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JP2013143314A - リチウムイオン二次電池の負極用防錆金属シート、負極及びその製法並びに電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の負極用防錆金属シート、負極及びその製法並びに電池 Download PDF

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JP2013143314A JP2012003845A JP2012003845A JP2013143314A JP 2013143314 A JP2013143314 A JP 2013143314A JP 2012003845 A JP2012003845 A JP 2012003845A JP 2012003845 A JP2012003845 A JP 2012003845A JP 2013143314 A JP2013143314 A JP 2013143314A
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将 真嶋
Takao Tsujimura
太佳夫 辻村
Takahiro Fujii
孝浩 藤井
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

【課題】高強度かつ放電容量の大きいリチウムイオン二次電池用負極を提供する。
【解決手段】上記課題は、鋼シート6の両面に銅被覆層7を有し、それらの銅被覆層7の表面上に防錆剤層8を有する防錆金属シート20であって、鋼シート6と両面の銅被覆層7の合計厚さtが3〜100μmであり、両面の各銅被覆層7はいずれも平均膜厚tCuが0.02〜5.0μm、かつtCu/tが0.3以下であるリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シートによって達成される。防錆剤層8は、中間製品である銅被覆鋼シート10の表面に付着させた防錆剤層8が当該銅被覆鋼シート10とともに圧延を受けて薄化されたものであることがより好ましい。防錆剤は例えばベンゾトリアゾールを配合するものが適用できる。
【選択図】図4

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の負極に用いる金属シートであって、特に銅被覆鋼箔の表面に防錆処理を施したものに関する。また、その金属シートの表面に活物質を担持したリチウムイオン二次電池の負極およびその製法、並びにその負極を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池はポータブル電子機器などの小型蓄電池として広く普及している。今後はハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源に使用できる程度の比較的大型の蓄電池としてもリチウムイオン二次電池の需要が見込まれる。さらに将来的には新エネルギーの蓄電にもリチウムイオン二次電池の適用が考えられる。このようなことから、昨今ではリチウムイオン二次電池の大容量化が強く望まれている。
従来一般的なリチウムイオン二次電池は、アルミニウム箔の表面に正極活物質を担持させた正極と銅箔の表面に負極活物質を担持させた負極をセパレータを介して交互に積層してなる「電極積層体」を、リチウムイオン電解液中に配置した構造を有する。電極の積層方法で分類すると、帯状の正極と負極を巻き回したタイプ(例えば特許文献1)、多数のシート状正極と負極を交互に重ね合わせ、それぞれの極のタブリードの部分で溶接接合したタイプ(例えば特許文献2〜4)などが挙げられる。
負極に使用されている銅箔は、所定の厚さに調整されたのち活物質含有塗料を表面に塗布するまでの間の保管期間中に、表面に酸化皮膜が生じて表面の電気抵抗(以下「表面抵抗」という)が増大しやすいという問題を有している。表面抵抗の増大は電池内部抵抗の増大に繋がる。また、表面の酸化皮膜は活物質層の密着性を低下させる要因ともなる。このような酸化皮膜の形成による問題は、銅箔製造後できるだけ速やかに活物質担持工程に供することにより、ある程度回避することができるが、工程管理に大きな制約が生じる。また、活物質担持前の保管期間・保管環境によって表面抵抗にバラツキが生じやすい。一方、銅箔製造後、表面を防錆剤により防錆処理する手法も採用されている(例えば特許文献5、6)。この銅箔の防錆処理は一般的な銅製品素材について行われている防錆処理と同様、防錆剤層の形成によって表面抵抗の多少の増大を伴う。
特開2001−57243号公報 特開2002−75324号公報 特開2010−16043号公報 特開2010−73408号公報 特開平10−21928号公報 特開2010−282957号公報
リチウムイオン二次電池に用いるアルミニウム箔や銅箔は、強度が低いため、活物質を塗布する製造ラインにおいて箔の変形が生じやすく、形状精度の高い電極を得るためには高度な管理が要求される。管理が不十分である場合にはライン内で箔状金属シートの帯が破断することもある。また、電池製品においては、特に電池の内容物をラミネートパックで封止した「ラミネート型」のリチウムイオン二次電池の場合、放熱特性に優れる点では大型化に有利である反面、電池外部から局所的な外力が加えられたときには電極積層体が変形して電極の損傷が生じやすい。さらに、電池製品の使用による充放電サイクルにより活物質の体積が増減するが、電極積層体の配置は電池内で完全に均一にすることは困難であることから、箔状金属シートの強度が低いと、ひずみの集中した部分で電極が損傷しやすい。なお、本明細書では厚さ100μm以下のシートを「箔」と呼んでいる。
一方、電池の高容量化を図る上では、電極の単位体積当たりの放電容量が大きいことが望まれる。そのためには箔状金属シートの表面に活物質が高密度で存在していることが有利となる。活物質層を高密度化するには、活物質含有塗料を塗布して形成した塗膜をロールプレス等によって強くプレスすることが有効である。しかしながら、以下に述べるように、現状のアルミニウム箔や銅箔を用いた電極では活物質層の更なる高密度化は難しい。
図1に、ロールプレス法により活物質層を形成する際の材料断面の状態を模式的に示す。集電体の芯材である箔状金属シート1の表面に活物質を含有する塗膜2が形成されており、回転するロール3によってプレスすることにより塗膜2の厚さが減じられ、活物質層4が形成される。通常、箔状金属シート1は、正極の場合はアルミニウム箔、負極の場合は銅箔である。なお、図1において箔状金属シート1、塗膜2および活物質層4の厚さは誇張して描いてあり、これらの厚さ比率は必ずしも実際の寸法を反映したものではない。
図2に、ロールプレス法により活物質層を形成する際に適正な圧下力を付与した場合の、図1のA方向から見たロール通過時の材料断面の状態を模式的に示す。ロール3の圧下力が適正であれば、箔状金属シート1はほとんど変形することなく、活物質層4が形成される。なお、図2において箔状金属シート1および活物質層4の厚さは誇張して描いてある。
図3に、ロールプレス法により活物質層を形成する際に過剰な圧下力を付与した場合の、図1のA方向から見たロール通過時の材料断面の状態を模式的に示す。この場合、ロール3の圧下力は図2の場合よりも大きい。圧下力の増大に伴って、活物質層4はより高密度化されたものとなる。しかし、箔状金属シート1はアルミニウム箔または銅箔であるため強度が低く、幅方向中央部で塑性変形が生じて、いわゆる「中伸び」の状態となることがある。箔状金属シート1の幅方向端部(エッジ)近傍に未塗布部5を設けている場合には、エッジと中央部との厚さの差が一層顕著になりやすい。中伸びが生じると集電体素材としての形状不良や寸法精度低下が問題となる。したがって、ロール3の圧下力はアルミニウム箔や銅箔が変形しない範囲に抑えられ、このことが活物質層4の高密度化に対して制約となる。
本発明は、リチウムイオン二次電池の高容量化に繋がる要素技術の1つとして、より高強度で耐久性が高く、かつ良好な防錆性を具備した負極用金属シートを提供すること、さらには放電容量の大きい負極を提供することを目的とする。また、それを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記目的は、鋼シートの両面に銅被覆層を有し、それらの銅被覆層の表面上に防錆剤層を有する防錆金属シートであって、鋼シートと両面の銅被覆層の合計厚さtが3〜100μmであり、両面の各銅被覆層はいずれも平均膜厚tCuが0.02〜5.0μm、かつtCu/tが0.3以下であるリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シートによって達成される。
前記防錆剤層は、中間製品である銅被覆鋼シートの表面に付着させた防錆剤層が当該銅被覆鋼シートとともに圧延を受けて薄化されたものであることがより好ましい。防錆剤としてはベンゾトリアゾールを配合するものが挙げられる。銅被覆層は電気銅めっきを経て形成されたもの、あるいは鋼シートと銅シートのクラッド圧延を経て形成されたものが挙げられる。
銅被覆層を形成させるための芯材である鋼シートとしては、普通鋼冷延鋼板やオーステナイト系またはフェライト系ステンレス鋼板を素材として使用できる。規格製品としては、普通鋼の場合、例えばJIS G3141:2009に規定される冷延鋼板(鋼帯を含む)を素材とするものが適用できる。また、ステンレス鋼の場合、例えばJIS G4305:2005に規定されるオーステナイト系またはフェライト系の化学組成を有するものが適用できる。
鋼シートを構成する成分元素の具体的な含有量範囲を以下に例示する。
〔普通鋼〕
質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.005〜0.6%、P:0.001〜0.05%、S:0.001〜0.5%、Al:0.001〜0.5%、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜1.0%、Cu:0〜0.1%、Ti:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、N:0〜0.05%、残部Feおよび不可避的不純物。
〔オーステナイト系ステンレス鋼〕
質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜4.0%、Mn:0.001〜2.5%、P:0.001〜0.045%、S:0.0005〜0.03%、Ni:6.0〜28.0%、Cr:15.0〜26.0%、Mo:0〜7.0%、Cu:0〜3.5%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.1%、N:0〜0.3%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物。
〔フェライト系ステンレス鋼〕
質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物。
ここで、下限が0%である元素は任意元素である。これらの鋼シートを採用した箔状金属シートは、従来一般的な負極材料である銅箔と比べ高い強度を呈する。特に、引張強さが450〜900MPaに調整された金属シートは電極の耐久性を向上させる上で有利となり、600超え〜900MPaに調整されていることが一層有利となる。
また本発明では、上記の防錆金属シートの少なくとも一方の表面上に、リチウムイオン二次電池負極用の活物質層を形成したリチウムイオン二次電池の負極が提供される。さらに、その負極を用いたリチウムイオン二次電池が提供される。なお、炭素系活物質を適用する場合、その活物質層の密度は1.0g/cm3以上の範囲で目的に応じて選択すればよい。特に非黒鉛系活物質を用いた入出力特性が重視される用途では例えば1.0〜1.5g/cm3を選択すればよいが、黒鉛系活物質を用いたエネルギー密度が重視される用途では従来と同様に1.50g/cm3以上とすることが望ましい。放電容量の増大効果を高めるためには活物質層の密度を1.80g/cm3以上とすることがより好ましく、2.00g/cm3以上とすることがより一層好ましい。
また、リチウムイオン二次電池の負極の製法として、
上記の防錆金属シートの少なくとも一方の銅被覆層の表面上に、リチウムイオン二次電池負極用活物質を含有する塗膜を形成する工程、
前記塗膜が乾燥した後、ロールプレスによって塗膜厚さを30〜70%減じることにより塗膜を高密度化する工程、
を有する製法が提供される。
炭素系活物質を使用する場合、ロールプレスによって塗膜の密度を上述の活物質層の所定密度に調整することが望ましい。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の負極用箔状金属シートとして、従来よりも強度の高いものが提供可能となった。このため、電池の耐久性が向上し、負極の面積増大や薄肉化のニーズに対応できる。充放電時の負極活物質の体積変化に起因する箔状金属シートの塑性変形が抑制され、電池の長寿命化に有利となる。活物質を担持させるロールプレス工程で金属シートが変形しにくいため、寸法精度の高い電極が実現できる。特に、活物質層を従来よりも一層高密度化することが容易となる。また、この金属シートは防錆性に優れるので、箔状金属シートを製造してから活物質含有塗料を塗布するまでの保管期間における酸化皮膜の形成に起因する表面抵抗増大や、活物質層の密着性低下の問題が解消される。防錆剤層が存在することによる表面抵抗の増大は多くの場合、長時間の保管期間中に酸化皮膜が形成することによる表面抵抗の増大と比較して、微小である。特に、圧延により防錆剤層を薄化した場合には防錆剤層の存在による表面抵抗増大が一層抑制され、放電容量の増大には特に効果的である。
リチウムイオン二次電池の電極製造工程において、ロールプレス法により箔状金属シート表面に活物質層を形成する際の材料断面の状態を模式的に示した図。 ロールプレス法により活物質層を形成する際に適正な圧下力を付与した場合の、図1のA方向から見たロール通過時の材料断面の状態を模式的に示した図。 ロールプレス法により活物質層を形成する際に過剰な圧下力を付与した場合の、図1のA方向から見たロール通過時の材料断面の状態を模式的に示した図。 本発明の負極活物質担持用防錆金属シートの断面構造を模式的に示した図。 本発明の負極の断面構造を模式的に示した図。
図4に、本発明のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シートの断面構造を模式的に示す。鋼シート6の両面が銅被覆層7により被覆された金属シートを本明細書では銅被覆鋼シートと呼び、図4中に符号10で示してある。本発明に従う防錆金属シート20は前記銅被覆鋼シート10の表面に防錆剤層8を有するものである。図4において銅被覆層7および防錆剤層8の厚さは誇張して描いてあり、これらの厚さ比率は必ずしも実際の寸法を反映したものではない(後述図5において同じ)。銅被覆層7は両面とも片面当たりの平均膜厚tCuが0.02〜5.0μmの範囲に調整され、銅被覆層7を含めた銅被覆鋼シート10の平均厚さtは3〜100μmの範囲にある。銅被覆層7の平均膜厚tCuは両面で必ずしも同一である必要はないが、それぞれの表面側でtCu/tが0.3以下を満たす必要がある。
銅被覆層7は例えば後述のように電気銅めっき法を利用して好適に形成することができる。電気銅めっき層の密着性を向上させるためには下地めっき層を形成しておくことが有利となる。例えば鋼シート6が普通鋼である場合には銅ストライクめっきを施しておくことが望ましく、鋼シート6がステンレス鋼である場合にはニッケルストライクめっきを施しておくことが望ましい。下地めっき層を2層以上施してもよい。銅ストライクめっき層の直上に電気銅めっき(本めっき)を施して銅被覆層7を形成する場合、その銅ストライクめっき層は銅被覆層7の一部を構成するとみなされる。ニッケルストライクめっきなど銅以外の金属による下地めっきを施す場合は、銅被覆層7の下に形成されている下地めっき層のトータル平均膜厚をtMとすると、(tM+tCu)が5.0μm以下であることが望ましい。
銅被覆鋼シート10の平均厚さtが3μmより小さくなると、強度の高い鋼シート6を適用しても、電極としての強度、および必要な活物質の担持量を十分に確保することが難しくなる。5μm以上、あるいは7μm以上の範囲に管理してもよい。一方、tが100μmを超えると、電池の小型・大容量化の要求に合致しなくなる。一般的には50μm以下の範囲とすることが好適であり、25μm以下、あるいは15μm以下に管理してもよい。
銅被覆層7の片面当たりの平均膜厚tCuが0.02μmより小さくなると、銅被覆鋼シート10に占める導電性の高い銅の絶対量が少なくなることや、銅被覆層7の膜厚を貫通するピンホール等の欠陥が増大することなどに起因して、放電容量を安定して高く維持することが難しくなる。tCuは0.03μm以上、あるいは0.05μm以上に管理しても構わない。一方、tCuが5.0μmを超えると、ロールプレス工程で圧下力を増大した場合には銅被覆層7の塑性変形が生じやすくなり、高い寸法精度を維持しながら活物質層の高密度化を図ることが難しくなる。また、銅めっきのコストも増大する。電極の寸法精度および活物質層の高密度化を重視する場合には、tCuを1.0μm以下(あるいは1.0μm未満)の範囲とすることがより好ましい。
銅被覆鋼シート10の平均厚さtが例えば20μm程度以下に薄くなってくると、それに伴って銅被覆層7の平均膜厚tCuも小さくしなければ、ロールプレスでの銅被覆層7の塑性変形を抑止することが難しくなる。種々検討の結果、両面の各銅被覆層7においてそれぞれtCu/tが0.3以下であれば、鋼シート6により銅被覆層7の変形が効果的に拘束され、寸法精度の高い集電体を得るうえで有利となる。tCu/tは0.2以下、あるいはさらに0.1以下とすることがより好ましい。
鋼シート6を芯材に用いた銅被覆鋼シート10は、従来の負極に使用されている銅箔と比べ、強度が格段に高い。電池に組み込まれた状態での負極の耐久性や、負極活物質層7を形成させるためのロールプレス工程における形状維持性(中伸び抑止性能)を安定して顕著に向上させるためには、銅被覆鋼シート10の引張強さを450〜900MPaとすることがより効果的である。500MPa以上に管理してもよい。特に600MPaを超える強度レベル、あるいはさらに650MPa以上の強度レベルに調整された銅被覆鋼シート10は、負極の信頼性向上に極めて有利となる。銅被覆鋼シート10の引張強さは、鋼シート6の化学組成および冷間圧延率によってコントロールすることができる。引張強さが900MPaを超えるような高強度としても、耐久性や形状維持性の更なる向上はそれほど見込めず、逆に冷間圧延率増大によるコスト増大のデメリットが大きくなる。
防錆剤層8は、冷間圧延後の銅系素材の表面に酸化皮膜が形成される現象を抑制する作用を有する防錆剤の皮膜である。従来から銅系素材の防錆に使用されている各種防錆剤が適用できる。腐食抑制剤、変色防止材と称して市販されている銅系素材用の防錆剤もあり、これらを適用してもよい。具体的にはベンゾトリアゾール(BTA)またはその化合物を配合するものが代表例として挙げられる。その他、チアジアゾール、ソルビタンエステル、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のサリチレート、酸化クロムなどを配合する防錆剤などがある。また、防錆剤層8はその表層部にカップリング処理皮膜を有するものであっても構わない。例えば上記防錆剤を使用した皮膜形成処理とカップリング処理を経ることにより防錆剤層8を形成してもよい。カップリング剤としてはシラン系、アルミニウム系、チタン系、ジルコニウム系などの公知のものが適用できる。
防錆剤層8はそれ自体が金属材料よりも大きい電気抵抗を有するため、防錆金属シート20の表面抵抗の増大をできるだけ抑えるために、防錆剤層8の膜厚を薄くすることが有利となる。一般に防錆処理は防錆剤を含む処理液に材料を浸漬するか、処理液をロールあるいはスプレーにより塗布することにより行われる。また、防錆剤を製造工程で用いる各種処理液に適量添加することにより、工程を通すと同時に防錆処理することもできる。処理液とは具体的には、圧延工程での圧延油、圧延油の脱脂工程での洗浄剤または脱脂液、あるいは水洗水を含む。発明者らの検討によれば、銅被覆鋼シート10を通常の大気環境で保管したのち活物質含有塗料を塗布する工程に供する場合には、上記一般的な防錆処理で形成される防錆剤層の膜厚は必要ではなく、これを薄化した場合でも大きな防錆効果が得られることがわかった。その場合、防錆剤層を薄化したことにより防錆剤層自体の電気抵抗が小さくなるので、結果的に防錆金属シート20の表面抵抗を低減することができる。すなわち防錆剤層8は、中間製品である銅被覆鋼シートの表面に付着させた防錆剤層が当該銅被覆鋼シートとともに圧延を受けて薄化されたものであることがより好ましい。薄化のための圧延率は30〜98%とすれば効果的である。
図5に、本発明に従うリチウムイオン二次電池の負極の断面構造を模式的に示す。銅被覆鋼シート10の表面に防錆剤層8を形成した前記防錆金属シート20の表面上に、ロールプレス等により高密度化された負極活物質層40が形成されている。この図では銅被覆鋼シート10の両面に負極活物質層40が形成されたものを例示しているが、片面のみに負極活物質層40が形成された負極集電体が採用されることもある。例えば電極積層体の端部に位置する負極では、負極活物質層40は片面に形成されていればよい。
高密度化された負極活物質層40の平均厚さは、片面当たり5〜150μmであることが望ましく、20〜100μmであることがより好ましい。炭素系活物質(後述)を含有する負極活物質層40の場合、エネルギー密度が重視される用途では当該負極活物質層40の密度(層内の微細空隙を含む)は1.50g/cm3以上であることが望ましい。また後述の工程に従えば、炭素系活物質層の密度を1.80g/cm3以上、あるいは更に2.00g/cm3以上とすることができる。このように負極活物質層が高密度化されているとき、従来の負極(例えば活物質層の密度:1.50〜1.75g/cm3程度)に対して、金属シートの高強度化による耐久性向上効果のみならず、活物質層単位体積当たりの放電容量の向上効果が得られる。一方、活物質層の密度が高くなりすぎると、当該層内に電解液が浸透しにくくなり、電荷移動を阻害する要因となることも考えられる。黒鉛の理論密度が2.26g/cm3であることを考慮すると、炭素系活物質層の密度は2.20g/cm3以下の範囲とすることが望ましく、2.15g/cm3以下の範囲に管理してもよい。活物質層の密度は、集電体断面の顕微鏡観察により求まる活物質層の平均厚さと、活物質層の単位面積当たりの平均質量から算出される。
〔防錆金属シートの製造工程例示〕
本発明の防錆金属シートを製造するための工程としては以下のものが例示できる。
[ ]内は各段階での材料名である。( )は必要に応じて実施することができる処理である。
A.[冷延鋼板]→圧延→(下地めっき)→銅めっき→[銅被覆鋼シート]→防錆処理→[防錆金属シート]
B.[冷延鋼板]→圧延→(下地めっき)→銅めっき→[銅被覆鋼シート]→防錆処理→さらに圧延→[防錆金属シート]
C.[冷延鋼板]→(下地めっき)→銅めっき→[銅被覆鋼シート]→防錆処理→圧延→[防錆金属シート]
D.[冷延鋼板]→銅シートとのクラッド接合→[銅被覆鋼シート]→防錆処理→圧延→[防錆金属シート]
E.[冷延鋼板]→圧延→銅シートとのクラッド接合→[銅被覆鋼シート]→防錆処理→[防錆金属シート]
上記のうち、B、C、Dの工程では防錆処理後に圧延を行うことによって防錆剤層を薄化することができる。
〔負極の製造工程例示〕
上記のようにして得られた防錆金属シートを用いて、例えば以下の工程によりリチウムイオン二次電池の負極を製造することができる。
[防錆金属シート]→活物質含有塗料塗布→塗膜乾燥→ロールプレス→裁断等の成形加工→[負極]
〔鋼シート〕
本発明に使用する銅被覆鋼シートの芯材である鋼シート(図4の符号6)としては、普通鋼の他、ステンレス鋼が採用できる。ステンレス鋼は耐食性に優れるため、高い耐久性・信頼性が重視される用途においては好適である。具体的な化学組成範囲は前述のとおりである。
〔銅めっき〕
銅被覆層を形成させるための手法として、上記A、B、C工程に例示されるように銅めっき法を利用することができる。公知の各種銅めっき技術、例えば電気めっき、化学めっき、気相めっき等を用いることができる。化学めっきとしては無電解めっき、気相めっきとしてはスパッタリング、イオンプレーティングが挙げられる。これらのなかで、電気銅めっき法は比較的高速かつ経済的にめっき層を形成することができ、めっき厚さのコントロールも容易であることから、大量生産には適している。
電気銅めっき;
公知の種々の電気銅めっき法を採用することができる。硫酸浴を使用する場合の電気銅めっきの条件を例示すれば、例えば、硫酸銅:200〜250g/L、硫酸:30〜75g/L、液温:20〜50℃のめっき浴を用いて、陰極電流密度:1〜20A/dm2とすることができる。ただし、銅めっき後に所定の厚さの箔に圧延するか、あるいは銅めっきによって目標膜厚の銅被覆層を直接形成させるかによって、銅めっきの付着量は大きく相違する。前者の場合は、後工程での圧延率に応じて、銅被覆層の目標膜厚から逆算した厚さの銅めっき層を形成させる必要がある。1回の銅めっきライン通板では必要な銅めっき層厚さが得られない場合は、銅めっきラインの通板を複数回行えばよい。
電気銅めっきの前処理;
電気銅めっきを施す場合は、下地めっき層を形成させる前処理として銅ストライクめっきやニッケルストライクめっきを施すことができる。特に鋼シートがステンレス鋼である場合には、銅めっきの密着性を改善するためにニッケルストライクめっきが極めて有効である。
銅ストライクめっきの条件は、例えば、ピロリン酸銅:65〜105g/L、ピロリン酸カリウム:240〜450g/L、全銅イオン濃度(g/L)に対する全ピロリン酸塩イオン濃度(g/L)の比(P比):6.4〜8.0、アンモニア水:1〜6mL/L、液温:50〜60℃、pH:8.2〜9.2のめっき浴を用いて、陰極電流密度:1〜7A/dm2以下の範囲で設定することができる。
ニッケルストライクめっきの条件は、例えば、塩化ニッケル:230〜250g/L、塩酸:125ml/L、pH:1〜1.5の常温のめっき浴を用いて、陰極電流密度:1〜10A/dm2とすることができる。
気相めっき;
蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の気相めっき法によって銅被覆層を形成させることもできる。スパッタリングを用いた製造方法を例示すると、まず前処理として、基材(めっき原板)となる鋼シートに「メチレンクロライド洗浄→乾燥→イソプロピルアルコール洗浄→水洗→乾燥」の各工程を有する湿式洗浄ラインで脱脂洗浄を施す。次に脱脂洗浄後の前記鋼箔を連続式スパッタリングラインに通板することにより銅被覆層を形成する。連続式スパッタリングラインは、例えばコイル払出し装置、高周波マグネトロンスパッタリング装置、および巻取り装置の一式を真空チャンバー内に配置することによって構成できる。
具体的には例えば以下のような手法でスパッタリングを行うことができる。チャンバー内のアルゴン分圧を0.1Pa程度に調整し、出力100W程度で逆スパッタを行って鋼シートの表面を活性化処理する。次に、純銅をターゲットに用いて出力300W程度で成膜スパッタを行うことにより鋼シートの片面に平均膜厚tCuが約0.05μmの銅被覆層を形成する。その際、連続式スパッタリングラインの通板速度を制御することにより平均膜厚tCuを調整すればよい。このような操作を鋼シートの表裏を反転させて繰り返すことにより、鋼シートを芯材とし、両面に銅被覆層を有する銅被覆鋼シートが得られる。
〔クラッド〕
銅被覆鋼シートを製造する別の方法として、鋼シートの両面に銅シートをクラッド接合する手法を採用することもできる。クラッド法としては、熱間圧接法、冷間圧接法、爆着法等が知られている。特に、冷間圧接法は厚み精度に優れ、生産性も良好であるため、大量生産に適している。
前述の製造工程Dにおいて冷間圧接法を用いて銅被覆鋼箔を製造する方法を例示する。素材として、前述のtCu/tが所定の値となるように板厚が調整された1本の帯状鋼シート(例えば冷延鋼帯)および2本の帯状銅シート(例えば帯状銅箔)を用意する。銅シートとしてはタフピッチ銅、無酸素銅、合金銅等が挙げられる。それぞれ脱脂洗浄ラインを通板して圧延油を除去した後、帯状鋼シートの両面を帯状銅シートで挟んだ3層構造の積層材に対して、連続的に冷間圧延を施すことにより冷間圧接して、これら3層がクラッド接合により一体化したクラッド材を製造する。圧接時の冷間圧延率が低すぎると、鋼シートと銅シートの界面での新生面の生成が少なくなり、接合強度が不足しやすい。冷間圧延率が高すぎると、圧延荷重が過大となって圧延形状が悪化したり、引張荷重が過大となってライン内で破断したりするトラブルが生じやすい。種々検討の結果、圧接のための冷間圧延率は概ね10〜75%の範囲で設定することができるが、鋼シートが普通鋼の場合40〜50%、ステンレス鋼の場合15〜40%とすることがより好ましい。得られたクラッド材に対して箔圧延機で冷間圧延を施すことにより、銅被覆鋼シートを得ることができる。
また、前述の製造工程Eのように、予め冷延鋼板を箔にまで圧延して箔状鋼シートを得ておき、その箔状鋼シートと箔状銅シートとを冷間圧接によりクラッド接合することにより銅被覆鋼シートを得ることもできる。
〔圧延〕
前述の製造工程A〜Eにおける圧延においては、一般のセンジミア式圧延機、クラスター式圧延機など高圧下力を付与できる圧延機を用いればよい。ここで、圧延前の板厚をtin、圧延後の板厚をtoutとすると、圧延率rは次式で表される。
圧延率r(%)=(1−tout/tin)×100
銅被覆鋼シートの強度レベルを電池の仕様に応じて最適化するためには、最終焼鈍後の鋼材が最終的な銅被覆鋼箔の芯材となるまでの間に受ける冷間圧延(クラッド接合時の冷間圧延を含む)のトータル圧延率を適切にコントロールすることが有効となる。種々検討の結果、特に強度レベルの高い銅被覆鋼シートを得るためには前記トータル圧延率を90%以上とすることが極めて有効であり、さらに強度を高めたい場合には95%以上としてもよい。前記トータル圧延率の上限は主として使用する圧延機の能力によって制約を受けるが、過剰な高強度化は不経済となる。通常、前記トータル圧延率は99%以下とすればよく、経済性・生産性を考慮して98%以下の範囲で設定してもよい。
〔防錆処理〕
銅被覆鋼シートの表面に前述の防錆剤を用いて防錆処理を行い、防錆剤層を形成させる。防錆処理の方法は一般的な帯状銅系素材の防錆処理と同様の手法が適用できる。すなわち、防錆剤を含有する処理液中に材料を浸漬したのち引き上げる方法、ロールやスプレーにより防錆剤を塗布する方法などがある。さらに前述のカップリング剤の皮膜を形成させる処理を行ってもよい。防錆剤層の電気抵抗を軽減するために防錆処理によって形成された防錆剤層を薄化する場合は、前述の工程B、C、Dのように、防錆金属シートを得るための途中の段階で中間製品の銅被覆鋼シートに防錆処理を施し、その後、銅被覆鋼シートの板厚を調整するための圧延を利用して薄化することが望ましい。防錆剤層の薄化を伴う圧延の圧延率は、銅被覆鋼シートの伸び率換算で30〜98%とすることがより効果的であり、50〜98%とすることが一層効果的である。以上のようにして本発明の防錆金属シートが得られる。
〔活物質含有塗膜の形成〕
本発明に従う負極は、上述の防錆金属シートとその表面に形成された活物質層で構成される。活物質層は、電解液が浸透してリチウムイオンによる電荷移動が可能な空隙を有するものであり、負極活物質、導電助剤、結着剤等を含むものである。負極活物質としては、リチウムイオンを挿入および脱離できるものであればよい。例えば炭素系活物質としては、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子焼成体(フラン樹脂等を適当な温度で焼成して炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。導電剤としては、例えば、黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、金属繊維などを用いることができる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などを用いることができる。
上記のような炭素材料を用いた負極活物質を本明細書では「炭素系活物質」と呼んでいる。また、炭素系活物質を用いた負極活物質層を「炭素系活物質層」と呼んでいる。炭素系活物質層を形成させるための手順として、例えば上述のように、「活物質含有塗料塗布→塗膜乾燥→ロールプレス」の工程を採用することができる。この場合、まず上記のようなリチウムイオン二次電池負極用の炭素系活物質を含有する塗料(活物質含有塗料)を調製し、これを銅被覆鋼箔の銅被覆層の表面上に、ブレードコーター法などにより塗布する。その後、塗膜を乾燥させる。乾燥塗膜の膜厚は、後述のロールプレスによる塗膜厚さ減少率を見込んで、目標の活物質層厚さから逆算して定める。両面に活物質層を形成させる場合、両面の塗膜厚さは概ね均等であることが望ましい。
〔活物質層の高密度化〕
電極の放電容量を増大させるためには、活物質層の密度を高めることが有効である。活物質層の高密度化の手法として、一般的にはロールプレスにより前述の乾燥塗膜の厚さを減じる手法が採用される。本発明に従えば強度の大きい銅被覆鋼シートを使用するので、ロールプレスによる圧下力を増大させても防錆金属シート(図1、2の箔状金属シート)の塑性変形が起こりにくい。このため、ロールプレスによる圧下力を従来より高めることができる。
具体的には、ロールプレスによって上記の乾燥塗膜の厚さを30%以上減じることにより高密度化することが好ましい。この塗膜厚さ減少率は下記(1)式によって定まる。
[塗膜厚さ減少率(%)]=(h0−h1)/h0×100 …(1)
ここで、h0はロールプレス前の片面当たりの平均塗膜厚さ(μm)、h1はその塗膜をロールプレスした後の平均塗膜厚さ(μm)である。活物質層の高密度化を重視する場合には、塗膜厚さ減少率を35%以上とすることがより効果的であり、40%以上とすることが一層好ましい。ただし、圧下力をあまり大きくすると、塗膜密度が過剰となって電解液が塗膜中に浸透しにくくなり、電荷移動に必要な空隙を十分に確保できない恐れがある。また、金属箔の不均一な変形を招く要因となる。種々検討の結果、ロールプレスによる塗膜厚さ減少率は70%以下の範囲とすることが望ましく、60%以下の範囲に管理してもよい。このようにして本発明に従う負極が得られる。
〔リチウムイオン二次電池〕
上述の防錆金属シートの表面上に高密度化された活物質層を持つ負極は、セパレータを介して正極と組み合わされて「電極積層体」とされ、電解液とともにリチウムイオン二次電池を構成する。正極、セパレータ、および電解液は、リチウムイオン二次電池に用いられている公知の材料や、その代替として使用できる新たな材料を適用することができる。
電解液を例示すると、溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、スルホラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなどの非水溶媒が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。溶質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23、LiCF3(CF23SO3などが挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記の電極積層体および電解液を密封収納するケース材の形状としては、コイン型、円筒型、直方体角型、ラミネートシートパック型などが挙げられる。ケース材の材質としてはアルミニウムまたはその合金、チタンまたはその合金、ニッケルまたはその合金、銅またはその合金、ステンレス鋼、普通鋼、ニッケルめっき鋼板、銅めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板などが挙げられる。ラミネートシートパック型の場合には、例えばアルミニウム箔やステンレス鋼箔などの金属箔にヒートシール性を有する樹脂フィルムを積層したラミネート箔が用いられる。
《実施例1》
下記の例a〜例gの手法で各種銅被覆鋼シートを作製し、その表面に防錆処理を施して防錆金属シートとした。ここでは防錆剤層の膜厚による影響を一定とするために、防錆処理後の薄化は行っていない。一部の銅被覆鋼シートについては引張強さを測定した。各防錆金属シートについて電解液中での耐食性試験を行った。また、各防錆金属シートを用いてリチウムイオン二次電池の負極を作製し、放電容量を評価した。
〔銅被覆鋼シートの作製〕
<例a>
前記工程Cにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
以下の化学組成を有する板厚0.3mm、板幅200mmの冷延鋼帯(焼鈍材)を複数本用意した。
化学組成; 質量%で、C:0.003%、Al:0.038%、Si:0.003%、Mn:0.12%、P:0.012%、S:0.122%、Ni:0.02%、Cr:0.02%、Cu:0.01%、Ti:0.073%、N:0.0023%、残部Feおよび不可避的不純物
この鋼帯の両面に、連続式電気めっきラインにて、銅ストライクめっきおよび電気銅めっき(本めっき)を施して種々の厚さの銅めっき層を有する銅めっき鋼帯を作製した。1つの銅めっき鋼帯において、両面の銅めっき層厚さはほぼ均等とした。その後、箔圧延機により冷間圧延して、両面の銅めっき層を含む平均板厚tが20μm、銅被覆層の片面当たりの平均厚さtCuが0.9〜0.005μmの種々の段階にある銅被覆鋼シートを得た。その際、板厚0.3mmの鋼帯の表面上に形成する銅めっき層の厚さ(銅ストライクめっきと本めっきの合計めっき付着量)は、冷間圧延後の銅被覆鋼シートの平均厚さtを20μmに揃えた場合に、銅被覆層の平均厚さtCuが0.9〜0.005μmの範囲の所定厚さとなるように、逆算して定めた。例えば、tCuが0.5μmである銅被覆鋼シートを得る場合、片面当たりの銅めっき付着量は7.9μmとなる。
上記銅ストライクめっきは、ピロリン酸銅:80g/L、ピロリン酸カリウム:300g/L、アンモニア水:3mL/Lを含み、P比:7、液温:55℃、pH:9の銅ストライクめっき浴を用い、陰極電流密度5A/dm2の条件で片面当たり厚さ0.3μmのめっき付着量とした。
上記電気銅めっき(本めっき)は、硫酸銅:210g/L、硫酸:45g/Lを含み、液温:40℃の銅めっき浴を用い、陰極電流密度10A/dm2の条件で行った。
なお、所定の銅被覆層厚さが得られているかどうかを確認するために、銅被覆層の目標厚さを0.5μmとして作製した銅被覆鋼箔をイオンミリング断面研磨した後、電子顕微鏡で観察し、銅被覆層厚さを測定した。測定試料採取位置は、圧延長手方向5mおきの3箇所とし、1試料につき3視野の観察を行った。その結果、3視野×3箇所=計9視野の測定データの最小値は0.42μm、最大値は0.55μmであり、平均値は0.48μmであった。すなわち、ここで行った箔圧延では、ほぼ目標通りの高精度な圧延が実現できていることが確認された。
<例b>
前記工程Aにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
市販のSUS304、およびSUS430の冷延鋼帯(いずれもJIS G4305:2005相当の焼鈍材)を箔圧延機により冷間圧延して、板厚20μmの鋼箔を得た。この鋼箔の両面に、電気めっき設備にて、ニッケルストライクめっきおよび電気銅めっきを施すことにより、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが0.5μm、または0.05μmの銅被覆鋼シートを作製した。ニッケルストライクめっきの付着量は片面当たり約0.2μmである。1つの銅被覆鋼シートにおいて、両面の銅被覆層厚さはほぼ均等とした。
上記ニッケルストライクめっきは、塩化ニッケル:230〜250g/L、塩酸:125ml/L、pH:1〜1.5の常温のめっき浴を用いて、陰極電流密度:1〜10A/dm2の条件で行った。
上記電気銅めっきは、硫酸銅:210g/L、硫酸:45g/Lを含み、液温:40℃の銅めっき浴を用い、陰極電流密度10A/dm2の条件で行った。
<例c>
前記工程Bにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
市販のSUS304の冷延鋼帯(JIS G4305:2005相当の焼鈍材)を箔圧延機により冷間圧延して、板厚20μmの鋼箔を得た。この鋼箔の両面に、電気めっき設備にて、ニッケルストライクめっきおよび電気銅めっきを施すことにより、片面当たりの銅被覆層の平均厚さが0.5μmの銅被覆鋼シート(中間製品)とした。ニッケルストライクめっきの付着量は片面当たり約0.2μmである。この銅被覆鋼シートをさらに箔圧延機で圧延することにより銅被覆層を含めた平均厚さtが8.0μm、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが0.2μmの銅被覆鋼シートを得た。両面の銅被覆層厚さは均等とした。めっき条件は例bと同様である。
<例d>
前記工程Dにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
以下の化学組成を有する板厚0.684mm、板幅300mmのSUS430相当のフェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯(焼鈍材)を用意した。
化学組成; 質量%で、C:0.058%、Al:0.009%、Si:0.56%、Mn:0.31%、P:0.021%、S:0.005%、Ni:0.20%、Cr:16.7%、Mo:0.32%、Cu:0.031%、N:0.030%、残部Feおよび不可避的不純物
また、以下の化学組成を有する厚さ18μm、幅300mmの圧延銅箔帯を2本用意した。
化学組成; 質量%で、O:0.0003%、P:0.0002%、残部Cuおよび不可避的不純物
上記のステンレス鋼冷延鋼帯および圧延銅箔帯を、それぞれ脱脂洗浄ラインを通板して圧延油を除去した後、ステンレス鋼冷延鋼帯を表裏から圧延銅箔帯で挟み込むように重ねて3層に配置し、連続式冷間圧接クラッド製造ラインに通板した。50%の冷間圧延率で圧接し、厚さ0.36mmの3層クラッド材を作製した。これをさらに箔圧延機で冷間圧延することにより銅被覆層を含めた平均厚さtが20μm、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが0.5μmの銅被覆鋼シートを得た。
<例e>
前記工程Dにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
上記例dと同様の組成を有するSUS430相当のフェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯および圧延銅箔帯を用意した。ステンレス鋼冷延鋼帯は板厚1.8mm、板幅300mmであり、圧延銅箔帯は厚さ38μm、幅300mmである。上記例dと同様の手法にて50%の冷間圧延率で3層クラッド材を作製した。これをさらに箔圧延機で冷間圧延することにより銅被覆層を含めた平均厚さtが100μm、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが2μmの銅被覆鋼シートを得た。
<例f>
前記工程Dにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
上記例dと同様の組成を有するSUS430相当のフェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯および圧延銅箔帯を用意した。ステンレス鋼冷延鋼帯は板厚0.5mm、板幅300mmであり、圧延銅箔帯は厚さ63μm、幅300mmである。上記例dと同様の手法にて50%の冷間圧延率で3層クラッド材を作製した。これをさらに箔圧延機で冷間圧延することにより銅被覆層を含めた平均厚さtが50μm、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが5μmの銅被覆鋼シートを得た。
<例g>
前記工程Eにおいて防錆処理を省いた工程により銅被覆鋼シートを作製した。
上記例dと同様の組成を有するSUS430相当のフェライト系ステンレス鋼帯(焼鈍材)および圧延銅箔帯を用意した。ステンレス鋼冷延鋼帯は板厚0.6845mm、板幅300mmであり、圧延銅箔帯は厚さ12μm、幅300mmである。前記ステンレス鋼冷延鋼帯を箔圧延機で冷間圧延して厚さ15μmの鋼箔帯とした。この鋼箔帯の両表面を前記圧延銅箔帯で挟み込んだ状態として連続式冷間圧接クラッド製造ラインにて38%の冷間圧延率で圧接し、銅被覆層を含めた平均厚さtが15μm、片面当たりの銅被覆層の平均厚さtCuが4.5μmの銅被覆鋼シートを得た。
〔引張試験〕
本発明対象である一部の銅被覆鋼シート(例a、bにより作製されたtCu=0.5μmのもの)、従来のリチウムイオン二次電池負極材料に相当する2種類の銅シート(銅箔)、および従来のリチウムイオン二次電池正極材料に相当するアルミニウムシート(アルミニウム箔)について、万能精密引張試験機を用いて引っ張り試験を行った。試験片寸法は幅12.7mm、長さ175mmであり、圧延方向を長手方向とした。初期のチャック間距離は125mmとし、引張速度2mm/minで破断するまで引張試験を行い、最大荷重を試験片の初期断面積(実測値)で除することにより引張強さを求めた。各材料とも試験数n=3で実施し、その平均値をその材料の引張強さとした。結果を表1に示す。
Figure 2013143314
本発明の対象である銅被覆鋼シートは、従来のリチウムイオン二次電池の負極に使用されている銅シートや正極に使用されているアルミニウムシートと比較して、極めて強度が高いことがわかる。銅被覆鋼シートの強度は、製造過程での冷間圧延率によって種々のレベルにコントロールすることができる。表1に示した銅被覆鋼シートの引張強さはそれぞれ一例であるが、450〜900MPaの範囲で調整可能である。発明者らの検討によれば、鋼シートとして種々の鋼種を用いた場合に引張強さ600MPa超え、あるいはさらに650MPa以上の銅被覆鋼シートを得ることは既存の圧延技術を利用して十分に可能である。
〔防錆処理〕
上記各例で得られた銅被覆鋼シートについて、最終圧延後に防錆処理を施した。防錆処理はベンゾトリアゾール(BTA)を2g/L溶解した水溶液中に被処理金属シートを3秒間浸漬したのち引き上げ、温風乾燥する方法で行った。また、比較のために厚さ20μmの銅シート(銅箔)を用意し、同様の手法で防錆処理を施した。以上のようにして防錆金属シートを得た。
〔電解液中での耐食性試験〕
各防錆金属シートについて、電解液中での耐食性を調べた。各防錆金属シートから切り出した30×50mmサイズの試験片を使用した。試験片の端面には鋼シートの鋼素地が露出している。リチウムイオン二次電池用電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)を1:1の体積比で混合した溶媒中にLiPF6を1mol/L濃度で溶解させた液を用意した。ガス循環精製機付グローブボックスを使用し、酸素および水分濃度がそれぞれ1ppm以下に保持されたグローブボックス内で、試験片を25℃の上記電解液に4週間浸漬させた。耐食性評価は、浸漬試験前後における試験片の質量測定、および電解液中に溶解したFeおよびCuのICP−AES定量分析によって行った。
その結果、各試験片とも、浸漬試験の前後で有意な質量変化は認められなかった。また、各試験片を浸漬した電解液中のFeおよびCu濃度は、いずれもICP−AES分析の検出下限未満(1ppm未満)であり、定量することはできなかった。すなわち、電解液中へのFeおよびCuの溶解は認められなかった。このことから、上記各銅被覆鋼箔はリチウムイオン二次電池用電解液中で良好な耐食性を呈することが確認された。
〔負極試料の作製〕
負極活物質として黒鉛粉末90質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部を混合し、この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とすることにより活物質含有塗料を得た。この塗料を上記各防錆金属シートの片面に塗布して炭素系活物質含有塗膜を形成させた。塗膜を乾燥させた後、活物質層の密度を向上させるためにロールプレスを行って炭素系活物質層を形成させ、負極試料を得た。ロールプレスは、ロールから材料に付与されるロール軸方向(材料の板幅方向)単位長さ当たりの荷重(「線圧」という)が980kN/mと1960kN/mの2条件で実施した。ここでは、金属シートの片面のみに活物質層を有する負極試料を得たが、両面に活物質層を形成させる場合でも、活物質層の密度に及ぼす線圧の影響は、片面のみに形成させる場合と基本的に同様となる。線圧および前述(1)式により定まる塗膜厚さ減少率を表2中に示してある。
〔活物質層密度の測定〕
負極試料をイオンミリング断面研磨した後、CCDカメラを備えた光学顕微鏡で観察し、このCCDカメラで撮影した断面組織のデジタル画像を基に炭素系活物質層の厚さを測定した。1試料につき3視野の観察を行って活物質層平均厚さを算出した。また、負極試料から直径35mmの円形試料を打ち抜き、その円形試料の質量を測定した。その後、その円形試料をN−メチル−2−ピロリドン溶液に1週間浸漬させることにより試料表面の炭素系活物質層を完全に剥離させ、剥離後の試験片の質量を測定した。剥離前後の質量差と、上記の活物質層平均厚さの測定値を用いて、活物質層の密度を求めた。結果を表2中に示してある。
〔放電容量の評価〕
上記の各負極試料から直径15.958mm(面積2cm2)の円形の小片を打ち抜き、これを放電容量測定用試験片とした。ガス循環精製機付グローブボックスを使用し、酸素および水分濃度がそれぞれ1ppm以下に保持されたグローブボックス内で、作用極、参照極、対極を持つ一般的な3電極式の試験セルを構成した。試験セル筐体には宝泉株式会社製のHS−3Eを用いた。上記の放電容量測定用試験片を作用極としてセットし、参照極および対極にはそれぞれ金属リチウム箔を使用した。作用極と参照極との間、および対極と参照極との間を仕切るセパレータとして、ポリプロピレン製微多孔膜(厚さ25μm)を使用した。電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)を1:1の体積比で混合した溶媒中にLiPF6を1mol/L濃度で溶解させた液を使用した。
各試験セルについて、活物質が有する理論容量を計算で求めた。次に、[理論容量(mAh)]/5(h)で示される電流値を用いて完全充電した後、同じ電流値で放電を行った。このときの放電容量を各試験セルの[電池容量(mAh)]とした。引き続き、0.5CmAの一定の充電率で完全充電した後、1.0CmAの一定の放電率で放電するサイクルを10サイクル繰り返し、10サイクル目の活物質層単位体積当たりの放電容量Q10を測定した。試験温度は25℃である。ここで、充電率および放電率は下記(2)式および(3)式によって表される。
[充電率(CmA)]=[電池容量(mAh)]/[充電時間(h)] …(2)
[放電率(CmA)]=[電池容量(mAh)]/[放電時間(h)] …(3)
放電容量の評価は、金属シートとして銅箔に防錆処理を施したものを使用した試料(表2中のNo.12)を標準試料とし、下記(4)式で定義される放電容量比率によって行った。
[放電容量比率]=[評価対象試料の上記Q10]/[標準試料の上記Q10] …(4)
結果を表2に示す。表2中の「金属シート厚さt」は防錆剤層を含まない金属シート部分の平均厚さ(図3のtに相当)である。「作製手法」の例記号は銅被覆鋼シートを作製する際に採用した上記例a〜例gに対応するものである。
Figure 2013143314
表2中の比較例No.12は、銅シートの表面に防錆剤層を形成した材料を用いて、中伸びが生じる程度の強いロールプレスを行うことによって活物質層の高密度化を図ったものであり(標準試料)、従来一般的なリチウムイオン二次電池の負極と比べると活物質層密度については向上している。比較例No.13は、No.12と同じ銅シートを用い、さらに強いロールプレスを試みたものであるが、銅シートは強度が低いためにロールプレス工程で材料の破断が生じた。
表2中の本発明例は、厚さ0.02μm以上の銅被覆層を表面に持つ銅被覆鋼シートの表面に防錆剤層を形成した材料を用いて、比較例No.12(標準試料)と同等以上の強いロールプレスを行うことによって活物質層の高密度化を図ったものである。これらはいずれも電極としての良好な形状が得られた。中でも、銅シートでは破断が生じるような強いロールプレスを行ったもの(No.1〜5、8〜11、14〜18)では、活物質層の密度がさらに向上し、それに伴って放電容量も顕著に増大した。
一方、銅被覆鋼シートのうち、比較例No.6は銅被覆層の厚さtCuが過小であったため放電容量に劣った。
なお、この実験では防錆処理後に防錆剤層の薄化は行っていないが、薄化を行った場合にも、金属シートに高強度材を使用したことによる放電容量増大効果に関しては本実験例での評価結果が反映される。
《実施例2》
防錆剤層の厚さを種々変えた試料を作製し、表面抵抗と活物質層密着性を評価した。
〔防錆金属シートの作製〕
以下の化学組成を有する板厚0.3mm、板幅200mmの冷延鋼帯(焼鈍材)を複数本用意した。
化学組成; 質量%で、C:0.003%、Al:0.038%、Si:0.003%、Mn:0.12%、P:0.012%、S:0.122%、Ni:0.02%、Cr:0.02%、Cu:0.01%、Ti:0.073%、N:0.0023%、残部Feおよび不可避的不純物
この鋼帯を用いて前記工程CまたはDに従い防錆金属シートを作製した。防錆処理後の圧延率を調整することにより防錆剤層の薄化の程度を変化させた。両面の銅被覆層厚さおよび防錆剤層形成条件は均等とした。防錆処理は実施例1と同様の手法で行った。工程Cでは電気銅めっきに先立ち銅ストライクめっきを施した。これらのめっき条件は前述の例aと同様とし、銅めっき付着量は最終的な銅被覆層膜厚tCuが所定値となるように調整した。工程Dでは防錆処理後の圧延率が70%となるようにクラッド圧延率を調整した。また比較材として、厚さ10μmの銅シート(銅箔)からなる防錆処理を施していない金属シート、その銅シート表面に上記防錆処理を施した金属シート、および前記冷延鋼帯の表面に電気銅めっき法により片面当たり3μm厚さの銅被覆層を形成したのち上記防錆処理を施した金属シートを用意した。各金属シートについて以下の調査を行った。
〔防錆材層の分析〕
防錆処理した金属シートについて、TOF−SIMS分析計(Physical Electronics社製;TRIFT II型)を使用し、一次イオン69Ga+(15kV)、分析面積10000μm2、イオン電流0.6nAとして表面分析を行った。防錆剤層からの種々のフラグメントイオンが観測されるが、ここでは防錆剤層の下地にあるCuとBTAの反応に由来するCu(I)−BTAのイオン強度を評価指標とした。銅シート表面に防錆剤層を形成した試料(表3のNo.32)を標準試料とし、標準試料のイオン強度に対する各試料のイオン強度の比(以下「イオン強度比」という)によって、防錆剤層の膜厚(薄化の程度)についての評価を試みた。
〔大気曝露による表面抵抗の変化〕
各金属シートの防錆処理直後(防錆処理していない銅シートについては最終圧延直後)の試料、および屋内雰囲気で2週間の大気曝露を行った時点の試料について表面抵抗を測定し、大気曝露による表面抵抗の変化を調べた。電気接点シミュレータ(山崎精機社製;CSR−1)を用い、測定荷重を0〜100gfで変化させ、測定電流を10mAとし、試験数n=5で抵抗値を測定し、測定荷重が30gfとなるところの抵抗値の平均値をその試料の表面抵抗値(mΩ)として採用した。
〔活物質層の密着性〕
各金属シートの防錆処理直後(防錆処理していない銅シートについては最終圧延直後)の試料、および屋内雰囲気で2週間の大気曝露を行った時点の試料の片面に、実施例1の「負極試料の作製」と同様の方法で活物質層を形成した。ただしここではロールプレスの線圧を980kN/mとした。活物質層を形成した金属シートから1辺が5cmの正方形の試験片を切り出し、これを電解液(1mol/L LiPF6 in EC/DEC(1vol%:1vol%))に1週間浸漬したのち取り出し、乾燥させた。この浸漬試験後の試験片について活物質層の膨れ、剥離の有無を観察し、以下の基準で密着性を評価した。
○:活物質層に膨れまたは剥離が生じた部分の面積が試験片面積(25cm2)の50%以下であるもの(密着性;良好)
×:上記以外のもの(密着性;不良)
以上の結果を表3に示す。表3中の「防錆処理後の圧延率」は防錆剤層の薄化を伴う圧延における圧延率であり、この圧延率は防錆剤層を含まない金属シート部分の伸び率によるものである。
Figure 2013143314
表3からわかるように、防錆処理後の圧延率の増大に伴ってTOF−SIMSによるイオン強度比が低下していることから、防錆処理後の圧延によって防錆剤層が薄化していることが裏付けられる。
防錆剤層を薄化していない試料(No.32、33)は、大気曝露前の表面抵抗が防錆処理していない試料(No.31)より大幅に増大した。これは防錆剤層自体の電気抵抗が大きいことによる。しかし、大気曝露後には防錆処理していない試料では表面抵抗が著しく増大しており、むしろ防錆剤層を薄化していない試料の方が良好な表面抵抗を呈した。したがって、防錆剤層を薄化しなくても酸化皮膜形成に起因する表面抵抗の増大を抑える効果が発揮されることがわかる。
防錆剤層を薄化した試料(No.34〜37)では、防錆処理後の圧延によって防錆剤層の薄化の程度が大きくなるほど、大気曝露前の表面抵抗は低下した。大気曝露後もこれらの試料は表面抵抗の増大が顕著に抑制されており、防錆剤層が薄い分だけ、防錆剤層を薄化していない試料よりも低い表面抵抗を示すことが確認された。
また、活物質層の密着性は防錆剤層を形成することにより改善されることが確認された。
1 箔状金属シート
2 塗膜
3 ロール
4 活物質層
5 未塗布部
6 鋼シート
7 銅被覆層
8 防錆剤層
10 銅被覆鋼シート
40 高密度化された負極活物質層

Claims (14)

  1. 鋼シートの両面に銅被覆層を有し、それらの銅被覆層の表面上に防錆剤層を有する防錆金属シートであって、鋼シートと両面の銅被覆層の合計厚さtが3〜100μmであり、両面の各銅被覆層はいずれも平均膜厚tCuが0.02〜5.0μm、かつtCu/tが0.3以下であるリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  2. 防錆剤層は、中間製品である銅被覆鋼シートの表面に付着させた防錆剤層が当該銅被覆鋼シートとともに圧延を受けて薄化されたものである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  3. 防錆剤はベンゾトリアゾールを配合するものである請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  4. 銅被覆層は電気銅めっきを経て形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  5. 銅被覆層は鋼シートと銅シートのクラッド圧延を経て形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  6. 鋼シートは、JIS G3141:2009に規定される冷延鋼板(鋼帯を含む)を素材とするものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  7. 鋼シートは、JIS G4305:2005に規定されるオーステナイト系またはフェライト系の化学組成を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  8. 鋼シートは、質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.005〜0.6%、P:0.001〜0.05%、S:0.001〜0.5%、Al:0.001〜0.5%、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜1.0%、Cu:0〜0.1%、Ti:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、N:0〜0.05%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  9. 鋼シートは、質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜4.0%、Mn:0.001〜2.5%、P:0.001〜0.045%、S:0.0005〜0.03%、Ni:6.0〜28.0%、Cr:15.0〜26.0%、Mo:0〜7.0%、Cu:0〜3.5%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.1%、N:0〜0.3%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  10. 鋼シートは、質量%で、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  11. 引張強さが450〜900MPaである請求項1〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の負極活物質担持用防錆金属シート。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の防錆金属シートの少なくとも一方の表面上に、リチウムイオン二次電池負極用の活物質層を形成したリチウムイオン二次電池の負極。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の防錆金属シートの少なくとも一方の銅被覆層の表面上に、リチウムイオン二次電池負極用活物質を含有する塗膜を形成する工程、
    前記塗膜が乾燥した後、ロールプレスによって塗膜厚さを30〜70%減じることにより塗膜を高密度化する工程、
    を有するリチウムイオン二次電池の負極の製法。
  14. 請求項12に記載の負極を用いたリチウムイオン二次電池。
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