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JP2013041933A - 量子カスケード検出器 - Google Patents

量子カスケード検出器 Download PDF

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和上 藤田
Tadataka Edamura
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Abstract

【課題】 入射光に対する光検出感度が向上された量子カスケード検出器を提供する。
【解決手段】 半導体基板と、吸収井戸層を含むn個の井戸層、及びn個の障壁層からなる単位積層体16が多段に積層された活性層15とを備えて量子カスケード検出器を構成する。単位積層体16は、そのサブバンド準位構造において、検出下準位L1a、検出上準位L1bと、第2準位L〜第n準位Lとを有し、検出下準位、上準位の間でのサブバンド間吸収によって光を検出するとともに、上準位に励起された電子は共鳴トンネル効果によって第2準位に移動し、第2〜第n準位を含む抽出準位構造を介して後段の単位積層体へと抽出される。また、第2、第3準位のエネルギー間隔をELO≦ΔE23≦2×ELOに設定し、第3、第4準位のエネルギー間隔をΔE34<ELOに設定する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、量子井戸構造でのサブバンド間の光吸収を利用した量子カスケード検出器に関するものである。
中赤外の波長域における光検出器としては、通常、HgCdTe(MCT)検出器が用いられている。しかしながら、このMCT検出器は、毒性の環境汚染物質を含んでいることなどの問題があり、一般的に広く用いることは難しい。このため、このような波長域における新たな光検出器が求められている。
近年、そのような光検出器として、GaAs/AlGaAs量子カスケード構造を用いた量子カスケード検出器(QCD:Quantum Cascade Detector)が報告されている(特許文献1、非特許文献1)。量子カスケード検出器は、そのカスケード構造において光を吸収し、光吸収で生じたキャリアによって流れる電流量を計測することで、入射光を検出する光検出器であり、無バイアスで動作可能という特徴を有している。また、量子カスケード検出器では、量子カスケードレーザと同様に、光を吸収する吸収井戸層を含む半導体積層構造を多段にカスケード結合することによって、より効率的に光を吸収、検出することが可能である(特許文献1〜5、非特許文献1〜5参照)。
米国特許第5165065号公報 米国特許第6326639号公報 米国特許出願公開第2007/0224721号公報 米国特許出願公開第2010/0195686号公報 国際公開第03/010829号公報
L. Gendron et al.,"Quantum cascade photodetector", Appl. Phys. Lett. Vol.85 (2004)pp.2824-2826 M. Graf et al.,"InP-based quantum cascade detectors in the mid-infrared", Appl. Phys.Lett. Vol.88 (2006) pp.241118-1-241118-3 F. R. Giorgetta et al.,"InGaAs/AlAsSb quantum cascade detectors operating in the nearinfrared", Appl. Phys. Lett. Vol.91 (2007) pp.111115-1-111115-3 D. Hofstetter et al.,"Quantum-cascade-laser structures as photodetectors", Appl. Phys.Lett. Vol.81 (2002) pp.2683-2685 F. R. Giorgetta et al.,"Quantum Cascade Detectors", IEEE Journal of Quantum ElectronicsVol.45 (2009) pp.1039-1052
量子カスケード検出器では、上記したGaAs/AlGaAs量子カスケード構造を用いたもの以外にも、他の材料系、例えばInGaAs/InAlAs(非特許文献2)、InGaAs/AlAsSb(非特許文献3)を用いて、様々な波長帯での光検出動作が報告されている。しかしながら、その光検出感度は、従来の光検出器に比べて低いレベルに留まっている。
この低い感度の原因としては、現状の量子カスケード検出器では、キャリア輸送がまだ非効率的な状態になっていることが考えられる。実際、検出器の形態が提案されていない2002年の段階で、量子カスケードレーザを検出器として用いた例が報告されているが(非特許文献4)、このときの感度はμA/Wレベルと非常に低い値であった。
その後、量子カスケード検出器の開発において、電子輸送が機能するように準位を設定することによって、その感度は大幅に向上している。しかしながら、これらの検出器においても、電流経路が確保されるように構成されてはいるものの、その定量的な設計は充分には行われていない。したがって、例えば、吸収井戸層の基底準位(検出下準位)から光吸収によって上位励起準位(検出上準位)に励起された電子が、電流として取り出されずに再び基底準位に緩和してしまうなど、充分な光検出感度は実現されていない。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、入射光に対する光検出感度が向上された量子カスケード検出器を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明による量子カスケード検出器は、(1)半導体基板と、(2)半導体基板上に設けられ、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むn個(nは4以上の整数)の量子井戸層、及びn個の量子障壁層からなる単位積層体が多段に積層されたカスケード構造が形成された活性層とを備え、(3)単位積層体は、そのサブバンド準位構造において、吸収井戸層に起因する検出下準位、検出上準位と、吸収井戸層を除く第2井戸層〜第n井戸層に起因する第2準位〜第n準位とを有し、(4)吸収井戸層における検出下準位と検出上準位との間でのサブバンド間吸収によって光を検出するとともに、サブバンド間吸収によって検出上準位へと励起された電子は、共鳴トンネル効果によって第2準位へと移動し、第2準位〜第n準位による抽出準位構造を介して、後段の単位積層体の吸収井戸層へと抽出され、(5)第2準位と第3準位とのエネルギー間隔ΔE23は、縦光学(LO:Longitudinal Optical)フォノンのエネルギーELOに対して、条件ELO≦ΔE23≦2×ELOを満たすように設定されるとともに、第3準位と第4準位とのエネルギー間隔ΔE34は、条件ΔE34<ELOを満たすように設定されることを特徴とする。
上記した量子カスケード検出器では、活性層において、第1井戸層〜第n井戸層、及び第1障壁層〜第n障壁層が交互に積層されて構成される単位積層体によるカスケード構造を用いている。そして、単位積層体でのサブバンド準位構造について、第1井戸層(吸収井戸層)において、光吸収によるサブバンド間の電子励起に関わる検出下準位、検出上準位を設け、また、第2井戸層〜第n井戸層を含む抽出構造部において、電子の輸送、抽出に関わる第2準位〜第n準位による抽出準位構造を設けている。このような準位構造によれば、サブバンド間の光吸収、及び光吸収で生じた電流を取り出すことによる光検出動作を好適に実現することができる。
また、上記構成では、光吸収によって検出上準位へと励起された電子を、共鳴トンネル効果によって第2準位へと移動、緩和させるとともに、第2準位〜第n準位による抽出準位構造において、第2準位と第3準位とのエネルギー間隔を、条件
LO≦ΔE23≦2×ELO
を満たすように設定している。このような構成では、共鳴トンネル効果によって検出上準位から第2準位へと移動した電子は、LOフォノン散乱を介して第2準位から高速で引き抜かれることとなる。これにより、光吸収によって検出上準位に励起された電子が、再び検出下準位へと緩和してしまうことを抑制することができる。
さらに、上記構成では、第3準位と第4準位とのエネルギー間隔を、条件
ΔE34<ELO
を満たすように設定している。このように、第3、第4準位のエネルギー間隔をLOフォノンのエネルギーよりも小さく設定する構成によれば、第3、第4準位を含む複数の準位を、LOフォノン散乱による第2準位からの電子の引き抜き先の準位として機能させることができ、電子の輸送を安定化、高速化することができる。
また、このように電子の引き抜き先を複数の準位とする構成では、電子の引き抜き構造の設計が容易化されるとともに、検出器の製造時における特性の安定化、及び歩留まりの向上を実現することが可能となる。以上により、入射光に対する光検出感度が向上された量子カスケード検出器を好適に実現することができる。なお、上記のような単位積層体でのサブバンド準位構造は、単位積層体での量子井戸構造の設計によって、設計、制御することが可能である。
ここで、上記した量子カスケード検出器でのサブバンド準位構造において、第2準位と第4準位とのエネルギー間隔ΔE24は、条件
ΔE23<ΔE24≦2×ELO
を満たすように設定されることが好ましい。これにより、第2準位から第3、第4準位の2準位へのLOフォノン散乱等による電子の引き抜きを好適に実現して、抽出準位構造における後段の単位積層体への電子の輸送を安定化、高速化することができる。
また、第2準位からの電子の引き抜き先の準位として機能する第3準位と第4準位とのエネルギー間隔ΔE34は、さらに、条件
ΔE34≦25meV
を満たすように設定されることが好ましい。これにより、第2準位からの電子の引き抜きをさらに高速化、安定化して、抽出準位構造における後段の単位積層体への電子の輸送を好適に実現することができる。
また、吸収井戸層に起因する検出上準位と、第2井戸層に起因する第2準位とは、準位間の反交差のエネルギーギャップ(アンチクロッシングギャップ)ΔEACが、条件
5meV≦ΔEAC≦30meV
を満たすように設定されることが好ましい。これにより、検出上準位から第2準位へと、共鳴トンネル効果によって高速、高効率で電子を移動させることができる。
また、単位積層体において、吸収井戸層は、n型不純物がドープされた半導体層からなることが好ましい。これにより、吸収井戸層における検出下準位、上準位間でのサブバンド間吸収による光検出を好適に実現することができる。また、電子の抽出構造を構成する他の井戸層については、単位積層体において、第2井戸層〜第n井戸層は、それぞれアンドープの半導体層からなることが好ましい。
本発明の量子カスケード検出器によれば、活性層を構成する単位積層体でのサブバンド準位構造について、吸収井戸層において、検出下準位、上準位を設け、第2〜第n井戸層を含む抽出構造部において、第2〜第n準位による抽出準位構造を設けるとともに、検出上準位へと励起された電子を、共鳴トンネル効果によって第2準位へと移動させ、また、第2準位と第3準位とのエネルギー間隔をELO≦ΔE23≦2×ELOとして設定し、第3準位と第4準位とのエネルギー間隔をΔE34<ELOとして設定することにより、入射光に対する光検出感度を向上することが可能となる。
量子カスケード検出器の基本構成の一例を示す図である。 量子カスケード検出器の活性層におけるサブバンド準位構造について示す図である。 検出上準位と第2準位との準位間でのアンチクロッシングギャップについて示すグラフである。 活性層を構成する単位積層体の構成の一例を示す図である。 活性層における1周期分の単位積層体の構造の一例を示す図表である。 検出上準位から第2準位への電子のトンネル時間のアンチクロッシングギャップ依存性を示すグラフである。 量子カスケード検出器で得られる光吸収スペクトルを示すグラフである。 第2準位から第3準位へのLOフォノン散乱による散乱時間のエネルギー間隔依存性を示すグラフである。
以下、図面とともに本発明による量子カスケード検出器の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明による量子カスケード検出器の基本構成について、その一例を模式的に示す図である。本実施形態の量子カスケード検出器1Aは、半導体量子井戸構造におけるサブバンド間の電子励起による光吸収を利用して光を検出する光検出器である。この量子カスケード検出器1Aは、半導体基板10と、半導体基板10上に形成された活性層15とを備えて構成されている。
活性層15は、入射光の吸収に用いられる吸収井戸層を含む半導体積層体が多段に積層されたカスケード構造を有する。具体的には、nを4以上の整数として、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むn個の量子井戸層、及びn個の量子障壁層からなる半導体積層構造を1周期分の単位積層体16とし、この単位積層体16を多段に積層することで、カスケード構造を有する活性層15が構成されている。
活性層15における単位積層体16の積層数は、検出器1Aにおいて必要とされる光検出特性などに応じて適宜設定される。また、活性層15は、半導体基板10上に直接に、あるいは他の半導体層を介して形成される。図1に示した構成例では、半導体基板10上に、基板側から順に、下部コンタクト層11、単位積層体16が多段に積層された活性層15、及び上部コンタクト層12が順次積層されることで、量子カスケード検出器1Aの素子構造が形成されている。
図2は、図1に示した量子カスケード検出器1Aの活性層におけるサブバンド準位構造について示す図である。図2に示すように、活性層15に含まれる複数の単位積層体16のそれぞれは、前段の単位積層体16a側から順に、第1障壁層171と、第1井戸層である吸収井戸層161と、抽出構造部18とによって構成されている。また、抽出構造部18は、第2障壁層〜第n障壁層及び第2井戸層〜第n井戸層が交互に積層されることで構成されている。このような構成により、単位積層体16中においては、量子井戸構造によるエネルギー準位構造であるサブバンド準位構造が形成される。
本実施形態における単位積層体16は、そのサブバンド準位構造において、吸収井戸層161に起因する検出下準位L1a、検出上準位L1bと、吸収井戸層を除く抽出構造部18の各井戸層に起因する第2準位L、第3準位L、第4準位L、…、第n準位Lとを有している。第2準位L〜第n準位Lは、例えば、第2井戸層〜第n井戸層に起因し、量子力学的に結合した結果生成される準位である。これらのエネルギー準位のうち、検出下準位L1a、上準位L1bは、サブバンド間の電子励起による光吸収に関わる準位である。また、第2準位L〜第n準位Lは、光吸収で励起された電子の緩和、輸送、抽出に関わる抽出準位構造(緩和準位構造)を構成している。
ここで、検出下準位L1aは、例えば、吸収井戸層161における基底準位に対応する準位である。また、検出上準位L1bは、検出下準位L1aよりも高いエネルギー準位であって、例えば、吸収井戸層161における励起準位に対応する準位である。また、第2準位L〜第n準位Lは、例えば、それぞれ第2井戸層〜第n井戸層における基底準位に起因する準位である。なお、抽出準位構造を構成する第2準位L〜第n準位Lについては、通常は、吸収井戸層161側の第2準位Lから後段の単位積層体16b側の第n準位Lに向けて順次エネルギーが低くなるように設定される。ただし、これらの準位のエネルギー順序は、電子の輸送が可能であれば一部で入れ替わっても良い。
また、各サブバンド準位のエネルギー間隔については、検出上準位L1bと電子引き抜き用の第2準位Lとのエネルギー間隔ΔE12は、共鳴トンネル効果による電子の移動を考慮して、準位間の結合が充分に大きくなるように設定される。この準位間の結合の大きさは、後述するように、準位間の反交差(アンチクロッシング)のエネルギーギャップによって評価することができる。
第2準位Lと第3準位Lとのエネルギー間隔ΔE23は、縦光学フォノン(LOフォノン)のエネルギーELOに対して、ELO以上、2×ELO以下となる下記の条件
LO≦ΔE23≦2×ELO
を満たすように設定されている。また、第3準位Lと第4準位Lとのエネルギー間隔ΔE34は、ELOよりも小さい下記の条件
ΔE34<ELO
を満たすように設定されている。
ここで、LOフォノンのエネルギーELOは、例えば、量子井戸層の半導体材料としてInGaAsを想定した場合、ELO=34meVである。また、LOフォノンのエネルギーELOは、量子井戸層をGaAsとした場合に36meV、InAsとした場合に32meVであり、上記した34meVとほぼ同程度である。また、上記した準位間のエネルギー間隔ΔE23、ΔE34のELOに関する設定条件は、抽出準位構造における電子の輸送の高速化、高効率化を考慮したものである。
このようなサブバンド準位構造において、光が入射される以前には、ドーピングされた半導体層を用いることにより、吸収井戸層161の検出下準位L1aに電子が蓄積されている。検出対象の光hνが活性層15に入射すると、下準位L1aに存在する電子は、サブバンド間での光の吸収によって検出上準位L1bへと励起される。上準位1bに励起された電子は、共鳴トンネル効果によって第2準位Lへと高速で引き抜かれ、さらに、第2準位L〜第n準位Lによる抽出準位構造を介し、第2準位Lから第3、第4準位L、LへのLOフォノン散乱などの緩和過程を経て、後段の単位積層体16bの吸収井戸層の検出下準位L1aへと高速で輸送、抽出される。
このような光吸収による電子励起、励起された電子の緩和、輸送、及び次周期の単位積層体への電子の抽出を、活性層15を構成する複数の単位積層体16で繰り返すことにより、活性層15においてカスケード的な光吸収が起こる。そして、これによって発生する順方向の電流を取り出し、その電流量を計測することで、入射光hνが検出される。
本実施形態による量子カスケード検出器1Aの効果について説明する。
図1及び図2に示した量子カスケード検出器1Aでは、活性層15において、第1井戸層〜第n井戸層、及び第1障壁層〜第n障壁層が交互に積層されて構成される単位積層体16によるカスケード構造を用いている。そして、単位積層体16でのサブバンド準位構造について、吸収井戸層161において、光吸収によるサブバンド間の電子励起に関わる検出下準位L1a、検出上準位L1bを設け、抽出構造部18において、次周期の単位積層体16bへの電子の輸送、抽出に関わる第2準位L〜第n準位Lによる抽出準位構造を設けている。このような準位構造によれば、サブバンド間の光吸収、及び光吸収で生じた電流の取り出しによる光検出動作を好適に実現することができる。
また、上記構成では、井戸層161での光吸収によって検出上準位L1bへと励起された電子を、共鳴トンネル効果によって第2準位Lへと移動、緩和させることで、電子を高速で引き抜くとともに、第2準位L〜第n準位Lによる抽出準位構造において、第2準位Lと第3準位Lとのエネルギー間隔を、条件
LO≦ΔE23≦2×ELO
を満たすように設定している。このような構成では、共鳴トンネル効果によって検出上準位L1bから第2準位Lへと移動した電子は、LOフォノン散乱を介して第2準位Lから第3以降の準位へと高速で引き抜かれることとなる。これにより、上準位L1bに励起された電子が、後段の単位積層体16bへと輸送されずに再び下準位L1aに緩和してしまうことを抑制して、光検出動作の効率を向上することができる。
さらに、上記構成では、第3準位Lと第4準位Lとのエネルギー間隔を、条件
ΔE34<ELO
を満たすように設定している。このように、第3準位Lと第4準位Lとのエネルギー間隔をLOフォノンのエネルギーよりも小さく設定して、それらの準位を近接させる構成によれば、第3、第4準位L、Lを含む複数の準位を、LOフォノン散乱による第2準位Lからの電子の引き抜き先の準位として機能させることができる。これにより、抽出準位構造における電子の輸送を安定化、高速化することができる。
また、このように電子の引き抜き先を複数の準位とする構成では、電子の引き抜き構造の設計が容易化されるとともに、検出器の製造時における特性の安定化、結晶成長揺らぎへの自由度向上、及び歩留まりの向上等を実現することが可能となる。以上により、吸収井戸層161において光吸収によって励起されたキャリア電子を、効率的に順方向電流として機能させることで、入射光に対する光検出感度が向上された量子カスケード検出器を好適に実現することができる。なお、上記したような単位積層体16におけるサブバンド準位構造は、単位積層体16での量子井戸構造の設計によって、設計、制御することが可能である。
ここで、上記した量子カスケード検出器1Aでのサブバンド準位構造において、第2準位Lと第4準位Lとのエネルギー間隔ΔE24は、条件
ΔE23<ΔE24≦2×ELO
を満たすように設定されることが好ましい。このように、エネルギー間隔ΔE24の上限を、ΔE23と同様に2×ELOとすることにより、第2準位Lから第3、第4準位L、Lの2準位へのLOフォノン散乱等による電子の高速での引き抜きを好適に実現することができる。これにより、第2準位L〜第n準位Lの抽出準位構造における後段の単位積層体16bへの電子の輸送をさらに安定化、高速化することができる。
また、第2準位Lからの電子の引き抜き先の準位として機能するように近接して設定される第3準位Lと第4準位Lとのエネルギー間隔ΔE34は、さらに、条件
ΔE34≦25meV
を満たすように設定されることが好ましい。これにより、第2準位Lからの電子の引き抜きをさらに高速化、安定化して、抽出準位構造における後段の単位積層体16bへの電子の輸送を好適に実現することができる。
また、単位積層体16において、吸収井戸層161は、電子を供給するn型の不純物がドープされた半導体層からなることが好ましい。これにより、吸収井戸層161における検出下準位L1a、上準位L1b間でのサブバンド間吸収による光検出を好適に実現することができる。また、検出上準位L1bに励起された電子の抽出構造を構成する他の井戸層については、単位積層体16において、第2井戸層〜第n井戸層は、それぞれアンドープの半導体層からなることが好ましい。これにより、抽出準位構造が形成された抽出構造部18において、電子を好適に輸送することができる。
また、検出上準位L1bから第2準位Lへの共鳴トンネル効果による電子の引き抜きについては、吸収井戸層161に起因する検出上準位L1bと、第2井戸層に起因する第2準位Lとは、準位間での反交差のエネルギーギャップ(アンチクロッシングギャップ)ΔEACが、条件
5meV≦ΔEAC≦30meV
を満たすように設定されることが好ましい。これにより、検出上準位L1bから第2準位Lへと、共鳴トンネル効果によって、光吸収で励起された電子を高速、高効率で緩和、移動させることができる。
ここで、アンチクロッシングギャップは、対象とする2つの準位の結合の大きさを表すものであり、具体的には、2つの準位が電界の印加等により同じエネルギーに位置したときに形成される準位間隔によって定義される。図3は、後述する量子カスケード検出器の実施例における検出上準位L1bと第2準位Lとの準位間でのアンチクロッシングギャップΔEACについて示すグラフである。
図3のグラフ(a)は、下準位L1aと上準位L1bとのエネルギー差E1b−1a、及び下準位L1aと第2準位Lとのエネルギー差E2−1aを示している。このグラフ(a)において、横軸は電界強度(kV/cm)を示し、縦軸はエネルギー(eV)を示している。また、図3のグラフ(b)は、下準位L1aと上準位L1bとの準位間の双極子モーメントZ1b−1a、及び下準位L1aと第2準位Lとの準位間の双極子モーメントZ2−1aを示している。このグラフ(b)において、横軸は電界強度(kV/cm)を示し、縦軸は双極子モーメント(nm)を示している。なお、図3のグラフ(a)、グラフ(b)で、横軸の電界強度は共通である。また、これらの図3のグラフでは、後述する図4に示す具体的な構成例を想定している。
仮に、2つの準位間に相互作用がないときには、図3(a)のエネルギー分散図において破線によって示すように、エネルギーの分散曲線が交差する。一方、準位間に相互作用がある場合には、図3(a)に示すようにギャップが生じ、このエネルギーギャップが、アンチクロッシングギャップΔEACと呼ばれる。なお、アンチクロッシングギャップについては、エネルギー間隔の半値で表す場合等もあるが、ここでは、上記したようにエネルギー幅そのものをアンチクロッシングギャップとして定義している。
本発明による量子カスケード検出器の構成について、活性層での量子井戸構造を含む素子構造の具体例とともに説明する。ここでは、量子カスケード検出器における全体の層構造については、図1に示した構成を用いている。また、図4は、図1に示した量子カスケード検出器における活性層を構成する単位積層体の構成の一例を示す図である。
本構成例における活性層15の量子井戸構造では、吸収波長を5.43μm(吸収エネルギー:228meV)として設計された例を示している。図4においては、活性層15での吸収井戸層161を含む単位積層体16の多段の繰返し構造のうちの一部について、その量子井戸構造及びサブバンド準位構造を示している。また、図1、図4に示した素子構造は、例えば、分子線エピタキシー(MBE)法、または、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法による結晶成長で形成することができる。
本構成例による量子カスケード検出器1Aの半導体積層構造では、図1に示した構成において、半導体基板10として、n型InP単結晶基板を用いている。そして、このInP基板10上に、基板10側から順に、厚さ600nmのInGaAs下部コンタクト層11、単位積層体16が多段に積層された活性層15、及び厚さ200nmのInGaAs上部コンタクト層12が順次積層されることで、量子カスケード検出器1Aの素子構造が形成されている。
本構成例における活性層15は、吸収井戸層161を含む単位積層体16が30周期で積層されて構成されている。また、1周期分の単位積層体16は、図4に示すように、8個の量子井戸層161〜168、及び8個の量子障壁層171〜178が交互に積層された量子井戸構造として構成されている。
これらの単位積層体16の各半導体層のうち、量子井戸層は、それぞれInGaAs層によって構成されている。また、量子障壁層は、それぞれInAlAs層によって構成されている。これにより、活性層15は、InGaAs/InAlAs量子井戸構造によって構成されている。
また、このような単位積層体16において、最も前段の単位積層体側の第1障壁層171、及び第1井戸層である吸収井戸層161を除く第2〜第8障壁層172〜178、及び第2〜第8井戸層162〜168は、電子の輸送、抽出に用いられる抽出構造部18を構成している。また、光吸収に用いられる吸収井戸層161には、キャリアである電子を供給するために、n型不純物であるSiがドープされている。吸収井戸層161以外の井戸層162〜168は、いずれもアンドープ層である。図5に、活性層15における1周期分の単位積層体16の具体的な構造の一例を示す。
このような構成において、単位積層体16は、その図4に示すサブバンド準位構造において、吸収井戸層161に起因する検出下準位(detection lower level)L1a、検出上準位(detectionupper level)L1b、及び抽出構造部18の第2井戸層162〜第8井戸層168にそれぞれ起因する第2準位L〜第8準位Lを有している。また、第2〜第8準位L〜Lは、上準位L1bへと励起された電子を後段の単位積層体16bへと輸送する抽出準位構造(extraction level structure)を構成している。
このような構成において、光吸収によって励起されたキャリア電子が順方向に輸送されて電流として取り出されずに、検出上準位L1b及び第2準位Lから下準位L1aへと電子が再び緩和される緩和時間は、1.4ps程度である。これに対して、本構成例では、抽出準位構造に含まれる各準位L〜Lに関して上述したエネルギー間隔等の設定により、高速、高効率で順方向に電流を流して、高感度に検出器として動作させることが可能となっている。なお、単位積層体16を構成する量子井戸層、量子障壁層のそれぞれの層厚は、量子力学に基づいて設計されている。
図2及び図4に示した単位積層体16における量子井戸構造、及びそれによるサブバンド準位構造の具体的な構成条件について、具体的な数値、データを参照して説明する。まず、検出上準位L1bと、第2準位Lとの準位間での反交差(アンチクロッシング)ギャップΔEACについて説明する。
アンチクロッシングギャップは、上述したように2つの量子井戸層(2つの量子準位)間のカップリングの度合いを示すものであり、2つの井戸層161、162の間にある障壁層172の厚さを無限大としたときに0となり、障壁層172が薄くなると大きく(カップリングが強く)なる。
また、このアンチクロッシングギャップΔEACに対して、検出上準位L1bから第2準位Lへの共鳴トンネル効果による電子のトンネル時間τtunnは、
Figure 2013041933

によって表すことができる。ここで、
Figure 2013041933

である。
図6は、検出上準位から第2準位への電子のトンネル時間のアンチクロッシングギャップ依存性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は検出上準位L1b及び第2準位Lの準位間のアンチクロッシングギャップΔEAC(meV)を示し、縦軸はトンネル時間τtunn(sec)を示している。
これまでに報告されている量子カスケード検出器でのアンチクロッシングギャップは、例えば6meV程度であり、この場合のトンネル時間はτtunn=0.24ps程度と計算される。これは、上準位L1bから下準位L1aに緩和する緩和時間(例えば1.4ps程度)よりは速いと言えるが、第2準位Lからの電子の引き抜きのプロセス等と合わせた形で電流となるため、トンネル時間は可能な限り速くする必要がある。したがって、さらにアンチクロッシングギャップを大きくし、速いトンネル時間とすることで、光検出動作のために適した大きな電流を確保することが可能となる。
一方、アンチクロッシングギャップを必要以上に大きくした場合には、別の問題が発生する。すなわち、検出上準位L1bから電子を引き抜くための第2準位Lが、もう1つの上準位として機能するようになり、検出下準位L1aから2つの準位L1b、Lへの電子遷移が、吸収スペクトルとして区別できるような状態で起こる。この場合には、広帯域の光検出器としては動作するが、光吸収のピーク強度は、アンチクロッシングを適切に設定したものに比べて落ちることになる。
図7は、量子カスケード検出器で得られる光吸収スペクトルを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は吸収エネルギー(meV)を示し、縦軸は吸収強度(a.u.)を示している。また、図7において、グラフA1は、下準位L1aと上準位L1bとの間での吸収スペクトルを示し、グラフA2は、下準位L1aと第2準位Lとの間での吸収スペクトルを示し、グラフA0は、それらを合わせた吸収スペクトルを示している。また、この図7では、検出上準位L1bと、第2準位Lとのエネルギー間隔をΔE12=30meVとし、室温動作を仮定した場合の光吸収スペクトルを示している。
室温での光吸収スペクトルの半値幅が20meV程度であることを考慮すると、エネルギー間隔ΔE12が30meV程度以上になると、図7のようにスペクトルが割れる可能性がある。したがって、検出上準位L1bと、第2準位Lとの準位間のアンチクロッシングギャップについては、上述したように5meV〜30meVが適切な範囲である。図4に示した構成例では、高速なトンネル時間とピーク感度との兼ね合いから、図3(a)に示したように、アンチクロッシングをΔEAC=17meVに設定し、対応するトンネル時間を0.03psとしている。
次に、抽出準位構造における第2準位L、第3準位L、及び第4準位Lのそれぞれの準位エネルギー、及びエネルギー間隔の設定について説明する。
上記したアンチクロッシングの条件を用いて、吸収井戸層161の検出上準位L1bから第2井戸層162の第2準位Lへと電子を高速で移動させた場合も、即座に隣の井戸層の準位へと緩和させなければ、準位L、L1bからLOフォノン散乱等によって電子が下準位L1aへと戻ってしまい、結果として、順方向の電流に寄与しなくなる可能性がある。したがって、上述したように第2、第3準位L、Lのエネルギー間隔をELO≦ΔE23≦2×ELOとなるように設定し、好ましくはエネルギー間隔ΔE23をLOフォノンのエネルギーELOに一致させて、第2準位Lに移った電子を後続の準位へと速やかに緩和させる必要がある。
図8は、第2準位から第3準位へのLOフォノン散乱による散乱時間の、第2、第3準位のエネルギー間隔への依存性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は第2準位Lと第3準位Lとのエネルギー間隔ΔE23(meV)を示し、縦軸は第2準位Lから第3準位LへのLOフォノン散乱時間(sec)を示している。
図8のグラフに示すように、第2、第3準位L、Lのエネルギー間隔ΔE23については、上記したようにELO以上に設定することが好ましい。この場合、上準位L1bから引き抜かれて第2準位Lに存在する電子は、LOフォノン散乱によって共鳴的に第3準位Lに緩和することが可能となる。また、エネルギー間隔が広がっていくと、第2準位Lから第3準位Lへの電子の緩和速度が遅くなるため、エネルギー間隔はELOに近いことが望ましいが、2×ELO以下であれば、散乱時間(緩和時間)τ23は例えば1ps程度になり、充分な特性を得ることができる。図4に示した構成例では、エネルギー間隔をΔE23=37meVに設定し、散乱時間をτ23=0.55psとして、電子を高速で第3準位Lに緩和させている。
また、抽出準位構造での第3準位Lの次の準位である第4準位Lについては、上述したように、第3、第4準位L、Lのエネルギー間隔ΔE34をELOよりも小さく設定してそれらの準位を近接させることが好ましい。特に、エネルギー間隔ΔE34を25meV以下に設定することがさらに好ましい。これにより、電子を輸送する抽出準位構造において、第4準位Lを、第3準位Lとともに第2準位Lからの電子の引き抜き先の準位として好適に機能させることができる。
また、第2、第4準位L、Lのエネルギー間隔ΔE24(ΔE23<ΔE24)については、第2、第3準位L、Lの場合と同様に、図8に示した散乱時間のエネルギー間隔依存性等を考慮して、エネルギー間隔ΔE24を2×ELO以下とすることが好ましい。これにより、上記したエネルギー間隔ΔE23に対する条件と合わせて、第3、第4準位L、Lの2準位を、第2準位LからのLOフォノン散乱等による電子の引き抜き先の準位として好適に機能させることができる。
また、第3、第4準位L、Lのエネルギー間隔ΔE34の下限については、第3、第4準位L、Lの結合(アンチクロッシング)が最低限確保されるように、10meV以上に設定することが好ましい。これによって、第3、第4準位L、Lの準位間でのトンネル時間が、例えば0.1ps以下と高速になるため(図6参照)、第3準位Lから、より低エネルギー側の準位への電子の緩和が高効率化される。
また、このとき、第3、第4準位L、Lの波動関数は同一空間に広がるため、第4準位Lの波動関数と、第2準位Lの波動関数との重なりを大きくすることができ、第2準位Lから第4準位Lへの電子の散乱時間が高速化される。図4に示した構成例では、これらの各条件を考慮して、第2、第4準位L、Lのエネルギー間隔をΔE24=56meVに設定し、第3、第4準位L、Lのエネルギー間隔をΔE34=19meVに設定している。また、この構成例では、第2準位Lからの電子を高速で第3準位Lに緩和させるとともに、第4準位Lにも効率的に電子が緩和できるように第2、第4準位L、Lの波動関数の重なりを大きくすることにより、結果的に第3準位Lから図4の右方向の準位へ緩和時間0.34psで緩和できるように設計している。
なお、上記した量子カスケード検出器でのサブバンド準位構造は、レーザ動作を目指した準位構造ではないため、レーザとしては動作し得ない。これは、以下の点を考慮すると明らかである。まず、量子カスケード検出器では、無電圧時に全ての準位が効率的な電流経路として機能するように構成しているため、仮に電圧を印加した場合にはほとんど電流は流れない。また、上記の検出器では、レーザとして動作するための反転分布を形成する機構が設けられていない。
また、上記の検出器では、入射光を吸収する吸収井戸層161において、n型不純物のドーピングが施されている。この吸収井戸層は、レーザを含めた発光素子では発光井戸層に相当するが、例えば量子カスケードレーザでは、発光井戸層ではなく、電子を輸送する注入層に不純物をドープする。また、レーザにおいて、発光井戸層に不純物をドープした場合、光が吸収されてしまうため、レーザ動作をすることができない。
本発明による量子カスケード検出器は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記した構成例では、半導体基板としてInP基板を用い、活性層をInGaAs/InAlAsによって構成した例を示したが、量子井戸構造でのサブバンド間遷移による光吸収、検出が可能であって上記したサブバンド準位構造を実現可能なものであれば、具体的には様々な構成を用いて良い。
このような半導体材料系については、上記したInGaAs/InAlAs以外にも、例えばGaAs/AlGaAs、InAs/AlSb、GaN/AlGaN、SiGe/Siなど、様々な材料系を用いることが可能である。また、半導体の結晶成長方法についても、様々な方法を用いて良い。
また、量子カスケード検出器の活性層における積層構造、及び検出器素子全体としての半導体積層構造については、図1、図4、図5に示した構造以外にも様々な構造を用いて良い。一般には、量子カスケード検出器は、半導体基板と、半導体基板上に設けられた上記構成の活性層とを備えて構成されていれば良い。また、上記構成例では、InP基板に対して格子整合する構成について説明したが、例えばInP基板に対して格子不整合を導入した構成を用いることも可能である。この場合、素子設計の自由度の増大、効率的なキャリア閉じ込め、及び発振波長の短波長化が可能となる。
本発明は、入射光に対する光検出感度が向上された量子カスケード検出器として利用可能である。
1A…量子カスケード検出器、10…半導体基板、11…下部コンタクト層、12…上部コンタクト層、15…活性層、16…単位積層体、18…抽出構造部、161…吸収井戸層(第1井戸層)、162〜168…第2〜第8井戸層、171〜178…第1〜第8障壁層、L1a…検出下準位、L1b…検出上準位、L…第2準位、L…第3準位、L…第4準位、L〜L…第5〜第8準位。

Claims (6)

  1. 半導体基板と、
    前記半導体基板上に設けられ、吸収井戸層として機能する第1井戸層を含むn個(nは4以上の整数)の量子井戸層、及びn個の量子障壁層からなる単位積層体が多段に積層されたカスケード構造が形成された活性層とを備え、
    前記単位積層体は、そのサブバンド準位構造において、前記吸収井戸層に起因する検出下準位、検出上準位と、前記吸収井戸層を除く第2井戸層〜第n井戸層に起因する第2準位〜第n準位とを有し、
    前記吸収井戸層における前記検出下準位と前記検出上準位との間でのサブバンド間吸収によって光を検出するとともに、前記サブバンド間吸収によって前記検出上準位へと励起された電子は、共鳴トンネル効果によって前記第2準位へと移動し、第2準位〜第n準位による抽出準位構造を介して後段の単位積層体の吸収井戸層へと抽出され、
    前記第2準位と第3準位とのエネルギー間隔ΔE23は、縦光学フォノンのエネルギーELOに対して、条件ELO≦ΔE23≦2×ELOを満たすように設定されるとともに、前記第3準位と第4準位とのエネルギー間隔ΔE34は、条件ΔE34<ELOを満たすように設定されることを特徴とする量子カスケード検出器。
  2. 前記第2準位と前記第4準位とのエネルギー間隔ΔE24は、条件
    ΔE23<ΔE24≦2×ELO
    を満たすように設定されることを特徴とする請求項1記載の量子カスケード検出器。
  3. 前記第3準位と前記第4準位とのエネルギー間隔ΔE34は、条件
    ΔE34≦25meV
    を満たすように設定されることを特徴とする請求項1または2記載の量子カスケード検出器。
  4. 前記検出上準位と、前記第2準位とは、準位間の反交差ギャップΔEACが、条件
    5meV≦ΔEAC≦30meV
    を満たすように設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の量子カスケード検出器。
  5. 前記単位積層体において、前記吸収井戸層は、n型不純物がドープされた半導体層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の量子カスケード検出器。
  6. 前記単位積層体において、前記第2井戸層〜前記第n井戸層は、それぞれアンドープの半導体層からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の量子カスケード検出器。
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