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JP2013076124A - 耐食性に優れた被覆物品の製造方法および被覆物品 - Google Patents

耐食性に優れた被覆物品の製造方法および被覆物品 Download PDF

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Abstract

【課題】 硬質皮膜を被覆することで優れた耐食性を有する、プラスチックやゴム等の成型部品に最適な被覆物品の製造方法および被覆物品を提供する。
【解決手段】 物品の基材表面に物理蒸着法によって硬質皮膜を被覆した被覆物品の製造方法であって、前記硬質皮膜は、前記基材表面に被覆された第1の硬質皮膜と、その直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、
前記基材表面は窒化処理されており、前記第2の硬質皮膜を被覆する前に、前記第1の硬質皮膜の表面を算術平均粗さRaは0.05μm以下、かつ最大高さRzは1.00μm以下となるように研磨する耐食性に優れた被覆物品の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばプラスチックやゴムの成形に用いられる金型、工具、および射出成形用部品といった、耐食性が求められる被覆物品の製造方法および被覆物品に関する。
従来、プラスチック(樹脂)やゴムの成形においては、その被成形材によってもたらされる腐食環境から、成形に使用される金型や工具等の物品には優れた耐食性が求められている。例えば射出成形の場合、そのプラスチック等の被成形材には耐熱性や強度を向上させるための各種の添加剤が加えられる。そして、射出成形中には、その加熱または発熱によってプラスチックが分解する一方で、上記の添加剤からも腐食性ガスが発生するので、射出成形用部品(例えば、スクリューヘッドや、シールリング、など)は激しい腐食環境に曝され、孔食やガス焼付き等の要因となる。
そこで、腐食環境下で使用される各種物品の耐食性を向上する手法としては、該部品への表面処理が一般的に用いられている。例えば、厚膜のハードクロムメッキを被覆することで耐食性を改善する手法がある。また、物理蒸着法(以下、PVDと略す)や化学蒸着法によって被覆されるTiN、CrN、TiCN等の硬質皮膜は、その優れた耐食性に加えて、高硬度による耐摩耗性も備えていることから、有効な手法である。
例えば、射出成形用部品の表面を窒化処理した後、アークイオンプレーティング法によるCrNやTiN皮膜を被覆することで、耐摩耗性や皮膜密着性を改善する手法がある(特許文献1)。また、同じくCrNやTiN皮膜を被覆する手法においては、基材との密着性および耐食性に優れたCrN皮膜を先に被覆した上に、高硬度のTiN皮膜を複層被覆することで、耐食性を付与する手法がある(特許文献2)。
また、上記の皮膜成分の改良による一方では、その構造を改良することで、皮膜特性を向上させる手法がある。例えば切削工具の分野では、その工具表面に硬質皮膜を被覆する際、被覆途中に中間イオンエッチング(ボンバード処理)を行なうことで亀裂破壊の要因となるドロップレットを除去し、ボイドやポアの発生しない平滑な皮膜を得る手法がある(特許文献3)。そして、上記のドロップレットを除去する手法には、サンドブラストによる機械的処理を適用する手法もある(特許文献4)。
特開2001−150500号公報 特開2005−144992号公報 特開2009−078351号公報 欧州特許第0756019号明細書
硬質皮膜の被覆手段にPVDを採用することは、基材に掛かる熱的負荷が小さいことから有効である。しかしながら、PVDで被覆した皮膜中には上記のドロップレットやパーティクル等が少なからず存在する。これらに起因したボイドやポア、ピンホール状の隙間欠陥が、特に基材にまで貫通すると、その部位では腐食が激しく進行し、早期の孔食やガス焼付きの要因となる。そのため、特許文献1の硬質皮膜は、それが耐食性に優れたCrNであっても、皮膜中に上記の欠陥が存在することで本来の耐食性が得られないという課題がある。また、特許文献2の硬質皮膜は、そのCrN皮膜上にTiN皮膜を被覆したとしても、CrN皮膜中に一旦形成された欠陥はそのまま覆い隠すことが難しい。
そこで、特許文献1や2の硬質皮膜に対しては、その表面に特許文献3のイオンエッチングを導入することが考えられる。しかし、イオンエッチングによっても、耐食性の向上に効果を発揮する程のドロップレット等の除去することは必ずしも容易ではない。そして、特許文献4のサンドブラストを適用すれば、これは皮膜表面に粒子を吹付けるという、専ら研削作用によった粗加工方法であることから、耐食性の向上にとって好ましい平滑な表面が得られ難い。
本発明の目的は上記の課題に鑑み、硬質皮膜の耐食性を向上した被覆物品の製造方法および被覆物品を提供することである。
本発明者は、皮膜の中間に平滑な界面を形成してドロップレット等の不純物の影響を遮断することが、耐食性の向上に重要であることを知見し、ドロップレット等の除去後の皮膜表面には耐食性の向上に好ましい形態があることも突きとめた。そして、皮膜への負荷が大きい使用環境下でも十分な耐食性を保つためには、基材と皮膜の密着性がより重要となり、被覆前の基材表面を窒化処理することが有効であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、物品の基材表面にPVDによって硬質皮膜を被覆した被覆物品の製造方法であって、前記硬質皮膜は、前記基材表面に被覆された第1の硬質皮膜と、その直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、前記基材表面は窒化処理されており、前記第2の硬質皮膜を被覆する前に、前記第1の硬質皮膜の表面を算術平均粗さRaは0.05μm以下、かつ最大高さRzは1.00μm以下となるように研磨することを特徴とする耐食性に優れた被覆物品の製造方法である。
第1および/または第2の硬質皮膜は、クロム系窒化物であることが好ましい。そして更には、これらの硬質皮膜は、Mo、Nb、W、Si、Bから選択される1種または2種以上の元素を含むクロム系窒化物であることが好ましい。
第1および/または第2の硬質皮膜は、成分組成が(Cr1−a)Nで示されるクロム系窒化物であって(但し、下付き数字はCrと元素Xの原子比を表す)、XはSi、Bから選択される1種または2種の元素であり、aは0.01〜0.10であることが好ましい。
また、物理蒸着法はアークイオンプレーティング法であることが望ましく、これらによる被覆物品は、射出成形用部品または金型であることが好ましい。
また、本発明の被覆物品は、上述した本発明の製造方法で得られるものであり、物品の基材表面に物理蒸着法によって硬質皮膜を被覆した被覆物品であって、前記基材表面は窒化層を有し、前記硬質皮膜は、前記窒化処理された基材表面に被覆された後に研磨された第1の硬質皮膜と、前記第1の硬質皮膜の直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、かつ前記第1の硬質皮膜と前記第2の硬質皮膜の界面をまたぐ長径1μm以上のドロップレットが断面組織観察における界面長さ50μmあたり2個未満(0を含む)である耐食性に優れた被覆物品である。
第1および/または第2の硬質皮膜は、クロム系窒化物であることが好ましい。そして更には、これらの硬質皮膜は、Mo、Nb、W、Si、Bから選択される1種または2種以上の元素を含むクロム系窒化物であることが好ましい。また、第1および/または第2の硬質皮膜は、成分組成が(Cr1−a)Nで示されるクロム系窒化物であって(但し、下付き数字はCrと元素Xの原子比を表す)、XはSi、Bから選択される1種または2種の元素であり、aは0.01〜0.10であることが好ましい。
また、第2の硬質皮膜の表面が研磨されていることが好ましい。また、物理蒸着法はアークイオンプレーティング法であることが望ましく、本発明の被覆物品は、射出成形用部品または金型であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、その硬質皮膜を被覆途中の第1の硬質皮膜の表面を最適に研磨することで、第2皮膜を被覆後には基材に向けて貫通する欠陥が非常に少なく調整できた被覆物品となる。また、皮膜の密着性も優れるため、負荷が大きな使用環境下でも優れた耐食性を発揮させることができる。よって本発明は、腐食環境に曝される射出成形用部品、工具、金型の製造に有用である。
試料No.1〜4の腐食試験後の顕微鏡による表面観察写真を示す。 試料No.5〜8の腐食試験後の顕微鏡による表面観察写真を示す。 試料No.9〜13の腐食試験後の顕微鏡による表面観察写真を示す。
本発明者は、皮膜の腐食を抑制する手法を鋭意研究する中で、第1硬質皮膜上のドロップレットやパーティクル等を起点にする凹凸から、局所的な腐食が引き起こされること突き止めた。そして、硬質皮膜を第1の硬質皮膜と第2の硬質皮膜に別けて複層被覆することに加えて、その、第1の硬質皮膜を被覆した後にそのまま続けて第2の硬質皮膜を被覆するのではなく、まず、第1の硬質皮膜を研磨して平滑化し、その上に第2の硬質皮膜を被覆することで皮膜全体の耐食性を大幅に改善出来ることを見出し、更には耐食性に優れる皮膜構造をも見出した。そして、被覆前には基材表面を窒化処理することで、皮膜への負荷が大きな使用環境下でも皮膜の密着強度が十分に保たれ、優れた耐食性を持続的に発揮できることを見出した。以下、その詳細を説明する。
本発明の製造方法において、第1の硬質皮膜上を研磨するのは、ドロップレットやパーティクル等を除去して、平滑な表面状態にするためである。これによって、第2の硬質皮膜の被覆時には、第1の硬質皮膜表面の微細な凹凸を埋めるように被覆され、皮膜全体の耐食性を大幅に改善できる。
本発明の製造方法で被覆される第1の硬質皮膜の表面は、具体的にはJIS−B−0602−2001に定められる表面粗さにおける算術平均粗さRaは0.05μm以下とし、かつ最大高さRzは1.00μm以下に研磨することで耐食性を向上させる。より好ましくは、Rzは0.5μm以下に研磨する。
第1の硬質皮膜の表面をこの好ましい表面粗さにするには、イオンエッチングやサンドブラスト(ショットブラスト)等の研削作用によるものでは、皮膜表面の平滑化が不十分であり、皮膜の耐食性に劣る場合がある。そこで、ドロップレットやパーティクル等を確実に除去し、且つ、平滑な表面状態にするためには、次のような研磨方法を採用することが好ましい。
(1)機械部品の仕上げを行う場合に部品表面が正しい均一面を持つように精密に仕上げていく研磨手段であって、例えば定盤を使用して、その硬質皮膜との間にラップ剤を挟み、硬質皮膜を摺動させて研磨する方法
(2)ダイヤモンドペースト等の研磨剤を保持した研磨布で硬質皮膜の表面を磨く方法
(3)ダイヤモンド粒子と湿度を持った研磨剤を用い、基材に被覆された皮膜に高速に滑走させて、発生する摩擦力によって磨く、いわゆるエアロラップ(エアロラップは株式会社ヤマシタワークス殿の登録商標である)等による研磨方法
(4)エアーを使用せずに弾性と粘着性を持った研磨剤を噴射することで磨く、いわゆるスマップ(SMAP)(合資会社亀井鉄工所製の鏡面ショットマシンである)等による研磨方法
更に、これらの処理後には3μm以下のダイヤモンドペースト磨きをすることで、より好ましい平滑化が実現できる。
また、耐食性を向上させるために、第2の硬質皮膜の表面上も同様の研磨方法で平滑化し、Raは0.05μm以下とし、かつ最大高さRzは1.00μm以下にすることが好ましい。
硬質皮膜の被覆前には基材表面を窒化処理することで、基材と硬質皮膜の密着性が高まるため皮膜剥離が発生せず、負荷が大きな使用環境下でも、耐食性が極めて優れたものとなる。
窒化処理は、窒化層の深さが200μm以下になるように、処理時間と温度を制御することが好ましい。これよりも窒化層が厚くなると、基材自体の耐食性が著しく低下するので、好ましくない。より好ましくは150μm以下である。
本発明の硬質皮膜の総膜厚は、1μm〜10μmとすることが好ましい。これよりも、薄くなると耐食性が十分でない場合がある。これよりも厚くなると、皮膜剥離が発生し易く、耐食性が低下し易い。より好ましくは2μm以上および/または8μm以下である。また、第1硬質皮膜と第2硬質皮膜は同程度であることが好ましい。
上記製造方法により、物品の基材表面にPVDによって硬質皮膜を被覆した被覆物品であって、基材表面は窒化層を有し、前記硬質皮膜は、前記窒化層を有した基材表面に被覆された第1の硬質皮膜と、研磨された前記第1の硬質皮膜の直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、
かつ前記第1の硬質皮膜と前記第2の硬質皮膜の界面をまたぐ長径1μm以上のドロップレットが断面組織観察における界面長さ50μmあたり1個以下(0を含む)である耐食性に優れた本発明の被覆物品を得ることができる。
粗大なドロップレットが存在すると、その上面に堆積する皮膜との間に空隙等の内部欠陥が形成される。この欠陥を通して腐食が進行する。従い硬質皮膜の形成工程の中間で研磨処理を行い平滑化することは、硬質皮膜の深さ方向の内部欠陥の連通を遮断するのに有効である。
本発明では、平滑化された界面を第1の硬質皮膜と第2の硬質皮膜の界面をまたぐ長径1μm以上のドロップレットが断面組織観察における界面長さ50μmあたりの平均個数が1個以下(0を含む)として規定した。これは長径1μm未満のドロップレットおよび長径1μm以上であっても50μmあたり2個未満の存在は耐食性に大きな影響はないためである。
第1および/または第2の硬質皮膜の表面粗さを平滑に調整するには、その被覆前の基材の表面粗さを、表面粗さは平均粗さRa0.50μm以下、Rzは1.00μm以下に研磨しておくことが好ましい。
本発明の製造方法で被覆される、第1および/または第2硬質皮膜は、皮膜自体が耐食性に優れるクロム系窒化物であることが好ましい。なお、本発明においてクロム系窒化物とは、耐食性の優れるクロム量が、その金属(半金属を含む)部分において50原子%以上あるものをいう。より好ましくは70原子%以上である。
また、該第1および/または第2の硬質皮膜は、Mo、Nb、W、Si、Bから選択される1種または2種以上の元素を含むクロム系窒化物であることが好ましい。Mo、Nb、Wが皮膜中へ添加されることで、硬度が向上し耐摩耗性が向上する。そして、Si、Bが皮膜中に添加されることで、皮膜が微細になり高硬度になる。好ましい皮膜硬度は20GPa以上である。そして皮膜が微細化されることで、より耐食性が向上する。
硬質皮膜に高い硬度をも付与することで、耐摩耗性の向上に加えては、摩耗腐食も抑制できるので、例えば被成形材にガラス繊維等の強化物質が添加された場合であっても、摩耗に起因する被覆物品の腐食防止に著しい効果を発揮する。
これらの効果を発揮しクロム系窒化物自体の靭性と密着性を低下させないためには、成分組成が(Cr1−a)Nで示されるクロム系窒化物であって(但し、下付き数字はCrと元素Xの原子比を表す)、XはSi、Bから選択される1種または2種の元素であり、aは0.01〜0.10であることが好ましい。
本発明の製造方法で用いる被覆手段は、その被覆する硬質皮膜が皮膜密着性の高い物理蒸着法であることが必要である。例えばスパッタリング法やアークイオンプレーティング法があるが、その中でも特に皮膜密着性が高いアークイオンプレーティング法が好ましい。
耐食性の優れる本発明の被覆物品は、プラスチックやゴムの成形に用いられる射出成型用部品や金型への適用が特に有効である。
硬質皮膜の被覆手段には、アークイオンプレーティング装置を用いた。成膜チャンバー中には、各種のターゲット(カソード)を装着する複数のアーク放電式蒸発源と、基材を搭載するための基材ホルダーを有する。基材ホルダーの下には回転機構があり、基材は基材ホルダーを介して、自転かつ公転する。そして、基材が各種のターゲットに対峙したときに、該ターゲットによる皮膜が被覆される。なお、本実施例で使用したターゲットは、粉末冶金法で作製した金属ターゲットである。
蒸発源には、硬質皮膜の金属成分を構成するターゲットと、金属イオンエッチング用のターゲットを適宜装着した。基材には57〜60HRCに調質したJIS−SKD11相当鋼材を用いた。試料No.1〜8、11の基材は、窒素雰囲気で処理時間と温度を変えて窒化処理をした。
基材に第1皮膜被覆する前の表面粗さは平均粗さRa0.01μm、Rzは0.07μmに研磨した。これを脱脂洗浄して、基材ホルダーに固定した。そして、チャンバーに設置された加熱用ヒーターにより、基材を500℃付近に加熱し、50分間保持した。次に、Arガスを導入し、基材には−600Vのバイアス電圧を印加して、30分間のプラズマクリーニング処理(Arイオンエッチング)を行った。続いて、基材には−800Vのバイアス電圧を印加して、約20分間のTi金属イオンエッチングを行った。
各試料、基材に−150Vのバイアス電圧を印加して、基材温度500℃、反応ガス圧力3.0Paの条件で、硬質皮膜を成膜した。
本発明例である試料No.1〜8は、第1の硬質皮膜としてCrNを約3μm被覆後には、基材をチャンバーから取り出して、その途中表面を研磨する手段として、株式会社ヤマシタワークス製エアロラップ装置(AERO LAP YT‐300)使用)を使用して表面処理を行った。その後、1μmのダイヤモンドペーストにてポリッシング研磨し、更に続いては、合資会社亀井鉄工所製鏡面ショットマシンSMAP-II型を使用して表面処理を行った。そして、脱脂洗浄を行った後には、再びチャンバー内に戻して、ArイオンエッチングおよびTi金属イオンエッチングを行い、第2の硬質皮膜を被覆した。
試料No.1〜4は、第2の硬質皮膜として、(92%Cr3%Si5%B)Nを約3μm被覆した(数値は原子比)。
試料No.5〜8は、第2の硬質皮膜として、CrNを約3μm被覆した。
試料No.9は、CrNを約3μm被覆後、研磨せずにそのままTiNを約3μm被覆した。
試料No.10〜13は、研磨せずに、単層の皮膜を約6μm被覆した。
そして、各試料の最表面をダイヤモンドペーストで磨いた。
そして、これらの試料について、その第1および第2の硬質皮膜の表面粗さ測定、硬度測定、スクラッチ試験、耐食性の評価を行った。各評価試験方法を以下に示す。
(表面粗さ測定)
JIS−B−0602−2001に従って、粗さ曲線より算術平均粗さRaと最大高さRzを測定した。測定条件は、評価長さ:4.0mm、測定速度:0.3mm/s、カットオフ値:0.8mmとした。
(耐食性評価試験)
実際の射出成形中に発生するハロゲンガス、硫化ガスなどの腐食ガスを模擬して、試料を10%硫酸水溶液中に10時間浸漬する試験を実施した。前記水溶液の温度は50℃とし、JIS−G−0591−2007に従って、試験片の被覆された面以外はマスキングした。そして、浸漬後には、その腐食による減量を記録するとともに、表面に現れる孔食(ピット)の観察を行った。試験面に対する腐食の面積率は、顕微鏡写真(倍率:8倍)にて評価した。
孔食数の評価は、その顕微鏡写真に現れる孔食(ピット)のうち、0.8mm以上のものをAクラス、0.2〜0.8mm未満のものをBクラスとして、それぞれのサイズの孔食数を測定した。顕微鏡写真から腐食面の面積率を求めた。孔食評価結果を表1に示す。
(硬度測定)
エリオニクス製のナノインデンテーション装置を用い、硬質皮膜の硬度を測定した。皮膜の硬度を測定するために、試験片を5度傾けて鏡面研磨した。基材の影響を除去するために皮膜の研磨面内で最大押し込み深さが各層厚の略1/10以下となる領域を選定した。このとき1/5程度でも基材の影響がないことを確認した。
押込み荷重49mN、最大荷重保持時間1秒、荷重負荷後の除去速度0.49mN/秒の測定条件で10点測定し、最大と最小の値を除いた8点の平均値から求めた。
本測定方法における皮膜硬度は、圧子の微細形状、測定時の温度、湿度、試料の表面状態に左右され易く、得られる数値は必ずしもビッカース硬さと一致しない。そのため、標準試料である溶融石英を測定した。そのときの溶融石英の皮膜硬さは11GPaであり、本測定結果をもとに相対比較することができる。測定結果を表1に示す。
(スクラッチ試験)
皮膜の密着性を評価するために、CSM社製スクラッチ試験機(REVETEST)を用いて剥離荷重を測定した。
測定条件は、測定荷重:40〜200N、荷重スピード:99.25N/min、スクラッチスピード:10mm/min、スクラッチ距離:16mm、AE感度:5、圧子:ロックウェル、ダイヤモンド、先端半径:200μm、ハードウェア設定:Fnコンタクト0.9N、Fnスピード:5N/s、Fn除去スピード :10N/s、アプローチスピード:2%/sとした。
皮膜の剥離荷重は、最表層の初期チッピング発生荷重をA荷重とし、スクラッチ痕底部の膜が基材から全て剥がれた時(スクラッチ痕底部の基材が完全に露出した時)の荷重をB荷重とした。測定結果を表1に示す。
耐食性評価試験後の皮膜表面については、図1〜3に示す(図中において、球状に確認される薄色部が孔食である)。
表1より、本発明の製造方法を満たした硬質皮膜は、密着性および耐食性に優れていることが分かる。途中で平滑研磨していない従来例は本発明例と比べて耐食性が低下した。本発明例の耐食性評価試験後の皮膜表面は、図1、2の通り、孔食が確認されなかった。
本発明例の試料について、耐食性向上の要因を探るため複数視野の断面観察を行った。
また、本発明例のすべての試料では、1μm以上のドロップレットは界面長さ50μmあたり1個以下であった。また、本発明例では界面に存在するドロップレット自体が、除去されるか、研磨されて界面をまたぐことのない平滑面を構成していることが確認された。
本発明例では、このような粗大なドロップレットの影響を研磨処理により排除できており、これにより耐食性が向上していることがわかる。
本発明は、プラスチックやゴムを成形する金型や工具、射出成形用部品の他には、例えば皮膜成分等を調整して、被成形材との離型性をも付与することで、MIM(メタルインジェクションモールディング)用金型や、そして各種の機械部品にも適用し得る。

Claims (14)

  1. 物品の基材表面に物理蒸着法によって硬質皮膜を被覆した被覆物品の製造方法であって、前記硬質皮膜は、前記基材表面に被覆された第1の硬質皮膜と、その直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、
    前記基材表面は窒化処理されており、前記第2の硬質皮膜を被覆する前に、前記第1の硬質皮膜の表面を算術平均粗さRaは0.05μm以下、かつ最大高さRzは1.00μm以下となるように研磨することを特徴とする耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  2. 第1および/または第2の硬質皮膜は、クロム系窒化物であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  3. 第1および/または第2の硬質皮膜は、Mo、Nb、W、Si、Bから選択される1種または2種以上の元素を含むクロム系窒化物であることを特徴とする請求項2に記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  4. 第1および/または第2の硬質皮膜は、成分組成が(Cr1−a)Nで示されるクロム系窒化物であって(但し、下付き数字はCrと元素Xの原子比を表す)、XはSi、Bから選択される1種または2種の元素であり、aは0.01〜0.10であることを特徴とする請求項3に記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  5. 第2の硬質皮膜を被覆後に、その表面を研磨することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  6. 物理蒸着法は、アークイオンプレーティング法であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  7. 被覆物品は、射出成形用部品または金型であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品の製造方法。
  8. 物品の基材表面に物理蒸着法によって硬質皮膜を被覆した被覆物品であって、前記基材表面は窒化層を有し、前記硬質皮膜は、前記窒化層を有した基材表面に被覆された後に表面を研磨した第1の硬質皮膜と、前記第1の硬質皮膜の直上に被覆された第2の硬質皮膜の少なくとも2層以上からなり、かつ前記第1の硬質皮膜と前記第2の硬質皮膜の界面をまたぐ長径1μm以上のドロップレットが断面組織観察における界面長さ50μmあたり2個未満(0を含む)であることを特徴とする耐食性に優れた被覆物品。
  9. 第1および/または第2の硬質皮膜は、クロム系窒化物であることを特徴とする請求項8に記載の耐食性に優れた被覆物品。
  10. 第1および/または第2の硬質皮膜は、Mo、Nb、W、Si、Bから選択される1種または2種以上の元素を含むクロム系窒化物であることを特徴とする請求項9に記載の耐食性に優れた被覆物品。
  11. 第1および/または第2の硬質皮膜は、成分組成が(Cr1−a)Nで示されるクロム系窒化物であって(但し、下付き数字はCrと元素Xの原子比を表す)、XはSi、Bから選択される1種または2種の元素であり、aは0.01〜0.10であることを特徴とする請求項10に記載の耐食性に優れた被覆物品。
  12. 第2の硬質皮膜は、その表面が研磨されていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品。
  13. 物理蒸着法は、アークイオンプレーティング法であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品。
  14. 被覆物品は、射出成形用部品または金型であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれかに記載の耐食性に優れた被覆物品。
JP2011216268A 2011-09-30 2011-09-30 耐食性に優れた被覆物品の製造方法および被覆物品 Pending JP2013076124A (ja)

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