効率0.262(0.177−0.361)J/mL O2を有した(p=0.018)。正常心臓群の効率は0.334(0.282−0.393)J/mL O2であった(図19)。
考察
低体温灌流保存の間、心臓死後臓器提供(DCD)ドナーの心臓は実質的な酸素消費を実証した。酸素消費および乳酸塩産生は灌流を通じて減少した。灌流圧は一般的に低いまま留まり、灌流の開始時と終了時との間で圧力の上昇はなかった。標準的保存群と比較して、灌流技術群は、心臓仕事率、心臓出力、左心室圧の最大変化率、心筋酸素効率、および乳酸塩代謝という観点で、有意に優れた回復を示した。灌流技術群は、心臓仕事率および心臓出力の観点で、正常心臓群の機能を達成しなかったが、左心室圧の最大変化率および心筋酸素効率では匹敵していた。
心臓仕事率、心臓出力、および左心室圧の最大変化率(LV+dp/dt)はともに、左心室の心収縮機能(ポンプ機能)の健全な指標を与える。心臓仕事率および心臓出力は、前負荷および後負荷の両者によって影響される一方で、LV+dp/dtは前負荷によって影響されるが後負荷からは比較的独立している。統計的比較のため、左心房内圧(LAP)15mmHgでの一定の前負荷を選択した。というのも、これは、大きく反生理的でなければ、心臓に対する大きな攻撃を表わすからである。大動脈圧を120/80mmHgに維持するために後負荷を調節した。灌流群は、標準的保存群と比較した場合に、有意に優れた心臓仕事率、心臓出力、およびLV+dp/dtを示した。さらに、標準的なやり方で保存された心臓は一貫してほとんど何の機能も表わさず、前荷重の小さな増加にすら晒されればすぐに不全となってしまうであろうことが観察された。
心臓の効率は、外部仕事を消費酸素量で除算することによって推定することができる。健常な心臓は、それが好気的代謝から生成するエネルギを効率的な態様で用いて仕事を行なって全身および肺脈管構造を通して血液をポンピングすることができる。一方で、損傷を受けた心臓は、外部仕事を発生することができない壊死した心筋層と、外部仕事(たとえば収縮)よりもむしろ内部仕事(たとえば細胞損傷の修復)に対してエネルギを費やさなければならない損傷した心筋を含んでいる。灌流技術心臓は、標準的保存心臓と比較した場合に、有意に優れた心筋酸素効率を示した。
乳酸塩レベルの変化は、心臓の代謝の基礎となる状態の指標を与える。低酸素または無酸素の期間の間、嫌気性糖分解は乳酸塩の形成に繋がる。逆に、好気性条件では、乳酸塩が消費される。両方の群はシミュレーションされた移植の後に全体的な乳酸塩産生(および非消費)を示した。しかしながら、最終評価後は、灌流技術群は、以前の測定と比較して乳酸塩レベルが減少した一方で、標準的保存群は、乳酸塩レベルが上昇した。これは、灌流された心臓が、嫌気的に代謝を行なっていた標準的なやり方で保存された心臓とは異なり、好気性代謝を実証したという証拠である。
灌流されたDCDドナーの心臓は認め得るほどの量の酸素を消費し、保存期間を通じて酸素消費および乳酸塩産生のレベルが減少した。灌流されたDCDドナーの心臓の酸素消費は、流れの増大に伴う酸素消費の定常的増加が反映するように、流れに依存していた。酸素消費は、10mL/分から40mL/分の冠動脈流まで線形に上昇した。灌流されたDCDドナーの心臓は、後期(2〜4時間の間)と比較して、灌流の早期(灌流の0〜2時間の間)により多くの酸素を消費した。乳酸塩の産生も灌流の間に減少した。
心筋酸素消費の測定の間を除き、灌流の間は灌流液の流れを20mL/分に維持した。この低流の結果、4−8mmHgの間に全般的に留まった灌流圧を得た。圧力は、開始時と比較して、灌流の終了時にわずかにより高かったが、この上昇は有意ではなかった。
DCDドナーの心臓の保管のための標準的保存と比較して発明の灌流方法が優れていることは、心臓が好気的に代謝できるようにする灌流によって説明でき、これはそれができない冷保管された心臓とは対照的である。ドナーの心臓を冷保管すると、それは細胞の完全性を維持するためにエネルギを必要とし続け、酸素がない状態では、嫌気性代謝に頼らなければならなくなり、虚血という有害な影響を被る。インサイチュー温虚血、保存の間の冷虚血、および植込の間の温虚血に既に晒されているので、冷保管されたDCDドナーの心臓は、再灌流されるとさらに損傷を受ける。この一連の傷害の結果、心筋が深刻に損なわれ、その回復は理解できる程度に劣る。
一方、灌流されたDCDドナーの心臓は、保存の期間の間に、栄養基質(グルコース、アスパラギン酸塩、アデノシン、およびフルクトース−1,6−ニリン酸)とこれが好気的に代謝することを可能にする酸素とを与えられる。これは、再灌流傷害を最小限にするために低速で送達される冠動脈灌流液を介してこれらを受ける。灌流液のこの連続的な流れも、乳酸塩などの代謝廃棄物を洗い流し、これにより心筋酸−塩基バランスを良好に保存する。灌流液は、pH制御を与えるTRISおよび重炭酸塩などのバッファで強化される。還元グルタチオンは、植込後の血液再灌流によって生じる酸化ストレスを最小限にする。このように、灌流は、保存期間を通じた虚血損傷の進行を防止することおよび再灌流傷害を最小化することによって、DCDドナーの心臓の機能的および代謝的回復を改善する。
灌流保存はある程度DCDドナーの心臓を蘇生させた。我々の結果は、灌流の間に、DCDドナーの心臓が消費する酸素および産生する乳酸塩が減少したことを示した。これに対するふさわしい説明は、灌流の早期段階では、好気的に代謝する能力を用いて、DCDドナーの心臓が死期の間に被る損傷から回復するということである。細胞の完全性を回復すると、心臓が生理的細胞状態を維持するのに必要とする酸素の量は少なくなり、乳酸塩の産生もより少なくなる。
DCDドナーの心臓保護の別の非常に重要な要素は、保存の開始時に用いる心臓保護である。標準的保存群は、脳死ドナーの心臓の臨床移植においてAlfred Hospitalで通常用いる心臓保護を受けた。しかしながら、この心臓保護は、通常の心臓手術で心停止を誘導するために開発されたものであり、心臓保護の投与時に既に停止していて深刻な温虚血傷害を被っているDCDドナーの心臓には適切ではない。この理由のため、我々は、再灌流傷害を低減するために、灌流群用の2部式心臓保護を開発した。保存の開始時にアスパラギン酸塩、アデノシン、シクロスポリン、およびカリポリドを与えることは、DCDドナーの心臓に有意な有益さを加えることができる。これらの添加剤は、エネルギ発生を刺激し、冠抵抗を減少し、ミトコンドリア透過性遷移孔(MPTP)形成を阻害し、細胞内空間へのカルシウムの流れ込みを低減する。加えて、初期酸性pHは、MPTP形成およびカルシウム過負荷を防止することにより、再灌流傷害をさらに低減する。このように、この2部式心臓保護は、標準的な心臓保護よりも再灌流傷害に対するはるかに大きな保護をドナーの心臓に与える。
浮腫が存在する状態では圧力が上昇するので、灌流圧は組織浮腫を示す。灌流圧は一般的に我々の研究では低いまま留まり、時間とともに上昇しなかった。このことは、浮腫の形成がほとんどなかったかまたは全くなかったことを示唆する。発明者らは、我々の灌流技術が(低流量と膨張剤重炭酸ナトリウムとを用いることによって)浮腫ができるのを限定し、浮腫の存在または不在が、良好な機能を示した灌流された心臓に悪影響を及ぼさなかったと考える。
この研究は、2部式心臓保護および低体温灌流保存からなる灌流方法により、標準的保存(標準的な心臓保護および冷保管)と比較して、DCDドナーの心臓が優れた機能を回復できるようにすることを示す。早期の回復は、正常な(損傷を受けていない)心臓の機能には匹敵しないものの、さらに時間をかけて回復すると、移植には十分である。調査者らは、DCDドナーの心臓の保存が可能であると以前示したが、多くは、不適切な実験モデルまたは倫理的に許容できないもしくは禁止されている高価な保存技術の使用のために臨床的に適用できない。現在の研究は、臨床マーストリヒトカテゴリIIIのDCD臓器提供に適用可能な動物モデルにおいて比較的単純でかつ費用対効率が高い技術の有効性を実証した。
結論
我々の灌流方法(2部式心臓保護および低体温灌流保存)は、
1.好気性代謝を容易にし、保存の間のDCDドナーの心臓の蘇生を促進し得、
2.標準的保存(標準的な心臓保護液よび冷保管)と比較して、DCDドナーの心臓の優れた機能的および代謝的回復を与え、
3.移植に十分なDCDドナーの心臓の回復を可能にし得、
4.単純かつ実践的であり、将来的な臨床適用のための潜在性を有する。
いくつかの低体温保存溶液が利用可能である。Collins保存溶液は高濃度のカリウム、マグネシウム、リン酸塩、硫酸塩、およびグルコースを含有する。マグネシウムは膜安定剤として作用する。より古い灌流溶液はリン酸塩を含有するが、これは、リン酸マグネシウム沈殿という問題と、リン酸塩が特により長期の灌流の際にドナーの臓器にとって毒性であるということとを生じる。Euro-Collins溶液は元のCollins溶液の変形であり、高濃度のカリウム、リン酸塩、およびグルコースを含有するが、マグネシウムを欠いている。
Celsior(登録商標)は、心臓移植用に特定的に設計された最近開発された細胞外型である。その粘性のために、これを、ドナーの臓器の毛細管床を通して灌流可能な灌流溶液として用いることができない。
要約
ドナーの心臓、特に死亡した心臓ドナーからのドナーの心臓、および他のドナーの臓器を灌流するために無菌水溶液を用い、無菌水溶液は、
(a) 60〜130mMの間のナトリウム、好ましくは110mMのナトリウムと、
(b) 10〜20mMの間のカリウム、好ましくは15mMのカリウムと、
(c) 5〜10mMの間のマグネシウム、好ましくは7.5mMのマグネシウムと、
(d) 0.2〜1.0mMの間のカルシウム、好ましくは0.5mMのカルシウムと、
(e) 10〜40mMの間のTRIS(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン塩酸塩)または同様のバッファ、好ましくは20mMのTRISと、
(f) 10〜30mMの間の重炭酸ナトリウム、好ましくは20mMの重炭酸ナトリウムと、
(g) 1〜40mMの間のアスパラギン酸塩、好ましくは20mMのアスパラギン酸塩と、
(h) 1〜30mMの間のグルコース、好ましくは14mMのグルコースと、
(i) 1〜20ユニット/Lの間のインスリン、好ましくは10ユニット/Lのレギュラーインスリンと、
(j) 1〜10mMの間のフルクトース二リン酸またはその塩、好ましくは3mMのフルクトース二リン酸と、
(k) 1〜20mMの間のアデノシン、cAMP、またはcGMP、好ましくは5mMのアデノシンと、
(l) 1〜10mMの間の還元グルタチオン、好ましくは3mMの還元グルタチオンと、
(m) 30〜100mMの間のラクトビオン酸ナトリウムまたはマンニトール、好ましくは70mMのラクトビオン酸ナトリウムとを備え、
溶液のpHは、摂氏22度で7.4に調節され、溶液は50−100%のO 2 を用いて酸素添加された。溶液の容量オスモル濃度は330mOsm/Lであった。
以前の溶液に対して、本灌流溶液はリン酸塩を全く含有していないため、リン酸マグネシウムの沈殿物が回避される。リン酸塩は、特に長期の灌流の間は心臓細胞に毒性でもある。本灌流溶液および本心臓保護溶液は、エネルギ発生の回復を向上させるリンゴ酸アスパラギン酸シャトルを刺激して、特に移植後の循環の回復の際の虚血損傷を最小化するアスパラギン酸塩を含有する。重炭酸塩は、本灌流溶液中にバッファとしてではなくCO 2 重炭酸塩交換のために組入れられて、灌流の際に心臓細胞中で発生する細胞内CO 2 の除去を向上させる。というのも、灌流溶液中の重炭酸塩の存在によって、細胞膜を通した二酸化炭素拡散が高められるからである。この灌流溶液はインスリンとグルコースとの組合せを有する。インスリンは、代謝のための基質として用いられるグルコースの、心筋細胞による摂取を刺激し、このことは心臓細胞のグリコーゲン貯蔵分を節約する。
代わりに、上述のような無菌水溶液をキットの形態で提供することもでき、キットの1つの部分は無菌水溶液を含有し、無菌水溶液は、
(a) 60〜130mMの間のナトリウム、好ましくは110mMのナトリウムと、
(b) 10〜20mMの間のカリウム、好ましくは15mMのカリウムと、
(c) 5〜10mMの間のマグネシウム、好ましくは7.5mMのマグネシウムと、
(d) 0.2〜1.0mMの間のカルシウム、好ましくは0.5mMのカルシウムと、
(e) 10〜40mMの間のTRIS(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン塩酸塩)または同様のバッファ、好ましくは20mMのTRISと、
(f) 10〜30mMの間の重炭酸ナトリウム、好ましくは20mMの重炭酸ナトリウムと、
(g) 1〜40mMの間のアスパラギン酸塩、好ましくは20mMのアスパラギン酸塩と、
(h) 1〜30mMの間のグルコース、好ましくは14mMのグルコースと、
(i) 1〜20mMの間のアデノシン、cAMP、またはcGMP、好ましくは5mMのアデノシンと、
(j) 30〜100mMの間のラクトビオン酸ナトリウムまたはマンニトール、好ましくは70mMのラクトビオン酸ナトリウムとを備える。
溶液のこの部分は、摂氏22度で7.2〜7.4の間に調節された溶液のpHを有し、溶液は50−100%のO 2 を用いて酸素添加された。溶液の容量オスモル濃度は280〜380mOsm/Lの間、好ましくは330mOsm/Lであった。
そして、キットの第2の部分は無菌溶液を含有し、無菌溶液は、
(k) 1〜20ユニット/Lの間のインスリン、好ましくは10ユニット/Lのレギュラーインスリンと、
(l) 1〜10mMの間の還元グルタチオン、好ましくは3mMの還元グルタチオンと、
(m) 1〜10mMの間のフルクトース二リン酸またはその塩、好ましくは3mMのフルクトース二リン酸とを備える。キットは0℃よりも低い温度で保管され、わずかに温められると、キットの2つの部分が組合されて、48時間まで以内に用いられる。
本発明のさらなる局面に従うと、調整可能な弁を介して心臓の大動脈基部に結合されるように適合される灌流溶液貯蔵部を内蔵する温度制御された筺体と、大動脈基部から心臓を懸架し、それにより1回の通過における供給圧を上昇させる機械的または空気圧機器をまったく使用せずに心臓を通って重力送りされ、かつ供給圧を上昇させるまたは溶液を再循環させる機械的または空気圧機器をまったく使用せずに破棄される灌流溶液によって心臓が微小灌流される手段とを備える、灌流装置が提供される。
℃での長期にわたる心筋の生存率は、筋肉グリコーゲン貯蔵分を利用し、かつ乳酸とCO2を産生する他の代謝産物とを産生する糖分解に依存する。この灌流溶液中にグルコースインスリンとの組合せを含むことにより、細胞はグルコースを摂取し、これを新陳代謝することができ、これにより細胞グリコーゲン貯蔵分を保存し、そうすると臓器を移植した後に補充を必要としない。灌流された心臓が摂取したグルコースおよびインスリンは、灌流された心臓が移植されて循環が回復したときに代謝およびATP産生を推進する。
1つの実施形態では、灌流組成物は14mMのグルコースを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30mMのグルコースを備えてもよい
インスリンは、心臓保護溶液中よりも低濃度のこの灌流組成物の成分であ、心筋細胞中へのグルコースの摂取を改善する。インスリンは、再灌流された心臓に対して直接的な好ましい変力効果を有する。インスリンは、再灌流の間に増大したグルコース利用および酸化も促進する。インスリンはプログラミングされた細胞死(アポトーシス)も阻害する。インスリンは、グルコースおよびカリウムと組合されると、この発明のように心筋再灌流傷害も弱め、こうして移植の際に意義深い心保護を行ない得る。1つの実施形態では、灌流組成物は6ユニットの短時間作用性またはレギュラーインスリンを備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20ユニットの短時間作用性またはレギュラーインスリンを備えてもよい
アスパラギン酸塩、上記心臓保護溶液中に組入れられるのと同じまたは同様の濃度でこの灌流組成物中に組入れられアスパラギン酸塩は、リンゴ酸アスパラギン酸シャトルを刺激し、およびしたがって冷灌流後の移植の際の特に循環の回復の際にエネルギ発生の回復を向上させる。
灌流の間に乳酸塩が蓄積するだけでなく、二酸化炭素を産生するさらなる代謝が存在する。細胞膜を通した二酸化炭素の拡散は限定され、これが細胞の中に蓄積する。重炭酸塩(炭酸水素塩、HCO3 -)は、細胞膜における二酸化炭素重炭酸塩交換を促進して細胞内二酸化炭素の除去を促進し、これは細胞の生存度にとって重要である。この灌流溶液中の重炭酸塩はCO2<−>HCO−3交換を促進するのに用いられ、pHバッファとしては用いられず、灌流溶液中でTRISなどの任意のバッファに加えて用いられる。重炭酸塩は、細胞外アシドーシスを制御することにより、乳酸を産生する代謝アシドーシスおよびCO 2 の蓄積に対抗するようにも用いられてもよく、虚血の開始の間にカリウムレベルのバランスを取る際にカリウム過剰血症を調整するように用いられる。1つの実施形態では、灌流組成物は20mMの重炭酸塩を備える。別の実施形態では、灌流組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mMの重炭酸塩を備える。2つの実施例では、HCO3 -の源はK HCO3またはNa HCO3である。
灌流溶液の最適pHは摂氏22度で7.4である。溶液が摂氏4度に冷却されると、pHはわずかに上昇する。1つの実施形態では、灌流組成物のpHは7.である。他の実施形態では、灌流組成物のpHは、7.2、7.21、7.22、7.23、7.24、7.25、7.26、7.27、7.28、7.29、7.31、7.32、7.33、7.34、7.35、7.36、7.37、7.38、7.39、または7.4であってもよい。
心臓保護溶液および灌流組成物は抗菌薬を備えてもよい。たとえば、心臓保護溶液および灌流組成物は、細菌壁合成阻害剤(たとえば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、もしくはバンコマイシン);細胞質膜を損傷する剤(たとえばポリミキシン);核酸の合成もしくは代謝を修正する剤(たとえばキノロン、リファンピン、もしくはニトロフラントイン);タンパク質合成阻害剤(たとえばアミノ配糖体、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、もしくはクリンダマイシン);または葉酸塩阻害剤もしくはエネルギ代謝を修正する剤(たとえばスルホンアミドもしくはトリメトプリム)を備えてもよい。
全般的に我々の新規の灌流溶液を説明した。これは粘度が非常に低く、ポンプまたは圧力ヘッドの必要なく、重力のみによって心尖の遠位血管を含む冠循環系全体を満たす。灌流溶液は冠動脈床を1回通って流れて破棄される。灌流流体は再循環されないので、灌流溶液の構成要素の濃度は時間とともに変化せず、その一部は毒性であるかもしれない、灌流溶液中に排出される心臓代謝の最終生成物および他の材質の蓄積は存在しない。灌流溶液の構成要素およびそれらの作用を表5に要約し、明細書でより詳細に論じる。
ドナーの心臓を得て後4−6時間以内に移植しなければならない、保存溶液中に沈められたドナーの心臓に対して、我々の溶液で灌流される心臓は、18時間までそれらの生存度を維持する。これは、ドナーの心臓についての一層の研究室での研究を行なう時間、好適なレシピエントを見出しかつ準備するより多くの時間、移植のための遠隔の場所へのドナーの心臓の輸送の時間などを含む多くの改良を可能にする。我々の灌流キットは単純で、小型で、かつ軽量である。血液は必要なく、また大きく、嵩張り、重く、かつ複雑な灌流機器でもない。
一方、灌流されたDCDドナーの心臓は、保存の期間の間に、栄養基質(グルコース、アスパラギン酸塩、およびアデノシン)とこれが好気的に代謝することを可能にする酸素とを与えられる。これは、再灌流傷害を最小限にするために低速で送達される冠動脈灌流液を介してこれらを受ける。灌流液のこの連続的な流れも、乳酸塩などの代謝廃棄物を洗い流し、これにより心筋酸−塩基バランスを良好に保存する。灌流液は、バッファ、主にpH制御を与えるTRISで強化される。還元グルタチオンは、早期の再灌流の際の酸化ストレスを最小限にする。このように、灌流は、保存期間を通じた虚血損傷の進行を防止することおよび再灌流傷害を最小化することによって、DCDドナーの心臓の機能的および代謝的回復を改善する。

Claims (28)

  1. 移植用のドナーの臓器を保存するための灌流原液組成物であって、
    (a) 60〜100mMのNa+の源と、
    (b) 10〜20mMのK+の源と、
    (c) 5〜10mMのMg2+の源と、
    (d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
    (e) 10〜40mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリスまたはTHAM)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、またはN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)と、
    (f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
    (g) 1〜30mMのグルコースと、
    (h) 1〜20U/Lのインスリンと、
    (i) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
    (j) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
    (k) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
    (l) 1〜10mMの還元グルタチオンと、
    (m) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、任意に
    (n) 希釈液とを備える、灌流原液組成物。
  2. Na+/H+交換輸送体阻害剤をさらに備える、請求項1に記載の灌流原液組成物。
  3. 抗生物質をさらに備える、請求項1または2に記載の灌流原液組成物。
  4. 灌流原液組成物は無菌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の灌流原液組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の灌流原液組成物と希釈液とを備える灌流組成物であって、灌流組成物は7.2〜7.4のpHおよび280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する、灌流組成物。
  6. 50〜100%の飽和O2をさらに備える、請求項5に記載の灌流組成物。
  7. 灌流原液組成物を備える、移植用のドナーの臓器を保存するための灌流組成物を調製するためのキットであって、灌流原液組成物は、
    (a) 60〜100mMのNa+の源と、
    (b) 10〜20mMのK+の源と、
    (c) 5〜10mMのMg2+の源と、
    (d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
    (e) 10〜40mMのトリス、HEPES、MOPS、MEP、BES、またはTESと、
    (f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
    (g) 1〜30mMのグルコースと、
    (h) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
    (i) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
    (j) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、
    (k) 1〜20U/Lのインスリンと、
    (l) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
    (m) 1〜10mMの還元グルタチオンと、任意に
    (n) 希釈液とを備え、
    任意に(a)〜(j)は、(k)〜(m)および任意に(n)から分離され、使用の際、(a)〜(m)および任意に(n)を組合せて灌流組成物を調製し、灌流組成物は7.2〜7.4のpHおよび280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する、キット。
  8. 灌流原液組成物はNa+/H+交換輸送体阻害剤をさらに備える、請求項7に記載のキット。
  9. 灌流原液組成物は抗生物質をさらに備える、請求項7または8に記載のキット。
  10. 灌流原液組成物は無菌である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のキット。
  11. 使用の際、灌流組成物は50〜100%の飽和O2をさらに備える、請求項7〜10のいずれか1項に記載のキット。
  12. キットは、第1の心臓保護原液溶液をさらに備え、第1の心臓保護原液溶液は、
    (a) 聖トマス病院No.2溶液と、
    (b) 14mMのアスパラギン酸塩と、
    (c) 3mg/Lのアデノシンと、
    (d) 100U/Lのインスリンと、
    (e) 5mg/Lのシクロスポリンと、任意に
    (f) 希釈液とを備え、さらにキットは、
    第2の心臓保護原液溶液を備え、第2の心臓保護原液溶液は、
    (g) 聖トマス病院No.2溶液と、
    (h) 14mMのアスパラギン酸塩と、
    (i) 10mMのHCO3 -の源と、
    (j) 7.6mg/Lのカリポリドと、任意に
    (k) 希釈液とを備える、請求項7〜11のいずれか1項に記載のキット。
  13. 第1の心臓保護原液溶液および希釈液を備える第1の心臓保護溶液と、
    第2の心臓保護原液溶液および希釈液を備える第2の心臓保護溶液とを備える、請求項12に記載のキット。
  14. 使用の際、第1の心臓保護溶液は20%CO2で飽和され、第2の心臓保護溶液は100%O2で飽和される、請求項13に記載のキット。
  15. 移植用のドナーの臓器を保存する方法であって、灌流組成物を用いてドナーの臓器を4〜10℃で灌流するステップを備え、灌流組成物は、
    (a) 60〜100mMのNa+の源と、
    (b) 10〜20mMのK+の源と、
    (c) 5〜10mMのMg2+の源と、
    (d) 0.25〜0.75mMのCa2+の源と、
    (e) 10〜40mMのトリス、HEPES、MOPS、MEP、BES、またはTESと、
    (f) 10〜30mMのHCO3 -の源と、
    (g) 1〜30mMのグルコースと、
    (h) 1〜20U/Lのインスリンと、
    (i) 1〜10mMのフルクトース二リン酸またはその塩と、
    (j) 1〜40mMのアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩と、
    (k) 1〜10mMのアデノシン、cAMP、またはcGMPと、
    (l) 1〜10mMの還元グルタチオンと、
    (m) 30〜100mMのラクトビオン酸塩またはマンニトールと、
    (n) 50〜100%の飽和O2とを備え、
    灌流組成物は、7.2〜7.4のpHおよび280〜380mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する、方法。
  16. 大動脈基部における2〜10mmHgの圧力および/または2〜8mL/100g/分の流量でドナーの臓器を灌流組成物を用いて灌流するステップを備える、請求項15に記載の方法。
  17. 方法は、ドナーの臓器に、第1の心臓保護溶液であって、
    第1の心臓保護溶液は、
    (a) 聖トマス病院No.2溶液と、
    (b) 14mMのアスパラギン酸塩と、
    (c) 3mg/Lのアデノシンと、
    (d) 100U/Lのインスリンと、
    (e) 5mg/Lのシクロスポリンと、を備える第1の心臓保護溶液を投与し、その後に第2の心臓保護溶液であって、第2の心臓保護溶液は、
    (f) 聖トマス病院No.2溶液と、
    (g) 14mMのアスパラギン酸塩と、
    (h) 10mMのHCO3 -の源と、
    (i) 7.6mg/Lのカリポリドと、を備える第2の心臓保護溶液を投与するステップをさらに備え、、
    両者とも灌流組成物でドナーの臓器を灌流する前に行なわれる、請求項15または16に記載の方法。
  18. ドナーの臓器は心臓死後臓器提供(DCD)臓器である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. DCD臓器はマーストリヒトカテゴリIIIまたはIVのDCD臓器である、請求項18に記載の方法。
  20. ドナーの臓器は心臓である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 心臓は、灌流組成物が心臓を通って重力によって流れる間、大動脈基部から懸架される、請求項20に記載の方法。
  22. 心臓は、内部温度が4〜10℃である筺体内の湿気のある環境中に懸架される、請求項21に記載の方法。
  23. 心臓はプラスチック袋内に位置決めされるため、灌流組成物は心臓を通って袋の中に流れて、袋に取付けられた廃棄物受けの中に集められる、請求項22に記載の方法。
  24. 調節可能な弁を介して心臓の大動脈基部に結合されるように適合される灌流組成物貯蔵部を内蔵する温度管理された筺体と、大動脈基部から心臓を懸架し、それにより灌流組成物が心臓を通って重力送りされて集められる手段とを備える、灌流装置。
  25. 圧力計は大動脈基部における圧力をモニタする、請求項24に記載の灌流装置。
  26. 温度計は筺体内の温度の視覚表示を与える、請求項24または25に記載の灌流装置。
  27. 心臓はプラスチックの袋内に入れられ、その袋の中に灌流溶液が流れ出てきて心臓が湿気のある環境中に確実に懸架されるようにする、請求項24〜26のいずれか1項に記載の灌流装置。
  28. 筺体は4〜10℃の間の温度に維持される、請求項24〜27のいずれか1項に記載の灌流装置。
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