以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の1つの実施形態(以下「第1実施形態」)の制御装置を備えた内燃機関が図1に示されている。図1において、10は内燃機関、20は内燃機関の本体、30は動弁機構、40は吸気通路、50は排気通路、60はアクセルペダル、70は電子制御装置をそれぞれ示している。また、21はシリンダ、22はピストン、23はコネクティングロッド、24はクランクシャフト、25はクランク角度センサ、26は燃焼室、27は点火栓、28は燃料噴射弁をそれぞれ示している。また、31は吸気バルブ、32は吸気バルブ動弁機構、33は排気バルブ、34は排気バルブ動弁機構をそれぞれ示している。また、41は吸気ポート、42は吸気管、43はスロットル弁、44はスロットル弁アクチュエータをそれぞれ示している。また、51は排気ポート、52は排気管をそれぞれ示している。また、61はアクセルペダル踏込量センサを示している。
電子制御装置70は、マイクロプロセッサ(CPU)71、リードオンリメモリ(ROM)72、ランダムアクセスメモリ(RAM)73、バックアップRAM(B−RAM)74、インターフェース(IF)75を具備する。これらマイクロプロセッサ71、リードオンリメモリ72、ランダムアクセスメモリ73、バックアップRAM74、および、インターフェース75は、双方向バスによって互いに電気的に接続されている。
ピストン22は、シリンダ21内で往復動可能にシリンダ21内に配置されている。また、コネクティングロッド23は、ピストン22をクランクシャフト24に接続する。クランク角度センサ25は、クランクシャフト24に近接して機関本体20に取り付けられており、クランクシャフト24の回転位相に対応する出力値を出力する機能を有する。点火栓27は、その先端が燃焼室26内に露出するように内燃機関の本体(以下、内燃機関の本体を「機関本体」という)20に取り付けられており、燃焼室26内の燃料を点火する機能を有する。燃料噴射弁28は、吸気ポート41に近接して吸気管42に取り付けられており、吸気ポート41に燃料を噴射する機能を有する。
なお、燃料噴射弁28は、インターフェース75に電気的に接続されており、電子制御装置70から指令信号が与えられると燃料を噴射する。燃料噴射弁28から噴射された燃料は、吸気ポート41を介して空気と共に燃焼室26内に吸入される。点火栓27は、インターフェース75に電気的に接続されており、電子制御装置70から指令信号が与えられると燃焼室26内の燃料を点火する。ピストン22は、燃焼室26内で燃料が燃焼するとシリンダ21内で往復動せしめられる。クランクシャフト24は、ピストン22がシリンダ21内で往復動するとコネクティングロッド23を介して回転せしめられる。クランク角度センサ25は、インターフェース75に電気的に接続されており、クランク角度センサ25の出力値は、電子制御装置70に入力される。電子制御装置70は、クランク角度センサ25の出力値に基づいて機関回転数(すなわち、内燃機関の回転数)を算出する。
吸気バルブ31は、機関本体20に配置されており、吸気ポート41を開いたり閉じたりする機能を有する。吸気バルブ動弁機構32は、機関本体20に取り付けられており、吸気バルブ31を開弁させたり閉弁させたりする機能と、吸気バルブ31のバルブタイミングを変更する機能と、を有する。なお、吸気バルブ31が開弁せしめられると吸気ポート41が開かれ、吸気バルブ31が閉弁せしめられると吸気ポート41が閉じられる。また、吸気バルブ31のバルブタイミングとは、吸気バルブの開弁タイミングと吸気バルブの閉弁タイミングとの両方を意味する。
排気バルブ33は、機関本体20に配置されており、排気ポート51を開いたり閉じたりする機能を有する。排気バルブ動弁機構34は、機関本体20に取り付けられており、排気バルブ33を開弁させたり閉弁させたりする機能を有する。なお、排気バルブ33が開弁せしめられると排気ポート51が開かれ、排気バルブ33が閉弁せしめられると排気ポート51が閉じられる。
なお、動弁機構30は、吸気バルブ31と、吸気バルブ動弁機構32と、排気バルブ33と、排気バルブ動弁機構34と、を具備する。
吸気通路40は、吸気ポート41と吸気管42とから構成され、空気を燃焼室26に供給する機能を有する。吸気ポート41は、機関本体20に形成されている。吸気管42は、その一端が吸気ポート41に接続されているとともに、その他端が外気に開放されている。スロットル弁43は、回動可能に吸気管42内に配置されており、吸気管42の流路面積を変更する機能を有する。スロットル弁アクチュエータ44は、スロットル弁43に接続されている。
なお、スロットル弁アクチュエータ44は、インターフェース75に電気的に接続されており、電子制御装置70から与えられる制御信号に応じて吸気管42の流路面積が所望の流路面積になるようにスロットル弁43を動作させる。
排気通路50は、排気ポート51と排気管52とから構成され、燃焼室26から排出される排気ガスを外気に放出する機能を有する。排気ポート51は、機関本体20に形成されている。排気管52は、その一端が排気ポート51に接続されているとともに、その他端が外気に開放されている。
アクセルペダル60は、アクセルペダル踏込量センサ61に接続されている。アクセルペダル踏込量センサ61は、アクセルペダル60の踏込量に対応する出力値を出力する機能を有する。アクセルペダル踏込量センサ61は、インターフェース75に電気的に接続されており、アクセルペダル踏込量センサ61の出力値は、電子制御装置70に入力される。電子制御装置70は、アクセルペダル踏込量センサ61の出力値に基づいて要求トルク(すなわち、内燃機関から出力されるトルクとして要求されるトルク)を算出する。
次に、第1実施形態の動弁装置において吸気バルブのバルブタイミングを変更するための機構(以下この機構を「吸気バルブタイミング変更機構」という)について説明する。第1実施形態の吸気バルブタイミング変更機構が図2に示されている。図2において、80は吸気バルブタイミング変更機構、81は吸気カムシャフト、82はハウジング、83はタイミングプーリ、84は油圧アクチュエータをそれぞれ示している。
ハウジング82は、その外周壁面がタイミングプーリ83の内周壁面に接するようにしてタイミングプーリ83内に収容されている。タイミングプーリ83は、タイミングベルト(図示せず)を介してクランクシャフト24に接続されており、クランクシャフト24の回転によってタイミングプーリ83を介して矢印Rで示されている方向に回転せしめられる。なお、ハウジング82は、タイミングプーリ83に対して回転不能にタイミングプーリ83内に収容されている。
吸気カムシャフト81の外周壁面には、径方向外方へとハウジング82の内周壁面まで延びる複数のベーン85が設けられている。ハウジング82の内周壁面には、径方向内方へと吸気カムシャフト81の外周壁面まで延びる複数の隔壁86が設けられている。そして、各ベーン85とそれに隣接する2つの隔壁86の一方との間に、油圧室(以下これを「進角側油圧室」という)87が形成されているとともに、各ベーン85とそれに隣接する2つの隔壁86の他方との間に、油圧室(以下これを「遅角側油圧室」という)88が形成されている。
油圧アクチュエータ84は、進角側油圧室87に作動油を供給すると同時に遅角側油圧室88から作動油を抜き出したり、進角側油圧室97から作動油を抜き出すと同時に遅角側油圧室88に作動油を供給したりすることができる。
なお、吸気カムシャフト81には、カム(図示せず)が設けられており、このカムの外周壁面は、吸気バルブ31の先端に接している。そして、吸気カムシャフト81が回転するとカムが回転し、このカムの回転によって吸気バルブ31が開弁されたり閉弁されたりする。一方、排気バルブ動弁機構も、排気カムシャフト(図示せず)を有し、この排気カムシャフトにも、カム(図示せず)が設けられており、このカムの外周面は、排気バルブ33の先端に接している。そして、排気カムシャフトが回転するとカムが回転し、このカムの回転によって排気バルブ33が開弁されたり閉弁されたりする。
クランクシャフト24の回転がタイミングベルトを介してタイミングプーリ83に伝達されると、タイミングプーリ83が回転する。すると、タイミングプーリ83と共にハウジング82が回転する。すると、ハウジング82の回転と共に隔壁86が回転することによって、ハウジング82の回転が遅角側油圧室88を介してベーン85に伝達される。すると、ベーン85が回転し、このベーン85と共に吸気カムシャフト81が回転する。これにより、吸気バルブ31が開弁されたり閉弁されたりする。なお、タイミングプーリ83が回転すると、排気カムシャフトも回転せしめられ、これにより、排気バルブ33が開弁されたり閉弁されたりする。
ところで、油圧アクチュエータ84によって進角側油圧室87に作動油が供給されると同時に遅角側油圧室88から作動油が抜き出されると、吸気カムシャフト81がハウジング82に対して矢印Rの方向に相対的に回転する。これにより、吸気バルブ31の開弁タイミングおよび閉弁タイミングがより早いタイミングに変更される(すなわち、進角される)。一方、油圧アクチュエータ84によって進角側油圧室87から作動油が抜き出されると同時に遅角側油圧室88に作動油が供給されると、吸気カムシャフト81がハウジング82に対して矢印Rとは逆方向に相対的に回転する。これにより、吸気バルブ31の開弁タイミングおよび閉弁タイミングがより遅いタイミングに変更される(すなわち、遅角される)。
そして、第1実施形態では、機関回転数と要求トルクとによって規定される機関運転状態(すなわち、内燃機関の運転状態)に応じて適切な吸気バルブの開弁タイミングが実験等によって予め求められる。そして、これら求められた開弁タイミングが図3に示されているように機関回転数NEと要求トルクTQrとの関数のマップの形で目標バルブタイミングTivtとして電子制御装置70に記憶される。そして、機関運転中(すなわち、内燃機関の運転中)、その時々の機関回転数NEとその時々の要求トルクとに対応する目標バルブタイミングTivtが取得される。そして、斯くして取得された目標バルブタイミングTivtに吸気バルブの開弁タイミングが一致するように、吸気バルブタイミング変更機構によって吸気バルブの開弁タイミングが変更される。より具体的には、吸気バルブの現在の開弁タイミングが目標バルブタイミングよりも遅いタイミングであるときには、油圧アクチュエータによって進角側油圧室に作動油が供給されると同時に遅角側油圧室から作動油が抜き出される。これにより、吸気バルブの開弁タイミングが目標バルブタイミングに向かって進角される。そして、吸気バルブの開弁タイミングが目標バルブタイミングに一致したときに、油圧アクチュエータによる進角側油圧室への作動油の供給および遅角側油圧室からの作動油の抜き出しが停止される。一方、吸気バルブの現在の開弁タイミングが目標バルブタイミングよりも早いタイミングであるときには、油圧アクチュエータによって進角側油圧室から作動油が抜き出されると同時に遅角側油圧室に作動油が供給される。これにより、吸気バルブの開弁タイミングが目標バルブタイミングに向かって遅角される。そして、吸気バルブの開弁タイミングが目標バルブタイミングに一致したときに、油圧アクチュエータによる進角側油圧室からの作動油の抜き出しおよび遅角側油圧室への作動油の供給が停止される。
なお、第1実施形態では、吸気バルブ31の開弁タイミングが決まれば、吸気バルブ31の閉弁タイミングが一義的に決まることから、吸気バルブ31の閉弁タイミングに関する目標バルブタイミングは設定されない。
次に、第1実施形態の機関停止制御について説明する。なお、機関停止制御とは、機関停止(すなわち、機関運転の停止)が要求されたときに開始される制御である。また、以下の説明において「アイドリング運転」とは「機関運転を維持するのに最低限必要な機関回転数を維持することができる機関運転」を意味する。
第1実施形態では、機関停止が要求されたときの目標バルブタイミング(以下この目標バルブタイミングを「機関停止要求時目標バルブタイミング」という)が予め決められている。したがって、機関停止が要求されたときには、機関停止要求時目標バルブタイミングが目標バルブタイミングに設定される。そして、吸気バルブの開弁タイミングが機関停止要求時目標バルブタイミングに一致するように吸気バルブの開弁タイミングを変更する制御(以下この制御を「機関停止要求時バルブタイミング制御」という)が開始されるとともに、内燃機関がアイドリング運転せしめられる。そして、吸気バルブの開弁タイミングが予め定められたバルブタイミング(以下このバルブタイミングを「所定バルブタイミング」という)に到達したときに機関運転を停止させる処理(以下この処理を「機関停止処理」という)が開始される。なお、機関停止要求時バルブタイミング制御は、機関運転が停止するまで実行可能であり、機関運転が停止すると実行不能となる。また、機関停止処理では、たとえば、燃料噴射弁からの燃料の噴射が停止されるとともに点火栓による燃料の点火が停止される。
第1実施形態の機関停止制御の様子が図5に示されている。すなわち、図5に示されているように、時刻T1において、機関停止が要求されると、目標バルブタイミングTivtが機関停止要求時目標バルブタイミングTvit−sに設定される。そして、それと同時に、機関停止要求時バルブタイミング制御VTCが開始されるとともに、内燃機関がアイドリング運転せしめられて機関回転数NEがアイドリング回転数NEiに制御される。そして、時刻T1以降、吸気バルブの開弁タイミングTivが徐々に機関停止要求時目標バルブタイミングTivt−sに向かって変更せしめられる。そして、時刻T2において、吸気バルブの開弁タイミングTivが所定バルブタイミングTivthに到達したときに、機関停止処理が開始されることによって機関回転数NEが小さくなる。そして、時刻T3において、吸気バルブの開弁タイミングTivが機関停止要求時目標バルブタイミングTivt−sに到達すると同時に、機関回転数NEが零になる(すなわち、機関運転が停止される)。
次に、第1実施形態の上記所定バルブタイミングについて説明する。第1実施形態では、吸気バルブタイミング変更機構の油圧室に供給されている作動油の温度に応じて、上記所定バルブタイミングが設定される。
第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第1実施形態の吸気バルブタイミング変更機構は、作動油の圧力(すなわち、油圧)によってバルブタイミングを変更する。そして、第1実施形態では、機関停止が要求されたときに機関運転要求時バルブタイミング制御が開始されるとともに、内燃機関がアイドリング運転せしめられる。そして、吸気バルブの開弁タイミングが所定バルブタイミングに到達したときに機関停止処理が開始される。ここで、第1実施形態では、作動油の温度に応じて上記所定バルブタイミングが設定される。つまり、第1実施形態では、バルブタイミング制御時間(すなわち、機関停止要求時バルブタイミング制御によって吸気バルブの開弁タイミングを機関停止要求時目標バルブタイミングに一致させるまでに要する時間)の長さに影響を与える作動油の温度、別の言い方をすれば、機関停止要求時バルブタイミング制御による吸気バルブの開弁タイミングの変更速度に影響を与える作動油の温度を考慮して上記所定バルブタイミングが設定される。したがって、第1実施形態では、機関停止要求時バルブタイミング制御によって吸気バルブの開弁タイミングが機関停止要求時目標バルブタイミングに一致すると同時に機関停止が停止されるように上記所定バルブタイミングを設定することができる。このため、第1実施形態によれば、機関運転が停止されたときに吸気バルブの開弁タイミングを機関停止要求時目標バルブタイミングに一致させるとともに内燃機関の燃費の低下を抑制することができるという効果が得られる。
次に、第1実施形態の機関停止制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図4に示されている。なお、このルーチンは、所定周期毎に開始されるルーチンである。
図4のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、機関停止が要求されたか否かが判別される。ここで、機関停止が要求されたと判別されたときには、ルーチンは、ステップ101に進む。一方、機関停止が要求されていないと判別されたときには、ルーチンは終了する。
ステップ101では、機関停止要求時目標バルブタイミングが目標バルブタイミングTivtに設定されるとともに作動油の温度に応じて所定バルブタイミングTivtが設定される。次いで、ステップ102において、機関停止要求時バルブタイミング制御が開始される。次いで、ステップ103において、内燃機関のアイドリング運転が開始される。次いで、ステップ104において、吸気バルブのバルブタイミングがステップ101で設定された所定バルブタイミングに到達した(Tiv=Tivth)か否かが判別される。ここで、Tiv=Tivthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ105に進み、機関停止処理が開始され、その後、ルーチンが終了する。一方、Tiv=Tivthではないと判別されたときには、ルーチンはステップ104に戻る。
なお、一般的に、吸気バルブタイミング変更機構の油圧室に供給される作動油の温度が高いほど吸気バルブタイミング変更機構によるバルブタイミングの変更速度が速い。したがって、作動油の温度が高いほどバルブタイミング制御時間が短くなる。そこで、この場合、上述した実施形態では、機関停止が要求されたときの作動油の温度が高いほど所定バルブタイミングが機関停止要求時目標バルブタイミングから遠いバルブタイミングに設定される。
また、上述した実施形態において、吸気バルブタイミング変更機構の油圧室に供給される作動油の温度を代表するパラメータとして、内燃機関を冷却する冷却水の温度を採用してもよい。
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第2実施形態の構成および制御は、それぞれ、第1実施形態の構成および制御と同じであるか、あるいは、以下で説明される第2実施形態の構成および制御に鑑みたときに第1実施形態の構成および制御から当然に導き出される構成および制御である。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、機関停止が要求されたときには、機関停止要求時目標バルブタイミングが目標バルブタイミングに設定される。そして、機関停止要求時バルブタイミング制御が開始されるとともに、内燃機関がアイドリング運転せしめられる。そして、吸気バルブの開弁タイミングが所定バルブタイミングに到達したときに機関停止処理が開始される。ここで、第2実施形態では、吸気バルブタイミング変更機構の油圧室に供給されている作動油の温度と内燃機関を潤滑する潤滑油の温度とに応じて、上記所定バルブタイミングが設定される。
第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第2実施形態では、作動油の温度および潤滑油の温度に応じて上記所定バルブタイミングが設定される。つまり、第2実施形態では、バルブタイミング制御時間の長さに影響を与える作動油の温度と、機関停止時間(すなわち、機関停止処理が開始されてから機関運転が停止するまでに要する時間)の長さに影響を与える潤滑油の温度、別の言い方をすれば、機関停止処理が開始されてから機関回転数が低下する速度に影響を与える潤滑油の温度と、を考慮して上記所定バルブタイミングが設定される。したがって、第2実施形態では、機関停止要求時バルブタイミング制御によって吸気バルブの開弁タイミングが機関停止要求時目標バルブタイミングに一致すると同時に機関停止が停止されることを確実ならしめるように上記所定バルブタイミングを設定することができる。このため、第2実施形態によれば、機関運転が停止されたときに吸気バルブの開弁タイミングを機関停止要求時目標バルブタイミングに一致させるとともに内燃機関の燃費の低下を抑制することを確実ならしめることができるという効果が得られる。
なお、一般的に、内燃機関を潤滑する潤滑油の温度が高いほど機関運転に関連する摩擦が小さくなる。したがって、潤滑油の温度が高いほど機関停止時間が短くなる。そこで、この場合、上述した実施形態では、機関停止が要求されたときの潤滑油の温度が高いほど所定バルブタイミングが機関停止要求時目標バルブタイミングに近いバルブタイミングに設定される。
また、上述した実施形態において、内燃機関を潤滑する潤滑油の温度を代表するパラメータとして、内燃機関を冷却する冷却水の温度を採用してもよい。
また、上述した実施形態において、吸気バルブタイミング変更機構が作動油の圧力によって吸気バルブのバルブタイミングを変更するものでない場合、上記所定バルブタイミングを内燃機関を潤滑する潤滑油の温度に応じて設定するようにしてもよい。
また、上述した実施形態は、内燃機関に本発明を適用した場合の実施形態である。しかしながら、本発明は、内燃機関と電動機とを具備する動力装置(または、ハイブリッドシステム)にも適用可能である。以下、この動力装置を備えた車両の一例について説明する。
この動力装置を備えた車両が図6に示されている。図6において、MG1およびMG2は発電電動機(以下これら発電電動機をそれぞれ「第1発電電動機」および「第2発電電動機」という)、10は内燃機関、15はクランクシャフト(出力軸)、24はクランク角度センサ、90動力分配機構、110はインバータ、111はバッテリ、60はアクセルペダル、61はアクセルペダル踏込量センサ、70は電子制御装置をそれぞれ示している。なお、図6に示されている内燃機関10は、図1に示されている内燃機関10と同じ内燃機関である。
動力分配装置90は、遊星歯車装置91を有する。遊星歯車装置91は、サンギア92とプラネタリギア93とリングギア94とを有する。プラネタリギア93は、サンギア92に噛合せしめられているとともに、リングギア94に噛合せしめられている。サンギア92は、第1発電電動機MG1のシャフト(以下このシャフトを「第1シャフト」という)61に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1は、サンギア92から当該第1発電電動機MG1に入力されるトルクによって回転駆動可能であるし、サンギア92にトルクを出力可能である。そして、第1発電電動機MG1は、それがサンギア92から当該第1発電電動機MG1に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電可能である。リングギア94は、リングギアキャリア96を介して第2発電電動機MG2のシャフト(以下このシャフトを「第2シャフト」という)62に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、リングギア94にトルクを出力可能であるし、リングギア94から当該第2発電電動機MG2に入力されるトルクによって回転駆動可能である。そして、第2発電電動機MG2は、それがリングギア94から当該第2発電電動機MG2に入力されるトルクによって回転駆動されることによって発電可能である。
プラネタリギア93は、プラネタリギアキャリア95を介してクランクシャフト24に接続されている。したがって、プラネタリギア93は、クランクシャフト24から当該プラネタリギア93に入力されるトルクによって回転駆動せしめられる。また、プラネタリギア93は、サンギア92およびリングギア94に噛合されている。したがって、プラネタリギア93からサンギア92にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア92が回転駆動されるし、プラネタリギア93からリングギア94にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア94が回転駆動される。逆に、サンギア92からプラネタリギア93にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア93が回転駆動されるし、リングギア94からプラネタリギア93にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア93が回転駆動される。
リングギア94は、リングギアキャリア96を介して出力ギア97に接続されている。したがって、出力ギア97は、リングギア94から当該出力ギア97に入力されるトルクによって回転駆動されるし、リングギア94は、出力ギア97から当該リングギア94に入力されるトルクによって回転駆動される。
また、第1発電電動機MG1は、レゾルバ102を有する。レゾルバ102は、電子制御装置70のインターフェース75に接続されている。レゾルバ102は、第1発電電動機MG1の回転角度に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置70に入力される。電子制御装置70は、この出力値に基づいて第1発電電動機の回転数(以下この回転数を「第1MG回転数」という)を算出する。一方、第2発電電動機MG2は、レゾルバ103を有する。レゾルバ103は、電子制御装置70のインターフェース75に接続されている。レゾルバ103は、第2発電電動機の回転角度に対応する出力値を出力する。この出力値は電子制御装置70に入力される。電子制御装置70は、この出力値に基づいて第2発電電動機の回転数(以下この回転数を「第2MG回転数」という)を算出する。
また、第1発電電動機MG1は、インバータ110を介してバッテリ111に電気的に接続されている。したがって、第1発電電動機MG1が電力を発電しているときには、第1発電電動機MG1が発電した電力(以下この電力を「第1発電電力」という)は、インバータ110を介してバッテリ111に供給可能である。また、第1発電電動機MG1は、バッテリ111から供給される電力によって回転駆動可能であるし、バッテリ111から供給される電力によって当該第1発電電動機MG1に加えられる制御トルク(以下この制御トルクを「第1制御トルク」という)を制御することによってその回転数が制御可能に構成されている。
また、第2発電電動機MG2は、インバータ110を介してバッテリ111に電気的に接続されている。したがって、第2発電電動機MG2は、バッテリ111から供給される電力によって回転駆動可能であるし、バッテリ111から供給される電力によって当該第2発電電動機MG2に加えられる制御トルク(以下この制御トルクを「第2制御トルク」という)を制御することによってその回転数が制御可能である。また、第2発電電動機MG2が電力を発電しているときには、第2発電電動機MG2が発電した電力(以下この電力を「第2発電電力」という)はインバータ110を介してバッテリ111に供給可能である。なお、第1発電電力は、第2発電電動機MG2に直接供給可能でもあるし、第2発電電力は、第1発電電動機に直接供給可能でもある。
また、バッテリ111は、電子制御装置70のインターフェース75に接続されている。そして、バッテリ蓄電量(すなわち、バッテリ111に蓄電されている電力量)に関する情報が電子制御装置70のインターフェース75に入力される。また、インバータ110も、電子制御装置70のインターフェース75に接続されている。そして、インターフェース75を介して電子制御装置70から送られる指令によって、インバータ110から第2発電電動機MG2に供給される電力量および第1発電電動機MG1に供給される電力量が制御される。
また、出力ギア97は、ギア列104を介してディファレンシャルギア105に接続されている。ディファレンシャルギア105は、ドライブシャフト106に取り付けられている。ドライブシャフト106の両端には、駆動輪107が取り付けられている。したがって、出力ギア97からのトルクは、ギア列104、ディファレンシャルギア105、および、ドライブシャフト106を介して駆動輪107に伝達される。
なお、当該動力装置では、アクセルペダルの踏込量と車速とに基づいて動力装置に要求される要求動力を算出する。また、当該動力装置は、概して、内燃機関10と第1発電電動機MG1と第2発電電動機MG2とから構成されている。
また、当該動力装置では、要求出力のうち内燃機関から出力されるべき出力が要求機関出力として算出される。そして、この要求機関出力をクランクシャフトから出力させたときに燃費が最も高くなる機関動作点が要求機関出力毎に最適機関動作点として実験等によって予め求められる。そして、これら最適機関動作点を機関トルクと機関回転数とによって規定されるグラフ上にプロットしてこれら最適機関動作点を結ぶことによって形成されるラインが最適機関動作ラインとして求められる。そして、この最適機関動作ラインが電子制御装置に記憶されている。そして、機関運転中、要求機関出力が算出され、この算出された要求機関出力を内燃機関から出力させることができる最適機関動作ライン上の機関動作点が選択される。そして、この選択された機関動作点を規定する機関トルクおよび機関回転数がそれぞれ目標機関トルクおよび目標機関回転数に設定される。そして、この設定された目標機関トルクおよび目標機関回転数が達成されるように燃料噴射量および機関回転数が制御される。
また、機関運転中に算出された要求機関出力が零である場合には、機関運転が停止され、第1発電電動機または第2発電電動機または第1発電電動機と第2発電電動機からの出力のみによって要求出力が動力装置から出力されることになる。
ところで、第2MG回転数が一定である場合、第1MG回転数が変化すれば機関回転数も変化する。別の言い方をすれば、第1MG回転数を制御することによって機関回転数を制御することができる。そして、第1MG回転数を「NM1」で表し、第2MG回転数を「NM2」で表し、機関回転数を「NE」で表し、リングギアの歯数に対するサンギアの歯数の比(すなわち、サンギアの歯数/リングギアの歯数)を「ρ」で表したとき、第1MG回転数と機関回転数との間には次式1の関係がある。したがって、目標第1MG回転数を「NM1t」で表し、目標機関回転数を「NEt」で表したとき、目標第1MG回転数と目標機関回転数との間には次式2の関係があることになる。
NM1=(NE−NM2)/ρ+NE …(1)
NM1t=(NEt−NM2)/ρ+NEt …(2)
そこで、当該動力装置では、要求出力に応じて選択される機関動作点に従って設定される目標機関回転数NEtと現在の第2MG回転数NM2とを利用して上式2から目標第1MG回転数NM1tが算出される。そして、斯くして算出された目標第1MG回転数NM1tに対する現在の第1MG回転数NM1の偏差(=NM1t−NM1)が算出される。そして、この算出された偏差が零になるように第1制御トルクが制御される。
ところで、機関トルクを「TQE」で表し、リングギア(すなわち、駆動輪)に入力される機関トルク(以下この機関トルクを「リングギア入力機関トルク」という)を「TQEr」で表し、リングギアの歯数に対するサンギアの歯数の比(すなわち、サンギアの歯数/リングギアの歯数)を「ρ」で表したとき、リングギア入力機関トルクと機関トルクとの間には次式3の関係がある。
TQEr=1/(1+ρ)×TQE …(3)
すなわち、リングギア入力機関トルクTQErは機関トルクTQEの一部である。したがって、リングギア入力機関トルクTQErは要求駆動トルク(すなわち、駆動輪107に入力されるべきトルク)よりも小さい。そこで、第1実施形態では、要求駆動トルクとリングギア入力機関トルクTQErとの差に相当するトルクが第2発電電動機からリングギアに入力されるように第2制御トルクが制御される。斯くして、要求駆動トルクに等しいトルクがリングギアに入力されることになる。
なお、上述した動力装置または当該動力装置を備えた車両の内燃機関に本発明が適用された場合、以下の効果が得られる。すなわち、この場合、バルブタイミングを機関停止要求時目標バルブタイミングに一致させるために必要な時間だけ内燃機関がアイドリング運転せしめられる。つまり、バルブタイミングを機関停止要求時目標バルブタイミングに一致させるために不要な機関運転が抑制される。したがって、機関運転を可能な限り短くすることができると言える。このため、内燃機関を運転させるとともに第1発電電動機(または、第2発電電動機、または、第1発電電動機と第2発電電動機)を駆動させるモードと、機関運転を停止させて第1発電電動機(または、第2発電電動機、または、第2発電電動機と第2発電電動機)のみを駆動させるモード(以下このモードを「間欠モード」という)とが用意されている場合において、機関運転を停止させる間欠モードの実行が要求されたときに、可能な限り早期に間欠モードが実行されるという効果が得られる。
また、上述した実施形態は、吸気バルブの開弁タイミングおよび閉弁タイミングを変更する吸気バルブタイミング変更機構を備えた内燃機関に本発明を適用した場合の実施形態である。しかしながら、本発明は、吸気バルブの開弁タイミングと吸気バルブの閉弁タイミングとのうちのいずれか一方を変更する吸気バルブタイミング変更機構を備えた内燃機関にも適用可能である。
また、上述した実施形態は、吸気バルブのバルブタイミングを変更する吸気バルブタイミング変更機構を備えた内燃機関に本発明を適用した場合の実施形態である。しかしながら、本発明は、この吸気バルブタイミング変更機構に代えて排気バルブのバルブタイミングを変更する排気バルブタイミング変更機構を備えた内燃機関にも適用可能である。この場合、排気バルブ動弁機構は、排気バルブを開弁させたり閉弁させたりする機能と、排気バルブのバルブタイミングを変更する機能と、を有することになる。また、この場合、排気バルブタイミング変更機構の構成としては、たとえば、図2を参照して説明した吸気バルブタイミング変更機構の構成と同じ構成を採用することができる。
また、上述した実施形態は、火花点火式の内燃機関(いわゆるガソリンエンジン)に本発明を適用した場合の実施形態である。しかしながら、本発明は、圧縮自着火式の内燃機関(いわゆるディーゼルエンジン)にも適用可能である。