JP2013147175A - 車両の電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 トルクセンサの故障が検出されている場合に行うアシスト制御中に、操舵アシストの制限を適正に行う。
【解決手段】 周波数強度計算部821は、車輪速Vのサンプリング値を使ってFFT演算により、バネ下共振周波数付近の周波数強度を計算し、その周波数強度の評価値Eをゲイン設定部822に出力する。ゲイン設定部822は、評価値Eが基準値Erefを超える範囲において、評価値Eが大きくなるほど小さくなるアシスト制限ゲインKを設定する。アシスト制限部83は、基本アシストトルクTbaseにアシスト制限ゲインKを乗算して目標アシストトルクTa2を設定する。
【選択図】 図4
【解決手段】 周波数強度計算部821は、車輪速Vのサンプリング値を使ってFFT演算により、バネ下共振周波数付近の周波数強度を計算し、その周波数強度の評価値Eをゲイン設定部822に出力する。ゲイン設定部822は、評価値Eが基準値Erefを超える範囲において、評価値Eが大きくなるほど小さくなるアシスト制限ゲインKを設定する。アシスト制限部83は、基本アシストトルクTbaseにアシスト制限ゲインKを乗算して目標アシストトルクTa2を設定する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、運転者の操舵操作に基づいてモータを駆動して操舵アシストトルクを発生する車両の電動パワーステアリング装置に関する。
従来から、車両の電動パワーステアリング装置は、ドライバーが操舵ハンドルに付与した操舵トルクをトルクセンサにより検出し、検出した操舵トルクに基づいて目標アシストトルクを計算する。そして、目標アシストトルクが得られるようにモータに流す電流を制御することにより、ドライバーの操舵操作をアシストする。こうしたモータの通電制御をアシスト制御と呼ぶ。
トルクセンサが故障した場合には、目標アシストトルクの計算ができなくなり、アシスト制御を行うことができない。これに対してトルクセンサの故障時においても操舵アシストを行う電動パワーステアリング装置が特許文献1,2において提案されている。特許文献1に提案された電動パワーステアリング装置は、トルクセンサの故障が検出された場合、ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定し、この推定したセルフアライニングトルクに基づいてトルク指令値を計算する。また、ABS装置(アンチスキッド制御装置)の作動状況から、路面とタイヤとの摩擦係数μを推定し、この摩擦係数μに基づいて、摩擦係数μが大きいほどセルフアライニングトルクの推定値が大きくなるように補正している。
また、特許文献2において提案された電動パワーステアリング装置は、前輪側の左右輪の車輪速を用いて推定した第1推定舵角と、後輪側の左右輪の車輪速を用いて推定した第2推定舵角とを平均して平均推定舵角を求め、この平均推定舵角と車速とに基づいて目標アシストトルクを計算する。また、第1推定舵角と第2推定舵角との差分を表す舵角差に基づいて、舵角差の大きさが大きくなるほど小さくなるスリップゲインを計算し、このスリップゲインを目標アシストトルクに乗算することにより、車輪のスリップ時に操舵アシストを小さくするようにしている。
しかしながら、特許文献1に提案された電動パワーステアリング装置においては、ブレーキ操作をしないとトルク指令値の補正量を求めることができないため実用性に欠ける。また、特許文献2に提案された電動パワーステアリング装置においては、そうした問題はないが、2つの推定舵角の舵角差が検出されているときにスリップが発生しているとみなして操舵アシストを小さくするものであるため、舵角差が検出されないかぎり操舵アシストを小さくしない。このため、路面状況によってはセルフアライニングトルクが低下して過アシストになる可能性がある。例えば、車両が砂利道を走行する場合に、過アシストになる傾向がある。
一般に、路面とタイヤとの接地面における荷重分布が一様とはならず、接地荷重が大きな領域と接地荷重が小さな領域とができる。このため、車両が砂利道を走行する場合には、接地荷重が大きな領域では砂利同士の結合力が強くタイヤは路面をグリップするが、接地荷重が小さな領域では砂利同士の結合力が弱くタイヤの横力や駆動力により砂利が動いてしまい、タイヤの操舵方向に対する反力が小さくなってセルフアライニングトルクが低下する。従って、特許文献2に提案された電動パワーステアリング装置のように舵角差に基づいて操舵アシストを制限する構成の場合には、路面状況によっては過アシストになる可能性がある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、トルクセンサの故障が検出されている場合に行うアシスト制御中において、操舵アシストの制限を更に適正にすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルからステアリングシャフトに入力された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ(21)と、ステアリング機構に設けられて操舵アシストトルクを発生するモータ(20)と、前記操舵トルクセンサの異常を検出する異常検出手段(72)と、前記操舵トルクセンサの異常が検出されていない場合は、前記操舵トルクセンサにより検出された操舵トルクに基づいて目標操舵アシスト制御量(Ta*)を設定し、前記操舵トルクセンサの異常が検出されている場合は、前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量を設定する制御量設定手段(70)と、前記制御量設定手段により設定された前記目標操舵アシスト制御量に従って前記モータを駆動制御するモータ制御手段(40,60)とを備えた車両の電動パワーステアリング装置において、
サスペンションバネに対して車輪側となるバネ下の振動におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出するバネ下周波数成分検出手段(821)と、前記操舵トルクセンサの異常が検出されて前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量が設定される場合、前記検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限するアシスト制限手段(822,83)とを備えたことにある。
サスペンションバネに対して車輪側となるバネ下の振動におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出するバネ下周波数成分検出手段(821)と、前記操舵トルクセンサの異常が検出されて前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量が設定される場合、前記検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限するアシスト制限手段(822,83)とを備えたことにある。
本発明においては、操舵トルクセンサの異常が検出されている場合は、操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量を設定する。代替パラメータとしては、例えば、舵角を用いることができる。舵角を用いた場合には、舵角が大きいほど大きくなる目標操舵アシスト制御量を設定するとよい。また、他の代替パラメータとして、例えば、車両の横加速度を用いることもできる。横加速度を用いた場合には、横加速度が大きいほど大きくなる目標アシスト制御量を設定するとよい。
こうした代替パラメータを用いて操舵アシストを付与する場合、車両が砂利道等の悪路を走行しているときには路面からステアリング機構に伝達されるセルフアライニングトルクが低下するため、過剰な操舵アシストが働いてしまう。悪路を走行している場合には、サスペンションバネに対して車輪側となる部材であるバネ下が、バネ下共振周波数近傍の周波数で振動しやすい。そこで、本発明においては、バネ下周波数成分検出手段がバネ下の振動におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出する。そして、アシスト制限手段が、検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って目標操舵アシスト制御量が小さくなるように目標操舵アシスト制御量を制限する。目標操舵アシスト制御量を制限するにあたっては、例えば、目標操舵アシスト制御量に低減係数を乗算する構成や、目標操舵アシスト制御量の上限値を低減する構成など種々の構成を採用することができる。
これにより、車両がセルフアライニングトルクが低下する路面を走行している場合には、操舵アシストが制限されることになる。この結果、過アシストによる操舵ハンドルの切り過ぎを防止して良好な操縦安定性を維持することができる。従って、車両が砂利道等の悪路を走行する場合であっても、安全に走行することができる。また、操舵トルクセンサの故障時におけるアシスト制御においては、セルフアライニングトルクの低下による過アシストを想定した場合、目標操舵アシスト制御量をあまり大きくできないが、本実施形態においては、セルフアライニングトルクの低下を適正に検出することができるため、目標操舵アシスト制御量を大きめに設定することができ、操舵フィーリングが良好になる。
本発明の他の特徴は、前記バネ下周波数成分検出手段は、少なくとも1輪の車輪速(V)を検出し、前記車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出することにある。
バネ下の振動は、車輪速の検出値にも現れる。そこで、本発明においては、少なくとも1輪の車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出する。例えば、一定の短い周期で車輪速をサンプリングし、そのサンプリングした車輪速データにおけるバネ下共振周波数成分の大きさをFFT(高速フーリエ変換)等の演算によって求める。従って、本発明によれば、車輪速の周波数成分からセルフアライニングトルクの低下を検出することができ、これにより、過アシストによる操舵ハンドルの切り過ぎを防止して良好な操縦安定性を維持することができる。
本発明の他の特徴は、前記車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを表す評価値(E)を設定する評価値設定手段(821)を備え、前記アシスト制限手段(822)は、前記評価値の増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限することにある。この場合、前記アシスト制限手段は、前記評価値が基準値(Eref)を超えた場合に、前記評価値が大きくなるほど前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限するとよい。
本発明においては、評価値設定手段が、車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを表す評価値を設定する。従って、この評価値は、セルフアライニングトルクの低下を表す指標として用いることができる。そして、アシスト制限手段は、評価値の増加に伴って目標操舵アシスト制御量を制限する。好ましくは、評価値が基準値を超えた場合に、評価値が大きくなるほど目標操舵アシスト制御量が小さくなるように目標操舵アシスト制御量を制限するとよい。従って、本発明によれば、セルフアライニングトルクの大きさに応じた適切な操舵アシストの制限を行うことができる。
本発明の他の特徴は、前記評価値の単位時間あたりの増加量を表す増加率を検出する評価値増加率検出手段(S23)を備え、前記アシスト制限手段は、前記検出された増加率が大きい場合は小さい場合に比べて、前記評価値の増加量に対する前記目標操舵アシスト制御量の低下量の比を大きくすることにある。
本発明においては、評価値増加率検出手段が評価値の単位時間あたりの増加量を表す増加率を検出する。評価値の増加率が大きいほど急速にセルフアライニングトルクが小さくなる。そこで、アシスト制限手段は、評価値の増加率が大きい場合には、小さい場合に比べて、評価値の増加量に対する目標操舵アシスト制御量の低下量の比を大きくする。従って、セルフアライニングトルクの低下に対して素早く操舵アシストを制限することができる。これにより、車輪のスリップ防止効果を一層高めることができる。
本発明の他の特徴は、前記バネ下周波数成分検出手段は、前輪の車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出することにある。
本発明においては、前輪の車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出する。車両が前方に走行する場合には前輪から先に砂利道等の悪路に進入する。従って、本発明によれば、セルフアライニングトルクの低下を早く検出できるため、適切なタイミングで操舵アシストの制限を開始することができる。また、操舵輪が前輪となる車両においては、前輪の操舵アシストを行うものであるため、適正に操舵アシストの制限を行うことができる。
本発明の他の特徴は、前記評価値設定手段は、左右前輪のうち車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさが大きい方の車輪の前記評価値を設定することにある。
本発明においては、左前輪と右前輪との車輪速を検出し、この車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさが大きい方の車輪の評価値を採用する。この場合、左右前輪の車輪速における評価値を別々に計算してから、その大きい方の評価値を選択してもよいし、バネ下共振周波数成分の大きさが大きい方の車輪速の評価値を計算するようにしてもよい。従って、本発明によれば、操舵アシストの制限が厳しくなる側(目標操舵アシスト制御量が小さくなる側)の車輪速を使った評価値が設定されるため、過アシストの抑制効果が一層高くなる。
本発明の他の特徴は、前記評価値設定手段は、左右前輪のうち車輪速の振幅が大きい方の車輪の前記評価値を設定することにある。
本発明においては、左前輪と右前輪との車輪速を検出し、この車輪速における振幅、つまり、所定周期でサンプリングした車輪速の値の変動幅が大きい方の車輪の評価値を設定する。この場合、荒れている側の路面に接地している車輪の車輪速を使って評価値を設定することになる。このことは、セルフアライニングトルクの低い側の車輪の車輪速を使って評価値を設定することと同等である。従って、本発明によれば、本発明によれば、操舵アシストの制限が厳しくなる側の車輪速を使った評価値が設定されるため、過アシストの抑制効果が一層高くなる。
本発明の他の特徴は、実舵角を検出する実舵角検出手段(22)と、前輪側と後輪側との少なくとも一方側の左右輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて推定舵角を計算する推定舵角計算手段(841)と、前記実舵角検出手段により検出された実舵角と、前記推定舵角計算手段により計算された推定舵角との偏差である舵角偏差を検出する舵角偏差検出手段(842)とを備え、前記アシスト制限手段は、前記操舵トルクセンサの異常が検出されて前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量が設定される場合、前記検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量を小さくする第1アシスト制限部(822)と、前記検出された舵角偏差の増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量を小さくする第2アシスト制限部(843)とを備えたことにある。
車輪がスリップした場合には過剰な操舵アシストが働いてしまい操舵ハンドルの切り過ぎによりスリップを助長してしまう可能性がある。そこで、本発明においては、実舵角検出手段と推定舵角計算手段と舵角偏差検出手段を備えており、これらの手段により車輪のスリップの程度を検出する。
実舵角検出手段は、センサにより検出される実際の舵角である実舵角を検出する。実舵角は、例えば、ステアリングシャフトの回転角を検出するセンサ、モータの回転角を検出するセンサ、ラックバーのストロークを検出するセンサ、タイヤの切れ角を検出するセンサ等を使用して検出することができる。推定舵角計算手段は、前輪側と後輪側との少なくとも一方側の左右輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて推定舵角を計算する。推定舵角は、例えば、左右輪の車輪速の和に対する、左右輪の車輪速の差の関数として表すことができる。舵角偏差検出手段は、実舵角と推定舵角との偏差である舵角偏差を検出する。車輪のスリップが発生すると、実舵角と推定舵角とが異なる値をとるようになる。このため、実舵角と推定舵角との舵角偏差の大きさからスリップの程度を判定できる。この場合、舵角偏差が大きいほどスリップの程度が大きいと推定することができる。
アシスト制限手段は、バネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って目標操舵アシスト制御量を小さくする第1アシスト制限部と、舵角偏差の増加に伴って目標操舵アシスト制御量を小さくする第2アシスト制限部とを備えている。従って、セルフアライニングトルクの低下に対して、車輪がスリップしていない状況においては、第1アシスト制限部が操舵アシストを制限することができ、車輪がスリップしている状況においては、第1アシスト制限部あるいは第2アシスト制限部が操舵アシストを制限することができる。例えば、車輪がスリップしていても、車輪速に含まれるバネ下共振周波数成分の大きさが余り大きくならない場合には第1アシスト制限部だけでは操舵アシストの制限が不十分になるが、第2アシスト制限部が車輪のスリップを検出するため、確実に操舵アシストの制限を行うことができる。
従って、本発明によれば、操舵ハンドルの切り過ぎを防止して操縦安定性を維持するとともに、仮にスリップが発生しても、そのスリップを助長することなく解消することができる。
本発明の他の特徴は、前記アシスト制限手段は、車速を検出し、車速が小さい場合には大きい場合に比べて、前記目標操舵アシスト制御量の制限を緩める(86)ことにある。
セルフアライニングトルクが低下している場合には、操舵アシストを制限する必要があるが、低速走行時においては、高速走行時ほど大きな操舵アシストの制限を必要としない。そこで、本発明においては、車速が小さい場合には大きい場合に比べて、目標操舵アシスト制御量の制限を緩める。これにより、低速走行時における過剰なアシスト制限を回避することができる。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
以下、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両の電動パワーステアリング装置1の概略構成を表している。
この電動パワーステアリング装置1は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生するモータ20と、操舵ハンドル11の操作状態に応じてモータ20の作動を制御する電子制御ユニット100とを主要部として備えている。以下、電子制御ユニット100をアシストECU100と呼ぶ。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪Wfl,Wfrを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたギヤ部14aと噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。
ラックバー14は、ギヤ部14aがラックハウジング16内に収納され、その左右両端がラックハウジング16から露出してタイロッド17と連結される。このラックバー14のタイロッド17との連結部には、ストロークエンドを構成するストッパ18が形成され、このストッパ18とラックハウジング16の端部との当接によりラックバー14の左右動ストロークが機械的に規制されている。左右のタイロッド17の他端は、左右前輪Wfl,Wfrに設けられたナックル19に接続される。こうした構成により、左右前輪Wfl,Wfrは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ステアリングシャフト12には減速ギヤ25を介してモータ20が組み付けられている。モータ20は、その回転により減速ギヤ25を介してステアリングシャフト12をその軸中心に回転駆動して、操舵ハンドル11の回動操作に対してアシスト力を付与する。
ステアリングシャフト12には、操舵ハンドル11と減速ギヤ25との中間位置に操舵トルクセンサ21と舵角センサ22が組みつけられている。操舵トルクセンサ21は、例えば、ステアリングシャフト12の中間部に介装されたトーションバー(図示略)の捩れ角度をレゾルバ等により検出し、この捩れ角に基づいて操舵ハンドル11からステアリングシャフト12に入力された操舵トルクTrを検出する。操舵トルクTrは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。例えば、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTrを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTrを負の値で示す。尚、本実施形態においては、トーションバーの捩れ角度をレゾルバにより検出するが、MRセンサ等の他の回転角センサにより検出することもできる。
また、舵角センサ22は、ステアリングシャフト12における操舵トルクセンサ21と減速ギヤ25との中間位置に設けられ、舵角θsを検出する。尚、後述する第2実施形態においては、舵角に関して、舵角センサ22より検出した検出舵角と、車輪速に基づいて計算により推定した推定舵角とを用いるため、この舵角センサ22により検出された舵角θsを実舵角θsと呼ぶ。舵角は、正負の値により操舵方向が識別され、例えば、右方向の舵角を正の値で、左方向の舵角を負の値で示す。本実施形態においては、舵角センサ22は、ステアリングシャフト12の回転角を検出するが、実舵角に対応する物理量であるモータ20の回転角や左右前輪Wfl,Wfrの切れ角などを検出するように構成してもよい。また、ラックバー14の軸線方向の変位ストロークを検出するように構成してもよい。
次に、アシストECU100について説明する。アシストECU100は、図2に示すように、モータ20の目標制御量を演算し、演算された目標制御量に応じたスイッチ駆動信号を出力する電子制御回路50と、電子制御回路50から出力されたスイッチ駆動信号にしたがってモータ20に通電するモータ駆動回路40とを含んで構成される。
モータ20としては、種々のものを採用することができる。例えば、DCブラシレスモータを使用する場合には、モータ駆動回路40としては3相インバータを使用すればよく、ブラシ付モータを使用する場合には、モータ駆動回路40としてはHブリッジ回路を使用するとよい。本実施形態においては、DCブラシレスモータを使用するものとして説明する。
電子制御回路50は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータと、各種の入出力インタフェースと、モータ駆動回路40にスイッチ駆動信号を供給するスイッチ駆動回路等を備えている。
電子制御回路50は、その機能に着目すると、目標アシストトルクTa*を計算する目標アシストトルク計算部70と、目標アシストトルクTa*に応じた電流がモータ20に流れるようにモータ通電量を計算してモータ通電量に応じたスイッチ駆動信号をモータ駆動回路40に出力するモータ制御部60とを備えている。各機能部における処理は、マイコンにより、それぞれ所定の短い周期で繰り返し実行される。
目標アシストトルク計算部70は、正常時アシストトルク計算部71と、異常時アシストトルク計算部80と、異常検出部72と、制御切替部73とを備えている。正常時アシストトルク計算部71は、異常検出部72から出力される異常判定フラグFfailを入力し、異常判定フラグFfailが「0」である場合に、目標アシストトルクTa1を計算し、異常判定フラグFfailが「1」である場合には、その計算処理を停止する演算ブロックである。異常時アシストトルク計算部80は、異常検出部72から出力される異常判定フラグFfailを入力し、異常判定フラグFfailが「1」である場合に、目標アシストトルクTa2を計算し、異常判定フラグFfailが「0」である場合には、その計算処理を停止する演算ブロックである。
異常検出部72は、操舵トルクセンサ21の異常の有無を判定し、異常無しと判定している場合には、異常判定フラグFfailを「0」に設定し、異常有りと判定している場合には、異常判定フラグFfailを「1」に設定し、設定した異常判定フラグFfailを正常時アシストトルク計算部71と異常時アシストトルク計算部80と制御切替部73とに出力する。
制御切替部73は、正常時アシストトルク計算部71により計算された目標アシストトルクTa1と異常時アシストトルク計算部80により計算された目標アシストトルクTa2とを入力して、異常判定フラグFfailが「0」の場合には、目標アシストトルクTa1を選択し、異常判定フラグFfailが「1」の場合には、目標アシストトルクTa2を選択する。そして、選択した目標アシストトルクTa1(またはTa2)を目標アシストトルクTa*に設定して、目標アシストトルクTa*をモータ制御部60に出力する。
目標アシストトルク計算部70の各機能部の詳細については後述する。
モータ制御部60は、電流フィードバック制御部61とPWM信号発生部62とを備えている。電流フィードバック制御部61は、制御切替部73から出力された目標アシストトルクTa*を入力し、目標アシストトルクTa*をモータ20のトルク定数で除算することにより、目標アシストトルクTa*を発生させるために必要な目標電流I*を計算する。そして、モータ駆動回路40に設けられた電流センサ41により検出されるモータ電流Im(実電流Imと呼ぶ)を読み込み、目標電流I*と実電流Imとの偏差を計算し、この偏差を使った比例積分制御により実電流Imが目標電流I*に追従するように目標電圧V*を計算する。そして、目標電圧V*に対応したPWM制御信号(スイッチ駆動信号)をモータ駆動回路(インバータ)40のスイッチング素子に出力する。これにより、モータ20が駆動され、目標アシストトルクTa*に追従したアシストトルクがステアリング機構10に付与される。
尚、本実施形態においては、DCブラシレスモータを使用しているため、電流フィードバック制御部61は、モータ20に設けたモータ回転角センサ23により検出されるモータ回転角θmを入力し、このモータ回転角θmを電気角に変換して、電気角に基づいて目標電流の位相を制御する。
次に、目標アシストトルク計算部70の各機能部について詳細説明する。正常時アシストトルク計算部71は、車速センサ24により検出される車速Vxと、操舵トルクセンサ21により検出される操舵トルクTrとを入力して、図3に示す正常時アシストマップを参照して目標アシストトルクTa1を計算する。正常時アシストマップは、正常時アシストトルク計算部71に記憶されており、代表的な複数の車速Vxごとに、操舵トルクTrと目標アシストトルクTa1との関係を設定した関係付けデータであり、操舵トルクTrの大きさ(絶対値)が大きくなるほど大きくなり、かつ、車速Vxが大きくなるほど小さくなる目標アシストトルクTa1を設定する特性を有する。目標アシストトルクTa1は、操舵トルクTrの方向に働くように計算される。
尚、目標アシストトルクTa1の計算にあたっては、各種の補償トルクを目標アシストトルクTa1に付加するようにしてもよい。例えば、ステアリング機構10における摩擦力分を補償する摩擦補償トルクを付加しても良い。また、摩擦分に加えて粘性分を補償する摩擦粘性補償トルクを付加するようにしてもよい。
正常時アシストトルク計算部71は、異常検出部72から出力される異常判定フラグFfailが「0」である場合に、こうした計算処理を所定の短い周期で繰り返し実行し、計算結果である目標アシストトルクTa1を制御切替部73に出力する。
異常検出部72は、操舵トルクセンサ21の異常の有無を判定する。操舵トルクセンサ21は、ステアリングシャフト12の途中に設けられたトーションバーの捩れ角度を検出することにより操舵トルクを計算できるようにしたもので、トーションバーの一端の回転角度と他端の回転角度との角度差から捩れ角度を検出する。操舵トルクセンサ21は、回転角度を検出するためにレゾルバやMRセンサ等の回転角センサを備え、操舵トルクTrに対応する捩れ角度の計算値に加えて、回転角センサの検出信号もアシストECU100に出力する。尚、回転角センサの検出信号のみをアシストECU100に出力し、アシストECU100で操舵トルクを計算するようにしてもよい。
操舵トルクセンサ21に設けられた回転角センサは、回転角に応じた電圧信号を出力する。従って、出力信号の電圧値が適正範囲から外れている場合には、回転角センサに断線や短絡が発生したと考えられる。また、例えば、レゾルバのように出力電圧が正弦波状に周期的に変化する回転角センサを使用している場合には、出力電圧が一定値に固定されている場合等においても、断線や短絡が発生したと考えられる。
異常検出部72は、回転角センサの出力電圧に基づいて、上記のように操舵トルクセンサ21の異常を検出する(異常の有無を判定する)。そして、操舵トルクセンサ21の異常判定結果にしたがって、異常判定フラグFfailを「1」(異常あり)または「0」(異常なし)に設定する。
次に、異常時アシストトルク計算部80について説明する。上述した正常時アシストトルク計算部71は、操舵トルクTrに基づいて目標アシストトルクTa1を計算するが、操舵トルクセンサ21が故障した場合には、目標アシストトルクTa1を計算することができない。そこで、異常時アシストトルク計算部80は、操舵トルクセンサ21の異常が検出された場合に、正常時アシストトルク計算部71に代わって、目標アシストトルクTa2を計算する。
異常時アシストトルク計算部80については、2つの実施形態を説明する。
<第1実施形態>
異常時アシストトルク計算部80は、図4に示すように、基本アシストトルク計算部81と、アシスト制限計算部82と、アシスト制限部83とを備えている。基本アシストトルク計算部81は、車速センサ24により検出される車速Vxと、舵角センサ22により検出される実舵角θsとを入力し、図5に示す異常時基本アシストマップを参照して、基本アシストトルクTbaseを計算する。異常時基本アシストマップは、基本アシストトルク計算部81に記憶されており、代表的な複数の車速Vxごとに、実舵角θsと基本アシストトルクTbaseとの関係を設定した関係付けデータであり、実舵角θsの大きさ(絶対値)が大きくなるほど大きくなり、かつ、車速Vxが大きくなるほど大きくなる基本アシストトルクTbaseを設定する特性を有する。基本アシストトルクTbaseは、実舵角θsと同じ符号に設定される。従って、実舵角θsが右方向であれば、右操舵方向に働く基本アシストトルクTbaseが設定され、実舵角θsが左方向であれば、左操舵方向に働く基本アシストトルクTbaseが設定される。基本アシストトルク計算部81は、計算した基本アシストトルクTbaseをアシスト制限部83に出力する。
異常時アシストトルク計算部80は、図4に示すように、基本アシストトルク計算部81と、アシスト制限計算部82と、アシスト制限部83とを備えている。基本アシストトルク計算部81は、車速センサ24により検出される車速Vxと、舵角センサ22により検出される実舵角θsとを入力し、図5に示す異常時基本アシストマップを参照して、基本アシストトルクTbaseを計算する。異常時基本アシストマップは、基本アシストトルク計算部81に記憶されており、代表的な複数の車速Vxごとに、実舵角θsと基本アシストトルクTbaseとの関係を設定した関係付けデータであり、実舵角θsの大きさ(絶対値)が大きくなるほど大きくなり、かつ、車速Vxが大きくなるほど大きくなる基本アシストトルクTbaseを設定する特性を有する。基本アシストトルクTbaseは、実舵角θsと同じ符号に設定される。従って、実舵角θsが右方向であれば、右操舵方向に働く基本アシストトルクTbaseが設定され、実舵角θsが左方向であれば、左操舵方向に働く基本アシストトルクTbaseが設定される。基本アシストトルク計算部81は、計算した基本アシストトルクTbaseをアシスト制限部83に出力する。
上述した基本アシストトルクTbaseは、車両が舗装路面を走行することを想定して設定されるが、車両が砂利道を走行する場合等においては、タイヤの操舵方向に対する反力が低下してセルフアライニングトルク(以下、SATと呼ぶ)が低下するため過剰な値となる。つまり、操舵アシストが必要以上に大きくなってしまう。こうした過アシスト状態になると操舵ハンドル11を切り過ぎやすくなり操縦安定性が損なわれる。そこで、本実施形態においては、アシスト制限計算部82とアシスト制限部83とを備え、アシスト制限計算部82が操舵アシストを制限する度合であるアシスト制限ゲインを設定し、アシスト制限部83がアシスト制限ゲインに従って基本アシストトルクTbaseを制限して過アシストを防止する。
アシスト制限計算部82は、周波数強度計算部821と、ゲイン設定部822とから構成される。周波数強度計算部821は、左前輪車輪速センサ26により検出される左前輪車輪速Vflと、右前輪車輪速センサ27により検出される右前輪車輪速Vfrと、左後輪車輪速センサ28により検出される左後輪車輪速Vrlと、右後輪車輪速センサ29により検出される右後輪車輪速Vrrとを入力し、その車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrr(検出値)のうちの1つ、あるいは、複数を使って、車輪速に含まれるバネ下共振周波数付近(10〜15[Hz])の周波数成分の大きさを計算する。
尚、バネ下共振周波数成分の大きさを計算するために用いる車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrは、任意のものでよいため、周波数強度計算部821は、その計算に用いる車輪速のみを入力すればよい。ここでは、計算に用いる車輪速(検出値)を車輪速Vと呼ぶ。
車両が砂利道を走行する場合には、バネ下(サスペンションバネに対して車輪側部材:車輪および車輪を支持するアーム等の部材に相当する)がバネ下共振周波数付近の周波数で振動しやすい。この振動は、車輪速センサ26〜29により検出される車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrにも現れる。従って、車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrに含まれる周波数成分を解析して、バネ下共振周波数付近の周波数成分(バネ下共振周波数成分)の大きさが大きい場合には、砂利道等のSATが小さい路面を走行していると判定することができる。このことを利用して、アシスト制限計算部82は、車輪速Vにおけるバネ下共振周波数成分の大きさが大きいほど操舵アシストを制限する(目標アシストトルクTa*を小さくする)ためのアシスト制限ゲインを設定する。
この実施形態においては、周波数強度計算部821は、例えば、車輪速Vをサンプリング周期5.5[ms]で取得し、車輪速Vの11.3[Hz]を中心とした周波数成分の大きさ(周波数強度)を以下のように計算する。
周波数強度計算部821は、まず、直近の32(=25)点の車輪速データVk(k=1,2,3,……,31)を抽出する。続いて、車輪速データVkに窓関数Wkを乗算する。ここで、乗算結果をxkとする。
xk=Vk・Wk (k=1,2,3,……,31)
続いて、周波数強度計算部821は、xkを用いて次式を使って、FFT演算(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を実施する。
xk=Vk・Wk (k=1,2,3,……,31)
続いて、周波数強度計算部821は、xkを用いて次式を使って、FFT演算(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)を実施する。
車輪速Vの11.3[Hz]を中心とした周波数強度をF2とすると、周波数強度F2は、上記式における実部f2rと虚部f2iの二乗和の平方根となる。ここでは、平方根の演算負担を軽くするために、周波数強度F2の二乗を周波数強度として取り扱うこととする。従って、周波数強度F2 2は次式にて表される。
F2 2=f2r 2+f2i 2
F2 2=f2r 2+f2i 2
続いて、周波数強度計算部821は、次式のように、周波数強度F2 2を現在の車輪速V31で除算することにより周波数強度を正規化した正規化値Nlを求める。
Nl=F2 2/V31 2
Nl=F2 2/V31 2
周波数強度計算部821は、更に、次式のように、直近32点の正規化値Nlを足し合わせて1次ローパスフィルタ処理を行うことにより評価値Eを求める。
ここでsはラプラス演算子を表し、Tはローパスフィルタの時定数を表す。
車両が砂利道を走行する場合には、セルフアライニングトルク(SAT)が低下する。このとき、タイヤの接地荷重が変動して車輪(バネ下)が振動するため、車輪速Vの周波数成分におけるバネ下共振周波数成分の大きさが増大する。従って、周波数強度F2 2が大きくなるほどSATが低下した路面を走行していると推定することができる。そこで、本実施形態においては、周波数強度F2 2の大きさを評価できる評価値Eを求めることにより、この評価値EによりSATの低下レベルを推定できるようにしている。つまり、評価値Eが大きいほどSATが大きく低下していると推定できるようにしている。従って、評価値Eは、周波数強度F2 2の大きさを表す周波数強度評価値であるとともにSATの低下レベルを表すSAT低下評価値でもある。
周波数強度計算部821は、評価値Eをゲイン設定部822に出力する。ゲイン設定部822は、評価値Eを入力し、図6に示すゲインマップを参照して、アシスト制限ゲインKを計算する。ゲインマップは、ゲイン設定部822に記憶されており、評価値Eが基準値Eref以下となる範囲においては、アシスト制限ゲインKを1に設定し(K=1.0)、評価値Eが基準値Erefを超える範囲において、評価値Eが大きくなるほど小さくなるアシスト制限ゲインKを設定する特性を有している。ゲイン設定部822は、計算したアシスト制限ゲインKをアシスト制限部83に出力する。
アシスト制限部83は、基本アシストトルク計算部81から出力された基本アシストトルクTbaseと、アシスト制限計算部82から出力されたアシスト制限ゲインKを入力し、基本アシストトルクTbaseにアシスト制限ゲインKを乗算することにより、目標アシストトルクTa2を求める(Ta2=K×Tbase)。アシスト制限部83は、その計算結果である目標アシストトルクTa2を制御切替部73に出力する。
この電動パワーステアリング装置1によれば、操舵トルクセンサ21が故障した場合であっても、正常時アシストトルク計算部71に代わって異常時アシストトルク計算部80が目標アシストトルクTa*を計算するため、操舵アシストを継続することができる。この場合、異常時アシストトルク計算部80においては、車速Vxと実舵角θsとに基づいて基本アシストトルクTbaseを計算するとともに、車輪速Vにおけるバネ下共振周波数成分の大きさを表す評価値Eを計算する。そして、評価値Eに基づいて設定したアシスト制限ゲインKを基本アシストトルクTbaseに乗算することで、評価値Eが大きくなるにしたがって操舵アシストが小さくなるような目標アシストトルクTa*を計算する。これにより、SATの低下している状況を検出して操舵アシストを制限することができる。従って、過アシストによる操舵ハンドル11の切り過ぎを防止して良好な操縦安定性を維持することができる。この結果、従って、車両が砂利道を走行する場合であっても安全に走行することができる。
また、操舵トルクセンサ21の故障時におけるアシスト制御においては、SATの低下による過アシストを想定した場合、目標アシストトルクをあまり大きくできないが、本実施形態においては、SAT低下を適正に検出することができるため、基本アシストトルクTbaseを大きめに設定することができ、操舵フィーリングが良好になる。
ここで、周波数強度F2 2の計算(評価値Eの計算)に用いる車輪速Vについて説明する。車輪速Vは、4輪の車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrの任意のものを使うことができるが、前輪の車輪速である左前輪車輪速Vflまたは右前輪車輪速Vfrを優先的に使用することが好ましい。その理由は、前輪が操舵アシストを行う転舵輪であること、および、車両が前方に走行する場合には前輪から先に砂利道等の悪路に進入するため早くSATの低下を検出できるからである。
<評価値の計算例1>
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflを使って評価値Eを計算するとともに(この計算された評価値を左前輪評価値Eflと呼ぶ)、右前輪車輪速Vfrを使って評価値Eを計算し(この計算された評価値を右前輪評価値Efrと呼ぶ)、左前輪評価値Eflと右前輪評価値Efrとのうち、大きな値となる評価値E、つまり、アシスト制限を厳しくする側(アシスト制御ゲインKを小さくする側)の評価値Eを選択するとよい。
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflを使って評価値Eを計算するとともに(この計算された評価値を左前輪評価値Eflと呼ぶ)、右前輪車輪速Vfrを使って評価値Eを計算し(この計算された評価値を右前輪評価値Efrと呼ぶ)、左前輪評価値Eflと右前輪評価値Efrとのうち、大きな値となる評価値E、つまり、アシスト制限を厳しくする側(アシスト制御ゲインKを小さくする側)の評価値Eを選択するとよい。
<評価値の計算例2>
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflを使って計算した周波数強度F2 2と、右前輪車輪速Vfrを使って計算した周波数強度F2 2とを比較し、大きい方の値となる周波数強度F2 2を選択して、その選択した周波数強度F2 2を使って評価値Eを計算する。この計算例2であっても、上述の計算例1と同様に、アシスト制限を厳しくする側の評価値Eが得られる。この計算例2においては、周波数強度計算部821における演算負担を低減することができる。
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflを使って計算した周波数強度F2 2と、右前輪車輪速Vfrを使って計算した周波数強度F2 2とを比較し、大きい方の値となる周波数強度F2 2を選択して、その選択した周波数強度F2 2を使って評価値Eを計算する。この計算例2であっても、上述の計算例1と同様に、アシスト制限を厳しくする側の評価値Eが得られる。この計算例2においては、周波数強度計算部821における演算負担を低減することができる。
<評価値の計算例3>
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflの波形振幅と、右前輪車輪速Vfrの波形振幅とを計算し、計算した波形振幅が大きい方の車輪速を選択する。そして、選択した車輪速Vを使って評価値Eを計算する。この計算例3においては、荒れている側の路面に接地している車輪の車輪速を使って評価値Eを計算する、つまり、SATが低い側の車輪の車輪速を使って評価値Eを計算するため、上記計算例1,2と同様に、アシスト制限を厳しくする側の評価値Eが得られることになる。この計算例3においては、周波数強度および評価値の計算が1輪分で済むため、周波数強度計算部821における演算負担を低減することができる。
前輪の車輪速Vfl,Vfrを入力値として使用する場合、例えば、周波数強度計算部821は、左前輪車輪速Vflの波形振幅と、右前輪車輪速Vfrの波形振幅とを計算し、計算した波形振幅が大きい方の車輪速を選択する。そして、選択した車輪速Vを使って評価値Eを計算する。この計算例3においては、荒れている側の路面に接地している車輪の車輪速を使って評価値Eを計算する、つまり、SATが低い側の車輪の車輪速を使って評価値Eを計算するため、上記計算例1,2と同様に、アシスト制限を厳しくする側の評価値Eが得られることになる。この計算例3においては、周波数強度および評価値の計算が1輪分で済むため、周波数強度計算部821における演算負担を低減することができる。
<第2実施形態>
次に、異常時アシストトルク計算部80の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、車輪のスリップ状態を検出し、スリップの程度が大きいほど操舵アシストの制限を厳しくする(目標アシストトルクTa*を小さくする)機能を追加したものである。第2実施形態にかかる異常時アシストトルク計算部80は、図7に示すように、第1実施形態の構成に、更に、第2アシスト制限計算部84とゲイン選択部85とを設けたもので、他の構成は第1実施形態と同一である。以下、第1実施形態と同様なアシスト制限計算部82を第1アシスト制限計算部82と呼び、ゲイン設定部822を第1ゲイン設定部822とよび、第1ゲイン設定部822により出力されるアシスト制限ゲインKを第1アシスト制限ゲインK1と呼ぶ。第1実施形態と同一の構成については、図面に第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
次に、異常時アシストトルク計算部80の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、車輪のスリップ状態を検出し、スリップの程度が大きいほど操舵アシストの制限を厳しくする(目標アシストトルクTa*を小さくする)機能を追加したものである。第2実施形態にかかる異常時アシストトルク計算部80は、図7に示すように、第1実施形態の構成に、更に、第2アシスト制限計算部84とゲイン選択部85とを設けたもので、他の構成は第1実施形態と同一である。以下、第1実施形態と同様なアシスト制限計算部82を第1アシスト制限計算部82と呼び、ゲイン設定部822を第1ゲイン設定部822とよび、第1ゲイン設定部822により出力されるアシスト制限ゲインKを第1アシスト制限ゲインK1と呼ぶ。第1実施形態と同一の構成については、図面に第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2アシスト制限計算部84は、推定舵角計算部841と、舵角偏差計算部842と、ゲイン設定部843とを備えている。推定舵角計算部841は、左前輪車輪速センサ26により検出される左前輪車輪速Vflと、右前輪車輪速センサ27により検出される右前輪車輪速Vfrと、左後輪車輪速センサ28により検出される左後輪車輪速Vrlと、右後輪車輪速センサ29により検出される右後輪車輪速Vrrとを入力し、二通りの推定舵角を計算する。この二通りの推定舵角の一つは、左前輪車輪速Vflと右前輪車輪速Vfrとから計算される推定舵角θfであり、他の一つは、左後輪車輪速Vrlと右後輪車輪速Vrrとから計算される推定舵角θrである。以下、推定舵角θfを前輪側推定舵角θfと呼び、推定舵角θrを後輪側推定舵角θrと呼ぶ。
前輪側推定舵角θfは、次式(1)により計算され、後輪側推定舵角θrは、次式(2)により計算される。ここでは、前輪側推定舵角θf,後輪側推定舵角θrは、ステアリングシャフト回りに換算した舵角としている。
ここで、Gは予め設定されている舵角換算用のギヤ比(オーバーオールギヤ比)を表し、aは左右後輪Wrl,Wrrのトレッド、bは車両のホイールベースを表す(図8参照)。
車輪速センサ26〜29により検出される車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrにはノイズが含まれているため、推定舵角計算部841は、車輪速Vfl,Vfr,Vrl,Vrrあるいは推定舵角θf,θrに対してノイズ除去フィルタ処理を行うようにするとよい。
推定舵角計算部841は、計算した前輪側推定舵角θfと後輪側推定舵角θrとを舵角偏差計算部842に出力する。舵角偏差計算部842は、舵角センサ22により検出される実舵角θsと、前輪側推定舵角θfと、後輪側推定舵角θrとを入力し、実舵角θsの絶対値|θs|と前輪側推定舵角θfの絶対値|θf|との偏差である前輪側舵角偏差Δθfs(=||θs|−|θf||)と、実舵角θsの絶対値|θs|と後輪側推定舵角θrの絶対値|θr|との偏差である後輪側舵角偏差Δθrs(=||θs|−|θr||)とを計算する。
前後左右輪の何れかにスリップが発生していると、前後左右輪の旋回中心は同一とならなくなり、その結果、前輪側舵角偏差Δθfsおよび後輪側舵角偏差Δθrsが大きくなる。これにより、この前輪側舵角偏差Δθfs、後輪側舵角偏差Δθrsが大きいほどスリップの程度が大きいと判断することができる。従って、前輪側舵角偏差Δθfs、あるいは、後輪側舵角偏差Δθrsは、車輪のスリップの程度を表すスリップ評価値として使用することができる。
舵角偏差計算部842は、前輪側舵角偏差Δθfsと後輪側舵角偏差Δθrsとのうち、大きな値となる方を舵角偏差Δθに設定して第2ゲイン設定部843に出力する。あるいは、前輪側舵角偏差Δθfsと後輪側舵角偏差Δθrsとの平均値((Δθfs+Δθrs)/2)を計算し、その平均値を舵角偏差Δθに設定して第2ゲイン設定部843に出力するようにしてもよい。
第2ゲイン設定部843は、舵角偏差計算部842から出力された舵角偏差Δθを入力し、図9に示すゲインマップを参照して、舵角偏差Δθに対応する第2アシスト制限ゲインK2を計算する。ゲインマップは、第2ゲイン設定部843に記憶されており、舵角偏差Δθが基準値Δθref以下となる範囲においては、第2アシスト制限ゲインK2を1に設定し(K2=1.0)、舵角偏差Δθが基準値Δθrefを超える範囲において、舵角偏差Δθが大きくなるほど小さくなる第2アシスト制限ゲインK2を設定する特性を有している。第2ゲイン設定部843は、計算した第2アシスト制限ゲインK2をゲイン選択部85に出力する。
車輪がスリップしているときには、スリップしていないときと同じ力で操舵アシストを行うと過アシストとなり、操舵ハンドル11を切り過ぎやすくなってしまい、スリップを助長してしまうことにもなる。そこで、第2ゲイン設定部843においては、車輪のスリップの指標を表す舵角偏差Δθが基準値Δθrefを超える場合には、舵角偏差Δθが大きいほど第2アシスト制限ゲインK2を小さな値に設定することにより、操舵アシストを制限できるようにしている。
ゲイン選択部85は、第1アシスト制限計算部82から出力された第1アシスト制限ゲインK1と、第2アシスト制限計算部84から出力された第2アシスト制限ゲインK2とを入力し、第1アシスト制限ゲインK1と第2アシスト制限ゲインK2とを比較して小さい方のアシスト制限ゲインを選択する。つまり、ゲイン選択部85は、アシスト制限を厳しくする(目標アシストトルクTa*を小さくする)方のアシスト制限ゲイン(K1またはK2)を選択する。ゲイン選択部85は、選択したアシスト制限ゲインをアシスト制限ゲインKに設定してアシスト制限部83に出力する。
この第2実施形態によれば、バネ下共振周波数成分の大きさを表す評価値Eに基づいてSATの低下を検出して操舵アシストを制限するだけでなく、舵角偏差Δθに基づいて車輪のスリップを検出して操舵アシストを制限することができる。例えば、砂利道を走行している場合には、車輪がスリップしていなくても評価値Eが大きくなるため(第1アシスト制限ゲインK1が小さくなるため)、この評価値Eに基づいて操舵アシストを制限することができる。また、車輪がスリップしている場合には、仮に評価値Eが小さい値を示していても、舵角偏差Δθが大きな値となって第2アシスト制限ゲインK2が小さくなるため、この舵角偏差Δθに基づいて操舵アシストを制限することができる。
このように、第2実施形態においては、車輪速Vにおけるバネ下共振周波数成分の増加に伴って目標操舵アシスト制御量が小さくなるように、かつ、舵角偏差Δθの増加に伴って目標操舵アシスト制御量が小さくなるように目標操舵アシスト制御量を制限するため、操舵ハンドル11の切り過ぎを防止して操縦安定性を維持するとともに、仮にスリップが発生しても、そのスリップを助長することなく解消することができる。
しかも、舵角偏差Δθの計算にあたっては、推定舵角θf,θr同士の偏差を用いずに、実舵角θsと推定舵角θf,θrとの偏差を用いているため、推定舵角θf,θrに含まれる誤差の影響が少なく、適切にスリップ状態を検出することができる。これにより、車輪のスリップを適切に解消させることができる。
また、舵角偏差計算部842は、2通りの舵角偏差(Δθfs,Δθrs)を使って舵角偏差Δθを設定するため、所望のレベルにて操舵アシストを制限することができる。例えば、前輪側舵角偏差Δθfsと後輪側舵角偏差Δθrsとのうち、大きな値となる方を舵角偏差Δθに設定した場合には、操舵アシストの制限度合を厳しい側に設定することができ、平均値((Δθfs+Δθrs)/2)を舵角偏差Δθに設定した場合には、左右輪のスリップ状態を加味した操舵アシストの制限を行うことができる。
また、操舵トルクセンサ21の故障時におけるアシスト制御においては、過アシストによるスリップの発生を想定した場合、目標アシストトルクをあまり大きくできないが、本実施形態においては、スリップを適正に検出することができるため、基本アシストトルクTbaseを大きめに設定することができ、操舵フィーリングが良好になる。
また、第1アシスト制限計算部82と第2アシスト制限計算部84とにおいては、ともに共通の車輪速を用いてアシスト制限ゲインを設定する構成であるため、センサを共用することができ低コストにて実施することができる。
尚、この第2実施形態においては、2つの推定舵角θf,θrを計算し、この2つの推定舵角θf,θrに基づいて、それぞれ舵角偏差Δθfs,Δθrsを計算する構成であるが、何れか一方だけを計算するように構成するようにしてもよい。例えば、推定舵角計算部841においては前輪側推定舵角θfのみを計算し、舵角偏差計算部842においては前輪側舵角偏差Δθfsのみを計算し、その前輪側舵角偏差Δθfsを舵角偏差Δθに設定するようにしてもよい。あるいは、推定舵角計算部841においては後輪側推定舵角θrのみを計算し、舵角偏差計算部842においては後輪側舵角偏差Δθrsのみを計算し、その後輪側舵角偏差Δθrsを舵角偏差Δθに設定するようにしてもよい。
次に、上記2つの実施形態に適用できる変形例について説明する。
<第1変形例>
上記各実施形態においては、操舵アシストを制限する手法として、基本アシストトルクTbaseにアシスト制限ゲインKを乗じるようにしている。しかし、操舵アシストの制限については、目標アシストトルクTa*の上限値を低減させることにより実施することもできる。例えば、ゲイン設定部822,843の処理を以下のように変更する。尚、この処理は、アシスト制限ゲインを設定する処理ではなく、目標アシストトルクTa*の上限値を設定する処理であるため、以下、ゲイン設定部822,843を上限値設定部822,843と呼び、ゲイン選択部85を上限値選択部85と呼ぶ。
上記各実施形態においては、操舵アシストを制限する手法として、基本アシストトルクTbaseにアシスト制限ゲインKを乗じるようにしている。しかし、操舵アシストの制限については、目標アシストトルクTa*の上限値を低減させることにより実施することもできる。例えば、ゲイン設定部822,843の処理を以下のように変更する。尚、この処理は、アシスト制限ゲインを設定する処理ではなく、目標アシストトルクTa*の上限値を設定する処理であるため、以下、ゲイン設定部822,843を上限値設定部822,843と呼び、ゲイン選択部85を上限値選択部85と呼ぶ。
この第1変形例を第1実施形態に適用した場合、上限値設定部822は、図10に示す上限値マップを記憶し、この上限値マップを参照して、評価値Eに対応する上限値Tlimを計算する。この上限値マップは、評価値Eが基準値Eref以下となる範囲においては、目標アシストトルクTa*の上限値Talimを基本上限値Talim0に設定し、評価値Eが基準値Erefを超える範囲において、評価値Eが大きくなるほど小さくなる上限値Talimを設定する特性を有している。上限値設定部822は、計算結果である上限値Talimをアシスト制限部83に出力する。
アシスト制限部83は、基本アシストトルクTbaseと上限値Talimとを比較し、基本アシストトルクTbaseが上限値Talimを越えない場合には、基本アシストトルクTbaseを目標アシストトルクTa2に設定し(Ta2←Tbase)、基本アシストトルクTbaseが上限値Talimを越えている場合には、上限値Talimを目標アシストトルクTa2に設定する(Ta2←Talim)。従って、評価値Eに応じて適切に操舵アシストを制限することができる。
また、この第1変形例を第2実施形態に適用した場合、上限値設定部822は、上記のように設定した上限値Talimを上限値選択部85に出力する。一方、上限値設定部843は、図11に示す上限値マップを記憶し、この上限値マップを参照して、舵角偏差Δθに対応する上限値Tlimを計算する。この上限値マップは、舵角偏差Δθが基準値Δθref以下となる範囲においては、目標アシストトルクTa*の上限値Talimを基本上限値Talim0に設定し、舵角偏差Δθが基準値Δθrefを超える範囲において、舵角偏差Δθが大きくなるほど小さくなる上限値Talimを設定する特性を有している。上限値設定部843は、計算結果である上限値Talimを上限値選択部85に出力する。
上限値選択部85は、上限値設定部822から出力された上限値Talimと、上限値設定部843から出力された上限値Talimとを入力し、値が小さい方の上限値Talimを選択してアシスト制限部83に出力する。アシスト制限部83は、上述したように基本アシストトルクTbaseが上限値Talimを超えないように制限する。従って、評価値Eおよび舵角偏差Δθに応じて適切に操舵アシストを制限することができる。
<第2変形例>
この第2変形例においては、アシスト制限ゲインKを車速に応じて可変にする機能を追加したものである。異常時アシストトルク計算部80は、図12に示すように、車速可変係数乗算部86を備えている。車速可変係数乗算部86は、ゲイン設定部822あるいは第2ゲイン設定部843あるいはゲイン選択部85により計算されたアシスト制限ゲインKと、車速センサ24に検出された車速Vxとを入力する。車速可変係数乗算部86は、図13に示す車速ゲインマップを記憶しており、車速ゲインマップを参照して、車速Vxに応じた車速ゲインKvを計算する。車速ゲインマップは、車速Vxが基準値Vref以下となる範囲においては、車速ゲインKvを一定の基準値Kv0に設定し、車速Vxが基準値Vrefを超える範囲において、車速Vxが大きくなるほど小さくなる車速ゲインKvを設定する特性を有している。
この第2変形例においては、アシスト制限ゲインKを車速に応じて可変にする機能を追加したものである。異常時アシストトルク計算部80は、図12に示すように、車速可変係数乗算部86を備えている。車速可変係数乗算部86は、ゲイン設定部822あるいは第2ゲイン設定部843あるいはゲイン選択部85により計算されたアシスト制限ゲインKと、車速センサ24に検出された車速Vxとを入力する。車速可変係数乗算部86は、図13に示す車速ゲインマップを記憶しており、車速ゲインマップを参照して、車速Vxに応じた車速ゲインKvを計算する。車速ゲインマップは、車速Vxが基準値Vref以下となる範囲においては、車速ゲインKvを一定の基準値Kv0に設定し、車速Vxが基準値Vrefを超える範囲において、車速Vxが大きくなるほど小さくなる車速ゲインKvを設定する特性を有している。
車速可変係数乗算部86は、入力したアシスト制限ゲインKに車速ゲインKvを乗算した値をアシスト制限ゲインKに設定する(K←Kv・K)。例えば、この変形例を第1実施形態に適用した場合には、ゲイン設定部822の出力するアシスト制限ゲインKを車速可変して(アシスト制限ゲインKに車速ゲインKvを乗算して)アシスト制限部83に出力する。また、この変形例を第2実施形態に適用した場合には、第1ゲイン設定部822の出力する第1アシスト制限ゲインK1を車速可変してゲイン選択部85に出力する。あるいは、第2ゲイン設定部843の出力する第2アシスト制限ゲインK2を車速可変してゲイン選択部85に出力する。あるいは、ゲイン選択部85の出力するアシスト制限ゲインKを車速可変してアシスト制限部83に出力する。
セルフアライニングトルクが低下している場合には、操舵アシストを制限する必要があるが、低速走行時においては、高速走行時ほど大きな操舵アシストの制限を必要としない。そこで、第2変形例においては、車速ゲインKvを使ってアシスト制限を補正することにより、高速走行時に比べて低速走行時における目標操舵アシスト制御量の制限を緩める。これにより、低速走行時の過剰なアシスト制限を回避することができる。
尚、この第2変形例においては、アシスト制限ゲインKに車速ゲインKvを乗算してアシスト制限を補正しているが、第1変形例を組み合わせて、上限値Tlimに車速ゲインKvを乗算してアシスト制限を補正するようにしてもよい(Tlim←Kv・Tlim)。
<第3変形例>
上述した各実施形態においては、評価値Eあるいは舵角偏差Δθに応じて設定されるアシスト制限ゲインKを使って操舵アシストを制限している。このため、例えば、アシスト制限ゲインKがゼロ(K=0)の状態、つまり、操舵アシストを停止している状態から、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが急に少なくなってアシスト制限ゲインKが急に増加することがある。このとき、操舵操作中であると、操舵アシストの変化によりドライバーに違和感を与えてしまう。そこで、第3変形例においては、アシスト制限ゲインKが一旦ゼロにまで低下した場合には、その後ゲインマップで設定されるアシスト制限ゲインKが増加しても、少なくとも設定時間だけはアシスト制限ゲインKをゼロに維持し、基本アシストトルクTbaseがゼロに戻ったタイミングでアシスト制限トルクを通常値(ゲインマップによる値)に復帰させる処理を加えたものである。
上述した各実施形態においては、評価値Eあるいは舵角偏差Δθに応じて設定されるアシスト制限ゲインKを使って操舵アシストを制限している。このため、例えば、アシスト制限ゲインKがゼロ(K=0)の状態、つまり、操舵アシストを停止している状態から、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが急に少なくなってアシスト制限ゲインKが急に増加することがある。このとき、操舵操作中であると、操舵アシストの変化によりドライバーに違和感を与えてしまう。そこで、第3変形例においては、アシスト制限ゲインKが一旦ゼロにまで低下した場合には、その後ゲインマップで設定されるアシスト制限ゲインKが増加しても、少なくとも設定時間だけはアシスト制限ゲインKをゼロに維持し、基本アシストトルクTbaseがゼロに戻ったタイミングでアシスト制限トルクを通常値(ゲインマップによる値)に復帰させる処理を加えたものである。
図14は、ゲイン設定部822が行うゲイン復帰処理ルーチンを表すフローチャートである。尚、ここでは、第1実施形態に適用した変形例について説明するが、第2実施形態の第1ゲイン設定部822あるいは第2ゲイン設定部843においても同様に適用することができる。ゲイン設定部822(843)は、上述したようにゲインマップを参照して評価値E(舵角偏差Δθ)に応じたアシスト制限ゲインKを計算するとともに、このゲイン復帰処理ルーチンを所定の短い周期で繰り返し実行する。
ゲイン設定部822は、ステップS11において、直前回(1演算周期前)に計算したアシスト制限ゲインK(n-1)がゼロであり、かつ、今回、ゲインマップを参照して計算したアシスト制限ゲインK(n)がゼロでないか否かを判断する。つまり、操舵アシストを停止させている状態(K=0)から、評価値Eが減少して復帰状態(0<K<1)に移行したか否かを判断する。ゲイン設定部822は、ステップS11の条件が満たされていない場合には、本ルーチンを一旦終了する。この場合、ゲイン設定部822は、アシスト制限ゲインK(n)をアシスト制限部83に出力する。
ゲイン設定部822は、こうした処理を繰り返し、ステップS11において「Yes」と判断すると、続くステップS12において、設定時間継続されたか否かを判断する。つまり、ステップS11において最初に「Yes」と判断されてから、設定時間のあいだ継続して「Yes」と判断されているか否かを判断する。設定時間継続していない場合は(S12:No)、ステップS13において、アシスト制限ゲインK(n)をゼロに設定して本ルーチンを一旦終了する。つまり、ゲインマップから算出されるアシスト制限ゲインK(n)はゼロにならないが、強制的にアシスト制限ゲインK(n)をゼロに設定する。従って、アシスト制限部83には、ゼロに設定されたアシスト制限ゲインK(n)が出力される。従って、まだ操舵アシストは再開されない。
ゲイン設定部822は、こうした処理を繰り返す。そして、ステップS12において、「Yes」と判断された場合には、ステップS14において、基本アシストトルクTbaseがゼロ(Tbase=0)であるか否かを判断する。基本アシストトルクTbaseがゼロでない場合は、ステップS13において、強制的にアシスト制限ゲインK(n)をゼロに設定する。従って、まだ操舵アシストは、再開されない。
一方、基本アシストトルクTbaseがゼロである場合は、ステップS15において、ゲインマップから算出される値をアシスト制限ゲインK(n)に設定する。つまり、この時点になって、ゲインマップを参照して計算されるアシスト制限ゲインK(n)が採用される。従って、アシスト制限部83は、このアシスト制限ゲインK(n)に応じたアシスト制限を行う。
このように第3変形例によれば、評価値E(舵角偏差Δθ)が増加して操舵アシストを停止した(K=0)後は、少なくとも設定時間だけは操舵アシスト停止状態を維持するという第1条件、および、基本アシストトルクTbaseがゼロであるという第2条件の2つを満足しないあいだは、アシスト制限ゲインKを強制的にゼロに維持して操舵アシストを停止する。そして、上記2つの条件を満足したときに、アシスト制限ゲインKの設定方法を通常時のものに戻して、評価値E(舵角偏差Δθ)に応じた値に設定する。従って、SATが通常値に戻ったとき、あるいは、スリップ状態が解除されたときであっても、急に操舵アシストが変動することがなくドライバーに違和感を与えない。
尚、この第3変形例においては、2つの条件を設定しているが、第1条件だけ、あるいは、第2条件だけを設定してもよい。また、アシスト制限ゲインKや基本アシストトルクTbaseにおける「ゼロ」とは完全なゼロのみを意味しているのではなく、実質的なゼロ、つまり、ゼロとみなせる程度のゼロ近傍値を含むものである。
<第4変形例>
評価値Eあるいは舵角偏差Δθが増加しているときには、早く操舵アシストを低下させるとスリップ防止効果あるいはスリップ解消効果を高めることができる。また、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが減少しているときには、ゆっくり操舵アシストを復帰(増加)させたほうが、トルク変動による操舵違和感を低減することができる。そこで、第4変形例においては、評価値Eあるいは舵角偏差Δθの変動幅に対するアシスト制限ゲインKの変動幅を、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが増加しているときと減少しているときとで異なるように設定する。
評価値Eあるいは舵角偏差Δθが増加しているときには、早く操舵アシストを低下させるとスリップ防止効果あるいはスリップ解消効果を高めることができる。また、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが減少しているときには、ゆっくり操舵アシストを復帰(増加)させたほうが、トルク変動による操舵違和感を低減することができる。そこで、第4変形例においては、評価値Eあるいは舵角偏差Δθの変動幅に対するアシスト制限ゲインKの変動幅を、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが増加しているときと減少しているときとで異なるように設定する。
図15は、ゲイン設定部822が行うアシスト制限ゲイン設定ルーチンを表すフローチャートである。尚、ここでは、第1実施形態に適用した変形例について説明するが、第2実施形態の第1ゲイン設定部822あるいは第2ゲイン設定部843においても同様に適用することができる。ゲイン設定部822(843)は、上述したようにゲインマップを参照して評価値E(舵角偏差Δθ)に応じたアシスト制限ゲインKを計算するとともに、このゲイン復帰処理ルーチンを所定の短い周期で繰り返し実行する。
ゲイン設定部822は、ステップS21において、直前回(1演算周期前)に計算したアシスト制限ゲインK(n-1)が1では無いか否かを判断する。アシスト制限ゲインK(n-1)が1である場合(K(n-1)=1.0)には、ステップS22において、ゲインマップを参照して、評価値E(n)に基づいてアシスト制限ゲインK(n)を設定して本ルーチンを一旦終了する。こうした処理が繰り返され、評価値Eが増加して、ステップS21の判断が「No」となると、つまり、直前回(1演算周期前)に計算したアシスト制限ゲインK(n-1)が1では無くなると、ゲイン設定部822は、ステップS23において、周波数強度計算部821で今回計算された評価値E(n)から直前回(1演算周期前)計算された評価値E(n-1)を引いた値(E(n)−E(n-1))が正の値であるか否かを判断する。つまり、評価値Eが増加しているか否かを判断する。
ゲイン設定部822は、ステップS23において、「Yes」、つまり、評価値Eが増加していると判断した場合には、ステップS24において、変化勾配αを第1変化勾配α1に設定し、逆に、ステップS23において、「No」、つまり、評価値Eが減少していると判断した場合(変化していない場合も含む)には、ステップS25において、変化勾配αを第2変化勾配α2に設定する。
第1変化勾配α1は、図16に示すように、アシスト制限ゲインKを減少させるときの減少度合、つまり、評価値Eの増加幅に対するアシスト制限ゲインKの減少幅の比を表し、第2変化勾配α2は、アシスト制限ゲインKを増加させるときの増加度合、つまり、評価値Eの減少幅に対するアシスト制限ゲインKの増加幅の比を表す。この場合、第1変化勾配α1は、第2変化勾配α2よりも大きな値に設定されている。
続いて、ゲイン設定部822は、ステップS26において、直前回に計算されたアシスト制限ゲインK(n-1)から、評価値Eの1演算周期あたりの変化量(E(n)−E(n-1))に変化勾配αを乗算した値を引くことにより、今回の演算周期におけるアシスト制限ゲインK(n)を計算する。計算式で表せば、次式の通りである。
K(n)=K(n-1)−α(E(n)−E(n-1))
K(n)=K(n-1)−α(E(n)−E(n-1))
ステップS26で計算されたアシスト制限ゲインK(n)が0〜1.0の範囲に入らなくなることも考えられるため、ゲイン設定部822は、ステップS27〜S30の処理を実行する。ゲイン設定部822は、ステップS27において、上記計算結果であるアシスト制限ゲインK(n)が負の値になっているか否かを判断し、負の値である場合には、ステップS28において、アシスト制限ゲインK(n)をゼロに設定する(K(n)=0)。また、負の値でなければ、ステップS29において、アシスト制限ゲインK(n)が1より大きな値になっているかを判断し、1より大きな値である場合には、ステップS30において、アシスト制限ゲインK(n)を1に設定する(K(n)=1.0)。アシスト制限ゲインK(n)が0〜1.0の範囲に入っている場合(S27:No)、アシスト制限ゲインK(n)をステップS26で計算された値とする。
ゲイン設定部822は、こうしてアシスト制限ゲインK(n)を設定すると本ルーチンを一旦終了する。そして、所定の短い周期で同様の処理を繰り返す。
尚、この第4変形例を第2ゲイン設定部843に適用した場合には、ステップS23およびステップS26における評価値E(n),E(n-1)を舵角偏差Δθ(n),Δθ(n-1)に置き換えればよい。
この第4変形例によれば、評価値Eあるいは舵角偏差Δθが増加している場合には、減少している場合に比べて、アシスト制限を変化させる度合(変化速度)を大きくする。従って、SATの低下が検出されたとき、あるいは、スリップの発生が検出されたときには、素早く操舵アシストを制限することができ、SATが回復してきたとき、あるいは、スリップが解消されてきたときには、ゆっくりと操舵アシストの制限を緩めることができる。このため、スリップの防止あるいは解消と、操舵違和感の低減とを両立させることができる。
また、第4変形例の変形例として、例えば、第1変化勾配α1に関して、評価値Eの増加率E’(単位時間あたりの増加量:E(n)−E(n-1))が大きいほど、第1変化勾配α1が大きくなるように設定するようにしてもよい。この場合、例えば、ゲイン設定部822は、図17に示すような変化勾配マップを記憶し、この変化勾配マップを参照して、評価値Eの増加率E’が大きくなるにしたがって増加する第1変化勾配α1を設定するようにすればよい。
尚、第2ゲイン設定部843に適用した場合には、舵角偏差Δθの増加率Δθ’(単位時間あたりの増加量:Δθ(n)−Δθ(n-1))が大きいほど、第1変化勾配α1が大きくなるように設定するようにすればよい。この場合、ゲイン設定部843は、図17の横軸を舵角偏差Δθの増加率Δθ’とした変化勾配マップを記憶し、この変化勾配マップを参照して、舵角偏差Δθの増加率Δθ’が大きくなるにしたがって増加する第1変化勾配α1を設定するようにすればよい。
これによれば、評価値Eの増加率E’あるいは舵角偏差Δθの増加率Δθ’によってもアシスト制御ゲインKが変更されるため、SATの低下開始に対して、あるいは、車輪のスリップ開始に対して、素早く操舵アシストを制限することができる。このため、車輪のスリップ防止効果、スリップ解消効果を一層高めることができる。
以上、2つの実施形態および変形例にかかる電動パワーステアリング装置1について説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、変形例を複数組み合わせることもできる。例えば、第3変形例および第4変形例においては、アシスト制限ゲインKを使って操舵アシストの制限を行っているが、第1変形例を組み合わせて、上限値Tlimを使って操舵アシストの制限を行うようにすることもできる。この場合には、アシスト制限ゲインK(n),K(n-1)に代えて上限値Tlim(n),Tlim(n-1)を用いればよい。また、「K=1」を「Talim=Talim0」に置き換え、「K=0」を「Talim=0」に置き換えればよい。
また、本実施形態においては、操舵トルクTrの代替パラメータとして実舵角θsを用いて基本アシストトルクTbaseを計算しているが、実舵角θsに代えて推定舵角を用いることもできる。また、操舵トルクTrの代替パラメータとして舵角を用いずに、車両に働く横加速度を用いることもできる。この場合、横加速度が大きくなるほど大きくなる目標操舵アシスト量(例えば、基本アシストトルクTbase)を設定するとよい。横加速度は、センサにより検出してもよいし演算により求めるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、評価値Eが基準値Erefを超えた範囲において、アシスト制限ゲインKを評価値Eの増加にともなってリニアに低下させるようにしているが、これに代えて、アシスト制限ゲインKを段階的に低下させる構成であってもよい。例えば、アシスト制限ゲインKを評価値Eの増加にともなって二段階に変化させるようにしてもよい。また、本実施形態においては、舵角偏差Δθが基準値Δθrefを超えた範囲において、アシスト制限ゲインKを舵角偏差Δθの増加にともなってリニアに低下させるようにしているが、これに代えて、アシスト制限ゲインKを段階的に低下させる構成であってもよい。例えば、アシスト制限ゲインKを舵角偏差Δθの増加にともなって二段階に変化させるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、基本アシストトルクTbaseは、車速に応じて特性を切り替えているが、車速応答させないようにしてもよい。また、基本アシストトルクTbaseは、舵角速度に応じて変化する補償トルク、例えば、ステアリング機構10における摩擦力分を補償する摩擦補償トルクや粘性分を補償する粘性補償トルクを付加するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、舵角センサ22および車輪速センサ26〜29を備えて実舵角および車輪速を検出しているが、これらのセンサを備えずに、車両内に設けられた他の車両ECU(例えば、車両姿勢制御ECU)が検出した実舵角および車輪速を表す情報を通信ラインを介して取得するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、バネ下の振動におけるバネ下共振周波数成分の大きさを車輪速に重畳される周波数成分により検出しているが、必ずしも車輪速を用いる必要はなく、例えば、バネ下の上下加速度を検出するバネ下加速度センサをバネ下に設け、車輪速Vに代えて、バネ下加速度センサにより検出される上下加速度検出値におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、モータ20の発生するトルクをステアリングシャフト12に付与するコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置について説明したが、モータの発生するトルクをラックバー14に付与するラックアシスト式の電動パワーステアリング装置であってもよい。
1…電動パワーステアリング装置、10…ステアリング機構、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、20…モータ、21…操舵トルクセンサ、22…舵角センサ、24…車速センサ、26〜29…車輪速センサ、40…モータ駆動回路、50…電子制御回路、60…モータ制御部、70…目標アシストトルク計算部、71…正常時アシストトルク計算部、72…異常検出部、73…制御切替部、80…異常時アシストトルク計算部、81…基本アシストトルク計算部、82…アシスト制限計算部、821…周波数強度計算部、822…第1ゲイン設定部、83…アシスト制限部、84…第2アシスト制限計算部、841…推定舵角計算部、842…舵角偏差計算部、843…第2ゲイン設定部、85…ゲイン選択部、86…車速可変係数乗算部、100…電子制御ユニット(アシストECU)、Ffail…異常判定フラグ、K,K1,K2…アシスト制限ゲイン、Kv…車速ゲイン、Ta*…目標アシストトルク、Ta1…目標アシストトルク、Ta2…目標アシストトルク、Tr…操舵トルク、Vx…車速、Vfl…左前輪車輪速、Vfr…右前輪車輪速、Vrl…左後輪車輪速、Vrr…右後輪車輪速、Δθfs…前輪側舵角偏差、V…車輪速、Δθrs…後輪側舵角偏差、Δθ…舵角偏差、E…評価値、θs…実舵角。
Claims (10)
- 操舵ハンドルからステアリングシャフトに入力された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、
ステアリング機構に設けられて操舵アシストトルクを発生するモータと、
前記操舵トルクセンサの異常を検出する異常検出手段と、
前記操舵トルクセンサの異常が検出されていない場合は、前記操舵トルクセンサにより検出された操舵トルクに基づいて目標操舵アシスト制御量を設定し、前記操舵トルクセンサの異常が検出されている場合は、前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量を設定する制御量設定手段と、
前記制御量設定手段により設定された前記目標操舵アシスト制御量に従って前記モータを駆動制御するモータ制御手段と
を備えた車両の電動パワーステアリング装置において、
サスペンションバネに対して車輪側となるバネ下の振動におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出するバネ下周波数成分検出手段と、
前記操舵トルクセンサの異常が検出されて前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量が設定される場合、前記検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限するアシスト制限手段と
を備えたことを特徴とする車両の電動パワーステアリング装置。 - 前記バネ下周波数成分検出手段は、少なくとも1輪の車輪速を検出し、前記車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出することを特徴とする請求項1記載の車両の電動パワーステアリング装置。
- 前記車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを表す評価値を設定する評価値設定手段を備え、
前記アシスト制限手段は、前記評価値の増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限することを特徴とする請求項2記載の車両の電動パワーステアリング装置。 - 前記アシスト制限手段は、前記評価値が基準値を超えた場合に、前記評価値が大きくなるほど前記目標操舵アシスト制御量が小さくなるように前記目標操舵アシスト制御量を制限することを特徴とする請求項3記載の車両の電動パワーステアリング装置。
- 前記評価値の単位時間あたりの増加量を表す増加率を検出する評価値増加率検出手段を備え、
前記アシスト制限手段は、
前記検出された増加率が大きい場合は小さい場合に比べて、前記評価値の増加量に対する前記目標操舵アシスト制御量の低下量の比を大きくすることを特徴とする請求項3または4記載の車両の電動パワーステアリング装置。 - 前記バネ下周波数成分検出手段は、前輪の車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさを検出することを特徴とする請求項2ないし請求項5の何れか一項記載の車両の電動パワーステアリング装置。
- 前記評価設定手段は、左右前輪のうち車輪速におけるバネ下共振周波数成分の大きさが大きい方の車輪の前記評価値を設定することを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか一項記載の車両の電動パワーステアリング装置。
- 前記評価値設定手段は、左右前輪のうち車輪速の振幅が大きい方の車輪の前記評価値を設定することを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか一項記載の車両の電動パワーステアリング装置。
- 実舵角を検出する実舵角検出手段と、
前輪側と後輪側との少なくとも一方側の左右輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて推定舵角を計算する推定舵角計算手段と、
前記実舵角検出手段により検出された実舵角と、前記推定舵角計算手段により計算された推定舵角との偏差である舵角偏差を検出する舵角偏差検出手段と
を備え、
前記アシスト制限手段は、
前記操舵トルクセンサの異常が検出されて前記操舵トルクとは異なる代替パラメータを使って目標操舵アシスト制御量が設定される場合、前記検出されたバネ下共振周波数成分の大きさの増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量を小さくする第1アシスト制限部と、前記検出された舵角偏差の増加に伴って前記目標操舵アシスト制御量を小さくする第2アシスト制限部とを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか一項記載の車両の電動パワーステアリング装置。 - 前記アシスト制限手段は、車速を検出し、車速が小さい場合には大きい場合に比べて、前記目標操舵アシスト制御量の制限を緩めることを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れか一項記載の車両の電動パワーステアリング装置。
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