JP2013244548A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、基材と被覆膜との密着性に優れた表面被覆切削工具を提供することにある。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含み、該基材は、超硬合金からなり、該被覆膜は、1層または複数の層により構成され、該層のうち該基材と接する層は、TiN層であり、該被覆膜の厚み方向に平行な平面で該表面被覆切削工具を切断した場合の断面において、該基材と該TiN層との境界部には、該基材の表面側から該TiN層側に成長した微細粒子の集合体が存在しないか、または存在する場合であってもその存在密度は0.4個/μm以下であり、該集合体は、長径が0.7μm以上であり、該微細粒子は、長径が30nm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含み、該基材は、超硬合金からなり、該被覆膜は、1層または複数の層により構成され、該層のうち該基材と接する層は、TiN層であり、該被覆膜の厚み方向に平行な平面で該表面被覆切削工具を切断した場合の断面において、該基材と該TiN層との境界部には、該基材の表面側から該TiN層側に成長した微細粒子の集合体が存在しないか、または存在する場合であってもその存在密度は0.4個/μm以下であり、該集合体は、長径が0.7μm以上であり、該微細粒子は、長径が30nm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを有する表面被覆切削工具に関する。
従来、一般の鋼や鋳鉄の切削加工には、WC−Co合金またはWC−Co合金にTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した合金等のような超硬合金からなる切削工具が用いられてきた。しかし、このような切削工具の刃先は、切削加工の際に800℃以上の高温となるため、塑性変形するという問題があった。その結果、顕著な逃げ面摩耗が発生する場合があった。
そこで、このような問題を解決するために、切削工具の表面に対して、周期律表の4族元素の炭化物、窒化物、または炭窒化物(TiC、TiN、またはTiCNなど)、あるいはAl2O3等といった硬質セラミックスの単一層、またはこれらの複合層からなる被覆膜を形成した表面被覆切削工具が提案され、使用されてきた。これらの被覆膜の形成には、一般に、化学的蒸着(CVD(Chemical Vapor Deposition))法や、イオンプレーティング法やイオンスパッタリング法などの物理的蒸着(PVD(Physical Vapor Deposition))法が用いられている。
これらの方法で形成された被覆膜のうち、特に化学的蒸着法により形成された被覆膜は、超硬合金からなる切削工具の基材との密着性が比較的高く、耐摩耗性に優れていた。しかし、近年の切削加工の高速化および高能率化の要望から被覆膜はますます厚くなる傾向にあるが、被覆膜の厚膜化は基材との密着性を低下させる原因となる。現在一般に使用されている切削工具の被覆層の厚みが、約数μmから約10数μmの範囲にあるのはこのためである。すなわち、被覆膜の厚みは厚くなればなるほど耐摩耗性の向上が期待されるものの、基材との密着不良に起因した異常損傷の発生が危惧されるためである。
このような状況下において、基材と被覆膜との密着性を改善するための様々な技術が提案されている。たとえば、特開平05−237707号公報(特許文献1)では、超硬合金の基材上に被覆された第一層にW、Coを拡散させることにより基材と被覆膜との密着性の向上が図られている。また、特開2002−331403号公報(特許文献2)では、基材表面に突起を形成し、その突起部の粒界に被覆膜を偏析させることによりアンカー効果を持たせ、基材と被覆膜との密着性の向上が図られている。
特許文献1では、第一層の被覆温度が700〜800℃と低温のため、基材と被覆膜との密着性を十分に向上させることはできなかった。また特許文献2では、被覆膜は基材表面の突起に沿って凹凸上に成長するが、均一に結晶成長しないため耐摩耗性や強度が低下する問題があった。
そして、さらに研究を進めたところ、種々の被覆膜のうちでTiN層が超硬合金からなる基材との密着性に最も優れていることが明らかとなり、これを基材直上に形成することを試みたが、製造条件等の差異により、基材とTiN層との境界部の状態が変化し、その状態を制御することが密着性の向上に寄与するのではないかという知見が得られた。
本発明は、このような知見に基づきなされたものであって、その目的とするところは、基材と被覆膜との密着性に優れた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、基材とTiN層との境界部に微細粒子の集合体が形成されるとTiN層の密着性が低下するという知見が得られ、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含み、該基材は、超硬合金からなり、該被覆膜は、1層または複数の層により構成され、該層のうち該基材と接する層は、TiN層であり、該被覆膜の厚み方向に平行な平面で該表面被覆切削工具を切断した場合の断面において、該基材と該TiN層との境界部には、該基材の表面側から該TiN層側に成長した微細粒子の集合体が存在しないか、または存在する場合であってもその存在密度は0.4個/μm以下であり、該集合体は、長径が0.7μm以上であり、該微細粒子は、長径が30nm以下であることを特徴とする。
ここで、該集合体の存在密度は、0.2個/μm以下であることが好ましく、該集合体は、長径が2μm以上とすることができる。
また、該被覆膜は、該TiN層以外にさらに他の層を含み、該他の層は、周期律表の4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(V、Nb、Taなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物で構成される1以上の層であることが好ましく、該被覆膜は、2μm以上30μm以下の厚みであることが好ましい。
また、該超硬合金は、硬質相と結合相とを含むことが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、上記の構成を有することにより、基材とその表面に形成される被覆膜との密着性に優れるという極めて優れた効果を有する。したがって、本発明の表面被覆切削工具は、切削加工において長寿命を達成したものとなる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含む構成を有する。このような被覆膜は、基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被覆膜で被覆されていなかったり、被覆膜の構成が部分的に異なっていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含む構成を有する。このような被覆膜は、基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被覆膜で被覆されていなかったり、被覆膜の構成が部分的に異なっていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
このような本発明の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具として好適に使用することができる。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具に用いられる基材は、超硬合金により構成される。超硬合金としては、従来公知のものをいずれも用いることができるが、硬質相と結合相とを含むものが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具に用いられる基材は、超硬合金により構成される。超硬合金としては、従来公知のものをいずれも用いることができるが、硬質相と結合相とを含むものが好ましい。
ここで、硬質相としては、周期律表の4族元素、5族元素、または6族元素の炭化物、窒化物、および炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、炭化タングステンとを含むことが好ましい。また、硬質相は、炭化タングステンからなることも好ましい。
周期律表の4族元素、5族元素、または6族元素の炭化物、窒化物、および炭窒化物としては、たとえばTiC、TiN、TiCN、TaC、TaN、TaCN、NbC、NbN、NbCN、ZrC、ZrN、ZrCN、VC、VN、VCN、CrC、CrN、CrCN等を挙げることができる。
また、結合相としては、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
このような本発明の基材は、その表面が均質な組織で形成されていることが好ましい。これにより、後述の微細粒子の集合体の生成を低減することができるからである。
なお、表面被覆切削工具が刃先交換型切削チップ等である場合、このような基材は、チップブレーカを有するものも、有さないものも含まれ、また、刃先稜線部は、その形状がシャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドとを組み合せたもののいずれのものも含まれる。
<被覆膜>
本発明の被覆膜は、1層または複数の層により構成される。このような被覆膜は、一般的に切削工具としての耐摩耗性や耐欠損性等の諸特性を向上させたり、使用済刃先の識別性を付与するために形成されるものである。
本発明の被覆膜は、1層または複数の層により構成される。このような被覆膜は、一般的に切削工具としての耐摩耗性や耐欠損性等の諸特性を向上させたり、使用済刃先の識別性を付与するために形成されるものである。
このような被覆膜の厚みは特に限定されないが、たとえば2μm以上30μm以下、より好ましくは4μm以上25μm以下とすることができる。また、このような被覆膜は、物理蒸着法や化学蒸着法など従来公知の形成方法(成膜方法)を特に限定することなく採用することができるが、とりわけ化学蒸着法により形成することが好ましい。化学蒸着法を採用すると成膜温度が800〜1050℃と比較的高く、物理蒸着法などと比較しても基材との密着性に優れるためである。
<TiN層>
本発明の被覆膜は、上記のように1層または複数の層により構成されるものであるが、該層のうち該基材と接する層は、TiN層(TiNで構成される層)である。TiN層は、超硬合金との密着性に優れるという優れた作用を有する。
本発明の被覆膜は、上記のように1層または複数の層により構成されるものであるが、該層のうち該基材と接する層は、TiN層(TiNで構成される層)である。TiN層は、超硬合金との密着性に優れるという優れた作用を有する。
そして、本発明においては、上記の基材とこのTiN層との境界部の状態が以下のように制御されていることを特徴とする。すなわち、該被覆膜の厚み方向に平行な平面で該表面被覆切削工具を切断した場合の断面において、該基材と該TiN層との境界部には、該基材の表面側から該TiN層側に成長した微細粒子の集合体が存在しないか、または存在する場合であってもその存在密度は0.4個/μm以下であり、該集合体は、長径が0.7μm以上であり、該微細粒子は、長径が30nm以下であることを特徴とする。
このように、基材とTiN層との境界部を制御することにより、TiN層およびそれを含む被覆膜の全体が均一に成長し、切削加工時の被覆膜の異常損傷が抑制されることにより、基材と被覆膜との密着性が飛躍的に向上する。当該境界部において、該集合体の存在密度が0.4個/μmを超えると、その集合体を起点として切削加工時に異常損傷が発生し、このため被覆膜が基材から剥離するなどして基材と被覆膜との密着性が低下する。集合体の存在密度は、0.2個/μm以下であることがより好ましい。
ここで、被覆膜の厚み方向に平行な平面とは、被覆膜の厚み方向に沿った平面であり、通常、基材表面に対して垂直な平面となる。そして、微細粒子の集合体の有無(すなわち存在密度)は、当該平面で切断してなる断面に対してアルゴンイオンビームを用いたイオンエッチング処理を施した後、その処理断面を電界放出型走査電子顕微鏡を用いて40000倍の倍率で組成像モードにて観察することにより確認することができる。そして、該観察は、基材とTiN層との任意の境界部を長さ100μmに亘って行ない、基材の表面側からTiN層側に成長した微細粒子の集合体の個数を計測し、該個数を長さ100μmで除することにより当該集合体の存在密度とした。なお、この観察は、観察領域の長さを100μmとする限り、該境界部の任意の箇所1箇所で行なえばよい。観察領域を100μmとすることにより、通常は、該境界部の全体を反映したものとなるからである。この点、基材1個当たり、上記の平面は無数に存在することになるが、いずれか一の上記平面で切断した断面において、上記の集合体の存在密度を満たす限り、本発明の規定を満たすものとする。
なお、微細粒子の長径の計測が困難な場合は、該当部にFIB装置(商品名:「FB2100」、日立ハイテクノロジーズ社製)により10kV、0.1nAのGaイオンビームで加工を施した後、透過型電子顕微鏡を用いて観察視野内に微細粒子の集合体が存在するように任意の倍率を設定し暗視野観察することにより該長径を計測することができる。
また、該集合体は、長径が0.7μm以上のものとする。ここで該集合体の「長径」とは、当該断面において、基材表面に対して平行方向の長さと垂直方向の長さのうち長い方を意味するものとする。該集合体は、不定形状を示す場合が多く、直径等で規定することが困難なためである。通常、このような集合体は、基材表面直上から被覆膜の表面側に向かって不定形状に成長した形状を有する。
なお、長径が0.7μmに満たないものは、異常損傷の起点とはならない。この点、長径が2μm以上となるものを観察対象とすることが好ましい。また、集合体の長径の上限は特に限定されないが、集合体が大きすぎると集合体を起点に放射状に膜が成長し、表面粗さが悪化するという観点から5μm以下とすることが好ましい。
一方、微細粒子は、長径が30nm以下のものとする。ここで該微細粒子の「長径」とは、当該断面において、各微細粒子の最大径を意味するものとする。該微細粒子は、該集合体の大きさに比し極めて小さく、基材表面に対する方向で規定する意味がないためである。なお、微細粒子の長径の下限は特に限定されないが、小さすぎると測定が困難になるという観点から1nm以上とすることが好ましい。なお、このような微細粒子の長径は、上記の電界放出型走査電子顕微鏡(または透過型電子顕微鏡)により観察されるものであるが、上記集合体1個当たり、長径30nm以下の微細粒子が100個含まれていることが確認されれば当該集合体が形成されているものとみなす。この点、30nmを超える粒子が該集合体に含まれていたとしても本発明でいう集合体を逸脱するものではない。
このような微細粒子の組成は、主としてTiNにより構成されるものと考えられるが、基材を構成する成分も一部含有されているものと考えられる。しかし、本発明においては、集合体という物理的存在の有無を対象とするため、その化学組成や結晶系は特に限定されない。
このような本発明のTiN層は、0.1μm以上1.0μm以下の厚みを有することが好ましい。TiN層の厚みが0.1μm未満であると、密着性を向上させる作用が十分に示されない場合があり、1.0μmを超えると、被覆膜全体の耐摩耗性が低下する場合がある。TiN層の厚みは、より好ましくは0.2〜0.5μmである。
なお、本発明において、「TiN」等の化学式において特に原子比を特定していないものは、各元素の原子比が「1」のみであることを示すものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。
<他の層>
本発明の被覆膜は、上記のTiN層以外にさらに他の層を含むことができる。このような他の層は、TiN層上に形成される。
本発明の被覆膜は、上記のTiN層以外にさらに他の層を含むことができる。このような他の層は、TiN層上に形成される。
このような他の層は、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物で構成される1以上の層であることが好ましい。このような他の層を形成させることにより、切削工具としての耐摩耗性や耐欠損性等の諸特性を向上させたり、使用済刃先の識別性を付与させたりすることができる。
ここで、このような他の層を構成する化合物の具体例としては、たとえばTiC、Al2O3、ZrN、TiAlN、TiBN、TiCN、TiN、CrN、VN、ZrCN、ZrO2、AlZrO、HfN、TiSiCN、TiB2、TiAlCN、TiCNO、Ti2O3等を挙げることができる。
なお、上記の化合物の具体例として、TiNが挙げられているが、これはTiN層を基材の直上以外の箇所にも配置できることを示している。
<製造方法>
本発明の表面被覆切削工具は、次のようにして製造することができる。
本発明の表面被覆切削工具は、次のようにして製造することができる。
まず、原料を焼結することにより、超硬合金からなる基材を準備する。続いて、必要に応じ、ブラシまたはプラスティックメディアを用いて該基材の刃先稜線部をホーニングする。
その後、該基材を焼結炉内にセットし、1300〜1500℃、5〜15Paの混合ガス(たとえばAr/CH4=9/1の体積比のもの)雰囲気中で5〜20分間保持した後、30℃/分より早い速度(好ましくは50〜70℃/分の速度)で室温まで冷却する(高温急冷処理)。この高温急冷処理により、基材表面にコバルト層が浸み出し、基材表面に均質な組織を形成することができる。なお、基材表面上のこのような均質なコバルト組織は、別途PVD法等によっても形成させることができる。
引続き、基材の表面に被覆層を形成する。被覆層は、たとえばCVD装置のチャンバー内に上記のような処理を経た基材をセットし、CVD法により800℃以上1050℃以下の温度を適用することにより形成することができる。
なお、この場合、基材直上に形成されるTiN層は、従来公知の方法に比し、チャンバー内の圧力を20〜40hPa、TiCl4分圧を0.1〜0.3%に制御することにより形成することが必要である。これにより、気相中の反応ガス分子間の平均自由行程を大きくすることができる。このため、分子の衝突を抑えることができ、基材とTiN層との境界部において微細粒子の集合体の形成を抑制でき、均一で微細なTiN結晶を成長させることができる。
なお、このようなTiN層を形成するための反応ガス組成は、TiCl4以外にN2およびH2を含むことができ、また所要時間は30〜100分程度とすることが好適である。
このように、本発明における基材とTiN層との境界部の制御は、基材に対する上記のような高温急冷処理とTiN層の特殊な形成方法との組合せによってはじめて可能となるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
89.0質量%のWCと、8.0質量%のCoと、3.0質量%のTiCとからなる組成の原料粉末を、十分に混合した後所望の形状となるようにプレス成型し、続けて真空雰囲気中において1500℃で0.5時間焼結し、その後平面研削処理および刃先稜線に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側からみて0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、形状が「CNMG120408」(JIS B 4120(1998))である切削チップを作製し、これを超硬合金からなる基材(以下「超硬合金基材」)とした。この超硬合金基材を合計3個準備した。
89.0質量%のWCと、8.0質量%のCoと、3.0質量%のTiCとからなる組成の原料粉末を、十分に混合した後所望の形状となるようにプレス成型し、続けて真空雰囲気中において1500℃で0.5時間焼結し、その後平面研削処理および刃先稜線に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側からみて0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、形状が「CNMG120408」(JIS B 4120(1998))である切削チップを作製し、これを超硬合金からなる基材(以下「超硬合金基材」)とした。この超硬合金基材を合計3個準備した。
引続き、この3個の超硬合金基材を、焼結炉内にセットし、1400℃、10Paの混合ガス(Ar/CH4=9/1の体積比)雰囲気中で10分間保持した後、70℃/分の冷却速度で室温まで冷却する高温急冷処理を行なった。
続いて、上記の処理を経た各基材の表面に対して、0.3μmのTiN層、9.1μmのTiCN層、4.5μmのAl2O3層、および0.7μmのTiN層を、CVD法によりこの順で形成することによって基材上に被覆膜を形成した。
上記被覆膜のうち、基材と接する0.3μmのTiN層は、以下の条件により形成した。すなわち、温度920℃、圧力30hPa、混合ガス分圧(TiCl4:0.3%、N2:30%、H2:残部)という条件で、60分間成膜を行なった。
また、上記被覆膜のうち、基材と接するTiN層(厚み0.3μm)以外の各層は従来公知の条件で形成した。
このようにして、基材とその表面に形成された被覆膜とを含む表面被覆切削工具を作製した。
<実施例2〜3および比較例1〜4>
実施例1において、高温急冷処理の冷却速度および基材と接するTiN層(厚みはいずれも0.3μm)の形成条件のうち圧力を、以下の表1に記載の条件とすることを除き、他は実施例1と同様にして各3個の表面被覆切削工具を作製した。
実施例1において、高温急冷処理の冷却速度および基材と接するTiN層(厚みはいずれも0.3μm)の形成条件のうち圧力を、以下の表1に記載の条件とすることを除き、他は実施例1と同様にして各3個の表面被覆切削工具を作製した。
<断面観察>
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具を各1個ずつ用いて、被覆膜の厚み方向に平行な任意の平面でこれを切断し、その断面に対しアルゴンイオンビームを用いたイオンエッチングを施した後、その処理断面を電界放出型走査電子顕微鏡(商品名:「SU6600」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて40000倍の倍率で組成像モードにて観察した。
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具を各1個ずつ用いて、被覆膜の厚み方向に平行な任意の平面でこれを切断し、その断面に対しアルゴンイオンビームを用いたイオンエッチングを施した後、その処理断面を電界放出型走査電子顕微鏡(商品名:「SU6600」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて40000倍の倍率で組成像モードにて観察した。
なお、微細粒子の長径は、該当部に対しFIB装置(商品名:「FB2100」、日立ハイテクノロジーズ社製)により10kV、0.1nAのGaイオンビームで加工を施した後、透過型電子顕微鏡(商品名:「JEM2100F」、日本電子社製)を用いて観察視野内に微細粒子の集合体が存在するように任意の倍率を設定し暗視野観察により計測した。
該観察は、基材とTiN層との境界部を長さ100μmに亘って行ない、基材の表面側からTiN層側に成長した微細粒子の集合体の個数を計測した。そして、この計測された個数を長さ100μmで除することにより、当該集合体の存在密度を算出した。その結果を以下の表1に示す。
<評価>
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具について、以下に示す2種の切削試験を行なうことにより評価を行なった。その結果を以下の表1に示す。なお、各切削試験毎に1個の表面被覆切削工具を用いた。
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具について、以下に示す2種の切削試験を行なうことにより評価を行なった。その結果を以下の表1に示す。なお、各切削試験毎に1個の表面被覆切削工具を用いた。
<切削試験1:耐摩耗性評価>
被削材=SCM435(JIS)、切削速度=300m/min、送り量=0.3mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=乾式、という切削条件で切削を行ない耐摩耗性評価を行なった。切削時間が15分間となった時点での逃げ面平均摩耗幅Vb(mm)を測定した。逃げ面平均摩耗幅Vbが小さいものほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
被削材=SCM435(JIS)、切削速度=300m/min、送り量=0.3mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=乾式、という切削条件で切削を行ない耐摩耗性評価を行なった。切削時間が15分間となった時点での逃げ面平均摩耗幅Vb(mm)を測定した。逃げ面平均摩耗幅Vbが小さいものほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
<切削試験2:耐欠損性評価>
被削材=SCM435(JIS)溝入材、切削速度=200m/min、送り量=0.25mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=湿式、という切削条件で切削を行ない耐欠損性評価を行なった。工具刃先部においてチッピングまたは欠損が発生するまでの切削時間(分)を測定した。この時間が長いものほど、耐欠損性に優れていることを示している。
被削材=SCM435(JIS)溝入材、切削速度=200m/min、送り量=0.25mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=湿式、という切削条件で切削を行ない耐欠損性評価を行なった。工具刃先部においてチッピングまたは欠損が発生するまでの切削時間(分)を測定した。この時間が長いものほど、耐欠損性に優れていることを示している。
表1より明らかなように、実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比較して耐摩耗性および耐欠損性が向上しており、工具寿命が著しく向上していることが確認できた。これにより、本発明の表面被覆切削工具が高速加工において十分対応できることが確認できた。これは、本発明の表面被覆切削工具が本発明の構成を有することにより、基材と被覆膜との密着性が向上したことに起因したものであることは明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (6)
- 基材と該基材上に形成された被覆膜とを含む表面被覆切削工具であって、
前記基材は、超硬合金からなり、
前記被覆膜は、1層または複数の層により構成され、
前記層のうち前記基材と接する層は、TiN層であり、
前記被覆膜の厚み方向に平行な平面で前記表面被覆切削工具を切断した場合の断面において、前記基材と前記TiN層との境界部には、前記基材の表面側から前記TiN層側に成長した微細粒子の集合体が存在しないか、または存在する場合であってもその存在密度は0.4個/μm以下であり、
前記集合体は、長径が0.7μm以上であり、
前記微細粒子は、長径が30nm以下である、表面被覆切削工具。 - 前記集合体の存在密度は、0.2個/μm以下である、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記集合体は、長径が2μm以上である、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記被覆膜は、前記TiN層以外にさらに他の層を含み、
前記他の層は、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物で構成される1以上の層である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。 - 前記被覆膜は、2μm以上30μm以下の厚みである、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
- 前記超硬合金は、硬質相と結合相とを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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