JP2013136658A - 熱伝導性フィラー - Google Patents
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Abstract
【課題】応力、熱を受けても窒化ホウ素微粒子が脱落しにくい複合粒子を含み、窒化ホウ素微粒子の配向傾向に応じて生じる熱伝導特性の異方性の緩和が持続しやすい熱伝導性フィラーを提供する。
【解決手段】窒化ホウ素微粒子22とバインダー3とにより構成され、微粒子22が非配向状態で含まれている中実のコア部11を備え、バインダー3が無機物により実質的に構成されている複合粒子を含む熱伝導性フィラーとする。バインダー3は例えばアルミナにより構成されている。複合粒子はコア部11とともに表層部を備えていてもよい。
【選択図】図2
【解決手段】窒化ホウ素微粒子22とバインダー3とにより構成され、微粒子22が非配向状態で含まれている中実のコア部11を備え、バインダー3が無機物により実質的に構成されている複合粒子を含む熱伝導性フィラーとする。バインダー3は例えばアルミナにより構成されている。複合粒子はコア部11とともに表層部を備えていてもよい。
【選択図】図2
Description
本発明は、熱伝導性フィラー、より詳しくは窒化ホウ素微粒子を含む熱伝導性フィラーに関する。
窒化ホウ素、特に六方晶窒化ホウ素は、熱伝導材、潤滑材等としての使用に適した特性を備えている。六方晶窒化ホウ素は、黒鉛に似た層構造を有し、平板状の微粒子として市販されている。平板状の微粒子は、樹脂その他のマトリックス材料に配合されると、主面が互いに平行となるように揃う(言い換えると「配向」する)傾向がある。
六方晶窒化ホウ素の厚み方向(c軸方向)についての熱伝導率は、その面内方向(a軸方向)についての熱伝導率の50分の1程度に止まる。このような特性と上述した配向傾向とが相俟って、窒化ホウ素微粒子を熱伝導性フィラーとして添加した樹脂シート、樹脂フィルム等の板状成形体は、熱拡散が要求される方向がその厚み方向であることが多いにもかかわらず、厚み方向については期待された程度に熱伝導特性を発揮できていないのが現状である。
窒化ホウ素微粒子の配向に伴う熱伝導特性の異方性の解消に寄与する複合粒子が提案されている。この複合粒子は、コアとなる母材粒子の表面に窒化ホウ素微粒子を付着または析出させたものである(例えば特許文献1)。窒化ホウ素微粒子を母材粒子の表面に担持させた状態で配合すれば、窒化ホウ素微粒子を配向させることなくマトリックス材料に添加することが可能となる。
しかし、従来の複合粒子には、マトリックス材料への配合の際、あるいは配合されたマトリックス材料の成形の際に加わることがある強い応力を受けると、窒化ホウ素微粒子が複合粒子から脱落しやすいという問題があった。母材粒子から脱落した窒化ホウ素微粒子は、再び配向しやすい平板状の微粒子となってマトリックス材料中に存在することになる。そこで、本発明の目的は、窒化ホウ素微粒子の複合粒子を改良することにより、特性が改善された新たな熱伝導性フィラーを提供することにある。
本発明は、
複合粒子を含む熱伝導性フィラーであって、
前記複合粒子が、
平板状の窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素微粒子を互いに結合して一体化するバインダーとを有し、
前記窒化ホウ素微粒子および前記バインダーにより構成されている中実のコア部を備え、
前記コア部において前記窒化ホウ素微粒子が非配向状態で含まれており、
前記バインダーが実質的に無機物により構成されている、
熱伝導性フィラー、を提供する。
ここで、非配向状態とは、前記コア部の断面を観察したときに、前記窒化ホウ素微粒子のそれぞれについて、当該微粒子の最長辺と当該微粒子を除く残余の微粒子の過半の最長辺とが互いに異なる方向に沿って伸びている状態をいう。
複合粒子を含む熱伝導性フィラーであって、
前記複合粒子が、
平板状の窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素微粒子を互いに結合して一体化するバインダーとを有し、
前記窒化ホウ素微粒子および前記バインダーにより構成されている中実のコア部を備え、
前記コア部において前記窒化ホウ素微粒子が非配向状態で含まれており、
前記バインダーが実質的に無機物により構成されている、
熱伝導性フィラー、を提供する。
ここで、非配向状態とは、前記コア部の断面を観察したときに、前記窒化ホウ素微粒子のそれぞれについて、当該微粒子の最長辺と当該微粒子を除く残余の微粒子の過半の最長辺とが互いに異なる方向に沿って伸びている状態をいう。
本発明では複合粒子のコア部に窒化ホウ素微粒子が含まれている。コア部に配置された窒化ホウ素微粒子は、表面に付着した窒化ホウ素微粒子よりも脱落しにくい。また、このコア部は中実の構造を有するため、外部からの応力に対する耐性に優れている。しかも、複合粒子のバインダーは実質的に無機物により構成されているため、有機物からなるバインダーを用いた場合と比較して、応力に対する耐性のみならず、例えばマトリックス材料である樹脂を成形する際に加えられ、あるいは応力印加に伴って発生することが多い熱に対する耐性にも優れている。そして、このコア部において窒化ホウ素微粒子は非配向状態で含まれている。したがって、本発明によれば、マトリックス材料に添加される際に、あるいは添加された後に加えられる、応力または熱を受けても窒化ホウ素微粒子が脱落しにくく、それ故、窒化ホウ素微粒子の非配向状態を維持したままマトリックス材料に分散させる上で有利である熱伝導性フィラーが提供される。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
本実施形態における複合粒子1の外形を図1に、複合粒子1のコア部11の断面を図2にそれぞれ示す。ただし、図示の容易のため、図1においては窒化ホウ素微粒子21の一部のみが示されている。
複合粒子1は、コア部11とコア部11上の表層部12とを備えている。コア部11は中実の構造を有するが、表層部12には外部に連通した空隙6が存在する。図1に示したように、複合粒子1の表面にはコア部11が部分的に露出していてもよいが、複合粒子1の表面はそのすべてが表層部12により覆われていることもある。後述するとおり、表層部12は応力が加わると消失することがある。本発明の一形態では、複合粒子1はコア部11と表層部12とからなり、本発明の別の一形態では、複合粒子1はコア部11のみにより構成されている。
コア部11は、窒化ホウ素微粒子22およびバインダー3により構成されている(図2)。コア部11において、窒化ホウ素微粒子22は非配向状態で分散している。より具体的には、ある特定の微粒子51に着目したときに、当該微粒子51の最長辺が伸びる方向51dと、当該微粒子51を除く微粒子の過半(個数ベースで50%超)、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、の最長辺が伸びる方向とは、互いに異なる方向に沿って伸びている。図2に示した例では、微粒子52の最長辺が伸びる方向52dは方向51dと実質的に一致している。厳密に言うと、方向51dと方向52dとは2〜3°ずれているが、5°未満程度の角度の相違は一致しているとみなす。これに対し、微粒子53の最長辺が伸びる方向(53d)は方向51dと一致しておらず、その他のほとんどの微粒子の最長辺も方向51dとは一致していない。
平板状の微粒子をそのままマトリックス材料に添加すると、微粒子は自己整列的に配向する。これに対し、本実施形態における複合粒子1のコア部11において、窒化ホウ素微粒子22は非配向状態で分散している。図2に示すように、コア部11においても、微粒子22は局所的には配向傾向を維持することが多い。しかし、コア部11全体においては、微粒子22は、個々の形状が平板状であるにもかかわらず、非配向状態で分散している。複合粒子1の内部(コア部11)には微粒子22による熱伝導パスが網目状に広がっており、この熱伝導パスの不規則的な広がりによって熱伝導特性の異方性の程度が緩和されている。
コア部11ではマトリックス3が微粒子22の間に充填されており、いわゆる中実な構造が実現されている。ただし、より詳細に観察すると、図2では図示が省略されている微小な空隙(ボイド)がコア部11に存在することがある。本明細書では、「中実」を、断面における空隙の比率が20%未満、好ましくは10%未満である状態を指す用語として使用する。この程度の空隙が存在していたとしても、応力に対する耐性には実質的に影響がない。ただし、存在する空隙の最長辺は800nm未満、特に500nm未満であることが好ましい。
図1に戻って表層部12について説明する。表層部12は、コア部11の表面の少なくとも一部を覆い、コア部11とは異なって外部に連通する空隙6を有する。より詳しく述べると、表層部12は、コア部11の表面に付着した平板状の窒化ホウ素微粒子21と、微粒子21同士の間または微粒子21とコア部11との間に形成された空隙6とを有する。表層部12には、コア部11に付着した微粒子のみならずその微粒子にさらに付着して微粒子の積層体を構成する微粒子も存在する。表層部12においても局所的にバインダーは存在し、このバインダーは微粒子21の接触部分においては微粒子21を互いに接続していると考えられる。しかし、コア部11とは異なり、表層部12におけるバインダーは微粒子21の間を埋めることできるまでの量では存在しない。
表層部12において、窒化ホウ素微粒子21の一部は複合粒子1の表面から突き出した突出部7を形成している。突出部7は、特に大きな応力が加えられずに熱伝導性フィラーが配合される用途では、マトリックス材料に配合されてもそのまま残存し、隣接する複合粒子1への熱伝導パスの形成および拡幅に寄与しうる好ましい形態的特徴である。
表層部12により覆われているコア部11表面の比率は個々の複合粒子1によって大きく相違する。後述する噴霧乾燥法を用いて同時に製造した粒子群(熱伝導性フィラー)においても、コア部11の表面の全部が表層部12によって覆われた複合粒子、コア部11の表面の一部が表層部12によって覆われた複合粒子、およびコア部11の表面の実質的に全部が露出している複合粒子のすべてが観察されることがある。ただし、熱伝導性フィラーに含まれる複合粒子の少なくとも一部、例えばその過半は、コア部11の表面の少なくとも一部が表層部12によって覆われていることが好ましい。
樹脂等のマトリックス材料に配合される際に強い応力を受けると、表層部12を構成する窒化ホウ素微粒子21は複合粒子1から脱落する。したがって、製造直後、あるいは熱伝導性フィラーとして出荷されるときには表層部12を有していても、応力の印加により表層部12が消失してコア部11のみにより構成された複合粒子となる場合がある。しかし、表面のみに窒化ホウ素微粒子を付着させた複合粒子とは異なり、本実施形態の複合粒子1ではコア部11にも窒化ホウ素微粒子22が含まれている。応力印加の後にも主要な熱伝導パスのすべてを喪失しないことは、マトリックス材料の熱伝導特性を安定的に向上させる上で極めて重要である。
窒化ホウ素微粒子2(21,22)は平板状の外形を有する。平板状の微粒子は、実質的に互いに平行な一対の主面を有し、一対の主面の間の距離により定義される厚さは、主面の平均径(最大径とこれに直交する最小径の平均値)の50%以下、好ましくは30%以下の範囲にある。ただし、主面は完全に平坦である必要がなく、またその面形状にも特段の制限はない。窒化ホウ素微粒子2は、六方晶窒化ホウ素からなることが好ましい。六方晶窒化ホウ素微粒子は、その最長方向である面内方向に沿って特に高い熱伝導率を有し、熱伝導性フィラーとして適している。
バインダー3は実質的に無機物により構成されている。本明細書において「実質的に構成されている」とは、不純物レベル、具体的には1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、の非該当材料を許容する趣旨である。したがって、実質的に無機物により構成されているという語句は、1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の有機物を許容する意味である。微粒子を配合した樹脂を粒子化して複合粒子を得ることも技術的には可能である。しかし、樹脂等の有機物により構成されたバインダーは、強度面で無機物に劣ることが多く、そうでないとしても熱にも弱い。バインダー3は有機物を含まないことが好ましい。
バインダー3は実質的に無機酸化物により構成されていることが好ましい。無機酸化物としては、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、マグネシウム酸化物、亜鉛酸化物等の金属酸化物を例示できる。バインダー3にも高い熱伝導率を有する材料を使用することが熱伝導性フィラーの特性を向上させる上では有利である。この観点から好ましい金属酸化物は、アルミニウム酸化物およびシリコン酸化物である。アルミニウム酸化物は、高い熱伝導率を有するとともに電気絶縁性であるため、バインダー3として適している。
熱伝導性フィラーは、複合粒子のみにより構成されている必要はない。特に、量産に適した方法により得られた熱伝導性フィラーには、複合化されずに残った単体の窒化ホウ素微粒子が混在していることがある。また、複合粒子への応力印加により、表層部を構成する窒化ホウ素微粒子が脱落して混在していることもある。ただし、熱伝導性フィラーに含まれている粒子は、個数基準で、その50%以上、特に80%以上が、バインダーによって窒化ホウ素微粒子が結合した複合粒子、とりわけ上述したコア部11を備えた複合粒子、であることが好ましい。
複合粒子1を含む熱伝導性フィラーは噴霧乾燥法により製造することができる。以下、噴霧乾燥法による熱伝導性フィラーの製造方法についてその実施形態を説明する。
まず、窒化ホウ素微粒子を分散質として含むとともにバインダー成分を含有する原料液を準備する。窒化ホウ素微粒子の平均粒径は1μm〜10μmの範囲とすることが好ましい。本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折法により測定された体積基準の累積粒子径分布における50%の粒径(D50)により定める。
バインダー成分は、中実のコア部を形成できる限り、バインダーそのものであってもよいし、バインダーの前駆体であってもよい。バインダーの前駆体は、無機物であってもよく有機物であってもよい。有機物である前駆体としては金属アルコキシドを例示できる。好ましいバインダーの前駆体としては、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、水酸化物、ホウ化物、窒化物、酸化物等の無機化合物を例示できる。バインダー成分は、溶質として溶解させた状態、あるいは分散質として分散させた状態で原料液に配合するとよい。バインダー成分は、例えば噴霧乾燥後の焼成によって酸化され、バインダーとなる。有機物をバインダー成分として用いると、適用する焼成条件によってはバインダーには微量の有機物が残ることになる。
原料液に配合するバインダー成分は、バインダーそのものとすることが好ましい。バインダー成分がバインダーへと化学的に変化する過程においてバインダーから相当量のガスが発生すると、複合粒子のコア部に空隙が発生する要因となるためである。また、用いるバインダー成分によっては窒化ホウ素微粒子に対する濡れ性が極度に良好であるために、微粒子の表面にバインダーが偏在して粒子の間に空隙が発生することも想定される。空隙の発生が顕著になると、コア部が中実とは言い難い状態となって複合粒子の強度に影響が及ぶことになる。中実のコア部の形成に好ましいバインダー成分は、焼成してもガスが発生せず微粒子の間にも充填されやすいコロイド状の酸化物、すなわちシリカゾル、アルミナゾル等の酸化物ゾルである。
原料液におけるバインダー成分と窒化ホウ素微粒子との比は、質量比により表示して、5:95〜90:10、さらには7:93〜80:20、特に8:92〜50:50、とりわけ8:92〜30:70が好ましい。バインダー成分が酸化等の化学変化を受けてバインダーとなる場合、上記質量比はバインダー(例えば酸化物)に換算した値に基づいて算出する。
原料液においてバインダー成分が多すぎると、複合粒子におけるバインダー比率が高くなって熱伝導率が低下する。また、バインダーのみからなる粒子が生成しやすくなる。他方、バインダー成分が少なすぎると、複合粒子のコア部が形成されにくくなったり複合粒子自体が生成しにくくなったりする。また、窒化ホウ素微粒子が複合化することなく残存しやすくなる。
原料液を構成する微粒子の分散媒としては水が適している。
噴霧乾燥により形成される粒子の大きさは、噴霧乾燥の諸条件、例えば原料液の固形分濃度、原料液の噴霧量、を調整することにより制御できる。熱伝導性フィラーとしての使用を考慮すると、噴霧乾燥の条件は、得られる粒子が、平均粒径により表示して、3μm〜50μm、特に5μm〜40μmとなるように制御することが好ましい。平均粒径が小さすぎると、樹脂等のマトリックス材料への高充填が難しくなることがあり、他方、平均粒径が大きすぎると、シート状のマトリックス材料の厚みを超えて粒子がむき出しとなり、シート強度が低下することがある。複合粒子の平均粒径は、複合化する窒化ホウ素微粒子の平均粒径の1.5〜5倍、特に2〜4倍の範囲とするとよい。この倍率が小さすぎると球状の粒子が得られにくくなることがあり、逆に大きすぎるとシート状のマトリックス材料の強度が低下することがある。
噴霧乾燥法を用いることにより、実質的に球状の複合粒子を得ることができる。本明細書において「実質的に球状」とは、粒子の最長径に対する最長径に直交する最小径の比が0.6以上、好ましくは0.8以上である粒子の形状を指しており、球形のみならず実際の外観が例えば多角柱状であっても該当する場合がある。
本発明による熱伝導性フィラーは、放熱性添加材として広い用途で有用であり、例えば放熱シート、放熱パッド等の放熱用部材;放熱グリース、放熱接着剤、放熱性半導体封止剤、放熱インク、放熱コーティング剤等の放熱用組成物の特性向上に利用できる。ここでは、所定の形状に既に成形された材料を「部材」、所定の形状に成形したり、基材に塗布したりするための不定形材料または不定形状態へと変換しうる材料を「組成物」と表記している。したがって、例えば熱伝導性フィラーを配合した材料を成形した絶縁性基板は「放熱用部材」の範疇に属する。
上記放熱用部材および放熱用組成物は、その用途に特段の制限はないが、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)に代表されるいわゆるパワーデバイスの放熱において特に有用である。IGBT素子では、制御される電流量が100〜150A程度に達し、損失熱も200〜300W/cm2に至る。損失熱によって温度が大きく上昇するとIGBT素子の性能は低下する。このため、IGBTモジュールにおいて、基板には高い電気絶縁性と高い放熱性との両立が求められている。現在利用可能な絶縁性基板をIGBTモジュールに用いると、絶縁性基板の熱抵抗がモジュール全体の熱抵抗の50%程度を占めることになるため、基板の放熱性向上が急務となっている。このような現状を鑑みると、本発明による熱伝導性フィラーのように放熱性と絶縁性との両立に適したフィラーの有用性は極めて高い。本発明による熱伝導性フィラーが配合された放熱用部材および放熱用組成物は、IGBTその他のパワーデバイスの放熱用途に特に適している。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
[熱伝導性フィラーの製造]
窒化ホウ素微粒子(電気化学工業製「HGP」、平均粒径5μm、図3参照)と純水とを分散機(エムテクニック製「クリアミクス」)に投入し、窒化ホウ素微粒子の水分散体を得た。この水分散体とアルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」)とを混合して混合ゾルを調製した。なお、アルミナゾル520は硫酸安定型で有機物を含んでいない(無機物のみにより構成されている)。この混合ゾルに純水を加え、固形分を15.0重量%に調整した原料液を得た。この原料液における窒化ホウ素微粒子とアルミナとの質量比は90:10であった。
窒化ホウ素微粒子(電気化学工業製「HGP」、平均粒径5μm、図3参照)と純水とを分散機(エムテクニック製「クリアミクス」)に投入し、窒化ホウ素微粒子の水分散体を得た。この水分散体とアルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」)とを混合して混合ゾルを調製した。なお、アルミナゾル520は硫酸安定型で有機物を含んでいない(無機物のみにより構成されている)。この混合ゾルに純水を加え、固形分を15.0重量%に調整した原料液を得た。この原料液における窒化ホウ素微粒子とアルミナとの質量比は90:10であった。
噴霧乾燥機(藤崎電機製「MDL−050」)を用いて原料液を噴霧乾燥して造粒し、熱伝導性フィラーを得た。このとき、原料液の噴霧量は75g/minとした。引き続き、得られた熱伝導性フィラーを600℃、7時間の条件で焼成した。
得られた熱伝導性フィラーのSEM写真を図4に示す。噴霧乾燥により、平板状の窒化ホウ素微粒子(図3)がアルミナからなるバインダーによって複合化された複合粒子群が得られた(図4)。この熱伝導性フィラーには、ごく少数の残存微粒子およびアルミナ微粒子が含まれているものの、実質的にすべてが複合粒子であった。また、最大径が8μm以上の複合粒子は実質的に球状とみなしてよい形状を有していた。
レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装製「マイクロトラックHRA」)を用いて熱伝導性フィラーの粒度分布を測定したところ、平均粒径は11μmであった。
得られた複合粒子の内部構造を以下のようにして観察した。まず、シリコンウエハー上に熱硬化性樹脂を塗布し、その上に測定対象とする複合粒子の粉末を振りかけて固定した。次いで、スパッタリング法により白金−パラジウムコーティングにより固定した複合粒子を被覆した。さらにその上からカーボンディポジションを実施し、カーボン膜による被覆を実施した。最後にその上から熱硬化性樹脂でサンプル全体を固定した。こうして作製したサンプルに集束イオンビームを照射し、その断面を露出させた。断面のSEM写真を図5に示す。複合粒子の内部は窒化ホウ素微粒子およびアルミナにより充填された構造を有し、窒化ホウ素微粒子は非配向状態にあった。
得られた複合粒子の強度を確認するために複合粒子を乳鉢ですり潰した。すり潰し後の複合粒子のSEM写真を図6に示す。複合粒子の表層部はその大半が脱落していたが、バインダーが充填されたコア部は破砕することなく形状を保持していることが確認できた。図6より、コア部の外形が均整のとれた球形であることも確認できた。
[熱伝導性フィラーの樹脂への充填]
上記により得た熱伝導性フィラー967質量部(乳鉢すり潰し前のフィラー)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製「jER828」)62.5質量部、酸無水物(新日本理化製「リカシッドMH−700」)56.3重量部、硬化促進剤(四国化成工業製「2E4MZ」)1質量部と、適量の溶剤(アセトン)とを混合し、その後溶剤を風乾させ、樹脂−フィラー混合物を得た。この混合物におけるフィラーの充填率は、各成分の密度に基づいて算出した体積比率で表示すると80%となる。
上記により得た熱伝導性フィラー967質量部(乳鉢すり潰し前のフィラー)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製「jER828」)62.5質量部、酸無水物(新日本理化製「リカシッドMH−700」)56.3重量部、硬化促進剤(四国化成工業製「2E4MZ」)1質量部と、適量の溶剤(アセトン)とを混合し、その後溶剤を風乾させ、樹脂−フィラー混合物を得た。この混合物におけるフィラーの充填率は、各成分の密度に基づいて算出した体積比率で表示すると80%となる。
次いで、樹脂−フィラー混合物を金型に充填して熱プレスし、厚さ2mmのフィラー充填樹脂シートを作製した。なお、混合物は、プレス圧2000kgf/cm2で加圧しながら、150℃、1時間の条件で硬化させ、さらに金型から取り出し、150℃、5時間の条件で硬化を進行させた。
成形したフィラー充填樹脂シートについて、熱拡散率、比熱および密度を測定し、これらを乗算して熱伝導率を算出した。熱拡散率は、Xeフラッシュアナライザー(NETSZC社製「LFA447Nanoflash」)を用いてレーザーフラッシュ法に基づいて測定した。比熱は、示差走査熱量計(セイコーインスツル製「DSC6200」)を用いて測定した。密度は、樹脂シートの質量および体積をそれぞれ測定して算出した。得られた熱伝導率は4.8W/mKであった。
比較のために、上記熱伝導性フィラーに代えて窒化ホウ素微粒子(「HGP」)単体を用い、フィラー充填樹脂シートを作製した。ただし、体積基準で表示したフィラーの比率が同じ値(80%)となるようにフィラーの配合量は907質量部とした。こうして得たフィラー充填樹脂シートについて、上記と同様にして熱伝導率を測定したところ、得られた熱伝導率は3.5W/mKであった。
本発明による熱伝導性フィラーは、放熱性添加材として広い用途で有用であり、例えば放熱シート、放熱パッド等の放熱用部材;放熱グリース、放熱接着剤、放熱性半導体封止剤、放熱インク、放熱コーティング剤等の放熱用組成物の特性向上に利用できる。
1 複合粒子
2 窒化ホウ素微粒子
3 バインダー
6 空隙
7 突出部
11 コア部
12 表層部
21 (表層部に含まれている)窒化ホウ素微粒子
22 (コア部に含まれている)窒化ホウ素微粒子
51,52,53 (断面に現れた)窒化ホウ素微粒子
51d、52d、53d 各窒化ホウ素微粒子の最長辺の伸長方向
2 窒化ホウ素微粒子
3 バインダー
6 空隙
7 突出部
11 コア部
12 表層部
21 (表層部に含まれている)窒化ホウ素微粒子
22 (コア部に含まれている)窒化ホウ素微粒子
51,52,53 (断面に現れた)窒化ホウ素微粒子
51d、52d、53d 各窒化ホウ素微粒子の最長辺の伸長方向
Claims (8)
- 複合粒子を含む熱伝導性フィラーであって、
前記複合粒子が、
平板状の窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素微粒子を互いに結合して一体化するバインダーとを有し、
前記窒化ホウ素微粒子および前記バインダーにより構成されている中実のコア部を備え、
前記コア部において前記窒化ホウ素微粒子が非配向状態で含まれており、
前記バインダーが実質的に無機物により構成されている、
熱伝導性フィラー。
ここで、非配向状態とは、前記コア部の断面を観察したときに、前記窒化ホウ素微粒子のそれぞれについて、当該微粒子の最長辺と当該微粒子を除く残余の微粒子の過半の最長辺とが互いに異なる方向に沿って伸びている状態をいう。 - 前記バインダーが有機物を含まない、請求項1に記載の熱伝導性フィラー。
- 前記バインダーが実質的に無機酸化物により構成されている、請求項1または2に記載の熱伝導性フィラー。
- 前記無機酸化物がアルミナである、請求項3に記載の熱伝導性フィラー。
- 前記複合粒子が、前記コア部の表面に付着した窒化ホウ素微粒子を有する表層部をさらに備え、
前記表層部に存在する窒化ホウ素微粒子の少なくとも一部が当該複合粒子の表面から突き出した突出部を形成している、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性フィラー。 - 平均粒径が3μm〜50μmである、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性フィラー。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性フィラーが配合された放熱用部材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性フィラーが配合された放熱用組成物。
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